介護保険法等の一部を改正する法律案(概要)

介護保険法附則第2条に基づき、制度の持続可能性の確保、明るく活力ある超高齢社会の構築、社会保障の総合化を基本的視点として、制度全般について見直しを行う。

I  改正の概要

 予防重視型システムへの転換
 
(1) 新予防給付の創設
 要介護状態等の軽減、悪化防止に効果的な、軽度者を対象とする新たな予防給付を創設マネジメントは「地域包括支援センター」等が実施
(2) 地域支援事業の創設
 要支援・要介護になるおそれのある高齢者を対象とした効果的な介護予防事業を、介護保険制度に新たに位置付け
←
軽度者(要支援・要介護1)の大幅な増加

軽度者に対するサービスが、状態の改善につながっていない

 施設給付の見直し
 
(1) 居住費・食費の見直し
 介護保険3施設(ショートステイを含む)等の居住費・食費について、保険給付の対象外に。
(2) 低所得者に対する配慮
 低所得者の施設利用が困難にならないよう、負担軽減を図る観点から新たな補足的給付を創設
←
在宅と施設の利用者負担の公平性
介護保険と年金給付の重複の是正

 新たなサービス体系の確立
 
(1) 地域密着型サービスの創設
 身近な地域で、地域の特性に応じた多様で柔軟なサービス提供が可能となるよう、「地域密着型サービス」を創設
(例) 小規模多機能型居宅介護、認知症高齢者グループホーム、認知症高齢者専用デイサービス、夜間対応型訪問介護等
(2) 地域包括支援センターの創設
 地域における@)総合的な相談窓口機能、A)介護予防マネジメント、B)包括的・継続的マネジメントの支援を担う「地域包括支援センター」を創設
(3) 居住系サービスの充実
ケア付き居住施設の充実
有料老人ホームの見直し
←
一人暮らし高齢者や認知症高齢者の増加
在宅支援の強化
高齢者虐待への対応
医療と介護との連携

 サービスの質の確保・向上
 
(1) 情報開示の標準化
 介護サービス事業者に事業所情報の公表を義務付け
(2) 事業者規制の見直し
 指定の更新制の導入、欠格要件の見直し等
(3) ケアマネジメントの見直し
 ケアマネジャーの資格の更新制の導入、研修の義務化等
←
指定取消事業者の増加など質の確保が課題
利用者によるサービスの選択を通じた質の向上
実効ある事後規制ルール
ケアマネジメントの公平・公正の確保

 負担の在り方・制度運営の見直し
 
(1) 第1号保険料の見直し
(1) 設定方法の見直し
低所得者に対する保険料軽減など負担能力をきめ細かく反映した保険料設定に〔政令事項〕
(2) 徴収方法の見直し
特別徴収(年金からの天引き)の対象を遺族年金、障害年金へ拡大
(2) 要介護認定の見直し
申請代行、委託調査の見直し
(3) 市町村の保険者機能の強化
都道府県知事の事業者指定に当たり、市町村長の関与を強化
市町村長の事業所への調査権限の強化
市町村事務の外部委託等に関する規定の整備
←
低所得者への配慮
利用者の利便性の向上
市町村の事務負担の軽減
より主体性を発揮した保険運営


II  施行期日 平成18年4月1日
〔2の「施設給付の見直し」については平成 17年10月施行〕



I  改正の概要

基本的視点
基本的視点の図

介護保険制度改革の主な内容
  〔具体的内容〕
予防重視型システムへの転換
新予防給付の創設、地域支援事業の創設
施設給付の見直し
居住費用・食費の見直し、低所得者等に対する措置
新たなサービス体系の確立
地域密着型サービスの創設、地域包括支援センターの創設、居住系サービスの充実(有料老人ホームの見直し等)、医療と介護の連携の強化、地域介護・福祉空間整備等交付金の創設
サービスの質の確保・向上
情報開示の標準化、事業者規制の見直し、ケアマネジメントの見直し
負担の在り方・制度運営の見直し
第1号保険料の見直し、市町村の保険者機能の強化、要介護認定の見直し、介護サービスの適正化・効率化
※施行: 平成18年4月(但し施設入所費用の見直しについては平成17年10月施行)


