05/10/14 第3回医師等の行政処分のあり方等に関する検討会議事録       第3回 医師等の行政処分のあり方等に関する検討会 議事録         日時 平成17年10月14日(金) 10:00〜         場所 厚生労働省共用第7会議室 ○樋口座長  定刻になりましたので、ただいまから「第3回医師等の行政処分のあり方等に関する 検討会」を開催します。ご多忙のところ、委員の皆様にはお集まりいただき、ありがと うございます。ただ、見城委員と齋藤委員は今日ご都合により欠席と聞いています。  資料の冒頭にありますが、本日は第3回ということで、これまでの2回の会議でこの 検討会のアジェンダは一体何なのか。6つの課題プラスアルファという話があって、そ れぞれについて委員の方にいろいろご意見をいただいて、だんだん焦点がつめられてき たと思います。今日、さらにそれを重ねて、はっきり方向性が出てくればいいと思って います。そこで、これまでの議論を踏まえて現状を明らかにして、今日は何をするかと いう形で議論していこうと思います。まず、資料について事務局からご説明を伺いたい と思います。よろしくお願いいたします。 ○事務局  資料についてご説明いたします。まず、表紙にあります「議事次第」に資料を付けて います。資料は1種類でして、「医師等の行政処分のあり方等に関する検討会論点整理 (案)」です。参考資料として検討会の名簿、「アメリカ医師会における医師情報検索 の例」ということで、インターネットの画面のコピーをお付けしています。  それでは、論点整理(案)について1頁からご説明いたします。いま、座長からもお 話がありましたように、トータルで6つの点についてまとめました。まず最初に、「処 分類型の見直し」でございます。こちらは「『戒告』等の医業停止を伴わない行政処分 の類型を設けることについてどう考えるか」ということを立てています。具体的な中身 として、どのような事例が戒告処分に該当するのか基準を定める必要があるのではない か。それから、医師以外の人も起こし得る過ちと、医師として問題のある過ちと分けて 考えるべきではないか。主にそういった点が鍵です。  丸の2つ目、外国の事例でお出ししましたが、「戒告」以外の行政処分の類型につい てもご紹介させていただきました。こういった類型を設けることについてどう考えるの かが2点目です。  丸の3点目ですが、「再教育を受けない医師に対する措置についてどのように考える か」、再教育を受けない医師についてどうするのか、それから再教育を実施した結果、 再教育が修了できない医師についてどうするのか。こういう2つの点に分けて書いてい ます。  2の「長期間の医業停止処分のあり方について」、1つ目の大きな丸、長期にわたる 医業停止についてどうするのか。1つ目が被処分者に対する医業停止期間については、 他の資格、海外の制度も踏まえて明確化すべきではないか。2点目として、ご意見があ りましたように、運転免許停止のように再教育を受けるインセンティブを設定すること についてはどうか。こういったことを書いています。  2頁の大きなテーマの3番目、「行政処分に係る調査権限の創設について」、丸を3 つ掲げています。まず1つ目、調査権限の具体的内容をどうするのか。報告徴収、立入 検査等が考えられますが、こういうことでよいか。そして、罰則についてはどのように 考えるか。  2つ目の大きな丸として、「調査や処分の端緒となる申立についてどうするか」、こ ちらはポツで5つ示しています。1つ目が一般国民からの通報には調査につながらない 相談、苦情のような意見が多く含まれることが予想されるということで、調査の対象と なる事案かどうかの基準作りが重要ではないか。2点目、これが英国のGMC(General Medical Council)、総合医療委員会ですが、2回目に提出した資料の中にもございま す、このような組織や体制づくりがなければ実効性が上がらないのではないか。  3点目、医師会や各医療機関における窓口、都道府県の医療安全支援センターを活用 するようなことはできないか。4点目、全国の患者の苦情を厚生労働省が1カ所で受け て、すべてを処理するには限界がある。現在も患者の苦情には医師会が対応しており、 うまく機能すれば効果的ではないか。5点目が苦情の対象になる医師には医師会に所属 していない医師も多いが、職能団体として医師会が統率するのがよいのではないか。最 後の大きな丸は、調査を実効性のあるものとするにはどうすればいいのかということで す。  大きな4点目が「医籍の記載事項」です。こちらについて、まず再教育ですが、再教 育の修了を医籍に記載することとしてはどうか。2つ目の丸、行政処分の処分理由を記 載することについてどうするか。小さなポツで、行政処分の別については記載されてい ますが、その処分の理由も併せて記載するのか検討が必要ではないか。もし、仮に記載 するという場合、誤解を生じないような記載内容にすることが必要ではないか。  大きな5点目、「再免許に係る手続の整備」、再免許の交付の可能性を申請者が判断 できるよう、基準を作成する必要があるのではないか。そして、再免許を申請できるよ うになるまでの期間を明記する必要があるのではないかということでございます。  3頁、先ほどの続きですが、行政処分を回避する目的での自主返納に対応するための 規定の整備が必要ではないかというご意見です。  最後の6「国民からの医師資格の確認の方法について」、まず医師に関して国が把握 すべき情報の範囲、方法についてはどう考えるのかという点がありました。2点目の大 きな丸、医師に関して国が把握する情報のうち、一般国民や医療機関の管理者等が確認 できる情報の範囲についてどう考えるか。まず、国民の皆さんに向けたものが上の2つ ですが、現行では、氏名、生年月日、医籍登録番号等が判明した場合に医師の資格の有 無を確認しています。この扱いはニーズに十分応えていると言えるのかどうか。2点 目、国民が確認できる情報については、医師の更生、個人情報に配慮した事項にする必 要があるのではないか。この2点が国民向けの情報の提供です。  3点目のポツですが、安心して患者が医療機関に受診できるよう、処分歴、再教育の 修了の有無などの情報を医療機関の管理者に限定して提供することについてどう考える かという点を挙げています。  次の大きな丸として、「情報提供の実施主体についてどのように考えるか」。「その 他」として、患者が知りたい医師についての情報は、処分歴よりもむしろ当該医師の専 門性や治療実績等ではないかというご意見もありました。以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。なかなか多岐にわたる論点が並んでいて、方向性といって もなかなか大変な気もしてはいます。それでも、この2回の会議を積み重ねて、相当程 度のステップまではやってきたということになっていると思います。  最初からプランニングを立てるのもどうかと思っているのですが、この検討会として は何回かしか予定されておらず、できれば今日、いまご説明を伺ったような事柄につい てある程度の方向性、確認をしていく。この検討会でどこまでやれるかという問題も含 めてですが、どういう方向性まで出せるか、出せないかということも含めて検討する。  その上で、次回ということになると思いますが、何らかの形の書面を事務局で用意し ていただいて、もう少しはっきり、書面を題材にして、こういう報告書の方向でいいか どうかという形で議論していただくこととしたいと思います。そのためにも、今日の議 論にそういう形で焦点を合わせていただけると本当に助かると思っています。  6点と言いながら、相互に関連する部分もあるので、1つ1つと言いながらほかのと ころへ論及していただくのは全くかまいません。一応、順番としては1つ1つやってい こうと思っています。  もしかしたら、いちばん最後に言うべきことかもしれませんが、2回の検討会を通じ て私が感じたことを述べたいと思います。これは言わずもがなで、諸先生には全然新し いところのない、「当たり前ではないか、いまごろ樋口座長はそのようなところに気づ いたのか」と言われそうな話なのです。ついこの前までは、医師等の行政処分のあり方 を新聞程度で知っている段階だったわけです。その程度の知識でいて、今回の検討会の 役割について2つあるのですが、1つの認識としてはいままでの行政処分のあり方には いちばん上に「医道審議会」があって、形はきちんと出来ているけれども、その中身は 非常に極端な、バッド・アップルというか、ひどい場合だけを取り上げて処分するとい うことです。大きな枠組みだけはできているのだけれども、細かなところには対処でき ないようなシステムであるから、もう少し細かなところを埋めていく作業が必要ではな いか。大きな枠自体はあるので大丈夫なのですが、細かな部分、例えば、いちばん最初 の戒告という処分もない、調査権限もそもそもない、ないのかどうかも問題だと思いま す。それは議論のあり得るところですが、少なくとも明文規定はないということではい ろいろなところで動かしにくいわけです。そういうところを埋めていく部分があるのだ なと思っていました。それは今でもそう思っています。  同時に、「医道審議会」の先生方もだと思いますが、2つ目として、どうも大きな枠 自体をいろいろな意味で考え直さないといけないのではないかという話もきっとあるの だろうと思います。医師等の行政処分のあり方で典型的なものは、刑事制裁を受けたよ うな医師について行政処分もありますということです。そういう意味では、そこだけを つかまえればですが、医師に対する行政処分というのはつまり重複しているわけです。 片方やっているのだから本当はもう要らないのかもしれません。しかし、別の見地から 当然評価があって然るべきなので、当然ということなのです。1つ制裁を与えてあるの で、全体のシステムとしては何もしていないわけではない。  もっと大きな目で考えると、こういうシステムを何のために作っているのかという と、結局抽象的ではありますけれども、いちばん基本に戻って医療の安全、医療の質の 確保のためにいろいろなシステムを作っている中の1つである。このような役割分担が あって然るべきだし、実際そうだと思います。その役割分担の中で、例えば刑事制裁だ けに頼っていてもどうしようもないので、という話になれば、刑事制裁には至らないよ うな部分について、ここへ役割をもう少し追加する。あるいは、実は制裁だけでは駄目 で、やっつけているだけで医療の質が向上するかというと、それほど単純なものではな い。そこで再教育という話も出てくる。やはり、きちんと対応するというのは医療の安 全、質の確保のシステムをもう1回、全体として見直す中の1つとして、医師の行政処 分についても考えてみようということになると、本当はもう少し大きな話になる。もし かしたら、この検討会ではとてもできないことかもしれない。それこそ、6つの細かな アジェンダを統合したような話になります。  ただ、この6つをやっていくと、結局そういう話につながらざるを得ない。医療の安 全、質の確保に、例えば国民に情報提供したほうが本当につながるのか、医療機関には 少なくともつないでおいて、きちんとした人を雇ってもらえるようにしたほうがいいの か。そういう話にもつながってくるので、結局この6つをいろいろ考えている中では、 あとの大きな話にもつながってこざるを得ないような気もしています。ただ、最後の報 告書でどこまでという話なので、我々としては6つのアジェンダについてそれぞれ答え るという方向なのかと私は思っています。いま言っているのは少し余計なことなのかも しれませんが、そういうことを2回の会議を通じて勉強したということを最初に、今日 の最後でもよかったのですが申し上げた上で、1点1点先生方のご意見を伺いたいと思 っています。  そこで、いま、事務局が用意してくださったものに従ってやっていこうと思います。 