05/07/14 第1回厚生科学審議会科学技術部会 医学研究における個人情報の取扱いの 在り方に関する専門員会議事録                    第1回             医学研究における個人情報の取扱いの               在り方に関する専門委員会              厚生労働省大臣官房厚生科学課                    第1回       医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会                    議事録 ○日時    平成16年7月14日(水)16:00〜17:00 ○場所    経済産業省 1020号会議室(経済産業省別館 10階) ○出席委員  垣添委員長        位田委員 宇都木委員 具嶋委員 栗山委員 菅 委員 武田委員        廣橋委員 福嶋委員 堀部委員 柳川医院 吉倉委員        (事務局)        中谷厚生科学課長 成田研究企画官 他 ○議事  1.医学研究における個人情報の取扱いの現状と課題について  2.その他 ○配付資料  1.医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会の設置について  2−1.個人情報の保護に関する法律の概要  2−2.個人情報保護法に関する基本方針及び附帯決議  2−3.個人情報保護法の適用除外について  3.厚生労働省における医学研究に関する指針の概要  4−1.OECD8原則とヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の概要  4−2.OECD8原則と遺伝子治療臨床研究に関する指針、疫学研究に関する倫理      指針及び臨床研究に関する倫理指針の概要  5.個人情報保護法の施行に向けたスケジュール ○参考資料  1−1.医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会について(医政局)  1−2.生命倫理・安全部会における委員会の設置について(文部科学省)  1−3.今後の個人遺伝情報の保護のあり方に関する検討について(経済産業省)  2−1.個人情報の保護に関する法律  2−2.個人情報の保護に関する法律施行令  2−3.個人情報の保護に関する基本方針  2−4.個人情報の保護に関する法律に対する国会における附帯決議  3−1.ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針  3−2.遺伝子治療臨床研究に関する指針  3−3.疫学研究に関する倫理指針  3−4.臨床研究に関する倫理指針  3−5.倫理指針における個人情報保護規定に関する疑義照会      (個人情報保護に係る事項抜粋)  4.ヒト遺伝子情報をめぐる最近の国際状況について ○成田企画官  予定の時刻になりましたので、専門委員会を始めさせていただきます。委員の皆様に おかれましては、医学研究における個人情報保護の取扱いの在り方に関する専門委員会 にご出席いただきましてありがとうございます。初めに、中谷厚生科学課長よりご挨拶 させていただきます。 ○中谷厚生科学課長  本日、上田技術総括審議官がこの場に参りましてご挨拶するのが本意でございます が、所用がありましてそれがかないませんので、私から、一言、ご挨拶と本会に対しま す期待を述べさせていただきたいと思います。医学研究の個人情報保護の取扱いは大変 重要な問題でございまして、この場にお越しの先生方の何人かの方には既にご協力いた だき、厚生労働省は4つの倫理指針を定めているところでございます。  ただ、昨年5月に個人情報保護法が成立いたしまして、そのときの国会のご審議ある いは附帯決議の中で、医療・金融・信用、こういう部分につきましては一般的な個人情 報保護の上乗せ的な措置というものが必要ではなかろうかのご論議がありました。今ま で、研究の分野といいますのは、アカデミック・フリーダムとして、研究者の先生にな るべく委ねていくのがいいことだと思っているわけで、個人情報保護法でもそういう観 点から純粋な研究は対象外になっているわけでございます。  しかし、現在、爆発的に進歩しておりますゲノム科学等の現状、こういうことを考え ますと、こういうフォーラムをつくって皆様方にご検討いただき、また、私たち厚生労 働省ばかりではなくて、文部科学省あるいは経済産業省等々とも連携をとりました措置 を講じていく必要があると思いまして本会を開催させていただいたわけでございます。 大変集中的なご審議をしていただくことになりましょうが、どうぞよろしくお願いいた します。冒頭、簡単ではございますがご挨拶に代えさせていただきます。ありがとうご ざいました。 ○成田企画官  本日は第1回の会議でございますので、事務局から委員の先生方をご紹介させていた だきたいと思います。委員につきましては、厚生科学審議会科学技術部会運営細則第2 条に基づきまして、部会長にご指名いただいたところでございます。五十音順にご紹介 させていただきます。京都大学の位田委員。東海大学の宇都木委員。国立がんセンター の垣添委員。バイオフロンティアパートナーズの具嶋委員。エイズ予防財団の栗山委 員。国立循環器病センターの菅委員。日本病院会の武田委員。国立がんセンターの廣橋 委員。信州大学の福嶋委員。中央大学の堀部委員。埼玉県立大学の柳川委員。国立感染 症研究所の吉倉委員。なお、東京工業大学の大山委員、日本医師会の橋本委員は、ご都 合により本日は欠席ということでご連絡をいただいているところです。また、本委員会 の委員長ですが、厚生科学審議会科学技術部会運営細則第3条に基づきまして、委員長 は科学技術部会長の指名によることとされており、科学技術部会の矢崎部会長より垣添 先生をご指名いただいております。垣添先生に委員長をお願いしたいと思っておりま す。  続きまして、事務局をご紹介させていただきます。最初にご挨拶させていただきまし た厚生科学課長の中谷です。少し遅れてまいりますが、研究開発振興課長の安達が参る 予定です。厚生科学課の事務局のほうですが、私は成田と申します。よろしくお願いし ます。担当補佐の吉川です。関係省といたしまして、文部科学省、経済産業省からもご 出席いただいているところでございます。それでは、垣添先生、進行につきましてよろ しくお願いいたします。 ○垣添委員長  ご指名ですので、僭越ではございますが、委員長を務めさせていただきます。どうぞ よろしくお願いいたします。これは、厚生科学審議会科学技術部会から付託された形で 医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会ということで、これか らご説明があると思いますが、この年内にかなり集中してご議論いただかなければいけ ないという、なかなかタイトな専門委員会です。  私は平成13年3月に出されたヒトゲノム遺伝子解析研究に関する倫理指針、3省合同 の指針をまとめるときの委員長を務めました。多分、その関係で今回も委員長に指名さ れたのだと思いますが、先ほど、中谷課長のご挨拶にもありましたように、この3省庁 のゲノムと遺伝子解析研究に関する倫理指針の場合は研究が対象ということで、その 後、医学あるいは研究の進歩の結果、臨床現場に遺伝子情報などがどんどん入ってきて いる、また、疫学調査などを行う際にゲノム情報を駆使した疫学研究がどんどん進んで いく。そういう個人情報にもろに関係するような情報を非常に気をつけて取り扱いなが ら、かつ研究の成果をあげていかなければいけない非常に難しい時代に入ってきたとい うことで、早急に今のような問題を検討していかなければいけない。今回は厚生労働省 の会議ですが、多分、話の進行具合から考えると文部科学省、経済産業省とも一緒に検 討していく必要があろうかと思います。どうぞ、委員の皆様のご協力をいただいて、き ちんとした結論を出せるように努力したいと思います。よろしくお願い申し上げます。 それでは、事務局から本委員会の会議及び議事録の取扱いについて説明をお願いいたし ます。 ○成田企画官  会議及び議事録の取扱いについてご説明いたします。本委員会の会議及び議事録につ きましては、厚生科学審議会科学技術部会運営細則5条、6条により公開することにな ります。