05/07/29 労働政策審議会職業安定分科会第33回議事録           第33回 労働政策審議会 職業安定分科会 1 日時  平成17年7月29日(金)18:00〜19:30 2 場所  厚生労働省職業安定局第1会議室 3 出席者 委員 (公益代表)            諏訪分科会長、大橋委員、清家委員           (労働者代表)            徳茂委員、成瀬委員、吉澤委員、須賀委員代理(長谷川氏)           (使用者代表)            石井委員、石原委員、紀陸委員、成宮委員、山極委員、            尾崎委員代理(深澤氏)       事務局  青木職業安定局長、高橋職業安定局次長、大槻審議官、            岡崎総務課長、勝田雇用政策課長、生田雇用保険課長、            吉永建設・港湾対策室長 4 議題   雇用政策研究会の報告について、平成16年度の雇用保険三事業による事業の評価   について、改正建設労働者雇用改善法に係る政省令等の検討について 5 議事内容 ○諏訪分科会長  ただいまから「第33回職業安定分科会」を開会します。議事に先立ち、委員の出欠 状況ですが、本日欠席の委員は公益代表で大沢委員、小幡委員、椎谷委員、白木委員で す。労働者代表では池田委員、市川委員、掘委員、須賀委員です。須賀委員は代理出席 として長谷川さんがご出席です。使用者側の欠席は川口委員、尾崎委員です。尾崎委員 には代理出席で深澤さんがご出席です。なお、徳茂委員は少し遅れてご出席という連絡 をいただいています。                 (出欠状況報告)  議事に入ります。最初の議題は、「雇用政策研究会の報告について」です。この件に ついては昨年来、「雇用政策研究会」において議論され、先ごろ取りまとまったもので す。その内容について、事務局からご説明をお願いしたいと思います。 ○雇用政策課長  「雇用政策研究会」についてご報告申し上げたいと思います。今度の件については、 昨年の10月以来研究会を開催してきました。去る7月13日において最後の研究会を行 い、座長一任の上で取りまとめられ、7月27日、一昨日ですが発表いたしました。  内容についてご説明申し上げたいと思います。資料1の「人口減少下における雇用・ 労働政策の課題(概要)」と書いてある紙でご説明申し上げたいと思います。  まず、今回の報告については現状についての認識・分析を行っています。現状につい て、このペーパーのいちばん上の部分ですが、企業行動等の変化が出てきている。例え ば、短期的利益を重視した経営姿勢が強まっていたり、あるいは外部人材を活用し、 「正社員」の比率が低下したり、教育訓練投資が減少するといった形での企業行動の変 化が出てきている。  一方、労働者の意識の変化のほうも出てきています。例えば働くことを希望する女性 が増えていたり、依然として「正社員」を希望する者が多いものの、一方で多様な働き 方を希望する方も出てきている。さらに、仕事と生活の両立への希望といったものが増 えている。これらのような企業行動と労働者の意識の変化、それぞれが必ずしも一致し ていないためにいろいろな形での「ずれ」が生じている。  「ずれ」が生じてどうなっているかというと、右側に出ているように、1つは景気の 回復に伴い雇用情勢全体としては改善している。企業の収益も改善している。一方でず れの部分がもとになり、例えば若年者・女性・高齢者などが就業機会の面等でさまざま な問題が起こってきていたり、「正社員」以外の働き方を選択した場合の雇用が不安定 であるといった問題が起こっている。あるいは、教育訓練投資の減少等に伴い、能力開 発の機会が減少したり、格差の拡大、これは処遇の面だけではなく労働時間等、さまざ まな問題がございます。こういったものの格差の拡大や二極化が見られる。そういった 問題の中で、仕事と生活の両立が困難になっているという形で、労働者の意欲や能力が 十分に活かされないといった現状になっているのではないかというように、まず現状を 捉えています。  この現状をもとに、今後の四半世紀がどのようになっていくかということで、2030年 までの労働力の需給の推計を行っています。その前提として、2007年には我が国社会は 人口減少になってまいります。「2007年問題」と言われるように団塊の世代が高齢化 し、次第に引退の過程に入ってくる。先ほど申し上げたような、労働者の意欲と能力が 十分に活かされない現状が、このまま続いてしまった場合を考えますと、1つは労働市 場に出てきて社会を支えてくれる者が減少していくのではないか。もう1つは、そうい った人々の能力が十分に開発されない等のことがあると経済社会を支える人材の質の低 下といったものが起こってくるのではないか。また、二極化等で格差が拡大すると、将 来に希望が持てないということで働く意欲がなくなったり、いろいろな面での社会の不 安定化が加速していくのではないか。さらに、仕事と家庭生活の両立という話が出てく ると、経済的な理由、あるいは子育ての時間が確保されないということで少子化が進行 するのではないか。これらを通じ、労働力供給の大幅な減少や生産性の低下といった問 題が起こって、経済社会が停滞するのではないかというケースを想定しています。  そういった停滞を避けるためにどうするか。すべての人が意欲と能力を発揮できるよ うな就業機会を持ち、能力を高める機会を持ち、安心・公正に働ける。さらに仕事だけ でなく、仕事以外、労働以外の生活も充実できるような形で人々が働きやすい、能力・ 意欲を発揮することができる社会にする。なおかつ、一方でマクロの経済政策が適切に 運営されれば、人口減少下においても労働力供給があまり減ることなく、生産性の向上 を図ることによって人口減少下においても活力ある経済社会を維持することができるの ではないかと考えています。  ここの部分、四半世紀の展望の需給推計が次の頁に簡単に出ています。2004年、これ が昨年の状況ですが、労働力人口は6,642万人となっています。このまま、労働市場の 参加が進まないケースというのは、現在と同じような性別・年齢別の労働力率で推移し た場合ということですが、このままでいくと2015年には約410万人の減少で6,237万人に なってしまうのではないかと見ています。さらに、2030年に同じ形で計算すると5,597 万人、1,000万人以上の減少というように見ることができます。  一方、先ほど言ったような労働市場への参加を進めるような各種対策を講ずることに より、2015年ですと410万人減というのは先ほどの労働市場への参加が進まないケース よりも300万人増やすことができる。したがって6,535万人、約110万人の減に止めるこ とができるのではないかと見ています。同じように2030年についても、各種対策により 500万人以上の増が可能ではないか。最終的に6,109万人という形で、約530万人の減少 に止めることができるのではないかと見ています。  確かに、どのようなケースを捉えても減少はいたしますが、特に労働市場への参加が 進むケースについて、人々の意欲や能力が活かされることによって生産性の向上が現在 以上に図られることを前提に考えると、労働市場への参加が進むケースでは全体のマク ロの成長率を2015年、あるいは2030年まで、いずれのケースにおいても1%台の後半程 度に維持することが可能ではないかと思っています。  これを実現するためにどうするか、前の頁をご覧ください。2030年まで一応、労働力 需給については展望いたしましたが、このために行うべき施策については今後10年間に 行うべきものを検討しました。なぜ、今後10年間かということですが、先ほどお話しま したように団塊の世代は2007年に60歳を迎えます。団塊の世代の方々が10年後の2015年 にはすべて65歳以上になって、引退の年齢を迎えてくる。今後の10年間に手を打って、 本格的な高齢社会に備えることが必要であろうということで、「今後10年の対策が鍵で はないか」というご提言をいただいています。このために、1つはすべての人々が高い 意欲と能力を持ってさまざまな就業機会に挑戦できるための、言わばこの部分は供給側 の関係の施策です。ここが1つです。  もう一方で、そうやって挑戦してくれる人々を言わば確保・育成して活用していこ う。言わば需要サイドの施策です。そして、さらに、それを支えるための社会的なシス テム・ルールを作っていかなければいけないのではないか。この中には、多様な就業形 態に対応した労働関係法制や社会保険の整備、働き方にかかわらない処遇のルールの確 立、あるいはそういった人々の挑戦と企業との活用を結びつける労働力需給調整の機能 の強化も含まれています。  この中で1つご説明申し上げておきたいのは三角形の左側、「すべての人々が高い意 欲と能力を持って様々な就業機会へ挑戦できるための支援」というところです。1つ目 のポツ、「若者・女性・高齢者をはじめ人々のライフステージの各段階に応じた就業機 会の各段階」ということで、それぞれの世代別に考えていかなくてはいけないと考えて います。