05/09/05 第9回 医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する 検討会 議事録 第9回 医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会 日時 平成17年9月5日(月)17:00〜 場所 厚生労働省専用15会議室 ○赤熊補佐 ただいまから、第9回「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等 のあり方に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご多忙 中のところ当検討会にご出席いただき誠にありがとうございます。本日は、金川委員か ら欠席のご連絡を受けております。初めに、8月26日付で、医政局長が交代いたしまし たのでご挨拶させていただきます。 ○松谷医政局長 岩尾の後任で、医政局長を拝命いたしました松谷です。委員の皆様方 には、大変お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。日ごろから、 厚生労働行政に対し、大変ご尽力を賜っておりますことに、改めて御礼申し上げます。 委員の先生方は皆様ご存じのとおり、厚生労働省では、より質の高い効率的な医療サー ビス提供の実現ということで、医療制度改革に向けた議論を進めてきたところです。社 会保障審議会を中心に、さまざまな分野で検討を進めております。  本年4月に、当検討会を設置したところですけれども、医療安全の確保、あるいは患 者への適切な情報提供などを推進するための看護問題について皆様に熱心にご論議いた だき、6月に中間まとめをしていただいたところです。その内容はご存じかと思います が、8月1日に、社会保障審議会の医療部会の中間まとめの形で盛り込ませていただき ました。  今般の医療制度改革は、患者の視点に立った観点から見直しを行おうということにし ております。今後も、私ども全力を傾けてその実現に努力していきたいと考えておりま すので、引き続きご指導を賜りたいと考えております。  本検討会においては、さらに議論を深めていただき、11月を目処に一定の取りまとめ を行っていただければと考えております。先生方におかれましても、引き続き今般の制 度改正及びこの検討会の趣旨を踏まえ、是非積極的なご議論、ご検討を願えればと考え ている次第です。岩尾に続きましてよろしくご指導を賜ればと思います。よろしくお願 い申し上げます。 ○赤熊補佐 同日付で、看護職員確保対策官も交替いたしましたのでご紹介いたします。 鎌田看護職員確保対策官です。 ○鎌田看護職員確保対策官 鎌田です。よろしくお願いいたします。 ○赤熊補佐 以後の進行は、山路座長にお願いいたします。 ○山路座長 本日は、産科における看護師等の業務について検討していきます。本議題 については、来年度の制度改正には直接関連するものではありませんが、青木委員から、 周産期領域における医療安全の確保、という観点から議論したいというご提案がありま した。そういう経過があり、検討事項としたものです。したがって、これまでのその他 の検討事項と同様、本検討会の趣旨であります、医療安全の視点に立って議論していき たいと思います。事務局より資料の確認をお願いいたします。 ○赤熊補佐 議事次第、メンバー表、座席表、資料1は5頁のものです。資料2は、看 護師国家試験出題基準等について2頁のものです。資料3は1枚のものです。資料4は、 関係統計で7頁のものです。資料5は、安心で安全な分娩に向けての体制整備について 8頁と、右のほうにパンフレットとして「助産師としてのあなたの力が必要です」と「就 業を考えている助産師さんへ」です。資料6は、石渡委員の発表資料で「産科における 看護師等の業務について」で12頁のもので、右手の下のほうにありますがパワーポイン トの資料です。資料7は、青木委員からの意見の資料で5頁と、後ろに別紙1と別紙2 の7枚のものです。資料8は、第8回検討会において新人看護職員研修に関して出され た主な意見で2頁のものです。  参考資料1「助産師学校養成所における教育内容等について」4頁のものです。参考 資料2「医師確保総合対策の抜粋」1枚のものです。別に、第8回検討会資料の修正と して、前回の資料として、第7回検討会において、助産所の嘱託医師に関して出された 主な意見を提出させていただきましたが、青木委員より修正のご意見が出されました。 具体的には資料の3頁の真ん中のアンダーラインのところを追加し、訂正させていただ きました。次に、「助産所における安全確保のための意見書」が石渡委員から提出されて います。  それとは別に委員の皆様には、医療提供体制に関する意見の中間まとめとして、既に 公表されていますが社会保障審議会医療部会の中間まとめを付けております。以上です。 ○山路座長 議事に入ります。事務局より資料の説明をお願いいたします。 ○鎌田看護職員確保対策官 資料1は「看護師等学校養成所における教育内容等」とい うことで、母性看護などについてどのような教育がされているかを簡単にまとめたもの です。入学資格、修業年限についてはご覧のとおりです。  3番目の○で、教育内容、単位数、時間数として、看護師は93単位、准看護師は1,890 時間とされております。看護師の3年課程においては、母性看護学講義が4単位、臨地 実習2単位となっております。准看護師課程については、母子看護ということで、産科 及び小児科の領域を含むものですが、講義70時間、臨地実習70時間となっております。 具体的には3頁と4頁の表1と表2ですが説明は省略させていただきます。  1頁のいちばん下の○は、そうした教育内容、単位数がどういう考え方においてなさ れているかという説明です。看護師教育及び准看護師教育の基本的考え方として、(1)看 護師の下から2行目、健康の状態に応じた看護を実践するための基礎的能力を養うとい う考え方で行われております。  (2)准看護師については、医師、歯科医師又は看護師の指示の下に、療養上の世話や診 療の補助を、対象者の安楽を配慮し、安全に実施することができる能力を養う観点から なされております。  内診についてはここに書いてあるとおりですが、看護基礎教育における技術教育のあ り方に関する検討会報告書が平成15年3月に出されましたが、これにおいては看護基礎 教育において、学生に実施させてもよい看護技術項目を明示しておりますが、内診はこ の技術項目に含まれておりません。  5頁に、A4判横で書いてある臨地実習において、看護学生が行う基本的な看護技術 の水準ということで、安全性のレベルに応じて3つに分けたものがあります。その項目 を個別に見ても、特段内診ということは出てきていない現状にあります。  2頁では、こうした考え方に基づいて実際の大学、あるいは養成所においてどうなっ ているかということです。看護師養成所の臨地実習においては、各看護師学校養成所が 実習で経験する看護技術を実習要領等に明示しておりますし、大学及び養成所に明示さ れております項目には、6頁で内診ということは明示されておりません。  6頁のいちばん下の養成所については、2)安全・安楽を配慮した産婦の診察の介助 ができるということで看護実習の技術項目に入っておりますが、内診は含まれていない 状況にあります。  参考資料1は、助産師学校養成所における教育内容をまとめております。1頁の下か ら2番目の○に、助産師教育の基本的考え方があり、妊産じょく婦及び胎児・新生児の 健康水準を診断し、妊娠・出産・産じょくが自然で安全に経過し、育児がスムーズに行 えるよう援助できる能力を養うという考え方の下に、内診については基礎助産学、助産 診断・技術学、臨地実習において履修している現状にあります。  資料2は、こうした教育を踏まえ、国家試験出題基準がどうなっているかということ です。この基準は医道審議会保健師助産師看護師国家試験出題基準改訂部会によって作 成されているものです。  2番目の○で、出題基準においては、助産師と看護師の基礎教育の相違について書い てあります。3行目で、助産師は独立して正常な妊娠・分娩に関連した健康現象を診断 する能力が必須であると考え、正常と正常からの逸脱を識別するための判断能力を養う ことに力点を置くと考える。それに対して、看護師の基礎教育における母性看護学では、 対象となる人々の理解と必要な日常生活における基本的なセルフケアを維持促進するよ うな援助を行うことに焦点を当てているとされております。  3番目の○で、看護師国家試験の母性看護学の出題基準において、産婦の看護につい ての看護について、分娩の経過と胎児の健康状態、出産様式、産痛の緩和、産婦と家族 の心理等の項目が示されておりますが、特段内診については示されていません。准看護 師については都道府県が実施しておりますが、母子看護の出題内容についてはここにあ るように、出産前後の母児、健康障害をもつ小児の特徴及び日常生活の援助、診療の援 助についての基礎的な知識と理解を問うとされております。2頁を見るとわかりますが、 看護師国家試験では、内診所見に関する問題は出題されていないということです。  参考資料1の3頁は、助産師の国家試験の出題基準について書いてあります。出題項 目には助産診断・技術における項目として、内診が示されております。具体的には軟産 道開大機転、それから胎児の産道通過機転、胎児の下降状況などが示されております。 4頁に例を示しておりますが、助産師国家試験問題では、内診所見に関する問題が多数 出題されている状況にあります。  資料3は、そうした基礎教育、あるいは国家試験を踏まえ、実際の看護業務ではどう かということで、本日ご出席の委員が働いていらっしゃる病院、特に産科がきちんとさ れている病院ということでお聞きしました。