05/09/29 第22回厚生科学審議会感染症分科会(議事録) 第22回厚生科学審議会感染症分科会                     日時 平成17年9月29日(木)                        10:00〜                     場所 経済産業省別館1028号室 (照会)                厚生労働省健康局結核感染症課                 担当: 清水(内)2379                     平塚(内)2386     TEL : 03−5253−1111 ○前田課長補佐 ただいまから第22回厚生科学審議会感染症分科会を開催いたします。 まず、本分科会の開催にあたり、中島健康局長よりご挨拶を申し上げます。 ○健康局長 おはようございます。このたび健康局長に就任いたしました中島です。ど うぞよろしくお願いいたします。本日は皆様大変お忙しい中、本感染症分科会にご出席 をいただきまして、誠にありがとうございます。  さて、昨年の12月10日、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部において決定 された、テロの未然防止に関する行動計画に基づいて、生物テロに使用されるおそれの ある病原性微生物等の管理体制の確立を図るため、感染症法の一部改正案を、平成18年 の通常国会へ提出することとしているわけです。  これから規制の対象とすべき病原性微生物の種類等に関し、この厚生科学審議会感染 症分科会でご意見をいただきまして、法案の準備を行っていきたいと考えております。 また、多剤耐性結核を含む結核菌についても、生物テロ対策の一貫として規制の対象と する必要があることから、感染症法の中に結核に対する対策を盛り込む必要があること など、結核予防法の廃止も含め、法制上の問題点もご審議いただければと思っておりま す。  合わせて平成15年の感染症法改正時の附帯決議において、重症急性呼吸器症候群、い わゆるSARSについて、感染症法上の類型を2年ごとに見直しを行うとされています ので、感染症の類型の変更についてもご審議をいただきたいと考えております。  本日、先生方におかれましては大変長時間にわたって恐縮ですが、専門的かつ大局的 な見知からご意見を賜りたいとお願いを申し上げたいと思います。以上、私の冒頭のご 挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。 ○前田課長補佐 では開会に先立ち委員の出欠状況について報告させていただきます。 池上委員、大野委員、川城委員、喜田委員、木村(崇)委員、山川委員、山口委員、吉 川委員、渡邊委員はご欠席です。また、小野寺委員、工藤委員、相楽委員、岡部委員、 吉澤委員については後ほど到着するとの連絡をいただいています。また、生物テロに関 する研究班の内容についてご説明いただくために、国立感染症研究所の佐多部長にご参 加をいただいているところです。  8月26日付けの事務局の人事異動により、先ほどご挨拶しました中島健康局長、結核 感染症課長の塚原課長に交替をしています。事務局については座席表のとおりです。そ れでは、後の進行については、倉田会長、よろしくお願いいたします。 ○倉田分科会長 本日の予定ですが、先ほど中島局長からもありましたように、非常に 盛りだくさんですが、どうぞよろしくご協力をお願いいたします。会の進め方について、 まず、お手元の議事次第を見ていただき、資料確認を事務局からしていただいた後に、 説明を一つひとつしていただきます。午前の部が10時から12時40分まで、昼食を挟んで 13時40分から16時30分と、非常にみっちり詰まっていますが、よろしくお願いいたしま す。委員の先生方におかれましては、円滑に進むようご協力をお願いいたします。それ では事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○前田課長補佐 資料の確認をさせていただきます。第22回厚生科学審議会感染症分科 会議事次第と書いてある資料です。資料1、テロ未然防止に関する行動計画(概要)。 資料2、医療機関、衛生検査所、地方衛生研究所、保健所等における病原性微生物の保 有状況についての調査依頼。資料3、医療機関、衛生検査所、保健所等における病原性 微生物等の管理の強化について。資料4、研究の概要。資料5、我が国において規制が 必要な病原性微生物とその規制レベルの検討結果。資料6、感染症法改正による病原性 微生物の規制の概要。資料7、国立感染症研究所病原体等安全管理規程の構成。資料8、 感染症法改正時の附帯決議。資料9、SARSの発生状況について。資料10、SARS に関する研究の概要。資料11、重症急性呼吸器症候群ウイルスの空気感染を示す証拠。 資料12、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案に対する意見書。 資料13、2類感染症の集団発生事例。資料14、2類感染症患者調査の結果。資料15、結 核予防法と感染症法、予防接種法の相関等。資料16、結核対策の実績と法制上の課題。 資料17、結核対策の包括的見直しについて(意見)。資料18、公衆衛生審議会伝染病予 防部会基本問題小委員における結核予防法の取扱いに関する意見。以上、全部で78頁の ものが本資料です。  部厚い封筒に入っているものは、第22回厚生科学審議会の参考資料です。参考資料の 1、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の対象となる感染症の定 義・類型。参考資料2、テロ未然防止に関する行動計画(本文)。別冊で2冊お配りし ていますが、平成16年度の総括・分担研究報告書として、生物テロに使用される可能性 の高い病原体による感染症の蔓延防止、予防、診断、治療に関する研究班の報告書のI、 IIがあります。参考資料5、1類感染症、2類感染症、3類感染症及び4類感染症の概 要。参考資料6、生物テロに使われる可能性のある病原性微生物による感染症(現行の 感染症法では対象外のもの)。参考資料7、国立感染症研究所病原体等安全管理規程。 参考資料8、新しい時代の感染症対策について。参考資料9、結核対策の包括的見直し に関する提言。参考資料10、公衆衛生審議会伝染病予防部会基本問題小委員会議事録( 関係分)です。非常に大部でして、それぞれ説明の中で行ったり来たりする点があろう かと思いますが、本日はよろしくお願いいたします。 ○倉田分科会長 それでは事務局から本分科会の検討事項、感染症法の概要、生物テロ 対策にかかわる検討の経緯、及び病原性微生物の保有状況についての説明をお願いいた します。 ○結核感染症課長(塚原) 資料はナンバーが付いていない1枚紙のA4で、感染症分 科会の検討事項とタイムスケジュールという表題が付いているものです。資料がたくさ んあり、担当の者からご説明させていただきますが、その前に新たな課題に対して、今 日からご審議をいただきますので、今後のこの分科会における検討課題について、大き く3点ありますので、まず最初に説明させていただきます。  1点目が病原性微生物管理体制の強化についてという論点です。これは今回のシリー ズの分科会における中心課題です。先ほど局長からも挨拶の中で触れましたが、病原性 微生物のテロに関して感染症法の中で病原性微生物の管理について規制をしていくとい うことが、昨年の12月に政府の方針として決定しています。どのような微生物について どのような規制が適当かという観点から、微生物のグルーピングと、このぐらいの規制 にする必要がある病原体としてどのようなものがあるかという個別の微生物の議論を、 この場で専門的な見知から是非検討をお願いしたいということで、1番目の論点に対す るもう少し具体的な論点メモとして、(1)(2)に書いてあるようなことが1つ目の 大きな論点です。  2つ目の論点は、テロとは直接関係はなく、2年前の感染症法改正、すなわちSAR Sを新たに追加したときの法改正関係で、その際、衆議院、参議院両院から附帯決議が 付いておりました。具体的にはSARSを1類にするにあたって、知見がはっきりない ので、1類感染症ということで規定したわけですが、2年を目処にその後の知見を踏ま えた上で、改めて何類に規定するのが適当かを検討せよ、というのが附帯決議の内容で す。これについて、ちょうど今回2年が経過しましたので、SARSが何類に該当する のか、この2年の知見を踏まえて専門の先生方のご意見を是非頂戴したいということで す。  合わせて(2)にあるように、細菌性赤痢、コレラといった腸管感染症の取扱いが新 しい感染症法に伝染病予防法から移行したときに、2類に移行してきたと同時に第3類 という新しいクラスができたわけですが、ここにO-157というものが規定されています。 こういった腸管感染症について第2類が適当なのか、あるいは第3類でもいいのではな いかというご意見もいろいろお聞きしますので、この腸管感染症について、改めて何類 が適当かをこの場でご議論いただきたいというのが、2の(2)の議題として挙げさせ ていただいた背景です。  大きな3つ目の論点は結核を生物テロ対策の対象とすることに伴う、結核予防法の廃 止です。今回、テロ対策の中で多剤耐性菌についてもきちんと管理すべきだというご指 摘が少なくありません。今回の感染症法で管理を強化する中で、多剤耐性菌についても 明記すべきということを事務局側としては検討しているわけですが、これに伴い、結核 予防法を感染症法と統合するというような議論が必要ではないかということです。ここ に書いてあるのは議論になるきっかけですが、もともと感染症新法が平成8年、9年に 議論されていたときにも、結核予防法と新感染症法の統合については議論されておりま したし、14年の法改正の前の段階での審議会のご議論の中でも、やはりいろいろな議論 があったと承知しています。その中で、いずれも最終的な結論としてはまだ時期尚早で はないかということで、統合は見送られてきたわけですが、今回、また改めてこの議論 をお願いしたいということです。  もう1つ、背景的なことを言いますと、17年4月に結核予防法について一部改正をし ましたが、その改正をした中で関連する通知についても見直しを行ったわけです。その 見直しをしたことにより、いろいろ結核予防法の本体の部分についても問題が指摘され るという事情もあります。これについては後ほど資料説明の中で改めて説明を詳しくし たいと思います。そういった背景の中で結核予防法と感染症法との統合について、是非 ご議論をお願いしたいということです。以上が今回のシリーズの中での大きな3つの論 点です。  続きまして感染症法の概要について、簡単に私から紹介をさせていただきます。詳し い先生方はたくさんおられると思いますが、改めてレビューをさせていただくというこ とで、ポイントだけをお話させていただきます。参考資料1です。感染症法については いろいろな規定がありますが、特に今回の生物テロ対策の中で、改めてご確認いただき たいのは、感染症法の中で感染症の類型化をしており、非常に死亡率が高くて感染力が 高い5類までを分けていますが、病原体の管理を強化していく上で、これが1つの参考 になるということで、これについて、類型化のところだけ説明をいたします。  新感染症は今回省略しますが、1類感染症から5類の感染症という類型化がされてお り、1類感染症は感染力、罹患した場合の重篤性、総合的観点から危険性が極めて高い 感染症という位置づけで、エボラ出血熱からラッサ熱までの疾患の規定をしています。 主な対応としては原則入院をして治療をしていただく。入院する医療機関は第1種感染 症指定医療機関で、高度なバイオセーフティの構造、機能を持った病室に入院していた だくというのが1類です。2類の感染症は危険性が高い感染症で、ポリオからパラチフ スまでの病気を規定しています。対応としては状況に応じて入院をしていただく。入院 する先は第2種感染症指定医療機関です。入院の勧告が伴う疾患はこの2類までです。 3類感染症はO-157が対応していますが、入院していただくという措置はなく、特定の 職種への就業制限をかけるという対応ができる疾患です。4類感染症、5類感染症は以 前4類ということで1つでしたが、前回の改正で2つに分かれました。4類感染症につ いては、ヒトからヒトへは感染しませんが、動物を介してヒトに感染する病気というこ とで、動物の措置を含む消毒等の対物措置ができる、ヒトに対する措置は規定されてい ませんが、物に対する措置が規定されている疾患です。治療については強制力を伴う入 院ではないので、一般の医療機関で治療していただくという位置づけです。5類感染症 については状況に応じて発生状況を把握していこうということで、インフルエンザ以下 の疾患を規定しています。以上が感染症法に規定する感染症類型の概要です。  次に今回の生物テロ対策の検討をここでお願いするに至った経緯について、少しお話 させていただきます。資料本体、第22回厚生科学審議会感染症部会の厚い資料の1頁で す。テロの未然防止に関する行動計画は、平成16年12月10日に政府が設置した国際組織 犯罪等・国際テロ対策推進本部で決められた政府方針です。その抜粋です。第3、今後 速やかに講ずべきテロの未然防止対策ということで、NBC各種のテロについて計画を 定めているわけですが、その中で(8)に生物テロに使用されるおそれのある病原性微生物 等の管理体制の確立ということが入っており、これが今回の法改正の経緯となった基本 となる政府方針です。  現時点では第3段落目に書いてあるように、各省庁が当面の措置として、管理を徹底 していくということで、これがオン・ゴーイングのことです。最終的には最後のパラグ ラフ、四角で囲ったところに、「厚生労働省は、病原性微生物等に関する適正な管理体 制の確立を図るため」云々ということで、譲渡の規制、届出、報告徴収、立入検査、立 入検査の結果違反があった場合には罰則を付けて行政処分を行う。法改正の検討を行い、 議論の結果、感染症法改正をこの中でしていこうということが政府の考え方として整理 されています。  今後の法改正のスケジュールとしては、平成18年の通常国会に提案をしたいというこ とで準備を進めていきたいと考えています。今回の検討をお願いする大きな3つの論点、 感染症法の類型化の整理、最後になぜこのような法改正に至ったかということのこれま での経緯について簡単でしたが説明をさせていただきました。 ○前田課長補佐 続きまして資料2、医療機関、衛生検査所等の病原性微生物の保有状 況についてです。なお、先ほど説明しませんでしたが、この参考資料は委員のみの配付 です。よろしくご了承願います。先ほど課長の説明にありました、テロの未然防止の行 動計画にある当面の措置としての厚生労働省等の施設に対する保管方法、種類の届出の 指導ですが、それを実際に行った一例として、この2頁にある昨年の12月7日付けの厚 生労働省医政局指導課、経済課、健康局総務課、結核感染症課、4課連名による調査を 行っております。この内容としては3頁に医療機関、衛生検査所、地方衛生研究所、保 健所、P3レベル以上の実験室を有するものといった施設に対する病原性微生物の保有 状況について、各都道府県等を通じた調査を行っています。これ以外にも国立の試験研 究機関については大臣官房の厚生科学課を通じて、国立病院国立高度専門医療センター については医政局の国立病院課を通じた調査、そして医薬品産業等についても医政局の 経済課を通じた調査も合わせて調査を行ったところですが、一例として都道府県を通じ た調査の内容について資料として添付しております。  調査項目としては3頁の2に、病原性微生物を保有している施設の名称、所在地、管 理責任者の氏名・連絡先、そして保有している病原性微生物の名称と用途、管理の方法 について、昨年12月から今年の1月20日まで調査を行っております。どういった病原性 微生物を調査したかというと、4頁にあるように調査の対象となる病原性微生物は、ウ イルスとしては痘そうウイルス、SARSコロナウイルス、エボラウイルス、マールブ ルグウイルス、ラッサウイルス、ポリオウイルス、細菌についてはコレラ菌、赤痢菌、 チフス菌、ペスト菌、毒素としてはコレラ毒素、赤痢菌毒素といった内容のものについ て、保有している場合は調査表に回答してもらうということを行ったものです。  その結果として5頁に資料3で提示しています。これが3月30日にまとまったもので、 調査結果を収集して還元するだけではなく、今後の病原性微物の管理の強化について、 指導も合わせて行ったものです。その内容としては6頁、12月の通知以前からこういう 病原性微生物の適切な管理を要請してきたのですが、今般その管理状況の調査を行い、 調査結果をまとめたということです。  そして、いままで出した通知や病原性微生物管理マニュアルの整備に努め、病原性微 生物等の適切な管理について一層徹底するようによろしく指導していただきたいという ことについて、都道府県に対して指導を行っているところです。  その結果7頁、背景と調査概要、調査結果、今後の対応です。調査概要として医療機 関、試験研究機関、公的機関、その他と分けて統計を取っています。8頁に保有の箇所 数について記載しています。病原性微生物等の保有状況と、保有施設数が厚生労働省関 連の施設のみで587施設、調査対象施設についても1万1,624施設。医薬品・医療機器製 造業関連施設については、その対象が把握できないために除いていますが、一応把握し ているだけでも1万施設以上を調査しています。そして、その結果、ウイルスで痘そう ウイルスを持っている施設が0、SARSコロナウイルスは5施設、エボラウイルスは 0施設、マールブルグウイルスは0施設、ラッサウイルスは0施設、ポリオウイルスが 25施設、コレラ菌を保有している施設が300、赤痢菌が543、チフス菌が358、ペスト菌 が13、コレラ毒素が17、赤痢菌毒素が6ということでした。その保管場所については施 設内で一元管理している所が295といちばん多く、部門ごとに管理している所も197、把 握していない所も6あったということです。  管理方法としてほとんどが台帳管理で467、管理マニュアルについても310施設はマニ ュアルを整えていましたが、277施設は整えていなかったという状況が判明し、まさに 最後の管理マニュアルを整えていただくような措置を、3月30日付けで行ったというこ とです。 ○倉田分科会長 引き続き参考人の感染症研究所の佐多部長から、平成16年度厚生労働 科学研究「生物テロに使用される可能性の高い病原体による感染症の蔓延防止、予防、 診断、治療に関する研究」について、ご説明をお願いします。 ○佐多参考人 国立感染症研究所の佐多です。よろしくお願いいたします。この研究班 は平成14年から3年間の計画で始まったもので、主任研究者は仙台病院におられた島田 馨先生です。私が取りまとめをお手伝いしていましたので、代わりに内容について説明 します。この研究班の名前は、生物テロに使用される可能性が高い病原体による感染症 の蔓延防止、予防、診断、治療に関する研究ということで行っています。この研究班の 趣旨・目的は2つあり、1つは生物テロ関連疾患の迅速検査法の開発です。もう1つは 診断、治療法及び関連疾患の知識の普及を図ることにより、生物テロ対策に役立てる。 その2つの柱からなっています。  平成14年当時、CDCから発表された生物テロ病原因子というものが唯一だったわけ ですが、その後、いろいろな機関から対象病原体が発表されていて、少しずつ増えてい る状況です。内容については下に、生物テロ病原因子CDCとありますが、そこに掲げ ています。これは皆さんご存じのように、カテゴリーA、B、Cと3段階に分けられて いて、その基準については資料17頁の注3に米国CDCバイオテロ病原性微生物等の危 険度分類とあります。カテゴリーAは、最も高い優先度で対応すべき病原体、Bは2番 目に高い優先度、Cは3番目という形でその内容が記載されています。  そういった疾患について、何らかの形でとりあえず迅速検査診断ができる方法を作っ ていくことと、バイオテロが起きたときに、ファーストレスポンダー(一次反応)とい われる臨床の先生方に、こういう疾患があるということの情報提供をどのように対応し ていくか、その辺も作っていこうということです。  真ん中に生物テロ疾患の特徴を順不同で書いています。これらのカテゴリーA、B、 Cに即する疾患の特徴としては、希なものであるか、例えば天然痘のように根絶された 感染症の病原体であるということ。バイオセーフティレベルが病原体取扱いに関して定 められていますが、そのレベル分類の3〜4、すなわちある特定の病原体を扱う施設で なければ取り扱えないようなカテゴリーの高いレベルの病原体であること。日本の医師 にとっては臨床経験が非常に乏しくなってしまった。疾患の状態が変わってきているの で、臨床経験が乏しい。根絶された疾患ですから、検査法がないという状況にあります。 もう1つはそういった希な疾患、あるいは根絶されたということで、治療薬が限定され ていたり、ワクチンが開発されていなかったりという状況があります。もし研究開発を 行うとしても、特に2001年9月11日の米国のワールド・トレードセンターのテロの後、 炭疽菌のテロがあったりして、規制が強化された結果、研究開発用のレファレンス、養 成対象として必要な病原体の入手が非常に困難になってきたということがあります。炭 疽菌を含めた細菌の核酸情報がなかなか手に入りにくいということもあります。また、 いろいろな研究開発をしていく上で、組換えDNAの技術を使って作っていかなければ いけないのですが、そこについてもバイオセーフティレベルが3〜4ということで非常 に難しいということもあったり、いろいろな診断に使う特異抗体などもかなり未整備で ある。どうしても病原体なので培養という操作が不可欠なのですが、その部分について もなかなかやりにくい。逆にいろいろな検査診断法が開発されたとしても、それを公表 した場合に、逆に相手側にそれに付け入れられるため、研究発表することについてもか なり制限が加えられる。ほかにもいろいろありますが、非常にやりにくい研究であると いうことが一方にあります。  そういうこともありますが、必要性にかんがみて、迅速診断検査法をやるということ と、先ほど言ったように第一線の臨床医等への情報提供として、疾患の画像の情報、ど のように診断を進めていくのかの支援、日本人に合った投薬量を定めておく必要がある、 あるいはそういった病原体を取り扱う場合の感染予防策をきちんとしておく。そういっ た情報を冊子としてまず作る。それをCD−ROMで配付、あるいはホームページ等で 提供して、皆さんに使っていただくという形で、この研究班を立ち上げて3年間仕事を 行ってきました。  次頁がその3年間の研究成果について、簡単にまとめたものです。1番から7番まで ありますが、1番から6番までが迅速診断法の開発にかかわるもので、7番は情報提供 という形での支援になりますが、そのマニュアルの作成の結果が書いてあります。1番 から6番までは迅速検査法の開発ということになりますので、どうしても核酸診断にな りますが、先ほど言ったようないろいろな問題があるにもかかわらず、うまく皆さんに やっていただき、ここに書いた天然痘、サル痘、エボラ出血熱、ペスト、炭疽菌、野兎 病菌、鼻疽、類鼻疽菌、Q熱コクシエラ、これだけの対象の疾患に対して、核酸迅速診 断法について作ることができました。これはそれぞれの病原体を特異的にかつ感度よく 検出することが大事なのですが、特に細菌性疾患の場合には、類似する病原体は非常に たくさんあり、そのプライマーを設計するにあたっても、1つだけではなく数十種類の 病原体についても一緒に検査をし、その特異性を確かめることが必要になります。そう いった意味で言葉は2行しかありませんが、内容は結構大変なものがあります。  2番としては薬剤耐性菌検出系を作った。3番としてボツリヌス毒素の簡易診断キッ トと、トキソイドを作った。また血清診断系、血清診断・免疫診断用に必要な抗原、あ るいは迅速病理診断法という形のものを作った。これらの1から6については研究班の 報告書が2分冊あります。薄いほうに細かな内容が記載されています。ただ、この中に プライマーの情報については発表されているもの以外は、全部省かせていただいていま す。発表されているものについて確認したとか、それを少しモディファイしたというも のについては記載しています。  もう1つ、柱のほうはマニュアルという形です。このマニュアルをどのような形で作 っていくかということも1つの議論の対象になりました。2冊目の厚めのほうの資料を 見ていただきますと、3頁にマニュアルの目次があります。この15種類の感染症につい てマニュアルを作っていこうという形で議論が整理されました。この中には、CDCの 分類としてあったカテゴリーA、B、Cの中に入っていないものも含まれています。例 えば多剤耐性結核というものを入れました。これは、その当時はバイオテロの対象疾患 というようにプライオリティの高いものとしては入っていませんでしたが、議論の経過 の中で、この多剤耐性結核についても結構大事であるのでマニュアルとして整備してい こうということで入れてあります。ですから、必ずしもいちばん最初に企画した対象疾 患だけではなく、日本で優先度の高いものをこのマニュアルの中に疾患として取り込ん だということです。  次は各論です。例えば7頁はウイルス性出血熱についてまとめてあります。7頁では 遭遇しやすい状況という形で、フローチャート風にまとめていて、疑いがあったらどの ような形で対応していくのか、比較的簡単に見られて対応がわかるという形をとり、8 頁では病原体の特徴、潜伏期間、感染経路、臨床症状などいろいろな検体の採取法を含 め、要点について1頁でざっと見る形をとり、次頁にエボラの写真があったり、採血風 景、鑑別の表があったりしますが、なるべくグラフィカルに、一見してわかりやすいと いうものを作ろうと企画しました。ただ、残念ながらこういう写真はなかなか手に入ら ないということと、著作権の問題が絡んで、なかなか難しいということが身にしみてよ くわかったというのが、作成過程において感じたことです。  11頁からはその疾患の詳細という形で細かくいろいろなものを記載しています。この ような4段階の形でこれをまとめましたが、冊子では結局不十分であろうということで、 もう少し皆さんに見ていただいて、かつ使っていただいて、ホームページ上の資料につ いても作成済みですが、もう少し内容や著作権の問題をクリアにすべく、いま検討を続 けているところです。このような形でやってきました。  ところが、若干問題点がまだ残っており、資料4の10頁の左側に5点ほど挙げておき ました。対象病原体の数はまだ限られた数であり、もっと増やしていかなければいけな い。また、実際は環境から検出することも必要なわけで、単に臨床検体だけを使った検 査診断法だけでいいのかどうか。どうしても鑑別しなければいけないものがたくさんあ るということで、本当に十分なのかどうか。特異性が十分なのかどうか。一つひとつの 病原体を検出するのは少し目処がついてきましたが、もしわからない場合、例えばウイ ルス性の感染症の場合には非特異的な症状が先に出てくるので、そこからどういうもの を実際に検査診断していくのかという意味で、いろいろなものを一遍に調べるというス クリーニングのシステムが必要であるということで、そういったものも作っていかなけ ればいけない。あるいはもし、バイオテロで病原体が使われたときに、その病原体がど こに由来するのかを識別するということは非常に難しいと思いますが、そういったニー ズもあるのではないか。その辺についてはまだ手が付けられないので、11頁に書いたよ うに課題がこれだけ残っているということです。  この研究班は3年で終了ですので、それ以後もこういう課題を克服するために昨年の 12月に新たな課題が設定され、そこでどういう格好で申請しようかということで出した 書類が、この12頁にあるものです。名前あるいは目的等についても大きく変化はありま せんが、いずれにしても我々ができるのはバイオテロに対していろいろな形でレスポン スしなくてはいけない人たちに対し検査診断、あるいは臨床的な情報提供をどういった 形でやるのかについての対応を、いかにうまく支援していくのかという形で、研究をさ らに進めていきましょうということです。研究目的については3つ書いてあり、前年度 の3年間とほぼ同じですが、研究目的のところにあるように、問題点、あるいは課題を 踏まえて、もう少し網羅的に診断ができるような形に変え、対象疾患については拡大、 診断、治療情報のさらなる集積、これを適宜改訂していかなくてはいけないという作業、 マニュアルモードを膨らませていくという形で、今年度から新たな研究班がスタートし ています。私が主任研究者として、これを引っ張っていこうということになっている次 第です。 ○倉田分科会長 ただいま厚生労働科学研究の、生物テロに使われる可能性の高い病原 体に関する感染症の説明と、その防止策、あるいは検出等の問題について研究班の成果 を説明していただきましたが、全般を通して事務局の説明と、この研究の成果の説明の ところを含めて、何かご意見、ご質問がありましたらどうぞ。 ○田代委員 病原体の保管状況、管理状況の調査、厚労省関係の医療機関を中心にして 説明されたわけですが、大学その他の研究教育機関についても同じようなことがどこか でやられているのでしょうか。