第3回 障害者の把握・確認ガイドライン検討会議 議事要旨


 日時
平成17年8月29日(月) 15:30〜17:30

 場所
経済産業省別館1014号会議室(10階)
千代田区霞が関1−3−1 経済産業省別館

 出席者
 ・  委員
  稲川委員、鬼丸委員、黒木委員、小金澤委員、笹川委員、舘委員、長谷川委員、福井委員、藤井委員、藤原委員、堀江委員、松井委員、松友委員代理、松矢委員、森戸委員、輪島委員、
 ・  事務局
  鳥生高齢・障害者雇用対策部長、八田企画課長、土屋障害者雇用対策課長、今井公害等調整委員会審査官(前調査官)、深田調査官、白兼主任障害者雇用専門官
  (欠席された委員)
  松友委員、森戸委員

 議題
 (1)  ガイドラインの素案について

 資料
   プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン(案)

  《第1回障害者の把握・確認ガイドライン検討会議の配付資料より》
 参考資料1  労働者の個人情報保護に係る関係法令・指針等
 参考資料2  個人情報の保護等に関する法律
 参考資料3  雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針
 参考資料4  雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について
 参考資料5  労働者の個人情報保護の基本的な考え方について

 議事要旨
 ・  座長より、今回欠席の委員と代理出席の委員の名前が読み上げられ、事務局より人事異動のお知らせの後、今井前調査官よりガイドラインの素案について説明が行われた。その後、以下のような質疑応答があった。

