セクシュアルハラスメントに係る規定等


雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年7月1日法律第113号)(抄)

(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の配慮)
21条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう雇用管理上必要な配慮をしなければならない。
 厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が配慮すべき事項についての指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
(略)


事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項についての指針(平成10年3月13日労働省告示第20号)

 はじめに
 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るためには、職場において行われる性的な言動に対する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により女性労働者の就業環境が害されること(以下「職場におけるセクシュアルハラスメント」という。)がないようにすることが必要である。
 しかしながら、現状では、職場におけるセクシュアルハラスメントの内容についての事業主や労働者の理解が十分ではなく、また、その防止のための措置を講じている事業主が少ない状況にある。また、職場におけるセクシュアルハラスメントに係る状況等が多様であることから、事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントが生じないよう雇用管理上配慮をするに当たっては、その状況等に応じて最も適切な措置を講ずることが重要である。
 この指針は、こうしたことを踏まえ、職場におけるセクシュアルハラスメントの内容を示すとともに、事業主が雇用管理上配慮すべき事項を定めるものである。

 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容
(1) 職場におけるセクシュアルハラスメントには、職場において行われる性的な言動に対する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(以下「対価型セクシュアルハラスメント」という。)と、当該性的な言動により女性労働者の就業環境が害されるもの(以下「環境型セクシュアルハラスメント」という。)がある。
(2) 「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれる。例えば、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅等であっても、当該労働者が業務を遂行する場所であればこれに該当する。
(3) 「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が、それぞれ含まれる。
(4) 「対価型セクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる女性労働者の意に反する性的な言動に対する女性労働者の対応により、当該女性労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることであって、その状況は多様であるが、典型的な例として、次のようなものがある。
(1) 事務所内において事業主が女性労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、当該女性労働者を解雇すること。
(2) 出張中の車中において上司が女性労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、当該女性労働者について不利益な配置転換をすること。
(3) 営業所内において事業主が日頃から女性労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該女性労働者を降格すること。
(5) 「環境型セクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる女性労働者の意に反する性的な言動により女性労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該女性労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることであって、その状況は多様であるが、典型的な例として、次のようなものがある。
(1) 事務所内において事業主が女性労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該女性労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。
(2) 同僚が取引先において女性労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該女性労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。
(3) 女性労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該女性労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと。

 雇用管理上配慮すべき事項
 職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するため、事業主は、雇用管理上次の事項について配慮をしなければならない。
(1) 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
 事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を明確化し、労働者に対してその方針の周知・啓発をすることについて配慮をしなければならない。
(事業主の方針の明確化及びその周知・啓発について配慮をしていると認められる例)
(1) 社内報、パンフレット等広報又は啓発のための資料等に職場におけるセクシュアルハラスメントに関する事項を記載し、配布すること。
(2) 服務上の規律を定めた文書に職場におけるセクシュアルハラスメントに関する事項を記載し、配布又は掲示すること。
(3) 就業規則に職場におけるセクシュアルハラスメントに関する事項を規定すること。
(4) 労働者に対して職場におけるセクシュアルハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を実施すること。
 なお、周知・啓発をするに当たっては、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止の効果を高めるため、その発生の原因や背景について労働者の理解を深めることが重要である。
(2) 相談・苦情への対応
 事業主は、相談・苦情への対応のための窓口を明確にすることについて配慮をしなければならない。また、事業主は、相談・苦情に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応することについて配慮をしなければならない。
(相談・苦情への対応のための窓口を明確にすることについて配慮をしていると認められる例)
(1) 相談・苦情に対応する担当者をあらかじめ定めておくこと。
(2) 苦情処理制度を設けること。
(相談・苦情に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応することについて配慮をしていると認められる例)
(1) 相談・苦情を受けた場合、人事部門との連携等により円滑な対応を図ること。
(2) 相談・苦情を受けた場合、あらかじめ作成したマニュアルに基づき対応すること。
 なお、事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、相談・苦情に対応することが必要である。
(3) 職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた場合における事後の迅速かつ適切な対応
 事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた場合において、その事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認することについて配慮をしなければならない。また、事業主は、その事案に適正に対処することについて配慮をしなければならない。
(事実関係を迅速かつ正確に確認することについて配慮をしていると認められる例)
(1) 相談・苦情に対応する担当者が事実関係の確認を行うこと。
(2) 人事部門が直接事実関係の確認を行うこと。
(3) 相談・苦情に対応する担当者と連携を図りつつ、専門の委員会が事実関係の確認を行うこと。
(事案に適正に対処することについて配慮をしていると認められる例)
(1) 事案の内容や状況に応じ、配置転換等の雇用管理上の措置を講ずること。
(2) 就業規則に基づく措置を講ずること。

