05/10/07 労働政策審議会職業能力開発分科会 第21回議事録           第21回労働政策審議会職業能力開発分科会 日時:平成17年10月7日(金)10:00〜 場所:厚生労働省合同庁舎5号館9階 省議室 ○今野分科会長  ただいまから「第21回労働政策審議会職業能力開発分科会」を開催します。本日の出 欠の状況ですが、黒澤委員、中馬委員、長谷川委員、谷川委員がご欠席です。なお、長 谷川委員の代理として末永さんにご出席をいただいています。  早速議題に移ります。本日の議題は、職業能力開発の主体とキャリア形成についてで す。まず、事務局からご説明をお願いします。 ○総務課長  前回ご案内しましたように、本日は職業能力開発の主体とキャリア形成についてご議 論をいただくために、資料を用意しています。資料1が、いろいろな企業、それから個 人の側の能力開発に関係するデータ、行政の施策等を入れているもので、主にこれでご 説明したいと思います。なお、キャリア形成指針を資料の2で、前回も付けましたが、 資料3で第7次計画の評価についてということで、若干補足した部分を入れていますの で、あとでご説明します。  それでは、資料1について、一括して説明します。企業の側の能力開発の状況は、1 頁からです。教育訓練の実施状況ですが、企業調査と従業員調査がありますが、最近の 傾向を見ると企業及び従業員のいずれを見ても教育訓練の実施率が低下傾向にありま す。特に両方に共通するOff−JTの状況が、企業調査における実施率の低下の幅よ りも従業員調査における受講率の低下の幅が大きくなっていまして、以前より限られた 従業員を対象としてOff−JTを実施する傾向が強まっているのではないかと思われ ます。  2頁は、教育訓練の実施状況を職種別に見たもので、上がOff−JTの実施率、下 が自己啓発の実施率です。職種ごとにそれぞれバラつきがありますが、薄いブルーのい ちばん左側にある柱が、専門・技術職で、これがいちばんそれぞれのグラフの中でも高 い状況ですが、いちばん右のグレーの生産工程・労務については、やや低い状況です。 これはずっと傾向としては変わっていないのではないかと思われます。  3頁は、選抜教育と底上げ教育のどちらを重視するかというもので、経年的に見てみ ると、全体として底上げ教育を重視する企業が、緑色のほうで6割弱ぐらい。選抜教育 を重視する企業は4割程度ということで、そんなに大きな変化はないのですが、ほぼ横 這いで推移をしているという状況です。  4頁は、選抜教育重視の割合を企業規模別に見たものです。これまでは300人以上の 規模の大企業で選抜教育重視の割合が低かったわけですが、いちばん右の今後という所 を見ていただくと、逆にグレーの300人以上という大企業のほうで選抜教育重視の傾向 が見られると思われます。  5頁は、企業における経営者層の選抜・育成についての考え方ということでピックア ップしたものですが、企業にとって経営者層の選抜・育成は、人材育成上で重要な課題 であり、選抜の時期・方法については、若手から部長クラスまで幅広く選抜をするとい うところや、30代後半から40代前半での選抜という回答もありますが、選抜研修の年齢 層も意識的に以前に比べて若い世代を対象としているといった製造業の意見もあり、若 年化・早期化の傾向も見られるのではないかと思われます。  6頁は、従業員の能力開発について、経常利益別の増減という観点から示したグラフ です。表中の指数が、5年前の経常利益を100として、これがいちばん上のグラフです が、これに対して経常利益が伸びている所と落ち込んでいる所というように比較をして みたものです。薄いブルーの非常に積極的であるという所と、濃い紺色の積極的なほう だと思うという所の2つを合計して見ていただきますと、5年前に比べて2段目の125 以上という所が、いちばん積極的であるという前向きな回答の割合が大きくなっている という傾向が見られるかと思います。ここまでが企業側から見た能力開発のデータで す。  次は就業形態等ですが、7頁の非正規雇用者数の推移です。前回の議論の中で、いろ いろな形態の非正規雇用者が増えているのではないかという話もありましたので、そう いった面でいくつかデータを揃えてみましたが、数的には1993年が986万人だったもの が、2004年には1,555万人ということで、569万人ほど増えています。このグラフの右の 3つ、平成2年からの所から赤いのが出てきています。それまでは黄色い所が派遣・契 約・嘱託ということで一括していましたが、2002年から細分化されていまして、派遣や 契約社員・嘱託、その他というように分類されていますが、いずれにしてもこの辺が増 えてきているということが言えると思います。  8頁の就業形態別の能力開発の実施状況です。左側が社内教育訓練、右側が自己啓発 援助制度で、正社員がいちばん左のそれぞれ薄いブルーの所ですが、これに対してほか の3つの非正規といわれる方々についてはいずれも正社員に対して能力開発の実施率は 低いということが言えようかと思います。  9頁の業種別・就業形態別の社内教育訓練の状況です。全体として、正社員に比べて パート労働者を対象とした社内教育訓練の実施率は低いと言えますが、業種別に見てみ ますと、いちばん高い所が金融・保険業でして、パートの実施率は50%程度にも達して いる所があります。一方で、左から3番目の情報通信業のように、パートの社内訓練の 実施率15%にも満たない、かつ正社員との実施率に大きな較差があるという所もありま して、業種それぞれ特徴があるのではないかと思われます。  10頁は、事業所の規模別の社内教育訓練の状況です。これも一般的に、規模が大きく なるにつれてそれぞれ正社員もパートも、教育訓練の実施割合は高まる傾向になってい ます。11頁は聞取りですが、パートタイム労働者に対する積極的な能力開発実施事例と いうことで、A社、B社とあります。A社は大手のスーパーですが、パートタイム労働 者にもそれなりの知識や接客技術の必要性を認識しているということで、求められる技 術レベルを提示した上で、技術を評価するための検定を実施している。それをパートタ イム労働者にも実施しているということです。検定の認定を処遇に結び付けて、場合に よっては時給の上乗せをしているということで、パートタイム労働者が自発的に能力開 発に取り組むことも期待をしているというような回答です。  B社は大手の百貨店ですが、パートタイム労働者のスキルアップは不可決だというこ とで、通信教育について補助を実施しています。人事制度を改正して、講座参加型研 修、販売スキル講座や商品知識講座にも正社員と同様に参加できることとした、という ような事例もあります。  12頁は、派遣労働者に関する教育訓練の実施状況です。派遣労働者に対して能力開発 を実施しているかどうかということで、実施しているという比率が、いちばん左の所で すが59.9%で、約6割あります。その内容はすぐ隣のOJTで、92.5%で、大部分がO JTということです。実施された教育訓練等の内容ですが、業種等によってその内容が さまざまです。内容としては外部の講師を招く、教育訓練機関へ出して行わせた、ある いは派遣元が実施する能力開発への便宜を図ったということで、それぞれ特徴が出てい ます。下から3つ目の金融・保険業などでは、教育訓練機関へ出して行ったとか、派遣 元が実施する便宜を図ったという所が、やや高くなっています。その下の医療、福祉で も21.8%ということで、派遣元への便宜ということでやっています。  13頁の派遣労働者に対する派遣元事業所の教育訓練の実績です。一般の派遣と特定派 遣事業とありますが、一般の派遣事業ではOff−JTが約9割の87%です。特定のほ うはその下の54%について実施をしているということです。表のいちばん右のほうです が、派遣労働者の費用負担は、ほとんど98%以上が無という回答です。  14頁は、製造業の請負事業所調査における労働者の教育訓練実施状況ということで、 請負労働者(常用以外)について教育訓練を実施しているかどうかということですが、 いちばん上の表ですが、実施しているが55.7%です。教育訓練の方法としては2つ目の 表ですが、いちばん多いのがOJTで68.9%、2番目が発注者による訓練で、51.6%、 3番目がOff−JTで45.9%です。教育訓練を行うに当たっての問題点は、複数回答 ですが、多いのは、業務の都合で実施しにくいが52.5%、教育訓練をやめてしまう人が いるというのが同じく52.5%、というような所が問題点として上げられています。  15頁は、請負労働者としての働き方のメリットということで、これは多い所から見る と右から4番目の、仕事がすぐ見つかるが26.6%、その左の賃金水準が高い、いちばん 左端の仕事の範囲や責任が明確、中ほどの自分の能力を活かせるが22.6%というような 所が高くなっています。  逆に16頁はデメリットです。多いほうは下の段の左から2つ目の将来の見通しが立た ないが42.2%、2番目が、その上の雇用が不安定であるが35.2%、3番目がいちばん左 の収入が不安定であるが29.2%、4番目が上の段の右から2つ目の技能が向上しても評 価が上がらないが27.8%で、高くなっています。  17頁は、企業の売上別に見た能力開発の対象者ということで、3年前から売上高が10 %以上減少した企業と、10%以上増加した企業の比較で見てみますと、いちばん左の薄 いブルーが正社員全般と非正社員全般。濃いブルーの所が正社員全般と非正社員の一部 ということで、そこを比べてみますと売上高が増加している所のほうが訓練の対象とな る者の範囲が広いということが言えると思います。  18頁は、能力開発制度の利用が働く意欲に及ぼす影響ということで、3年前からの変 化でとらえまして、いろいろな計画的なOJT、Off−JT、自己啓発などの能力開 発を受けた人と受けない人が、全体に比べてそういった人が意欲が向上したかしないか というグラフですが、全体の対象者がいちばん上で、左の2つの意欲が向上した、どち らかといえば意欲が向上したという所が、何らかの形でそういった教育訓練を受けた人 が意欲が向上した、というように回答した所が多いと思われます。  19頁は、業種別・就業形態別の自己啓発援助制度の状況です。これも正社員とパート を比べておりまして、正社員に比べてパートタイム労働者を対象とした自己啓発援助制 度の実施率は、比較すると当然ながら正社員のほうが高いわけですが、先ほどの教育訓 練のときの表と同様に、金融・保険業などでは、正社員やパートとも産業系よりも高い という業種がありますし、左から3つ目の情報通信業のように正社員とパートの実施率 に大きな較差があるなど業種によってさまざまな違いがあります。