その中でカッコのところ、(就業を重視した施策の展開)と書いています。こ れまで、どちらかというと雇用政策、雇用対策の際には、失業者をいかに減らすかを中 心に考えてきました。ただ、今後の人口減少の社会の中で、失業者を減らすということ はもちろん重要ですが、それと併せて、いかに実際に労働の世界で就業してくださる方 を増やしていくか。あるいは、そういった皆さんが就業するのかしないのかについて、 選ぶ上でのバリアをなくすことにより参加しやすくして、気持良く自分で選択して働い ていただけるということだと思いますが、それをどう実現していくのかということで、 就業率を重視すべきではないか、ということを併せてご報告の中で提言いただいていま す。  こういった3つの見方の中で、具体的にどのような施策を展開していくかについては 10の政策分野、ないし対象でご提言をいただいています。3枚目でご説明させていただ きたいと思います。「政策対象・分野」ということで、まず最初はどちらかというとタ ーゲットとなるグループ、対象別の部分です。1つは最近でもいちばん関心の高い「若 者への就業支援」です。若者の就業支援については、新卒採用に限定されない採用機会 の拡大の取組、フリーター問題、学校・地域・企業との連携、若者向けの能力開発、心 理面も含めた対策等についてのご提言をいただいています。  2つ目が「女性への就業支援への就業支援」の問題です。実は私どもが需給の推計を 行った際にも、女性の労働市場への参加ということについて、例えば女性が管理職にな る比率が高まると均等に処遇されて活躍できるような環境、子育ての部分が重要です。 そういった点で、女性が活躍する領域を拡大するための機会均等施策の強化、妊娠・出 産しても働き続けることができたり、あるいは子育てとの両立を可能とするような環境 の整備など、出産・子育てによって離職した方の再就職・再就業の支援強化といった点 をご提言いただいています。  3つ目は「高齢者の就業支援」です。高齢者については皆様ご案内のとおり、既に65 歳までの雇用継続制度については手を打ったところです。さらに60歳代後半層、さらに は働く意欲がある限り働き続けることができるような社会の構築に向けた施策、という ことで何点かいただいています。  4つ目が「福祉から就労へ」です。この分野については障害者、あるいは生活保護の 受給者、一人親家庭等に関するご提言をいただいています。  5つ目は「地域における雇用創出への支援」の問題です。最近、人々が地域間の移動 を行う中で地域における雇用の機会が十分にないと、こういった人材が活用されないま まに終わってしまうことになります。そういった意味で、地域における雇用の創出を図 っていくための施策についてのご提言をいただいています。なお、その中で新しい話と しては、3つ目の○のところに、団塊の世代等引退された方々が地方へ移住することに よって、それによって生活サービス関係の雇用の場等を作り出すことができるのではな いかというご提言をいただいています。  6つ目以降は、今度はどちらかというと政策分野別の対策です。1つは「職業能力開 発」の関係です。職業能力開発は特に少ない労働力人口の中、能力を高めることによっ て生産性の向上を図るという観点に関して重要です。若年・壮年・高齢といった世代の 特性に応じた能力開発、それから企業から求められる能力に関しての情報提供、この部 分は適切な能力開発をしていただくということになりますが、それと能力評価制度の整 備。それから、介護サービス等の高齢化の中で求められる人材分野であるとか、省力化 ・生産性の向上に資する技術に対応できる人材の育成等についてのご提言をいただいて います。  7番目は「外国人労働者」の問題です。この部分については基本的に世界でも通用す るような、高度な専門的な知識・技術を有する外国人の方々の積極的な受入れを促進す るとともに、その予備群である、留学生の就職支援について見直し・拡充を行ってい く。あるいは、日系人労働者の定住化等に伴う問題の対応、それ以外の問題について は、基本的には我が国の雇用との関係での検討を進める必要があるという形で結んでい ます。  8つ目は「安心・公正な労働」です。どちらかというと労働基準、労使関係を含んだ 問題です。就業形態の多様化に対応した労働契約法制等の条件整備の問題、あるいは多 様な就業等により労使紛争等が増えていますが、労使のコミュニケーションの促進やト ラブルの予防解決の取組、パート、派遣、有期雇用など、働き方にかかわらない処遇の 均衡の問題。さらに就業意欲を阻害しない形での税・社会保険、あるいは福利厚生制度 等のあり方の検討、労働者の安全・健康の問題、メンタルヘルス等の問題。さらに、労 働者が自律的に働くことによって最も能力が発揮できる、生産性の向上に寄与するよう な労働時間制度のあり方の問題、さらにセーフティネットとしての最低賃金の機能の強 化といった点についてのご提言をいただいています。  9番目が「仕事と生活」です。ワークライフバランスの問題でございます。ワークラ イフバランスを可能とするような長時間労働対策や労働条件全般についての環境を整備 するとともに、家庭だけではなく、自己啓発やボランティアなど、仕事以外の生活も併 せて可能にするような形での環境整備といったご提言をいただいています。  10番目、最後に、これらの施策や対象、分野を実現するための支えとなるものとして の「労働力需給調整」の問題です。すべての働く意欲を持つ人々が、きちんと就業機会 に挑戦できるための募集・採用を促進したり、あるいは求人・求職の広域化等に備えて 全国ネットであるハローワークを活用し、雇用のセーフティネットを強化する。あるい は、離職を余儀なくされる方々についても1つの企業での雇用の安定ということだけで はなく、万一離職された場合でも次の企業、次の雇用に容易に移れることによって、労 働市場全体としての雇用の安定を図ろうということで、そういった事業主の方々の支 援。あるいは民間の職業紹介機関の活力を活かすといった取組、さらに全体の雇用・就 業の場を増やすということで創業支援、あるいは在宅就業など、就業機会の拡大となる ような働き方の普及といったことについてのご提言をいただいています。  全体の報告は20数頁ありまして、大部でございます。今日は簡単に概要でご報告申し 上げました。以上です。 ○諏訪分科会長  どうもありがとうございました。ただいまのご説明について、ご質問、ご意見等あり ましたらご自由にお出しください。 ○清家委員  この報告書はなかなかよくまとまっていて、内容的にも基本的には賛成です。1つだ け気になることがあるので、注意を喚起したいと思います。いま、雇用政策課長も何度 も繰返しご説明になりましたが、働く意思のある人がその能力を活かせるような仕組み を作る。これはとても大切なことです。私も「生涯現役社会を作りましょう」と、同じ ような趣旨のことを言っていますので、それは問題ないと思います。  もう1つ、働く意思を阻害するような非中立的な制度が年金制度などにあるとすれ ば、それを中立的にする。少なくとも、働く意思をわざわざくじくような制度を変えて いく。それも大切なことだと思います。ただ、その上で、実は働くこと以外に価値を見 い出している人たちというのももちろんいるわけです。もう引退生活を楽しみたい、あ るいは専業主婦として家事や育児をフルタイムでやりたいとか、もうちょっと長く勉強 していたい。要するに、働くこと以外に自己実現を図りたいという人がいる。そういう 人たちが存在し得るというのが先進国の条件だと思います。  そういう観点から言うと、ちょっと心配なのは就業率を政策目標にするという点で す。いま言われた趣旨で言えば、これはあくまでも働く意思のある人の話、あるいは働 く意思をくじかないような制度を作るという意味で就業率を政策目標にする。OECD などでもそういうようなことを言っていますから、それはいいと思います。  ただ、得てして、こういうものというのは自己目的化していきます。つまり、政策目 標としての就業率を高めるためには、もう専業主婦みたいなものはよくないとか、そう いう発想に陥らないように是非していただきたいと思います。あくまでも、これは働く 意思のある人の能力の活用、あるいは働く意思をくじくような、非中立的な制度を是正 するというところまでの話であって、国家総動員法的な、つまりみんな働かなければい けないという話ではないことは、どこかにきちんとテイクノートしておかないと危険な のではないかという気がしました。 ○雇用政策課長  いま、清家委員のおっしゃった話はもちろんでございます。実は研究会の議論の過程 の中でも、国家総動員的なものであるべきではないという議論がありました。その部分 は私どもとしても十分承知しているつもりです。  基本的にさまざまな社会的有用な活動の中で、労働というのは世の中で非常に重要な 部分を占めている。なおかつ、これまでの状況の中で言えば、さまざまな状況の中で労 働をしたいにもかかわらず、あきらめてしまうような方々が決して少なくないと考えて います。