05/07/13 第12回雇用政策研究会議事録             平成16年度第12回雇用政策研究会                     日時 平成17年7月13日                        10:00〜                     場所 厚生労働省共用第8会議室(6階) ○小野座長  ただいまから雇用政策研究会を開催します。  まずは本日の議題となっている報告書案について、前回ご指摘いただいた点などを反 映して、事務局から資料が用意されていますので説明をお願いします。 ○中井雇用政策課長補佐  ご報告申し上げます。前回、7月5日の研究会において、1度報告書案についてはご 議論いただいたところですが、それ以前の研究会におけるご議論、あるいはご指摘、ま た個別にご意見をいただいています。そういったものを参考にして、報告書案について お手元にお配りした資料のとおり整理しております。  まず資料No.1、これは前回も提出し、ご意見等を踏まえて修正しておりますが、報 告書案の概要です。また、資料No.2は報告書案の本体です。資料No.3は報告書案に記 載している内容の参考資料ということですので、これは適宜ご参照いただければと思い ます。  それでは資料No.1の概要、資料No.2の報告書案本体によりご説明いたします。まず 概要では1枚目、本体では2頁目以降で、現状認識を整理しております。我が国を取り 巻く経済環境などの変化の中で、企業行動については短期的利益の重視、外部人材の活 用、正社員比率の低下、教育訓練投資の減少といった変化が見られています。  一方、労働者については働くことを希望する女性の増加があります。依然として正社 員として働くことを希望する者が多いという一方で、多様な働き方や仕事と生活の両立 に対する希望が高まるという意識の変化が見られています。そういった中で、この両者 において「ずれ」が生じているというように整理をしております。  その結果として、概要では上の段の右、あるいは本体の5頁から7頁あたりをご覧く ださい。景気の回復に伴う雇用情勢の改善、あるいは企業収益の改善が見られた一方 で、若年・女性・高齢者などの就業機会の問題、あるいは正社員以外における雇用の不 安定化、能力開発機会の減少、格差の拡大、二極化といった現象が見られ、仕事と生活 の両立が困難となるなど、労働者の意欲と能力が十分に活かされない現状があるという 整理をしています。  そういった現状の中で「今後四半世紀の展望」、概要では真ん中の段、報告書本体で は8頁からということになります。2007年にはご承知のとおり、人口が減少に転ずると いうことで人口減少社会が到来する。また、今後、団塊の世代が高齢化する中で、先ほ ど申し上げたような企業と労働者の間のずれを放置したまま対策を講じなければ、経済 社会を支える者の減少、人材の質の低下による生産性の低下、格差の拡大による社会の 不安定化、また各種要因による少子化の進行などが進むということで、経済社会の停滞 が懸念されるということです。  このようなシナリオを避けるために、すべての人が意欲と能力を発揮できる就業機会 を持つ、能力を高める機会を持つ、安心・公正に働ける、労働以外の生活も充実でき る、そういった社会の実現を目指すべきであり、こうしたことを可能とする政策と適切 な経済政策の運営が相まって、人口減少下においても活力ある経済社会の実現を図って いくことが可能であり、重要であるとしています。  この展望の2つのシナリオを比較して、労働力等の観点から今回推計しています。概 要では2枚目に移っていただき、「労働力人口の見通し」であります。また、報告書本 体では10頁から12頁に内容を記載しています。何回か、この研究会の場においてもご検 討いただきましたが、このような形で整理をさせていただきました。  概要を中心に見ていきたいと思います。今後について、2015年、2030年をここでは出 していますが、現状のまま推移し、労働市場への参加が進まないケースと、各種対策を 講じることにより、労働市場への参加が進むケースを比較しています。それによると、 労働力人口では2015年において、労働市場への参加が進まないケースでは410万人減る ところが、労働市場への参加が進むということで110万人減にとどまり、300万人上回 る。同様に、2030年では、労働市場への参加が進むケースのほうが進まないケースに比 べて労働力人口が510万人上回るという結果になっています。適切な対策を講じること により、人口減少のインパクトがかなり緩和されるということが推計でも示されている のではないかと考えています。  また、それに関連して、報告書本体では労働力率、マンアワーベースで見た労働投入 量、就業者、さらに今回の報告書で重視すべきということで整理しています就業率、そ ういった数字もそれぞれ労働市場への参加が進まないケースと進んだケースを比較して 記述しています。  それに加え、労働生産性の向上を図れば現在以上の経済成長率を維持することは可能 であるという整理をしています。具体的には報告書本体の11頁、停滞シナリオというこ とで、2004年から2015年までで実質成長率を年率で0.7%程度、2015年から2030年まで で0.6%程度を見込んでいます。それから、12頁のほうで労働市場への参加が進んだ場 合のシナリオとして、こちらは同様の図を報告書本体にも掲載しております。成長率と しては2015年までで1.8%程度、2030年までで1.6%程度を見込んでおります。2004年ま での過去5年の実質経済成長率が年率で1.3%ということでしたから、過去5年間で見 た場合以上の成長率が今後確保できる見込みであるということです。