第2回 障害者の把握・確認ガイドライン検討会議 議事要旨


 日時
平成17年8月3日(水) 12:30〜14:30

 場所
厚生労働省内 共用第8会議室6階)
千代田区霞が関1−2−2 中央合同庁舎第5号館

 出席者
 ・  委員
  稲川委員、鬼丸委員、黒木委員、小金澤委員、笹川委員、舘委員、長谷川委員、福井委員、藤井委員、藤原委員、堀江委員、松井委員、松友委員代理、松矢委員、森戸委員、輪島委員、
 ・  事務局
  金子高齢・障害者雇用対策部長、宮川企画課長、土屋障害者雇用対策課長、今井調査官、白兼主任障害者雇用専門官
  (欠席された委員)
  松友委員

 議題
 (1)  関係者からのヒアリング
  ○  東京障害者職業センター多摩支所 森誠一支所長からのご説明
  ○  社会福祉法人JHC板橋会 障害者就業・生活支援センターワーキング・トライ 八木原律子センター長からのご説明
 (2)  ガイドラインの論点について

 資料
  資料1  森支所長御説明資料
  資料2  八木原センター長御説明資料
  資料3  プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン構成(案)

  《第1回障害者の把握・確認ガイドライン検討会議の配付資料より》
 参考資料1  障害者雇用納付金の申告書の添付書類(抜粋)
 参考資料2  労働者の個人情報保護に係る関係法令・指針等
 参考資料3  個人情報の保護等に関する法律
 参考資料4  雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針
 参考資料5  雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について
 参考資料6  労働者の個人情報保護の基本的な考え方について

 議事要旨
 ・  座長より、前回欠席の委員と今回代理出席の委員の紹介が行われた後、前回の議論の中で委員から指摘のあった納付金申告書の記載事項について、調査官から説明が行われた。

  ●  調査官
 前回ご指摘いただいたのは、特に身体障害者の障害の種類について、かなり細かいデータをこれで取っており、納付金事業の事務に当たって、このような細かい情報が本当に必要なのかどうか検討すべきではないかということであった。その後、この納付金制度の運営を行っている独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構とも相談・検討を行い、ご指摘のあったこの様式の中で、身体障害者の障害の種類の記載欄については、廃止する方向で検討を進めている。
 この欄について、これまでこういった記載を求めていた背景としては、医師による判定で障害認定を行っている場合に、認定が正しく行われているかどうかという点を確認する場合や、障害等級の記載ミスのチェック等ができるといったような趣旨であったのであるが、実際のところは、そのようなケースは配慮する必要は少ないというような事情もあるようで、こうしたことも踏まえ、この欄を廃止することを検討しているもの。これにより、雇用状況報告や納付金関係の資料として国側が受け取る個人データは、三障害の区別、重度かそうでないか又は手帳の等級といったことまでということになる。
  ○  座長
 前回の委員のご指摘を受けて様式を変えるということ。よろしいか。
 他になければ、議事に移りたい。
 今回は、関係者からのヒアリングを行うこととなっているが、まず東京障害者職業センター多摩支所の森支所長様にお願いしたい。

 ・  森支所長から、障害を明らかにせずに就職している障害者の事例及びその背景、障 害を明らかにして就職する障害者に対する援助、在職障害者に対する掘り起こしや不利益取扱いの事例等についての説明が行われた。
 ・  森支所長の説明に対して、以下のような質疑が行われた。