20頁は、事業所規模 別による自己啓発援助制度です。これも規模別で見た場合に正社員・パート労働者とも 自己啓発の実施率は、規模が大きいほど高くなっています。  21頁は、行政として行っている援助施策ですが、「キャリア形成促進助成金」という ものがあり、いろいろな種類に分かれています。1番の所にありますように、7種類ほ どあります。このうちの1番目は訓練給付金ということで、この頁の下3分の1ぐらい の所に書いてありますが、これは企業が主体で能力開発計画に基づいて訓練を実施した 場合の助成金です。  22頁の2番目3番目、1つ飛ばして5番目などが、どちらかといえば労働者が一定の そういったものを受ける面での配慮を多くするというようなときに出される給付金で す。2番目のものが能力開発休暇給付金です。従業員の申し出によって休暇を与えた場 合の助成です。3番目が、長期の教育訓練休暇を与えた場合の助成制度です。5番目が キャリア・コンサルティング推進給付金ということで、キャリア・コンサルティングを 受けさせた場合の助成制度があります。こういったものが企業及び労働者の能力開発に 対する助成制度としてあるということです。  次に24頁の助成金の実績ですが、これは平成13年10月に創設したものです。もちろん 形を変えた部分もありますが、平成14年度は半年分の実績しかないものですから数字は 低いのですが、平成15年度、16年度で見ていただきますと、いちばん多いのは企業が行 ういちばん上の訓練給付金です。先ほど申しました休暇に対する給付金、あるいは長期 の訓練制度導入奨励金、5番目のキャリア・コンサルティングの給付金などは、まだい ずれも額的には非常に少ないものとなっています。25頁は支給件数実績ということで、 人員、件数についての数字です。これも金額と同様の傾向があります。  26頁は、「認定職業訓練制度」について解説をしています。ご案内のとおり国で定め ます基準に適合して、民間の法人等が職業訓練を行う場合に、それを認定するといった ものでありまして、現在1,380ほどの認定の職業訓練施設があります。3番目に特色と ありますが、建築、金属・機械加工や情報処理、和洋裁、調理等があり、全国で21万人 程度の訓練生がいます。これに対しては国及び都道府県から、実際にかかった費用の3 分の1ずつが、基本的に助成が受けられるという仕組みです。  27頁は、認定訓練の助成事業に対する補助金の傾向です。訓練人員が減少しているこ となどから、支給金額及び対象人数とも、ここ3年ほどで見ると減少傾向です。28頁は 認定訓練とは別で、一般の全体の状況ですが、事業所の開業率・廃業率の推移というこ とで、平成6年から5年ごとに3つ取っていますが、最近では企業を廃業するほうが新 設する率よりも高くなっているというデータです。  29頁は起業・新分野展開支援センターで、いわゆる創業サポートセンターという愛称 を付けています。平成14年から東京と大阪にいま1箇所ずつあり、起業、あるいは新分 野への事業展開を目指す人々に対しまして、いろいろ相談や援助を行ったり、あるいは 必要な能力開発を行っています。現在までのところ4万4,000人程度の利用者がいます。  30頁は前回もお示ししましたが、各国の職業訓練投資額の比較についてということ で、国による職業訓練投資額の対GDP比の割合です。ドイツ、スウェーデン、フラン スなどに比べて、日本はイギリスやアメリカとともに低くなっています。これは国によ る事情がそれぞれありますので、一概に同じレベルでの比較が難しい面もあります。下 の備考でいろいろ書いてあります。ただ、ヨーロッパの国に比べて低いということは言 えようかと思います。  31頁は税制で、人材投資促進税制というものがあります。これは人材育成に積極的に 取り組む企業について、教育訓練費の一定割合を法人税から控除する制度です。人材育 成の必要性から出来ているものでして、内容的には次の32頁にあります。詳細は省略し ますが、これは下の表のグラフのピンクの部分で、基本的には教育訓練費を前2事業年 度の平均額より増加させた企業について、その増加額の25%に相当する金額を法人税額 から控除するというものです。なお、さらに中小企業については特例制度が設けられて いるというような税制です。33頁は、税額控除となる対象費用や具体的例、それから税 額控除の例を載せています。  34頁に、企業主導の能力開発の促進についての論点ということで、いまご覧いただい たデータを基に、ご議論をいただく問題点の提起として、3点ほど書いてあります。  1点は、計画的なOJTやOff−JTなどの企業主導の能力開発が後退をするとと もに、中核的人材を早期に選抜する、あるいは能力開発投資を集中させる傾向がうかが われるわけですが、知識社会化が進む中でこうした傾向が続くことが、長期的に見れば 企業の成長基盤を危うくするものではないか。また、こうした企業主導の能力開発のか げりが、我が国が強みとしていた現場力に深刻な影響をもたらしつつあるのではないか といったような点です。  2番目として、増加しているパート労働者等の意欲と能力が十分に発揮されるよう に、業種の特性や企業ごとの状況の違いは踏まえつつも、その企業による能力開発にお いても、これらの労働者に対してはバランスのとれた配慮がなされる必要があるのでは ないか。特にパート労働者に活躍の場を開いている好事例に見られる工夫などには、参 考にすべきところが多いのではないかという点です。  3つ目は、長期的視点に立って企業主導の職業能力開発を促進することや、働き方の 多様化に対応した取組を進めるということは、個々の企業や労使のみならず、人口減少 社会の到来を目前に控えた我が国の経済社会にとっても重要な課題と言えるのではなか ろうか。その意味で国も、こういった施策の実績や効果を改めて検証しつつ、企業主導 の能力開発の促進を効果的に後押しする施策を強化していくべきではないかという問題 の提起をさせていただいています。  次は個人主体の能力開発です。35頁からで、まず自己啓発の実施状況ということで、 従業員調査をやっています。全体としては近年自己啓発の実施率は横這い傾向と言える と思いますが、右のほうに年齢別、あるいは役職別に書いてあります。年齢別に見ると 24歳以下がいちばん低くなっていますし、役職別では一般職員がいちばん低いというこ とで、総じて若い世代での実施率が低いと言えようかと思います。  36頁は自己啓発の目的ですが、平成12年と16年の比較です。目的としていちばん多い のは、必要な知識・能力を身につけるためが圧倒的に多いわけですが、その他キャリア アップに備えて、資格取得のためというのが続いています。比較した傾向は、それほど 変わってはいないと思います。  37頁は自己啓発の参加率ですが、どういう手段でやっているのかですが、いちばん多 いのはテレビ・ラジオ等による自学・自習です。次が民間の講習会・セミナーへの参 加、社外の勉強会・研究会への参加、社内の勉強会・研究会への参加ということです。 平成12年と16年を比較しますと、いちばん上は除いて2番、3番、4番などは、薄いブ ルーの最近のほうが数的には多いことがわかると思います。38頁は、自己啓発にかかっ た自己負担額です。ゼロというのが圧倒的に多いのですが、あえて見ると山が2つぐら いありまして、上のほうの3つぐらいの2万円以下の所と、もう少し下の5万から10万 ぐらいの所に少し山があるというような感じです。39頁は、自己啓発にかかった平均自 己負担額です。平成12年と16年を比べると増加傾向にあるように思われます。平均が 7万6,000円ぐらいだったのが8万2,500円ぐらいになっています。  40頁は、能力開発の責任主体の方針です。誰がやるべきかというものですが、これま では企業の責任、または企業の責任に近いという左の2つの部分が多く7割を超えてい ましたが、今後についてはその2つを足して5割を下回る水準になっていまして、相対 的に従業員個人の責任、あるいは従業員個人の責任に近いというところとほぼ拮抗する ような数字となっています。41頁は、能力開発の主体に関する労働者の意識です。これ までと今後との比較で、今後について見ますと、自分でよく考える、あるいはどちらか といえば自分で考えるという所が、割合として高まっています。  42頁は、事業所規模別の社内人材の公募制度の導入状況です。実施している企業が薄 い色の所で、規模が大きくなってくるにしたがって活用が図られているということで、 5,000人以上の大企業では57.7%という数字になっています。43頁は、企業による自己 啓発支援の状況です。企業による自己啓発の状況ですが、特に何もしていないというの がいちばん右の薄いグレーの柱で、平成12年と15年がそれぞれありますが、何もしてい ないというのは大体1割強ぐらいで、あと金銭的援助や能力開発に係る情報提供の状況 には大きな変化はないのですが、減ってきているのが緑色の就業時間への配慮という所 と、黒の教育訓練休暇の付与が平成12年と15年を比べると、減少しているのがわかるか と思います。  44頁は、従業員にキャリアを考えてもらう場としてどういうものがあるかという調査 ですが、いちばん多いのは上司との面談、次は自己申告制度ということで、制度として あるというよりも、そういった相談の中でやっていることが多いのですが、体系的と申 しますか、しっかりとやっている部分として考えられるのは、5番目の人事部門の担当 者との面談が26.2%、キャリアプランの策定のための研修が25.2%、キャリアの相談を 受ける制度が9.7%といったところで、この辺がまだまだ上に比べれば、そんなに多い 数字ではないと思います。  45頁は、施策として行っているキャリア・コンサルタントの養成・活用に向けた取組 です。平成14年度以降から官民合わせて5年間で5万人を目標として、養成を推進して います。中ほどの(3)に書いてありますが、平成16年度末までの累積で2万8,000人 程度です。公的機関による養成、民間機関における養成ということで、いろいろな所で やっていただいています。(4)の公的機関における活用としては、雇用・能力開発機 構の都道府県センターにあるキャリア形成支援コーナー、あるいはハローワークに配置 をしているのが、大体1,300名程度。民間の機関としては民間の職業紹介機関や教育訓 練機関、あるいは企業の人事部門、学校等で活用の促進をいただいています。  46頁が、キャリア・コンサルティングに係る研究会の設置・開催の概要ということ で、平成16年度は若年者向けのキャリア・コンサルティングの研究会や熟練キャリア・ コンサルタントの検討委員会、キャリア・コンサルティングの導入・展開事例検討会と いったことをやってきています。