05/10/24 第77回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録   第77回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成17年10月24日(月)13:00〜 2 場所  職業安定局第1会議室 3 出席者     委員  公益代表 : 清家委員、鎌田委員        雇用主代表: 輪島委員、山崎委員、成宮委員        労働者代表: 川畑委員、長谷川委員   事務局  坂口需給調整事業課長、佐藤需給調整事業課長補佐        篠崎需給調整事業課長補佐、松浦需給調整事業課長補佐        原医政局総務課長、山口医政局総務課長補佐 4 議題  (1)構造改革特区について       (2)その他 ○清家部会長  ただいまから、「第77回労働力需給制度部会」を開催します。本日は北村委員、池田委 員がご欠席です。また、鎌田委員は大学の授業の日程の関係で途中退席されると伺ってい ます。  本日は最初に議事を公開し、構造改革特区についてご審議いただきます。また、その後、 一般労働者派遣事業の許可の諮問、有料職業紹介事業及び無料職業紹介事業の許可の諮問 にかかわる審議を行いますが、許可の審議については資産の状況等、個別の事業主に関す る事項を扱いますことから、これについては「公開することにより、特定の者に不当な利 益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある」場合に該当するため、非公開とさせていただ きます。傍聴されておられる方々には、始まる前にご退席いただくことになることを予め ご了承ください。  議事に入ります。最初の議題、「構造改革特区」について事務局からご説明をお願いいた します。 ○坂口課長  「構造改革特区」の1つ目の議題についてご説明いたします。また、のちほどご説明い たしますけれども、先週の金曜日、10月21日、政府の構造改革特区推進本部の決定があり ました。その中で、医療分野において、規制されている労働者派遣の一部解禁に関する事 項が盛り込まれています。内容の詳細については、のちほどご説明させていただきます。 その中で、当該内容について「労働政策審議会における審議を行って、平成17年度中に結 論を得て、その結論に従い速やかに措置する」とされています。いまの関係の労働者派遣 にかかわる内容は、労働者派遣法の施行令、政令の改正にかかわる内容であることから、「労 働政策審議会」の職業安定分科会に諮問する必要もございます。そういった関係で、諮問 に先立ち、事前にこの部会でご検討をお願いするものでございます。今回の議論の前です が、そもそも医療分野において規制されている労働者派遣等についての制度の内容等につ いて、事務局からご説明いたします。 ○篠崎補佐  資料1をご覧ください。現在の「労働者派遣制度における適用除外業務」という形で整 理をしています。  まず、派遣事業制度の中においては(1)、(2)、(3)とありますが、港湾運送業務、 建設業務、警備業務については法律において適用除外とすることとされています。医療関 連業務については、政令の中でここにありますように医師の業務、歯科医師の業務、薬剤 師の調剤の業務等については、政令において禁止とされているところです。それぞれ、港 湾運送業務については中間搾取等の弊害が生じる恐れがある等により禁止されているとこ ろです。医療関連業務については原則、医療政策上、チーム医療の観点等から適用除外業 務とされているところです。  ただし、医療関連業務については(1)紹介予定派遣、(2)病院・診療所等以外の施設、具体 的には社会福祉施設等ということになりますが、そこで行われるものについては労働者派 遣を行うことが可能となっています。この「社会福祉施設等」ですが、例えば特別養護老 人ホーム、老人デイサービスセンター等となっています。以上、大きく申し上げますと、 分野としてはここにありますように(1)から(4)の分野が適用除外業務とされていま す。その中でも、医療については、一部のものについては出来るというのが現在の状況に なっています。  下のほうの枠囲みですが、医療関連業務について特出ししていますが、派遣制度の変遷 という形で簡単に紹介をしています。まず、「平成11年12月1日」と書いてありますが、 平成11年の法改正により、いわゆるネガティブリスト化がされました。この際、医療関連 業務については派遣禁止業務というようにまず整理されています。その後、平成15年3月 28日以降については病院、診療所以外、具体的には社会福祉施設ということになるわけで すが、そこにおいて行われる医療関連業務については労働者派遣業務について解禁をする という形になっています。  その後、平成16年3月1日以降、「医療関連業務への紹介予定派遣の解禁」とされてい ます。平成16年3月1日以降ということについては、派遣制度全体について紹介予定派遣 というものを法律に明記してきたということですので、それに合わせて医療分野について は検討を行い、解禁をしたという形になっています。  