05/09/16 第2回医師等の行政処分のあり方等に関する検討会議事録       第2回 医師等の行政処分のあり方等に関する検討会 議事録          日時 平成17年9月16日(金) 10:00〜          場所 厚生労働省共用第7会議室 ○樋口座長  ただいまから、第2回「医師等の行政処分のあり方等に関する検討会」を始めます。 ご多忙のところご参集いただきまして、ありがとうございます。今日は蒲生委員と宇賀 委員が欠席と伺っております。  はじめに、この夏の間に厚生労働省でも人事異動があったと聞いておりますので、ま ず事務局のご紹介をいただきたいと思います。 ○事務局  8月26日付けで事務局に人事異動がありましたので、ご紹介いたします。厚生労働省 の松谷医政局長です。 ○医政局長  松谷でございます。岩尾の後任として、8月26日に参りました。よろしくお願い申し 上げます。 ○事務局  私は医事課医師資質向上対策室長の菊岡でございます。どうぞよろしくお願いいたし ます。 ○樋口座長  第1回はしばらく前でしたが、この検討会のアジェンダは6プラス1あると。一つは その他ですから、6プラス1で7つあるのだということを確認して、フリーディスカッ ションを行いました。今日は第2回ですからその継続です。資料がありますので、前回 の検討会の議論の要約等も含めて、前回の意見の集約と、今回出されている資料につい てのご説明を伺った上で、フリーディスカッションに入りたいと思っております。まず 事務局からご説明をいただきたいと思います。 ○事務局  お手元の資料ですが、いちばん上の厚く留めてあるのが本資料です。それに参考資料 ということで、別添として1〜7番までの資料が付いております。それでは本資料に沿 ってご説明いたします。  まず1頁は、「第1回における委員の主な意見」ということでまとめております。1 が「処分類型の見直しについて」です。この中でも特に2番目の丸、「戒告」以外の処 分類型についても、海外の状況を参考にしながら検討してはどうかという点について は、後ほど資料2で説明いたします。2が「長期間の医業停止処分のあり方について 」、3が「行政処分に係る調査権限の創設について」です。4が「医籍の記載について 」ということで、この1つ目の丸が、現在医籍には行政処分の別が記載されているが、 その処分理由も記載することについては、検討が必要ではないか。2番目の丸が、仮に 処分理由も記載する場合は、誤解を生じないような記載内容にする工夫が必要ではない かということです。5の「再免許に係る手続の整備」には、このような形でのご意見が 出ております。6が「国民からの医師資格の確認の方法について」ということで、特に 下の丸では、医師資格について照会する際に、だれがどのような手続をする必要がある のかについて、明確にすべきではないかというご意見がありました。そして「その他」 として、丸を3つ付けております。  続いて3頁の資料2をご説明いたします。こちらは「海外における医師に対する行政 処分の状況」をまとめたものです。まず米国です。州ごとに実施しており、実施主体は 各州の州医事当局です。こちらは州政府の機関又は独立した公的機関ということで、運 営は免許登録費用等によりなされております。処分までの手続としては、国民、医療機 関、政府機関等からの通報を端緒としております。そしてMedical Boardが審査、聴聞、 調査を実施して処分を決定します。処分の目的は、医師を罰することではなく、国民を 守ることが主目的であると規定されております。処分の対象となる行為や処分の内容に ついては州ごとに異なりますが、Medical Boardの全米連合組織が標準を示しておりま す。それが4頁にまとめてあります。上の半分は処分の対象になる行為の例示です。43 種類の行為が記載されておりますが、その中の一部をこちらに具体的に書かせていただ いております。下半分の例示が処分の内容です。免許の取消、免許停止、保護観察、資 格制限、戒告、損害賠償、社会奉仕活動等々、このようなものが例示として出されてお ります。  このような中で、テキサス州の例を5頁に挙げております。こちらの州では執行猶予 処分を有し、処分の基準について詳細な明文規定を持っております。そちらを抜粋した のがこの表です。掻い摘んでご説明いたしますと、上から3番目が医業と関連する刑法 犯による有罪判決ということで、例として医師の立場を利用した暴行が理由となる場 合、標準的な制裁としては免許の取消です。下から3番目ですが、虚偽の処方箋発行と いう理由の場合は、医業停止4年又は医業停止90日の後、保護観察及び罰金2,000ドル という形での標準的な制裁が示されております。テキサス州で2004年に処分された件数 ですが、免許取消又は返納が33件、免許停止が45件、条件付き免許が88件、戒告が29件 です。  6頁は英国の事例です。英国の場合は免許の管理者であるGMCによる処分と、病院 管理者による業務一時停止処分とがあり、こちらは前段の免許管理者による処分につい て、その概要を記載しております。こちらの実施主体は公的機関で、医師の代表、医学 校の代表、民間人で構成されております。職員が200名、審査委員が250名という、かな り大きな組織で、やはり免許登録費用等により運営されております。端緒については、 市民及び医療機関管理者からの通報です。審査の手続はCase Examinerということで、 医師1人、民間人1人による調査と審査が行われ、ここにありますような判断を実施し ております。このCase Examinerにより結論を得ない場合には、調査委員会に回付して 調査をするという手続が取られております。英国の場合の処分の種別、理由等は、7頁 にまとめてあります。いちばん上が免許の取消、2番目が免許の停止で、最長12か月と いう記載です。条件付き免許は最長3年で更新が可能です。そして戒告です。イギリス の場合の2004年の処分件数については、免許取消が82件、免許停止が116件、条件付き 免許が117件です。  8頁では「海外における医師情報の公開状況」についてまとめております。まず米国 です。Boardが処分いたしますと、各地域医師会、アメリカ医師会、全米医師データバ ンク、州医事当局の全米連合組織等に報告されます。まず最初のデータベースですが、 全米医師データバンクは、米国厚生省の医政局医事課が担当しております。情報へのア クセスですが、事前に登録した組織だけがアクセス可能で、一般市民の方や保険会社、 弁護士等のアクセスはできません。登録情報については、医療過誤紛争支払いレポート や医師処分レポートといったものが、実際にこちらに登録されているという状況です。  次がFederation Physician Data Centerです。こちらは州医事当局の全米連合組織が やっているもので、国民がインターネット等によりアクセスが可能です。1件あたり9 ドル95セントと有料で、こちらの情報は1960年代からの処分歴が出ています。  いちばん下が、アメリカ医師会のデータベースです。こちらはインターネットにより アクセス可能で、全医師の氏名、診療科、卒業大学、勤務地等が記載されております が、行政処分歴は掲載されておりません。  9頁が州政府又はMedical Boardがやっているものです。大半の州では無料でアクセ ス可能です。公開情報については、大半の州で氏名と医師の資格の有無、半数程度の州 で卒業大学、診療科、医師処分の有無が記載されております。そして一部の州で生涯教 育歴、勤務場所、医事訴訟歴といったものが出ています。  続いて英国の事例です。9頁の真ん中にあります。医師の情報をインターネット上で 確認することが可能です。これは免許番号、姓名、登録年月日のどれか1つを打ち込み ますと、それに対応するものが出てくるという仕組みになっております。閲覧できる内 容としては、免許番号、姓名、性別、住所、登録年月日、学位、専門分野といったもの が出ております。行政処分の有無については、この検索とはリンクしておりませんで、 別途公表されているという状況です。  10頁は、「海外における歯科医師に対する行政処分の状況」です。米国については、 州ごとに実施されておりますが、こちらには主にオハイオ州の例を載せております。実 施主体はやはり州の政府機関や公的機関が担当しており、歯科医師、歯科衛生士の代 表、民間人から構成されている州が大部分です。処分までの手続も、患者等からの苦情 から始まり、調査、審問、委員会による処分等々で処分命令が出るという流れです。処 分の対象となる行為についても、こちらに37種類の例示がありますが、こちらには10件 挙げております。11頁がオハイオ州の場合の処分内容です。免許取消、免許停止で、こ の中に保護観察と継続教育が付随しており、戒告、それ以外に罰金を課している州もあ ります。オハイオ州の2004年の処分件数ですが、免許取消が0名、免許停止が20名、戒 告が7名といった状況です。 ○樋口座長  海外の資料を見ると、はっきり出ているのですが、結局我々のこの検討会のアジェン ダというのは、大きく2つに分かれています。まさに表題にも掲げてある、医師等の行 政処分のあり方について検討するという部分と、処分された場合の情報を含めてという ことなので、関連性があるのでしょうけれども、医師に関連した情報をどうやって国民 に伝えるか、あるいは公開するかというような問題と、そういう2つの観点があるのか と思います。6プラス1なので、それぞれリンクしているのでしょう。  前回もそういう問題について、自由に議論していただいたのですが、前回の議論のま とめも今ありましたので、今回もまた同じようにそれを踏まえて、できれば6プラス1 項目について、一つひとつ集約するような方向へ持っていければと思っております。も ちろん今日ではないのですが。