 予防重視型システムへの転換(全体概要)

予防重視型システムへの転換(全体概要)の図


 施設給付の見直し

【改正の趣旨】
 在宅と施設の利用者負担の公平性、介護保険と年金給付の調整の観点から、低所得者に配慮しつつ、介護保険施設などにおける居住費、食費を保険給付の対象外とする。

【改正の内容】
給付の範囲の見直し
 ○  介護保険三施設(ショートステイ含む)における居住費(滞在費)及び食費、通所系サービスにおける食費は、保険給付の対象外とする。
 但し、低所得者については、負担上限を設け介護保険から給付を行う等の配慮を行う。

  〔見直しの概要〕
(1) 保険給付の対象外とする費用の具体的水準(省令、告示事項)
[居住費] 居住環境の違いを考慮した取扱いとする。
[食費] 食材料費(現行も給付対象外)+調理コスト相当とする。
  栄養管理について
栄養管理については、栄養ケアマネジメントや給食管理業務の在り方を見直した上でこれを適切に評価する観点から、引き続き保険給付の対象とする。
(糖尿病食などの特別食に関する栄養管理も保険給付の対象。)
(2) 利用者負担の水準
施設と利用者の契約により定められる。
ただし、低所得者については所得に応じた負担限度額を定め、減額相当分について介護保険から補足的給付を行う。(=特定入所者介護サービス費の創設)

給付の範囲の見直しの図

  〔低所得者に対する配慮〕
特定入所者介護サービス費の創設
  (1) 対象者(省令事項)
  介護保険三施設(ショートステイ含む)の利用者のうち、利用者負担段階(保険料段階)が第1段階〜第3段階(※)に該当する者で申請のあった者等
 (※) 第3段階に該当する者の例:年金80万円超266万円以下の者

  (2) 給付額(具体的水準は、告示事項)
 
施設における居住費・食費の平均的な費用を勘案して定める額
(基準費用額)
低所得者の所得の状況等を勘案して定める額
(負担限度額)
  施設において設定している居住費及び食費が基準費用額を下回る場合は、当該額と負担限度額の差額が給付額となる。
施設が負担限度額を超えて、低所得者から負担を徴収した場合は、補足的給付の対象としない。
社会福祉法人による利用者負担の減免の運用改善(運用)
 第3段階のうち所得の低い層についても対象となるよう、収入要件を150万円に引き上げる方向で検討する。
 また、税制改正により、平成18年度から利用料が上がる層についても、社会福祉法人の減免措置により対応する。


 新たなサービス体系の確立

【改正の趣旨】
 認知症高齢者や一人暮らし高齢者の増加等を踏まえ、一人一人ができる限り住み慣れた地域での生活を継続できるよう、サービス体系の見直しや地域における総合的・包括的なマネジメント体制の整備を行う。

【改正の内容】
I. 地域密着型サービスの創設
 ○  住み慣れた地域での生活を支えるため、身近な市町村で提供されることが適当なサービス類型として「地域密着型サービス」を創設する。

  〈地域密着型サービスの概要〉
(1) 市町村がサービス事業者の指定、指導監督権限を有する。
(2) 原則として、当該市町村の被保険者のみがサービス利用可能とする。
(複数の市町村が指定することで、隣接市町村などの被保険者の利用も可能)
(3) 市町村(又は生活圏域)ごとに必要整備量を計画に定め、これを超える場合には市町村は指定の拒否ができる。
(4) 地域の実情に応じた弾力的な基準・報酬設定ができる。
(5) 公平・公正の観点から、上記(3)、(4)については、地域住民や保健医療 福祉関係者、経営者等の関与する仕組みとする。

  〈地域密着型サービスの種類〉
(1) 小規模多機能型居宅介護
(2) 認知症高齢者グループホーム
(3) 認知症高齢者対応型デイサービス
(4) 夜間対応型訪問介護
(5) 小規模(定員30人未満)介護老人福祉施設
(6) 小規模(定員30人未満)介護専用型特定施設