今年度においては、コンサルタントの資質確保体制の 整備に係る作業部会、あるいは標準レベルのキャリア・コンサルタントに必要となる能 力体系の見直し等に係る検討委員会、それからキャリア・コンサルティングの導入・展 開事例の検討委員会といったようなことを、続けてやっています。  47頁は、キャリア形成支援の施策ですが、上の●にあるのは、企業内のキャリア形成 支援推進事業ということで、(2)の事業の概要にありますが、企業の職業能力開発推 進者に対してキャリア・コンサルティングに関する講習の実施をしたり、あるいは事業 主等に対する相談支援や情報提供を行ったりということをしています。下の●は、キャ リア形成支援コーナー等におけるキャリア形成支援です。雇用・能力開発機構の機関や ハローワーク、あるいはジョブカフェなどにおきまして、このキャリア・コンサルティ ングの実施をしています。48頁のキャリア・コンサルタントの養成数について、先ほど 2万8,000人と申し上げましたが内訳で、いちばん多いのは白い所の民間機関における 養成が83%です。あと職業能力開発大学校等における割合が11.5%、ハローワークや雇 用・能力開発機構のセンター等への配置に係る部分が5.5%となっています。  49頁は、民間におけるキャリア・コンサルティングの能力評価試験の受験者の属性と いうことで、どういった人が能力評価試験を受けているかということです。いちばん多 いのが企業内の人事・人材開発等担当者の方で23%、次が職業紹介や派遣・再就職支援 会社の相談担当者の方々が19%、続いて求職者が12%ということです。あとキャリア・ コンサルティングが主な業務である方々、あるいは学校の関係者、あるいはそれぞれの 資格を持った方々というような内訳になっています。  50頁は《参考》ですが、アメリカ合衆国におけるキャリア・カウンセリングの現状と いうことで、資料を付けています。アメリカにおけるキャリア・カウンセリングあるい はキャリア・コンサルティングは、多様な種類のカウンセリングの一形態として実施し ていまして、数的には22万8,000人という統計が出ています。先ほど申し上げた日本で のキャリア・コンサルティングで現在2万8,000人ということですので、それと比べる と圧倒的に多い割合かと思われます。  カウンセラーの資格としては、全米公認の資格のNCCがあるほか、州の免許のいず れか、あるいは両方を保有しているということです。(1)が全米公認のカウンセラ ー、2)が州独自のものです。いずれも修士以上の学位や大学院での一定の科目の履 修、実務経験、試験などということで、非常に日本のものに比べて長期にわたってそう いった勉強をして資格を取っているということです。なお、それ以外にも数カ月の研修 を受けた者でCDFというものがキャリア・カウンセリングを担当するケースもあるよ うです。どういった所に配置をされているかということで、ACAというカウンセラー の全国組織が会員に対して行った調査によりますと、いちばん多いのは自営のクリニッ ク等でやっているのが3割ぐらいで大学が20%、コミュニティ機関が14.2%という配置 状況になっています。  51頁は、教育訓練給付制度の概要です。これは労働者が主体的に能力開発に取り組む ことを促進しようということで、一定の厚生労働大臣が指定した教育訓練について受講 した場合に、最大で4割、上限20万円が支給されるという給付制度です。実績としては 中ほどに支給実績とありますが、平成15年度までは非常に伸びてきていて、当時は8割 の支給だったので非常に多かったのですが、平成16年度以降は要件を絞り4割にしてい るところから人数、支給金額とも減ってきています。詳細の説明は省略させていただき ます。52頁は、その要件を重点化したということでの概要です。  53頁は、自己啓発に当たっての問題点です。これもよく言われているところですが、 自己啓発について何が問題かということで、いちばん多いのが忙しくて自己啓発の余裕 がないという時間的制約、次が費用がかかりすぎるという金銭的な制約、さらには自己 啓発の結果が社内で評価されないといったような順番になっています。大きな時間的な 傾向の変化はないと思われます。  個人主体のキャリア形成についての論点として、54頁にいくつか挙げさせていただい ています。労働者の職業生涯の長期化やニーズの多様化が進む中で、労働者一人ひとり が職業生活の各段階の状況に応じて主体的に職業経験の蓄積や能力開発を行うことがで きるようにしていく必要性が高まっているのではないか。実際、労使双方の意識として も、能力開発の主体として働く側に軸足を移すという意見が増えつつありますが、例え ば、社会人大学に通っていることを公然としにくい雰囲気があるというようなことに加 えて、自己啓発のための時間の確保の困難さ、あるいは費用面での問題、さらには適切 な助言や情報が不足しているといったような課題がありまして、これらの課題を解決す る取組が不可決ではないということが2点目です。こうした課題を解決し、労働者の学 習意欲やキャリア意識の高まりを創造的な仕事に結び付けていく上で、企業が果たすべ き役割は大きいのではないかというのが3点目です。  55頁は引き続きですが、具体的にはということでいくつか書いてありますが、1つは 経営や人事管理の目標・方針や、企業内のキャリアルートを明確にすること。2つ目と してキャリア・コンサルティング制度など支援制度の充実を図ること。3つ目としてキ ャリアコーチ的役割を果たす管理職に対する研修を充実させること。4点目が従業員の 自己啓発に対する金銭的支援や時間面での配慮策を講じること。5番目が社内公募制な ど、労働者一人ひとりのキャリア形成に配慮した配置を行っていくことなどが課題とな るのではないかということです。  最後に、政策的にはこれまでのキャリア形成支援施策の積み重ねも踏まえつつ、1つ 目として教育訓練休暇の一層の普及とともに、時間外労働の抑制や個人の状況に応じた フレキシブルな労働時間の設定の促進。2つ目として、教育訓練給付の一層の活用とと もに、さらなる費用確保策の要否についての検討。3点目として、個人のニーズに即し た提供やキャリア・コンサルティングを受けやすい環境整備等が必要ではないか。その 際キャリア形成に対する意識を持った従業員の多様なキャリア形成の展開を認めること が、そのやる気と創造性を引き出し、生産性を長期に向上させることにも目を向けてい くことが求められているものではないかというようなことで、論点として上げていま す。以上が資料の1です。  資料の2として「キャリア形成指針」を付けています。これは平成13年に作ったもの で、厚生労働省の告示として出しています。労働者が自発的に能力開発を行うために、 企業が行うべき事項ということで書いてありますが、大きく分けて書いてあることは、 上の段のいちばん左の所に第二という所がありますが、情報の提供、相談、その他の援 助ということで、ここでは情報を提供しなさい、あるいはキャリア・コンサルティング を適切かつ効果的に実施をしなさいということで、その手段や方法について中段から下 段の最初の部分にかけて書いてあります。  下の段の第三で、労働者の配置その他の雇用管理についての配慮ということで、雇用 管理について配慮をしてくださいということが書いてあります。第四は休暇の付与で す。有給教育訓練休暇とか、長期教育訓練休暇その他の休暇の付与についての事項につ いて定めています。次の頁の上段に第五の教育訓練等を受ける時間の確保ということ で、始業終業の時刻の変更等による時間面での配慮ということをメニューとして上げて います。  最後に資料3をご覧いただきたいと思いますが、これは前回も付けました「第7次計 画の評価」について書かせていただいていますが、前回に若干付け加えている1つとし て、4頁をご覧いただきたいと思います。4頁の下から3分の1の所に「また」という ことで、職業能力評価制度の構築については幅広い職種を対象とするために、現在17業 種について策定されてきた、ここまでは前回と同じですが、しかし、まだ十分な職種数 ではないことから、引き続き幅広く策定を進め、一層の普及促進を図るとともに、策定 したその基準の企業や業界団体による活用状況の把握及び検証を踏まえた上で、この基 準のメンテナンスも適宜行うことにより、ニーズに応じた能力評価基準としていくべき ではないということを付け加えております。  もう1点、6頁の下のほうですが、今後踏まえるべき点ということで、「併せて」と いう段落を付け加えさせていただいています。これは、これまで厚生労働省がやってき た施策が国民に十分浸透していないというご意見をこの間いただいたものですから、そ れを踏まえて、どのような公的サービスがどこにあるかといった基本的な情報が、対象 者に対して施策のまとまりごとにきちんと行き渡るよう、関連分野の民間の専門家のネ ットワークやノウハウを十分活かした広報活動に取り組むことも不可決であるというよ うな書き方をさせていただきました。以上長時間で恐縮ですが、ざっと今回の資料につ いてご説明させていただきました。 ○今野分科会長  ありがとうございました。資料4、5はいいのですか。 ○総務課長  資料4と5は前回と同じものでして、今回また議論のときにちょっと見ていただくた めに付けました。 ○今野分科会長  ただいまの説明について質問やご意見はありますか。今日は自由に議論したいと思い ます。何でも結構ですので、お願いします。データについてでも結構ですし、ご意見で も結構です。 ○佐藤委員  54頁の所の個人のほうですが、自己啓発の制約として時間的制約や金銭的制約がある という結果が出てきて、これをどうするかということになると思いますが、お金につい ては現状では、教育訓練の給付金があるわけです。前にも伺ったことがあるかもしれま せんが、誰が、どういう人が利用しているかで、実際上例えば金銭的に、本来であれば しにくい人がこれを使って自己啓発をやられているというような政策的効果はわかるの かどうか。つまり給付金をもらうときにまで雇用保険に入っているのが条件ですから、 わかるわけです。例えば在職中であれば大体賃金もわかるし、離職でもその前のフォロ ーはできるわけですから、どういう職種の人でどのぐらいの賃金をもらっている人など が受けているということは、わかるのでしょうか。つまり課題はあるといって、でも政 策手段はこういうことをやっているといって、課題に対して対応した機能を果たしてい るかどうか。極端なことを言えば、時間があってお金のある人ということになると、当 初の政策目的と合わないというのが1つ。  