 その他
(1) 事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントに係る女性労働者等の情報が当該女性労働者等のプライバシーに属するものであることから、その保護に特に留意するとともに、その旨を女性労働者等に対して周知する必要がある。
(2) 事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントに関して、女性労働者が相談をし、又は苦情を申し出たこと等を理由として、当該女性労働者が不利益な取扱いを受けないよう特に留意するとともに、その旨を女性労働者に対して周知する必要がある。


雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について(平成10年6月11日 女発第168号)(抄)

3 女性労働者の就業に関して配慮すべき措置(法第3章)
 本章は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保のための前提条件を整備する観点から、女性労働者の就業に関して配慮すべき措置を規定したものであって、第2章の規定と相まって女性労働者の職業生活の充実を図ることを目的としているものであること。
 職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の配慮(法第21条)
(1) 職場におけるセクシュアルハラスメントは、女性労働者の個人としての尊厳を不当に傷つけ、能力の有効な発揮を妨げるとともに、企業にとっても職場秩序や業務の遂行を阻害し、社会的評価に影響を与える問題であり、社会的に許されない行為であることは言うまでもない。特に、職場におけるセクシュアルハラスメントは、いったん発生すると、被害者に加え行為者も退職に至る場合がある等双方にとって取り返しのつかない損失を被ることが多い。また、被害者にとって、事後に裁判に訴えることは、躊躇せざるをえない面がある。
 こうしたことを考えると、職場におけるセクシュアルハラスメントに対しては、未然の防止対策こそが重要である。
 このため、法第21条第1項は、職場におけるセクシュアルハラスメントを「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されること」と規定するとともに、その防止について雇用管理上必要な配慮を事業主に義務づけることとしたものであること。
 また、第2項は、これらの配慮の内容を具体化するために、労働大臣が指針を定め、公表することとしたものであること。
(2) 指針について
 現状では、職場におけるセクシュアルハラスメントの内容について、事業主や労働者の理解が必ずしも十分ではなく、防止対策をとっている事業主も少ない状況にある。
 また、職場におけるセクシュアルハラスメントに係る状況等は多様である。
 こうした状況の中で、事業主が防止のため適切な雇用管理上の措置を講ずることができるようにするため、防止の対象とするべき職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び事業主が雇用管理上配慮すべき事項を定めたものであること。
 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容
 指針2「職場におけるセクシュアルハラスメントの内容」においては、事業主が、雇用管理上防止すべき対象としての職場におけるセクシュアルハラスメントの内容を明らかにするために、その概念の内容を示すとともに、典型例を挙げたものであること。
 また、実際上、職場におけるセクシュアルハラスメントの状況は多様であり、その判断に当たっては、個別の状況を斟酌する必要があることに留意すること。
 なお、法及び指針は、あくまで職場におけるセクシュアルハラスメントが発生しないよう防止することを目的とするものであり、個々のケースが厳密に職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否かを問題とするものではないので、この点に注意すること。
(イ) 職場
 指針2(2)は「職場」の内容と例示を示したものであること。
 「職場」には、業務を遂行する場所であれば、通常就業している場所以外の場所であっても、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店(接待の席も含む)、顧客の自宅(保険外交員等)の他、取材先(記者)、出張先及び業務で使用する車中等も含まれるものであること。
 なお、勤務時間外の「宴会」等であっても、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当するが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加が強制的か任意か等を考慮して個別に行うものであること。
 また、ロ(ロ)で述べるように判断が微妙な場合であっても、幅広く相談・苦情処理の対象とする等の配慮が必要であること。
(ロ) 性的な言動
