05/09/07 今後の労働時間制度に関する研究会 第8回議事録            第8回今後の労働時間制度に関する研究会                       日時  平成17年9月7日(水)                           10:00〜                       場所  厚生労働省専用第21会議室 ○諏訪座長  皆さま、おはようございます。定刻となりましたので、ただ今から第8回の今後の労 働時間制度に関する研究会を開催させていただきます。皆様におかれましてはお忙しい 中をお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。本日の出欠ですが、佐藤委 員、水町委員、山川委員から欠席の連絡をいただいています。  議事に入ります前に、事務局に人事異動があったということですので、ご紹介をお願 いいたします。 ○前田賃金時間課長  8月26日付けの人事異動で、監督課長に大西が就任しています。 ○大西監督課長  今度、監督課長になりました大西でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○前田賃金時間課長  同日付けで、監督課の調査官に小林が就任しています。 ○小林調査課  監督課の調査官になりました小林です。よろしくお願いいたします。 ○前田賃金時間課長  以上です。 ○諏訪座長  どうぞよろしくお願いいたします。  では議事に入ります。議題は、第1番目にアンケート調査結果及びヒアリングのまと めの検討、第2番目に裁量労働制についての検討です。まず、この検討会で皆様にご検 討いただいてきました、裁量労働制に関するアンケートですが、集計がほぼ終了したと いうことですので、それについて報告をしていただくとともに、この間実施してきた個 別企業の方々からのヒアリングの結果をまとめたものを、事務局から同じく報告しても らいます。企業の現場における裁量労働制を巡る現状と課題について、改めてご認識い ただき、今後の議論を進めていく上での材料にしていただければと存じます。事務局か ら、まず資料の説明をお願いいたします。 ○前田賃金時間課長  資料1、アンケート調査結果についてです。資料の1の1で、アンケートの概要につ いて簡単にまとめています。この検討会で調査票についてご検討いただいた後、今年5 月から6月にかけ郵送で、裁量労働制を導入している事業場及びそこで働いておられる 労働者について調査をしました。労働者については、導入事業場経由のと労働組合経由 と2つの方法で調査をしています。調査の内容等は、そこにあるとおりです。  2頁は調査の対象です。3頁の(1)、まず裁量労働制の導入事業場については、1 つは昨年度中に専門業務型裁量労働制についての労使協定の届出があった事業場の約半 分の事業場、もう1つが昨年度末現在で、有効な企画業務型裁量労働制に係る労使委員 会の決議の届出を出しているすべての事業場です。両方合わせて対象事業場が2,834、 回答が820、回収率が28.9%です。  産業をみますと、製造業が回答事業場の中で37.4%で一番多く、サービス業30%ぐら い、さらに金融・保険、教育研究などです。3頁の(2)、裁量労働制を導入している 事業場で働く労働者ですが、累計として4種類の労働者ということで各事業場で選んで います。専門業務型裁量労働制適用者、企画業務型裁量労働制適用者、管理監督者、そ れ以外の一般という4種類です。年齢的には、専門業務型は30歳代が55.7%で過半数以 上、企画業務型についても30歳代が62.5%です。管理監督者については、40歳代が52.4 %、50歳代が30.1%です。その他の方については、30歳代がやはり42%と多くなってい ます。勤続年数ですと、専門業務型は、5年〜10年、あるいは10年〜15年というところ が、2割を超え、その辺が一番多くなっています。企画業型は、10年〜15年が32%、15 〜20年が23%です。管理監督者については、15年〜20年、20年〜25年が2割を超えてい ます。その他については、5年〜10年、10年〜15年の辺りが、調査回答していただいた 方の分類としては多かったということです。  4頁は年収です。専門業務型の裁量労働制適用者については400万円台〜700万円台が いずれも10数パーセントで600万円台が16.5%と、一番多くなっています。企画業務型 についても、500万円台〜800万円台がいずれも10数%です。600万円台が19.9%、700万 円台が19.8で、その辺の年収の方が多くなっています。管理監督者については、700万 円台以上がいずれも大体10%以上で、最も多い1,000万円台が19.1%です。その他の方 については、300万円台が一番多く、あとは400万円台、500万円台というような年収分 布です。  大きな3つ目が、企業に対する調査です。これは、基本的には裁量労働制をまだ導入 してない企業について、上場企業の中から2,000社を対象に調査しています。回答は409 で、回収率20.5%です。アンケートの結果については、資料1−2を併せてご覧くださ い。単純集計のベースで整理しています。クロスなどは、ここではまだ整理されていま せん。調査票のうち主要な項目について集計したということで、必ずしもすべての質問 について集計ができているわけではないことをご留意ください。  資料1−2の1頁目から、裁量労働制を導入している事業場についての調査です。採 用している労働時間制としては、当然裁量労働制を導入していることが前提ですが、そ れ以外としてはフレックスタイムが4割ぐらい、事業場外みなし労働時間制が3割ぐら い導入されているという形です。2頁で管理監督者の職位について聞いています。課長 相当職を管理監督者として扱っている事業場が、6割を超えています。その下で、今後 の労働時管管理の在り方ですが、労働時間規制を受けない働き方を導入するとか、そう した意見がある程度みられます。3頁は裁量労働制の対象業務です。専門業務型につい ては、新商品・新技術の研究開発業務というものと、情報処理システムの分析・設計と いうものが多いです。それ以外はかなり特殊な業務ということもあって、割合的には少 ない。一方企画業務型については、結構いろいろな業務がほぼ平均的に導入されていま す。  4頁は、裁量労働制を導入したきっかけです。専門業務型も企画業務型も、成果主義 型人事労務管理の導入の一環とか、あるいは労働者の創造的能力を高め、発揮を促すと いうことで、導入したというような回答が多くありました。ただ企画業務型の場合に、 成果で評価してほしいという労働者からの要望といったものもかなり割合的にはありま す。  5頁は手続の問題です。専門業務型の手続については、労働時間の状況の把握方法の 検討とか、健康・福祉確保措置とか、あるいは協定の作成・届出といったものが相対的 には負担に感じるというところです。7頁は企画業務型の手続についてです。これにつ いても、労働時間の状況の把握方法の検討とか、報告の作成・届出、あるいは個別労働 者からの同意、労使委員会の運営規程の策定といった辺りが、手続的に負担を感じてい る割合が高い部分です。  若干飛びますが、10頁の12番に、専門業務型について、労働者の同意を要件としてい るかですが、法令上、労働者の同意は要件になっていないのですが、同意を要件として いる事業場が58.4%で、半数を超えています。11頁は同意を要件としている理由として は、労働者のモラルの向上というようなことです。さらに14番で同じく、法令上は専門 業務型の裁量労働制については労使委員会の決議が要件となっていないわけですが、専 門業務型についても労使委員会の決議を行っているというのが、37.4%です。  12頁で、「裁量労働制適用者に出勤・退勤時刻を適用するとの定めがあるか」では、 「裁量」と「出勤・退勤時刻」とは矛盾するような概念になるわけですが、「出・退勤 時刻は自由だが、出勤の必要はある」というのが多いわけですが、専門業務型について は「一律の出勤・退勤時刻がある」が27.5%です。また「出勤・退勤の定めが適用され る場合に、遅刻した場合に賃金カット」を行うような事業場もみられます。  13頁は、管理監督者の労働者に対する仕事の指示の仕方です。多いのは、「業務の目 的・目標・期限等、基本事項を指示する」です。特に、裁量労働制についてはそういう 割合が多いです。  若干飛びますが、15頁は「みなし労働時間」についてです。専門業務型、企画業務型 のそれぞれに聞いています。そもそも「みなし労働時間の決定方法」については、19頁 の26です。企画業務型の場合は、7割が所定労働時間でみなしています。専門業務型に ついては、54.2%が所定労働時間でみなしています。専門業務型の方が、今までの実績 からみなし労働時間を決定しているという割合は、相対的には高いです。実際のみなし 労働時間は、15頁の22で、全体で見ると専門業務型の場合には8時間が25.2%で一番多 く、あとは8時間30分を超えて9時間以下が24.3%です。平均的には8時間26分となっ ています。これに対して、実労働時間が16頁です。多いのが、8時間30分を超えて9時 間以下、あるいは9時間を超えて9時間30分以下で、平均で実労働時間は、1日9時間 9分で、40分ぐらい、みなしと実労働時間との間に差があります。企画業務型について は、先ほどの回答にあるように、所定労働時間でみなすという割合が非常に高く、みな し労働時間については「7時間30分から8時間未満」が、47.3%で、最も多くなってい ます。