資料1の後ろに付けているのは関係条文ですので、こちらについては省略させていただ きます。  資料2、「医療分野における労働者派遣の状況について」という形で簡単にまとめていま す。医療だけというものはありませんでしたので、医療、福祉分野という形で整理させて いただいています。この状況については、厚生労働省の大臣官房統計情報部の「派遣労働 者実態調査」、平成16年に実施したものですが、その中より抜粋しています。  まず1つ目、「産業、派遣労働者の就業の有無別事業所構成比」です。派遣労働者の就業 の有無、派遣労働者を活用している事業所が全体で31.5%、活用していないという事業所 が68.5%と全体ではなっています。これを産業別で見ると、医療、福祉分野で派遣労働者 が就業しているという事業所が17.4%、就業していないが82.6%というようになっていま す。これはもちろん医療職種ということに限りません。当然、医療分野における事務職で あったり、諸々含まれますが、全体としてはこのような形になっています。  2つ目ですが、「産業別派遣労働者数及び性別構成比」となっています。総数としては、 この調査によるとこれは95万6,000人の方が派遣労働者として就業しております。男女比 で見ると、男性が37.2%、女性が62.8%となっています。これは産業全体となっています。  続いて医療、福祉という形ですが、この中では派遣労働者数が3万1,700人、男女比で 見ると男性が16.1%、女性が83.9%となっています。総数と比べると、女性の構成割合が 高いというようになっています。ここについても、先ほど申し上げたように必ずしも医業 そのものとは限りませんので、当然事務職など、職業の具体的な内容としてはさまざまな ものが含まれると思いますが、全体としてはこのような労働者数という形になっています。  以上、簡単ですが労働者派遣をめぐる規制の状況、医療分野におけるこれまでの改正の 経緯、それから医療分野における労働者派遣の状況についてということでございます。 ○坂口課長  続いて、医政局から特区本部決定関係のご説明をいたします。 ○原課長  医政局総務課長の原でございます。資料3をご覧いただきたいと思います。今月21日に 構造改革特別区域推進本部決定として、「医療関係業務の労働者派遣の容認」ということで、 ここに記載されていることが決定されています。  「以下の事項について、労働政策審議会における審議を行い、17年度中に結論を得て、 その結論に従い速やかに措置する」。1つはすべての医療関係職種について産前産後休業、 育児休業、介護休業を取得した労働者の業務を行う場合に限り医療関係職種の派遣を認め る。  2点目がへき地や離島等、医師の確保が困難な一定の地域について、派遣後の業務を円 滑に行えるような支援としての研修等を受けることを条件として、当該地域に所在する病 院・診療所等に対する医師の派遣を認める。1番目は医師も含めたすべての医療関係職種、 2番目は医師についての派遣ということになります。  ここに至った経緯を私からご説明いたします。昨年12月24日の「経済財政諮問会議」 において、民間委員から特区制度を再活性化すべきだというご指摘が出ました。これを受 け、本年3月末にこれまでの特区提案のうち、実現に至らなかったものの中から経済的、 社会的意義が高く、重点的に検討すべき項目を選定し、その早期実現を図るため、「構造改 革特別区域推進本部」のもとに、「構造改革特区に関する有識者会議」というものが設置さ れました。この会議において、私どもに限らずいくつかの事項について取り上げられ、そ れについての審議が行われました。途中、ヒアリングなどもあり、9月30日の第4回会議 において、先ほど見ていただいた本部決定と同様の有識者会議意見が取りまとめられたと ころです。  その経緯ですが、当初、有識者会議は医療分野全般について特区制度により派遣を認め るべきという提案でした。これに対して、私どもはヒアリングなどの場を通じて厚生労働 省としての考え方を申し上げました。私どもとしては従来からの考え方、人の生命、身体、 健康に直接的にかかわるものである医療業務の遂行に当たっては、医療現場での互いの能 力把握や意思疎通が不可欠であり、事前面接等ができない中ではチーム医療への影響等が 懸念されるのではないかということで、医療従事者の派遣については消極的な考え方です。  そのことを申し上げましたけれども、議論はしばらく平行線をたどりました。そういう 議論の中で、有識者会議側では民間の派遣会社からのヒアリングなども行いました。実際、 医療従事者の派遣といっても、いろいろニーズに差があるようです。  もう1つ、昨今医師の地域偏在が非常に大きな課題となっています。東京などでは多く、 特に不足感はないのですが、例えば北海道、東北地方あたりでは非常に医師が少ない。も ちろん離島、へき地などではもっと少ない。これは昔からの課題でございます。  もう1つの偏在として昨今、指摘されているのは、いわゆる「診療科による偏在」と言 われているものです。特に小児科、産科、麻酔科、この辺の診療科について非常に医師が 少ない。都会でも少ないと言われています。そういった医師の偏在問題がある中で、それ に着目して、これらに限定した派遣というものが考えられるのではないか。