そういう意味で、きちんとマーケット・メカニズムが働くように、それを阻害 するようなものを除去することによって就業率を高めていくということであろうと思っ ています。  1つ言い忘れました。実は就業率を高めていく場合においても、ただ単に働けばいい のか、働かせればいいのかということでは決してなくて、あくまでも本人の意欲や能力 が活かされる形での働き方を実現していくといったことが肝心であると思っています。 その旨、働く意欲が活かされるような働き方が必要であるということについては、報告 書の本体の中では「注」として入れているところです。 ○清家委員  できれば「注」ではなく、総動員ではないということは本文のところにも明記してほ しいと思います。 ○諏訪分科会長  ほかにいかがですか。 ○紀陸委員  全体的な構成というのは、こういう報告であるとこうなるのでしょう。1つ気になる のは、「問題意識」のはじめのところです。雇用の多様化が進むということは、雇用形 態なり働き方がさまざまであるし、職務の価値において賃金が違う、労働時間の長短に よって賃金が違うということが当然に起き得るわけです。  そういう中で全体を見回して、例えば3頁の第1段落、下のほう、「賃金の二極化が 進んでいる」とか、9頁では「格差が拡大し、社会の不安定化が加速する」というよう な記述があるわけです。いま申し上げたように、多様化ということは賃金も処遇も多様 化するわけです。その中でイエスだという人もいるし、ノーという人もいる。狙いはで きるだけ、不満を持つ人が少なくなるようにしよう。そういう仕掛けを目指すわけで す。パッと数字を見て、しかもここで賃金の分析があまりないのはかえって良いのかな とも思いました。労働時間の長短、あるいは感覚的に不平不満が多いということを浮き 彫りにして、そこから問題のアプローチをしていくと、基本的には処遇の格差縮小が雇 用の多様化に資するという妙な結論になりかねない感じがします。だから、これからい ろいろな意味で格差が拡大というか、バラついてくるのはやむを得ないと思っていま す。  そういう中で、問題のそもそもの認識として、言葉の使い方としてさまざまな問題に ついて「二極化が進んでいる」というような表現というのは注意して使ってほしいとい うことを申し上げたいと思います。 ○雇用政策課長  ご指摘の趣旨はまた踏まえさせていただきたいと思います。ただ、1つだけお答えし ますと、実は労働時間についても賃金についても、労働時間では男性のほうが顕著なの ですが、非常に長時間の方と短時間のパートタイマーの方、両極が増えているという形 での二極化というのはある程度進んでいます。もちろん、ご本人も、企業側も含めての 多様なニーズが合致してのものもありますし、そうでないものもあるのかもしれませ ん。その原因は別として、二極化していること自体は事実だろうと思っています。 ○紀陸委員  そこに価値判断が入ってくるような印象を受けるわけです。当然、人数を絞ればある 人は長くなるし、片方で短い人も出てきます。雇用を多用化する場合、それは当然の客 観的な状況です。状況が良いか悪いかという問題とはまた別だと思います。だから、そ こはワンステップあるはずで、そこがつながっていると出てくる対応の問題にも影響が 出てくると思っています。 ○雇用政策課長  価値判断の問題として、多様化すること自体が問題だということではおっしゃるとお り、ないと思います。一方で、あとは長時間労働があまりにも長い方が増えることによ って、さまざまな問題が起こっているのではないかということについては、さらに解明 していかなくてはいけないのではないかと思っています。 ○紀陸委員  職務の価値で賃金を決めれば、当然ながら差が出るのは当たり前です。これは是とか 否とかという問題ではないと思います。その場合、生活ができないようなレベルの賃金 を設定していては問題でしょう。そういう問題を論じるならともかく、正社員が少なく なって、非正規の人が増えて賃金が二極分化しています。私が申し上げたいのは、この ような単純なロジックで進めて果たしていいのかということなのです。その間にもっと いろいろな要因・要素があって、それに対して企業は、あるいは政府がという論議をも う少し細かくやるべきではないかと思います。 ○諏訪分科会長  ほかにご質問、ご意見はありますでしょうか。 ○成瀬委員  この報告書、A3版の概要、本文を含めて読ませていただきました。全体的な構成、 現状および展望、対策の大枠については非常によくまとまっていると思います。しかし 個々の部分、各論については若干わからない点、疑問に思う点もありますので何点か申 し上げたいと思います。  1つ目はいま、紀陸委員がおっしゃられたこととも関係する部分があるかもしれませ んが、多様な働き方への希望が増加しているという現状認識の論調があります。「多様 な働き方」と言うと非常に漠然とした言い方で、それを否定するのはなかなか難しいと 思います。しかし、実際「働き方」というのは一体何を指しているのか、多分認識が使 う人によって異なっていると思います。私の出身母体の電機連合でもこの辺はよく議論 になるわけですが、多様な働き方を労働者は希望している。でも、大方の場合は就業形 態、もっと直接的に言えば勤務態様、あるいは労働時間の長短、転勤の有無、そういう ところについては多様な希望が出ていると思います。しかし、こと雇用形態について言 えばやはり安定的な雇用形態を望むものであります。その辺「働き方」という言葉の使 い道を注意深く使っていただいたほうがよろしいのではないかと思っています。  その上で、対策の部分で何点かあります。1つは本文の22頁(8)の「安心・公正な 労働」というところです。その中の2つ目の段落「パートや派遣等様々な働き方がある 中で」というところで、「職務、能力と労働時間等に応じて『正社員』との処遇の均衡 を進めていく」とあります。この内容は私どもも非常に共感できますし、大いに賛成な のですが、いかなる手段で進めていくのかという点が私どもでもいつも議論していて、 なかなか解決が見つけられないところです。この報告書についてはここまでしか書いて いないのですが、何かお考えがあるのであれば、方向性をご示唆いただければありがた いと思います。  その次のパラグラフ、有期労働契約、「契約期間ができるだけ長くするよう努める」 とあります。もちろん、契約の実態に応じてというところではあるのですが、本来なら ば期間の定めのない雇用に転換するように努めるべきではないかと思っています。「で きるだけ長く」が「契約期間の定めのない」を含めて考えていらっしゃるのであれば、 それはそれでよろしいのですが、その点についてどういう意味合いで使われているのか をお聞きしたいと思います。  1つ跳んで「近年増加している業務請負については」というところです。確かに非常 に増加をしているわけなのですが、「望ましい働き方についてのルール」、ここでもま た「働き方」という言葉が出ているわけです。ここで指している「働き方」というのは 一体何を指しているのかをお聞きしたいと思います。  私個人の問題意識としては、業務請負といった場合には発注側、受注側の企業、それ からそこの労働者という関係になりますので、発注側から受注側への仕事の出し方も含 めて、その辺のルールを検討しないといけないのではないかという問題意識はあります が、そういう視点があるのかどうかも含めてお聞きしたいと思います。  また1つ跳んで、「セーフティネットとしての最低賃金制度の機能の強化」のとこ ろ、「我が国においてもその水準の見直しを行いつつ、一定の年齢区分の」とありま す。水準の見直しを行うというのは、高い方向に見直しを行うという暗黙の前提で考え ていらっしゃるのかどうなのか。よもや、下げる方向での見直しということではないと は思いますが、一応、念のためにお聞きしたいと思います。  次の23頁(9)の2段落目の4行目、「労働時間規制を厳しくすべき者と受けない者 」という表現があります。労働時間の規制、法律の規制というのは使用者にかかるわけ で、使用者が労働者を労働させるというのが労働基準法での論理体系になっているわけ です。そういう意味だと意味不明になるわけですが、あえて善意に解釈すれば、労働時 間規制の適用除外者という意味なのでしょう。「労働時間規制を受けない者」という範 疇については、使用者はいくらでも働かせられる。働かせることが可能である、という 含意でこれを記述されているのかどうかをお聞きしたいと思います。ざっと見たとこ ろ、その辺が疑問点だと思いますので、お答えをお願いしたいと思います。 ○諏訪分科会長  勝田課長、お願いします。 ○雇用政策課長  お答え申し上げたいと思います。まず、均衡処遇の話について、何か政策的な手段を もう考えているのかというお話ですが、基本的にはこの報告をいただきましたので、私 どもで本分科会をはじめとして、労使を含めた皆様からのご意見もいただきながら政策 的な手段等について考えていくべきものと考えています。  