05/07/14 社会保障審議会介護給付費分科会 第26回議事録          社会保障審議会 第26回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所 : 平成17年7月14日(木) 午後3時から5時           社会保険診療報酬支払基金 9階会議室 2 出席委員:浅野(代理:加藤参考人)、井形、池田、石井、井部、漆原、大森、        沖藤、喜多、木下、木村、見坊、田中(滋)、田中(雅)、対馬、        永島、野中、花井、村川、矢田(代理:森田参考人)、矢野(代理:        松井参考人)、横山(代理:福間参考人)の各委員 3 議題  (1)介護報酬等の見直しに係る諮問  (2)その他 ○三浦老人保健課長より資料に沿って説明。 (対馬委員)  まず施設の単価について、光熱水費の上乗せとか助成金の関係があるということだ が、これは特養等については助成金があるために、報酬の下がる金額についても小さく なるということか。老健については、それに次いで、療養型は比較的下がり方が大きい と見るがどうか。  もう一点、食費の関係で「栄養管理体制に対する評価」等の単価の考え方はどう設定 されているのか。 (三浦老人保健課長)  まず今回の居住費の取扱いについて、ユニットケアで現在の報酬から居住費として6 万円相当、従来型個室については5万円相当、そして、多床室については1万円相当を 控除するという考え方であるが、特別養護老人ホームでは、基本となる減価償却費の中 で、一定の施設整備の補助金が含まれているので、それを利用者の負担にすると補助金 を国民の負担にすることになるので、その分、従来型個室ではおよそ1万5,000円相当 を控除額から切り出している。  老人保健施設では、基本的には病室の利用率を勘案するということで、個室の利用の 程度が通常の多床室に比べて2割程度低下している状況に対応して、従来型個室で5万 円を控除するところの2割分に相当する1万円分を控除する額から控除している。  介護療養型医療施設では、特別な室料を徴収している場合は、環境減算というものを 報酬上設定していたが、それを今回廃止するところである。  食費の考え方については、平成16年9月に行った概況調査などを踏まえ、人件費を算 出し、その人件費をカバーするということで、管理栄養士、栄養士について報酬として 加算を考えたものである。  栄養マネジメント加算については、栄養ケア・マネジメントを行うにあたり管理栄養 士一人相当分が必要になる可能性があるということで、その分に相当する12単位を加算 するものである。  そして、療養食加算については、現在の制度にある特別食加算の1日350 円の中か ら、栄養マネジメント加算12単位、つまり120 円を差し引いて、23単位としてはどうか ということである。 (木下委員)  介護療養型医療施設の食材料費が1万1,000 円程度と前回資料で出ていが、委託と自 営で分けてあるのか。それと1万1,000 円の最大値、最小値というのが、どういう数字 で出てきたかということを教えてほしい。  特別養護老人ホームの整備費に公費が入っているからその分は控除するという事だ が、公費にしろ原価としてはかかっているという考え方もできると思う。国庫補助金と 言っても、国民全体が払ったお金であり、それを利用者から控除するという考え方がい いのかどうか、そこに1つ疑問がある。 (三浦老人保健課長)  委託については、手元に資料はないが、前回示した数字、つまり4万2,000円のうち、 調理員等について約2万5,000円、材料費について約1万7,000円となっており、委託の 費用は調理員等に含まれているという形になっている。  委託の状況は、平成16年の概況調査によれば3施設平均で委託の割合は約5割という 状況で、介護療養型医療施設の委託については、約6割という状況になっている。  施設整備の補助金の取扱いについては、例えば特別養護老人ホームの従来型個室であ れば、1万5,000円分相当が公的な補助に該当する。これを再度利用者に求めると、国 ないし都道府県の補助を利用者が負担するということになるので、そうならないように 今回公的な補助に相当する部分を報酬から控除する額から差し引いているということで ある。 (川尻計画課長)  特養の補助金については、ユニット型ができるまでは個室の部分も含めて、定率補助 として4分の3を補助するという仕組みであった。