05/10/24 新しい医療計画の作成に向けた都道府県と国との懇談会(第2回)議事録      新しい医療計画の作成に向けた都道府県と国との懇談会(第2回)                      日時 平成17年10月24日(月)                         15:00〜                      場所 厚生労働省専用第18〜第20会議室 ○谷口医政局指導課長  皆様には大変お忙しい中、ご出席を賜りましてありがとうございます。ただいまから 第2回目の「新しい医療計画の作成に向けた都道府県と国との懇談会」を開催させてい ただきます。  議事に入る前に、資料の確認をお願いいたします。資料1が広島県ご提出のもの、資 料2が高知県からご提出いただいたもの、資料3が、「全国で行われている医療連携の 事例」ということで、私どもで集めた資料です。資料4が、「新しい医療計画のポイン ト」ということで、今後各県のほうで進めていただくものについてまとめたものです。 後ほどご説明いたします。資料5が全国の知事会のほうからご提出いただいた資料で す。資料6は、先般公表になりました「医療構造改革推進本部の設置について」という ことで、これも後ほどご説明させていただきます。参考資料として、これも先般出しま した「医療制度構造改革試案について」ということで、ちょっと分厚めの資料ですが、 一緒に付けております。  以上、不足等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、早速ですが議題に入らせていただきます。前回に引き続きまして、各県の 事例ということで、前回の中で、広島、高知両県の事例をまだご紹介いただいておりま せんので、広島、高知の順で、それぞれ15分から20分でプレゼンテーションをお願いで きればと思っております。早速ですが、広島県さん、よろしくお願いいたします。 ○新木福祉保健部長(広島県)  それでは広島の状況についてご説明させていただきます。広島県福祉保健部長の新木 と申します。よろしくお願いします。前回は所用のため欠席したことをまずお詫び申し 上げます。また、このような会で広島県の状況をご説明させていただく機会を与えてい ただきましたことに、お礼を申し上げます。  広島県からは、広島県で行われている老人のケアに関する2つの事例をご説明させて いただきます。と申しますのは、広島県のこの2つ、御調町の方式、御調方式と呼ばせ ていただきますが、御調方式と尾道市で行われている尾道方式、老人の在宅、施設を問 わず、一貫した地域でのケアということで、先進的に2つの地域で行われてきておりま す。広島県内ではもちろん参考にしていろいろと検討しているところですが、ほかの地 域でも参考になるのではないかと考えているからであります。  広島県提出資料1の5頁目をご覧ください。簡単に概要を私から、また詳細について は同行しております堀益医療対策室長からご説明させていただきます。  広島県をご存じだと思いますが、5頁目の上のほうに全体の概要が書いてあります。 広島県では市町村合併が大変進みまして、従来86市町村あったものが、現在28市町、来 年には23市町になります。そのため、これからご説明する尾道、御調も1つの市、尾道 市に包含されることになっております。全体としては288万人の人口がありまして、医 師数は6,400人余り、人口対比で10万人当たり201人と全国平均よりも若干高くなってお ります。  医療機関数は病院が264、診療所が2,600で、病床数で3万3,000余り、人口10万人当 たりにすると、これも全国平均よりも若干高くなっております。高齢化が若干全国平均 よりも高くなっておりまして、介護給付費が全国12位、老人医療費も全国5位と、比較 的介護・医療費は高くなっております。  全体として申し上げますと、このような状況ですが、広島県の全県的な分布を見る と、地域格差が高くなっております。広島市、福山市と、瀬戸内海の沿岸地域に人口が 集積し、かつ、産業も集積しておりまして、それに比較すると、その他の地域、特に県 の北部地域、地図で見ると備北地域または広島と書いてある所の北のほうですが、この 県北地域が中国山地の山間にありまして、ここで高齢化の進行と同時に医師の不足など の問題が起こっておりまして、地域間のアンバランスが県の医療政策上重要な課題にな っております。  このようなことから、さまざまな医療上の問題を抱えておりますが、これを克服する ために、3頁目に書いております、「広島県地域保健対策協議会」というものを昭和44 年から設けて、行政と大学・医師会、この3者が協議を行う場を設けて、県内の保健医 療上の課題について、すでに30年以上協議をしてきた実績がございます。  このために、比較的新しい課題に対しても、スムーズに検討する体制ができておりま す。例えば、いまお話申し上げた医師不足の問題についても、広島県においてはこの協 議会に検討の場を設けて行う。これによって、実は行政の課題というよりも県全体が抱 える課題、医療界、行政、住民を問わず抱える課題として対応することが可能になって おります。  また、そこで一度みんなで合意して決めたことは、各々の関係者が自分たちの課題と して実行することから、非常にスムーズに対策に移ることができるということが、1つ 広島県の特徴としてあるのではないかと思っております。  そのような中で、今日お話します尾道方式・御調方式の老人の長期ケアですが、歴史 的にといいますか、経緯から見ると、御調町で御調方式、ここは中山間地、山の中でし て、医療資源が比較的乏しい地域です。この地域において、みつぎ病院という病院を中 核に、他に医療資源がなかったものですから、ここにおいて地域の包括ケアという形 で、お年寄りを退院した後もケアをしていく。そのさまざまなマンパワーを病院から派 遣する形で行ってきたというのが、この1つの特徴であります。  そのような経緯も踏まえて、最近尾道市においても老人のケアが行われております が、ここは比較的都会部で、医療資源も豊富にありますので、開業医の医師会の方々と 協力する形で、さまざまな医療・保健、さらに介護・福祉、最近では児童委員や民生委 員なども巻き込んだ形での活動が行われております。その内容について、当県の堀益室 長からご説明申し上げます。 ○堀益医療対策室長(広島県)  私は広島県の福祉保健部医療対策室長の堀益です。それでは部長から概略を説明いた しましたので、ダブる部分もあるかと思いますが、広島県の医療保健行政を進める上で の特色と尾道・御調方式について、もっと詳細な説明をさせていただきたいと思いま す。お手元の資料の1頁をご覧ください。  現在広島県では、平成14年3月策定した現在の保健医療計画を5年経過する再来年 3月を目途に改定作業を進めております。改定するに当たっては、組織体制として、保 健医療計画検討委員会、委員長は県の医師会長にお願いしておりますが、それをトップ にして、3つの部会を設置しております。3つの部会で御検討いただく以外の分野につ いては、後ほど説明いたしますが、県の地域保健対策協議会の関係委員会等をうまく活 用しながら、連携しながら、必要な成果を上げようと考えているわけです。  そして、現在すでに行っているのは、患者調査です。これを国で実施されている3年 に1回の調査と同一調査日に歯科を除く全ての県内の医療機関、病院、診療所を対象に 調査を実施しております。  なお、この患者調査については、実は広島県では随分早くから取り組んでおりまし て、昭和49年、おそらく全国で初めてではなかったかと思いますけれども、第1回目の 全県民を対象とした患者調査をしております。以降10年ごとに、この調査を実施してお りまして、今回が4回目に当たります。  もう1つ、医療機能調査もできれば実施したいと考えておりますが、現在国のほうで も医療機能調査を予定しておられるようでして、それとの重複を避ける意味から、十分 情報をいただきながら、重複しないような形での医療機能調査も実施していきたいと思 っております。そして今年度、それらの調査を実施するとともに、計画の素案づくりに 着手したいと思っております。  お手元の資料の2頁目をご覧ください。本県の医療行政を進める上で、先ほど部長が 説明しましたように、広島県地域保健対策協議会、これはなくてはならない存在になっ てきております。この組織は地元大学、県の医師会、広島県、広島市の4者で構成して おりまして、そのうちの大学を除く3者が、それぞれ1,000万円ずつお金を出し合って、 計3,000万円で運営しています。昭和44年に設立して、事務局は県の医師会に置いてお ります。  本年度は、次の4頁にありますように、22の委員会を設置して、さまざまな課題につ いて調査・検討いただいているところです。この地対協の活動の結果として、成果が上 がっているものとして、主なものを3頁右下に列挙してありますが、例えば、全国に先 がけて実施した小児救急電話相談も地対協で行ってまいりましたし、がんをはじめとし たさまざまな検診従事者の研修会も地対協中心に行っております。あるいは肝炎治療支 援ネットワーク、さらには、この4月にオープンした、こども家庭センターのソフト部 分をどうするかについても、この地対協で検討した経緯があります。そのほか、医療行 政上成果を挙げてきたことの多くの部分は、この地対協で練っていただいて、そして行 政に提言していただき、それを我々が具体化していく、そういう順序でいままでやって きているわけです。  さらに、この協議会の重要な成果として見落としてはならないのが、各種委員会活動 を通じて、我々行政職員と医師会、あるいは地域の医療関係者、さらには学識経験者の 間で、顔と顔が見える関係が保たれた。これは非常に大きいことで、さまざまな事案が 発生した際、迅速かつ的確に指導・助言・協力を得られる体制が出来上がったというの は、非常に大きなメリットではないかと思っております。  さらに、この地対協組織は、県レベルだけではなくて、すべての圏域に設置しており ます。これは、もともとは昭和48年から昭和49年にかけて、地区医師会を単位に、それ ぞれの地域で保健所と市町村と地域の医療関係者、医師会等々で地区地対協というもの を設置しました。そこでさまざまな活動を続けてきたわけですが、圏域の見直し等によ って、現在の7つの圏域地対協を設置し、地域保健医療計画の進行管理とか、あるいは それぞれの地域が抱えるさまざまな保健医療の問題点等についてご検討いただいている ところです。  続いて広島県の地域連携の2例、尾道方式と御調方式について説明させていただきま す。5頁については、先ほど部長から説明がありましたので、省略させていただきま す。ただ、ここでちょっとミスプリントがあって、5頁の広島県の人口10万人対指数の ところで「201」となっておりますが、これは「223」の誤りですので、訂正願います。  6頁をご覧ください。この事例は旧尾道市、先ほど部長が申し上げたように、1つの 市になりましたので、旧という言葉を使わせていただきます。旧尾道市及び旧御調町の ものです。これらの地域の概況については表に示しているとおりです。高齢化比率は県 平均を上回っておりますが、介護保険の給付費及び老人医療費は、県平均を下回ってお ります。両事例とも地域の医療保健福祉関係者の連携により、患者のQOLの向上を本 来の目的とした地域の取組が、先ほど申し上げたような効果につながっているものと我 々は理解しております。  続いて7頁をご覧ください。まず、みつぎ病院を中心とした地域包括ケアシステムに ついてご紹介いたします。このシステムは、地域内の保健・医療・福祉資源が比較的乏 しい中山間地域における連携システムの典型的な事例ではないかと我々は理解しており ます。したがって、御調町では行政が主導し、これら資源を適正に配置し、有機的に連 携することによって、健康づくりから健診、在宅を含む医療の提供、さらには緩和ケア や高齢者を中心とした福祉サービスを、一体的総合的に提供する体制を整えておられる ところです。  7頁をご覧ください。その中核的組織である公立みつぎ総合病院、これは御調町を中 心にして、およそ4市8町、人口約7万人を診療圏とするその地域の中核病院です。従 前から「寝たきりゼロ作戦」の一環としての訪問看護とか訪問リハビリ等の在宅ケアに 積極的に取り組んでおられることは皆様ご承知のとおりです。みつぎ病院というのは、 急性期医療の提供に加えて、療養病棟、あるいは回復期のリハビリテーション病棟、緩 和ケア病棟も併設されております。また、院内に行政部門である旧町の保健福祉センタ ーも併設されていて、これら施設を核として、介護老人保健施設、あるいは特養、ケア ハウス、グループホーム等々の福祉施設を総合的に併設して、地域包括ケアシステムを 構築しておられるわけです。  