05/08/19 石綿に関する健康管理等専門家会議第2回議事録           第2回 石綿に関する健康管理等専門家会議                        日時 平成17年8月19日(金)                           14:00〜                        場所 厚生労働省共用第6会議室 ○労働衛生課長  ただいまから、第2回「石綿に関する健康管理等専門家会議」を開催いたします。委 員の皆様には、ご多忙の折、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。御礼 申し上げます。以後の議事進行は、土屋座長にお願いいたします。 ○土屋座長  最初に、配付資料の確認をお願いいたします。 ○労働衛生課長  「第2回石綿に関する健康管理等専門家会議議事次第」を1枚めくりますと、資料1 「健康管理等専門家会議名簿」です。本日は、説明者として、兵庫県健康生活部参事の 今井雅尚先生にいらしていただきました。  資料2は、「第1回専門家会議における論点整理」が2枚あり、「建材・建築物のメ ーカーが保有している石綿使用状況に係る情報の公開・提供要請」が1枚、実例として 「当社のアスベスト取扱いの概要と対応について」があります。  資料3は、「クボタ旧神崎工場に係るアスベスト対策等について」が2枚、「製品製 造事業所に対する県の立入検査結果等について」、「アスベスト対策の実施状況につい て(兵庫県)」です。  資料4−1は「石綿に係る健康相談事例について」という環境省からの提供資料で す。資料4−2は「一般環境経由によるアスベスト曝露の健康影響調査の概要(案)」 です。  資料5−1は、岸本委員からご提出いただきました「アスベスト調査票(案)」で す。資料5−2は環境省の資料で、「調査項目の考え方について」です。資料5−3 は、岸本委員からご提出いただきました、「問診による石綿ばく露評価のスキーム」の 案です。  資料6は、本田委員からのご提供の、「エックス線検査等のメリット/デメリット」 です。資料7は、厚生労働省からの資料で、「健康相談実施のお知らせ」です。 ○土屋座長  この資料に沿って、議事を進行させていきます。最初に、「石綿による住民への健康 影響の実態」です。まず、第1回専門家会議の論点整理をお願いいたします。 ○労働衛生課長  資料2に基づき、第1回専門家会議の論点をご説明いたします。論点は3つあり、1 番目は「石綿による住民への健康影響の実態把握について」、2番目は「住民の健康管 理の方法について」、3番目は「住民の健康不安の解消について」です。その他は、い ちばん下に整理しております。  最初に「石綿による住民への健康影響の実態把握について」ですが、真ん中に1回目 の意見を整理しております。右側には、厚生労働省等の対応を作ってあります。  ここのところで、環境由来のばく露については、尼崎市について科学的に、厳密かつ 十分に調査することから行うべきではないか、という名取委員からのご指摘がありまし た。胸膜プラークを有している人を把握し、工場との距離を評価するような疫学調査を すべきではないか、という森永委員からのご指摘がありました。これについては、環境 省の委託調査というのが、兵庫県尼崎市等の調査として行われる予定になっておりま す。この内容の詳細については、環境省並びに兵庫県からご説明をいただけるようにな っております。  家族内ばく露については横須賀市をモデルにして、作業着を持ち帰った頻度等を調べ ることによりリスクが確認されるのではないか、というご指摘が名取委員からありまし た。  2番目の「住民健康管理の方法について」ですが、検診については問診により石綿の ばく露歴を十分に把握した上で、ハイリスク群に対して行うべきではないか、という岸 本委員と本田委員からご指摘がありました。検診については、ばく露の評価という目的 を明確にして行うべきではないか、という祖父江委員のご意見がありました。目的は、 石綿のばく露の実態を胸膜プラーク等により把握することになるのではないか、という 森永委員のご指摘がありました。  放射線ばく露による、検診のメリット、デメリットを検討し、検診受診希望者に正し く伝えるべきではないかという祖父江委員、本田委員のご意見がありました。これにつ いて、本日は本田委員からの資料が提出されております。石綿によるレントゲン所見等 を正確に診断できる人が、どこにどれぐらいいるかを把握することが必要ではないか、 という成田委員のご意見がありました。  中皮腫の診断等について、パネル、ネットワークあるいは登録制度等が必要ではない か、というご意見が鏡森委員をはじめ4人の委員からありました。これについては、例 えば中皮腫パネルは現在がん助成金による研究班を中心に、年2回実施しています。登 録のあり方等について、今月立ち上げました厚生労働科学研究班の中で検討を行ってい く体制になっております。  3番目は「住民の健康不安の解消について」です。誤まった知識等により不安が高ま っているため、専門家による相談等を行うのがよいのではないか、という岸本委員のご 指摘がありました。成田委員からは、正しく説明できる人の把握が必要であるというご 意見がありました。  さまざまな事例におけるばく露濃度を念頭に置き、繊維数×ばく露時間×ばく露から 経過した期間によってリスクを説明するなど、正しい知識を十分調べた上で回答すると 理解が得られやすいことを経験している、という名取委員のご意見がありました。主な 10事例ぐらいのばく露濃度を測定し、それに基づくリスク評価によって適切な健康管理 ができるのではないか、という名取委員のご意見もありました。健康不安の解消につい ては、厚生労働省等において、相談窓口を7月8日に開設しています。  緊急ですが、アスベストのQ&Aを作成し、これを保健所に送付し、ご利用いただく ことになっております。相談事例もかなり来ております。7月29日には、このQ&Aを 関係省庁のホームページに掲載しましたが、これは第1回会議資料7にお示ししまし た。さらに、専門家による臨時相談窓口を、8月22日から順次実施いたします。この予 定については、後ほど事務局からご報告申し上げます。  その他として実態把握についてですが、石綿の種類、特に青石綿、茶石綿の取扱量、 使用時期、発生源対策、経路対策について、こういうものの実態把握をしっかり行うべ きではないか、というご指摘が鏡森委員、岸本委員、森永委員からありました。  それについては、第1回会議資料でお示ししましたように、労災認定に係る個別事業 場名の開示をしました。8月12日には、過去の製造・販売した建材、建築物のうち、石 綿を含有するものについて、その一般名称、商品名、製造・販売期間、使用場所、識別 方法等の情報をホームページに掲載するなどし、積極的にこのような情報を公開・提供 するように指導し、かなりの部分が公開されることになりました。  第1回専門家会議の中で出された論点は以上のようなものです。 ○土屋座長  以上3点と、その他にまとめていただきましたが、この論点の整理についてご質問、 追加はありますか。 ○鏡森委員  1回目に発言した者として、どこかに入っているのでしょうけれども、私は子供のこ とを言ったと思います。これは、厚生労働省の管轄だから、労働者でない場合は違うの かもしれませんけれども、文献をもう一遍眺めてみると、子供の中皮腫も増えている傾 向にあります。  しかも、組織病変から見ると、石綿とは関係ないものが多いということになっていま す。誤まった情報で不安という話がありますけれども、情報すらないので不安になるの は当たり前なので、子供のことは一応頭に入れて、どこで対応するのかというところだ けは整理しておいていただきたいということを、第1回に発言した者としてお願いして おきます。 ○労働衛生課長  はい、わかりました。 ○土屋座長  ほかにないようでしたら、第1回の論点整理としては、以上のように解釈いたしま す。議事の1番目として「石綿による住民への健康影響の実態把握」ということで、本 日は兵庫県の健康生活部から今井参事をお招きしておりますので、兵庫県の当面の対応 についてお話していただきます。 ○兵庫県(今井参事)  本日は、こういう場で説明する機会をいただきましてありがとうございます。これま での兵庫県の対応等について説明させていただきます。資料3は、「クボタ旧神崎工場 に係るアスベスト対策等について」というものですが、これは7月5日に記者発表した 資料です。大手機械メーカーのクボタが、尼崎市の旧神崎工場の従業員等の健康被害を 6月30日に公表した後、県で聴取り調査等を行い、7月5日に発表した資料です。  少し中身を申し上げますと、1「経過」では、昭和29年にアスベスト製品の製造開始 し、平成2年1月に、大気汚染防止法に基づく届出の受理がありました。