また、その内容について厚労省で把握されているのでし ょうか。 ○前田課長補佐 今回の調査については医療機関ということで、大学については、大学 附属病院が一応対象となっていますが、その病院以外の農学部、工学部については入っ ていませんただ、文部科学省においても、定期的にそういう保有状況の調査を行ってい ると伺っており、そういう情報はいただいています。 ○田代委員 そうすると文科省でやられた調査報告というのは、厚労省のほうにきちん 報告されているわけですか。 ○前田課長補佐 文科省の行った調査については依頼に基づいて情報提供をいただいて います。 ○竹内委員 東京都や文部科学省をはじめ大学のほうにも山のように調査が殺到してい ます。5、6種類同じような調査がここ1年ぐらいで殺到しているので、過剰情報提供 のような状況になっています。心配なのは過剰に多重なルートで情報提供したのだけれ ども、情報を取っただけで何もしないのではないかという感じが、常にこの類のもので はするのです。ですから、情報をあげて、お互いにシェアしましたと。しかし、それを シェアしただけで、そのあと省庁間の連携は常に何もないというエアポケットに、また 落ちるのかなと思いながら、5、6種類のソースの違う情報をまとめたのです。  私の聞きたいのは、この研究班の佐多先生がいみじくも言われた今後の課題は、実は 完全なこの類の研究のボトルネックで、迅速診断をラボでわかっている病原体を相手に 開発するのは感染研の能力をもってすればたやすいことだと思うのですが、いまの問題 に書かれたようなボトルネックが何ら感染研自体だけでは解決できない、この研究班だ けでは解決できないというところにある。病原体の収集にしても文部科学省ライフサイ エンス課が作った海外の拠点との連携などいろいろなことがありますが、厚生労働省だ けでアイソレートされてやっているように思えるのです。その辺が常に省庁間のエアポ ケットにボーンと落ちて、やったはいいけど何にも動かなかったということになりはし ないか。  その1つの例として、今日は食品由来のテロに関する話と、水系感染の話が出ている のですが、農林水産省が多分稲や食物に関するウイルスの検討もやっているのだと思う のです。要するに稲に対するアタックというのはバイオテロなので、日本にとってはそ ういう検討は農林水産省でやっているのですよね。情報は持っていますか。 ○倉田分科会長 いまの竹内委員の質問に関して事務局、お願いします。 ○前田課長補佐 まさに省庁間の研究の連携、調査の連携については本当にやっていか なければならないものと考えています。その辺りに非常に危機意識を持っているのは総 合科学技術会議です。倉田分科会長が新興・再興感染症のワーキンググループの座長を 務められており、今年度からそういう隙間の課題を埋めていくような研究を進めていこ うということで、連携施策群がちょうどスタートしたのが、今年からです。  竹内委員が言われた5、6種類の調査がきているということですが、テロ関係の調査 については非常に取扱いが難しいという点があります。この内容として、例えば資料6 頁、3月30日の通知のなお書きにありますが、「病原性微生物等の保有状況の詳細につ いては、犯罪の予防その他公共の安全と秩序の維持に支障を来すおそれがあるほか、国 家の安全を害するおそれがあることから、公表しないこととしているので、貴職におい ても、その旨了知の上、当該情報の取扱いに遺憾のないようにされたい」ということで、 この個別の施設名は公表しないという扱いになっています。ほかの調査についても同じ ように、ほかの目的にこの調査結果を使うことを禁じているということで、それぞれ問 題意識の対策をとる官庁は、調査を行っているというのが現状です。その辺りがこの調 査の性格上ご了承いただかないといけない点かと思っています。そして、今回この調査 結果を踏まえて、どういう対策をとっていくのかということについて、今回この結核感 染症課の厚生労働省としては法改正というものの1つの資料に用いるということで、何 とか厚生労働省だけはその調査の結果を施策に有効に活かしていきたいとは考えていま す。もちろん他省庁との連携も大切ですが、同様の調査を他省庁もやっていますので、 その辺りについてはできるだけ情報の共有をしていきたいと考えており、調査のしっぱ なしに終わらないように、重々気をつけて対応しているところです。  あと食品由来、水系感染の件です。こちらについても新興・再興ワーキンググループ の中で感染症の研究について、厚生労働省はどういう研究をしているのか、農林水産省 はどういう研究をしているのか、環境省ではどういう研究をしているのかというのを一 覧表という形で、各省庁から資料を提出させました。それぞれワーキンググループで発 表をし、厚生労働省としてもしたところです。研究内容の詳細までは把握できていませ んが、大体どのような課題の研究をどの省がやっているのかというのは、総合科学技術 会議の中の新興・再興ワーキングの中で、かなりの共有はされたのではないか。それは 以前に比べてだいぶ進んできていると思います。 ○竹内委員 私が申し上げた稲を攻撃するようなウイルスの研究はやられているのです か。 ○前田課長補佐 いま手元に資料等がないので詳細はわかりませんが、農林水産省であ る程度は対応しているのではないかと思います。 ○宮村委員 この調査のバリデーションというか、1万を超える調査対象施設があって、 ポジティブの回答がいくつかのインフォメーションとともに返ってきたわけですが、ゼ ロになっている所、あるいは回答がなかった所についても、誰の責任でゼロ回答をして いるというのは、100%の回収率なのでしょうか。 ○前田課長補佐 この調査については任意の調査ということで、保有している施設につ いては誰が責任かという所はわかっていますが、ゼロの所については特にそういうもの はありません。 ○宮村委員 回答がなかったというのは含まれているのでしょうか。 ○前田課長補佐 この都道府県に対して送った調査内容について、調査対象施設がどれ くらいで、回答のあった施設がどれくらいかということについては、データとして一応 各都道府県から上がってきたものはありますが、回答のなかった施設についてはそうい うものを保有していないということです。任意の調査ですので限界はありますが、回答 のあった所でこれくらいの箇所数ですということです。この調査の問題点は、虚偽の報 告について法律上の義務による届出や報告ではないという点なので、把握できたものは これだけということなのです。後ほどご議論いただく届出の制度化をすると今後、実際 に回答がなかったり、虚偽の届出をした場合について、いろいろな規制がかけられます。 現状として、取れる最大限のものとしてはこの調査のみです。 ○松本委員 地方自治体の立場で申し上げたいのですが、やはり生物テロは本当に怖い のです。そういうことでご意見を申し上げたい。生物テロは地方自治体特定、あるいは 個々の自治体において限定したものではなくて広域的に発生するおそれがあるわけです。 地方自治体の立場としては、各々ではなくて国において責任を持ってやっていただきた い、まずそう進めていただきたいという感じがするわけです。聞いていて専門家ではな いので、本当に怖いような感じがするわけです。そういうことで、小さい所のものでは なくて国全体で、また広域的な考え方で対応していただきたいと思います。 ○倉田分科会長 貴重なご意見をありがとうございました。事務局、いかがですか。 ○新課長補佐 今回の感染症法改正については生物テロを念頭に置いた改正なので、広 域性、重大性、専門性いずれの観点から、国が直接執行するという観点で、国の責任に おいて処理をしたいと考えておりますので、ご意見を参考にして法制化の作業を進めて いきたいと考えています。 ○雪下委員 細菌テロについては、倉田分科会長のアメリカ視察に私もお供させていた だいた1人です。テロの未然防止に関する行動計画は国際組織犯罪等・国際テロ対策推 進本部から出ているということですが、これはいわゆる有事六法の中の1つの国民保護 法(昨年6月に制定)に準じて作られた本部で、それに準じてやられていると解釈して いいのかどうか。 ○新課長補佐 この行動計画については内閣官房においてテロの関係に対処するために、 国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部という組織の設置を、平成16年8月24日に閣議 決定しています。国際的なテロの未然防止対策の検討を正式な課題として随時検討し、 16年内に期限を切って、問題点の解消を図るため、直ちに各省庁が連携して取り扱うべ き対策を計画という形にまとめたということです。直接的には国際的なテロについて未 然防止対策を検討するということで、閣議決定に基づいて設置された組織です。 ○雪下委員 そうしますと、国民保護法とは関係ないということですか。国民保護法の 32条だったと思いますが、国民の安全を守るために、テロ対策について、防御策を策定 して来年3月までに取りまとめるという取り決めになっていると思います。それはこれ とは別に組織されると考えてよろしいのですか。 ○新課長補佐 そうです。米国の同時多発テロ以降の国際的連携等の強化の中で、国際 テロの情勢を踏まえて、昨年の閣議決定によって設置されたもので、別途のものです。 ○竹内委員 別途に出された資料1は、テロの未然防止に関する行動計画で、起こった 場合に、ファースト・リスポンド、要するに非常にクイックにリスポンスするための行 動計画は別にあるのですか。 ○前田課長補佐 テロの未然防止に関する行動計画の全文を、参考資料2として配付し ております。未然防止の行動計画という名称は1頁の「はじめに」の3行目に、「不幸 にもテロが発生してしまった場合に備え、テロの被害を最小限に食い止め、テロの早期 鎮圧を図ることができるよう」と。それは一応、起こった後のことも含めた、被害の拡 大防止も含めた計画ということです。 ○工藤委員 日ごろ結核を扱っている者として一言。MDR、結核菌の一種をバイオテ ロの微生物の1つに加えていこうという話は理解できなくもありません。佐多先生のご 指摘にもありましたが、我が国には結核患者そのものがずいぶんたくさんおります。今 回スポットが当たっているMDR結核患者もそんなに珍しい話ではありません。その意 味からMDRは、いま佐多先生が発表なされました資料の9頁の生物テロ疾患の特徴に あるような希少あるいは根絶された感染症ではありません。また、バイオセーフティレ ベル3ないし4の病原体もそこへ入れざるを得ないのだろうと思いますが、診療の現場 や検査室、また検査屋ではP2レベルで扱っているのが通常の状態です。それから臨床 経験が乏しい、簡易検査法がない疾患ではありません。結核菌をばら撒いても感染率は 低いですし、発病率も非常に低い疾患で、バイオテロに使うには、非常に効率の悪い病 原体でありますが、これに含める。  世界的には網羅するリストに中に入っているのはよく承知しておりますが、事務局と しては、具体的にバイオテロの現場としてどういうようなシチュエーションで、MDR を使ってバイオテロが行われることを想定されているのか。また、これがこういうもの に入りますと、結核全体がいま以上に、さらに怖い病気であるという偏見を新たに生み はしないかということについて、ご意見をお願いしたいと思います。 ○前田課長補佐 まず結核菌の件についてです。佐多先生に説明いただいた資料にも該 当する箇所があり、それは報告書IIの中にあります「マニュアル2005」です。この報告 書では、多剤耐性結核については63頁から疾患全体のサマリーということで記載されて います。  佐多先生から説明いただいた内容に関することですが、疾患の詳細としては、その報 告書の67頁の「はじめに」というところに、アメリカの疾病管理予防センター(CDC )の分類では第3の優先度で、入手かつ生産と散布が比較的容易と。それで、「高い致 死率と公衆衛生に重大な影響をもたらす、との理由で将来的に遺伝子操作を加えること で、生物テロの病原体になり得る感染症として位置づけられている。しかし、短時間の うちに広く侵淫でき多くの人間を無差別に殺戮し、しかも効果的な予防・治療方法がな いか、または困難といった生物テロリズムのもつ目的、戦略等を考慮するとテロ効果の 即効性がないことから、多剤耐性結核菌が多用される可能性は低いと考えられる。しか し、一旦発病すると有効な治療が現時点では期待できない点、ヒトからヒトへの感染・ 浸透が十分期待できるという意味では、多剤耐性結核菌が生物テロの手段となる可能性 は排除できない」という考えから多剤耐性結核をこの対象に盛り込んで、マニュアルを 作成していただいたところです。  具体的に長時間密閉された空間で多数のヒトとヒトとの間がわりと近接しているとい う状況では、現実にはまだ起こってないわけですが、長時間飛行する飛行機の中で多剤 耐性結核菌がもし発散・散布された場合は、テロとしての効果を有するものではないか と考えているところです。 ○新課長補佐 今回の法律改正の条文等については再度精査をし、要綱という形でまと めて、お示しをする予定です。生物テロの代表的な説明ですが、ヒトを殺傷する人為的 な目的に供された場合に、いわゆる公権力の行使によって対処すべき疾病については、 その原因となるウイルス等について、今回網羅的に規制対象にするという基本的な法律 改正の考え方です。偏見等の助長については、午後の議論になるかと思いますが、単独 の法律、個別法による法律そのものが人権、あるいは基本的人権の問題があるという観 点から、むしろ統合をすべきであるという観点で盛り込むという側面もあります。いず れにしても、既に法律によって感染蔓延防止を対処することについて法律上規制のある 5類感染症以外のものについては、ヒトを殺傷する目的に供された場合、未然に防止す るという問題については対象となる病原体として何らかの形で今回取り扱っていきたい、 というのが事務局の考え方です。 ○倉田分科会長 よろしいでしょうか。では、ほかにはいかがでしょうか。 ○青木委員 テロの未然防止に関する行動計画についてですが、これは安全保障理事会 決議の1373には2回言及している所があります。1540に基づいての措置という部分はあ るのでしょうか。それと共に、来年行われる生物兵器禁止条約の再検討会議のマンデー トの1つと考えているのかどうか。それから、爆弾テロ条約の履行確保の一手段と考え ているのかどうか。つまり、安保理決議の1540を踏まえているのかということと、あと、 2つの条約の履行の問題があるのかどうかをお伺いいたします。 ○新課長補佐 1点目については、内閣官房に確認した上で正確なご回答をしたいと思 いますので、お許しいただきたいと思います。冒頭に記述がありますような経過で設置 された行動計画であるということです。  条約の施行関係の実施に関する法律とは、今回の法改正は別です。この行動計画で政 府として直ちに取り組めるものを行動計画として示し、期限を切って早急に対処すると いう性格の行動計画ですので、感染症の蔓延防止という観点から、テロ対策についても 取り込めるものを法改正する。これが今回の法改正の内容です。条約の施行の際に、こ の法律改正が行われた後の位置づけについては、その際に整理をしていくということに なります。今回は、この行動計画のみに基づいて、当座対処できる措置としての法改正 という考え方です。 ○阿彦委員 細かいことで恐縮ですが、8頁の集計表のことで2点あります。下の表の 管理方法の合計は足して581にしかならないのですが、病原体保有施設では587となって います。この合計が合わないことが1つです。  それから、保管場所の「その他」がすごく多いのですが、これは質問されても答えら れないということでしょうか。 ○前田課長補佐 病原体保有施設の587ですが、この1行目のところは、1つの施設で 複数持っている所もありますので587ということです。その下の「その他」については、 「把握していない」にもあたらないということで、現在は「その他」という分類でしか 分からない所です。 ○阿彦委員 下の表の合計はそれぞれ足すと587になると思うのですが、581にしかなら ないという質問です。 ○事務局 下の表は管理状況の合計ですが、保管場所と管理マニュアルは587になりま すが、管理方法が587にならないというご指摘ですか。 ○阿彦委員 そうです。 ○事務局 これについては、コンピュータ管理と台帳管理の双方をやっているとか、あ と、その他重複の回答がありましたので、整理が悪く少し超過しております。 ○倉田分科会長 よろしいでしょうか。 ○阿彦委員 はい。 ○倉田分科会長 それでは田代委員、どうぞ。 ○田代委員 この調査が行われた後に起こった問題ですが、インフルエンザのH2N2 型がある研究施設というか、研究機関から外に出ました。それに対してアメリカのCD Cは、これはレベル3にすべきである、野生株ポリオに準じてすべて保存されているウ イルスを破棄すべきであるというレコメンデーションを出しました。WHOはそれを完 全に追認したわけではありませんが、なるべく注意しなさいという勧告を出しています。 こういうものは現在のディスカッションに含めていくことになるのでしょうか。 ○前田課長補佐 一応インフルエンザについては5類感染症、そして、高病原性鳥イン フルエンザについては4類感染症ということです。後ほどご議論いただく規制の概要に ついては、いまのところ1類から4類を当面の規制の対象、基準の遵守などの対象と考 えています。高病原性鳥インフルエンザは基準遵守の対象になりますが、普通のインフ ルエンザは対象にならないという状況です。H2N2型などが規制として必要かどうか という点については、いろいろなご意見を伺いながら考えていきたいと考えております。 ○新課長補佐 いまお尋ねのものについては、4類感染症以上に位置づければ、併せて この病原体管理として対象にできます。法律の立法技術的な問題ですので、ご審議いた だいて、そういったものは規制対象とすべしと結論を得たならば、4類感染症以上への 位置づけも含めて、そうした法制化を視野に入れて対処するということになろうかと思 います。 ○倉田分科会長 いくつかの病原体が飛び出してくるでしょうし、それは臨機応変に対 応しますということですね。 ○新課長補佐 そういうことです。 ○倉田分科会長 田代委員、いいですか。 ○田代委員 はい。 ○倉田分科会長 では、高松委員、どうぞ。 ○高松委員 先ほど坂谷委員が言われたことと関連するのですが、多剤耐性菌への考え 方です。やはり結核菌がテロに使われる潜在的可能性は当然把握しておかなければなら ないと思います。現実的な問題として、どのぐらいあるのだろうかと考えたとき、この 手のテロを考えるときは生物兵器を考えなければならない。有名な話で、過去731部隊 が、よく結核菌をやっていますと言ったけれど、結局細菌兵器としては駄目だった。要 するに即効性の効果がないということです。これはいくつかの本で読んだことがありま す。その辺も含めて、実際多剤耐性菌の社会へのリスクを下げることを考えたときは、 実際の患者がいて、その患者がバーッと地下鉄の中で動き回れば、そのことの社会への リスクのほうが現実には高くて、実際はそういう日ごろの結核患者に対する、いまやっ ている結核対策を確実に強化することがいちばん大事なポイントで、あとは普段のサー ベイランスと集団発生の対応をしっかり見ておくことが、現実的には社会の中で多剤耐 性結核菌に対するリスクへの対応としては大事なところです。  CDCも読みましたが、優先度Cの所は、予知はできないので日ごろのサーベイラン スと集団発生への対応が大事だ、というように書いていると思います。潜在的リスクは ありますが、現実的な可能性としては少なくて、日常の多剤耐性菌を減らしていく努力 が、社会にとってリスクを下げる意味ではいちばん大事なのではないか。そのような大 きな中で考えるのがいいのではないかと思います。 ○新課長補佐 テロ以外の、人為的以外の対処は重要だということはご指摘のとおりで す。これは午後の議論の中でより法律的に的確に対処できるような、仕組みということ も含めて感染症法において対処するのが妥当ではないか、ということを事務局は考えた わけです。テロも1つの要因であって、完全にリスクが払拭できない以上、規制対象に すべきであるという考え方であります。 ○竹内委員 この部会の性格上、結核感染症課が期待している性格上、話がテクニカル な面にずっとシフトしている感は否めない。しかし、一昨年あたりから文部科学省の科 学技術・学術政策局政策課あたりでずっと討議されているのは、安全と安心の社会をど う構築するか、それと科学技術をどう対応させるかという視点でこういう問題を取り上 げているわけで、その報告書はお読みになったと思います。厚生労働省の役目としては、 例えばテロが起こったときに、初動に対応するドクターが、これはおかしい、これは正 常ではないと認識する能力がいるわけです。先ほどの通達に医政局の方が名前を連ねて おられましたが、これは儀礼的なことかどうなのかということも気になるのです。  要するに、ポテンシャル、キャパシティビルディングを厚生労働省として医者にやら ないと、ドクターあるいはナースが見たときに、例えば天然痘を見ても、見たことがな いので、これは普通の水痘かなと思うでしょう。それが5例、6例、10例、20例も来て、 初めてこれは変だなというのがわかる。そこのボトルネックや視点を結核感染症課では なくて厚生労働省全体として医学教育、あるいは大学病院の中に導入していくというの はすごい重要なことです。  もう1つは、厚生労働省の指摘された極めて重要な役目というのは、リスクコミュニ ケーションの主体にならなければならないということです。大量感染症の場合には内閣 府でやるべきだとか、総理がやるべきだといういろいろな意見はありますが、大衆のパ ニックを防ぐためには、リスクコミュニケーションの実施主体の責任とシステムをつく らなければならない。いま発言していて違和感を持っているのは、極めてテクニカルな 面に話がシフトしていることですが、厚生労働省内部で、いわゆるソフト面も含めて一 体化した対応の組織というか、そういう対応はされているのですか。 ○前田課長補佐 対応はしています。平成9年から健康危機管理調整会議という大臣官 房の厚生科学課を中心とした省内の連携組織があり、月1回調整会議と、あと、もう1 回幹事会で情報の共有を進めているところです。委員ご指摘の医政局が入っているとい うことですが、こちらは医療機関の調査が関係するので、指導課の了承を得た上で調査 をしているということです。つまり指導課長名を入れているところです。あと、経済課 長が入っております理由は、衛生検査所の所管ですので経済課が入っています。  先ほどのキャパシティビルディングの話ですが、医師が最初に生物テロによる感染症 の患者ではないかと疑うことが本当に大事なことだと思っております。そういう面で、 感染症の診断治療については日本医師会のご尽力により「感染症の診断治療ガイドライ ン」という冊子をかなり多くの医師会員の方が持っておられます。そのガイドラインに よって、診断をするためのツールとしてかなり提供されているのではないかと思います。 あとは、そのガイドラインを実行させるという意味で、実際に患者を診たときに、あの 疾患に近いのではないか、該当するのではないかという疑問を持っていただくための資 質向上については、引き続きその感染症に携わる人材の養成と資質向上という大きな課 題の中で検討していかなければならないと思っております。  あと、リスクコミュニケーションの主体として、まさにこういう感染症が起こったと きに厚生労働省の対応としては、どういうように国民の方々に正しく理解をしていただ いて、リスクとその予防法、治療法などについて理解していただくことが必要かを考え ております。リスクコミュニケーションについても厚生労働省のほうで、今までもこう いう感染症が起こったときに、SARSの発生、鳥インフルエンザの発生時なども対応 してきました。組織的には、関係課との情報交換をする組織もありますし、厚生労働省 の中でもリスクコミュニケーションについては、まだ食品と感染症を比べれば感染症が 若干遅れているところがあるのは事実ですが、何とかもう少しリスクコミュニケーショ ンを充実させていかなければならないと思っており、昨年平成16年度からリスクコミュ ニケーションについての研究班を立ち上げて、どういうリスクコミュニケーションが必 要かについて研究を行っているところです。 ○竹内委員 そういう関連情報は、この部会に出さなくてもいいと思っているわけです か。 ○前田課長補佐 とりあえず今日の資料として用意したものは、病原性微生物について、 テクニカルな面での議論ということです。それだけに議論を集中していただくというこ とではなく、それに関連する議題についてもご議論いただければと思います。当初用意 したものとしてはテクニカルなものに偏った面はあろうかと思います。 ○倉田分科会長 竹内委員のご質問にちょっと触れることになりますが、学者の教育で 感染症をきちんと教えていただくというのは大事で基本的なことです。是非、そこを頑 張っていただくという必要があると思います。  その後のことですが、今日と明日を含めて感染症研究所と全国の衛生部、あるいは保 健所から先生方が来られて、健康危機管理ということですが、もう5回ぐらいになりま すか、ほとんど感染症をやっております。そういうのを通して自治体のいろいろの単位 で、医師会のいろいろの単位で、今日話題になっております病原体によるいろいろの教 育・研修が行われているわけです。  今日の話というのは、世界、G7を中心にバイオセキュリティの会議がずっと行われ て、その中でテロ、あるいはテロだけではなく、自分が無意識のうちにセキュリティが 壊れてしまうようなことが起きることはよく起きるわけです。SARSの問題で中国は まさにその例です。本人が知らないうちに病原体がくっ付いたまま出て行って、自分の 親を感染させたり、知り合いの人に感染させたという例がありますが本人は意識してい ないわけです。そういうセキュリティは意識していても壊すことは可能だし、意識しな いうちに壊してしまうことも可能です。  そういう意味で、病原体のいくつかのものについて処置や使い方に関して把握してお く必要があるだろうと。これを行われていないのはG7の中で我が国だけです。少なく とも無意識あるいは意識的に、意図的に使われたら問題になり得るという問題、病原体 のルールを作りましょうというのが今日の話し合いの主なところです。どの疾患につい ても全部患者が背景にあるわけですが、患者の扱いについては今までの感染症の中でも 十分に、医療を担当される方がそれに基づき、いろいろなことをされることによってカ バーできるわけですが、病原体のほうは、ある程度のルールが必要だろうというのが今 日の話の趣旨です。その病原体が使われたときどうなるかという教育、健診については、 いろいろなレベルで評価していただく必要はあろうかと思います。  ほかにはありますでしょうか。 ○丹野委員 いま、倉田分科会長がおっしゃったように、病原体の管理はすごく大事だ と思います。そして、テロに関しては国が責任を持つと言っていただいたので大変有難 いことだと思っています。ただ現実に発生したとき、まず保健所がいちばん最初に感知 すると思います。対応は各自治体が感染症法に基づいて行うと思っております。それは 保健所、感染症情報センター、衛生研究所が一体になって対応していく。そのときにい ろいろな情報というのは、やはり各自治体がきちんと持っていて、どこの医療機関、ど この研究機関にこのようなものがあるというのを、きちんと常に把握していることがと ても大事だと思っておりますので、その辺をきちんとここの中で謳っていただけたらい いかなと思っております。 ○倉田分科会長 病原体の検査の仕方、その他については丹野委員ご存じのとおり、委 員の会長在任中にマニュアルを作って、昨年の法改正で一部プラスする分をいま製作中 です。それによって検査はどこでできるかははっきり分かっていますから、そちらの面 での対応はかなり速やかにいくのではないか。  それから、前のサッカーのワールドカップ以来、集団の中で使われたら困るよという 問題から、そういうものに関して休暇中でも検査ができる体制も、それなりに私どもの 研究所では、病原体の迅速検査ができる体制をつくっています。あと、地方衛生研究所 の方々は大変な努力をされて、そのネットワークをうまく使っていろいろな問題が起き ないように、トラブルが起きないように速やかにやれるようにすることだろうと思いま す。  それでは次の項目にいきたいと思います。事務局から、規制の必要性についての医学 的側面及びその検討結果、感染症の改正による病原性微生物等の規制の概要についての 説明をお願いします。 ○前田課長補佐 資料5の13頁からです。我が国において規制が必要な病原微生物等と その規制レベルの検討結果です。私の説明の中でいろいろと細菌ウイルスの名称が出て きますが、その辺については参考資料で、大体どういう病気を引き起こすものなのかに ついて用意しております。参考資料5が1〜4類感染症までの病原体の特徴と潜伏期間、 感染経路、臨床症状、中には致死率なども記載しているものもあります。参考資料6は、 現在は感染症法の対象外ですが、生物テロに使われる可能性のある病原微生物による感 染症の概要についてまとめております。  それでは13頁に沿って説明いたします。