  ○  委員
 精神障害者の相談は全体の2割くらいということだが、これはハローワークからの紹介で来るということか。どのような事例があるのか。また、病院から職業センターに行くようにと言われた例などもあるのか。
  ○  森支所長
 やはりハローワークの職業相談の中で、離職の経験が多いとか、具体的に今後の就職に困っているといった場合に、職業センターを紹介されて来た障害者に対して、支援を行うという流れはあると思う。
  ○  委員
 それはその人が障害があるという事をハローワークではっきり話した上での事か。
  ○  森支所長
 ハローワークについては、そのようなケースが殆どである。既に登録もされていて、主治医の意見書等や手帳等で障害者であることの確認もされている方が殆ど。
  ○  委員
 オープンにすることと、手帳を取得するということはイコールではないということか。また、今までの経験で、オープンにする場合、誰に打ち明けるか等、実態としてどのような形なのか。さらに、精神の場合、オープンにしてもいいけれど、手帳は取りたくないという場合に、センターとしてはどのように対処していったらいいと考えているのか。
  ○  森支所長
 オープンにすることと手帳取得がイコールかということについては、今の制度上でいえば、主治医の意見書の確認があればいろいろな雇用支援制度が活用できるので、あえてご本人が望まない限りは、手帳を取得されないケースもあると思う。
 会社への告知の実態の部分については、人事の方や職場の上司の一部だけにお話しするということが多いのではないか。また、告知をする人の範囲が徐々に広がっていくというケースや、最初はクローズで入ったものの、その後オープンで働いている場合も多い。
 また、オープンにしても手帳取得につながらない事への対応については、今回の法改正により精神障害者である短時間労働者の方々が0.5人として実雇用率にカウントされることについて、センターに来られる方の中でも短時間で働きたいという希望を持たれている方が多いので、これを障害者の方でもメリットというふうに感じれば、手帳の取得も増えるのではないかと思う。
  ○  委員
 手帳を取得するとデメリットになるというのは、どのようなことになるのか。
  ○  森支所長
 デメリットの部分としてまず大きいのは、やはり面接段階で断られてしまうということ。
 また、会社に伝えず働いているということに対する本人の不安感が非常に強いのではないか。いつか誰かに知られるのではないかという不安や、調子が悪い時には急遽通院しなければいけなかったり、休んだりしなければいけないような状況もあるかと思う。
  ○  座長
 では次に、社会福祉法人JHC板橋会障害者就業・生活支援センターワークトライのセンター長の八木原律子様からお願いする。

 ・  八木原センター長から、就労支援の事例等について説明が行われた。
 ・  八木原センター長の説明に対して、以下のような質疑が行われた。

  ○  委員
 オープンにしていれば、手帳の取得にすぐに結びつくのか。
  ○  八木原センター長
 今までは雇用率にカウントされていなかったということもあって、手帳のメリットというのはあまり就職には関係はなかった。どちらかというと、他の生活支援の部分での他の障害の方たちと同じようなサービスが得られるかどうかということが大きなポイントだったと思う。オープンで就職していても、手帳を取るということは任意なので、手帳取得のメリットが今後増えてくれば、こちらの方でも勧めるということはある。
  ○  委員
 職場の一定の方にはオープンにしていても、それを前提にして、手帳を取ったらどうですかと言って、その時、自分は手帳を取るほどではないと思って拒否する。そういう場合も含んでいるのか。
  ○  八木原センター長
 手帳を取得していない障害者に対して、企業の側から手帳の取得を要求するといったことはありうると思う。
  ○  委員
 例えば、手帳を持っていることについて、相手によって知られてもよい人とよくない人がいるが、利用のされ方についても、障害者が認める場合と拒否する場合があるのか。
  ○  八木原センター長
 現在はないが、今後はありうると思う。そうした時に、今後は手帳取得については、こちらも勧めていく可能性は十分にあるし、企業の方としても、それはあるかと思う。ただし、その時に、どういった契約を取るかと言ったことの中に、こういった項目については手帳を利用させていただくということが、企業との間できちんと契約を交わされていることが望ましい。