幸いこの検討会には医道審議会の委員の先生方もお2 人、入っておられますので、そういう機関にうまくつなぐことができればと思っており ます。あとは自由に議論していただければよろしいのですが、いまの資料の説明と前回 の要約について、何かご質問なり何なりはありますか。 ○齋藤委員  いまの海外の状況について伺いたいのです。米国の場合も免許取消、英国の場合も免 許取消というのがあるのですが、この2つの国の場合、取り消された後の再免許という のがあり得るのかというのが1点です。  もう1つは、5頁のテキサス州の1年間の免許取消、あるいは返納というのが33件で すが、テキサス州が非常に大きな州だとしても、率としては日本に比べてかなり多いで すよね。イギリスの場合も7頁にありますように、1年間で免許取消が82件という件数 は、かなり多いと思うのです。いずれにしてもその後どういうことになったのか、もし 分かったら教えていただけますか。 ○事務局  米国で免許が取り消された場合ですが、こちらのほうで調べておりますのが、ニュー ヨーク州の場合の例示です。ニューヨーク州の場合、一応免許の取消があってから3年 は再申請ができないと聞いております。しかも申請ができるからといって、免許が与え られるかどうかということとは、また別の話というのが状況です。 ○樋口座長  3年も医業に携わっていないと、本当は3年間の医学の進歩というのはすごく激しい はずなので、それに関連して我々のところでも出ている再教育・その他というのがある という情報はないのでしょうか。いまのお話の中で、もし何かあればということです が。 ○事務局  いろいろな資料の情報があるので、少し混乱するところもあるのですが、資料の4頁 の全米連合の組織の処分内容にありますように、いろいろな教育プログラムとか、そう いった形のフォローのシステムはあります。もちろん明文化されたものではありません が、やはり取り消されると、再免許を取るのはなかなか難しい状況もあるようには聞い ております。 ○齋藤委員  今のに関連するのですが、アメリカの多くの州というのは、医師免許の更新制を採っ ています。ですからCMEである程度点数を取らないと更新できないのです。いまのお 話ですと、取り消されると、たぶん更新も厳しいでしょうね。 ○事務局  更新との関係で厳しいかどうかというところは、確認ができておりません。 ○樋口座長  私のほうからもお聞きしたいことはあるのですが、資料については、いつでも質問を はさむという形にしたいと思います。一つひとつと言っても、委員の方には順番を無視 していただいて構わないのですが、1頁の資料1、第1回における委員の主な意見に則 って、一つひとつ今回もう1回検討していただく機会を持ちたいと思っております。1 の処分類型の見直しについてでも、前回もこれだけいろいろな方のご意見が出ているの で、重複しても構いませんから、改めてご意見を伺いたいと思います。  まず、いちばん初めですが、前回、宇賀委員からもご指摘のあった所です。行政処分 というのは、やはりデュープロセスの要請もあるので、どういうことをやった場合にこ ういう処分になるかというのが、きちんと決まっていなくても、何らかの標準例のよう なものがないと、いまの行政手続のあり方としては好ましくないというご指摘があった と思います。例えば今度戒告という処分をつくる、あるいは今までの処分についてもこ ういう場合には免許取消、こういう場合には医業停止処分ということで、そういうもの についての標準例というか、厳密にそれに縛られることはないと思うのですが、やはり 目安みたいなものがないとというお話だったのです。外国の例では非常に詳しい表が定 まっているような所があるというご紹介があったのですが、こういう戒告の対象となる ような事例の整理がどの程度可能なのか。まず事務局に伺うのがいいかどうかも、本当 はよく分からないのですが。 ○事務局  これは行政指導ですが、参考資料の1に、平成10年から平成17年までに実際に医師及 び歯科医師で、戒告が行われた件数の表が付いておりますので、こちらを議論の参考に していただければと思います。 ○樋口座長  いまの論点については私が口火を切っただけですので、それでなくてもいいのです。 処分類型のあり方についてということで、委員の方々からご意見があれば、ありがたい と思います。いかがでしょうか。 ○岩渕委員  ちょっとずれるかもしれませんが、確かにこういう行為という、それぞれの行為の種 類を例示する方法が、まず考えられるわけです。しかし、その場合に程度問題というの が絡んでくるので、その縦軸と横軸の所をうまく整理した格好での例示ができるかどう かというのが、非常に悩ましいところではないかと思います。これは皆さんどういうこ となのか、可能かどうか、随分難しいだろうという感じを受けているのも事実です。 ○相川委員  いまの件については、私も確かに非常に難しいのではないかと思います。参考資料4 に前回もこれが付いていて、私も勉強させていただいたのですが、人事院からの「懲戒 処分の指針について」というのがあります。私はこのようなものは知らなかったわけで すが、これに関してはかなり具体的ですね。いわゆる公務員としての処分でしょうか。 ○樋口座長  細かいですね。 ○相川委員  例えば遅刻・早退とか欠勤とか、かなりありますね。しかし事例が多くなると公平・ 公正という意味からも、同じような欠勤でもある人は非常に強く処罰されるのか、ある 地域では、ある場所では、ある部署では処罰されないということにもなりますから、や はりある程度の指針のレベルというのは必要ではないかと思います。先ほどの縦軸・横 軸ではありませんが、特に医師の場合、医師以外の国民が何か過ちを犯した、あるいは 過失を犯したのと、医師であるがゆえにその過ちや過失が、一般的には強く問われると いうことも含めて、その過失や過ちの内容の指針は、作ったほうがいいように思いま す。いますぐ作るのはなかなか困難かもしれませんが、それを見て、ああいうことをし たからこうなったのだということが、国民にある程度納得いけばいいのではないかと思 っております。 ○医事課長  いまの議論ですが、私どもも指針のようなものは必要だろうと思っております。いま の相川委員のお話でいきますと、先ほどのテキサス州の例の中にもありますように、医 業と関連する刑法犯による有罪判決と、それ以外の者とは明確に分けております。それ と岩渕委員がおっしゃった縦軸・横軸の話でいきますと、標準的にはこれぐらいという ものはあるが、刑法的な発想でいけば、この場合は軽減することができるとか、そうい う事由を挙げておけば、これまでも医道審でずっとやってきているという歴史もありま すので、その辺をうまく当てはめていけば、大体可能になるのではないかと思います。  基準については、当然内部的に定めてやることが必要だろうと思っておりますが、こ れについては先回、宇賀委員が公表は努力義務であるというようにご説明されていたと 思います。それについては宇賀委員からも聞いたのですが、基本的にこういう処分の基 準というのは、それを公表することによるマイナスもあり得ると。例えばこういうもの だと戒告だというようになっていると、ここまでやっても停止にはならないな、という ようなことが分かってしまう。例えばスリーアウト制になっていて、2回目までが注意 だったら、1回ぐらいはいいかみたいなことになってしまうと、かえってよくないの で、そういうところも踏まえて公表が義務づけられていない、ということを教えていた だいたわけです。私どもがこういうものを作った場合も、それがどういう影響があるの かということも踏まえて、やっていく必要があろうかとは思っております。 ○岩渕委員  スリーアウト制でというマイナス面も、確かにあるのでしょうけれども、それが公表 されないデメリットに比べれば、やはり公表したメリットのほうが、たぶん大きいのだ ろうという感じがいたします。そうしないと今度は処分されたほうにしても、あの人は ああいうことでこれだけの処分なのに、なぜ私はこんな重い処分を受けるのかというこ ともあり得るのではないかと思うのです。アメリカの例で言うと、医師を処分すること が目的ではなくて、国民を守ることが目的であるという表現がありますが、これは完全 に日本も該当すると思うのです。ですから国民を守るということで言えば、国民の信 頼、安心、そういったものをきちんと確保できるというメリットから言うと、やはりあ る程度のデメリットはあっても、原則として公表しておく必要があるのではないかと思 います。 ○見城委員  医道審で毎回行政処分の決定をするときにも、このような例は前回は何か月であった というように、前例、前例で重なってくるところがあって、ときどき疑問に思っていた のです。やはり前例で重なっていくということは、10年後、20年後にちょっと間違った ことから、どんどん差が出てきますので、その辺が心配ではあったのです。ただ前例が あるということは重要です。いままでの行政処分の統計は、パソコンですぐに出てくる と思いますので、大変かもしれませんが、できれば1つの作業として、従来の処分が累 計してどのような結果・処分になったのかというのを出していただくのも、ひとつ検討 するにはよろしいかと思うのです。データは集積されていると思いますので、一度パソ コンに入れていただいて、大体のところを出していただきたいというのが1つです。  それから先ほど岩渕委員からも、国民が基本というお話が出たのですが、それをいち ばんに書く。非常に似たような案件はあるのですが、間違って切ってしまったとか、行 為そのものは同じようなことでも、患者が被った影響というのは本当に違うのです。法 律上の文言としては同じかもしれないのですが、受ける側、患者側にとっては大変な差 があるということも、行政処分のときに実感しているのです。