1、規制の対象とする病原微生物の検討。1 〜4類感染症及びそれと同等の感染症の原因となる病原微生物に該当するものが(1) で、そのうち(2)〜(5)の条件を勘案して届出等の規制の対象とすべき病原微生物 と、その届出はいらないのですが、保管等の基準を遵守する必要性がある病原微生物と いうもので、A、B、C、Dと分けております。  (2)バイオセーフティレベル。これは後ほど説明しますが、国立感染症研究所が「 安全管理規程」で定めている中のバイオセーフティレベルというのが1〜4までありま す。その3と4は非常に危険性が高く、1がいちばん危険性が低いということです。3 以上の管理を要する病原微生物であるということです。(3)米国のCDC危険度優先 分類に位置づけられる病原微生物であるということ。(4)米国連邦規制(CFR)、 危険物輸送に関する国連勧告(UN)、世界保健機関の生物剤リストでも選定される病 原微生物です。  (5)地域特性等の留意事項を踏まえ、我が国での対策が必要な病原微生物。具体的 に日本においては大規模な生物テロの発生事例はありませんが、そういう準備が行われ ていたとか、未遂に終わったものといったものも勘案して届出等の規制の対象を検討し てきたところです。  2は対象病原微生物等の種類(規制レベル)です。大きく4つに分けており、(1) は公務上試験・研究以外の所持等の禁止の対象とする病原微生物をAとしております。 1類感染症の原因病原微生物であり、かつバイオセーフティレベル4の病原微生物につ いては所持禁止です。  (2)は所持の許可でBとしております。治験や研究目的で所持することは厚生労働 大臣の許可をもって可とするという内容で考えております。(1)1類感染症の病原微生物 であり、かつバイオセーフティレベル3の病原微生物。(1)を満たさないのですが、近年 テロに実際に使用された病原微生物をはじめとして、CDCが最優先度とする病原微生 物をBとしております。  (3)は所持等の届出対象とする病原微生物です。届出等の規制が必要な病原微生物 ですが、先ほどのAやB以外の病原微生物を考えています。  所持等の届出以上の規制が必要なものは(1)〜(3)ですが、1〜4類の感染症の 病原微生物のうち、(1)〜(3)のいずれでもない病原微生物についてDと考えてい ます。  具体的な細菌、ウイルス、真菌等の名称は14頁にまとめております。Aの所持等の禁 止を対象とする病原微生物は、エボラウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、痘 そうイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルス、それといま現行の感染症法には 規制はありませんが南米出血熱ウイルスの6種類を考えています。  (2)は試験・研究目的のための所持等の届出対象とする病原微生物です。これは許 可の対象ですが、ペスト菌、SARSコロナウイルス、炭疽菌、野兎病菌、ボツリヌス 菌、ボツリヌス毒素の6種類です。  所持等の届出のみの対象は、禁止とか許可はないのですが届出が必要な病原微生物を Cとしております。多剤耐性結核菌、Q熱コクシエラ、コクシジオイデス真菌、サル痘 ウイルス、ハンタウイルス。ハンタウイルスの中にも4類感染症の中に腎症候性出血熱 とハンタウイルスと肺症候群がありますので、それぞれのウイルスです。それとニパウ イルス、日本紅斑熱リケッチア、Bウイルス、ブルセラ属菌、発疹チフスリケッチア。 あと、現行の感染症には規制はありませんが鼻疽菌、類鼻疽菌、脳炎ウイルス群(ベネ ズエラ馬脳炎ウイルス、東部馬脳炎ウイルス、西部馬脳炎ウイルス)、ロッキー山紅斑 熱リケッチア、ダニ媒介性脳炎ウイルス群、ヘンドラウイルス、リフトバレーウイルス の20種類です。  Dは保管等の基準を遵守するだけで充分ということで考えております病原微生物です。 ポリオウイルス、多剤耐性結核菌を除く結核菌、腸管出血性大腸菌、コレラ菌、赤痢菌 属、チフス菌、パラチフスA菌、E型肝炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、A型肝 炎ウイルス、エキノコックス、黄熱ウイルス、オウム病クラミジア、回帰熱ボレリア、 狂犬病ウイルス、鳥インフルエンザウイルス、オリエンチアツツガムシ、デングウイル ス、日本脳炎ウイルス、マラリア原虫、ライム病ボレリア、リッサウイルス、レジオネ ラ属菌、レプトスピラ菌、ジフテリア菌の25種類です。菌やウイルスの名称については 正式に学名がありますが、一応通称名的なものも含めて、このような記載としておりま す。  15頁は対象病原微生物等のリストです。病原微生物が、エボラウイルスから結核菌ま でと、その次の16頁には、その他新興感染症から住血吸虫、ボツリヌス毒素まで記載が あります。現行の感染症法に基づく類型を漢数字で示しております。エボラウイルスは 1類感染症ですので「一」としております。  BSLはバイオセーフティレベルの略で、国立感染症研究所の安全管理規程に基づく バイオセーフティレベルというものです。いちばん危険性の高いものが4、低いものが 1ということです。CDCは米国の疾病管理センターのバイオテロ病原微生物等の危険 度分類で、最も高い優先度のものがA、2番目に高い優先度がB、3番目に高い優先度 がCです。CFRは米国の連邦規制です。この中で対象になっているものが「○」、対 象になっていないものは「−」としております。UNは危険物輸送に関する国連勧告で、 危険物の航空輸送、船舶輸送、陸上輸送に関わる規定の危険物として位置づけられてい るものが○です。WHOについても、Health aspects of chemical and biological weaponsということで、生物化学兵器の対象として考えられるもの、生物兵器というこ とですが○を付けています。テロの実績は炭疽菌のみです。2001年に米国のテロで使わ れたものです。23症例ありましたが、そこで○を付けています。それ以外、ボツリヌス 菌については、一度国内で生物テロに使われるような準備行為があったということがあ ります。  注8、留意事項とありますが、SARSコロナウイルス、結核菌それぞれについての 留意点が若干ありますので○を付けております。そういったものを総合的に勘案した上 で、先ほどのA、B、C、Dの規制のレベルを考えた結果が15頁と16頁のいちばん右の A、B、C、Dの4ランクの分類です。これが現在の考え方です。  17頁からは注釈「感染症法の類型」で、法律を立法化するときの考え方です。エボラ ウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスなどの縷々感染症については、感染力、罹 患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点から見た危険性が、極めて高い感染症とい うことです。2類は赤痢、コレラ、チフス・パラチフス等ですが、感染力、罹患した場 合の重篤性等に基づく総合的な観点から見た危険性が高い感染症です。3類は腸管出血 性大腸感染症で、感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点から見た危険 性は高くないが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こし得る感染症と いうことです。4類はヒトからヒトへの感染はほとんどないが、動物や植物等の物件を 介して感染するため、動物や物件の消毒廃棄などの措置が必要となる感染症。5類は、 国が発生動向調査を行い、その結果等に基づいて必要な情報を一般国民や医療関係者に 提供・公開していくことにより、発生・拡大を防止すべき感染症という形で、現行の感 染症法において5分類がされています。  バイオセーフティレベルは4がいちばん危険度が高く、個体や社会についての危険度 で、ヒトに重篤な疾病を起こし、罹患者により他の個体への伝播が直接、または間接に 起こりやすいもの。3は、ヒトに感染すると重篤な疾病を起こすが、他のものへの伝播 の可能性は低いものです。  米国CDCのバイオテロの病原微生物等の危険度分類は、最も高い優先度のものは散 布が容易であること、ヒトからヒトに容易に伝播しやすいこと、高い致死率を有する等、 公衆衛生に重大な影響を及ぼし社会不安と混乱をもたらすということで、特別な公衆衛 生措置が求められる病原微生物がバイオテロの危険度分類のAです。  18頁の参考2は米国規制です。米国外からの受領に関する基準を定めるということで 列挙されているものです。注5はUNの危険物輸送に関する国連勧告で、ICAO(国 際民間航空機関:国際民間航空条約に基づき設置された専門機関)と、IATA(国際 航空運送協会)が国際標準として作ったものです。そしてWHOは1970年のレポートな どです。注7はテロの実績。  注8は留意事項です。SARSコロナウイルス群については、アジア地域各国では対 策をとる必要があるという点。脳炎ウイルスについては、米国は対策を重視していると いう点。結核菌については、結核患者の多い我が国では、特に難治性であり致死率が高 い、多剤耐性結核菌の対策強化の必要があるという点です。  19頁のサル痘ウイルスは、米国で輸入感染症として健康危害が発生したことから、対 策の必要性が高いということ。ヘンドラウイルスも最近では2004年にバングラデシュで、 ニパ/ヘンドラ様ウイルスによる集団での健康危害の発生が報告されたという点が留意 事項です。  注9の結核予防法の対応については、結核予防法の関連部分を抜粋したものですが、 診断した医師に2日以内の届出の義務、同居者に感染させるおそれがある患者に対する 就業禁止、入所命令といったもので対応しています。  南米出血熱ウイルスは、CFR、UN、WHOで若干ウイルス対象にずれがあるとい うことを注10以下で示しております。CFRでは5種類、UNでは5種類、WHOは JuninとMacupoのみということです。ブルセラ属菌についても、CDC、CFR、UN、 WHOとで若干のずれがあります。ハンタウイルスも若干違いがあります。コクシジオ イデスもposadasiiかimmitisかの違いがあるということです。20頁のダニ媒介性脳炎ウ イルス群も、CFR、UN、WHOで若干ずれがありますが、CFRがいちばん対象が 多いということです。  21頁からは、実際の基準として参考1〜4を付けてあります。この資料をもとに先ほ どの表を作成したということです。 ○新課長補佐 続いて資料6です。今回の感染症法改正による病原微生物等の規制につ いての事務局の粗い案です。これはご審議の前提として当局において規制を検討してい る内容です。ご覧いただきました表の分類の左側から重大性の高いもので、A、B、C、 Dということです。個々の感染症の紹介については前田から説明しましたので、時間の 都合上、割愛いたします。A欄は1類感染症から列挙しておりますが、先ほど申し上げ たように政令で定める公務員等による試験・研究のみを認めるということです。現行国 内においては、国立感染症研究所の公務員を想定しているところです。  次は、A欄の下の四角の真ん中にあります輸送規制です。輸送途中における盗難、行 方不明、その他の災害を防止するために一定の輸送に係る規制が必要である。具体的に 現在検討しておりますのは、こういった病原微生物を管理する者が他の者に委託して運 搬する場合も含み、国家公安委員会の規則等に基づき、該当する都道府県の公安委員会 に届出を行い、届出を受理した公安当局において、必要な指示、あるいは事故発生時の 対応、その他応急措置を検討しているということです。  被害発生時の措置ですが、テロを中心とするヒトの殺傷行為の対応は、警察管理等に よる警察官です。根拠法は、警察法、あるいは警察官職務執行法といった関係法令に基 づき、現にヒトの生命、または身体に被害が生じているような場合、またはそのおそれ があるような場合について、一定の措置を講ずる規定を設けたいと考えております。  発散行為等の処罰は、これは罰則の内容になりますが、こういった病原微生物の発散 行為をした場合に、重罰を科するということで罰則による下命力といいますか、こうい ったものにより事前抑止の効果を上げていくということです。国内法令ではサリン法に 前例があります。発散の構成要件の精査については関係省庁と協議をし、決定したいと 考えております  B欄、先ほどの分類については説明を割愛いたします。規制については、A分類と異 なる部分については、製造輸入等の行為は原則禁止です。例外として試験・研究、治療 等、文言は調整しますが、そうした公益上職業に基づく目的において個々に許可を取る ということを考えております。輸送規制から発散行為の処罰については、考え方は同様 ですので省略いたします。  Cの分類については、病原微生物等の種類、保管方法等についての存在状況について 補足するという趣旨で、厚生労働大臣に対し必要な事項の届出をすることを考えており ます。輸送規制については、A、B分類と同様の考え方です。  Dについては直接的な公権力による規制ではなく、全体に共通する規制ですが、使用、 保管等の規準、これは厚生労働省令で明確に定めることを検討しておりますが、こうし たものを遵守することをお願いしたい。これに違反した場合は、厚生労働大臣の報告徴 収、立入検査等による確認を経て、改善命令等の行政処分の対象になるということです。 また、改善命令等の違反については所用の罰則を検討している状況です。  規制の概要の内容については以上です。 ○倉田分科会長 ただいまの説明について、質問、ご意見がありましたらお願いします。 ○田代委員 この規制の対象は、大学その他を含めた日本国内すべてを対象にするわけ ですね。 ○新課長補佐 本法の適用を受けるすべてのものということで、特に例外は考えており ません。 ○岩本委員 Aのカテゴリーの件、毒素の件、個々の微生物の件についてお聞きします。 まず1つ目は、Aのカテゴリーのものについて、例えば患者検体、血液や体液といった ようなものの扱いはどうなのかということと、固定された微生物をどう考えるのかにつ いてお伺いしたいのです。 ○前田課長補佐 まさに最初に患者からの検体を扱って、それを保管する場合にどうい う保管をするかについては、使用、保管、廃棄の基準が下のほうに図がありますが、採 取された検体をどう使用し保管し廃棄するか。それがウイルスや細菌を全く単離した形 のものなのか、ウイルスや細菌が入った検体まで含んでいくのか、そういうことについ ても検討の対象と考えています。具体的には、使うという目的ですので、増殖させやす いものとか、増やしやすい状態のものということは想定しております。その検体を含め た検討は、どこまで含めていくのかというのが検討と思いますが、その辺りについて、 ご示唆ありましたらご意見をいただければと思います。 ○岩本委員 私もいま単純に思ったのは、最初に臨床診断がつかないで、患者が帰った ときです。いまだと1施設の中で検査をすることはないと思うので、例えば血液を外注 していた場合に、そういうところまでは多分入らないのだと思いますが、そういう部分 の、ある程度はっきりした細かい規定がいるのだろうというのが1つと。商業目的で、 例えばラッサウイルスの固定されたものを輸入して、抗体を作って、検査試薬を作ろう とするものまで規制がかかるのかどうかという質問です。 ○前田課長補佐 一応そういったものについて、後段のラッサ熱の件は特にそうですが、 対象になるということです。 ○倉田分科会長 それについて足しますと、いまそういうもののやり取りに関しては全 部禁止になっていますね、米国でも。ドイツは比較的、状況によって出すことはありま すが、留保のものに関しては、相手の施設の状況が分からない限り一切出さないという のが、少なくともG7のセキュリティのルールになっています。  もう1つ、体液、血液等の問題ですが、患者がそうだと分かった後はその扱いになり ます。一般的に、分からない状況で来たときには、分からない場合は少なくとも検体は レベル2の扱いをする、安全キャビネットの中で扱えというのがルールになっています。 ですから、そこできちんとした微生物学的な扱いをすれば、それによって感染は普通起 きない。増殖によって分かった場合は、そのレベルにもっていくということです。 ○山田委員 いまのを確認させてください。本当に不活化だとか固定した材料に関して も、規制対象にするという理解でよろしいのですか。 ○新課長補佐 事務局の考え方は、不活化等については対象としません。直接病原とな るウイルス、細菌等を列挙したものに限定されます。ただし、それを作り出そうとして 何かした場合には、罰則の中で予備罪、未遂罪、こういった構成要件に該当する場合は ありますが、この規制のスキームには対象としておりません。 ○山田委員 農林水産省では、不活化を確認することが必要だということがありますが、 そういうことはどういう方向に。 ○倉田分科会長 それは相手国、相手の責任者の問題が1つありますね、誰がそれを送 ってくるか。これは非常に大事な問題です。いま米国もイギリスもそうですが、事前に それを、研究者ではなくて、機関の長なり、例えば厚生労働省の担当官が、それに対し てアグリーするかどうかというところまで求められます。田代委員はインフルエンザの 問題に対してよくご存じだと思いますが、医薬食品局では大変な時間と問題を抱えてい ます。それは全部政府で、相手とこちらで許可をしている、していないという話になり ます。それがきちんと不活化されたものであるかどうかということは、先方に確認はで きると思います。ただ、不活化されたものは遺伝子でもいま非常にうるさくなっていま すから、そう簡単には入ってくる、手に入れられることはできないと思います。  どうぞ、事務局、何かありますか。 ○結核感染症課長 最終的にはこれから決めていくことでありますが、基本的にはテロ を未然に防止する、そのために病原性微生物の管理をしていこうということなので、持 っておられる方にきちんと、不活化しているものは不活化しているということを証明し ていただくのが適当だと私は思います。 ○岩本委員 6の扱い方です。今この中にボツリヌスだけが入っていると思うのですが、 例えば資料5の21頁でカテゴリーBにあるRicine toxinというのが外国のテロの話だと いつでも出てくるのです。これは植物性の毒だと思うのですが、その辺はすべて感染症 法の中の体系なので、微生物由来の毒だけを考えていくのかという点と、毒は分けない で、基本的には、例えば赤痢菌の毒が問題になれば赤痢菌の毒をどこかに入れていく。 新しい毒が出れば、この枠組みの中でどこかに入れていく、そういうことで行くという ことですか。 ○新課長補佐 感染症法の規定の範囲内で対処いたします。1〜4類の感染症の病原体、 そして、その感染症の原因となる毒素ですので、化学物質としての毒素は対象にしてお りませんが、そういった証明ができるものは追加していくことはあるかと思います。し かし、リシン等は対象とはならないのです。 ○岩本委員 細かいことなのですが、ここに書いてある微生物の名前で、いくつか気に なったものについてお尋ねしたいのです。今日渡邊先生がいらっしゃらないので、渡邊 先生に確認していただけば済む話なのですが。赤痢菌属という言葉は、普通はシゲラ属 と使うのではないかという気がするのです。それから、レプトスピラ菌というのはレプ トスピラ菌属ではないか。3番目、オリエンチアツツガムシは、ここだけ学名になって いますが、気持としてはツツガムシ病リケッチアでよいのではないか、その3点です。 ○倉田分科会長 そのとおりです。学名でやるのか通常の病原体の呼び方でやるのか、 これは修正してください。 ○山田委員 いまのレプトスピラにしても、非病原性のレプトスピラがいますし、ブル セラ属菌とした場合に、キャニスというのは病原性が非常に低いのです。そこのところ をきちんとやらないと、規制すべきものと規制すべきでないものが混在する可能性があ ると思うので、そこはよろしくお願いしたいと思います。 ○廣田委員 田代先生がインフルエンザウイルスについておっしゃったことと関連して いるのですが、たしか5年ほど前、米国のCDCが内部で、ヒトインフルエンザウイル スと鳥インフルエンザウイルスを同時に取り扱うときは、遺伝子の再集合体が出来るか もしれないのでP3で扱えというようなことを言って、内部でかなり混乱したことがあ ったのです。したがって、よく管理されたラボから炭疽菌を手に入れるのは難しいかも しれませんが、どこにでもあるラボでヒトインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザ ウイルスの遺伝子の再集合体を故意に作ろうとすれば、結構容易かと思うのです。そう すると、とんでもないものがテロに使われ得ることになり、そうなると、規制のAとか Bに匹敵するようなものになると思うのですが、そういったものを規制の対象とするこ とは、いま考えておられる規制のスキームに入るのかどうか。どのように考えているの か、お考えがあったらお聞かせください。 ○前田課長補佐 いまのものでは、既知のウイルスということですので、ウイルスを特 定した形のものです。 ○新課長補佐 ウイルスを特定していただき、かつ疾病分類を位置づけた上で規制可能 という余地はございます。 ○倉田分科会長 いま廣田先生から大事な質問が出ましたが、鳥インフルエンザの話と ヒトの、通常のインフルエンザと新型インフルエンザの話と、先生のラボでどんなふう に扱っているか説明してください。 ○田代委員 プラクティカルな話ですが、我々のところは、鳥その他動物のインフルエ ンザウイルスとヒトのインフルエンザウイルスは絶対に同時に扱わないのが原則です。 特殊な目的でやるときは別ですが、どこかにその規制をしておいていただきたいのです。  別の話ですが、ここに書かれている病原体は、全部野生株を対象に考えていると思う のですが、この分類の中でレベルの低いほうでも、リコンビナントによって、病原性を 強めたり、いろいろな毒素の遺伝子を放り込んだりすることはいま簡単にできるわけで、 そうしてしまった場合に、テロとしてやる場合にはもちろん法務大臣の許可など得ない でやるわけでしょうから、そういうこともあり得る、悪いことを考えればでき得るとい うことで、最終的な産物としては病原性の強いものが作られ得るということを頭の隅に 入れて、それもきちんと規制できるようなことを考えておく必要があろうかと思います。 ○倉田分科会長 いま指摘された組換え体の病原体というものがいろいろな所に出てく るのですが、それらの扱いはどんなふうになっているのですか。前田さん、いかがです か。 ○前田課長補佐 いまの考えとしては、組換え体を含まない形で考えて、既知のものを 対象として考えております。そして、鳥のウイルスとヒトのウイルスを同様に扱わない、 と研究者が自主的に遵守しているものについては、資料6の27頁「共通の規制」の中で、 使用、保管及び廃棄の基準を策定していくことを考えており、1〜4類の感染症につい てはそれが遵守対象となるわけですが、その基準を決定していくときに参考にさせてい ただきたいと思います。 ○岡部委員 疾病分類と病原体の関係なのですが、カテゴリーAの中の1類感染症とな りながら、南米出血熱ウイルスは、疾病分類のほうに入っていないわけです。そうする と、確かに病原体としては非常に危険だからこれに規制を与えるけれども、もしその病 原体が分離された患者に対しては全く規制がかからないというと、何らかの問題が生じ ると思うのですが、この辺の考えは何かあるのでしょうか。 ○前田課長補佐 資料6で、南米出血熱ウイルスについては1で※が付いており、現在 は感染症法に位置づけられていないものなのですが、感染症法の1類感染症に位置づけ るということで、南米出血熱ウイルスの症状を呈した方については、エボラ、クリミア コンゴと同様の1類感染症として扱うことをこの案で提案しているところです。 ○新課長補佐 今回の病原微生物の規制対象にする場合は、1〜4類のいずれかの疾病 分類に位置づけることが前提です。 ○白井委員 実際にどのような法律が動いていくかということを考えながら聞いていた のです。いまのようにテロ対策の対象となる疾患が感染症の中に入るということになれ ば、届出は医師が行うことになるのかなと思うのですが、検体の扱いによっては、病原 体の保有状況を見ていただいた中で、必ずしも医師が把握していない所のほうが多いと 思うのです。届出の機関についても、一元化管理されていないような所も多いようです し、1万件以上の施設の中で把握できたのが、任意であったということで500〜600ぐら いなのです。施設長が行う形にするのか、担当者が行うと、きっちりと決めるのか、そ ういうこともお聞きしたいと思います。  それと、所持を禁止する場合には、届出を原則とするということですが、もしそれを 第三者が知った場合には、通報ということも考えられるのか、また、その窓口はどこに なるのか。感染症法だからと言って、保健所が窓口になることですべてが解決できると は思えませんし、この体系の中で厚生労働省として下ろしていただいたときに、私たち が行く範囲での伝達はできますが、すべての機関が対象ということになると、どのよう な形での国民への周知ということが可能かを想定してお答えいただいたらと思うのです が。 ○前田課長補佐 届出義務については、病原微生物の管理をしている者が管理者の責任 で届けていただくことになります。患者が発生して確定診断が出たときにドクターが届 出をしていただくという仕組みとは別の仕組みですので、基本的には管理をしている管 理者がその義務を受ける。そして、その者が厚生労働大臣に届出あるいは許可の申請等 々を行う。発覚したときの通報等につきましては、来年4月1日に、公益通報制度とい う法律も施行されますが、いずれにしても所管省庁に通報することになります。誤って 都道府県に行った場合は、厚生労働省が通報先だということで教示をお願いすることは あるかと思いますが、基本的には厚生労働大臣の事務として処理を行うことをこの法律 の枠組みは考えております。 ○加藤委員 先ほどから問題になっている多剤耐性結核菌の関係でお尋ねしたいと思い ます。坂谷委員からすでにコメントがあったように、多剤耐性結核菌は非常に多い疾患 でして、年間の発生数は100〜200くらいあるのではないか。現在の有病者数でも数百い るのではないかと推定されます。  いまの白井委員のご質問にありましたが、こういった状況の中で、対象はすべての施 設になるのか。つまり、民間のラボや何かでこういう結核菌が検出されて多剤耐性とわ かったような場合も対象になるのだろうかと。そういう場合を考えますと、届出が非常 にややこしいと考える所は、培養された段階で多剤耐性菌の検査をしなくなるようなこ とが、対策現場としてはあるのではないかということが懸念されます。  2つ目として、これだけ多くの患者がいる中で、届出をすることによって対策として の実効性がどのくらいあるのか、事務局のお考えを伺いたいのです。  3つ目として、輸送に関する規制があるようですが、実際に多剤耐性結核が発生した 場合、疫学調査としてRFRPといった遺伝子検査をしなければいけないことも十分想 定されます。それは感染経路等々の研究のために非常に大事なことなのですが、厳しい 規制があった場合は、こういった研究に滞りが出る懸念があるのではないか。こういう ことがありますが、事務局はどのようにお考えでしょうか。 ○前田課長補佐 まず1点目の、多剤耐性結核が年間数百ということですが、数の議論 というよりは、多剤耐性結核菌が生物テロに使われるおそれ、そういったものからの議 論をまずする必要があるのではないかと思います。  次の質問である民間ラボにつきましても、多剤耐性結核につきましてはA、B、C、 Dと4つあるうちの上から3つ目、届出をする。特に許可や所持禁止ではありませんの で、いまの案では、届出をきちんとしていただくということです。届出の内容をどの程 度のものにするかは今後の検討ですが、それによって多剤耐性の検査をしなくなるとい うようなことにはならないのではないかと思います。RFRPなどについての疫学調査 の点につきましても、現行で行っているものが今後とも行われていくのではないかと思 っております。 ○加藤委員 輸送に関する規制の内容は、どの程度考えていらっしゃるのですか。 ○新課長補佐 A、B、Cの分類の是非はさておきまして、A〜Cについては輸送規制 が必要なカテゴリーと整理しており、病原微生物の管理をしている者が運搬する場合、 あるいは他者に委託して運搬する場合、こういったものについては都道府県公安委員会 に届出をいただいて、それに対して一定の証明書等を交付して、必要があれば都道府県 公安委員会が必要な指示をし、事故等の発生時に的確に対処していくという規制を考え ております。公安委員会の関係ですので、関係省庁とも調整をしておりますが、現在の ところ、そういったもので、所管の公安委員会に届出書を渡していただくというような スキームといいますか規制を考えております。 ○加藤委員 多剤耐性結核の届出をすることによって対策としての実効性をどのように 考えるかについても伺いたかったのですが。 ○前田課長補佐 届出をするということについては、テロの未然防止の行動計画にもご ざいますが、そういう制度を作ることがテロの未然防止につながるという考え方です。 