2つ目ですが、反復更新されているものについて、契約の実態において、期間をでき るだけ長くするように努めるというのは期限のないものにすべきかどうかについては、 ここは基本的には労使の自主的な判断があると思います。この部分については、「注」 にあるように改正労働基準法に基づく告示において、できる限り長く務めなければなら ないとする規定があることを含めて、これをしっかりやっていくことを含めて書いてい ます。  3つ目に、業務請負について望ましい働き方の問題でございます。この問題について の研究会における議論は、全く議論がなかったわけではありませんが、発注者側という より、発注者側から請負の業者に来ている、場合によっては細切れになる。そのリスク を労働者側に完全に転稼するような形になっていいのかどうかといったことについて、 働き方とルール等の検討が必要ではないかという議論だったと理解しています。  最低賃金のお話ですが、水準の見直しを行いつつ、引き上げる趣旨かどうか。この部 分は、機能の強化との絡みだろうと思っています。実はこの部分については、今年の3 月に出ました「最低賃金の在り方に関する研究会報告」がありますが、この報告書の中 から引用している部分であります。  もう1点、ワークライフバランスについて、労働時間を厳しくすべき者と受けない者 というお話がありました。これは使用者が働かせていいのかどうかというお話でした。 実はその2、3行前のところを見ていただきたいのですが、基本的に、個々の労働者が 多様な働き方を選択肢の中から自主的な選択をすることができる、このコンテクストの 中で労働時間規制が厳しくかかるような労働者のタイプ、そうでない労働者のタイプの 区分を明確化するべきであるという観点で書いたものです。以上です。 ○職業安定局長  補足なのですが、先ほど例えば手段などが書かれていないというお話がありました。 私どもは大体節目節目、一定の期間がたちますと「雇用政策研究会」を開催していただ いて、言わばその時期その時期の雇用労働関係の関心事項をまとめています。それをそ の後の政策展開の最初のステップにしてきたことが、我々の1つの歴史になっていま す。逆に言えば、それがあることが提言をいただいていて、例えばそれを法律でやるの か、あるいは労使の取決めでやるのか、あるいはそれも含めた社会的合意の中でやるの かというのは、その後の発展段階に委ねている性格に全体の構成がなっています。特に この研究会でのご議論をどうやって私どもがお受けして、中身を具体化するかという部 分は、今度は逆に我々の宿題としてかぶってきている。このような流れの中でやってい ますので、そこはご理解をいただきたいと思います。 ○成瀬委員  そこは理解しているつもりです。例えば、均衡処遇を進めていくというところで言え ば、もちろん報告書はこれでいいと思います。もしかして、その実現の手段を何かお考 えになっているのだろうかという質問だったわけです。  その上で、先ほどの回答に即してもう1回確認したいと思います。有期労働契約の反 復更新については、労働省告示357号の以上でも以下でもないという趣旨でよろしいの でしょうか。 ○雇用政策課長  はい、いまのところそうです。 ○成瀬委員  それから、業務請負の部分の答弁の趣旨がいまひとつ理解できなかったので、もう少 しわかりやすくお答えいただきたいと思います。また、最低賃金の部分は「最低賃金研 究会報告書」の趣旨のとおりである。それ以上でも以下でもないと理解してよろしいの でしょうか。労働時間規制については趣旨はわかりました。 ○雇用政策課長  簡単なほうからお答えします。最低賃金の話については、基本的には研究会報告の趣 旨のとおりです。「最低賃金研究会報告」の文言とほぼ同一でございます。  業務請負の話ですが、基本的な考え方としてはこの研究会における議論の中身として は、業務請負の場合、確かに発注される業務のほうが言わば細切れになる。ところが、 現時点においては、細切れになる業務と雇用期間がそのままリンクする形になっていま す。すなわち、雇用に関するリスクがそのままの形で、業務請負会社が何もリスクを取 らずに労働者側にリスクが転嫁されている。そういった形でいいのかどうか。すなわ ち、本来、発注の期間と雇用の期間というのは違ってもおかしくない。そういった形 で、リスクを業務請負会社が持つべき部分もあるのではないかということを含めた上 で、ルールの検討をしていくべきではないかということだったと理解しています。 ○成瀬委員  ということは、業務請負会社における有期契約の労働者を主眼とした内容ということ ですか。 ○雇用政策課長  そういうことです。 ○山極委員  ワークライフバランスということなのですが、23頁に「仕事と生活を両立させる」と 挙げられています。実は、この考え方は取り方によっては有給だけを多く取ることなの かなど、いろいろな考え方があります。私どもではヨーロッパやアメリカの企業のデー タをもとに、今回、3,400名に調査をして、今日速報が出ました。その中では、例えば 長時間労働者ほど会社に対して不満があるというデータが出ました。つまり、仮説が当 たっていたわけです。  これをやることが労働者にとってだけでなく、企業にとってもいいということをある 程度方向づけないと、ただただワークライフバランスといっても浸透できないところが あります。その辺、もう少し丁寧な説明があったほうが企業がより入りやすくなってく るのではないかと思います。いくつかのデータがありますので、次回にでもご案内させ ていただくことも可能ですのでよろしくお願いします。 ○雇用政策課長  ありがとうございます。確かにおっしゃるとおりで、特に長時間労働については長時 間労働をさせることによって、時間当たりの労働者による生産性が非常に低下するとい った形で、企業自体にとって長時間労働に伴う問題点もあることは議論として出ていま す。それを踏まえた上でのものと考えています。基本的に、ここは労働者の生活の充実 ということもありますし、全体としての生産性といったことを含めた意識はしていま す。 ○山際委員  わかりました。 ○長谷川氏(須賀委員代理)  今回の研究会報告は、参集された先生方も各分野の先生方でして、労使でやれば今日 みたいな話が延々と続くのだと思いますが、研究者の方ですからその意味では中立的 に、今後どういう雇用政策が必要なのかを客観的にご指摘なさったのだろうと思ってい ます。  9月に「労働政策審議会」の本審が開催されるという話も聞いていますので、労働政 策審議会をもう少し頻繁に開催してほしいという委員からの発言もあります。我が国に おける労働政策をどのようにしていくのかという重要な課題ですので、是非本審にも報 告していただいて、今後のいろいろな進め方などについても少しフリーな議論をしてい ただければと思っています。  個別にはご質問したいところがいっぱいあります。しかし、今日は限られた時間です ので、また別途、お互いに意見交換ができる場を作っていただければよろしいかと思い ます。 ○雇用政策課長  まず、本審へのご報告については、労働政策審議会の本審議会へご報告させていただ く予定でいま進めているところです。それから、山際委員が先ほどご発言になった点、 実はこの報告書の15頁で労働時間と生産性の向上や企業のイメージ向上につながるとい う企業メリットについて、15頁の真ん中あたり、「さらに」という段落で触れています ので申し添えます。 ○諏訪分科会長  ほかにいかがでしょうか、よろしいでしょうか。 ○徳茂委員  1つだけ発言します。ワークライフバランスのところで、長時間労働についてはあち こちに言及があります。そのことについて、問題意識が社会に根づいてきていることを 反映していると思いますので歓迎したいと思います。ワークライフバランスは仕事、個 々人のプライベートな生活のバランスですので、単に時間の長さだけではなく、深夜の 時間帯に就労することも、ライフに対する負担にもう少し着目したらどうかと思ってい ます。確か、労働時間規制を男女共通のものに直した際にも、深夜の時間の在り方につ いて引き続き検討課題という問題意識があったと思っています。当時は、労使の自主的 な努力にしばらく委ねてみようという結論だったように記憶していますが、そろそろそ このところを社会的にどのようにしていくのかについての議論も必要な時期にきている のではないか。長さだけではワークライフバランスは決して確保できないと考えていま す。今後、具体的な施策に落とし込んでいく際には是非、ご検討いただくように要望し たいと思います。以上です。 ○成瀬委員  先ほど何点か申し上げたのですが、どちらかというと意見という形で言ったので、多 分回答がなかったのだと思います。「働き方」という言葉の使い方を注意深くしたほう がいいのではないかという意見に対しては、いかがお考えになるでしょうか。お聞きし たいと思います。 ○雇用政策課長  働き方という言葉の使い方ですが、確かにいろいろな意味合いがあります。