 ・  事務局から資料3に基づき説明を行った。
 ・  資料3の説明に対して、以下のような質疑があった。

  ○  委員
 論点2の根拠として用いることが適当な情報、不適切な情報は具体例が1〜5とあるが、この中の1の所得税の障害者控除については自分が障害者であれば所得税の障害者控除を目的として申告しているものですから、それを法定雇用率等、他の利用目的では利用して欲しくない。2、3に関しても同様。4、5は適切だと思う。
  ○  委員
 所得税の障害者控除については、障害者控除に関する書類は必ずしも企業に対して提出する必要はなく、後で確定申告の時に自分で税務署に直接提出することもできるため、それを企業の方に出しているということは、職場において障害者として取り扱われることを前提として出しているのだという考え方もあるが、障害者としては所得税の控除を受けるため仕方なく企業に提出しているという事も考えられるので、論点2の特定した呼びかけが適切な情報については、かなり厳しく限定した方がいいように思う。
  ○  委員
 特にこの例2の、病欠休職の際に提出された医師の診断書というふうに書いてあるが、問題は、そういった休職、復職を繰り返して、例えば、専門医の目から見て、明らかに障害があるために就業能力が低下しており、むしろ、障害者として扱った方が本人にとってはプラスになるという場合もあると思われるが、そういう場合に、誰がどこでどう判断して、その障害者手帳を取得する方向に持っていけるか、ここは非常に難しい。例えば外部の主治医がそういう判断をするというのであれば問題ないと思うが、例えば、企業の中の診療所の医師や産業医が行う場合にあっては、非常に慎重にやらないと、かなりプライバシーに踏み込んでしまう問題が生じるのではないかと思う。
  ○  委員
 企業側としても、特定個人に対して呼びかける際に、どういうことをしないとプライバシーに配慮したことにならないかという点が不明確であるので、実態としては、広く全員に呼びかける方法ぐらいしかないのではないかと考えている。
  ●  調査官
 論点の2の特定の個人の方についてお尋ねをすることが適切な場合の例については、これが適切かどうかということを是非ご議論いただきたいと考えている。このような情報を元に、手帳所持の有無について尋ね、その上で改めて、それを元に雇用状況報告に使ってよいかを尋ねていくということであるが、個人情報保護法においても、本人の同意を得ずして、個人情報を目的外に用いてはならないと規定されているところである。このようにお尋ねすることが、個人情報保護法でいうところの、予め本人の同意を得る行為の一環として考えることができるかどうか、もしそういう解釈が可能であれば、そのお尋ねをする上でのきっかけとして、このような例が考えられるのではないか、という視点から、例を挙げているものである。
  ○  委員
 今の段階で特定して尋ねて良い場合を広く解釈すると、それが公表された場合に、さらにその幅が広がる恐れがある。当事者の立場に立つと、個人情報保護法云々以前の問題であり、また、世の中には様々な企業があるといった面も考慮し、この場では、厳密に、厳格に運用して欲しいという方向でガイドラインが取りまとめられることを希望する。
  ○  委員
 非常に難しい問題だが、産業医の立場から言えば、障害者が手帳を持っていたほうが雇用の継続の可能性が広がると思えば、産業医としては対象者に対して、手帳を取得してはどうかというアドバイスをするし、そうでなければしない。そういう観点からすると、産業医が本人に対して手帳所持の有無を尋ねることもあるかと思われるが、産業医であれば、これは当然医師としての守秘義務や、産業医の分野での職業倫理という問題もあるので、本人が望まない、又は本人に不利益になるような事業主の提供の仕方はしないので、信頼関係があるのであれば、健康に関わる情報については、なるべく産業医には申告していただき、適切な健康管理と雇用の継続のために使うというような運用ができればいいと思う。
 また、論点3の例1で、障害者雇用状況報告のために取得した情報を健康管理に用いるのは、個人情報保護法上は利用目的の達成の範囲を越えているということだが、実際の運用上は、産業医であれば、むしろ、実はこの方は障害をお持ちなんですということを知っておかないと、企業に対して就業上の措置をアドバイスする際に、少し誤った解釈を伝えてしまう危険もある。もし企業側が障害者であるということを把握しているのであれば、産業医の立場からは、そういったものも本人の健康管理のために使えるようにしていただきたい。