もう1つ、34頁の企業主導型教育訓練の後退の理解ですが、データですと全体として 計画的OJTやOff−JTが落ちている。これをもってして企業主導の能力開発にか げりというならわかるのですが、もう1つの早期選抜の所の選抜型教育訓練か底上げか ということとの兼合いなのですが、企業が社員を採用してから定年まで、みんな同じよ うな教育訓練などは、もともとやっていなかったわけです。会社によって違いますが、 例えばホワイトカラーを想定すれば、初めは同じように教育訓練をし、だんだん能力に 差がついてきて、例えば職能資格制度があれば資格等級の昇格に差が出て、ある年齢に なると役職に差が出てくる。そういう資格等級や役職に応じて、当然教育訓練の仕方を 変えていますし、管理職になれば専門職か管理職かで教育訓練を変えるわけです。当然 選抜しながら教育訓練をしているわけです。選抜型教育訓練と底上げ型教育訓練という のは、もともとは同時にあったのです。たぶん問題になるのは、ある程度のところまで はみんなある程度の教育訓練機会を提供していた、これがすごくなくなってきたことが 問題だと思います。あと、選抜したあとにそれぞれに合った教育訓練をしていないとい う問題があると思うのですが、その辺の認識をどう考えられているのか。企業主導型の 能力開発にかげりといったときに、教育訓練機会のはじめの頃や採用後いわゆる能力開 発期間についてさえ選別するようになったというような理解があるとすると、やはりそ こは問題だと思います。その辺はどのような理解をされているのかの2点です。 ○今野分科会長  いま2点ありましたので、どなたにお聞きすればいいですか。特に前半については政 策評価の話ですので。 ○育成支援課長  1点目の話ですが、申し訳ないですが、私どもは教育訓練給付の講座指定の部分を担 当させていただいていますが、実際の給付の部分は職業安定局が担当しているものです から、そういう意味で、どういった賃金とか、そういったことが把握できるか、ちょっ と確認させていただきたいと思います。 ○佐藤委員  どういう講座を受けているか、それはわかるわけですね。つまり指定しているものは 私はいつも見せていただいているのですが、どういうものを受けているかということも あとでわかりますか。 ○審議官  従来の教育訓練給付については、かなり高額の8割というのを最大補助していまし て、そのころはやはりお金をもらうがために勉強に来ている人が中にはいて、教育訓練 をやっている側も、非常にそういう意味ではモラ−ルのダウンに繋がるというような状 況もありまして、これを4割にしたところです。ですから、自己負担をかなり増やした ということで、本当に勉強したい人が来る、かつ勉強したい人の金銭的負担をある程度 軽減する、この両要素のバランスをどこで取るかということで、4割という水準にして いるわけです。これをあまり高くするとモラ−ルダウンが起こるし、逆に低いと本当に 勉強したい人ができない。この狭間のところで4割程度ということにしております。し かも講座のほうもかなり評価ができるものに限って絞ってきているわけで、そこら辺の 全体的な効果は高まってきていると思います。ただ、仔細についてはもう少しおっしゃ るように、データなどを見て調べなければわからない部分がいろいろあるという状況で す。 ○今野分科会長  第2点目については何かありますか。私は使用者側の委員のご意見を聞いたほうがい いかなという気はしていますが、事務局側から何かありますか。 ○総務課長  特にデータとして今日お示ししたところでは、最初のほうで従業員側のほうが受講率 が落ちているというようなデータしかないものですから、むしろいま座長がおっしゃっ たように、使用者側の方からご意見を頂戴したほうがいいのではないかと思います。 ○今野分科会長  いかがですか、どうぞ。 ○中村(紀)委員  人材投資促進税制のことについてお尋ねしたいのですが、最近企業は選抜してその人 の教育をしていこうということと、底上げをしようという両方あるのですが、とりあえ ずは全員に対して底上げをしていきたいという関心も高まっています。そうしますと、 そこで何を導入するかというと、それぞれが働いている時間やレベルが違うものですか ら、eラーニングを導入しようという考え方が非常に進んできていまして、いまはいろ いろな所、現場サイドあるいは管理職レベルにもeラーニング導入を進めようとしてい ます。そうなったときに人材投資の促進税制の中で、全額控除の対象となるのは、例え ば企業が自分の所に見合った形でeラーニングのソフトを開発していくというところも 入るというように考えていいのか、あるいはそれが市販になっているものを導入して、 やった部分だけが対象になりますよというのか、いわゆるソフトの開発のところまで面 倒を見ることになると、相当な額がeラーニングにかかってきますので、そこをお聞き したいのが1つ。  2つ目が認定職業訓練について、年々認定の職業訓練助成費の補助金の支給実績が減 ってきているというグラフが出ていますが、一体職業の認定をするというのは、どうい った基準で職業というものがいま認定されているのか。戦後日本にはこういう職業を根 付かせたいとか、こういう技術を実らせたいという思いがあって、認定する職種を決め てきたと思うのですが、いま時代は21世紀に入りまして、非常にサービス業などの方向 の職業も求められてきているわけですが、そういう方面も認定される中に逐一入ってき ているのか、認定の種目はどのように変えてきておられるのかというのが2点目です。 ○今野分科会長  少し論点を整理させていただきます。いまおっしゃられた新たな質問が2つあり、ソ フトウェア開発の費用まで人材促進税制の対象になるのかということと認定職業訓練の ことなのですが、その前にここでの認識として、事務局側のデータだと、極端なことを いうと、企業は能力開発についてやる気をなくしていると、あるいは特定の人間にしか 集中しないでほかを捨てているというような傾向が見られると。この辺をどう認識する かによって、そこから先の政策が違うので、そこをどう認識するかについてまずお願い します。 ○鈴木委員  これは、かなり調べていかなければはっきりしたことは申し上げられませんが、企業 が人材投資を怠っているということは絶対ないと思います。これは、やはり企業として 死活問題ですし、やはり人あっての企業ですから、それにかげりがあるとか全くそうい ったところに将来危機意識をもつほどの問題はないと思いますね。やはり、伸びている 企業はそれなりの人材投資をきちんとやっているから伸びているのであって、短期的な 利益を目指すためにそんなところをカットしても、将来持つ訳ないですから。これは常 識で考えてもわかることではないかと思っています。ただ、以前と比べると使い方が変 わってきたのも事実だと思います。以前ですと、例えば階層別に区切って全員を対象と して、そのような訓練や研修にお金を使っていたということもありますが、その辺はか なり絞り込みをしてより効果のあるためにどのようにお金を使ったらいいか、やはりそ れは集中的にやる気のある人間にはそれなりの投資をしていく、それが先ほどの早期選 抜にも結び付きます。  一方で底上げも必要ですから、それはそれなりのいろいろな効率的な研修のための資 本投下をしていると思います。ここは、十分背景を調べていけばわかることだと思いま す。私どもでもいま調査をやっていますので、いずれその結果等もお示しできると思い ますが、そのような状況にあるという認識です。 ○今野分科会長  その点について、ほかにいかがですか。 ○草浦委員  私も34頁の論点のところで、一瞬ギョッとしました。やはり全体としてのボトムアッ プを図らなければならない教育というものと、選抜しながらブラッシュアップを図らな ければならない教育の双方が大切だと思います。今回の分析でいきますと、早期に選抜 していくことの危機感を非常に強調されていて、逆に私ども企業としては長期的に見れ ば、企業の成長基盤を危うくしてはならないからこそ、そのような教育の体系にもって いこうとしているというのが正直なところではないかと思います。  むしろ、それによって選抜されなかった人に対する動機付をどうするのかということ を合わせてフォローしていきながら、ここにご指摘のような形でいくのが企業にとって は非常に大事なところではないかなと思っています。 ○玄田委員  能力開発でいちばん見えないところで大事なところが、OJTの部分です。前回も議 論になった、国際的に見て日本の能力開発がどうかというのは、OJTの部分が図れな いものですから最終的なブラックボックスなのですが、素朴に1頁目のデータを見たと きに、少なくとも近年における計画的OJTの停滞というのは見えないだろうと。難し いのは、各年によって調査実施者が違うので、趨勢的な変化をどのぐらい意味をもって 見るべきかどうかわかりません。長期的に見れば、おそらく計画的OJTの度合が趨勢 的に低下しているというのは、ある程度妥当だと思います。ただ、素朴に平成10年から 15年の数字を見ると、これのどこに計画的OJTの停滞という数字が表れているかとい うと、ちょっと納得しにくいでしょう。あえて解釈するとすれば、多分能力開発の主体 である計画的OJTについては、2分化とかの方向で表現するのが妥当であって、多分 それ以降の資料を見ると、先ほど鈴木委員からご紹介があったように、計画的OJTを 実施しているところは成長も続けていてそれなりにうまく、おそらく企業業績なり雇用 創出をしているのでしょう。一方でそれができない、ないしはしないところが出てき て、2分化という持続傾向が見られるぐらいの表現をするほうがデータの読み取り方と しては自然なように思います。 ○今野分科会長  ほかにありますか。労働側もいかがですか。 ○中村(正)委員  いま皆さんからお話がありましたし先ほども説明がありましたが、私はデータはいろ いろありますが、企業というのは中長期的な戦略からは当然のことながら能力開発はや っていくのだろうと思っています。したがって、個人に視点を当てた支援、あるいはシ ステムをどう作っていくべきかという観点で見ていくべきではないかと思っています。 具体的には3つぐらいあります。  1つは、教育バウチャー制度というものを作って、個人を支援していくべきだと思っ ています。栃木県でモデル事業が始まったわけですので、この事業の評価と課題を踏ま えて全国展開をしていくと。あるいは、先ほど来話があるように、雇用保険に入ってい る人は教育訓練給付金はもらえるわけです。ところが、雇用保険に入っていない人がた くさんいるわけです。ニート、離職者、フリーターの方々に対してどうすべきかという ことになると、やはり教育バウチャーに結びついてくるのではないだろうか。  