「8時間」は18%です。平均的にみると、8時間3分です。  それに対して実労働時間が18頁の25番です。多いのが「8時間30分を超えて9時間以 下」が24.8%です。「9時間を超えて9時間30分以下」が15.3%です。平均では9時間 2分で、企画業務型の方は、みなし労働時間と実労働時間との差は1時間ぐらいという ことで、専門業務型よりは乖離が大きいです。  21頁の29番は、労働時間の把握方法です。「自己申告による」が、裁量労働制の適用 者についてはかなり多いところです。若干飛び、26頁は、裁量労働制適用者に対する特 別の手当です。専門業務型の場合に月単位が約4割、年単位が7.8%です。裁量労働制 適用者についての特別手当の額は、月単位で平均で約6万2,000円です。年単位で払っ ている場合には、約136万円です。企画業務型についても、月単位の特別手当は、約6 万5,000円です。年単位の場合には、122万円です。  30頁は、評価を誰がするかです。最も大きなウエイトを占める者は、直属の上司で、 さらに上の上司、その2つが大部分です。  31頁は、健康・福祉確保措置です。決議などで実施することとなっているものとして は、一番多いのが、「産業医等による助言指導、保健指導」です。あと、健康相談の窓 口を設置する。そのほかに、一定時間数以上の勤務や休日労働が行われた際の健康診断 の実施とか、年次有給休暇の取得促進といったようなものを実施することとなっている 割合が高くなっています。実際に実施したものについても大体同じようなものが多いで すが、実施することとなっている割合に比べると、かなり実際に実施している割合は低 い状況です。  32頁は、苦情処理措置です。基本的には、人事や労働組合、労使委員会などに相談窓 口を設置するということと、上司への申入れというようなことが内容になっています。 実際に苦情があったという事業場の割合は、専門業務型で5%、企画業務型と1.6%で、 苦情の申出のあった割合は非常に低いということです。ただ、その中で苦情の内容とし ては33頁の48番のとおり、業務量が過大とか、労働時間が長い、あるいは適切な評価 を受けていないといったような辺りが多くなっています。  以下、裁量労働制についての要望です。まず、対象業務の範囲についてどう考えるか ですが、専門業務型については現行制度でよいが57.1%、狭すぎるというのよりも割合 的には多くなっています。34頁では、企画業務型については狭すぎるとする事業場が 67.9%で、狭すぎるとする事業場が多いということです。その狭すぎると考える場合 に、具体的にどうすべきかということで、専門業務型・企画業務型ともに、対象業務の 範囲は労使にゆだねるべきというものが一番多くなっています。企画業務型の場合に、 それ以外には事業の運営に関する事項についての業務という限定は不要であるとか、あ るいは一定以上の年収があればいいのではないかとか、企画・立案・調査・分析という 業務の限定は不要であるといったような意見が多くなっています。35頁は、裁量労働制 の手続についてです。専門業務型については、現行制度でよいとするものの割合が75.9 %で、一方、企画業務型では、有用でない手続があり煩雑とするものの割合が66.3%で す。どういう手続が煩雑かについては、専門業務型の場合は協定の届出が多く、企画業 務型の場合は、労使委員会の議事録の作成とか、個別労働者からの同意、あるいは労使 委員会の決議届の作成・届出といったものが多くなっています。  現在の裁量労働制については、あくまでも「みなし労働時間」ということで、みなし という法律的効果になっているわけですが、そうした法的効果についてどう考えるかで は、専門業務型のみを導入している事業場については、現行制度でよいが52,9%です が、企画業務型のみを導入している事業場では、法的効果については変更すべきが78.9 %と、多くなっています。変更すべきという中身としては、深夜なり休日といった規制 を適用除外すべきという意見が多くなっています。一方で、一定以上の高い水準の年収 の確保を要件にするというような意見も、かなり割合的には高くなっています。以上 が、導入事業場についてのものです。  38頁からは、導入事業場の労働者についての調査です。39頁は業務の指示です。先ほ ど事業場の回答があったわけですが、労働者の方も上司の業務の指示については、基本 的な事項についてのみ指示があるとする割合が多いわけですが、状況の報告の頻度につ いては、39頁の4では、日々状況を報告するとか、あるいは週ごとに状況を報告すると いう割合がかなり高くなっています。40頁で、さらにその状況を報告した場合に、具体 的な指示がなされる割合も、4割程度あります。さらに、追加の仕事を命じられるとい うこともたまにあるとか、日常的であるという回答も多くなっています。41頁では、出 退勤について、労働者の回答としても、一律の出退勤時刻があるとするものが、2割な いし3割です。42頁は月間の最長・最短の労働時間をそれぞれ専門業務型、企画業務 型、管理監督者、一般労働者に聞いています。専門業務型が、最も労働時間としては長 い傾向があります。43頁の休日労働の回数についても、専門業務型が休日労働をしてい る割合が、8回以上とか6回とか、その辺も含めて多くなっている。深夜労働について も、専門業務型が最も回数が多くなっています。44頁の年次有給休暇の取得日数につい ては、管理監督者が最も少なく、専門業務型がその次に少ない状況です。45頁の年間で 何日休日を取得したかについても専門業務型が最も休日の取得が少ない状況です。  健康・福祉確保措置について、47頁の19番で十分かどうか聞いていますが、普通とい うのが最も多い。不十分・やや不十分という回答をした方について、48頁で具体的に要 望があるかどうか聞いた場合、具体的な要望内容としては、休日・休暇を組み合わせた 連続休暇の導入とか、年次有給休暇の取得促進、あるいは一定の勤務が行われた場合の 特別休暇の付与ということで、休日とか休暇が健康・福祉確保の要望としては割合が高 くなっているところです。苦情の申出については、先ほど事業場ベースでも、申出件数 が少ないということですが、労働者の方も苦情を申し入れたことがあるとする者が、専 門業務型では3.2%、企画業務型では1.1%と、非常に低くなっています。苦情の内容と しては、人事評価が不透明だとか、業務量が過大といったような内容が割合的には多く なっています。50頁の苦情処理体制や対応では、不十分・やや不十分とする者が2割〜 3割で、具体的には51頁で、相談をどこにすればいいのかが明確でないことで、不十分 であるという回答が多くなっています。  52頁は裁量労働制の適用を志望した理由です。専門業務型の場合は、そもそもそうい う部門とか、職種全体が適用されることになっているというものが、割合的には高くな っています。一方、企画業務型については53頁ですが、仕事の裁量が与えられることに より、やりやすくなると思ったという割合が多く、部門、職種全体が適用される割合 も、それに次いて多くなっています。  裁量労働制が適用された後、期待どおりであるかどうかについては、この裁量労働制 の適用を志望する理由との関連で見ると、自からの能力の有効発揮に役立つと思ったと か、仕事の裁量が与えられることにより仕事がやりやすくなると思ったので適用された という方について見ると、期待どおりとする回答の割合が、専門業務型・企画業務型と もに高い状況です。54頁は、裁量労働制の適用を受けていることに満足かで、専門業務 型は一部不満とか、大いに不満を足すと、4割弱です。不満の内容としては、業務量が 過大であるとか、労働時間が長いが、多くなっています。企画業務型については、専門 業務型よりは不満の割合は低いのですが、やはり業務量が過大であるとかの不満が多く なっています。  56頁からが、裁量労働制の適用前と比べての変化です。労働時間については、ほとん ど変わらないが多いのですが、長くなった及び短くなったというのは、ほぼ同じくらい です。労働時間が短くなったという場合には、自分のペースで仕事ができるということ から、短くなったというのが多く、また長くなったという理由は、追加の仕事が多いと か、締切の設定に無理があるものが多いといった理由です。  賃金について、裁量労働制適用前と比較した場合には、これも「ほとんど変わらない 」が多いわけですが、どちらかというと、「少し増えた」という割合が多くなっていま す。58頁で、その変動の要因としては、裁量労働制に関する手当が支給されたというこ とで増えたというものが多い。健康状態については、これも「ほとんど変わらない」が 多いのですが、「少し悪くなった」という方が、「良くなった」というよりも、ちょっ と多くなっています。59頁では仕事の効率についてですが、「あまり変わらない」が多 いのですが、「少し効率的になった」という方が、回答としては多くなっています。60 頁以下は、労働者に裁量労働制についての要望ということで聞いています。  対象業務について、まず専門業務型の対象業務について、43番ですが、専門業務型を 適用されている方の場合には、「現行制度でよい」とするものが、71.4%で、最も多 い。企画業務型については、44番ですが、「現行制度でよい」というのが62.8%で、実 際に裁量労働制を適用されているタイプの方としては、「現行制度でよい」が、労働者 の回答としては多くなっています。例えば、狭いと考える場合には具体的にどうすべき かでは、61頁ですが、やはり専門業務型・企画業務型にかかわらず、労使にゆだねるべ きという回答が多い。