◆妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに係る規定等◆


○労働基準法(昭和22年4月7日法律第49号)(抄)

12条 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60
 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額
 前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。
 前2項に規定する期間中に、次の各号の一に該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前2項の期間及び賃金の総額から控除する。
 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
 産前産後の女性が第65条の規定によつて休業した期間
 使用者の責めに帰すべき事由によつて休業した期間
 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 (平成3年法律第76号)第2条第一号 に規定する育児休業又は同条第二号 に規定する介護休業(同法第61条第3項 (同条第6項から第8項までにおいて準用する場合を含む。)に規定する介護をするための休業を含む。第39条第7項において同じ。)をした期間
 試みの使用期間
〜8 略

(解雇制限)
19条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
(第2項 略)

(年次有給休暇)
39条 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
 使用者は、1年6箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して6箇月を超えて継続勤務する日(以下「6箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数1年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる6箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の8割未満である者に対しては、当該初日以後の1年間においては有給休暇を与えることを要しない。
 (表略)
(第3項から第6項 略)
 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第2条第1号 に規定する育児休業又は同条第2号 に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業した期間は、第1項及び第2項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。



雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年7月1日法律第113号)(抄)

(定年、退職及び解雇)
8条 (第1項 略)
 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、出産し、又は労働基準法 (昭和22年法律第49号)第65条第1項 若しくは第2項の規定による休業をしたことを理由として、解雇してはならない。



雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について(平成10年6月11日 女発第168号)(抄)

2 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保(法第2章)
 総論
(1)〜(4) 略
(5) 法第6条から第8条までにおける「女性であることを理由として」とは、労働者が女性であることのみを理由として、あるいは社会通念として又は当該事業場において、女性労働者が一般的又は平均的に、高度な能力を有する者が少ないこと、勤続年数が短いこと、主たる生計の維持者ではないこと等を理由とすることの意であり、個々の女性労働者の意欲、能力等を理由とすることはこれに該当しないものであること。
 なお、「女性であることを理由として」には、女性が妊娠又は出産したことを理由とする場合は含まれないものであるが、それらを理由として女性を不利益に取り扱うことは好ましくないことは当然であること。また、退職及び解雇については、女性労働者の妊娠・出産退職制及び女性労働者の妊娠・出産を理由とする解雇は法第8条第2項及び第3項により禁止されているものであること。
(6)〜(9) 略
〜4 略
 定年、退職及び解雇(法第8条)
(1) 定年、退職及び解雇は、事業主と労働者との雇用関係を終了させるものであり、男女の差別的取扱いを禁止する必要性があることから、事業主は、労働者の定年及び解雇について、労働者が女性であることを理由として、男性と差別的取扱いをしてはならないこととするとともに、事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならず、また、女性労働者が婚姻し、妊娠し、出産し、又は労働基準法の規定による産前産後の休業をしたことを理由として解雇してはならないこととしたものであること。
(2) 「定年」とは、労働者が一定年齢に達したことを雇用関係の終了事由とする制度をいうものであり、定年についての差別的取扱いとは、差別的な定年制度をとっていること又は当該制度に基づき労働者を退職させることをいうものであること。
 なお、厚生年金の支給開始年齢に差があることを理由として男性の定年年齢より低い年齢を女性の定年年齢として定めることは、第1項の「女性であることを理由とした差別的取扱い」に該当するものであること。
(3) 「解雇」とは、労働契約を将来に向かって解約する事業主の一方的な意思表示をいい、労使の合意による退職は含まないものであること。
 形式的には勧奨退職であっても、事業主の有形無形の圧力により、労働者がやむを得ず応ずることとなり、労働者の真意に基づくものでないと認められる場合は、「解雇」に含まれるものであること。
 また、形式的には雇用期間を定めた契約であっても、それが反覆更新され、実質においては期間の定めのない雇用契約と認められる場合には、その期間の満了を理由として雇い止めをすることは「解雇」に当たるものであること。
(4)  「出産」とは、妊娠4箇月以上(1箇月は28日として計算する。したがって、4箇月以上というのは85日以上のことである。)の分娩をいい、生産のみならず死産をも含むものであること。
 「予定する定め」とは、女性労働者が婚姻、妊娠又は出産した場合には退職する旨をあらかじめ労働協約、就業規則又は労働契約に定めることをいうものであること。なお、労働契約の締結に際し労働者がいわゆる念書を提出する場合も含まれるものであること。
(5) 女性が結婚退職する場合に退職金の取扱いを優遇するいわゆる結婚退職上積制度は直接本条に抵触するものではないが、本条の趣旨に照らし好ましくないものであること(あらかじめ支給条件が明確な退職金は賃金に当たり、上記のような制度は労働基準法第4条の問題となるものであること。)。
(6) 第3項は、産前産後の休業をしたことを理由として時期を問わず解雇してはならないことを定めたものであり、労働基準法第19条とは、目的、時期、罰則の有無を異にしているが、重なり合う部分については両規定が適用されるものであること。
〜12 略



