05/07/19 第1回重篤副作用総合対策検討会議事録            第1回重篤副作用総合対策検討会議事録                   日時 平成17年7月19日(火)                      17:00〜                   場所 東海大学校友会館(霞ヶ関ビル33階)                      朝日・東海の間 ○事務局  定刻となりましたので、ただ今から「第1回重篤副作用総合対策検討会」を開催いた します。本日ご出席の先生方におかれましては、お忙しい中、また遅い時間にお集まり いただきまして誠にありがとうございます。本検討会は公開で行うこととしております が、カメラ撮りは議事に入る前までとさせていただいておりますので、マスコミ関係の 方々におかれましては、ご理解とご協力のほどをよろしくお願いしたいと思います。  まず、先生方のご紹介を五十音順にさせていただきたいと思います。昭和大学病院長 の飯島正文先生。日本製薬工業協会医薬品評価委員会PMS部会運営幹事の市川高義先生。 消費科学連合会副会長の犬伏由利子先生。千葉大学大学院薬学研究院医薬品情報学教授 の上田志朗先生。共立薬科大学薬学部生化学講座教授の笠原忠先生。千葉大学医学研究 院加齢呼吸器病態制御学教授の栗山喬之先生。社団法人日本医師会常任理事の田島知行 先生。財団法人船員保険会せんぽ東京高輪病院院長の戸田剛太郎先生。財団法人日本医 薬情報センター理事の中村陽子先生。虎の門病院薬剤部長の林昌洋先生。国際医療福祉 大学教授の松本和則先生。お茶の水女子大学健康管理センター所長の森田寛先生はご出 席の予定ですが、少し遅れていらっしゃるようです。なお、本日は慶應義塾大学医学部 内科教授・総合医科学研究センター長の池田康夫先生、東京女子医科大学病院神経内科 主任教授・医学部長の岩田誠先生よりご欠席との連絡をいただいております。  続きまして、事務局側を紹介いたします。医薬食品局長の阿曽沼です。大臣官房医薬 食品担当審議官の黒川です。安全対策課長の平山です。安全使用推進室長の山田です。 検討会の開催に当たりまして、医薬食品局長阿曽沼より一言ご挨拶申し上げます。 ○医薬食品局長  委員の皆様方におかれましては、お忙しいところをお集まりいただきまして大変あり がとうございます。本日の重篤副作用総合対策検討会に関しましては、平成17年度から の新規の予算ということで、今年度から4年計画で予算を計上いたしました。重篤副作 用疾患別に対応マニュアルというものを作成するということで、医療関係者及び患者さ んに広く使っていただくということを1つの目標にしております。その作成のために、 本日委員の先生方にお集まりいただいたわけです。本件の考え方でございますが、従来 の安全対策というのは、特定の医薬品に着目しまして、その医薬品の副作用に対する情 報を収集、評価する、その結果に基づいて臨床現場に注意喚起をするという形で、いわ ば警報を発信する、あるいは事後的に対応する形が中心でございました。  これはこれで大変重要なことでございますので、さらに続けるわけですが、一歩進め まして、従来の安全対策に加えて、医薬品の使用により発生する副作用を疾患として捉 えるという考え方をとり入れるというのが今回の新しい考え方でございます。疾患とし て捉えて、副作用対策の準備をする、あるいは速やかな対応をする。さらには副作用の 発生とそれに伴う対策を講じるなどの予測・予防型に切り替えようではないかというこ とを目標にしたいということでございます。  具体的には、今申し上げましたように早期発見、要するに副作用の疾患としての早期 発見、早期対応といったもののマニュアルをできるだけ早く作っていただく。さらには リスク因子を解明する。さらには副作用の発生機序の研究を進めて、でき得るならば、 重篤な副作用をできるだけ早く回避し、将来的には新薬の開発に繋げる。そういったよ うなことを射程に置いて、今回ご議論いただければ幸いだということでございます。  そのような意味で、取っかかりとなるのはマニュアルと考えておりますが、これは副 作用の疾患ごとにその初期症状、診断方法、標準的な治療方法などをまとめていただき まして、医療関係者の方々、あるいは患者さん自らも速やかに副作用疾患を早期発見す る、あるいは医療関係者による早期治療を実現する。そのために役立てていただければ 大変幸いではないかということでございます。そのようなものが医療現場に定着するこ とによって、将来的には予測・予防型の安全対策が推進され、さらには新薬の開発につ いての基盤整備に繋がっていくのではないかと考えております。  このようなマニュアルの作成に当たっては、私ども事務当局では限界がございますの で、委員の先生方あるいは関係学会のご協力が不可欠でございます。いろいろな意味で のご協力をいただければ、またお知恵を拝借できればと思っておりますので、今後とも よろしくお願いいたします。開会に当たりまして、冒頭ご挨拶申し上げました。 ○事務局  阿曽沼におきましては、所用により中座させていただきますことを、予めご了承いた だければと思います。次に、本検討会の座長ですが、事務局といたしましては、松本先 生にお願いしたいと考えておりますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○事務局  ありがとうございます。それでは松本先生に座長をお願いしたいと存じます。以降の 進行は座長にお願いいたします。 ○松本座長  ご指名によりまして、座長を務めさせていただきます松本和則と申します。どうぞよ ろしくお願いいたします。先ほどの阿曽沼局長のお話を伺っておりますと、新しい安全 対策事業におきまして、本検討会は大変重要な役目を担っているようですので、委員の 皆様方、どうかよろしくご審議くださいますようお願いいたします。  それでは、事務局より本日の資料の確認をお願いいたします。 ○事務局  まず、日時、場所、議事次第などが書いてある「重篤副作用総合対策検討会(第1回 )」という1枚紙、資料1として「重篤副作用総合対策検討会委員名簿」、資料2は 「重篤副作用疾患総合対策事業について」、資料3は「重篤副作用総合対策事業の年次 計画について」、資料4は「重篤副作用疾患総合対策事業」、資料5は「重篤副作用疾 患別対応マニュアル記載項目(案)」です。その他、参考資料1として、「平成17年度 医薬関係予算の概要」、参考資料2として「重篤副作用(初年度候補)の概要」、参考 資料3として「副作用種類別報告件数」、参考資料4として日本呼吸器学会の「呼吸器 疾患治療用薬品の適正使用を目的としたガイドライン」。以上が用意させていただいて いる資料です。不足等ございましたら、事務局のほうにお申し付けください。 ○松本座長  資料がお揃いでしたら、議事次第に従いまして、議事を進めていきたいと思います。 議事1の「事業の説明」について、事務局より説明をお願いいたします。 ○事務局  それでは事業の説明をいたしますが、これより議事に入りますので、カメラ撮りはこ こまでとさせていただきます。ご協力のほどよろしくお願いいたします。  お手元の資料2及び3、参考資料1に沿って事業の説明をいたします。まず、この事 業の全体像とこの検討会の位置づけなどについて説明いたします。冒頭でも話がありま したが、従来の安全対策については、医薬品に着目し、副作用を収集・評価して、臨床 現場に注意喚起するという警報発信型、事後対応型が今までの中心であったと考えま す。他方、副作用については、臨床医の専門分野と異なる臓器にも発生し得ること、重 篤な副作用の発生頻度は一般に低く、個々の臨床医によっては副作用に遭遇する機会が 少ないという場合があり得るといったこと等から、場合によっては発見が遅れ、重篤化 するといったようなこともあり得る。このようなことから、この事業においては事後対 応ということではなく、予測・予防的な安全対策への転換を図るということを目的とし ております。  事業の進め方ですが、大きく3段階と考えております。早期発見・早期対応の整備と しての第一段階としてまずは、「重篤副作用疾患別対応マニュアル」を作成していくこ とを考えております。これについては、平成17年度から関係学会の専門家の先生方等と 連携を図り、重篤度等から判断して必要性の高いと考えられる副作用を優先して、マニ ュアルを作ることを考えております。マニュアルの作成については4年計画で、医療現 場などに広めることによって、早期発見、早期対応の向上を図りたいと考えておりま す。  第二段階が、マニュアル作成後の順次対応といったことになろうかと思いますが、予 測対応の整備を行っていきたいと考えております。マニュアル作成後も、継続して症例 を集積して、関係学会の専門家の先生方と連携させていただく中で、発生リスクが高い 患者群とはどのような患者群なのか。例えば、それが性別であるとか、年齢であると か、いろいろなファクターはあろうかと思いますが、こういったことを明らかにするこ とによって、慎重な投薬管理を行うといった視点でマニュアルの改訂ができればと考え ております。  第三段階としては、主に平成21年度以降ということも考えておりますが、第二段階ま での成果の蓄積から、発生機序の解明の可能性の高いものを選定した上で、リスク因子 の解明と副作用の発生機序研究というものを計画的に進めることによって、企業などに おいて副作用の発現を低減した新薬の開発といったことに結び付けることができるので はないかということを期待している次第です。