一方、広すぎると考える場合にどうすべきかでは、特別の処遇と か雇用管理を要件にすべきとか、あるいは一定以上の年収の者に限るとかのご意見が多 くなっています。  63頁ではみなしという法的効果について、労働者にも聞いているわけですが、「現行 制度でよい」とする割合が、専門業務型・企画業務型ともに半数を超えています。ま た、「変更してもよい」も、3割程度労働者の方でもいる。その場合に、一定の水準の 年収が確保されるならば、労働時間制を適用除外してもよいとか、一定の休日・休暇が 確保されるならば、労働時間制を適用除外してもよいというご意見も、かなりあるとい うことです。  64頁以下は、企業についての調査です。ここの企業については、基本的には裁量労働 制を適用していないことを前提に抽出しています。採用している労働時間制度として は、通常の労働時間制度以外にも、フレックスタイムなどが多くなっています。66頁で は、管理監督者の職位についてですが、課長クラスが6割ぐらいで、管理監督者として は課長クラスを扱っている所が多いということです。裁量労働制について、対象業務と か、導入手続を知っているかですが、67頁を見ると、専門業務型・企画業務型ともに知 っているが76.5%で、裁量労働制そのものはかなり周知の度合としては高くなってきて いるところかと思います。68頁で、対象業務がある企業について、裁量労働制を導入し ていない理由は、専門業務型については、「現行の制度で十分だから」というもの、あ るいは「管理が煩雑」、あとは「検討中」というところです。企画業務型についても、 「現行労働時間制度で十分」とか、手続煩雑といったことで導入してない。70頁は、法 的効果が少ないということで導入してないというのは、そんなに多くはありません。そ の中では、適用除外というご意見もあります。  対象業務の範囲について、導入していない企業に聞いた場合は、専門業務型・企画業 務型とも、「現行制度でよい」が50%強です。資料1−3は、その調査票ですので、説 明は省略いたします。  資料2は、この研究会で非公開の形で個別企業の方からヒアリングをした結果です。 全部で6社で、企業によっては労使双方、あるいは使用者のみでした。主な内容を説明 いたします。  A社ですが、一般機械器具製造業です。裁量労働制について、専門業務型で研究開 発、あるいは企画業務型で企画職ということで導入しています。みなし労働時間が7時 間40分、月の所定労働時間が153時間に対して、在社時間が185.6時間です。処遇につい ては、裁量労働手当として、本給の14%を手当として払う、あと半期ごとの評価を賞与 に加減するという中身です。2頁は、裁量労働制についてのご意見です。労働者の意欲 向上が成果としてはあるということですが、一方で、時間の概念がちょっと希薄化して いること、あるいは裁量労働制の対象にならないような職場についてもモチベーション の低下があるというようなことです。具体的な問題として、1つはこの会社の場合に持 株会社の形態をとっているわけですが、持株会社傘下の法人が、別の法人の事業の運営 についての企画・立案・調査・分析などを行う場合に、企画業務型裁量労働制の対象に なっていないことで、そういう企業のガバナンスの変化に対応して柔軟な対応ができて いないということがあります。また、企画業務型について、専ら企画・立案・調査・分 析の業務を行っていることを要件にしているのですが、実際の現場からは、100%そう した業務のみをしているというのがなかなか実態に合わないということです。具体的な 見直しについての要望として、対象事業場なり、対象業務の定義はガイドラインに留 め、決定は労使の自治に委ねてほしい。2つ目は、先ほどの持株会社の場合の傘下の場 合に、ほかの法人の事業の運営に関する事項も対象にしてほしい。企画・立案・調査・ 分析について、先ほどの100%そればかりということではないので、どの程度ウエイト を置いているかによって判断すべきではないか。さらに、対象業務について、もうちょ っとホワイトカラー全体に広げてほしい。営業などについても、業務を委ねているとい うところから、対象にすべきである、そこに裁量があるというご意見です。労働時間規 制の適用除外については、この会社の場合には、むしろ対象業務が広がれば、法的な効 果としては裁量労働制でも、適用除外でも、どちらでもいいのではないかというご意見 です。実際に適用除外する場合の考え方ですが、やはり対象業務について労使の自治に 委ねてほしいということがあります。一方、有給休暇取得日数など、そうした観点から の対応が必要であろう。管理監督者については、現状としては課長職が扱われていると いうことです。管理監督者のあり方についてですが、特に持株会社の場合に、グループ 全体の責任と権限を有しているということで、管理監督者の割合がかなり高くなるとい うことですが、単純には割合だけではなく、具体的な実態や役割を加味して、管理監督 者の範囲を判断すべきであろうということです。適用除外の見直しについては、管理監 督者について、現在深夜業が適用除外されてないということですが、深夜業を含めた適 用除外をすべきであるが、一方で、健康管理体制の充実が必要であろうということで す。年次有給休暇については、取得率が46.9%ということで、取得日数の増加が課題で す。4頁では労働組合からのヒアリングもしたわけですが、この企業の場合にアンケー トなどによって、組合員の8割ぐらいは、裁量労働制が適用されて満足しているような 結果が出ているということです。苦情について、納期、業務量等に関する苦情があると いうことですが、それについては労働組合の方に、苦情として上がってくるものが多 い。労使委員会が、大体所要時間が30分から1時間ということで、新規に対象になった 方の確認とか、健康診断の結果の確認などが主なものということです。課題として、特 に時間の意識が希薄になるようなところがあって、深夜まで結構働く方もいるというこ とで、健康面の課題があるということです。  B社は金融業です。ここでも、裁量労働制について、専門業務型・企画業務型を導入 しています。労働時間管理については、ある程度労使自治に委ねても問題はないような ところがあるのではないか、特にホワイトカラーについて、労働者の裁量に任せ、成果 で評価していくことが必要であるということです。現在の裁量労働制については、対象 が限定的で、手続も煩雑であるということもあり、そもそも労働時間管理の対象になら ない労働者のカテゴリーを認めていくべきということです。6頁ですが、裁量労働制に ついて、みなし労働時間が1日8時間半ということで、半期ごとに成果を賞与に反映し ている形です。在り方についてのご意見ですが、対象業務が限定列挙されているわけで すが、それ以外の業務でも本人の裁量で勤務する職務は多いということです。ディーラ ー、トレーダー、営業をはじめ、対象業務を広く認めてほしい。労使協議を過半数組合 と行っているので、労使委員会は屋上屋である。特に、労働組合の場合には資金もあり ますし、専従でやっている方がいて、そうした活動があるので労働者の意見の集約がで きるのですが、労使委員会は資金や時間もなく、協議の相手方としては適当ではないの ではないかとのご意見があります。要望としては、見直しについて、基本的には労使の 判断で任していただきたいというのが1つです。みなし労働時間は、労働時間配分に裁 量がある労働者という定義からいくと矛盾しているのではないかということで、休日の 制限などもあるということで、管理監督者と同様に適用除外にすべきということです。 具体的に適用除外については、例えば年収1,000万以上の方については労使協定で対象 業務を定め、適用除外するのがいいのではないかという意見です。1,000万未満の方に ついては、法令で定める業務に限定して適用除外ということが考えられるのではないか ということです。管理監督者については、部長・支店長、次長・副支店長、参事役とい うところで、処遇面でかなり差はある。管理監督者についての要望は、8頁で、現在管 理監督者の中で、いわゆるスタッフ職ということで、解釈によって管理監督者の中に入 れている所があるわけですが、仮にエグゼンプションというような概念で別のカテゴリ ーを作るのであれば、スタッフ職についてはそちらに整理すべきではないか。また、深 夜の割増金については適用除外すべきと、同じようなご意見です。年次有給休暇につい ては、取得率が52.8%で、あり方について連続取得を前提にした法制度も考えられるの ではないかとのご意見です。  9頁はC社、保険業です。基本的に非定型的な要素が強い業務が多く、成果に基づい て処遇が決まる働き方が多い。ただ定型的な業務に従事する労働者については、所定の 労働時間をベースに所外を削減していくことが重要であろうということで、裁量労働制 についてはこの企業ではまだ現在導入していないですが、今後導入予定ということで す。その在り方についてのご意見ですが、9頁の一番下で、対象の範囲が、業務とか事 業所での制限ではなく、労働者の裁量で判断すべきではないか。管理部門であっても、 第一線部門でも裁量度は大きいということで、評価も同じ基準でしており、ローテーシ ョンも頻繁に行われるということで、必ずしも管理部門に限るべきではないというご意 見です。手続として、企画業務型が専門業務型と同様に、労使協定を導入できるように してほしいとか、本人同意の負担が大きい、報告は簡素化すべきという手続面でのご意 見があります。