 指針2(3)は「性的な言動」の内容と例示を示したものであること。
 「性的な言動」に該当するためには、その言動が性的性質を有することが必要であること。
 したがって、例えば女性労働者のみに「お茶くみ」等を行わせること自体は性的な言動には該当しないが、固定的な性別役割分担意識に係る問題、あるいは配置に係る女性差別の問題としてとらえることが適当であること。
 「性的な言動」には、(1)「性的な発言」として、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を意図的に流布することのほか、性的冗談、からかい、食事・デート等への執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すこと等が、(2)「性的な行動」として、性的な関係の強要、必要なく身体に触ること、わいせつな図画(ヌードポスター等)を配布、掲示することのほか、強制わいせつ行為、強姦等が含まれるものであること。
 なお、事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、患者及び学校における生徒等もセクシュアルハラスメントの行為者になりうるものであり、また、女性労働者も場合によっては行為者となりうること。
(ハ) 対価型セクシュアルハラスメント
 指針2(4)は対価型セクシュアルハラスメントの内容とその典型例を示したものであること。
 「対応により」とは、例えば女性労働者の拒否や抵抗等の対応が、解雇、降格、減給等の不利益を受けることと因果関係があることを意味するものであること。
 「解雇、降格、減給等」とは労働条件上不利益を受けることの例示であり、「等」には、雇用契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換等が含まれるものであること。
 なお、指針に掲げる対価型セクシュアルハラスメントの典型的な例は限定列挙ではないこと。
(ニ) 環境型セクシュアルハラスメント
 指針2(5)は環境型セクシュアルハラスメントの内容と典型例を示したものであること。
 「女性労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該女性労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」とは、就業環境が害されることの内容であり、単に性的言動のみでは就業環境が害されたことにはならず、一定の客観的要件が必要であること。
 具体的には個別の判断となるが、一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合には、一回でも就業環境を害することとなり得、性的冗談やヌードポスターの掲示による場合などは継続性又は繰返しが要件となり得るものであること。
 また、継続性又は繰り返しが要件となるものであっても、明確に抗議しているにもかかわらず放置された状態の場合又は心身に重大な影響を受けていることが明らかな場合には、就業環境が害されていると解しうるものであること。
 なお、指針に掲げる環境型セクシュアルハラスメントの典型的な例は限定列挙ではないこと。
(ホ) 「性的な言動」及び「就業環境が害される」の判断基準
 「女性労働者の意に反する性的な言動」及び「就業環境を害される」の判断に当たっては、女性労働者の主観を重視しつつも、事業主の防止のための配慮義務の対象となることを考えると一定の客観性が必要である。具体的には、セクシュアルハラスメントが、男女の認識の違いにより生じている面があることを考慮すると「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とすることが適当であること。
 ただし、女性労働者が明確に意に反することを示しているにも関わらず、さらに行われる性的言動は職場におけるセクシュアルハラスメントと解されうるものであること。
 雇用管理上配慮すべき事項
 指針3の「雇用管理上配慮すべき事項」は、事業主が雇用管理上配慮すべき事項(以下「配慮事項」という。)として3項目挙げており、この3項目の配慮事項については、企業の規模や職場の状況の如何を問わず必ず配慮しなければならないものであること。
 また、配慮の方法については、企業の規模や職場の状況に応じ、適切と考える措置を事業主が選択できるよう具体例を示してあるものであること。
(イ) 「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」
 指針3(1)は、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するためには、まず事業主の方針として職場におけるセクシュアルハラスメントを許さないことを明確にするとともに、これを従業員に周知・啓発しなければならないことを明らかにしたものであること。
 「配慮をしていると認められる例」とは、具体的な例を挙げたものであり、限定列挙ではないこと。なお指針3(2)及び(3)における例示も同様であること。
 例(2)の「服務上の規律を定めた文書」として、従業員心得や必携、行動マニュアル等が考えられること。