ですので、実際にそれをきちんと厚生労働大臣が把握する、そういうことによって抑止 力がかかるのではないかということです。 ○重藤委員 結核菌に限らず、これは所持等の届出ということで、菌がいろいろな所で 出て、多剤耐性と判明する。そうなったら、すべて届け出るということですか。廃棄と かそういうものも関係してくると思います。一時的に出たら、すぐに廃棄すればそれで よいのか。もし廃棄されたら困る場合もあるわけですが、その点、どこまでを届出の対 象にするのか。 ○新課長補佐 届出については管理者が、どの頻度でどういった内容かというのは詰め が必要ですが、使用、保管、廃棄等の状況について報告して、我々は、どこにそれがあ って、どういう使われ方をしているかを把握する。病院であれば病院として使っている わけですし、そうでなければ、どういった目的で使っているのかを把握するということ になります。  それとは別に使用、保管、廃棄の基準を定めますので、廃棄の仕方について一定のル ールを別に定める。届出内容は、そういった形で場所等の捕捉を行うことになります。 ○重藤委員 届出内容ではなくて、とにかく菌が出たという時点で、所持しているとい う届出が要るということですか。 ○新課長補佐 頻度の問題や何日以内に届け出るかについては議論が必要ですが、事後 にそれを届けていただくということです。 ○倉田分科会長 新さんのいまのお答えは不明なので、いまの質問に関連して私から聞 いておきます。例えば、ある実験室で10株持っていて、そこに1株増えたという場合に、 1例について届出が必要かどうか、それに近い質問だと思うのです。病院ですと、いま まである菌やウイルスを管理して持っていた。そこに1例が加わったら、その1例につ いて届出が必要かというと、そういう話ではないのではないかと思うのです。 ○新課長補佐 保管の状況や使用の状況を報告していただくということで、場所が把握 されている所の増減までをその都度報告させるということは考えておりません。 ○阿彦委員 関連なのですが、カテゴリーC関連の届出に関して、現実的には、病院や 一般ラボも含めて、多剤耐性結核菌以外はほとんどやらないと思うのです。日本中のい ろいろな所は多剤耐性結核菌のためにカテゴリーCがある、という感じに現実的にはな ってしまうと思うのです。そのときに、先ほど加藤先生がおっしゃったように、テロ対 策も大事ですけれども、使われる可能性としては、多剤耐性結核菌は極めて低いと推定 されている中で、そのためにカテゴリーCを作ってやったがために多剤耐性結核対策、 あるいは、届出が必要だったら、うちは耐性検査はやらないと。病院等で感受性検査を していますが、届出が必要なら、やっている所に外注しよう。培養で出た菌が耐性とわ かる前だったら輸送制限もないので、できる所に輸送してしまおうと。それは多剤耐性 結核、耐性検査そのものの実施にも影響する大きいことだと思うのです。Q熱コクシエ ラ以下は一部の限定される機関だと思うので、ここに多剤耐性結核を入れて、多剤耐性 対策が低下しないようにしないと非常に心配だと思いました。 ○結核感染症課長 非常に本質的なお話なので私からお答えをさせていただきます。い ま阿彦先生がおっしゃられましたが、阿彦先生よりは我々のほうが、バイオテロについ て非常に高い危機感を持っているのではないか。その危機感のレベルの違いが少しある のかなと感じました。  確かに今回病原微生物の規制をするということを決めたわけですが、当然、片方では 研究を進めていかなくてはいけない。あるいは、結核対策そのもののために自由度が欲 しい。そのことについては、ご主張としては私どもも十分理解いたします。しかし、逆 にバイオテロに対する予防ということが国際的にも非常に求められている中で、研究が 進まなくなるから、あるいは検査体制が貧弱になってしまうからバイオテロのほうは目 をつぶってもよいのではないかというお話であれば、そういうご意見には我々は与でき ない。これだけテロの危険性がいろいろな所で言われる中で、責任を持ってテロの防止 をしていこうということです。もちろん、届出の頻度や届出のやり方、あるいは輸送に ついてどの程度の規制をするのかについては、過剰なことをして、本来有効である検査 体制や研究の体制が極端に抑制されてしまうということは、かえって逆のいろいろな問 題が出てきますので、そこは当然バランスを考えなくてはいけないと思っています。し かし、いま先生がおっしゃるように、検査体制が貧弱になるからといった理由で規制の 対象から外すということについて、そのご意見はどうかと我々は思っています。 ○阿彦委員 危機意識が低いかどうか。先ほど言ったように、カテゴリーCが現実的に は多剤耐性結核菌のためにあるものになってしまっている。しかしカテゴリーDもある わけで、結核菌を多剤耐性結核とそうでない結核に分けて管理する必要があるかどうか です。テロ対策から見ても、基準の遵守だけでもよいのではないかと思います。  資料で見ても25頁、輸送の関連のところで結核菌がありますが、危険物輸送に関する 国連勧告で、多剤耐性結核を分けて定めているわけではなくて、「結核菌そのものの培 養」となっているわけです。そういうことで、多剤耐性結核を特にCランクまで上げて 対応する必要があるかどうかを議論しなくてよいのかということを言いたいと思います。 ○結核感染症課長 言い方に少し失礼があったかと思いますが、議論しなくてよいと言 うつもりは全くありませんで、大いに議論していただきたいのです。事務局側の危機意 識というか、そういうものを申し上げただけで、大いに議論してください。 ○新課長補佐 もう1点説明させていただきたいのです。多剤耐性結核菌の問題につい ては、結核関係の先生方からも重要性、また、対処する場合に公権力が必要ではないか 等、これまでいろいろな意見をいただいています。しかし、それは病院を把握するとい うよりは、無届けの所持について処罰するというようなことも含めて、公権力行使の対 象にするもの、影響の大きいものの分類として数は多いかもしれませんが、多剤耐性結 核は重要なのではないか。つまり、治療の可能性、また、集団で殺傷行為が行われたと きの影響等、国内にたくさんあるものであるがゆえに規制し、一定の評価をするという ことも立法事実として我々は認識しております。その辺の私どもの考え方も踏まえてご 議論をいただければと思います。 ○山田委員 いまのお話に関連して、法律というのは、少数の悪いことをする連中を取 り締まるためにあるわけで、善良な、しかも公衆衛生のためになるようなものまで規制 する必要はほとんどないはずなのです。ただ、やはり規制はしなければいけないから病 原体をそういうレベルにすることは賛同できる。だけれど、法律論の中でそういうきち んとしたことをやっている所に対してもイグゼンプション、要するに例外措置を設ける ことは不可能なのでしょうか。例えば、公共団体や病院の検査室については除外をする、 あらかじめ登録した機関については後の届出をキャンセルできるというような方法論は とれないのでしょうか。 ○新課長補佐 あくまで人為的な殺傷行為を目的とするものに対する抑止ということで の改正ですので、どこの病院にどういった、例えば工作員が入り込んでとか、そういっ た監視も含めて物質の所在を補足する必要があるという認識から私どもはやっておりま す。もちろん、過剰な規制にならない、届出の事務が煩雑にならないということは十分 認識しておりますが、一定の情報の補足については例外なくお願いしたいという立場で す。 ○倉田分科会長 1例1例毎回という話ですと現場が混乱します。ですから、1年間あ るいは半年間に5例を届け出るという話と違ってくると思います。その辺のところはこ れの運営の仕方のところで何とか考えられるかどうかということにもなるのですが、そ の辺はいかがですか。 ○新課長補佐 届出については、どういった頻度や対象、どれくらいのペーパーワーク が発生するかも含めて、厚生労働省令で定めるところにより決める、ということで柔軟 に対応できるような法律上の規定を検討しております。 ○坂谷委員 阿彦先生や加藤先生のご疑義に関していちばん問題になりますのは、届出 の部分ではなくて、下の「共通の規制」の「使用、保管及び廃棄の基準」で、ルールで はなかろうかと私は思っているのです。  不確かな情報ですが、上のCのトップになぜMDR菌があるのか。MDR菌であるこ とがわかった後でも再び培養して、さまざまな臨床上の利益のために通常の細菌検査室 で培養することがあるわけです。今度の使用のルールの中には、P3レベルでないと、 それをしたらいけないという規制がかかると聞いているのですが、それをやられますと、 発見して、届出のことではなくて、実務上そんなことはできないということで、先ほど 何人かの委員がご疑義になったようなことが発生するのではなかろうかと私は心配して おります。  それとともに、先ほど言いました、なぜMDR菌がCのトップに挙げられているのか。 別に不満を言っているのではございません。患者数が多いからであろうと思うのですが、 その理由もお聞かせ願いたいと思います。 ○新課長補佐 表について全く他意はございません。1、2、3、4という類型で事務 的に並べているだけですので、全くご懸念のようなことはございません。 ○結核感染症課長 まず、この場できちんと科学的な観点からご議論いただきたいのは、 いまの話でいきますと、多剤耐性菌というのはBSLのレベルで2が適当なのか3が適 当なのかということであります。現実に、仮に科学的には3なのだというような議論に なって、ではその3のレベルでいまの保健所やら結核菌を扱っていただいているいろい ろな施設が、ハード面あるいはソフト面からとてもそういう状況になっていないという ときは、私たちの判断で、例えば経過的なものを置く、例外的な措置をする等について は十分考えなければいけないと思っていますので、この場では、本来多剤耐性結核菌は 3のレベルなのか2のレベルなのかをご議論いただければよいと思います。 ○倉田分科会長 議論の必要はないくらいに、世界中レベル3ですし、米国では、大量 培養する場合には4でなければさせないようになっています。 ○高橋委員 許可や届出というのは、行為をする前にどういうチェックをするのかとい う規制の区分です。そのような規制の中で、届出というのはいちばん低いもので、もっ ぱら最低限の情報を把握するということです。そういう意味では、事前規制としてはい ちばん緩いのだということを申し上げておきたいと思います。ただ、いまの議論は共通 の規制の話で、こちらは実際に行為に着手した後の話ですので、事前と事後の話は区別 しておいたほうがよい、このように受け取りました。  その話は別として、2点だけお聞かせ願いたいのです。まずカテゴリーAの「公務上 試験・研究以外の所持等の禁止」。公務上の試験・研究であれば、包括的に種々の禁止 から抜けるということになり、おそらく行政の認定なしに個別的、包括的に抜いてしま うという話になろうかと思います。そういう意味では、どういうメルクマールで抜くか ということについて、国民に対する説明の観点からどのような整理をされるのかという ことが、今後制度の仕切りとしては非常に重要なのではないかということで、いま何か あればお教えいただきたいのです。  第2点目は、資料7にも国立感染症研究所の例が出ていますが、最近はソフトの管理 ということがいろいろ言われています。例えば、責任者を置きなさいといった施設内の 組織的な管理体制の話も規制の中に入っていますが、これを見ると保管方法等、物に着 目した規制のようになっています。その辺の関係についてお聞かせいただきたいのです。 ○新課長補佐 カテゴリーAでは現在「政令で定める公務員等」と記載しておりますが、 厳密に申し上げますと、「公務員の政令で定める人」ということで閣議決定をして列挙 していくものです。いまのところ国立感染症研究所と申し上げましたが、当然それ以外 の者であっても、必要な微保施設等を備え、安全性が高度に確保できるような場合に、 公益上必要な試験・研究等を行う場合についても閣議決定で定める、ということで限定 列挙して認めていくという趣旨です。  ソフト面も含めるかどうかにつきましては、使用、保管、廃棄の基準の中で人的、物 的、ソフト面も含めて検討し、定めていきたいと考えております。 ○倉田分科会長 私から確認をしておきますが、このA、B、Cの中に輸送の規制とあ りますが、これは全部同じルールですか。AとB、Cとはかなり違うのではないかと思 うのですが、その辺はどんなふうにお考えですか。 ○新課長補佐 関係省庁との調整もございますので確定的なお答えをできないのはお許 しいただきたいのですが、いまのところ、基本的には公安委員会に届けていただくとい うことで、同じような届出規制と考えております。 ○倉田分科会長 CやBは、いま何人かの方がおっしゃられたように、病院や研究所関 係でそれなりの頻度でやり取りがあります。しかし、公安委員会と言われますと、どの 程度の時間を要してとか、我々、いろいろ疑問に思うところがあるのですが、その辺の ところは非常に速やかにいくのでしょうか。  ただ、いま輸送に関しては万国郵便条約と国連の輸送ルールがあって、パッケージの 仕方から表示の仕方から宛名の書き方から全部ありまして、それに則っていない場合は 輸送しないというルールがあるのですが、事前の許可の範囲。Aはまだわかるのですが、 それ以外のところのものに関してAのカテゴリーと同じような扱いをするのかどうか、 そこが気になったのでいま聞いているのですが。 ○新課長補佐 いま考えておりますのは、盗取、所在不明、その他の事故を防ぐための 規制のために公安委員会に届出をするということですので、危険性等が一定、人為的な 殺傷行為の防止という観点からはA、B、Cは基本的には、届出という意味では同じで あるという考えでいま調整をしております。実務的にも、他の危険物質についても同様 の規制がございますので、必要でしたら次回にそういった規制の概要やスピード等をお 示しいたします ○倉田分科会長 届出なのか、届け出て許可が必要なのかです。 ○新課長補佐 届出をしたら証明書が交付されますので、それをもって運搬するという 内容です。これについては次回、資料で説明いたします。 ○倉田分科会長 ほかに何かありますか。 ○岡部委員 いまの関連での要望として、患者がいてそれを診断し、速やかにほかの場 所で確認作業をする場合には、届け出たり、許可をもらっていたのでは間に合わないの ですそういう場合には速やかに同定ができるようなシステムをとらないと、アウトブレ ークかどうかがわからないということですから、そこの部分は十分にお考えいただく必 要があるのではないかと思います。  もう1点は先ほど新さんが、国内でP4レベルを持っている所を対象にするとおっし ゃったのですが、P4の実験室はまだないのです。そこら辺は何か関連はありますか。 ○新課長補佐 そうではなくて、政令で定めるものは誰かということについて、そうい ったものを想定はしていますが、今ありませんので、政令においては規定しないという ことです。 ○倉田分科会長 実験室は感染研にありますが、いろいろな事情でレベルを落として使 っている。政治的な問題があって本来の病原体の目的に使えないということで、ないと いう話とは違います。 ○宮村委員 資料6でA、B、C、DにカテゴライズされたところのDの中に2類感染 症のポリオウイルスがありますが、ポリオウイルスをバイオテロのために使うというこ とは非常に現実的ではなくて、あり得ないウイルスだと思います。しかし一方で、天然 痘に次いで近く根絶され得る野生株ウイルスは、考えようによってはテロのいい時期だ と言うこともできるわけです。一方で野生株ポリオウイルスの管理を世界的にやってい るわけですが、先ほど岡部先生が言われたようにこれは流動的なことなので、検査のこ とを含めますと、輸送規制等はできるだけフレキシブルにやりたいという考え方があり ます。ウイルス自体のことを考えると、きちんと届出を提出すべき種類のものではない かと思いますが、いかがでしょうか。 ○倉田分科会長 ポリオウイルスの扱いに関して、お考えはいかがですか。 ○前田課長補佐 まさに、その辺りをご議論いただければと思います。 ○倉田分科会長 WHOのバイオテロ委員会、これには宮村先生も私も出ています。も ちろん今から気をつけていくのですが、ポリオが無くなったところですべてこの扱いは レベル3に上げる。そして、ワクチンをやめた段階ですべてP4扱いにする。ただ、P 4となりますと使える施設が世界で非常に限られてしまうのでP3+ということで、非 常に厳重なP3の扱いにする、その委員会の責任者はそう話しておられるのです。いま 宮村先生の言われたことはまさにその点の話なのです。西太平洋地区でこれが無くなっ たのは2000年のWPROですから、この10月か何かでまる5年経つわけです。ですから、 このウイルスの野生株の扱い方というのは、ポリオの中では非常に慎重な扱いになって いますが、議論をということは、これを上にあげろというような意見があったらそれも 考えるという意味ですか。田代委員は何か意見がありますか。 ○田代委員 全部レベルを上げてしまうと、便検体があちらこちらに保存されていると 思うのですが、昔の検体には野生株のポリオウイルスも当然含まれている可能性がある わけです。ですから、ワクチンの接種をやめてしまった後は当然厳しく規制する必要が あると思いますが、現状では、どうなのでしょうか。 ○倉田分科会長 宮村先生は、日本の担当者としてどのようにお考えでしょうか。 ○宮村委員 ここでカテゴライズしているのは、厚生労働省が並行してやっているポリ オ野生株の調査とは違って、ウイルスがどのようにカテゴライズされるかという考え方 ではないかと思います。そういうときにポリオウイルスとして同定されたものは、野生 株、それから病原性が復帰しているようなポリオウイルス。たとえワクチン株であって も、それは届け出ておいて、きちんと管理し、本当の野生株根絶宣言にコントリビュー トしなくてはならないと思います。 ○倉田分科会長 いま非常に貴重な意見が出ましたが、事務局として含んでおいてくだ さい。ほかにポリオに関してご意見はありますか。 ○神谷委員 先ほどからお話が出ているとおりで、要するに我々が現場で検体を取った ときに、中身はわからないので、自分のところではできないので送るということがあり ます。近くの衛研に送る場合も問題になりますし、もちろん感染研に送ろうと思ったら 簡単には送れない。あまり規制がきつくなると送れませんので、アンノウンの検体を送 るときにはどういうことをしなさい、ということを中できちんと決めてもらうほうがよ いと思います。 ○倉田分科会長 世界のルールというのは既にあるのです。先ほど少し触れましたが、 一応厳重に出して、病原体がわかったら、その扱いは国によって少しずつ違いますが、 その国の扱いのレベルでハンドリングする。わからない場合は厳重な、重症の患者であ るという場合に、その材料はきちんとパッケージングして、その仕方というのは全部あ ります。感染研のホームページにも上がっていますし、あちらこちらに既に出されてい ますが、それに沿ったパッケージにして送る、あるいは直に本人が来て持っていく、一 般の公共輸送には任せない、そういうやり方で検査センターなり感染研に送る、あるい は持っていくということになっているのです。一般の病院や国、全部含めてなかなか徹 底していないところは、我々の努力も足りませんので、そこはやらなければいけないの ですが、そのような状況です。 ○岡部委員 これは何遍も言っていかなくてはいけないことだと思いますが、危険なも のであるということがあまりに強調されすぎると、そのような疑いのある患者が出たと きに、一般検査その他含めて、全部そこではできないということがSARSの経験でも あったのです。ですからその辺も考慮しながら、何らかの形でアナウンスをしていかな いと、すべての検査が現場でできなくなる。それで、それは中央に持っていかなくては いけないが、規制がどうだというのでどんどん診断が遅れる可能性があります。それが 結果的に広がる可能性がありますので、十分考慮していただきたいと思います。 ○倉田分科会長 先ほどそのことでお聞きしたのは、いま岡部委員が言われたような趣 旨も含んでいたのです。時間的なものとか許可の問題となると、ますますそうです。 ○山田委員 狂犬病ウイルスがDに入っていて、いまのポリオの議論とほとんど同じな のですが、日本国内から無くなって久しいということと、周辺国にはまだたくさん狂犬 病がある。一旦発症すると致死率は100%を超えるという病気です。しかも、犬だとか 野生動物に感染させることによって感染創をつくることも可能なので、これはCぐらい に上げるべきだと私は思うのですが、いかがでしょうか。 ○田代委員 インフルエンザのH2N2の問題です。16頁の下から4段目のカテゴリー A、B、C、Dには入っていないのですが、これは少なくともDにしておいていただき たいと思います。これはいま世の中には存在していないわけですが、研究室の中だけに 存在します。これが、意図的ではなくて、若い人に感染してそれがフォーカスになって 漏れ出てしまう可能性が十分に心配されてパンデミックにつながる可能性があるので、 是非加えていただきたいと思います。 ○竹内委員 先ほどから眺めていて何となく気が付いたのですが、マラリアをここに入 れるというのは、よほど気の長いテロリストなので、マラリア原虫は要らないのではな いか。それよりもむしろ水系感染を、オーシストをばら撒いてバッと起こり得るクリプ トスポリジウムと取り替えていただいたほうがいいのではないかと思うのですが。 ○倉田分科会長 クリプトスポリジウムはいろいろなところで使われるという話はいく つもありますので、水系で簡単にはいきませんが。 ○竹内委員 大量に水系感染を起こします。マラリアは、入れられていろいろな基準が 適用されますと、大量に分離して持ち込んでくる研究者とか、遺伝子を網羅的に解析す る連中にとっては非常に重荷になるので、研究者の立場からも外していただけたらと思 います。 ○倉田分科会長 これら3点の問題につきましては、午後議論するなり、事務局で預か っていただいてその領域の人に意見を聞くなりして再度議論することにしようと思いま す。それからもう1つ。これは議論ではないのですが、17頁真ん中の注2について、W HOの新しいガイドラインも出ています。リスクグループの1、2、3、4で、個体と いうのはヒトの意味なのです。ほかのところにも響いてきますから、言葉について修正 して、後できちんとしたものを出してもらったほうがよいと思います。  ここでお昼にして、午後から次の議論をしたいと思います。 ○前田課長補佐 食事を用意しております。午後は1時30分ごろ再開といたします。                   (休憩) ○倉田分科会長 午後の部を始めます。それでは、事務局から説明をお願いいたします。 ○前田課長補佐 午前中に積み残しのあった点についてご説明いたします。安全保障決 議1540との関係ですが、今回のテロ未然防止の行動計画と、安全保障理事会との決議と の関連は特にないということです。こちらは、国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部 の規程に基づいて進んでいるということです。これは確認結果です。  資料の8頁の、病原微生物の保有状況について数字の指摘がありました。8頁の管理 方法の合計数が587と合わないことについて、先ほど事務局から重複事例ということで ご説明申し上げましたが訂正いたします。現在、保有施設は587ありますが、その保管 場所を把握していない6施設を除いた581施設の内訳がこの管理方法のコンピュータ管 理67、台帳管理467、その他47ということです。お詫びして訂正させていただきます。  議事の最後のほうに出ました、クリプトスポリジウムとマラリア原虫の話です。こち らは現在の考え方でいくと、1類から4類の感染症を少なくとも基準遵守をスキームに 入れるという考え方で考えております。今回の病原微生物の管理の仕分けの話と、感染 症法上の類型の話との関係になっていますが、クリプトスポリジウムを基準遵守の対象 の表に入れるとすれば、少なくともいまは5類感染症ですが、4類感染症以上の類型に 位置づける必要があるのではないか。そういうときに、ヒトに感染した場合の対物措置、 就業制限措置についての検討も併せて必要になってくるということです。  マラリア原虫についても同様です。現在、4類感染症で位置づけているところですが、 この基準遵守の対象から外す場合については、4類感染症から少なくとも5類感染症に 移すという作業が必要になってきますので、現行の対物措置がとれる対象の感染症から、 発生動向のみを把握する感染症というふうに位置づけが変わるということですので、そ の点もセットでご議論いただければと思っております。 ○倉田分科会長 先ほど、山本委員から指摘のあった赤痢菌属とか、レプトスピラ菌の 表現の仕方です。渡邊委員が来られたので、先ほど山本委員が指摘された、赤痢菌属の 表記法について適切でなければ渡邊委員から指摘していただいて、後で直していただく のがいいかと思います。  27頁のDの5行目の後ろに、赤痢菌属となっています。それからいちばん下から2行 目にレプトスピラ菌となっていますが、この表現の仕方はいかがですか。 ○渡邊委員 全体が赤痢菌で、例えばShigella dysenteryとなればシゲラ赤痢菌という 名前が付くので、シゲラ属でもいいと思います。レプトスピラ菌の「菌」は取ります。 レプトスピラの中に、前にレジオネラ属菌と書いてあるので、レプトスピラも、スピー シズをもし入れるとすれば、レプトスピラ属菌とします。  ただ、レプトスピラの中には病原性を持っていないものもあるし、持っているものも ありますので、どの辺までをこの中に入れるか。全部入れるのかということですが、こ れは疾患との関係ですから、病原性を持つということで取れば、レプトスピラだけで菌 は要らないです。 ○倉田分科会長 赤痢は赤痢菌属ですか。 ○渡邊委員 もしあれだったらシゲラ属菌です。 ○倉田分科会長 シゲラという言葉は、感染症の場合には使われていないです。 ○渡邊委員 それでは、赤痢菌属でいいです。 ○倉田分科会長 それでは、そのようにお願いいたします。先ほどいろいろご意見のあ りました、H2N2をDぐらいに入れてはいかがかという田代委員のご意見、それから ポリオをCというのは宮村委員の意見、それからレイビーズをCに上げてはどうかとい う意見がありましたが、これについて追加の意見がありましたらいただいておいて、事 務局で検討してもらうことになります。  それ以外のことでも、この分類は不適切であるから変えたらいかがか、という意見が ありましたらお願いいたします。 ○山田委員 ブルセラ属菌という言い方をすると、……ブルセラとかそういう菌も含ま れると思うのです。海洋動物の、正式な名前は忘れましたけれどもマリスだったか、そ ういうものも含まれてきてしまうと思うのです。その規制対象にするのを、例えば Brucella melitensisという格好にするとか、何か工夫が要るのではないかと思うので す。 ○渡邊委員 ……せて、それをどの辺まで書くかというところですが、レプトスピラで 病原性を持っているのは相当あります。例えば、レプトスピラで病原性のないものもあ ります。だから、全部入れ込むと大変だと思います。 ○倉田分科会長 これは、感染症の中に規定されている感染症を起こしているという前 提での菌になっていますから、全く無害なものは含めないという考え方でいくほうが順 当だと思うのです。いちばん最初にありましたように、テロを未然に防ぐという意味で、 使われたときにヒトを殺傷するというカテゴリーで考えて、そのときにどうであるかと いうことであります。 ○竹内委員 非建設的な意見で申し訳ないのですけれども、前田さんの説明というのは 納得しがたいのです。5類だから入れないとか、4類だったらマラリアも入れたとか。 エキノコックスなどを使うテロリストがいるとは到底思えないですので、そういう説明 は納得しがたいのです。 ○新課長補佐 法律の理屈で、病原体の微生物を規制する場合は1類から4類のどこか に入れることをワンセットでご議論いただいて決めていただきたいという趣旨ですので、 何類だから駄目とかいいというご説明ではないです。病原体の規制という新たな議論を するわけですから、それで規制が必要ということになれば、私どもで1類から4類まで のどこかに位置づけて対応することになりますので、そういうことも含めてご意見を全 体的におまとめいただきたいという趣旨です。 ○竹内委員 テロに使いやすいから、クリプトスポリジウムを使わせる可能性がより高 いから、それを5類から4類にクリプトを移すという理屈というのは、あなたたちの中 で成り立つわけですか。 ○新課長補佐 感染症法の中で規制の対象にしているものと、公権力の行使の対象から 外れているものとの分類を前提に、法律上そういう整理をさせていただいているという ことです。 ○竹内委員 それは、プラクティカルではないです。 ○新課長補佐 それは、法制的な観点で検討させていただきます。 ○木村(哲)委員 感染症法でやる分類と、テロ対策としてやるものとは別に考えても いいと思うのです。連動させると便利な面はあるのでしょうけれども、無理が出てくる のではないですか。 ○倉田分科会長 要するに、菌あるいはウイルスとしての病原体の扱いの部分として考 えろ、というのが木村委員の意見ですね。 ○木村(哲)委員 そうです。 ○岡部委員 同じような意見なのですが、いままでにも事務局側とはほかの場において こういう話をいろいろしています。法律ありきで次のものを決めるのではなくて、必要 に応じて法律をきちんと整備していくのが本当だと思うのです。  特に、感染症法成立のときには、バイオテロという概念はほとんどなくて、サーベイ ランスの強化と患者の人権ということが中心になっていたはずです。ですから、バイオ テロという概念をこの中に入れ込むとすれば、別の類型が絶対に必要になってきます。 そうでないと、本当に必要だけれども5類だから外れた、あまり必要ないけれども1類 だから入れた、という議論がいつまでも続くと思います。 ○倉田分科会長 病原体という観点からものを考える、ということのほうが非常にすっ きりしていいかという気がしますが、事務局はいかがですか。 ○新課長補佐 立法の問題については、そのご指摘も含めて検討させていただきます。 ○倉田分科会長 ここにある、感染症法の1類、2類、3類、4類、5類というのと、 病原体の世界で分ける1、2、3、4の話と、それからいろいろな輸送の基準の1から 10までの話と、1類であるとか、レベルであるとか、クラスであるとかいろいろな分け 方があります。病原体のリスク分類が1、2、3、4である。それから、感染症法は1 類、2類、3類、4類、5類に分けている、というのがはっきりしている点です。  あとのA、B、CのカテゴリーをAとやるか、アとやるか、イとやるか、ロとやるか これはどうでもいい話で、グループを分けるだけの話です。皆さんの中で混乱している 人はないと思うのですが、ご意見があればいただきたいと思います。 ○吉澤委員 これは、バイオテロの関係ですから、増やしやすさと撒きやすさと、感染 経路というのを考える必要があると思うのです。よくわからないので間違っていたら訂 正していただきたいのですが、例えばBウイルスだったら、ほとんどのサルが持ってい るわけです。80%以上のサルに感染しています。それが、たまにリアクティヴェーショ ンが起こったときにヒトに感染させるというだけです。ニホンザルは、ここに挙げてあ ればいつでも丸ごと法規制の対象になるわけです。  先ほどの結核菌についても、撒くほどいっぱい増やすというのは、培養が大変です。 その辺で、疾病というのと、増やして撒きやすさと、つまり周辺に対して被害を及ぼし やすさという観点でもう1回整理しないとわかりにくいのではないかと思って聞いてい ました。 ○倉田分科会長 撒きやすくするにはどうしたらいいかといういろいろなことがあって、 ただし、そういうことは論じないことにしますが、確かにこれは全部一つひとつどうい う点が撒きやすさ、感染させやすさということについてきちんとしたものがあります。 しかし、そういうものでやると、それがいろいろな格好に利用されてしまいますので、 通常そういうものは公表しないことになっております。確かに吉澤委員が指摘されたこ とはもっともなことで、世界でいろいろな実験をやった上で割り出してきたところがあ ります。あとは、日本でそこにどういうものを加えるか、引くかという話は本日の議論 の問題だと思うのです。  確かに、ウイルスというのはニホンザルにも数十パーセントあるし、かなりの頻度で マカク属にあるわけです。そこから感染が起こったのは、世界で37例です。実際にいじ っている人で、全く関係ない人に感染が起こったことはないです。いまの吉澤委員のご 意見について、事務局はいかがでしょうか。 ○前田課長補佐 この分類をするときの1つの考え方として、日本における知見は本当 に少ないということが現状としてあります。ですから、CDC、国連、WHOといった 海外の知見を基に、先ほど倉田分科会長がおっしゃったことの繰り返しになりますが、 いま現在の案を考えているところです。 ○山田委員 いまのお話に関連してですが、自然で感染している動物だとか、例えば土 壌のようにそこにあるものは規制対象外と考えてよろしいのですか、それともそういう ものも含めて規制をするのでしょうか。 ○新課長補佐 冒頭の行動計画にありましたように管理する者に対して管理をきちんと していただいて、私どもはそういうものの所在とかいろいろなものを捕捉するというこ とです。管理をしている者ということです。 ○倉田分科会長 山田委員がおっしゃっている話とずれているのですが、病原体がある としてそれをどうするかという話であって、その病原体を自然界の何が保有しているか ら、それを規制するという話ではないのです。 ○山田委員 例えば、ニホンザルがBウイルスにかかっているからといって、そのニホ ンザルを規制対象にはしないということでよろしいわけですね。 ○倉田分科会長 動物を規制対象にするとか、ヒトがそれを持っているからそのヒトを 規制対象にするという話ではないのです。これは病原体の管理の話です。そこは割り切 っていただかないと、いろいろ広げてしまうと全地球を管理するような話になってしま います。それは本日の話の目的ではありません。  先ほどの繰り返しですが、クリプトを含めてH2N2の病原体について、ポリオにつ いて、レイビーズについて、この扱いに関してはいまの意見を参考にして、次回のとき にでも事務局で分類をし直すなり、追加するなりということでよろしいですか。 ○山田委員 Dのところに、鳥のインフルエンザとなっているのですけれども、これは 高病原性鳥インフルエンザ、というふうに感染症法には書いてあると思うのですが、こ れはどのように考えるかということ。その高病原性鳥インフルエンザといった場合に、 それは農林水産省の言っている高病原性鳥インフルエンザを示すのか、それともH5N 1のようなものを特定して言っているのか、というところはどうなっているのでしょう か。 ○前田課長補佐 鳥インフルエンザの関係につきましては、参考資料5に1類から4類 の感染症の概要について書いてあります。24頁に、高病原性鳥インフルエンザ、という のが政令上感染症に定まっている疾患名です。起因病原体が鳥インフルエンザウイルス ということで、一応このイメージとしてはH5H7亜型のA型インフルエンザウイルス ということで考えております。 ○山田委員 強毒、弱毒に関係なくH5H7であれば規制対象にするという理解でよろ しいですか。 ○前田課長補佐 その辺りは、生物テロへの使われ易さから考えて、強毒のものに限定 すべきというご意見とか、弱毒も含めるべきだというご意見があれば伺っておきたいと 思います。 ○倉田分科会長 弱毒の扱いは3にして、全部同じ扱いにしているでしょう。 ○山田委員 強毒以外のものも、動物衛生の立場からいえば、いずれ強毒化するおそれ があるということで規制対象になっているのだと思うのです。もともと鳥のインフルエ ンザというのは、そう簡単にヒトに感染しないわけですから、その弱毒のものまで規制 する必要があるのかどうかというのは若干疑問な気もします。 ○倉田分科会長 例えば、感染研でその病原体をいじっている扱いは既にそうしていま すが、患者の高病原性鳥インフルエンザウイルスによるヒト新型インフルエンザだと思 うので、鳥インフルエンザがヒトに来るわけではなくて、インフルエンザウイルスがヒ トに来るという話です。それによる場合の病原体の話です。それは、ハイリーパソジェ ニックだけでは来ないわけですから、ここでの扱いはHPIになる、ということのこと と考えていいのではないですか。 ○山田委員 農水省だと、ハイリーパソジェニックだと全部入ってしまいます。 ○倉田分科会長 これは、ちょっと待ってください。農水省もヒトの病気に関しての話 ですね。農水省も、鳥のレベルの話とはちょっと違うのだけれどもいいですね。 ○加藤委員 先ほどから、多剤耐性菌の議論をしていて、CからDという議論があった のですけれども、これも検討課題ということでよろしいのですね。 ○新課長補佐 ご意見を聞いた上で、当局で整理をさせていただきます。 ○倉田分科会長 先ほど言ったように、毎回毎回届け出るという話ではないので、それ はやり方があると思うので、移すことも含めて事務局に検討していただくことになろう かと思います。 ○岩本委員 もともと感染症法の中に、多剤耐性の場合に、いまは結核が主な問題にな っています。メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌とか、多剤耐性の緑膿菌とか、むしろ病 気そのものよりは病院の中の疫学など大事なものが入っていることは法律自体の問題か もしれないのですけれども、いま申し上げたいのは、これを4類とか3類にしろという のではなくて、テロのターゲットとして病院が選ばれるとすると、こういうものを撒か れるといちばん困るわけです。先ほどの話と関連しますのは、感染症法の1類、2類、 3類、4類、5類というのと、テロ関係で考えた場合の分類というのは少し分けるとい う点は、結核だけでなくてもあるのではないかという気がするのです。 ○新課長補佐 機械的にリンクさせるつもりはありませんので、ご意見を踏まえて対応 します。 ○倉田分科会長 薬剤耐性菌の扱い方になるかと思うのですが、そのように考えていい ですね。 ○岩本委員 はい。 ○倉田分科会長 その辺はリスクの問題も含めて検討してください。いまのに関連した ご意見があればいまのうちに挙げていただければ、事務局の判断の基になるかと思いま すがいかがですか。 ○白井委員 体系分けについては、海外の文献の知見を利用したとお聞きしましたけれ ども、それが、将来世界的に概念が変わったというところにおいては、また法律改正と いう予定になっていくわけですか見通しとしては、来年そのような会議があると聞いた のですが、その場合にはまた来年に変わることも想定しているのですか。 ○新課長補佐 物質の選定と規定の仕方については、できるだけ最新の知見や情勢を踏 まえて改正することは当然のことだと考えております。法律レベルで書くことと、政令 や省令である程度機動的にできるものとの整理は必要ですけれども、情勢の変化があれ ば見直しをするということです。 ○渡邊委員 ここに書いてある疾患の場合に、疫学的に解析する上で非常に重要な菌も たくさんあるわけです。例えば、アウトブレークが起こったときに、それを保持するの を全部規制の対象にした場合、最悪の場合は分離したらすぐ捨ててしまう。例えば、検 査所などではそういう危険性があると、公衆衛生上非常に重要なアウトブレークのトレ ースをする場合に物がなくなってしまうこともあり得るわけです。  その辺はどのようにテクニカル的にできるのかわからないですけれども、例えば保持 期間の問題などいろいろやり方があるかと思うのですが、その辺は十分考慮していただ かないと、やらなければならないことができなくて、法律ばかりが先歩きしてしまう。 そうすると、公衆衛生上非常に不利な点が出てくるのではないかと思うのです。その辺 のメリットとデメリットをうまく考えていただきたいと思います。 ○菅沼委員 先ほどもお話が出ましたけれども、本日のタイムスケジュールを見ますと、 病型分類、規制、重症度についてということでやっていると思います。最初に意見が出 たように、最初にアウトブレークしたときの対応については、後ほど何かに入っていま すというようなことをおっしゃった気がします。次回、そういうマニュアル的なものを 作るとか、そういう予定はあるのですか。 ○前田課長補佐 使用、保管、廃棄の基準の検討になるのか、それ以外になるのかも知 れないのですが、現在感染症研究所で作っている安全管理規程については、実験室内汚 染があったときの対応と、緊急対策、緊急対策本部の立上げといったことについても規 定されております。それを紹介しようと思っておりました。  そういうことをこの基準の中に盛り込むのか、またそれ以外の対応が必要なのかはま た検討をしますが、できるだけ使用、保管、廃棄の基準の中に、緊急時対策を盛り込む ことが必要だというご意見でしたら盛り込んでいきたいと思っております。 ○菅沼委員 起こってしまったらということを考えると、人間はいろいろな知恵が出て くると思うのです。これは、一つひとつサルからどうのこうのというのはすごく大変な ことですけれども、出てきたときにはどうすべきかということを一つずつ考えながらや っていくと整理ができるのではないかと感じました。 ○倉田分科会長 参考資料5に、発生したときの考え方、臨床症状、検体の採取、輸送、 検査等があります。病原体保管の話と、感染症の患者が発生した場合の話は扱いの次元 が違うと思うのです。患者が発生したらどうなるかというと、それは感染症が既に対応 のマニュアルがありますから、その中でやっていくことかと理解しています。 ○菅沼委員 非常に意見が混乱しているように感じたものですから、何か整理の仕方は ないかと思いました。 ○倉田分科会長 疾患が出た場合には、既に感染症法に基づくサーベイランスのやり方 と、病原体の検査の仕方、患者の扱い方というのは類型に応じた格好で1から5全部あ りますので、その中での対応になると思います。それがテロなどおかしな発生があれば、 そのときにそういう症候群に基づいたサーベイランスのあり方、また病原体をできるだ け早くピックアップして何が原因かを検出する。それは、テロの通常のやり方になりま す。最初にわからないのは、普通の感染症と同じように出てくるというのが、感染病原 体によるテロでいちばん問題になるところだと思います。  ここのところで、すべて厚生労働大臣に行ってしまうことになっているわけですが、 地方の現場で患者が発生したときにはまず自治体、特に地方衛生研究所等でこういう病 原体に関する最初のバリアがあるわけです。そのときに病原体がわかったとしたら、地 方を飛び越していきなり厚生労働大臣に、いろいろなものがここにありますよというの はどうかという意見もあるのですが、丹野委員はいかがですか。 ○丹野委員 これは竹内委員もおっしゃったように、テロの未然防止策ということで、 前もって病原体に規制をかけてきちんとわかるようにしておく。それは、当然各自治体 がきちんと把握し、自分の自治体にはどのようなものがあるというのはわかっている状 況に置いておくわけです。  なにか発生したときには、先ほど話があったように、感染症法に基づいてやるとなる と、当然保健所、衛研が一体となって対応していくわけですから、そこの状況はある程 度わかっていないと、積極的疫学調査等もできないかと思いました。これについては、 未然防止という形で、各自治体もきちんと把握しておく。発生したときはどうかという と、感染症法に基づいて行う。それは、誰にでも公表する話ではないけれども、当然そ ういう枠組みの中の人たちにはきちんとわかっておいてもらうことが必要かと思ってい ます。 ○倉田分科会長 その辺について事務方はよろしいですね。 ○新課長補佐 今回のスキームの当局案は、厚生労働大臣なりその機関ということで、 国のほうで把握をさせていただくということを前提にさせていただきたいと考えており ます。すべての保健所で、そういう情報を細分化して保管するということはいまのとこ ろ考えておりません。必要な情報を提供したり、連携したりするということを、法律上 誰に届け出るかということについては、厚生労働大臣に届け出ていただくと考えており ます。 ○丹野委員 国に全面的に対応していただくということでよろしいのですか。 ○高橋委員 都道府県の経由事務にしないのですか。 ○新課長補佐 現在のところは、経由事務ではなくて直接執行ということで考えており ます。 ○岡部委員 それは、患者とコンフューズするのですが、感染症法の場合の届出はいま まではすべて都道府県経由で厚生労働大臣に届け出るという形になっていますので、そ このところは別に考えるわけですね。 ○新課長補佐 患者が個々に発生した場合、ドクターからの届出は従来どおりです。 ○岡部委員 そうだとするならば、先ほどの話に議論が戻るけれども、どの病原体をや るかというのも類型にこだわる必要はなく、必要に応じて決めればいいのではないです か。 ○倉田分科会長 その辺の意見も是非汲んでいただきたいと思います。 ○阿彦委員 関連ですけれども、そういうことからすれば先ほどの多剤耐性結核の結核 菌の問題も、患者の対策というか、患者の医療の確保ということと関係なく、病原体の 管理ということだけをこの法律で扱うということであれば、結核予防法と連動させる必 要もないのではないか。後の議論との関係もありますので、非常に大きい問題だと思い ます。 ○結核感染症課長 同じ法律の体系の中ではやるのですけれども、病原体の管理の部分 の情報と、患者が発生したときの情報の取扱いという2つの内容が含まれているわけで す。患者の情報については、診療所かもしれませんけれども病院から保健所に話が来ま す。患者が所在する地域を管轄する保健所と、その患者が入院する病院が所在する地域 を管轄する保健所というのは基本的に同じ保健所になるのだろうと思いますので、それ は当然地元の保健所が知っていただかなければ困るということで、いまの法体系になっ ていると思うのです。  病原体の管理を、どういう範囲の人が情報を持つか、あるいはどういう経路でそれを 国が把握するかということについては、例えば東京都千代田区の保健所管内で、テロに よって発生した病原体を所有している人は青森かもしれないし沖縄かもしれないわけで す。むしろ、近くで撒くよりは遠くで撒くということが想定されますので、患者の発生 に関する情報と、ここで規定するような病原体を所持しているという情報は、安全管理 という関係からいけば、いろいろな方が情報を持つということはリスクが広がるという 意見もあります。逆に、持っていることによって、迅速に地方が動けるということであ れば、どこにどういうバイ菌があるというのを、いろいろな人が知れば知るほどテロリ ストに知られる確率が高くなる観点から、非常に限定的な情報管理をしたほうがいいと いう議論もあると思います。  そういう両面の意味があると思うのですが、そこは危機管理で、非常に高度な危険性 をもつような病原体の所持、あるいは管理に関する危機管理の情報は限られた所で持っ ていたほうがいいのではないかという意見も一方でありますので、そこはバランスの話 かと思うのです。そういう観点からいくと、まず情報を直接入手するのは国にしておい て、必要に応じて都道府県にもお知らせするというスタイルがいいのではないかと私た ちは考えております。 ○倉田分科会長 わかりましたか。 ○阿彦委員 わかりません。いろいろ議論になっているのは、病原体の管理をするため に、病原体の種類を感染症法上入れることと、病原体による病気の疾患の患者も含めて 感染症法の体系に入れようとしているところとの問題だと思うのです。午前中の説明だ と、病原体を入れるからには、その患者も法体系に入れなければいけないので、結核予 防法も、多剤耐性結核を入れるからには、結核予防法も廃止し、感染症法に入れなけれ ばいけないという論議で今回進んできたと思うのです。  それが午後になったら、それは少し違うという議論になっています。患者の対策と、 病原体の対策は少し違うところがあるのだから、少し考えましょうかというスタンスに なってきているような気がするのです。そうだとすると、結核予防法の議論にもかなり 影響してくることなので、患者に対する医療の確保をいろいろ考えるときの法体系と、 病原体の管理を一緒にすること自体かなりすれ違いが出てくる可能性があります。  後で申し上げるつもりでしたが、結核予防法の廃止の議論というのも、関係者は全く 寝耳に水なのです。突然今年改正されたばかりなのに、そういう中でいきなり廃止とい う議論になってきたときの根拠が、多剤耐性菌が入るのでというだけの理由だけなので す。時期が来たのではないかという議論もあるかもしれませんけれども、患者数から見 れば3年前と比べてどんどん減っているわけではないです。そういう議論の中で、テロ 対策だけのためにというのは、先ほどから言われているように危機意識が弱いと言われ ればそれまでですけれども、病原体の管理とそれはちょっと違った捉え方をして組み立 ててもいいという議論をここで進めるのであれば、結核のほうはもっときちんと議論を 詰めるべきだと思います。 ○雪下委員 いま話を聞いていると、感染症法あるいは結核予防法の枠でやるわけでは ない、新しいテロ対策ということでやるのだという話だと思うのです。これに関するい ろいろな施設の調査、あるいはこれでの所持の禁止、あるいは届出制、それも罰則があ るのでそれに従わない場合どういう法律の枠組みでやるのかどうか。  それで、私がいちばん初めに申し上げた、いわゆる国民保護法という中に、それに協 力しなければいけないという法律が入っていて、それが有事法の中なので医療関係者の 中でも大変問題になっています。その辺のところをはっきりお聞きしたいと思います。 ○新課長補佐 今回のテロ対策については、感染症法の改正で行うということで、感染 症法の目的や枠内で行うということは政府として決定しております。それに基づき、も ともと感染症法は法定受託事務で、身近な所への届出ということで保健所長経由という 事務は置いていますが、基本的に現行法では国の責任でやってきているという認識です。  今回、インサイダー情報や、テロに使われるような物質の所管情報をどこが一元的に 捕捉するかといいますと、他法令等も参考にし、まずは厚生労働大臣が捕捉し、監視体 制の問題もありますので、そういうものは自治体の事務でやっていただくのではなく、 厚生労働大臣の責任において行うべきだろう。ただ、その必要な情報提供をどうするか ということについては、当然個々のケース、ウイルスの種類によっても出てくるかと思 います。  そういう認識でやっておりますので、1つの感染症法の体系の中で、感染症発生・蔓 延防止と、そのきっかけとして人為的なものという新たな要素が出てまいりましたので、 そこでできる範囲のものはやるということです。一般的な、全体的なテロ対策法を作る ということではないので、若干限定された枠組みではありますがお許しいただきたいと 思っております。 ○雪下委員 そうすると、感染症法の枠内でやるということですか。 ○新課長補佐 さようでございます。 ○雪下委員 そうだとすれば、感染症法あるいは結核予防法を入れて、その枠外から入 ってくるものについては法改正でやられるのですか。 ○新課長補佐 感染症法の中で、感染性がある病気を取り扱う。その原因となるような 病原性の物質の管理の体制も行うということです。化学物質は入らないということです。 それを、一貫した法体系で行うということです。結核の問題は後ほど議論があるかと思 いますが、一貫した法律の中で対処させていただきたいということです。 ○雪下委員 その枠外から入ってくるものも、27頁の中に※印が付いているのがあるわ けです。それは、どのように解釈すればいいのですか。 ○結核感染症課長 改めてご説明させていただきます。あくまでもヒトに感染症を起こ す病原体、あるいは病毒という範囲という全体的な枠はあります。いまの時点で、感染 症法の中に取り入れていない病原体で、新たに問題が出てくるだろうというものについ ては、この法律のスキームの中でやっていくということです。  感染症という枠の中というのは、感染症法で規定されている現行の疾病の枠の中とい うことではなくて、ヒトに感染症を起こす病原体の中で、この法律で規定するものはど れかということで議論したいと思っています。既存の感染症法の中で規定している感染 症以外でも、規定する必要が生じてくれば、それはこの中で規制をしていくという整理 です。 ○高橋委員 いま課長がおっしゃった、議論の中で規制をしていくという説明で、要す るにテロ関連のことをやるなら病院のものは国で一元的に管理したい、という説明は非 常に合理的でそのとおりだと思います。私は行政法的な観点から気になるのは実効性と いう話です。例えば、これはどのぐらいの情報が厚生労働大臣の管理下に出てくるのだ ろうという予測がされているのでしょうか。  実際にその情報を、いまの結核感染症課のマンパワーの中で的確に把握し、テロのと きに有効にその情報を活用できるという体制的な見込みがあって、こういうことで合理 的だと判断されているのか、その辺について説明していただけますか。 ○新課長補佐 今後の厚生労働省の対応の体制を充実することも含めて対応が可能であ るということです。場合によっては地方、支分部局等の活用もあるかもしれませんけれ ども、厚生労働省が責任を持って対応させていただく。すべての自治体や保健所設置市 に、そういう体制を講ずることよりは、体制の面だけでいえば、厚生労働省において対 応できるのではないかという見通しを立てております。 ○高橋委員 その辺の説明書きを後で出していただければありがたいです。 ○結核感染症課長 件数については、午前中に資料でご説明したと思います。例えば、 SARSコロナウイルスだと5カ所です。あそこに書いてある病原体所持施設が600ぐ らいということですので、今回の議論の中で、この微生物も追加すべしというものがた ぶん出てくると思います。多くはコレラとか赤痢というところがいちばん大どころだと 思います。数については資料3の8頁にありますが、このぐらいの数になるのかと思い ます。  届出についても先ほど来ご説明しておりますが、イメージとして保健所に赤痢菌が持 ち込まれるようなことだと思います。赤痢菌も常にはないわけで、赤痢菌の検体が運び 込まれたときに所持をして、廃棄をして、また届出があって所持していくということに なると思うのです。それを、一回一回届出していただいたり、所持をしていませんとい う届出の廃止みたいなものをその都度していただくという手続が合理的なのかというこ ともあると思います。病原微生物をどういう形で保管しているかをどのように行政が把 握していくかということについては、合理的な形でやりたいと思っています。その辺を どう仕組むかで、事務量もかなり増えたり減ったりすると思いますから、そこは現実的 な対応をしたいと考えています。 ○菅沼委員 私も混乱していたような気がします。今回の会議は、テロに使われると考 えられるものについて、厚生労働大臣が把握をするための法律を考えるということでよ ろしいのでしょうか。テロ対策になるとは思いますけれども、国内で持っている菌に対 して少し法規制をかけるということですか。  そうすると、先ほどから結核のことが出ていますが、確かに結核菌をテロに使うとい うのはあまり有効ではないかと思います。Cに入れられてしまうと、輸送規制やら何や らがかなりひどくなります。それをDにすれば、ただ届出ということで随分違ってくる のではないかと思うのです。感染症法とかいろいろ考えるからゴチャゴチャしてしまっ たのですが、管理を目的として、こういう法律を作るということであればDでいいので はないかと思います。結核さえ別に考えれば、それほどの問題はないように思うのです がいかがでしょうか。 ○新課長補佐 輸送規制についても次回ご回答いたします。いまは軽重つけずにご説明 しましたので、係る規制との対比においての検討も含めた上で、分類について検討させ ていただきたいと思います。 ○倉田分科会長 いまおっしゃられたように、Cのいちばん上の多剤耐性結核菌を除く と限られた数しかなかろうというのは非常にはっきりしていますから、そんなに大事に なるようなことはないと思います。病原体を誰が持っているか、あるいはどの機関が持 っているかということですからそれだけのことで、使ってはいけないという規制をかけ ているわけではないです。持っていることを届け出るというのは、世界中いま当たり前 になっています。日本だけがしていないのです。  これは、患者から取ったものを誰が持っているか、どこの研究機関が持っているかと いうことの把握であるわけです。要するに、善良な研究者においてはなんでもないこと なのです。私どもの研究所では全部登録されていますから、明日出せ、いま出せと言わ れたらコンピュータから出てきます。誰が持っているかまで知りたかったらその場で出 ます。きちんとやっている所にとってはあまり困ることではないのです。  ちゃんとやっていないで持っているとしたら、それは世界の最低のルールに合わせて いくというのは、実験室としては当然ではないか。実験をきちんとやる上での安全性や 周辺への問題を配慮したら当たり前のことなのです。やってはいけないということは、 厚生労働省が何かやろうということではないと私は理解しています。あなたはどういう 病原体を持っていますかというだけの話で、ここにある病原体は私が持っていますとか、 Aという研究所が持っていますということだけの話だと思うのです。  そういう点においても、把握は日本がいちばん遅れていたわけで、ごく当たり前のこ とであって、患者を縛るというような話では全くないわけです。そこのところは誤解の ないようにしていただかないと、この議論は先に行かないです。事務局から何かありま すか。 ○結核感染症課長 この届出はどういう効果があるのだということについて、もう少し 私から触れさせていただきます。悪いことを考える人は、たぶん無届けで持っているこ とが多いのではないかと思います。届出をきちんとしていただくことにより、この制度 が入ることにより、無届出で何かやろうとしている人の情報があればすぐ摘発し、刑罰 を与えられることになるわけです。  ですから、善良な国民の疾病予防のために、善意で研究をしていただいている方に法 外な負担をかけようというつもりは全くありません。ただ、届出制度がないと、誰が何 を持っていても自由だという話になってしまって、一部の善良でないといいますかテロ リストといいますか、そういう人たちの活動が野放しになってしまうということですの で、そこを是非ご理解いただきたいと思っております。  