1「処分類系の見直し」、戒告という処分を新設する。それ以外はどうかとか、しかし 単に処分類型を増やすだけではなくて、外国でも勉強しましたが、再教育も、一種、処 分の類型の中に含めている国もある。だから、再教育の捉え方というのはなかなか難し い。もし、一種、強制命令だとすると、それにさらに従わないというのは一体どういう ことだという話にもなります。多分いないとは思いますが、受けない、嫌だというよう な医師が仮にいたらどうなるのかということまで含めて、少しご議論をいただきたいと 思います。まず、処分類型の見直しについてご意見を伺いたいのですが、いかがでしょ うか。どの先生からでも結構です。 ○岩渕委員  皆さんの意見とそれほど違わないと思うのですが、処分類型の見直しで戒告にはもち ろん賛成です。例えば、再教育が処分のうちに入るのかということになるのですが、い ずれにせよ、再教育はきちんと受けてもらうというのは当たり前というか、当然だろう と思います。  それに対して、処分との関係で言うと、2の2つ目のポツ、運転免許証のように再教 育を受ければ処分期間が短くなって、インセンティブを働かせる。これはどうか、とい うところがやや悩ましい点ではあります。そのほうが円滑に動くということでしたら異 を唱える気はありません。ただ、処分であるとき、これをやったら刑を軽くするという 形でのインセンティブの働かせ方がいいのかどうかというのは、皆さんのご意見を是非 聞きたいと思っているところではあります。とりあえず以上です。 ○樋口座長  いかがでしょうか。 ○相川委員  私の意見もいまのご意見にかなり近いものです。前回も運転免許証の例が出て、再教 育を受ければ処分期間を短くするということがありました。そうすると、期間は元どお りでいいから再教育は受けない、それでもいいのかということになると思います。  再教育を課すということはただ処分するだけではなくて、過ち、事故等がこれから起 こらないようにするために再教育を課す。それもペナルティーとして課すことがいいの ではないかと思っています。ペナルティーとして科せば、それは受けざるを得ないわけ ですから、「受けなさい」となる。受けなかった場合はどうするかということはまたそ のあとですが、ペナルティーとしての再教育、それが戒告プラス再教育、あるいはただ 再教育というのもいちばん軽いペナルティーに含めるという考え方もあるのかと思いま す。それはペナルティーとしての再教育であって、これは義務であるという考え方も1 つあるのかなと思います。 ○樋口座長  実質は、私も岩渕委員と相川委員のご意見に同じです。言い方の問題だけなのかもし れません。先ほど申し上げたこととのつなぎで言えば、結局再教育を課すのは何のため かというと本人のため以上に、結局国民の健康、安全、医療の安全、質のためには再教 育を必須のものとする。だから、とにかく義務として課す。ペナルティーも、結局、そ のためのものだということであれば同じことになると思います。 ○岩渕委員  再教育はほかの処分類型の場合でも、当然義務としてやっていただくということにな れば、処分類型としての再教育ということではないのではないかと思います。要するに 縦走的にかかわってくる。当然ながら、いろいろな処分類型に再教育がかかわってく る。  例えば戒告、再教育という処分類型があるのかどうか。再教育はいろいろな処分類型 にかかわってくるのではないかと思いますので、そこのところはどういうことなのか。 それから、もし再教育を受けないという場合でしたら、それに対するペナルティーとい うのは当然ながら必要ではないかと思います。 ○樋口座長  私も岩渕委員と相川委員のご意見をうまくまとめずに、かえって混乱させたのかもし れません。しかも言葉の問題だけで。相川委員が示唆してくださったのは、戒告にはも ちろん再教育も付けてという話になるようですが、戒告以外に単に再教育ということも もちろんあるのではないか。そういう意味では、はっきり処分類型の中の、いちばん軽 いと言うべきかどうかよくわかりませんが、そういうものとしてあり得るのではない か。処分であれば当然、再教育という処分に従わない者についてはまた何かという話に なるということなのです。どうですか、宇賀委員。 ○寺岡委員  大体、先生方の意見と、全体的なおもむきに関しては私も同意見です。まず一致して いることから言えば、再教育というのは処分を受けるべき内容に対して再教育を行う。 医療の安全、医療の質の向上のためにやるわけです。再教育を受けたから職務期間を短 くする、そういう軽々しいものではないと思いますので、その議論は必要ではないので はないかと思います。  問題は、処分類型の1つとして再教育を考えるか。私ども医師会としても、いわゆる 行政処分の対象にならない医師に対する再教育ということについては、前々回でした か、大いに熱心に取り組み始めたことはご紹介したとおりです。  そういうことを考えると、処分類型の中に戒告があって、それよりもっと軽い処分と いうことになるのでしょうか。「戒告に至らない再教育」があるということは、どうも この委員会の処分類型としてはなじまないのではないかと思います。再教育というのは 処分されようがされまいが、危険な、あるいは危険に至りそうな医療行為に関しては、 あるいは事例に対しては、医師会も行うし、ほかのいろいろな機関でも行われるかもし れませんが、医療安全を目指して再教育を行っていくということですから、処分類型と は別に考えたほうがいいのではないかと思います。 ○相川委員  お言葉を返すというか、ほぼ同じようなことを考えているのだと思います。医師会が やっていたり、我々がやっている再教育というのはそれなりに、義務としてでもなくて も、かなりいろいろな再教育をしています。例えば、その人が再教育を指導されても受 けない場合もあるかもしない。あるいは、医師会員でない方もいるかもしれない。「再 教育」と同じ言葉が使われてしまっているからいけないのですが、「再教育」を「教育 処置」とかの仮称で言うとすると、従前の再教育はもちろんこれからもそれなりに進め ていくわけです。ただ、いま言っている、「教育処置」ということにしましょうか、そ のようなものに関しては、やはりある程度強制的にやるということと、もう1つ、戒告 をやったら再教育というのもいい。そうすると、この人を「強制的に再教育」すればそ の人も自分の犯したことを認識し、かつ将来同じことを犯す可能性が少なくなるのでは ないか。それは戒告という厳しいものには当たらない。例えば、軍隊などでも多分その ような強制的指導、ディシプリンがあるのではないかと思います。  そうでないと戒告がものすごく増えてしまう。あるいは、強制的に教育はしたいのだ けれども、戒告のほどのことではないというグループを含めて、「教育処置」というよ うなものがあってもいいのかなと思います。医師会がやっている再教育は再教育で、強 制でもないし、本人がそれに従わなくてもしょうがないと考えています。ちょっと、医 師会の考え方と違うかもしれません。以上です。 ○寺岡委員  非常に厳しく反対するという趣旨ではありません。でも、先生のおっしゃるように 「戒告」というものを広く取ると、そのカテゴリーの対象者が増えてしまうということ は同じことではないですか。要するに、「軽い教育処置」と仮に言うとしましょうか、 あるいは、「指導」というカテゴリーを作ったとすると、そのグループがまた非常に増 えてしまうということであれば結局同じことだと思います。やはり、行政処分としての カテゴリーとしては、戒告のほうが適切ではないか。それに対して教育が必要である。 戒告に対する教育が何段階あるかということは、これはまたそこの中で考えればいい。 先生がおっしゃる趣旨であれば「戒告」1種類でいいのではないかと思います。 ○相川委員  結局、言葉の響きという形にもなってしまうのです。「戒告を受けた」という言葉の 響きがかなりの人に広がる。目的は同じことを犯さない、安全を保つ。そうすると、 「戒告」の響きが強過ぎるのか、教育処置という響きでなるべく多くの方を再教育する のか。決して、先生と違うところを言っているのではないと思っています。 ○宇賀委員  いままでのご意見を聞いて思ったことを述べます。まず戒告なのですが、これについ てはそれをまず一般に公表するのかどうかという点がポイントになると思います。戒告 というのは、それだけでは公的にこらしめるだけのことであって、直接それが相手方の 権利を制限したりということにはならない。国家公務員や地方公務員の場合もそれは同 じです。ただ、あの場合には、実際上はそれが昇給制限と結びつくので経済的な不利益 ともかかわってくる。これが相手方が医師ということになると、民間の医師の場合です と、こういうことで戒告を受けたからといって、直接的にそれが権利制限、あるいは義 務を課されるということにはつながってこない。  弁護士の場合も同じ問題があります。弁護士の場合、実際には弁護士会の機関誌であ る『自由と正義』に戒告処分も含めて公表されることになっています。あれは弁護士会 の機関誌ということになっていますけれども、一般の人が読めますので、事実上あれを 通じて一般に公表する効果が出ていて、それが大きいのです。ただ、最近の最高裁の判 例によると、要するにあれは戒告そのものの効果とは無関係ということで切り離してし まっています。そこをどうするのか。それがもし一般に公表されないとなると、戒告と いうのは直接相手方には伝わるのですが、実は重そうでいて、こたえない人には全然こ たえないものになってしまいます。そこをどうするのかということが1つあると思いま す。  再教育との関係ですが、両者の対象は必ずしも一致するものではないのではないかと 思います。つまり再教育、あるいは教育措置というのは、その医師に医療の技術などの 面で問題がある、そのまま医療を継続させると患者の安全にかかわる、ということで取 られる措置だと思います。  戒告の対象になる医師の問題行為というのは、必ずしもそういうものに限らないわけ です。例えば、診療報酬の不正請求というのは別に医療の技術とは無関係なわけですか ら、戒告の対象にはなっても教育措置の対象にはならないということはあり得るでしょ う。それから、ミスを犯したけれども、別に業務上過失致死に問うほどのものではな い。だから、戒告というのは厳し過ぎる。しかし、このまま医療を継続しているとまた 同じような事故を起こす恐れがあるから、そういった場合には教育措置が必要であると いうこともあり得る。  戒告と教育措置というのは、必ずしも対象は一致しないので、目的も必ずしも一致し ないと思います。両者は併存し得るものだと思います。例えば教師についても、中学や 高校の教師について教育技術に問題があるといった場合、研修を命ずるといったことが あるわけです。懲戒とは別にそういうものがありますので、これを制裁とは別に、こう したものがあるということは制度としては十分あり得るのだろうと思います。 ○樋口座長  宇賀委員のコメント等を踏まえて、ちょっと事務局で答えていただきたい点を申し上 げます。まず戒告というのは、これができれば「医道審議会」で戒告することになりま す。したがって、「医道審議会」で例えば樋口という人間を戒告しましたというのは、 その段階では公表されるのでしょうね。それはこれからの作り方なのですか。 ○医事課長  現在、処分というのは免許取消と医業停止、それから最初に出ていたように行政指導 としての戒告というものがあります。行政指導はいま公表しておりません。免許取消の 方、医業停止の方については、氏名、一体どういう理由で処分を受けたかということに ついては公表しています。戒告についてどうするかというのは、いま宇賀委員からご意 見がありましたけれども、また考えなければいけない部分だろうと思います。それをつ くればですね。 ○樋口座長  行政処分になったから、「医道審議会」できちんとした行政処分を行っているという ことを示すために、戒告の事例を必ず公表するとも決まっていないということですか。 ○医事課長  そこは、いま制度上ないですから。 ○樋口座長  今後の課題であるということですか。しかし、いままでの議論で、少なくとも医籍に は記載はするということでしたが、これもまた別ですか。 ○医事課長  行政処分として法律上明記すれば、処分ですので、医籍には記載することになると思 います。 ○樋口座長  医籍に関することは決まっているが。 ○医事課長  決まっているというか、理屈的にはそういう形になるだろうということです。 ○寺岡委員  いま説明があった、行政指導というのはどういうことですか。 ○医事課長  行政指導というのは、結局処分に至るほどのものではないけれども、反省を促すとい う意味で、私どもで紙を出しているものがございます。 ○寺岡委員  それでは、行政指導というカテゴリーはいまあるわけですか。 ○医事課長  カテゴリーというか、法律上そういうようなものが明記されているわけではありませ んが、私どもが医師の免許制度などを持っているわけですので、それをもとにして「こ ういうようなことにもっと注意してください」ということは言っています。 ○寺岡委員  法律には書いていないけれども、厚生労働省担当者の。 ○医事課長  担当者というか、医道審にはかけております。医道審の中で、これは停止するほどに は至らないというものについては、戒告する場合がございます。一方、戒告にも至らな いものもあるわけです。これは別に「いいではないか」というものもあります。 ○寺岡委員  それは公表されていないのですか。 ○医事課長  公表しておりません。 ○樋口座長  国家公務員の場合と医師の場合を一緒にするかどうかは全然別の問題なのですが、国 家公務員、例えば私が戒告されますね、これは公表されているのですか。 ○宇賀委員  これまで各省庁によってバラバラだったのです。最近、人事院のほうで、一応懲戒処 分の公表についての統一的な指針というのは出しています。それも実は必ずしも明確な ものではなくて、実際にそれを当てはめていこうとすると、どちらに当たるのかが必ず しも明確でない場合があります。  例えば、国家公務員が懲戒処分を受ける場合にも公務と関係した非行の場合、国家公 務員法や国家公務員倫理法に違反した場合と、公務と無関係、例えば休日に飲酒運転を して事故を起こしてしまったという、公務と無関係な場合があります。後者の場合、全 体の奉仕者であるにふさわしくない非行ということであれば懲戒事由になるわけです。 基本的に、公務と関係するものについては公表するということですけれども、そこでも 非行の程度といったことも関係してきます。これまで懲戒処分であって、例えば戒告程 度のものが公表されてきたかというと、公表されてこなかった例も結構あります。 ○樋口座長  次の話、ここでは「再教育」という言葉を使っていますから、「再教育」のままにし ますが、再教育と戒告の制度趣旨が付く場合もあるし、付かない場合もあるというご指 摘はそのとおりだと思います。ここで問題になっているのは、結局、再教育を行政処分 という形にしておかないで、行政処分の一部に組み込まないで、かつ義務化する。義務 化というのは、つまりやらないといけない、あなたは逃げられない、これは絶対やらな いといけないことだ、ということにするということもできますか。 ○宇賀委員  義務化するという場合には研修を義務づけることになりますので、これはやはり行政 処分として課すということになります。ただ、それを制裁として位置づけるかどうかと いうのはまた別の問題です。ペナルティーということではなくて、その人が医師として 十分な能力に欠けていることがわかったときに再教育を義務づける。別にそれは相手方 に対して何か非難するとか、懲戒的なものとは別に、医師の教育措置というか、研修を 義務づける制度を作ることは制度面としては十分あり得るわけです。 ○樋口座長  しかも、一応、形の上では行政処分の中に入れざるを得ないのですか。 ○宇賀委員  義務づけるのであれば行政処分ですね、行政指導ですと法的拘束力がありませんか ら。 ○樋口座長  ただ、ほかのものとは非常に性格の違うようなものを行政処分の中に入れ込んでおい て、言わば義務化するためにここへ入れておくということになりますか。それに違反す ると何らかの制裁という、今度は本当に。 ○宇賀委員  今度は命令に違反したことに対して、サンクションということは制度としてあり得る と思います。 ○寺岡委員  いま、議論がすり替わっているように思います。ここで私どもが議論しているのは、 行政処分を受けた医師に対する再教育のあり方を議論しているわけです。懲戒ではない 再教育もあり得る。しかし、それは行政処分の一類型である。結果としてそうなるとい う話ですね、いまの宇賀委員のお話は。  そうすると、私の頭の整理では行政処分を受けた医師のあり方、あるいはその1つと して再教育をどう考えるのかということで話を考えてきているわけです。再教育を受け るというカテゴリーを新しく設け、それが行政処分の一類型というのはちょっと逆転し たような形で義務化される。行政処分の一類型が増えるという形になりますので、そこ は私としては議論がすり替わるのではないかと思います。  ちょっと話を進めると、行政処分を受けるほどではない医師に対する再教育は、あく まで医師会、あるいは病院、そういったところの自律的な機能として再教育を行うとい う形になっています。いや、医師会、あるいは大学の再教育というものは全然信用でき ないという話であれば、それは話は別ですが、やはりそこで責任を持って自律的に再教 育を行うという整理をしていただきたいと思います。 ○蒲生委員  私も寺岡委員とほぼ同様の受け止め方をしています。いま、処分類型の見直しという 中で戒告が1つ対象になっている。それは理解できますし、それを入れることは私もや ぶさかではないと思います。ただ、再教育というものが付いて回る中で、戒告にだけ再 教育が付くわけではなくて、もし戒告を入れるとするならば免許取消、医業停止があっ て3段階になるわけです。それぞれにもすべて再教育は付くわけでしょう。  私から申し上げるのは僭越ですが、ご案内のように「再教育に関する検討会」から既 に報告書が出ています。それとの整合性もある程度は図る必要があるのではないかと思 います。したがって、私の意見としては、処分類型の中に再教育という1つ新しいカテ ゴリーを作るというのはいかがかという気がします。 ○樋口座長  それでは、うまく整理できないと思いますが、資料に従ってもう1回いままでの議論 を確認していこうかと思います。まず、丸の第1が「『戒告』等の医業停止を伴わない 行政処分の類型を設けることについてどう考えるか」、方向としては設けるということ では全く問題ないようです。ポツ1が「基準を定める必要があるのではないか」、これ は宇賀委員のご指摘以来、やはり必要ということになっています。どのような基準かと いうのは意外に難しいだろうと思いますが、何であれ、必要があるということです。こ れについて事務局から、あるいは先生方からもう少し何かコメントはありますか。よろ しいですか。何らかの基準を提示した上で、新たな戒告という処分を作るということで す。  2つ目はもう少し大きな話になるのかもしれませんので飛ばしてもかまいません。ほ かのところもきっとそうなります。事務量や体制整備という話は、あとの、調査その他 全部にかかってくるので後回しにしましょう。  「医師以外の人も起こしうる過ちと、医師として問題のある過ちとを分けて考えるべ きではないか」、今日もそういうご意見がいくつか出ています。いままでも実はそうだ ったということも言えますか。 ○医事課長  いままでも医道審のほうで、医師として直接影響のあるもの、例えば覚せい剤や麻 薬、危険性を十分知っている立場にありながらそういうことをやっているような人につ いては、例えば「重めの処分をする」とか書いてありますので、そういう方向性は出て います。ただ、実際に医道審で審議していく中では、刑事上の処分の重さというものが かなり影響しているところがございます。ご意見がありましたように、最初に座長から もお話がありましたが、刑事上のものと行政処分というのは、やはり別々の観点から見 るべきものだと思います。だから、こういうものを明確にしていくというのは私どもと しては重要なことだと考えています。 ○樋口座長  そうすると、医療の質や安全に強くかかわる部分については強く考えて、当然再教育 も付ける、再教育もいくつか中身が違うと思うのですが、そういうところで処分に反映 させていくということでしょうか。よろしいですか、1の丸の最初のところは。  2と3は結局同じことかもしれないのですが、戒告以外の行政処分の類型について今 日議論を受けている。あとのほうは寺岡委員のご指摘もあったので、例えば戒告や医業 停止、再教育を処分の中へ組み込んだ場合、戒告がいちばん簡単だと思います。戒告は とにかく戒告されているだけで、ずっと医業は続けていますから。そこで再教育もサボ るということがあると、まずどうしたらいいかというのがここでの問題意識で、さらに 加えて丸の2つ目のところで、戒告以外の処分としてこういうものを独立させるかどう か、今日少しご議論いただいたという整理です。そうすると、最初のほうから片付けて いくのがきっといいので、この人は戒告に再教育も付けておかないと医療の質、安全に ついては非常に問題である。それを処分の中へ入れ込んで、戒告に再教育を入れ込むの でしょうか。どういう位置づけかわからないけれども、付随的に再教育を戒告プラスで 付けてある場合、これを受けないという人がいる場合にどうするかという問題が1つあ ると思います。 ○医事課長  私どもが考えていたのは、先ほど少しありました、前の再教育の検討会でも議論があ ったのですが、基本的に再教育というのは2つ、倫理研修と技術研修があります。要す るに、処分を受ける方はいろいろな理由によって処分を受けます。倫理研修というのは 基本的には全員の方に受けてもらうという形で整理しています。私どもの当初のイメー ジとしては、戒告というのは、いまの免許取消や医業停止と並んだ形のものになるのだ ろう。一方、再教育というのは、それと並列のものではないのではないかと考えており ました。したがって、処分をする際、さらに補足された形で例えば大臣が命じる形があ るのかなと思っていました。有り様としてですね。 ○樋口座長  この場合については、医師会、その他のところで行われている任意のものとは違っ て、はっきり義務という形にしたいということだと思います。委員の大勢のご意見もそ うだったと思います。 ○医事課長  いずれにしても、お話に出ていますように、再教育を言われたのにそれを全くやらな い、サボッてしまっているような人を、ある意味野放しにするのは、医師法なり、国民 の医療に対する信頼を損なうものだと思います。そこには何らかのサンクションをかけ る形にしないといけないと思います。そうすると、そこは法律に根拠がないとできな い。先ほどありましたように、指導だときかなくても何もできない形になります。そこ を形としては何かやる必要があると思っています。ただ、それが、イコールとして、戒 告や停止と並んだ形の書き方にする必要は必ずしもないのではないかと思っていまし た。 ○寺岡委員  非常に単純に考えれば、処分を受けた人にはそれぞれの重みに従って、全員再教育が 必要という考え方が基本的にあれば単純化されると思います。ただ、再教育は処分の重 み、あるいは内容によってさまざまな再教育があるということではないのですか。それ がないと、今度再教育を受けない人間をどうするかという、議論しにくい話になってき ます。 ○医事課長  基本的には今回新たに改告を設ければ、それを受けた方についても、再教育は義務づ けというか、全員にやってもらうことを考えています。 ○樋口座長  法律論として、再教育を拒むような人がいた場合にどうするか。