このような有 識者会議側からのご意見でした。  当方としても、実はいま申し上げました医師偏在問題は非常に深刻であるという認識が あります。今年の8月にも、関係省庁3省で「医師確保総合対策」をまとめたという経緯 もあります。やれることは何でもやろう、という精神でやっています。そのような中で、 ご指摘いただいた分野についてはどの程度効果が出るかという議論はありますけれども、 選択肢の1つとして否定する理由もないのではないか。何でもやろうと言っているのに、 これだけやらないというのもいかがなものか。実際、民間の派遣会社からの要望もありま すので、選択肢は広げてもいいではないかという提案に対してそれをNOと言う理由もあ りませんでした。  もう1つ、チーム医療への影響というものも、今回のケースであればそれほど大きくは ないのではないか。そのような判断をして、関係団体の意見も聞いた上でこれを受け入れ るということに至った次第です。  個別に論点を申し上げると、まず1点目の休業代替についての関係です。産休等は年度 途中など、不定期に生じるため、医療現場においては代替要員の確保にかかる苦労、負担 は非常に大きいと聞き及んでいます。迅速に、かつ紹介予定派遣のように原則として常時 雇用に移行することなく、短期間でも対応できるニーズは大きいと考えられます。また、 ますます進行する少子化社会にあって、仕事と子育ての両立支援の観点や医師等の不足感 が深刻な状況のもと、拘束の大きい正規雇用には抵抗があるが、ライフスタイルに合わせ て短期間なら働きたいといった女性医師や看護師、特に最近非常に女性医師が多くなって います。国家試験の合格者のうち、3割以上がいま女性です。それから、実際に就業され ている医師のうちの16%が女性です。新規がいま3割以上ですから、どんどん年を経るご とに就業している女性医師も増えているという状況です。もちろん、もともと看護師も女 性が多い。そういった女性医師、看護師等の就業支援の観点からの潜在的なニーズにも適 合するのではないか。そういった関連する別の観点からも政策的な意味も少なくないと考 えています。  他方、派遣労働者の業務は産休等を取得した労働者の当該業務についてのみ可能である という今回の提案ですので、当該労働者、すなわち産休等を取得した労働者は当然、産休 等が終われば復職できるという保証がございます。そういう意味でも、常用雇用の方々へ の影響も少ないのではないか。  また、期間もその性格上限定的であるため、チーム医療、医療安全上の影響や常用雇用 を代替する恐れは比較的少ない。むしろ、医療安全の観点からは、十分なマンパワーの確 保を図ることが必要な側面もあると考えられます。これを評価したいということで受け入 れてはどうかと、私ども医政局としては考えています。  2点目のへき地等への医師派遣の問題ですが、これについては先ほど申し上げたように、 将来医師は過剰になるという見通しですけれども、昨今の医師の地域による偏在、あるい は診療科による偏在ということで総合的な対策がいま求められています。影響は必ずしも 否定はできないわけですが、深刻な医師不足への対応という政策的な判断から、最も必要 性が高いと考えられるへき地等に限定をして、派遣を容認することで受け入れてはどうか と考えた次第です。  ただし、へき地等においては、基本的には1人でいろいろな診療をやらなければいけま せんし、地域住民との信頼関係がないとなかなかへき地、離島ではうまくいきません。誰 でもいいということにはいかないのではないかということで、一定の研修を事前に課す。 こういう条件で受け入れてはどうかと考えています。この点は有識者会議側からもご理解 をいただいているところです。  以上の2点であります。有識者会議側からは特区制度でというご提案でしたが、医療は 国民の生命、身体、健康に直接かかわるものであり、ある地域だけ規制を緩和するという ような特区制度になじまないのではないかというのが基本的な考え方です。  また、産休・育休・介護休業というのは全国的な制度でして、ある特定の地域のみを代 替要員の確保が必要だと判断するのは難しいのではないか。有識者会議側からは特区とい う提案でしたが、私どもとしてはむしろ、一定の条件下であれば全国規模の規制改革とい う形で実施することが適切であると判断をした次第です。以上が経過です。 ○坂口課長 以上、特区本部の決定を受けて部会としてご議論をお願いしています内容で すので、よろしくお願いしたいと思います。なお、ご審議のスケジュールですけれども、 事務局としては本日、11月末、12月末の2回の部会でご審議いただいて、12月末の会議 では安定分科会に対して諮問する要綱案を取りまとめいただくスケジュールでお願いした いと思いますので、よろしくお願いします。 ○清家部会長  わかりました、どうもありがとうございます。ただいまの事務局のご説明に関し、委員 の皆様、ご質問、ご意見等がありましたらどうぞお願いいたします。 ○長谷川委員  有識者会議でヒアリングが行われたということですが、どういう人からどのようなヒア リングを行ったのかというのが1つです。それから、すべての医療関係職種の産休、育休、 介護、代替ということですが、こういうニーズはどこから出てきたのか。