先ほどお っしゃったような就業の中で言うと、例えばパートタイマーを希望する方が増えてい る、あるいは1つの事業主に拘束されることなく、いろいろなところへ転々と動きたい といった働き方ないし雇用のあり方を選ぶ、ないし希望する方がいらっしゃる。さまざ まな問題がありますので、若干曖昧な言葉かもしれませんが、そこの部分を「働き方」 という形で表現いたしました。もし、個別にそれぞれの事項について施策を検討する場 合には、それぞれの部分で労働時間の話なり、雇用の期間の話といった議論はまた別途 続けていかなくてはいけないのではないかとは思います。この問題の中では、短くやる ために「働き方」という形でさまざまな面をシンボライズさせていただいているという ようにご理解いただければと思います。 ○成瀬委員  わかりました。 ○諏訪分科会長  よろしいでしょうか。それでは、これらの研究会の報告についてはただいま皆様にご 報告をして、ここで議論あるいは要望などを出していただいたということにさせていた だきたいと思います。  次の議題に移ります。次の議題は、「平成16年度の雇用保険三事業による事業の評価 について」です。雇用保険三事業については前回、平成17年度の目標設定についてご説 明をしていただいたところです。今回は平成16年度の評価について取りまとめが行われ たということですので、その内容について事務局からご説明をお願いしたいと思いま す。 ○雇用保険課長  お手元に資料No.2、その下に「評価類型ごとの事業例」、その下に「雇用保険三事 業による事業の評価について」、この3つを使ってご説明させていただきます。  まず資料No.2「雇用保険三事業の目標管理サイクルの確立」という部分です。これ は前回、平成17年度目標について説明いたしましたので、若干説明がダブりますが、ポ イントだけ説明させていただきたいと思います。雇用保険三事業については各事業ごと に数値目標を設定し、年度終了後その実施状況について十分把握、確認して評価する。 その評価結果に従って事業を見直していくという考え方で、PDCAサイクルというも のを確立しております。イメージはその次の頁、渦巻状の図に書いてあります。Plan, Do,Check,Actionという形で、毎年これを繰り返すというものでございます。  1頁に戻って、このPDCAサイクルについては16年度の目標設定事業が80事業あり ます。17年度は154事業について設定していまして、17年度にほとんどの事業について 設定し終わっています。今後、18年度以降はこの目標をさらに深化させるという段階に なってきています。17年度については、廃止予定の事業のようなものを除けば全部目標 を設定しているという考え方です。  3番目の○にあるように、目標の設定についてはアウトカム目標を中心にいたしま す。これはアウトプット目標という概念と対になる概念ですが、アウトプット目標は件 数、あるいは予算額といった数字を指しています。アウトカム目標のほうは就職率、あ るいは離職率をこれよりも低くするというような、施策効果を直接評価できるような目 標値という意味でございます。こういうものを9割の目標にしています。こういった成 果の評価については、毎年の概算要求に反映させていくという考え方がいちばん最後の ○に書いてあります。  「平成16年度雇用保険三事業による事業の評価について(ポイント)」という、横書 きの紙があります。これは平成16年度の政策評価の全体像です。(1)に書いてあります ように、評価については事業の利用度、あるいは成果に係る実態を十分調査して、三事 業の保険料の拠出者である事業主の団体の方のご意見も伺って評価するという考え方で す。  (2)にありますように、16年度は80事業の目標設定でしたが、そのうち33事業につい ては「見直すべき」という評価になっています。評価を受ける前に、平成17年度から既 に見直しをしているものについて9事業あり、合計で42事業が見直すべき、あるいは既 に見直したものであります。要するに、過半数が見直し対象であるということです。 52.6%が見直し対象になっているということでございます。こういう結果をきちんと受 け止めて、今後、三事業の事業内容についてきちんと見直しをし、有効に使われるよう にしていくという考え方であります。  最後の頁ですが、十字の座標軸が書いてあります。この座標軸に従い、基本的には評 価するということであります。ただ、個々の事業ごとに特徴がありますので、必ずしも この座標軸どおり全部整理されているわけではありません。しかし、基本的にはこの発 想でございます。質と量を評価するという考え方ですが、縦軸が事業執行率、どれぐら い使われたかということであります。この軸がクロスしている点が事業執行率80%とい うところで、80%以上使われたものを基本的に良いものと評価しようという仕切りで す。  横軸のクロスする点は、まさに今回設定した政策目標、数値目標を達成したかどうか を交点にしています。右上の事業執行率が高くて、政策目標を達成している範疇に入っ ているのが38事業と2事業です。38事業と書いているのは、基本的に施策を継続するの が適当というタイプのものです。ただ、この範疇に入りましても、事業にさまざまな問 題点が指摘されている事業については見直しをする。それが2事業に入っています。の ちほどご説明いたしますが、「私のしごと館」という施設についてはここに入っていま す。  右下ですが、事業執行率は低いけれども、政策効果は高いというタイプのものです。 これについては、基本的には予算の減額で対応するという考え方でして、それが9事業 でございます。ただ、事業執行率が低いといっても、あまりにも低いものについては事 業の内容自体に問題があるケースもありますし、さまざまな問題点があると思いますの で、事業のあり方を見直すべきものがあるのではないか。それについては9事業掲げて います。  下に4事業と書いてありますが、これも事業執行率が極端に低かったケースです。こ ういったもの、あるいは政策の体系が変わってきたようなもの、別に見直したものが若 干含まれていますが、そういったものについては既に見直したものということで4事業 と整理しています。それから左側の上、政策効果がそれほど高くなくて、事業執行率が 高いものです。効果が高くないのにたくさん行われているということですので、廃止な り見直しの必要性が高いのではないかということで、「廃止又は見直し」という表現に しております。「廃止」を前に出して書いています。姿勢としては、厳しく対応すると いうものがこちらに入っています。政策効果が高くなくて、執行率も低いものについて は、逆に「見直し又は廃止」と書いてあります。ただ、執行率が低いものですから「見 直し又は廃止」と書きつつも、やはり上と同じように廃止を十分考えた厳しい対応が必 要ではないかと考えています。これが6事業です。それから、既に見直したものがこの 分野で5事業あるというものです。  それぞれの代表例だけ簡単にご説明させていただきます。「評価類型ごとの事業例」 でご説明いたします。いま説明を飛ばしましたが、十字の表に番号が書いてあります。 この番号はいちばん最後に付けてあります「事業の評価について」という資料に事業番 号が書いてありますが、その番号に対応するものでございます。照らし合わせていただ ければありがたいと思います。  それでは、代表例をご説明いたします。事業例のいちばん上、「早期再就職専任支援 員(就職支援ナビゲーター)」の対策です。これは45歳以上の雇用保険受給者の方を中 心に、3カ月以内にマン・ツー・マンで職業指導等を行って再就職をしてもらうという タイプのものです。その人に合った求人を探してきたり、あるいはその人の面接に付い ていくといったことも含めて、マン・ツー・マンできめ細かに対応する事業でございま す。  これについては、3カ月以内の就職率が左の下にありますけれども、16年度目標とし て7割程度以上という設定をしています。プログラム開始者数は7万人以上ということ です。このいずれも目標を達成しており、こういった事業についてはいちばん下に評価 が書いてありますが、「目標達成。一定の成果が上がっている。」という形で評価して います。  同じような対策で「再就職プランナー」というものがあります。35歳以上の方につい て、マン・ツー・マンではありませんが、1人で5人程度の方について再就職実現まで のプランを作り、それに従って求職活動をしていただくことを支援するようなタイプの ものです。これについては初年度ということもあり、アウトカム目標になっておりませ ん。アウトプット目標として、就職実現プラン作成件数5万件以上という目標ですが、 これについては達成しております。目標達成の成果が上がっているということですが、 17年度についてはアウトカム目標も設定するということで見直しをしています。  2頁は「私のしごと館」です。これは先ほどの図の右上、問題点があると指摘されて いる事業です。これにつきましては、目標値は左側の下にありますけれどもサービス利 用者の延べ人数40万人以上、利用者の80%以上から「今後の進路について具体的なイメ ージが湧いた、仕事というものや将来の自分の職業について考えるようになった」とい う回答を得ております。