しかしながら、公開することによって個人情報の保護に支障を及ぼすおそれが ある場合、又は、知的財産権その他個人若しくは団体の権利利益が不当に侵害されるお それがある場合につきましては、委員長の判断により非公開とすることができることに なっております。なお、非公開とした場合につきましては、議事要旨を作成してこれを 公開するということになります。 ○垣添委員長  議事録は原則公開、会議自体も公開ということでよろしくお願いいたします。それで は、配付資料のご確認をお願いいたします。 ○吉川補佐  本日の配付資料について、ご確認をお願いします。資料1として「医学研究における 個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会の設置について」が1枚あります。資料 2−1として「個人情報の保護に関する法律等の概要」。資料2−2として「個人情報 保護法に関する基本方針及び附帯決議」の1枚紙があります。資料2−3として「個人 情報保護法の適用除外について」という1枚紙があります。資料3として「厚生労働省 における医学研究に関する指針の概要」という1枚紙です。資料4−1として「OEC D8原則とヒドゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の概要」。資料4−2として 「OECD8原則と各倫理指針の概要」。資料5として「個人情報保護法の施行に向け たスケジュール」です。参考資料につきましては、本委員会のご審議に際してご参考と なるようなものを集めさせていただきましたので、今後、適宜ご活用いただければと思 います。参考資料1−1として「医療機関等における個人情報保護の在り方に関する検 討会について」。参考資料1−2として「生命倫理・安全部会における委員会の設置に ついて」。参考資料1−3として「今後の個人遺伝情報の保護の在り方に関する検討に ついて」。参考資料2−1として「個人情報の保護に関する法律」本文です。参考資料 2−2として「個人情報の保護に関する法律施行令」。参考資料2−3として「個人情 報の保護に関する基本方針」。参考資料2−4として「個人情報の保護に関する法律に 対する国会における附帯決議」。参考資料3−1として「ヒトゲノム遺伝子解析研究に 関する倫理指針」。参考資料3−2として「遺伝子治療臨床研究に関する指針」。参考 資料3−3として「疫学研究に関する倫理指針」。参考資料3−4として「臨床研究に 関する倫理指針」。参考資料3−5として「倫理指針における個人情報保護規定に関す る疑義照会」ということで、現在、インターネットに掲載されているものを抜粋したも のです。参考資料4として「ヒト遺伝情報をめぐる最近の国際状況について」というこ とで、5月20日に文部科学省で行われた生命倫理・安全部会の資料より抜粋させていた だいています。以上、本日の資料でございますが、乱丁、落丁等がありましたら事務局 までお申し付けください。 ○垣添委員長  ご紹介いただきましたように、非常にたくさんの資料があって大変ですが、今日は1 回目ですので、それぞれの資料のポイントを事務局からご説明いただいた上でフリーデ ィスカッションを行いたいと考えます。まず、資料1からご説明いただけますか。 ○成田企画官  それでは、資料1、参考資料1−1、参考資料1−2、参考資料1−3に基づいてご 説明いたします。資料1は、医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する委員 会の設置についてということで、6月1日に開催されました厚生科学審議会科学技術部 会で専門委員会の設置についてご了承いただいた際の資料です。  この委員会の設置の趣旨ですが、医学研究についてはこれまで各種の指針を策定し、 個人情報の取扱い等について研究者が遵守すべき事項を定め、研究の適正な実施に努め てきたところです。  一方、近年、遺伝情報等を取り扱う研究等をめぐる状況についても変化が見られてい ること、それからまた、昨年の5月に成立した個人情報保護法においては学術研究に関 し民間事業者等の遵守すべき義務等の規定が適用除外とされているところであり、来年 4月の個人情報保護法の全面施行を控えて、医学研究における遺伝情報を含む個人情報 の取扱いに関しまして、特に適切な取扱いを確保する分野としてその在り方を検討する 必要があるということで、科学技術部会の下にこの専門委員会が設置されたものでござ います。  2番の「検討課題等」ですが、医学研究における遺伝情報を含む個人情報の取扱いの 在り方を検討していただくということで、後ほどご紹介いたしますが、各指針について 個人情報保護の観点から見直す必要はないのか、個別法の必要性等も含めましてご検討 いただきたいということで、平成16年中を目途に一定の結論をまとめていただきたいと 考えております。  文科省、経済産業省における審議会の調査や審議、あるいは省内の医療機関等におけ る個人情報保護に関する検討と密接に連携をとりまして議論をしていただければと思っ ております。関連の委員会については、参考資料1−1をご覧いただきたいと思います が、先生方にご出席いただいています専門委員会は医学研究の個人情報保護についてご 検討いただくということでお願いしているところですが、その医学研究と密接に関係が ある医療の場、ここでは医療機関等における個人情報の在り方に関する検討会というこ とですが、ここにつきましては医政局で検討会を立ち上げて検討していただいていると ころです。医学研究については、基本的には個人情報保護法からは除外となっているの ですが、医療機関のほうには原則として適用されるということで、検討事項にあるよう に、個人情報保護法の全面施行に対応した医療機関等における個人情報の適切な取扱い のためのガイドラインの策定、個別法の必要性を含む医療機関等における個人情報保護 の在り方についてご検討いただくことになっております。2頁目は医政局の医療機関等 における個人情報保護の在り方に関する検討会のメンバーリストです。  医学研究に関しましては、例えば、ゲノム解析指針を考えると文部科学省、経済産業 省との合同審議となります。そういう観点から、既に、文科省では科学技術学術審議会 でライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱い等に関する小委員会が設置され ており、検討を開始していただいているところです。4頁目はメンバーリストです。経 済産業省の関係ですが、産業構造審議会の化学・バイオ部会個人遺伝情報保護小委員会 を設置して検討を開始されているところです。メンバーにつきましては、最後の7頁に メンバーリストをご覧下さい。関連の委員会、検討会等々と連携をとりながら、本専門 委員会についてのご検討を進めていただきたいと考えているところです。 ○垣添委員長  資料1と参考資料1についてご説明いただきましたが、医学研究に関して各指針があ り、遺伝情報は近年どんどん入ってきております。平成15年5月に個人情報保護法が成 立して、平成17年4月から同法の全面施行を控えて、遺伝情報を含んだ個人情報の取扱 いに関してきちんと結論を出そうという話です。既に、文部科学省及び経済産業省で同 じような検討会が進んでおり、当委員会の何人かの先生方もそれぞれの会に加わってお られ大変ご苦労だと思いますが、いずれ合同で検討をすることになるのではないかと考 えています。ただいまの資料1と参考資料1について何かご質問ありますか。 ○位田委員  私が聞き洩らしたのかもしれませんが、文部科学省と経済産業省はヒト遺伝情報もし くは個人遺伝情報に限定されているのですが、厚生労働省に関しては、資料1の2ポツ の検討課題等のところで「遺伝情報を含む個人情報」となっておりますので、個人遺伝 情報に限らず、もう少し広い範囲のことを考えるということでいいのか。それとも、医 政局の医療機関等における個人情報保護の在り方の検討会で遺伝情報以外のことをやっ て、こちらは遺伝情報をやるのか。この委員会の守備範囲がもう少しはっきりすればと 思うのです。 ○成田企画官  後ほどご説明いたしますが、厚生労働省では医学研究に関する指針が4つあります。 その中では、ゲノム指針、疫学指針、臨床研究指針、遺伝子治療の指針がありまして、 今般、個人情報保護法が施行されることになりますので、特に遺伝情報について個人情 報保護法の観点から見直す必要はないのかということをご検討いただきたいということ です。 ○位田委員  遺伝情報が中心だけれども、それには限らないということですか。 ○成田企画官  先ずは遺伝情報かもしれませんが、そこを中心にご検討いただいて、個人情報保護法 が施行されますので、そういう意味で見直すところがあれば見直させていただきたいと 考えております。 ○位田委員  医政局のほうとは重ならないのですか。 ○成田企画官  医政局は医療機関における個人情報の検討でありまして、個人情報保護法に基づくガ イドラインを作成するのが趣旨でございます。ただ、医療機関における医療も、当然、 遺伝情報のたぐいも入ってくると思われますし、医学研究と不可分のところがあろうか と思いますので、連携をとって、あるいは途中経過等のご報告もさせていただきながら ご検討していただきたいと思っております。 ○垣添委員長  それでは、資料2の説明をお願いいたします。 ○吉川補佐  個人情報保護法の概要についてご説明いたします。お手元の資料2−1をご覧くださ い。個人情報保護に関する法律、以降は個人情報保護法と略させていただきますが、本 法は昨年5月に成立いたしまして、目的といたしましては、第1条に規定されています が、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることを踏ま え、個人情報の有用性に配慮しつつ個人の権利利益を保護するということが規定されて います。また、この法律の特徴といたしましては、2層構造になっておりまして、基本 理念や政府による施策、国及び地方公共団体の責務など、いわゆる基本法のようなもの が定めた部分と個人情報取扱事業者の義務を定めた部分とで構成されています。なお、 この法律で言うところの個人情報取扱事業者は、2条にも定義が規定されていますが、 民間の事業者が対象になっていまして、国や独立行政法人は別法により規定されていま す。また、地方公共団体については条例により規定することとなっています。  第2章ですが、国等の責務が規定されております。この中の第6条におきまして、特 に適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報については保護のための格 別な措置が講じられるよう、必要な措置を講ずることが求められています。第3章は個 人情報保護法の施策等について規定されております。第7条で政府は基本方針を定める こととされていまして、この基本方針が本年4月2日に閣議決定されています。この基 本方針については後ほどご説明させていただきます。  第4章1節です。こちらには個人情報取扱事業者の責務が規定されております。資料 の7頁にありますが、OECD8原則がありまして、1980年にOECDが勧告したプラ イバシー保護と個人データの国際流通に関するガイドラインに示されている原則です。 第4章の個人情報事業者の義務という部分はこのOECD8原則を基本としています。 また、この点につきましては後ほどの資料4の説明の際にご説明させていただきます。  第4章2節です。民間団体による個人情報保護の推進として、対象事業者の苦情処理 等を行う団体ということで、主務大臣が認定する認定個人情報保護団体の制度などもあ るということが規定されています。  続いて、第5章の雑則ですが、実はこの部分がこの委員会では重要な部分になりまし て、法の第50条のところですが、ここに示されたもののいくつかが法の適用除外になる ことが規定されています。即ち、その学術研究機関やそこに属するもの等が行う学術研 究は憲法で言うところの学問の自由の権利の観点から、この法律の第4章、いわゆる個 人情報の取扱事業者の義務という部分からは適用除外となっています。しかしながら、 個人情報の保護の適切な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講ずることは求めら れているところです。  資料2−3にイメージ図を示させていただきましたが、この委員会でご検討いただき たいのは「医学研究」という横軸に延びている部分です。かつ、その中に黒塗りにした 部分がありますが、これが先ほどご説明いただいた適用除外の部分でありまして、我々 の検討はこういった横軸横断的な部分を検討していくということで考えているところで す。  現在、各省庁におきましていろいろな個人情報に基づくガイドラインを検討している ところですが、これにつきましては少し観点が違っておりまして、縦軸の世界というこ とで、そもそも、個人情報保護法の対象となる事業者がどうすべきかというところのガ イドラインを作成しているものが中心になっています。先ほどご説明した医療機関の検 討を例に挙げると、この図の右端に「民間の病院・診療所」「私立大学の大学病院」と いうところがありまして、まさに、ここの縦軸の、いわゆる法律に基づく部分のガイド ラインを検討しているということになっています。そういう意味で、この委員会でご検 討いただくところは、ほかのものと比べて少し特殊性があることをご理解いただければ と思っております。なお、この法律の施行ですが、先ほどからもご説明がありましたと おり、来年の4月1日から全面施行することになっております。  続きまして、資料2−2に基づいて基本方針、附帯決議等についてご説明いたしま す。基本方針は法律の第7条に基づいて国が定めることとなっています。その中で、4 月に出されたものですが、国が講ずべき個人情報の保護のための措置に関する事項の中 に、医療が、特に適正な取扱いの確保すべき個別分野ということでされていまして、個 人情報を保護するための格別の措置を検討し、法の全面施行までに一定の結論を得るこ ととされています。  また、附帯決議は、下の(参議院の附帯決議)をご覧いただくと、五の医療の横の (遺伝子治療等先端的医療技術の確立のため国民の協力が不可欠な分野についての研究 )という分野につきましても、医療の一つということで検討すべきものということが指 摘されています。こういうような背景もありまして、この委員会を立ち上げさせていた だいてご検討をお願いしたということです。  続きまして、倫理指針のご説明に移らせていただきます。資料3をご覧ください。厚 生労働省では、これまでに医学研究にかかわる指針といたしましてここに挙げました4 つの指針を告示しております。1つが、平成13年に告示されているヒトゲノム・遺伝子 解析研究に関する倫理指針。それから、遺伝子治療臨床研究に関する指針で、倫理とい う文字は入っていませんが、これは広く遺伝子治療、臨床研究の手続等も含めた指針で ありまして、当然、倫理の部分は盛り込まれている内容になっています。平成14年に疫 学研究に関する倫理指針、平成15年には臨床研究ということで、現在のところ、この4 つで医学研究における倫理に関する適正を図っているところです。倫理指針の全部につ きましては、本日の参考資料につけさせていただきましたのでご参照いただければと思 います。ここまでは国内の状況をご説明いたしましたが、国外の状況をご説明する資料 といたしまして、文部科学省の資料から抜粋した参考資料4を付けさせていただきまし た。ユネスコの「ヒト遺伝情報に関する国際宣言」が昨年出されておりますので、こち らのほうもご参考にしていただければと思います。 ○成田企画官  資料のご説明を続けさせていただきます。資料4−1と資料4−2ですが、OECD 8原則とヒトゲノム・遺伝子解析に関する倫理指針との対照表を事務局で作成していま す。先ほどの個人情報保護法のところでご説明いたしましたように、個人情報保護法に つきましては、基本的にはOECD8原則と個人情報取扱事業者の義務規定の対応とい うことで1枚入っていますが、OECD8原則を参考に個人情報保護法がつくられてい る背景がありますので、OECD8原則と指針がどのような形になっているかというこ とをまとめています。  OECD8原則につきましては、資料2−1の7頁目ですが、上から4番目に「デー タ内容の原則」があります。利用目的に沿ったもので、かつ、正確、完全、最新である べきということですが、例えばヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の中では 具体的にそういうところに触れておりません。研究の指針ですので、研究内容、データ が利用目的に沿ったもので、かつ、正確、完全、最新であるべき、というのは当たり前 なのだろうということもあって触れていないのだと思いますが、4つの指針すべて、こ れに直接触れた規定は入っていません。ということで、OECD8原則から1つを除い た7原則について比較対照表をつくっております。  簡単にご紹介させていただきます。