どういうところ からそのようなニーズがあったのかを質問します。 ○原課長  正確なことはあとでわかりましたらお答えいたしますが、有識者会議が今年7月ごろに ヒアリングを行いました。ヒアリングの対象者は、1人は、医師不足で非常に困難をされ ている、北海道のへき地、離島の市町村、町長です。そうした地元自治体の首長を呼び、 実際、北海道では「ブローカー」と言うと言い方は悪いのですが、いわゆるあっせん業者 などを通して医師を派遣してもらっているというケースもあります。民間だけに任せてお くとなかなか、その方は確か「悪徳ブローカー」みたいに言われていましたが、ものすご いお金をふっかけられて困っているみたいな話をされていたように記憶しています。そう いう方が1人いらっしゃいます。もう1人はいわゆる民間医局と言われている、いわゆる 民間の派遣会社の方をお呼びしてお話を聞かれたようです。  もう1つの質問である産休などのニーズをどうやって把握しているのか。そういったも ののニーズがどこから出てきたのかというご質問に対しては、1つは民間の事業者の方か らのヒアリングの場で、特に看護師などは不足していてこういう派遣があれば非常に便利 である。看護師が不足する理由としては、産休等の補充などがあるということを確かおっ しゃっていたように思います。  私どもとして、これを局として受け入れようと判断した過程には、実際看護師の職能団 体、日本看護協会等にご意見を聞いてみて、実際にそういったニーズが多いということで した。  チーム医療への影響ということで、従来から日本看護協会は基本的には派遣には消極的 な意見でした。休業等をする方の後補充ということで一時的に派遣を受け入れるというこ とであれば、かえって正規の看護師が産休、育休、介護休業を取得しやすくなる。その意 味ではむしろメリットのほうが大きいのではないかというご意見でしたので、私どもとし てはそのようなご意見を聞いた上で、これについてはニーズが高いと判断し受け入れては どうかと考えている次第です。 ○長谷川委員  もう1つ質問します。医師の偏在というのは、1つは地域、都市に集中してへき地など にいない。また、診療の科によっても医師不足のところがある。こうした状況は、派遣を 認めることで、どうやって解消できるのですか。へき地に行きたくないと思って東京にい る医師が、派遣であればへき地にも行くというのはどういうことなのですか。 ○ 原課長  その点、私どもも、実はそういう思いがございます。実際、民間の事業者の方々の実績 などを聞いても、看護師は結構紹介予定派遣等を活用して派遣するケースが多いようです が、医師の紹介予定派遣のケースというのはあまり多くないようです。やはり、いくら派 遣制度があったからといっても、どのように使われているかというと現状ではまだ不十分 というか、効果に疑問があるのではないか。むしろ、同じことを私どもも有識者会議に対 して主張申し上げました。  ただ、冒頭に申し上げたように、とにかくいま地域偏在、診療科偏在には深刻なものが あります。8月にまとめた「医師確保総合対策」では数十項目の項目を打ち出しています が、なかなか憲法で保障しているところの職業選択の自由、居住の自由、こういう中で「あ なたはあそこに行きなさい」とか、これを義務づけられるような対策はありません。また、 医師の数を市場原理が働くぐらい増やせばもちろん行くようになると思いますが、残念な がら平成9年に医師の医学部の削減に引き続き取り組むという閣議決定がありました。将 来、2027年には医師が過剰になるという推計が示されていますので、そういう状況ではそ れほど増やせはしない。また、増やそうと思っても6年以上かかる。要するに決め手がな いということでした。そういう中で、選択肢としてあってもいいのではないか。現に民間 の事業者の方々がそういうものをほしいとおっしゃっている以上は、選択肢として広げれ ばいいではないか。実際に現場の事業者はそうおっしゃっているわけですから、私どもも 「それは要らない」ともなかなか言えない。そういうことであれば、一定の条件付きで受 け入れてはどうかということで判断をしたということです。休業代替のケースと医師派遣 のケースでは、市場のニーズ、派遣制度の効果としてはもしかしたら多少違いがあるのか もしれませんが、提案を否定するだけの理由はないのではないかと私どもは考えています。 ○清家部会長  長谷川委員、よろしいですか。 ○長谷川委員  納得はしていません。看護師の人、大体女性が多いのですが、病院での拘束時間が長い とか、深夜勤務や交代制勤務があるなどということで、そういう資格を持ちながらも働か ないでいる人たちがいるというのは理解しています。そういう人たちがある意味では派遣 という形態を使いながら、自分で労働時間の選択をして働くというのは産休、育休の代替 として考えられる選択肢だなと思います。  しかし、医師のへき地のところは、医師が不足していることは理解するのですが、だか らといって派遣で解消されるものではない。いま言ったように将来統計でいくと過剰にな るわけでしょう。へき地の医師の不足の問題はもっと根本的な何らかの対策が必要なわけ であって、そこはちょっと履き違えているのではないか。