適用除外については、裁量労働制はあくまでもみなし労働時間というこ とで、時間の概念が残るということで、本来時間の投入で評価できない働き方に対して は不十分であるということで、非定型的な業務に従事して裁量度が高い労働者について は、適用除外とすべき、ただ健康・福祉確保措置は不可欠であろうというご意見です。 具体的にどういう対象をということですが、非定型的な業務に携わる、裁量度の高い方 で、一定の年収水準を有する者ということです。その場合に、健康・福祉確保措置とか 深夜の制限・休暇取得などが必要で、休日の適用除外については、慎重に考えるべきで はないかというご意見です。管理監督者ですが、基本的に課長以上です。管理監督者の 在り方についてのご意見は、11頁です。ここでも、ホライトカラーエグゼンプションの 一形態でよいというような、これはアメリカのエグゼンプションのことを想定されてい るのかと思いますが、そういうご意見です。ただ休暇取得促進などは必要であろう。年 次有給休暇については、12頁では自発的な取得促進だけでは国民性などから考えると、 なかなか難しいところがあるので、制度的に何らかの休暇取得促進の背景が必要ではな いかとのご意見です。一方、所定外労働については割増賃金の引上げは、生産性の低い 労働者の賃金が高くなるというような矛盾があって、モチベーションの低下につながる というご意見です。労働組合からのヒアリングですが、裁量労働制あるいはホワイトカ ラーエグゼンプションということで、オーバーワークの懸念がある。特に、業務職員が かなり定型的な仕事をするという感じですが、それを中心にこれまで労働時間短縮に取 り組んできたということで、一方そういう総合職員、専門職員といったような裁量労働 制の対象になるような方が、かなり頑張ってしまうところがあるということです。日々 の時間短縮を重視したことから、年休の取得がなかなか進んでいない面がある。ただ意 見として、日々の時短よりも休暇の付与の方が健康面では効果があるということではな いか。労働者からも、そちらの方が要望としてはある。実際上の問題として、顧客との 関係などで、どうしても休日労働をしないといけないということもあるので、日々の時 間短縮も必要になってくるというようなご意見です。  13頁はD社、これも保険業です。労働時間管理について、同じく成果が一般的に労働 時間の長さと比例しないということで、労働時間規制になじまない面があるということ で、労働時間規制の概念を除外するような働き方も必要ではないかというご意見です。 対象業務としてここにあるように、企画・立案業務を中心に、裁量労働制を適用してい るということで、みなし労働時間が8時間30分、26時間相当分の手当を払う形です。14 頁は裁量労働制の在り方についてです。対象範囲については、広くホワイトカラーまで 対象を広げる方が実務にマッチするということで、必ずしも純粋に企画業務だけに従事 している社員はほとんどいないということと、一般にその役職とか経験年次で裁量を与 えることが多く、業務によって裁量を与えることがなかなか実態に合わない面があると いうご意見です。見直しについての考え方ですが、対象業務について業務内容を十分に 熟知している労使に委ねる、労使自治の考え方を導入する、そもそも労働時間と非労働 時間が不明確な中で、みなし労働時間といった労働時間の考え方を引きずる必要がな く、適用除外にすべきということです。手続についても、簡素化すべきということで す。15頁では、労働時間規制の適用除外とすべきということですが、対象については労 使自治で決定し、労使協定あるいは報酬などの要件を客観的に基準として定めて、適用 除外にするというご意見です。管理監督者についてですが、ここも課長以上を扱ってい るということですが、範囲については名称を問わず、内容、権限、賃金水準、労働実態 をもって判断すればいいということで、やはり深夜業については、適用除外とすべきと いうご意見です。年次有給休暇、所定外労働については実態ですので、特にはありませ ん。16頁は労働組合からのヒアリングです。労働者について、やはり裁量労働のオーバ ーワークの懸念があるということで、そうしないようにとの意識がある。一方で、自分 のスタイルで仕事ができると受け止める者も多い。ただ課題としては、コミュニケーシ ョンの不足とかもあるとのことです。  18頁はE社、製造業です。労働時間管理について、健康障害防止のための労働時間管 理の重要性は増すが、その際には従来の労働時間管理ではなく、出・退社など違った概 念の管理というものが望ましいのではないかというご意見です。裁量労働制について は、本社スタッフあるいは研究職・開発職ということで導入している。19頁は、裁量労 働制の在り方についての要望です。本社スタッフ職の専門化・高度化で、専門業務型・ 企画業務型の違いが希薄化しており、両者を区別する意味は薄いというご意見がありま す。見直しについての要望ですが、企画業務型について個別同意ではなく、包括的な同 意の形にしてほしい。ただ就業時間帯等、一定の労働時間帯の規制は必要ではないかと いうことです。労働時間の適用除外については、ある程度限定した範囲で適用除外をと いうことです。対象の範囲は、現行の裁量労働制の対象の範囲に準ずるものでいいので はないかというご意見です。20頁は、同じく労働組合からのヒアリングです。健康障害 の懸念ということで、健康・福祉確保措置が適切に運用されているかどうかを注視した い。ただ労働組合の方でも、裁量労働制を選択している方は、自分の成果を労働時間で はなく成果でみてほしいと考え、本人が同意して選んでいるという認識であるというこ とです。  21頁はF社、情報通信業です。ここでも企画業務型の裁量労働制を適用しているとい うことで、みなし労働時間が1日8.643時間です。年収の12%がそのみなし労働時間の 手当の形で払われています。裁量労働制の在り方についてですが、22頁で、この会社の 場合、特定の方にかなり仕事が偏るということがみられるということで、マネジメント の問題も含め、やや課題としてはあるということです。見直しについての要望は、対象 業務を拡大するとか、手続を簡素化するとかいうようなことです。適用除外について も、ある程度高いレンジの年俸額を設定して、それによって適用除外するということで す。ただ深夜・休日まで適用除外するのはいいのかどうかというご意見です。管理監督 者の範囲についても、健康面・メンタル面などを含め、サポートは必要であるというご 意見です。以上が、アンケート調査結果及びヒアリング結果のとりまとめです。とりあ えず説明を終わります。 ○諏訪座長  どうもありがとうございました。ただ今のアンケート調査結果・ヒアリグのまとめを 巡りまして、ご質問なりご意見をいただければと思います。 ○荒木様  簡単な確認させていただきたいのですが、アンケートで、導入事業場の調査と導入事 業場の労働者、それから企業と、3種類とられているわけですね。裁量労働制の導入事 業場の調査というのは、これは回答する人はどなたになるのですか。 ○前田賃金時間課長  基本的には、その事業場の人事労務の担当の方であると思います。 ○荒木様  そうすると企業調査の場合とは、重複はしてないということですか。 ○前田賃金時間課長  裁量労働制の協定なり、決議は一応うちの方で全部集めた上で、企業調査について は、そうした裁量労働制を導入されている企業は予め除いたということになっていま す。ですので、裁量労働制が適用されていないということを前提に調査をしたというこ とです。ただ、4%ぐらい、裁量労働制を適用しているという回答になっていますの で、そこは全部除かれていたわけではなかったというところはあります。 ○荒木様  まとめの概要の資料1の3頁で、他の労働時間制適用者と、つまりこれは専門業務型 裁量、企画業務型裁量、管理監督者を除くということですので、要するに実労働時間制 の対象となっている人たち、そう理解してよろしいのですか。 ○前田賃金時間課長  基本的にはそうです。 ○荒木様  ありがとうございました。 ○諏訪座長  他の委員の先生方もご意見なり、ご質問などお願いします。 ○西川様  サンプリングの質問です。これは労働者が4種類に分かれていまして、専門業務型、 企画業務型、管理監督者、それから4つ目がそれ以外の常用労働者ということですが、 この人たちを抽出するときに、たぶんどこかに書いてあるのかもしれませんが、こうい う人たちの、例えば3頁、集計対象数が4,678人となっているのですが、これは各企業 からどういう形でこの4つの労働者をサンプリングしたということになっているのです か。 ○前田賃金時間課長  事業場に、まず労働者用の調査票を送りまして、その事業場でそれぞれの類型の方を 2人ずつ選んで、その方に調査票を渡していただいて、あとは、労働者の方から直接送 っていただく形になっています。労働組合を経由したものがあるのですが、それも同じ く労働組合経由で、これは管理監督者以外の人ですが、裁量労働制適用者とそれ以外 の、1・2・4です。その方をやはり2人ずつ選んで、その方に調査票を渡していただ き、送っていただくということです。あと、1つの事業場で、専門業務型と企画業務型 の両方を導入していないというようなこともあり得るので、数としては必ずしも一致し ないことも出てきます。適用されている人がいない場合には、その類型はなしというこ とになりますので、裁量労働制が適用されている事業場ということで押さえて、事業場 にお送りし、そこからそれぞれの類型の労働者に配分していただいたということです。 ○西川様  2人ずつ選ぶのは、各事業場に任せてあって、決してそれが何というのですか、典型 的な代表サンプルということではないわけですね。 ○前田賃金時間課長  基本的には、誰を選ぶかということについては事業場にお任せしたということです。 ○西川様  でも比較的年齢とか、性別とか勤続年数とかを見ますと、かなり代表的なその特徴と いうのは出ていると思うのですけれども、ではこれは必ずしも全数を反映しているとい うようなサンプリング上ではそう考えない方が、どちらかというと安全だということで すね。 ○前田賃金時間課長  抽出の仕方としてはですね、はい。 ○西川様  ありがとうございます。 ○諏訪座長  ほかにいかがでしょうか。 ○守島様  今の点とも多少関連するのかもしれませんけれど、裁量労働制が適用されている労働 者に関して、業務量が過大である、労働時間が長いという回答が、54〜55頁を見ると比 較的あるのですが、裁量労働制が適用されているから業務量が過大になったり労働時間 が長くなったりするのか、もともとそうで、たまたま時間管理制度が違っているだけな のかというところが何かでわかるかと思って見ていたのです。裁量労働制が適用されて いない労働者が労働時間に関してどう感じているか、業務量についてどう感じているか という辺りの質問は、この中に入っていませんでしたか。何となくこれを労働者の側か ら見ると、労働時間はそんなに変わっていない。トータルで見た場合には、短くもなっ ていないし長くもなっていない。ほとんど変わらないのです。その他の面でもあまり変 化がないように思うのですが、その中で比較的業務量が過大である、労働時間が長いと いう回答が出てくるということは、もともとそういうものが長い。裁量労働制になった からどうこうという話ではなくて、もともとこの人たちはそういうふうに感じている傾 向があるのか、という仮説を持ってしまうのです。それが検証できるかどうかはまた別 問題ですが。 ○前田賃金時間課長  この辺は裁量労働制が適用された方にしか質問していないというのが問題としてあり ます。ただ54〜55頁で40数パーセントになっているのですが、それの母数というのは、 上の問いで「大いに不満」あるいは「一部不満」と答えた中での割合ですので、全体か らいくと10数パーセントになると思うのです。ですので、裁量労働制を適用された方み んなにこういう不満があるということでは必ずしもないと思います。 ○西川様  先ほどのサンプリングのところと関わってくるのですが、3頁の表を見ると、専門業 務型適用者の方たちは、企画業務型に比べて比較的年齢的に若い層の人、それから勤続 年数も若い人たちが集まっておられます。年齢的には専門業務型が比較的若く、その次 に企画業務型がきて、それから管理監督者がくるというような分布になっていると思う のです。今54〜55頁の表がお話に挙がったのですが、この表を見る際に、ほかの表でも そういう特徴は出ているのですが、どちらかというと専門業務型の方の方が企画業務型 の方より裁量労働制に対して不満である、あるいはもう少しこうしてほしいというよう な要望が強いと思うのです。企画業務型の方は、専門に比べたら比較的そういうところ が弱いようなところがデータとしては出ているのですが、これはひょっとしたら、専門 業務型だから、あるいは企画業務型だからという、もちろんそういうところもあるので しょうけれど、年齢によるところが大きいのではないかという気もするのです。職務満 足を計測する際に、年齢や勤続年数はかなり大きく利いてくるところがあります。した がって、もちろん今出ているデータ分析からまた詳しく分析していくのかもしれないの ですが、年齢や性別もコントロールした形でデータが出てくれば、もう少し詳しいこと がわかるのではないかという気がしています。 ○前田賃金時間課長  そういった形でクロス集計のようなことができるかどうかみてみたいと思います。 ○諏訪座長  ほかにいかがでしょうか。 ○荒木様  制度的には、専門業務型の場合は労働者が個人で選べるものではなくて、業務で、労 使協定で決まればそういうことになる。それに対して企画業務型の場合は本人の同意が 要件となっているというのが関与しているのかなという気がします。  52〜53頁の、裁量労働制を適用した場合に期待どおりかどうかというのを見ても、特 に53頁の30で「自らの能力の有効発揮に役立つと思った」、「仕事の裁量を与えられる ことにより仕事がやりやすくなると思った」というように、裁量労働の企画業務型に手 を挙げようと期待して挙げた人は、そのとおりの働き方ができて満足度が高い。本人の 意向と関係のない場合には不満も高くなりがちだと、そういう関係もあるのかなという 気もいたしましたが。 ○諏訪座長  ほかになければ、この点はよしといたします。このアンケート調査及びヒアリング調 査の結果は今後とも基礎資料として考慮しながら、具体的な対応策についての検討を進 めさせていただこうと思いますが、この場で出ましたような質問や意見などに対応した ような検討がさらにできるかどうかは、事務局で対応のほどをご考慮いただきたいと思 います。  そこで、今日の議題の2番目に入らせていただきます。2番目は裁量労働制の問題で す。この労働時間制のあり方について今後検討していく中で、今見ましたようなアンケ ート調査やヒアリングなどにおける裁量労働制に関する実情や主な意見というのは非常 に重要なわけですが、このように膨大な量であるだけに、事務局で再整理をしていただ いたものがございます。そこで、その資料をまずご説明いただいた上でご議論いただこ うと思います。よろしくお願いいたします。 ○前田賃金時間課長  先ほど説明いたしましたアンケート調査と個別企業のヒアリング、さらに労使団体か らのヒアリングもこの研究会で実施したわけですが、特に裁量労働制の実情と、それに ついてのご意見を抽出して資料3−1として整理いたしました。資料3−1では、左側 が使用者側の意見、右側が労働者側の意見です。  1頁は、対象業務の範囲です。「専門業務型」と「企画業務型」とを分けておりま す。使用者の調査アンケートによれば、専門業務型の対象範囲については現行制度でよ いとするものが比較的多いのに対して、企画業務型については、対象業務の範囲が狭す ぎるという意見が多くありました。具体的な要望として、対象業務の範囲は労使委員会 に委ねるべきという意見が最も多く出されました。それ以外に、事業の運営に関する事 項についての業務という限定は不要ではないか、一定以上年収があるということで足り るのではないか、企画・立案・調査・分析の業務という限定は不要であるという意見も かなり多くありました。  個別企業のヒアリングでは、対象業務の範囲について、1つは、専ら企画等の業務に 従事していなくても、業務に従事するウエイトによって判断すべきという意見がありま した。それから、持株会社などにおいて、別の法人の事業の運営に関する企画等を行う 場合にも対象とすべきである。また、そもそも対象事業場あるいは対象業務はガイドラ インにとどめて、労使の自治に委ねるべきであるということがかなり出ております。営 業についても、裁量があるものについては対象にすべきであるという意見が、個別企業 や中央会から出されました。さらに、ここは適用除外とも関連してくるのですが、一定 以上の年収のものについては、労使合意によって対象業務を決めることにすべきという ことが個別企業や日本経団連のご意見でした。  対象業務についての労働者のアンケートでは、基本的には今の制度でよいということ が多く出されました。  2頁目が裁量労働制の手続です。これについて、まず使用者側としてはアンケートの 中で、専門業務型については現行制度でよいというものが多かったのですが、企画業務 型の裁量労働制については、手続が煩雑であるというご意見が多かったのです。一方で 専門業務型の裁量労働制について、これは法令上の要件ではないわけですが、導入に当 たって労使委員会で決議を行っているような事業所も相当数ある。あるいは、適用に当 たって個別労働者の合意を要件としているところが多いということがありました。企画 業務型について手続が煩雑というご意見が多いわけですが、どういうものが煩雑かにつ いては、労使委員会の議事録作成や個別労働者からの同意、あるいは労使委員会の決議 届の作成・届出等が不要あるいは煩雑ということでした。  ヒアリングの中でも、手続面について簡素化というご意見が多かったです。その中 で、1つは労使委員会の問題です。労使委員会というのは労働組合と違って資金や時間 がないということで、協議の相手方として必ずしも適当ではないのではないかというこ とが出ました。それ以外では、企画業務型についても労使協定で導入できるようにして ほしい、本人同意は廃止してほしい、あるいは労働基準監督署への報告を簡素化してほ しいというのが個別企業あるいは使用者団体からのご意見としてありました。その他、 決議要件が労使委員会の5分の4となっているが、それをさらに緩和すべきである。労 使委員会の決議は事業所ごとに行うということになっているが、それを会社一括で、労 使委員会の決議によって対象業務を決定するのが望ましいというのが日本経団連からの 意見です。  手続について、労働者側は特にアンケートはないのですが、連合からの意見として、 労使委員会の委員の選出について、信任手続が不可欠である。また、労使委員会の決議 の5分の4という要件については、再検討すべきであるという意見がありました。  2頁の下、みなし労働時間についてですが、アンケートの中では、専門業務型では所 定労働時間も多いわけですが、一方、今までの実績で算出している事業場も相当ある。 