常に国民・患者側がどう だったのかというところを参考にする、そういう部分を1つ入れていただきたいので す。 ○樋口座長  私は法学部に籍を置いているのですが、法律の考え方というのは、簡単に言えば先例 主義と言うのですか、時間的な軸にぶれないで、同じものは同じにというのが1つの要 請としてあるのです。しかし実際にそれだけでは法の進歩も何もないという話になる。  これには2つあるのです。1つは、前はずっとこういう扱いをしてきたけれども、も う少し考えないといけないということで、変えていくという話です。また、それに至る 過程のところで、やはり具体的な事案というのは本当は全部違います。行為類型として はたまたまこういう大きなバスケットに入るかもしれないけれども、個別の事情という のはいろいろな形で違いがあるので、その違いを全然無視して一律の取扱いをすること が、常に法的に正しいのかというと、それはそれで問題だという話があるわけです。そ の間のバランスをどうやって取るかというのが、常に難しい話ですね。法学部の大きな 問題というか、最初にして最後の問題みたいなものなので、それがここでも出ているの ではないかと思います。  一方で岩渕委員がおっしゃるように、何もルールがないようではちょっとという話に もなります。今度この部分については新しい類型を付け加えようということなので、そ の類型は大体こういうものについてというのがいくつかある。それで全部を網羅したり 何なりということは、絶対にできないと思うのですが、それがないのもちょっと困ると いうことだろうと思うのです。 ○見城委員  一度出していただけたらと思います。それプラス類型は類型として、1つのグループ には入るけれども、やはり患者にとってどうだったのかという部分が、必ず吟味される というか、その部分を付けていただけると、ありがたいと思います。  あと質問です。7頁のイギリスの免許取消の4番目に、「不正直」という言葉があり ます。これは逆に言うと、患者にとってはありがたい。行為そのものは、もしかしたら 小さかったかもしれないけれども、不正直というのは非常に問題です。こういう部分が 先ほど申し上げたところにもかかわってくると思うのですが、これはどういうことなの でしょうか。 ○事務局  これは英国の事例ですので、訳語でこういうように書いてあるのです。括弧にも書い てありますが、例えば隠蔽があったとか、そういうようなことも含まれています。 ○見城委員  日本の場合も、やはり隠蔽していたということで免許取消になるのでしょうか。 ○試験免許室長  事例にもよります。例えばカルテなどを隠蔽する行為とか、隠蔽にもいろいろありま すから、それだけで取消までいきません。 ○岩渕委員  外国の例で理念的にはいいなと思うのは、端緒として市民や患者、そういった人から の通報というのが書かれていることです。外国ではどういうように処理しているのかは 分かりませんが、それをやるのはいいと思うのです。ただ日本の場合、具体的な制度運 営として非常にバイアスのかかった、偏った訴えというのが、たぶん大量にくるのでは ないかという懸念も当然あるので、それを受けとめる方法と言いますか、処理のほうが 随分大変だろうなというのが、やはり現実問題としてあると思うのです。ですから、考 え方としてはこれも1つの形式だと思うし、やりたいのですが、やるとなると現実的な 運用に工夫があるのか、外国ではどういうようにやっているのかというのを、もうちょ っと知るというか、ご存じの方がいらっしゃったら、教えていただきたいと思います。 ○樋口座長  この辺は事務局からも先ほど説明があったのですが、6頁にイギリスの例がありま す。イギリスの例というのは、いろいろな意味で面白いですね。まずGeneral Medical Councilという、非常に名前も有名な所があります。しかし、これは国自体がやってい るわけではないのです。医療者が自主的につくったものが、国もオーソライズしてい て、すごい権威のある所がやっているというのがまず1つです。そこで処分に関して、 職員と審査員とを足すと450人もいます。それで通報が月に400件あるということは、年 間で5,000件あるということで、それを調べざるを得ないということになる。  これでも日本に比べれば随分多いと思いますが、処分のところへ行くと、7頁にあり ますように、大体300件あります。5,000件あるわけですから、1割以下です。ある意味 では当たり前なのかもしれないのですが、そうすると本当に意味がないと言うのです か、結果的にはポイントレスな不満や苦情もあり、それは処分に至らないというのもあ って、イギリスでは何らかの形でいちばん初めのところでそこを切り分けて、重要なも のと重要でないものを分けていく。しかし、そのためにはこのぐらい人員を割いてやっ ている。  しかもイギリスの医師というのは、14万人ぐらいいらっしゃるそうです。日本では26 万人ということで、もちろん日本のほうが多いのですが、結局14万人を相手にやってい るのです。これは大変なことです。こうやって日本の場合も処分類型を増やしていく。 当たっているかどうかはともかくとして、もちろん今までも医道審議会のあり方につい ては、いろいろご批判もあり、少し処分を広げようということだと思うのです。いま岩 渕委員もおっしゃいましたし、私も先回言ったのですが、実際に大変なのではないか と。体制づくりがなくて、やるという気概だけではなかなか動かないものですから。 ○岩渕委員  それでいきますと、日本医師会がある程度やっているように伺っているのですが、現 実的にはどういうようになっているのですか。 ○寺岡委員  日本医師会が苦情ないし通報を受け付ける仕組みは、ご存じかと思いますが、まず郡 市区医師会というものがあって、その上に都道府県医師会、日本医師会があります。い ちばん医療の最前線に接しているのは、郡市区医師会ということになります。この郡市 区医師会には苦情相談窓口、あるいは診療に関する相談窓口が設置されております。そ れと同時に各医療機関にも設置するということが、日本医師会の指示になっております ので、それがどの程度実動しているかどうかは別として、かなりの規模以上の病院、あ るいは小さな病院や診療所でも、苦情相談窓口や診療に関する相談窓口というものを設 置しております。  そこで患者は必ずしも苦情ばかりではなくて、診療に関するさまざまなアドバイスや 疑問、不安に関する相談をすることもできますし、この診療内容については、どうも疑 問があるから、もう少し内容をはっきりさせてくれとか、診療情報を開示してくれとい うような要望を、それぞれの窓口に言うことによって、それにはきちんと対応するとい う1つのマニュアルができております。ですから原則的にそのマニュアルに沿って、患 者の申立に対して対応するという形になっております。  そのほかにもう1つ。医師会以外のものでは各都道府県に、医療安全支援センターと いうものがあります。これは各都道府県に窓口があり、医師会とは別ルートで患者さん がさまざまな形の苦情なり相談なりを持って行きます。それに対する対応が、一昨年か ら機能し、動き始めております。そのような形で重層的と申しましょうか、そのような 仕組みができております。 ○樋口座長  いま寺岡委員から、都道府県のほうの支援センターというチャネルと、医師会のほう でも独自のチャネルをつくっているというお話でしたが、厚生労働省としては、こうい うように処分類型が広がっていくと、通報や苦情の受け皿にもならざるを得ないという か、今までも、もしかしたらそうだったのかもしれないのですが、この点、厚生労働省 サイドとしてはいかがでしょうか。 ○医事課長  いま私どもでは厚生労働省の医事課が、民間、個人からの苦情の受付を直接行ってい ます。いま70件超受け付けております。従来は刑事判決が確定したものを中心にやって いたわけですが、必ずしもそうでないものも医道審で取り上げることになりましたの で、いま事務局のほうでそれをやっています。ただ岩渕委員も座長もおっしゃいました ように、申立てというのは、まさに千差万別と申しましょうか、いろいろな程度があり ます。したがってどういったものを優先的に扱うか、こういったものについてはある意 味、単なる苦情なのでそれは審議会マターではない、という判断をするということにつ いては、いま私どもの内部でやっているわけです。それをどう仕分けするかという仕組 みは、やはりこれから考えていく必要があるのではないかと思っております。  あと、こういった受付の窓口というのが国、霞ヶ関に1箇所ということで本当にいい のかどうかということについては、この検討会でもいろいろご議論があろうかと思いま す。私どもとしても、そこは少し問題意識を持っているところです。 ○岩井委員  医道審議会で行政処分の審理に携わっているのですが、今度から刑事処分になった者 でなくても、行政処分をするという方針に切り替わり、かなり広く扱わなければならな いということになりました。こうして医事課が窓口になって全国の患者の苦情を受け付 けて、それについてすべて医道審で審理をするというのは、かなり限界があると私は思 っております。ですから広く行政処分の対象にするということになると、もっとほかの 組織というのを考えなければいけないのではないかと思います。  各患者からの苦情については、医師会のほうでかなり対応して、苦情処理のような機 能を果たしていらっしゃるわけですが、それがうまく機能すれば、患者のいろいろな不 平・不満というものが、かなり処理できるのではないかと思うのです。訴訟のほうでも 調停というのが機能するわけですから。ただ、いつもあそこに出てくる案件を見ます と、日本医師会に所属していない医師がかなりいるわけです。ですから弁護士とはまた 違ったところがあるので、医師会のほうで調整の機能と言いますか、ある程度教育指導 するというような機能を果たしていただくのが、いちばんいいのではないかと思うので す。