輸送の話が出ていますけれども、これは警察庁とよく詰めていかなければ、この場で 具体的な話は少々しづらい面があります。想定しているのは、テロに使われるおそれの ある病原物質を輸送するときに、例えば夜中に電灯もついていないような細い山道に入 っていって、そこで襲撃をされたり、いかにも盗難に遭いそうな所が搬送経路に入って いた場合に、たぶん警察から、もうちょっと安全な道路を使ったらどうですかという指 導なりサジェスチョンがあるということと私は理解しています。これも、書類を何十枚 も作って輸送の届出をするということを我々は想定しているわけではありません。  感染症についてどうするか、ということをすぐにお示しするのは難しいかもしれない のですが、最悪の場合はどうかというような類似のケースについては、次回の委員会の 場でご説明させていただくようなことを考えたいと思います。今回の法改正の中では、 そういう趣旨の規制をする、ということは前提としてご理解いただければと思います。 ○倉田分科会長 先ほどいろいろ出た、病原体のCやDも含めて検討していただいて、 次のときに出していただければと思います。 ○阿彦委員 次回までの整理の仕方についての希望ですが、ヒトの感染症でいうと、第 6条に定義があるわけです。病原体を管理するために、その定義の中に新しい感染症と してどんどん入れていかなければならないという法体系だといまの感染症は認識できま す。そうでなくて、病原体の適正管理が趣旨であれば、患者と病原体を分けた法体系に きちんとやってもらったほうが、先ほど岩本委員のお話にあった、結核だけではなくて、 いろいろな耐性菌がある病気を全部感染症の定義に入れていくのも現実的でないような 気がします。  5類でも、テロに使われたときは非常に重要だとか食い違いもありますので、病原体 と感染したヒトの対策を一緒にするというのは、法律の条文を作るのは楽かもしれませ んけれども、法律の条文を作るのが楽だから一緒にされるというのは納得のいかないと ころです。病原体は病原体ということできちんと適正管理をする。テロ対策だけでなく て、適正管理というところをきちんとやる、という整理の仕方をしてもらったほうがい いと思います。 ○倉田分科会長 本来病原体の適正管理を考えていただいていいと思うのですが、阿彦 委員が言われたことについてはいかがですか。 ○新課長補佐 感染症法の中でやるということについては、政府としても病原性の管理 を中心として今回やるわけですけれども、あくまで目的は感染症の発生・蔓延防止とい うことで、感染症法という法体系の中で対応するということです。条文を作るのは楽と かそういうことではなくて、今回政府として最も適切な規制のやり方として、感染症法 の一部改正の中で、感染症の発生・蔓延防止という目的を達成する1つの発生事象とし て、人為的な殺傷行為を取り入れていくための事前規制です。届出、許可、禁止を入れ たいという考え方です。 ○倉田分科会長 いくつか指摘された問題を含めて検討していただき、その結果を次に 出していただくことにして次に行きます。次に、病原微生物の使用、保管、廃棄の基準 についてと、感染症の類型の変更について事務局から説明をお願いいたします。 ○前田課長補佐 資料の28頁、資料7、国立感染症研究所病原体等安全管理規程の構成 です。この資料を提示している理由として、先ほど来ご議論のありました、使用、保管、 廃棄の基準を今後検討していく際に、現在の国立感染症研究所においてどういう規程が 作られているか。そして、それがいろいろな国内の研究所等で準用されて運用されてお りますので、参考としてはいちばんいい資料ではないかということで挙げております。  この構成として、第1章総則で、目的、定義、遵守義務。第2章は安全管理体制とし て、バイオセーフティ委員会の設置、病原体等取扱安全監視委員会、バイオセーフティ 管理室という組織が感染症研究所の中に置かれています。そして危害防止主任者という 点もあるところです。  第3章は安全管理基準です。バイオセーフティレベルというのは、先ほど来話に出て きている病原体等のレベル分類で、この安全管理基準の中に定められております。そし て、実験室の安全設備及び運営に関する基準等。指定実験室の安全管理。この指定実験 室というのは、バイオセーフティレベル3及び4の実験ができる実験室ということです。  そして病原体の取扱手続及び分与・移動についてです。この分与・移動については、 所長の定める基準ということで、より細かく詳しく作られています。病原体等の移動の 制限、指定実験室及びバイオセーフティレベル2実験室の表示。そして、取り扱う職員 の資格的なものもあります。取扱い病原体の処置、事故が発生したときの緊急時対策と、 緊急対策本部の設置。バイオセーフティ講習会の開催、安全点検結果等の公開。  第4章、職員の健康管理として、定期と臨時の健康診断。その記録とその診断後の措 置。血清の保存や病気の届出などの規程が設けられております。それから、安全管理カ ードについての規則、最後に罰則があります。その詳細については、参考資料7に、安 全管理規程の全文をコピーで配付しております。この詳細な説明は省略させていただき ますが、今後この使用、保管、廃棄の基準を検討していく際に、本日のご議論も参考に させていただきますし、たたき台といいますか、基本となるものとして安全管理規程を 基に、現在事務局で案を練っているところです。  次は、感染症の類型の変更についてです。こちらについては、資料8から資料14がそ の関係になります。この類型の変更について、最初の検討事項とタイムスケジュールの 中で、SARSの1類感染症から2類感染症への移行と、細菌性赤痢、コレラ、腸チフ ス及びパラチフスの2類感染症から3類感染症への移行、ということを検討事項として 書き込ませていただきました。  まず、SARSの、1類感染症から2類感染症への移行という点についてです。29頁、 資料8です。平成15年10月3日の衆議院厚生労働委員会の附帯決議です。前回の感染症 法の改正のときの附帯決議です。そのいちばん最初のところに、「SARSに係る感染 症法上の類型についてはウイルスの解明、SARSの病態・感染経路の解明を急ぎ、治 療薬・ワクチンの開発など医療の状況も含め、医学的知見の集積等を踏まえ、2年毎の 見直しを行うこと」という附帯決議がなされております。同様の決議が30頁で、参議院 の厚生労働委員会の附帯決議の中にも盛り込まれています。  そのSARSについて、この2年間どういう状況にあったか、どういう研究が進めら れてきたかを紹介させていただきます。32頁のSARSの発生状況についてというとこ ろです。平成15年7月5日にWHOが最後のSARS伝播確認地域である台湾の指定を 解除、そしてSARSの終息を宣言しました。終息宣言までに、感染者数が8,098名、 死者が774名発生しました。  終息宣言後、実験室内感染等により14名の患者が報告されております。シンガポール 国立大学微生物研究室の事例、台湾の研究者の事例、広東省のテレビ・プロデューサー の事例、広東省の女性の事例、広東省の男性の事例、北京市・安徽省の9名の事例など です。日本においては、平成15年6月20日までに52件の疑い例、16件の可能性例が報告 されたところですが、専門家の症例検討の結果すべて否定されました。ここ2年以上、 実験室内等の限られた場所における感染のみしか発生していない、というのが資料9の 状況です。  資料10からが、新興・再興感染症の研究事業において、SARSについての研究を6 本発射しています。1本目は、33頁のSARSコロナウイルスに関するワクチン開発に 関する研究です。マウス体内のウイルス増殖を抑える抵抗性を賦与できたワクチンもあ った、というSARSのワクチン開発の研究を、国立感染症研究所の田口先生の研究班 で行っていただいております。  2本目は35頁の、SARSウイルス感染阻止化合物の探索ということで、東北大学の 菅村先生に研究をお願いしておりますが、SARSウイルスについて、3種のプラスミ ッドを細胞に導入して得た偽ウイルスの安定性が高いとか、そういう感染阻止加合物の 探索を行っていただいております。  3本目は36頁の、SARSコロナウイルス検査法の精度向上及び迅速化に関する研究 です。血清診断法、遺伝子検出法ということで、そのLAMP法が、リアルタイムPC Rよりも迅速で高感度であった、という研究成果が出ております。  4本目は、ペプチド抗体によるSARS診断の迅速化ということで、久留米大学の伊 東先生の研究です。この研究において同定した長期持続免疫抗体が認識するエピトープ については、診断のために抗原として有用だという研究成果が出ています。  5本目は、ヒト型抗SARS中和抗体の開発研究ということで、切替先生の研究班で す。抗原ペプチドの候補選定や、組換え蛋白質の調整などを行い、中和抗体の開発に努 めておられます。  6本目は、39頁のSARSの感染・発症・重症化の分子機構ということで、笹月先生 の研究班です。インターフェロン誘導抗ウイルス遺伝子群を候補としたSARSの発症 ないし感染と有意の関連性ということについて、抗ウイルス遺伝子群を候補とした研究 をされてきました。  ただ、これらの研究は、SARSが平成15年に発生していろいろ騒ぎになったもので すから、平成16年度スタートのものが多く、大体が研究初年度のものですが、短期間で ありながら確実に研究の成果を上げてきている状況です。  40頁で資料11です。こちらはN Engl J Medの昨年の論文です。重症呼吸器症候群ウイ ルスの空気感染を示す証拠と題された論文です。こちらについては、香港の地域社会で 起こったSARSの大規模集団発生における症例の時間的・空間的分析の解析をしてお ります。  平成15年のアモイガーデン団地における患者187名のロジスティック回帰分析を用い た、場所と感染確率との関連の検討をした。この結果としては、患者のうち半数を超え る患者が同じ棟に住んでいた。そして、低層部の居住者よりも、中高層の居住者のほう がリスクは高かった。中層階の患者から発生する、通気孔内での汚染された温風の上昇 噴流と合致したということで、ウイルス含有エアロゾルの3次元的広がりと感染の患者 の分布がよく一致していたという結果です。  この論文についての評価が42頁です。こちらがPerspectiveということで表現されて いるところです。SARSは一定の条件下で空気感染する疾患であることが示唆される ということですが、ウイルス含有エアロゾルは、その発端の患者より汚染された下水か ら発生したとされること。各階の排水溝を介して拡散してまたたく間に集団発生したと いうことをもって、必ずしも空気感染ということを結論づけることはできないのではな いかという評価がされています。  次は、SARSの1類から2類への話と合わせて、2類感染症のうち消化器系の感染 症について、現行の2類感染症でいいかどうかということについての資料です。資料の 43頁からが、日本弁護士連合会が、感染症法の検討をしていたときに、法律案の段階に ついての意見書を出しております。この内容としても、主に2類感染症については入院 勧告及び措置を行える対象の疾患ということです。  そちらについても資料の53頁にありますが、健康診断、入院勧告、強制入院措置につ いての説明義務などについての懸念を示しているところで意見が出されております。  実際に2類感染症のうち、消化器系の感染症がどのような発生状況にあるか、集団発 生事例がどれぐらいあるかということです。59頁からは、国立感染症研究所の病原性の 情報のIASRという月報に報告されたものの中から、赤痢、コレラ、腸チフス・パラ チフスの治験について紹介させていただいております。  59頁の愛媛県の事例は、103名の食中毒患者が細菌性赤痢であったということです。 ただ、アンダーラインが引いてあるように、感染経路については特定することができな かったということですが、集団食中毒がこういう規模で発生しているということです。  60頁からが、大阪市における集団赤痢です。患者総数は1の1)にあるように44名、 そのうち園児からの2次感染者が、2にありますように7名だったというエビデンスが ありました。考察として、赤痢菌についての治療内容は、感染症指定医療機関の医師に とっては、非日常的な作業であるということで、62頁にあるように、特定医療機関で一 元的に管理するなどの改善策が必要ではないかという示唆がされております。  63頁は、静岡県の集団赤痢の発生状況です。2001年に37名の集団赤痢が確認された事 例があります。それから64頁にあるように海外渡航歴はなく、国内の感染だったという ことで、感染源や感染経路を特定することができない場合が多いという示唆がされてい ます。  65頁はコレラの状況です。こちらについても今後の課題ということで66頁に記載があ ります。感染症法施行後のコレラ発生数は年間40例に満たず、施行前のほぼ半数となっ ています。これは国外例の報告数が減ってきているからだということです。国内例につ いては減少していないので、相対的に国内例の割合が増加しておりますが、帰国者及び 国内例に対する監視の強化が必要という示唆がされております。  次は腸チフス・パラチフスの件です。こちらについては68頁から紹介されております。 最近の傾向として69頁にありますが、ニューキノロン系抗菌薬の治療が功を奏さないケ ースがあり、有熱期間が長くなって治療期間の延長を招いているという実情が紹介され ています。そして、耐性菌の動向監視が必要ではないか、ということが示されておりま す。これらは、いくつかの本当に少ない事例ではありますが、2類感染症のうちの消化 器系感染症についての最近の動向です。  70頁目については、平成16年1月から12月の1年間における2類感染症患者について の届出と入院勧告等の状況です。急性灰白髄炎(ポリオ)については届出なし、ジフテ リアについても届出なし、コレラについては届出98、入院勧告実施31、入院措置という 即時強制的な入院措置の発動件数0、平均入院日数5.6日、感染症協議会開催15回です。  細菌性赤痢については、届出704例、入院勧告の実施件数100件、入院措置の発動件数 0、平均入院日数4.4日、協議会開催回数22回です。  腸チフスについては、届出数85件、入院勧告の実施76件、入院措置0、平均入院日数 は11.7日、協議会開催回数75回です。  パラチフスについては、届出105件、入院勧告93件、入院措置0、平均入院日13.3日、 協議会開催回数99回という内容です。  こういう内容で、この傾向としてはコレラと赤痢については届出のあったうち3分の 1とか7分の1ぐらいしか入院勧告されていないことに対し、腸チフス・パラチフスに ついては届出の8割以上が入院勧告されている状況です。ここまでが資料14で、感染症 の類型の変更についての資料説明です。 ○倉田分科会長 いくつかありますので順番にいきます。資料7の安全管理規程の構成 については、いま検討中のものが1つ抜けています。最近、病原体の管理と同等に、実 験室でのセキュリティをどう保障していくかということで、ハード面、ソフト面と当然 ありますが、ハード面の問題も含めたセキュリティのシステムを、通常のカードだけで いくのか、それに指紋を入れるのか、ハード面の改善もあります。バイオセキュリティ ということが1つ抜けていますが、これは皆さんがシステムを考えるときに、安全管理 体制の第2章のどこかに1カ所それを入れておいて、各々の施設で考えるのが適切な方 法だと思いますので、病原体を持っている場合は考えたほうがいいということです。感 染研ではいま検討中ですから、5月の講習会に使った改訂のものには載っていませんが、 近いうちにはっきりした格好でルールができると思います。そういう点も含めておいて いただければと思います。この点についての質問はありますか。 ○山田委員 この基準の遵守をどのように担保していくようになるのかを教えてくださ い。 ○新課長補佐 現在考えておりますのは、厚生労働省令で基準を明確に定め、これに違 反を何らかの形で認知する。報告徴収や立入検査、あるいは先ほどご指摘がありました ように通報というものもあると思いますが、遵守していなければ勧告(行政指導)又は 改善命令(行政処分)で指導なり行政処分を命じます。改善命令に従っていただけない 場合には、他法令と同様に罰則の対象になるということで、段階的に公権力で規制対象 にしているということです。 ○山田委員 定期的な査察などは考えていないのですか。 ○新課長補佐 基本的には先ほどから議論に出ておりますように、きちんと研究されて いる所は遵守していただいていると思いますので、何らかの我々の認知の経過があった 所には立入検査ということになると思います。随時監査に行く、ということまではいま のところ想定しておりません。 ○高橋委員 素人なので教えていただきたいのですが。感染症研究所の素晴らしい対策 だと思うのですが、これはすべて共通の規制ということで、すべての施設に一律の基準 を求めると考えているのかどうか、それともレベルを変えて、こういう所にはこういう ところということも考えているのかを教えてください。 ○新課長補佐 レベルや実態に応じ、多少の類型はあるかと思いますが、レベルに応じ てそれにふさわしい、きめ細かな対応を考えております。 ○高橋委員 それはA〜Dの区分には対応していないということですか。 ○新課長補佐 通常Aがいちばん重大ということでしたので重くはなると思いますが、 それぞれ先ほどご指摘のありましたいろいろな使われ方等もあると思いますので、それ に応じた合理的な規制という形で考えていきたいと思っております。 ○倉田分科会長 1つお聞きしておきますが、先ほどありました、病院等で検査室が多 剤耐性菌をいままでずっと扱ってきた、それはP3レベルのバイオセーフティレベル3 を満足するものではないとした場合に、罰則するのは簡単なのですが、その病院では患 者を診ることができなくなるということも起きてきますが、そういうものに対してはど のような配慮があるのでしょうか。 ○新課長補佐 午前中に課長からも申し上げましたように、まず科学的にという問題で、 本来どこの基準が妥当なのかということ。それから、現実に社会で公益目的、あるいは 有用なことでやっていただいている所がどのぐらいハードルとの乖離があるのかという ことも含め、それは経過措置で通常対応する、何年までにやる、当分の間はもうちょっ と現実的なランクのところを定めるとか、そういう経過的な規定を通常は設けるのでは ないかと思います。 ○倉田分科会長 岩本委員は、病院の立場からご意見はいかがですか。 ○岩本委員 また後で。 ○工藤委員 いまのことと関連いたしますが、1つは所持という言葉がいちばんよく使 われているようですけれども、保有とか保持とかいろいろな言葉が使われているので、 どれに統一されるのかということと、定義はどうなっているのか。例えば、何日間持っ ていれば、ここで対象とする所持に当たるのか。一過性に1日いて、翌日廃棄したとい うものまで対象にするのかどうか、そこのところは明確にしていただかないと臨床の現 場では大変混乱すると思います。 ○新課長補佐 実際の条文の規定については、まだ法制的な審査等もありますので確定 的なものは申し上げられませんけれども、通常、他法令と整合性を取りながら、製造、 輸入、所持、譲渡、譲受、保管というものを基本的に考えております。それぞれ明確に どういうものが該当するか、というのは当然お示ししていきたいと考えております。本 日の時点では、どの文言で定義はどうということについては、まだ申し上げる段階には ありません。準備できておりませんのでお許しいただきたいと思いますが、明確性は必 要だと思っております。 ○工藤委員 多剤耐性菌などの場合、結核菌一般でもそうですけれども、例えばその後 に発生した接触者健診などでもし出た場合、DNAのタイピングが一致するかどうかと いうようなことで、そのためにかなり長期に保存する場合もあるわけですし、その他の ためにも長期に行う場合もあるし、それほど長期ではないけれども、その方の診療のた めに一時的に持っている、さらにそれをより専門的な施設に送ってお願いし、その菌の 同定をしていただくために持っているというようにいろいろな場合があるわけです。で すから、ある程度日数なり何なりを明確にしていただかないと大変混乱するだろうと思 います。 ○倉田分科会長 そこのところは、後日説明をお願いいたします。 ○新課長補佐 Cの届出のあり方の中で、保管というものについての捉え方を整理させ ていただきます。 ○倉田分科会長 次のSARSの類型変更についてご意見はございますか。 ○岡部委員 初めて拝見したので唐突な感じはしているのですけれども、途中からSA RSは感染力はそんなに強くないということで、1類相当であるかないかというのは相 当議論があったと思います。そのときの議論からいえば、2類相当ということはいいと 思うのです。各国ではまだファーストクラス、あるいはAクラスにしている所が多い中 で、2類にするというのは、それ相応の話がないといけないと思うのです。  いくつか質問があるのですけれども、SARS発生当時に、特定医療機関や一種指定 医療機関が非常に不足しているということが、この数年間で全部解決されているのかど うか。それから2類にした場合、入院規定が、SARSの疑似例は入院の対象になるの かどうか。無症状病原体保有者はならないと思うのです。その辺の整理も含めて説明し ていただかないと、2類だけでいいかということではわからないです。 ○前田課長補佐 その辺りについては、参考資料1が関係するところです。最初に課長 が定義・類型についてご説明した資料です。医療機関数については、参考資料1の7頁 目です。3月末現在で特定感染症指定医療機関が3医療機関で8床、第一種感染症指定 医療機関が23医療機関で43床です。第二種感染症指定医療機関が305医療機関で1,632床 という状況です。  現在、SARSの1類感染症としての届出については同じ資料の2頁目です。感染症 法における感染症の分類の上から3段目です。岡部委員がおっしゃったとおり、患者と 疑似症については、法に基づく入院の要否が○になっておりますが、無症状病原体保有 者は×ということです。 ○岡部委員 2類にした場合、疑似症患者はどちらになるのですか。これは政令か省令 かの事項だったと思います。 ○前田課長補佐 現行の2類も、疑似症患者を適用するものと適用しないものに分かれ ています。例えば、コレラ、赤痢、腸チフス・パラチフスは疑似症患者も入院ができる 患者とみなして適用する。そして、急性灰白髄炎とジフテリアについては、疑似症患者 は適用しないことになります。その辺りは、2類に位置づけたときに疑似症を適用する かどうかというのは、このときと同じように議論することになります。現行は、1類と して疑似症も適用しているということです。 ○岡部委員 赤痢等が3類感染症に行くということも前回のとき、常に腸管感染症とし てある程度まとめておいたほうがいいのではないかという議論があったので、基本的に 3類にまとめるほうがリーズナブルだろうと思うのです。ただ、いまの疑似症などのと ころの整理で、いままで疑似症も入院していたものが3類だと就業制限だけになります から、その辺の整理をどのようにお考えになっているのかということ。  もう1つは要望なのですけれども、おそらく渡邊委員も同じご意見だと思います。2 類になって菌の収集というか、菌の解析が難しくなる。それが3類になると就業制限だ けですから、ますます菌の収集が、それでその解析による公衆衛生的に利用することに ついて、現在以上に担保することは絶対に必要だろうと思います。 ○倉田分科会長 その辺の危惧についてはいかがでしょうか。 ○新課長補佐 後段のご意見につきましては、法律上何か対応できるのかどうかも含め 検討させていただきます。それから、今回の基本的な考え方は、感染症の重篤性や感染 力の度合に比例し、できる限り必要最小限で均衡の取れた人権制約を基本的な考え方に しておりますので、先ほどの1類、2類の区分でいちばん大きなものは建物封鎖や通行 制限が必要なのかどうか、隔離の入院措置が必要かどうか、この辺りも勘案した上で、 当局としてはいまのエビデンスであればSARSが2類で、腸管関係のものは3類とい うのが妥当ではないか。ただ、細かな対応の問題点については、併せて検討させていた だき、いまの法律にこだわることではなく、柔軟に何か規定が整理できるのであれば対 処したいと考えております。 ○倉田分科会長 渡邊委員はいかがですか。 ○渡邊委員 菌の収集等に関しては、私も工藤委員も先ほど述べましたが、その辺を考 慮していただければよろしいと思います。何がいちばん重要なのか、確かにテロでやる のはいいのだけれども、そうではなくて日常的に起こる公衆衛生対策をちゃんとするこ とが重要だと思います。その辺のメリット、デメリットを十分考えて規定を入れていた だければと思います。 ○倉田分科会長 これは、渡邊委員も非常に努力されて、いまはアジアも含めて、EU、 日本も含めてそういう検査をしている所のネットワークをつくって、いろいろなものが すぐわかるようにして、データベースを作ってというときに、菌はないけれども実際に 感染が起きているのだという話になってしまうと、なかなか感染経路の追及や問題の大 事なところが全部吹っ飛んでしまうので、そこのところをきちんとできるようにしてお いてもらわないと、感染症対策は逆にどんどん後退していく、法律は非常に整備された けど、ということになりかねないので配慮していただきたいということは私からもお願 いしておきます。 ○岡部委員 サーベイランスの立場からいえば、患者の制限はなるべく少なくすべきで あるという一方で、輸入感染症のような場合にはトレーシングをちゃんとやっておかな いと拡大防止には全く役に立たないということがあるので、そのことも含めて3類感染 症であるということをはっきりしておいていただきたいと思います。 ○深山委員 実際に2類の患者を扱っている施設からの意見です。サーベイランスは岡 部委員がおっしゃるとおりだと思うのですが、実際に患者を扱う立場の者としては、腸 管感染症は3類でいいのではないかと考えています。  1つは、外国帰りでもキャンピロバクターだとか、ほかの腸管感染症と、赤痢、コレ ラ等があまり臨床的に違わない、重症度としても違わないこと。違わないにもかかわら ず、1つは勧告入院であって、片方は保険入院であるというのは、見ていてこちら側と しても不公平を感じることがある、というのが1点目です。  治療上特に困ることも少ないですし、1回治療を始めると排菌はなくなり、他への感 染も非常に感染性が強いという状況でもなくなるということが2点目です。  特にチフスは3日以内で下熱することはなくて、およそ100%近くで感染症審査協議 会の開催が必要になってきます。これは人権もへったくれもなくて、ただ法に縛られて いるための開催であることがほとんどなのです。実際問題として煩わしいだけで、誰も その入院延長に関して反対することもないわけです。でも、医師会からとか弁護士が集 まって必ず協議会を開かなければいけないわけです。煩雑さがどうしてもあって、それ はおかしいのではないかと思っています。  もう1つ大きなこととして、そこの施設でなければ対応できないような風潮があって、 患者が実際には来ないことがたくさんあります。保健所からいま送りますという電話を 受けても半分は来ないです。近い保健所からの患者は来ます。うちは板橋区ですが、中 野区からの患者は半分以上来ません。すごく遠いのです。そのようなことから、なにも 指定医療機関でなければ治療できない、ということは違うのではないかと思っています。 現在の腸管感染症の2類から3類に関しての移行は賛成させていただきます。  SARSに関しては疑似症例しか経験がありません。日本の医師は全部そうだと思う のですけれども、疑似症例しか経験していないのであまり大きなことは言えないのです が、いまの第二種指定医療機関で対応は可能と考えています。 ○雪下委員 記憶が不確かなのですが、二種指定医療機関の場合は、陰圧式の隔離病棟 は義務づけられておりませんでしたか。 ○倉田分科会長 義務づけられていないです。 ○雪下委員 本日の資料の中に、空気感染のレポートが1つ入っているのですが、SA RSの場合はそれがないとしてよろしいのでしょうか。 ○倉田分科会長 これを実際に担当されたブラッセルの先生を医学会が日本に呼んで、 その後公式な話は出なかったのですが、この疑問について台湾の先生と一緒に全部細か な話を聞き出したのですが、ちょっと違うのです。なぜかというと、1つはここに出て いるアモイガーデンの例は、トイレが詰まってそれがどんどん上に吹き出した。  もう1つは排水管に亀裂が入って、それがミストで飛んだという話なのです。それが エアロゾルとされているのです。ミストが飛ぶというのは相当なことで、まさに水が水 滴になって飛んでくる。高い建物ですから風が非常に強い。それに類した表現はエアー ボーンとなっているのですが、確かにエアーボーンなしとは言わないにしても、普通は インフルエンザと違って、インフルエンザのように細胞がこっちみたいに壊れないで、 肺から出てくる場合は大きい塊で出てきます。  それから、いまのミストというのは便のほうの話ですから、その排水管が壊れてミス トが飛んだという話と、もう1つはその排水管が詰まってしまって、上のトイレでどん どん吹き出したという話です。