 例(3)の「就業規則に職場におけるセクシュアルハラスメントに関する事項を規定する」方法として、懲戒規定や服務規定の中に規定する方法等が考えられること。
 例(4)の「研修、講習等」を実施する場合には、調査を行う等職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に職階別に分けて実施する等の方法が効果的と考えられること。
 「その発生の原因や背景」とは、企業の雇用管理の問題として女性労働者の活用や能力発揮を考えていない雇用管理の在り方や男性労働者の意識の問題として女性労働者を職場における対等なパートナーとして見ず、性的な関心の対象として見る意識の在り方が挙げられるものであること。さらに、両者は相互に関連して職場におけるセクシュアルハラスメントを起こす職場環境を形成すると考えられること。
(ロ) 「相談・苦情への対応」
 指針3(2)は、職場におけるセクシュアルハラスメントの未然防止及び再発防止の観点から相談・苦情への対応のための窓口を明確にするとともに、相談・苦情の対応に当たっては、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応しなければならないことを明らかにしたものであること。
 「窓口を明確にする」とは、窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいうものであること。この際、労働者が利用しやすい体制を整備しておくこと、従業員に対して周知されていることが望ましいものであること。また、必ずしも事業場内部に設置する必要はなく、利用可能なものであれば、例えば事業主団体に傘下の事業主共通の窓口を設けることも差し支えないものであること。
 「その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応する」とは、具体的には、被害者や行為者に対して、一律に何らかの対応をするのではなく、女性労働者が受けている性的言動等の性格・態様によって、状況を注意深く見守る程度のものから、上司、同僚等を通じ、行為者に対し間接的に注意を促すもの、直接注意を促すもの等事案に即した対応を行うことを意味するものであること。
  なお、対応に当たっては、公正な立場に立って、真摯に対応することは言うまでもないこと。
  指針3(2)のなお書きは、職場におけるセクシュアルハラスメントを未然に防止する観点から、相談・苦情の対象として、職場におけるセクシュアルハラスメントそのものでなくともその発生のおそれがある場合やセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合も幅広く含めることが必要としたものであること。例えば、勤務時間後の宴会等におけるセクシュアルハラスメントも幅広く相談・苦情の対象とすることが必要であること。
(ハ) 「職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた場合における事後の迅速かつ適切な対応」
 指針3(3)は、職場におけるセクシュアルハラスメントが発生した場合は、再発防止の観点から、その事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するとともに、当該事案に適正に対処しなければならないことを明らかにしたものであること。
 「事案に適正に対処することについて配慮をしていると認められる例」の(1)の「配置転換等の雇用管理上の措置」としては、当事者を引き離すための配置転換のほか、当事者間の関係の改善に向けての援助、被害者の労働条件上の不利益の回復等が考えられるものであること。
 「就業規則に基づく措置」としては、懲戒規定により、加害者に一定の制裁(口頭注意、停職、降格、解雇等)を課すこと等が考えられるものであること。
 ハ その他
 指針4「その他」は、事業主が配慮事項に係る措置を講ずるに当たって、留意しなければならないことを明らかにしたものであること。
 指針4(1)は、職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事案は被害者及び関係者の個人のプライバシーに関わる部分があるので、その保護には特に留意し、その旨を周知しておく必要があることを明らかにしたものであること。
 指針4(2)は、実質的な相談・苦情ができるようにするためには、相談・苦情を申し出た女性労働者が不利益な取扱いを受けないことが必要であり、事業主がそのことに留意し、周知しておく必要があることを明らかにしたものであること。
 また、上記については、事業主の方針の周知・啓発の際や相談・苦情の窓口の設置にあわせて、周知することが望ましいものであること。
 なお、法及び指針は、女性労働者に対するセクシュアルハラスメントの防止を対象とするにとどまっているが、女性労働者が男性労働者に対して行うセクシュアルハラスメントについても、必要に応じ、企業において防止対策を講じることが望ましいことは言うまでもないこと。
 また、その場合の対策としては、基本的に上記三項目の対策が援用しうるものであること。