下から2行目 に、平成8年1月に施設の廃止届を受理、平成9年に同工場の廃止となっております。  2「アスベストの使用量」ですが、いちばん問題となる青石綿については、8万8,000 トン余りです。昭和32年から昭和50年の間で、最大は昭和43年の7,600トン余りとなっ ております。  3「同工場における対策等」ですが、昭和47年以降は集塵機で除去、昭和51年以降は 作業を完全に自動化などとなっております。  4「被害状況」の(1)石綿疾患患者の状況については、昭和53年から平成16年の間 に死亡が75名、内中皮腫による者が42名です。療養中の者が18名、内中皮腫による者が 4名です。(2)労災関連については、死亡、療養を合わせた93名です。いずれも労災 の認定済み、あるいは労災の申請中です。  次の資料は、7月20日に記者発表した資料です。7月5日の発表の後、県で把握して いる大気汚染防止法上届出がありました事業所への立入検査を行いました。その検査結 果の公表資料です。  1「立入検査等の実施」です。(1)現在届出のある4事業所、(2)過去に届出が あった20事業所、合わせて24事業所については、敷地境界基準値をすべて下回ってい た。(3)、併せて行った健康調査の聴取りの結果、クボタのほかに、日本ピラー工業 三田工場、及び住友大阪セメントにおいて、各1名の死亡者、計2名が確認されており ます。  資料を2枚めくりますと表があります。これは、24事業所の所在地、使用開始時期、 製品、石綿の種類、使用量などです。その後の資料は、環境調査結果、濃度測定結果な どですが、ここの説明は省略させていただきます。  「アスベスト対策の実施状況について」というところですが、こうしたことを受けて アスベストに関する総合対策を取りまとめて、7月25日に発表した資料に、若干進捗状 況を追加して出しております。  1「相談体制の整備」については、相談窓口の整備を7月25日に行っています。専門 相談の実施については、この問題が持ち上がった当初からずっと継続してやっておりま すが、健康相談、環境相談、建築相談、消費生活相談など多岐にわたっております。各 種広報媒体による情報発信については、県のホームページ、県広報紙などの媒体を活用 し、Q&A、相談窓口等の情報を発信しております。  2「健康対策」については、アスベスト関連疾患実態調査として関係自治体、これは 県下にある4政令市である尼崎、神戸、姫路、西宮の自治体と共同で設置する専門委員 会において、死亡要因調査や遺族からの聴取りなどを行い、健康被害補償等に向けた基 礎資料として国に提供したいと考えております。現在、死亡小票による死亡要因調査を 実施中です。この調査については、厚生労働省、環境省とも連携して行っていきたいと 思っております。  健康被害補償等については、7月27日に国への要望を行ったところです。後で簡単に 説明しますが、知事が関係省庁を回り、全国知事会の要望と併せてお願いしたところで す。  市町等の健康診査の実施支援については、アスベスト関連疾患の早期発見のため、希 望者の申し出により、アスベストに関する問診項目を追加し、胸部X線写真の読影の際 に、そういう疾患の所見の有無を確認するよう、関係機関と連携して健診実施主体に要 請しているところです。また、過去にアスベストを大量に吸入したおそれがあり、すぐ に健診受診を希望される方については、関係市とも共同して保健所等で健診を実施する こととしております。  その下の読影技術の研修ですが、健診に従事する医師などを対象とし、8月11日の読 影研修会、これは今後22日にも行う予定です。その下は、医師全般に対する研修という ことで、8月27日に研修会を開催する予定にしております。  資料を4枚めくると、「アスベスト関連疾患の健診について」というフロー図があり ます。アスベスト関連疾患の健診を希望する者に対しては、アスベスト関連の問診、問 診結果を踏まえて胸部写真の読影をしていただく、という形のスキームの図です。いく つか矢印がありますが、いちばん右は通常の健診時期を待てないという方に対して、保 健所でやるというところです。  次は、兵庫県が国に、「アスベスト健康被害対策に関する申入れ」ということで、7 月27日に、知事が関係省庁を回って行った申入れの内容です。1点目は、国の各種相談 窓口と、自治体の相談窓口との相互連携の強化、また最新知見の提供など相談支援で す。2点目は、労災に係る時効起算の弾力的運用など、労働者及び遺族が救済を受けら れるよう配慮していただきたい。  3点目は、中皮腫とアスベストとの因果関係を早期に究明し、補償等の対象となるよ う必要な措置を講じていただきたい。4点目は、事業所等周辺住民の健康被害の実態調 査を行い、健診の実施、医療費控除等の措置をお願いしたい。ここについては先ほども 申し上げましたが、実態調査については県でも着手しております。厚生労働省、環境省 とも連携し、調査を進めていきたいと考えております。  5点目は、アスベストの製造・取扱事業所名や、アスベスト起因の労災発生事業所名 などの情報をすべて開示していただきたいということです。ここの部分も、既に厚生労 働省から一部公表していただいております。以下は省略します。  最後の資料は、アスベストによる健康被害に関する緊急要望ということで、7月14日 に全国知事会で取りまとめられた要望の内容です。先ほどの県で要望した内容に含まれ ますので、省略させていただきます。私からの説明は以上です。 ○土屋座長  多岐にわたる対策を手際よくご報告いただき、ありがとうございました。いまの兵庫 県の説明についてご質問はありますか。 ○鏡森委員  労災の認定のところですが、きっかけはじん肺法から入っていったのか、それともじ ん肺の所見がなくても、何か理由づけをして申請まで至ったのか、その辺はどうでしょ うか。写真に石綿肺はありましたか。 ○兵庫県  意味がよくわからないのですが。 ○鏡森委員  労災の認定を受けた人たちの胸部写真には、石綿肺に基づく繊維状の変化はあったの ですか。 ○兵庫県  労働基準局でないのでわかりかねます。 ○土屋座長  引き続き、8月18日に行われた環境省の「アスベストの健康影響に関する検討会」に ついて、環境省環境保健部の俵木保健業務室長から説明をお願いいたします。 ○環境省(俵木室長)  昨日、第2回アスベスト健康影響に関する検討会を開催いたしました。本日の議題の 「石綿による住民への健康影響の実態把握について」に関連し、環境省でも現在計画し ております調査についてご議論いただきましたので、それについて簡単にご報告させて いただきます。  資料4−1は、環境省で先週の12日に公表したものですが、この資料に従ってご説明 いたします。石綿関連の事業所の周辺住民の健康不安への対応ということで、7月12日 付で、各保健所にお願いし、健康相談の受付、環境ばく露に起因せず、一般環境経由で あることが疑われる相談事例について、情報収集をお願いしてきておりました。  7月末までの相談事例について、ご報告いただいたものを取りまとめたものが、次の 頁の一覧表です。各保健所で健康相談を受けている中で、可能な範囲で聴き取った情報 に基づいたご報告ですので、職業歴、居住歴、アスベストばく露の可能性を推定するた めの情報が十分ではありません。表に掲げた、これらの事例がすべて環境経由によるも のであるかどうかについては今後、検討が必要だと思いますが、一般環境経由の可能性 が否定できない事例が寄せられてきたということです。  備考欄をご覧いただきますと、それぞれの自治体保健所ごとにご報告いただきました 事例に、若干アスベストのばく露と関連しそうな情報があった場合には、備考欄に記載 してあります。職歴があり、労働環境でのアスベストばく露の可能性もあるのではない かと思われるような職歴の方も入っております。具体的に保健所から寄せられた情報の 中に、アスベストに直接接触していることが示唆される記載がない場合には、すべてこ の表に集計しておりますので、そういう意味でいろいろなケースの方が入っている可能 性があると理解しております。  中皮腫については、全国で116、男性70、女性39、肺がんについては全国で29、男性 17、女性11の報告が寄せられております。そのかなりの部分が、表の中ほどよりちょっ と下の、兵庫県尼崎市の相談事例に集中しております。環境省としては、検討会の意見 でもありますが、まず尼崎市の事例について、詳細な実態の把握をすることが必要だと 考えております。  資料4−2は、現在計画しております、一般環境経由によるアスベストばく露の健康 影響についての実態把握のための調査の概要です。目的のところは、6月末以降環境経 由で、一般住民でもアスベストの健康被害ということで指摘がされてきており、この可 能性が高いと指摘されている地域を中心とし、周辺住民の中皮腫患者の背景について実 態把握を行うということです。  