2つ目は、自己啓発に投資をした人に対して支援をすべきではないか。先ほどもお話 がありましたが、企業に対しては人材投資促進税制というのがあるわけですね。ところ が、個人はいくら自己啓発を一生懸命やったとしても、それを支援するものがありませ ん。例えば、それに対する税制面からの支援ができないかということも、また検討して いくべきではないだろうかと思っています。  3つ目は、先ほどの論点の中にもありましたが、個人主体の能力開発に対して企業や いろいろな組織でキャリア形成の事業などをやっているところに対しては、助成金は確 かにあります。そのようなものをもっと充実していかないと、なかなか個人主体の能力 開発には繋がっていかないのではないだろうかという意見をもっています。 ○江上委員  いまの論点で引き続き私も思っていますのは、確かに1頁の教育訓練実施状況のデー タでは、微減であったりというような結果が出ていると思います。例えば能率協会が行 った1990年代から2000年代にかけての経営課題に関する調査でいいますと、やはり1990 年代から近年までは財務経営がいちばんで、ローコスト経営が2番目に掲げられてきて いました。そうしますと、どのような費目を削減してきたかというと、やはり交際費や 広告宣伝費、教育訓練費は上がってその対象になってきていますので、全体的な傾向と して特に大企業においては減少傾向にあったと思います。ただ、一方その企業は、企業 の経営効率を上げるために、選択と集中という戦略を1990年代から2000年にかけてずっ と取ってきているわけです。それは結局、早期選抜化、それから戦略的な部門や人材に 対する教育を厚くしていくと。全体の汎用的な部分については外部労働力化する、ある いは即戦力で採ってくるとか、いろいろそういう形で対応してきていると思います。そ れから、業種、業態によっても教育訓練のあり方は非常に変わってきています。企業が もっている固有の現場、あるいは事業の性格がありますから、外の教育訓練機関では身 に付けられないような実務能力があるわけです。そのようなものは、やはり固有の企業 の中でやりますし、主に汎用的な能力のようなものは外部機関化していくとか、非常に 多様になっているわけです。ですから、いままでのような企業がこうだから企業に一律 的に能力開発の政策を考えなければならない、という考え方の枠組を転換する時期にき ているのではないかと思います。 ○佐藤委員  私も企業の人的支援投資、お金と時間をかけるのは減ってきていると思います。た だ、そのことと、それを企業主導の能力開発を促進しろということが出てきますが、そ のときに資源の効率的な配分も皆薄く広く蒔けというような議論をするのはいかがかな と思っています。企業がある程度効率的に教育訓練に使える資源を使うということは、 私はやむを得ないだろうと思います。それをやめて、薄く広く企業の中でやれというこ とになってしまうと、それはちょっと問題かなと思っています。ですから、全体として 資源が減ってきているのは間違いありませんので、これで企業がもう少しやり易くする のはいいと思いますが、企業のやり方については私はこれからはある程度資源を集中的 に効率的に使うことは、より積極的にやる必要があるかなと思っています。 ○五嶋委員  先ほどのお話の中で、企業のほうはいろいろ税制の援助などがありますので、個人レ ベルの援助を厚くとおっしゃっていましたし、企業のほうでは教育訓練、能力開発に掛 けるものはそんなに減っていないというお話もありました。やはり、中小企業において は中にはそういうものも切り詰めなければならない業種もあるわけです。ですから、一 律に企業に、個人をよくするということではなくて、もう少し幅広くといいましょう か、それぞれの業種、企業、職種なりの実態を見ていただければありがたいかなと思い ます。 ○今野分科会長  ここの判断を基本的にどうするかによってほかに影響があるものですから、時間を割 きました。しかし、どうも統一した意見はなさそうで、資源量が減ったという人もいま すし変わらないという人もいました。ただ、一般的には日本の企業は短期的経営になっ て長期投資はしなくなっていて、人材教育の投資は自動的に減らすという単純な話では なさそうです。ですから、本日の議論を少し整理していただいて、次の議論に進めたい と思います。  先ほど中村委員がおっしやった人材促進税制の問題と認定職業訓練の問題に戻りたい と思います。前者については管轄が違いますが、わかりますか。 ○調査官  また詳しいパンフレットは、あとでお配りする機会があればと思います。端的に言い まして、eラーニングで外の施設を使用したときに払うフィーや、単なる1回だけ教材 を作るのを委託して自社だけで使うといった場合には、教材費や使用料という形で対象 になります。しかし中村委員がおっしゃられたのは、もっと高度なものの開発を行っ て、例えば自社で無形公的資産として資産計上するようなものを作る場合はお金がかか りますので、それは対象になるのかというお話かと思います。そういった場合には、別 途無形公的資産として資産計上されてしまいますので、ここのところは対象にならない という制度になって、税制上の2重のようなことはしないというような整理かと思いま す。いずれにしても、また詳しいわかりやすいパンフレットが出ていますので、後日配 付できればと思います。 ○今野分科会長  次に、認定職業訓練についてお願いします。 ○育成支援課長  認定のほうですが、対象の職種については省令以下で定めています。現に、57グルー プぐらいまで、それも適宜ニーズのあるものについては加えてやっています。特に、特 定の業種に誘導するという意味ではなく、ニーズのあるものについては認定をする。た だし、やる以上は一定の水準以上のものをやってくださいということで、時間であると か、訓練の中身の基準を定めていると理解いただければと思います。 ○中村(紀)委員  それは、サービス業も入っていますか。どういった業種でしょうか。いわゆる、いま は少子高齢化社会とか次世代法ということで、いろいろな意味においてフリーターにな っている方々をこういった育児・介護部分に誘導しようという向きもあります。そうい った方々をもトレーニングしようと思ったときに、インセンティブが働くように内容的 にはなっていますでしょうか。 ○育成支援課長  介護サービス科なども含めて入っています。基本的に、企業なり企業の団体がこうい う認定施設を持ってやりたいというニーズがあれば、そのような業種について認定して いくということです。あとは、知事のほうで都道府県の事務としてやっていますので、 それを我々は国として助成するという仕組みになっています。ただ、データで示しまし たように、若干全体としてそのようなニーズ、あるいは受講する人数も減ってきている という状況です。 ○今野分科会長  認定職業訓練の、今回は対象人数が20万人ぐらいのデータを示していただきました が、どのような分野で多いとか、少し詳しいデータを次回にでもいただけると。 ○育成支援課長  手元には、職種別にどのような認定コースが設定されているかはわかっていますの で、また用意させていただきたいと思います。 ○玄田委員  座長が先ほどおっしゃったように、多分能力開発の状況についてはいろいろと多様な 斡旋の度合が広がったのが現実というのが、前回佐藤委員も言われましたしそう思いま す。最終的な目的は基本計画を立てるという方向性のものですから、是非念頭に置くべ きだと思うのは、これからは企業が能力開発から全体的に撤退するから、これから個人 が頑張っていかないといけないというニュアンスがあまり強く出過ぎると、望ましくな いのではないかという思いがとてもあります。やはり、失業なき労働移動という、ある 意味では1つの大きな方向性が出たわけですが、これがどのように捉えられたかという と、もうこれからは全部自分でやらなければいけない、自己責任でやらなければいけな いのだというプレッシャーがいろいろな混乱を引き起した面というのは、現実としてあ ると思います。例えば、資料4の2頁目のニートに当たる表現で「将来における人材の 不良債権を累積する」というこの表現はいかがなものかと思います。むしろ現実として は、不良債権にすらなれなかった、人的投資すらもなれない層が出てきたことによっ て、ないし、自分にはもう投資されないのだと思うことによって、さまざまな問題が起 ってきたわけです。多分いろいろなんですよね。いろいろだけれども、全般的に能力開 発はこれからはもう個人がやらなければいけないのだという方向に今後の議論が進んで いくことは、ちょっと危険な解釈に繋がる余地があると思うので、そのような面で先ほ どおっしゃったようにバランスの取れた解釈をしていく必要があると思います。 ○審議官  その点については、おっしゃるとおりだと思います。資料の出方から、そのように誤 解を受けるようになっているのは恐縮です。考え方としては、当然企業がやるべきもの はあるわけで、自分で経営して、それが成長していくためにやる能力開発というのはあ るわけです。ただ、かなり労働力も流動化していますし、市場一般ということを考えて いかなければいけないときに、企業が全部そのような市場の広がりをもった能力開発ま でできるかというと、個人がある程度やるべき部分もあるので、領域が個人と企業で違 うのではないかと思います。やはり、両方進めていくのが重要だと我々は考えていま す。その辺は、これから資料を出していく中で議論いただきたい重要なポイントです。 ○今野分科会長  その点については長期的にお願いしたいのですが、本日の資料1の1頁の教育訓練実 施状況のデータや、前回ですと教育訓練費用のデータなどを踏まえて、企業はどうも教 育訓練をしなくなったのではないかとか、いや、しているという話になっているわけで す。ということは、教育訓練に関するいちばん基本的なデータを長期的に安定的に取っ てないということなのですよね。ですから、何か教育訓練センサスでもいいですから、 安定的にきちんと取れたデータがあれば、そこで皆さんの誤解や意見の違いを招く必要 がありませんので、是非ともそのような点も検討していただければと思います。  それから、個人の支援の仕方についていくつか問題提起があったと思います。バウチ ャー制度や個人が自己啓発をしたときに、企業にだけ減税のようなことをしないで、個 人に対しても考えろというお話がありましたが、この点についてほかの方なり事務局で ご意見がありましたら伺いたいと思います。いかがでしょうか。 ○職業能力開発局長  その前に、認定職業訓練はちょっと誤解があるようですが、事業主の団体が行う訓練 の中身を見て認定するということなのです。