労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年7月5日法律第88号)(抄)

(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の適用に関する特例)
47条の2 労働者派遣の役務の提供を受ける者がその指揮命令の下に労働させる派遣労働者の当該労働者派遣に係る就業に関しては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者もまた、当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)第三章の規定を適用する。この場合において、同法第21条第1項中「雇用管理上」とあるのは、「雇用管理上及び指揮命令上」とする。


労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律第47条の2の規定の施行について(平成11年11月17日 女発第324号)(抄)

、2略
 適用に関する特例
(1) 派遣法第47条の2の規定が新設された趣旨
 労働者派遣が行われた場合における均等法第3章の規定については、従来、派遣元の事業主のみに配慮義務等が課されていたものであるが、派遣労働者が派遣先事業場において労務提供を行い、また、派遣先の事業主から作業に係る指揮命令を受けることを踏まえ、新たに派遣先の事業主についてもこれら配慮義務等を課すことにより、派遣労働者に対するセクシュアルハラスメントの防止及び派遣労働者の母性健康管理が一層適切に確保されるようにするという趣旨から所要の改正が行われたものであること。
(2) 派遣法第47条の2の規定の概要
 派遣先の事業主の指揮命令の下に労働させる派遣労働者の当該労働者派遣に係る就業に関しては、派遣先の事業主もまた当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、均等法第3章の規定が適用され、その結果派遣先の事業主についても均等法第3章の規定に基づく配慮義務等が課されることとなったものであること。
 派遣法第47条の2に規定する特例に基づく均等法第3章の規定については、派遣元の事業主と派遣先の事業主の双方が当該規定に基づく義務を負うが、この義務は、派遣元の事業主においては派遣労働者を雇用し当該労働者を派遣先の事業主に派遣するという立場から、派遣先の事業主においては派遣元の事業主から派遣労働者を受け入れ業務の遂行に当たっての指揮命令を行うという立場から、それぞれが派遣労働者について配慮又は措置すべき義務を別個に負うものであること。
(3) 具体的な責務
 職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の配慮(均等法第21条関係)
(イ) 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
 職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するためには、まず事業主の方針として職場におけるセクシュアルハラスメントを許さないことを明確にするとともに、これを従業員に周知・啓発しなければならないことは、均等法施行通達第3の1の(2)のロの(イ)において示したとおりであるが、労働者派遣が行われる場合においては、派遣先の事業主においても配慮しなければならないこととしたものであること。したがって、派遣先の事業主は、事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項についての指針(平成10年労働省告示第20号。以下、「セクハラ防止指針」という。)3の(1)にのっとって、派遣労働者についても必要な配慮をしなければならないこと。
 なお、実際に労働者派遣が行われた場合においては、派遣労働者が実際に労務提供を行うのは派遣先事業場においてであり、作業の指揮命令及びそれに伴う管理を行っているのも派遣先の事業主であることから、派遣元の事業主は、派遣先事業場におけるセクシュアルハラスメントに関する事業主の方針、相談体制等派遣先の事業主が雇用管理上配慮している事項を事前に派遣労働者に周知等しておくことが望ましいこと。
(ロ) 相談及び苦情への対応
 職場におけるセクシュアルハラスメントの未然防止及び再発防止の観点から相談及び苦情への対応のための窓口を明確にするとともに、相談及び苦情への対応に当たっては、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応しなければならないことは均等法施行通達第3の1の(2)のロの(ロ)において示したとおりであるが、労働者派遣が行われる場合においては、派遣先の事業主においても配慮しなければならないこととしたものであること。したがって、派遣先の事業主は、セクハラ防止指針3の(2)にのっとって、派遣労働者についても必要な配慮をしなければならないこと。
 なお、派遣元の事業主が必要な配慮をしていると認められる例としては、例えば、自ら使用する労働者同様に派遣先事業場に派遣した派遣労働者等からの相談・苦情についても対応することができる体制を整えておく等の措置を講ずることが挙げられること。
(ハ) 職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた場合における事後の迅速かつ適切な対応
 職場におけるセクシュアルハラスメントが発生した場合は、再発防止の観点から、その事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するとともに、当該事案に適正に対処しなければならないことは均等法施行通達第3の1の(2)のロの(ハ)において示したとおりであるが、労働者派遣が行われる場合においては、派遣先の事業主においても配慮しなければならないこととしたものであること。したがって、派遣先の事業主はセクハラ防止指針3の(3)にのっとって、派遣労働者についても必要な配慮をしなければならないこと。
 なお、派遣元の事業主が必要な配慮をしていると認められる例としては、例えば、次に掲げる措置を講ずることが挙げられること。
(1) 派遣労働者から派遣先事業場においてセクシュアルハラスメントを受けた旨の相談又は苦情を受けた場合には、派遣先の事業主等に対して当該事案に関する事実関係の調査や再発防止のための措置等の適正な対処を申し入れる等派遣先事業場における担当部門と連携等をとりつつ円滑な対応を図ること
(2) 派遣労働者が派遣先事業場においてセクシュアルハラスメントを行った場合において、派遣先の事業主等から相談又は苦情を受けた場合には、事案の内容や状況に応じ他の労働者を派遣する等の雇用管理上の措置や就業規則に基づく措置を講ずること
(ニ) その他
 セクハラ防止指針4において示した女性労働者のプライバシーを保護すること及び当該女性労働者が不利益取扱いを受けないようにすること等については、労働者派遣が行われる場合においては、派遣先の事業主においても配慮しなければならないこととしたものであること。

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