産科における看護師の業務ですが、北里大 学病院の例では、病棟においてはハイリスク妊婦のケア、正常妊産褥婦と新生児のケア、 帝王切開術前後の母子のケアが看護師の業務とされております。  一方、NTT東日本関東病院の例では、看護師の業務として新生児のケアとされ、伺 ったところでは、妊婦については助産師の仕事とされているということです。  資料4は関連する統計です。産婦人科や産科をめぐる状況について数字上でご説明い たします。1頁は、産婦人科及び産科を標榜する病院・診療所数の推移です。いちばん 下の総数というのは、病院・診療所のそれぞれの総数です。病院については、平成11 年に8,200あったものが、平成15年には8,047に減少しています。診療所は9万1,500 あったのが、9万4,800に増えました。産婦人科・産科を主たる診療科名を標榜する病 院・診療所の推移を計という欄で見ると、病院については1,884あったのが1,715に170 ほど減少しています。診療所についても、平成11年に4,945あったものが300ほど減っ て4,648になっております。  2頁は、分娩件数別の、病院・診療所数の推移です。下の注にあるように、医療施設 静態調査で、調査月である各年9月に1件以上分娩があった病院・診療所の推移を調べ たものです。  合計欄を見ますと、平成5年9月に分娩のあった病院は1,796だったものが、平成14 年には1,503に減少しています。診療所については、平成5年に2,490あったものが、 1,803に減っています。これを分娩件数別に見ると、病院・診療所ともに分娩件数が20 件以下の所での減少が大きいことが窺えます。例えば、病院については分娩件数1〜5 の所が215から125に減っていますし、診療所については737から309に減っています。 他方分娩件数の多い所、病院では分娩件数が61件以上の所では、概ね増加傾向にありま すし、診療所についても調査月に31件以上ある所については増加傾向にあることが窺え る、ということをこの表は示しております。  3頁は医師数です。主として産婦人科・産科に従事する医師数ということで、医師、 歯科医師、薬剤師調査からの資料です。医師の総数については、平成8年に14万8,000 人いたものが、平成14年には15万9,000人に増えています。一方、診療所で働いてい る医師については、8万2,000人いたものが、平成14年には9万人に増えています。産 婦人科・産科に主として従事する医師を計の欄で見ますと、病院については6,591人い たものが、6,463人と減っています。診療所についても4,673人いたものが4,571人に 減っていることが窺えます。  4頁は、助産師・看護師・准看護師の数の推移について、就業場所別にまとめたもの です。それぞれの職種について総数で見ますと、助産師は昭和32年に5万5,000人いた ものが、平成15年には2万5,000人に減っていることが窺えます。看護師についても同 じく、10万6,000人いたものが77万2,000人に増えています。准看護師については、 4万1,000人いたものが42万4,000人に増えています。  助産師の就業場所を平成15年で見ますと、2万5,700人のうち病院には1万7,600 人ほど働いています。診療所には4,500人ということで、概ね4対1ぐらいで圧倒的に 病院で働いている助産師が多いということが窺えます。  5頁は、第4回の検討会でもお示しした資料ですが改めてご説明いたします。出生の 場所別に見た、年次別出生数と出生数の百分率です。出生の総数が、昭和22年には267 万8,000であったものが、平成15年には112万3,000と半分以下に減っています。その 場所を見ますと、昭和22年には97.6%が自宅その他で生まれていたわけですが、平成 15年には施設内総数を見ますと99.8%が施設で生まれています。  平成15年の、施設内の内訳を見ますと、病院については52.2%の出生数で、診療所 では46.6%の出生数があります。これは、病院と診療所でほぼ均衡しているといえるか もしれませんが、前の頁でご覧いただきました、助産師の就業場所の比率の4対1と比 べると、その比率が異なっていることが窺えます。  6頁では、助産師、分娩件数別に見た病院の数で、7頁は同じ調査の表で一般診療所 です。これは、医療施設の静態調査からの資料ですが、見方としては例えば左の欄の分 娩件数の3段目、21〜30というのは、調査月の9月に分娩が21件から30件あった病院 について、その右の欄の総数が256病院あるというものです。そこにおいて働いている 助産師を常勤換算すると、例えば1〜1.9人では、常勤換算して助産師がいる病院が11 あります。右から2番目では、10〜19.9人働いている病院が115あると読みます。  この表の特徴として、四角で囲んでいますが、下から2番目の○にあるように、分娩 が調査月1カ月に31件以上あるが、助産師が1人未満である病院の数は、全体で1,503 カ所のうち18カ所で1.2%です。  7頁も同じ資料で、それを診療所で見たものです。下から2番目の○を見ますと、分 娩が調査月に31件以上あるが、助産師が1人未満の診療所が、全体1,803カ所のうち 117カ所で6.5%という資料です。以上が関係統計です。  資料5についてご説明いたしますが、いずれにしても安心で安全な分娩に向けての体 制整備で、いかに助産師を確保するかということが1つの課題です。我々がやっている 政策努力をご説明いたします。  1番目は、来年度の予算の概算要求でお願いしているところですが、助産師確保総合 対策事業を創設していきたいと思っております。これは、産科・診療所における助産師 の確保のために啓発事業を行う一方で、潜在助産師の診療所への再就業に向けたモデル 事業などを内容とするものです。年末の政府案決定までに、これが実を結ぶよう努力し てまいりたいと考えております。  2番目以下は現在やっている事業です。まず、助産師養成数の確保、つまり多くの方 に助産師になっていただくというものです。(1)助産師養成数の確保に向け、各助産師 養成所長、あるいは文部科学省の担当課長宛に、定員を確保していただきたいとか養成 を増やしていただきたいというお願いをしているところです。  2)助産師養成所での社会人入学枠の導入ということで、病院・診療所で現在看護師 として勤務している方に対し、助産師の国家試験の資格を得ることができるように、社 会人として入学できるような入学枠の導入を養成所長宛に出しております。  3番目は、現在働いている助産師に対して離職の防止、あるいは転職した場合でも継 続して助産師として働くことをお願いするものです。これも今年3月ですが、助産師の 就業促進ということで、都道府県に対してきちんと協力していただきたいというお願い を出しているところです。  4番目は、資格を持ちながら働いていない助産師、つまり潜在助産師に対して、診療 所へ再就業の促進をお願いするものです。現在ある都道府県ナースセンターにおいて、 無料職業紹介をやっております、ということをお知らせしております。  2)我々の予算事業として、都道府県あるいは職能団体による潜在助産師再就職研修 などを実施しているところです。さらに、厚生労働科学研究という調査費を使い、助産 師の多い診療所を良い事例としてまとめ、それでパンフレットを作成して配布し、助産 師に対して診療所への再就職をお願いするという事業を行っております。  5番は、平成17年度からやっております、周産期医療施設のオープン病院化モデル事 業として、ハイリスクについてはオープン病院で、ローリスクについては診療所でとい うことで病診連携のモデル事業をやっております。  6番目は、現在行っている第六次看護職員需給見通しにおいて、これまでは看護職と いうのをまとめて需給動向を見ていたのですが、今回は助産師数を別掲で需給見通しを 立てる予定です。  参考資料2は、医師確保総合対策において、確保対策、医師の業務の効率化の観点で 産科医師と助産師の役割分担や連携ということもあります、ということを紹介しており ます。資料のご説明は以上です。 ○山路座長 要望が出ておりました石渡委員より、20分ぐらいで意見発表をお願いいた します。 ○石渡委員 産科における看護師等の業務についての意見ということで、産婦人科医会 の考え方をパワーポイントを使って述べさせていただきます。本日の発表は柱が3つあ ります。その1つは、いまの周産期医療がいわゆる世界のトップレベルあるいはトップ にあるということです。この周産期医療の評価については、例えば新生児死亡率、ある いは周産期死亡率、妊産婦死亡率というのがありますが、これが現在トップあるいはト ップクラスにあるということです。ところが、これにかかる費用を国民総生産と医療費 で見ると、これは周産期だけではありませんが、比率からいうと、日本は先進国の17 番目になります。この17番目の日本が、世界のトップの周産期医療をやっているという 事実です。  もう1つは、その周産期医療を維持することが最近は困難になってきた。その理由は、 いわゆる産科を担当している医師が不足してきたこと、産科を希望する医師が減少して いること、産科分娩医療機関が少なくなってきたこと、助産師の絶対的な不足というこ ともあり、特に地方においては産科医療機関が減少していることは事実であります。所 によっては1時間、あるいは1時間半ぐらいかけてわざわざ自動車で出かけて分娩を、 あるいは診察を受けているという現状があります。  そういう状況が、いま国が推し進めている少子化対策の負の要因として働いています。 もう一つは、いま現在ある資源、あるいは人材をどのように活用し、世界のトップレベ ルである周産期医療を維持していったらいいのか。この3つの柱についてお話していき ます。  「健やか親子21」には、10年間の国民運動計画が述べられております。妊娠・出産に 関する安全性と、快適さの確保、不妊への支援。