図


II. 地域包括支援センターの創設
 ○  公正・中立な立場から、地域における(1)介護予防マネジメント、(2)総合相談・支援、(3)権利擁護、(4)包括的・継続的マネジメントを担う中核機関として、地域包括支援センターを創設する。
 
地域包括支援センター
運営主体: 市町村、在宅介護支援センターの運営法人(社会福祉法人、医療法人等)、その他市町村が委託する法人(省令で要件等を定める予定)
職員体制: 保健師・経験のある看護師、主任ケアマネジャー(仮称)、社会福祉士等
 ☆ 地域包括支援センターの設置・運営に関しては、中立性の確保、人材確保支援等の観点から、「地域包括支援センター運営協議会(仮称)」(市町村、地域のサービス事業者、関係団体、被保険者の代表等で構成)が関わることとする。
 ☆ 専門職種については、経過措置を設ける。

地域包括支援センター(地域包括ケアシステム)のイメージの図


 サービスの質の確保・向上

【改正の趣旨】
 利用者の適切な選択と競争の下で、良質なサービスが提供されるよう、情報開示の徹底、事業者規制の見直し等を行う。

【改正の内容】
I. 情報開示の標準化
 ○  利用者が適切に介護サービスを選択することを可能となるよう、全ての介護サービス事業者に介護サービスの内容や運営状況に関する情報の公表を義務付け
 ○  具体的には、介護サービス事業者が所在地の都道府県知事に介護サービス情報(※)を報告し、都道府県知事が当該情報の内容を公表する(年1回程度)。
 介護サービス情報のうち確認を要するものについては都道府県知事が調査を行い、報告内容を確認の上公表する。

 ※ 介護サービス情報の例
 
職員体制、施設設備、利用料金・特別な料金、サービス提供時間、サービスの提供記録の管理状況、職員研修の実績等


II. 事業者規制の見直し
(指定の欠格事由、指定の取消要件の追加)
 ○  指定の欠格事由に、申請者又は法人役員(施設長含む)が以下のような事項に該当する場合を追加(更新時も同様)。
 
(1) 指定の取消から5年を経過しない者であるとき(指定取消の手続き中に、自ら事業を廃止した者を含む。)
(2) 禁錮以上の刑を受けて、その執行を終わるまでの者であるとき
(3) 介護保険法その他保健医療福祉に関する法律により罰金刑を受けて、その執行を終わるまでの者であるとき
(4) 5年以内に介護保険サービスに関し不正又は著しく不適当な行為をした者であるとき

(指定の更新制の導入)
 ○  事業者の指定に更新制(6年ごと)を設ける。

(勧告、命令等の追加)
 ○  都道府県(地域密着型サービスについては市町村)が、より実態に即した指導監督や処分を行うことができるよう、事業者に対する、(1)業務改善勧告、(2)業務改善命令、(3)指定の停止命令、(4)当該処分の公表、の権限を追加する。

(事業者の責務規定の創設)
 ○  介護サービス事業者の責務について、利用者の人格を尊重して対応すべき「忠実義務」を規定し、虐待等これに違反したケースについては、指定の取消ができることとする。


III. ケアマネジメントの適正化

(軽度者のマネジメントの適正化)
 ○  事業者等による掘り起こしが指摘されている軽度者に対するマネジメントは、市町村の責任の下に、公正・中立的な「地域包括支援センター」において、一元的に介護予防マネジメントとして実施。

(介護支援専門員(ケアマネジャー)の見直し)
 ○  資格の更新制(5年間)の導入
 ○  更新時研修(都道府県知事が実施)の義務化
 ○  責務規定の整備と名義貸し等不正行為に対する対策の強化

(政省令・告示事項)
 ○  二重指定制の導入(ケアマネジャーごとにケアプランをチェックできる仕組み)
 ○  主任ケアマネジャー(仮称)の創設
 ○  担当件数の見直し
 ○  独立性・中立性の確保の観点からの介護報酬・指定基準の見直し