手法において、派遣を使うとい うのはちょっと違うのではないかというのは言っておきたいと思います。だから、ご説明 されたその理由は納得はできません。 ○輪島委員  資料1や2のところなのでしょうが、平成11年の議論はあまり詳細に理解をしているわ けではないので、そもそも法で除外をしている3つのものと政令で除外をしている違いと いうのはどうして起こっているのか。また、なぜ医療関係業務なのか。先ほど「チーム医 療」という言葉が何度か出てきたのですが、そういう理由とは聞いてはいます。その辺、 もう1度ご説明をいただければと思います。 ○坂口課長  いまのお話、2点だと思うのですが説明いたします。まず、資料1のいちばん冒頭にあ りますように、派遣の適用除外業務は港湾運送と建設業務と警備業が派遣法の法律本体、 今回ご議論いただく医療関係業務については具体的には労働者派遣法の施行令という政令 で規定がされています。これについては、それぞれ平成11年改正のときの議論として、港 湾運送については業務の波動性等の関係で別の労働力需給システムがある中で、やはりブ ローカーなどの介在を許すことにつながるのではないかということが派遣の対象除外業務 としている理由であります。建設業務についても、建設労働の実情ということで中間搾取、 強制労働の温床につながるということで適用除外となっています。警備業務については別 途、警備業法という法律があり、そちらのほうで請負形態によって業務を処理することが 求められている。言わば、その三者というのは法律の枠組みであったり、それぞれの業務 の内容からして派遣を適用することが不適正であることから、これは法律の中で規定がさ れているものであります。そのようなもの以外についてはそれぞれの業務の実施の状況と いうことで、派遣の対象とするかどうかを法律で決めてしまうのではなくて、政令という 手法で機動的に、それぞれの実情に応じた枠組みを作ることができるようにということで、 規定の仕方としては政令という形になったものでございます。  具体的な医療関連の業務についてですが、先ほど総務課長から説明がありましたように、 一般的に医療の関係業務が医師を中心に看護師、ほかの医療関係従事者と一緒になって1 つのチームを作って、お互いの能力や治療の方針などを把握しながら緊密な意思疎通のも と、遂行されることが通例の医療関係業務ではないか。チーム医療の構成員が派遣元事業 主の都合で差し換えられるということが含まれるようになると、先ほど申し上げたような チーム医療の構成による互いの能力把握、意思疎通が十分になされないということで、チ ーム医療に支障が生ずるのではないかということから、政令の中で適用対象除外という形 にしたわけです。  先ほど、資料1のところで経過もご説明したとおり、まさしく政令で状況に応じて機動 的に範囲をということで社会福祉施設などについては、その適用対象除外の業務から外し てきたという経緯でございます。 ○輪島委員  チーム医療の重要性は否定をするものではありません。ただ、局面でよくわからないこ とがあります。チーム医療自身、という理由をもって政令除外をするという整理は必要で はないかと思っています。例えば高度医療、心臓の移植手術のようなものは非常にスキル がある人があって、そこで特殊なプロジェクトのような形で手術が行われるのではないか。 そういうようなところでのチーム医療というのはどのように考えるのか。  新潟で地震がありましたが、あのような所で緊急医療、多分、業務の波動性、ニーズと いうことからすれば、医師や看護師といった人たちがそういうところでやるときに派遣が できないのかどうか。それはチーム医療とどういうように整理をするのか。  研修医制度というものがありますが、例えば月・火・水はA病院に行って、水・木・金 はB病院に行く。実際には医師がいろいろなところで仕事をしているケースのほうが多い。 そういったときのチーム医療というのはその日その日、例えば急に都合が悪くなれば医師 は変わっていくのが実際なのではないか。そうすると、本当にチーム医療という理由を持 って派遣が駄目だというのは、どういうことなのかというのは常々疑問を持っているわけ です。その辺についてお答えをいただければと思います。  2点目ですが、基本的には派遣として働く医師であっても看護師であっても国家資格を 持っているわけです。通常、採用されている医師とのスキルの違いというのは基本的には ないのではないか。そのときにどうして派遣というスタイルが駄目で、通常のものならば いいのか。そこのところも実際には私もよくわかりません。その辺、専門家会議では議論 になったのでしょうか。 ○原課長  まず、個別のご質問からお答えします。高度な医療技術を伴うような、例えば臓器移植 という場合、普通は大学病院の特定の医局の中に専門のチームができてやりますから、お っしゃるようにそういう場合には派遣はなかなか難しい。パッと来た人ができないだろう と思います。しかし、一定の条件を課して、長らくやっていればもちろんなじんでくるか と思いますが、一般的には高度医療の場合にはそれこそ気心の知れた、普段からの付き合 いの方がやるというのが一般的ではないかと思います。  