しかし、すべての医師を網羅するというのは、すごく難しいのではないかと思いま す。処分類型だけを拡大しても、いまの体制で扱うのは、かなり難しいのではないかと いう感じがしております。  それからほかのことですが、この前もちょっと問題にした、教育処置を戒告に付ける 場合です。再教育が必要な場合というのは、診療能力に問題がある場合に教育をしなけ ればいけないということと、倫理面に問題がある場合に、そこのところをきちんと教育 しなければならないという2つの側面があると思うのです。そういう態様のものについ て、どういうようにしてきちんと再教育を行うことができるのかという議論について は、戒告にそれをすべて付けると、戒告にはほかの類型のものも入るのではないかとい う感じがしているのです。運転免許の免許取消がありますね。あれには教育処分と言い ますか、教育を受けると停止期間が短縮されるようなものがありますね。ですから義務 づけるためには、ある程度執行猶予的な措置を業務停止に付けるというのが、わりあい うまく機能するのではないかという感じがしているのです。 ○樋口座長  いま岩井委員からお話しいただいた件は、1頁の「処分類型の見直しについて」とい う前回のまとめの2つ目にも、きっと関係しているのです。いまのところは議論が免許 取消と医業停止処分という2つしかなかったのに、これに戒告を付けようということで すが、戒告以外のもう少し柔軟なものも、手段として持っておくというのもあると思う のです。こうやって多様化すればするほど、その取扱いが大変になって、そこのところ の体制ができるのかというのが、すぐに問題にリンクされてくるのです。  ただ1つだけ付け加えて、それだけでいいのだろうかという話と、「戒告、はい、再 教育」と、ただ形式的にそういうものをつなげる話だけでいいのかどうか、というご示 唆もあったと思うのです。4頁にはアメリカの例で、処分内容というのがいろいろな形 で並んでいます。最初の所へ戻ると、そもそも戒告以外、こうやって処分類型を広げて いって対応する体制があるのかどうかから、本当は議論すべきかもしれないのですが、 ここはちょっと裏腹になっている部分でもあるのです。  戒告だけでも大変だということなのかもしれないのですが、単なる厳罰主義だけで物 事が進むのかというと、そうでもなくて、いろいろなものの組合せで柔軟な体制を取る ことも必要なのです。何かほかのことも考えられるのかどうか。いま具体的にお話があ ったのは、「執行猶予」という言葉がいいのかどうかは分かりませんが、単なる医業停 止処分ではなくて、何らかの形で教育を義務づけておいて、それがうまくいくかどうか を見た上でというようなご示唆もあったと思うのです。こういう処分内容等の点ではい かがでしょうか。 ○早川委員  私も、いまの処分類型だけでは少なくて、例えば戒告を入れるべきだろうという方向 には賛成です。ただ、いま樋口座長からお話があったことを踏まえて、例えばテキサス 州を見て気が付きますのは、罰金というのが非常に多いことです。罰金として取ったお 金をどこが取って、どうやって使うのかは分かりませんが、日本では文化も違いますか ら、アメリカとは違うだろうと思います。しかし1つの選択肢としてはあり得るかもし れないという気がいたします。 ○樋口座長  処分をこうやって広げていったときに、それをどういう形で、しかもデュープロセス というか、適正な手続を備えた上でやれるかというのは、3番目の調査権限にも関係し ていて、調査をした上でということになるので、同じことになるかもしれないのです。 しかも再教育もという話になると、再教育をどういう形で、どこが主体になって行うの かとか、やるべきことがいきなり非常にたくさん増えますよね。調査権限を創設するの はいいと思うのですが、この前も宇賀委員から、監督権限があって、処分権限があっ て、調査権限がないというのは、理解し難いというお話がありました。これは当然では あるのですが、それを法律で、権限はあるよと書いていただく。しかし権限はあるけれ ども、全然調査しないわけには、きっといかなくなると思うのです。ですから「権限」 と言いながら、きっと調査義務に移行すると思うので、これをどういう形でやっていけ るのだろうかということについては、厚生労働省の事務局としてのお考えをいただきた いという気がするのです。 ○医事課長  いま座長からお話がありましたように調査権限。 ○樋口座長  再教育のほうもですね。 ○医事課長  いまの医師免許制度というのは、当然厚生労働大臣が与えているものですので、それ にかかる処分権も厚生労働大臣にあります。ですから今の仕組みを前提とすれば、再教 育の実施あるいは調査権限も含めて、これは国の事務という形でいかざるを得ないと思 うのです。実際に可能なのかという座長からのご懸念ですが、私どもとしても、いま申 立てを受けているもの等もありますし、現実にそれを調査しようとするときに、具体的 な調査権限、法に基づく権限がない場合に、十分調査の実を上げることができないケー スがあるということで、やはり必要だろうと思っております。  当然、こういうことをやっていくに際しては、必要な人的資源等も増えます。それに ついて、どれだけいれば十分かというのは、なかなか難しいです。こういう非常に厳し い時代ではありますが、受け付けたものをどう優先順位を付けて、あるいはどれに本当 に人を付けて調査するかという振分けみたいなもののルールは検討しながら、できる限 り必要な人なり組織なりが確保できるように、私どもも頑張ってやりたいと思っており ます。どこまでやれば十分かというのはありますが、やはり何人かの先生がおっしゃっ たように、国民のニーズというものもあると思いますので、それを踏まえて何とか増強 と申しましょうか、充実していきたいと思います。その上でなるべく対処できるように やっていきたいと思います。 ○岩渕委員  類型の増やし方として今回は、少なくとも戒告を付け加える以上に、一気にいろいろ な類型というのは、現実的にはなかなか無理だろうと思います。戒告というのを入れ て、具体的にどういう運用になるかということを見定めた上でないと、その上でどうす るかというのは、ちょっとやり過ぎではないかと思います。  それと研修や再教育を受ける場合の具体的なイメージとしては、そういう処分を受け た人は、多分マンツーマンみたいな格好になるのでしょう。免許の更新みたいに、ガサ ッと人を集めて講習をやるわけにはいきませんよね。そんなに処分者がいるわけではあ りませんから。そうすると例えば医事課で直接やるかどうかはともかくとして、非常に 少ない中でやっていくということであろうと思うのです。それぐらいだったら、戒告か ら何からすべての処分類型について、研修、講習と言いますか、再教育は是非やってい ただきたいと思います。国民の気持からしても、これは絶対やってもらいたいと思いま す。 ○事務局  再教育については、平成17年4月に報告書が出ております。その中の内容を踏まえ て、具体的には処分を受けた方について、いま委員からお話があった、マンツーマンと いう表現ではないのですが、助言指導者という形で、プログラムも含めてどのような講 習や研修が必要なのか、そういうことを組み合わせるためのやり取りをした上で進めて いくというイメージが、実際に出ております。もちろんまだ制度は変わっておりません ので、現行の制度の中でどういった問題点があるのか、そういったことについては並行 して検討しているという状況です。 ○見城委員  この検討会は行政処分の検討会ではなくて、「行政処分のあり方」となっているの で、考えをどこまで範疇に入れるかということなのです。患者側というか、国民側にと っては、事故は起きてほしくないわけです。基本的に医療事故には遭いたくないし、医 療事故を起こす医師は減ってほしいわけです。そうすると事故を起こしたり過ちを起こ したりしてから、この検討会で改めて制度をつくっていくのか。  先ほどからずっと考えていたのは、再教育されてまた戻るというそのスタートライン なのです。大抵事故が起きたりする病院の、後からのニュースなどでも、前々からこう いう危ない話があったとか、取り違えるような、それこそヒヤリハットが何度も起きて いたとか、そういうことが出てくるわけです。そうすると一般の国民としては、なぜそ の段階で止めることができなかったのか、尊い生命が奪われる前になぜ、ということが 往々にして起きます。  そういうことを考えますと、行政処分のあり方という範疇に、もし苦情を受け付ける システムをつくる場合、その段階で例えば勧告できるとか、まだ本当の大事件にまでは いかないけれども、非常に危ない要素がある場合、ニアミスのようなことがある場合 に、医師に注意するとか病院側に注意するとか、そういうところからあり方を検討でき るのか、そこは卵の以前で、入らないというのか、それも是非検討していただきたいと 思います。 ○寺岡委員  そこはちょっと整理しておきたいと思います。医療事故防止ということに関しては、 厚生労働省でも医療安全対策に関する検討会が、もうすでに設けられており、かなり踏 み込んだ予防策が議論されています。これはあくまでというか、それは委員がおっしゃ っている医療事故を防止する、患者さんの安全をどのようにして進めていくかというこ とで、かなりのエネルギーを注いで対策が練られているわけですから、その部分で進め ていったらいいのではないかと思います。  もう1つは、日本医師会が遅ればせながらと言われますが、実は今年の8月の初め に、医療事故防止研修会を初めて開催いたしました。その対象者は、医療事故を繰り返 す方や、いろいろな程度を繰り返している方だと思いますが、そのほか、自主的に参加 される方、あるいは各都道府県、郡市区医師会で医療事故防止にかかわる担当の役員、 そういった方々に集まっていただいて、2日間にわたる研修会を開催いたしました。