この業種がやるというのではなく、むしろ 事業主ないし事業主の団体がやることを、訓練として一定の水準を満たしているかどう かということを認定する制度です。大括りでいいますと、訓練科として多いのは、建 築、金属・機械加工、情報処理、和洋裁、調理。平成15年度で1,380施設ありますから、 その内容は全部わかるとは思います。  個人主体のものは、確かに教育訓練給付ができるまでは基本的に個人にやるものはな かったのです。教育訓練給付制度は、雇用保険の被保険者で一定の要件を満たしている ものを対象としています。対象者としては、当初は被保険者期間5年間以上でいまは3 年間以上に下げられており、かなりの数が対象者になっているはずです。おっしゃるよ うに、それ以外の人については、例えば家庭の主婦のように被保険者でない人について は、いまのところありません。まだ総括はされていませんが、いずれにしても、バラま いて、勝手にやらせるという仕組みにはなり得ません。確か栃木県は教育訓練給付と同 じようなシステムでやっていますが、発表している数字では予算は100人を予定してい ましたが、現状では25人です。相談に来ている人は100人を超す人がいますが、それは 公のお金が出るのですから何でもいいというわけにはいきません。本人のやる気がある かどうかもカウンセルしたうえで、実際に交付された人が25人です。それから実際に受 けて、きちんと完結したかどうかをチェックして、お金を払うか払わないかということ になると思います。  それから税のほうは、これは昔から言われていた話で、相当昔から主税局、自治省の 税務局に挑戦してやってきた実績があります。雑損控除か何かで、一定額はサラリーマ ンについても認められるのではないかということが乗り超えられませんので、税につい ては今日に至るまで実現は見ていないという状況です。教育訓練給付は、玄田委員や佐 藤委員から前の研究会のときにも言われていまして、ちょっと分析をする努力をしてい る途中です。ただ、賃金階層別まではやっていないものですから、むしろやって会社で の処遇が向上しましたかとか、再就職に効果があったか、転職期間が短かくて済んだ か、所得が上がったかということを、主にアンケートなり、集計で見ようということで やっています。まだ物ができ上がっていないのですが、先ほど佐藤委員がおっしゃった ところまではやっていません。それは、これからの宿題にさせていただきたいと思いま す。 ○今野分科会長  委員の方、いかがですか。 ○玄田委員  個人主体の能力開発ですが、具体的なイメージを浮かべて議論したほうがいいと思い ます。資料の40、41頁を見ますと、これからは企業がどうなるかはともかく、自分で能 力開発について責任をもって考えていかなければいけないという思いは、多分個人、労 働者のレベルで確実に広がりつつあるのは事実だと思います。これから自分自身どうい う能力開発をしていけばいいかと思ったときに、誰に相談するのだろう。やはり、まず 最初は会社の仲間や上司ですよね。ただ、先ほどの話ですと、では会社の上司に相談す ると皆が能力開発のこれをこうすればいいとか、キャリアについて考えればいいという 指導が受けられるかというと、もしかしてそれは受けられない層が増えているかもしれ ません。次にどこを考えるかといいますと、ビジネススクールや社会人教育に行こうと 思う人もいるかもしれませんが、それがばれたときに、お前何やっているんだ、と言わ れて行けないかもしれない。それで、ではもう少し何かあるかなと思って、インターネ ットで調べたり本を買って、できる人はこんな仕事をするという本を読んで勉強して、 おもしろいと思うかもしれません。しかし、あくまで一般論であって、おもしろいなと は思うけれども、では自分がどうするかというのはすごくジャンプがあると思います。 では、自分のことを誰が相談に乗ってくれるのだろうと思うと、多分皆そこで止まって しまうと思います。そしてどこに相談するのですかと聞くと、是非ハローワークに来て くださいと。ハローワークは失業者のためだけではなくて、キャリア全般について相談 する体制も徐々に整えていますとか、若い人であればジョブ・カフェやヤング・ジョブ ・スポットに来てくださいと言っていると思いますが、多分皆それを知らないんです ね。ハローワークは失業者が行く所、ジョブ・カフェはフリーターが行く所、ヤング・ ジョブ・スポットはニートが行く所だと思っていますよ。そう考えると、正社員、非正 社員であろうと働いているけれども、自分の能力開発はどこに相談に行けばいいのとい うことが、基本的に認知されていないと同時に、もっと素朴に非常に低いコストでどこ に相談に行けるものがあるのか、なければどうすればいいのかということが知られてい ない、考えられていないということからスタートしないと、キャリア権をどうするかと か整備体制よりももっとそちらのほうが大事だろうと私は思います。 ○審議官  おっしゃるような状況だろうと思います。キャリア・コンサルティングという制度を 作ったのも、これは何も安定所とかそういうところばかりではなくて、民間、特に企業 の中にも置いて、この人たちはある程度専門性をもった方でプライバシーを守りつつ、 本人にアドバイスできるような性格のものとして増やそうとしているわけです。本来の 考え方としては、そういった方が企業の中にもいてコンサルティングのプロとしてプラ イバシーを守りながら本人のために一緒になって相談し、考えてあげるという役割だろ うと思います。また、相談した結果を、企業がいろいろ人事の配置などで配慮していく 繋ぎ役も兼ねているということです。  第一には、そのような方をきちんとしたものとして育成し、企業内で配置していただ き、専門職的なものとして考えていく。そのような方が、従来の上司とかに代わって、 専門的な立場からアドバイスするという仕組みを構築することが第一だろうと考えてい ます。おっしゃるように、キャリア・コンサルティングは何も企業の中だけではないで すから、安定所や機構の中にもいます。そういったことが求職者だけでなく、幅広く相 談できるようにしていくことが、今後の非常に重要な課題だと思っています。  これからは、企業の内外に渡ってそのようなキャリア・コンサルティングを広めて、 レベルも上げていくことも必要でしょうし、どうしていいかわからないという悩みに気 軽に相談できるようにしていく体制を作りたいと思っています。 ○江上委員  いまのお話で、やはり行政や公的機関がどこまでやるのかということもきちんと踏ま えた議論が必要かなと思います。今後企業内で継続して仕事をしながらキャリア形成を 図っていきたい。しかし、どのように能力開発をしたらいいかわからないという人は確 かにたくさんいます。ではその人たちに対して、職安で具体的にアドバイスができるか というと、それはちょっと事実上難しいと思います。ある資格を取りたいとか転職を考 えているというような相談には対応できるかもしれませんが、やはり企業内労働者で継 続して就業する人たちのキャリアに対するアドバイスの機能というものを、職安に担わ せるというのは私はちょっとどうかなと思っています。事実上、企業の中や業種に特化 した知識がないとなかなかアドバイスは難しいと思いますし、転職や具体的に失業した という人たちを優先順位として公的機関が対応していくほうが、極めて現実的な方向な のかなと思います。 ○小栗委員  いまのキャリア・コンサルタントの話に関連して発言したいと思います。実際に働い ている人たちがキャリアをアップしていこうというときに、どこに相談していくかいろ いろ悩みながら工夫していると思います。平成14年から始めているキャリア・コンサル タントの養成が、特に企業の人事部門において企業側の皆さんが価値あるものとして認 めているのかどうか。これがあることによって、企業としては更によくなる、働く人も よくなるというのであれば、どんどん伸びていくと思います。しかし見ていると、どう もそうはなってないのではないかという気がします。これはまだ始まったばかりで、い ますぐ答えを求めるのは無理かもしれませんが、この辺をいまの段階でどう評価してい るのか、あるいは企業の人事担当の方々はどう考えているのかを本当はお聞きしたいな と思っています。  本日関連資料で、アメリカの例が出ています。こちらは、アメリカ合衆国におけるキ ャリア・カウンセリングです。ここは、メンタルヘルス、社会福祉、結婚、家庭といっ た、いわゆる生活相談所のようなニュアンスのキャリアの相談所です。本日この資料で 入っていたというのは、多少いままでの職業能力開発だけのコンサルティングではなく て、もう少し幅広いものに業者としてやろうとする意思があって、このようなものを出 しているのかどうかはわかりませんが、それは1つのおもしろい発想かなとは思いま す。こういう時代ですから、なかなか働く人たちも職場で会話が少なくなっています し、誰に相談するといっても難しくなっているのも事実です。企業内にキャリア・カウ ンセリング的なものが充実してくれば、それは1つの方向として決して悪いことではな いと思っています。これと、キャリア・コンサルタントの事業をどう考えていこうとし ているのかについて、意見というか質問です。 ○職業能力開発局長  簡単に説明させていただきます。玄田委員から、ハローワークがそういう相談に応じ られるのかどうかということですが、教育訓練給付ができてから、在職者などがかなり 来るようになったと思います。教育訓練給付を作るときにいちばん議論になるのではな いかと思ったのは、それ以前は在職者がハローワークに行くと、自分の会社を見限った のではないかという話が出てきて、経営側は強く反対するのではないかという危惧があ ったのですが、むしろエンプロイアビリティなどという言葉が普及した時代で、それは 積極的に応援しろということになって、どこも賛成で、できた制度なのです。しかしな がら、その施行後も、在職者は相談をしたいという行動に出ずに、誰にも言わずに全部 自分で考えたいのではないかと。結局安定所も自己検索パソコン、要するに誰とも口を 聞かずに見れるわけです。自己検索パソコンが普及したとか、誰かに相談するというよ りは自分で見て自分で判断すると。それに応えられるような。当然、昔から来れば在職 者でも誰でも相談には応じるので、その能力があったかどうかは別ですが。ただどちら かというと、個人のそのような行動に応えるような方向できていたという意味ではない かと思います。  それから、キャリア・カウンセラーについて企業の中でどうかというのは、半田さん からお願いします。 ○キャリア形成支援室長  玄田委員の発言から、随分いろいろな意見をいただきましたが、最後の質問から答え ていきたいと思います。