主な10年間の目標としては、現在の妊 産婦死亡率は大体6.ちょっとということで、1万人に1人の妊婦も亡くならない状況に なっています。それを10年後には半減するということ。それから妊娠・出産について、 患者に100%の満足を与えること。周産期医療ネットワークの整備。妊産婦人口10万に 対する産婦人科医、あるいは助産師の割合を増加させることが謳われております。  分娩場所別の分娩割合、周産期、新生児、妊産婦死亡率の推移についてプロットする と、昭和23年に保助看法が施行されました。昭和25年には先ほど説明がありましたよ うに、96%は自宅あるいは助産所での分娩でありました。それが年々医療機関のほうに 分娩がシフトしていくとともに、周産期死亡率、あるいは新生児、妊産婦死亡率が著明 に低下してきました。  昭和25年当時は、1,000の出生に対し27.4人の赤ちゃんが亡くなっていたわけです から、大体40人に1人亡くなっているわけです。妊産婦についても、400人に1人亡く なっていることになります。これが、年々死亡率が減少してきて、現在は世界で1位で す。妊産婦についても世界のトップレベルを示しています。  それを表にしたものですが、ピンク線は妊産婦死亡率です。青い線は自宅分娩がこの ように減少してきたということです。それに伴い、医療機関分娩が増えてきたことをグ ラフでわかりやすく示したものです。  平成15年の統計ですが、出生場所別に見た出生数です。病院は52.2%を占めていま すし、診療所は46.6%です。助産所、自宅分娩を合わせて1%です。  診療所分娩が、都道府県の中で50%以上を占めている県がどのぐらいあるかをプロッ トしますと、50%以上診療所が担っている所は、平成4年は15県、平成14年は20県、 平成15年は24県と著明に増えてきています。一方、東京、札幌、仙台等々の大都市に おいては、病院での分娩が多く、地方では診療所での分娩が多いという状況です。  先ほどお話いたしました諸外国の周産期統計と比べてどうかということですが、周産 期の医療を評価する指標として妊産婦死亡、新生児死亡、周産期死亡率がそれぞれ書か れています。いずれにしても、これは先進国の中で日本はトップになっています。右の ほうに、総医療費と国民総生産の割合が書いてあります。日本は、先進国の第17位であ り、その費用の中から世界トップの周産期医療が行われているということです。これは、 周産期医療に携わる医師、助産師、看護師の並々ならぬ努力、それから行政の働きがあ るわけですけれども、現在は世界のトップを誇っています。  平成14年における産婦人科医、助産師の数です。産婦人科が1万、産科が416、婦人 科が1,366で、助産師の数が2万4,340です。  分娩機関数は、産婦人科の病院が1,590、産科病院が213、合わせて分娩医療機関とし ての病院は2,803、産婦人科診療所は3,282、産科診療所が658となっております。診療 所のほうは3,940になります。助産所は730です。この数字を頭に置いておいてくださ い。  助産師の就業者数及びその就業場所です。平成15年の統計では、病院に68.7%、診 療所には17.6%、助産所が6.2%、その他助産にかかわっていない助産師が約7%いま す。  医師、助産師の養成状況は、国家試験の合格数は、医師が7,568、保健師が7,440、助 産師が1,619です。  先ほど説明がありましたが、それを別の形でまとめたものです。助産師の確保されて いる数を、病院と診療所に分けて、助産師が1人未満の病院は56機関あります。病院は、 全部で1,503あり、そのうちの56が1人未満、1〜4.9が324、5人以上確保されてい る病院は全体の74.7%です。  一方診療所については、1,803のうち、1人未満が586、1〜4.9が1,112で61.7%、 5人以上の所はわずか5.9%になります。  1カ月の分娩が30件、年間でいうと大体360の分娩に当たりますが、その中で助産師 が1人未満の病院は18カ所で1.2%、同様診療所の場合は117カ所で6.5%となります。 助産師の就業が診療所においてかなり少ないことが窺えます。  このように助産師の就業が診療所には少ないというわけですが、今後その増加が見込 まれるかということの1つの指標として、卒業した助産師の就業場所を見るとわかりま す。平成16年3月の統計によると、大学を卒業した方が280人いて、そのうち診療所に 勤めた方はわずか2人です。短大、養成所を卒業した1,063人のうち、診療所に勤務す る方は28人、合計しても30人ということです。なんと平成16年3月の卒業生のうち、 診療所に勤める方はわずか2.2%になります。  分娩取り扱い医療機関がどのぐらい減ってきたかの統計で、これは産婦人科医会の統 計です。37県の支部からデータをいただきました。例えば平成14年度の場合は、新規 の開設が病院の場合は5つ、分娩を取りやめた所が13、つまり病院の減少数は8になり ます。同様に診療所は、平成14年度は23が新規に開設され、48が取りやめていますか ら、25の診療所が分娩をやめたことになります。  このような見方をしていくと、この2年半の間に病院では61減り、診療所では137 減りました。この比率を見ていくと、病院の減少率は2年半の間に6.9%、診療所は 10.3%となります。  いままでのは全国の平均的な話でしたが、1つの県として茨城県を取り挙げてみまし た。茨城県は、平成17年4月まで調べておりますが、この2年半の間に94から76、分 娩機関が18減りましたが、これは大体20%に相当します。茨城県は非常に面積の広い 土地で、水戸の北がひたちなか市ですが、そこまでは分娩医療機関が確保されています。 しかし、ひたちなか市以北、日立を超えて福島県境まで、これは茨城県の面積でいうと 約3分の1の広大な地域を占めますが、その中の分娩機関はわずか2つしかありません。 そういう現状があり、住民は1時間半もかけて、自動車で診療所あるいは医療機関に診 察に行き、分娩をしている状況にあります。住民の間には、かなり不安と不満が出てき ております。  まとめますと、産科医療の現状の問題として、まず産科医が減少してきたということ。 全体の医師の数は少し上昇しております。産婦人科医を目指す人は少し減ってきており ますが、産科医を目指す方については非常に減少しております。大体8,000人ぐらいの 医師が卒業していくわけです。免許を取るわけですけれども、産婦人科に進む方は300 人、それから産科・周産期医療に進む方はわずかに80人という状況で、しかもそのうち の半数は女性医師です。そのような状況があり、産科の実働医師は減少しております。  分娩医療機関が減少していて、地域の住民に不安と不満を与えております。助産師の 数は非常に不足しているのが現状です。助産師がどのぐらいいれば周産期医療をやって いけるかということです。いままで周産期医療については、看護師の内診問題等々があ りました。それ以前は、医療機関によってはベテランの看護師が一部内診をしていたこ ともあります。それが一切できなくなりました。医会のほうもすべての会員に、看護師 の内診をしないように指導を徹底しております。  そういうこともあり、これからは内診等々を含めた助産についてすべてを助産師にや っていただくことになりますと、1分娩機関当たり、助産師は6〜8人必要であること になってきます。これは、1人の方がずっと勤務することを仮定しますと、3交替制で 1週間ありますから、延べ21人が必要になってきます。また、週休2日制、実際に病気 等々で休まれている方などを含めると、少なくとも6人から8人の助産師が必要ではな いか。これが、安全・安心の医療を提供するために必要な数であろうと思います。全国 の分娩施設は6,473あり、これに8を掛けますと必要な助産師は5万1,784になります。 ところが、実際には2万3,800人が就業していて、不足の助産師数は2万8,000人ぐら いになります。  一方、産科の診療所においてはもっと深刻で、3,940の診療所がありますので、3万 1,520人の助産師が必要になります。残念ながら就業されている助産師は4,534人、そ の不足は約3万人です。  充足率を産婦人科医会の統計で見ていくと、助産師が4人以下しか確保できていない 施設は1,090のうちの805で、74%に相当します。つまり、5人以上助産師を確保して いる医療機関はわずかに26%です。同じく助産師会の調査もこの間発表がありましたが、 充足率は25.2%です。  このように少ない助産師の現状を踏まえ、もう一度分娩進行における、医師、助産師、 看護師の役割等々について考えていきます。分娩経過はI期からIV期に分けております。 分娩第I期は陣痛が始まってから、子宮口が全開大になる時期で、これは一般に陣痛期 といってもいいと思います。この間は、ほとんどが観察をする時期で、これは医師、助 産師、看護師の協力で成り立っていくと思います。  分娩第II期、特にこれは子宮口全開から、胎児が娩出する非常に重要な時期です。特 に、後半は胎児娩出介助ということがあります。この時期は、医師と助産師が行ってお り、看護師は行っておりません。分娩第III期は胎盤の娩出期ですが、約5〜10分かかり まして、医師と助産師が担当しております。分娩第IV期は回復期、産褥の早期で、約2 時間ぐらいの観察が必要です。出血であるとか、一般状態の観察は、医師、助産師、看 護師が担当しています。  次は用語の定義です。「分娩介助」というのは、日本産婦人科学会の定義があります。 分娩第II期後半の、胎児が娩出するときの補助的に行う操作を分娩介助といいます。  「助産」については、残念ながら保助看法等には定義がありませんが、本来自然に経 過した分娩介助と、それに付随する世話と考えていいのではないかと思います。  