これにより、経済 社会が活性化していくことが可能であるというように整理しています。  このような展望を踏まえ、「今後10年間に取り組むべき対策」ですが、報告書の概要 ではまた1枚目に戻って、報告書本体では13頁以降ということになってきます。まず、 この10年間ですが、概要の下の段の左にも赤字で書いていますが、ちょうど団塊の世代 が65歳に到達、引退過程に入っていく時期であり、それまでにどういった対策を講じて いくかが鍵であるということで、10年間という整理をしています。  今回における対策の基本的な考え方ですが、概要の下の段、本体では13頁で3つの柱 ということで整理しています。まず、1つ目の柱は、「すべての人々が高い意欲と能力 を持って様々な就業機会へ挑戦できるための支援」です。具体的には若年者、女性、高 齢者等の就業機会の拡大、各世代の特性に応じた職業能力開発、地域における雇用創 出、人材育成が重要としています。  2つ目の柱は、「人材の確保・育成の推進」です。具体的には性・年齢などにかかわ りなく、意欲と能力に応じた処遇、人材育成、産業の高付加価値化や高齢化が一層進行 する中で、必要なサービスを提供する人材の確保・育成、希望すれば非正社員から正社 員へ移行できる環境整備、働き方の見直し、中小企業等における技能継承支援が重要と しています。  最後に3つ目の柱、報告書本体では14頁になりますが、「労働者が安心・公正に働く ことができるルール・システムの整備」です。具体的には、多様な就業形態に対応した 社会保険制度・労働関係法制の整備、職務、能力と労働時間に応じた処遇等のルールの 確立、また労働力需給調整機能の強化が重要としています。そして、報告書本体14頁の 中ほどに1行空白があり、その下に書いてありますが、施策の展開に当たっては、人口 減少下でより多くの者が社会を支えるという観点から、国民一人一人の現実の労働への 参加を表す指標である「就業率」を重視して対策を講じるべきである、としています。  さらに、報告書本体のその下にまた1行空白があり、その下の「なお、多様な就業形 態は」以降ですが、ここに特に重視すべき対策とその考え方をまとめて書いておりま す。具体的には太字になっているところ、職務、能力と労働時間等に応じた処遇の確 立、労働者の能力開発、また仕事と家庭の両立(ワークライフバランス)です。15頁に 移って、その中で特に、仕事と家庭の両立を可能とする環境整備、さらに長時間労働問 題の解決に向け、より積極的に取り組むこと、これらを特に重視していることを示して います。  このような政策の基本的な考え方に基づき、10の政策対象・分野ごとに政策提言とい う形で整理をしております。概要では3枚目、報告書本体では15頁以降、分野ごとで言 うと16頁からということになります。まず第1に「若年者への就業支援」です。これに ついては新卒採用に限定されない採用機会の拡大、フリーターの正社員への登用・常用 雇用化への支援、職業意識の涵養、若年者向けの実践的能力評価の仕組みの整備・普 及、コミュニケーション能力や心理面のケアを含めたきめ細かな支援などを講じるべき である、としています。  第2に「女性への就業支援」です、本体では17頁に移ります。実質的な男女の均等を 確保し、女性が活躍する領域を拡大するためのポジティブ・アクションを含めた対策の 強化を通じた、男女の機会均等施策の強化、妊娠・出産しても安心して働き続けること ができ、子育てとの両立を可能とするための働き方の見直し、保育の充実等の環境整 備、出産等により離職しても再就職・再就業を可能とするための支援、また男性を含め た働き方の見直しが重要だとしています。  第3に「高齢者への就業支援」です。これはまず、65歳までの雇用継続等による雇用 機会の確保に加えて、今後、特に60歳代後半層への雇用・就業支援の検討、さらに働く 意欲がある限り、働き続けることができる社会の構築に向けた検討を進めていくべきで ある、また、中小企業における技能の円滑な継承への取組についても支援していくべき である、としているところです。  第4に「福祉から就労へ」、本体では18頁になります。ここでは障害者、生活保護受 給者、母子家庭等といった層に対する自立支援が重要であり、より支援を強化していく べきであるということです。  第5に「地域における雇用創出への支援」、報告書では19頁になります。地域の特性 に応じた自発的な雇用創出の取組への支援、およびそのための人材の確保・育成が重要 である。また、団塊の世代が引退を迎える中で、地方への移住を希望する退職者が住み やすい魅力的な環境作りを進めること、これが地域における新たな雇用機会の創出につ ながる可能性が高いということをここでは指摘しています。  次に第6、「職業能力開発」です。ここでは若年、壮年、高齢といった各世代に必要 とされる職業能力の開発・向上が、労働者の自発的取組や企業を含め社会全体として、 各世代の特性に応じて推進されることが重要であるとしております。そして、個人主導 の職業能力開発のための環境整備や職業能力評価制度の整備等も必要である、としてい ます。  第7は「外国人労働者」、報告書では20頁です。これについては、経済社会の活性化 に資する人材確保として専門的知識や技術を有する外国人について、受入れを積極的に 促進する必要がある。また、当面は労働力供給の大幅な不足が見込まれない中、労働力 不足への対応として安易に外国人を受け入れることは適当ではない、としているところ です。  