具体的な作業についてですが、まず「重 篤総合対策検討会」の設置ということで、今回第1回の会合を開いたわけです。さらに 事務作業班を設置し、親会である本検討会の下に、専門分野別にマニュアル作成作業班 を設置して、関係学会と連携し、必要性の高いものから4年計画でマニュアルを作成し ていくことを考えております。  資料3ですが、副作用総合対策事業の年次計画について、どのような流れで策定して いくかを説明したいと思います。先ほど申しましたとおり、重篤副作用総合対策検討会 の開催として、本日、マニュアル作成対象副作用の分類等の選定、及びマニュアルには どのような項目を記載すべきかという点の検討をお願いしたいと考えております。この 検討を踏まえた上で、関係学会を選定し、関係学会との協力の下にマニュアル作成作業 班を組織し、学会、日本病院薬剤師会、厚生労働省あるいは医薬品医療機器総合機構と いった所との協力の下に、作業班においてマニュアル案を作成していく。作業班におい て作成されたマニュアル案については、再度この親会のほうに報告させていただきつ つ、委員の方々のご意見をいただいて必要な対応を図るということを考えております。  このような形で作成したマニュアルについては、ホームページなどを通じて、広く医 療現場の方々、あるいは関係の皆様にも見ていただくことを考えております。年次計画 の当初の案として、親会については年2回、作業の進み具合によっては追加的に開会を お願いしようと考えております。まず対象疾患の選定(1次)について、本日委員の方 々にご意見をいただき、その上で、作業班で具体的なマニュアル作成を行う。作成され たマニュアルについてはこの親会において委員の皆様に評価いただく。この繰返しを平 成17年、18年、19年、20年と進めていただければと考えております。  資料2の最後のポンチ絵で、こちらの総合対策検討会(親会)と作業班との関係を説 明できると思います。このように、対象副作用の選定であるとか、副作用マニュアルの 評価については、この検討会(親会)でお願いしたいと考えております。また、実際の マニュアル作成作業については、関係学会との連携の上で作業班で実施していくといっ たことを考えております。簡単ですが、以上が事業概要の説明です。 ○松本座長  事務局から事業について説明していただきましたが、ご質問、ご意見があればお願い いたします。本事業について、特段ご質問がないようでしたら、具体的にマニュアル作 成に関する検討に進みたいと思いますが、よろしいでしょうか。  それでは、続きまして議事2に進みます。マニュアル作成対象副作用についてご検討 いただきたいと思います。まず事務局からの説明をお願いいたします。 ○事務局  本日、この検討会開催の前に、日本病院薬剤師会を中心に事前の検討をお願いしてお りまして、「マニュアル作成対象副作用大分類及び初年度候補(案)」について、検 討、作成をお願いしている次第です。事務局より概要を説明させていただいた後に、今 回検討いただいた林委員に補足をお願いできればと考えております。  お手元の資料4、参考資料2、3に基づき、概要を説明いたします。ご案内のとお り、薬事法第77条の4の2に基づきまして、副作用報告というものが、企業及び医療関 係者から厚生労働省あるいは医薬品医療機器総合機構を通じてご報告いただいておりま す。非常にたくさんの報告がある中で、因果関係に否定的なものなども含めていろいろ な副作用報告があるわけですが、その副作用について大きく11の分野に分類し、これら の中から重篤性あるいは診断の困難さなどといったことを総合的に考慮して、日本病院 薬剤師会を中心とした専門の先生方により、初年度の作成項目の案について提案いただ いたものが資料4の候補(案)です。  11の分野ですが、皮膚、肝臓、腎臓、血液、呼吸器、消化器、心臓・循環器、神経・ 精神、代謝、筋骨格系、過敏症の11の分野に分類しており、例えば皮膚の分野について は皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症といった副作用を初年度のマニュアル作成候補 として取り上げております。簡単ですが、概要の説明をさせていただきました。 ○松本座長  林委員から追加があればお願いいたします。 ○林委員  ご指名ですので、少し補足させていただきます。先ほど重篤な副作用疾患の対応マニ ュアルということで、特段ご質問も出なかったところですが、臨床にいらっしゃる先生 方の認識として、副作用を完全には予知することは困難とのお考えもあると思われま す。ここでは学術的に確定的な判別基準を全部備えなくても、重篤化する恐れのある副 作用を初期の段階で医療従事者あるいは患者が早めに気付くことで救える健康被害もあ るので、そのためのチェックリスト、チェックマニュアルを根拠に基づいて作成しよう というのが基本的な考え方だと思います。  私ども日本病院薬剤師会では、ベッドサイドで薬剤師が薬学的患者ケアを行うことが 多くなりまして、服薬説明はもちろんですが、もし初期段階で副作用を見つけたら、医 師にフィードバックし回避策を提案するなどして少しでも患者の負担を軽くしたいと考 えて、事務局で机上に置いてある「重大な副作用回避のための服薬指導情報集」を以前 に作成した経験があります。その準備段階で事務局に協力してきましたので、私から少 し説明させていただきます。資料4に挙がっている重篤副作用疾患総合対策事業の対象 とする副作用用語は、ご専門の先生の中には副作用用語として定義しづらいと感じる方 もいらっしゃると思います。ここであげた副作用用語は、医療関係者の日常の診療の基 本となる添付文書の用語から選定しました。  また、現実的な側面と言いますと、早期発見に繋がる副作用の初期症状といったもの で用語を分類すると、厳密な学問的な副作用の分類とは別の用語を同意語とすることが 可能な場合もあります。  例えば、急性腎不全というのは急性の腎臓機能不全の状態でありますが、そのメカニ ズムが間質性のものであっても、そうでなくても良いわけで、間質性腎炎の一部は急性 腎不全に含まれるという議論もあるかと思います。胆汁のうっ滞による肝炎が生じれば 胆汁うっ滞型肝炎で、劇症肝炎はむしろ病態の重篤度、進行速度を定義に含んでおり用 語が一様ではありません。これは医師、薬剤師が日常的に使う添付文書と関連づけて考 えて、早期発見のための用語として今回提案してみました。  この事業では、長期的展望に立つと、機序の解明、さらなる予防策の発見に寄与でき るように、医療関係者にそれを伝達するという部分も含まれていると思います。この用 語については、多くの専門の先生方に、まず話し合っていただく出発点として、添付文 書に即して選定すると、現実的にはこのようなものがある程度考えられるということで 提案しました。事務局の皆さんとも相談したのですが、実際の副作用発現頻度が高いも のを初年度用語の候補にしたほうが、多くの国民にベネフィットが出る可能性があると いうことで提案いたしました。 ○松本座長  ただいまの補足説明も含めて、ご意見があればお願いいたします。この副作用名を選 んだ根拠は何ですか。 ○林委員  実際に発現している重篤な副作用であることが1点。そのような事例が、副作用が確 立したもので稀ではあっても確実に、被害救済や、厚生労働省への副作用の報告に挙が ってくるものであるということが1点。患者に気付いてもらえるような初期症状がある、 あるいは医療関係者側が注意していれば、何らかの形で早期発見に繋がるモニタリング 項目があることが想定できるものを添付文書からリストアップしてみたところです。こ の3点が主な根拠だと思います。 ○松本座長  重篤であることは間違いなく重篤なわけですが、頻度として高いということの根拠は ありますか。 ○事務局  参考資料3として配付した「副作用種類別報告件数」が、1つ参考になろうかと思い ます。これについては2004年4月1日から2005年3月31日までの間に、薬事法第77条の 4の2の規定に基づいて報告のあったもののうち、20件以上報告されている副作用につ いて、報告件数別に多い順から並べたものです。ただ、注意事項として書いてあるとお り、医薬品との因果関係が不明なものも含まれることなど、全て科学的に因果関係を評 価した上での数字ではないということをご了承いただければと思います。 ○松本座長  他に何かご意見、ご質問があればお願いいたします。 ○上田委員  この分類で4年間通すという形になるのでしょうか。 ○松本座長  事務局、いかがですか。この分類で4年間通して副作用をチェックしていくというこ とですか。 ○事務局  当初の案として、このような大分類で進めていくのが一案かと思っております。必要 に応じて、何か途中でこうしたほうがいいといったことがあれば、年度、年度の途中で 検討をするということはあろうかと思います。 ○戸田委員  この分類は、もう決まったものなのですか。例えば、肝臓のところではちょっと問題 があるのです。 ○松本座長  副作用名に関してですね。それに対するご意見を伺おうと思っております。 ○戸田委員  肝臓をやっている人たちが、おそらく納得しないと思うのです。 ○松本座長  それを言っていただきたいのです。どのようなところがどうであるということを、細 かく言っていただければと思います。 ○戸田委員  要するに、肝細胞障害か、胆汁うっ滞か、急性肝不全かですが、「重篤な肝障害」は やはり肝細胞障害。肝細胞障害にも肝炎があるし、脂肪肝、肉芽腫といろいろあるわけ です。胆汁うっ滞だけで十分間に合う。