いずれも達成はしています。  ただ、この事業についてはさまざまなご指摘がございます。それを受けて、一定の見 直しをすべきではないかということで評価を書いています。目標達成は一定の成果が上 がっているが、「より雇用保険三事業の趣旨にかなう事業となるように見直しを行うと ともに、」ということです。これは、雇用保険三事業が被保険者、あるいは被保険者で あったものに関して事業を行うという趣旨ですので、それに見合った事業をできるだけ やるようにということですし、自己収入の増大を図り、経費を削減するというのは、ま さにこの言葉どおりです。そういった努力をしてほしいということです。平成17年度目 標自体も、こういった内容になるように見直しておりまして、平成18年の概算要求で は、これを受けた事業内容の見直しをしていこうというものです。  その下は「雇用調整助成金」です。これは目標達成はしていますが、適正な予算要求 額にするということで、予算要求額を調整するタイプのものです。雇用調整助成金は景 気変動に応じて、雇用情勢が悪いときは大量に出て、そうでないときはあまり出ないも ので、大体20億〜700億の幅で上下する、非常に変動が激しいものです。この助成金に つきましては、目標として(1)にありますように、一般の事業所に比べてこの雇用調整 助成金を利用した事業所が、労働者の首を切らないことを目標にしております。もう1 つは、一般の事業所に比べて、この調整助成金を利用した事業所がつぶれないことを目 標にしております。雇用の維持がきちんと図られ、十分助成金が効果を発揮すること が、これで測定できるということですが、このいずれについても達成しております。た だ、事業執行率が4%で、これは雇用情勢等の影響でこうなっている面が大きいのです が、こういった数字を踏まえて、評価としては、「雇用情勢に応じ利用実績が大きく変 動する助成金であり、事業執行率やセーフティネットとしての役割も踏まえ、適正な予 算要求額とする。」という評価をしております。  これと若干似たものですが「特定求職者雇用開発助成金」という、三事業の中では典 型的な助成金があります。これは就職困難な方、障害者や高齢者の方を雇用していただ いたときに、一定の支援をするものです。これにつきましても、平成16年度目標で、助 成金が雇用の増加に役立ったとする事業所の割合が7割程度以上あったり、対象者につ いて一般の事務所と比べて首にならないことを目標としておりまして、いずれも達成は しております。ただ、執行率は、これも雇用情勢の影響もあるのですが、48%ですの で、こういった数字を踏まえた予算要求額にするというものです。  4頁ですが、目標は達成しているけれど、事業執行率が低く、必要に応じ事業のあり 方について見直すということで、これは事業執行率が極端に低い例です。「中小企業人 材確保支援助成金」というものが、代表選手として挙がっております。これにつきまし ては中小企業の雇用管理の改善を図るための助成金で、目標では離職率が低い、11%程 度以下にするという目標値を設定しております。この目標は達成しているのですが、事 業執行率が1.6%と極端に低い。これにつきましては、予算要求額を変えることは当然 ですが、そもそも助成金の仕組みに問題があるのではないか、十分中小企業の方に利用 され、かつ雇用管理改善に役立つメニューを導入していくということで見直していくも のです。  その下に「労働移動支援助成金」というものがあります。労働移動の受入れ企業に対 する助成なのですが、受入れ企業が労働者をどれだけ定着させているかという目標値で す。9割程度以上の定着率が目標で、これは達成しているのですが、事業執行率が低い ということで、4%です。これにつきましても、再就職援助計画等の対象労働者を受け 入れる企業ができるだけたくさん出る形になるように、助成金のあり方について見直し ていくことを考えております。  5頁の上は、事業内容を既に見直しているものです。「地域雇用開発促進助成金(地 域雇用促進奨励金)」ですが、これにつきましては、内容的には目標値自体は達成して おりまして、執行率も高いタイプなのですが、その下の評価のところにありますよう に、最近の雇用保険三事業の政策方向として、単なる雇入れ助成よりも、ミスマッチ解 消へ施策を重点化させるという方向性があるものですから、この助成金自体は平成17年 3月末に廃止するという取扱いになっております。  5頁の下は、目標未達成のものです。これは、私どもは事業としてはいい事業だと思 うのですが、たまたま目標未達成になったものです。「障害者の多様なニーズに対応し た委託訓練の実施」です。これにつきましては、アウトカム目標が設定できずに、アウ トプット目標として、障害者委託訓練実施対象者数3,000人という目標値になっていま す。実施対象者数という目標値だったのですが、これは未達成でした。これにつきまし ては、目標の設定自体は今後変えていく必要がありまして、平成17年度目標は就職率と いう目標値に変えております。評価としても、事業自体はいい事業ですので、「必要に 応じ事業の実施方法等について見直しを行う。」と書いていますが、これは当初計画の 実施対象について確実に実施できるように、きちんと対処するという意味で、そのため のいろいろな工夫をするということです。  6頁の1番目は、目標未達成で、事業執行率も低いタイプのものです。介護労働者の ための雇用管理の助成金です。これにつきましては、目標として、自己都合の離職率を 下げることを目標にしております。それが未達成で、事業執行率も80%と比べると低い 64%ですので、こういう目標の未達成原因を究明した上で、事業の抜本的な見直し、ま たは廃止を行うと書いてありますが、介護労働者の雇用管理改善は非常に大事なテーマ ですので、廃止するという選択肢をとるのはなかなか難しいのではないかと思います。 とにかく雇用管理の改善の取組がきちんと行われるような助成金の内容になるように、 見直していこうということで、いま検討しているところです。  その下の「介護能力開発給付金」ですが、これについても同じようなことで、目標未 達成、事業執行率も低いものです。この介護労働者の能力開発も非常に大事なテーマで すので、必要な見直しをきちんとしようということです。その下の「労働移働支援助成 金」、これは労働者を送り出すほうに対する助成措置です。これにつきましても、目標 値の達成ができませんで、事業執行率が低いものですが、労働移動を行う側についての 取組を、より支援できるメニューになるように見直していこうと考えております。  既に目標が達成できず、事業執行率がそんなに高くなく、事業内容を変更したものと しては、7頁の下にあります「建設雇用改善助成金」や、8頁の「育児・介護雇用安定 助成金」といったものがあります。こういったものにつきましては、見直し、あるいは 廃止をしているところです。  9頁以下に、目標を追加したもの等が書いてありますが、これは、平成16年度に設定 した目標を達成したもので、平成17年度にも目標を設定しているものがあるのですが、 その中に平成16年度の達成率のほうが高いものが若干含まれております。高くなったも のについては、平成17年度目標自体も高くして、そのさらに高い目標を目指すとすべき ではないかということで、目標を上げる。あるいは目標値として新しい切り口から目標 を設定しないと駄目だという、「私のしごと館」のようなものについては、新しい目標 値を設定しているものがあります。以上です。 ○諏訪分科会長  ありがとうございました。大変意欲的な事業評価の報告でしたが、ご質問、ご意見等 いろいろあると思います。よろしくお願いいたします。 ○石井委員  マクロ的に見まして、雇用保険三事業というものは大変疑問であると思っておりま す。と申しますのは、平成17年度の予算でいきますと、保険料収入5,133億に対して、 企業へ助成金として給付されるのは半分にも至っていない。残りの差額の半分はどこへ いってしまったのか。これは、あくまでも事業者が負担している金額ですから、あまり にも低すぎるのではないかという感じがしております。  ミクロ的、具体的に申しますと、雇用保険三事業の細かい予算について、いまいろい ろとお話を聞きましたが、ある事業について、新聞報道ですから私は詳しくはわかりま せんが、昨年度の実績の40倍に当たる200億円という予算を計上している。これは、あ まりにも現実とかけ離れている。たった5億円しか実績がないのに、200億円というか け離れた予算の計上をしているということが報道されております。  もう1つ疑問なのは、統廃合したはずだと、いま事業見直しをされて廃止だとか減額 だとかそういう話がありますけれど、よく裏を見ていきますと、単なる名前を変えてい るだけとか、あるいはこちらにあった事業をこちらに移していくだけの話で、具体的に は何ら変更されていないという事実もあると新聞に報道されておりました。