  ●  調査官
 この資料を作った際に念頭に置いていたのは、「尋ねる根拠」の「尋ねる」の主体としては、会社の中で人事部門等で障害者雇用促進法の雇用状況報告をハローワークに出すために、社内で取りまとめて作っている者を想定をしている。本人の同意を得ずに情報を使用してはいけないという事もあるので、健康管理のためにも使っていいかどうかということも、同意を求める際に、併せて聞いておく必要があるかもしれない。とりあえず、ここで、例えば尋ねるとか、把握をする時に画一的に呼びかけるといった時もそうだが、それをやっているのは、例えば大きな企業の中でも、そういう雇用状況報告を担当している部署の人間ということを想定している。情報の保管管理についても、担当するのはそのような人間に限定し、情報を漏らしてはならない旨を盛り込むことを想定している。
  ○  委員
 事業者側が労働者に尋ねるということになると、事実上それに答えることが業務命令であるかのようにも受け取れるが、そうではなく、答えるかどうかについては本人の自由であると考えてよいか。
  ●  調査官
 申告又は手帳取得の強要の禁止や、不利益取扱いの禁止は禁忌事項に入れるものと考えているが、そうした要請を尋ね方の段階においても反映させる方向で考えるならば、まさにご指摘のとおりではないかと思う。
  ○  委員
 禁忌事項に違反した場合でも、企業はそれほど大きなペナルティーがないのではないか。例えば、その労働者が自分が同意をしないのに使われてしまったとしても、労働者は雇用してもらいたいという事を第一に考えるので、情報を乱用された場合であっても企業に対して文句を言う方法が少ないのではないか。
 また、小規模の企業で何とか助成金が欲しいと思うようなところは、就職する時の雇用契約書の中に、片っ端から、いわゆる約款のような形で、労働者に個人情報を利用していいというような署名をさせる等により、予め同意を得てしまう可能性が高いのではないか。
 現に個人情報保護法ができてから、これを逆手にとって、その個人情報の使用目的について事前に同意を取ってしまうようなところもあるので、ガイドラインを悪用すると、そういう形に使われる可能性がある。だから、ガイドラインを作る時には、予めそういう、包括的に同意を得てしまうようなやり方を厳禁にするよう規定を置いてはどうか。
  ○  委員
 確認だが、この把握・確認というのは、手帳を持っているかどうかという点についてなのか、それとも、障害の内容等についても答えねばならないのか。
  ●  調査官
 精神障害者の場合で申し上げると、障害者雇用状況報告の例でいうと、雇用率の対象かどうか、すなわち、手帳を持っておられるかをお尋ねするということ。身体障害者、知的障害者については手帳以外に指定医による認定ということもあるが、いずれにしろ、雇用率の対象となるものかどうかを尋ねることとなる。
  ○  委員
 このガイドラインを発出する場合の名宛人は事業主ということだが、自社の産業医に対して、情報を出せとは言えないけれども、そこで先ほどの話し合いのようなことを行ってくださいというようなことをガイドラインに盛り込むということはできるのではないかと思う。また、本人の同意を得ずに雇用状況報告等に用いた場合に、法的に想定される事態についても書いておいた方がいいと思う。また、障害を持った労働者の方が障害者であることを申し出たとして、労働者にはどういうメリットがあるのか。
  ○  委員
 実際に働いている人で、休みがちであったり、労働能力が落ちてしまっている人などで、解雇されるのではないかという人がいると思うが、そういう人を何とか引き留めることができるので、本人たちが障害者であるということを申告してくるケースはあるのではないかと思う。
  ○  委員
 少し事務局で整理をして欲しいが、そもそもこの障害者雇用促進法の中で、精神障害者も実雇用率に入れる際、障害者手帳を持っていることをもってカウントするというのが法律のそもそもの体系であるが、その時に、国会審議の際にも指摘があったところであるが、新しく雇い入れる人たちだけではなく、既に働いていて精神障害になった人も含めることになったもの。従って、それが掘り起こしにならないようにするために、ガイドラインで必要な事項を定めるということが流れとなっていたかと思う。