劇症肝炎については、現在でも劇症肝炎は非常 に予後が悪い疾患ですが、肝炎にならないで、肝細胞の壊死と言いますか、肝臓がどん どん壊れていく、これは肝炎ではないわけですから、むしろ急性肝不全にするとか、名 称の問題で変えていいかどうか。 ○松本座長  その辺のことを含めて、ここで副作用名を決めていただきたいというのが、この会の 1つの目的でもあるのです。これを見て単純に言えることは、ほとんどの副作用名が単 独疾患または症候名なのに対して、1つだけ「重篤な肝障害」というのは、委員が言わ れるように非常に曖昧なものです。もう1つは劇症肝炎。これを劇症肝不全とした場 合、今度は劇症肝炎も含まれてしまいますので、その辺をどうするかという問題も入っ てくるわけです。 ○上田委員  この副作用名が添付文書などに書いてある言葉であるということが、1つ違和感を感 じるところだと思います。副作用として、「重篤な肝障害」というのが非常に頻度が高 く、添付文書に載っているわけです。副作用の面から見ると、このような言葉が一番多 くの人に見られているということがあると思うのです。それと、本当の学問的な分類と どのようにバランスをとるかが難しいことだと思います。 ○松本委員  これから学会との共同でいくといった場合、戸田委員が先ほど言われたように、かな り曖昧な部分があるので、学会が承知しないということはあり得ると思うのです。その 辺を含めて、やはり整理しておかないと、ということになると思います。 ○戸田委員  肝臓学会では、薬物性肝障害の診断基準というのが今出来上がっています。薬物起因 性の肝障害というのは、今肝臓学会でも注目されているので、この分類について、これ で決まってしまったということになるといろいろ問題が出てくるので、どのような分類 にするかというのを各学会で考えさせていただければと思います。 ○松本座長  事務局としてはどうなのでしょうか。例えば、皮膚のほうははっきりしていていちば んいい。皮膚粘膜眼症候群とか中毒性表皮壊死症というのは比較的多いもので、これに 対してマニュアルを作ってもらえば大変助かるということはあるのですが、飯島委員い かがでしょうか。 ○飯島委員  まず副作用名のことですが、皮膚粘膜眼症候群は多分にお役所用語だと思います。我 々はスティーブンス・ジョンソン症候群と言います。例えば、参考資料3の1頁目の25 番目に、スティーブンス・ジョンソン症候群という副作用名が出ていますが、こちらで は皮膚粘膜眼症候群。副作用で言うときは併用しますがスティーブンス・ジョンソン症 候群のほうがポピュラーですので、そちらを使っていただきたい。同じく中毒性表皮壊 死症も、2頁では中毒性表皮壊死融解症、これはトクシック・エピダーマル・ネクロラ イシスと言いますから、原典から言うと参考資料のほうが正しいのです。ですから、こ れもどのような病名がいいのか、病名の定義の問題ですが、今ようやく診断基準をつく ったところですので。 ○松本座長  融解症のほうが正しいわけですか。 ○飯島委員  厳密に言うと正しいです。ネクロライシスはネクロが壊死、ライシスが解離ですから 正しいのですが、副作用の用語としては中毒性表皮壊死症で通っておりますので、それ でもやむを得ないかなと思います。むしろ、これはTENあるいはライエル症候群と言 ったほうが通りがよろしいので、病名の問題はそこにあります。ただ、ちょっとお聞き したいのですが、ようやくスティーブンス・ジョンソンとTENの疫学がわかってきま して、日本ではスティーブンス・ジョンソンが人口100万人当たり年3名ぐらい、TE Nは大体年1名ぐらい出るだろうといわれています。スティーブンス・ジョンソンの症 例数が300というのは、人口が大体1億2,000万人ですので300ぐらいはあってもいいの かなと思うのですが、TENは194例ぐらいとなっており、こんなに起こっているはず はないので、この統計をどこまで信用していいのかなと思います。 ○松本座長  副作用の表現方法がいろいろあるということは別にして、この副作用を取るか、取ら ないか。 ○飯島委員  これは絶対取らせていただきたい。 ○松本座長  そうですね。それならば、そのような形でまずピックアップしていく。正式な用語に 関しては、学会にお願いするわけですから、そこで学会用語としてきちんとしてもら い、同義語として使われているものを挙げていけばいいのではないかと思います。 ○飯島委員  それに関して我々皮膚の領域では、正式には薬剤性過敏症症候群、ドラッグ・インデ ュースト・ハイパーセンシティビティ・シンドローム(DIHS)という副作用があり ます。一部の医薬品の表示では「遅発性の重篤な副作用」というものになっていると思 います。特に抗てんかん薬で表示が変わっているところがあると思いますが、あれはD IHS(ディーズ)と言っておりますが、肝障害も合併しますし、血液障害も腎障害も いろいろなところに合併してきますが、そのような重篤例がありますし、ある程度疾患 概念も固まってきましたので、3つ目としてDIHSを是非とも加えていただきたい。 ○松本座長  そのようなことからいきますと、肝臓のほうは、例えば候補としてどのようなものを 選べばいいでしょうか。 ○戸田委員  これに準ずるとすれば、例えば薬物起因性の肝障害の中には肝がんもあるわけです が、それは今回外したとしても、重篤な肝障害というと、あまりに曖昧な概念ですの で、肝細胞障害とする。胆汁うっ滞型肝炎は、やはり胆汁うっ滞だけでよろしいのでは ないかと思います。この3つの分類に従うとすれば、劇症肝炎は肝不全と。そのように まとめれば、ある程度対応は可能だと思いますが、これだとちょっとなかなか難しいと いうのがあります。 ○松本座長  これに関して、他にご意見があればお願いいたします。 ○中村委員  患者サイドから考えますと、薬の副作用というのは、事業の目的のところにも書かれ ているように、どこに起こるか、何が起きるかわからない。かぜ薬でスティーブンス・ ジョンソン症候群という重篤な皮膚障害が100万人に数名というようなレベルで起きる としたら、専門家の先生の所に早く行かなくてはいけないわけです。そのような意味か ら、先ほどの林委員が説明された大分類を見ると、これと専門の先生の学会とが合って いるような気がするのです。過敏症は過敏症学会というのがあるのかどうかわかりませ んが、事務局サイドに伺いたいのですが、このマニュアルを作っていくときの作業班を どの学会にお願いするかというのは、どのように考えていけばいいのでしょうか。 ○松本座長  事務局、何かありますか。 ○事務局  どこの学会にお願いすべきか、その候補については、この検討会でご意見をいただい た後に、個別に専門の委員の方々にお伺いしようかと思っていたところです。基本的に は、例えば肝臓であれば肝臓の専門の学会にお願いさせていただきたく、疾患によって は中村委員が言われたように、様々な学会、複数の学会にお願いするパターンもあろう かと思います。具体的にどのような学会にお願いするのがいいのかについては、個別の 先生とも相談させていただければと考えています。 ○上田委員  その点について、9番目に「代謝」というのがあるのですが、普通、代謝というと代 謝内分泌と言います。これだと内分泌学会がちょっとそっぽを向いてしまうかもしれな いですから、代謝・内分泌という分類がいいのではないかと思うのですが、いかがでし ょうか。 ○松本座長  まず大分類ですね。それは簡単に変えられますね。もう1つ、このような検討会がつ くられた理由は、例えば肝細胞障害が起こったときに、劇症肝炎にさえならなければ、 患者さんが亡くなることはまずないということで、そのようになる初期症状を見つけら れるかどうかというのも、この検討会がつくられた理由の1つだと思います。胆汁うっ 滞というのは比較的予後がいいわけですから、起こっていても命まではいかない、黄疸 が強くても命にかかわるところまではいかないですが、劇症肝炎でしたら、場合によっ ては命が危ないということで、初期症状を早めに見つけて早めに対処しようというの も、1つの大きな理由と思います。そのようなことを含めて副作用を選んでいただけれ ばというのが、1つの希望でもあるのです。 ○戸田委員  重篤な肝障害、要するにGOT、GPTの上昇が主体の薬物性肝障害は、早期に見つ けられるといいのですが、その薬をずっと飲み続けると、劇症肝炎になることがありま す。 ○松本座長  肝細胞障害がある限りはですね。 ○戸田委員  早期に見つければ、服薬中止によって良くなりますが、肝細胞障害があるにもかかわ らず、その薬を飲み続けていると、最終的には肝不全になります。非常に軽い肝細胞障 害でもその時点で見つける。必ずしも重篤である必要はないわけで、軽い肝細胞障害の 段階で早期に見つけないといけないという意味では、特に「重篤な」を付ける必要はな いように思います。 ○松本座長  項目としてはですね。 ○戸田委員  劇症肝炎も最初は軽い肝障害なのです。最初から劇症肝炎として発症するわけではな いのです。 ○松本座長  そうですね。肝炎にしても、急性肝炎にしても、肝細胞障害でもいいのですが、経過 を見ている間にプロトロンビンタイムがどんどん落ちていくものは注意しろ、GOT、 GPTが落ちていてもPTが落ちていたら注意しろといったことを早めに警告すること が重要だと思います。確かに、重篤な肝障害でなくても、薬剤によって起こるという意 味で選んでいけば肝細胞障害でも、肝炎でもいいわけです。 ○戸田委員  そうです。 ○松本座長  例えば皮膚科の場合、TENなどはかなり危険なわけですから、そのような意味で早 めにどうやって見つけるかとか、そのような方法があるのかということだと思います。 