いずれにし ても、見直しをするとか廃止をするとかということになれば、当然トータル予算が減額 されてしかるべきなのですが、トータル的に変わっていないことが、我々保険料を支払 う側は非常に憤りを感じているわけです。我々中小企業は、保険料をただで出している わけではありませんから、経営者負担でぎりぎり経営している中から保険料を出してい るわけですから、そういう無駄なお金を使うのではなく、保険料率を下げてほしいとい うのが正直な考えですが、いかがでしょうか。 ○雇用保険課長  まず最初に、事業主還元分の率の問題についてお答えします。雇用保険三事業は、事 業主の方からいただいた保険料で運営しておりまして、その事業の実施方法につきまし ては、助成金という方法で事業主の方が一定の取組をされたときに、それを応援する形 で給付をするやり方と、お金を配る方法ではなく、ソフト事業、サービスを提供する形 で事業主の方に還元する方法と2種類あります。事業主還元分ということで、私どもが 普段作成している資料は、助成金の形でお金で還元する部分だけの数字です。それは、 最近5割を切ってきているものです。助成金につきましては、先ほど若干ご説明しまし たが、雇用情勢に応じてお金が出たり出なかったりするということがありまして、最近 の動きとして、雇用情勢がよくなってきていることもあるものですから、助成金の利用 が減ってきていることが原因の1つです。そういった形で、率が5割を切っている状況 はあります。  ただ、それ以外にサービスの提供の方法として2つありまして、1つは事業を実施す るときに民間の事業主の方にお願いして、事業を実施していただいているケースがあり ます。そういったものを、民間の事業主に対する還元だと仮に考えますと、それで52% を超える率にはなるということです。それ以外の三事業の中心的なメニューとしては、 やはり訓練が非常に大きい。訓練に要している経費は相当額的にも大きいのですが、こ れにつきましては、中小企業の方を中心に労働者の方の訓練を事前に済ませてもらっ て、訓練を済ませた技能のある人を直接使いたいというニーズがある中で、お金をかけ て訓練していますので、それについて三事業のお金が使われているという要因が非常に 大きいです。  それ以外にも、事業主の方が雇い入れられるときに、言い方はよくないかもしれませ んが、そのまま受け入れても大丈夫な労働者にして、受け入れていただくための経費が 入っています。それが50%を切るということで、普段ご覧になっている数字の中に入っ ていないので、その辺りにつきましては、今後事業主の方のご理解が得られるように、 私どももお知らせの工夫や努力をきちんとしていきたいと思っております。  新聞記事の関係ですが、私どもも記事の内容によっては思うところがあるものもあり ます。反省すべきところは反省すべきだと思っております。先ほど、助成金の予算と執 行額との倍率が高いものというお話がありましたが、それは先ほどご説明しました中小 企業の雇用管理の改善関係の助成金で、事業例の4頁の上にあります。「中小企業人材 確保支援助成金」を取り上げた記事だと思います。ここに括弧書きで書いてあります中 小企業雇用管理改善助成金だけではなく、中小企業人材支援確保助成金ということで、 総括的に記事が書いてあったと思います。その倍率につきましては、どういう比較の仕 方をしているかといいますと、平成15年度の実績と平成17年度予算を比較するというこ とで記事が書かれています。  この助成金は平成15年度にスタートしたもので、助成金自体は、雇い入れられたあ と、一定のチェックをしてから支給するということもありまして、初年度の助成金の開 始は割と遅かったのですが、ほとんど支給されないままで平成15年度が終わっておりま す。平成15年度の実績と平成17年度予算の比較をされているということで、倍率は自然 に高くなるところを狙い撃ちで記事にされているところがありました。  それから、中小企業の雇用管理改善計画を中小企業労働力確保法という法律に基づい て作っていただいた事業主について、助成金が出ていくという枠組みになっているので すが、雇用管理改善計画について、平成17年度予算なものですから、平成16年の夏から 秋にかけてチェックするのですが、その段階で平成15年度後半の雇用管理改善計画が提 出されておりまして、その計画で雇い入れ予定人数と書いてある人数があります。その 雇い入れ予定人数が半年分と仮に置き換えて計算しますと、平成17年度の予算額として 私どもが計上した金額になるにはなるのです。ただ、見通しが甘かったと言われれば甘 いのかもしれませんので、そこは見直していくべきではないかと思っております。今 後、先ほどの政策評価の考え方ですが、政策目標を達成できたかどうかだけではなく、 執行率が高い、低いも含めてきちんとチェックして、予算額として見直すべきところは 見直していくという考え方でいきたい。  こういった助成金関係で、予算を組んだ額と違って、実際に出る額が少ないケースが ありますが、一般会計の予算とは三事業の仕組みがだいぶ変わっております。雇用保険 三事業は毎年の収支で、雇用情勢のいいときも悪いときもあるものですから、いいとき には雇用対策はそんなに打たなくてもいいので、支出が少なくなります。保険料収入と の差で黒字になりますので、それについては雇用安定資金という資金を別途に設けてい ます。これはほかのところからの出入りが一切ない、雇用保険三事業のためだけの資金 ですが、そこにお金を積みます。雇用情勢が悪いときに、緊急の雇用対策が必要なとき には、その雇用安定資金を取り崩して、保険料収入では足りないときにそれを加えて対 応するという考え方です。雇用安定資金の存在があるがゆえに、雇用保険三事業の保険 料率をずっと変えずにきております。失業率は相当上がっているのですが、そういう中 でいろいろな事業の工夫をして、無駄な事業は廃止するということで取り組んだ結果と して、保険料を上げずに済んでおりますが、そのような形で努力しています。ですか ら、余ったものは無駄にはならず、安定資金に積まれるということで、今後の雇用対策 に活用されることがあることが1つあります。  それから、いま委員からご指摘がありました保険料率を下げるという議論ですが、雇 用安定資金が一定程度貯まると、保険料率が下げられるルールになっています。これ は、雇用保険法上、弾力条項と呼んでいるのですが、雇用安定資金が一定額以上貯まる と、保険料率が1,000分の3.5から1,000分の3、0.35%から0.3%に下げられるようにな っています。安定資金を貯めること自体、非常に大事なことだと私どもは思っておりま す。  平成12年以降、予算額は毎年減らしておりまして、決算額も毎年減らしております。 三事業の支出につきましては、平成12年度から数字だけ申しますと、平成12年度の予算 が7,208億の支出額だったのですが、平成13年度は6,891億、平成14年度は6,168億、平 成15年度は5,770億、平成16年度は5,073億、平成17年度は4,771億と、このように減ら しています。結果として余った額もあるものですから、決算値は平成15年度までしか出 ていないのですが、平成15年度まで言いますと、平成12年度が6,015億、平成13年度が 5,839億、平成14年度は4,854億、平成15年度が4,124億と、結果として平成14年度、平 成15年度は黒字になっております。平成16年度は決算は出ていませんが、おそらく黒字 になって、安定資金がいま積み上がっている状況にありまして、ある程度の水準になれ ば下げられるのではないかと思っております。  私どもとしましても、雇用保険三事業自体について、政策的に効果があって、本当に 意義のあるものに重点化して実施していくべきだという意識は強く持っておりまして、 予算額についても、できるだけ毎年削れるものは削っていこうということで、いま減ら していく努力をしているところです。その結果として、安定資金が一定の水準になれ ば、保険料率が下げられるのではないか、そうなればいいなと私どもも思っておりま す。そのための努力をしていきたいということです。 ○石井委員  大変前向きなお話しを聞かせていただきまして、是非お願いしたいと思います。た だ、いま言われた中で、業務委託にだいぶ支出しているという話もありましたが、これ はある特定の企業に対して支払われるもので、還元とは異なるのではないか。それから 訓練の人件費、十分訓練にお金を使っているということですが、果たしてその訓練が有 効で効率的にやられているかどうか、新聞報道等を見ると、どうもその辺が評価が甘い のではないかという感じが非常にいたしますので、折角前向きにやろうとされているの ですから、是非その辺も抜かりなくやっていただければありがたいと思います。  保険料率ですが、私の記憶があまり定かではないのですが、いま非常に上がっている のです。と思うのですが、これは時代に逆行しているのではないか。だから、是非とも 政策的に下げる方向へ進めていただくと、中小企業にとっていまは大変厳しい時代です ので、していただければ感謝したいと思います。