それに対して企画業務型の場合には、7割ぐらいが所定労働時間で設定しているという ことで、みなし労働時間と実労働時間との乖離が企画業務型でかなり大きくなっている のが実情であろうということでした。  3頁はみなし労働時間の効果です。使用者からのアンケートの中で、専門業務型裁量 労働制のみを導入しているところでは今の制度でよいという意見が多いわけですが、企 画業務型の裁量労働制を採用している事業場では、労働時間規制を適用除外すべきとい う意見が多く出されています。しかし、その場合、一定以上の年収や休日の確保を要件 とすべきという意見も相当ありました。  ヒアリングの中でも、みなし労働時間というものに労働時間の概念が残っているとい うことで、労働時間配分について裁量があるという経緯からすると矛盾しているという ことで、管理監督者同様に適用除外とすべきというのが個別企業の意見として出されて おります。しかし、使用者団体からは、適用除外すべきという意見が、いずれについて もありました。  みなし労働時間についての労働者側からの評価ですが、アンケートで、労働者の方と しては、法的効果については現行制度でよいというものが多いわけですが、変更しても よいというものも3割程度はありました。ただ、その場合には一定以上の年収、一定の 休日を要件にすべきというご意見でした。  3頁の真ん中辺は業務遂行の手段や時間配分の裁量についての実態面の問題です。事 業場からの調査としては、出退勤の時刻は自由、仕事の指示は、業務の目的・目標、期 限等基本事項を指示するということが多いわけですが、労働者からの回答の中では、一 律の出退勤時刻がある、決められた時間帯にいることが必要というものが少なくないの です。業務の指示は、一般的な指示については事業場と同様の回答が多かったわけです が、状況の報告を日々行うこと、状況に際して具体的な指示がなされるというものもか なり存在するという実情があるということが挙げられています。  その他の問題として、健康確保や苦情処理措置の問題があります。事業場の調査の中 で、健康福祉確保措置として、産業医による健康指導、相談窓口の設置、休暇、休日の 付与等を実施することとされているというものが多いわけですが、割合として、実際に 実施した事業場の割合とかなり乖離しているということで、決議していることと実際の 実施との乖離があるということです。苦情処理措置についても、相談窓口を設置するこ とになっているわけですが、実際の苦情申立て件数は少なくて、その苦情処理措置がど こまで機能しているかという点が実態面の問題としてあるということです。  労働者からの調査として、アンケートの中で、一般労働者と比べると、裁量労働制の 適用を受けている方は実態として労働時間が長い、休日・深夜労働が多い。一方、年次 有給休暇取得率は少ないという結果になっております。健康福祉確保措置についての要 望として、休日や休暇を望むものが多いということです。ヒアリングの中でも、休暇の 付与というのが健康の確保には効果的ではないかといったご意見がありましたが、実際 上すべてについてそういう形で対応できない面があるというご意見でした。ヒアリング 及びアンケートで、裁量労働制のあり方についての主だった実情や意見ということで以 上のように整理させていただきました。 ○諏訪座長  ありがとうございました。これを拝見しますと、すぐ気がつきますように、いくつか のポイントがここには出ているわけです。それと同時に、労使間で意見が様々に分布し ているという様子もよくわかります。こういう場合には、基準となる基本の考え方を確 認した上で議論を先に進めることが望ましいわけです。ご案内のとおり、憲法第27条第 2項を見ますと、就業時間に関する基準は、法律でこれを定めるという規定があり、そ れに基づいて労働基準法の制定がされているわけです。  そこで、労働時間制度のあり方についての意見が、こうした労働基準法の理念、趣 旨、精神と合致するかということが問題になるわけですので、委員の先生方には今更要 らないというお考えもあろうかと思いますが、改めてこれをご説明いただき、それを踏 まえて裁量労働制のあり方に関する今後の論点についてのご意見などをお出しいただけ ればと思います。これも続けて、事務局からご説明をお願いいたします。 ○前田賃金時間課長  資料3−2で、労働基準法の基本理念ということで整理してあります。まず、労働基 準法の根拠ということで、資本主義社会の法的秩序の根幹として私有財産制、契約自由 の原則というものがあるわけですが、労働者と使用者との関係についても、基本的に契 約自由の原則というものがまずあるということです。ただ、実際の労働者と使用者との 間の法律関係をそれだけに委ねるとすると、労働者の生存そのものを脅かすほどに不公 正な結果をもたらすということから、特に経済的に弱い立場に置かれているということ で契約自由の原則を修正しているところです。  憲法第27条第2項に、賃金、就業時間、休息その他の勤務条件に関する基準は、法律 でこれを定める、という規定があり、この規定に基づいて、労働基準法において国家が 労働条件についての一定の基準を設定しているものです。  その下の「労働基準法の基本理念」ですが、1つは、労働条件に関する基本原則を謳 っているということで、労働基準法の第1条で、労働条件の原則として、「労働条件 は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならな い」とあります。そして「人たるに値する生活」という中で、憲法第25条にある「健康 で文化的な生活」ということがありますので、健康で文化的な生活を営むための必要を 満たすべき水準の設定ということが1つであります。  2番目の基本理念として、特に労働関係に従来あった封建的な遺制ということで、使 用・従属の関係から、従来は封建的な身分拘束が伴いやすかったということです。例え ば、これはかなり以前の話ですが、監獄部屋のような状態、長期の労働契約、あるいは 前払金、強制貯蓄、寄宿舎といったような形で、かなり封建的な遺制があり、それを排 除するというのが2つ目です。  3つ目は、最低労働条件の国際的な水準を取り入れることです。特に戦前において、 国際的な水準をはるかに下回るような労働者保護法の下に劣悪な労働条件に基づく生産 が行われ、ソーシャルダンピングとして国際的な非難を受けたということで、最低労働 条件について国際的な基準を導入することが基本理念の3つ目です。  このような形で労働基準法の基本理念があるわけですが、一方で働き方の多様化、労 働者あるいは使用者の意識の変化の中で、一層充実した市民的生活の保障を求める国民 の意識変化に伴って、こういった規制についてもそれに伴った展開がなされるべきであ るということで、これら3つの基本理念を担保しつつ、そのような意識変化に伴って展 開がなされるべきであるというのが基本的な考え方です。 ○諏訪座長  今の事務局の説明について、ご質問やご意見がございますか。とりわけ、今後どのよ うな点が論点になるか、あるいは、とりわけこうした点が重要ではないかということに ついてご意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。ここは労働時間の専門 家にまずは口火をきっていただければと思いますが。 ○荒木様  まだ何も考えはまとまっていないのですが、労働条件の最低基準を国家が定める、そ れが憲法上定められているというのが1つの大きな特徴で、これにより私人間である使 用者と労働者の契約の自由を制限するような立法が憲法上認められる、そういうことに なるわけです。  これまで労働基準法は、その憲法上の要請を受けて労働条件を規制してきたのですけ れども、片方で今、労働契約法という新しい立法化を厚生労働省で検討しております が、そこでも、法規制のあり方についての再検討を今やっているところです。  世界中で、労働保護法というのは罰則付きで、しかも行政監督によってその履行を確 保する、そういう法体系が歴史的に必要とされてきました。ところが、諸外国をみます と、実は、そういう労働保護法以外に労働契約法のような、必ずしも国家自体が履行監 督を行わないような法律もたくさんあって、その方が数として多いということもあるの です。そういうことになってきた背景は、労働条件をすべて国家が、最低基準はこれだ ということで守らせるべき場面と、それが必ずしも労働者自身にとって妥当な結果にな らない場合もあるということがわかってきて、いろいろな形の基準の設定があるという ことを各国とも模索しているような気もいたします。  労働時間の場面でいいますと、確かに長時間労働による健康被害の問題、工場で働き すぎて疲弊してしまう、また、とりわけ年少者等の問題もあって対象としてきたわけで すが、それが現代でもそのまま妥当するかどうかというところで、各国ともホワイトカ ラーのあり方については再検討が進んでいるということだと思います。  そこで、今議論されている点では、一方では依然として働きすぎや健康被害の問題は 確かにある。しかし他方で、自分の働きたいと思う働き方で、自己実現といいますか、 そういう点も含めて、自分の望むような働き方で就労したいという人たちもいる。そう いう中でのバランスのとれた国家の規制のあり方というものを考えないといけないだろ うということかなと思います。  それを実際に各論としてどうするかというのは非常に難しい問題なのです。結局、1 つ今日のまとめの中に表れているのは、対象業務などについて国家が事細かに、これは よい、これは駄目というあり方については、どうも実態にそぐわないのではないかとい う意見が出ているように思います。