「看護」については、健康保持増進、あるいは疾病予防、それから分娩に伴う必要な 処置と前後の世話が看護と考えられるのではないかと思いますが、これは後でお話させ ていただきます。  厚生労働省医政局看護課長通知とその波紋についてですが、特にこれは地方の状況が 反映されていると思います。平成14年に鹿児島県の保健福祉部長により、看護師の内診 問題についての疑義があり、それに対して看護課長から通知が出されました。  平成14年は、看護師による内診による判断の禁止。平成16年は、愛媛県の保健福祉 部長からの疑義照会に対して、看護師による内診の禁止が通知されました。医会は、直 ちに全会員にこの通知を周知徹底させました。その後、これはいろいろな要因があるの ですが、例えば産科医の高齢化、あるいは医師臨床研修が始まり、産科医が大学へ戻っ たり、この内診問題もあります。いずれにしても、この通知以降分娩機関が消失してお り、この2年半の間に全国の病院の6.9%、産科診療所の10%が分娩を取りやめており ます。  これは8月23日に、NHKの「クローズアップ現代」で放映されましたが、地域によ って分娩機関が減少してきて、自分の地元で分娩できる所がなくなってきたということ で、住民に不安と不満を与えております。1時間あるいは1時間半かけて分娩するとい うことは、決して安全で安心な医療の提供にはならないと考えております。  分娩経過と、医師、助産師、看護師の役割・分担をもう一度考えてみたいと思います。 周産期医療というのは従来、医師、助産師、看護師の連携と協力が不可欠でした。その ときには、正常な分娩経過を辿るものもあれば、また異常が発生してくる場合もあるわ けです。正常な経過については助産の範疇であり、医師、助産師、看護師等々が協力し ながらやってきたわけです。  異常が発生すると、これは医療の範疇に入り、助産師が単独で業として行うことはで きなくなってきます。医療の介入が必要になってくるわけで、医師及び医師の指示によ る看護師資格のある助産師、あるいは看護師がこれに対応していくわけです。  助産師の不足がもたらしてきた影響をもう一度考えてみますと、先ほど私が報告しま したように、助産師は絶対的に不足していると思います。これをこのまま放置すると、 周産期医療は崩壊してます。直ちに助産師を増加させるような有効な処置を施す必要が あるのではないかと思います。  先ほど、厚生労働省からいろいろな政策が発表されましたが、やはり有効な処置を施 すことは必要でないかと思います。そして、この助産師不足への対応が現実的なものに なってきたわけです。助産師が圧倒的に足りない現状を見据えた対応として、助産師が 充足するまでの間、看護師に助産を教育する、看護師に必要な技術を習得させるという ことが必要で、これは公的な立場で教育していくことが必要だろうと考えます。  将来を見据えた対応ですが、助産師を多数養成していくこと。看護師の養成のカリキ ュラムの中に、助産に必要な知識、技能の項目を盛り込むこと。そして、看護師に内診 も含む助産行為ができるように考える。例えば、産科エキスパート・ナースの養成等々 です。看護師の資格を取ったと同時に、助産もできるような手立てが必要ではないかと 考えます。  まとめの1つとして、周産期医療というのは、需要と供給のバランスで成り立ってい て、需要のほうは分娩ですが、これはわずかに減っております。供給については、ヒト と、物と、システムが安全な医療を提供するためには大事であります。このうちのヒト、 産科医が減ってきたこと、助産師が圧倒的に足りないことがバランスを崩しているわけ で、周産期医療の崩壊につながるのではないかと考えられます。助産師の超不足、ある いは産科医の減少、これが産科診療所の閉鎖に結び付きますし、分娩をやっている医療 機関に分娩が集中してくると、そこでは過重労働になり、そこでもまた産科を閉鎖する ようなことが起きてきます。それが周産期医療を崩壊し、地元の住民にとっては、地元 でお産ができないという状況になります。あるいは、お産、妊娠を希望している方も、 妊娠するのを少し控えようという意識も働きます。これが少子化を加速させていくので はないかと危惧しているわけです。  助産師の増員が緊急的な課題であり、そのためには看護学校で助産を修得した、いわ ゆる産科エキスパート・ナースを養成する必要があるのではなかろうか。医療機関内の 助産師、看護師の役割をもう一度考えたほうがいいと思います。それから、助産師が充 足されるまでの間、暫定的な対応についても考慮する必要があるのではないかと考えま す。  もう一度内診ということを考えてみたいと思います。分娩経過を診るときには、観察、 計測、操作等々がありますが、その中で難しさと、それに伴う危険性について考えてい きたいと思います。「操作」というのは、多少の危険性と難しさがあります。例えば、ど ういうのを操作と考えるかというと、卵膜の剥離であるとか、破膜であるとか、あるい はラミナリア桿の挿入、抜去、メトロイリンテル、これは物理的な分娩誘発、陣痛誘発 のことをいっておりますが、卵膜剥離や破膜は助産師にもやれますが、ラミナリヤ、メ トロイリンテルは医師がやる作業です。  「観察」は、危険性がほとんどないと考えられます。この中には、例えば分娩監視装 置、ドップラー聴診器、超音波診断装置などによる観察です。看護師は医師に報告しそ の判断を仰ぎます。  それから、子宮口の開大度、児頭の下降度等々の計測、これはいままで内診と言われ ていたわけですが、これは教えて訓練を積めば、容易にできるのではないかと思います。 看護師は、医師に報告して判断を仰ぐのであり、看護師が診断をするのではなくて報告 をするのであります。内診とは、分娩を安全に導くために必要な1つの観察・測定であ ると考えております。助産師が単独で行う場合と、医師の指導の下に行うこととは自ず と違うと考えます。  内診についてもう1つ考えると、助産師は異常が発生したとき、正常からの逸脱につ いて判断し、医師に報告する。看護師は、実際に児頭の下降度と頸管の開大度を測定し 医師に報告し、判断を仰ぐ。  医療の安全性、内診の安全性は高いと考えます。例えば、静脈注射は、看護師に医療 行為の補助として認められておりますけれども、その静脈注射に比べれば、内診という のははるかに安全なものであると考えます。静脈注射は、ショックを起こすこともあり ますし、抗がん剤の血管外への漏出は壊死につながります。  もう1つ感染性ということを考えてみますと、感染性の危険度というのは、一般に細 菌の力価、細菌の強さ、それにかかわる頻度、何回そういうことが起きたか、それから 細菌の量によって危険度が増します。一方、患者の免疫力、あるいはその細菌が進入す る進入点の抵抗性により、感染危険度は低下していくわけです。健常な皮膚、あるいは 粘膜は感染しにくいといわれております。  『保健師助産師看護師法の解説』が、日本医事新報社から出ておりますが、看護とい うのは次のように書かれています。「健康を主体とする人間の健康保持の増進、疾病の予 防、分娩に伴う必要な処置と前後の世話など生命を守り、これを延長することのために 役立つもの」と定義しております。ここには、看護の中に「分娩に伴う」と書かれてい て、看護師は内診をすることが可能ではないかと窺えます。  最後に、医会からの緊急提言です。まず、いま絶対的に不足している助産師を確保し なければ、周産期医療は崩壊する可能性があります。内診に関する見直しも、もう一度 してはどうかと思います。産婦人科医会、あるいは産婦人科医の役割でありますが、こ れは分娩医療機関を確保したり、安全な産科医療を提供したり、あるいは助産師、看護 師と共に連携して医療をやることと、助産師、看護師の実習、あるいは研修に私たちは 全面的に協力させていただきます。助産師の役割は、正常分娩への誘導、あるいは介助 ということになろうかと思います。  行政の役割は、やはり分娩医療機関の確保、助産師の確保、国民に安全・安心な周産 期医療を提供、あるいは少子化の歯止めではないかと思っております。特に地方におい ては、分娩医療機関がない状況がいろいろな所に出てきており、「クローズアップ現代」 だけが言っているわけではなく、いま各地の住民から、不安と不満が出てきております。 保助看法の改正を視野に入れて検討していく必要があるのではないかと思います。例と して、産科エキスパート・ナースを養成することも、今後は重要なファクターではない かと考えられます。以上です、どうもありがとうございました。 ○山路座長 次に青木理事から、日本医師会の見解が出されております。10分程度でお 願いいたします。 ○青木委員 私も、少し意見を述べたいということで時間をいただきましたことをお許 しいただきたいと思います。石渡先生の発言と大部分が重複いたしますので、できるだ け割愛してお話をさせていただきます。  最初に確認させていただきたいことがあります。石渡先生は、日本産婦人科医会の推 薦でこの検討会の委員になられたのであって、石渡先生の個人名だけが厚生労働省の方 から出ておりましたが、医会の代表であることをはっきりさせていただきたい、という ことが私の最初の望みです。いまから私が話をさせていただきたいことは、現在、助産 における看護師による内診はやってはいけないことになっております。いま産婦人科医 会の意見として述べられたように、少なくとも分娩の第I期にあっては違法性はないと 考えられて、絶え間ない分娩を監視していく、診ていくという意味では、お産のより一 層の安全につながるというように、いまの日本の状況からすると考えられるのではない か。  資料7の最初の頁で、石渡先生からお話がありましたように、厚生労働省から2通の 通知が出ております。この通知によって産婦人科医会の不安、動揺、地域医療が混乱し たということが起こったのではないかと考えております。  2番目のポツですが、保助看法には助産の定義はありません。