以上です。 ○雇用保険課長  いまのお話で、訓練については、従来目標値の設定が甘いのではないかというご指摘 も確かにありまして、雇用能力開発機構のほうで、コースごとに就職率の目標等目標値 を設定して、きちんと効果のあるものにしていこうと、いま努力をしている最中です。 そういった努力を引き続きやっていきたいと思っております。  保険料率の問題ですが、雇用保険につきましては、よく新聞報道やテレビ報道で誤解 されることが多く、私どももときどき悔しい思いをしていますが、失業等給付という部 分と雇用保険三事業という部分に明確に分かれています。失業等給付は、まさに失業者 等のために、個人に給付される部分で、雇用保険三事業は、いまご説明したところで す。事業主の方の保険料で運営している部分です。この2つは区分経理をして、お互い にお金の出入りがないことになっています。三事業の保険料率のほうは、ずっと変えて いない中で運営しています。  失業等給付の保険料率は一時期下がっていたのが、最近雇用情勢が極端に悪化したも のですから、それに伴ってできるだけ給付を節約しつつ、必要最小限の引上げをしたと ころです。これについても、失業等給付の保険料率がどんどん上がればいいと思ってい るわけではありませんで、給付自体の見直し等も今後ともしていく必要があると思って おります。失業等給付の保険料率については、失業者がたくさん出るときはある程度上 がることは避けられないところですが、ただ、そういうことができるだけ起きないよう な努力は、やはりやっていこうと思っております。 ○山極委員  いま目標と実績の乖離というか、乖離を少なくするためにPDCAを導入されること は大変評価できると思いますし、これでかなり違ってくると期待しています。ただ、そ の中で平成17年度の結果を見ないうちに、平成18年度の予算の要求をしなければならな い。これは企業も同じ状態なのです。私たちも、まだ平成17年が終わっていないのに次 の年度計画を立てるのですが、その中でどのようにしてリスクを少なくするかというや り方です。いま現在、47都道府県に200の営業所、支社と本部があって、お店の数は2万 を超えます。さらに、海外では70カ国なので、相当な数が一気に集まれるシステムを作 ったのです。乖離させないためには、毎月1回本社に集めて事業報告をさせるのです。 いまはIT化の時代なので、リアルタイムで報告が出せるようになっていまして、1カ 月ごとになぜ成功したのか、なぜ失敗したのかをその都度きめ細かくやっていきます と、例えば急に100万個作らなければいけないようなことがヒット商品は出てくるので すが、何も準備がなければそれは全く儲けにならなくなってくることがあるのです。財 団などもそうですし、できるだけ、月に1回、無理であれば3カ月に1回くらいのきち んとした報告をしていただいた上で、軌道修正できる形にしたら相当変わってくるので はないかと思います。  それから、かなりいい内容もあるのに、周知方向がまずいのではないかと思っている のです。私は前は財団におりましたが、いい内容でもわかりやすく、どのように必要と する人につなげていくかというところは、もう少し工夫すべきではないかと思います。 以上です。 ○雇用保険課長  いまのご指摘は、本当にそのとおりだと思っております。いま私どもの平成16年度の 評価をお示ししましたが、平成17年度の事業は既にスタートしているので、平成17年度 のある程度の評価を踏まえて平成18年度の要求をしたいと思っています。できるだけ、 平成17年度の数値も取るようにしております。ただ、平成18年度の概算要求をしたあ と、年末までの間にもし動きがあれば、若干の軌道修正は可能だと思いますので、今後 はそういうことを心がけていきたいという考えです。  周知方法につきましては、本当にごもっともというか、周知下手なところがあって、 特に助成金の関係につきましては、中小企業の方に使っていただければ本当にいいのに と思うものが、周知の仕方が下手なためにうまく伝わらないこともあります。その周知 方法と、もう1つ、支給手続をあまり煩雑なものにすると、利用という面では非常に問 題が起きるということがあります。ただ、あまり簡単にすると不正受給という問題が起 きて、逆にまた新聞で厳しく報道されることもあるものですから、その辺りのバランス を取りながら、できるだけ多くの企業に使っていただき、雇用対策に役立つようにして いきたいと思っております。 ○山極委員  よろしくお願いします。 ○諏訪分科会長  ほかにもいろいろご質問、ご意見あろうかと思いますが、実は本日残り少ない時間 で、もう1件重要な議題があります。よろしければそちらに移りたいと思いますが、よ ろしいでしょうか。  では、次の議題「改正建設労働者雇用改善法に係る政省令等の検討について」です。 事務局のほうからお願いします。 ○建設・港湾対策室長  資料No.3をつけております。建設労働者の雇用の改善等に関する法律につきまして は、本年1月21日の当分科会におきまして、法律案要綱についてご答申いただいたとこ ろです。これについて法制化作業を進めまして、2月10日に法律案を国会に提出し、7 月8日参議院で可決成立し、7月15日に公布がなされたところです。この法律案は、公 布後6カ月以内の政令で定める日から施行することとされておりますが、この中身がい まなお供給過剰な状態にある建設業の構造改善に資するものと考えておりまして、可能 な限り速やかに施行したい。具体的には、10月1日を目標に施行したいと考えている次 第です。  こうした状況ですが、可決成立が若干ずれ込んだこともあり、時間的に非常にタイト なスケジュールになっているという状況に鑑み、当分科会の下部組織に、建設労使が参 画している建設労働専門委員会というものがあります。この中で、事前に十分ご議論い ただき、案を作っていただいて、改めてその案に基づいて分科会においてご審議いただ ければと考えております。具体的な内容につきましては、政令、省令、あるいはガイド ラインがあります。また、建設雇用改善5カ年計画についても、改めて改正をする必要 があると考えていまして、これらの改正案についてご了承いただければ、建設労働専門 委員会でご議論いただいた後に、当分科会においてご審議いただければと考えておりま す。  なお、許認可に関わる手続がありまして、現在国民の権利義務に関わるものは、政省 令の案についてパブリック・コメントにかける必要があります。これが、通常30日とい うことになっています。現段階のスケジュールにしますと、場合によっては当分科会に 諮問する前に、パブリック・コメントの手続を進めなければならない事態も想定されて いるところですが、それにつきましても改めてご了承いただければと考えている次第で す。よろしくお願いいたします。 ○諏訪分科会長  では、この件についてご質問なりご意見がございますか。 ○長谷川氏  いま、パブコメの話が提起されたのですが、パブコメを行って意見が出てきますね。 それを部会の中で報告して、省令やガイドラインを作るときに、全部それを参考にする という受け止め方でよろしいですか。 ○建設・港湾対策室長  今後の建設労働専門委員会の審議の状況にも関わると考えております。早めに案がま とまれば、パブコメと並行して、パブコメの意見をまた反映することも可能かと思って おりますが、可能な限りそういったものも含めて対応したいと考えている次第です。 ○長谷川氏  なぜかといいますと、今日配付された資料の2頁目に、政省令、告示等については審 議会の審議とは別途に、パブリック・コメント云々と書いてあるのですが、厚生労働省 の審議会の中で、パブコメの扱い方が非常に問題だと思っていることもあるので、でき たら折角パブコメをやるわけですから、審議会の審議の中に反映する形を是非お願いし たい。スケジュールを組むときも、そういうことをきちんと組み込んでいただきたいと 思います。以上です。 ○諏訪分科会長  ほかにご質問、ご意見ございますか。よろしいでしょうか。  それでは、本件につきましては、あらかじめ建設労働専門委員会及び雇用対策問題基 本問題部会で、政省令等の案についてご検討いただいてから、本分科会において検討す るという次第で進めたいと思います。そのようなことでよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○諏訪分科会長  ありがとうございます。では、そのように取り計らわせていただきます。以上が、本 日の分科会で予定されている議題ですが、何か関連してご意見等ありますか。よろしい ですか。                 (署名委員指名)  以上をもちまして、本日の会議はすべて終了です。どうもありがとうございました。                       (照会窓口)                        厚生労働省職業安定局総務課総務係                        TEL:03-5253-1111(内線 5711)