若干意外なのは、そういう規制手法を実際に採って いるのは、実は専門業務型の方です。これは限定列挙ですから、これは良い、これは駄 目というのを法令で定め、厚生労働大臣が追加的に指定して対処しているのですが、こ れは従来型の規制のあり方です。  それに対して企画業務型の方については、業務の縛りがきついという指摘がありま す。この制度を作ったときの考え方は、業務の縛りは緩やかにして、その代わり労使委 員会で妥当な運用をしていただこうという考え方であったと私は思っているのです。し かしその点で、アンケートの結果だと、どうも企画業務型の方が縛りが強いということ になっているという点、これはどういうことかなという気がしております。  その点は少しお尋ねしたいのですが、企画業務型について、業務の縛りが強い、限定 されているというのは、運用として指針も出ていると思うのですが、企画・立案・調査 ・分析以外の業務を少しでもやっていたら駄目だというような議論があるかどうかとい うことです。もう1つは企画・立案・調査・分析、これをすべてやっていないといけな いのか。例えば、企画なら企画だけやっていればよいということなのか。そういう点に ついて、いわば行政指導などで厳しすぎるという意見が表れているということなのかど うか、その辺について少しお教えいただければという気がしました。 ○諏訪座長  今の点なのです。なぜ企画業務型で業務の縛りがきついという声があるのか。そし て、それには現場における行政指導のあり方が関わっているのか、いないのか。この点 について少しご説明ください。 ○前田賃金時間課長  企画業務型につきまして、企画・立案・調査・分析の業務ということが労働基準法の 第38条の4に書いてあるわけですが、それを対象業務として、その対象業務と全く異な るような業務をほぼ毎日のようにやるような方は、そもそもこの対象にならないという ような運用をしているというのが1つです。対象業務以外のものをほぼ毎日のように恒 常的にやるような方は、そもそも対象労働者に該当しないという運用になっておりま す。  また、企画・立案・調査・分析という中で、当然それに付随するような情報資料の収 集や整理・加工、それらを含めて、全体が対象業務になるということではあるのです が、それ以外のものを臨時にやった場合には、みなしが働かないということで、そこの 部分については、みなし労働時間、非対象業務を臨時的にやった場合には、それを通算 して、非対象業務の時間をオンしていただくというような運用になっています。  それ以外の問題として、この38条の4で事業の運営に関する事項という縛りがあるわ けですが、その運用の中で、当該事業場の属する企業の主要な製品、サービスについて のものである等のことが指針の中でかなり限定されているところがありまして、そうい うところが縛りとしてきついというご意見になっているのではないかと思います。  例えば「主要な製品」という場合に、その企業で新たにこれから開発するような製品 は「主要な製品」に入っていない、あるいは新商品のようなものは対象にならない、先 ほどあったように、別の法人のための企画などをやっていても対象にならない。それは 持株会社もそうですし、コンサルタントのようなところも対象にならなくなるというよ うなことがあるのです。  企画・立案・調査・分析というのは相互に関連し合うということで、そういう業務と いうことでの縛りになっています。 ○荒木様  それらを常にすべてやっていなければいけないという考え方ですか。 ○前田賃金時間課長  厳密に何がどうかというのはあるのですが、それは相互に関連し合う業務であろうと いうことで、一般的にはそういう考え方に立っています。 ○西川様  今の縛りがきついというところで、アンケート調査の結果、それから、さまざまな企 業の方のお話を伺った上で、何でこういうことなのかなという私なりの解釈を述べさせ ていただきます。対象業務を限定しているということなのですが、2つの考え方があり ます。1つは仕事に人を張りつけるという考え方、もう1つは、人に仕事を張りつける という考え方です。専門業務型の方は、どちらかというと、仕事に人を張りつけるとい う方になるので、縛りがきついというようなご意見があまり出ないのかなという気がし ています。一方で、人に仕事を張りつけているのが企画業務型ではないかというような 印象を受けているのです。  人によってこういう仕事というのはどんどん変わっていきまして、仕事があるという よりも、人がいて、その人にどういう仕事を与えるか、そういったアプローチをとる企 業が、ヒアリングなどで話を伺っていても多かったのではないかと思います。逆に言う と、仕事というのがどんどん変わってしまう部分があり、だから対象業務を限定するこ とが難しいのではないかというイメージを受けておりました。 ○諏訪座長  非常に的確なご指摘をいただいて、ありがとうございました。この点に関しては、い かがですか。 ○松井審議官  実態論でなくて恐縮なのですが、命令で整理されている考え方は、まさ に仕事をまず特定して、そこに人を張りつけるという構成をするために、基準法38条の 3では、業務の性質上が云々とありまして、最後に、使用者が具体的な指示をすること が困難なものとして、厚生労働省令で定める業務、そのうちで労働者をつかせる業務と 書いてあり、命令で業務をカチッと書くということをやっているので言われたような評 価になるのだと思うのです。仕事を挙げてそこに人をつけると、そのまま条文を書いて あります。  ところが企画業務型の方は、次の条文で、初めから事業の運営に関する事項につい て、「企画・立案・調査及び分析の業務で」と書いてあるのです。ここで具体性はない のですが、いろいろな事業の中で、基本的に物事を企画し、立案して、調査・分析をし て1つの命令的なものを組み立てるという一連の作業があるでしょう、そして、その業 務については具体的な指示ができない業務なのでしょう、だからそれを委員会で取り上 げて、自分たちで決議してやりなさい、という漠とした、抽象的な命令を出しているの です。しかもここの書き方が、最後ですが、「調査及び分析」と書いてあるのがミソで あります。条文で書くとき「調査又は分析」と書くと、各行為ばらばら、どれでもよい ということになるのです。それだと、いろいろな仕事をやるときに必ず企画というエッ センスはある。調べるということもある。営業活動をするときにも、営業するときに企 画をして汗を流す。何でも入ってしまうが、何でもというのはひどいだろうと。そこで 純粋に一連の作戦というか、企業の基本的な運営方針を立てるような種類の仕事に限定 した上で、各企業が個別の事象について考えるということをしようとして「企画・立案 ・調査及び分析」と書いてあるのです。そういう意味では、先ほど言ったように、人に 仕事を張りつけるという要素もあるのですが、仕事の中で一定の抽象的な概念を出しま して、どんな仕事でも、こういう部分の仕事をやるということをつけようとしていると ころがあります。そうすると、そういう要素がこの仕事の中で1%しかないものを企画 裁量型というのはかしいとなって、運用で、ほとんどそういう業務をやる方を企画裁量 としましょうと、こう構成しているのです。そして、それに縛られて運用上今言ったよ うなことになっているというのが、まさに利用する方から見ると、何かファジーな仕事 のようだが、よく見ると、どうも窮屈だというように感じられるのではないかという気 がするのです。それが条文を通しての分析というか評価なのです。 ○諏訪座長  ほかにいかがですか。 ○守島様  私が疑問に思っているところで、先ほど少し申し上げたこととも多少関連するのです が、裁量労働的なものを入れることによって、要するに労働者の側が潜在的に持ってい る、自由に働きたい、自分の労働時間をもう少しレギュレートしたい、自分で自律的に レギュレートしたい、それによって成果が高まるとか、そういうことが目的というか、 1つの大きな前提だと理解するのです。  今回ヒアリングとアンケートから出てきた図柄というのは、必ずしもそういうような ポテンシャルが、実現していないかどうかは分からないのですが、実現しているという 確証が必ずしも出てこないデータのように思うのです。労働時間が変わったという人た ち、短くなったという人たちは5%以下ぐらいしかいませんし、その中で更に、自分で 自由にできるようになったからという人たちも、もっと少なくなってくるわけです。ア ンケートの内容に入っていなかったということなのかもしれませんが、それによって自 分がすごく生き生きしてきたというようなものもデータとしてはない、となると、果た して裁量労働制みたいなことを入れるときに、我々がいろいろな意味で前提として考え ていることというのが可能になっているのだろうかというところが疑問になってきて、 私としては、そこのところをもうひとつ突っ込んで明らかにする。どういう形にして も、明らかにした上でないと、何となく次のステップとしてのエグゼンプションみたい な考え方に行くのには抵抗があるという感じがしています。そういう意味で、分析的と いうよりは感想めいたものになってしまうのですが、今回のヒアリングとアンケートの 結果を聞いて、そういう感想を受けました。 ○諏訪座長  論点としてこれまであまり意識されていなかった問題も含めまして、何なりとお出し ください。 ○西川様  話が大きくなりすぎてしまうかもしれないのですが。