その2つのことなのです。ですから、非常に身近な所で エアロゾルが絶対にないかというと、そういうことにはならないでしょうけれども、そ れは通常のマスクなどで防げる話です。  実際にレスピレーターでそこから吸入したり、という場合はきちんとした医療関係者 がちゃんとしたマスクをする、あるいはプロテクションすることで防げる。それでは、 2m離れていた所に立っていた人が感染したかというとそれは全然ない。それは台湾の 教授も、香港大学の教授もはっきりおっしゃっていました。そういう意味では、通常の インフルエンザのエアロゾルという発想とはちょっと違うかもしれません。私はこのよ うに理解しているのですが、岩本委員はいかがですか。 ○岩本委員 エアロゾルというのは、日本でいっている空気感染ととらないほうがいい ようです。 ○倉田分科会長 そのとおりです。エアロゾルの定義というのは、2ミクロンから8ミ クロンレベルのもので、普通は目には見えないです。赤血球よりちょっと小さいサイズ のものからそれ以下のものです。それが空気中に浮遊した場合には目に見えないです。 ドロップレットというのはもう少し大きくて、色を付けて実験をやったのは可視的にち ゃんと見えます。それは、通常に吹き出した場合には1m以内に落ちてしまいます。そ ういうのも飛沫といっています。ただし、それも目に見えない状態でパッと飛んだとき にはエアロゾルと言う人もいるので、そこのところはエアロゾルの定義をきちんとした 上で言わないと、岩本委員が言われたように、空気というときの言い方がドロップレッ トまでみんな含んでしまっている、ということではないかと推測しています。 ○高橋委員 話は別なのですが、資料12に日弁連の意見書を紹介していただいています が、これはどういう趣旨でここに出てきているのかがよくわからないのです。私も基本 問題小委員会に入っていたのですが、日弁連から来た委員も含めて、どのように手続を 仕組むかも含めて議論をして案を作り、その後に日弁連の案が出てきました。  例えば53頁を見ると、感染症予防法の手続が非常に不十分であるという指摘をいただ いています。第17条の準用というところを全然書いていない。審査請求については、当 然これは行服法で教示義務があるわけです。さらに強制入院されるかどうかについては、 当然制度の仕組みとしてそういう話が前提としてあって、こういう制度になっているの ですから、こういうものを全部含めて法律を作ったはずなので、これがここに出てきて いる趣旨が私にはよくわからないので教えてください。 ○新課長補佐 今回、SARSの関係等で人権制限の必要で、強制措置の対象にするか 否かについて、他の団体から出されている意見として、当時はこういうものがあったと いうことです。それを踏まえて当時最終的に対応しているのですけれども、そういうも のを関係資料ということで添付させていただきました。 ○吉澤委員 前に、SARSがまだ終息していないときに質問したのですが、終息して からわかったかどうかなのです。ここに、ワクチンの開発の研究その他といっぱいあり ます。実際に感染防御抗体というのは本当にできるのでしょうか。バイオテロのことな どいろいろなことを考えたときに、もし感染防御抗体が確かにできるということであれ ば、感染して快復した人の血清からガンマグロブリンを確保しておくことも1つの対応 策で、ワクチンだと時間がかかります。医療者側の防御ということも考えて、その後そ の辺についてはわかったのでしょうか。 ○山田委員 私も全然素人なのですが、38頁にヒト型のSARS中和抗体の開発研究と いうのがあるみたいなので、そういう試みはされているのではないでしょうか。中和抗 体を、ヒトに緊急的に入れるということで、ヒト型中和抗体、38頁から考えれば。 ○吉澤委員 まだ確定はしていないわけですね。中国は血清を確保したということを風 の便りで聞きました。 ○山田委員 詳しくはわかりません。 ○岡部委員 香港は、実際に快復患者血清を使い、それを投与したというのがあります。 血液製剤というか、血液そのままに近いような投与に関するバイオセーフティの問題も あるでしょう。その後は患者がいないので、実際にはわからないです。理論的には先生 がおっしゃるように、中和抗体に賛成しておいて、IgG抗体をたくさん投与すればで きるだろうというのはありますけれども、実証はありません。 ○倉田分科会長 SARSの問題の場合は、肺胞上皮細胞ですから、インフルエンザの 上のほうのチリアの付いている細胞のところでの闘いと違いますから、それは本当に効 く抗体があれば多少効くかもしれないという推測はできます。いまは、動物実験でもそ んなに良いのは出ていませんから、今後に期待というところでしょうか。  消化器系の疾患については皆さんのご意見がありましたように、提案のとおりでよろ しいかと。そういう意見も含んでいただいた上で、また次にということになるかと思い ます。それでは、ここで10分ほど休憩いたします。 (休憩) ○倉田分科会長 それでは、事務局より結核予防法の廃止について、ご説明をお願いし ます。 ○前田課長補佐 資料15、72頁からの結核予防法についてです。資料15から18までです。 現行の結核予防法と感染症法及び予防接種との関係図についてです。 ○新課長補佐 午前中から何度か話題として出ておりますが、結核予防法を感染症法の ほうに統合する案を示しているわけです。まず、それぞれの規定について、感染症法と いうか感染症対策の一般法として、最新の法律として整備されているわけですが、資料 15をご覧いただいて、それぞれ感染症法で基本的な対応を図ることが、法律事項として は可能であると考えています。  定期健康診断、登録、医師の指示ならびに通院医療については、感染症法の本則には 規定がありません。したがって、その政策的必要性は前回の改正においても前提として おりますので、今回は法律の技術上の措置ですが、本則の改正ではなく、結核に特有の 必要な法律上の規定で、経過措置ないしは特例措置ということで、従前に準じた同等の 対策を講ずるという整理をさせていただきたい。  また予防接種に関しては、BCGワクチンの直接接種が導入されていますが、ワクチ ンの接種の一般法である予防接種法で基本的には対応が行われるという関係になると考 えております。  資料16については、ただいま申し上げたそれぞれの法律体系がありますが、結核対策 の実績ならびに法制上の課題、論点ということで、前回の改正の際にも議論は当然され ていたわけですが、今回テロ対策を契機として、結核の取扱いについて感染症法の体系 の中で対処いたしたいと考えております。その際に併せて議論すべき本題として、法制 上、法律上の課題を掲げています。  結核対策の実績については、ご案内のとおりです。「日本の保健医療の経験」という 参考文献から要約をしていますが、結核予防法の施行によって、関係者のご尽力の下で、 数次にわたる法改正を経て、結核の罹患率の減少などの対策は、非常に大きな成果を上 げてきたところです。この短い文章では語り尽くせないとは思いますが、ご高覧いただ きまして、時間の関係で次にまいりたいと思います。  結核対策の法律上の課題として、以前審議会でも、そういうご意見がありましたが、 そもそも感染症法という一般法の体系を作った理由の1つに、個別の病名による法律、 あるいはその法律における人権制約について、差別や偏見の温床となるという指摘が、 人権上の問題として指摘されていたところです。  感染症法への統合を見送り、結核予防法を厚生労働省として残してきましたが、これ によって近時、問題点を私どもとしては把握しております。個々の課題については、結 核部会をはじめ関係者の皆様から、必要性については従来からご指摘をいただいたもの も大半ですが、現行法を前提とした場合には、なかなか対処ができない。また、感染症 法と同じような規定を、結核予防法で全部網羅的に規定することも、私どもの法制的な 審査の中ではできないということで、結核予防法を独自の法律に残しつつも、法律上の 対応に非常に難儀をしているものもあります。これに尽きないかとは思いますが、従前 から近時の結核を取り巻く状況に対応すべきさまざまな内容のうち、現行法令では対応 が難しいもの、あるいは結核予防法の改正では対応が難しかったものについて列挙させ ていただいております。  まず、積極的疫学調査については、感染症法の規定に相当するものがないために、保 健所等における調査について、非常に制約が生じているというご指摘があったかと思い ます。  感染症法は、基本的には前回の改正で国の責任の明確化をして、法定受託事務を中心 として、あるいは国の指示ということで、国の責任の明確化を個別具体的な規定におい てもしており、広域緊急対応あるいは個人情報の保護の制約で国が情報を把握しにくい、 あるいは自治体同士の連携等にも若干の支障もあり、こういうものについても国の責任 を果たしつつ、対応が感染症法のような形でできていないのではないかということです。  最近、問題になって現場に非常にご迷惑をおかけしているかと思いますが、家庭内感 染を防止するために、「同居者に結核を伝染させるおそれ」という要件の下に入所命令 の発動が可能という法律上の規定になっており、近時の社会状況の下で的確な公衆衛生 上の措置が困難であるという点があります。  感染症法でいう入院の勧告、どうしても従ってもらえない場合の即時強制の措置とい う最終的な手段の担保などの規定がなく、強制的な措置も限定的ですが、講ずる場合に は、一般法である感染症法で行うべきということは政府としても整理しており、これま での専門家のご意見等を踏まえると、一定の要件、ケースについては勧告・強制措置も 担保として必要ではないかということです。  同居者に伝染させるおそれではなく、感染症法のように感染の蔓延防止の必要性を要 件とした入院勧告も必要で然るべきではないかという考え方です。  緊急入院措置あるいは適正手続の保証が整備されておらず、逆に適正手続をとってい るために遅くなる、あるいは緊急入院の措置によって公費負担医療ができないなどの課 題があります。  動物由来感染症と関係しますが、結核にかかったサル等に対する輸入制限措置、ある いは対物措置について、動物由来感染症の面でも対策が講じられないという課題です。 これは先ほど来申し上げていることですが、多剤耐性菌、あるいは結核菌についても、 他人を殺傷する目的で使用される、あるいは盗難等が生じる一定の危険性があるという ことですが、対象外にすることについては問題ではないかということです。  通知行政の問題ですが、厚生労働省の通知の一部に、本来法律の整備によって対応す べき人権に対する行政処分等について、その範囲を逸脱した通知によって行われており、 これについても問題があることが判明して、感染症法の一般則によって、必要な場合に は的確な措置をとり、必要な場合には適正手続、かつ緊急の措置がとれるという仕組み が妥当ではないかと考えております。  4番目も同様ですが、公衆衛生上の措置と国民の権利保護に資する一般法、例えば行 政手続法などについての適用の調整は、結核予防法のほうが古い法律であるため対応が できていないので、形式的に行政手続を踏むことによって、緊急措置ができないなどの 問題点も出ております。ですから、最も人権との調和が図られている感染症法の適用を すべきではないかという論点です。  資料17については、平成14年の感染症分科会のご議論の結果ということで、76頁に現 状を踏まえると将来的な課題であり、時期尚早というご意見をいただいておりましたが、 厚生労働省としても、そういうものも参考にして結核予防法を存置したものです。  それから検討小委員会も設けております。資料18にありますように、当時の当局の担 当課長からの説明では、結核予防法を廃止・統合というか、こういうものは、やや消極 的なトーンでご説明をしています。一方、弁護士等の意見においては、感染症法の立法 趣旨である包括的な法律による人権の保護、患者の医療という趣旨のご意見がありまし たので、ご参考までに添付しました。基本的な説明については以上です。 ○倉田分科会長 それでは、ただいまの結核予防法の廃止に関するご説明について、ご 質問、疑義、ご意見をいただければと思います。 ○高橋委員 私は資料17の検討小委員会から、10年ぐらいお付き合いをしてきて、その 間2年間、留学中は外れていました。最初に私の立場を申し上げておきますと、法令上 の整合性があれば、当然のことながら、感染症予防法という基本法規に結核予防法が統 合するというのはあり得る話だと考えています。その上でちょっと気になるのは、資料 16でいろいろ書いていただいているのですが、議論してきたときに、結核と感染症予防 で、例えば、1類、2類とかスキームで入れていますが、違う面があるのではないかと いうことは、かなりいろいろ議論してきた経緯があるのではないかと思います。例えば、 入院命令についても、72時間という縛りで個々に括っていく、チェックをかけていく入 院と、結核という慢性のものの入院とどのように仕分けるのか。さらに言うと、法定受 託事務の仕切りも、一般予防の関係について、たぶん感染症予防法は両方とも法定受託 事務ですが、結核予防法の予防のほうは自治事務なので、蔓延防止だけ法定受託事務と いう仕切りになっていたはずで、統合するときのいろいろな法律上の問題点は、もっと いろいろあったはずなのです。それがここに出てきていないのが、私は疑問だというの が第1点です。次回にその辺の議論をもう一回紹介していただきたいと思います。  第2点は、資料17の話で、日弁連の資料をなぜお出しになったのかと聞いたこととも 関連するのですが、差別を助長するかどうかについては、かなり議論しました。結核予 防法という体系について、それが本当に差別を助長するかどうかについては、議論の一 致がなかったというか、逆にいうと、少数で、むしろ差別の助長という点で言うと、強 制入院をすることすら、差別の助長だというトーンだったのです。これは取られなかっ たわけです。その辺について、一般的に結核予防法という法律が、差別を助長するのか どうかについては、もう少し検証していただいたほうがいいのではないかと思います。 私は反対ではないのですが、もう少し違う論拠も踏まえて、バランスのとれた議論をこ れから展開していただきたいというのが、私のお願いです。 ○倉田分科会長 事務局、いかがでしょうか。 ○新課長補佐 過去の論点については、再度精査をいたしまして、現在の私どもの考え 方を次回にご説明すべきかとは思います。  強制の問題については、すべての方がそうではないのですが、先ほど来出ている多剤 耐性結核は、専門家の先生にご検討いただいている中で、ご提案いただくようないろい ろな提案の中身が、感染症法でやっているような手続保障プラス場合によっては公権力 という規定が必要ではないか、実現するのであれば必要だというものもあります。今日 は詳細な紹介をしておりませんので、ご指摘のとおりまだ明確にならないかもしれませ んが、そういう認識を私どもは持っており、特に入院に関して感染症法で整理をするの がよいのではないかということで出しました。 ○高橋委員 入院命令を強制措置として入れるべきだというのは、前の部会でも一致し ていたはずです。どのように入れるかについて、感染症予防法のスキームとは合わない 点があるので、それについてどのように考えるのかというところで議論が止まっていた はずだと思います。ですから、感染症予防法と一緒に強制入院が必要だという理由では 統合する理由にはならないと思います。 ○倉田分科会長 ほかにいかがでしょうか。 ○岡部委員 前回辺りから入っていますので、私は公衆衛生審議会のころの状況は存じ 上げないのですが。結核予防法と感染症法を統合するかどうかという議論は、これまで もなされていますし、感染症という観点では結核も感染症ですから、できるだけまとめ ておいたほうが実際はいいだろうと思います。しかし、当時からずっと議論されていた のは、結核というのは我が国においても、まだ非常に重要な病気で数も多い、これを感 染症法と一体化するのは難しいということがきちんとした理由になっていて、その後、 結核が果たして改善されているかどうか。状況はそんなに変わっていないと思います。  もう1つは、そのためということもあるでしょうし、最近結核予防法も改正され、改 正をしたということは、それに対するエバリュエーシヨンをしておかないと同じ轍を踏 む可能性がある。したがって、まだエバリュエーションもしていないうちに法の改正を 持ち出すのは早いのではないかと思います。  それから、感染症予防法のほうは、ほとんどが急性感染症に対する対策で、それだか らこそバイオテロというのは感染症の1つであるとみなして感染症法の中の体系でやる のでしょうが、結核は慢性感染症で、急性の時期はあるが、あとのほうをどうするかと いうのは法の中で決まっているので、それを一緒にするには相当な工夫が要るのではな いかと思います。現実に感染症法の中で扱いにしばしば困るのがHIV、AIDS、C JD、B型・C型肝炎、エキノコックスです。いずれも慢性感染症についてのサーベイ ランス、入院、その他が非常に困っている中で、結核がさらに入るのは非常に扱いにく いだろうという点。  5番目は、今日の議題の中に入っているバイオテロの関連のある疾患をここに入れる から結核予防法を感染症法に入れるのだ、ということを第一の理由に持ってきたのがど うしても納得がいかないのです。 ○阿彦委員 いまのご意見と全く同じです。資料17に載っている包括的見直しの中でも、 最後に「時期尚早だ」と書いてあるところしか出ていませんが、本文の中には、統合し ない理由として、我が国最大の感染症であるということ、将来的結核罹患者数や死亡者 数が減少した場合には他の感染症対策とともに一貫した対策を行うことも必要だという 意味で、患者数が減少した場合にはということを条件に感染症対策との一貫した対策を 行うことが必要だ、そのため我が国がWHOのいう中蔓延国から脱することが必要なの だということを明記しているわけで、ここを考えると、まだそういう状況ではないので す。  この提言から3年半の間に、患者数や蔓延度が大きく改善したという状況にはありま せん。今回整理していただいた資料15と同じようなものを、我々も独自に整理を内々で していますが、今回資料15と資料16を拝見しますと、統合は簡単にできます。統合しな い場合に、結核予防法を単独であるがゆえ、法制上の課題はこんなにあるという資料が 出ていますが、感染症法と統合することによって、こんな問題が生じますという情報が ここにはないのです。今日はたくさんあるので申し上げませんが、たくさんあるのです。 ○倉田分科会長 是非言っておいたほうがいいと思います。 ○阿彦委員 私が言いたいことはたくさんあるが、個人の意見というよりは結核部会を 開いていただくなり、結核患者たちの団体の意見を聞いていただくなりしていただきた い。結核病学会の理事長すら、廃止の問題は寝耳に水で、理事会でも日程的に議論でき ない状況だと思いますので、そういう面ではワーキングなり結核部会なりで、統合した 場合はこういう問題があるので、ここは抜けないようにということの整理は、きちんと すべきだと思います。 ○倉田分科会長 事務局からの意見は待っていただき、坂谷委員、お願いいたします。 ○坂谷委員 国際的に見たら、結核に関する単一の法律などは珍しいのだと思いますが、 我が国はこれを作って、結核対策を上手にやってきたと思います。しかし、事務局から 言われたように、いろいろな問題点が出ているのは確かです。  しかし、今日のタイムスケジュールにあって、岡部委員がご発言なさいましたように、 前半のほうがバイオテロの話ですから、それに引っ掛けてこういう題が付いているのだ ろうと好意的に考えているのですが、結核をテロ対策の対象とすることに伴う結核予防 法の廃止は、あまりにも無理があると思います。  前半で阿彦委員から発言がありましたように、結核という病気ではなく、結核菌を対 象にすればいいのではなかろうか。そうすれば結核予防法とは関係なく議論が進むので はなかろうかという意見も出てくるのはそこにあるわけです。ですから、高橋委員がお っしゃるように、最終的には感染症法と統合するのはやぶさかではないのですが、それ にはバイオテロ対策以外にも理由がたくさんあるはずです。統合によって、さらに結核 予防法の欠点を補うべく日本の結核対策を良い方向へ進めるためにやるのだというコン セプトで、例えば事務局の責任ある課長辺りから、みんながなるほどという説明をいた だく必要があるのではなかろうかと思います。  72頁に法対比をしてあって、このようにうまく対比ができるということになっていま すが、※が出ているように、食い違いの出てくるところがあります。高橋委員が言われ たように、入院命令、入所命令を出すにしても、例えば、長野県のように、症例の少な い所では症例ごとに会を開いて対応することができますが、大阪市のように、毎週審査 会を開いて100例ずつ扱っているという所では、発生ごとに審議会を開くなどというこ とはできません。そういうこともどうするかということで、まだまだ問題点の徹底的な リストアップが、まだ不十分だと思います。それをきちんとやることです。  それから、いずれ統合するにしても、経過措置をきちんととっていただき、その間に 問題点の洗い出しと、それを1つずつ潰していく。どのように解決していくかの作業を しないと、最終的なところまでなかなか持っていけないのではなかろうかと思います。 少し早いような気もしますし、公衆衛生審議会で書いていますように、事務局というか、 本省でも意見があちらへ行ったり、こちらへ行ったりという雰囲気も見られるのは事実 だろうと思います。 ○工藤委員 先に結論を申し上げますと、改正結核予防法は実施に移されたばかりなの です。ここに書かれているようないくつかの問題点が既に明らかになっていることは事 実です。それにもかかわらず、テロ対策ということだけで、そこにリンクして廃止して しまうというのは、いかにも乱暴で、今までの結核予防法の役割等々を考えると、少し 無理があるのではないかということは、皆さんがおっしゃったことと同意見です。  特に私が感じているのは、73頁の2にいくつか出されていますが、例えば、同居者に うつす危険性があるからだけで、そのことの要件を満たさないと入所命令はできないと いうのは確かに大問題で、非常に苦労しているわけです。高齢者結核では、息子夫婦、 あるいは孫がいる幸せなご老人は、ちゃんと入院してくださるわけです。そうではない 方が大変問題なのです。  中には、ガフキー7号を出しながら、独身の歯医者が診療を続けている。これは規制 できないのです。こういう問題は発足したばかりの結核予防法について、具体的に現実 がどうなっているかという現実との乖離の問題を検討して、一つひとつ修正すればいい と思っていますので、まずそういうことをやって、さらに包括的に結核予防法と感染症 法とを合体させるというのは別な案件なのです。  もう1つは、テロ対策にも対応できるような結核予防法の改正が必要で、一挙に廃止 というのは、あまりに乱暴ではないだろうかというのが私の意見です。 ○高松委員 私は子供の結核を診ている立場からですが、結核予防法というのは予防、 診断、治療から厚生労働省対策でモデルと言われてきた法律ですので、その法律をいま 一挙に廃止するということが結核対策の後退をもたらしてしまうだろう。それが単なる テロ対策でということでは納得できないだろう。科学的にこの部会としても何がメリッ トで、何がデメリットかというきちんとした形で検証して進めるべきではないかと思い ます。一度後退すれば、幼い子供たちがその犠牲になることは目に見えていますから、 是非科学的検証をしてという点で、もう少し議論を尽くしていただきたいと思っていま す。 ○倉田分科会長 いろいろご意見が出ましたので、全部まとめてお願いします。 ○結核感染症課長 総論的にはまとめてお話させていただきますが、個別の話がありま すので新からお話します。 ○新課長補佐 法改正の契機として生物テロ対策を持ち出していますが、結核の対策の 充実・向上のために、感染症法のほうがベターではないかと考えています。ただ、どの ような問題点があって、どういうメリットとデメリットがあるかということについてご 指摘をいただいた問題点に対して、どう考えるということを次回説明したいと思います。  慢性疾患については、既に感染症法の中でも対象疾病に入れられており、それの扱い に困っている点があるということについては課題であろうと思いますので、慢性感染症 に対応できるような規定、先ほどの72時間規定とか、評議委員会の開催の頻度の問題な どについて、より慢性疾患や疾病の特質に応じた特例というか個別の規定を、対応した 上で設けることは法制上可能です。前回は改正しない前提でご説明をしたかもしれませ んが、より良い対応ができるように、きめ細かに対応できる急性・慢性感染症の一般法 としてやるほうが望ましいと考えておりますが、個別の論点については、今日整理をし てお示しておりませんので、次回以降に示したいと考えております。  後退などを行うよりは、過去にさまざまな課題・論点として挙げていただいて、報告 書もいただいておりますが、現行法で対応できない部分が多いだろうということで、こ の改正契機を捉えて充実させていただきたいという趣旨でございます。法案というのは、 常に好きな時に出せるわけではありませんので、改正契機として捉えさせていただいた ということはご理解いただきたいと思います。 ○結核感染症課長 基本的なことは新のほうから申し上げましたので、重複するかもし れませんが、お許しをいただきたいと思います。結核予防法単独立法でやっていくメリ ットの一つひとつは申しませんが、私はそれ自体を否定しているわけではありません。 冒頭の「論点整理のメモ」の説明で、表現はテロの関係でそれに伴ってとなっています が、あくまでも議論のきっかけですと申し上げましたが、本質的にはいろいろな問題が あると認識しています。  非常に直接的というか、現在オン・ゴーイングに行われており、都道府県の方や保健 所の皆さんはよくご存じだと思いますが、結核予防法で、例えば同居者の要件があって、 従来は同居者をかなり拡大解釈するような通知で隙間を埋めてきたわけですが、いろい ろな世の中の流れから見ると、適切ではないのではないかということで通知の見直しを したのが4月です。  その結果、同居者がいない独居のご老人や、路上生活者本人が入院したくないと言っ たときに、強制的な措置ができないという大きな問題があって、それは毎日のように報 道されているとおりです。  これについては公衆衛生上の課題として、例えば、路上生活をしている多剤耐性の方 が入院を拒否しているようなケースはどうするか。これはやはり強制的な罰則も伴う形 での、本人の人権は制限するが、従来の予防法では入所命令をかけるだけで、本人がノ ーと言ったら、それっきりという形ではなく、もう少しめり張りの利いたきちんとした 対応が必要なのではないか、というご意見がたくさんあることは、ここでご紹介させて いただきたいと思います。  そのほかにもいろいろあって、それを解決する手法として、言いにくい話ですが、元 の通知を復活しろというご意見もあって、私どものほうにご意見が多数寄せられていま す。しかし、この時代にこういう形で人権を制限するような通知を出すという選択肢は、 私としては採り得ないと思っています。  逆に現行法でいろいろな支障があるのなら、私は立法府の人間ではありませんので、 現行法を改正するとは言えませんが、政府として、きちんと改正をするという方向で提 案をしていく必要があるのではないかと認識しています。それについては、強制措置は 必要ないのだというご意見もあるかもしれませんが、今日お集まりの皆様方と私とが申 し上げていることは、概ね一致するのではないかと私自身は認識をしています。それを どのように現実に実現するかという手法として、例えば結核予防法のその部分を改正す る選択肢と、感染症法の中にそういう規定が既にあるので、その中で結核についても対 応していったらどうかという2つの選択肢があると思います。その2つの選択肢はメリ ット、デメリットで、大いに議論があることだと思いますが、基本的には一般法である 感染症法という基本法があって、全く一致しないが、かなり同じような条文になってい くという方向であれば、患者数が多いとか少ないとかいろいろあると思いますが、ある 時点で基本法の中で対応していくという決断をする時期が必要ではないかと思っていま す。  もちろん全く同じ条文ではありませんので、先ほど資料でご説明したような感染症法 に規定されていないような通院公費負担制度や、結核に特有な慢性疾患ならではのルー ルがあるわけです。それについては、私たちは基本的に現行の結核対策でうまくいって いる部分をいじろうとは思っていません。今うまくいっている部分については、何とか うまい具合に感染症のほうに取り込んでいって、いまの結核予防法では対応がなかなか 難しい部分については、ある意味では充実をするということで、我が国の結核対策が、 より充実する、患者数が減る、結核を患う方が減るような方向で、どのようにしたら充 実していくかということがまずあった上での法律の整備だったり、法律によらないまだ 充実する部分があると思いますが、そういう対応はしていく時期ではないかと思います。 テロ対策がきっかけで、それがすべての理由ではないというのは、まさに皆さんがおっ しゃっているとおりですが、法制度をどう作っていくかという議論でもあるわけです。  