例えば戒告を受け て、プラス付随処分みたいな形で再教育があって、それに違反しているからという形で 制裁がおきる。つまり、結局、そこは付随処分であれ、やはり一種の行政処分であると いうように捉えたほうがよろしいのでしょうか。 ○宇賀委員  やはり、義務づける以上は行政処分ということになります。行政処分に違反したとい うことで、それに対して制裁を設けておくことによって、強制処分の実効性を担保する という仕組みになると思います。 ○早川委員  そうすると、戒告と再教育を命ずるというのは独立の処分となるのでしょうか。例え ば、別々に争えるという形でしょうか。 ○寺岡委員  いや、そうではないのではないですか。別々なのかもしれないけれども、処分があっ て再教育があるわけです。再教育があって処分があるわけではないと思います。そこの ところはどうなのでしょうか。 ○宇賀委員  戒告そのものだけというのは、別に再教育とは関係ないのです。国家公務員法、弁護 士法、全部そうなのです。ですから、再教育を命ずるということになれば、やはり戒告 とは別の処分として構成せざるを得ないのです。ただ、制度的に両者を付ける、再教育 をするときには例えば医業停止、免許の取消、戒告処分があったとき、必ずそれに付随 する形で制度を構成することは可能です。ただ、処分としては別なのです。 ○蒲生委員  先ほど、私が申し上げたのはそういうことです。カテゴリーとして再教育を設けるの ではなくして、戒告までは理解のできる話です。もし、それを入れるとなると3段階で すよね。それにそれぞれ、言葉が正しいかどうかわかりませんが、例えば医業停止を受 けた、免許取消を受けた人はいないでしょうが、今度現場復帰をするときに再教育が条 件である。戒告はまた表現の仕方が変わってくるとは思います。ある種、処分に付いた 条件という言葉が正しいかどうかわかりませんが、その方が国民の方々に、安心、安全 の医療が提供できることを担保するということの解釈は駄目なのでしょうか。 ○宇賀委員  例えば免許の取消、あるいは一定期間の医業停止だと、今度新たに再免許を申請する とき、あるいは医業停止期間が終わって医業に復帰するとき、再教育を受けていること を条件とするという制度の仕組みがあると思います。戒告の場合、それ自身としては単 に公的に「けしからん事をしましたね」とこらしめるだけですから、結局医業もそのま ま継続できてしまうわけです。ですから、再教育を命ずるというのはやはり別の処分と して仕組む以外にはないと思います。ただ、結果として、免許の取消や医業停止処分、 戒告があったときに、必ずそこに再教育が付いてくるような仕組みにするということは もちろん可能です。 ○寺岡委員  宇賀委員がおっしゃっているのは国家公務員法か何かの話をしていらっしゃるのです か。 ○宇賀委員  いや、違います。 ○寺岡委員  どういうことに則ってお話していらっしゃるのですか。 ○宇賀委員  別に国家公務員法に限らず、戒告という制度はほかにもいろいろあるわけです。弁護 士法にもありますし、ほかのいろいろなプロフェッションについて全部戒告という制度 があるわけです。ほかの制度でもすべてそうですが、戒告という制度は、それ自身とし ては、言わば公的にこらしめるということであって、別にほかのこと、例えば再教育と は何ら結びつかない。弁護士法についての戒告について、最高裁の判例によれば、公表 自身も戒告の効果とは無関係だと最高裁は言い切っているわけです。それ自身として は、公的に単にけしからん事をした事に対して、言わばこらしめる意味で注意をしてい る。それが戒告である。それは別に公務員法に限った話ではなくて、どの制度でも戒告 というのはそういうものなのです。  例えば、教師について研修命令という制度がありますけれども、それは戒告を受けた 者とは全く無関係、結びついていないのです。私はそういう制度の仕組みは十分あり得 ると思っているのですが、そこはそういう形にしないで、例えば戒告、医業停止を受け たときにだけ付けるという制度にしたいということであれば、そういう仕組みでも制度 としてはあり得ると思います。ただ、戒告自身はそういうものなのです。 ○寺岡委員  わかりました。 ○樋口座長  本質論の話が少し入り込んでいると思います。例えば、私が戒告プラスこういう内容 の再教育という処分を受けた場合、よくわからないのですが、何審査法になるのでしょ うか。 ○宇賀委員  行政不服審査法です。 ○樋口座長  行政不服審査法で争うときに、戒告は仕方ないけれども、こういう内容の再教育とい うのはおかしいではないかという、この部分だけ取り出すこともできるわけです。その ようなレベルの話が少しだけ入り込んでいるのです。でも、今回、ここで我々が議論し ている中では、戒告プラス再教育というカップリングでやろうというのは、それはそれ でということですから。あとで争うときの何とかということとは別々になり得ますとい うことと、再教育自体、どうしても義務で何とかということをはっきりさせたいのな ら、処分として扱うほかない。ただ、それを完全に独立のものにするかどうかは制度の 作り方かと思います。あとで争うときは、そこだけを争うこともできるという。 ○寺岡委員  繰返しになりますが、私の論点は、処分に再教育を付ける、再教育だけが独立してあ るという形は本検討会では考えにくいということです。 ○医政局長  補足してお話いたします。多分、法律用語としての処分と一般用語としての処分が混 乱しているためだと思います。いまお伺いしたところ、考えていることは、多分、ほか の意見が出ていなくてみんな同じ考えを議論されていると思います。 先ほど医事課長が申し上げたのは、処分類型に戒告を加えて、従前の2つの処分類型か ら3つの処分類型にするということです。そのいずれについても、程度はいろいろあり ますけれども、再教育を義務として加えるという構成にしようということです。  ここからあとは、法律上の解釈、考え方の問題ですが、再教育というのは義務ですね と。義務としての再教育というのは行政上の1つの行為ですから、行政上1つのことを こうしなさいとか、こうしてはいけないと言うことは、行政処分と法律上は言うので す。処分というのは、中立的な言葉で、悪いことをした人に何かすることを処分と言う わけではなくて、行政上の1つの行為を処分と法律上は言っています。  ですから、そういう意味で再教育を義務とすることは行政処分に当たると、法律家の 世界又は行政上の世界ではそう言っているのにすぎない。何か懲らしめるための処分と は少し違う意味で、ただ行政上そういうことを処分と言っているということなのです。 多分、そこに混乱があったのだろうと思いますが、そういう考え方で、全く考え方に相 違はないように私は聞いておりました。 ○樋口座長  ありがとうございます。相川先生、どうぞ。 ○相川委員  いまの言葉の定義も受けまして、私が先ほど発言した、「再教育」あるいは「教育処 置」というものをパニッシュメントとしてというところだけは、撤回してもよろしいと 思います。その再教育自身がパニッシュメントとしての、「パニッシュメント」を日本 語で訳すと「処分」になってしまうのですが、懲罰としての再教育ではない、として撤 回してもよろしいと思います。  また、もう1つ寺岡先生とほぼ同じことを考えていると思うのですが、私も宇賀先生 と同じように、再教育というものは1つのポジションを持たないと、いろいろなことで 義務づけたりすることができない、ということで発言をして、戒告やほかのもので再教 育というのはあるのですが、いちばん軽いレベルでの、戒告なしの再教育というレベル もあっていいのではないかと考えたわけです。それはそれでまた非常に軽いレベルな ら、医師会なり、あるいはその医師が属している医療機関なりで指導という形で再教育 をさせることができる。そういう軽いレベルのものでしたら、新しい再教育という行政 処分の類型を作らなくてもいい、と意見を変えたいと思います。 ○樋口座長  それに、新しい医道審議会でも、こうやって戒告という制度までできて、このドクタ ーは戒告までは至らないかもしれないが、やはり問題があるので、指導として、まさに いままでもそういうことが行われてきたようですが、再教育を勧めるといいますか、教 育処置、言葉は何でもいいです、そういうことは今後もあり得るということですね。 ○医事課長  そういうことをやってくれと言うのは、可能だと思います。ただ、それはまさにその とおりにやらなくても罰則がないというか、その意味が違う。いわゆる、処分ではない ということがありますね。 ○樋口座長  ええ、それはそうですね。処分ではないですからね。 ○医事課長  はい。いずれにしても、医道審ではどんな議論があったというのを伝えることは可能 だと。 ○樋口座長  そうですね、ええ。 ○岩渕委員  ですから、行政指導ベースでの再教育をきちんとやってもらいたいと、国民の立場か ら言えばそういうことを要望しておきたいということです。 ○樋口座長  懲罰という処分も、大事な部分と、その懲罰だけではなくてという部分が、結局のと ころ本当は大事ですよね。ですから、これは相対として考えていけばということなのか もしれませんね。  そのほか、この1では、いま資格制限とか罰金等が具体的な例としてありますが、取 りあえず、はやはり「戒告」という制度を入れて、さらに付随処分としてこういう再教 育というものをつけるということでよろしいですか。  それで、それは処分であるので、再教育を拒む医師については、罰則を設けることに ついては当然という話になる。そうすると、2の丸のいちばん下の行にあるような話は 出てこない。  今度は2に移ろうかと思いますが、医業停止処分について、どうぞ。 ○蒲生委員  1のところで、中断して申し訳ありませんでした。丸1つ目のポツの3つ目、これは 先ほど医事課長からお話がありましたので分かるのですが、この文言の表現の仕方がち ょっと分かりづらいのではないかという気がするのですが。「医師以外の人も起こしう る過ちと、医師として問題のある過ちとを分けて考えるべきではないか」、この表現を もう少し変えるわけにはいかないでしょうか。お話が先ほどありましたので、内容は分 かるのですが。 ○医事課長  いくらでも、もちろん変えられます。 ○事務局  論点整理ですので、また中身を変えて。 ○医事課長  ええ、そうです。 ○樋口座長  表現はなかなか重要ですしね。わざわざ誤解してもらうような表現をすることはない ですね、本当におっしゃるとおりです。  2では、長期にわたる医業停止についてどうするかということですが、少し具体的に 申しますと、被処分者に対する医業停止期間、医業停止というのは、いまももちろん行 われていて、従前より少し厳しくなってきています。従前の例が何か表で配られていま したが、その前は3年ぐらいだったものが、いまは最長で5年で医業停止にしている例 もある。それで医業停止が取れれば、もちろん再教育を条件としてとなるとは思います が、復帰する。例えば医業停止の期間は最大限このくらいにするということを、もっと はっきりさせる。例えば、これですと。いままでの慣行というか、医道審議会のご判断 だと思いますが、従前の例だと3年ぐらいだったものが、急にそれよりもとんでもない ものが出てきたから5年と言うのではなくて、たぶん従来のものでもやはりもっと厳し くしようというので、5年と。それで、今後はまたそういう社会情勢含めて、医業停止 期間がどの程度のものかを判断していくことになるのでしょうが、やはりある程度の目 安があったほうがいいという、こういう趣旨ですね。 ○医事課長  現行上の規定では、要するに期間を定めて医業停止としか書いておりませんので。 ○樋口座長  構わないと、そういう趣旨ですね。 ○医事課長  司法上はそれもあり得ると。ただ、他の制度などを見ますと、何年以内の業務停止と か、そういう書き方をしています。その辺り、最初の処分基準のところにも影響してく ると思いますが、やはり明確化したほうがいいのではないかということです。 ○樋口座長  これは完全に免許取消という、免許取消のほうはどういうことになるのでしたか。再 免許は、実際には。 ○医事課長  再免許については、現在は医道審議会の意見を聞いて、再免許を与えることができる という規定がございます。ただ、いまは、例えばその免許取消を受けた後、いつから再 免許の申請ができるのかが決まっておりません。後から出てきますが、それも何らかの 定めが必要なのだろう、それを定めるとなると、やはり医業停止期間の最長が定まって おらないと、再免許をいつから申請可というのは、難しいだろうと思っています。  例えば、最長の医業停止期間よりも短い期間で、その再免許の申請ができるというの は、やや理屈とも合わないと思います。その辺りのことでいくと、つながっていくのか と思っています。 ○樋口座長  これは5の問題に直接関わるような話だということですね。再免許に係る手続の整備 で。「実務上は」というのは、答えられなければいいですが、実務上の再免許の例とし て、どのくらいで再免許を認めるということになっているのですか。 ○医事課長  従前まちまちですが、ただ近年再免許を認めた例はございません。 ○樋口座長  そもそもないのですね。  これは、医療の安全とか、質の確保がいちばん大事だとすると、それこそ5年でも10 年でも医業停止しておいて、あと再教育だけあれば、復帰できるよと、そういうものな のでしょうか。医師の業というものは本当に専門的なもので、そんなに長く実務に携わ っていなくて、きちんと復帰もできるようなものかどうか。 ○寺岡委員  個人差もありますでしょうし、なかなか難しい答えにくいものですけれども、やは り、医師、医業、医療行為というものは、長期間医業停止になっていて、そして再教育 はもちろん行うにしても、その現場復帰というものが、医療の安全と質を担保する形で できるのかという問題は、確かにあると思います。ですから、医業停止期間について も、適切な期間というのは当然あるのではないかと、このように考えます。それが、2 年なのか、3年なのか、5年なのかということで、一般論を申し上げるのは難しいと思 いますが、改めて期間をきちんと法律に書かなくてはいけないのかどうなのかというこ とが、まずあるのではないかなと思います。 ○相川委員  私も、現場の意見としては、やはり、例えば5年間医業についていない医師にまた実 際に医業についてよいとする免許を与えたとすると、いまの医学、医療の進歩なども踏 まえて、特に外科系の医師ですと技術というものもございますね。ですから、医業停止 期間中は当然手術の術者にはなれないわけですから、そうしますと、5年間術者やって いないともうほとんど技術を失ってしまうのです。ただし、その人がいままでの蓄積し た技術、知識を捨てて、別の部門で、例えば手術をしない部門で医業をするという考え 方もあるかとも思いますが、それもやはり日本の医療にとって大きな損失だと思うので す。そうしますと、実際では5年遠ざかっているというのは、かなりその人がその後回 復するには大きな空白期間だと思います。これは医業停止という、その上に免許停止と いうものがあるわけですから、かなり重いものはやはり免許停止ということで、ある程 度行政処分ができることを考えますと、ある期間、これはいろいろな方のご意見をお聞 きして、年限を決めるとすれば決めなければいけないのですが、現場としては5年間離 れていれば、たとえその期間再教育を受けたとしても、取り返しがつかない知識あるい は技能を失うのではないかと、私は認識しております。 ○樋口座長  宇賀先生、停職とか免許停止のような、ほかの分野では何かご存じですか。 ○宇賀委員  一般的には、やはり上限は定めているのです。この医業停止処分というのは、相手方 の権利を制限する処分ですので、現在の立法実務でとられている侵害留保説からして も、まずその処分の根拠規定は当然法律に置かなければならないのですが、最近は、単 にその処分の根拠規定を法律に置くだけでなく、その法律の留保についての規律密度と いうことが随分言われるようになってきています。つまり、単にこういう免許を取り消 すことができるとか、あるいはその停止処分ができるという根拠規定だけではなくて、 基本的なその要件ですね、そういうものもやはり法律に書くべきだという考え方が一般 化していますので、医業停止期間についても、やはりその期間、例えば最大限何年とい ったような、そういうことは法律のほうで定めておくべきだろうというように思いま す。 ○樋口座長  どうぞ、お願いいたします。 ○岩渕委員  5年とか3年とかという話がいま出てきているのですが、先生方のご意見を伺ってお りますと、特に、この医業停止と免許取消という2つのカテゴリーの役割分担といいま すか、そういったような問題も、当然関わってくるのではないかと思われるわけです。  厳罰化の方向というのは、私自身は基本的には賛成なのですが、ただその役割分担か らいって、例えば5年というのが適切かどうかというと、いまお話を伺っているよう に、5年間の医業停止というのはそういう意味でいいますと、事実上なかなか難しいと いう状況の中にあって、今度再教育も入れるということも勘案して言えば、医業停止期 間というのは3年に限定し、それ以上のものの処分に該当するのは免許取消ということ にして、その上できちんとした再教育を受けて更生の道を残す、あるいは開くというこ とのほうが、人的資源の活用という意味でも、国民のその信頼感を得る上でも、適切な 方法ではないかなというように思います。 ○樋口座長  いまの岩渕さんのも、2番と5番とを連携させて、いわゆる免許取消と医業停止とい う話を組み合わせて議論していただいているのですが、宇賀さん、この5番の丸の2つ 目の3頁のほうはもうすでに議論もされているので、自主返納して、とにかく処分を逃 げようと思ってもこれは駄目だよと、規定がなくても多分これは駄目だと言えるとい う、宇賀先生のご意見もあったのですが、規定をおいておくことにしくはない。それは そういうことです。ですから、多分これはあまり議論がないのですが、その前の2頁目 の最後の所で、一旦免許を取り消して、それでしかし再免許というのがあり得る場合 に、その免許取消から再免許申請ができるようになるまでの期間を明記する必要がある のではないかという、行政としてこれはどういう感じですか。 ○宇賀委員  これは明記する必要があるというふうに思います。これは、ほかの分野でも、例え ば、免許とか許可とかそういうものを取り消されて、再度申請する場合には、前にその 免許が取り消されてから何年以上経っているというようなことが、要件として法律に明 記されているのが普通なのです。 ○寺岡委員  私も、基本的にいまの5番の所については説明で理解できるのですが、これは考え方 の問題なのですが、長期間の医業停止の問題ですけれども、医業停止が長いものは、こ れは免許停止にすべきではないかというのは、ちょっと私は論理的におかしいと思うの です。やはり長いから、これは免許停止だよというのではなくて、やはり免許停止にす るということと、それから医業停止というのは、明らかな差があるわけですから。 ○樋口座長  免許取消。 ○寺岡委員  ええ、そうです。ですから医業停止が長いものは、それは停止にするんだという、そ の理論展開で説明をされますと、ちょっとおかしいのではないかなというように思いま す。 ○早川委員  いま、長いものについても、しかし一定期間の後に医業に戻ってよいというのであれ ば、その期間はもう少し短くして、でも、取り消してしまって、基本的にはもうこれ以 後やってはいけませんという人のカテゴリーを増やすという意味では多分ないのではな いか。5年医業停止して、その後戻っていいよというようにいまやっているのは、やは り5年もおいてしまうとまずいので、そういう人は、例えば3年で再教育を組み合わせ て戻っていただくということではないでしょうか。だから一応2つは。 ○寺岡委員  言い方ですよね。 ○早川委員  ええ、言い方の範囲です。一応分けて考えているわけではないですね。 ○岩渕委員  先ほどのを撤回します。確かに理屈から言えば、これは両方現実的には役割分担ある と思うのですが、ただ論理展開としては、先生のおっしゃるほうが正しいと思います が。 ○樋口座長  まず2番の医業停止についても、これは確認なのですが、医業を停止して、1年であ れ、2年であれ、3年であれ何であれ、しばらくしてないわけですから、やはりこれは 当然再教育は、通常ではなく、絶対伴うようなものだと考えてよろしいですね。 ○医事課長  これは、まさに条文上の書き方はともかくとして、当然必要になると思っておりま す。 ○樋口座長  しかも、長期にわたればわたるほど、再教育の内容も、例えば、少し期間が長くなっ たり何なりという、そういう配慮も当然なされるであろうと。 ○医事課長  前回の再教育の検討会では、期間の長いものについては、処分の理由を問わず、技術 的な研修も必要なのではないかということになっています。 ○樋口座長  最近は、実際には再免許を認めた例はないということなので、今後どのように実務が 動いていくのかというのはまた別の話なのですが、仮にそういう例が出てきたときに も、同じ理屈にはなるでしょうね。 ○医事課長  仮に、再免許がわたるということになれば、医業停止でも課しているわけですから、 当然何らかのものは必要だと思います。ただ、その場合に、医業停止というのは当然復 帰が前提ですが、免許取消の場合は本来復帰が前提ではございませんので、むしろ一旦 取り消された方に対する再教育というのは、おそらく、ある意味相当な厳密なものにな らざるを得ないと思います。 ○寺岡委員  いま発言した中で、免許停止と言ったのは、免許取消の間違いですから。 ○樋口座長  以上のようなことで、取りあえず、2番、5番はよろしいですか。  それでは3番の調査権限です。これについてご意見を伺いたいと思いますが、いかが ですか。上からつぶしていこうかと思いますが、調査権限の内容というと、やはり報告 徴収、立入検査というのが、代表的な例なのでしょうね。等とありますが、ほかにもあ るのですか。それで当然調査権限があって、法律に基づいて行うものに対して何らかの 形で協力しないということになれば、罰則も置いておくという形にするというのが、普 通でしょうね。何か宇賀さんにうなずいてもらっているから大丈夫かなとは。 ○岩渕委員  直接リンクするかどうか自信はないのですが、国民の目から見ますと、例の富士見産 婦人科事件などは、なぜ、そういう意味でいうと、きちんと対応できなかったのかとい うのは非常に心に残っていて、そういう意味で言えば、その立入調査という形も含め た、きちんとした調査権限がどうしても必要だというように思います。 ○樋口座長  そこまでは多分いいとして、そうすると次の丸がやはり問題で、まずその調査の端 緒、あるいはタンショと法律用語では申しますが、そうしますと、一般の普通の人から 私などからも、とにかくこういう医者がいてという話が出てくるのは、当然ですね。何 十万人もいらっしゃるし、いろいろなことがありますので。それをどこかで受け付け る。これは当然かと思いますが、しかし、いろいろな苦情申し立てがあって、全部が全 部意味のあるものとも限らなくて、それを振り分けて何かやらないといけないというの は、やはり大変なことですね。特に、いままでのように医業停止に当たるようなものし か、とにかく処分はないんだよと言ってしまえば、そこに至らないようなものは、明ら かにもう全部、そこだけではねられるということですが、今度は戒告ということにもな れば、一層間口が広がるということにもなるわけです。そこで、この一般国民からの申 し立てをどういう形で取り扱うかという問題と同時に、それに対応する体制づくりとい う話があって、それは最初のところの、戒告に伴う事務量の増大云々という所とリンク していると思うのですが、この辺りいかがですか。どういう感じですか。  