8頁をご覧ください。地域包括ケアシステムのハード面を支えているのが、公立みつ ぎ総合病院を核とした保健・医療・福祉の施設群です。またソフト面では、保健・医療 ・福祉・介護の関係者の連携と住民参加によって、一次予防としての健康づくり、ある いは介護予防としての寝たきりゼロ作戦、さらに在宅ケアの推進などに取り組んでいる ということです。  12頁をご覧ください。以上のように、御調町では住民を中心に据えて、みつぎ総合病 院と行政が一体となり、それに老健施設、特養、在宅介護支援センター等々の福祉施設 を整備され、さらにボランティアも加わって、健康づくりから医療の提供に至る、ある いは高齢者の福祉の提供に至るまで、総合的に一体的な提供システムを構築されている というのが、御調町の特徴ではないかと思っております。  続いて旧尾道市の事例をご紹介させていただきます。旧尾道市の事例は、尾道市の医 師会を中心として、地域連携と在宅医療の取組がなされているところです。17頁以降に なりますが、旧尾道市は、人口約9万の中規模都市です。最初の6頁に戻って見ていた だければおわかりになるかと思いますが、そういう中規模都市ですから、すでに地域内 に医療機関や保健施設がある程度整備されている。問題は、これら保健・医療・福祉サ ービスをどのようにして結び付けていくか、そして地域全体としてシステム化していく かということが課題で、そこのところを医師会が中心となり、有機的・包括的に連携さ れて、地域全体として患者本位の保健・医療・福祉サービスを提供するシステムが構築 されている。いうならば、都市型の地域包括システムの典型ではないかと我々は捉えて おります。  11頁で、尾道市医師会では、1994年から、在宅主治医・医療機能支援システムと地域 包括医療システムを両輪とした地域連携の取組を開始しておられます。18頁下の図をご 覧ください。在宅主治医・医療機能支援システムでは、いわゆる主治医とそれを取り巻 く協力病院、協力医院、さらに看護・介護が連携して、多職種共同による在宅医療を行 っていらっしゃいます。そして、患者が重篤化、重症化した場合には、急性期病院との 病診連携により、そのバックアップ体制を整えていらっしゃるというところです。  具体的に申し上げますと、尾道市では開業医や訪問看護ステーション、あるいは介護 老人保健施設、さらに在宅介護支援センター、24時間対応巡回型のヘルパーステーショ ン等が、連携して在宅医療を支え、さらにJA尾道総合病院、これは500床くらいある 中核病院ですが、それに尾道市立の市民病院と併せて救急医療、急性期医療を担ってお られる。その急性期医療病院と在宅医療との連携が非常にうまくいっているというの が、尾道市の特徴ではないかということで、そのコーディネーター役を医師会のほうで 担っていらっしゃるということが言えるのではないかと思います。  19頁の図の2ですが、左上から右下に、また左からの矢印で、急性疾患による入院、 回復期・リハビリ、在宅復帰といった流れが出来上がっておりまして、必ず急性期病院 の退院時にはケアカンファレンスを行うなど、随所でケアカンファレンスを実施してい ただいて、多職種が情報を共有する。そして、1人の患者さんに対して連携して支えて いくことが、尾道方式の特徴ではないかと考えております。  そしてこのようなケアカンファレンスの反復により、ケアマネジメントをツールとし て、医療・介護・福祉のサービスを総合化する取組が、尾道市における地域包括医療シ ステムではないかと我々は考えております。多職種が主役となって、主治医がサポート する地域ケアマネジメントの基盤整備のために、実践部隊を養成するためのケアカンフ ァレンスの講習会であるとか、あるいはさまざまな職種を対象とした研修も、随時行っ ておられます。近年さらに、これに社会福祉協議会であるとか民生委員を含めた、いわ ゆる新地域ケアシステムを構築されており、そういったシステムによる医療・介護・福 祉が一体となった地域連携が現在進められているところです。  以上述べましたように、広島県では県の地対協、そして旧御調町、旧尾道市の例とい ったモデル的な連携システムが構築されておりますので、これらの体制を活用しなが ら、あるいはそれらを視野に置きながら、いま作業をしている次期保健医療計画の見直 しには、是非これを生かしていきたいと考えております。以上で説明を終わらせていた だきます。 ○谷口医政局指導課長  ありがとうございます。議論は一括して行いたいと思いますので、引き続いて高知県 さん、よろしくお願いいたします。                (パワーポイント開始) ○田上健康福祉部副部長(高知県)  まず最初に資料の訂正をお願いいたします。4頁のいちばん下の左のグラフのいちば ん下のところで、「地方公共団体」と書いてある所を、「公的医療機関」に修正をお願 いいたします。  まず最初に、本県は全国の中でも最も医療政策上の構造的な課題が顕著で、かつ先行 している県だと認識しております。いわば全国の縮図といえる県でもあると思います。 そういう意味で、先進県としての事例紹介というのはあまりなくて、むしろ、先行県と しての問題提起ということで、ご説明させていただければと思います。  本県は全国の2倍のベッド数を持っている県ですが、病床数は大変過剰な県というイ メージがありますが、県内で過疎と過密があって、過剰と不足が混在しているのが高知 県です。地域的な偏在、また、機能面での偏在が県内にございます。そういった意味で は、医療計画の中で、ナショナルミニマムをいかに確保していくかといったことが、1 つの使命だと思っております。もう1つは、機能分担と連携をして、効率的な質の高い 医療を提供できるようにしていくというのが、計画の本旨かと考えております。ただ、 これまで私どもがずっと計画にタッチさせていただく中で、その実効性を担保するもの がなかなかないということで、やはりこれを本当にやっていくためには、一定権限であ ったり、財政的な裏付けであったりということがしっかりないとできないなと考えてお ります。  本県の特徴を、サッカーにたとえてご説明してみたいと思います。急性期から慢性期 にパスをする。慢性期から今度はゴールにシュートをする。ゴールは在宅、居宅という ことかと思いますが、本県の特徴を見ると、特に急性期の選手が弱い、選手が不足して いるところがございます。  もう1つは、ゴールポストの前で、慢性期で選手がいっぱいたむろしている状況にあ りまして、ゴールがどんどん狭くなっていくものですから、蹴り込んでも球がゴールに 入らないということで、慢性期のところで選手がパス回しだけをしている状況になって しまっている。これが本県の構造かと思っております。  それでまず1点目の急性期のところですが、特にある圏域の中では、選手をしっかり 確保しなければいけない。連携、パスどうこうという以前の問題、患者さんの選択以前 の問題がありまして、やはりここではナショナルミニマムを確保するためにどうするの かといったところを本格的に考えなければいけない。もう1つは、公的医療機関が急性 期の役割を担っているのですが、最初のキックをするリードオフマンとしての範を示し ていただかなければならない。その部分が、経営問題等いろいろあって、本格的にそれ に乗っていただけないという問題があります。  次に慢性期のところへ行きますと、特に土佐清水市とか室戸市などではすでに起こっ ておりますが、急性期をやりたくても医師の確保ができない。また、経営面でなかなか 成り立たないということで、民間病院が急性期から撤退して慢性期ばかりをやろうとし ます。そうすると、非常に大きい問題がありまして、そこを何とか急性期のほうにまた 回復期に移行させていく、そういったインセンティブをどのようにしたら働かすことが できるのかということがございます。  もう1つ、やはりゴールが狭くなって蹴り込めないというのがいちばん大きな問題 で、いかにしてゴールを広くするのかといったことがあります。これは医療福祉だけの 問題だけではなく、総合的な政策として、ゴールをいかに広げるかがないと、慢性期の ところでのパス回しをしているところの問題は解決できない。これが本県の大きな問題 点であろうかと思います。  それで、まず最初に本県の特性を説明した上で、若干ですが本県の取組を2つご紹介 させていただいた上で、いま申し上げた課題について順次説明させていただきます。  本県は大変少子高齢化が進んでおりまして、典型的な過疎・過密がございます。経済 基盤が大変弱くて、家族・地域の崩壊がどんどん進んでいっております。こういった問 題がバックグラウンドにあって問題が大きくなってきています。大変高齢化が進んでい て、10年先行しております。人口の集中では、約4割が高知市に集中していて、中央圏 域に81万人中の57万人が集中しています。  周産期医療の取組を1つ紹介させていただきますと、1981年から10年の間に、周産期 死亡率のワースト1位と2位が5回もございました。何とかしなければならないという ことで、新生児搬送とか母体搬送等の仕組みをつくって、近年になってこの赤のところ が全国順位ですが、かなり改善してまいりました。その主たる要因は、周産期医療協議 会を設けて、要は医療機関同士のパス回しをうまくすることができたということかと思 います。特に新生児搬送を初期にやったのですが、母体搬送を強力に推進してきたこと が大きな要因です。  出産については大変大きな問題が出てきておりまして、年間10例以上分娩を取り扱っ ている施設がこの5年間で64%に激減しております。それから、安芸・高幡圏域といっ た所には産科医が2人しかいない。医師を集約してどうこうという議論がありました が、集約以前の、いないという深刻な問題がございます。やはり安心して子供を産み育 てることができるという意味では、やはり単に医療対策だけではなく、総合的な少子化 対策として、国を挙げてこの問題に懸命に取り組んでいく必要があるのではないかと、 大変危機感を感じております。  次にへき地ですが、へき地医療の仕組みづくりの中で大切なことは、従事する医師が 安心して行ける仕組み、それから行って、そこで魅力ある仕事ができる、そういうもの をつくっていくことだと思っております。その安心づくりのために、本県ではへき地医 療協議会というものを設け、また、へき地医療支援機構等の仕組みをつくってやってお ります。現在、自治医科大学の卒業生、義務内の人が19名勤務しておりますが、それ以 外に義務を過ぎた人が17名、高知医大から3名の方にこの中に加わっていただいており ます。要は魅力あるものをどのようにしてつくっていくのかということかと思います。  へき地医療の魅力と安心ということで、こういう情報ネットワーク化の中で、診療支 援とか症例検討会ができる、そういった安心をつくっておりますし、テレビ会議によっ て患者紹介をしたり、ヘリ搬送をしたりといったことができるようになっております。 それから、これからへき地医療を担っていただく医師の養成ということで、へき地の診 療所・病院を中心として、県内の管理型の5つの病院に参加いただいて、地域保健医療 研修をへき地でやっております。  次に本県の課題ですが、一般病床数、医師数が大変偏在しているという問題です。ま ず最初に、本県はこの右上の赤にあるように、全国の2倍のベッド数を持っております し、在院日数は全国1位です。これだけ見ると、大変突出しているのですが、これを一 般病床ベースに分けてみると、このように安芸圏域と高幡圏域については、むしろ全国 よりも下回っているという問題があるわけです。ですから、一律に多いということでは なくて、その中を機能別に分けてみなければならないということです。  こうした圏域については、全国の500床未満の圏域を調べてみると、369圏域の中の15 %ございます。その中に、この2つの圏域があるわけで、決して特殊事例ではありませ ん。こういった所の急性期の医療をどう確保していくのか、ナショナルミニマムをどう 確保していくのかといったことが、連携云々以前の問題としてある。このことを是非ご 理解いただきたいと思います。特に経済効率論だけでいきますと、ますますこの資源は 偏在してまいります。現状の医療計画制度とか補助金の制度で、その偏在を是正しよう としても、なかなか歯止めがかからない。ナショナルミニマムを確保するためには、こ ういった偏在を解消するための何らかのインセンティブをもたせなければ、とてもでき ないのではないかということ。具体例を言いますと、例えば極論ですが、診療報酬を不 足地域では加算する、過剰地域では減算するといったこともあってもよいのではない か。  それから、思いきった人材確保の施策が要るのではないかと思います。