こ れは継続的に今後も続けていくつもりです。これはまさに委員のおっしゃる患者さんの 安全を守るために取り組む対策です。ですから、この会議で医療事故防止まで踏み込ん で議論することになると、折角、「行政処分のあり方に関する検討会」ということで立 ち上げた会議ですから、もう少し焦点を絞って、結果の出やすい形で議論したほうがい いのではないかと思います。  いままで出た中で、医師会が絡んでいることについてご説明いたします。岩井委員が おっしゃった、医師会以外の医師に対してはどうなのかという話ですが、確かにこれは 非常に悩んでいるところです。我々が設けている窓口というのは、必ずしも会員のこと ばかりではなくて、斯く斯くしかじかの問題が起きているという通報があれば、会員・ 非会員にかかわらずそれにも対応するという形でやっております。十分とは言えないか もしれませんが、我々の視点もそういうところに広げていきたいと思います。  それから見城委員が最初に、基本的なコンセプトとして、国民を守るという視点が非 常に大切だとおっしゃったと思います。アメリカの考え方にもそういったものが強調さ れているということで、それは全くそのとおりだと思います。ただ、国民の安全、患者 さんの安全を守るという視点の前に、「医師を罰することが主旨ではなく」と書いてあ り、もちろん私は医師を罰しないと言っているのではなく、本当にいけないのは罰する 必要があるとは思います。大切なことは、これとは別の視点として患者さんを守る、あ るいは国民を守ると書いてあることです。 ○齋藤委員  いまの寺岡委員の意見に近いのですが、あまり細かいところまで行政処分や行政が関 与するのは具合が悪いので、やはり日本医師会をはじめとして、医師の専門家集団とし てのセルフコントロールといいますか、自らを律するというモラルをもっと盛り上げて いかないと。国がどんどん細かいことまで介入してくるのを避ける意味でも、日本医師 会、あるいは日本歯科医師会をはじめとして、医師がもっとシリアスに考えて、自分た ちでコントロールして、あまり行政に介入をされないようにすべきだと思うのです。そ れは非常に強く感じます。 ○相川委員  2点申し上げます。先ほどの見城委員のご意見も大変大事なことではありますが、寺 岡委員がおっしゃったように、医療事故防止に関しては、この1、2年かなりいろいろ な対策がとられ、それが組織的に動き出していると思います。そのことがまだまだ一般 の国民に知っていただいてなかったというのは非常に残念なことですが、実務面では、 この数年でその辺はかなり進歩していますので、その部分でさらに医療事故の防止、安 全を守ることを進めていくべきです。もちろんこの委員会と、そちらが進めていく情報 等を交換することはありますが、やはりこの委員会では6プラス1という、論点を何に するかということにしませんといけません。この委員会で本当に何か事故防止の具体的 な対策を打ち出す提言のようなものができるのか。それがこの委員会が設置された目的 であるのかといいますと、やはり違うと思うのです。ですから、フリーディスカッショ ンのあと、また医療事故防止と関連づけて行政処分を考えなければいけないというお考 えは非常に大事で、常にその視野をもって議論を進めていきながらも、やはり6点にフ ォーカスを置いたほうがよいと思います。  もう1つは、職能集団としての我々の医師同士がよく指導、監視し合って、仲間同士 で行っていくことは、いままでも日本医師会がかなりのリーダーシップをとってやって きたわけです。もう1つは、特に勤務医の場合は、医療機関にもよりますが、医療機関 の中でもかなりそれを進めてきている段階です。これがまたパーフェクトでないからと いうことがあって、実際の事例が起こっているわけです。まずは自分たちでそれを律す るという基盤の上で、さらにそれを外れていった場合は、行政が一定の指針をもってす ることが大事かと思います。  もう1つは、別なことを言って恐縮ですが、私も医師ですが、医師仲間を守ろうと思 って次のような発言をするわけではないのですが、1つの極端な話は、一度ミスを犯し た医師、あるいは一度アルコールの影響下で運転して、人をひき殺してしまったという ような、非倫理的なことを行った医師を簡単に処分してしまう。あるいはその医師から 免許証を取り上げる、数年間免許を停止することは非常に簡単な話で、そういう方を国 民の医療に携わるようにしなければ、国民の安全は守られるわけです。いまの日本の医 師を育てるには大変なエネルギーと国民の税金が使われていまして、ある程度まで育て 上げた医師が、1回なり何回か、間違ったことをしたらリムーブすればいいのか。その 医師が倫理的な面は反省し、その再教育を受けることでまた医療に参加し、将来は国民 の健康を守る1人として、また参加してくるように育てる、という方向性もかなり大事 ではないか。それは皆さんも当然そう思っておられると思います。医師1人を育成する のに補助金などを含めますと3,000万円以上の税金が使われているのではないかと思い ます。  医学部に入って解剖学の最初の実習のときには、献体、貴重なご遺体を解剖の実習と して使う。お金だけではなく、そのような背景で育ってきている医師ですから、やはり それを国民の医療に参加させるという視点も、この処分のあり方については是非視野に 入れていただきたいと思います。 ○見城委員  先ほど私が申し上げた防止の部分というのは、日本がめざしている小さい政府、そこ へ向けて従来の縦型で分かれていたその辺の連係プレーがうまくいくと完結していくと 思うのです。いまの相川委員のご意見のように、お医者様、もったいないですよね。折 角、立派なお医者様になるはずが、ちょっとしたつまずきからとか。ただ、その部分が 患者の命にまでかかわると大変なので、このような行政処分になるわけです。  ですから、前段階でどのようにされて、それでも何か起きた場合はどうなのかという 考えがある。国民のほうに、そのための行政処分の制度であるというところまで浸透す ることが大事であり、実際のお医者様の側にも、自分が置かれている立場をそれで理解 していただくことが、事故が少なくなる原点だと思います。そういう意味での前部分が どうつながってくるのか、どうあるのかということなのです。是非その辺は1つの輪の 中でつなげていただければと思います。 ○寺岡委員  調査権限の考え方なのですが、かつて保険診療の問題で、いわゆる不正請求というこ とで、非常に厳しい監査が行われたという時代がありました。そのときに、もちろん不 正請求を行ったことは悪いことですが、あまりの厳しさのために自殺者まで出る、そう いう事態まで起こったことが、だいぶ昔ですがありました。そういうことで、調査をす ることは確かに必要だと思いますが、調査のあり方についても、同時に検討していただ きたい。例えば1つの考え方ですが、いわゆる行政側だけではなく、ピア・レビューと いう観点から一緒に調査に当たるとかという考え方が必要なのではないかと思います。  再教育に関しては、先ほど再教育の報告書が出ましたが、それは最初のときに皆さん に資料を差し上げたのです。ですから、そこはきちんと共有しておかないと、それをす っ飛ばした議論になると、何度も同じ話になりますから、そこはきちんと踏まえて議論 を進めていかなければいけないと思います。 ○岩渕委員  その再教育を別に蒸し返すつもりはないのですが、再教育を受けなかった医師に対し ては、医籍に受けたことを書かないという形で、若干の担保というような話がありまし たが、それではちょっと足りないのではないか。受講を拒否した場合に対するペナルテ ィーも考えていただきたい。それは本検討会の主なテーマではありませんから、それは 単なる要望です。  再申請に対して、現実的に21件申請で、15件が認められていないという数字がありま したが、それぐらいのバランスでしたらまあいいのかなという、相場観としては、それ ぐらいであれば納得できると思うのです。ただし、例えば調査が始まっている段階で は、免許の辞退は認めないとか、そういう明文規定というのはかなりきちんとしておく 必要があると思います。逆に医師のほうから訴訟を起こされた場合、耐え得るようなシ ステムづくりはやっておかないと、公平性の問題もありますので、きちんとやっていた だきたいと思います。  公開のところは現実的には国民の要望も強いのではないかと思います。現在されてい るのはどう見ても不十分だと思います。外国の例を見ても、ある程度ネットで有料でや っている所もあるようですが、ある程度有料でもいいから、国民に対する情報公開の役 割を果たせるようなシステムは是非考えておく必要があるのではないかと思います。 ○樋口座長  時間の関係もあるので、もう1つの大きなテーマである医師の情報に関するところに 移ろうと思いますが、ちょっと一言だけ、見城委員に繰り返し言っていただいた点は、 私も考えているところがあって、それこそフォーカスを定めるようにと、何人もの先生 からも言われていて、あとで言うのも何ですが。もちろんこれは「医師等の行政処分の あり方等に関する」ということなので、行政処分、行政に限らないですが、処分、制 裁、刑罰もそうですが、やはり個人に焦点が当たるのです。この場合はお医者さんです が、お医者さん個人がこんな悪いことをしてという話になるので、典型的にその個人だ けがという場合もありますが、医療過誤の場合も典型です。  一方、最近日本でもその人だけの問題ではなく、そのシステム、個人が問題である場 合も、医療機関の中で働いている場合には、なぜもっと早く何とかできなかったのだろ うかという話がやっぱりあるのです。それは何か事が起こって、こういう処分というこ とになるのですが、本当に大事なことは、それ以前に防ぐことができたはずのものは何 とかと。