資料4−1の「収集制限」のところですが、OE CDの原則の中に収集制限の原則が入っています。個人データの収集には制限を設ける べきであり、いかなる個人データも、適法かつ公正な手段によって、かつ適当な場合に は、データ主体に知らしめ、又は同意を得た上で収集されるべきである、という規定に なっていますが、ヒトゲノム指針の本文につきましては、インフォームド・コンセント を原則としなければならない云々等につきまして関連項目が規定されています。  次の頁ですが、2番目が「目的明確化の原則」ということで、その次に「利用制限の 原則」があります。目的明確化の原則につきましては「個人データの収集目的は収集時 より遅くない時点において明確化されなければならず、その後のデータの利用は、当該 収集目的の達成又は当該収集目的に矛盾しないでかつ、目的の変更後毎に明確化された 他の目的の達成に限定されるべきである」。  利用制限の原則ですが、「個人データは『収集明確化の原則』により明確化された目 的以外の目的のために開示利用その他の使用に供されるべきではないが、次の場合はこ の限りではない」。次の場合というのは、「データ主体の同意がある」。「法律の規定 による場合」があるということで、これに関連する本文の規定につきましては、「提供 者に対して、事前に、その研究の意義、目的、方法、予測される結果、提供者が被る可 能性のある不利益、試料等の保存及び使用方法等について十分な説明を行った上で、自 由意思に基づく文書による同意を受けて、試料等の提供を受けなければならない」とい う規定等、いろいろと具体的な規定があります。また、それの説明ということで、関係 細則がいちばん右側に書いてあります。ということで、それなりに規定はされているの ではないかと思います。  5頁目が次の原則になりますが、「安全保護の原則」です。「個人データは、その紛 失もしくは不当なアクセス、破壊、使用、修正、開示等の危険に対し、合理的な安全保 護措置により保護されなければならない」という規定になっていまして、これに対応す る指針といたしましては「すべての研究者等は、個人情報漏洩等の提供者等の人権の保 障の観点から重大な懸念が生じた場合には、速やかに研究機関の長及び研究責任者に報 告しなければならない」。その次にありますように、「すべての研究者等は、職務上知 りえた個人情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その職を辞した後も、同様であ る」。あるいは、「研究機関の長は、個人情報の漏洩防止に十分な措置を講じなければ ならない」という形になっておりまして、その具体的な細則につきましても、「個人情 報を厳重に管理する手続、設備、体制を整備し、例えば、個人情報を処理するコンピュ ータは、他の一切のコンピュータと切り離す等の措置を講じなければならない」という 細則が示されているところです。6頁目まで具体的な規定があります。  7頁目ですが、2つあります。「公開の原則」ということで、「個人データに係わる 開発、運用及び政策については、一般的な公開の政策が取られなければならない。個人 データの存在、性質及びその主要な利用目的とともにデータ管理者の識別、通常の住所 をはっきりさせるための手段が容易に利用できなければならない」。  それから「個人参加の原則」です。「個人は次の権利を有する」ということで、「デ ータ管理者が自己に関するデータを有しているか否かについて、データ管理者又はその 他の者から確認を得ること。自己に関するデータを、合理的な期間内に、もし必要な ら、過度にならない費用で、合理的な方法で、かつ、自己に分かりやすい形で、自己に 知らしめられること。上記の要求が拒否された場合には、その理由が与えられること及 びそのような拒否に対して異議を申し立てることができること。自己に関するデータに 対して異議を申し立てること、及びその異議が認められた場合には、そのデータを消 去、修正、完全化、補正させること」というOECDの規定になっています。それに対 応する規定としては、「研究責任者は、進捗状況及びその結果を、定期的に及び提供者 等の求めに応じて、分かりやすく説明し、又は公表しなければならない。ただし、提供 者等の人権の保障や知的財産権の保護に必要な部分については、この限りではない」。  それから、「遺伝情報の開示」ということで、「研究責任者は、提供者が自らの遺伝 情報の開示を希望している場合には、原則として開示しなければならない。ただし、遺 伝情報を提供する十分な意義がなく、開示しないことについて提供者のインフォームド ・コンセントを受けている場合には、この限りでない」。「研究責任者は、提供者が自 らの遺伝情報の開示を希望していない場合には、開示してはならない」ということが規 定されていまして、それぞれについて細則も示されているところです。  10頁目ですが、最後の原則です。「責任の原則」ということで「データ管理者は、上 記の諸原則を実施するための措置に従う責任を有する」となっておりまして、指針の本 文では「すべての研究者等は、研究実施に当たっての適正な手続の確保、外部の有識者 による実地調査、提供者等からの研究の進捗状況の問い合わせへの的確な対応、研究結 果の公表等、研究の透明性の確保を図らなければならない」という規定が盛り込まれて います。  ということで、基本的に、OECDの原則と比較してみると項目的には一応入ってい ると思っていますが、先ほど、委員長からお話がありましたが、現時点で研究がかなり 進んでいるという観点から、ここら辺のところは明確にしたほうがいいのではないか、 個人情報保護法の規定からもう少し明確に書いたほうがいいのではないか、というとこ ろをご議論いただければと思っているところです。  資料4−2ですが、これは残りの3つの指針について、OECDの8原則との対比を 書いたものです。遺伝子治療臨床研究、疫学研究、臨床研究は対象としている範囲が少 し違っていますので書き方の濃淡がありますが、一応は各項目それなりに規定が入って いるという状況です。こちらのほうは細かいので、又ご覧いただければと思っておりま す。  資料5をご説明いたします。「個人情報保護法の施行に向けたスケジュール」という ことで、これは6月10日に開催された国民生活審議会の資料です。個人情報保護法の観 点からということで、各省庁で個人情報保護法に基づくガイドラインの整備を進めてい るところですが、個人情報保護法は夏から秋口にガイドラインの案を示す。先ほどご説 明した個人情報保護法検討の際の附帯決議のところで、法制上の措置についてご検討い ただくということがありましたが、その措置については結論を本年中ぐらいにというこ とで示されているところです。  医学研究につきましては、個人情報保護法そのものではありませんが、法制上の関係 もありますので、本年中にいろいろとご検討いただければと思っております。  2頁ですが、検討状況の一覧です。これは個人情報保護法に基づくガイドラインとい う意味ですが、内閣府で把握する形になっております。3頁、4頁目が各省庁でやって いる検討状況です。これは、個人情報保護法に基づくガイドラインも入っておりまし て、医学研究の部分についても書いておりまして、3頁目の医療の研究のところがこの 専門委員会のご検討の対象になります。  ということで、具体的スケジュールですが、秋口に研究者及び事業者等が遵守すべき 事項等をできる限り具体的に明らかにする。年内に、個別法の必要性の議論を含めて、 一定の結論を得るということで国民生活審議会にご報告させていただいております。 ○垣添委員長  膨大な資料のご説明をしていただきましたので、かえってわからなくなったところも おありではないかという心配もありますが、結局、資料1にありますように、この検討 会としては医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会の設置。そ の中の検討課題としては、2にありますように、医学研究における遺伝情報を含む個人 情報の取扱いの在り方について、個別法の必要性等も含めて検討を行い、平成16年中を 目途に一定の結論を取りまとめることが、この会の義務であるということになろうかと 思います。  それで、冒頭、位田委員からご質問がありましたように、医療機関等における個人情 報の保護に関しては医政局総務課で現在検討中であります。ですから、こちらでは主に 医学研究に関連する遺伝情報等の取扱いに関する検討が中心になろうと思います。