対象として考えております集団は、1つは平成14年から平成16年の3年間の人口動態 統計、死亡統計における悪性中皮腫の死亡者です。2つ目の集団は、いまご報告いたし ました保健所の健康相談で把握されている、一般環境経由によるアスベストのばく露の 可能性が否定できない中皮腫患者で、この中には死亡例もご存命の方もいると思いま す。  3番目は、その他種々の情報源から、別途中皮腫患者の情報が入った場合には、調査 の中に組み入れていきたいと考えております。このような対象者の対象地域としては兵 庫県内で調査を実施することを考えております。現在、兵庫県にも音頭を取っていただ き、兵庫県内の保健所設置市のご協力もいただきながら調査を進めていきたいと考えて おります。  調査の内容については、大きく3つのアプローチを考えております。1つは、遺族又 は本人への聴取り調査を実施したいと考えております。別紙1は資料の番号が飛んでお りますが、本日の資料5−2「アスベスト調査項目の考え方について」でご説明いたし ます。  2つ目のアプローチとして、医療機関のカルテの調査をしたいと考えております。カ ルテにおいて、中皮腫の診断の内容、又は病理の標本等も残っていれば、それについて も調査をかけていきたいと考えております。  3つ目は、過去の石綿取扱い施設の配置状況の調査です。これまで尼崎市の保健所の 健康相談においても、いろいろ寄せられた情報によると、昭和30年代、昭和40年代に、 JR尼崎駅の周辺地域に、いろいろな形態のアスベスト取扱い工場があったという情報 もあります。  そういう石綿取扱い施設は、現在ではほとんど残っていないようですけれども、当時 取扱い施設がどのように配置されていたのか、アスベストが資材又は廃棄物として当時 どのように処理され、取り扱われていたのかについても状況をよく調査する。どこが当 時の発生源になっていたのかについては、患者・遺族の健康状態の把握とともに極めて 重要だということで、(3)については検討会でもいろいろご意見をいただき、きちんと した調査をやることが必要だと考えております。  資料5−2の患者の聴取り調査の内容については、大きく4つに分かれております。 基本情報としては、氏名、年齢、性別等の情報です。その中で、喫煙の情報、同居人又 は近隣者の中皮腫の有無についてお聴きすることを考えております。  2つ目の大きな対象としては、職業ばく露の可能性です。本日、別紙2のチェックリ ストは付いておりませんが、労災認定に当たり、職業ばく露の内容を聴き取るときに使 われているとお聴きしているチェックリストがありますので、それにほぼ基づいて昭和 30年代から昭和40年代を中心とした、アルバイトや内職も含めたこれまでのすべての職 歴について聴取り調査をする予定です。  3つ目の塊としては、家庭内のばく露の可能性です。家庭内に、工場から持ち帰り、 家族がばく露したようなものがあるのか。又は家庭内の日用大工のような大工作業でば く露した可能性や、家庭内に吹付けアスベストの部分があったとか、使用している種々 の石綿関連製品の接触といった、家庭内での具体的なアスベストへの接触可能性につい て把握したいと考えております。  4つ目の塊は、近隣ばく露の可能性ということで、居住歴について詳細な把握をした いと考えております。住んでいた場所はもちろんのこと、幼少期の遊び場の情報、又は 長時間過ごすであろう保育所や学校といった場所の地点、その状況について可能な範囲 で聴取りをしたいと考えております。  昨日の検討会において、このような形で調査の計画をご検討いただきましたが、概ね この内容でご了解いただき、さらに調査票を具体的にもう少し詰め、できるだけ早く開 始したいと考えております。調査に当たって、特に調査対象者としては、先ほど3つの 集団をご紹介いたしましたが、それぞれ性格、情報源が異なる集団ですので、まずは (1)の人口動態統計、死亡統計の3年間の中皮腫死亡者、これは兵庫県内では213名とお 聴きしておりますが、この調査を最優先で実施するよう先生方からご指摘をいただきま した。  先ほどもご説明しましたとおり、当時の周辺状況については、かなりきちんとした調 査を実施し、当時の地図を持参し、生活範囲について詳細な聴取りができるような配慮 が必要であるとされました。  また、中皮腫の診断については極めて難しい部分もあるということで、特に女性の腹 膜中皮腫については、卵巣がんとの鑑別が難しいので注意が必要だ、というご指摘もい ただきました。厚生労働省でも計画中の平成15年の死亡統計、878例の調査とのダブり の部分についても十分に連携し、調査を実施するようご指摘をいただきました。以上で す。 ○土屋座長  大体30年から50年前の状況というのは大変困難な作業だと思いますが、よろしくお願 いいたします。前回の論点でも、名取委員、森永委員を中心に、尼崎市については科学 的、厳密かつ十分な調査をということでしたが、お2人から追加のご意見はございます か。 ○森永委員  尼崎市については、石綿セメント管の不良品を回収し、繊維を再回収する事業所があ ったと聴いていますから、早くそれを同定することが大事だと思います。それから、保 育所、幼稚園、小学校、高校はどこに通っていたかをきちんと把握しないと、クボタの 周辺半径1km以内には、保育所から小学校まで現在15ぐらいあると聴いていますが、昭 和30年代にはどこがあったのかをきちんと押さえる。これは、教育委員会等を通じれば すぐわかることだと思いますから、どこの保育所、幼稚園、小学校に通っていたかを聴 く必要があるでしょう。同時に、ヤンマーの事例がありますから、クボタ周辺の工場に 勤務していたかということも聴かないといけない。  亡くなった人の遺族に聴くのは非常に難しいですから、聴いてもわからないという結 果に終わることが多いということも含めてどうするのかを考えておかないと、一生懸命 聴いても何もわからなかったという可能性が十分あると思います。  クロシドライトを扱っていた廃棄物の事業所というのは、早急に調べる必要があると 思います。 ○名取委員  私も、この間に一人ひとり似たような調査をしてきましたが、いま言われた対象者の 順番でやるとうまくいかないのではないかという印象を率直に持ちました。やはり、本 人でないと知らない状況があるわけです。例えば、子供のときにどこで遊んでいたかに ついて、遺族の方に聴いてわかることはまずないと思います。  順番としては、生存者の方からの聴取りを先に行い、もちろん遺族の方の聴取りもあ る程度並行して行ってもいいと思います。生存者でなければ知り得ない情報と、遺族で はなかなか知らない情報の差を比較しながら進めていかないと、遺族の方を主にした聴 取りを先にやるとうまくいかなくなる、というデザインになってしまうのではないかと いう気がいたします。生存者の方からの聴取りを先行させながら、遺族からだけだと得 られない情報の部分をよく確認しながら進める。調査のやり方自体は概ねよろしいと思 います。  もう1つ大事なことは、調査員の研修を先に十分行い、その研修をかなり積んだ、熟 達した相談員が当たらないと、均一なものは全く得られない結果になってしまいますの で、その辺が重要かと思います。 ○土屋座長  対象者は、生存者を優先してということと、調査員のトレーニングをしっかりという ことでよろしくお願いいたします。前回、名取委員が家族内ばく露について横須賀市を モデルにして、作業着を持ち帰った頻度等を調べることにより、リスクが確認されるの ではないかというご指摘をされましたが、その点についてさらに名取委員からお願いい たします。 ○名取委員  これは、まだ計画されていないわけですね。 ○土屋座長  そうです。 ○名取委員  私が申し上げたのは、尼崎の場合は、工場からの環境ばく露と、職業性のばく露と か、そういう家族ばく露が混然としたものを判明する地域としてはいいけれども、純粋 な家族ばく露のものを見積る場所としては適当ではない。  横須賀の場合、造船所からの環境ばく露の話があまりないものですから、環境ばく露 をピュアに考えるにはいいのではないかということだったと思います。その辺をご検討 いただければと思います。 ○土屋座長  緊急度からいくと、尼崎市の状況をまず把握する、ということが優先されますね。 ○鏡森委員  緊急度はあまり高くないかもしれませんが、いまの話を聞いていて、昔、ワーグナー が南アフリカで中皮腫を見つけたときに、診断名が結核性胸膜炎でした。ここに、医療 機関のカルテ調査という話が出たので計画されているのかもしれませんけれども、工場 の周辺に関しては、中皮腫の人たちの診断が付くまでに、結構肺に水が溜まって繰り返 し通っているとか、ひどいときには肋間神経痛という診断名でずっときて、最後は胸膜 炎という診断名で亡くなっていく例もあります。  これだと、中皮腫の診断が付いた人はそれでいいのだろうけれども、周辺で見逃して いるものをもう一度医療機関の人たちの協力を得て、周辺に関しては怪しいものもやる ということをいつかやったらどうですか。 ○成田委員  それは、難しいですよ。 ○鏡森委員  難しいことはわかるのだけれども、彼らが持っているもので、そういう怪しいものが あるかどうかという申告ぐらいはしてもらったらどうなのですか。 ○森永委員  きちんと疫学調査をするのであれば、鏡森委員が言うようなことをしなければいけな いわけです。周辺の全死因の分布と、工場のアスベストのばく露のない地域の同じ期間 の全市の死亡を比較しなければいけない。鏡森委員は疫学者だからそう言うだと思いま すけれども、私もそう思います。 ○鏡森委員  申し訳ないけれども、これだと実態把握という意味で、中皮腫の実態を見るというの はそうなのだけれども、この地区の実態把握したことにはいささか欠けるということで す。もう1人疫学者がいますから聞いてほしいのですが、疫学者からの率直な疑問で す。 ○祖父江委員  これで完結するという調査ではなくて、まずはハイリスクエリアを同定するというこ とであれば、これでいいのではないかと思います。 ○土屋座長  アスベストのばく露の実態調査としては不十分だろうと思いますが、目下困っている 方々をどう早く把握し、救済するかという観点から考えたいということでよろしいでし ょうか。 ○鏡森委員  難しい問題ということはよく知っております。 ○名取委員  これは中皮腫で、環境ばく露が一定程度出ると仮にしたときに、喫煙のない女性肺が んの危険性も並行して上がると考えるほうがいいのでしょうか。そういうことも、デザ インとして組み込んだほうが、より実態がわかるようになるのか、その辺について森永 委員のお考えはいかがでしょうか。 ○森永委員  本当は中皮腫だろうけれども、肺がんになっていた例が含まれる可能性のほうが多い と思います。肺がんで亡くなられた方の喫煙歴を調べるのはかなり大変なので、亡くな られた方については中皮腫の方を調べてみる、というのはそれほど悪い方針ではないと 思います。  私は、がん助成の研究班で2年ほど前にやっていますけれども、過去の事例でいくと 大体が職業歴はきちんと取れていないです。今度は、保健師にトレーニングを受けても らって一生懸命聴いても、どこまでわかるのかなというのが正直なところ疑問に思って おります。そういう意味では名取委員が言うように、現在生存している方からいろいろ な情報を聴いて、もう一度亡くなられた方についても遺族の方に、こういうことも聴け ばいいということがわかってくると思います。順序としては、現在生きている方に、で きるだけ詳しい状況を聴くというほうが手順としては正しいだろうと思います。 ○土屋座長  私どもの施設は特殊な所で、開院以来のカルテが全部ありますが、一般的にカルテの 残存が問題になります。いま森永委員がご指摘のように、職業歴は意外と欠落が多いと いう点が、死亡例の調査を難しくする要素かと思います。名取委員がご指摘のように、 生存者にはそこを遡ってお聴きできるということは多々あるかと思います。  第2の議事に入ります。いまの実態はまだ十分にデータはありませんけれども、これ らを踏まえて住民の健康管理の方法についてどうするかということです。今回、岸本委 員から、アスベストばく露歴を把握するために、どのようなことを問診で聴けばいいか という観点から説明をしていただきます。 ○岸本委員  資料5−1と資料5−3を対比して見てください。住民に健診をするということは、 究極的には必要だと思うのですが、むやみやたらと胸のレントゲンを撮って、それにC Tを撮るというのは、私の後の本田委員からの報告もありますが、X線ばく露による健 康被害というのがあります。やはり、いま生きている方々を問診する場合は、先ほど名 取委員や森永委員も言われましたように、職業性ばく露をかなり詳しく聴くのがいちば ん必要ではないかと思います。森永委員が言われましたように、職業性石綿ばく露とい うのは、臨床医はあまり熱心に聴いていないので、本当に職業性ばく露があったのかな かったのか非常に迷う例が多いというのも現実であります。  今回は、とりあえずホームページや、相談窓口で簡単な問診票を書いていただき、そ れを見て石綿ばく露が職業性ばく露、家族内ばく露、環境ばく露を含めてありそうだと 思われる例に関しては、専門医等の聴取りが各地区で月2回ぐらい行われる予定になっ ているそうです。より精密な問診票を作り、2次スクリーニングという2段階法をやっ たらどうでしょうか。  資料5−1は、最初からあまり難しい問診票で一般の皆さんにやるというのも問題が あるので、かなり端折ったものを作ってみました。専門医等による詳細な聴取りに関し ては、森永委員が書かれた大阪中皮腫研究会での問診票をちょっとモディファイし、職 業性石綿ばく露があるだろうという職種をいま洗い出して、本当に石綿ばく露があるの かないのかを確認しております。森永委員が書かれたものよりも、もう少し詳細な2次 健診票を作ってはどうかということでいま検討中であります。  今回は、資料5−1を皆様方に検討していただき、ご批判をいただきたいと思ってい ます。私も、今回7月8日から、石綿関連疾患が心配だという方の健診も相談もやって います。その場合に、もちろん職業歴を聴くことができるのですが、仕事の内容と会社 名、例えばクボタとか、某造船といった会社名がある方は、胸膜プラークの診断率が非 常に高いです。CTまで撮れば、100%とは言いませんけれども、それに近いようなデ ータが実際に出ております。まず、具体的な職業内容を書いていただくのと、仕事を行 った会社名を書いていただければ、ある程度当たりが付くのではないかということで、 1番目にこれを出してみました。  あとは、「何々に係る作業」「かかわる作業」ということで、こういう作業をやって いましたかという意味で出しております。3番目は、家族内ばく露、もしくは環境ばく 露を意識したような項目です。特に、IIIの5、6、7、8というのは、どれぐらいの 間住んでいたかということです。1年や2年クボタの周りに住んでいて、本当に意味が あるのかないのか、これもまたディスカッションになるところです。石綿工場、造船所 の近くに住んでいた、それで本当に中皮腫が起こるかどうか。  昔、私が書いた論文が2日前に載ったのですけれども、造船所の近くに住んでいた84 歳の女性に、実際に環境ばく露としか言いようのないような、石綿による中皮腫が起こ った。当時、横須賀共済病院にいた三浦先生もおっしゃられていましたが、いわゆる石 綿の破片が出てくるようなのが環境ばく露に多いのではないか、ということを我々は 1990年ごろに言っていました。そういうのがないことはないけれども、そんなにたくさ んあるとは思っていませんが、こういうものを作ってみましたのでご批判をいただけれ ばと思います。  実際にこういうことをやれるのか、やったほうがいいのか微妙なところなのですが、 ただ、皆さんにCTをやるというのも非常に問題があるかと思います。それでは、レン トゲンで胸膜プラークが簡単に見つかるのかというと、これも非常に問題があるとなる と、やはりハイリスクグループの方だけはきちんとやって、きちんと押さえるという発 想がいいのではないかと思って、こういうものをたたき台として考えてみました。以上 です。 ○土屋座長  この調査票で、会社名という具体的なことで非常にプラクティカルだと思うのです が、この点についてご意見はございますか。実際に、臨床の現場ではこういうのをスト レートにお聴きしたほうが大変判断しやすいと思うのです。 ○成田委員  最初に現場でやるとしたら、これで精一杯だと思います。学問的なことで、もっと細 かいことを付け加えればという話は出てくると思うのですけれども、それをやると現場 ではまず無理だと思います。 ○土屋座長  成田委員は、長年苦労されたわけですね。 ○森永委員  全国でこういうものをやるというお考えですか。 ○岸本委員  そうです。いちばん問題になっている箇所でまずパイロット的にやって、それでうま くいけばこれを全国的に広げていくことが可能なのではないかと思います。いまいちば ん問題になっている尼崎、羽島、玉野といった、中皮腫で労災認定例が10以上あった所 でまずやってみて、それでうまくいくようであれば全国に広げていくということです。 パイロット的にやるのは、いまいちばん問題になっている所が最重点ですから、その辺 りでやってみてということになるのかと思います。 ○森永委員  私は前から、環境ばく露のような事例というのは、青石綿とアモサイトの製造工場以 外はそれほど多くないだろうと思っています。ハイリスクと考えられる所の地域住民に ついては、できるだけ早くこのような調査をしたらいいとは思いますが、それぞれの地 域の事情があると思いますので、必ずしもこれを全部聴く必要はないのではないかとい う気はしております。  