このように、 安芸・高幡圏域の医師数を見てみますと、専門の医師が1人、2人といったような所、 こんな所で急性期の連携パスなどといっても、話にならないわけです。こういった現実 にどう目を向けるのかということが、大きな課題であろうかと思っております。  次に、国公立病院と医療計画ということですが、先ほど言いましたように、国公立の 病院が、やはりパス回しの最初のキッカーでありリードオフマンとして、しっかり役割 を果たす必要があると思うのです。そういうことで見てみると、本県の国公立病院の分 布はこのようになっています。全国と比べても、このような状況にございます。何を言 いたいかというと、急性期医療を担う国公立病院がリードオフマンとしての役割をしっ かり担っていただけるようにするためには、現在国立病院機構に対する交付金とか、地 方公営企業法に基づく自治体病院に対する繰入基準、こういったものと医療計画をしっ かりリンクさせていくことが必要かと思います。  お聞きしますと、15年に見直されて、次は20年に見直される。大変厳しい見直しにな るとお聞きしております。そういう意味でも、この医療計画とリンクさせるのだという ところをしっかりと位置づけていくことが、総務省に対してもご理解をいただく上でと ても重要ではないかと考えております。  次に、本県は全国一のベッド数を持っております。その状況ですが、これは少し古い データで申し訳ないのですが、なぜベッド数が全国の2倍かというのを調べてみます と、高齢化が進んでいますので、約1.2倍の人が入院します。これは当たり前かと思い ます。問題は、その1.65倍の平均在院日数、これを掛け算すると、約2倍になります。 要は在院日数が長いということが、主たる要因だということです。  本県の病床数を、この面積で大体ボリュームを見ていただければと思いますが、人口 割りで全国平均並みは右側です。大きな違いは、この医療型と介護型の療養病床のとこ ろ、ここが圧倒的に他県と違う。これが本県の特徴です。ですから、先ほど言いました ように、ゴールポストの前で、慢性期のところで、キッカーがたむろして、そこでクル クル球回しをしている状況にいまはなっておりまして、それが介護保険との間でもやっ ているのが、いまの状況です。  こういう状況にありますので、ここで問題提起ですが、この療養病床ということが、 1つの病院の中で、医療型の療養と介護の療養が併存してある。患者さんの立場から見 たら、全く理解ができません。それから、回復期のリハについても、一般病床にあり、 療養病床にもある。これもなかなか理解がしにくい。それから、介護3施設について も、その違いがいまひとつわかりにくい。このように、慢性期の療養病床について、ど う整理するのかということが、わかりやすくという意味では、これは大変大きい課題で はないかと思っております。是非ともこの療養病床をどう整理するのか、医療計画上ど う位置づけていくのかといったことの検討が要るかなと思います。  その上で、今たくさんこの医療の療養介護の病床におりますものを、回復期のリハ、 つまり在宅につないでいくところに転換していくとか、一般病床が不足している地域 は、一般病床に転換を促進していく政策、それから医療の療養、介護の療養から、むし ろ在宅居住系のサービスのほうにうまくシフトが図れないかといったところが、今後の 大きい課題であろうかと思います。ただ、先ほども言いましたように、いちばんの問題 は、ゴールが狭くなっているという根幹の問題を解決できない限り、この療養病床のと ころをいくら突っついても、問題解決が図れないといういちばん大きい問題がございま す。  この全国の2倍の本県のベッド数は、どのようにしてできてきたかということを、ち ょっと整理してみたのですが、このデータは昭和40年を100としたときの伸び率で示し ております。要するに、無料化の10年に、本県に全国平均の2倍のベッド数、全国一の 在院日数ができてしまったということです。無料化10年以降は、それなりに頑張ってい るのですが、もうここで出来上がってしまった構造を、いかんともし難い状況になって いる、これが本県です。  そういったことで、高齢者の数が大変多い、高齢者単独世帯が多い、それからいちば ん下にあるように、低所得者の人が多いといったようなことから、どうしても病院のほ うに頼ってしまう。その結果、医療費も全国でも高くなってしまうという構造的な問題 を抱えております。医療保険制度では、その供給と需要に対して、それぞれ診療報酬と か、さまざまな権限、予防対策、自己負担等々あるわけですが、この枠で囲っていると ころについては、基本的に都道府県の権限というのはほとんどないわけです。予防のと ころが市町村保険者になっている。  そういったことに加えて、さらにいちばんの問題は、この医療保険制度の枠の中だけ でなく、枠の外のバックグラウンドの背景要因、これに対してどう手を打っていくのか ということがないと、本当の意味の構造的な解決にはつながっていかないのではない か。社会経済上の問題、家族の問題、地域の問題を病院が抱え込んでしまったわけで す。それを地域に戻すためには、家族機能とか地域機能というものをどう再生していく のかということがない限り、問題解決は図れないということです。せっかく連携パスワ ークがうまくなっても、ゴールが狭かったらパスが滞ってしまいます。そういう意味で は、多様な居住の場づくり、そこで医療や介護等のサービスは、その必要な条件の一部 分として、在宅サービスが提供される。そういう仕組みがこの部分を、厚生労働省の政 策だけでなく、国を挙げた総合的な政策で打てない限り、長期の入院のところの問題解 決は図れないというのが、やはりいちばんの構造的な問題だと考えております。  以上で説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。                (パワーポイント終了) ○谷口医政局指導課長  ありがとうございました。それでは広島、高知、両県の説明に対して、ご質問、ご意 見ございましたら、どうぞご自由にご発言をお願いできますでしょうか。 ○梶山福祉保健局技監(東京都)  広島の例は、御調町の例、尾道の例、医療関係者の方は知らない人はいないし、多く の国民の間でも大変関心の高いシステムですが、やはり山口先生と片山先生という、非 常に優れたキーマンがいらっしゃる。そういうことがこの2つのモデルが動いたいちば んのポイントなのかなと思うのですが、広島の場合は、この2つのモデルを、ほかの県 の別な地域にどのようにして広めていこうとするのか。そこのところをちょっとお聞き したいのですが。  東京も、高知の先生のお話にもありましたように、非常に格差が大きいのです。医科 大学が13もありますが、1,000キロも離れた小笠原まで抱えています。そういった意味 では非常に医療格差が大きいし、厚生労働省のほうは、行政が主導権をもって何とかい ろいろなシステム、仕組みをつくっていこうというお考えだと思うのですが、いろいろ な格差がある中で、果たして行政がどこまで仕組みづくりに深く関われるのかというの は、大変疑問なものですから、そういうキーマンがいらっしゃる意義というのは、非常 に大きいと思うのです。キーマンがいない所は、広島県ではどのようにしてそのシステ ムをつくっていこうとしているのかについて、お聞かせいただければと思います。 ○新木福祉保健部長  実は我々の悩みもそこにあります。2つの地域とも、非常にリーダーシップ溢れる方 がいるというのが、これができてきた大きな力だと思っておりますし、また、これを全 県広島ほかの地域に広めようとしても、なかなかこういう方がいないということが、広 まらない理由の1つにもなっているのかなと思っています。  ただ、若干ですが、やはりほかの県内の地域においても、この2つの地域をモデル に、さまざまな研修会とか、いろいろな会合で、いかに地域包括ケアシステムをつくっ ていこうかということで、例えば国保の直進の会でやったりとか、首長さんが集まると ころでお話をしたりとかということで、だんだん広まっておりますので、こういう事例 紹介というのは、どこの地域でも、特に中山間地など医療資源の少ない所では、お年寄 りのケアを誰が担うかということで困っていますし、都会部は都会部で、やはりぶつ切 れの状態で困っております。みんな問題意識はもっておりますので、若干広がりつつあ るのかなと思っております。  ただ、これを今後もう少し根づかせていくには、いま地域包括支援センターとか、法 改正で制度化されるところが、大きな力を果たしてくれないかなと、逆に果たせるよう に、我々も市町村と協力してやっていかなければいけないかと思っているところです。 新しい介護の制度が、これに寄与するのではないかと思って、いま努力しているところ です。いずれにしろ、医師会のほうでも、医療のほうでも介護のほうでも、県内では問 題意識は大変強くもっております。そういう意味では、広まっていくのではないかと、 少し希望的な期待はもっております。 ○堀益医療対策室長  具体的な行政としての取組の事例を2つほど紹介させていただきますと、先ほど地対 協の話をしましたが、4頁をご覧ください。そこの上から3番目に、B01の地域ケア促 進専門委員会というのがございます。これは委員長は片山先生なのですが、ここは8年 前から、県内4箇所で在宅ケアの講習会を、医療関係者を対象に開いておりまして、毎 回、大体100人を下ることはございません。100人以上の方々に参加していただいており ます。ですから、8年間で2巡くらいしているわけです。それでもそれだけたくさんの 方に参加していただいているということは、徐々に在宅ケア、在宅医療の重要性が地域 の関係者の間に少しずつ浸透しているのではないかと思っております。  もう1つ、我々が取り組んでおりますのは、やはり地対協の関係を活用させていただ いているのですが、B02の「緩和ケア推進専門委員会」というのがございます。この活 動をバックアップするために、私ども、15年から3年間、各圏域に緩和ケア地域連絡協 議会を立ち上げて、そこに地域の、緩和ケアですから、在宅医療が中心になると思いま すが、そういった関係者の方に参加していただいて、まずその圏域でモデル事業に取り 組んでくださいと。具体的に、末期がん患者を対象とした、地域全体で支えていくため のモデル事業をやってくださいということを、3年間実施してまいりました。  その中心になって指導していただいたのが、昨年運営を開始した、県立広島病院の緩 和ケア支援センターです。そこに専門の看護師等がおりまして、地域に出向き指導を行 っております。そういうことで、彼女たちの話を聞きますと、徐々にではあるけれど も、地域にそういう芽が出てきつつある。  ただ、ご指摘のように、地域差があることは否めないところで、いかに地域間のバラ ンスをとっていくかというのが、これからの我々の課題ではないかと思っております。 ○土居理事兼健康福祉部技監(静岡県)  御調町はもうシステムとして完成して、相当年数経っていると思うのです。この1人 当たりの介護保険給付費、それから1人当たりの老人医療費、こういった経費をかけた 結果、アウトカム指標としてはどういう成果が挙がっているのでしょうか。それをちょ っと教えていただきたいと思います。 ○堀益医療対策室長  いま具体的な数値は持ち合わせておりませんが、山口先生がいろいろ調べられたデー タでは、寝たきり老人の数が全国平均に比べて、たしか10分の1でしたか、くらいに下 がっているという実態です。 ○土居理事兼健康福祉部技監  後でまた詳しい資料をお示しいただきたいと思います。やはりこの老人医療費なり介 護給付費は決して安い金額ではないですね。これだけの予算投下をして、それでアウト カム指標の結果がどうかというような議論のためにも、そういった資料をいただければ と思いますので、お願いします。 ○谷口医政局指導課長  広島県さん、申し訳ございません、後ほどで結構ですので、私どものほうにいただき ましたら、各県のほうにお配りしたいと思います。ほかにいかがでしょうか。  東京都からのご指摘のように、率先垂範といいますか、先導してやられるキーマンの 方がいらっしゃるような形で、全国でもいくつかのモデル的なものというのは、確かに ございます。それをいかに自分の所の地域の形に合わせて普遍化していくかということ については、自治体の皆様それぞれお困りになっていらっしゃるということもあります ので、後ほどですが、全国各地のモデル的な事例を束ねたものがありますので、またそ のときにでもご意見をいただければと思います。  ほかにご意見ございますか。ではまた後ほどでも結構ですので、先に進ませていただ ければと思います。それでは資料の3です。医療連携の事例についてですが、私どもの 指導課のほうからご説明させていただきます。 ○針田医療計画推進指導官  これまで、各県を通して、もしくはインターネット等でいろいろな情報を集めさせて いただきました。そういったものを、前回いろいろな所でお示ししたりしているのです が、この10月末の時点で、私どもがとりまとめたものを、直接いただいたり、インター ネット等から入手した情報等ありまして、まだ精査しなければならないところが多々あ ると思うのですが、現時点でとりまとめたものをお示しさせていただきたいと思いま す。  表紙をめくりますと、連携の形ですが、診療所と病院の連携、病院と病院の連携、病 院から診療所の連携、医療機関と介護施設の連携、在宅の連携、いろいろな形がありま す。地域の実情によって、地域の医療資源の状況によって全然対策が異なりますので、 これをそのまま他の地域に適用するのは困難だとは思うのですが、とりあえず良いとこ ろ、こんなコンセプトとか、こういうやり方があるのだということをご理解いただく参 考になるのではないかと思いまして、まとめてみました。  また、事務局で大ざっぱに、(1)から(6)まで分けましたが、これもそのままスッポリ 行っているわけではなくて、かなり重複しております。ただ、資料作成上、ある程度の 括りが必要だと思いまして、暫定的にこのようにまとめましたことをご了承いただきた いと思います。  1枚めくりまして、まず(1)として、「診療所が中心となった医療連携を構築してい る例」として、参考に宮城県の古川市立病院を出しております。これはインターネット から取りました。これはいわゆる病診連携、前方連携といわれることがあろうかと思い ますが、かかりつけ医の先生と地域医療連携室などが連携をとりあって、患者さんの利 便性を考慮しながらやっている例です。おそらく、全国的にたくさんあるかと思ってお ります。  また、病診連携Wの会。名古屋市医師会病院連携システム、これは、かなり以前から 連携をとられておりまして、地域の先生方と病院が連携をとって、入院ベッドの有効利 用とかケアについて、両方が相談しながら患者さんを支えていくというシステムとし て、かなり実績のあるところです。  山口県におかれましては、徳山医師会病院という所は、オープンシステムがかなり発 展といいますか、主治医体制とか24時間の入院体制、地域と医療機関が連携をかなり密 にとりながら支えている例として挙げております。  続いて、イーツーネット(医2ネット)、これは静岡医師会と静岡市立静岡病院の連 携の例ですが、疾病別の連携で、糖尿病、C型肝炎、気管支喘息、虚血性心疾患・心房 細動、脳梗塞等々疾病別に連携をとって、病院の先生とかかりつけ医の先生が、両方で 支え合うシステムになります。そのポスターの写しを付けております。次の頁も、まず いくつかの疾患から始めているのですが、このような連携をとりながらやっているとい うところをお示ししております。  続いて(2)ですが、病院が中心となっている医療連携。これも厳密なスキルはないの ですが、あえてこちらの事務局で判断させていただいておりますのでご了承ください。 実際は違うのかもしれません。例えば、東京大学の場合ですと、国立大学として初めて 地域医療連携に取り組んだということで、現在は数多くの大学病院で取り組まれている と思いますが、そのような部署を設けて、大学がとっている例として挙げております。  NPO法人西東京臨床糖尿病研究会、東京都内ではいくつかの地域で、かなりしっか りした連携体系がとられているというように聞いていますが、これは多摩地域というか 西東京地域における糖尿病の研究会で、いろいろな研究会、勉強会等々をやりながら、 地域の患者さん方を支えている例として挙げています。  また、りんくう医療ネットワーク、これは大阪府にありますが、地域の医療機関と病 院が協定書を締結して、医療機器の共同利用や研究会、検討会などを行っている。そし て、地域全体で取り組んでいくのだということを前面に立ててやられているというよう に聞いています。  神戸西地域ですが、西神戸医療センターと地域の医療機関が連携して、さまざまなカ ンファレンスを共同で開催しています。中津市民病院に関しましては、NHKのテレビ 等でもやっていますが、地域一体型の医療を提供しています。  わかしお医療ネットワークは、千葉県東金病院がかんでいる電子カルテを積極的に活 用したシステムですが、このシステムを使って糖尿病の診療について連携をとりなが ら、在宅介護者たちにおいても専門的な医療ができる体制を整えるようにいま努められ ています。併せて、このシステムを使いながら在宅ホスピスを支援していくシステムを いま進められているということです。  7頁は道東画像ネートワークで、これは北海道の道東地区の脳神経外科領域の連携の 話です。専門性の高いドクターがいない地域においても、遠隔診療とITを活用した連 携をとりながら、地域の医療を支えているという例として挙げさせていただいていま す。  Net4U(ネットフォーユー)は、山形県の鶴岡地区で行われている4つのユニッ トの連携だと聞いております。病院・診療所・介護福祉施設・検査センターといったい ろいろな所が連携をとって、電子カルテを積極活用しながら地域で患者を支えていくシ ステムをやられています。  3つ目として、病院・診療所・介護等の幅広い連携ということで、先ほどご説明のあ りました御調のお話、次の頁で尾道の話を入れていますが、ここは省略させていただき ます。  (4)の在宅医療を支える医療連携の事例ですが、これは特異的と言いますか、県下全域 でやっているのは宮城県の行政機関ですが、地域の保健福祉事務所と積極的に絡みなが ら、病院主治医・かかりつけ医・訪問看護ステーション・在宅看護支援センター・薬局 等のさまざまな機関が連携をとりながら在宅医療を進めていくもので、数年前から積極 的に活動をされていまして、年々実績を上げられています。  12頁は前回説明のありました静岡県の事例ですが、イエローカード・システム(在宅 患者相互連携システム)とグリーンカード・システム(在宅医療支援看取りシステム) が、非常に素晴らしい事例と思いましたので入れています。  (5)のその他ですが、どのようなシステムがあるかということで、診療科等々別のも のを入れていますが、周産期医療システムは、さまざまな県で実際に行われているシス テムでして、先ほどもお話がありましたが、地域で地域の実情に応じて体制をつくって います。また、産科オープンシステムも静岡県の医療計画の所から抜粋させていただき ました。県西部浜松医療センターにおける産科オープンシステム、出産までの健康診査 は産科の診療所で、出産については浜松医療センターで行うというシステムが動いてい ます。  北海道中空知地区ではいくつかの病院が連携をとり合って、ドクターが特定の医療機 関に集まってほかの医療機関を支援する、外来医師を派遣するシステムを行う産婦人科 のセンター化が行われていると聞いています。  小児科領域におきましても、日本小児科学会がいろいろな地域の実情に応じて、地域 小児科センターのようなものを設置し、それを開業医やかかりつけの先生方と病院の小 児科の先生の連携するシステムとして、いまこのようなものをご提案いただいていま す。具体的には豊能広域こども急病センター、終夜型の4市2町により設置されたセン ターが、活躍していると聞いています。  その他の分野として、精神障害者の領域においても、地域連携、地域内の医療機関、 授産施設、地域生活支援センター、行政が連携をとって支援している例。また大規模治 験ネットワークが、地域におけるネットワークを構築している例などがあるということ です。  次の頁は、山形県の置賜公立総合病院の件ですが、これは病院自体をネットワーク化 というか再編して効率化を図ったという事例です。また、北海道地域では、北海道総合 保健医療協議会が、地域でどのような医療体制がいいのかを広域連携を含め検討を行っ ています。  最後の6番目ですが、地域連携クリティカルパスというものの紹介ですが、国立病院 機構熊本医療センターにおける疾患別の病診連携システムのモデルと、次の頁のシーム レスケア研究会、これは特定の医療機関ではなく、地域の医療機関が連携をとるクリテ ィカルパスの1案を示しています。前回説明があったのでここは省きますが、いくつか の病院が連携をとりながら、患者さんにとっては地域から全体の医療機関のようなシス テムを作っていく、シームレスの医療ワークへの形を作っていく1例として示していま す。また、福島県の竹田綜合病院やほかの地域でも、例えば循環器の疾患において、か かりつけ医と病院の両方でやっていく連携パスというものを作られています。  次の頁は高知県ですが、疾病別、9疾患につきまして、なっとくパスというもので病 院の先生とかかりつけの先生が連携をとるシステムを構築しつつあるということです。 個々の医療機関の試みとしていくつか、横浜医療センターやNTT東日本関東病院、な るみやハートクリニックという診療所の方、沼津市立病院、済生会熊本病院などでも試 みがされているということです。  最後になりますが、八戸の事案を付けさせていただきました。これはもともとそのよ うな連携パスがない所で、地域の医療機関、行政機関が連携を作るためのシステムづく りをしましょうということで、みんなが集まって相談し合って作っていこうという事業 が、いま進められています。地域で患者さんを支えるのだと、決して医療機関がたくさ んあるという地域ではないというように聞いていますが、その中でいかに有効的にやっ ていったらいいのかということを、いま検討しています。次の頁は具体的なスケジュー ル表で、八戸地域と下北地域の2箇所で検討が進められていて、まさにいま始まったと ころです。最後に実施要綱を添付させていただきました。このような形で活動が進めら れているといった事案です。  全国いろいろな所から集めさせていただいた情報でして、いちばん基になるところを すべてお話できたかどうかはわかりませんが、このような事案でいま研究されている と。もしほかにもありましたら、是非ご紹介、ご案内いただけると大変助かりますの で、よろしくお願いします。 ○谷口医政局指導課長  大変雑駁な説明で失礼しましたが、先ほど申しましたように十分まだ拾い上げていな いということもありますし、各地においてお示しをするには、提供のフォーマット等を まだこれから整えなければいけない部分もあろうかと思います。いずれおそらく参考に なるものはかなりこの中にあろうかという感じもしていまして、できるだけ早く都道府 県のほうにもう少しわかりやすい形でお示しをしたいと思っています。  ただ1点、こういった資料からうかがえることだと思いますが、先ほど東京都のほう からご指摘いただきましたように、従前の専門的なモデルというのは必ずやはりキーマ ンがいらっしゃいました。キーマンがいないとなかなか進まなかったということは事実 だろうと思うのです。例えば山口先生に30年前から一生懸命進めていただいて、日本全 国にだいぶ地域包括ケアなどが浸透してきました。その結果かどうかというのはちょっ と言いすぎかもしれませんが、今日お示したようなものにかなり結実しているのではな かろうかと、私は考えています。  では、キーマンがすべているのかというと、私はキーマンはいると思いますが、かつ てのような本当にカリスマ性の高いキーマンが、必ず事例の1例1例にいるかという と、必ずしもそうでもないような感じがします。その意味からすると、かなり地域にお いて従来のやり方が参考にされつつ、こういった形で徐々にではありますが、できつつ あるのではないかと思います。できるだけ今後も幅広く拾って参考に寄与したいと思い ます。各自治体のほうでそれぞれ自分の所にいちばん近いものがあるのなら、これをや ってみようというようにお考えいただければ、むしろそれでいいのではなかろうかと考 えています。こういったことを含めまして、何かご意見、ご希望、ご質問等がございま したら、ご発言をいただけますでしょうか。 ○木村健康福祉部長(石川県)  いまキーマンの話が出ましたが、キーマンがいれば非常に物事が進んでいくというの は御調や尾道の事例を見ても明らかですし、そういう方々の育成も必要だと思います。  しかしその一方、キーマンがいなくても動いていくような仕組みづくりをしていくこ とも重要なことであると思います。その仕組みづくりの1つのツールとして、今後は地 域連携パスというものが大きなツールの1つになってくると思います。先程、標準化モ デルとしての青森県の事例を見まして、一部の地域ではこのような動きが進んでいると いうことをご紹介いただきましたが、この標準化については国のほうでも、もっと全体 的な標準化モデルを今後担って作っていき、それを紹介していくこともあってもいいの ではないかと思いますが、その辺りのお考えはいかがでしょうか。 ○谷口医政局指導課長  まさに私どもとしても、できればそういった標準化モデル的なものをお示ししたいと 考えていますが、そこが地域差というか地域の特殊性という部分にどこまで抵触するか という感じだと思います。あくまでご参考にしていただくようなものというのはお示し をしたいと思いますが、それを決して押しつけるということではなく、自由に改変した り、モディファイしていただければ、そういったものとして参考になるようなものであ れば、是非我々としてもお示ししていきたいと考えています。 ○松谷医政局長  できるだけ国としても援助する仕組みを考えたいと思っていますが、これは非常に地 域性の高いものですから、従前のように、例えば国が一遍のモデルなり通知をして、そ れで、はい終わりというわけにはいかないと思っています。むしろ集まっていただい て、こういう形式の事例紹介をお互いにして、1つでも推進的な参考になることがそれ ぞれ出てくるような、そういう場の提供などが国の役割かなと思っています。国として はそれをもちろんとりまとめたいと思いますが、国が何か有識者を集めてモデルを作っ て配置しておしまいというような形ではなくて、もう少し都道府県の人が集まる場を提 供し、そこでそれぞれの特徴あるものを1つでも2つでも出していただいて、それをお 互いに共有していくような仕組みができないものかといま考えています。 ○土居理事兼健康福祉部技監  いろいろなモデルを見まして、もちろんキーパーソンは大事なのですが、これを普及 ということになると、やはり信頼できる組織で、しかもそれは単純的、単層的な組織で はなくて、重層的な組織で、行政の役割と言うか、それは地域地域でどういうプレーヤ ーを演じるかというのは違うとは思いますが、重要なのは誰が責任を取るか。最終的な 責任は行政にあるという認識の中で、それぞれのスタープレーヤー、ある所は地域医師 会であったり、NPOであったりという形で、地域のリソースに合致した施策展開とい うのが、いわゆるキーパーソンに頼らないシステム展開だと思います。  ところが、いままで行政がやっていたのはどちらかというとインプット一点張りで、 アウトカムに対する責任がなかなか希薄だったのです。  今回の静岡県の医療計画では、地域の保健所が進行管理の責任を持ちますよと、進行 管理の必ずしもリーディングエージェンシーではありません。しかしながら、責任は行 政にありますと、それを明確にして、結果はどうなるかわかりませんが、そのような検 討はうちの県ではなされましたので、ご報告だけいたします。 ○梶山福祉保健局技監  厚生労働省に調べていただいただけでも、全国にこれだけいろいろなモデル的なケー スがあるわけです。それぞれの地域の歴史や住民の方の考えや医療の資源のあり方に深 く関連したもので、どのシステムがいちばん良くて、どのシステムが悪いということ は、決して言い切れないです。問題は、やはりこういうシステムがあることを患者さん の多くが知らない。例えば私が糖尿病の患者で、私の地域のシステムの先生なり病院に たまたま受診したと。そうすると、そこでは糖尿病の管理なり、脳卒中のあとのリハビ リテーションの管理は、ある程度そこでうまくコーディネイトしていただけるわけで す。  例えば、隣にいる彼女が同じ病気になっても、全然そのシステムに加わっていない医 療機関に行ってしまうと、たぶんその結果というのはずいぶん違います。ですから、い ろいろなモデルシステムが動いていることを、多くの国民の患者さんなどいろいろな方 々にもっと国なり都道府県はPRしなければいけないし、いろいろなモデルシステムが 出てきていただいていいのだと思うのです。そのモデル的なシステムをどうやったら広 げることができるのかということと、モデルシステムに入っていない医療関係者が、ど うやれば入るのか。そのようなネットワークのシステムに、患者さんも自分でシステム を探して、診療所なり病院に行ったほうが、結果的に早く治るし医療費も少ない。医療 機関の先生方もそういうネットワークに入っていたほうが、多くの患者さんが来て経営 的なメリットもあり、診療の技術も上がるというような仕組みが何とかできないのかな と。  例えば都道府県がもっともっとPRすることも必要でしょうし、国は診療報酬を、何 かネットワークで診療をしているような医療機関の所は、少し診療報酬を高く取れるな ど、どういうものがいいかよくわかりませんが、もっと知ってもらうことがとても大事 なのかなという気がするのです。それには土居技監がおっしゃったように、行政がいま までは場を提供して、さあ、皆さん何か話し合いましょうということだったと思うので すが、行政としても権限があるわけではありませんし、やはりアウトカムということも 含めて、最後の責任をどう取るのかということを問い詰められますと、はっきりした答 えが出せなかったわけです。その辺を都道府県としても、何か関係者を集めてやる場合 には権限なり、それなりの財政的な裏付けなりをお考えいただければと思います。 ○天野医療指導課長(福岡県)  先ほど高知県のほうから、診療報酬のご提案がありました。例えば緩和ケア病棟を1 つ見ましても、これは病棟ですから20床以上。これになると緩和ケアは実施でき、診療 報酬も加算される。しかしながら、一般の診療所が緩和ケアを行うといっても、これは 19床以下ですので緩和ケアの報酬加算がない。これが現状です。そういった中で本県で も地域において、非常に頑張っておられる診療所は、緩和ケアに一生懸命取り組んでお られる。訪問看護ステーションなどと一緒になってやられているのですが、制度上そこ は制限がある。  そういった問題や小児科や産科の問題など、これからの医療計画というのは、どちら かというと、いままでの拠点整備や体制整備的なものからシステムを効率的なものに変 えていく、もっと患者が選択できる体制にしていくことであろうと思います。そのよう に誘導していくためには、政策誘導する最大の武器が診療報酬でありますから、もう少 し細かいレベルで、地域に応じた医療行政を誘導できる手段として、何か診療報酬の加 算制度などについて、都道府県に少し権限を持たせてやっていくことが考えられると、 非常にありがたいなと思います。 ○谷口医政局指導課長  いくつかの県からのご指摘がありましたが、アウトカムに対する責任や、実際にこう いったモデルがすでに日本全国の中であり、それをいかに進めるか。ドクターの参加の 仕組みは、それぞれ最終的には都道府県の知事さんの権限と責任というところに、かな り集約されてくると思います。それがまさに新しい医療計画のポイントですので、まだ ご意見があるかもしれませんが、とりあえず資料4につきまして、若干いまのご質問等 に対する答えも踏まえながら、説明をさせていただければと思います。 ○山下医政局指導課長補佐  資料4ですが、今年8月に社会保障審議会の医療部会で、新しい医療計画はこのよう な方向性で行くべきだという指摘をいただきました。それを踏まえて、実際に県の方々 に医療計画を作成していただくわけですが、国としてどう考えているのか、どのように 進めるべきかというポイントを、資料4にまとめさせていただきました。この場を通じ て提案させていただいて、すでに作っていらっしゃる皆様方のご意見をいただきながら 、より良いものにバージョンアップをしていこうと思っていますので、そのようなベー スで聞いていただきたいと思います。  1頁の「新しい医療計画のポイント」ですが、計画の立案作業、また作成、そして医 療計画に記載された事業を実施する。そして政策評価をするという流れに沿って、医療 計画というツールを使って、政策の流れを確立していくことを謳っています。それぞれ 1、2、3、4、5ということで、まず1で把握をし、2で把握を基にして、それぞれ 医療連携体制をどうするべきかという構築をしていただく。そして医療計画に明示して いただく。3で、例えばそれを5年後にどのように構築していくのかという数値目標を 作っていただく。4で、その数値目標を実際に達成するために県、医療関係者、または 医育機関が、それぞれどういう役割で、どのように責任を持ってやっていくのかを書い ていただく。最後に、次の医療計画の改定につながるような評価をするという流れに沿 って書いています。それぞれごとに具体的にどうなのかを書いています。  2頁の把握の場面ですが、県において医療機能の調査や患者の調査を実施して、医療 サービスの供給、また患者の需要動向を把握していただく。また、それらについて客観 的な情報として医療計画に明示する。その際には全国的な平均の状況とも比較しながら 明示するといいのではないか。  具体的に、新しい医療計画に盛り込める指標としては、従来の病院の数や診療所の 数、また、病床数や医療従事者の数だけではなくて、検診の受診率、主要な疾病ごとの 総入院日数、また在宅での看取り率や連携クリティカルパスの普及状況についても、や はり把握することをやっていただきたいということ。  3頁は、参考までに連携クリティカルパスの内容なので飛ばしまして、次の4頁目 で、それを把握した後、それぞれがんの対策、脳卒中対策、急性心筋梗塞対策、糖尿病 対策、小児救急、周産期医療、救急医療、災害医療、そしてへき地医療といった主要な 事業ごとに、各医療機関の医療連携体制の状況を医療計画に明示していただく。もちろ ん国としては9つの事業なのですが、県において独自の事業として、別に明示すること もできます。  また、それぞれの医療連携体制の状況は、ややもすると二次医療圏ごとに作ることに こだわることがありますが、それをちょっとなしにして、特定の区域ごとではなく、が んならがんの事業、また小児救急なら小児救急ごとに医療連携体制に関わる医療機関の 所在地、そしてその医療機関の医療機能、それには、医師の状況や保有する医療機器、 また具体的な手術件数などを医療計画上明らかにしていただきたい。そして、主要な事 業ごとに医療連携体制の医療機関の役割としては、患者の視点に立って、医療機関相互 に協力し、また医療の質での切磋琢磨をしていただき、患者が安心して在宅で医療サー ビス、介護サービスを受けられるように、最終的に整備していただきたい。また、退院 に際して、他の医療提供者あるいは介護提供者に対し、これまでやってきた医療機関の 医療サービスを次に引き継げるように、実施体制の整備も検討していただきたいという ことです。  さらに、高度・専門的な医療など通常では継続的な対応が困難な医療で、県全体をカ バーして医療連携体制を支える医療機関についても、やはり明示をしていただきたい。 ここで〜線の四角の中で留意点を書いていますが、医療連携体制の構築は、やはり構築 が目的というよりは、そのプロセスで地域の医療関係者が自主的な協議のもと、患者の 視点に立って、どうあるべきかということで役割分担の合意を形成するというプロセス が、非常に大事だと考えています。例えば、がんはがんの医療連携体制でしか診ないと いうような形で、患者の動きを統制するものではありません。逆に医療計画というツー ルを通じて、それぞれの医療の、がんならがんの医療機能の情報が、ちゃんと客観的に わかるような形にしていただけないかと。さらに、今後、国としても居宅系、居住系の サービスで必要な医療を受けつつ生活を送るという選択が可能となるような体制を、介 護保険制度とも連携をとりつつ推進したいと考えています。  5頁と6頁は、具体的にどういう形で医療計画上それぞれの医療連携体制の機能を明 示するのかという例示です。これは医療機関のリストとして、例えば脳卒中の場合です が、救急医療の機能を有する地域の医療機関の群が、例えば○○病院や△△病院がある という中、例えば△△病院の場合についてはこういう医療機能があるのだということ が、それぞれ救急医療の機能を有する医療機関ごとに、その機能が明示されること。さ らに脳卒中の場合は、回復期リハビリの機能の場合はこうだ、療養医療の場合はこうだ ということで、それぞれの機能に応じた医療機関はどこに何があるのか、また、それぞ れの医療機関に医師やPT、OTの数がどれくらいなのかがわかるようにしていただき たい。  6頁は、脳卒中の患者の家の周りにある医療連携体制になっている脳卒中に関連する 病院や診療所はどうなのかをマップ上で表し、同じように病院名、所在地、かつその医 療機関が有する医療機能をきちんと明示することをイメージしています。  7頁は、把握したあと、次に5年後にどのような望ましい県の医療提供体制を実現し ていくのかということで、数値目標を設定していただきたい。その数値目標というの は、ある意味政策的な意味合いがありますが、1として、地域ごとの医療連携体制づく りが図られれば改善されることになる、例えば脳卒中の年間総入院日数をどう短縮する のか、また在宅復帰率をどう向上させるのか。