  ○  委員
 資料24ページの本人同意に係る部分について「同意を求めるようなことはしないように」と書いた部分の根拠について、個人情報保護法の目的外利用にあたるからであるとか、法的な根拠を書いておいた方がいいのではないか。
 それから、36ページの別添の1中、例えば36ページの二段落目、「今般、障害者雇用促進法が改正され、平成18年4月1日から、精神障害者についても障害者雇用率制度が適用されることとなりました。」というのは、少し踏み込み過ぎであると思うので、例えば、ガイドラインの1ページ目の「はじめに」というところでは、「今般、改正により、各企業の実雇用率の算定の際に、従来の身体障害者及び知的障害者に加え精神障害者も算定対象とすることとされた」という表現の方がニュートラルなのではないかと思う。
  ●  今井前調査官
 後段の方のご指摘については、そのように整理させていただきたい。
 ご意見の前段の24ページ「また」以下については、要するに、雇用状況報告に 用いることについて、自発的な同意が得られるようにすることを確保するためで あり、その時に、他の受益的な申請とセットで同意を求めようとすると、雇用状 況報告についての同意が真に自発的なものであるのかどうかが不明確になるとい った考え方から、このような記載をしているところである。
  ○  委員
 20ページのところで、「個人を特定して照会を行うことができる場合」の中で、照会を行うことが場合によっては不適切な場合があり得るものとして挙がっている例について、障害者控除を行う書類を提出する場合、病欠・休職の時に提出された診断書、傷病手当金の請求に当たって事業主が証明を行う場合などに、精神障害者の場合病名が会社に分かるわけですけれども、その際に、当事者の立場としては、それがいわゆる掘り起こしに繋がらないかという心配をしている。このような書類等は、本人にとって利益があるから出すわけだが、そういった書面を提出した場合に、手帳の把握・確認にこれを使うというのは、本来の利用目的に反するということにならないのかということを心配している。個人情報保護法ということからは問題にならないのかも知れませんが、例えば、障害者控除や傷病手当金に関する書類については、企業に対して提出するものではないわけだが、そういうものを見て、障害者手帳を持っているかどうかということを確認するというのは、本来の利用目的に反するのではないかと思っている。
  ●  今井前調査官
 こうした情報をもとに照会を行うことについては前回も議論があったが、個人情報保護法は予め本人の同意を得ずして本来の目的外に用いてはならないという整理がされており、さらに、このガイドラインの中で、禁忌事項ということで、答えなかったことに対して、執拗に繰り返して聞いてはならないということ、あるいは、答えることを拒んだことによって、不利益な扱いをしてはならないという形になっている。
 それから、先ほど傷病手当金の申請についてのお話があったが、これは、確かに傷病手当金の申請自体は保険者に対して、つまり企業とは別な者に対して行われるのであるが、ここに書いてあるのは、保険者が申請を受ける前の段階、つまりご本人が申請するに当たって、申請書上、疾病による休暇を取得したことについて事業主がこれを証明するという欄があるので、そういった過程において事業主が知るということを指している。傷病手当金の請求に当たって、事業主が証明を行うことが必要であるということであり、申請を受けた健保組合から情報が出るといったことを前提とした記述ではない。
  ○  委員
 30ページに苦情処理体制の項目があるが、個人情報処理業者であれば、こういった苦情処理の体制をつくらないといけないということになるが、このガイドラインの中では「望まれます」という言い方で、こういった苦情処理のシステムがない場合もあり得る。そのような紛争が起きた際に、どのような形で確認をするのか。
  ●  今井前調査官
 ガイドラインの考え方としては、最初の1の1のコラムのところにあるように、基本的には事業規模に拘わらず、個人情報保護法の要請を当てはめて整理をしている。
  ○  委員
 まとめの段階なので、感想だけ述べるが、我々の気持ちとしては、ガイドラインが示され、法律も施行間近であり、ようやくここまで来たなという思いと、これからが大変だなという思いと、その二つが相半ばという状況である。私どもはこれまで、この3、4年、精神障害者の雇用率の適用の関係で議論をしてきたが、在職や採用後に精神障害者になった労働者の雇用管理のあり方についての道筋が付かないと、なかなか企業側は新規雇用に踏み切れないだろうということを言ってきた。
 その点に関しては、10ページのところで、採用前、それから採用後というようにガイドラインの中での位置付けがクリアになったとことについては、大変ありがたいと思っている。ただ、実態として、企業の雇用管理のところでは、やはり把握・確認は非常に難しい状況であると思っている。例えば雇用実態調査について、平成10年の調査では、企業内に実際に雇用されている精神障害者の数は51,000人であるという調査結果であったが、平成15年の調査では13,000人まで減っている。これは調査方法の変更によるもので、平成10年の調査では精神障害者と思われる方がどのくらいいるかという事を概括的に聞いたが、平成15年の調査ではもう少し厳密に、実際に把握しているような場合にのみ数に算定したものである。このように、実際企業にとっては把握・確認ということは難しく、殆ど把握されていないというのが実態なのではないかと思う。
 そこで、今回の法改正の審議に当たっては、平成15年の13,000人の雇用されている人たちに対する把握・確認のガイドラインというようなものができればいいと思っていたが、結果として、このガイドラインには、精神障害者だけでなく、三障害をお持ちの方についてのものというふうになったわけで、その点で、一つ大きな前進であると思っている。一方で、13,000人以外の、実際の企業の雇用管理で非常に苦労しているところの把握・確認については、先ほどご指摘があったように、それぞれの状況に応じて、やはり個別に対応していかなければならないということになった。その点、これから企業の中で、把握・確認の作業は大変難しい状況なのではないかと思っている。
  ○  委員
 今のお話の中で、精神障害者の数が13,000人に変わったというのは、これはどこに呼びかけたものなのか。
  ●  今井前調査官
 行政の方で行っている雇用実態調査についてご説明申し上げる。5年に1回、前回平成15年、その前は平成10年ということで、全国の5人以上の労働者を雇っている事業所を対象に、承認統計で、7,000ぐらいのサンプルから、身体障害者、知的障害者、精神障害者それぞれについて、障害の種別、等級、精神障害者については手帳の所持あるいは非所持の場合は三疾患のうちどれかというようなことを把握する調査である。これを事業所に対して実施し、回答していただき、あわせて対象事業所から雇用されている本人に対し個人票を蒔いて、回答いただき、直接返送していただくというものである。その中で、雇用している精神障害者数について13,000人という数字が精神障害者数として出てきたもの。
  ○  委員
 では、その事業所の人事に問い合わせたということか。
  ●  今井前調査官
 基本的には、企業のそうした雇用管理を行っている部門が回答しているということが想定される。
  ○  委員