皮膚科の場合、用語名に関しては問題があるかもしれませんが、皮膚粘膜眼症候群や中 毒性表皮壊死症というのは、選ばれる1つの副作用名に入るかと思うのです。戸田委員 が言われるように、肝臓の場合どれを選ぶかというのは、非常に難しい。劇症肝炎と言 えば、いちばん簡単でいいのですが。 ○戸田委員  「重篤な」と言うときに、「重篤な」というのはどのような定義かということをちょ っと考えたほうがいいです。 ○松本座長  「重篤な」というのは消してもいいのです。 ○戸田委員  入院が必要なほどの肝障害ということでしょうね。胆汁うっ滞の場合、これは完全な 胆汁うっ滞だと言った場合、必ずしも予後は悪くないわけですから、外来で診ましょう などということもあるのですが、普通はすごい黄疸がきますし、痒みがくるということ で、入院させたら良くなるかと言ったら、必ずしも良くならないで、そのまま肝硬変に なってしまうという症例もあるわけです。 ○松本座長  肝臓学会で引き受けてもらえる副作用名としてはどのようなものがあるのでしょう か。 ○戸田委員  重篤な肝障害ではなくて、やはり肝細胞障害。胆汁うっ滞型肝炎ではなくて、胆汁う っ滞でいいのです。劇症肝炎については、肝不全と。 ○松本座長  そうであるならばということですが、他に何かご意見があればお願いいたします。腎 臓のほうはいかがですか。 ○上田委員  今のことですが、そういった場合、添付文書などはいかがでしょうか。実際使われて いる文書とコネクトさせるということをしていただきたいわけですが、そこが難しい。 要するに、学問的な専門の世界での言葉と、一般に添付文書などで常用されている言葉 とが、どのような関連になっているかをはっきりさせていただくということも1つ必要 かなと思います。 ○戸田委員  そうです。副作用種類別報告件数は添付文書に載っているものだと思います。この中 の黄疸は肝機能異常とは別になっていますが、黄疸というのは肝機能異常でくるもので あって、独立すべきものではないし、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加 というのが別立てになっているのですが、これは肝障害に全部含まれてしまいます。こ の添付文書に載っている副作用名というのは、肝障害についてはいろいろ問題があるの です。GOT、GPTの上昇以外に、黄疸というのが別に副作用に載っていたりするの です。黄疸があれば、大抵GOT、GPTの上昇はあるわけですから、それを別にする ことはおかしいわけです。添付文書に載っている副作用名というのは問題だと思ってい ます。 ○松本座長  黄疸に関しては、溶血性黄疸がありますので、わけがわからない、おそらく溶血で起 こっているのではないかというのがかなり入っていますから、必ずしも肝臓だけではな い部分もないわけではないのです。副作用の場合、結構、溶血は多いみたいですので、 そのようなこともあると思います。 ○戸田委員  血中ビリルビンの増加というのがあるのですが、これは黄疸のことですね。これも別 になっているというのはおかしな話です。一致させるというのはやるべきですが、まず 添付文書に載っている用語から整理していかないといけないと思っています。 ○松本座長  他にご意見があればお願いいたします。この辺は非常に難しいところですが、ここを 統一しないことには、学会にお願いするにしても。 ○事務局  今のご指摘について、重篤副作用疾患別対応マニュアルの記載項目の案の中にも、若 干関係すると思うのですが、例えば副作用名の表記の仕方についてはどのようなことを 基本としているかということもあると思いますが、委員の皆様のご意見からすると、学 問上の正確性、医療現場における一般的に使われている言葉との関係をよく考慮する必 要があるのではないかということだと思っております。したがって、例えばマニュアル の中には一般的な副作用名を書きつつ、さらに添付文書の中でよく使われている言葉と してこのようなものがあることを、同義語といった形でまとめるという考え方もあると 思いますし、その先には必要に応じて整理をしていくという方向性も考えられると思っ ております。 ○田島委員  しかもお願いとしては、索引をしっかり作っていただきたいと思うのです。同義語 と、いわゆる疾患名、または、例えば腎臓を見ても1は疾患名で、2は疾患名になると 思うのですが、そのようなところの索引があれば、混乱は少なくなると思います。その 辺はかなり大変な作業になるとは思うのですが、それをやらないと役に立たないのでは ないかと思います。 ○松本座長  林委員、今までの意見をお聞きになった上で、何かご意見があればお願いいたしま す。 ○林委員  今回の分類を作る中でも、委員の皆さんからいただいたご意見は十分想定されると思 っておりました。上田委員が言われるように、やはり現場にいる薬剤師、医師の皆さん が添付文書をもとに処方や調剤を行うことがあるため、そこに記載の副作用名を挙げま したが、もちろん学会の先生方に依頼するに当たっては、機序の解明というのも将来の 展望にありますし、学問的に正しい分類を踏まえつつ、今ご指摘があったように、そこ を検索できるようリンクさせていくという形で整理していければと思います。これは、 どちらかというと添付文書の記載よりで候補を挙げてあるとご理解いただければ、今の ご議論で進めていく方向でいいのではないかと感じています。 ○松本座長  確かに、田島委員が言われるように症候名があり、疾患名があり、いろいろなものが 混じり合ったものがあるので、選択した根拠、何が根拠になっているかというのは大変 理解しにくいところがあります。何か1つ決まっていれば、それによって流れを作るこ とは可能ですが。 ○栗山委員  副作用名と添付文書に書かれている言葉というのは、これからも変わっていく可能性 があるのでしょうか。例えば、副作用はそこで発生したら、それに関係したドクターも 報告しないといけないことになっていますから、副作用名を付けて出すのですが、その ときに診断がついていればきちんとした学名、病名がつくでしょうし、単なる症状名で いく場合もあるでしょう。それと添付文書に採用される副作用の名前というのは、どこ かで整理、一旦それらをまとめた上で、既存のものでもう1回カテゴライズし直してか らやっているのでしょうか。その辺がちょっとわからないのです。 ○松本座長  それはまさにここに書いてあるとおりですね。ここにまとめられているものに、あら ゆるものが入っています。 ○栗山委員  この副作用名というのは、副作用報告をしたときに書いてある名前が大体挙がってき ています。 ○松本座長  そうですね。 ○栗山委員  しかし、添付文書に書いてあるのはこれをそのまま載せているのか、別にまとめて、 既存のカテゴリーでやっていて理解するようにしているのか、その辺はどうなのでしょ うか。 ○市川委員  業界代表ということで、企業の添付文書作成の立場で発言させていただきます。先ほ どの栗山委員の質問ですが、実際、現在、安全対策課・審査管理課から発出されている 通知(平成16年3月25日付薬食安発第0325001号・薬食審審査発第0325032号通知)では、 MedDRAの用語を添付文書の副作用名に使用しても差し支えないというレギュレーション になっております。言い換えれば、MedDRAの用語を添付文書の副作用名として使用でき る訳ですが、実際はまだ添付文書の副作用名のほうには、MedDRAの用語をそのまま使用 することが浸透していないというのが現状です。つまり、企業作成の添付文書は、大抵 は医師から報告された副作用名をそのまま掲載しているのではなく、集積された同種の 副作用をカテゴライズした上、馴染みのある副作用が添付文書の副作用名として挙げら れている訳です。しかし、最近の新薬では、ICHのMedDRAの用語が随分浸透しているこ とが影響してか、MedDRAの用語を添付文書に使用しているのを目にする機会もあります し、また、外国におけるブリッジングスタディーを利用して承認された医薬品にあって は、MedDRAの用語を添付文書の副作用名として使用しているケースも増えつつあります が、まだまだMedDRAの用語は医療専門家の皆様には馴染みが少ないというのが実情で す。 ○栗山委員  わからないのですが、MedDRAの用語というのは疾患名ですか。 ○市川委員  MedDRAの用語は、参考資料3に挙げられているような用語のことです。具体的に言え ば、副作用種類別報告件数一覧における「副作用(PT)」欄に挙げられている用語とご 理解いただければと思います。 ○栗山委員  内容を見ると、かなりオーバーラップしているのがいくつかありますね。それはそれ でいいと思うのですが、先ほどから話を聞いていて、まとめ方として、例えば呼吸器で も消化器でもいいのですが、そこの学会にお願いして、薬剤による重篤な副作用を2つ ないし3つぐらい挙げていただく、それは学会に選んでいただいて、病名でもいいし病 態名でもいいのですがきちっとしたものを挙げて、それについて書いていただくと同時 に、別の次元で、薬剤師が患者から相談されたときに考えるポイントとして症候名から いくことがあるし、鑑別診断で言うと症状からいくやり方があります。  そのような形で、学会ごとではなくていくつかの、息ぎれだったら息ぎれでもいいの です、呼吸器も関係がありますし、循環器も関係がありますし、神経性のものもあるか もしれない。そういった代表的な症候名、皮膚でもいいのですが、それに関係したいく つかの学会が共同して1つ作ると。