 従って、まず新規雇用の場合には、障害者が手帳を持っているかどうかについては企業が確認すればよいが、問題は、働いていて精神障害になった人の把握の場合にどうするかという点である。論点2の(1)については賛成意見が大勢を占めているであるが、(2)については、ヒアリングの内容や先ほどからの議論を聞いていても、なかなか難しい。
 また、例えば所得税の障害者控除を行うために提出された書類や病欠とか休職の際に提出した医師の診断書、傷病手当金の請求をその他の目的に使ってよいのかどうか。この点は法律的に、個人情報保護法の関係から、そういうことができるのかどうかという事を知りたい。
 また、もし仮に、本人の同意があったということでそれが法律的に可能であったとしても、やはり例1、例2、例3というのは、結構問題があるのではないかというのが現在の大勢の意見である。その理由としては、本当は自分はただ税の控除を行うために出したのが、なぜ雇用状況報告のために使われるのかいうことで、かえって症状が悪化するとか、仕事をしようという意欲が失われてくるとかということになっていくのではないかといった懸念があるのではないかと思う。
 私もこの例1、例2、例3というのは、一つは法律的にどうなのかということ、もう一つは、企業は、もしこういうふうに書けば、これならいいのかということになり、今後この手法が一般化していってしまうのではないか。従って、ここはかなり困難があるのではないかと思う。
  ○  委員
 今の例2と3の診断書と傷病手当の件だが、これが適切かどうかは時期によると思う。病欠・休業が長期に及んでいる者に関しては、やっぱり、本人もなかなか復職できないで苦しんでいる場合には、障害として認めてあげた方がメリットがあるという場合もあると思う。これを闇雲に使うというのは反対であるが、やはりあくまでもその時期と本人の状態によるのではないかと思う。
  ○  委員
 手帳を取得することが、本当に企業だけにしかメリットがないものなのか。手帳を取得したことで、そのまま継続雇用されるということがあるということも、認識しておく必要があると思う。
 また、先ほど企業が禁忌事項に違反した場合にどうかという発言があったが、ガイドラインで罰則を課すなどということは無理なのではないか。もし使用者に対する何らかの罰則を付けるとすると、法律のところで付けないと無理なのではないかという気がする。
 また、ガイドラインを作る時には、やっぱり手帳取得のメリットをもう少し書いて示すことも必要なのではないかと思う。
  ○  委員
 ご質問があったので申し上げておくと、特に論点2の問題で、個人情報保護法上どういう問題があるかということになれば、それは解釈の問題で、この場合は利用の目的が本人の同意を取ることであるという位置づけだと思うので、法的に無理かと言われれば、そういうわけではないと思う。
 それから、先ほど委員もおっしゃったように、そもそも目的は、予め書類かどこかで明示していたり、同意を契約で取っておけば、法律上の問題はなくなるので、ここの論点2の例1から例3を個人情報保護法の問題としてだけ捉えても、それほど生産的ではない。要するに、ここの論点は、特定して申告を呼びかけるということの是非であるので、その場合、特定して申告を呼びかけた場合に、今ご意見を伺っていると、雇用継続の可能性が高まるとか、時期によっては何らかのメリットがあるのではないか、また新しい制度が企業にとってもメリットがあり、新たな雇用が創造されるとしたら、理解も深まり偏見が除かれるという意味でも、制度が動き始めればメリットが出てくるという捉え方もあるかも知れない。
 しかし、先ほど既にご意見が出たように、制度として認めてしまえば悪用される可能性があるという点を中心に考えるならば、この論点2の特定して申告を呼びかけるのはどうかというところに議論を絞るべきであろうと思う。
 それから、先ほどのガイドラインと制裁の関係について、法的にはガイドラインにいわゆる制裁を課すということはできない。ただ、事実としての情報提供という形で、公表ができるかという議論はあるが、この種のガイドラインでそれを正面から根拠にしてできるかというと、なかなか難しい。それはおっしゃるとおり法律のレベルの問題ということである。
  ○  委員