本来、厚生労働省はこ ういう通知を出すときには、何らかの形で助産というものを定義し、何らかの基準によ って、診療の補助行為と助産を区別するべきであったし、何かそのようにしているので はないか。ただ、私どもにはこの辺りの根拠・理由はわかっておりません。そういう状 況で、この通知が発出されております。  もう1つこれは非常に大事なことだと思うのですが、保助看法というのは産婆規則に 始まり、助産婦規則からできてきているわけです。我が国にあっては、助産と診療の補 助行為の両者の定義・関係が不明確な状態にあると考えられます。通常医療の現場では、 看護師が患者の状態等を観察し、把握して医師に報告をして、それを受けて医師がいろ いろ判断することが非常に多いというのがいまの医療の中の成り立ちです。  分娩第I期においては、それが否定されることに私どもは疑問を持っているというこ とです。  以上のようなことであり、2頁には先ほど石渡先生が重々お話をしていただきました ので、ここは割愛いたします。ただ申し述べておきたいことは、いちばん最後の資料に ついております、先ほどから何回も出てきた、いまの我が国の分娩の47%弱が診療所で 行われているということです。  最後の頁のカラー刷りのを見ますと、平成4年の状況と平成14年の状況が記載してあ ります。各県ごとに50%以上のお産が診療所で行われている所を赤く表示しております。 平成4年においては、50%以上が15県でした。平成14年では20県でした。また、ここ には書いておりませんが、平成15年においては24県に増加しております。さらに九州 のある県においては、お産の70%超が診療所で行われているという現状があることも、 ご承知いただけると幸いです。  私の資料の3頁の中ほどに、医師が保助看法違反に問われた事例を記載しております。 これは診療所の医師が助産師でない者に内診を行わせたということで、保助看法違反と して罰金50万円の略式命令を受けております。この件に関しては医道審議会で2回ほど 審議をしていただき、平成17年7月の医道審議会で、医業停止3カ月という行政処分が なされております。こういう動きをとらえて、日本産婦人科医会は昨年の10月に、厚生 労働省医政局長宛に要望書を出しております。簡単に言いますと、これは通知を撤回し ていただきたいということです。そのときの主旨は、いちばん下の5行にありますよう に、昭和23年に施行された保助看法の本来の立法趣旨は、医師法にある医療行為の一部 としての助産を、助産師が単独に業として行うことを可能とするもので、言い換えれば、 助産師が業として単独に助産を行うことが、医師法違反になることを除外する規定であ り、看護師、准看護師が医師の指示の下に、分娩管理の補助を行うことを排除するもの ではないということです。これは保助看法の第37条の規定から明らかだという主旨で、 要望書を提出いたしております。  私がいちばん申し上げたいことが、4頁と5頁にあります。4頁のポツのいちばん最 後を読ませていただきますと、「有資格者である看護師等による内診は、医療安全を脅か すものではない。産科医の専門家集団である日本産婦人科医会も、看護師等の一定の条 件下での内診を診療の補助行為として考えるべきであるとして、それが出産の現場にお ける絶え間ない分娩監視につながり、医療安全をより高めること」としています。5頁 ですが、「日本医師会は産婦人科医会と意見を一にするということと、少子社会の我が国 において、周産期医療の確保の重要性に鑑み、この主旨をできるだけ早く実現すべき」 と考えております。最後に、助産と診療の補助行為を十分に整理をして、我が国の助産 を含めた看護のあり方を、保助看法の改正を視野に入れつつ、検討することが大事では ないかと考えます。  蛇足ですが、いま説明の中で厚生労働省から、これから助産師を増やしていくという ことをお聞きしてきているわけですが、実感として看護師も非常に少ないという状況の 中にあって、これからどんどん少子化が進むという中で、看護師も増やす、助産師も増 やすというのは。私には理論的な根拠はありませんが、そういうことだけ考えていって も、これは解決しない問題だと思います。ですから保助看法の考え方を、少し変えてい くことが必要ではないかというように考えます。 ○山路座長 青木委員が最初に言われた、石渡委員が日本産婦人科医会の代表であるこ とについては、皆さん方も当然承知していることですが、改めてそれを確認しろといえ ば、確認させていただきたいと思います。 ○青木委員 結構です。ありがとうございました。 ○山路座長 ただいまのお二方のご意見に対して、質問やご意見をお願いいたします。 ○菊池委員 日本産婦人科医会のご意見の中で、「今後の体制のあり方」ということで、 最後に緊急提言がありました。その中の「分娩医療機関の確保」「助産師の確保」「国民 に安心・安全な周産期医療の提供と少子化の歯止めに有効な対策の実践」というのは、 日本看護協会としても非常に大事なところで、大賛成です。ただ実際にその体制をどう つくっていくかという時に、いまは少子化で、より安全なお産を、それから産む方も、 一生のうちに1人か2人しか産まないわけですから、より満足のできるお産を求めてい らっしゃるわけです。そういう質の高いお産のケアを求めているときは、やはりそれを 提供する職員として、助産についてちゃんと教育を受け、訓練を受けた助産師を確保し て、ちゃんとサービスを提供すると。将来の日本の少子化に対する対策というものを考 えたときには、基本的にそういう方向性をきちんと考えて、体制を考える必要があると 考えます。 ○山路座長 わかりました。ほかにご意見はありますか。お二方に対するご質問でも結 構です。 ○山本委員 内診は侵襲が大変少なく、安全に行われるもので、分娩進行状況を判断す るのに行う計測の1つというようなご意見がありましたが、内診として私たちが考えて いることを読ませていただきますと、「内診は分娩進行状況を判断するため、全体掌握の 1つの手段であり、内診の行為を計測として単純に論じられるものではなく、子宮口の 開大のみでなく、硬度、柔軟性、回旋、骨盤内の児頭の高さ、大きさ等を判断して分娩 進行を診断し、リスクを回避するために細心の注意を払い、危険予見と危険回避を備え た助産業務は、医師の指示下によるものではなく、また看護師により代行される業務で はない」と考えております。 ○遠藤委員 石渡委員に質問したいと思います。7頁のパワーポイントの「助産師の卒 業後の就業状況」というのは、非常にわかりやすい表だと思っておりますが、なぜ就業 先として診療所に行かないで、病院に集中してしまうのだろうかということを、もし何 らかの分析がありましたら、そのことを追加としてお話いただければありがたいと思っ ております。  もう1点は、実は私も先ほど山本委員から説明がありましたように、内診というのは 単なる計測とは考えておりません。助産という行為は、正常な方が正常に経過していく ための1つのツールと言いますか、技術であって、分娩第I期のいわゆる自然経過を順 調にさせるためと思っております。石渡委員は産婦人科医でいらっしゃるので、おそら くそれは非常によくわかっていらっしゃると思います。同じ5cmであっても、展退と言 いますか、頸管の状況によって、いまは休んでいただきたいと思うか、歩いていただい たほうが安全に、しかもスムーズに出産が進行するだろうという微妙な、本当にプロゆ えにできる技術だと思っているわけです。第I期の観察で産婦さんのケアが行われるか という点では、観察とその後のケアがセットになったところで、初めて安全な分娩がサ ポートできるし、快適性が保証できると私は考えているのです。この件と2つ、お答え をよろしいでしょうか。 ○石渡委員 まず、第1点目の助産師が診療所に非常に少ないという状況の背景を分析 すると、こういうことが言えると思います。まず大きな病院が、都市に集中していると いうことです。特に地方においては、診療所が分娩の中心になっておりますが、やはり 医師が地方に就職しないことと同じような状況が働いているのではないかと思います。 やはり都会の生活というのは、若い方には非常に魅力的なものであろうかと思いますし、 子供の教育等々も含めますと、どうしても助産師が自分の生活のために都会に集まって いく、そういう要素があるのではないかと私は考えます。  それから楽なところへは一般的に就職しやすいわけです。診療所のいまの分娩という のは、助産師が非常に少ない状況で、医師と助産師が協力しながらやっていますが、現 実のところ非常にハードです。いろいろな就職口がある中で、そういう所に助産師が改 めて入ってこられるかどうか、その辺のところは非常に疑問に感じています。それが1 点です。  もう1つ、内診の問題ですが、ビショップスコアをはじめ、内診というのは確かに深 さがあります。それを私は否定しているわけではありません。これをあえて「内診」と 言っていいかどうかはわかりませんが、医師の指示の下に、あるいは医師の監督の下に 看護師がやれる内診は、例えば児頭の下降度、あるいは頸管の開大度の測定です。この 2つだけの情報でも、医師のほうにきちんと伝わってくれば、医師は非常に判断しやす いと思います。もちろん助産師がたくさんおられれば問題はないわけですが、現実問題 として助産師がおられない、あるいは非常に少ないという状況下においては、看護師が こういう産科医療に協力してくださるということは、私は非常にありがたいことではな いかと考えております。ですから助産師が言われる内診の深さと、医療機関の中におけ る看護師の内診において、私たちが求めているところは、自ずと違うわけです。  胎位胎向についても、いろいろ細かい深いところまで読み取っているわけですが、い まは分娩監視装置があり、超音波断層装置等々がありますので、胎位胎向や胎盤の位置 等々については、教育・訓練をすれば看護師でも十分それについてこられると、私は感 じておりますし、実際にされている所も多いかと思います。 ○平林委員 1つ教えてほしいのです。内診をするタイミングというのは、どういうよ うに測っていくのですか。それはその看護師の知識と能力で判断できるものなのか、医 師が判断するのか、あるいは助産師だったら独自にできるのか、そのタイミングを教え ていただきたいのです。 ○石渡委員 初めは非常になだらかな分娩の進行ですが、途中から分娩進行期と言いま して、直線的に陣痛と共に子宮頸管が開いてまいります。大事なところはそのいちばん 初めのポイントです。要するに陣痛が始まって入院したときです。これはドクター、あ るいは助産師が診ております。それから分娩の進行と共に陣痛が強くなってきますと、 頸管は急激に開いてくることもあります。それは千差万別ですが、そのときの開大度や 陣痛が強く、どうも分娩の進行が早いなという予測が付いたときには、やはり内診が必 要だと思います。胎児の健康状態については、分娩監視装置等々を付けておりますので、 その辺は安全に誘導できるのではないかと思います。私は内診ということ、例えば児頭 の下降度や頸管の開大度をきちんと測定するということが、医療安全、安全な分娩に誘 導するためには必要な行為ではないかと考えております。 ○平林委員 ちょっとよくわからない。委員がおっしゃる下降度と開大度の情報がほし いというのは、理解できたのですが、仮に看護師がそれをやるといった場合に、どのタ イミングで内診をしろということを、逐一産科医が指示をすることになるわけですか。 ○石渡委員 陣痛が強くなって、分娩の進行が早まりそうだというタイミングです。 ○平林委員 それはどういうようにしてタイミングがわかるのですか。結局、それは医 師が診ないとわからないわけですね。 ○石渡委員 もちろん報告を受けて、医師が判断するわけですが、大体分娩第I期です。 これは陣痛期ということで、先ほどちょっとお話しましたが、大体8時間ぐらいありま す。内診が必要になってくるのは、そのうちの数ポイントです。四六時中内診が必要だ ということでは決してありません。 ○平林委員 要するに機械的に内診をやるタイミングが決まるのか。産婦の状況を診て、 内診をするかしないかを判断していかなくてはいけないと思うのですが、そこら辺の専 門的な判断の問題を、私は問題にしたかったわけです。それを看護師の知識と能力でで きるのかどうかという、そこのポイントなのです。 ○石渡委員 もちろん看護師になり立ての方には、そういうことは無理ですが、訓練と 言いますか、経験を踏みながら、それは理解できるものではないかと思います。特に陣 痛が強くなったときが、いちばんポイントになってくると思うのです。分娩第I期に、 数回の内診があればいいと思います。それはドクターのほうに十分ゆとりがあればやれ ることではあります。ただ先ほどもお話しましたように、ドクターというのは、特に診 療所においては外来から手術から、すべてをやらなければなりませんので、すべて分娩 室に待機できるわけでもありません。そういうところを協力しながらサポートしていた だければと思っております。ですからその経過を全部看護師に任せるということでは、 決してないのです。医師がやるところは医師がやるのですが、足りない部分を看護師に 協力していただいて、計測・観察をして、そのことを報告していただければ、医師が判 断して適切に安全な分娩へと誘導することができると思っております。 ○平林委員 もう1つ、ついでにお聞きしたい。そのときに内診をして下降度や開大度 だけを先生が求められたとしても、いろいろなものの本を読んでいきますと、分娩とい うのは、いつ正常から異常に転化するかわからないとよく言われていますよね。正常産 から異常産に移っているということの判断は、看護師はしないわけですよね。 ○石渡委員 看護師は、例えば分娩監視装置等々で、分娩の進み具合、特に胎児の状況 (ウエルビーイング)について判断していくわけですが、この分娩監視のときに、いく つかのチェックポイントがあります。こういう所見が出たら、必ず医師に報告するとい うことを言っております。それから内診の問題についても然りです。やはりチェックポ イントというものを話して、それが十分理解され、経験されているベテランの看護師が 当たるわけであって、現実には看護師になって1年目の方がやっておられるわけでは決 してないのです。 ○山路座長 専門的知識とある程度の経験がないと、もちろんできないということです ね。 ○石渡委員 そうです。 ○辻本委員 先ほどなぜ診療所に助産師が勤めないかというお話がありましたね。これ について私は何の根拠も持ってはいないのですが、1つには診療所のドクターとのコミ ュニケーションや、待遇というか処遇というか、資格を持っていらっしゃるにもかかわ らず、助産師たちの気持をきちんと満たすような状況がないから、診療所にいらっしゃ らないのではないかという印象を、少なからず持っているわけです。  それに関連するかどうかはわからないのですが、私どもが電話相談をお受けしていま すと、そもそも電話相談に電話を掛けるという人たちは、期待に応えてもらえなかった とか、ミスではないか等々、マイナスの感情を持った人がわざわざ受話器を取るのです。 特にお産の場合は、ある程度結果が出たところで、それに対してのマイナスの感情を持 っていらっしゃいます。どういう経過であったかということを語るときに、例えばそば で診ていてくれなかったとか、若いナース任せだったというような、正常にいけばそれ ほど心に残らないけれども、結果がマイナスであって、そこにマイナス感情が加わるこ とで、遡って考えるとあれもこれも、あれもこれもとすごく不満を持つ、あるいはそこ に不信を感じているというご相談が、とても目に付きます。 ○石渡委員 それは勤めている助産師からではなくて、患者のほうからですか。 ○辻本委員 はい、そうです。もちろん、そこには患者の思い込みであったり、被害者 意識であったりという状況もあろうかと思います。しかし少なからずマイナスな感情と、 期待していなかった結果が、患者の気持を取り巻いています。  そういう中で今、特に出産年齢である20代から30代前半辺りの方たちというのは、 お産の場面に限らず、他の医療の問題についても、非常に権利意識の強い世代なのです。 そういう権利意識の高い中で、ますます要求も高いという実際があります。これは日本 医師会のほうから出されている青木委員のペーパーの中にもあって、ちょっとびっくり しました。最初の4行目の「この実施が違法であるとされたことから、地域の産婦人科 で不安や動揺が生じている」という一文は、すでに今までもナースがこの行為をやって いたことを裏づけるようにも読み取れてしまうのです。患者が結果としてマイナス感情 を持つという中で、遡って、そういえばあの時に若いナースがというような話が幾多も 出てくることを思うと、患者への情報開示ということも含めて、ここではっきりと明確 にしていただかないと、ますます患者の不安が高まると感じております。  もう一度元に戻ります。助産師が診療所になぜという問題のところで最初に申し上げ たことは、稚拙な意見であるかもしれませんが、診療所の院長やドクターとのコミュニ ケーションとか、有資格ということでありながら、給料がちゃんとそこに加味されたも のになっていないのではないかと、私が素朴に疑問に感じた辺りを、電話相談の声を背 景に、少し確認させていただきたいと思いました。 ○石渡委員 いまのご質問は、主に2つあろうかと思います。1つは診療所で助産師が 確保できない1つの要因としては、助産師の業務が十分にできない環境になっているの ではないかという、そういうご質問だと思います。患者のほうの話もありましたが、満 足度というのは非常に重要です。それは、むしろ診療所のほうでもきめ細かな患者への、 あるいは妊婦への対応ができている所もたくさんあると思います。例えばアメニティに ついても食事の問題、あるいは病室の問題等々、その周辺の環境のこともあります。い ま辻本委員が言われたように、もちろん診療所の中には助産師が十分な活動ができない という、そういう環境も否定できませんが、アメニティについては診療所のほうでも、 病院以上に十分考慮はしていると思います。  もう1つの内診の問題ですが、私は厚生労働省の通知がある以前から、助産師が十分 充足されているとは思っていません。ですから産科機関においては、看護師が分娩経過 に十分協力しながら、実際に分娩がされていたと思います。それには助産師との協力、 医師との協力など、いろいろな協力があります。特に第I期においては、看護師が児頭 の下降度や頸管の開大度を診ていたと思いますし、そういう機関も多々あったと思いま す。  もちろん助産師が充足されていれば、おそらくそういうことはなかったかと思います が、残念ながら先ほど私が説明したように、診療所において助産師が4人以上勤務して いるような所は、ほとんどないわけです。そういう所では医師の指示の下に、内診が行 われています。私たちは内診というのを、いろいろ分けながら考えておりますが、いわ ゆる下降度と開大度については、看護師が医師の指示の下にやっていたと思います。た だし厚生労働省からの通知以降は、看護師の内診については産婦人科医会のほうで、し ないように周知徹底しているはずですから、そのようにやっていると理解しております。 ○山路座長 青木委員、何か付け加えることはありますか。 ○青木委員 石渡委員に言っていただいたとおりです。診療所およびその職員である助 産師とのコミュニケーションがうまくいっていないのではないか、もしくは患者との関 係がうまくいっていないのではないかというのは、医療関係者としても努力をしなけれ ばいけないことだとは認識しております。そういうことがあるというのは事実だろうと 思います。ただ、それは世の中一般の場合にあることであって、特にそれについて何か 重大な問題があるというようには考えておりません。 ○山路座長 あと、賃金や労働条件の問題を言われたのではなかったですか。 ○辻本委員 その辺りにも少し触れてはいただいているのですが、実際に賃金がいくら ぐらいなのか、他のナースとどれぐらい格差があるのかということは、私は全く存じ上 げませんので、私が満足するということよりも、むしろ現場の方たちがそこのところを どう捉えていらっしゃるのか、助産師のほうにそういう印象でもあれば、お聞きしたい と思います。 ○青木委員 私は、そういうことに関する情報はありません。逆に辻本委員のほうが、 そういうことについての情報をお持ちなのではないかと考えます。 ○川端委員 若干戻りますが、そうすると石渡委員のご意見というのは、内診を看護師 にすべて認めていいということではなくて、いわゆる内診のうちの子宮開口度と児頭降 下度に限り、しかもある程度熟練している看護師に、必要な研修をして認める新しい制 度をつくるべきだというご意見ですか。それと内診は測定だからという意見と、その両 者の関係が私もよくわからないのです。 ○石渡委員 医療機関内で医師の指示の下に行う看護師の内診は、児頭の下降度と頸管 の開大度です。測定というように私たちは考えておりますが、いま現実に助産師が絶対 的に不足しているという状況下で、看護師が測定できるような体制、環境をつくってい ただければいいと思うのです。 ○川端委員 もし内診が測定だということになれば、いまの制度のままで、すべての看 護師ができるということになってしまうのではありませんか。 ○石渡委員 いま看護大学を卒業されて助産師、保健師、看護師の資格を取った方の中 で、看護師の資格がない助産師がおられるということが、この前いろいろ話題になりま したが、将来的にはいわゆる看護大学、あるいは養成所を終わった時点で、少なくとも 医療機関の中で、私が言ったような条件で周産期医療に携われる看護師の養成が必要で はないかと思います。例えばこれを「エキスパート・ナース」と言ってもよろしいかと 思います。 ○川端委員 そのためには新しい制度が必要だ、というご意見だと伺っていいのですか。 ○石渡委員 もし、いまの制度の中でそれが出来ないということであれば、新しい制度 も踏まえて、あるいは保助看法の改正も踏まえて、十分考えていく必要があるのではな いかと思います。 ○山路座長 ほかにご意見はありますか。 ○山本委員 保助看法というのは、教育と資格認定の上に成り立っておりますので、経 験を積み重ねているからといって、医師の指示下において内診ができるということでは ないというのは、繰り返し話し合われております。現に看護師教育の中に、内診の臨地 実習は全くありませんし、教育もないという報告が、この会の初めにありました。可及 的速やかに助産師が充足されるまでの暫定的な処置として、看護師を教育して産科エキ スパート・ナースを養成するということですが、多少時間はかかっても、十分に教育を 受けたプロフェッショナルとしての助産師の養成をすべきではないでしょうか。そのほ うが国民に対する安心・安全ということを、十分に提供できるかと思いますが、いかが でしょうか。 ○青木委員 最初の説明でもありましたように、内診を教えていないからという言葉が ありまして、今もそのことが出たわけですが、私のとらえ方は、医師にしても看護師に しても、解剖を学び、生理を学び、生化学を学び、そういうことを基礎にいろいろな知 識を得ながら、自分で組み立てていくわけです。例えば私自身にしても、今はちょっと 違いますが、外科の医師をやっておりました。しかし学生のときには胆石の手術も、盲 腸の手術も、胃の手術もしたことがありません。医師になってから周囲の先生方に教え を受けながら、自分が教育を受けてきたことに足しながら組み立てて、いろいろなこと が順番にできるようになってくるのです。これが私の経験だし、医療関係者というのは、 ほとんどがそういう範疇で考えなければいけないし、そうではないかと思うのです。 ○山本委員 私も青木委員と全く同じで、教育を受けた者がということが大前提になる かと思うのです。十分に教育を受けた有資格者が内診に当たるべきと考えております。 経験によるものではないように思いますが、いかがでしょうか。 ○青木委員 私は以前、看護学校の看護師養成所の責任者をしていたこともありますの で、医師の中でもある程度看護のカリキュラムには通じていると思っています。たしか 母子看護というところでは、4単位ないし6単位ぐらいはあったはずです。そうします と1単位が30〜35時間とすると、かけるそれだけのものを勉強しているわけですから、 私はいまの看護師は教育がゼロということはないと考えますが、それは違うのでしょう か。 ○山路座長 小島委員、いまの関連でどうぞ。 ○小島委員 ただいま、教育を受けた者がその業務に当たるというのが大前提というこ とですが、私どもも産科における業務というのを、ここに出させていただいております。 しかし、それでは助産師が専門の教育を余分に受けて、専門的な判断能力を形成するこ とが、どういう意味になるのだろうかという疑問が生じてまいります。  私どもは産科病棟の看護の業務をご紹介しておりますが、ここには内診のことは触れ ておりません。それは助産師が行っておりますので。助産師が内診等をするということ は、状況を診て、それから分娩進行の全体の状況を診た中で、専門性の教育を受けた者 がそこで判断をして、そして正常から異常にどのように行くのか、そういったことを診 てまいりますから、異常についての習練を積んでいるわけです。内診のことも含め、助 産師たちは特に産婦の心と体を整えながら、母と子が共にある大切さというものを大切 にして、そういうことをやってまいりますので、やはり助産師としての専門の教育を受 けた者がやるのがふさわしいと思います。  いまお話を伺っておりますと、確かに診療所等に助産師が就職していないという現状 も多くありますが、医療の供給体制の中に助産師をもう少し増やす方向を早急に検討す るということが、やはり本質的に迫るところではないでしょうか。私どもも病院でいろ いろな人を見ておりますので、産婦人科の医師がどれほどの状況の中で苦労をして勤務 しておられるかというのも、目の当りにしております。そういうことを考えますと、や はり根本的なところはそういうことを踏まえて、医療を安全に行うのであれば、なおの こと助産師教育を充実させていくという供給体制のところに、もっと視点を当てていく ことが大事ではないかという考えを持っておりますが、いかがでしょうか。 ○坂本委員 私もどうもよくわからないのです。先生方のお話の中でも一致されている ところは、内診も含めて、助産師が正常な妊産婦にいろいろなケアをすることにおいて は、それがいちばんいいという観点であることは変わりがないと思います。そういうこ とでいいですよね。それに対して安心で安全な分娩に向けてということになれば、やは りいちばんいい体制として、みんなが一致している体制に持っていくという努力なしに、 なぜ看護師の内診が突然そこに出てくるのかというのが、私はまだよく理解できないと ころがあるのです。そういう意味ではやはり国も含めて、これからは診療所などでも大 変興味があるように助産師に持っていくという施策を、積極的に、協力的にやっていく べきです。  また産科医が不足してきたことにおいて、看護師の内診というところに位置づけると いうことも、私はまだなかなか理解できないですね。私どもの病院でも、やはり助産師 が不足することは結構起こってきております。病院にはいっぱいいて、ほかの所にはい ないということではなくて、病院も多様化しているわけです。そういうことにおいて、 やはり病院は積極的に助産師を集める努力をして、安心で安全な妊産婦に対してのケア について、質を高めるということでやっているわけですので、ここで一致している、助 産師がそういうケアをするのがいちばんいいのだということにおいて、やはり努力をす るべきだと思います。 ○石渡委員 いま産婦人科医療の産科医師の大変さも言っていただいて、本当にありが とうございます。北里大学では助産師が大勢勤務されていると思います。北里大学の場 合には、看護師が分娩室に入っていろいろされているのですか。 ○小島委員 分娩室に入るときは、助産師と共に入ります。分娩が済んで2時間後の母 子のケアとか、産科の小手術の介助ということですので、分娩そのもの、取上げそのも のは助産師です。産科病床は35床あるのですが、その中にはマターナルフュータルのM FICUを6床持っております。ホットラインでハイリスクの妊婦もおいでになります ので、そういうものに対応します。また一般にもハイリスクな妊婦とローリスクの妊婦 とありますので、そういう対象者に対応していきます。   35床のうち、勤務者は34名が助産師で、2人が看護師です。私どもが助産師を採 用するために、どれほどの苦労をしているかということですが、やはり母と子供が共に ある大切さ、そして本当に安心していいお産ができて、めでたくお帰りになれるように という細心のいい状況で看護を提供するために、助産師を努力して、努力して採用する 環境整備をしたり、話合いを積み重ねたりしております。医師側にはまだ不満な点もあ るとは思いますが、医師たちも過酷な勤務をしておられますので、そういうことをよく 話し合って、まだ大変な努力をしている最中です。できるならば助産師の専門性で、ハ イリスクあるいはローリスクも含めて、専門性の高い看護を提供したいということがあ りますから、そのような状況です。そうすれば最終的には厚生労働省が求めている、質 の高い医療サービスの実現というところにいくのではないかと思っておりますが、そう いう厳しい毎日の中にあります。 ○石渡委員 助産師の確保に非常に努力されている、ご苦労されているということはよ くわかりました。