そのようなのも非常に使いやすいのではないかと思 うのです。各学会で重篤な副作用、これは起こっては困るという病名からいくやり方も あるし、息ぎれあるいは粘膜、目が赤いということだけでもいいのですが、非常に重篤 な副作用の前兆である可能性がありますから、そのようなときにはこのような病気を考 えろという形のマニュアルです。2つあれば非常に使いやすいし、使い分けができるの ではないかと思いましたが、事務局では2段階に分けて作るという考えはないのでしょ うか。 ○事務局  ただ今の議論を伺いますと、記載すべき中身として、どのようなことをマニュアルの 中で言及していくのかといったところにも関係してくるのではないかと思っておりま す。概要については後ほど説明したいと思いますが、例えば事前に検討していただいて いる案の中では、他覚的症状であるとか、そういった所見についてもマニュアルの中に 盛り込んではいかがでしょうかという案もいただいております。 ○松本座長  具体的にはどのようなことですか。 ○事務局  お手元の資料5にも関係しますので、そちらをご覧ください。対応マニュアルの記載 項目(案)についても、林委員を中心に、その順番も含めていろいろと検討していただ いているところです。そのような中で、例えば副作用の概要として、いろいろな項目を 書いてはどうかという提案をいただいているわけです。例えば自覚的症状、他覚的症 状、所見、認証検査値、画像検査の所見といったことについても、可能な限りマニュア ルの中に含めていくということ、ご提案をいただいている状況です。 ○松本座長  こちらのほうは、副作用の対象が決まれば自動的に持っていけますので、やはり、ど のような方針で対象副作用を選ぶかということを決めていかざるを得ないですね。今の この案では、戸田委員からあったように肝臓は肝細胞障害、胆汁うっ滞、肝不全とすれ ばいいという。 ○戸田委員  これに合わせるとすればということです。というのは、肝臓の分野では、薬物性肝障 害というのは、それ自身で疾患名になっているのです。その中には肝細胞障害があり、 胆汁うっ滞があり、劇症肝炎があると、そのようになっているのです。そういった意味 では、この分類はかなり無理をしているというところはあるのです。薬物性肝障害その ものが疾患名になっているわけですから。ウイルス性肝炎とか、脂肪肝といった分類の 中にも薬物性肝障害があるという記載がされている。ですから、本日示されたような分 類に対して、もちろん肝臓学会としては対応は可能ですが、他の領域で、例えば間質性 腎炎、間質性肺炎などとはちょっと合わないところが出てきますが、対応は可能です。  添付文書に記載されているような、いわゆる症状名に対して、例えば肝機能異常、肝 障害、ALTの上昇、AST、劇症肝炎、黄疸などとたくさんあるのですが、これは全 部肝障害です。 ○松本座長  それは全部ダブっていますから。 ○戸田委員  ダブっているのです。しかし、例えばASTの上昇があったら何を考えるかとか、そ のような対応の仕方もあるかなと。例えば黄疸を見たら胆汁うっ滞か肝細胞障害かと、 そういった対応の仕方も可能であるということです。症状名から肝臓の本当の病態を診 断するという、そのようなアプローチもあるのではないかと思います。 ○松本座長  いまの戸田委員の意見ですが、事務局が意図しているものとの関係はどうですか。 ○事務局  やはり、臓器あるいは部位などによっては、専門の先生方の分類であるとか、学問的 な考え方を優先させる時期にあるとか、あるいは、添付文書上の記載を優先させたほう が、よりわかりやすいのではないかという意見もあろうかと思います。よろしければ学 会などの先生のご意見で、どちらを表に出して優先していくのかを含めて、例えば作業 班のほうで学会の先生方に検討いただくことも一案かと思っております。 ○松本座長  初年度ですから、そのほうがいいかもしれません。学会の先生の意見を聞いた上で、 どの副作用を選んでいくか。ここで決めてしまって、これをお願いしますと言うと、こ ういう本を作るのと同じ格好になりますので、なかなか難しい面があるかと思います。 その辺はいかがでしょうか。上田委員、腎臓に関しては、私らも知りたいという副作用 名が挙がっているような気はするのですが。自分の専門ということになると、やはりい ろいろな意見が出てくるのではないか。専門外であれば、これは知りたいなと思うので す。その辺、専門の先生が全ておられるわけではないし、専門と関係ないことについて 委員の皆さんのご意見を聞きたいというところもあるのです、何かありませんか。  例えば、筋骨格系では横紋筋融解症や悪性症候群について知りたいところであります ので、これについて書いていただければ大変助かるという気はあります。しかし、それ を学会にお願いした場合に、そのまま簡単に引き受けてもらえるかどうか、適当な学会 があるかどうかについては別問題になりますが。  先ほど事務局が提案したように、一応原則としてはここに書いてあるものでよろしい と思います。戸田委員から肝臓学会に関して先ほどのような提案がありましたので、こ ういうことを含めて、それぞれの学会で、副作用名を最初は2、3ほど決めていただい て作ってみるのはいかがでしょうか。 ○戸田委員  先ほど「添付文書に記載された副作用報告の用語にも対応してほしい」とありました が、それに対してどう学会として対応していくか。例えばこの中に、アルカリホスファ ターゼの増加が副作用名に入っています。もちろん、アイソボリンを常用している場合 はアルカリホスファターゼも調べなさいといった対応もできるわけです。それでアルカ リホスファターゼを調べて、そういうときは胆汁うっ滞が考えられますとか、このとき は骨の問題といった対応も可能です。副作用名として添付文書に報告されているいろい ろな症状名、検査値の異常それぞれについて、こういうときはどういうものを考えるか という対応も可能なわけです。 ○松本座長  それはどうでしょうか。事務局、何かありますか。 ○事務局  実際の作業としては作業班のほうで、おそらく学会の先生方、日本病院薬剤師会の先 生方を中心にやっていただくと思います。その作業班においては、私ども厚生労働省 や、独立行政法人医薬品医療機器総合機構も積極的に参加させていただきたいと考えて おります。例えばMedDRAの用語などで国際的に使用されている副作用の用語などについ て、委員の皆さんに馴染みがないといったこともあろうかと思いますが、そうした用語 についても、情報を盛り込めるよう、私どものほうからも積極的に参加させていただき たいと考えております。 ○上田委員  もともと添付文書に載っている副作用名がすべて、要するにメカニズムを理解して挙 がってきたものではないのです。そういうものでも、採用基準がわからなくても、例え ばそういう系統で5例の重症例が出たら、あるいは3例出たら、やはり添付文書に載せ ようというのが今までの姿勢です。メカニズムなどはどうでもいい、可能性があるのな ら書いてしまえという思想です。それが3年、4年と経っていくうちに、本来のメカニ ズムを分類して、こういう記載状況にしようと提案できると思うのです。最初の取っか かりはこの辺からいって、将来的には、そういうことになっていくのではないかという ことでいいのではないでしょうか。  肝障害、急性腎不全にしても、原因が腎前性、腎性、腎後性、腎性の中でも糸球体、 尿細管腎といろいろあって、わからない部分もかなりあるわけです。そういうことも含 めて、こういうところから取っかかって、それから、よりいい方向にもっていけたらい いのではないかと感じました。 ○笠原委員  追加させていただきます。MedDRAの用語は基本的にコード化されていると思います。 基本的にいろいろな用語を整理してコード化しておかないと頻度の面で非常に問題にな ってくると思います。副作用のケースでも、例えば122番にサイトメガロウイルス感染、 149番に感染、381番サイトメガロウイルス抗原陽性と非常に似た項目です。例えば感染 にしても、先ほどの肝炎関係もそうですし、状態、臨床検査値などいろいろな副作用例 として出ていますが、この辺を整理しておかないと、「重大副作用」と言った場合に頻 度が非常に重要になってきます。  先ほど田島委員が言われましたコード化をきちんとしておかないと、やはり頻度で問 題になってきますので、ここは整理できないのでしょうか。今までの添付文書の問題も あると思いますが、学会に依頼する前に、こういうところをある程度整理しておく作業 が必要ではないでしょうか。 ○松本座長  今は添付文書そのものがMedDRA/Jでないので、どうなのでしょうか。 ○安全使用推進室長  MedDRAの用語は、臨床現場で起こった副作用や、いろいろ千差万別の症状や疾患を報 告する際に、できるだけ正確に報告できるようにと非常に細かい分類が用意されており ます。ただ、実際に副作用として報告される場合は、必ずしも専門でないドクターが診 られている場合もあります。情報が非常に不足している場合には、何の感染かわからな い。先ほどご指摘のように単に感染と挙がってくる場合もあります。一方では、非常に 細かい菌の種類まで、特定した感染症と挙がってくる場合もあります。  ここで示した資料についても、単純にMedDRAのコード別で、頻度の高いものから順に 並べたというだけです。私どもとしては、実際に学会に協力していただく場合は、 MedDRAの中でも肝臓疾患であれば肝臓疾患に関連する用語をバインドして検索できるよ うな、SMQと言っておりますが、今10数種類できております。