育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年5月15日法律第76号)(抄)

(不利益取扱いの禁止)
10条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。



子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針
(平成16年12月28日 厚生労働省告示第460号)(抄)

 平成17年4月1日から適用される改正指針

2 事業主が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための指針となるべき事項
、2 略
 法第10条、第16条及び第16条の4の規定による育児休業、介護休業又は子の看護休暇の申出又は取得を理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止に適切に対処するに当たっての事項
(1)育児休業、介護休業又は子の看護休暇の申出又は取得をした労働者の雇用管理に当たっては、次の事項に留意すること。
 法第10条、第16条及び第16条の4の規定により禁止される解雇その他不利益な取扱いは、労働者が育児休業、介護休業又は子の看護休暇の申出又は取得をしたこととの間に因果関係がある行為であること。
(2)解雇その他不利益な取扱いとなる行為には、例えば、次に掲げるものが該当すること。
 解雇すること。
 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。
 あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。
 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。
 自宅待機を命ずること。
 降格させること。
 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。
 不利益な配置の変更を行うこと。
 就業環境を害すること。
(3)解雇その他不利益な取扱いに該当するか否かについては、次の事項を勘案して判断すること。
 勧奨退職や正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更は、労働者の表面上の同意を得ていたとしても、これが労働者の真意に基づくものでないと認められる場合には、(2)ニの「退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと」に該当すること。
 事業主が、育児休業若しくは介護休業の休業終了予定日を超えて休業すること又は子の看護休暇の取得の申出に係る日以外の日に休業することを労働者に強要することは、(2)ホの「自宅待機」に該当すること。
 育児休業若しくは介護休業の休業期間中又は子の看護休暇を取得した日について賃金を支払わないこと、退職金や賞与の算定に当たり現に勤務した日数を考慮する場合に休業した期間又は子の看護休暇を取得した日数分は日割りで算定対象期間から控除すること等専ら休業期間又は子の看護休暇を取得した日は働かなかったものとして取り扱うことは、不利益な取扱いには該当しないが、休業期間又は子の看護休暇を取得した日数を超えて働かなかったものとして取り扱うことは、(2)トの「不利益な算定」に該当すること。
 配置の変更が不利益な取扱いに該当するか否かについては、配置の変更前後の賃金その他の労働条件、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について総合的に比較考量の上、判断すべきものであるが、例えば、通常の人事異動のルールからは十分に説明できない職務又は就業の場所の変更を行うことにより、当該労働者に相当程度経済的又は精神的な不利益を生じさせることは、(2)チの「不利益な配置の変更」に該当すること。
 業務に従事させない、専ら雑務に従事させる等の行為は、(2)リの「就業環境を害すること」に該当すること。
〜6 略
 法第22条の規定により育児休業又は介護休業をする労働者が雇用される事業所における労働者の配置その他の雇用管理に関して必要な措置を講ずるに当たっての事項
(1)育児休業及び介護休業後においては、原則として原職又は原職相当職に復帰させることが多く行われているものであることに配慮すること。
(2)育児休業又は介護休業をする労働者以外の労働者についての配置その他の雇用管理は、(1)の点を前提にして行われる必要があることに配慮すること。
〜12 略



育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について(平成16年12月28日 職発第1228001号 雇児発第1228002号)(抄)