まず、米国のキャリア・カウンセラーが幅広い、それに比べて 日本は一応キャリアということに特化している。この辺を変えていくのかどうかという お話ですが、その前提としてやはり米国と日本の国情、歴史、風土の違いをご理解いた だきたいと思います。米国では、そういったカウンセリングというものが業として成り 立つような風土、歴史がありますが、他方我が国は基本的には相談でお金を取るのか、 という風潮があります。カウンセリングが米国ではきちんと業として成り立っている中 で、大学院レベルで3,000時間程度の実習を積んだような人がカウンセラーの資格を取 っています。こういった方々が、いろいろな分野で活躍していて、その中の1つとして キャリアがあるわけです。  他方、私どもはこれまで縷々説明している中で、いろいろな経済、社会の変化の中で キャリア・コンサルティングが必要だということで、平成13年の法改正をきっかけとし てこのような整備が進んできているので、どうもキャリアのところに特化したカウンセ リングになっているわけです。ただ、この3年間運用してきまして、キャリア・カウン セラー、キャリア・コンサルタントだからキャリアのことだけやっていればいいという ことではないことは、かなり見えてきています。特に、求職者や失業者、あるいは若年 者を相手にする場合は、メンタルの問題抜きには語れないような状況ですので、少し幅 を広げていかなくてはいけないなと感じています。やはり、いまお話した背景の中から 考えますと、基本的にはキャリアを支えるためのコンサルタントであるというところか ら、もっと米国型の幅広いカウンセラーにということにはならないのかなと考えていま す。  それから、企業内の状況はどうかということですが、先ほど示しましたように、3分 の1、4分の1程度が企業内の人事担当者となっています。これは、あくまでも受験 者、受講者の入口調査で行っていますので、来年度はもう少し実態調査を詳しくやって いきたいと思っていますが、いまのところこれしかありません。一方、企業内のキャリ ア・コンサルティングの普及が1つ重要なフィールドですので、それを進めるために導 入展開事例の研究を昨年度、今年度と実施してきています。その中で、キャリア・コン サルティングというものがまだ明確に意識されているとは言い難いかもしれませんが、 少なくともキャリア形成支援、企業が個人のキャリアの形成を支援していく必要がある という認識は、大分高まってきているのかなと思います。これは、中小企業も含めての お話です。やはり、生き生きとした従業員がいてこそ会社は発展していくのだというの が、頑張っている会社の共通認識かなと考えています。またこの辺りは、企業の経営側 の委員からも発言があるかと思いますが、私どもはそのように認識しています。  それから、最初の玄田委員、江上委員からご指摘のあった部分ですが、特に私どもは 企業内部の支援体制とともに、企業内外の相談支援体制を整備していくべきだと考えて います。委員の方々の発言であまり触れられなかったことでもう1つご紹介しますと、 雇用能力開発機構の都道府県センターの中にキャリア形成支援コーナーを設置していま して、ここで相談を承っています。年間60万件程のご相談があります。ただ、ここの状 況も、玄田委員がおっしゃっていたようにあまり知られていません。利用する人は利用 する、そうでない人はしないという状況ですので、やはりここをもう少し知られるよう に打って出なくてはいけないだろうということで、現在雇用能力開発機構と個別にいろ いろと協議をしています。例えば知られていくためには、キャリア・コンサルティング の結果、助かったという事例をもっときちんと本、あるいはまとまったものにして世の 中に出していこうではないか。そういうものがあれば、もっと利用者も増えるだろう、 ということを考えています。  このキャリア・コンサルティングに関しては、養成機関、試験機関も当然自分たちの 養成したキャリア・コンサルタントの受け皿が欲しいわけですから、そういったところ に乗り出していこうとしています。そこで、こういった力をバラバラにやるのではなく て、大きくまとめていくことによって、そういったキャリア・コンサルティングのこと を認知していってもらえるようになるのではないかと考えています。雇用能力開発機構 も含めて、養成機関、試験機関が集まってキャリア協議会というものを作っています。 こういったところで質の確保もやっていますが、キャリア・コンサルティングそのもの の普及もやっていこうということです。私どものイメージとしましては、将来的には公 的な無料サービス機関とともに、こういった民間の有料サービス機関がちまたにできて いくという仕組みを作っていきたいと思っています。それを中、長期目標に掲げて、い ま申し上げたような機構の取組の見直しやキャリア協議会、あるいはそういう事業の強 化に取り組んでいこうとしているところです。  これに関してもう1つ重要なフィールドと考えているのは、組合です。既にご承知か とは思いますが、電気労連、情報労連などでは個人のキャリア形成を支援していくとい うことで、そういった取組を始めています。こういった流れが、今後また顕著になって くるのではないかと期待しているところです。以上です。 ○今野分科会長  以上の点について、使用者側の方のご意見を承ります。 ○中村(紀)委員  いまのキャリア・コンサルタントですが、私はこれは非常に企業にとって、いてほし い方だと思っています。ただ、こういう人たちが人事の横あるいは第3者の形で入って くるかは別として、例えばケア・マネージャーさんのように1つの専門的な技術、知識 を持っていろいろなクライアントに訪問しているのですが、こういうキャリア・コンサ ルタントの方も月に1、2回いろいろな企業を回ってきていただいて、予約制でもいい ですから従業員と話をしてもらうというようなシステムや制度があれば、大変使い勝手 がいいかなと思います。現状は、この方々は1つの場所に集結するという形が主になっ ているのでしょうか。 ○キャリア形成支援室長  中村委員がおっしゃった仕組みは考えていますが、残念ながらまだそういった仕組み はきちんとできているとは言い難い状況です。雇用能力開発機構の相談員が約900名ほ どいますが、キャリア形成支援コーナーとともにハローワークなどには巡回していきま す。個別の企業に対してあえて申し上げますと、いまできているのは地方職業能力開発 協会の中に人材育成コンサルタントがいまして、この方々がキャリア開発支援のための 全般的な相談には出ています。ただ、まだキャリア・コンサルティングに特化した部分 でのサポートまでには至っていません。今後の課題だろうと考えています。 ○中村(紀)委員  そういう方々が定期的に企業に訪問してくださって、企業がそういう方を迎えたとき に、ある程度何か政策的に補助が付いていれば、多分どの企業も手を挙げたいだろうと 思います。  それからもう1つ、やはり個人が能力開発をするときに、非常に自己啓発のための時 間を確保するのは大変だということが論点の中にも入っていて、それを企業側がどのよ うに提供するのか、あるいは個人が捻出するのかということです。就業時間の間に研 修、教育を受けさせるのか、週末あなたが勝手にやってよ、ということで企業が突っぱ ねるのか、あるいは仕事が終わったあと会社にいながら自己啓発ができるような環境を 企業が提供していくのか、大きく分けるとこの3つがあると思います。前にも申し上げ たと思いますが、アメリカでは就業時間が終ったあと1時間の残業代を、そのときは会 社がもっているのですが、その残業代で自己啓発ができるようなeラーニングのシステ ムを開発しているところがあります。そのような方向で、企業が残業代のところをすべ て持たなければいけないとなると、これはまた非常に大変です。そういったところが、 政策の中で汲み取っていけるような方向は考えられるのでしょうか。 ○今野分科会長  単純にいうと、残業の割増し部分を教育訓練に回せということですね。 ○中村(紀)委員  はっきり言うとそういうことです。 ○今野分科会長  例えば、アメリカでは、ソフトウェアの裁量労働などをやっている人たちは、所定内 を超えても残業代はないですから、それを時間でもらうタイムコンペンセーションとい うことでやっているところはあります。ただ、残業代をと言われると、現行法上なかな かということかと思います。 ○中村(紀)委員  では、とりあえずそういう意見があったということで。 ○育成支援課長  先ほど来ご説明しているキャリア形成支援助成金がありますが、その中で賃金分、か かった経費分の助成という両方のコースがあります。中村委員がご指摘のように、なか なかその活用がうまくいかないというところは、我々も問題意識をもっています。でき れば、それをいまは1日単位のような形でお願いしているのですが、もう少しそれを時 間単位で取れるように、あるいはいま賃金と申し上げましたのは、要するに残業であ れ、とにかく賃金として見ている部分を払っていれば、そこは支援の対象になり得るわ けです。そこに、うまく時間単位というものが導入できれば、それが可能になるのでは ないかと思いますので、少し検討させていただければと思っています。 ○鈴木委員  いまのお話にも関連してくるのですが、キャリア形成促進助成金の支給実績について 25頁に出ています。これを見ますと、キャリア・コンサルティング推進給付金が、先ほ どの中村委員の話にも該当してくるところなのかなと思います。これだけキャリア・コ ンサルティングやキャリアの問題が重要視されているにもかかわらず、平成15年度に比 べると平成16年度はそれが減少してきています。このような流れも、ちょっと奇異な感 じがします。むしろ、これだけ重要性が認められているのであれば、これは伸びて然る べきだと思いますし、この辺りも内容の問題もあるかもしれませんが、PRというか、 周知の問題も大きいのではないかと思います。  それから、先ほど企業側がキャリア・コンサルティングをどのように思うのかという 話がありましたが、これはやはり相談窓口はできるだけ多いほうがいいと思います。い ろいろな所にあるべきだと思いますし、企業としては当然企業の中でも従業員がそうい った問題意識をもったときに相談する窓口は絶対必要だと思います。私どもではキャリ ア・アドバイザーといいますが、こういった人たちを企業の中に配置しておくべきだと 思いますし、これからはますますその重要性は高まるのではないかと思います。必ずし もキャリアだけではなく職業生活全般に対して相談する窓口というのは必要だと思いま す。