スケ ジュールは平成16年中ということですが、今日は1回目ですから、フリーディスカッシ ョンということで、各委員からこの趣旨に合うような形で、どのようにこの会を進めて いくか、研究の現場でどういう問題を抱えているか、という点などについて自由にご発 言いただければと思います。 ○具嶋委員  資料の確認ですが、参考資料4のユネスコの資料があると思いますが、下のほうの2 の翻訳は少しおかしいのではないかと思うのです。「目的及び適用範囲」で、ヒト遺伝 情報、ヒトプロテオーム情報及びそれらが由来する生物学的試料、このものを「ヒト遺 伝情報」と書いています。これは、文科省の資料にも一部同じような書き方があるので すが、その後の資料は修正されていると思うのです。「すべてを生物試料と言う」とい うのが英語の本文ではないかと思うのです。 ○位田委員  参考資料4の1頁目の2.の(1)のa)のその下の(i)の「(以下『ヒト遺伝情 報等』という)」がおかしいとおっしゃるのですか。 ○具嶋委員  文科省の資料ではそういう書き方はしていないのです。ヒト遺伝情報、ヒトプロテオ ーム情報並びにヒト遺伝情報及びヒトプロテオーム情報が由来する生物学的試料、これ を生物学的試料と書いてある。 ○位田委員  その参考資料4の後ろに、原文があります。それの7頁のArticle1で、Aims and scopeの4行目にreferred to hereinafter as “biological samples”と書いてありま すので、ユネスコの使い方は生物試料なのです。ここの趣旨は、要するに、ヒト遺伝情 報とプロテオーム情報と生物学的試料と全部含むのだという趣旨です。ユネスコは、そ れを全部言っていると長いので、biological samplesと言っているだけで、こちらも 「ヒト遺伝情報等」となっていますから、間違いとか間違いではないという話ではなく て、日本語の「ヒト遺伝情報等」が何を含むかわかっていれば、混同がなければです が、どちらを使ってもいいのだろうと思います。 ○垣添委員長  文科省、何かご発言ありますか。手元になければ次回に。 ○文部科学省  あります。いずれにしても、当方で制約をつくるということではなくて、たしか、こ の5月のときの資料は訳をしたときに日本文でのわかりやすさを追求してこういう形に してしまいました。他方で、当方の委員会でお配りした資料では、国際宣言の条文に忠 実に訳させていただいています。これは、どちらの訳が正しいかということではなく て、どちらがわかりやすいかということで、どちらをお使いいただいてもいいのだと思 います。 ○位田委員  宣言がbiological samplesをとっている理由は、これを仮にhuman genetic dataと言 ってしまうと、human genetic dataしか示さないような使い方をされる可能性もあるの で、biological samplesであればデータもあるしサンプルズもあるし、プロテオーム情 報もあるという。だから、その字を見たときに、どっちを使うほうが全部を含むかとい う意味で、宣言のほうはbiological samplesと使っている。 ○垣添委員  トータルに含めるということであれば、今のご説明でご理解いただけると思います。 ○宇都木委員  それに関連して。私自身はヒトゲノムの倫理指針をつくるところにかかわってまいり ましたが、つくづく思ったことは、研究利用という側面からガイドラインをつくったの ですが、その利用されるべき基のものについての日本の中でのきちんとした制度がな い。今まであったものを前提にして、それを使うという側面からだけで論じざるを得な かったということを今さらながら思っております。ですから、3省指針にしても、3省 指針等は全部「試料等」という言い方をして、「等」の中に情報も含むという、ちょう ど逆の形をとってきたと思うのですが、これのアクセントの置き方がその言葉遣いの中 に示されている。今度は、そこのところを3省指針などと、どういうかかわりにするか という問題が1つ、独立の状況を形づくっていくのかどうかということが1つ。それか ら、医政局でつくられている検討会は、おそらく、医療機関が既に情報として持ってい るものをどのように上手に整理していくかという話だと思うのです。私たちのここの検 討会は、先ほどの説明ではOECDの4番目の原則のところがカットされているという ことだったのですが、医学研究にとって本当に必要な情報が何であって、それが診療の 現場で本当に蓄えられているのかどうか。それが蓄えられていることを前提にして、そ れをいかに使うかという話だと思うものですから、この委員会としては、本来の任務で はないとは思いますが、医学研究にとって本当に必要な適正な情報にいつも視点を置き 続けなければいけないのではないかと思っています。 ○位田委員  私の最初の質問ともかかわるのですが、個人遺伝情報と、遺伝情報と、医学における 遺伝情報を除いたその他の情報と、性格というか特徴というか、かなり違うのではない かと思っているのです。ユネスコの宣言の中にも、遺伝情報というのはこういう性質も しくは特質を持っているのだということが前文と第3条、第4条辺りに書いてありまし て、それを一緒に議論してしまうことになるのか。それとも、遺伝情報はそれなりに特 別の性質、つまりheritableという意味でですが、それを持っているので、特別の扱い というか、通常の医療情報もしくは医学研究における情報とは違う扱いをしないといけ ないのではないか。その辺りが気になっているものですから、最初に質問させていただ いたのです。 ○垣添委員長  位田委員のご質問に関して、事務局のお考えをもう一度聞かせてもらえますか。 ○成田企画官  私どもとしては、個人情報保護法のご説明をさせていただきましたが、まず、医学研 究は除かれるが、自ら個人情報保護法の趣旨に基づいて研究しなければいけないという ことがあります。例えば、ゲノム指針などの4つの指針がありますが、そういう意味で は自主的な取扱いにする際の指針に該当するのではないかと思っております。というこ とで、個人情報保護法の観点からの規定がいくつかありますが、自主的に行うというこ とになっているのですが、指針のほうとして問題はないかということはあろうかと思い ます。それから、附帯決議の中にもありますように、特に遺伝情報について注意して行 うべきではないかというご指摘がありますので、そこはご議論いただく話かなと思って いるのです。 ○位田委員  そうしますと、場合によっては種類の違う指針のようなものが2つできても構わない ということになるのでしょうか。というのは、既にヒトゲノム遺伝子解析研究に関する 倫理指針があります。あれはあれで、ゲノム研究は通常の研究とは少し違うのだという 認識があったと思うのですが、それとそれ以外の医学研究で使われる情報については、 違う取扱いをしないといけない部分もあり得るのではないかと。これは、私も医療情報 のほうははっきり知りませんので議論をしてみないとわからないのですが、そうなる と、両方一遍に議論をして1つの指針にまとめるのはなかなか難しいかもしれない。 ○成田企画官  そうですね。現時点で4つの指針がありまして、例えばゲノム指針がありますが、そ れ以外に臨床研究の指針があります。臨床研究の指針の中では、基本的にはゲノムは関 係ないところですので、ゲノムが関与すればゲノム指針を適用することになっていま す。そういう意味では、2段階といいますか、現状でそうなっていますので、そこはわ かりやすい指針であればよろしいのだと思っています。 ○柳川委員  この会の設置の趣旨に、医学研究における個人情報の取扱いに関して適切な取扱いを 確保する分野としての在り方を検討するとあります。今のお話に出ましたように、既に 4つの指針がある。この指針の内容と今から検討することとはかなり重複しています。 ということは、既にこの4つの指針がつくられるまでに議論が重ねられてきたと思いま すので、この指針をベースにして、物によってはさらに具体的にするとか、物によって は何か別のことを考えていくとか、そういうことなのでしょうか。 ○垣添委員長  そう思います。つまり、来年4月から個人情報保護法が施行されるときに、既に4つ の指針で規定されているものに不足のものがあって、実際に研究を進めていく上で困る ことがあるのか。そこのところをこの検討会で結論を出そうという理解で私は臨んでい るのですが、それでよろしいわけですね。 ○堀部委員  成田企画官が先ほど言われたことですが、参考資料2−1の10頁に法50条の「適用除 外」があります。この法律にかかわってきたこともありまして、どのようにここでの議 論を考えたらいいのかということを伺いたいのですが、50条で第4章の個人情報取扱事 業者の義務等について適用除外をするわけですが、そのうち、ここで問題になるのは50 条1項2号、3号の「大学その他の学術研究を目的にする機関若しくは団体又はそれに 属する者」。そういう主体と「学術研究の用に供する目的」という目的と両方でこの適 用除外の要件を満たさなければならないわけですが、医学研究という場合にはこの適用 除外にすべて当たると理解するのか。それとも、そうではない部分があって、個人情報 保護法の第4章の個人情報取扱事業者の義務等の適用を受ける部分があるとするのか。 それはまた、先ほど吉川補佐が説明された資料2−3で、個人情報保護法と行政機関の 個人情報保護法、独立行政法人個人情報保護法、さらに地方公共団体などがあるわけで すが、公的部門については民間の利用者である個人情報取扱事業者と同じような形での 適用除外はないのです。そうすると、民間だと適用除外があって、国立大学法人や独立 行政法人あるいは国の試験研究機関の場合にはそれほどの適用除外になっていない。そ ういう辺りもありまして、医学研究というのはどういう意味と理解していいのか。少な くとも、個人情報保護法が適用になる民間の医学研究については50条1項3号で適用除 外になるのか。それによって、ここでの検討にもある程度影響してくるところがあると 思うのですが、前のほうに国の責務等もありまして、それとの関係でここではどういう ことで検討していくのか。あまり情報を挙げるのもどうかと思いますので、とりあえ ず、その辺り、医学研究は50条で適用除外になるものと理解しておいていいのかどう か。 ○吉川補佐  私が個人情報保護法を説明させていただきましたのでお答えさせていただきます。資 料2−3にもありますが、適用除外が抜けている部分と、医学研究で太く枠で囲んだ部 分で抜けていない部分があります。学術研究と、医学研究で学術研究ではないものの線 引きをどこでするのか難しいところですが、そこのご議論がこの検討会の中で必要なの かは別といたしまして、私どもが考えておりますのは、抜けない部分も医学研究の中に はあるのだということでこのイメージ図を書かせていただいています。したがいまし て、ガイドラインの話がありますが、先ほど説明させていただきましたが、縦軸の世界 ではなくて、医学研究全般的に広く係わるような横櫛的な規範的なものを何か示せれば と考えております。 ○堀部委員  この図の理解とすると、黒い部分が50条で適用除外になって、その周りの白い部分も 含めて医学研究になっているという理解をして、その白い部分については適用除外にな らないと理解していいわけですか。 ○吉川補佐  はい、そのような部分があると理解しています。 ○堀部委員  多分そうだろうと思いますので、そうなると、法の適用も念頭に入れながらどうする かという議論をしていかなければならないと思います。 ○吉川補佐  はい。確かに、抜けていない部分については、民間であれば個人情報保護法がかかる ところです。ただ、そこをどのような混在化をさせて議論をするのか。はたまた、医学 研究として特化してここでご議論いただくのか。それも、先生方のご議論を聞きなが ら、どのように進めるかというところを検討してまいりたいと思っています。 ○垣添委員長  この席上には研究の現場に身を置いておられる何人かの方が委員として加わっておら れますが、先ほど議論がありましたように、既に4つの指針があって、この検討会とし て今後何をするかというときに、研究の現場で今どんなことに困っておられるかという ことをご発言いただければありがたいと思います。 ○吉倉委員  現場といいますか、この前、OECDで遺伝子診断に関するクオリティ・アシュアラ ンスという各国のサーベイランスをやったのです。位田委員の最初の質問あるいは宇都 木委員のご質問とも関係あると思うのですが、遺伝情報をこの中に入れた場合に非常に ややこしくなるということです。簡単に言うと、試料自体の中に遺伝情報が入っている のです。物と遺伝情報は分けられない。そうすると、生体から採った試料を遺伝情報と 考えるのかどうか。実際にやろうと思えば、情報が入っていますから遺伝情報と考える と、この「等」に入れるのが適切かもしれない。  片や、そういうことを置いといて、遺伝子診断におけるクオリティ・アシュアランス という各国のサーベイでいくつか問題になったのですが、1つは、個人の生体試料が国 境を越えて例えば日本からアメリカに行くとか、アメリカからヨーロッパに行くとか、 そういうような国境を越えた生体試料の移動がある。これについては国際的なレギュレ ーションが一切ありませんから、これをどうするかということがOECDの中で非常に 大きな問題だったのです。  もう一つは、そういう試料も含めて、今のサーベイランスだと情報が入った試料を期 限を決めずに保存しているのです。ということは、そういう遺伝情報があちこちに行っ て、そのままそこで保存されているという問題があります。逆に、そういうことでサン プルの移動を制限してしまうと、今度は、実際、アメリカではパテントの関係で新しい 技術を医療現場で使えないとか、先々の解析に使えないというジレンマがある。これを 一体どのように解消したらいいかということがOECDのレベルでの大きな問題だと思 います。 ○垣添委員長  生体試料と遺伝情報というか、情報がそれぞれ加わっているわけですが、その取扱い と国境を越えた生体試料の移動、保存に関連する倫理的な問題提起をいただきました。 ほかにご発言ありますか。 ○菅委員  私は国立循環器病センターでミレニアム・ゲノム・プロジェクトという、皆さんご存 じだと思いますが、患者様あるいは地域の方から同意書を得て血液から遺伝子情報を採 れる形で試料を集めさせていただいて、特に、高血圧関連の循環器疾患について患者様 の臨床情報とゲノム、特にスニップスという遺伝子多型、そういうものの関連をやって います。  同時に、生活習慣の、お酒をどのぐらい飲むか、運動をどのぐらいするか、ストレス がどうかというものを集めてやりましても、遺伝情報だけで特別な患者さんがわかると いうような疾患ではどうもなさそうである。ただ、個人情報保護に基づきまして、患者 様のお名前はきちんと全部コーディングにしまして、万が一、その患者様にとって、あ るいは健康な方にとって、非常に有用な情報がある場合にはフィードバックできるよう な状況で、再連結可能な匿名化の格好で個人情報保護をやっています。ですから、コー ディングされてしまえば、研究者側では患者様あるいは健康な方の被験者を全く特定で きない状態で、個人情報保護が非常にうまくいっております。今のところ、高血圧関連 が絡む限りは、スニップスからいくら詳しく見ても、臨床症状を見ても、生活習慣病と しての循環器疾患の場合には、それだけではほとんど特定できない、あの方だとは言え ない形ですので、再連結可能としてありましても、その個人情報保護を管理者がきちん とやっていれば問題ないという状況で事が進んでおります。  しかし、これが、もう少し研究が進んで、単一の遺伝子疾患のようになってくると、 その臨床症状を見ただけであの患者さんだということがわかってしまう状況もあるかも しれません。非常にレアな疾患の場合にはあるかもしれません。そうなってきますと、 いくら個人情報をしっかり管理しても、どこかで、あの患者さんはこの疾患とこの遺伝 子と関係する、ということが出てくる可能性、危険性があるわけです。その場合には、 個人情報管理をしっかりすることが非常に重要です。現在、そこまでいっておりません が、個人情報管理はしっかりやるという形で、再連結可能でありながら、きちんとやっ ているという現状です。今回、私の関係している範囲では、今のところ、あえてこの3 省指針に基づいた我々の研究施設での個人情報保護に沿っていれば、新たに医学研究に おける個人情報の取扱いということをしなくても済む。そういう形で、私は、今日、資 料を読ませていただいて参加している状況ですので、もっと単一あるいは少ない遺伝子 多型で、極めて顕著な臨床症状が出るような家族性の何かというようなことになります と、非常にしっかりした個人情報保護の部分を固めておかないと、可能性があるものは 何でも起きるという一般論がありますので、万が一ということが起きないように相当し っかり固めておくことが必要だろうと思います。 ○垣添委員長  高血圧を例にとられた研究現場からのご発言をいただきましたが、菅委員のご発言に 関して、ほかの委員からご意見ありますか。現状では特に困ることはないけれども、将 来もっと研究が進んでいくと、より厳密な個人情報管理が必要になるのではないかとい うご趣旨だと思います。 ○具嶋委員  先ほどの文科省の委員会でも同じように言ったのですが、その後、辻先生もご意見を 出されましたが、今の日本のガイドラインが、研究や産業活性化には、ポジティブとい うよりネガティブに動いているのではないかと言われていて、我々も、企業も、医療の 先生方も、いかに患者さんに良い薬や医療を提供できるか、それに伴って欧米の企業に 産業化というものにいかに勝っていけるか、という観点で動いているので、あまりにも ネガティブな法律、菅委員が言われたように、さらにネガティブな方向に動くと疎外さ れるのではないかという心配があります。その辺は、辻先生も、研究が疎外されないよ うなガイドラインないし見直しになればいいな、というご意見を言われていました。 ○垣添委員長  両方のバランスをとっていかなければいけないということは、皆さん重々ご承知のこ ととは思います。 ○廣橋委員  私は、国立がんセンターでミレニアム・ゲノム・プロジェクトのような研究も含めて 研究に携わっているのですが、この間、決められたガイドラインを守って研究すること をきちんと行うときに、だんだんと体制整備をしながら行ってまいりまして、これをす ればきちんと研究ができる状態になったことは非常によかったと思っているのです。今 のお話にあったように、きちんとしていても、希に、匿名化された情報化も、どの方で あるかわかるような例外的なものがあることもそのとおりですが、そういうものは医師 としての良識、義務もあるわけですから、そういうものを併せてやっていけばそれほど の問題もなく運用できることだと思っています。  もう一つ私が感じることは、はっきりとした研究としてデザインされたものを実施す ることについては今のガイドラインできちんとできるのですが、むしろ、逆に、臨床の 場で、医師が研究のマインドを持って患者の診療にあたる。研究という見方で得られた 情報を患者さんの役に立つようにまとめられないか、という思いで症例に接しているこ とが本当の研究の源なのです。そこからいろいろな萌芽的なアイディアが出てきて、次 のはっきりとした研究デザインになって、その研究デザインになったときには、もちろ ん、このガイドラインに沿ってきちんと行うことができるのです。その臨床の現場で、 本当に意味のある情報がないだろうかという思いで、1人の患者さんだけではなくて、 複数の患者さんを比較しながら見ていく作業に対しても制限がかかると、いちばん大事 なところに対して抑制的になってしまうのではないか。その辺がうまくできるようにい かないかなと私は考えております。 ○垣添委員長  ご発言の点は非常に重要で、かつて、ヒトゲノム遺伝子解析研究に関する倫理指針の 検討のときも、随分一生懸命議論をした部分です。つまり、診療と研究は截然と区別で きるものではなくて、間にグレーゾーンがあるということで、そこの情報をどのように 扱うかということも非常に重要になると思います。 ○位田委員  少なくとも、個人遺伝情報という観点からすると、ヒトゲノム遺伝子解析研究に関す る倫理指針をつくったときの重点というのは、どちらかといえばシークエンス、もしく はもう少し進んでスニップスの研究です。したがって、あの指針は原則連結不可能匿名 化なのです。連結可能匿名化にするときにはそれなりの正当な理由が要ります、その理 由をきちんと説明してください、という話です。しかし、シークエンスはもう終わりま したから、遺伝情報に関してこれから問題になるのは個人及びその試料、サンプルと遺 伝情報が連結可能匿名化の形で、かつ、1回だけの研究ではなくて、かなり長期にわた って、例えば5年間ずっと連結可能で持っていて、サンプルもそのまま保存されてい る。その上に、例えば毎年、同じ人からサンプルをいただいて、例えば病気の流れを見 ていく。だから、そういう方向が原則に変わってきているというか、そっちの研究、つ まり、連結可能匿名化が基本的な研究の形になる時代に入ってきていると思うのです。  そうだとすると、これまでの倫理指針が持っていた原則は変えていかなければいけな い。その原則を変えたときに、つまり、連結不可能匿名化から連結可能匿名化に原則を 変えたときに個人遺伝情報の保護、もしくはサンプルの保管保護について、今の倫理指 針ではどこがどう駄目なのか。もしくは、どう変えていかなければいけないのかという ことを考えておかないといけません。  もう一つは、倫理指針は、よく「あれは厳しい」とおっしゃるのですが、どこがどう 厳しくて、どのようにうまくいかないのかということを具体的にお話いただかないと、 変えるための基本の材料がない。ただ単に、今までやっていたような研究より厳しくな ったと言われるだけでは困るわけです。そういう意味では、先ほどの具嶋委員がおっし ゃった、規制をしていくというネガティブな方向で、最初から研究者の方たちがガイド ラインをつくられてしまったと。したがって、規制をされてしまうのだという意識を持 っておられたのではないかという気が前からしているので、私は、確かにあのガイドラ インは結構厳しいと思いますが、先ほどの廣橋委員のお話だと、きちんとやる体制をつ くられているということですから、あれはあれで動くはずだと思うのです。それなら ば、動かないところは一体どこなのか。それとも、廣橋委員がおっしゃった、あの倫理 指針に乗る前といいますか、研究のプロジェクトをつくる前に患者を診ているところの 部分をどうするかという問題は、その倫理指針を振り返ってみたときに、どこが足りな いか。もしくは、その倫理指針のこの部分がうまくいかないというのか。具体的に指摘 していかないと、ただ単に変えると言うだけでは難しい気がします。 ○垣添委員長  廣橋委員、菅委員、具嶋委員のご意見、今は位田委員も言われましたが、結局、連結 不可能匿名化ということでずっと来たけれども、研究が突き進んでくると、医学情報と 遺伝情報をきちんと連結可能にしないと情報として意味を持たないという時代に間違い なく入ってきていると思うのです。そのときに、どのような基準に従ってやっていけば 研究がきちんと行われ、かつ、それが患者の個人情報を守りながら成果が上がっていく のかということをここで議論することになると思っています。 ○吉倉委員  OECD8原則が適用できるかということを考えたほうがいいと思うのです。目的明 確化の原則、利用制限の原則、これができたのが1980年ですから、今の遺伝子解析は夢 にも思わなかった時代にできた原則なのです。今は、試料があると、最初の目的から違 ったものをその試料を使ってできるわけです。そういうことで言えば、サンプルは無限 の可能性がある。そういうものをいかに消費者等の理解を得ながら使うかということ で、おそらく、この目的明確化の原則のところは、消費者の人たちとのネゴシエーショ ンといいますか、そういうことが必要になっている時代ではないかと私は感じていま す。 ○福嶋委員  私は臨床遺伝を専門にしておりまして、遺伝子情報をいかに医療の場で適切に使って いくかということをやっている者です。この3省指針は非常にきちんとつくられたもの で、研究推進ということであれば非常にいいものができたと思っていますが、どのよう にすれば個人の匿名化が守られるか、どうやったら各倫理委員会が適切な審議ができる か、その辺のところが「こうあるべきだ」ということで終わっているのです。ですか ら、倫理委員会がきちんとした倫理審査ができるためには、倫理委員にはこういう能力 が求められるとか、教育ツールとか、そういうものを国として整備して、倫理委員にな るためには、最低限、この指針の内容は理解してから倫理審査委員会に臨んでください というような、そういうところまでやらないと実のあるものにならないのではないかと 思うのです。  私の関連で言いますと、あそこには、必要な場合には遺伝カウンセリングを実施する こととか、そういう体制を整えることと書いてありますが、それは御題目だけで、遺伝 カウンセリングを適切に行うための教育はどういうことを受けた人がやるべきだとか、 そういうところまでは書かれていないのです。ですから、匿名化の方法にしても、こう いうツールを使うとこれが守られるのでこれを使ってくださいという、より具体的なも のを明示していただけると、より広く安心して研究が推進できるのではないかと思いま す。  