最後にご紹介いただいた労働基 準法の基本理念のところで、労働者が人たるに値する生活、健康で文化的な生活を営む ための必要を満たすべき水準というようなことも書いてあるのですが、アンケート調査 の結果、あるいは組合の方のお話を聞いておりますと、どうも長時間労働になりがちで あるというようなことが出ておりました。しかも仕事の繁閑が比較的短期で、そして変 動が激しいような働き方が増えてきているのではないかという気もしております。  一方で仕事の時間の変動制、あるいは密度が高まってくる、片や我々には生活時間と いうのがありまして、1次活動、2次活動、3次活動とあるわけです。  私は今まで、女性の労働であるとか、生活と仕事をどういうふうに両立しているかと いうところを研究してきたわけですが、本人の健康だけではなくて、今後労働者にます ます負担になってくると思われるのは親の介護の問題、それから、こういった裁量労働 制が適用になっている方たちに特に負担になっているのは育児とかその辺だと思うので す。そういった生活時間というのは、仕事の時間とは違って比較的一定しているわけで すが、長期的に見れば、ある年齢層に集中するような構造になっていまして、そういっ た年齢層と裁量労働制が適用になるところ、あるいは管理職になるところというのがか なり重なってしまう。そういった時間の質的なものが、どんどん生活時間と仕事時間と が乖離してしまっているのではないかという気がしています。  元の話に戻ります。長時間労働になって、成果を出すためにみんな必死で働きます。 そうすると、特に女性労働と関連してくるのでしょうけれども、企業の根幹の仕事をな さるような方たちの中に女性がこれからどれだけ入っていけるのかというと、ますます 難しくなっていくのではないかというようなイメージを受けております。それから、出 産や育児の関係もあります。随分前までの話になりますが、男性片働きモデルというの ですか、そういうモデルがだんだん崩壊してきておりまして、今も共働きというのが通 常の形態になってくるような時代であるわけですが、そこで出産や育児を誰が担ってい くのか。そういうところを考えると、その辺が非常に難しくなってくるのではないか。 今30代の男性は非常に長時間労働になっていますし、こういう形で裁量労働制、成果主 義というものが浸透していくと、ますます労働時間の密度が、量も質もどんどん比重が 高まってくるのではないかと思います。  まとめますと、1つは女性が社会進出していく上でますます難しくなっていくのでは ないかという点、それから、育児・介護というところをこういった形とどういうふうに してうまく調和させていくのか、そこが難しくなってくるような感じがしております。 ○守島様  今の西川委員のお話とも多少関連するのですが、ヒアリングを聞いていても、アンケ ートの結果を見ても、面白いというか、困ったなと思っていたのが、比較的成果主義を 入れたいがために、もしくは成果主義の効果をもう少し明確にしたいがために裁量労働 制を入れるという議論をされる企業が多かったように思うのですが、成果主義というの も1つのコントロールの仕方であって、コントロールしていくと、今の西川委員のお話 にもありましたが、成果主義で、かつ時間の規制がないということになると、どんどん 働く方向に人々というのはドライブがかけられる。それをかけますという表明が成果主 義ですが。しかし、それに対して全然ストップがない。必ずしも時間が唯一のストップ の方法だとも思いませんし、ベストな方法だとも思いませんが、やはり、何かストップ の方法がないと、必ずしもうまくいかない。それこそ健康上の問題等が出てくるように 思いますし、今西川委員がおっしゃったような問題も出てくると思います。だから、必 ずしも成果主義であることを明確にする、効果を現すために裁量労働制にするというロ ジックは、もっと深く考えてみないと、そこのところはうまく流れてこないのかなとい う感じがいたしております。  特に、今成果主義が非常に強い動きになっている中で、こういうことを考えるという ことの一種の特殊性というか時期性というか、そういうこともあるのかなと感じており ます。 ○諏訪座長  この際ですから、少しそもそも論的なご議論もいただければと思うのですが、荒木委 員はいかがですか。 ○荒木様  西川委員の言われた点はいろいろわかる点が多いのですが、個人的 な時間は人それぞれになってきます。介護の問題もあれば、育児の問題もあると。そう いう中で、実労働時間制度というのは、言うなれば個人の都合は考えずに、会社の都合 で何時から何時まで出社しなさいと、そういう制度なのです。もちろんフレックスタイ ム制度というのはありますが、基本的に実労働時間を会社が把握することを義務づけら れるという制度なのです。それに対して裁量労働とか適用除外というのは、労働時間の 管理は自分でやってくださいということです。これまで典型的に裁量労働的に働いてき たのは大学の教師だと思うのですが、特に女性には働きやすい仕事だと言われているの は、家庭との両立が非常に容易にできるからでしょう。これは要するに、時間に縛られ ずに、自分でこの時間にやるのが一番効率的だから、この時間に集中してやって、ほか の時間は別の、私的な生活とか、さまざまな別の活動に割り振るということが、比較的 今までできていたわけです。ですから、理想的には裁量労働を入れたときの理念どおり に動かすという道も、目標の1つとしてはあるべきだと思うのです。実際にこのアンケ ートの中では、思ったとおりに働けるようになったというアンケート結果もあります。  他方で、もう1つ90年代から裁量労働制を入れたときの問題は、要するに企業は非常 に苦しい、残業代が払えないということで、残業代を払わなくてよいための制度とし て、それと同時に、守島委員が言われたとおり、成果主義という名のもとに、時間に縛 られない働き方なのですよと言いながら、実は残業代をカットする、そういう目的のた めの運用がなされてきた。  裁量労働の場合は2つの側面があって、今回のアンケートでも後者の側面、苦情処理 がほとんど動いていないというのが出ていまして、これは非常に問題だと思います。元 々の理念的にはより良いものだろうということで議論したものを実現するために何をな すべきかというのを1つ検討しなければいけないし、他方で、別の目的のために、言う ならば悪用というのですか、今回の調査でも、出退勤の時間が定められているとか、本 来の裁量労働制と相容れないものが導入されていて、裁量労働制を採っていると称して 割増賃金を払わない、これは全く制度の趣旨に反する実態でありますから、こういうも のをどうしたらなくせるかと、そういう方向です。何か本人の裁量というものを尊重し た働き方を全部否定するというのは、それはまた1つの極端な議論となってしまうの で、制度をより理想的に運用するために、どうすればよいかということを考えておく必 要があると思いました。 ○諏訪座長  だんだん今日予定した時間が終わりかけているのですが、今日アンケート調査を改め て行った結果、それからヒアリング調査のまとめ、そして論点をこれから絞り込んでい くための導入的な議論をしていただきました。今回更にもう一段、本来あるべき姿とし ての裁量労働を考えるときに、どうも見えてきたことは、単に時間規制の部分だけでは ない、他の周辺のいろいろな整備をしませんと、うまくいかない。例えば、「不満」の 中における、突然仕事が飛び込んできて追加されて、どうしても対応に追われてしま う、あるいは裁量労働なのに、日々結果を求めるなどということになれば、ある日は短 く働いて、ある日は長く働くなどという場合、日々上司にそういうことを言うというこ とになりますと、短く働く方がやりづらくなってしまいます。そのように、本来の人事 管理的な問題、あるいは今守島委員もおっしゃられたような成果主義との関わりとの問 題、あるいは西川委員のおっしゃられたワークライフ・バランスの問題、こういうこと を全部考えた上で、荒木委員もご指摘になられたような、さまざまな多様な人々の要 請、あるいは社会・企業の要請との間でどういうふうに調整していったらよいのか、今 後議論を深めていきたいと思います。どうも、ある部分だけを取り出して一挙に行くこ とが解決するというふうにはなかなかいかない、ということが今回この間の検討の中で も改めて浮かんできたような気がいたしますので、さらにそうした点を今後詰めていき たいと思います。本日はこの辺りで会議を終了させていただきまして、次回以降、裁量 労働制のあり方についての議論に入っていきたいと思います。そこで、これまでの検討 結果を踏まえて、事務局において論点を整理していただき、これを委員の皆様にご確認 していただいた後で個別テーマの議論をするという進み方にしたいと考えております が、この点、そのような進め方でよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○諏訪座長  では事務局から次回の会合についてのご連絡をお願いいたします。 ○前田賃金時間課長  次回は9月30日(金)午後5時から開催を予定しております。よろしくお願いいたし ます。 ○諏訪座長  次回に向けての作業を事務局には鋭意お願いをいたします。また、委員の皆様には、 お気付きの点がございましたら、是非事務局にご意見を寄せていただければと思ってお ります。本日の会合は以上をもって終了させていただきます。お忙しい中をご参集いた だき、貴重なご意見をありがとうございました。                    照会先:厚生労働省労働基準局監督課調整係                    電話 :03-5253-1111(内線5522)