特に先ほどの指摘にもありましたが、最近はメンタルの面も含めていろいろな問題 が出てきますので、それは人事の範囲に入るか入らないかは別として、そういったよう なものを作っていくということはこれからますます必要性は増すと思っています。 ○今野分科会長  先ほど、玄田委員の例示でもありましたが、例えば能力開発をしたい、勉強がしたく てどこか外に相談に行くと、あいつは会社を辞めるつもりか、という上司は減らすべき だということでいいですか。そういうことではもう合意しているということですかね。 つまり、会社側は外部でいろいろなことを相談することについて、これはいままでの能 力開発もキャリアも会社の中で全部面倒を見るというところから少し外れた行動です。 そういうことについては、もういいのではないか、積極的に応援しようじゃないかと思 われるのか、それとも前の立場で言うのかによって大分違いますよね。いまおっしゃっ たのは後者だと思いますが、鈴木委員がおっしゃられたようなことであれば会社も人事 政策上、人事の考え方としては思っているということでよろしいですかね。 ○鈴木委員  ただ、相談する人の個人のいろいろなメンタルな面がありますよね。そういったこと を人に知られたくないなどとか、いろいろな配慮も必要だと思いますので、確かに何を やっているのかと不審の目で見られるということがあると当然動きにくいでしょうか ら、そこは密やかに相談できるような仕組みも必要ではないですかね。 ○中村(紀)委員  1年に1回、要するに社員と人事は、その人の評価制度があり、話し合いをして今年 1年間どういうことを目指したい、あなたには何を目指してほしいということを話し合 っているわけですよね。少なくともその中でその人が何を自己啓発で勉強したいという ことを申請させるわけですから、それが何のためになるかのだ、ということは上司はわ かっているわけですよね。これは本当に信頼関係でしかないのですが、将来的には違う 職業に就きたいのだということが素直に出てくれば、上司はそれはそれとして居る間ベ ストを尽してほしいと、あとは頑張れ、というふうになると思います。そのような話し 合いがないところでは、多分コソコソというのが横行するのだろうと思います。 ○西原委員  いまいろいろお聞きしていて、現場の実態を見ますと大企業、中小企業あるいは業種 によっても雇用就労環境でかなり差がどんどん広がっている状況です。特に難しいの は、能力開発やいわゆる教育訓練のゾーンでの較差がどんどん広がっているという恐怖 感をもっています。本日いらしている経営側の皆さんは意識が高い方ばかりなので、実 は実態から見るといま言われた年に1回、目標面接制度的な形で、働いている人たちと 上司との面談をする。一般論でいうと、仕事の内容や目指す方向の部分での論議という のは、かなり従業員の満足は高いのですが、いちばん評価が低いのは能力開発の話し合 いに関する働く側の満足度だというデータがあります。キャリア形成や能力開発という ところは、かなり幅広い中身があるものですから、経営者レベルで見ても相当意識の差 が広がっています。先ほど大手、中小の話も出ましたが、やろうと思ってもできない所 とやる気さえもない所、やろうと思って現実にできる所との差が非常に広いですので、 その辺はやはり実態を見ながら論議していかないと、実態とのギャップが出て効果的な 政策には繋がっていかない可能性があるのではないかと思います。  もう1つは、前回も申し上げましたが、働く側から見て、今回の論点も個人主体のキ ャリア形成、能力開発を支援するという言い方です。しかし、現実は個人主体のキャリ ア形成、能力開発を可能とするためのインフラなり政策なりをどうするかということで はないかなと思っています。そういう面では、企業の実態も働く人たちの意識の部分 も、ここでの論議はちょっと先を行き過ぎているといいますか、目指す方向はわかりま すしバランスの部分はあるのですが、そこと現実の政策とのギャップが出ないような論 議が必要かなと。これは意見として申し上げておきたいと思います。 ○今野分科会長  大分、キャリアの相談体制を中心にして議論をしていただきました。そうやって相談 しました。あなた勉強しなさいといって、勉強する場がきちんとあるのかという問題が あると思います。ご意見がありましたら伺いたいと思います。相談しても行き先がなけ ればしょうがないですよね。 ○井上委員  実際キャリア・コンサルタントを公的機関として担当している雇用能力開発機構の現 場から少し聞いた意見ですが、キャリア・コンサルタントの養成に関しては順調になっ ているということです。では、具体的に相談をしてきた者をどのように生かしていく か、具体的行動に結び付けるかという支援システムがまだできていませんので、その工 夫が必要ではないかということです。具体的にいうと、こういうキャリアが必要だとい うある者に対して、どのような能力開発のコーディネートをしたらいいのか、あるいは 訓練コーディネートのためにどのようなものが必要なのかというシステムが、まだ不十 分ではないかという意見がありました。折角そのキャリアに対してキャリア・コンサル タントということでいろいろ相談に応じたけれども、具体的に労働者の能力を伸ばす場 のところまできちんと網羅できているのかどうか。あるいは、訓練をする場をきちんと 確保できるのかどうかという話もありました。  それから、キャリア・コンサルティングを利用する立場の人たちですが、非常に意識 の高い人たちはいろいろな所に行って相談をする、インターネットも使うというのもあ りますが、例えばそうではない主婦や一人親世帯の女性、それからデジタルデバイトと 言われているなかなかインターネットに触れる機会がない人たちにとっては、いくらイ ンターネットで環境を整えたとしてもそこに触れる機会がない、どうしていいかわから ないということです。これも二極化と言ってしまうとまずいのかもしれませんが、非常 に意識がある人で自分から探し出していく人と、意識はあるのだけれどもどうしていい かわからない人の差が非常に増えているという意見を聞きましたので、ここで申し上げ ておきたいと思いました。 ○長谷川委員代理(末永様)  連合の能力開発の方針は、従来から企業で仕事をするために必要とされる能力開発 は、本来企業が行うべきものであるということについては、変わっていないと。教育訓 練給付ができたときも、これは個人に対して支援するものであって企業に対する能力開 発というものには変わりないということで、これについては認めてきたという経緯で す。皆さんの意見を聞いたところ、企業の能力開発は重要ということで、使用者側の方 も中長期的なものは重要だと考えておられるようですので、この能力開発については主 体を変えるというものではなくて、労働者個人についての能力開発の支援を十分に行う 補完的なものであるべきだと思っています。  それから草野審議官が、このような場合でも企業が面倒見切れないところは個人が、 ということもおっしゃっていましたが、これについても、個人への支援という形で行う べきであって、中村委員からはバウチャー制度という話も出ましたが、あとは地方で雇 用能力開発機構が行っていますキャリア支援センターなどを利用して行うべきではない かと思っています。  もう1つは、非正規、非典型労働者に対する教育訓練の問題です。同じ部署で同じ仕 事をしていながら、派遣、請負等の非典型労働者に対して、教育訓練が正社員と違うと いうのはおかしいと考えています。いただいた調査によりますと、やっているというこ とは聞いているのですがその内容については正社員と非典型労働者と同じなのかどうか について、具体的にそのようなことは書いてあるわけではありません。この辺りが、最 近言われています現場力の衰退や安全に対する問題に繋がっているのではないかと思わ れますので、非典型労働者への能力開発について、会社でもこの支援の対象とするべき ではないかと思います。これについて、会社がやるというのは難しいかもしれませんの で、業種によっても異なりますし非典型労働者が多いところと儲かっているところは対 応が違うと思います。そのようなことができないのなら、先ほども申しましたが雇用能 力開発機構が地方に展開しているキャリア支援センター等を利用して、こういったもの に関する非典型労働者に対する能力開発を行うべきではないかと考えます。以上です。 ○育成支援課長  先ほど鈴木委員から、キャリア形成促進助成金のキャリア・コンサルティングの実績 が低いという指摘がありました。私どもも問題意識をもっていまして、平成17年度から 企業内に配置する際も助成の対象にするとか、あるいは企業外にお願いするときの限度 額を引き上げるといった形の対応を今年度から取らせていただいていますので、また引 き続きPR等もさせていただきたいと思っています。 ○キャリア形成支援室長  井上委員のご指摘は真摯に受け止めねばならないと思っていますが、こういう取組も しているということもご承知いただければと思います。まず1つは、企業のキャリア・ コンサルティングの状況ですが、相談後どのように活かしていくかということに関して は、例えばどこでどのような訓練を受けられるかということに関しては、ご案内のよう に訓練情報等を提供することが5つのインフラの中の重要な1つと認識して、私どもも 整備してきているところです。その一環として、地方協会のサービスセンターである程 度情報提供したり、あるいは中央協会のホームページ上でそういった情報が拾えるよう になっています。十分とは申しませんが、そういったことをやっていることもご承知お きください。  企業内に関しては、平成14年だったと思いますが、私どもでキャリア支援企業という コンセプトを導入しています。そういったものを育て、普及していこうということで、 まだ不十分ですが地方協会のサービスセンターでそういった企業に対する支援をやって いこうとしているところです。不十分ですが、問題意識は持ってやっております。 ○今野分科会長  それでは時間ですので、本日の議事は終了させていただきます。議事録の署名委員で すが、本日は労働者側委員の西原委員、使用者側委員については山野委員にお願いした いと思います。  次回の分科会ですが、能力評価と技能継承をテーマとして議論をしたいと考えていま す。事務局から日程についての連絡をお願いします。 ○総務課長  次回ですが、10月26日(水)の午後1時30分から開催したいと思います。場所につい ては、追ってご連絡をさせていただきます。なお本日いろいろご意見をいただきまして 宿題もいただいていると思いますので、その辺の回答や整理も含めて併せてやらせてい ただきたいと思います。 ○今野分科会長  それでは、これで終了します。ありがとうございました。 【照会先】厚生労働省職業能力開発局 総務課 企画係 (内5313)