ポジティブ・アクションに係る規定等


雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年7月1日法律第113号)(抄)

(女性労働者に係る措置に関する特例)
9条 第5条から前条までの規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。

20条 国は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇が確保されることを促進するため、事業主が雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的とする次に掲げる措置を講じ、又は講じようとする場合には、当該事業主に対し、相談その他の援助を行うことができる。
 その雇用する女性労働者の配置その他雇用に関する状況の分析
 前号の分析に基づき雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善するに当たつて必要となる措置に関する計画の作成
 前号の計画で定める措置の実施
 前三号の措置を実施するために必要な体制の整備


募集及び採用並びに配置、昇進及び教育訓練について事業主が適切に対処するための指針(平成10年3月13日労働省告示第19号)(抄)

 女性労働者に係る措置に関する特例
 法第9条は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置は違法でないことを定めている。この場合、支障となっている事情とは、固定的な男女の役割分担意識に根ざす企業の制度や慣行に基づき、雇用の場において男女労働者の間に事実上格差が生じていることをいうものであり、支障となっている事情の存否は、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない状況にあるか否かにより判断するものとすることが適当である。このことから、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用管理区分等において事業主が次に掲げる措置を講ずることは、2及び3にかかわらず、違法でない。
(1) 募集及び採用
 女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用管理区分における募集又は採用に当たって、当該募集又は採用に係る情報の提供について女性に有利な取扱いをすること、当該採用の基準を満たす者の中から男性より女性を優先して採用することその他男性と比較して女性に有利な取扱いをすること。
(2) 配置
 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない職務に新たに労働者を配置する場合に、当該配置の資格についての試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、当該配置の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して配置することその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。
(3) 昇進
 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない役職への昇進に当たって、当該昇進のための試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、当該昇進の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して昇進させることその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。
(4) 教育訓練
 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない職務又は役職に従事するに当たって必要とされる能力を付与する教育訓練に当たって、その対象を女性労働者のみとすること、女性労働者に有利な条件を付すことその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。


雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について(平成10年6月11日 女発第168号)(抄)

第2 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保(法第2章)
 女性労働者に係る措置に関する特例(法第9条)
(1) 女性には特有の感性・特性があるなどの先入観や固定的な男女の役割分担意識に基づき、女性のみを募集・採用や配置の対象とすることなどは、かえって、女性の職域を限定したり、女性と男性の仕事を分離してしまうという弊害をもたらすものである。
 法第9条は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置は法違反とならないことを定めたものであり、逆に、上記のような見地から、それ以外の女性労働者に係る措置は違法となることを明らかにしたものであること。
(2) 法第9条における「支障となっている事情」とは、固定的な男女の役割分担意識に根ざすこれまでの企業における制度や慣行が原因となって、雇用の場において男女労働者の間に事実上の格差が生じていることをいうものであること。この格差は最終的には男女労働者数の差となって表れるものであることから、事情の存否については、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない状況にあるか否かにより判断することが適当であり、指針四の柱書きはその旨を明らかにしたものであること。
(3) 「女性労働者に関して行う措置」とは、女性のみを対象とした措置又は男性と比較して女性を有利に取り扱う措置をいうものであること。
(4) 「妨げるものではない」とは、法に違反することとはならない旨を明らかにしたものであり、事業主に対して支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関する措置を講ずることを義務づけるものではないこと。
(5) 法第9条により特例とされる女性労働者に係る措置は、過去の女性労働者に対する取扱い等により女性労働者に現実に男性労働者との格差が生じている状況を改善するために暫定的、一時的に講ずることが許容されるものであり、指針四の「相当程度少ない」状態にある限りにおいて、認められるものであること。

12 事業主の講ずる措置に対する国の援助(法第20条)
(1) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇を確保するためには、企業の制度や方針において、女性労働者に対する差別の禁止に関する規定を遵守することに加えて、固定的な男女の役割分担意識に根ざす制度や慣行に基づき企業において、男女労働者の間に事実上生じている格差に着目し、このような格差の解消を目指して事業主が積極的かつ自主的に雇用管理の改善に取り組むことが望ましい。このため、法第20条は、このような取組を行う事業主に対し、国が相談その他の援助を行うことができる旨を規定し、女性労働者の能力発揮を促進するための総合的な雇用管理の改善の取組を促すこととしたものであること。
(2) 本条柱書き及び第2号の「支障となっている事情」の意義は、6(2)と同じであること。
(3) 「その他の援助」としては、助言、情報提供等が考えられるものであること。
(4) 第1号の「雇用に関する状況の分析」とは、企業において女性労働者が男性労働者と比べてどのような現状にあるかを客観的に把握し、その状況にアンバランスがある場合にはその原因を分析し、問題点を発見することをいうものであること。
(5) 第2号の「必要となる措置に関する計画の作成」とは、第1号の分析結果を踏まえて、男女労働者の間に事実上生じている格差を改善するための措置についての計画を作成することをいうものであること。計画の作成に当たっては、現実に即した具体的な目標及び目標を達成するための具体的取組を実施する目安となる期間を設定し、目標に沿って、発見された問題の解決に効果的な具体的措置を検討・策定することが望ましいものであること。
(6) 第3号の「計画で定める措置の実施」とは、第2号の計画で定めた具体的措置を実際に実施することをいうものであること。
 なお、本号に基づき事業主が実際に実施する措置には、女性のみを対象とした措置又は男性と比較して女性を有利に取り扱う措置と、男女双方を対象とした措置の両方が含まれるものであるが、前者については、法第9条により法に違反しないこととされた措置に限られるものであること。
(7) 第4号の「必要な体制の整備」とは、第1号から第3号までの一連の取組等を行うために必要な体制を整備していくことをいうものであること。

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