なぜ産科医師を希望しないのか、分娩を取りやめたのかというその要 因ですが、診療所や小さな産科病院等々においては、助産師が確保できていないという 状況が多々あると思います。これが産科から撤退した1つの要因になっていると思いま す。と言いますのは、先ほど私はいわゆる内診というのは、下降度と展退度、どのくら い頸管が開いているかということでお話しましたが、医師はこれを診なければならなく なって、当然、今はそのようにしているわけです。そうすると医師は夜中中も何時間毎 に、それをチェックしているわけで、医師はもう疲労困憊しております。  また、それ以上に医療事故の問題、医事紛争の問題等々もありますし、産婦人科では 母子の健康を診ていくわけですから、喜びから、何か異常が起きれば極端な落胆まで落 ちますので、そのリスクというのは非常に大きいのです。そういう心労から若い医師が 産科を目指さない、あるいは1人でおやりになっているある程度年配の先輩たち、産科 の先生たちが診療所を閉鎖していくということが多々あろうかと思います。この1つの 要因として私は、内診問題があろうと考えておりますし、実際にそういう意見が、私た ち産婦人科医会の会員から出ているのも事実です。 ○谷野委員 要するに、現実と理想ということで理想を考えれば、助産師が増えるのが いちばんいいわけです。しかし現実があまりにも乖離しているということを直視しない で、小手先の議論になると、余計不幸なことにそのまま目を覆ったような形で持ち越さ れるだけです。ですから、その問題をもう少し。  これからは少子高齢化で、私は助産師も増え、看護師も増えなどというハッピーな時 代ではないと思います。そうすると、行き着くところは保助看法の改正なのか何なのか。 そこら辺の法整備は数年後にしておいて、移行期はやはり養成校なり、ましてや看護大 学を出ている人は、少なくとも助産師の資格も持つとか、先ほどから話に出ているよう に、エキスパート・ナースみたいな形で養成していくというような融通がなければ、安 心していられません。本当にこれは医師不足よりも深刻な問題だと思います。  安心して産科ができ、安心して子供が生まれるという状況に対して、もしこういう現 実を国民がわかれば、むしろ非常に不安に思うと思うのです。移行期としても、よりい い方向で何が提言できるのか、それを議論したほうがいいと思います。初めから助産師 を増やす、それがいちばんいいと言えば、それがいちばんいいわけです。しかしここ10 年、15年経っても、そういう現実はなかなか出てこないように思うのです。ですから、 この検討会としてはもうちょっと生産的な議論ができないものだろうかというのが、全 くの門外漢としての感想です。 ○山路座長 そろそろ時間がきたので、どうしてもという方に限ってお願いいたします。 ○石渡委員 いまの日本の周産期の現状を踏まえて、厚生労働省は助産師の数がどのぐ らい増えれば、十分安全・安心な医療につながっていくとお考えになっているのでしょ うか。 ○田村看護課長 これまで助産業務というのは、助産師だけでなくて、医師も行うこと ができましたし、医療法上、分娩何例に対して1人は助産師を置きなさいといった規定 もないことから、実際上、助産師の需要数を確定するのは非常に難しいということがあ って、看護職員の需給見通しにおいては明示してきませんでした。  しかし先ほどの対策官の説明の中にもありましたように、現場では助産師が非常に足 りないといったこと、それから助産師業務は助産師の独占業務であるといったこともあ りまして、保健師や看護師、準看護師といったほかの看護職員は、代替できない行為を 持っているということもあり、今回初めて別掲で数を出していただこうということで、 現在都道府県で調査をやっていただいている最中です。その数字がどういう数字として 出てくるのかというのは、いま現在私どもでは皆目わかりかねる状態です。今年12月を 目途に看護職員の需給見通しの検討をしていただいて、数を確定しようと考えておりま す。ですから、そこでどのような数字が出てくるかを見てから、判断したいと思います。 ○石渡委員 ありがたいことに、いま厚生労働省では助産師を増やすような、いろいろ な施策を、資料5の中にいくつか示しておりますが、これはいま現在、助産師が不足し ているから、このような施策を早めにお取りになっていると理解してよろしいのでしょ うか。 ○田村看護課長 現実には医会や助産師の方々から、助産師が足りないという現場の実 感を非常に聞かされておりますので、そうした観点から具体的な手当を、さらに考えて いったほうがよかろうということで考えて取り組んでいるところです。 ○石渡委員 12月に厚生労働省としての必要数とか、その辺の数が出てくるというよう に理解してよろしいのですか。 ○田村看護課長 そうですね。都道府県の数字を積み上げた形で出させていただくこと になっております。 ○山路座長 初めて出てくるわけですね。 ○田村看護課長 そうです。 ○山路座長 今までなぜやらなかったのだろうかという疑問も受けますが、それはとも かく。 ○田村看護課長 ですから先ほども申し上げたように、医療法上の規定もありませんし、 医師が代替できる行為であるということもあり、具体的な数を出すことが困難であった のです。 ○石渡委員 産科医師が非常に少なくなってきているのです。そのことも考慮した上で、 是非検討していただきたいと思います。 ○平林委員 先ほどの川端委員のお話に少し戻るのですが、石渡委員のお話の中で、新 しい制度をつくるということを視野に入れて、従来「内診」と言われていた行為の中か ら、児頭の下降度と頸管の開大度だけを取り上げて、それだけを一定の訓練を受けた看 護師にやらせるという制度を設けるとした場合に、それが果たして「内診」と言えるの かどうかということが、ひとつ問題になってくると思います。それよりさらに重要なの は、従来「内診」と言われていた行為の中の、児頭の下降度と頸管の開大度だけを取り 上げて、切り離して議論することができるのかどうか。そして、そのことが患者の安全、 医療の安全との関係でどういう意味を持っているのか。我々は全くの素人なものですか ら、そこら辺の議論を専門家の医師、看護師、助産師との間で少し詰めていただかない と。保助看法の改正以前の問題だと私は思いますので、そこら辺の議論を少し詰めてい ただきたいと思っております。 ○川端委員 いまの意見に追加します。私も全くの素人なので、内診というのがどうい う行為なのかよくわからないのですが、ただ助産師国家試験問題の例を見ると、これは 測定ではなくて診察であろうと思うのです。その中から2つの要素だけを取り出して報 告させることが、かえってほかの部分の情報が医師に伝わらない制度をつくってしまう ことにならないか、というのが非常に心配ではないかと思いますので、その点の検討を お願いしたいと思います。 ○辻本委員 患者の、産む側のということですが、産むときだけではないのです。経産 婦ということで、特にお母さん教室などで助産師と顔見知りになって、そこで信頼関係 をつくっていって、いざ出産といったときに、よく顔を知っている助産師がそばにいて くれることで、お母さんは非常に安心するわけです。そこに突然助産師でなかった人か なと思うような人がきて、しかも曖昧なままに産婦たちの不安を高めるようなことがな いためにも、これはわかりやすく明確に情報開示をしていただきたいということを、も う一度お願いしておきたいと思います。 ○山路座長 そろそろ時間がまいりましたので、本日はこれで打ち切らせていただきた いと思います。何人かの委員の方々からご指摘があったように、これはさまざまな歴史 的な経緯の中で、この検討会で何らかの取りまとめなり結論を出すのは、まさに至難の 業であろうという点では一致しているだろうと思いますので、改めて何らかの形での仕 切り直しの議論は、当然必要になろうかと思います。それをこの検討会でやるかどうす るかということについては、また取りまとめの段階で改めてご相談させていただきたい と思います。  時間がまいりましたので、本日はこれにて終了したいと思いますが、「前回の検討会で の主な意見」というのがまだ残っております。事務局にて取りまとめていただいており ますので、簡単にご説明をお願いできますか。 ○鎌田看護職員確保対策官 時間が押しておりますので、本来なら資料8を説明して、 ご意見をいただくべきところですが、配付という形で説明に代えさせていただきます。 ご意見があれば、事務局のほうに何なりとご連絡いただければと考えております。よろ しくお願いします。 ○山路座長 わかりました。次回以降の日程について、事務局から連絡をお願いいたし ます。 ○赤熊補佐 次回は10月5日の金曜日、午後5時から7時で開催したいと思います。場 所については追ってご連絡させていただきます。なお、次々回の第11回は、10月17日 の月曜日の午後4時から6時、第12回は10月28日の金曜日の午後3時から5時を予定 しておりますので、よろしくお願いいたします。 ○菊池委員 資料8は後でご意見をというお話でしたが、前回のときにはまだ結論が出 ていなくて、もう一度これを議論するかどうかを、座長と看護課のほうでまたお話いた だくということだったかと思うのです。その辺はどうなったのか。もう何か決まってお りますか。 ○田村看護課長 たくさんの検討課題があるものですから、まずひと通りやっていただ いて、先へ進めさせていただこうと考え、今回このテーマで取り組ませていただいたと ころです。まだ看護記録の課題も残っておりますし、看護の専門性をどう考えていくか という議論もありますので、そちらのほうを今後、順次進めていただいて、取りまとめ の中でさらに必要があれば、この点のご議論を丁寧にしていただこうと考えております。 ○山路座長 では、そういうことで本日は閉会とさせていただきたいと思います。どう もご苦労様でした。 照会先 医政局看護課 課長補佐 岩澤 03-5253-1111(2599) 1