ユニット型の特養ができてからは、 個室やリビングの部分は利用者負担を求め、それ以外の共用的な部分にのみ補助をする という形で補助金の考え方を変えている。それが現在の交付金にも維持された形で続い てきているものである。 (木下委員)  全国民が負担した補助金というものを利用者だけの減額にしていいかという疑問があ るということを再度言っておきたい。 (花井委員)  8ページの「栄養ケア・マネジメントに対する評価」について、幾つかある算定要件 を確実に行っているという担保はどこでとれるのか。 (三浦老人保健課長)  現行の栄養管理は、栄養士の配置体制に対する加算として、言わば構造を評価してい るところだが、栄養ケア・マネジメントは栄養管理についてのマネジメントが適切に行 われているかというプロセスを評価するということであり、多職種協働によりアセスメ ントの実施や栄養ケア計画を作成し、定期的なモニタリングを求めることとなる。これ らの実施体制については、あらかじめ都道府県への届け出を義務づけることを想定して おり、これにより事前確認が行われるということになる。  また、アセスメント、栄養ケア計画、モニタリングについて、一定の帳票を作成・保 存する必要があると考えている。これにより事後的な把握が可能になり、適切に実施さ れているか確認が可能と考えており、栄養ケア・マネジメントが適切に実施されるよう これらの要件を設定してまいりたい。 (松井参考人)  栄養ケア・マネジメントはプロセス評価で、現行の栄養管理体制は体制のみによる評 価という形になるようだが、外部委託で食事を提供しているところも多いことを考える と、まず体制だけがあればいいのかということは疑問を感じるところであり、委託も含 めてのプロセス評価をしていくという考え方に立っていないのかという点を確認した い。  あと、経口移行加算は180日を限度となっているが、医師の指示に基づき更に可能と 読めるが、それは医師の指示があればいつまでもできるということなのか。 (三浦老人保健課長)  体制に対する評価というのは、栄養士ないしは管理栄養士がそれぞれの業務を行うと いうことが当然必要となるので、そういう意味では、これはまず施設として適切な栄養 管理が行われることが基本であり、施設に常勤の管理栄養士あるいは栄養士を配置する ことについては、一定の評価が必要と考えている。  経口移行加算について、180日を超えて、なお経口に移るまでの努力を引き続き行っ ている場合で、現に経口摂取が一部可能になっているという方について、引き続き算定 可能というものであり、これ以上移行するということが見込まれない場合は医師の指示 がなくなるので、医師の指示がなくなった時点で算定が終わるということである。 (松井参考人)  ということは、医師の指示がある限り、何日が限度ということはないということか。 (三浦老人保健課長)  そのあと何百日で期間が終わるというような規定ではない。 (井部委員)  8ページの「経口摂取への移行に対する評価」について、「経口により食事を摂取し ている者であって、著しい摂食・嚥下機能障害を有し、誤嚥が認められるもの」が対象 を限定していると思うが、摂食・嚥下機能をビデオレントゲン造影又は内視鏡検査によ り適切に評価するということと食形態の配慮が行われるということはすべて経口移行加 算を取るに当たっての条件と考えてよいか。 (三浦老人保健課長)  御指摘のとおり、著しい摂食・嚥下機能の障害というものを定義する必要があるの で、こういう方法論を通じて定義をするということである。 (井部委員)  これは、摂食・嚥下機能を見るビデオレントゲン造影、もしくは内視鏡検査が介護保 険施設において行われなければならないということか。 (三浦老人保健課長)  施設に機器がなくても、外の医療機関に受診することで対応は可能と考えている。 (漆原委員)  栄養マネジメント加算について、人件費相当とあるが、例えば全国老健施設平均のベ ッド数が80床で、単純計算すると年間340万円程度にしかならない。これは管理栄養士 の人件費として適切なのか。 (三浦老人保健課長)  施設の規模によって収入は違ってくると考えるが、厚生労働省の実態調査等によれ ば、大体12単位になるということである。  ちなみに昨年9月の調査の結果によれば、管理栄養士の給与等は約32万円ということ になっている。 (漆原委員)  その計算根拠というのは、何床の施設ということになるのか、医療も病院も含むの か。 (三浦老人保健課長)  全部の施設を併せた平均値である。 (沖藤委員)  栄養ケア・マネジメントについては、一般市民の関心の高い部分だと思う。  