2では、地域での連携状況として地域連 携クリティカルパスの利用状況。3として、在宅医療の体制が図られれば改善されるの だということで、在宅での看取り率がどれだけ向上するのかということ。4として、健 康づくりの意識が高まれば、医療の提供体制はよくなるのだということであれば、健診 受診率をどう向上させるのか、どれくらい向上させるのかといった設定ができるのでは ないかということです。  8頁は、数値目標の達成に向けて各都道府県、医療関係者、医育機関など、それぞれ どういう役割と責任があるのか。具体的な数値目標については、(1)いつまでに、(2)誰 がどのような役割で、(3)どのような方策、これは要する費用も含め、達成させるのか ということを医療計画に明示する。  5として、それを政策評価をするということで計画の目標年、これは中間的な目標を 置くこともあると思いますが、達成状況を評価して、全国的な状況も勘案しつつ、また 次につながるような新たな目標を設定する。あまりにも全国平均を下回る分野があり、 これまでのやり方ではよくないということであれば、途中で改善の方策を検討すること もあり得るのではないかということです。  9頁は、これらを県の方で一方的にというわけにはいかないと我々としても思ってい まして、新たな医療計画の作成については、国、県、医療関係者がそれぞれ共同作業と して考えたいということです。国が果たす役割、県が果たす役割、医療関係者が果たす 役割が縷々書いてあります。中身につきましては、国が果たす役割としては、まず医療 機能調査をやっていただくための指標としてどういうものがあるのかという提示をす る。また、全国的にも望ましい保健医療提供体制のために、数値目標というものがどう なのかを提示させていただく。また、医療の連携体制に対する具体的な支援や実際に計 画に携わっていただく方々の養成などについても関わっていきたいと考えています。  県のほうにつきましても、医療機能調査を通じて状況を把握するとともに、身近な県 の医療関係者との協議の場を設定していただいて、必要な望ましい医療連携体制の構築 に向けて、共同作業に、医療関係者に期待をしていただきたいということです。医療関 係者にもそれぞれ真剣に議論をしていただいて、患者さんの視点に立った利用連携体制 を考えていただきたい。  左下にありますが、実際に我々としても数値目標の達成に向けた県、医療関係者の努 力を全面的に支援したいと思っているし、実際に立てた目標に対して、県のほうでも達 成に支障がある場合、国に対して意見具申をし、国はそれに当然真摯に対応をしていく 流れを作りたいと考えています。  10頁は、新たな医療計画の実施に至るまでのスケジュールです。結論から言います と、いちばん下の平成20年度にすべての県において、一斉に新しい医療計画の部分につ いて実施をしていただきたいと考えています。では、その平成20年度までにどのように やっていくのか。今年までにこのような懇談会の場を通じて皆様方の意見を踏まえなが ら、新しい医療計画のモデルのようなものを作成させていただきたいと思っています。 また、来年度、国としても医療に関する基本方針として、全国共通でこのようなことを 把握していただきたいという指標や、国として何年後にこうしたいという数値目標を提 示するということ。さらに、県においても医療機能の調査を実施していただきたい。平 成19年度には医療機能調査の結果を公表し、医療計画の立案作業を県においてやってい ただきたい。また、国としても全国の医療機能調査の結果を公表して、全国的な平均の 状況についてを併せて公表したいと思っています。平成20年度からは新しい医療計画の 公表・実施ということです。  ここで1つ注意点ですが、これらについては下の※にありますが、現在はすでに各県 において、5年ごとのサイクルできちんと確立されているのではないかと思っていま す。ですから、今回平成20年度一斉にということについては、既存の基準病床数のカウ ントのスケジュールまで、全部変更してやってほしいということについては、我々はそ こまでは求めてはいません。今回説明させていただいたような新しい医療計画、それぞ れの事業についての医療連携体制の構築に向けたこれらについて、医療計画の一部見直 しということで、平成20年度からやっていただくようなスケジュールで考えていただき たいということです。  では具体的にということで、11頁の下の『』の所ですが、すでに平成18年度から新し い医療計画をやるという方々、これはこちらにいらっしゃる方々ではない県ですが、そ こについてはすでに現段階でスケジュールがもうフィックスされていますので、これを あえて見直すことはしないということで、平成20年度に新たな医療計画の部分だけでも 一部修正できるようにしていただきたいということです。この場に来ていただいている 大半の都道府県においては、平成19年度に医療計画の見直し時期を迎えるということで すが、例えば平成19年度にこだわらず、1年遅らせて実施することもできるように考え ていただきたい。  一方で、そうはいっても各県のご事情がありますので、すでにスケジュールが固まっ ている場合は、平成19年度の見直しをやっていただきながら、平成20年度においても若 干一部修正できるようにということで、余地を残しておいていただきたいと考えていま す。そのほかの都道府県については、平成20年度に一斉にやっていただくということ で、我々としても技術的な支援という形で、協力をしていこうと考えています。  12頁以降は、あくまで我々厚生労働省のほうで机上で考えたそれぞれのスケジュール 案です。国と都道府県と医療関係者が、それぞれスケジュールの節目節目に、どういう ことをそれぞれ共同作業していくのかを書いたもので、説明は端折りますが、平成20年 度から円滑に医療計画の見直しができるような形で、我々も努力をしていきたいと考え ています。 ○谷口医政局指導課長  資料4につきましては、これから都道府県の医療計画の見直しにおいて進めていただ きたいということを、かなり盛り込んだつもりです。  もう1つ説明の中でありましたが、実際に新しい医療計画の中では、住民の方々にど ういうことが期待できるのかということをはっきりお示しいただくことが大事だろうと 思っています。例えば5、6頁にもありましたように、住民にとって医療が今後自分た ちの地域ではこのように提供されるということがわかるようなものを、市町村の広報で もインターネットでも何でも結構ですが、そういった形でわかりやすくお示しいただく ことが1つの大きな課題だろうと思います。それらを含めて、これから見直しに向けて ご検討いただきたいということを、この資料の中でまとめたつもりです。この点につき まして何かございますか。 ○土居理事兼健康福祉部技監  先ほど結果責任ということについて行政はどう考えるかという静岡県の立場を説明し ましたが、こういった指標設定は非常に重要です。それと同時に、アウトカム指標の情 報の開示を、ひとつご検討いただきたいと思います。都道府県ベースでは、これはウエ ルカム、オッケーです。ただ我々の立場からしますと、市町村ベースのアウトカム指標 の情報開示、実はこれが我々が今回クリアできなかった点です。市町村の首長さんか ら、それはちょっと県内の市町村でどういった優劣というか、その結果が違うのだとい うことは、ちょっと公表をしないでくれと。例えば国保の保険料1つをとってもそうな のです。  例えばここにある地域連携クリティカルパスの普及状況といったものを、実際に制度 は作りましたが、脳卒中何人に対して何人に実際できたのかと。ここで医療計画に盛り 込まれる指標のほとんどが、どちらかというとアウトカム指標は少ないと思うのです。 是非国のほうで調査をするのであれば、こういったアウトカム指標を国が定めて、それ を都道府県は当然ですが、各市町村ベースで情報を開示する。本当はそんなことも静岡 県はできないのかと言われると、少し苦しいところはあるのですが、そういった結果責 任を明確にする意味でも、アウトカム指標の調査を重視して、それと情報開示もセット でということを、是非ご検討いただきたいのです。 ○谷口医政局指導課長  ご指摘のようにアウトカム指標は大変大事な話です。資料の中でも、例えば9頁に脳 卒中患者の総入院日数を10%減らすとか、それができなかったらそれに対して住民は厳 しい目を向けるということになりますから、いくつかアウトカム指標的なものも、今後 何を出すべきかを我々は検討していますので、またその辺は早目にご提供させていただ きまして、ご意見を賜ればと考えています。いずれにしても資料のいちばん最初に、P DCAサイクルという形で、ちゃんと県のほうでやったものがどのような形で本当に反 映されたのか、できなかったのかを住民の目にさらすことが大事だろうと思いますの で、いまご指摘のように県だけではなく、できれば市町村レベルで、そういったものに ついてもできる限りのことを。いまは情報開示の時代ですので、情報請求をされればた ぶん拒否をできないと思うのですが、それはできるだけ自主的にやるように、そのよう な仕組みを医療計画の中で考えていきたいと思っています。ほかに何かありますか。 ○村田医療政策部副参事(東京都)  4、5頁に関わるのですが、以前からこれは医療計画の見直し等に関する検討会の中 でも、主要な疾病ごとの医療連携体制の構築という言葉をよく使われていたかと思うの ですが、ここで示されている医療連携体制というのは、連携体制というよりは単なる提 供体制のように見えるのです。  例えば5、6頁にポンチ絵があるのですが、これはそれぞれの医療機関がどういう医 療機能を提供しているのかということは明らかになっているとは思うのですが、それぞ れの医療機関がどのようにつながり合っているのかというところまでは、見られるよう な仕組みになっていないのではないかと思うのです。実際にそれぞれの医療機関がどう いう医療機能を提供しているのかということについては、東京都のほうでもひまわりと いうシステムを使って、ある程度は提供しているわけですので、問題はそれぞれの医療 機関同士がどういう結び付きを持っているのかが非常に示しにくいところに、いまの課 題があると思います。そこまでも踏み込むように、いままでの報告書等では私どもは読 み込んできたのですが、ちょっとこれだと特定な区域ごとではないとおっしゃられてい ますし、一方で、医療連携体制の構築自体は、構築に向けた地域の医療関係者の自主的 な協議とされていますが、この場合の地域とは一体何なのか、その辺りをお伺いしたい と思います。  どうも5、6頁だけを見ていると、住民の方にはそれぞれの医療機関がどういう機能 を持っているかはわかったとしても、お互いがどのように結び付き合っているのか。ひ ょっとすると近隣の医療機関よりも隣の医療機関と日ごろから緊密な連携があって、そ れで思いもかけないところで連携パスができているかもしれないわけです。その辺りは どのように想定されているのかを教えていただきたいと思います。 ○谷口医政局指導課長  若干ちょっと説明不足であったかもしれませんが、例えば5、6頁の図は、まさに住 民にお示しをするいちばん最低限と言うか、必要条件としてこれぐらいはせめて示して くださいというつもりで掲げさせていただきました。いまご指摘の、医療機関相互の連 携はどのような形になっているかということも、我々としてはできれば県の医療計画の 中にお書き込みいただきたいというつもりもありまして、4頁のいちばん上の○にがん 対策、脳卒中対策などいろいろ対策が書いてありますが、そういった主要な事業ごとの 医療連携が、その地域ではどうなっているのかというところに、どこまで詳しく書けと 国のほうで示すかというのはなかなか難しいのですが、この疾病については、この地域 においてこのような連携パスがちゃんとできていて、住民の方がこういったシステムの 中で発症から在宅、高齢者であれば看取りというところまでいくかもしれませんが、こ ういう流れの中で適切な医療を受けられるのだということが見えるようなものとして、 お書き込みいただきたいと我々は考えています。それを具体的にどのように示すかとい うのは、また今後の工夫かとは思います。 ○坂本地域医療推進課長(熊本県)  いまのご質問と関連すると思いますが、地域、圏域の概念について、以前いただいて いた資料では、いわゆる日常医療圏というような表示をされていたと思います。医療連 携体制、医療提供体制を構築するエリアと必要な疾病ごとに、そういうエリアという考 え方で新たな日常医療圏という考え方が示されたのかなと考えていたわけなのですが、 前回の懇談会でいただいた資料辺りからその表現がなくなっていまして、地域という言 い方で、今回の資料の4頁では、特定の区域ごとではなくという言い方に変わってきて いる。