少し元に戻って申し訳ないのですが、用語のことで質問があるのです。今回は医学研 究になっていますが、一方では、指針の中で臨床研究に関する倫理指針が出ました。臨 床研究に関する倫理指針の臨床研究は非常に幅広くて「ヒトに関するもの」。「ヒトを 対象とする研究」と明確に出ているのです。そうしますと、それは、医学、病気だけに 限らず、栄養学や金メダルを取る遺伝子や、そういうようなものもヒトに関する研究は 全部入ってくるわけです。今回の医学研究といいますと、カウンターパートとしては医 療機関における個人情報保護は別のところで扱われることになると、これは、医療情報 を用いた研究、病院で扱われるような情報、試料を用いた研究に限定されるのでしょう か。それとも、臨床研究という、ヒトを対象としたものすべてに個人情報保護という視 点でやるためにどうしたらいいかという、そこのところがオーバーラップするのか全く 同じなのかということを教えていただきたいのです。 ○安達研究開発振興課長  確かに、医学以外のことも、臨床であれば臨床研究ではないかというご指摘はあった のですが、そもそも、この臨床研究の倫理指針の前文で示してありますように、基本的 には医療を目的としたものを行っております。したがいまして、私どもの考えでは、医 学研究の中にはヒトを使わない研究もありますので、医学研究の中に臨床研究が含まれ るのではないかと考えています。ただ、若干、医学研究から外れるものがある。今、ご 指摘を受けて初めてそういう目で見たのですが、基本的には医学研究の中に含まれるの が臨床研究だと認識しておりました。 ○福嶋委員  そうなのですか。 ○位田委員  私もそう思ってはいるのですが、つまり、研究という名前がつく以上はそれは医学研 究だろうと。したがって、もし分けるとすれば、目的が研究であるか目的が治療である かというところで切るしかないのではないか。それが妥当かどうかというのはまた話が 別ですけど。 ○安達研究開発振興課長  臨床という言葉が基本的に医学の世界の言葉ですので、臨床研究の主な目的というの は医療における疾病の予防、あるいは診断方法、治療方法の改善、疾病原因及び容態の 理解並びに患者の生活の質の向上、こういうことを対象にしているということで、広い 意味での医学研究の中に含まれると考えております。 ○宇都木委員  実をいうと、法科大学院で臨床研究ということで借りておりまして、リーガルクリニ ックをやるときに使っているのです。それはいいのですが、臨床研究の倫理指針をつく ったときに私は委員の1人だったのですが、今度、ヘルシンキ宣言はクリニカルという 言葉を捨ててしまったのです。臨床という言葉を捨てたのです。臨床というのは、基本 的にはヒトがそこにいる。去年の5月に出したものは、臨床研究と言っていながら、そ の中にヒト由来試料とデータを含むというヘルシンキ宣言と同じ概念を使っていて、ヘ ルシンキ宣言はMedical Research involving Human Subjectと言って、クリニックとい う言葉を使わなかったのです。ですから、本当はクリニカルと言った場合はそこにヒト がいる。そうしますと、患者さんは自分がなされることに対して直接クレームをつける こともできるしコントロールもできる。ところが、ヒト由来試料とデータは個人から全 く離れたところで使われることになるので、全く状況が違いますから、この会の中では その辺をきちんと分けていったほうがいいのではないかと思っています。 ○垣添委員長  その辺に入っていくと非常に難しい話になりますね。 ○武田委員  私は資料2−3のいちばん右側の民間病院及び診療所ですが、これについては別途検 討とありますが、資料3のヒトゲノム、遺伝子治療研究は私どもには直接関係がないと いうか、研究資料で見るぐらいですので何とも申し上げられません。ただ、2番、3番 の疫学研究、臨床研究につきましては民間病院でもかなりやっておりますし、この倫理 指針に従えばそれでいいのではないかということは言えます。別途、医療機関等の個人 情報保護法の検討会の中でガイドラインをつくるということですので、それに従えば 3、4はかなり問題が解決してくるのではないか。1、2は別の検討をしなければいけ ないのではないかと思って先ほどから聞いていたのですが、3、4につきましてはガイ ドラインに沿ったようなものでいいのではないかと思っております。 ○栗山委員  今日は、皆さん、専門家の立場でお話をされたので、私は本当に場違いな所に来たの ではないかと思っているのですが、多分、私が1人素人で、何もわかっていないと思う のです。ただ、もう1つは、ここで患者の立場でいられるのは私だけではないか。もち ろん、皆さんも患者になり得るけれども、結局、専門家の立場からの患者であって、本 当に何もわからない患者の立場は私だけだと思うのです。  今日は雑談でよろしいという委員長のお話でしたので、自己紹介をかねて感想を述べ させていただきます。患者の立場から、素人から言うと、個人情報を保護していただく のは大事なことだと思うのですが、それと医療研究の発展、患者のどの部分のどういう 情報が漏れるといけないのか、というところが全然わからない。医療の発展のために は、ある種、どれぐらいのところまでならば我慢できるのかということはあると思うの です。もう一つ感じたことは、OECD8原則というものも踏まえて議論がなされてい るわけですが、国際社会においても皆が同じように考えているはずだと思うのです。横 並びで、例えば先進国はどうなのだ、近隣のアジア諸国はどうなのだ、というところも ぜひ教えていただきたい気がいたしました。 ○垣添委員長  患者の立場でこういう検討会にご意見をいただくのは非常に貴重なことで、今後とも よろしくお願いします。国際的な状況に関しては、今日はOECDのお話をいただきま したが、それ以外にも関連した資料等がありましたら、次回以降、適宜ご紹介いただけ ればと思います。予定した時間になりましたので、本日のフリーディスカッションはこ れで打ち切らせていただきまして、今後の予定に関して事務局からご説明いただければ と思います。 ○成田企画官  ありがとうございました。先ほど来申し上げましたけれども、文部科学省、経済産業 省と連携をとらせていただいて検討を進めさせていただきたいと思っております。次回 以降につきましては、先生方のご了解あるいは文部科学省、経済産業省のご了解がいた だければ合同ということも考えさせていただきたいと思っております。 ○垣添委員長  それは摺合せをしていただいて、そのほうが議論が効率よく進むということであれば そのようにもさせていただきたいと思います。こちらで預からせていただきたいと思い ます。 ○中谷厚生科学課長  ただいま事務局から次回以降のお話をしたわけですが、私、今日のお話を聞いてい て、患者さんの視点、患者さんのためになる研究が円滑に進むような、また、研究者の 方が良い意味でそういう意図でやっていながら、いきなり突然「お前は変なことをやっ たではないか」と言われないような仕組みで研究を促進していく。私たち厚生労働省は 患者さんに近い立場で研究を進めていくというのが基本的な立場です。今日、この委員 会で皆様方のコンセンサスが聞けたような気がいたしまして、大変良いスタートをきっ ていただいたと感謝申し上げます。それで、さまざまな宿題事項、私たち自身ももう少 し勉強することがありますので、委員長にご相談をしながら、資料を整理して参りたい と思います。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。 ○成田企画官  次回の開催ですが、8月19日か20日か23日の間で1回、9月に先生方の日程のよい時 間帯で1回開催させていただきたいということで、お手元に日程表を配らせていただい ております。後ほどでも結構でございますので、ご連絡をいただければと思っておりま す。それでまた調整をさせていただきたいと思います。 ○垣添委員長  それでは、本日の議論はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございま した。 −了− 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:屋敷(内線3808)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171