短期入所の場合の栄養ケア・マネジメントというのは、ケアマネジャーのケアプラン とつながっていく話と思うし、短期入所利用者の場合は、どのように低栄養の計算と か、栄養ケア・マネジメントが行われるのか。 (三浦老人保健課長)  短期入所については、栄養ケア・マネジメントに関する加算を今回の案では設定して いないが、基本的に施設において栄養ケア・マネジメントを行うことについて評価を進 めることになれば、集団としての栄養管理から、個々の状態に応じた栄養の管理の方に 進むと考えられ、そういう意味では、一般的にそうした把握が進むのではないかと考え ている。 (木下委員)  漆原委員の質問に関して、管理栄養士の給料が約32万円ということだが、これは本人 に払われる金額なのか。人を雇うためには施設でその他にほぼ倍の経費がかかると言わ れているので、その計算根拠について確認させてほしい。 (三浦老人保健課長)  今回、栄養マネジメントを評価してはどうかという提案をしているので、この加算に より、多くの施設において栄養ケア・マネジメントに取り組んでもらう基盤ができるの ではないかと考えているので、そういう中で栄養士、管理栄養士の対応が進んでいくの ではないかと考えている。 (木下委員)  栄養管理とは別に原価計算の方法として、適切かどうかという質問としてお願いした い。 (三浦老人保健課長)  報酬は、人件費を単純にカバーすることだけではないと考えているが、栄養管理に関 しては、今回いろいろ提案をしているので、それらを踏まえて対応されることとなると 考えている。 (大森分科会長) それでは、本日の分科会において、諮問に対する報告のとりまとめを行いたいと思うの で、事務局から報告案の配布をまずお願いしたい。  ただいまお配りした報告案は、これまでのいろいろな活発な議論を踏まえて、分科会 長としての私と事務局を交えて協議の上、作成をしたものとなっている。 ○渡辺企画官より報告案の朗読。                    (案) 介分発第    号 平成17年7月 日 社会保障審議会  会長 貝塚 啓明 殿                            介護給付費分科会                               分科会長 大森 彌  指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準、指定施設サービス等に要す る費用の額の算定に関する基準、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関 する基準、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準、介護老人保健施 設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準及び指定介護療養型医療施設の人員、 設備及び運営に関する基準の一部改正について(報告)  平成17年7月14日厚生労働省発老第0714001 号をもって社会保障審議会に諮問のあっ た標記について、当分科会は審議の結果、諮問のとおり改正することを了承するとの結 論を得たので報告する。  今回の介護報酬の見直しは、介護保険法等の一部を改正する法律(平成17年法律第77 号)に基づき、平成17年10月1日より介護保険施設等における居住費(滞在費)及び食 費が保険給付の対象外となることに伴うものである。当分科会においては、今後、平成 18年4月に予定されている次期介護報酬の見直しに向けた検討を進めていくが、その中 では在宅ケアの推進に関する課題をはじめ、今回の見直しに関する当分科会の審議の中 で提起されたユニット型個室等と多床室との介護報酬設計のバランス、質の向上の観点 からの人員配置の在り方、利用者の居住環境の改善等の諸課題についても検討すること が必要であると考える。  なお、今回の見直しは、施行までの準備期間が短期間であることから、施設等の現場 において円滑な実施が進むよう、厚生労働省においても保険者等と協力して十分な支援 体制を確保することを強く要請する。 (大森分科会長)  今までの議論で、次回の介護報酬の見直しに向けて、いろいろ問題を提起されている ことをこの中で書きとめたという形で理解いただければと思っている。  何人かからも懸念のあった、非常に実施まで短い期間ということで、最後の強く要請 というのは、ほとんど義務のようなイメージで書いているので、そういう点も理解の上 で審議いただきたい。 (野中委員)  この諮問を了承することは難しい。私は医師として、実際に施設を選択する人々の状 況をみると、自らの尊厳を持って選択をしているとは思えない。むしろ行き場所がない から、あるいは家族のためとか、やむない状況で入っている。  今回、在宅と施設との公平性と言うが、現在の状況で提案するのは、施設入所という 選択を困難にするものと思っている。  このことは「介護保険部会」で検討するべきことと思うが、法律で決まったことなの で、ある面では理解をしている。  しかし、本来持続可能性の保険制度というのは、保険料を払う人が、尊厳を持って選 択をできるという状況になって初めて、今回の居住費、食費を払ってもいいことになる と考えている。  現在施設に入っている高齢者の方々は、戦後の焼け野原から日本を復興してくれた原 動力になった方であり、患者の状況に合わせて施設を選択することに対して配慮もせず に居住費や食費を自己負担にするのは、適切な社会保障制度とは言えない。  在宅ケアに対する基盤整備が充実して初めて尊厳を持って選択をする状況になると思 っている。なぜ10月から実施しなければならないのか疑問である。現場の職員が利用者 に契約内容を説明できるのか、またそのことを利用者が理解できるのか。政府がやむな くこういう制度改正をしたという説明を政府自らが率先して国民に行うべきと思う。  もう一つ大事なことは、施設を利用する人たちに対して、保険料を払う人たちにも共 助の面から考える必要があると思う。利用者、事業者双方に対する配慮をぜひ考えてほ しい。  この諮問は「社会保障審議会」にて答申がされるので、利用者に対して意見を聞く配 慮もしてほしい。 (木下委員)  個室ユニットケアの報酬が新設されたことは歓迎するが、これが10月に食事と居住費 を保険給付から外すということ同時に行われるのは、いかがなものか。食事と居住に関 する部分だけ報酬改定を行うという話だったが、その辺がどうかと思う。  個室ユニットケアを推進することはいいことだが、なぜよいかという理由がサービス 提供者や利用者に十分に説明されていないと思う。  個室にいて、好きなときに公のスペースに出て、食事でもお茶でも飲み、お話もでき るということだったが、それには意識がはっきりしていて、自分で動けるという前提で ないとできないと思うが、そういう人が施設にいるべきなのかという疑問がある。  最近の調査でも、介護老人福祉施設、介護療養型医療施設では要介護5に近い方が多 く入っている。そういう人が個室ユニットケアを利用するための情報がほとんどないの で、これから検討してほしい。  個室ユニットケアの推進に当たっては、反対意見もあると思うが少数意見も踏まえて 考えてほしい。  従来型個室については、人員配置もサービスも変わらず、負担だけが増えるというこ とであるが、居住費は食事と違って施設に入ることで負担が減ることはないということ を考えておく必要がないか。  第4段階以上の方からは全額室料を負担してもらうようになるが、かなり一時的な負 担がかかるということで、一考の余地があるのではないか。老健と介護療養型医療施設 では、利用者の約7割が第4段階に当たり、かなり影響があるので来年3月までは減額 なり経過措置というのがとられるべきではないか。  食事療養費について、経管栄養は、嚥下障害、食べられない人が対象になるが、管を 入れていれば簡単に介護量が減るというものではなく、水分補給、挿入の技術、口腔ケ アもあるし、管を抜かない十分な見守りが必要ということで、本当に経管栄養が必要 で、重度、要介護5に近い人たちが安心して施設に入って、生活できるような報酬体系 でなければいけないと思う。  ちなみに介護保険3施設で100 ベッドとして、この報酬で見ると平均年間1,750万円 の収入減になるということを参考までに示しておきたい。  居住費のことで入院、入所を断る理由になるかという点について、施設と利用者が十 分に話し合っていくことというが、そうではなく、制度上そうなったと考えているの で、その辺の適切な指導がなされるようにしてほしい。 (山崎総務課長)  まず利用者負担の問題では、確かに今回利用者の負担増になるわけだが、厚生労働省 としては所得の低い方への配慮を行い、入所が継続できないようなことがないような形 を十分考えていきたい。  もう一つ、野中委員の指摘の在宅との選択肢というのは、確かに大事な課題と思って いる。