III  生活保護法施行事務の指導監査について

 1  指導監査の目的
 指導監査は、福祉事務所における生活保護法施行事務の適否を関係法令等に照らして個別かつ 具体的に検討し、必要な是正改善の措置を講ずるとともに、生活保護行政が適正かつ効率的に運営できるよう指導・援助するもの。


 2  指導監査の実施体制等

  (1)  国は、生活保護法第23条の規定に基づき、都道府県・指定都市本庁及び管内福祉事務所に対する指導監査を実施。

指導監査体制 生活保護監査官 11名
指導監査の対象機関 都道府県・指定都市本庁及び管内福祉事務所
指導監査の方法
(平成16年度実績)
重点監査 4都道府・指定都市 16福祉事務所
重要監査 20県・指定都市 27福祉事務所
一般監査 36県・指定都市 35福祉事務所
(新潟県は、震災のため本庁ヒアリングのみ)
・ 重点監査・・・保護率が著しく高率若しくは保護動向が急増しており、かつ管内福祉事務所の実施体制が著しく脆弱である等、継続的な指導が必要と思われる機関。(年2回2班体制以上の監査を実施)
・ 重要監査・・・保護率が高率若しくは保護動向が増加しており、かつ管内福祉事務所の実施体制が脆弱である等、特に指導が必要と思われる機関。(必要に応じ、2班体制等により監査を実施)
・ 一般監査・・・上記以外の機関について実施。

  (2)  都道府県・指定都市は、「法定受託事務」として、国が定めた「監査方針」に基づき管内福祉事務所に対する指導監査を実施。

指導監査体制
(平成15年度)
監査吏員728名(都道府県・指定都市職員)
指導監査の対象機関 全福祉事務所を対象(平成15年10月現在1,212か所)
指導監査の方法
(平成15年度実績)
一般監査 1,058福祉事務所
特別監査 467福祉事務所
特別指導監査 87福祉事務所

・ 一般監査・・・・・・原則として全ての福祉事務所に対し、年1回実施。
・ 特別監査・・・・・・一般監査のほか、必要に応じ、特定の事項に問題のある若しくは保護動向等に特異な傾向を示す福祉事務所に対し実施。
・ 特別指導監査・・・これまでの監査結果及び保護動向等から継続的な指導が必要な福祉事務所に対し、1か所以上実施。


 3  実施方法(厚生労働省で実施する監査)

  ○   都道府県・指定都市本庁に対し、管内の福祉事務所の指導状況についてヒアリングを実施
 管内の保護動向、実施体制、前年度監査指摘事項の改善状況 等

  ○   福祉事務所に対し、生活保護の実施状況についてヒアリングを実施
 管内の保護動向、実施体制、保護の決定実施の状況 等

  ○   個別ケース検討
 ケースワーカーの担当ケースの指導援助の状況をケース記録を基に検証する。(管内の被保護世帯の1割を目途に選定)

  ○   実地調査
 ケース検討した中から1ケース選定し、実地にケースワーカーの指導状況を検証する。

  ○   監査講評(福祉事務所及び都道府県・指定都市本庁)


 ○  指導監査の実施状況等

   (1) 厚生労働省及び都道府県・指定都市が実施した指導監査の状況(平成15年度)

区分 都道府県・
指定都市数
福祉事務所数 ケース検討数
(被保護世帯数)
監査対象数A 60県市 1,212箇所 941,270ケース
監査実施数 厚生労働省 60県市 75箇所 4,591ケース
県・市 1,145箇所 55,924ケース
合計B 60県市 1,220箇所 60,515ケース
実施率B/A 100.0% 100.7% 6.4%
資料 平成15年度生活保護施行事務監査資料、監査実施結果報告

   (2) 厚生労働省指導監査結果に基づく主な問題点(平成15年度)

都道府県 ・ 指定都市本庁   箇所
 ・管内福祉事務所の実施体制の整備・確保 46 76.7
 ・課税状況調査の実施 8 13.3
 ・自動車保有ケースに対する指導の徹底 11 18.3
 ・就労及び求職状況の把握 5 8.3
 ・訪問調査活動の充実強化 2 3.3
 ・その他 6 10.0
(開始時の関係先調査・レセプト点検の徹底等)    
福祉事務所 保護の適正実施の推進 箇所
 ・扶養能力調査 60 80.0
 ・病状把握及び就労指導の徹底 56 74.7
 ・訪問調査活動 51 68.0
 ・収入申告書の徴取 36 48.0
 ・他法他施策の活用 24 32.0
 ・関係先調査の実施 12 16.0
 ・資産の把握 7 9.3
組織的な運営管理の推進    
 ・組織的運営管理の充実強化 56 74.7
 ・実施体制の整備 8 10.7
 ・査察指導機能の充実 35 46.7
その他    
 ・適切なケース指導の徹底について 9 12.0
 ・その他
 (法第63条の適用、開始時の受給要件
 の的確な把握等)
6 8.0
資料 平成15年度厚生労働省監査結果
(注)   都道府県・指定都市本庁指摘率=箇所/60
福祉事務所指摘率=箇所/75