私自身はいろいろな問題を解決するための1つの手法として、現行法は改正する必要 があるのではないかというところまでは議論の余地はあまりないと思いますので、法律 をどういじっていくかという技術的な部分については、この際、基本法である感染症法 に一本化していくことが妥当ではないかと思って、今日このような資料も準備し、委員 の皆さん方に議論していただきたいと思っています。  その際に、どうしても注意しなければいけないのは、あまり単純に乱暴にやるのは、 決して本意ではありませんので、もし感染症法の中に統合した場合に、こんな問題があ る、こんなことが出てくるというご懸念があれば、そういう問題点を十分洗い出してい ただいて、それについて、どう解決していくかをセットでやっていく必要があると基本 的には考えています。 ○倉田分科会長 先ほど結核予防部会を開いて、みんなの意見を聞く気はないかという 意見があったと思いますが、それに関しては、どのようにお考えですか。 ○結核感染症課長 私としては、結核の専門家だけで議論していただくのではなく、感 染症と全体的な議論ですので、この分科会全員で議論していただいたほうがいいのでは ないかと考えています。  ただ、仮に結核予防法を感染症法に統合した場合に、どういう問題が出てくるかとい う問題については、例えば、メンバーのどなたかに次回までに抽出していただいて、あ るいは結核の専門家の皆さんの意見を集約して、どなたかにこの場でご披露いただくよ うにしたほうが、議論の進め方としてはいいのではないかと思いますが、いかがでしょ うか。 ○倉田分科会長 課長から提案がありましたが、いかがですか。 ○雪下委員 私は結核の専門家でもありませんので、申し上げたいことがあります。私 は6年間感染症分科会、あるいは感染症部会、結核部会に1日も休まず出席しておりま す。先ほどからそのころの委員会の参考資料も出ておりますが、感染症法と一緒にでき ない最大の理由は、阿彦委員も言われ、報告書にもありますように、当時はまだ結核の 新規感染が約3万人もいて、死亡も3,000人と。しかし、そのときの感染症法での死亡 がトータルにしても3,000人にはならない。1つの疾患で3,000人も亡くなるような法律 と一緒にするのはおかしいではないか。もう少し時期を見てからでなければでないとい うのが最大の理由だったように思います。  しかし、その中で、いわゆる排菌者でどうしても拘束できないで全国を飛び回ってい る患者が出ており、現場を騒がせたことから、何とか感染症法の中での72時間規定や、 そこを利用して結核感染症の中に入れてもらえないかということを再三申し上げていた わけです。結核予防法というのは、簡単にいえば、人権問題があって、感染症法のよう に72時間も拘束することはできない。そこで他人の人権はどうなるのかという問題もお 話したつもりでいます。でも、それはそのままになってしまいました。  いま先生方が言われるように、細菌テロの問題が起こってから、耐性菌問題が細菌テ ロと関係があるから結核予防法を廃止するということや、しかもこれがマスコミによっ て突然公にされること自体、私どもに一言も相談された覚えもありませんし、いま申し 上げた分科会、あるいは2つの部会に、廃止についての考え方があることは1度も出た ことがありません。そういうところにおかしい点があるのではないかと私も思います。  少なくとも専門家の先生が知らない所で、結核予防法が廃止されるというのはどこで 決まったかわかりません。それはおかしなことで、もう一回元に返して廃止についての 議論をすべきではないかと思います。それが突如テロの問題で出てきたということに、 感染症や結核予防法を超えた何らかの力が加わっているとしか私は思えないので、もう 一回結核予防法の改正を討議すべきだと思います。 ○倉田分科会長 現場からの非常に大事な意見が出ましたが、ほかにございますか。 ○白井委員 結核予防法と感染症法を一緒にすることで現場が困る点を想定して1点だ け申しますと、現場というか自治体の人の配分は、拠り所である法律に基づいて決めま すので、一本化されると、たぶん担当者は減っていきます。新しい法律ができ、例えば 全然関係ありませんが、介護保険の人員としての保健師がそちらに行ったらいいではな いかという現場があるわけですが、結核対策を充実させようという中で、一本化させら れると、既に自治体によっては、結核の発生数がそれほど多くない所では協働して担当 者がやっていくと思います。私は神戸ですが、神戸、大阪については、グループという か係をきちんと持たないと対応ができない現状です。それを一本化させられると国の方 針に従ってということで予算も減りますし、とても懸念をしております。今回も人件費 でいろいろ削減されている所がありますが、職員でやれということになりますと、その 職員が削減されるというところにすごく懸念をしております。 ○加藤委員 この検討の仕方についてですが、私のほうでも若干結核予防法と感染症法 についての比較を始めていますが、細かいところでいろいろな違いがあって、実際にそ の違いが現場にどういうインパクトを与えるか。これは結核対策の専門家だけではなく、 法律の専門家等も加えていただいて、何が問題なのかをもう少しクリアにするのが先決 ではないかと思います。  1点だけ特に大きな問題として指摘しておきたいのは、医療に関する問題です。ここ では一般患者に対する通院医療ということで、患者に対する治療は医療の枠組みで捉え ていますが、実際に患者に対する医療というのは、感染源である患者を治療によって感 染源をなくするということで、予防対策の根本でもあるわけです。したがって、この対 策の全般から考えますと、最も本質的なコンポーネントですので、そこは経過措置とい うことで処理されるのは、対策として非常にまずいと思います。  世界的に見てもドイツなどでは、患者の医療は無料で行われるのは当然のことで、感 染源をなくする、別の言い方をすると、感染を受ける可能性のあるすべての国民の安全 を保障するために治療費については担保しなければいけない問題だと思いますので、経 過措置等々ではなく、法律の本体の中に対策として、是非必要なコンポーネントとして 残されるべきだと思います。 ○倉田分科会長 非常に基本的な意見がたくさん出ていますが、ほかにありませんか。 ○澁谷委員 これは法改正のテクニカルな問題と、テクニカルな問題よりも感染症対策 として、法律の改正にどのぐらいプロセスを重視したかが大事ではないかという気がす るわけです。  坂谷委員の部会も開かれていないということも、ずっと気にかかっていますし、なぜ そこで検討をすることに抵抗されるのかも理由がわかりません。資料16でも、統合しな いと問題が起こるということではなく、メリット、デメリットについて、まず専門家の 意見を聞いてみるべきではないかと思っております。結核の法律というのは歴史ある法 律ですし、それに基づいてさまざまな対策が行われてきたわけですから、大げさに言え ば、そういう十分なプロセスを踏まないと、歴史的に禍根を残すことになるのではない かと思っております。 ○岡部委員 ルールについては1回確認するか、確立させていただきたいのです。例え ば、前回の結核予防法のときは、部会で検討がなされて、それは本来、分科会を通すべ きであるのに通していないのです。ですから、我々は何も知らないうちに改正が行われ たのです。  今回は、分科会を先に開いて、部会をやらない。部会の先生は何も知らない。そのと きに応じてこっち、こっちとやるのではなく、しっかりしたルールを確立していただき たいと思います。その点課長はどうお考えですか。 ○結核感染症課長 私もかつてどういう運営がなされていたかは不勉強ですが。 ○__委員 分科会を通した気がします。 ○結核感染症課長 事実はどうなのですか。 ○岡部委員 以前は公衆衛生審議会のときも、私は最後のほうですが、その後厚生科学 審議会になって、部会で議論されたことを分科会でもう一回議論して承認するというこ とを経て、感染症法改正などの話をしていたと思います。感染症法の改正はそうしまし たが、結核に関しては、そういうプロセスをとらなかった。おかしいなと思っていたの ですが、当時の話で「いや、部会をやれば、分科会を通さないこともあります」という 話を伺いました。  そうしたら今度は、部会を通さないで分科会でやっていただきたいというのは、いか にも矛盾していると思います。それは責任のある立場の方から、ちゃんとお話をしてい ただきたいと思います。 ○結核感染症課長 細かい話はちょっとわかりませんが、基本的には厚生審議会の基本 的なルールに則ってやるべきだと思います。私は分科会の意思決定は分科会でやるべき マターではないかと思います。非常に固有の問題については、それぞれ分科会の意思で 部会に議論を付託して、そこで結論が出たものについては分科会で最終的には議論をし て、分科会としての意思を決定するというのが基本的な考え方だと私は思います。  かつてそういう段取りが踏まれていなかったことについてどうかということですが、 どういう経緯でそうなったのかは、にわかにお答えは出ません。 ○岡部委員 そのときの課長補佐がおられるのですから答えてください。  ○結核感染症課長 ここに当事者がいないので調べます。 ○廣田委員 両論を併記したものが分科会に出て、分科会の中で合同委員会が作られて、 私はそこで仕事をするように任命されました。合同委員会の決定事項を分科会で報告し たという記憶があります。最終的な法案を分科会に相談するということはなかったのだ ろうと思います。こういう方針で行くという合同委員会の決定の報告は分科会で行い、 委員の方々の承認を得たという記憶があります。 ○倉田分科会長 結核のほうの部会の役割は何と書いてありますか。 ○結核感染症課長 要綱が手元にないものですから確たることは言えなくて申し訳ない のですが、分科会で全体的な議論をしていただくという性格だと思いますので、もし分 科会の方針として部会でやるとか、分科会でやるのだという部会長のご判断でやってい ただければと思います。  ただ、結核予防法をどうするかという議論ではなく、感染症対策の中で感染症法と結 核予防法をどうするかというお話なので、結核だけの議論ではないということはご留意 いただきたいと思います。 ○倉田分科会長 感染研は動いているわけで、結核予防法の規定を併合する場合には、 それなりの中身の問題が出てくるのではないかと思います。  感染研は菌をどう扱うかについて熱心に今までずっとやってきましたし、その手続と 保管も我々の所でやっています。そのことと思って予防部会の廃止が上がってくる、当 然結論は出てくるのかなと思っていたのですが、違うということがよく分かりました。 これは分科会長として非常に恥ずべきことで申し訳ないと思います。ここに部会の方は 全部おられるわけではありませんね。 ○結核感染症課長 欠席の方はおられても、出席する権利としては部会の方は全部入っ ておられます。 ○倉田分科会長 部会というのは結核の担当の人も入っているのですね、それでは結核 の関係の方々のご意見は非常に大事だと思います。今日ここで一気に廃止したという話 で、万歳というわけにはいかないと思うのです。 ○阿彦委員 選択肢は2つあるという話がありましたが、同居者問題云々のために改正 したばかりの結核予防法をまた改正というのは、前の改正のときに漏れたのかとか、い ろいろなことがあって、面子が立たないと思います。結核予防法の改正を繰り返すのは 困難なので、テロ対策に便乗して感染症法と一緒にしようという感じに、性格が悪いの で取ってしまうのです。選択肢が2つあるということであれば、結核予防法を今まで通 知行政でカバーしていたことが不適切だったので、正式に法律改正で早く直してという ことが可能なら、現場はどちらかというとそれを望んでいるわけです。でもそれが改正 したばかりで、今回改正した中身には、入院期間が短くなった中で6カ月間の治療の大 半を通院で行い服薬支援をするDOTSが法律の中に規定されたばかりで、その評価も していないうちに、経過措置云々で濁されるのも不安です。  また事前配付で一昨日、今日の資料をいただいたときに、事務局としてはかなり突っ 込んだところまで、結核予防法廃止を前提に感染症法と予防接種の改正の案を組んでい ることがわかりましたが、我々から見ると、すごく後ろ向きの感じがするのです。統合 によって対策が充実するのではなく、国庫負担が減って、国の責任が減りという方向に 進んでいる感じがします。  具体例を挙げますと、今日のための事前配付の資料の29頁の真ん中に「関係法令の改 正など」の(2)予防接種法とありますが、BCGを予防接種法のほうに動かすのは常 識的にわかりますが、移す場合に結核は1類疾病ではなく、2類疾病に追加するという 案で出ています。そうなると、2類疾病というのは高齢者のインフルエンザと同じで、 努力義務ではなく希望接種ですから、いろいろな面で違うのではないかと思います。私 の誤解だったら許してください。ですから、予防接種法にあるということだけではなく、 移すことによって、むしろ国がすごく後ろ向きの対策にシフトして考えているのだなと いうのが見えたので、このまま議論を進められると、ちょっと心配だなということがあ ったのです。 ○倉田分科会長 ただいまの阿彦委員の疑問に関しては、いかがでしょうか。 ○新課長補佐 事前にお送りした資料は、検討途中のものもできるだけご覧いただいた ほうがイメージをつかみやすいと思ってお送りしていますので、これで決定ということ ではなく、当然こちらとしての考えも踏まえ見ていただき、議論いただくという意味で 参考に配付しております。最終的に今日の審議に付する資料とは一部異なっているもの があります。法律にちゃんと根拠を置くための立法技術の問題ですから、その辺は改め て説明しますが、後退ということで捉えられるのは、私どもとしても非常に遺憾です。  予防接種についても、いろいろ検討の結果、今までいただいた意見をより反映できる ような形があると考えています。後退ということについては、そういう印象を与えたの であれば訂正をさせていただきますが、いろいろな言葉を要約して資料を作っています ので、そういう印象があったとしても本意ではなく、あくまで感染症法の中で対応した ほうが望ましいという考えを持っているということで、ご理解をいただきたいと思いま す。後退ということは考えておりません。 ○岡部委員 予防接種法の改正のことが、これに触れてあるということに、私はいま気 が付いたのですが。予防接種に関する検討委員会というのは諮問委員会で、決して審議 会ではないからパスするということは、理屈ではよくわかります。しかし、予防接種担 当の加藤座長ならびに私は座長代理ですが、この点については一切伺っておりませんが。 ○新課長補佐 予防接種法の改正については附則で、結核予防法を仮に廃止した場合に は、予防接種の部分は一般法の予防接種法に形式上、自動的に伴う措置として移行する ということは附則で対応するということで、予防接種のあり方や予防接種法本体をどう するかというのは、検討会で検討しています。したがって、その問題とは違う問題で、 廃止に伴ってそれぞれがこのように影響を受けるので、附則としてはこういう規定にな りますということです。その検討のプロセスの問題だと考えています。 ○高山委員 私も事前にいただいていた資料を見落としていたのですが、BCGが確実 に位置づけ低下です。こんなことを提案で出すこと自体が間違いではありませんか。き ちんと検討した上でお書きになるかどうかしてください。これは明確に誤解を与えます。 この間の国の態度については、小児科学会も申し上げてきましたが、BCGの定期接種 の期間の低下と申請接種の容認ということで、非常に現場は混乱してきました。さらに 低下させるという一文を書くことが、一体この間の経過といろいろな議論をどれだけ受 け止め、今回の議論をしていただけているのだろうかという誤解を、全国の小児科医に 与えます。この点はもっと考えていただきたいと思います。 ○倉田分科会長 その点はいかがですか。先ほど阿彦委員の言われた、国庫負担を減ら して個人負担が増えるようになるのではないかという、この間の予防接種の話とも関連 してきた問題ですが、その辺は基本的にどうなのですか。みんな個人の問題としてやれ という方向に動かそうとしているわけですか。 ○新課長補佐 技術的な問題で、法的根拠を書くという意味で、条文として廃止に伴っ て特例措置を設ける場合、通常は附則に書いてあるわけです。負担を削減するという趣 旨はありませんので、そのご指摘はちょっとわかりかねます。 ○阿彦委員 今回のことだけではなく、麻疹・風疹の予防接種の関係でも、国が関与す る予防接種については国の関与を、経過措置をなくして、その経過措置は任意接種にし て市町村に負担をさせるとか、特に事故が起きたときの健康被害についても、医薬品被 害救済のほうに持っていくとか、そういう関連があります。  今回のBCGの事前配付資料を見てがっくりしたのも、結核予防法には費用徴収規定 などはなく、全部無料でやらなければならないことになっていて、それで努力義務にな っているのですが、今は6カ月まで短くなった中で、接種率の向上に努めなければなら ないということで一生懸命努力している中に、2類にするということは希望制になりま すから、接種率は低くなってもいいという暗黙の姿勢と、事故が起きたときも2類とい うのは高齢者のインフルエンザと同じで、障害年金や死亡など重篤な副作用が起きたと きの補償が約半額という状況ですから、予防接種被害救済まで全体を考えると、国庫負 担を削減したり、国の責任を軽くしようということが感じられます。  結核のBCGだけではなく、麻疹・風疹の予防接種も、麻疹接種歴のある子が、風疹 の予防接種を定期で受けないというのは、どう考えても正常ではないです。そういうこ とがずっと積み重なって、地方自治体の関係者は、みんな感じているのです。私の考え 方だけではありません。 ○倉田分科会長 予防接種に関しては、世界の先進諸国の方向ともだいぶ違うかなとい う率直な疑問です。いまの疑問に対しては、どう答えをもらいますかね、先ほどの岡部 委員の質問とも関連すると思うのですが。 ○岡部委員 法的な説明はよく分かるのです。確かにそうだなということもよく分かり ますが、プロセスありきが、どうも前提に立って、どうやって病気をなくそうか、どう やったらいいのか、それで法を何とかしようという観点が、どうも抜けているような気 がするのです。しかし、公衆衛生というのは、どうやってみんなの病気を少なくして、 漏れた人を少しでも救済していく、それで病気をなくしていくというのが基本的な姿勢 ではないかと思うのです。こんなことをここで申し上げて大変失礼ですが、非常にテク ニカルなことが先行しているような気がして仕方がないのです。 ○工藤委員 先ほども申し上げましたが、いずれにしても結核の緊急事態宣言を厚生労 働大臣の名前で出したのが平成11年7月です。それから結核対策に皆さんはものすごく 苦労されて、10万対30とか、10万対25にようやく落ちてきている。しかし、まだ欧米の ように10万対1桁などには到底なっていないわけです。年間3万人の患者は出ているわ けです。しかもついこの間、改正予防法が出たばかりです。ですから、テロ対策、感染 症法に整合性を持たせるような現在の結核予防法の問題点を拾い出して、それを改正す るということは賛成です。しかし、廃止してしまうという論議は、まだ到底早いだろう。 その辺非常に大きな進路の誤りをもたらすのではないかと思います。ですから、これは 非常に慎重にやられたほうがいいと思いますし、時期尚早だろうと思うのです。 ○倉田分科会長 資料17、76頁の最後に「結核予防法の感染症法への統合は、現在の結 核の状況を踏まえると将来的な課題であり、現時点では時期尚早であると考える」とあ りますが、それからちょうど丸3年で時期尚早ではなくなったのかということに関して の皆さんの質問だと思いますが、事務局からご意見をいただければと思います。 ○結核感染症課長 すべてに答えていないかもしれませんが、前提として、今回このよ うな非常に重要なご提案を事務局からさせていただく際に、事前に報道等が先行してし まったり、私たちの情報管理が非常に拙かったということで、関係者の皆様方にご心配、 ご不信の感を与えてしまったことについては、この場でお詫びしたいと思います。  ただ、基本的な考え方については、私がお話いたしましたので、繰り返すのは控えた いと思います。時期尚早というお話で2回ほど統合は見送られていますが、患者数が多 いという話もあるのだと思います。そこはもう一度きちんと議論が必要だと思いますし、 患者数が多いから、まだまだというご議論はよくわかりますが、最終的には結核予防法 と感染症法は統合する方向にある。いつ、どういう条件でやるのかということだと思い ます。テロの関係で言いますと、時間がたくさんあるわけではないというのが正直なと ころです。じっくり腰を落ち着けてという時間が十分取れるかどうかわかりませんが、 少なくとも結核対策を後退させようと思ってしていることではないということだけは十 分ご理解をいただいた上で、ご審議いただければということでお願いをしたいと思って います。 ○倉田分科会長 今日予定された時間には到達してしまいましたが、予防をめぐっての ご質問、不信感など、いろいろ想定していなかった問題が突然飛び出したり、先ほど私 の立場も申し上げましたように、これの考え方が少し違っていたということもあります。 結核関係の先生方に全部ご意見をいただいて、それをみんなに回して、次回で議論をい ただくか、その次にするかは別にして、とにかく時間的に短いとは言え、いくつかの問 題があります。こうなったら、こうなりますと、今日出されたものは本当にそうなるの かということに関して、大変な疑問を投げられたわけですから、それに対する事務局と しての答えもなければいけないし、疑問を投げられた先生方に、もう少し具体的にきち んとしたものを出していただければ、それなりの議論のたたき台になるし、結核関係の 先生は、次回は全員出席し、議論に参加していただいてというプロセスが私は必要だと 思うのですが、いかがでしょうか。 ○結核感染症課長 どういう形でやるかは、ここでは具体的に提案は難しいと思います ので、何らかの形で結核の専門家の皆さんの、仮に一緒になった場合の懸念について集 約させていただくような作業を、事務局でさせていただきたいと思います。集約したも のについて、次回はこういう対処法があるということも含めて整理ができるものはした 上で出すということでいかがでしょうか。  もう一点、関係者もこの場に出てきていただいて、委員の先生方に伺っていただいた ほうがいいのではないかと思っていますので、いまここで分科会長と相談させていただ いて、何人かテロ対策の関係、結核予防法との統合の関係について意見を言っていただ くような場も併せて作りたいと思います。 ○倉田分科会長 場を作るだけの時間的余裕が、皆さんも事務局もあればいいのですが、 ない場合も考えて、今日言われたような意見にもう少し具体性を加えた文書をいただけ ると、事務局はそれだけ整理がしやすいと思います。次回はそういうものを全部出され たらいかがでしょうか。あるいはお送りしておいて、みんなの意見を、またそこでさら に凝縮してというほうがいいと思います。時間が1カ月も2カ月もあるのならいろいろ 会議を開いてもらってやることも可能だと思いますが、今後の分科会のスケジュールは どうなりますか。 ○前田課長補佐 次回の分科会については10月5日(水)午前10時より厚生労働省の9 階省議室にて予定しています。それから結核の専門家の方々からの意見は、10月3日( 月)までに事務局にファクシミリで文書にして送っていただければと思います。 ○高山委員 BCGを予防接種法に移動するのは、法制改正上の1つの当然の手順だと いうのは説明があったのですが、それがなぜ1類ではなく、2類なのかの説明はなかっ たので、その説明を次回よろしくお願いします。 ○新課長補佐 医学上の問題もありますが、法学的にもいろいろな経緯を引っ張ってき た話なので、その経緯を全部フォローして、まとめていければと思います。 ○倉田分科会長 ほかに注文なり、これに関しては是非答えろということがありました らお願いします。結核の専門ではない先生方が、結核の専門の先生に対して、こういう ことを明らかにしてほしいという考え方もあると思いますので、いまのうちに言って、 記録に残しておいていただいて、その意見をいただくほうがいいかと思います。 ○高山委員 本筋から離れたことですが、74頁の上から3行目に「結核にかかったサル に対する輸入禁止措置が実施できない」と書いてあるのですが、サルはいま一般的に輸 入禁止になっているのではないでしょうか。輸入よりも結核のガフキーがすごく出てい る人が飼っていたイヌやサルの検査をどうするかとか、その処分をどうするかというこ とのほうがずっと問題が大きいと思います。 ○倉田分科会長 全くそのとおりです。ペット、そのほかの動物の検疫に関しては、結 核は入っていますか。 ○山田委員 高山委員の言われるとおりです。この文章が間違っているだけで、問題に したときには動物由来感染症としても結核は非常に重要なので、イヌなどの動物に対す る措置ができるようにしていただきたいということは、我々が希望していることです。 ここの文章が輸入にすり替わっていただけだと思います。 ○倉田分科会長 その辺も違うよということを指摘してください。そのほかにあります か。 ○神谷委員 同じことだと思って黙っていたのですが、高山委員も言われたように、結 核予防法が変わって3年間経って、BCGのやり方が変わって、子供たちはBCGを6 カ月までにやることになりました。いま全国で接種率がどうなっているかを、きちんと 今度のときにデータを示してほしいと思います。良くなった所もあると思いますが、悪 くなった所も絶対あるはずなので、それをすぐ2類にするなどという話は、先ほどから おっしゃっているとおりだから言わなかったのですが、こんな馬鹿な話はないとびっく りしたのです。よろしくお願いします。 ○倉田分科会長 予防接種についての基本的な考え方も非常に大事ですので、これを含 めてやっておいてもらうと、皆さんの理解がいいのではないかと思います。私はいま世 界中を調べていますが、世界に逆行するところがあるかなと思います。 ○雪下委員 これはちょっと怒られるかもしれませんが、私どもが結核に対する専門家 の先生方のご意見を聞こうというときに、どの意見が結核の専門家の意見なのかをまと めるのが大変困難なので、結核の専門家の先生方のこういう委員会等についてのまとま った意見を、是非出していただきたいと思います。 ○倉田分科会長 全くそのように思います。ほかにありますか。 ○丹野委員 76頁、前回の平成14年の見直しについての下線部分で、「結核予防法の感 染症法への統合は、現在の結核の状況を踏まえると将来的な課題であり、現時点では時 期尚早であると考える」とありますが、これを事務局として今回変えようというのは、 どういう根拠というか、現状がこういう形で変わったので、テロだけではないというこ とであれば、そこを示していただけると有難いと思います。 ○倉田分科会長 テロの問題は多剤耐性結核菌の位置づけだけの話で、世界でそれでテ ロが起こったという話ではありません。菌の取扱いをどうするか、保管をどうしている かという調査で、それに基づいての話と結核対策とは一緒かなというのは、皆さんが今 日発言されたとおり残ります。それについてもきちんとしたことを知っておかないと、 1年後、2年後に感染症法が袋叩きになるのは良くないことですから、きちんとした対 応をするべくお願いしたいということで終わりにしたいと思います。さらに意見のある 方は、感染症課にファックスでお送りください。  結核部会の先生方がどう考えているかということと、それに関するまとめは感染症課 で責任を持ってやってもらう。それ以外の先生方の結核に対するご意見、それから、予 防接種その他の大人の結核、老人の結核を診ている方は大勢おられると思いますので、 その立場から結核予防法がなくなったときにどうなるかということまで含めたご意見を 出していただくのが、いちばんいいと思います。 ○結核感染症課長 事前配付資料に未熟な所があって、今日の会議に出せなかったとこ ろがありますので、釈明をさせてください。 ○新課長補佐 要綱はあくまで準備している途中のもので、いまも随時リバイスしてい ます。今日正式にご提案したものではないので、特に予防接種や附則の部分は、我々と しても途中の段階のものです。それを前提に、今日私どもから提示したという取扱いに されますと。我々は今の段階でも事前に早めに審議会の委員の皆様にお示ししたほうが 質問等も充実するという考えでお送りしました。その点についてはいろいろご意見をい ただく以前に、作業途中のもので、整理はあくまでも正式にお諮りしたものでお願いし たいと思います。それが誤解を招いたことはお詫びいたします。作業途中のものは一切 出せないことになっても、直前に資料配付になっても良くないので、ご理解をいただき たいと思います。釈明というかお詫びです。 ○倉田分科会長 それはよくわかります。今日のたたき台に関しては、今後変わり得る ことも含めて、いまの段階でのご意見で、外に流したり、利用するのはやめてほしいと いうことも含めているわけですねそれでは、長い間ありがとうございました。また次回 よろしくお願いいたします。 34 - -