今回、施設給付だけを10月に施行という形になっているが、当然在宅ケアの推進 も大事なテーマであり、在宅のサービス基盤の強化もテーマとして来年4月に向けて分 科会で議論いただき、それを踏まえて取り組んでいきたいと思っている。 (石井委員)  昨今、介護保険3施設、特に介護老人福祉施設では、複数の疾患を持つ利用者、ある いは施設で終末期を過ごす利用者が増加しており、医療ニーズがかなり高まってきてい る状態がある。更に、個別ケア、ユニット型個室などの個別ケアの重視、医療安全並び に感染症対策といった面でも、高度な能力ある職員の配置が求められているのではない か、その点では、人員配置の在り方として看護職員の配置基準を見直すということを要 望したい。  もう一つは、栄養マネジメント加算に関連することで、これは管理栄養士の人件費と して付いているとの説明だったが、栄養ケア・マネジメントを効果的に行うためには、 やはりチームアプローチの中で、全体を見ている看護職の役割は非常に大きいと思うの で、栄養管理における多職種のチームが機能できるように、体制に関する評価も考えて もらいたいと思っている。 (木村委員)  現在入所している人たちは改めて契約し直すわけだが、そのときに、本人の意思だけ ではなく、家族の関係等でやむなく入っている人もあり、選択と尊厳を保持するという ことをしてもらいたい。契約時は本当に分かりやすい契約書をつくり、分かりやすい説 明をお願いしたい。  これからの議論の中で在宅ケアの推進ということを協力してやっていきたいと思って いる。そのことによって、やむなく施設に入っている人たちも地域に帰れることになる と思う。  また、在宅から施設へ入所する利用者に説明するのは、現場のケアマネジャーであ り、今日の報告案の最後のところに「厚生労働省においても保険者等と協力して十分な 支援体制を確保することを強く要請する」とあるが、是非正しい情報を早く現場のケア マネジャーに提供してもらいたい。 (福間参考人) 実際にユニット型個室は143単位の減になるので、50床で計算すると年間2,610 万円の 減となり、この分を単純に見れば4万3,500円を居住費として利用者負担としなければ ならない。しかし、現在既に居住費を負担しているところにさらに追加すると6万円を 超える状況になる。経営で頑張ると言っても、減収となる分は結果的にはサービス体制 に響いてくるし、個室ユニットケアを推進していく状況と実際のサービスの対価で見た ときに、維持できるのだろうかという不安がある。  経口摂取への移行に対する評価のところで、嚥下機能障害等に対する評価で、摂食・ 嚥下機能をビデオレントゲン造影又は内視鏡検査で評価とあるが、実際には総合病院の レベルでないと出来ないのではないか。実際に経管栄養からの移行だけではなく、刻み 食とかペースト等の工夫をする食事体制について、どう評価するかが必要だと思ってい る。  管理栄養士とマネジメント加算の合計が24単位で、これで計算しても50床で2,900万 円の減になる。こうして考えると、実際に特養における生活の中の食を守るという点で は、今回の諮問ではサービスの質がレベル的に下がるのではと危惧している。  あと、平年ベースでは3,000 億円の削減で、保険料は200 円の軽減効果だと言うが、 10月実施の段階で給付費は削減されるが、保険料は下がらないことに半年間はなるので はないか。果たして、それでサービスの質が守れるのかという点では、とても賛同でき ないと考えている。 (山崎総務課長) 保険料は3年に一度と決まっているので、10月には変わらないが、全体の財政状況を見 ながら来年の保険料が決まるという点では、10月から行われる分だけの費用削減効果と いうのは、今後18年度以降の保険料計算で反映される事になるので、全体から見れば若 干時差はあるが、保険料負担についても、そういう削減効果は出てくると考えている。 (漆原委員)  報告の内容で一番の問題は、実施までの期間が短く、多くの国民の混乱がある意味で は必至であるということだと思う。  居住費用、食費について言えば、事業者にとってもかなり厳しい数字だし、利用者が これまでと同じような気持ちでケアを受けてくれるか非常に不安である。  特に食事の費用が約1,400 円というのは、実態がこうだといっても、これだけ豊かに なった高齢者の食生活からすると、人件費等も含めて1,400円というのは、余りにも低い 数字ではないかと思う。  また、今日示された管理栄養士の人件費でも、平均のベッド数から算定したとの事だ が、大型の施設はともかく、小さな施設にとっては厳しい状況になるのではないだろう か。