   (3) ケース検討結果による指導指示の状況

【別紙】
(平成15年度実施分)
  総数 厚生労働省
監査
都道府県・指定都市監査
一般監査 特別指導監査 小計
ケース検討数(A)
60,515 4,591 48,649 7,275 55,924
指導・指示ケース数(B)
17,484 2,253 12,663 2,568 15,231
指導 ・ 指示率(B/A)
28.9 49.1 26.0 35.3 27.2
指導・指示事項 処遇方針の樹立
758 3 594 161 755
(2.9) (0.1) (3.3) (4.1) (3.4)
資産の把握・活用 1,581 157 1,165 259 1,424
(6.2) (4.2) (6.5) (6.6) (6.5)
扶養義務者調査 4,351 639 3,108 604 3,712
(16.9) (17.0) (17.3) (15.4) (16.9)
他法他施策の活用 2,629 321 1,947 361 2,308
(10.2) (8.5) (10.8) (9.2) (10.5)
最低生活費の算定 1,490 104 1,196 190 1,386
(5.8) (2.8) (6.6) (4.8) (6.3)
収入認定 3,741 594 2,603 544 3,147
(14.6) (15.8) (14.5) (13.8) (14.3)
病状把握 2,986 469 2,034 483 2,517
(11.6) (12.4) (11.3) (12.3) (11.5)
稼働能力の活用 468 66 338 64 402
(1.8) (1.8) (1.9) (1.6) (1.8)
指導・指示の徹底 2,254 485 1,440 329 1,769
(8.8) (12.9) (8.0) (8.4) (8.1)
訪問による実態把握 4,683 870 3,027 786 3,813
(18.2) (23.1) (16.8) (20.0) (17.4)
その他 761 61 548 152 700
(3.0) (1.6) (3.0) (3.9) (3.2)
合計 25,702 3,769 18,000 3,933 21,933
(100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0)
(注)   ( )内の数字は事項ごとの指摘率である。
資料 平成15年度監査実施結果報告、平成15年度厚生労働省監査結果

   (4)  自治体における保護率等と経済・社会的要因、実施体制、取組要因等の分析について(生活保護施行事務監査資料の抜粋)

 監査に際しては、対象自治体毎に、適正実施のために保護率等についての実情の分析や、これに基づく地域固有の事情を考慮した取組について資料を作成している。以下はその事例である。

    ◆  経済・社会的要因と保護率等との関係についての記述例
(1) 被保護世帯数、保護率等が高い要因の記述例
 ○ 少子・高齢化の進行
 ○ 単身世帯の増加
 ○ 景気低迷の長期化
 ○ 雇用情勢の悪化
 ○ 離婚件数の増加

(2) 保護率が低い要因の記述例
 ○ 経済、労働面での要因(就業率が高い、産業基盤が安定している等)
 ○ 「相互扶助」の住民意識
 ○ 離婚率、核家族率が低い
 ○ 持ち家率が高い

    ◆  生活保護の実施体制及び取組状況(自立支援を含む)と保護率等の関係についての記述例
(1) 実施体制・取組の強化により保護率が低い場合の記述例
 ○  適正実施や職員の資質向上に向けた取組等より 保護率が低い
 ○  自立助長指導に努めた結果、保護率を一定水準に 維持
 ○  相談者の対応も、生活保護に至らない場合であって も、その後の他法活用等の指導・援助を積極的に行っ ていることも理由として考えられる。
 ○  低家賃住宅もあるが、福祉事務所の実施体制が整っ ており(査察指導員を標準数1のところ2、現業員を標準 数7のところ10(面接相談員2を含む)配置)、処遇がき めこまかい。
 ○  昭和60年から平成7年頃の保護動向について、関係 先調査の徹底や面接相談の充実など生活保護の適正 実施への取組が影響

(2) 被保護世帯数、保護率等の増加要因やそれへの対応の 記述例
 ○  被保護世帯増による現業員不足の結果として訪問調査活 動が低調となり、その結果被保護世帯増という悪循環
 ○  必要な職員数の確保が困難になってきていることが実施 機関の実施水準に大きな影響を与えている
 ○  保護の増加傾向への対処のために、生活保護の適正実施 及び実施体制の充実や組織的取組が必要
 ○  保護の増加傾向への対処のために、面接相談体制の整備、 適正な現業員等の配置、就労支援員の配置、保健師や関係 機関等との連携など、実施体制の整備・強化に取り組んでいる
 ○  研修の一層の充実、実施体制の充実が必要
 ○  薬物中毒等処遇困難ケースを多く抱えていることから、県本 庁が処遇診断会議に参加する等適正実施に向けた指導を強 化

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