災害の場合、実際には「DMAT」と言っていますけれども、特別な災害医療の研修を 受けさせ、チームを作って派遣をするという形態が多くあります。これもなかなか、予め 研修を受けていないような方がいきなり参加してということは難しいかもしれませんが、 派遣契約の条件として「DMATの研修を受けている方」という条件を付けていけば、そ この溝もだんだん狭まるとは思います。  そもそも、非常勤で来ている医師がいるではないか。国家資格がある以上、スキルに違 いはないのではないかというご指摘は有識者会議でも言われました。正直、私どもも辛い ところがあります。これは理屈というより、まさに現場の方々が「心配だ」とおっしゃっ ているからという点も実はあるのです。  ただ、看護協会の方もおっしゃられていましたが、例えば看護師で言うと夜勤が必ずあ るわけですが、深夜に2人で夜勤をしているとき、ただスキルの違いだけではなくて、や はり相性、人間関係、あるいは病院の方針、そういったものが微妙なところで影響してく るということはあるようです。いずれにしても、そこは理屈というよりも、まさに現場の 方々が影響があるのではないかという不安を持っている。事前面接みたいなことができれ ばもちろん派遣であっても何ら問題はないと思いますが、事前面接が禁止されている中で の派遣ということについてはやはり実際上、そういった心配を持っておられるということ は事実でございます。 ○輪島委員  高度医療の関係、災害の件、局面はそういうことだと思います。テレビなどをよく見る と、むしろカリスマ的な先生が例えば東京大学で手術をして、翌日は大阪大学へ行って、 大阪大学で手術している。先生自身が移っていって、すべての医療スタッフがそれにくっ 付いていくかというとそうではないように見えます。そういう局面においては、チーム医 療はトップがしっかりしていればチームは動くのではないかと思います。ご指摘の点もあ ろうとは思いますが、片方で別の状況があるのではないかと思います。  災害の局面も、その地域の災害現場ということだと思いますけれども、既存の医療施設 で診療所というような、付加的、もしくは二次、三次の簡単な医療というところのニーズ というのはむしろ逆に高まるのではないかと思っています。そういうところでは特殊な研 修が必要なのかもしれませんが、派遣であるかどうかは別にしても、ニーズとしてはある のではないかと思っています。  もう1点、今日報告が出て、この需給部会にご相談があり、12月まで議論をする。その 手続きのところを教えていただきたいと思います。まず、この部会でやるというのはどう いう意味なのか。先ほど、課長は「分科会に諮問」ということをおっしゃいました。そう すると、部会と分科会との関係をどういうタイミングで、どういうようにするのかを教え ていただきたいと思います。 ○坂口課長  審議会の進め方の関係ですが、冒頭もお話したとおり、医療関係業務については労働者 派遣法の施行令でいま適用除外の規定が置かれているという内容になっています。具体的 に今回、本部決定がなされた内容について措置するということになれば、施行令の当該条 項の改正を要することになります。法律でもそうなっているし、今回の本部決定の内容に もそう書かれていますけれども、「労働政策審議会」で具体的な議論をお願いすることにな っています。  内容的には、最終的に政令の改正の諮問案の要綱を私どもで作成し、大臣より審議会、 すなわち安定分科会に諮問させていただきます。その諮問案に至る過程の取りまとめをど ういう形で作ったらいいかということについて、分科会のほうに諮問して、そのあとまた 部会でという手法もあろうかと思いますが、今回決定がなされましたので予め部会でご審 議を詰めていただいて、諮問案要綱を部会のご議論を踏まえた上で作成させていただき、 分科会にお諮りしたいということであります。 ○輪島委員  確認します。例えば資料3−7の(2)、先ほど長谷川委員がおっしゃった点がそうなのか なと思ったのですが、これは医師に限定しているわけですよね。看護師とか、ほかにニー ズがあれば「医師等」にしたほうがいいのではないかと、ふと思いました。ここの議論で そういうことだと解せば、確定、かちっとしたもので議論するということではなくて、多 少変えるというか、審議の結果、そういうようになったというのは許容の範囲なのでしょ うか。 ○坂口課長  本部決定として、最低限こういう内容についてご検討をお願いしたいということですの で、ここに書いてあるような(1)、(2)についてはまずもってご審議をいただきたい。その過 程の中でもう少し、というバリエーションというか、ご議論をされることを踏まえて、一 定の結論が出されるということはありうべきだと考えています。 ○長谷川委員  いくつかの質問と扱い方について発言します。質問の1つは、既に紹介予定派遣が社会 福祉施設でも行われているわけです。それらの運用状況で、例えば教育研修などの体制が どうなっているのか、相談などがあるのかなど、資料があったら出してほしいと思います。  へき地、離島への医師の派遣なのですが、医師の確保が困難であるというデータがほし いかと思います。それから、医師確保が困難である理由というのは何なのか、きちんとし たものを出してほしい。  