また、現在、専門的・技術的分野と評価されていない分野における外国人労働者の受 入れについては、業種・職種ごとの労働力需給の状況、本来、当該分野で育成すべき若 年者の能力向上・機会が阻害されることにならないか、また、受け入れた場合の国民生 活に与える影響、受益者による社会的なコスト負担のあり方等を勘案する等、総合的な 観点から対処することが必要である、としています。  また、日系人労働者の定住化に伴う諸問題に対応して、必要な対策も検討していくべ きである。ただ、全体的に外国人の受入れについては、単に労働力にとどまらず、産業 構造や国民生活等に影響を与える問題であり、また国の根幹に関わるため、国のあり方 として国民的な検討を行う必要がある、としています。  第8の「安心・公正な労働」、報告書では21頁です。ここではまず、労使当事者の行 動の規範となる労働契約法制のあり方や、労使コミュニケーションの促進を図り、それ による労使の自主的な予防・解決を促すための取組等について検討すべきであり、併せ てその基礎となる労働法の権利等について労働者の啓発も検討すべきである、としてい るところです。また、働き方にかかわらず、職務、能力と労働時間等に応じて処遇の均 衡を進めていくべきであるとともに、就業意欲を阻害しない税・社会保険制度などのあ り方、特に被用者保険の短時間雇用者への適用拡大についても検討していくべき、とし ているところです。  近年増加している業務請負についても、実態把握と望ましい働き方についてのルール の検討が必要である。また、長時間労働・メンタルヘルス対策等の強化とともに、労働 者が最も能力を発揮できるような労働時間制度のあり方や、セーフティネットとしての 最低賃金制度の機能の強化についても検討を進めるべき、としております。  第9の「仕事と生活」、報告書では22頁になります。ここではまず、ワークライフバ ランスを可能とするための長時間労働対策等の労働条件全般についての環境整備、自己 啓発・ボランティア等仕事以外の社会的な活動を可能とするための環境整備が必要であ ると整理しています。  最後に第10、報告書では23頁、「労働力需給調整」です。ここでは、すべての働く意 欲のある人々が就業機会に挑戦できるための募集・採用の促進、求人・求職活動の広域 化等に対応するためのハローワークの活用による雇用のセーフティネットの強化、離職 を余儀なくされる労働者の円滑な労働移動のための支援が必要である。また、民間の職 業紹介機能の活力や創意工夫を活かし、官民相まった労働力需給調整が図られるような 環境の整備が重要である。併せて、創業支援、在宅就業など、就業機会の拡大につなが る働き方の普及に向けた取組も行っていくべきである、としています。  このように、今回報告書を整理いたしました。今後、10年間において、課題はそれぞ れの分野で多くあると思います。今回、報告書全体について言いたいところ、ポイント を考えたときに、人々が意欲・能力を持って、あるいは能力を高めて就業機会に挑戦で きる、そういった環境作りをすることで、今後、人口減少下においても労働市場への参 加が進み、一定の活力が生まれるということが1つあると考えています。  また、報告書本体で申し上げますと11頁に「目指すべき社会」とあります。そこに、 人材こそ経済社会の発展の礎であるという基本的な理念の下、今後の経済社会システム を構築していくことが求められる、ということが書いてあります。これまで「失われた 10年」と言われたりしましたが、長びく不況の中で経済が停滞し、企業が生き残りをか けていろいろ努力をしてきた。最近良くなってきたということで、改めて現状を見ると 労働者、人という面が少し遅れてしまっている。これを「ずれ」と申し上げているわけ です。そういったところを少し是正して、人、人材というものをもう少し重視した対 策、環境整備を図っていくことが重要であるというメッセージと考えているところで す。幸いに最近、経済が良くなってくる中で、企業においても前向きな経済活動の中で 人材政策を見直すという動きがあります。そういった動きに乗っていくことも重要であ ろうかと考えているところです。  最後はこの報告書の副題です。概要の1枚目の頭にも書いてありますし、報告書本体 にも最初に書いてあります。いろいろこの場でもご議論いただいたところですが、今回 の大きなテーマが人口減少ということでしたので、案として「人口減少下における雇用 ・労働政策の課題」とさせていただいています。私からの説明は以上です。どうぞよろ しくお願いいたします。 ○小野座長  ご苦労様でした。意見交換に移ります。いまの資料についていろいろご意見があると 思います。どうぞ、自由にご発言をお願いしたいと思います。 ○樋口委員  2回ほど欠席したので、だいぶ議論は進んだのだろうと思います。事務局からもその 間の経緯について、いろいろお話を聞きましたので理解していると思います。  その上で一言申し上げたいことがあります。それは何かというと、いまの副題のとこ ろとの関連です。この報告書のキーワードになるだろうと考えたときに、「人口減少下 」は明らかに大きな今後の問題だろうと思います。その中で、やはり「多様化」が副題 になってくるのではないかと思っています。  1つはこのような人口減少社会の中で、多様な価値観を持った人に頑張ってもらわな ければならない社会、そうでなければ活力を失ってしまうということもあるでしょう。 あるいは性、年齢、時には外国人という話ですから国籍といったところでもいろいろな 多様化の人材を活用する。あるいは、その人たちが能力を発揮できるような場を作って いく。さらには多様な雇用形態、こういったところで求める人材についても企業からの 多様化が起こってきている。さらには、地域の間での多様化ということで、従来のよう な画一的な政策といったものが取れない。