 企業の中ではいろんな診療形態があり、例えば、診療所を有していたり健康管理室で精神科医が入ったりしているところもあることを考えると、診療所、企業内診療所の有無によっては、精神障害者の把握の数というのは随分違ってくるのではないかと思う。企業の中で、診療所に通院している就業者について、企業は大体その実態を知っていることも多いと思うが、基本的にはそのような診療所の中で診ていても、本人が自ら申し出ない限りは、このような呼びかけはしないというスタンスでよいか。
  ●  今井前調査官
 この点は前回も議論のあった医療関係者に関する守秘義務との兼ね合いについてであるが、医療関係者は本人が職場において自発的にオープンにできるような支援を、本人の状況を知った上で進めていくということになるのではないか。
  ○  委員
 採用後に発症して精神障害になった、あるいは、逆に採用前に精神障害でありながら、それをずっと明らかにしないでいた障害者が、呼びかけによってオープンにするということはあるだろうが、そうではない場合もあるだろうと考えたので。
  ○  座長
 今の委員の質問について、これから次の5年毎の雇用実態調査は、このガイドラインによって把握された数が出てくるというふうに考えてよろしいか。
  ●  今井前調査官
 障害者雇用率については、例えば1.46%というように、実雇用率の全国数値が出てくるわけだが、これは、障害者雇用促進法が各企業に対して、毎年、雇用障害者数等の報告を義務付けているからであり、納付金の申告も行うことが決められている。ガイドラインは、こうした報告・申告に当たって、企業内で障害者を把握・確認する場面に適用されることを念頭においたものである。先ほど委員がおっしゃった障害者雇用実態調査は、いわゆる統計調査なので、障害者雇用状況の報告や納付金の申告とは対象企業群もずれており、少し場面は違うかと思われるが、統計調査とはいえ、企業はこれに答えるわけであり、なぜ答えられるかというと、それは、このガイドラインに基づいて把握・確認された障害者の方の数に基づいて回答するということは想定されるところである。
  ●  障害者雇用対策課長
 補足で、一言申し上げると、雇用実態調査については統計調査に関するものであるので、様々な労務管理上の工夫、障害者との関係で、どのような問題点を抱えている等の点をお聞きしており、そちらが本来的な統計の目的であって、その際にどのような障害の、どういう等級の方が何人いらっしゃるかという情報を併せてお聞きしているものである。そこから、先ほど13,000とか51,000という数字が出ていたが、それは、実際の数を引き伸ばして、推計値で出しているものである。このように、雇用実態調査は障害者の雇用管理上のいろいろな問題点や実態を把握をすることを目的とした調査なので、これまで明確に調査の送り先として、人事担当のところということを指定して送って、お答えをいただいているということではなかったかと思うが、実態上は、中身からしても、そういうところでないと答えられない統計調査になっていたということだろうと思う。今度は平成20年に調査を実施することになるが、その際には、委員からご指摘いただいたように、労務管理を担当するセクションがその統計調査に答える時にも、同じような前提に立って、特に精神障害の方について、病状が悪化するというようなことのないよう、このガイドラインの精神、考え方を踏まえて、いろいろな工夫をしていく必要があると思われるので、次回調査の時に十分に生かさせていただきたいと思う。
  ○  委員
 企業の人事が本人の障害の有無を知っているという前提でいろいろな書類を提出させるという制度そのものについて、本来は、いつか見直していただけないかという期待を持っている。
 産業医という職種は、本人の障害に係る情報について知り得た情報についても、本人の雇用の維持と健康のためには言わない方がいいものについては、企業に対して守秘義務を厳格に守りながらやっているわけだが、そういったものを越えて、突然行政から人事に対して答えなさいという話が来ることそのものが、矛盾があるように思う。例えば、先ほどの統計の議論であれば、既に機構の方に書類を出しているにも拘わらず、もう一回統計の話が来るとなると、初めから機構に出した書類を分析すれば、ある程度、把握はできるのではないか。そのような情報も十分に活用されるようにして、毎度毎度、企業に障害者が何人いるかということを聞く制度そのものを徐々に改めていく方向にいけばよいと考えているがどうか。
  ○  障害者雇用対策課長
 今のご指摘について、毎年56人以上規模の企業及び行政機関からは雇用状況報告ということで障害者の人数や障害種別などを必ず毎年ご報告いただいているところであり、そのために、このガイドラインも必要だということになってくるわけあるが、一方で雇用実態調査は、労務管理上の様々な問題点や、あるいは、工夫といったところをお聞きするということと、企業規模が5人以上規模ということで、雇用状況報告に比べある程度幅広に、小さな企業も含めて実態を知るということで、統計調査としてやらせていただいている面があるので、委員からお話があった点については、十分に慎重に整理をしながらやっていきたいと思うが、調査そのものの必要性については、是非ご理解を賜りたいと思っている。
  ○  委員
 当事者の立場から言わせていただければ、ガイドラインの内容については、先ほどの委員の意見と同じような危惧はあるが、この程度まとめれば、一応大丈夫ではないかと思っている。
 また、来年の4月に法律が施行され、今までクローズだった人たちが手帳所持の申告をした後、本当に今まで通りの就労が保障されるのかどうかという点が、一番心配である。自分も障害を隠して就労していた時に、やはり一番怖かったのは、障害が明らかになった時に解雇されるのではないかといったところであった。ガイドラインができ、実雇用率にカウントされること自体は大変よいことだが、働く本人にとって、本当にこの制度が生かされるような運用にしていただきたい。
  ○  委員
 今後の見直しの可能性に備えて、見直し条項を置くか、あるいは、そういうものを置かない場合でても、何らかの形で見直しが可能なように、また先程来示されているようなご懸念があるのであれば、直していかなければいけないということを、どこかで確認しておいた方がいいのではないか。
  ●  今井前調査官
 実際に精神障害者の雇用率適用というのは来年4月から始まるわけであるが、ご指摘のように、実際に適用した状況をみて、何か不都合とか、補足すべき点等があれば、見直していく必要があるのではないかと思う。そうした際には、また、こうした関係者の方々の話を聴きながらやっていく必要があるのではないかということで、ただ今の発言は記憶させていただきたい。

 ・  座長より、検討会の開催は今回で最後とし、報告書については座長一任で取りまとめることとしてはどうか、という提案があり、各委員が了承した。今後の予定について、9月15日の労働政策審議会障害者雇用分科会に報告した後、職業安定局長通知として発出し、周知用パンフレット等を作成することとされ、その後、高齢・障害者雇用対策部長から挨拶があった。
(以上)


照会先
 職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者対策課雇用促進係
 TEL 03(5253)1111(内線5855)

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