そのようなものを使い 再度分析し直した結果を作業班に提供できると思います。 ○松本座長  そうしますと、それぞれ作業班で決めてもらうほうがいいでしょうか。ここで議論し ても、個々の副作用に関しては結論が出そうにないですね。ただ、作業班でいった場合 に、統一されたものにならない可能性があります。それぞれの学会との関係でいろいろ なものが出てくる可能性があるので、大枠ぐらいは決めておいたほうがいいですか。こ こでは決められませんが。 ○安全使用推進室長  ここに挙げております11の大分類について、ここでご了承いただけるかどうか。それ と、関連する学会の候補についてご意見をいただきたい。あとは学会に、私どもから相 談をさせていただくということでいかがでしょうか。 ○松本座長  そうしますと、この大分類に関してはいかがでしょうか。先ほど上田委員から、代謝 のところは代謝・内分泌にするということでしたが、そのほうがよろしいと思います。 神経・精神を一緒にすること自体かなり問題があるかもしれません。 ○戸田委員  一緒にしないほうがいいと思います。 ○上田委員  ここでいいますと、うつ状態が精神科、錐体外路症状と白質脳症は神経内科というこ とになりますね。 ○松本座長  そういう感じになります。筋骨格系は、いいですかね、整形外科で。悪性症候群はど ちらかというと、精神科領域で起こることが多いので、現実的には精神科ですが、疾患 自体はどこに所属しますかね。現実的な面からお願いする学会先は変わってくるかもし れません。例えば横紋筋融解症はHMG-CoA還元酵素阻害剤によって起こることが多いわ けですから、そちらのほうが知っているかもしれないという面もあります。この分け方 をしておいて、個々に頼む学会は別に決めればいいわけですから、大分類はこれでよろ しいですか。 ○上田委員  神経内科と精神科は分けるわけですね。 ○松本座長  それは分けます。それと、代謝・内分泌は一緒にするということです。  その中に入っているのは1つの例としてで、これは個々の学会で修正は可能です。皮 膚に関しては、こちらとして知りたい候補としては、この2つと。 ○飯島委員  それに、もう1つ過敏症症候群を加える。死亡率が10%ほどありますので、これを是 非とも加えていただきたいと思います。 ○松本座長  では、それはこの段階で加えるとしましょう。肝臓に関しては、先ほど戸田委員か ら、肝細胞障害、胆汁うっ滞、肝不全ということでしたが、実際上は学会のほうと先生 に決めてもらうということでよろしいでしょうか。  それと腎臓は、差し当たり急性腎不全と、間質性腎炎。 ○上田委員  腎臓を考えますと、もちろんネフローゼ症候群などがありますが、頻度的には急性腎 不全、間質性腎炎という形で。急性腎不全を作用機序ごとに分けることになると思いま す。大分類としては、この2つでどうにかいけるのではないかと考えます。 ○松本座長  血液に関しては、専門の先生がおいでにならないのですが、大体このようなもので。 血栓症はここに入ってもいいのですかね。 ○上田委員  血栓症の場合はDICをどうするかというところですね。 ○松本座長  これは血液の作業部会のときに詰めればいいですね。どちらにしても、血液との関連 はありますか。 ○戸田委員  血栓症は血液ではなく脳関係に入るのではないでしょうか。 ○松本座長  脳のほうに多いわけですけれども、血栓症を選ばれた理由は何でしょうか。やはり頻 度が多いのですか。それとも全ての血栓症、心臓のほうも含めて、多いということで血 栓症が入ったのですか。 ○林委員  そのようにご理解いただいていいと思います。どこに分類するか悩んだのは、凝固系 を中心に考えるのであれば血液ですし、現象として血栓を考えれば循環器になるとも言 えるからです。部位も腸間膜か、頭か。乳頭浮腫になれば目にも症状が出ます。消化 器、脳外科、眼科とご専門が異なることになります。どこにでも、例えば詰まった所に 症状が出るわけですが、とりあえずここに入れたという形です。 ○松本座長  こちらのほうは希望するということで。どこの学会に頼むにしても、血栓症は解説を 希望するということで、入れるということでよろしいでしょうか。あと、呼吸器はこの ようなものですか。 ○栗山委員  間質性肺炎がいちばん重篤で、あとは喘息発作ということになります。あと肺水腫 は、呼吸器で扱うものと心臓で扱うものとメカニズムが少し違うのです。ある種の肺水 腫は間質性肺炎に入ってしまう可能性もあるのです、急性肺障害という意味では。この 辺は2つないし3つということで言っていただければ、呼吸器の学会としては、お受け して重篤なものを選んでやります、という対応はできると思います。 ○松本座長  作業部会のときは、心臓のほうも入りますが、それを含めてお話になればいいのでは ないかと思います。それと消化器は、このようなものでいいですね。 ○戸田委員  いいと思います。 ○松本座長  それから、心臓はおいでにならないのですが、心室頻拍、うっ血性心不全はかなり重 篤ですので、一応候補として挙げて、作業部会で変われば変わってもいいと。あと代謝 ・内分泌は、低血糖と偽アルドステロン症が入っていますが、偽アルドステロン症は多 いのですか。 ○上田委員  これは横紋筋融解症にも結構オーバーラップするところがありますので、そこをうま くやったほうがいいと思います。 ○松本座長  これは学会との兼ね合いのときにも議題になると思いますが、筋骨格系では横紋筋融 解症と悪性症候群は、いいところだと思います。いかがでしょうか。  それと、過敏症に関して森田委員、いかがでしょうか。アナフィラキシー、血管浮 腫。 ○森田委員  これで結構だと思います。血管浮腫と蕁麻疹は非常にメカニズムが似ていますが、血 管浮腫のほうがより重篤だということで選んだのだと思います。血管浮腫はアナフィラ キシーとオーバーラップするところがあります。ですから、アナフィラキシーから重篤 な症状として血管浮腫を抜き出しているということだと思います。  呼吸器のところにあるNSAIDsの過敏症については、過敏症のところでも扱うことにな るかもしれません。 ○松本座長  その辺は、できた後で見ればいいのではないかと思います。事務局としては、いまの 意見を聞いた上で、そのようなことでよろしいでしょうか。 ○事務局  ありがとうございました。 ○松本座長  そういうことで、差し当たりは始めてよろしいでしょうか。それではこの議題はこれ で終了いたします。  それでは、議事3のマニュアル記載事項について、事務局から説明をお願いします。 ○事務局  資料5です。今後作成に着手いたしますマニュアルの項目案及びその項目の順番につ いて、先ほど申し上げましたとおり林委員を中心にご検討いただきました。  記載項目の案として、1)副作用名、日本語表記、英語表記であるとか、MedDRA、同 義語、ICD10のコード等幅広く理解するといった考えです。  2)早期発見と早期対応のポイント。副作用の好発時期、リスク因子を踏まえ、処方 にあたり注意すべき点といったポイント。患者も早期に自覚し得る症状、早期発見に必 要な検査がある場合にはそのポイント。患者が重篤副作用の初期症状を訴えてきた際 に、検査で重篤副作用の発現が疑われた場合のポイント。その詳細、根拠データなどを 記載するといった考えです。  3)副作用の概要。副作用の症状、臨床経過、転帰、発生頻度、発生機序等の概要を まず要約して記載する。具体的には、自覚的症状、他覚的症状、臨床検査値、画像検 査、病理検査の所見といったようなことを、可能な限り記載したいという考えです。ま た、発生機序、薬剤ごとの特徴、副作用発現頻度、自然発症の頻度といったことも、可 能な限り記載するということを提案いただいております。  4)副作用の判別基準。5)判別が必要な疾患と判別方法。6)治療方法。7)典型 的症例概要。8)その他、早期発見・早期対応に必要な事項。9)引用文献・参考資料 といったことを項目としてあげていただいております。また項目の順番もこれでよい か、ご検討願います。 ○松本座長  林委員、補足がありましたらお願いします。 ○林委員  多岐にわたって記載項目を書き上げてあります。機序、頻度等についても、書きづら い場合もあるかと思っていますが、管理や情報提供の根拠としては必要と考えました。 長期処方が増える中、患者参加型の副作用管理が重要となっています。患者に気づいて ほしい初期症状は重要な項目です。それは2)の早期発見と早期対応のポイントの中に も出てくるところです。患者にとっては機序よりも、例えば筋肉が痛い、脱力感があ る、いつもと違うので主治医の先生に電話してみようということになります。事業の第 一弾として早期発見・早期対応の整備をするということからすると、何とか2)辺りに ついて、臨床医の先生方と薬剤師と患者さんが問題意識を共有して、稀だが早く気づけ ば軽くすますことが可能との認識で情報共有できるよう項目を考えました。そして、患 者からの申し出に対して、今度は医師、薬剤師が鑑別しなければいけない立場になると 思いますので、それに必要な事項を列記していくと、こういった形になると考えまし た。  今日の参考資料にも載っていますが、呼吸器学会で作られたガイドラインの中にも、 緻密にひとつひとつ分析されて載っているのを拝見したこともあり、こういうものがあ る程度書いていけるのではないかと思った部分もあります。 ○松本座長  記載項目、記載順位について、何かご意見ありますでしょうか。かなり詳しく項目が 入っておりますが。