先ほど、研修を要件にすると言っていましたが、その研修とは何なのか。研修の中身に ついて教えてください。それから、派遣を認める場合、「医師の確保が困難な一定の地域」 という表現があるのですが、その地域というのは法律か何かで示すのか、という点も教え て下さい。  個々の進め方なのですが、例えば輪島委員がご質問なされたチーム医療の話というのは 前回も結構議論になった話でした。前任者から前回の議論を聞いたのですが、おそらく輪 島委員の言う「チーム」という考え方と、現場の人たちの言う「チーム」というのは若干 違うのかなと思います。私どもの組合員の中にもそういう現場で働いている人たちがいら っしゃるわけです。向こうの有識者会議ではヒアリングをやったようですが、ここでも出 来たらそういう方々の意見を聞いてほしいなと思います。  いままでも11年改正があって、15年改正があって、16年改正があるのですが、いまま で認めてこなかったものを議論するとすれば何か変化があったとか、それなりの理由があ ると思います。したがって、できたら関係者のヒアリングをしていただきたいと思います。 ○清家部会長  ヒアリングについては部会の運営にかかわることですので、あとで議論するとして、ま ず最初に、事務局にご質問があった分についてお答えいただけますでしょうか。あとで資 料を出していただくとか。 ○坂口課長  ご要望があった資料等については、こちらで用意したいと思います。資料によってどこ まで内容を精査できるかということはありますが、こちらで調べてご提出したいと思いま す。 ○清家部会長  それはそのようにお願いします。 ○原課長  あと、質問が2点ありましたのでお答えします。1点は今後の議論ではありますけれど も、現段階で医政局としてどのように考えているかということでした。1点目は、医師の 研修をどのように考えているのかというお尋ねがありました。これについては先ほどもご 説明したように、へき地、離島という所は1人の医師がすべてをやらなければいけない、 カバーすべき医療ニーズが広い。それから、やはり地域住民との信頼関係なども非常に求 められます。そういう意味では単に技術だけではなくて、その方の性格や人間性というこ ともみないと円滑なへき地、離島医療ができないわけです。  そこで研修ということなのですが、例えばへき地医療対策としていま、各県に「へき地 医療支援機構」といった組織、あるいは「へき地医療拠点病院」という病院を指定して、 そこから医師を派遣したり、地域の医療従事者の研修をしたり、あるいは代診医を派遣し たり、ドクターヘリでそこの病院に患者を離島から運び込んで救急医療をやる。あるいは、 ITを使って遠隔診療の支援をするといった制度があります。例えば、そういうところで 一定期間研修を受けてもらうことを条件として採用する、ということが考えられるのでは ないかというように思っています。  2点目のご質問、へき地、離島の地域は限定するのか、しないのか。これもこれから決 めていかなければいけないことですが、私どもが念頭にありますのは実はいまでもへき地、 離島と言ったとき、例えば診療報酬上の特別な措置の対象になっている地域、あるいは医 療法上で医師の人員配置標準みたいなものを定めています。特例という形で規定がありま すけれども、そのときにへき地、離島の対象を決めなければいけません。  そういったいくつかの制度の中で決めている例を申し上げますと、「離島振興法」、ある いは「辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置」といった法律、ある いは「山村振興法」、「過疎地域自立促進特別措置法」、こういった4つの法律でいわゆるへ き地、離島等と言われているものの指定等をする仕組みになっています。例えば、そうい うものの対象をそのまま使うということも考えられるのではないかと思っています。 ○清家部会長  ありがとうございました。長谷川委員、よろしいでしょうか。長谷川委員から、当部会 においてもヒアリング等を行ってはどうかというご提案がありました。この点について、 何かご意見はありますでしょうか。使用者側の委員の方、よろしいでしょうか。  仮に事務局に伺います。いまご提案のあったヒアリングを行うとした場合、スケジュー ル、ヒアリングの対象者として具体的にどのようなものが考えられるのか。お答えになれ る範囲でお願いできますでしょうか。 ○坂口課長  まず、スケジュールの関係はできれば先ほどのようなご予定でということも考えていま すので、例えば来月中旬にヒアリングをセットして、その後、11月下旬と12月下旬の2回 でご審議をいただいて、12月下旬の会で分科会に対する諮問案を取りまとめていただくと いうスケジュールでいかがかと考えています。ヒアリングの方法ですけれども、先ほど長 谷川委員から前回、前々回のお話も出ましたけれども、そういったところを参考にさせて いただくと医師会、あるいは看護協会、病院団体、医療の関係にかかわる労働関係団体あ たりになるのではないかと考えています。 ○清家部会長  ただいま、事務局の粗々のご説明のような形でヒアリングをするということについて、 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。 (了承) ○清家部会長  それでは、当部会としても議論をする上での参考として、いま事務局からご説明があっ たような関係者から意見を聞いておくという趣旨で11月中旬に1度ヒアリングを行い、そ の後11月下旬と12月下旬に審議をし、諮問案を取りまとめるということで進めるという ことで行こうと思っています。よろしゅうございましょうか。 (異議なし) ○清家部会長  それでは、そのようにさせていただきます。また、いま事務局からお話がありましたよ うに、ヒアリングの対象者として日本医師会、日本看護協会、病院団体、あるいは医療派 遣にかかわる労働関係団体の4者を選定することとし、詳細については私と事務局にご一 任いただければと思います。いかがでしょうか。 (異議なし) ○清家部会長  それでは、そのようにさせていただきます。このほかに、ただいまの件について何かあ りますか。 ○成宮委員  いまの輪島委員の発言との関係だと思うのですが、資料3の(2)のほうは医師だけという ことでした。これがなぜ、他の医療職種ではなくて医師だけなのか。議論されている中で、 なぜこちらのほうは医師だけに限るという形になっているのか、お考えを聞かせていただ ければと思います。 ○原課長  もともとへき地、離島の場合、先ほど長谷川委員からもありましたようにはたして実効 性というか、効果はあるのだろうかという疑問がありました。これに関しては反対、とい うことを有識者会議で申し上げました。  ただ、いま医師の偏在が非常に大きい。看護師については、多少はございますが、そこ までの地域偏在はないということがあり、結果的には先方側から医師について、選択肢を 増やすという意味で「どうだ」というご提案があったので、私どもとしてはそれに対して 異論を出さなかったという経緯です。  また、看護師については離島、へき地での派遣というニーズが医師ほどはない。離島、 へき地というのは1人1人の方の負担というか、総合的にすべてのことを判断しなければ いけない。これは医師もそうですけれども、看護師もそうです。そういう意味では非常に 負担が大きい。関係団体も離島、へき地の派遣については消極的だったということもあり ましたので、このように医師についてだけ限定をしたということではないかと私は理解し ています。その辺はまた、団体からご意見を聞いていただければと思います。 ○清家部会長  ほかにいかがでしょうか。 ○輪島委員  先ほどのヒアリング対象団体というのは、平たく言うと賛成と反対のバランスはうまく いくのでしょうか。そもそも、大体いかがなものかと思っていらっしゃるような気もする のですが、そのようなことはないのでしょうか。その辺は是非、バランスを取っていただ きたいというお願いをしておきたいと思います。 ○清家部会長  その点について、事務局から何かございますか。 ○坂口課長  全体として、有識者会議の過程でも総務課長から話があったような内容でした。単純に 今回の提案について駄目だということではないのだろうと思います。中身については、い まもありましたようにそれぞれ趣旨であったり、考え方であったりということはあろうか と思います。ほかの団体については、確かにまだ本部決定の内容についてはお諮りしてい ませんので具体的な話まではわかりません。逆に言うと、こういうことをやったらいいと いうご提案をされた側から言うと、まさしく聞かずもがな、結果がわかっているという形 かと思います。我々事務局としては、前回の例等も参考にすると先ほど申し上げたような ところからがよろしいのではないかということで申し上げたつもりです。 ○清家部会長 ほかに何かございますか、よろしいですか。それでは、今回はこれぐらい にします。次回はいまご案内があったように、関係者の方々からヒアリングを実施させて いただきたいと思います。  次に、一般労働者派遣事業の許可の諮問に移りたいと思います。冒頭申し上げましたよ うに、傍聴されておられる方についてはここでご退席いただきたいと思います。原さん、 山口さん、どうもありがとうございました。 (非公開部分) ○部会長 それでは、最後に事務局から何かありますか。 ○篠崎補佐   先ほどのヒアリングですが、11月中旬に行うということでした。事前に委員の皆様から 幅広にいただいていた日程の中で確認したところ、次回の部会は、すべての方ではありま せんが、概ね委員の方、ご都合がいいというのが11月18日金曜日午前10時からというこ とでしたので、日程の確保をお願いします。以上です。 ○部会長   それでは、ただいまお話がありましたように、次回は11月18日午前10時から開催させ ていただきます。日程の確保等よろしくお願いします。以上をもちまして、第77回の労働 力需給制度部会を終了します。なお、本日の署名委員は、雇用主代表は輪島委員、労働者 代表は長谷川委員にお願いします。委員の皆様どうもありがとうございました。    照会先  厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係  〒100-8916東京都千代田区霞が関1-2-2  TEL 03(5253)1111(内線5747)  FAX 03(3502)0516