例えば3番について見ますと、クボタ周辺では先ほど言ったような廃棄物の回収、繊 維の回収事業所の近くに住んでいたかということを入れたほうがいいわけです。おそら くタルク・パウダーの話については、それほどリスクがあるとは思っていませんので、 そこまで聴く必要はないです。それぞれの地域で、聴く内容の焦点を合わせるものが違 って当たり前だろうと思いますし、違う形で聴いたほうがいいように思いますので、こ れをいきなり全国へ持っていくことはあまり考えないほうがいいのではないか。  ハイリスクと思われる地域がそれほどたくさんあるとは考えられませんから、そこの 地域周辺の所だけを、それぞれの事情に合った問診で1次スクリーニングをすればいい のではないかと思っています。 ○土屋座長  岸本委員も、いきなり全部にということではないですね。 ○岸本委員  そうです。森永委員がおっしゃられたとおりだと思います。これは、一応スタンダー ドという形で、こういうことでやってみたらどうかということでありますので、森永委 員が言われたように尼崎、玉野、呉と背景が違う所には、そのように合わせていくとい うことでいいのではないかと思います。 ○成田委員  それでいいと思います。私は、このぐらいが限度だということを申し上げているので す。マイナーチェンジがあっても、それは構わない話なのですが、実際にやるときにこ れ以上詳しくするのは難しいのではないかという話です。 ○土屋座長  地域の特性によってモディファイしていこうということですか、森永委員もそのよう な解釈でよろしいですか。 ○森永委員  それで結構です。成田委員がおっしゃるように、現場では大変だと思います。受けた い希望者に自記式で書いてもらい、あとで誰かがチェックするというシステムでしょう ね。 ○土屋座長  俵木室長はご意見がありますか。 ○環境省  私たちは尼崎で、中皮腫になられた方の情報を集めて、どういうばく露形態とかばく 露経路の事例があるのかを踏まえて、その先としては聴取りの内容としてこういう可能 性の事例を聴取りの中に入れたほうがいい、ということも出てくるのかと思いつつ、ま ずは尼崎の調査をしてみたいと考えております。 ○土屋座長  お互いに行ったり来たりやっていったほうがよろしいですね。 ○環境省  そうですね。 ○安全衛生部長  岸本委員のイメージは、もちろんこの調査票でスクリーニングするわけですけれど も、例えば全世帯に配るというようなイメージなのでしょうか。その対象地域、例えば 工場周辺地域、尼崎だったら尼崎の工場の半径1km以内の全世帯に配ってチェックして もらって出すというイメージなのでしょうか。森永委員のお話だと、不安のある人にこ れを配って、それでチェックしてもらってスクリーニングに行ってもいいのではないか という感じでしたね。 ○岸本委員  これは全体に配るのではなくて、いまアスベスト関連疾患に関して非常に不安に感じ ていらっしゃる方々が多いと思いますので、そういう方を対象として、ホームページや 相談窓口でこれを使うということですから、全世帯にこれを配るというイメージではな い。 ○安全衛生部長  例えば、市町村の広報やホームページのような形で知っていただき、チェックしてい ただいて、不安であれば次のステップにいくという感じですか。 ○岸本委員  専門家による聴取りが行われることが、もう明らかになっております。奈良県でやら れますので、そういったときにこれを使っていて、あなたはきちんと健診を受けなさい という、いわゆるハイリスクグループはきちんとCTまでやって、本当にアスベストば く露があるのかないのかを、ご本人にもお伝えするのがいいのではないかと思っており ます。 ○安全衛生部長  ということは、これから各地区で専門の先生方による相談、講演等をやっていきます が、できればその前に、地域住民の方にはこういったものを事前に見てもらって、自分 でチェックして不安であれば来るというほうがよろしいわけですね。 ○岸本委員  いま参考資料2というものが配られておりますが、私は森永委員が大阪中皮腫研究会 でお作りになっていたのをモディファイして、実際に健康診断にきていただく方々に前 もってチェックしていただいております。そうしますと、非常に内容がよくわかります ので、実際にレントゲンを見るときに、この人はハイリスクなのかそうでないのかとい うことを意識して見ます。ですから、たとえCTを撮っても見落しが非常に減るのでは ないかと思いますので、こういう職業歴を含む家族内ばく露、環境ばく露が事前に我々 の頭の中にインプットされるという意味で、非常に重要ではないかと考えます。 ○安全衛生部長  ということは、22日に1回目の講演会、専門医の相談会をやるわけですが、来週の月 曜日ですから、いまから広報をしても間に合いませんので、会場にこういったものを置 いておいて、あるいはお配りして、もし不安があればチェックして相談に持っていって くださいと、こういう形のほうがよろしいのですか。 ○岸本委員  私も、8月30日に岡山県玉野市で講演と相談を受けているのですが、そのときには、 今日の検討会で皆様方にある程度のご意見をいただけたら、事前にこれを用意しようか と、それでどのような効果があるのか見てみたいと思っております。 ○名取委員  自発的な健診希望者向けのアンケートだと、おそらくこれは有効かなと思います。自 発的でない集団に対するアンケートだと、苦労するという印象を持ちますね。 ○岸本委員  そうですね。こういう状況になる前には皆さん意識をしていなかったのですが、こう いう状況になって、いままで意識をしなかった方々が、非常に意識をされるようになっ て我々の前に来られるというのを、この1カ月少々で、私も非常に思いました。私も臨 床医でこれを20年ほどやっていまして、いままでは職業歴を聞こうと思っても、なかな か向こうが言わなくて非常に困ったのですが、この1カ月某で、向こうのほうからどん どん言って、私も頭を整理するのが難しい状況になっております。ばく露を受けたと思 われる方々のそれに対する意識は、ものすごく変わってきたということも事実だと思い ます。 ○土屋座長  実際、私どもは5、6年前に亡くなった方の奥様から、なぜあんなにしつこく職業歴 を聞いたのか、やっとわかったと、それで同僚に話してみたらそういう職場環境だった と、いまになってこの災異があったのでわかったという方がいらっしゃるのです。いま の状況では、こういうご質問票は大変有効に活用できるのではないかという印象を、私 も持ちました。  資料5−3にお示しいただいている、いま部長がおっしゃったように、ホームページ や広報誌やその他でこういうものがあるというお知らせをして、自発的にご記入いただ く方法でよろしいでしょうか。 ○鏡森委員  質問ですが、アンケートで、もしも「近くというのはどれくらいですか」という質問 が出たら、どう答えればいいですか。 ○岸本委員  これを1km以内とするのか500m以内とするのか、非常に難しいですが、漠然と意識 の中で近くに住んだと思われますか、という形でしかないのではないかと思いますが。 ○鏡森委員  本人が近くと言えば近くと。こういうことを聞いてくる人が、結構いるのです。 ○土屋座長  明確な定義はなかなか難しいですね。 ○鏡森委員  アスベストが工場から飛散するデータを、一遍見せてもらいましたね。あのときは 500mでしたね。 ○岸本委員  そうですね。神山先生がお書きになっている負の相関関係の線ですが、大体その程度 のようにも思えますが。 ○鏡森委員  そうすると、岸本委員は、イメージとしては500m〜1kmぐらいでしょうと。 ○岸本委員  私的には、500m以内ぐらいかなと思うのですが、1kmは遠すぎるのかと言われる と、可能性は無きにしも非ずですよ、としか言い様がないですね。特に森永委員がおっ しゃられたように、白石綿ならいざ知らず、青石綿を明らかに使っていた所がある程度 わかりますね。そういう所であれば、本当に1kmは大丈夫なのかと言われると、なか なか問題があるのではないかと思います。 ○土屋座長  また、地域によって生活圏といいますか、学校や商店街の距離も関わると思います。 その辺りは、具体的に現場でご判断いただくということになりますでしょうか。 ○森永委員  これも、神山先生のデータは蛇紋岩のクリソタイルのデータなのです。石綿の種類に よって、たぶん飛散の状況が違うと思うのです。ですが、あまりにもいままで日本で周 辺住民の健康被害の大きな事例が出てこなかったものですから、きちんと調べられてこ なかったわけです。ですから、今回は尼崎をきちんと調査して、そうすればほかの地域 の対応がとれるから、尼崎を先にきちんとやりましょうというのが、私からの提言なの です。 ○土屋座長  よろしいですか。尼崎のデータが早く手元に来ることを願いたいと思います。  それでは、いま岸本委員からスクリーニングについてのお話をいただきましたので、 実際問診その他で、スクリーニングのあとどういう検査をやったらいいかということ で、考えつくのはレントゲン、CTです。