 負担の在り方・制度運営の見直し

(1) 第1号保険料の見直し

【改正の趣旨】
 現行の方式を基本としつつ、被保険者の負担能力の適切な反映、利用者の利便性の向上、市町村の事務負担の軽減等の観点から、見直しを行う。

【改正の内容】
I. 設定方法の見直し(政令事項)
 ○  新第2段階の創設
 
  ⇒ 現行第2段階を細分化し、負担能力の低い層には、より低い保険料率を設定。
(具体的な保険料率の設定等は保険者の判断)
対象者: 年金収入と他の所得の合計額が80万円/年以下の者
(例)年金収入のみの方であれば、年金収入80万円以下の方

グラフ

 ○  税制改正による保険料の上昇については、高齢者の住民税非課税限度額の廃止に係る激変緩和措置の対象者に関し、平成18年度から激変緩和措置を講じる。


II. 徴収方法の見直し
(特別徴収の見直し)
 ○  特別徴収(年金からの天引き)の対象を遺族年金、障害年金に拡大する。

(普通徴収の収納事務委託)
 ○  普通徴収による介護保険料の収納事務をコンビニエンスストア等の私人に委託することを可能とする。

(生活保護受給者の介護保険料の直接納付)
 ○  被保護者について、交付される保護費のうちで介護保険料に相当する額を、保護の実施機関(福祉事務所等)が、被保護者に代わって直接保険者に支払うことを可能とする。


(2)  要介護認定の見直し

【改正の趣旨】
 居宅介護支援事業者等による認定申請の代行や認定調査が、利用者の意思に反した過度の掘り起こしを惹起しているとの指摘等を踏まえ、公平・公正の観点から、要介護認定事務の見直しを行う。

【改正の内容】
I. 申請代行の見直し
 ○  利用者の利便性にも配慮しつつ、サービス事業者等の代行の在り方を見直す。

  現行 改正後
新規
本人
成年後見人
家族、親族等
民生委員、介護相談員等
居宅介護支援事業者
介護保険施設
本人
成年後見人
家族、親族等
民生委員、介護相談員等
地域包括支援センター
居宅介護支援事業者、介護保険施設のうち省令で定めるもの
更新
本人
成年後見人
家族、親族等
民生委員、介護相談員等
居宅介護支援事業者
介護保険施設
本人
成年後見人
家族、親族等
民生委員、介護相談員等
地域包括支援センター
居宅介護支援事業者、介護保険施設のうち省令で定めるもの


II. 認定調査の見直し
 ○  認定調査の公平・公正の観点から、新規認定については市町村実施の原則を徹底する。

  現行 改正後
新規
市町村
居宅介護支援事業者
介護保険施設
市町村が行う
 ※ 市町村における体制等を踏まえ 経過措置を置く
更新
市町村
居宅介護支援事業者
介護保険施設
市町村
居宅介護支援事業者、介護保険施設のうち省令で定めるもの


(3)  要介護認定の見直し

【改正の趣旨】
 保険者機能強化の観点から、市町村のサービス事業者に対する権限等の見直しを行うとともに、市町村等の事務負担の軽減と効率化を図る観点から、行政事務の外部委託について、守秘義務規定等の整備を行う。

【改正の内容】
I. 保険者による給付等のチェックの強化
 (1) 事業者への立入権限等の付与

 (2) 指定取消要件に該当した事業者の都道府県への通知


II. サービス面への関与
 (1) 地域密着型サービスに対する指定・指導監督等

 (2) 都道府県の事業者指定に当たっての意見提出
都道府県は、介護保険施設等の指定等を行う際に市町村長の意見を求めるものとする。


III. 地方自治体の行政事務の外部委託に関する規定の整備
 〈市町村〉
  ・  市町村が行う介護保険業務の一部について、公正・中立性を確保しつつ、外部委託できるよう規定整備を行うことについて市町村から強い要望があり、これを踏まえて行うもの。
  ・  具体的には、介護保険業務に精通し、公正な立場で事業実施できる公益的法人(「市町村事務受託法人」と呼称)に認定調査などの業務を委託できるよう、当該法人の役職員の守秘義務等の規定を整備する。

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