主要な疾病ごとに、現状がどうあったとして、そこでどういう医療提供体制を構 築していくのかというエリア、区域の考え方は、従前の日常医療圏という表示をされて いた時代と変わらないというように考えてよろしいのでしょうか。主要な疾病ごとに狭 いエリアもあれば、県の区域といった広いエリアもあるのかなと、私どもはそのような 受取り方をしていました。  併せて、基準病床制度を継続されるということになりますと、従来の二次医療圏域と いう概念は、やはり存続されて残るのかと。そうしますと、いま言いました医療提供体 制を構築するべきエリアと二次医療圏との関係を、どのように考えたらいいのか。従来 の二次医療圏というのは、一応一般的な医療を完結させるエリアという考え方があった と思うのですが、それが変わってきて、いわゆる基準病床を適用するためのエリアとい ったような形で残るのか、そのような認識でいいのかどうか。どうもこの辺は私はよく わからないものですから、厚生労働省のお考えがあればお願いしたいと思います。 ○谷口医政局指導課長  その点につきましては、実はいろいろな所でご説明はしているのですが、もう一度繰 り返しますと、従来ですと二次医療圏という形で基準病床の問題についても、また医療 提供体制のいわゆる記載事項の問題についても、同じような形で考えていました。とこ ろが、どの病気も同じ一括りで提供体制、ネットワークにしろ考えること自体に無理が あるので、少なくとも疾病ごと、事業ごとの連携体制については、県下全域でももっと 小さくても、そこはフレキシブルにお考えいただいたほうがいのではないかというのが 前提です。  従前ですと日常医療圏という言葉は使っていましたが、どうも日常医療圏という言葉 自体は、とる方によっては、小学校区のような小さいイメージでお考えになる方もあっ て混乱をしやすいということで、あえて引っ込めました。いまはその言葉は使っていま せんが、基本的には疾病ごとにある程度連携が組めて完結するエリアだというようにご 理解いただければと思います。  二次医療圏の話に戻りますが、基準病床制度というのは当分残るということですの で、すべての医療のベッドということを一応フィクションですが設定せざるを得ません ので、そこのところは従来の二次医療圏で基準病床数はカウントいただくことにしたい ということです。 ○梶尾医政局総務課企画官  若干、資料上で補足します。4頁の2つ目の○の「特定の区域ごとではなく」という のが、パッと見ると全都道府県域で作るかと思われるような文章かもしれないので、説 明の中でありましたように、二次医療圏ごとという意味の特定ではないということで、 地域を分ける意味ではない。県全域で作るので、地域分けをするわけではないという趣 旨で書いたわけではないということです。  先ほど説明を省略しましたが、12頁の真ん中の所に※「事業ごとの医療連携体制の構 築に向けて圏域ごとに医療関係者等による協議開始」と、次の13頁の最後の※は、例え ば最終的に二次医療圏ごとになるケースもあるし、もっと広くなったり狭くなったりす るということになりまして、二次医療圏ごとの協議会の活用も視野に入れながら、連携 体制としてはそれぞれの事業ごとに望ましい圏域になるであろうということを頭に置 き、全体の資料はそのようなつもりで作ってあります。 ○田上健康福祉部副部長  先ほど静岡県のほうから県としての責任というお話がありましたが、責任をとるとい うことの一方では、それなりの権限がないと責任をとれないのではないかということが あると思います。そういう意味で、主要な事業ごとという所の中の例えば、がん、へき 地、周産期や救急の辺りはまだイメージが湧くのですが、具体例のある脳卒中になって くると、要は先ほど言いましたゴールの問題があります。ゴールの所、医療の所だけ言 っても、なかなか責任性を果たせない。ゴールの所の責任性は、一体どうなのかという ことがあります。主に市町村が介護保険事業計画の中でどこまでできるかということも あると思いますが、介護保険事業計画だけでは限界があります。  具体例で言いますと、本県は例えば高齢者の単独世帯及び夫婦のみの世帯の数が、高 齢者のいる世帯の約半分になっています。大変厳しい状況にあるし、かつ中山間地域が 多くて、山間の所に家が点在しているということで、在宅についてのものすごく大きな ハンディキャップを持っています。そういう所と、在宅機能や地域の機能がしっかり残 っている所を同列に比較することが本当にできるのでしょうか。また、そのような問題 に対して、どこまで県として責任性を持てるのでしょうかという問題があるかと思いま す。ですから、連携パスの所も一律にいかない面、県として責任のとれる範囲というの は、やや違いがあるのかなと思っています。  連携パスについては、私は基本的には賛成です。ただ、大切なことは当の患者さんと 医療機関にとって、お互いがどれだけ納得できるかということだと思うのです。要は連 携パスという特急券のコースに乗ったら得するよということを、患者さんにとってもわ かりやすく示すことがどうできるか。特急券に医療機関も乗ったらうちも得するよとい うことが、患者さんにとっても医療機関にとっても得するのだというところを、わかり やすくどう示していくのかということがあると思います。特に医療機関側は、診療報酬 等のリンクというところが出てくると思うのですが、もう一方の患者さんのほうは、な かなかわかりにくいのです。現実的にうちの県は、いろいろな病院を多受診される、ハ シゴをされる方が多々ありまして、本当のパスに乗っていくことの納得をどこまでいた だけるのかといったところが、言うはやすくてなかなか簡単ではないと思います。その 辺りの地域連携パスを、納得できるパスにしていくためには何が必要なのかということ をもう少し詰めていかないと、具体に進んで行かないのではないかというのが、2点目 の問題認識です。 ○新木福祉保健部長  3点ほど……。1点目は、ネットワークを動かす力を、これまでの広島県ですと、例 えば山口先生などの個人のカリスマでやってきていますが、関係者がみんな少しずつそ ういう気になってくれるのが、いちばんありがたいなと。そういう意味で1つは、普及 啓発が非常に重要です。もう1つは、メリットとして先ほど出てきたようなお金、診療 報酬や補助金、そのようなメリットをどう付けていくのか。もう1つその裏腹で、ネッ トワークに参加しないような人たちに対して、患者さんには自由選択という話でした が、提供側に強制力を持たせることが、非常にネットワークを満遍なく全国的に展開す る点では重要かなと思いまして、そのご検討を引き続きお願いできればと思います。  2点目は、ネットワークと言っても医療機関や福祉事業所ですから、個々の機関とい うのは、ネットワークを構成する要素、そういう人たちの役割というのは非常に大きい と思っております。端的に言いますと、このネットワークモデルというのはロングター ムケアのモデルという側面が強い感じがしますが、1つには、医療ですから急性期で完 結するようなものも多い。そう考えたときに、うちの広島県の状況も踏まえてなのです が、医療機関が役割分担をしていく、専門特化していくということが非常に重要なので はないか。医師不足で、例えば4つの医療機関で5人ずつ小児科の医師がいるというよ りも、15人なり20人が1箇所にいたほうが非常にやりやすいというようなことがありま して、同じようなレベルを皆で競うというのも一面重要なのですが、やはり役割分担と 専門特化、これを県として進めていく上でツールがないというのが現状です。お金もな い、強制力もない、地域の同じ医療圏内で、すぐ近くで同じようなことをしてもいかが なものかという感じもしますので、このネットワークを構成する人たちの役割をもっと 明確にしていく、もしくは特化していく。これを単に自由に任せるのではなくて、少し 誘導するようなことが必要なのではないか。それを裏打ちするツールのご検討をいただ ければと思います。  3点目は、中山間地問題です。ネットワークしようにも、何もない所があります。こ ういう所に対しましては、ほっておいても、いくら頑張っても非常に難しいところがあ りますので、ここを確保するようなお金の問題、先程来出ていたお金の問題ということ になってくるのだと思いますが、診療報酬以外の仕組みが必要なのかなというふうに考 えております。もちろん強制的な権限をそこにかませられれば、もっと有効だと思うの ですが。医療資源のない地域でのネットワーク、これについて確保するような方策をご 検討いただければと思います。  3点雑駁な感想です。特にコメントは結構でございます。 ○谷口医政局指導課長  ありがとうございます。要らないということですが1つだけコメントをさせていただ きます。  2つ目の話は大事な話で、役割分担、専門特化、これは都道府県のレベルでも私ども もお願いをしたいと考えております。民間にいきなりやっていただくということは確か に難しい部分があります。ある意味で、自治体病院が民間と競合して同じようなことを やっているという事例も多々あります。むしろ自治体病院のほうが率先垂範して、はっ きり言えば再編統合を視野に入れながら専門特化していく、役割分担していくという視 点が大事だろうと私は思っています。そこをやらないと、民間は付いてきません。それ は是非、自治体の方々にお願いをしたいと考えている点です。 ○新木福祉保健部長  要らないコメントに要らないコメントをしてもしようがないのですが、病院の再編で は、設置主体の問題と、実際問題としてはもう1つ大学のカラーといいますか、2つあ るのではないかと思います。特に設置主体の問題は、首長さんのメンツにも関わります ので、これは県にそのまま投げられても、何もない中で、軟かい言葉でお願いするだけ では進みません。市町村合併が進む中で、同じ市町村に複数の国保病院があるときは進 むのですが、そういうことを考えますと、やはり設置主体が異なる間での公的医療機 関、自治体病院とはいえ、ここでの統合再編を進めていくためには、やはり新しい道具 を是非、与えていただけるように検討していただきたいなというふうに思っています。 ○谷口医政局指導課長  できるだけ県の使いやすいツールを我々としても考えたいと思いますので、是非その 自治体自身の率先垂範による機能の分担が必要であるという意識をまず持っていただく ことだろうと思っております。他にありますか。 ○高山医療対策課長(大阪府)  今回、数値目標が非常に大きな意味を持つようになってくるかと思うのですけれど も、そのときに、数値の導く情報の精度というものへの考慮を、もう少ししていただく 必要があるのではないか。結構「健康日本21」なんかでも、乱暴な調査で導かれた数値 目標で議論しているので、それが政治的に1人歩きしたりとか、かつて老人保健事業の 受診率でも、分母が非常に曖昧で混乱した経緯もありますので、技術的には非常に難し い部分もあると思うのですけれども、一定の精度に関して考慮を図っていただき、誘導 していただいて、これぐらいの調査をしてきちんと数値を設定しなさいとか、そういっ たことも議論していただけないかと思います。 ○谷口医政局指導課長  貴重なご指摘ありがとうございます。他にございますか。  それでは次もありますので、先に進めさせていただきます。  続きましては資料5です。知事会のほうから意見が出されておりますので、これにつ きまして、熊本県の尾方医監のほうからご説明いただけるということですので、よろし くお願いします。 ○尾方健康福祉部医監(熊本県)  熊本県でございます。本日は、全国知事会において取りまとめられました「医療提供 体制に関する意見」が資料5として配付されております。取りまとめの際には全国都道 府県にご意見をお伺いしてありますので、ご出席の都道府県の皆様のご意見でもありま すが、代表しまして簡単に説明させていただきます。  医療提供体制の見直し全般については、社会保障審議会医療部会で審議されておりま して、本年8月1日に中間まとめが行われたところです。この内容について全国知事会 では、全都道府県に対してアンケート調査を行いました。調査結果につきましては、医 療部会に、三重県知事が知事会代表として出席しておられますので、そちらでの発言も あるとは思いますが、特に医療計画制度等については、都道府県の意見として、資料の とおりまとめられたところです。  1番目の「医療計画制度について」は、がん対策等主要な事業ごとに目標を掲げて取 り組むことについて、実際にそうしたことを行おうとする際に、地域によって医療資 源、医師や設備、施設の数にばらつきもあることが支障になるという意見が多くありま した。これについては、地域の実情に応じた対応ができるように、都道府県の裁量を拡 大していただきたいと思います。  