多様化がこの報告書全体での話になってくる かと思います。  多様化が進展する中で、一体政府の役割とは何かを考えたときに完全競争の話も出て くるわけです。1つはやはり多様化したがゆえの問題点として、それぞれの均衡の問題 が出てくるのではないか。例えば雇用形態間の問題もあるでしょうし、地域間の問題な どということもあるのではないかと思います。  もう1つ、政府の役割として大きな問題というのが、多様化したがゆえに外部性をど う考えるのか。すなわち、例えば価値観が多様で全力を仕事に注ぎたい。家庭はという 人もいれば、片方ではそうではないという人もいるわけです。個別契約になっていった ときに、例えば雇用主と個人が契約するとなったときに、契約当事者間以外に影響が出 てくる。例えば、一生懸命働くことが生きがいですという上司のもとにおいて、部下は 違った価値観を持っているといったときにどう考えたらいいのか。本来、個人の価値観 を実現するというところでは自立的な選択が可能なようにというわけですが、そこにお ける政策のあり方をどうするのか。言うならば、多様化した中における利害の調整、あ るいは価値観の実現の調整といったものをどうしていくのかが多分、これをいろいろ読 んで議論されてきているのだなという感じがしました。それはもうこの中に織り込まれ ていることだろうと思うので、いくつか補強したほうがいいかなと思うところもありま すが、そのようになっています。  例えば11頁に「目指すべき社会」とあります。ここに(1)から(4)があります。(4)の 「労働以外の生活も充実できる」というのは何となく、とって付けたような話で、やは り個人の価値観を実現でき、その中には労働というものもあるだろうし、それ以外の生 きがいといったものもあるでしょうということで起こってくるのかなと思っています。  企業はいろいろ多様な人材を必要とする。それがゆえの問題点として、14頁に外部労 働市場の話が出てきます。「労働者が安心・公正に働くことができるルールやシステム を整備していく」というところで、3番目のパラグラフの4番目、「このため、個別企 業を離職しても円滑な再就職により、労働市場における雇用の安定を図ることが重要で あり」、まさにそうだろうと思います。このために具体的に何をすればいいのか。ここ では職業紹介という話になってくると思います。  高質な労働市場を形成するということが重要です。この間、猪木委員、八代委員に文 部科学省の私の研究プロジェクトで審査をしてもらいました。その中で、プロフェッシ ョナルな労働市場、あるいは職種別の労働市場といったものをどう形成していくのかと いう視点があったほうがいいのではないか。そのための技能形成のあり方、情報提供の あり方、あるいは職業紹介のあり方といったこともあるのではないかと思います。転職 コストを引き下げるための具体的な政策に、労働市場という概念が重要なのだというこ とを是非織り込んでいただきたい。その市場というのは勝手に形成されるものではなく て、やはり意図的に、政策的に作っていかなければならないものではないかと思いま す。そういった視点からの法制度のあり方ということも入れていただければ幸いだと思 います。  14頁の下でちょっと気になっていることがあります。下から6行目、太字になってい るのですが、「職務、能力と労働時間等に応じた処遇の確立」というようになっていま す。気になったのは「労働時間」です。EUで言えば、時間差別禁止の話とどう関連し てくるのかなと思っています。これだけ読むと、労働時間に応じて職業を変えろという ように読めてしまいます。果たして、それでいいのかどうか。前の「職務、能力」とい うのは理解できるのですが、「時間」が何カ所か、あとでももう1カ所出てくるのです が、時間に応じて処遇に差をつけるというように読めます。これはこれでいいのかどう か、というのは是非議論していただきたいと思います。  20頁、第3パラグラフ、高度で専門的な技能を必要とするような社会になってきてい る。これも多様な人材を必要としているということからでしょう。いちばん上のパラグ ラフ、大学・大学院等の高等教育機関の話が出てきます。これはまさにプロフェッショ ナル・スクールに対する支援、あるいは個々の関わり方をどうするか。求めている人材 というものが多様化する中において、いままでのような能力開発施策だけではなく、多 様なものが必要になってきているということではないかと思います。ここも是非、そう いう視点で書けないかと思っています。  あとは繰返しになってしまうのですが、22頁、「ワークライフバランス」の話です。 これに書いてあるのはもっともなことなのですが、具体的政策としてどう実現していく のか。個人の選択というところに直接結びつけるわけですが、それが先ほど申し上げた ような外部性ということになります。外部性があるがゆえに政府が必要だ、と経済学で 教えているところもありますので、そこのところはこれではどう考えていくのか。確か に、何もやらなくても、個々人が選択できるような状況ができればそれに越したことは ない。多分、横断的な労働市場を作るということは、その企業から離れてもほかに選択 肢を拡大するというところでは必要なことだろうと思います。それを具体的にどう考え ていくのか、ということを織り込めたらと思います。  最後として、「政策のあるべき姿」となっています。もう1つ、「政策評価」の話が 非常に重要になってきている。もう、既に厚生労働省はいろいろな取組をやっていると 思います。そういった流れに沿って政策評価をして、それがそれぞれの政策に反映でき る流れを書くことはできないかと思いました。以上です。 ○小野座長  ありがとうございました。