どの道、すべてのことを防ぐことはできませんが、しかしそっちへ努力すると いう視点がないと、ただ何か事が起きてその人だけをそれこそ厳罰主義で、というだけ ではどうなのかなと。そういうことをおっしゃっていただいたような気がします。  戒告を増やすのは、当然みたいな気もしますが、私の感覚ですと、行政処分として戒 告というのは、記録にも、履歴書であれ何であれ、全部残っていて、戒告することは大 変だと思うのです。そうすると、戒告に至らないところで、それぞれの医療機関や専門 団体で、こういう形で事後的にも対応しましたという話があれば、行政処分までいかな くてもということもあり得るわけです。こうやって焦点を広げていくのは簡単ですが、 大きな輪の中の一部ですので、そこだけがという話で焦点がかえって当たり過ぎるのも どうなのかなと、いろいろなご議論をいただいている中で感じました。  その関連で面白いと思ったことは、これは日本では無理だと思いますが、5頁目のテ キサスの話で、具体的な事例でこういう場合は、こういうようなことですという中に、 医業と関連する刑法犯は免許取消。これは当然です。しかし、その次に医業と無関連の 刑法犯だと、有罪判決を受けてもこんなことです。これはやはりアメリカ的な感覚なの かもしれません。日本では、プライベートで車を運転して事故を起こして、交通事故で も有罪判決が出れば、これは医者として有るまじきという、医者としてというか、人間 としてというのかよく分からないですが、それが全部医療にも、専門職にも反映する。 これは医者だけではなく、みんなそうなので仕方がないとは思うのですが、この辺りの 考え方はやはり面白いと思います。  この問題にかえってもいいのですが、もう1つの問題もなかなか難しいのです。医師 に関連した情報を、どういうような処理を考えたらいいか。1つは、国が免許を与えて いて、厚生労働省のほうでどれだけの情報を把握しているのでしょうか、という話がま ず第1点としてあります。例えば、お医者さんがどこで働いているのか。ここで問題に なっているのは、被処分者が実際、医業に復帰しているかどうかを厚生労働省では把握 しているのですかというと、それは完全には難しいことなのかもしれません。  そういうレベルの話と、一般の医療機関、医学系の学会、専門家の団体で自分の機関 に属している、あるいは今度雇用しようとしているドクター樋口というのが、自分でド クターだと言っているだけで、本当はどれだけの実績があるのか、自分が書いてきた履 歴書だけで信用できればいいのですが、それはチェックしたいという要望が当然ありま す。  それから、一般国民においてこのお医者さんはという、その3つぐらいあると思いま す。いちばん大きな問題は、第3番目の国民に対する情報公開です。その前提として、 前の2つも当然リンクしている話なので、それに関連して医籍のあり方や、国民からの 医師資格の確認の方法は6ですが、そういうことだと思います。どこでもいいのです が、ご意見を承りたいと思います。これはいかがですか。 ○相川委員  具体的な中の1つお答えします。私は大学病院長ですから、病院の管理者になってい るわけです。医師を雇用するときには、現時点では医師免許証を確認しております。そ の医師免許証が偽造でない限り、その医師免許証には本籍、医籍登録番号、生年月日、 氏名が書いてあります。そのときに許可した局長と大臣の名前が書いてあります。それ を確認しているので、雇用のときに、まず医師であるということは確認できるわけです が、おっしゃったように、患者さんが今かかっている医師にいちいち医師免許証を確認 することは、通常の診療行為ではやらないわけです。そこを見ても、その方の戸籍と か、そういうものとの確認はなかなかされていないでしょう。  もう1つは、処罰に関しては確認はしていないわけですが、それは履歴書において賞 罰のところに本人が正しく記載する。履歴書は本人が正しく記載する、という前提のも とに我々は履歴書を読んでいるわけですから、賞罰のところは履歴書で確認することし かあり得ないのが現状です。 ○寺岡委員  免許証にも書いてあるのでしょう。4頁とかにある、そういった処分を受ければ。 ○医事課長  免許証には書いてありません。 ○寺岡委員  どこに書いてあるのですか。 ○医事課長  私どもの医籍に記録があるということです。 ○寺岡委員  免許証には改めて書かない。 ○見城委員  逆を言うと、無事故でずっといきますと、自動車などはその免許証が変わってくるで しょう。本当にいい医療をずっと続けている方の賞状というのでしょうか、お医者様に 行きますと掛かっていますが、それを見たらわかるとか、逆にそういう方法もあるかな と思ったのですが、上質の方を逆に褒めていくという。 ○相川委員  それも1つの方法だと思います。例えば運転免許証でも、全然運転しない人は無事故 ですから金色になってしまう。その辺は医師でも、いろいろなものに積極的にチャレン ジして、非常に難しい病気で、どこの病院でも、これはうちは治療が無理ですと言われ ていた患者さんを何とかチャレンジして治してみようということで、患者さんに説明を し、納得して実際にチャレンジしたが結果はうまくいかなかった。あるいは非常に難し い、取れないと言われたがんを何とか取ろうとして結果的には難しかった。そのような 方と、そういうものには一切チャレンジしない、あるいは週に1、2回のリスクの少な い患者さんを診ている方とを同一的に評価することもなかなか難しい。むしろチャレン ジして患者さんを救おうという人は、難しいことをやろうとしますから、もちろん事故 の確率も高いわけです。 ○見城委員  その場合も医療事故と呼んでしまうのですか。 ○相川委員  ですから合併症になった、あるいは患者さんがそれに満足しなければということで す。医療事故というのはインシデントというわけです。事故かどうかというのは非常に また難しいことであり、例えば手術のあとに出血をして、それが止まらなくなって、そ の結果、患者さんが亡くなったという場合、いままでは術後出血ということで、多くは 合併症と記載されていたのですが、そのときにミスがあって手術のあとに出血したの か、それともミスはなくて通常にやったはずなのに出血したのか。例えば術野に何かメ スでも置き忘れたとか、そういう明らかなことがない限りは、あとで判定することは難 しいことがありますので、なかなか単純ではございません。  繰返しになりますが、どこの病院でも、例えばこのようながんの手術はもう無理です と言われたとか、あるいは非常にご高齢で心臓も肺も悪く難しいけれどと言われても、 何とかチャレンジしましょうという方が、見城委員がおっしゃったような金色の免許証 が取れなくなって、逆にチャレンジしない方は金色になる。それを一般的にポッと見ま すと、こっちのお医者さんは危ないお医者さんで、こっちのお医者さんは安全なお医者 さんだということになる。その辺のところも何かの方法で情報がうまくいけば、いまの ことも可能かと思いますし、いい方向になると思います。 ○見城委員  逆を言えば、そういうチャレンジをして、一生懸命、命を救おうとする方の評価も、 行政処分と同時に、それは何らかの形で出ればいいのかなと思います。受ける側として は、どういうお医者様なら信用して命を託せるのかということのために、行政処分の結 果を提示してほしいとかディスクロージャーをしてほしいということが、今ここで行わ れているので、確かに集中して議論することは大事ですが、相川委員がおっしゃった部 分はどうしたらいいのかも含めて、×なのか、○をむしろ出していくのか、最初から 「なし」ではなく、それは吟味の中に入れていただきたいのです。 ○相川委員  具体的には一部の学会、一部の疾患に関しては、認定医などの申請時に個々の医師の 術後の合併症の発生率や術後死亡率の統計が集められてきています。これも医業に従事 している20数万人いる医師個々について、それをここにレビューすることは、具体的に はなかなか難しいのではないかと思います。先ほどのピア・レビューで学会員などでは そういうものを提出させたり、ある認定医などの資格を取る時点において、1つのハー ドルを越えるときに、いままでの自分のやってきた技術、経歴と安全性も含めたデータ を要求するような学会もあるということです。これをこれと併せて、本当は是非進めた いのでしょうが、現実的には難しいかと思います。 ○齋藤委員  2点目の医師情報の公開状況ですが、8、9頁を見ますと、特に9頁の英国の場合 は、免許番号、氏名、登録年でのみ検索が可能ということで、現在の日本の状況に近い のです。違いますか。 ○医事課長  このうちの1つを入れれば、出てくるということのようです。 ○齋藤委員  例えば同姓同名とかありますが、しかし登録年だけで出てくることはあり得ないので はないですか。 ○医事課長  登録年を入れると、その年に資格を受けた人がズラッと全部出てくるような仕組みの ようです。 ○齋藤委員  内容として学位や専門分野というのは、いま日本の場合はないですよね。  それから米国の場合は、どういうことがあればアクセス可能かはっきりとは書いてい ないのですが。いずれにしても、インターネットでアクセスする場合、先ほどから議論 になっている行政処分歴をはじめどうするかということと、もう1つは、もしフリーに アクセスできることになった場合、個人情報保護法との関係はどのように整理するので すか。例えばその学歴とか、そういうことまで。 ○医事課長  個人情報保護法につきましては、基本的にはご本人の同意がある場合と、法律に根拠 がある場合には提供ができることになっています。したがいまして、いま委員が言われ た学歴やそういったものがここに馴染むかどうか、というのはまた議論がありますが、 仮に氏名のみの公表であっても、それは何らかの法的根拠を作らなければ提供すること はできないということです。 ○樋口座長  逆に、法律上の根拠があれば何ら問題はない。私のほうで勝手に分類した最初の2つ の話ですが、国のほうで26万人の医師についての情報をどれだけ把握するかという話で す。これはいまは医籍がありますが、しかし医籍というのはどうも入口で、まさにお医 者さんになったという、医籍に登録してなるのですから、そういうところだけを把握し ている。しかしそのほかの情報も何らかの形ではあるのでしょう。データネットワーク の時代なので、それをリンクさせていくとある程度のものは把握しているが、まだこう いう点は十分でないことがあるのか、さらにいま勤務している病院はどこでとか、いろ いろな情報を集めることはできるのだと思います。国が免許を与えているのだからと言 ってしまえば、全部について責任を負うという大きな政府の話になりますから、26万人 のことについて全部把握しておくことも1つの立場ではあると思いますが、そういうこ とを考えておられるのかどうかということが1つ。  2つ目は、医籍というのがあって、先ほど相川委員は、やはり履歴書を信じないと始 まらないんだと、そういうシステムだと。私は一般的にはそうだと思うのですが、やは りお医者さんの場合はそういうチェックもしないで雇っていましたというので、あとで 何かがあった場合は問題になるような気もします。ところが、各医療機関で医籍のほう へ問合せを出すことはできると思いますが、いまは処分については医籍に登録してある が、それについては医療機関にも出していない。その理由の一端は処分理由にもいろい ろあって、単なる処分の結果だけだと、かえっておかしいという場合もあったと思いま す。医籍と医療機関との間の情報交流みたいな話をもう少し伺いたい。 ○相川委員  ちょっと誤解があったかもしれません。私が先ほど言ったのは、医師を雇用するとき には、医師免許証をチェックしています。医師免許証は本人しか持っていませんので、 本籍、氏名、生年月日をチェックする。それを本人が持ってくるわけです。それと本人 の戸籍謄本なり、戸籍抄本等を突き合わせてやっているということで、これはほぼ雇用 の時点で医師には間違いない。しかしその後の処分歴については、履歴書の賞罰のとこ ろに本人が書いてくださらない限りは、チェックできないということを申し上げまし た。 ○樋口座長  それは理解しているつもりです。その点についても非常に慎重な院長で、そういうこ とで医籍に入っているわけですから、チェックしようと思っても、処分歴については今 はできないというお話でしたから。 ○相川委員  そうです。 ○寺岡委員  ただし、医師を雇う場合には、個人に関しては免許証、履歴書等だけではなくて、や はりいまの医療界の1つの社会というものがあり、例えば大学から派遣されるとか、前 歴照会というのは医療施設は必ずやるわけですから、どこの流れ者かわからないような 医者が、突然免許証を持ってきて雇われるということは皆無ではないかもしれません が、そういうことは通常行われるパターンではないわけです。いまの状態で、そのお医 者さんの医師としての適性などは、別の方法で確認されている状態だと私は言い切って いいのではないかと思います。  一方、一般の患者さんなり、国民の皆さんがどういう場合に、どうしてそういった情 報公開を必要とするのかという、逆からのことも考えてみたほうがいいのではないかと 思うのです。患者さんが医師にかかるときに、いちいち、この人はどういう前歴がある とか、そういうことを考えて医師にかかる状態かどうか、ということも1つ基本にあり ます。今こういった協議を行っているのは、医師と患者の信頼関係や、より良い医療の 環境が構築されることを目指してやっているわけで、情報公開も1つの方法ではある が、もっと別の関係も大切にしなければいけない面があります。情報公開で全てをチェ ックして、この人は前に医療事故を起こしたことがあるかどうかをチェックすること が、良い関係に結び付くのかどうなのかという視点もあると思います。  逆に患者さんは、その医師がどういった手術歴があるとか、どういった専門性がある とか、そういったことを知りたいというのが90%、あるいはそれ以上ではないかと思い ます。それに関しては、本来は医療機関できちんと、このお医者さんは何年卒で、どう いう専門性を持っていて、外科系で言えば手術成績はどうかとか、そのようなことを患 者さんはアプローチすれば見られる。そういうことがいちばん好ましい状況ではないか と思います。 ○樋口座長  私も寺岡委員の意見とそう違わないつもりです。つまり医療機関が雇う際に、あるい はそういう処分歴であれ、何であれ、ちゃんとチェックできていますというか、そのほ うが一人ひとりの国民はそこまで心配しなくてもいいというので、よろしいのではない かという考えもあるのかなと思ったのです。先ほどの話でいかがですか。2つとも漠然 とした質問になっているのですが。 ○事務局  まずは事実関係といいますか、現状をご説明します。医籍はもちろん国家試験に合格 したあと、申請をしていただいて登録という形になるのですが、同じように医師法の中 に2年に一度、もちろん主に従事する勤務先の名称も含めて届け出る規定があります。 それが現在どのようになっているかと言いますと、それが例えば管理のデータベースに なっているということではなくて、統計として活用されている状況になっています。 ○樋口座長  そうすると、データとしては持っているのですか。 ○事務局  そういったものを届け出ていただいたものを、こちらで集計している状況です。 ○樋口座長  データベース化してはいないけれどもと。何をもってデータベースというのかです が。 ○事務局  そういう状況ですので、若干医籍とはニュアンスが違うような状況になっていますの で、むしろ今あるものを含めてどのように情報公開という中で活用ができるのか、また はできないのかとか、その辺のことも含めてご議論をいただければと思います。 ○樋口座長  確認ですが、先ほど私が言ったのは誤解ではないのですか。医療機関のほうで医籍に ついて懲戒処分歴も載っているわけですから、それについて聞きたいと問合せがあった 場合も、医籍に載っているちゃんとした医師ですよということだけは確認してもらえる が、懲戒処分歴については公開していない。公開というのは医療機関に対してですが、 していないのですよね。 ○試験免許室長  してないです。 ○樋口座長  それは何らかの根拠があるのですか。従来そうであったということですか。 ○医事課長  法的な根拠というか、それはないと思います。ただ、これは今後の議論になると思い ます。先ほどイギリスは処分をした場合、ネットに載せているというのがありました が、これは処分を受けたことについて、いつまで載せておくか。例えば取消しを受けた 方についてはずっとでもいいかもしれませんが、非常に短い停止の処分を受けた場合、 それをいつまでそういう事を載せておくか。あるいはそれをいつまで知らせるかという のは、憲法問題とも絡んでくると思いますので、そこはまた1つ大きな論点だと思いま す。 ○樋口座長  今度戒告というのができると、戒告処分というのが載るのでしょうね。 ○医事課長  戒告というのが医師法上の処分になれば、医籍には記載する形になります。 ○樋口座長  しかも公開するかどうかはともかく、ずっと載っているのでしょうね。 ○医事課長  医籍にはずっと載る形になります。 ○見城委員  インターネットの情報社会の怖さは、撤回しようと何しようと、ひとたびインターネ ット上に載ったものは、誰かがそれを集積するのです。例えば名前を打てば、それが本 当かどうかは別としても、どんどん蓄積されていって全て出てしまうのです。ですか ら、そういったネット社会の弊害も含めて、お医者様のプライバシーとしてはどれだけ 守って差し上げられるのか。その辺も考慮に入れながら考えるべきだと思います。  というのは、正式なネット上の情報と、正式ではない、ねつ造と言うと言葉が悪いの ですが、誰かが軽く書いた場合でも、ある意図を持って流した情報でも、出てしまい取 り消すことができないわけです。そのことに対してまた打てば、それはさらに火がつい ていくということで、個人的な被害を受ける場合も多々出ております。こういった場合 にどれだけ公開していくかは非常に重要だと思います。  これはお医者様のあり方にまでかかわってくるのですが、どこまで公とすべきか。個 人情報を、公にどこまでさらしてやっていくということが医者としての務めなのか、と いうことも一緒に考えるべきではないでしょうか。例えばマスコミに登場する人物とい うのは防ぎようがありません。ひとたびマスコミで生きるような生き方を選んだ場合に は、本人が全くかかわらない所で、名前を打ち込んだら、それをどこで話したことなの かチェックできないほど、とにかく出てくるのです。それはもう制御できない世界なの です。ですから、医師という職業の方が、そういう世界に入っていくのか。ネット上の 住民として、ネチズンとしてどういう立場になるのか、ここで一度は議論されるべきで はないでしょうか。 ○樋口座長  これはなかなか難しいですね。 ○岩渕委員  国民の立場から言いますと、先ほどの点で、寺岡委員がおっしゃった意見と若干違っ た感触を持っているところがあります。例えば採用について言いますと、いまはそれぞ れの大学の系列などで、あるいはブラックリストがあるのかもしれません。そういう意 味で言いますと、いま現在は問題医師、あるいはリピーターも含めて、ちゃんとした医 療機関は情報の収集はきちんとできていそうだなという感じは比較的するのです。ただ これから先はさまざまな形で、わかりやすく言えば白い巨塔が崩れていくということで すが、そうした中で、ネットのさまざまな情報も含めて言うと、きちんと把握できない ような時代に入りつつあるのかなということが1点です。  