実際に学会にお願いした場合に、そこからいろいろな意見が出てく る可能性はありますが、その場合に、事務局としてはある程度の変更は可能であるとい うことですか。それぞれ依頼先の学会の意向によって少し順番が変わったりする、それ とも変わらないようにする。 ○事務局  学会の先生方のご意見を踏まえ、臨床の現場でいちばん使いやすい方法はどうなのか と、そこを原則としつつ、もしご意見があれば検討したいと考えております。 ○松本座長  ご意見はありますでしょうか。 ○飯島委員  ICD10がない疾患はどうしたらいいでしょうか。スチーブンス・ジョンソン症候群 には4桁のICD10コードがありますが、過敏症症候群はまだ認識されて間もないもの ですからないのです。2003年版の改訂版をいま作業しておりますが、ないものはしよう がないですね。 ○事務局  ご指摘のとおりです。 ○飯島委員  2頁の4)副作用の判別基準(判別方法)と、5)判別が必要な疾患と判別方法のと ころで、我々臨床家は、普通「鑑別診断」という言葉を使います。「判別」を用いられ た理由は、何かあるのでしょうか。 ○事務局  用語としては診断とかいろいろな言葉があろうかと思って悩んだのです。必ずしも医 師だけでなくいろいろな人が副作用を判断することもありまして、とりあえず「判別」 という言葉を使いました。もし、ほかに適切な言葉があればご指摘ください。 ○飯島委員  わかりました。 ○上田委員  2)の(4)に「患者が早期に自覚し得る症状」とあります。それを「患者及び家族等が 早期に認識し得る症状」と変更したらいかがでしょう。要するに自覚症状だけだと、意 識がなくなった場合とか、現在は高齢者が結構多いですから、ある程度、家族の者がわ かるような他覚症状を含めたものにしたほうが合理的ではないかと考えるのですが、ど うでしょうか。 ○松本座長  飯島委員の「判別」を「鑑別」ということですが、医学的には「鑑別」が普通です。 ただ括弧内の判別方法でも構わないでしょうか。戸田委員、どうでしょうか。言葉の使 い方ですが。 ○戸田委員  どちらでもいいと思います。普通は鑑別です。 ○松本座長  判別のほうが、やわらかいことはやわらかいですね。 ○飯島委員  一般向けということですか。 ○松本座長  そうですね。特別これにこだわらなくて、学会が鑑別にしたいと言えば鑑別でも。 ○戸田委員  どちらでもいいのではないでしょうか。 ○松本座長  次に、上田委員が言われたことは当然のことで、ほかの人が気づいてくれてもいいわ けですので、その辺、書き変えること自体はよろしいのでしょう。 ○事務局  ご指摘のとおりにしたいと思います。 ○松本座長  ほかにはいかがでしょうか。大枠ではこういう形でよろしいでしょうか。 ○飯島委員  患者が早期に認識し得るということですが、私どもスティーブンス・ジョンソンを扱 っていますと、実は医療関係者が知らなさすぎまして、例えば高熱があって、目の充 血、咽頭痛、口唇びらんというような粘膜症状があって、そして汎発性の発疹、この3 つが揃った場合には、きちんと専門医に紹介しなさいと我々は申し上げているのです。 患者がわからなくても相談された医師、あるいは薬剤師が一番問題なのですが、これに 気がついておられない。  患者が自覚し得るというのは、私は4番のダッシュぐらいで入れればよく、医療関係 者が注意すべき、というようなことを我々としては入れていただきたいということで す。 ○松本座長  コメディカルの方が多く関係しますので、そういう方がすぐ気づかれるような記載方 法はいいのではないかと思います。それは是非、入れておいていただきたいと思いま す。 ○中村委員  各疾患別にマニュアルをお作りいただくのですが、どの程度のものになるのでしょう か。どの程度というと変ですが、栗山委員のおまとめになった参考資料4のガイドライ ン、これぐらいのボリュームになったらすごい教科書というか、ホームページ等から患 者が見るにしても、よくわからないので。トリアージ的な部分と、専門の先生でしっか り治療していただく部分などを分けていただければ、一般の人が見ても、若干は見やす くなる。非常に難しいですけれども。 ○松本座長  このガイドラインは呼吸器内科の専門的な内容になりますので、これを簡略化して、 見ればすぐわかるような形にする。これは話題になったときに話をしようと思っていま したので、それでよろしいのではないでしょうか、このままでは専門的すぎていて、ち ょっと見て参考にするのには難しすぎると思います。  この記載内容に関しては、大枠ではこういう記載をしてもらって、わかりやすいよう にするということでよろしいでしょうか。 ○戸田委員  はい。 ○松本座長  では、そのようにさせていただきます。次は、マニュアルに協力いただく学会関係で す。先ほども話題になりましたが、これについてご意見があればと思います。どの学会 を選定するかですが、対象とする分野などを踏まえて、どちらの学会にお願いしたらい いかということに関して、何かご意見がありましたら伺っておきたいと思います。  ここですぐ意見と言われても難しいと思いますので、後ほど事務局に、マニュアル作 成をお願いする学会について、ご意見があればしていただきたいと思うのですが、それ でよろしいでしょうか。ただ、戸田委員、肝臓学会と消化器学会は、是非お願いしま す。 ○戸田委員  それは大丈夫です。肝臓と消化器を別にしたほうがいいのではないかという意見です よね。 ○松本座長  肝臓のほうで両方やっていただければそれでもいいのですが、消化管は消化器病学会 にお願いする方がよいと思います。そういうことでよろしいでしょうか。  では、今後の進め方について、事務局から何かありますか。 ○事務局  本日検討会でいただきましたご意見を踏まえまして、具体的な事業を進めさせていた だきたいと考えております。今後マニュアル化していく関係については松本座長からも お話がありましたとおり、後ほど座長、及び関係分野の先生に再度個別にご相談をさせ ていただくこともあろうかと思います。日本病院薬剤医師会にもご協力をいただきなが ら、円滑にその作業が進められるよう手続を進めたいと考えております。また、副作用 を選定し、マニュアル案を作成した後には、順次本検討会において評価をお願いしたい と考えておりますので、次回以降の日程などについては、後日改めて調整させていただ ければと存じますので、よろしくお願いいたします。 ○松本座長  では、議題4の「その他」について、事務局から説明をお願いします。 ○事務局  平成16年度日本呼吸器学会において、「呼吸器疾患治療用薬品の適正使用を目的とし たガイドライン」を作成していただいております。本日は、そのうち「薬剤性肺障害の 評価、治療についてのガイドライン」を、参考資料4としてお手元に配付しておりま す。今後作成するマニュアルの1つのモデルケースになろうかと思いますので、本日ご 出席の栗山委員より、簡単にご紹介いただければと思います。 ○栗山委員  日本呼吸器学会で作成した「呼吸器疾患治療用医薬品の適正使用を目的としたガイド ライン」について、一言ご説明を申し上げます。私どもこういうガイドラインを作りま したが、今回の会議でモデルとして使われるということは想定しておりませんでしたの で、本当に参考になるかどうかちょっと疑問ですが、その背景等について申し上げたい と思います。  この話がありましたのは平成15年度の半ばごろだったと思います。医薬食品局安全対 策課から日本呼吸器学会に、こういったガイドラインを作ってくれないかという話があ ったわけです。当時はイレッサによる急性の肺障害の問題が大変話題になっていた頃で した。安全対策課からの文書には、呼吸器疾患の種類、頻度は多く、その治療には呼吸 器専門医のみならず、広く一般臨床医が関与している。適確な鑑別診断とともに、呼吸 器病学の進歩を反映した治療、エビデンスに基づく治療が原則であるけれども、必ずし もそれが適正に行われていない場合がある。結果として薬物療法においては、目的とす る治療効果が十分に得られないだけでなく、時には患者に好ましくない影響を与え、ま た、社会的に費用の増大をもたらすことがある。したがって、呼吸器疾患治療薬に関す るガイドラインを作成し、呼吸器専門医に情報提供することにより、呼吸器疾患治療薬 の適正使用を推進することを目的とする、という趣旨で作ってくださいという話があっ たわけです。  このような申し込みは他の学会にもされておられたようでありまして、その年度は呼 吸器学会に、こういう話があったと聞いております。呼吸器学会のほうでは、学会とし て理事会で検討し、お受けすることにいたしましたが、呼吸器疾患用治療薬といっても 非常に幅が広いものですから、調べましたところ、抗菌剤、抗喘息薬、抗悪性腫瘍薬に ついては既に作成は済んでいるということでしたので、私どもとしてはCOPD、特発 性間質性肺炎、肺高血圧症の3つの疾患を取り上げ、さらに、当時広まりつつありまし た漢方薬治療について適正な使用というガイドラインを出したほうがいいのではないか ということ。この4つが頭に浮んだわけです。  さらに、こうした申し込みがあった背景を考え、私自身の経験でも、ゲフィチニブ等 を含むいろいろな薬物が肺障害を起こしてくる。その肺障害の程度、起こしてくる薬の 種類、起こしてくる障害の種類が非常に多彩であり、こういうものが出てきたときには 現場の呼吸器科専門医が、多分、それぞれの薬を使われておられる他科の領域の先生方 から相談を受けるチャンスが多いのだろうと思いました。