どうしましょうか、いますぐお答えになれるところがあっ たら答えますか。 ○勝田雇用政策課長  1点だけお答えします。労働時間に応じてというのは、例えば長い時間働く人をそれ だけ優遇しますという意味ではなくて、基本的に時間比例ですという考え方を表したも のです。時間比例ではない形でやらないようにという考え方のつもりですので、もし表 現がおかしければ。 ○小野座長  わかりました。 ○猪木委員  前々回出席して、その折と比較すると非常に整理されたというか、構造的にはっきり しているので大変読みやすかったという気がします。極めてマイナーなことを2つぐら いお聞きしたいのと、それから字句を入れていただけないかと思うので簡単に申し上げ ます。  1つは8頁から始まる、「現状のままで推移した場合の社会」というところです。10 頁の(3)のところまで、「おそれがある」「懸念される」が非常に乱発されているわけ です。極めてマイナーな点なのですが、「おそれ」と「懸念」あたりを因数分解して、 外に出してしまって、もうちょっと整理されたほうがいいのではないか。読んでいて非 常に憂鬱になるというのが第1点です。  第2点も同じく、極めて瑣末なことで申し訳ないのですが、13頁から14頁、基本的な 考え方を展開しているところがあります。ここも例えば13頁、「必要である」「重要で ある」ということが10ぐらい出てきます。「必要」と「重要」は同じだと考えて整理す ると、ものすごくたくさん出てきます。これも「育成する」とか、「こと」の前で切ら れたほうがいいのではないか。あまり「必要」「重要」が多いと、重要度が高まらない という効果も出てきてしまいます。その点、少し気になった点を2点申し上げました。  これもそれほどメジャーな問題ではなくて、マイナーな問題なのですが、最後の10点 を列挙しておられるところ、22頁の最低賃金制度の機能の強化について触れておられる ところです。おそらく、生産性が落ちて、失業が増えてしまうという、経済学でよくさ れる議論だと思います。生産性や雇用への影響等というよりも、はっきり負の影響が出 るかもしれないという、「負」を入れるとまずいですか。何を言っておられるのか、ち ょっとよくわからない。この議論のときに参加していませんでしたが、私の解釈は最低 賃金制が市場の均衡価格より高いところで設定されると、生産性によって配分が行われ てしまって、生産性の低い若年労働者等が雇用機会を失ってしまうので失業率が高くな ってしまうという議論だと思います。  ですから、生産性や雇用への影響というのはマイナスの影響ということをおっしゃっ たほうが、一般の理解はしやすいのではないか。それはまずいでしょうか。だから、減 額に関して検討しなければならないというように続くわけですよね。 ○小野座長  はっきり言ってしまいますか。 ○猪木委員  小野座長のご指摘の点と関係するのですが、この文章は、「ついても」「我が国にお いても」「措置についても検討すべきである」と「も」が多い。「も」を使うというこ とは、それ以外の幹になる部分があるというように想定してしまうのです。ちょっと主 張が弱くなるというか、「も」ではなくて、「について検討すべきである」ではどうな のですか。ちょっと強過ぎますか、ご検討ください。 ○勝田雇用政策課長  前段のほうは検討させていただきます。後段の「も」だけ、若干弁解させていただき ます。諸外国でやっているのと同じように、日本国においてもという、その「も」でご ざいます。 ○猪木委員  その「も」はいいのですが、全体的に政策のレコメンデーションをされるときに文章 全体に「も」が多くなっているような気がします。 ○勝田雇用政策課長  わかりました。 ○猪木委員  パンチ力というか、省庁も自信を持っておっしゃっているということを読み手に与え るためにも。 ○樋口委員  最後のところ、最賃の研究会でやってきたのでその立場から言うと、新古典派の考え 方はまさにそうだと思います。実は1990年代、そうではないという議論が、クルーガー たちによって定義されたわけです。  部分均衡的に考えれば、労働需要曲線があって、存在するもとにおいて最低賃金が均 衡賃金より上回った場合にはそういった可能性があるわけです。逆にクルーガーたちが 言ったのは、最低賃金を引き上げることによって企業が能力開発を一生懸命やるとか、 あるいは消費面についてもその拡大を通じて限界生産力がシフトする。そういうことを 考えると、一般均衡的に考えると実はどちらの効果、負の効果とは言い切れないのでは ないか。それがあるがゆえに、日本ではどうなっているのかについていろいろな議論が 展開されていると思います。 ○猪木委員  論理としては、措置を取っている国が少なくないがというところまでは、いまおっし ゃった新古典派的な議論を取った国の話ですね。 ○樋口委員  もしそうだとすると、最低賃金を引き下げろということになるわけですが、そう言っ ていいのかどうか。 ○小野座長  これは「若年や訓練中の者」なのですよね。 ○猪木委員  もし、両論あることを想定されるのであれば、それをわかりやすく書かれたほうがい いと思います。何を言っているのか、知っている人はわかるけれども、わからないとい う印象を受けたので申し上げました。 ○樋口委員  大きな問題になっているのは高齢者です。高齢者に別枠の最低賃金を作るかどうか。 そこは大議論があるところではないかと。 ○猪木委員  そこはご検討いただきたいと思います。 ○小野座長  ここでは新古典派ですよね、考えているのは。 ○勝田雇用政策課長  実は、この文章の部分は、樋口委員が座長をされている研究会で出された文章から基 本的に引いてきています。もう1度、中でも検討した上で。 ○猪木委員  失礼しました。わかりやすいということが大事だと思うので。 ○八代委員  いまの最賃のことなのですが、樋口委員のおっしゃった論理というのは閉鎖経済の話 で、グローバリゼーションの進んだ経済では別の議論がありうるのかなと、そういうこ とを感じました。これは単なる疑問ですが。  それと関連して、私もこの報告書は非常によくできていると思って、マイナーなコメ ントしかしなかったのですが、樋口委員から非常に明快なコメントをいただいて、やは りもう少ししなければいけなかったのかなと思っています。 ○樋口委員  いや、これで十分だろうと思います。 ○八代委員  樋口委員がおっしゃったように、高質な労働市場という概念を慶応だけではなくて、 そろそろ政府にも取り入れていただきたい。それから、やはり、プロフェッショナルな レイバー・マーケットをきちんと作っていくべきである。ワークライフバランスをやる べきだというのは全くそのとおりなのですが、そのときに何が妨げになっているのかが 報告書を読んでいて見えてこないのです。  当然、何か妨げがあるから、そういうことがいま実現していないわけです。特に、ワ ークライフバランスを個人の自主性に期待するというのは政府として無責任で、それが できないような仕組みがいま現に存在しているわけです。それは企業の独自の行動とい うことだけではなくて、社会保障も含めた制度があるわけです。つまり、ワークライフ バランスを妨げている最大の要因は世帯主中心の働き方をサポートしているいまの制度 ・慣行ですし、プロフェッショナルなレイバー・マーケットの形成を妨げているのは企 業内労働市場を守ろうという制度・慣行が現にあるわけです。それを中立化することが 大事なのですが、それに対して当然反対がある。逆に言うと、そういう企業内労働市 場、世帯主中心の働き方を是として、私がいつも言っているのはそれを無形文化財のよ うに守ろうとしている制度・慣行があるわけです。それを是非、中立化しなければいけ ないのではないか。  別に、壊せと言っているわけではありません。ただ、それがなかなか見えてこないの で、そこをどこまで書くかということだと思います。いまさらそれを言ってもなのです が、1つの問題提起として、何が妨げているかをどこかで意識する必要があるのではな いかと思います。 ○猪木委員  1点だけ言い忘れました。外国人労働者の件なのですが、基本的なスタンスは結構だ と思います。21頁の日系人の労働者の話、それからここでは留学生が留まるという話は 出てこないのですが、必要な対策を検討していくべきであるというとき、私はやはり来 られたあとのキャリアの準備、用意というか、そのあとどうなるかに関しての条件が非 常に不十分であるから、企業の中での人事政策を含めていろいろな問題が起こる。  ですから留学生、日系人労働者と一般外国人の方が日本で働く場合、そのあとどのよ うなキャリアパスがその方々に用意されているかをこれから検討していかなければなら ない。ちょっと将来的な姿勢があったほうがいいのではないか。入れる・入れない、職 種の話だけではなくて、政策的に前向きな話が出てくるのではないかと思います。 ○勝田雇用政策課長  その話は少し弁解させていただきます。留学生のほうは、基本的には就職支援の中で キャリアとか、そういった話が当然含まれてくると考えています。一方、日系人のほう ですが、おっしゃったとおりで、これまでの問題点は実は日系人本人たちも出稼ぎだと 思っていて、数年で帰るという前提に立っている。一方でそうではなくなっている現実 がある。そこが問題を起こしていると私どもは認識しています。ですから、この問題に 関しては、「定住化に伴う」というように書いたのはそこの視点を組み込んでいるつも りです。もう少し書けるかどうか、考えてみたいと思います。 ○猪木委員  いただいた草稿には「抜本的改革」と書いてあったので。 ○勝田雇用政策課長  抜本的と言うにはちょっと恥ずかしいものですから。 ○猪木委員  いま、テーブルの上で拝見したら「必要な」となっていました。良くはなっているけ れども、ちょっと具体性に欠けるなという感じがしました。 ○小野座長  ちょっと戻るのですが、先ほど樋口委員が外部性のお話をされました。それは「書き 込まれていると思う」と言ったのですか、「もう書き込まれているからいいです」と言 ったのですか。 ○樋口委員  いや、どうするのでしょう。 ○小野座長  事務局としては、その辺はどういうように。 ○勝田雇用政策課長  実は、樋口委員のご指摘は個別にいただきました。その中で、特に長時間労働の外部 性ということでいただいています。  実は22頁のいちばん最後の段落のところで、確かにおっしゃったように、個人が「人 生の各段階において自立的な選択を行えるようにする」というように書いてあります。 これは個人が選択するだけなのか、というご指摘もあったかと思います。私どもとして は、これを可能にするような労使の取組などをやっていくという観点から考えていま す。ただ、個人任せではなく、そこの外部性に対応していくという観点でこの段落を書 いたと思っています。 ○樋口委員  多分、従来の労働時間政策が転換している時期にいまあるわけです。そういう中で、 1,800時間を下ろしてどう考えるのかというのはかなり重要ではないかと思います。そ れに代わるものという形で国会に出ているらしいですが、理想としてはやはり個人が自 分の価値観に基づいて時間を選択できる。まさにそうだろうと思います。ならば、具体 的にどうするのか。個別労使に任せていいという話なのか、政策的な話というのはある のか。 ○八代委員  その点に関して、多様な労働者を一律にいまのように規制で縛るというやり方は問題 がある。