やはり栄養士が常勤の対応をして適切なマネジメントができることから考えても、 12単位とか10単位というのは余りにも低過ぎるのではないかと感じている。  そこで、今回の報告書の中にもあるように厚生労働省において、保険者と協力して支 援体制をとるとあるが、できれば、利用者や事業者の声も勘案しつつ進めてもらいた い。  あるいは今回の10月の改定は、イレギュラーな改定なので、4月の本格的な改定に向 けて、栄養ケアマネジメントの実施後の効果や事業者の声を聞くなどして臨むというこ とを検討してもらいたい。  また、これからの介護報酬の議論として、もっと施設の機能、役割に着目した検討を 強く要望したい。 (山本委員)  今回の改正については、以前「介護保険部会」で十分な審議がされたもので、施設等 についてのベッド数、収支などの調査を行い、それらを勘案しながら今回の単価を出し たものと思っている。  ところが、10月からこれを実施するわけであるが、もうあと2か月しか残っていな い。今からいろんなものを検討しても、10月からの実施には非常に難しい。  ところが一方では、法律は10月から実施することとなっている。一番責任を問われる のは保険者であるので、保険者として十分その責任に答えていく必要があると思ってい る。  今回諮問書の最後のところで「保険者等と協力をして十分な支援体制を確保すること を強く要請する」と書かれている。もし十分な協力体制を整えないまま、時間を経過す れば、多大な迷惑をかけることになる。そのときの責任は保険者になるので、今日の答 申を得て協力することを協議した上で、十分な説明ができるようにしていきたい。  もう一つは、保険者のコンピューターの改正処理に、かなりの時間がかかるので、是 非ともその点も理解してもらいたい。国保連合会での事務処理も、システム変更にどう しても2か月以上の時間がかかるので、今回の方針については、原案を承認いただき、 保険者が十分な説明と運営ができるよう支援を願いたい。 (喜多委員)  今回の改正については、個々にはそれぞれ不満がたくさんあるが、全体としてやむを 得ないのではと思っている。報告案についても、私はこれに賛意を表する。  ただ、最後のところで、「厚労省においても」と書いているが、もう少しきつく厚労 省がしっかりしてということに直してほしい。  私も介護保険の法律をつくるときから参画をしており、制度をつくるにはいろいろ意 見はあったけれども、走りながら考えようということで、賛成をした経過がある。  例えば保険者の立場からは、施設と在宅の費用の在り方がおかしいと思っており、要 介護1であれば在宅では16万5,000 円の範囲となるが、施設に入れば約三十万円もらえ るのは初めから不公平であり、今回一定の食費、部屋代を取るということで、ある程度 解消されたということになる。  しかし、今までそれを払わなくても済んでいた人からは、それはおかしいということ になる。これは制度の立ち上げのときに、きっちりと将来を見据えた制度にしなかっ た、そのとがめが今、来ているのではないかと思う。  このほかたくさん市町村は不満を持っていて、25%を国が持つと言いながら、実はマ クロで5%の調整交付金はあるが、それぞれミクロで見れば、それが減額されて1号保 険者の保険料に全部転嫁されているという実態がある。  しかも、3年間に1回保険料を計算するときに、3年間分の調整交付金の額を計算す るわけだが、調整交付金の額は毎年下がっている。それを保険料で取ることも3年間は 出来ないため、その赤字は市町村が負担しなければならない。これは給付費部会で取り 上げる内容ではないと思うが、継続性と公平性を考える限りは、事務当局はしっかり肝 に銘じて、改正をしてもらいたい。 (加藤参考人)  今回の改正のポイントというのは、行政面からみると低所得者対策であるが、これは ある程度きめ細かく講じられていると思っている。  そうした中で、施行後利用者負担の実態を早目に把握して、実態を踏まえて、場合に よっては必要な見直しが講じられるよう、ある程度柔軟な対応ということも考えてほし い。  報告案についてもその通りであり、是非厚生労働省の方で利用者に分かりやすいパン フレットの作成、配布及び利用者負担に関するガイドラインも早急に示してもらい、で きる限りの対応をお願いしたい。  都道府県としても、保険者である市町村が一番苦労すると思うので、できるだけ早く 各市町村へ情報提供や説明会を開催しなければならないと思っている。あわせて、介護 保険施設やケアマネジャーへの説明会も考えているので、早急の対応をお願いしたい。 (対馬委員)  第2号被保険者の保険料を納めている立場から、持続可能性が大事であると考えてい る。ただ、それを全部入れると非常に複雑になるし、またここは他の委員の方々が指摘 されるとおり、一番最後の2、3行のところが重要と思うので、これでお願いしたい。 (池田委員)  今回の改正について、プラグマティックに分析すると、論点は3つある。  1つは利用者にとってどうなのかということである。これは参考資料の2ページに 「利用者負担の変化と補足給付の仕組み」があり、低所得者対策がかなり緻密に行われ ていることが分かる。問題が起きるとすれば第4段階、年金266万円超の方たちが2.5万 円ほど上がるが、年金266万円というのは、1か月22万円強の年金ということになり、 これは個人単位で見ればかなり所得の高い層であるということになる。  幾つかの世論調査を見ると、利用者負担の引き上げに関して多くが反対しているが、 具体的には従来の保険外負担に対してこれ以上払えないというものであり、今回居住費 と食費が明朗な形で示され、それを選択するということになれば、利用者はそちらの方 を歓迎するという積極的な受け止め方もできると思っている。  いずれにしても、利用者の側に立つと、この問題は一部境界層で起きるから、それに 対する施策は重要だが、全体として問題は起きないだろうと思う。  2番目は事業者側の収支はどうなっていくかということであるが、居住費は利用者負 担と補足給付とで振り替わるから、収入としてはプラスマイナスゼロとなる。次に食費 は現行1日2,120円で、1か月約6万4,000 円の収入であったが、今度は基準額が4万 2,000 円で、2万円下がるということになる。  ところが、栄養加算等で12単位+12単位で24単位の加算があり、また光熱水費を 5,000 円上乗せということで約1.2 万円新しく報酬として見てもらえる。そうすると、 確かに若干の減収は見られるにしても、施設側がそれほど大きな悲鳴を上げるような減 収にはならないのではないだろうか。  最後に、一番重要なのは10月実施ということであり、これは法律で通ったことなの で、ここで言ってもしようがないが時間はない。そういうことを勘案すると、重要なの は4月改定の介護報酬をどうするかということであり、今回議論しているものは、介護 報酬のみについて考えれば10月〜来年3月まで、つまり6か月間のものであり、それに 時間をとって市町村や事業者に迷惑をかけるのは非常にまずいと思うので、本日ここで 諮問、答申という形をとって、直ちに準備態勢に入るということを求めたい。 (森田参考人)  審査支払事務を行う立場からの意見として、10月実施が決まり、経過措置が新たに出 てくる等、新たな予想しなかった事務がたくさん出てきている。  これらについて、国の方からスケジュールも出ているが、まだ事務的に検討すべき課 題がたくさんあると考えている。コンピュータシステムもまだできていないぎりぎりの 状況の中で、ショートステイは大体2か月前から予約が入る場合があるが、これだけ決 まっていない中でケアマネジャーをはじめ関係者には大きな迷惑がかかるのではないか と危惧している。  せっかく低所得者対策が講じられた中で、持続可能な制度にしていくという一番大事 なスタートのときに、混乱と制度への信頼感がなくなるようなスタートを切るというの は、保険者としては非常につらいので、何とか早く決めてもらいたい。 (見坊委員)  いろいろと問題はまだあると思うが、事務当局はいろいろと配慮していることが今日 の説明でも十分わかったところであり、理解したい。  まだ介護保険制度が始まって、ようやく6年目であり、国民が利用する立場から考え ると、制度を理解してもらうために10年ぐらいはかかるのが普通だと思っている。  現在は経過的な試行錯誤の段階であると思うが、ガイドラインという考え方が前回か らはっきり出てきている。ある程度の地域の自由化、施設における自由化ということで あるが、県や市町村、施設、更に地域との住民の関係も考慮して、そこにある程度の自 由裁量の余地を残してほしい。これからの地方分権において、住民も一緒になって介護 保険の定着ということに努力しなければならない段階であり、その辺を考慮してもらい たい。  報告案については、最後の下りを強調することで、十分に実現できるように事務当局 にお願いしたい。 (村川委員)  今回の改革の効果について、制度全体の関係で見ていく必要があり、財政等の計算 で、保険料月額が数百円軽減されることについては、介護保険制度の持続可能性と安定 性という見地から見ても、大事なことと思っている。  