その辺りの検査のメリット、デメリットにつ いて、本田委員からご説明いただきたいと思います。 ○本田委員  資料6に、画像診断、胸部レントゲン写真、CTでの検診のメリット、デメリットで まとめております。メリットは、あくまでも胸部写真とCTとの比較で書いておりま す。ポイントは、胸膜中皮腫、肺がん、石綿肺のそれぞれ3つをどう検出するかという ことだと思います。  まず、中皮腫に関しては3つ書いていますが、いちばん上です。「良性胸膜病変を有 する群に、高頻度に中皮腫が発生する。検診で良性胸膜病変を発見し、高危険群として 経過観察することが重要である」、こういう論文が出ております。これはたしか、クロ アチアで10年間に2,400名ほどの人を経過観察して、14%に肺胸膜疾患が出て、そのう ちの22%、77名に悪性中皮腫が出てきた。残りの2,000名では、0.6%しか出なかった と。ですから、ハイリスクグループを決めて、それに対して経過を観察することが重要 なのだということを言っている。これは、まさしく大事なポイントかなと思っておりま す。  CTの論文で、「胸膜病変の良性と悪性の鑑別にはCTが有用である」と書いており ますが、これは鑑別がつくものがあるということであって、先ほどからお話になってい る結核との鑑別は、必ずしも容易ではない。葉間胸膜に小さな結節状のものがあった ら、比較的診断はつきやすいのかもしれませんが、部分的な胸膜の肥厚だけでは必ずし も容易ではない場合があると思います。胸部単純写真よりCTがいい。これは、もう皆 さんご存じのことで、単純写真が100分の53、CTが100分の93というデータが出ている ものもありました。  肺がんの早期発見に関しましては最近、低線量、いわゆる電流量を下げた、CTによ る肺がん検診があります。検診が前提ですので、低線量のCTと胸部X線写真と比べる とどうかということで、いくつか論文があります。ステージIの肺がんで、CTが60〜 80%、X線写真では30〜40%で、CTのほうが検出率はよかった。低線量のCTでも、 それくらい見つかるというレポートがあります。これは外国のものですが、日本から出 ている論文だったと思いますが、胸部X線写真よりも、低線量のCTで4倍ぐらいの検 出率があった。あるいはその次で、2cm未満の肺がんで5倍の感度があった。CTの ほうがよく見つかる、低線量でもCTのほうがよく見つかるというデータです。  1個飛ばしまして、石綿肺、間質性肺疾患ですが、それを早期発見するにはどうする かということです。低線量のCTになりますと、間質の状況が非常にわかりにくくなっ てきます。低線量であっても、胸部単純写真よりもよかったというデータが出ておりま した。胸部写真では35%、一方低線量のCTで73%見つかったという論文もあります。 本当の意味で早期の石綿肺の状況、あるいは早期肺がん、中皮腫を見つけるとすれば、 ある程度の電流量を増やし、通常のCTで撮る必要もあるだろう。ただ、これを定期的 にするとなると、被ばくのことを考えて線量を落さざるを得ない状況だろうと思いま す。メリットはそういうところです。  デメリットとしましては、偽陽性の発見による心理的不安、胸膜が部分的に肥厚して いることに対して、すぐに組織診断をするのか。あるいは結節が見つかったときに、す ぐに気管支鏡で生検をするのかという問題があります。不必要に侵襲的な検査が増えて しまう可能性がある。どうしても検診をしますと、肺がん以外のものも見つかることが あります。特によく見つかるのが甲状腺がんで、最近ペットの検診がありますが、これ で最もよく見つかっているのが甲状腺がんです。  甲状腺がんというのは、非常にスロープログレッションで、本当にそこですぐに治療 しなくてはいけないものの割合は、必ずしも高くないのではないかと思います。がんが あると言われると、患者さんはすぐに手術ということになりますので、過剰な診療を行 ってしまう可能性もある。  最も問題になるデメリットが、先ほどからお話になっている被ばくの問題です。いく つかのデータを組み合わせて、一応比較をしてみました。CTには、胸部CTを撮ると きにシングルヘリカル、それからいま多列CTというものが出てきています。出ている データが4列の多列MDCT、先ほどお話した低線量のCT、これが、電流量が100〜 210、300〜350、25となっております。実効線量が、mSvという単位ですが、7.62、 11.0、1.15ということです。これは別のデータでも、低線量での25mAでの実効線量が 1.27ですので、1.25、1.27、このくらいだろうと思います。  それに比べて、X線写真は0.02〜0.1ですから、CTを行うと被ばく量が10倍から500 倍ぐらいになるということです。  次の頁ですが、このデータは広島、長崎の原爆のデータです。それ以降ちゃんとした データが出ておりません。0.1Sv、100mSvの被ばくでのがんの死亡率が、約1%です。 これを基に計算してみますと、途中飛ばしますが、大体がんの死亡率が0.0115%、30〜 75歳まで45年間、年に1回CTを受けるとすると、がんの死亡率が0.52%、罹患率が1 %強となります。これを4列のMDCTでちゃんとした検査を毎年やるとしますと、45 年間で5%、罹患率がその倍として、10%のがんの発生率が起こってくるということで す。  結論を申し上げますと、やはりハイリスク群を同定して、その方々に対してちゃんと した経過観察をすることが大事なのだろうと思います。以上です。 ○土屋座長  どうもありがとうございました。レントゲン検査及びCT検査のメリット、デメリッ トについてご意見を伺いましたが、他の委員から何かご質問等ございますか。 ○森永委員  この死亡率、罹患率は、生涯死亡率、罹患率ですね。 ○本田委員  そうです。 ○祖父江委員  被ばくによるがん死亡の過剰死亡、過剰罹患の部分ですが、0.1Svについて0.9%とい うのは、全身被ばくを起こした場合のリスクの上昇であって、胸部だけの場合とまた少 し違うと思うのですが。 ○本田委員  これは線量当量で計算しますので、mSvで計算するときには、全身にそれだけ被ばく したときに、それを前提に計算しますから、これはこのままの計算法でいいと思いま す。 ○土屋座長  ほかによろしいですか。レントゲン検査は100年の歴史があって、戦後だけでも50年 以上経過がありますが、CT検診に関してはたかだか10年ですから、経年的に検査を受 けた方の影響は実際にはまだ見られませんので、こういう計算上の値を参考にするしか ないわけです。それだけに、安易に選ぶと先が読めなくて恐いという点もあろうかと思 います。いままでの中皮腫の診断からいくと、単純写真でまずスクリーニングをする、 問診でのスクリーニングのあと写真を撮る方向が、職業歴のある方では通常行われてい ますので、1次の問診で、スクリーニングのあとそういうことをやっていくことが示唆 されるかと思います。 ○森永委員  私は、それは間違っていると思います。本田委員の資料を見ますと、CTのほうが胸 部レントゲンよりもはるかに検出率が高いわけですから、どうせ普通の単純のレントゲ ンを撮っても、フォールスポジティブ、フォールスネガティブが出てきますと、どうせ CTを撮らなければなりません。一応問診でハイリスクと考えられる方は、一度はCT を受けていただいて、胸膜プラークがあるかハイリスクを同定するほうがいい方法だ と、私は思います。 ○岸本委員  私も、森永委員の意見に賛成です。やはり問診をきちんと取って、ハイリスクである 方については、胸膜プラークがあれば、いま本田委員がおっしゃられたように、悪性中 皮腫の頻度が明らかに高いというクロアチアのデータも出ておりますし、実際そうです ので、その方々にもきちんと、職業性ばく露で胸膜プラークがあるから、あなたはハイ リスクなのだということをインフォームしておいたほうがいいと思います。見えないレ ントゲン写真よりは、1回でもCTは必要だと思います。 ○土屋座長  1回CTを撮って、そのあとはどうされますか。 ○岸本委員  ずっとCTがいいかどうか、これは問題がありますので。 ○森永委員  それは難しいですね。 ○岸本委員  石綿の健康管理手帳も、CTを撮れとは言っていませんので、年2回我々もレントゲ ンを撮っていて、比較読影をして、やはり異常がある人にCTをやっていますから、基 本的な姿勢はそれでいいのではないかと私は思います。 ○成田委員  委員がおっしゃったのは、基本的な姿勢というのは、まずレントゲンを撮ってCTを 撮るということですか。 ○岸本委員  ハイリスクの人はCTを撮って、ただ経年的にフォローアップはレントゲンでいいの ではないかということです。CTを撮った人には、毎年CTを撮る必要が本当にあるの か、ないのか。実は、じん肺のCT検診を毎年撮っているのですが、本当に意味がある のかなと、私自身も思っているものですから。 ○成田委員  そうなってくると、最初はやはりレントゲンとCTが両方とも必要になるのではない でしょうか。 ○岸本委員  はい。最初のほうこそ、セットで必要だと思うのです。 ○土屋座長  ハイリスクということで、まず話をしていますが、入口では単純写真とCTが必要で あろうと。経年的にやっていくには、まだどうしても疑問が残るという解釈でよろしい ですか。 ○森永委員  例えば、最初に基本的なレントゲンの単純とCTを撮りまして、それほど多いとは考 えられませんが、肺野のほうで石綿肺の疑われる所見がありますと、HRCTのほうが はっきりわかるのですが、HRCTでも石綿肺の所見があれば、これはプラークよりは もっとハイリスクですね。  そういう方については、ある意味ではデザインをきちんと組んで、ハイリスクの肺が ん早期発見をやっているヘリカルCTの検査のトライアルが、アメリカで進行していま す。日本でもやられていると聞いていますが、これはやる値打があるのかもわかりませ ん。ですから、そこのところはこれからもう少し議論していかなければならないと思い ます。  いま、もし尼崎でこういうことをやれば、どのくらいの方が出てくるのかによって、 今後そういうデザインを組んでやって、果たして評価できるかどうかということにも関 わってきますので、私はまだいまここでは結論を出せません。  最初の入口は成田委員、岸本委員、我々石綿をよくやっている人間が言いますと、レ ントゲンだけでは非常にフォールスポジティブ、フォールスネガティブが出てきて、ど うせCTを撮らなければいけませんので、最初から一緒にやることをお勧めしたいと思 います。鏡森委員も、レントゲンで昔いろいろ調査されましたが、どうでしょうか。 ○鏡森委員  それは、そうだと思います。いま頭に浮んだのは、じん肺の方々に陰影があった場 合、自動的にヘリカルで最後にチェックすることになっていますね。それとの整合性を やっておかないと、地域でやった場合と厚労省がやっている場合が違ってくると、少し 混乱が起きると思って聞いたのです。森永委員のご質問に関しては、私はいま議論され た以上の情報はありません。 ○名取委員  レントゲンとCTを、どこかでペアでやるほうがいいというのは、私も賛成です。た だ、そのときの最初の年を何歳以上にするのかを決めておかないと、例えば不安で来た 20歳の人にレントゲンとCTをペアでやってしまうのか。レントゲン、CTをペアにす ることを最初にするのは基本でいいのですが、若年にはしないというところを、どこか に確保しておかないとまずくて、それを1回したあとはレントゲンのフォローをしてお いて、必要に応じてCTを加えるのが基本かなと思います。  いま鏡森委員が言われた手帳の件の健診ですが、基本的には退職者の健診ですね。で すから、おそらく55〜60歳以上の方しか、たぶんされていない健診だと思いますので、 そこの部分での整合性がどうなるかというのはあると思うのです。 ○鏡森委員  どういう意味ですか。 ○名取委員  CT検診などをやられているのは、退職後、もしくは管理2以上ですね。 ○鏡森委員  そんなことはないです。じん肺で陰影があればやっていますから。 ○名取委員  だから、そういう点でのハイリスクか、退職後の健診になるので、そこでどうするか ということだと思います。 ○労働衛生課長  じん肺健診は、いまでも管理区分によってCTをセットでやる形になっていますが、 健康管理手帳につきましては、まだそこまでいっていない部分があります。前回お話し ましたように、森永委員の研究班で各職種ごとに1回レントゲンを精査していただい て、そのリスクがどのくらいあるのか、基本的にはばく露量、使った石綿の種類等の関 係も当然あるわけですが、知見を集積したうえで、健診のやり方につきましては、早急 に健康管理手帳について研究班の成果をもって検討を始めたいと思っているところで す。  ただ、私どもからしますと、労働基準局の中ですと極めてばく露が明らか、もしくは 大量ばく露した労働者が対象ということが、かなりはっきりしているわけです。そこの ところはそれでいいのだろうと思うのですが、周辺の労働、職業ばく露と関係ない、環 境ばく露の可能性しか持たない方々はどうなのかと言われると、それはまた別の扱いに ならざるを得ない。  だから、基本的に先ほど岸本委員がおっしゃった、ばく露の調査票を1次、2次で厳 重にやり、ばく露の推計をした上で、セットで何をするのかを考えたらいいのかなと思 うのです。周辺住民にどこまで健診を、どういうステップでやるのかは私どももまだ、 ご意見をいただければいろいろやってみようかと思います。 ○成田委員  岸本委員も言われているのですが、ハイリスクグループについてはそこまでやらなけ ればいけない。そこまでいっていない人について、全部CTとレントゲンをセットでや るのかは、それは大変疑問があると思うし、名取委員が言われたように、若年者に対し てやるかどうかも非常に疑問がありますから、それもまた難しい問題だと思うのです。 ○土屋座長  スクリーニングでハイリスクはどこであるかが絞れないと、その次に進めないので す。ハイリスクが明らかであれば、それは単純写真とCTを初回は撮ったほうがよろし かろうというのが、多くの委員の意見かと思います。 ○労働衛生課長  1つ問題が残っている部分は、いま兵庫県、尼崎市等が先ほどのような形で住民調査 に入って、尼崎市の部分は健診も入るのですね。 ○環境省  この調査と別の指標ですが。 ○労働衛生課長  別ですが、基本的にあとで評価対象になるように私は聞いていますが。 ○環境省  この調査の対象としては、いま考えていませんが。 ○労働衛生課長  兵庫県さんはいかがでしょうか。尼崎市が住民の希望者全員に健診だという話を聞い ているのですが。 ○兵庫県  県のほうは先ほど説明しましたが、尼崎市のほうも問診の強化と、尼崎市は胸部写真 を年2回、撮影を近々始めると伺っております。私どものほうは、県としては住民健診 等の実施主体である市町を指導する立場にあります。住民健診の肺がん検診の中で、先 ほどお示ししたフロー図の形で問診の強化と、その問診結果を踏まえたうえで胸部写真 を読影していただく形で、健診の実施主体のほうに要請していくという考えでおりま す。 ○労働衛生課長  そうしますと、これは最後にお話すると思いますが、次回は環境省の会議と合同でや ろうと、事務局では考えております。そのときに、尼崎の健診の情報等をまたいただい て、次回になりますと、このあと出てきます私どもの相談会も何回か終了していると思 います。そのときの情報等を提供させていただき、いま研究班も手をつけたばかりです ので、情報のかなりの部分が数カ月かかると思いますが、集まったところでもう一度、 一定の評価をして、専門家会議にお諮りして、その後の計画や施策に生かしていくとい うところかなと考えています。 ○安全衛生部長  とりあえず、今日ご議論があったお話を、もちろん兵庫県さんに来ていただいている わけですから、これは持ち帰っていただく。尼崎市は来週の火曜日に市の保健所等とも うちのほうで話をしますので、そういった際に、向こうで健診をやることをある程度考 えていらっしゃるようなので、今日のお話もお伝えして、最終的な判断は実際にやる市 のほうだと思いますが、ここでまたそれなりの結論を最終的に出していただくことにな りますが、とりあえず途中経過としても、尼崎市にはこういう議論があったということ だけはご報告しようかと思います。 ○土屋座長  是非お伝えください。 ○祖父江委員  本田委員の資料のメリットのところに、ずっと早期発見のことが中心に書かれていま すが、あまり早期発見ということでの根拠が多くあるわけではありません。いまのとこ ろ肺がん検診を、少なくとも一般の人に対してやるものに関して言うと、レントゲンを 1年に1回というものが多少効果がある。この根拠があるのであって、あとのものに関 しては、早期発見については今回は薄いと思います。  1回は撮ってみて、ばく露の評価をできるだけきちんとすることが、おそらくご本人 のメリットにもなると思いますので、そこのところを強調する。そうすることによっ て、経年的にずっとCTを撮ることはあまり根拠のあることではないということで、経 年的に撮るものに関しては単純写真で経過を見るほうが、いちばん収まりがいいのでは ないかと思います。 ○本田委員  CTをどうするかは、先ほどおっしゃられたじん肺との兼合いがあると思うのです。 早期発見の意味合いは、この前にも話がありましたが、昨年スウェーデンのカロリンス クのグンナイ先生がお見えになって、アスベスト関連疾患の臨床診断ということで講演 をなさった。その中で早期発見で治癒できるのは肺がんだけである、と明確に言われて おります。  確かにそのとおりで、アスベスト・ラング、石綿肺と中皮腫が早期に見つかって、ど の程度治療できるのかは、非常に難しい問題だろうと思うのです。