 平成17年4月1日から適用される解釈通達

2 育児休業(法第2章)
〜18
9 不利益取扱いの禁止(法第10条)
(1) 育児休業の権利行使を保障するため、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることが禁止されることを明示したものであること。
(2) 「解雇その他不利益な取扱い」に該当する法律行為が行われた場合においては、当該行為は民事上無効と解されること。
(3) 指針第2の3の(1)は、法第10条の規定により禁止される解雇その他不利益な取扱いとは、労働者が育児休業の申出又は取得をしたこととの間に因果関係がある行為であることを示したものであり、育児休業の期間中に行われる解雇等がすべて禁止されるものではないこと。
(4) 指針第2の3の(2)のイからリまでに掲げる行為は、「解雇その他不利益な取扱い」の例示であること。したがって、ここに掲げていない行為についても個別具体的な事情を勘案すれば不利益取扱いに該当するケースもあり得るものであり、例えば、長期間の昇給停止や期間を定めて雇用される者について更新後の労働契約の期間を短縮することなどは、不利益取扱いに該当するものと考えられること。
(5) 指針第2の3の(3)は、不利益取扱いに該当するか否かについての勘案事項を示したものであること。
 指針第2の2の(3)のニにより保障される復職先の職場の範囲は、指針第2の7の(1)に規定する「原職又は原職相当職」よりも広く、仮に別の事業所又は別の職務への復職であっても、通常の人事異動ルールから十分に説明できるものであれば、指針第2の3の(2)のヘの「不利益な配置の変更」には該当しないものであること。
 指針第2の3の(3)のニの「通常の人事異動のルール」とは、当該事業所における人事異動に関する内規等の人事異動の基本方針などをいうが、必ずしも書面によるものである必要はなく、当該事業所で行われてきた人事異動慣行も含まれるものであること。
 指針第2の3の(3)のニの「相当程度経済的又は精神的な不利益を生じさせること」とは、配置転換の対象となる労働者が負うことになる経済的又は精神的な不利益が通常甘受すべき程度を著しく超えるものであることの意であること。
 指針第2の3の(3)のホの「等」には、例えば、事業主が、労働者の上司等に嫌がらせ的な言動をさせるよう仕向ける場合が含まれるものであること。



労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年7月5日法律第88号)(抄)

(契約の解除等)
27条 労働者派遣の役務の提供を受ける者は、派遣労働者の国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等を理由として、労働者派遣契約を解除してはならない。

(適正な派遣就業の確保等)
40条 派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し、苦情の申出を受けたときは、当該苦情の内容を当該派遣元事業主に通知するとともに、当該派遣元事業主との密接な連携の下に、誠意をもつて、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならない。
 前項に定めるもののほか、派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者について、当該派遣就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、適切な就業環境の維持、診療所、給食施設等の施設であつて現に当該派遣先に雇用される労働者が通常利用しているものの利用に関する便宜の供与等必要な措置を講ずるように努めなければならない。



「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律、関係政省令等の施行について」(平成11年11月17日女発第325号 職発第814号)(抄)

7 労働者派遣契約
,2 略
 労働者派遣契約の解除の制限
(1) 略
(2)解除の禁止
 禁止されるのは、労働者派遣契約について、業として行われる労働者派遣であると否とを問わず、また、当該労働者派遣契約の一部であるか全部であるかを問わず、これを解除する行為である。
 なお、労働者派遣の役務の提供を受ける者が労働者派遣をする者と合意の上、労働者派遣契約を解除する場合であっても、(3)の事由を理由とする限り、当該解除は、労働者派遣の役務の提供を受ける者について禁止されるものである。
 法第27条に違反して、労働者派遣契約を解除した場合には、当該解除は公序良俗に反するものとして無効となる。したがって、労働者派遣の役務の提供を受ける者が当該解除を主張したとしても、労働者派遣をする者は解除の無効を主張して契約の履行を求めることができ、さらに、損害を被った場合には、損害賠償の請求をすることができる。
(3)労働者派遣契約の解除が禁止される事由
、ロ 略
 労働者派遣契約の解除が禁止される不当な事由は、労働関係において形成されている公序に反するものであり、その他には人種、門地、女性労働者が婚姻し、妊娠し、出産したこと、心身障害者であること、労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又はこれを結成しようとしたこと、法第40条第1項の規定により派遣先へ苦情を申し出たこと、労働者派遣の役務の提供を受ける者が法に違反したことを関係行政機関に申告したこと等も含まれるものである。
 「理由として」とは、国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等の事由が労働者派遣規約の解除の決定的原因となっていると判断される場合をいう。この場合、当該事由が決定的原因であるものか否かについては、個々具体的事実に即して判断する。
〜6 略

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