そこに挙がっているイギリスのGMCは、ジェネラル・メディカル・カウンセルで、 これは医師の職能団体、あるいは自主団体ですが、ものすごく権威のあるものらしく て、だからイギリスでは、厚労省そのものがこれだけでやっているわけではないという ことのようではありますが。 ○寺岡委員  まず、現在ある組織といいますか、仕組みというものの中に、都道府県に設けられて いる医療安全支援センターというものがありまして、そこに地域住民からの苦情や相談 というのは相当数持ち込まれていると思います。そういう形と、これも初回に申し上げ ましたが、医師会にも苦情相談あるいは医療相談窓口というのを設置してあります。で すから、そういったものをある程度活用するという形で、これを組織化していくのか、 あるいは、それとは別にやるのか、という辺りが1つ議論になるのではないかと、この ようには思います。 ○樋口座長  宇賀委員に聞きたいのですが、この調査権限というものを定めた場合に、調査権限の あるものというのは、取りあえずは国になりますね。 ○宇賀委員  基本的には調査権限ということになりますと、行政機関ということになります。た だ、法律上、例えば、民間の団体に法律でそういう権限を付与することが全くできない かというと、必ずしもそうではありません。母体保護法で人工妊娠中絶を行う医師の指 定、これは都道府県医師会に権限を与えているわけですね。だからそういったことは可 能なのですが、基本的には、国とか地方公共団体の機関、これが通常ですね。 ○樋口座長  通常ですか。ただ、然るべきその公共的な民間団体にそういうものをやはり委任と言 うのでしょうか。 ○宇賀委員  そういう間接強制で、強制力を持った権限を発動するということになると、通常はや はり国とか、自治体の機関になります。権限を発動するためのその端緒として、そのい ろいろな苦情とかがきますね。それについては、いろいろなやり方があります。個人情 報保護法でも、それぞれの個人情報取扱事業者に苦情処理の責務を課し、さらに、認定 された個人情報団体、例えば、医師会とかそういう所にもいくし、都道府県あるいは国 も苦情を受け付けるといった形で、複層的な苦情処理の仕組みを作っていますね。です から、それはそういった形で複層的な苦情処理の仕組を作っていくことはよいと思いま す。しかし、いろいろな所から情報が集まってきたときに、最終的にその間接強制とし ての権限を発動するのは、これは行政機関が最終的に判断する、そういう仕組みみも考 えられると思います。 ○樋口座長  その仕組みの作り方で、いきなりその調査権限で、しかもその調査に協力しなければ 罰則だというのを、丸投げで民間へ出すという形もギリギリはあり得るかもしれない が、そうではなく、そこまでのところは、地方公共団体ないし国のほうで保持しておい て、そこに、結局任意ということになるのですか、立入検査であれ、報告、徴収であ れ、立入検査までいくのかどうか分かりませんが、そういうところまではある一定の所 に委ねておいてということも、仕組みとしては可能ということですか。 ○宇賀委員  そうですね。ですから強制権限を伴わず、苦情があったときに、それを任意に苦情を 受けて解決するような機能を、例えば医師会も担う。あるいは、仮に厚生労働大臣ある いは都道府県知事に権限が与えられているときに、市町村もそういうインフォーマルな 形で苦情処理を行う。ギリギリのときの強制力を伴った権限は留保しておいて、そこに 至るまでにいろいろなインフォーマルな形で、苦情処理の仕組みを用意しておくという ことは十分あり得るし、そのほうが円滑に機能するのかなという気はしていますが。 ○寺岡委員  間接強制ということを、きちんと教えていただけませんか。 ○宇賀委員  行政調査を大きく分けますと、強制調査と任意調査に分かれるのです。任意調査のほ うは別に法律に根拠がなくてもできますが、相手方は一切それに応じる義務がない、任 意に応ずるか否かを判断するという、これが任意調査です。強制調査の中に大きく分け て、直接強制と間接強制がありまして、直接強制というのは、相手方が嫌だといっても 強制的に立ち入って臨検捜索などができてしまう。例えば、いわゆるマルサのような、 国税犯則取締法に基づく犯則調査権限みたいなものが、直接強制です。これは、非常に 例外的なものしか認められていません。通常は、強制調査と言っても間接強制で、その 調査に協力をしないと罰則が適用されるが、ノーと言ったときに、強制的に立ち入って 調査することはできない、これが間接強制です。 ○蒲生委員  ちょっと的外れな発言になるかもしれないのですが、基本的にこの検討会、行政処分 のあり方に関する検討会ですから、類型を考えましたね。それで、行政処分をどうする かということも、当然拡大して考えることだろうと思うのですが、うまく読めているか どうか分かりませんが、現状は、医療技術も含めて、倫理面も、ある刑事事件がその当 該する医師、歯科医師等にあって、それらの結果、判決を踏まえて、医道審議会が開催 されるわけですね。そこで、当然捜査というか、調査というのはもうその段階ですべて 終わっているわけですね。いま考えられていますのは、さらに別の角度から、刑事事件 に関係なく、国民の方々からの苦情等々もみな受け入れる中で、捜査あるいは調査をど こがどうするのかという議論ですか、いまやっているのは。すると従来の行政処分等々 の考え方の流れとは全く違う、新しい角度で、この行政処分を考えようということです ね、これはそういうことでよろしいわけですね。 ○早川委員  刑事事件ではなくて、というのもあるのではないですか。 ○医事課長  もともと仕組みは別に刑事上のものには限っておりません。法律上はそういったこと を書いてございませんので、現実に平成14年以降、いろいろな大臣のご発言その他の中 で、そもそも刑事事件とならなかったものについても、問題のあるものについては積極 的に取り上げていくべきだという議論がございました。  そういった中で、いろいろな国民の方からの申し立て、その他ございます。最初、座 長がおっしゃったように、その申し立ての中には、愚痴、苦情ぐらいから始まって、非 常にいろいろな広範なものがある。その中で私どもとして、限られた資源で、どういっ たものを取り扱っていくのかというのはやはり非常に重要なことになりますので、それ で多分いま宇賀先生とかがおっしゃっていたように、全部いきなり国へ来ても大変なの で、それはいろいろな所がやるとか、あるいはどういったものを優先的に調査するかと か、そういったことをきちんと決める必要があるのかなと。 ○寺岡委員  もう1つ質問がありました。報告徴収と立入検査等でよいかと、こうなっています が、これはステップなのでしょうか。報告徴収をまずやって、それから立入検査という ことになるのでしょうか。それともどう考えたらいいのですか。 ○宇賀委員  一般的に、こういう間接強制の場合ですと、報告徴収権限、立入検査権限というのが 規定されているのですが、その両者の間で、必ずまず報告徴収を先行させて、それで立 入検査というような形で、明確に法的に位置づけられているわけではないのです。です から、それはその時々に応じて、立入検査までしなくても、報告を命じたりということ で済めば、通常はそこで終わるということになると思います。  しかし、それだけでは不十分だと、立入検査ということになってくる。そこが行政法 の一般原則で、比例原則というのがありますから、その行政目的を達成するために、必 要最小限の範囲で公権力を行使するということですから、報告を求めて、それで足りれ ば、立入検査まではいかないということになるかと思います。やはり最初からこれは立 入検査がどうしても必要だということになれば、立入検査ということになることもあり 得るということだと思います。 ○樋口座長  3番のところで、いかがでしょうか。ここは実際に動き出したときに、戒告等の処分 ができるという話になったときに、現実には大きな問題になってくるだろうと思いま す。そこへ、職能団体として、これは医師会だけではないと思いますが、これは一般的 な行政処分の話ではなく医師という専門職について我々語っているので、やはり専門職 というのが本当に国民の信頼を受けるのは、国が監督しているからだよという話ではな くて、まさに専門職が専門職としてきちっとやっているということであるのが本当はい ちばん望ましいですね。だから、そういう体制づくりにもっていけるような話で、しか も医療の質と安全について、いちばん誰が責任を持つのかと言えば、やはり医師であっ てもらいたいというのは当然のことですから。そういう話にもっていけるといいと思う のですが。  そこで、常に弁護士と医師という対比があって、日本の場合は、弁護士会は強制加入 だから、あれも国家資格ですが、処分も弁護士会が単位弁護士会でやっていますし、だ から調査権限であれ何であれ、全部自分たちでやっている、そういうこととの対比があ りますね。しかし、あちらは何というのですか、その強制加入であって、日本の場合 は、医師は全部どこかに入らないといけないというわけではなくて、医籍にだけは登録 するという話を学びましたが、そういう違いはやはり私は大きいような気もしますが、 他方では、強制加入団体であるから必ずこれだけのものができて、強制加入でなければ もうできないという、そういうものとちょっと何か軸が違うような気もするのです。  あまり参考にならないかもしれないですが、アメリカの弁護士の話なのです。あるい は、本当は医師もそうだと私は思うのですが、とにかく私がよく知っているほうはアメ リカの弁護士なのです。アメリカ弁護士会は任意加入なのです。全国組織ですから当た り前といえば当たり前なのですけれども、それで加入率も本当に低いわけですから、そ んなに高いわけでもない。ただ、アメリカ弁護士会が作った懲戒ルールにモデルルール というものがありまして、それを全米の大半の州、47州か何かですが、採用しているの です。わずかな任意団体の所で、実際にどういう場合に懲戒するか、懲戒の基準は何か というのは、そういう弁護士会がまさに専門団体として作ったルールを皆で採用して、 それに基づいて、この州の弁護士樋口は駄目だとか、そういうことをやっている。やは り強制加入団体でないと、どうしても駄目なのかというのは別のような気もしているの です。強制加入であろうがなかろうが、やはり医師としての専門団体が、こういう医療 安全の質の向上を図るために自分たちの処分についてどれだけのことができるかという ことを、これまでも考えてこられたと思うのですが、今後も一層考えてくださるような ものを、うまくここのシステムに取り込むことができれば、それはそれでいいのかなと 思うのです。それが全く機能不全で、全然動かないよという話になれば、また別のもっ と違うことを考えないといけないことになるのかもしれない。どうぞ。 ○岩渕委員  いま座長がおっしゃったアメリカの例というのは、多分、類型あるいはそういう基準 というような話で、ただ、その処分権限が、何というのか医師会か何かにあるのと、ち ょっと違うのではないかという印象をを受けましたけれどね。 ○樋口座長  それはそうなのです。 ○岩渕委員  だからそこをいっしょにしてしまうと、話がおかしくなるなというふうな、そういう 心配は持ちました。 ○樋口座長  ええ、分かります。 ○岩渕委員  それとですね、日本においてはまず、いままで、あるいはこれからのことを考えます と、例えば、国が膨大な患者からの苦情とか訴えを受け止めるような巨大な組織、巨大 になるかどうかはともかくとしまして、そういう組織を作るというのは、これは行政改 革の時代でもありますし、公務員の純減時代でもありますので、現実的にはなかなかも ちろん難しいということにはなると思います。そういう意味で、いまある資源からいい ますと、その都道府県の医療安全支援センター、それから日本医師会という様々なもの がありますので、それを活用していくということについては、全く異存がございませ ん。