第2章  ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果


(注)  枠内は、ネットワークから聴取した事項及びネットワークから提出された資料等により、本検証会議として認識している事実経過の概要である。


 初動体制並びに家族への脳死判定等の説明及び承諾
 平成16年1月25日16:00頃、自宅で倒れているところを発見。呼びかけにも反応なく、16:57救急車にて当該病院に搬送される。入院時、意識レベルJCS 300(GCS 3)、CT撮影にてくも膜下出血、急性水頭症と診断される。前交通動脈瘤破裂による脳室内出血を認める。瞳孔両側4mm、血圧170/80mmHg、自発呼吸あり。脳室ドレナージ術施行。
 同日22:00頃、再出血あり、自発呼吸が消失したため人工呼吸器装着。瞳孔両側6.5mmに散大、対光反射消失。
 1月26日、CT撮影上、水頭症の増悪を認める。
 1月29日16:00、家族より臓器提供意思表示カードの提示あり。
 2月4日12:10、病院は西日本支部に連絡。同日12:54、ネットワークのコーディネーター2名と都道府県コーディネーター1名が病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価等を行っている。同日14:04、病院は臨床的に脳死と診断。
 家族にコーディネーターの話を聞く意思があることを確認し、同日14:33、ネットワークのコーディネーター2名と都道府県コーディネーター1名が家族(患者の夫、長男、実妹、義弟)に面談。主治医、病棟師長同席の下、脳死判定、臓器提供の内容、手続き等につき文書を用いて説明。その際、家族構成等を十分に確認している。
 同日15:46に患者の夫が代表して脳死判定承諾書、および臓器摘出承諾書に署名捺 印。家族の総意であることを確認し、コーディネーターがこれらを受理している。

【評価】
 ○  コーディネーターは、病院から家族への臓器提供に関する説明依頼を受けた後、院内体制等の確認や一次評価等を迅速かつ適切に行っている。
 ○  家族への説明についても、コーディネーターは、脳死判定、臓器提供等の内容、手続きを記載した文書を手渡してその内容を説明し、家族から承諾書を受理している等、コーディネーターの家族への説明等は適正に行われたものと評価できる。


 ドナーの医学的検査及びレシピエントの選択等
 2月4日17:54より、心臓、肺、肝臓のレシピエント候補者の選定を開始。膵臓と腎臓についてはHLAの検査後、2月5日0:21よりレシピエント候補者の選定を開始している。また、法的脳死判定が終了した後、2月5日6:57より各臓器別にレシピエント候補者の意思確認が開始された。
 心臓については、第1候補者の移植実施施設側が心臓の移植を受諾し、心臓の移植が実施されている。
 肺については、第1候補者は、フローラン治療が奏効しているため移植実施施設側が両肺の移植を辞退。第2候補者は、ドナーの医学的理由により移植実施施設側が両肺の移植を辞退。第3候補者は、ドナーの医学的理由により両肺の移植を辞退。第4候補者は、一旦片肺の移植を受諾するも、最終的にドナーの医学的理由により 辞退。第5候補者は、第3候補者とドナーの医学的理由により両肺の移植を辞退。第6候補者は、ドナーの医学的理由により移植実施施設側が片肺の移植を辞退し、両肺の移植が見送られることとなった。
 肝臓については、第1候補者の移植実施施設側が肝臓の移植を受諾。第2候補者は候補者の家庭の事情により移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。第3候補者は、候補者がインフルエンザに罹患しており移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。第4候補者の移植実施施設側が肝臓の移植を受諾し、順位通り第1候補者に肝臓の移植が実施されている。
 膵臓・腎臓の同時移植については、第1候補者、第2候補者の移植実施施設側が膵臓・腎臓の同時移植を受諾。第5候補者(腎臓移植後膵臓移植)は、候補者の体調不良を理由に移植実施施設側が膵臓の移植を辞退。第6候補者(腎臓移植後膵臓移植)の移植実施施設側が膵臓の移植を受諾し、順位通り第1候補者に膵臓・腎臓の同時移植が実施されている。
 右腎臓については、第1候補者の移植実施施設側が腎臓の移植を一旦受諾するも、最終的にドナーの医学的理由により辞退。第2候補者は、ドナーの医学的理由により腎臓の移植を辞退。最終的に、腹部エコーにて右腎臓の著明な萎縮を認め、病理診断の結果医学的適応なしと判断し、右腎臓の移植が見送られることとなった。
 また、感染症検査やHLAの検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認されている。

【評価】
 ○  今回の事例においては、適正にレシピエントの選択手続きが行われたものと評価できる。
 ○  ドナーの医学的検査等は適正に行われている。


 脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等
 2月5日6:52に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明。その後、ネットワークのコーディネーターより、情報公開の内容等について家族の確認を得ている。
 また、同日、ネットワークのコーディネーターより家族に対して、肺および右腎臓については医学的理由にて移植が見送られることとなった旨を報告している。

【評価】
 ○  法的脳死判定終了後の家族への説明等に特に問題はなかった。


 臓器の搬送
 2月5日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料2のとおり搬送が行われた。

【評価】
 ○  臓器の搬送は適正に行われた。


5. 臓器摘出後の家族への支援
 臓器摘出手術終了後、コーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告。翌日の2月6日に病院関係者等とともにご遺体をお見送りし、その際、すべての移植手術が終了したことを家族に伝えている。
 2月7日、ネットワークのコーディネーター1名と都道府県コーディネーター1名が告別式に参列している。
 2月9日、都道府県コーディネーターより家族へ電話。心臓のレシピエントの経過を報告。経過が良いことを大変喜ばれる。
 3月1日、都道府県コーディネーターより家族へ電話にて移植後の経過を報告。厚生労働大臣からの感謝状を持参したい旨伝え、快諾される。
 3月5日、ネットワークのコーディネーター2名と都道府県コーディネーター1名がご自宅を訪問。厚生労働大臣の感謝状を手渡し、移植後の経過報告を行う。その際、家族からは「レシピエントが回復されて本当に良かった。自分たちは良いことをしたと思っている。」との発言があった。
 4月8日、心臓のレシピエントからのサンクスレターをご自宅に郵送。
 前記した連絡、報告以外にレシピエントの退院状況や近況報告等、ネットワークのコーディネーターが適宜対応と報告等を行っている。

【評価】
 ○  コーディネーターにより、ご遺体のお見送り、葬儀への参列、家族への報告やサンクスレターの送付等適切な対応がとられている。

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