 今の議論は精神障害者についても実雇用率にカウントするということを契機にしているので、それを中心とした議論になっているかと思うが、せっかく実雇用率にカウントすることになったにも関わらず、個人情報保護法に拘る余り、就労が増えていかないのではないかという点を心配せざるを得ないのではないかという感想を持った。障害者全体から見れば、例えば知的障害者や、身体障害者の中でも聴覚・視覚や肢体不自由など、クローズでは生きていけない人たちが多い。そういう面で、精神障害者については立ち遅れ・理解不足ということはあるかも知れないが、障害者にとっては障害者控除などで働くことにメリットがあり、障害者雇用に前向きな企業にとってはそのような障害者を雇用することが実雇用率算定の上でメリットになるというふうに、企業と障害者の双方がお互いにプラスになることができるように、大いにオープン社会を目指して双方で頑張っていくべきであると思う。
  ○  座長
 時間がきているのでここで意見交換を終わりにし、事務局に取りまとめをお願いする。
  ●  調査官
 ご指摘いただいたご意見を踏まえ、次回ガイドラインの素案を提示したい。ただ今の各委員のご意見の中でご質問にわたる部分についてお答えする。
 産業医と事業主の連携の必要については、産業医とその健康診断に従事する者については守秘義務があり、また、医師についてはもともと医師法あるいは刑法上の業務上の取扱い、あるいは保助看法等の守秘義務との関係があるので、その点には配慮する必要があると思う。一方労働安全衛生法でも、事業主は、健康診断の結果によっては産業医の意見を聞きながら労働者に対して健康上の配慮を行う義務というものもある。
 ただ、本来の趣旨に鑑みれば、もともと手帳を取得するというようなことは、本人サイドの主治医から勧めるというのが一番最も穏当であるという御指摘もあり、そうした点を踏まえ、私共も、精神障害者の雇用対策とメンタルヘルスとの連携を心がけているところである。例えば、安全衛生部の方で、復職支援のプログラムを出しているが、特に重度化、難治化した場合には、企業と障害者職業センターあるいは主治医といった外部資源との連携を図る中で、主治医の側から、本人の職場の状況を踏まえた適切な助言を行うことができる環境を作っていくという観点も踏まえた支援も実施している。
 また、罰則については、ガイドラインに盛り込まれる事項の中に、例えば、個人情報の目的外の利用や、守秘義務違反といった法令に違反する事項もあると思うので、それについて、このような場合にはこのような罰則があるということを書いておくということも一つの方法だと思う。また、このように取り扱うことが望ましいという事例はもちろん、直接罰則に関わる事項については整理をして明記しておく必要があろうかと思う。これは、委員のお話にもあったように、ガイドライン自体の効力というのではなくて、もともと拠ってたつ個人情報保護法をはじめとする関連法令の要請事項であるが、禁止事項に触れることについては明記しておかなければいけないのではないかと考えている。
 また、ヒアリングの中で浮き彫りになってきた事柄であるが、障害者に手帳を取得させるというのは、企業にとってはメリットがあり、ご本人にとっても、先ほど会社の中でオープンになることで障害者にとってもメリットがあるというお話もあったが、働き続けることの前提として、やはり職場の中でオープンになっていくということが障害者の就労環境の大事な前提のようである。これについては、雇用率の適用について検討した研究会でもそのような議論があった。今回のガイドラインの中でも、そもそも手帳を取得することのメリットから始まり、例えばジョブコーチあるいは助成金といった公的な支援策や、社内独自の支援策についても紹介し、オープンになることによってはじめてそれらを享受できるといったことも、周知していくことが望ましい。そういうことをガイドラインの中に入れておくことも一つのアプローチなのではないかと思っている。
  ○  座長
 これまでの検討会議の議論を踏まえ、次回はガイドラインの素案をお示ししたい。

(以上)


照会先
 職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者対策課雇用促進係
 TEL 03(5253)1111(内線5855)

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