ただし、実は、最終的に立入調査の権限も有するとかということになりますと、先 ほどから座長などがおっしゃっているように、やはりどこかその行政の場で最終的な権 限を担保するという形にならないと、ちょっと難しいなというように思います。  イギリスの例のように、それだけ権威があって、皆が納得しているという状況に、い まの日本があるかというと、残念ながらまだそこまでいっていないというような状況の 中で、では国民にとってみると、苦情は医師会のそこに言うかもしれないが、もっと何 か切実な訴えみたいなものが、なかなかしづらいということも、場合によってはあるか もしれないということも含めていえば、現実的に、例えば都道府県のそのセンターと か、医師会のそれぞれの情報源と言うと怒られますが、様々なそういうような形で情報 を集めて、それで判断して、どうしてもこれは調査権限を発動しなければならないとい うのを、仕方がないから国がやるという、そういうシステムしかなかなかうまくいかな いのではないかなと思います。 ○樋口座長  この論点3について、ほかにご意見があればいただきたいと思いますが、いかがです か。 ○相川委員  すでに、この丸2の5番目のポツに書いてあるものですが、特に苦情の対象になる医 師には、医師会に属してない医師も多い。医師会はきちんといろいろやっていますの で、苦情の対象になることは少ない、私もそう思います。やはり最初の受け口というの ですか、いろいろな苦情なり、指摘なり、告発というのでしょうか、何か訴え的なもの を分析して、これが行政処分の対象になり得るのかどうなのかというところを分析する 1つの機関としては、私はやはり日本医師会や各地域の医師会というものが1つの適切 な団体だと思っております。  もし、そうなると、やはりその医師会の所には強制の権限はないとしても、ある程度 調べる権限と言ってはいけないですか、調べる根拠のようなものを与えておきません と、例えばA医師が繰り返し複数の患者にこういうようなことをしていて、けしからん じゃないかという苦情なり、訴えが医師会に来た場合にも、そのA医師に医師会が尋ね ても、私は医師会の会員じゃありません、知りませんということで、もう突きはなされ てしまうと、医師会としては、強制権限を持っている例えば都道府県なり何なりに、そ れを投げるしかあり得なくなってしまうのです。ですからその辺りの具体的なことを整 理しておいた上で、窓口を医師会だけにしろとは言ってはいませんが、やはり医師会が 職能団体として、その窓口の1つになるということは、私は適切だと思っています。 ○樋口座長  いまの相川さんのご発言は、この3のいちばん最後の丸、調査を実行性のあるものと するためにはどうすればよいかという点に、直接関係していると思うのですが、説明を 私が十分聞いていなかったのかもしれませんが、どういうような趣旨ですか。 ○事務局  ここについてはいまご議論がありましたように、具体的にこういった調査権限という ものを創設したときに、もちろんどこがどれだけ権限を持つかということに、当然いま お話がありましたように、いま国に対する権限がということではありますが、全体のこ ういった調査の組織として、有効的に、効率的にそういった調査というのが行われるに はどうしたらいいのか。そういった組織的な観点も含めた観点で議論していただければ ということで、こちらに書きました。 ○樋口座長  そうですね。その中の一部として、いま相川先生がおっしゃったように、こういう団 体にはこういうオーソライゼーションがちゃんと与えられているというようなことも、 やはり明記しておかないと、それがないと無責任な話ではありますね。完全任意という 話になってしまいますからね。任意であっても、ちゃんとしたものではあるという話を 作っておいたほうがいいかもしれません。 ○宇賀委員  例えば、個人情報保護法で認定個人情報団体という仕組みを作っていますね。ああい ったものも1つ参考になるのかなと思いますが。 ○樋口座長  次に4と6を一緒にして、これはやはり医師に関する情報の取り扱いの問題だと思う のです。医籍というものがあるということと、医籍に限らず、医師の情報をどうするか という話だと思うのです。4と6を一緒にしようと思っていますが、まず4で、再教育 の修了等について記載することについてどう考えるか。この再教育は、だから付随処分 というようなものであるので、医籍には、だから戒告と、それに伴って再教育というこ とが、樋口というドクターに課されましたということが、載りますね。それが修了した 場合には、修了とも書こうという趣旨ですね。 ○医事課長  そうです。 ○樋口座長  これは問題ないでしょうね。それは、それ自体事実と違うことを書こうというわけで もないから。2つ目の丸ですが、この処分理由を単に戒告と書いてあったのでは何で戒 告されたのか分からないということがあるので、もう少しどうして戒告されたのかとい うことも記載する必要があるのではないかというのは、結局この情報を誰が利用するか という問題とリンクしていて、少なくとも、例えば私がある病院長をしていて、もう1 人のドクターを今度雇おうとして、そういうことを日本においていま実情としてやるの かどうか分かりませんが、それで医師の資格、その人がどうだったのかということを確 認しようとしたら、さっきの3点セットを情報としては得られますから、問い合わせだ けはできるわけですね。いまは、処分等については私にも知らせてないという話です が、そういうことですね。 ○医事課長  その方が医師であるかどうかを教えるわけですけれども、処分を受けたことがあるか どうかはお知らせというか、教えておりません。 ○樋口座長  それは私もやはりちゃんとした人を雇いたいと思っていれば、知りたいと思います ね。知りたいと思って、そこがまず第一歩で、だから処分までそういう医療機関に知ら せるかどうかという話があり、知らせるとしたら戒告と書いてあるだけでは、一体どう いうことですかと。本人に聞けばいいようなものだけれども、本人に聞くのと別に、こ こへこういうデータがあったほうがいいという、そういうような脈絡かなと思っている のですが、この点いかがですか。 ○岩渕委員  それは、それこそ処分だけであれば、情報としては非常に中途半端で不十分なもので ある、基本的にはそう思います。しかも、どの範囲に公表するかという問題と、もちろ んリンクするのですが、少なくとも医籍にそれを記載しないというのは、一体、では何 のための医籍、医籍としての存在価値すら疑われるようなことになるのではないかなと いうように思います。 ○樋口座長  よろしいですか。そういう岩渕先生の。 ○寺岡委員  私も、基本的に結構だと。賛成なのですが、ただ処分理由というのも、いわゆるくだ くだしく書くのではなく、その書く類型というものがあるのではないかと思うのです が、そこら辺のところを誤解を生じないような記載と、最後にありますが、それと合わ せて、ちょっと説明していただけますか。 ○医事課長  基本的に、いまは、したがいまして業務停止6月とか書いてないわけですね。この場 合に、その処分理由を記載するという場合にも、例えば、刑法上のその罪名などで書く ことになります。医療事故によって人が亡くなった場合も、その方が全く関係のない交 通事故で誰かをひいてしまった場合も、いずれも業務上過失致死というような形になり ます。したがって、刑法上のその罪名を書くだけではおそらく何が何だか分からない部 分も出てくると思います。そういったことでいきますと、この「誤解を生じないような 記載にする」というと、どこまで書くのかというのをやはり検討しなければいけないの かなと思っているところであります。 ○宇賀委員  こういう例えば医業停止とか、免許取消という不利益処分をしたときには、現在でも 行政手続法上では、不利益処分についてはその名あて人に対しては理由の提示が義務づ けられているのです。ですから必ず理由を書かなければならないということになってい ます。そのときに、相手方に対してどの程度の理由を書く必要があるかということにつ いては、すでにかなり最高裁判例の蓄積もありまして。その理由を見て、相手方が自分 がどういう理由で処分を受けたかというのが、その記載自体から具体的に把握できる程 度の理由を書きなさいということになっていますので、現在でもその相手方にはすでに 伝えられているわけですね。これをそのまま医籍に記載するということにして、今度は 医籍に記載したときに、医療機関にだけ開示するのかといったような問題が出てきま す。基本的には、いま行政手続法上で不利益処分の理由として名あて人に開示する、伝 えることが義務づけられている理由、これが基準になるのだと思います。 ○樋口座長  この6のほうで、いま4と6をリンクさせているので、こういう情報をいかなる形 で、どういう範囲で提供するかという問題ですが、これはいかがですか。まず、いちば ん初めに、情報の中身の問題で、医師が診療に従事して、どこで働いているのか、どこ で医業を行っているかということについては、いまのところ把握はしておられないとい うことなのですか。 ○医事課長  統計というか、私どもが利用できる形ではとっておりません。 ○樋口座長  そういう問題が1つあると。その上で、医者についての情報、これはいろいろなもの があって、今日、これは行政処分のところから入っているから、どうしても処分情報の ところだけを考えていますが、それ以外のこともありますが、しかしこの検討会では行 政処分に関する情報に焦点を当てざるを得ないのだと思います、そういう情報をどこま での範囲で提供すべきかということですね。いまのところは国民に対しては、この私が 医師の資格を持っているかどうかという情報提供すら、いままではないわけですね。 ○医事課長  ここに書いてございますような、氏名・生年月日・医籍登録番号という、3つの情報 を持って、照会があった場合のみ答えていくという状況です。 ○樋口座長  これもちょっと宇賀委員、その医師の更生や個人情報に配慮した事項にする必要、こ れはどうですか。どういうように考えたらいいですか。 ○宇賀委員  ここでは、その医師に関する情報公開の問題と個人情報保護の問題と両方の要請をど う調和させるかということになってくると思うのですね。  一般的には、現在の情報公開法では個人識別情報は不開示が原則です。ただし、公益 上の義務的開示の規定があって、国民の生命・健康、そういうものを守る利益が大きい 場合には、個人識別情報であっても開示をすることになっていますので、それが基本的 な考え方、基準になると思います。  国民一般に開示するのと、医療機関に限定して、例えば、医療機関がある人を雇用す るときに、その人は本当に医師として適格かどうかをチェックするために開示をすると いうのと、私はそこは必ずしも一致しなくてもいいのかなと思っていまして、医療機関 がそこを十分チェックしてくれるという仕組みがあれば、その分一般への情報の提供の 範囲がある程度縮減する仕組みもあり得るので、そういう医療機関に対する情報開示と 国民に対する情報開示は、一応、出発点としては分けて考えていっていいのかと思って いるのです。ただ、全部が全部そういう医療機関に勤務している医師ではないので、全 面的にそこのチェックを医療機関に任せるわけにもいかない面もあります、個人の開業 医などの場合がありますから。そこをどうするかは、なかなか難しい問題ですが、確か に国民が確認できる情報であっても、医師にも個人情報の要請がありますので、必要以 上に個人情報を出すべきではないと思うのですが、他方で国民の生命・健康を守る必要 性のほうが強いのであれば、これはそちらの要請のほうが優先するのが情報公開法の考 え方ですから、そこで国民の生命・健康を守るほうが優先する情報は何かをここで議論 することになると思います。 ○樋口座長  これは法律論になるのですが、前に私も勉強したところで、日本の最高裁判例の1つ に、あれは地方公共団体だったかもしれませんが、ある人の前科の照会に答えてしまっ て、この人はこういう前科を持っていますと。それで訴えられて負けた。負けたという のは、つまりプライバシー侵害で勝ったほう、訴えた側がありますよね。ただ、前科だ から、そうすると前科ですらプライバシーになり得るというのは日本の最高裁の考え方 のようでもあるので、不利益処分は当然かと思うのですが、一方でその逆の議論として は、前科のある人と医師が医療に関して何らかの処分を受けたという話は、国民の健康 ・安全という別の理由があるので、区別もできる可能性もあるということですか。 ○宇賀委員  そうだと思います。いま座長がおっしゃられたケースの場合は、一般の民事訴訟の一 方当事者の弁護士が弁護士法に基づき照会して、自治体が前科情報を出してしまったと いうケースです。ですから、最高裁も前科は特に他人に知られたくないプライバシーな ので、弁護士法に基づく照会といえどもそれを安易に出すべきでなかったということ で、最高裁でもああいう判決が出たわけです。もちろん医師であってもそういう前科は 一般的に言えば他人に絶対知られたくないプライバシーであり、それは守られるべきだ と思います。  ただ、医師のように国民の生命・健康を預かる職業の場合には、そういう国民の生命 ・健康を守るために必要な個人情報でなければ当然守られるべきだと思いますが、仮に いまそれを開示することによって守られる国民の生命・健康という利益のほうが医師の プライバシー保護よりも優先する場合があれば、その場合には開示の要請が働いてくる ということになります。だから、そういうものが何かは皆さんのご意見を伺いながら考 えたいと思います。 ○樋口座長  法律論的にはどちらもあり得る話で、そうすると政策論として本当によりよい医療の ために、とりあえずこの段階でそういうところまでの情報公開をしたほうがいいのか、 あるいはいろいろな問題がかえってあるので、とりあえずはという形でいくのかと。政 策判断的な要素でまた別のこともあり得るということですかね。 ○宇賀委員  国民からの開示を待たずに情報提供をするかどうかという部分はかなり政策論になっ てくると思うのですが、現在、これが仮に医籍に記入されたということになりますと、 行政機関情報公開法がありますので、これに対して国民が開示請求権を持っているわけ です。情報公開法に基づいて開示請求が出てきたときには、これは不開示情報に該当し ない限りは行政機関の長は開示が義務づけられることになっていますので、そこの部分 は政策論ではなくて解釈論の問題になってくるということだと思うのです。  ただ、開示請求が出てこない段階でどこまで情報提供するかということになってくる と、開示情報に限定されることになると思うのですが、それを開示請求を待たずにここ までは積極的に情報提供しますということになってくると、そこは政策論の問題だと思 うのです。 ○寺岡委員  国民あるいは地域住民の安全・生命を守ることがいちばん基本ですから、私もその観 点で物事を考えることは賛成です。ただ、国民あるいは地域住民の安全・生命を守ると いう立場から考えたとき、その言葉はいいのですが、その医師が何らかの前歴を持っ て、なおかつ、現在、国民の生命・安全を脅かす存在だということがあり得ることは考 えにくいと思うのです。そうであれば、免許を改めて与えるとか、あるいは処分が解か れることはないわけですから、もしその医師が未だなおかつ危険であるということであ れば。ですから、処分が済んでいて、しかも再教育を受けて、その再教育のあり方の内 容を読みましても、それを指導する人がそれなりの判断・判定をして、職場に戻っても いいという判断をしているわけですから、その判断をしたあとで、なおかつその医師が 危険な存在であるという判断は非常に難しい判断ではないかと思うのですが、ですから そう単純な話ではないと思っているのです。 ○相川委員  いまのに関係してですが、例えば前科についても、ある期間経つと消えるというか情 報が抹殺されるということがいまあるのですか。 ○宇賀委員  前科の記録は当然国にもありますし、各市町村にもあるのです。ただ、いまおっしゃ られた点はおそらく時の経過という問題だと思います。これはすでに判例もあります が、例えば刑事訴訟ですと、これは、原則、公開の法廷で行われますよね。判決も公開 の法廷で言い渡されますから、そういう意味では公開されている情報ということになる し、その当時、社会的な注目を浴びた事件であれば、例えば新聞等でも報道される。で すから、その時点ではもう公表されている場合もあり得るのです。  ただ、だからといって一度公表されたからそれがずっと未来永劫プライバシーとして 保護されないかというと、そうではないです。先ほど座長がおっしゃられたように、基 本的に前科は保護される。それは時の経過によって逆に、例えば記憶もだんだん薄れて いったりということで、プライバシーとして保護する要請が高まっていく面があるわけ です。これは何も刑事事件に限らず、例えば懲戒処分を受けた場合であっても、一度公 表したら、それは未来永劫、例えば情報公開法に基づいて開示請求したときに全部公表 かというと、いま内閣府の情報公開・個人情報保護審査会でもそういう取扱いはしてい ませんで、例えば公表された懲戒事案でも、一定期間はこれは公表されたものだからと いうことで公にされた情報として扱っていますが、相当、長年月経ちますと、例えばい までもホームページに載っているのは別ですが、そうでないものについてはこれは公に されていない情報ということで保護しているのです。ですから、そういう時の経過によ ってプライバシー性が高まっていくことはあり得ると思います。 ○樋口座長  先ほど法律論で情報公開請求が出されたときにどうなるかという話があって、いまの ような話で時の経過があって、しかし私は何も知らなくて、とにかくその人について情 報公開を請求してきたときに、それで記録はあるわけですから、断わる理由はプライバ シーですか。  それから、私はうろ覚えで申しわけないのですが、性犯罪者の情報の話がありますよ ね。アメリカの一部ではとにかく住民に全部公開して、こういう性犯罪を犯した者が近 辺にいますということまで公開しているけれども、そうではなくて警察署限りというの ですか、その地域を守る人たちの限りで知らせておくという場合に、例えば日本で、日 本で多分そうだと思うのですが、その場合にそこへ情報があることだけはわかっている から、誰かいるのかとか、あるいは特定の人間を指してこれは性犯罪を犯したことがあ るのか、というのを警察署かどこかにとにかく情報公開をやってきたときに、それは断 れるのですか。 ○宇賀委員  まず現在、各都道府県の警察に法務省から、例えば性犯罪を犯した者などの出所情報 は提供が始まっていますが、そうすると、いまは47都道府県すべて公安委員会が実施機 関に入っていますので、それについても情報公開条例に基づいて開示請求することは可 能なわけです。  例えば法務省から提供された性犯罪者の出所情報の開示を求めると、こういう開示請 求はできるのですが、それぞれの都道府県の情報公開条例で個人情報については国と同 じように原則不開示、ほとんどが個人識別情報は原則不開示という形を取っていて、大 阪府などはプライバシー情報型を取っていますが、やはり原則不開示です。例外的に、 例えば国民の生命・健康、そういうものを守る必要のあるものについては、逆に開示を 義務づける構造は基本的に国の情報公開法と同じですので、それに即して判断されるこ とになります。そのときに国民一般にまでその情報が出ていないと国民の生命・健康が 守られないのか、あるいは警察に渡しているのだから、警察がそこはチェックしてくれ ているのだから、それで一応安全が保たれているということがあれば不開示ということ になると思います。  ですから、同じ問題がいまの再教育との関係でもあります。おっしゃられたように確 かに、例えば医業停止処分を受けても、いま現に医療に携わっている人は再教育を受け て、全部そういう問題は解消しているはずだという前提に立てば、公益上の義務的開示 の必要性がないともいえます。あれは比較衡量なわけです。一方において国民の生命・ 健康・安全、そういうものを守る利益、他方において個人のプライバシー等に代表され る権利・利益を守る利益、それを比較衡量して、前者が優越する場合には開示が義務づ けられるし、逆に後者が優越される場合には不開示にしなければならないという構造で すので、およそ現在医業に携わっている者に関しては、過去に問題を起こしても全部そ こは安全性が制度的に担保されることになれば、おそらく開示請求が出てきたときも不 開示という判断になると思います。ただ、そこのとのころで本当にいまの仕組みでちゃ んとそこがしっかりいっているのかどうかが問われると、そこに何か疑問が出てくれば それだけでは駄目ですという話になってくると思うのです。 ○樋口座長  なかなか難しいですね。時間にはなってしまったのですが、もう少し6の最後の点に ついてはいかがですか。 ○岩渕委員  この議論をやったらまだ延々かかると思いますし、最終的に意見の集約ができるかど うかすら難しいと思います。それで、先ほど座長がおっしゃったように個別的な問題で もしやっていくとすれば、少し申し上げたいと思うのです。医師が診療に従事している 医療機関について把握する必要があるかという点については、情報の扱いも含めて行政 的に必要がたぶん出てくると。ただ、それがどの程度の事務量になるのかということも かなり考えないといけないわけで、それを乗り越えて是非必要だというほどの必要性が あるのかどうかというところがまだよくわからないという感じがしているところです。 国民に対してでは、氏名・生年月日・医籍登録番号だけ、これはとてもではないけれど も一般の国民には何の役にも立ちませんので、国民の安全・安心につながる情報提供と いう観点に立てば、例えば医師の氏名だけでも、医師資格があるかどうか、少なくとも その点については答えてほしいと思います。  もう1つ、具体的なもっと詳しい情報については、医療機関ということであれば非常 にわかりやすくて、しかも現実的な処理だなと思うのですが、ただ先ほどから言ってい るように医療機関に勤務する医師だけかというと、そういう医師について言うと、医療 機関は多分、前にもご指摘がありましたように大学も含めて様々な情報を医療機関は持 っていて、もともとそういう問題があって国民の生命に危険を及ぼすような医師につい ては、ほとんど排除されていると見て間違いないように思うので、むしろ問題はそこか らすり抜けているところに対してどう安全措置を講ずるかということだと思いますの で、これもまた大変に厄介な話で、ではどうすればいいのかというところは、まだ具体 的な方策はまたこれからいろいろ議論する必要があるのではないかと思います。 ○樋口座長  もう1点、下から2つ目の丸で情報の管理、提供の主体の問題もあります。それは先 ほどの、どういうところがこういう事柄について、最終的には国であることは間違いな いのですが、全部国がやるのかどうかという問題は同じようにあるということです。  時間にもなりましたので今日はここまでとしまして、次回の検討会について事務局か ら説明を伺いたいと思います。 ○事務局  ありがとうございました。次回の開催につきまして日程をお知らせしますと、次回は1 1月9日(水)午前10時〜12時までです。場所はまだ決まっていませんので追ってご連絡 を差し上げます。資料ですが、基本的には、冒頭、座長からもありましたように、次回 の予定としては、ある程度の文書という形でいままでのご議論をまとめてお示しすると いう方向で考えています。 ○樋口座長  ほかによろしいですか。本日はどうもありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省医政局医事課  電話 03−5253−1111(内線2568)