また、都道府県としましても、地域における医療連携体制の構築の重要性は認めると ころですが、医療計画に記載したとしても、それを実現させるための指導権限などの法 的な裏付けがないこと、人的資源の不足を解消する仕組みが都道府県にはないことか ら、計画の実効性をどう担保するかということが必要です。  なお、医療計画制度に関連しまして、基準病床数についてもアンケートで意見を聞い ておりますが、これについては、過剰病床の削減が困難である、都道府県の裁量を拡大 すべきという意見が多数ありました。  2番目に、「周産期ネットワークの構築・小児科医不足の解消について」は、この場 で申し上げるテーマではないかもしれませんが、医師の絶対数の確保、地域偏在の解消 等を図ることは、都道府県にとっても非常に大きな問題ですので、あえて挙げさせてい ただきました。説明は以上です。 ○谷口医政局指導課長  ありがとうございました。ただいまのご意見に対して何かご質問等はございますか。 基本的に知事会のほうでまとめていただいたものですので、皆様方は少なくとも了解済 みの話だろうと理解はしていますけれども、よろしいですか。  それでは次に進めさせていただきます。次は資料6です。医療構造改革です。医療構 造改革推進本部の資料です。1枚めくっていただいて、本部の設置についてというペー パーです。厚生労働省のほうでは、国民の皆さんのQOLを確保して向上する形で医療 の効率化を図るということを基本に持っていますけれども、医療費の適正化を推進する ために、以下のとおり、推進本部というものを省内に立ち上げたところです。組織の中 身は別紙の1、2のほうに付けてあります。  別紙の1ですが、大臣を本部長、副大臣、政務官を代理、次官、厚生労働審議官を副 本部長としまして、関係部局長や各プロックの地方厚生局長まで一応メンバーに入れま して、全省的に対応しようという形の本部になっています。また、別紙の2ですけれど も、本部の下に、必要に応じて関係部局の課長等からなるプロジェクトチームを置くこ とも併せて考えています。実際に、実効性のある適正化の推進と、健康増進計画、医療 計画、介護保険事業支援計画、それから本丸である医療費適正化計画の円滑な策定に資 するために、当面、検討を急ぐテーマにつきまして、いま申し上げましたプロジェクト チームの中で検討を進めようと考えているところです。  3頁以降の「プロジェクトチームの設置について」ということで、簡単に申し上げま す。プロジェクトチームを3つ立ち上げています。1つ目が、在宅介護・療養・早期リ ハということで、多職種が共同して支援をしていくために取組の在り方と連携方策につ いて検討するプロジェクトチームということです。それから、適正化評価プロジェクト チームということで、実際に適正化の取組の効果等を評価しまして、次の方策につなげ るために、データの収集、評価手方の確立、体制の整備といったものを考えていこうと いうことです。そういったものについて議論をしていく予定です。  4頁ですが、これは先ほど実は知事会からの意見にもありましたように、県のほうで 人材について問題提起もされておりますので、実際に計画を策定していただく都道府県 の中で、人材をいかに育てるかということを念頭に置きまして、計画策定をご担当いた だける方、こういった人を養成・研修をするために、これまで医療計画に関する人材養 成に実績を有している保健医療科学院におきまして、新たに養成・研修を行おうという ものです。法改正が成立しますと、ただちに養成・研修を開始することを考えており、 このための養成・研修カリキュラム、方法等につきまして、実務的な検討をこのプロジ ェクトの中で進めていく予定にしているところです。  簡単ですが、推進本部については以上でございます。何かこの点についてご質問はあ りますでしょうか。 ○田上健康福祉部副部長  先程来申し上げているゴールの問題なのですけれども、このプロジェクトチームの1 番目のところですが、国土交通省との連携もされるというふうにもお聞きしております が、省庁を横断的にもっと国を挙げてここの部分を積極的に取り組んでいくことを是非 ともお願いをしたいと思います。厚生労働省の枠組みだけでは、ここの問題への答えは なかなか出せないのではないかというふうに、基本的には思っておりますので、その点 をよろしくお願いしたいと思います。 ○谷口医政局指導課長  ありがとうございました。他にご意見はございますか。  ないようでしたら、これまでの議論を踏まえまして、何か発言漏れ、更に追加等あり ましたら承りたいと思いますがいかがでしょうか。 ○坂本地域医療推進課長  先ほど圏域の質問をさせていただきましたが、聞きたかったのは、主要な疾病ごとに 医療連携体制のネットワークを作ろうという場合に、ある圏域において、病床の整備、 増床といいますか、そういったものが必要になる場合があるのではないか。ところが一 方で、基準病床制度が残りまして、それに対して病床超過であるといったような場合に は、せっかく一方でネットワークを作ろうと思っても、それが基準病床制度の関係でな かなかうまく実現できないというケースもあるのではないかということを踏まえまし て、ご質問をさせていただいたところです。特例病床という制度もあります。ただ、非 常にハードルが高いので、そのあたりの規制緩和、あるいは、既存の病床の転換を図る ための県における権限というか、なんらかのツール、法的、財政的な支援策の検討とい うのもいただければということで、要望としてお願いを申し上げたいと思います。 ○谷口医政局指導課長  わかりました。ありがとうございました。他にいかがでしょうか。よろしいでしょう か。若干いただいた時間も超過しておりまして、お帰りの都合もありますので、この辺 で閉めたいと思いますが、最後に厚生労働審議官のほうからコメントをお願いします。 ○辻厚生労働審議官  まことに貴重なご意見ありがとうございました。私は局を越える立場からこうして他 の局と一緒に参加させていただいております。本当に今日は医療計画というサイドから の会議なので、こういうことでとどめていただいておりますが、一言で、率直に申し上 げますけれども、この計画というのは作っておしまいではないか、動くのかというご疑 念をお持ちだと思います。それからもう1つは、今回試案を出させていただきました が、動くのかということだけではなくて、医療費の適正化は推進するのかと、これは率 直な疑問だと思います。8頁をご覧ください。これから全国の会議などで説明していく ことになりますけれども、3段階のことが書かれています。1段階目は、8頁の2つ目 の○です。「国は政策目標の実現に資するよう、診療報酬体系の見直しや必要な財政措 置を行い、都道府県や関係者の取組を支援する。また、これと併せ、病床転換を図るた めに、医療保険財源を活用した支援措置を講ずる」という踏み込んだことを言っており ます。その次に、上から4つ目の○の第2パラグラフですが、都道府県は、計画策定か ら3年目に検証を行い、不十分でなければ、更に取組の強化を行うというところで、 「この際に、必要があれば、都道府県は、国に対し診療報酬体系に関する意見具申を行 い、国は真摯に対応する」。要するに、この程度の診療報酬体系ではなかなか進まない というときは、もっとドライブをかけてほしいというご意見もあると思います。  最後に、5年経った段階で、(1)の最後の○、第1期計画の終了年度のところですが、 2つ目のポツで、「都道府県は、国に対し、医療費適正化に資する特例的な診療報酬の 設定についても申し出ることができることとし、国は、これを踏まえ、当該都道府県の みに適用される特例的な診療報酬を設定することができることとする」。こういう相当 踏み込んだことを書いています。  皆さんもおわかりになっていると思いますが、外部からは、ものすごい風圧です。私 どもは、医療を守るという仕事も、あるいは守るということが本当に大切な仕事だと思 っておりますので、この厳しい風圧と、医療費を適正化せよという風圧と、医療を確実 に県民、市町村民のためのものにすることの間で苦しんでいるわけです。結論から言う と、どうしたらいいかということは見えてきたわけです。皆様も、医療連携の流れとい うのは、イメージがついていると思います。医療機関だって、本当はこうしたらいいと いうことはわかっているかもしれません。したがって、あるべき方向はだいぶ見えてき ていると思うのです。それにドライブをかけるように、いかに診療報酬サイドでメリッ トをつけるか。よいと思うところは進めてほしい。しかし、非常に限られた資源制約の 中で、転換すべきはしてほしい、変わるところは変わってほしいというメッセージを、 非常に明解に出していかなければならない状況に我々は置かれております。  そういう状況のもとで、最終的には、都道府県レベルまでそのようなことはワークす るような仕組みを考えておりますので、都道府県民、市町村民のために、医療提供体制 はこうあるべきだと言っていただく。結論から言って、それに沿っていくところは伸び ていく。それに沿わないところは、転換も必要なところはやっていただく。こういうこ とになりますよという前提で我々はものを考えたいと思いますので、この際、あるべき 医療提供体制の在り方論を大いに議論していただきたい。  それからもう1つは、どの地域でも、中山間部の医師不足がありますが、結論は県内 の医療機関の再編成、先ほどの話で出ましたが、機能分化、機能を明らかにして、分 化、連携させれば自ずから医師は得られるようになる。大体全国の悩んでいる自治体か らのお話を聞いていて見えてきたように思います。したがって、医療連携をやりながら そういう方向にどう持っていくのかということも医師確保対策の1つで、例えば、私は そんなに詳しくありませんけれども、小児科だって結局集中化していくということで確 保するということは、医療機能の再編成のはずなんです。そういうようなことにもつな がるので、いま、医療計画をそろえてほしいと。  それからゴールの話が出ましたが、介護保険との連携というものを、医療計画でする ということで、今日は医療計画のことだけが出ていますが、ゴールの受け皿と、住宅行 政との関係については5頁に、国土交通省と本格的に住宅政策との連携をすると。過疎 地のそういう問題についても、受け皿を考えるようにしたいと思います。そういうこと で、大変しんどいことをお願いするわけですけれども、私の耳に入りますのは、急性期 の非常に厳しい病院からどんどん勤務医が燃え尽き症候群というか、開業志向していっ ていると。そうすると日本の医療の氷山が下に沈んでいくわけですね。これは大変なこ とだと思います。そのためには、医療機能をきちんと機能分化して、機能をクリアリー にして、更に充実させるべきところは充実させる。しかしながら、変えるべきところは 変えるという策を、恐れ入りますが県にクリアリーに出していただく。そして、私ども が支援すると。診療報酬もある、交付金もある、あるいは医療保険財源から転換の財源 措置も考えようということですので。  それから、数字も精緻が必要で、どの数字とどの数字と。もっと本格的な調査は何を したらいいのかということも、これから詰めたいと思います。一県三品運動と書いたの ですけれども、軽い言葉ですみませんが、どの県にも必ず優れたシステムがあるので す。私たち国がそれを学び、各県が相互に自らの良いものを情報交換して、自分の県に 合ったものにしていただくことも必要で、そのための勉強の場もこちらで本格的な研修 コースを用意したいと思います。そのようなつもりでおります。  私ども厚生労働省として、医療費はどうなってしまうのだというものすごい強い声の 中で、一方において、国民のための医療を守っていかなければならないということにつ いて使命感を覚えております。それを調和させるためにこういう作業をやろうとしてお りますので、なにとぞご理解いただきたいと思います。ちょっと大げさに話しました が、そういう気持でやっておりますので、1つ1つこういう会合で話合い、一歩一歩や っていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。 ○谷口医政局指導課長  進行の不手際で時間を超過してしまいまして申し訳ございませんでした。これで本日 の懇談会を終了させていただきます。次回につきましては事務局より事前にご連絡を申 し上げておりますが、11月17日、木曜日です。午前10時30分から予定をしておりますの でご参加のほどよろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。 照会先: 医政局指導課 担当者: 計画係、指導係 連絡先: 03-5253-1111(内線2557)