呼吸器専門医は、そういった 場合に適切な評価、治療といった対応をできるようにすることが学会としては望ましい のではないかということで、薬剤性肺障害の評価・治療についても取り上げたらどうか と思い、安全対策課に聞きましたところ、そういうものを含んでよろしいと言っていた だいたので、適正使用を目的としたガイドラインの趣旨から少しずれるかもしれません が、薬剤性による肺障害についてのものをまとめたわけです。  今日はそこの部分だけが、印刷されておりますがご覧になってわかりますように、全 体で184頁と大変大部なものです。後半の部分、117〜184頁の所は資料で、「肺障害を 起こす薬剤一覧」となっております。これを見ていただきますと、障害の種類、これは 先ほど話題になりましたがアレルギー性肺炎、アレルギー性鼻炎、息切れ、息苦しい、 咳嗽といった各種学問的レベルの違うものが障害として挙げられております。したがっ て、1つの薬剤がいろいろなところに顔を出していますが、これが副作用として報告さ れている表現であるということになると、これに対応しなければいけないということを 1つ考えていただきたいと思います。  この内容は今日のような話を念頭に置いて作ったものではないものですから、かなり 詳しい話になっております。呼吸器の専門医向きであるということもあり、ゲフィチニ ブ等の問題を検討していた仲間が集まって、手分けして作ってくれました。したがっ て、呼吸器内科医のほかに肺の病理を専門にしておられる人、放射線の専門医の3つの 領域から専門家が出て、分担して書いていただいております。  内容は、発生機序については、一般的に細胞障害性のものとアレルギー性のものが考 えられるというようなこと。診断については、243頁に薬剤性肺障害の診断のことがま とめて書いてありますが、248頁辺りにわかりやすく表になっております。原因となる 薬剤の摂取歴、薬剤に起因する臨床病型の報告、他の原因疾患が否定される、薬剤の中 止により病態が改善する云々と、再投与により増悪する云々と。こういう場合は、薬剤 性肺障害と診断すると。これも1つの典型例であれば、このようにうまくいくのです が、こういう形で薬剤性肺障害を考える。  あと、必要な画像、マーカーの類。画像はかなりポイントを置いて、CT、レントゲ ン、ここには載っておりませんが病理所見等も所見としては書いてあります。  最後のほうは治療です。これは287頁ぐらいの所に表になっております。細胞障害性 の場合は、こういった治療、アレルギーが関与していると思われる場合は、こういった 治療がいいのではないかということを書いてあります。肺の生理、解剖、病理、診断、 治療とかなり広範囲にわたって、それぞれの薬物について触れながらまとめています。  以上が背景と簡単な説明です。 ○松本座長  ただいまの栗山委員の説明について、どなたかご質問はありませんでしょうか。先ほ ど中村委員から質問がありましたが、これをそのままでは大変なので、もう少しサマラ イズされたものでいけば大変立派なものになると思います。このガイドラインは大変立 派なものですね。 ○栗山委員  大変な労力がかかっています。 ○犬伏委員  お願いがあります。何もわからない私ですが、先ほど中村委員がおっしゃっていたよ うに、今トレーサビリティなんていうのも、世の中、川上から川下に向かって流れてい るような気がします。でも、私が受けたときの話では、中にも書かれておりましたが、 患者側、かかった私たちのほうから、こんな異状、ちょっと違う、ここがどうなってい るの、これ何。早くに、これが何かおかしいということを、こちらから申し上げられ る、そういったガイド、そういうマニュアルであってほしい。  川下の人間が何かわかるもの。学会ごとのすごく難しい、それぞれきちんとなさった ものはよくわかるのですが、それはそれとして、先ほど中村委員がおっしゃってくださ いましたが、川下の人間に、ちょっと私、何か変なんです、こういうことが起こってい ます、というのがわかるといい。こういう治療を受けているときに、こういうものがあ ったときは先生に即言わなきゃいけないのよねって言えるような、そういったものが作 られたら、初めに林委員がおっしゃったような分け方が一番分かりやすいのかなと思っ たものですから。川下からの考え方を入れてください。 ○松本座長  先ほど上田委員が言われたのもその1つで。私はコメディカルと言ったのですが、一 般の人が気づくような形で、それで先ほど中村委員が言われたように、このように立派 なものだと皆さんがちょっと見るというわけにはいきませんので。最近は一般の人も興 味を持っておられるので、わかりやすいように作れば、おそらくご覧になっていただけ るのではないか、ということで先ほど上田委員の言われたことも入れて作っていこうと いうことだろうと思うのです。事務局、そういうことですね。 ○事務局  はい。 ○栗山委員  私も先ほどそういう趣旨の発言をしたのですが、学会に頼んでやると各疾患ごとにこ ういった形でレポートが出てくると思います。専門家にはわかりますが、確かに使いに くいのではないかと思います。したがって、今ご質問のあった点を考慮すると、中の索 引を非常に細かく作って、特に症状面に関しては作っておくことが非常に大事なことだ と思います。しかし、それだけでは十分ではなくて、やはり症状から眺めた形のもの を、これとは別個に、来年でも再来年でもいいのですが、そちらから取っつきやすい形 のものを作ったらどうかと思っています。これは2段階で。こちらはこちらでいいので す。そちらに、症状からいくと、例えば黄疸ひとつでもいい、貧血でもいいのです。必 ず1つの学会で対応できない、むしろ2つ以上の学会にオーバーラップすることがある と思うのです。それは学会にというのではなくて、1つの症状でどういうことが考えら れるか、各学会が寄り集まって1つのものを作ると。こういう症状があったときに、ど のようなことを考えたらいいのかという手引になるようなものを作ることが非常に大事 ではないかと思います。 ○松本座長  先ほどオーバーラップする学会があったわけですが、その学会全部が協力して作れ ば、もっといいものができるのではないかと思います。今度学会に頼まれるときに、い ま犬伏委員が言われたようなことも1つの条件として、学会にお願いされたらいかがで しょうか。それも1つの方法だと思います。 ○事務局  ご指摘の件は、作業班開催のときに是非お伝えしたいと思います。 ○栗山委員  いま作業班開催するときにお願いするというお話がありましたが、作業班というの は、各学会ごとに頼むという、その作業班になるのではないのですか。学会の壁を越え るということは、作業班に頼んだ時点で非常に難しくなるのではないでしょうか。 ○松本座長  学会の前の段階の作業班ならいいですね。そうすると、2つオーバーラップする学会 を合わせるとか、そういうことをアレンジメントできればいちばんいいと思うのです。 必ずしも、単独の学会だけでは面倒見切れない場合もあり得ますので難しいですね。い まは既に1つの枠組みができているものですから、これを根本からやり直すというの は。事務局はどうですか、その辺に関しては。今の作業班は学会との接触ということを 意味しているわけですね。 ○松本座長  本当はこの会である程度のところまで絞ることができればと思ったのですが、今お聞 きになるようにいろいろな意見がありますし、ここではそんな細かいところまでまとめ 上げるのは無理かと思います。 ○林委員  1つには、先ほどちょっと話題になっていました「患者が早期に自覚し得る症状」を 改めまして、「患者及び家族等が早期に認識し得る症状」というところを、まず分かり やすい切り口で切り出していく方法が1つ。  もう1つは、例えば黄疸は溶血性貧血でも出ますし、肝障害でも出ると思います。そ れを血液と肝臓の学会にお願いして、さらに判別するという方法で見せる方法もあると 思いますが、もちろん、それを集学的に複数の学会から、さらに絞り込むという作業 も、次のステップとして必要だと思うのです。処方される先生方と、副作用が起こった 場合に診断・治療される先生方が別の専門領域ということも考えられます。この場合、 作業班に一緒に入っていただくことを以前相談しました。 ○松本座長  今日はかなりの意見をお聞きしましたので、それを生かして、まず作ってみて、それ から改訂していくのも1つの手ではないかと思います。 ○飯島委員  今の林委員の話に追加させていただきます。先ほどの犬伏委員の川上・川下ではあり ませんけれども、一番最後のところを私たちは見ているわけです。例えば、こういう病 気でこういう薬を飲んだら、こういうことが起こったら気をつけなさいよ、主治医に言 いなさいよとか、そういうマニュアルが将来、改訂版を重ねていくうちにできるのが、 このマニュアルの目標の1つではないかと感じるのです。それは将来、やはり事務局が 相当中心になって介在しないと、学会任せにしているとそれはできないのではないかと いう気がするのです。 ○松本座長  かなりしっかりしていただかないと良いものはできないのではないかと思いますの で、よろしくお願いします。ほかにはご意見はありませんでしょうか。  事務局から何かありますか。 ○事務局  特にありません。 ○松本座長  今日はいろいろと貴重なご意見をいただいてありがとうございました。これを生かし てもらっていいマニュアルを作るようにしていただければと思います。議題も全て終了 しましたので、本日はこれで閉会とさせていただきます。どうもいろいろとありがとう ございました。 (照会先) 厚生労働省医薬食品局安全対策課  渡邊(内線2748)  井上(内線2753) Tel.03-5253-1111(代表)