そういう意味では、 早期発見、早期治療の本当の意味合いがあるのは肺がんなのだろうと思います。そのと きに彼が話していたのは、一定期間に経時的にCTを撮るという話もある。ところが、 これはコストベネフィットや被ばくの問題を考えると、決して推奨できるものではない と明確におっしゃっていますので、それは真実ではないかと私は思っております。 ○土屋座長  どうもありがとうございました。それでは、いまご意見がいくつかありましたが、C Tの評価の点については、次回慎重に取りまとめをしていきたいと思います。では、こ の点についてはよろしいでしょうか。  それでは、最後の議題「住民の健康不安の解消」について、先ほども事務局から相談 窓口を開いていくということですので、ご説明をお願いします。 ○労働衛生課長  資料のいちばん最後です。「石綿に係る健康相談の実施について」の前の資料7が、 尼崎市を皮切りに全国7労働局管内で順次実施というものです。健康相談ですが、基本 的に実施対象として現在想定しているのは、中皮腫及び肺がんの労災認定件数が、平成 11年度〜16年度で10件以上を有する労働局管内において実施することにしております。 神奈川労働局は、横須賀が中心になります。岐阜は岐阜羽島、大阪は泉南、兵庫は尼 崎、奈良は王寺のニチヤス、岡山が玉野、佐賀が鳥栖です。現在ここを予定しています が、実はもう1つ、呉市から造船関係で非常に相談が多いということで、呉の労働局を 介して、是非健康相談をやっていただきたいと、いままでもかなりの数の電話相談等が 来ているということで、呉を追加で健康相談の実施対象に加える予定で作業をしており ます。  実施者ですが、労働者健康福祉機構都道府県産業保健推進センターの協力の下、都道 府県労働局において行うことにしております。労災病院等に医師の派遣等をお願いして いるところです。基本的には、当面月1回実施します。石綿の専門家による講演等も、 一般の方々、あるいはかつて労働者だった方々を中心に、みんな聞けるようにと計画し ているところです。担当者は、産業保健推進センター、労災病院の医師、保健師、都道 府県労働局の職員です。これは、労災補償制度、健康管理手帳制度です。こういうもの の周知徹底にも行く予定です。  現場では、前回もお付けしたと思いますが、Q&A等を全部お配りしまして、それに よって不安を解消していただけるようにということでやっていきたいと思います。です から、次の会にはこの状況等の報告もできるのではなかろうかと思っております。以上 です。 ○土屋座長  どうもありがとうございました。いまご説明があった健康相談について、何かご意見 等ございますか。こういう工夫はどうだろうということがありましたら、どうぞ。  よろしいですか。それでは、予定した議事は以上ですが、その他何か問題がありまし たらご指摘願いたいと思います。 ○安全衛生部長  教えていただきたいのですが、何日か前に中皮腫マーカーによる診断を順天堂大学が 開始すると出ておりました。あれについて簡単に調べてみたのですが、見ている限りに おいてはかなり有効性があるのかなと思ったのですが、専門家の先生方の評価をお聞か せいただければと思います。  まだ、あまり国内ではレポートはないみたいですが、外国のレポートもあまり数はな いようです。その辺りの感度、特異度などだけ見ると非常にいいような感じがあります が、治療後のモニタリングと早期発見のためのスクリーニングの意味の2点において、 どのような評価なのかをお聞きできればと思います。 ○岸本委員  Soluble mesothelin-related protein(可溶性メソテリン関連蛋白)という意味でよ ろしいでしょうか。昨年、インターナショナルのメゾテリオーマ・インタレストグルー プの会がイタリアのブレーシアでありまして、盛り上がったのですが、名取委員と私と 3人で行きました。オーストラリアのブルース・ロビンソンらが非常にいいと、アメリ カのモンタナグループとある開発をされているということでデータを見たのですが、実 際にあれがMesotheliomaの早期発見のマーカーとして本当にいいのだろうかと、私は思 っています。確かに、あれはMesotheliomaと診断された方の治療経過を追うためにはい いと思うのです。  というのは、おそらく数値が上がるのは上皮型のMesotheliomaだと思うので、それは ある程度病勢を反映していると、私は理解しています。あれが早期発見のためのマーカ ーとしていいかというと、いまさっきの、どの人にでもみんなCTを撮るというのと全 く同じでして、本当に早期には出ないと思いますし、アレが高くなっている人は立派な 中皮腫になって、レントゲンで見ればわかる人がそういうデータなのだろうと思ってい ます。  ニューヨークのフジレビオがやっていまして、日本でどのような感触を持つかを、私 は8月3日にヒアリングをされました。日本でやっているのは、兵庫医大の中野教授の 所だけらしいので、もっと評価できるものとして、どこでも一般的に使えるためには、 やはり日本全国の多施設の検討をやる。  本当に早期のものもということになるのですが、実は早期のMesotheliomaをしている 人は非常に少ない。我々も早期のつもりで手術をした例であっても、実際には本当に早 期ではないということもわかっていますので、早期の診断には意味がないと思います。 確かに上がっていればMesotheliomaかもしれませんが、Mesotheliomaの症例の中では数 値が上がらないものがたくさんあるのではないかと、私は思っています。 ○名取委員  非常に興味深いし、早期の診断として期待をしたい、方向性のある研究だなとは思っ ています。ああいう形での腫瘍マーカーが今後調べられていくことは期待しているので すが、実際発表等を見ていますと、中皮腫以外の疾患等での上昇があるのです。そうし ますと、早期診断をしようと思うと、全員に胸腔鏡をやりましょうという話になってし まうわけです。そこで全員精密検査で見つかるかというところの確保が、ちょっと十分 ではない辺りがある。  非常に期待はできるのですが、胸腔鏡があって空振りの方がたくさん出る。もしく は、中皮腫であっても、ひょっとしたら空振りが出てしまう。それは、先ほど言われた 中皮腫の出ない例があるという辺りがあるので、総合的にはいま言われた多施設との比 較をしたり、今後もう少し一歩進んだ段階に立ったときは、本当に導入できるのかなと いう印象を持っております。 ○安全衛生部長  例えば、かなり特異度も高いデータだと思いますので、フォールスネガティブもない のかなと思ったのですが、そうでもないわけですね。いまのお話ですと、プラークがあ る人にずっとフォローしていくということで有効性を確かめるというのは、1つの方法 ですか。 ○森永委員  補足しますと、去年のブレーシアの会議で、ロビンソンらはこのマーカーをハイリス クのグループに使って、定期的にフォローして、本当にこのマーカーが有効かどうかを 検証したいので、そういう研究グループを作るから、各国のグループに声をかけて、い ま募っているという話なのです。私と岸本委員と2人で行ったときは、手を挙げよう か、挙げるにしてもそんな集団はないしな、と言って、一応参加はしなかったのです が、まだそれをきちんと検証する段階にあるということです。それを作っているメーカ ーは、いまアメリカでFDAのほうに申請をしているという話です。 ○岸本委員  したそうです。 ○森永委員  まだアクセプトはされていないですね。そういう状況であるということです。 ○土屋座長  研究段階というのが、一般的な解釈だと思うのですが、よろしいでしょうか。マーカ ーで早期に画像で見つかる前に見つけたいというのが、皆さんの願いだと思うのです が、その方面の研究は是非盛んにやる必要があるかと思います。その他、ご意見ござい ますか。よろしいでしょうか。  それでは時間になりましたので、次回の会議について事務局のほうからご説明をお願 いします。 ○労働衛生課長  次回は、8月31日の15時から17時までを予定しております。次の会議は、先ほどから 申し上げていますように、環境省との合同の専門家会議になる予定です。場所は、隣の 経済産業省別館の827号室になります。場所をチェックしていただきたいと思います。  次回の会議で、環境省、厚生労働省で行われた2回の検討会議を踏まえて、さらに議 論を進めていただきたいと思います。来週早々から現地での相談会、講演会等が順次始 まってまいります。これらの情報等も提供いたしまして、ご議論いただきたいと考えて おります。以上です。 ○土屋座長  どうもご協力ありがとうございました。それでは、特に問題がなければ、これで閉会 といたします。 照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課(内線5493)