もう1つは、ちゃんとした情報が得られない。例えば日本医師会の会員以外の人たち に問題があるケースが多いということで言えば、大半のところ、あるいはいま現在のち ゃんとした医療機関は大丈夫だから、もう少し踏み込んだ情報はいらない、公表は必要 ないという意見には、にわかには賛成できない。つまりそういうごく一部の劣悪な医師 が問題なのであって、大半の医師についてはもちろん全く問題ないのは当たり前の話で すから、そこはどう担保するかということは第1点だろうと思います。そういうごく一 部の危ない医者にぶつからないためには、その情報がどうしても欲しいという、国民の 側からの要請はあると思います。微々たるものですが、患者にとってみると、その医師 にたまたま当たってしまったら、それは自分にとってすべてですから、できるだけ危険 は避けたいという意識から、これまでの処分歴も含めた格好での情報が欲しいと思うこ とも間違いないところだと思います。  ただし、それに対する個人情報の保護もありますし、一遍失敗したら一生駄目なのか という議論もありますので、その兼合いは非常に難しいのですが、そういったものの公 表に変わる新たな信頼関係構築の妙案がきちんと提示されているかというと、実はない のです。そういう意味で言いますと、情報提供に対して否定的な立場には私は立てない というのが1つあります。医籍に対しても、国民は事実上アクセスできませんから、国 民からアクセスできる情報はどの程度のところまで可能なのかという、そこのところを 探るというのが、この問題のポイントのような気がします。外国の場合はネットでとい うのがありましたが、例えば有料でここまでとか、そういう形である程度の到達点が見 えてくれば、これは国民の信頼を回復するための絶対必要な条件の1つだと思います。 いま現在の情報公開というのが、広告制限の撤廃やさまざまな形で行われてはいます が、まだ国民の間では若干の不安がありますので、そこはどうなるにしても、この検討 会でもう少し皆さんのご意見をお聞きになったほうがいいのではないかと思います。 ○寺岡委員  情報公開に反対しているわけではありませんので、そこはちょっと誤解がないよう に。やはり適切な形で透明性というものを、医療界側がどうやって確保していくのか、 あるいは世の中に示していくのかは大切なことだと認識した上での話なのです。できれ ばズタズタの人間関係で、どこの人か分からないような人か、ネットで探さないとその 人の前歴や性格が分からないという社会にはなってほしくないと思います。  いくら大学との関係が切れる社会になっても、どこかの病院に勤めていたという前歴 があるわけですから、それはお医者さんの属性といいますか、そういったものはきちん と医療機関は調べられる。その上で雇用するという状態は私は崩れるとは思っていませ ん。 ○見城委員  付け加えさせていただきます。医師のプロフィールを私たちが入手できることは大事 だと思います。ただ、先ほど申し上げたネット上の住民、ネチズンによる情報操作が、 ネット上の人たちだけで交換されるならよいのですが、最近の傾向として、例えば、私 のプロフィールを作ろうというときに、直接私に問合せをするのではなく、ネット上に 流れているものを引いて、そこからピックアップして作られるという時代なのです。で すから、医師という大変重要な職業の方々の、プライドがあると思いますから、医師と してのポジションが揺らぐことがないように、そのように1つ間違えて出された情報 は、また次の人によって紡がれていって、さらにまた新たな情報として、それが公の情 報として印刷されたり、出ていくということが現在行われております。ですから、情報 公開のポイントになるところは押さえてやっていただきたいと思います。 ○岩渕委員  だからです。今はきちんとした情報が流れていないから、そういういい加減な情報が 蓄積されたり、流れたりして、あたかも公的な情報であるかのごとく氾濫しているのが 現状です。そのことについて言えば、ある程度の国民がアクセスできるような形で、最 低限度の情報についてはもう少し信頼できる情報公開の方法、別に全部役所にやれとい うわけではないのですが、そういった方法は考える必要があると思います。それは医者 の名誉を守るためにも是非必要であろう。大半の真面目な医者にとってみると、そうい うことだろうと思います。国民の信頼も、そういうことから回復してくるのではない か。いまは2ちゃんねるか何だか知りませんが、確かにネットの訳の分からない情報は ものすごい流れ方ですよね。それに対する歯止めの意味でも、きちんとした情報は必要 だと思います。 ○樋口座長  少なくともここへアクセスして得られた情報については、これは一応きちんとしてい るから、たぶん大丈夫だと。それを厚生労働省で全部把握すればいいのかどうかという のは、また別の問題かもしれません。それと本当に医師の資格があるのかどうかだけ は、この情報は確かであるということが分かったほうがいいのではないかというご意見 ですね。 ○見城委員  私が先ほどから申し上げているのは、医療事故が起きたりした場合、今後そういった 情報公開が行われていて、医療事故が起きて、いろいろな行政処分が出ていった場合、 本当に必ず起きるであろうということは、ちょっとしたミスからネット上へ流されま す。誰か医師の名前を引けば全部出てくるようになります。そういうところに間違った 形で情報が、故意であれ、たまたまハプニングであれ出ていくことがある。そういう時 代だという時代認識の下に作り上げなければ、逆に医師の側からすると、上質の医師を 守ることができなくなるかもしれません。そういうことで申し上げているのです。 ○樋口座長  それは岩渕委員も同意見だと理解しています。医師の情報については、6番目に掲げ てあるのは、国民からの医師資格の確認。この人はお医者さんなのだろうか、という確 認方法はいまのところないのです。お医者さんへ行って、実際に医師免許が掲げてある ことはありますが、そのほかにはないということで、どうなのでしょうかということで す。次の話は、懲戒処分等についてまでのアクセスがあったほうがいいのかどうか。デ メリットもあるかどうか。それ以外の情報もありますね。イギリスの例ですと住所であ れ、生年月日であれ、何であれという話になっているので、これは別個の話なのかもし れません。 ○見城委員  例えば富士見産婦人科で、理事長でしたか医師の免許がないのにエコーの診察をして いたと。そういう例がありますが、いままで寺岡委員や相川委員のお話を伺いますと、 その事前チェックで、本来は医師でない方が医師を装ってできる余地がない、基本的に はそういう社会であると信じているのですが、そういうことが多いのでしょうか。なぜ こんな事を伺うかというと、いまの社会がどういう状況なのかということです。そこに 網の目をくぐるようなことがたくさんあるのか。ないのであれば、スタートラインが違 ってくると思うのです。  大きなアメリカのように本当に分からない国と、日本というのは、いまのところ違う という認識が私にはありますので、疑ってかかるか、最初から信じてかかるかというの は、全く違うものが出来上がります。それでいまそのようなご質問をさせていただきま したが、いかがですか。 ○寺岡委員  それは医療機関として起こり得ないことです。日本の政府があまりに極端な小さな政 府に走らない限りは、そういうことはないと思います。 ○見城委員  そうであった場合、かかる患者の側が、この方は本当にお医者様かしらといちいち調 べるか、そういう情報は大事なのだろうかと1回は考えて、本当に必要な情報をどうま とめて出すか、というときに必要な観点ではないでしょうか。 ○岩渕委員  これがベースなのではないですか。 ○見城委員  分かりました。もちろんそうなのですが、何か物事のスタートで、最初からこういう 事件が起きる、こういうことが大変だからこれをチェックする、そのためのチェック機 構として出していくというのか、常識的な情報として整えてスタートするのかは全く内 容が違ってくると思いますのでよろしくお願いします。 ○樋口座長  大体時間になりましたが、ほかにご意見があれば伺いたいと思います。医師の情報公 開については、早川委員いかがですか。 ○早川委員  皆さんのご意見はそれぞれごもっともです。最後に見城委員がおっしゃったように、 医師資格があるかないかということ自体について、国民から特に確認したいという需要 は、いまのところ多分ないのだろうと思うのです。将来もあまりそこはなくて、むしろ 焦点は処分歴についてどういう公開をするかということだと思います。皆さんからご意 見が出ましたが、一方で処分歴について国民が知ることができるということも、状況を いろいろ考えますと大事ではありますが、他方、やはり医師の更生というのは変です が、一度失敗したらもう駄目なのかということもあります。それから個人情報の保護、 プライバシーの保護という点もありますので、その兼合いをうまく付けなければいけな いという気がいたします。 ○樋口座長  ほぼ時間になりましたので、今日はここまでとして次回へつなげたいと思います。次 回のことについて事務局からお願いします。 ○事務局  次回は10月14日(金)10時〜12時までを予定しています。場所については追ってお知 らせいたします。いまのところは未定です。資料については、第1回、それから本日の 議論を踏まえて、事務局において資料をご用意させていただきたいと考えております。 ○樋口座長  いまのことについて何か疑問やご意見はございませんか。それではまた次回にしたい と思います。本日はどうもありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省医政局医事課  電話 03−5253−1111(内線2568)