低所得の利用者への配慮という補足的給付の制度について、高齢者の所得状況に着目 した形で利用料負担が設定されたということは、評価すべきではないかと思っている。 今後の福祉の観点から見ると、高齢者の所得能力は考慮すべき事柄であり、応益負担の 流れの中で応能性を加味することは避けがたいと思っている。  最後に、食費に関わる栄養ケア・マネジメントの関係について、国際的にも認知症の 方への支援の方法の中で、食生活の管理ということは非常に重要と考えられており、今 回食費を巡る問題で、栄養ケア・マネジメントがしっかり位置づけられたということに ついては評価している。これは専門的に見ても、今後中長期的に位置づけて、施設・在 宅の介護職員等との連携も含め、しっかりとした方向づけをしてもらいたい。  今後の在宅ケアの推進、さらに質の向上ということで、来年4月以降の大きな制度設 計の中で、しっかりしたものを見出していくべき時期と思っているので、諮問に対する 報告は是非まとめる方向で進めてもらいたい。 (田中(滋)委員)  見坊委員の意見に私は賛成で、これは苦渋の選択だとは思うが、第4段階以上の利用 者、事業者が、より契約社会に向かって成熟していくという方向を示したものだと理解 している。利用者が支払う居住費・食費に関する指針は目安であり規定ではない。見坊 委員が言われたように、まさに自由裁量であり、ただ、何もないと困るから、こう考え たらというヒントだと考えている。  一番いい説明は、参考資料の3ページの図で、第4段階以上は斜めの線になっている もので、原価の積み上げ料金で決めるのではないということを認識してもらいたい。 (松井参考人)  複数の委員から苦渋の選択、あるいは必ずしも十分ではないという意見が出たとお り、施設と在宅とのアンバランスを解消していく一歩になった反面、施設内でのバラン スについては、示された介護報酬を見ても十分ではないと思う。ただ、実施時期が10月 ということを考えると、この場で決めて円滑な実施に向けての努力を関係者が進めてい くことが大変重要と思うので、この文案で進めていき、来年4月の介護報酬改定の議論 の中で、今回積み残されたものは十分議論していくという対応をお願いしたい。  栄養ケア・マネジメントの問題についても、小規模のところができない等の問題につ いて、実態を踏まえた形での対応が十分できるような改正も今後お願いしたい。 (大森分科会長)  報告案について、委員の皆の意見を聞いた上で、最後の3行で少し意見を入れて、次 のように直したいと思う。  「なお、今回の見直しは、施行までの準備期間が短期間であることから、施設等の現 場において円滑な実施が進み、また利用者への配慮が確保されるよう、厚生労働省は、 保険者等と協力して十分な準備支援体制を早急に確保することを強く要請する」。  この中に幾つか指摘の点を入れて、あとの意見は課題として受け止めて、4月に向け て検討をするということで了解いただければと思うがいかがか。 (野中委員)  最後に聞きたいのは、この案を具体的に実現する為に、部会長の考えていることを少 し例示してもらえればお願いしたい。 (田中(雅)委員)  今回の見直しによって生じる施設の減収が、結果として働く者の側にしわ寄せがくる ような発言が多かった、そのことに対して大変懸念をしているところである。やはりサ ービスの質の確保という観点から見た場合、質の担い手であるより良い人材の育成と定 着を図ることが重要であり、そのことに対する評価と報酬設定を今後の分科会での議論 の中心にしてほしいと思う。 (大森分科会長)  今回の参考資料の中には、現場、実際の利用者はこういう姿になるとか、非常に重要 なデータが載っていて、これは以前から言われ続けた、だれでも分かるものを示すとい うものに当てはまると思う。  いろんな方々から質問、あるいは注文が出たときに、市町村で的確に応えられない と、この制度そのものの信頼性に関わるので、その点について特段の配慮が要ると思 い、先ほどのように修文して、本日これで報告をしたいと考えるがよろしいですか。 (「はい」と声あり) (大森分科会長)  それでは、これで報告させてもらいます。ありがとうございました。 (三浦老人保健課長)  本日はありがとうございました。いただいた答申を基に、十分な対応をしてまいりま す。 ○大森分科会長より閉会の宣言 照会先 老健局 老人保健課 企画法令係 TEL03(5253)1111(内3948 3949)