ただ、一方では、労使の自治に任せると強制的に長時間労働をさせられる人た ちも現に存在するわけです。そちらを保護しなければいけない。その区別の1つの切り 口は、形式的ですが職種や給料である。非常に大雑把に言えば、高給をもらっている人 は搾取されることはないだろう。だから、勝手に何時間でも働けというような、非常に 形式的な基準もあるのではないかと思います。 ○樋口委員  それがその人たちだけで終われば、これは当事者間の契約でいいと思います。でも、 その人たちが長く働きたくない人たちに影響をもたらすのが外部性なのです。 ○八代委員  樋口委員がよく働くから、ほかの先生方も働かざるを得ず、樋口委員の働き方を規制 しろというのが本当にいいのかどうかということがあるわけです。 ○樋口委員  大学はまさにこうなっているので、それはいいと思います。チームでやるとか。 ○小野座長  自営業主は自分自身のために働くけれども。 ○八代委員  大学の先生というのはサラリーマンだけど、事実上自営業主のような、だからそれを 職種と言ったわけです。それから給料が高い人がいくら働こうが勝手ということにな る。  それに関連して是非ご指摘したいのは、22頁の注に小さく書いてあるのですが、い ま、基準局において労働契約に関する法律が審議されています。山川委員はそのメンバ ーで、私も1度だけヒアリングを受けました。この会議は経済学者抜きで法律を作って いまして、かなり抗議したのですが、「法律は法学者が作るものだ」とか基準局の人に 言われました。ただ、労働契約法というのは実は労働市場を縛る法律なのです。是非こ の委員会でも、これは終わりなのでしょうが、次の機会があれば1度基準局の方を呼ん でヒアリングするなどしてはいかがでしょうか。ある意味でものすごく規制強化につな がる危険性があるのです。  私はむしろ、個人的にはいままでにないルールを作るという意味で、うまくすれば労 働市場が非常にスムーズに働くためのメカニズムになる可能性もあると思います。いま 動いている制度であるときに、ここはここでマーケット中心で議論して、隣の局はむし ろ規制中心で議論しているという、同じ厚生労働省の中でかなり問題がある。もう少し 両者のコミュニケーションを、できれば山川委員にお願いしてそのメッセージを向こう に伝えていただくということも大事ではないかと思っています。 ○山川委員  そのようなことは何らかの形でお伝えしておきたいと思います。いま、ちょうどお話 が出ましたが、これは表現の問題ということになってしまうのですが、21頁の(8)、 冒頭の文章が少し誤解をまねく可能性があるのです。「個別化の進展や経営環境の急激 な変化に対応する迅速・柔軟な労働条件変更の必要性の増加等を踏まえ、・・・契約法 制」と言うと、何か主たる目的が労働条件の変更の必要性に対応することにあるように も読めるのですが、おそらく趣旨としては個別化の進展と労働条件変更の必要性の増加 等を踏まえてと読むべきであると思います。例えば、「個別化の進展や必要性の増加、 それに伴う個別紛争の増加が見られる中で」とするなど、「踏まえ」の意味が変更の必 要性に対応することが契約ルールの主たる目的だと取られる可能性がありますので、そ れとはちょっと違う趣旨だということを示した文章のほうがいいかと思います。  それをもし踏まえるとすれば、契約法制については、行動の規範や紛争解決のルール となるというか、どちらかというと、法学者の悪癖と言われるかもしれませんが行為規 範的なことよりも権利義務のルール設定、それは基準法上の取締りや刑罰などとは別の 発想で考えていくということになると思っています。  あとは単純な、文章のペーストの誤りではないかと思われる点が注41と42です。注41 に、有期契約の基準があって、そこに解雇ルールの法制化が記されていますが、これは 多分、労基法第18条の2のことではないか。注42に契約更新の話が出てきますので、こ こに有期契約に関する告示が入るべきところではないかと思います。  先ほど出た労働時間との関係では22頁、諏訪先生が座長をされているのでご意見があ ろうかと思いますが、4段落目に「また」とあって、「労働者が最も能力を発揮できる ような」とあります。ここはおそらく、ホワイトカラーについての議論を考えていく と、先ほどの八代委員や樋口委員のお話との関係では「自律的に働く」が入ったほうが いいのではないか。つまり、労働者が自律的に働けるような制度設計をして、それによ って労働時間規制のあり方も改めて別個のものを考えるという文脈でやっていると思い ます。単に能力発揮というだけではなくて、この研究会のトーンとの関係では「自律性 」を入れたほうがいいのではないかと思います。  また言葉の問題ですが、16頁の2段落目に「エンプロイアビリティ」と出ています。 13頁の3段落目に「就業可能性」という言葉が出ていて、これは違うのかどうか。訳せ ば「エンプロイアビリティ」になるかもしれないのですが、ひょっとして中身が違うこ となのかもしれません。  もう1点、若年とも関係があるので専門ではないのですが、9頁から10頁の「質の低 下」で若年の話が少し出ています。これは地場産業やサービス業などの文脈でとらえら れていて、前に書かれていたことからすると、若年の雇用不安や活用が進まないこと が、例えば教育コスト、訓練コスト、あるいは教育投資のさらなる減少をもたらして、 結局若年労働力の質がスパイラル的に低下していくという問題がないのか。ちょっと欠 席していましたのでそういう議論が出たかどうかわかりませんが、質の低下に関しては 若年のことをもうちょっと書き込んでもいいのではないかと思います。どのように書く べきかはわかりません、これは単なる感想です。 ○小野座長  エンプロイアビリティの点、別の頁に出てきているものと同じ意味かということです か。 ○中井雇用政策課長補佐  この言葉は整理させていただきます。 ○小野座長  いまの山川委員のご質問の中で、いますぐお答えできる部分がありますか。 ○勝田雇用政策課長  若年者の質の低下の話は確かにここのところではなく、実はいろいろなところにこの 報告書から出ています。若干問題かもしれませんが、質の低下と言っている中で、特定 の産業、職種のようなものへ働く人がいなくなってしまう形の質の低下のことをほかへ 書けなくてここに書き込んだものですから、そこで若年と地場産業、サービスが結びつ いたような書き方になっています。書き方をもう1回考えてみます。 ○小野座長  若年が出てきましたが、玄田委員、いかがですか。 ○玄田委員  あまり若年では言うことがないのですが。脚注が非常に良かったと思います。本文も 良かったと思います。脚注がすごく勉強になりました。よく、「厚生労働省はこのよう なことをもっとすべきだ」と調子に乗って言うのですが、脚注に書いてあることは「あ なたたちに言われなくてもやっているよ」ということを暗に言っているような感じで、 とても好感が持てました。ただ、先ほどの山川委員の話からいうと、結構嘘も書いてあ るから気をつけたほうがいいかなと思いました。  ニートのところも、脚注も正しいと思います。内閣府と厚生労働省で定義が違うとい うのはあまり言わないですが、共通するのは有配偶者を除いていることが1つのポイン トなので、そのような表現はしっかり書いたほうがいいかと思います。ただ、全般的に 言えば、先ほど樋口委員が「多様性」、山川委員が「自立」というキーワードをおっし ゃいましたけれども、私は「安心」がキーワードかなと思って読んでいました。先ほ ど、猪木委員が言われた「懸念される」「心配される」というのは、因数分解しよう が、そうした懸念が出てくるのはやはり不安だから言っているわけで、人口減少で社会 は不安を感じているから、それを代弁して安心できる社会をと言っているような感じが しました。  ならば、どうすれば安心なのか。いろいろ具体的な個別の項目があって、それはそれ でいいのですが、もう少しどうすれば安心する労働市場なり雇用ができるか。もう1段 階、砕いたキーワードがあるといいのではないか。例えば、若年問題などでやっている と、安心のキーワードは「個別的」「持続的」「包括的」という言葉が出てくるので す。1つひとつの視点に立って、なおかつある程度時間をかけて、しかも雇用政策だけ ではなくて、教育や福祉などを含めた包括的なものというキーワードが出てくる。それ もまだ抽象的だともちろん言われますが、ある程度安心のためにもう1段階ぐらい細か く砕いて、そこからさらに10本の足がというととても良いかと思いました。  その意味では、この「安心」というのはすごく画期的かなと思ったのは、福祉と雇用 の融合がいろいろなところで見えるような気がしました。先ほどのプロフェッショナル な労働市場の性質はもちろん言うまでもなく大切なのですが、プロになれそうな、高質 な、質の高い人材の話だけではなくて、プロになることに対して非常に距離の高い人た ちに対しても、とにかく労働者は参加してもらわないといけないというメッセージを考 えたときに、これからは雇用分野と福祉分野をいろいろな意味で融合させるというの は、4番目の「福祉から就労へ」もそうですが、もっと訴えかけてもいいのではないか と思いました。  ここから言いたいことを2つ言います。本当は23頁以降が知りたくて、この提言を実 現するためにどういうように政策を変えるのかという具体的な戦略が知りたいのです。 私は2つあると思います。ここに書いてあることは、先ほどの脚注もそうですが、ある 程度やり始めていることだし、実は動いていることだと思うのです。ただ、最大の課題 は知られていないということで、かなり認知度が低い。つまり、人口減少で雇用を増や すためには、ある程度参加してもらわないといけないわけです。まず、こういう政策に 乗ってもらうというために厚生労働省がどういう戦略を持っているかを知りたいので す。  例えば、ハローワークに行ったりすると、かなり整然と先ほどの個別的に対応するし くみは、まだいろいろ問題はありますが、以前と比べると、随分出来てきているわけで す。ただ、先ほどのフリーターの常用プランというのは全然知られていないというと怒 られますが、ほとんど知られていないというか、かなり知られていないです。だから、 アナウンスメントに対して、お金がないですね。どうやって、アナウンスメントの実際 を高めていって、認知をするか、若年対策で最大の課題は、やはりアウトリーチです。  カウンセリングよりも、どうその場に来てもらうかということの戦略をもっとかけて いかないと、逆にいえば、厚生労働省がいま広報とかいろいろありますが、もっと組織 的に、こういう戦略を本当に隅々まで知ってもらうためには、どういう政策をするのか ということを知りたい。そのためにはお金の問題もある。例えば民間のノウハウを生か す、実務家のノウハウをいかすなどを考えていかないと、これだけ10本の柱を立てて も、伝わっていかないとほとんど意味がないのではないかと思います。だから、そうい う面の、こういう10本の柱をするためにどう政策戦略を変えていくのかという議論が本 当は24頁目ぐらいにあってもいいかなと思います。  もう1個は戦略的には、ここに地域、自主性を生かすということが出てくるのです が、その地域の知恵をどう全体に生かすかという戦略もあっていいのではないかと思い ました。例えば、今回の自立塾だって、ある意味では沖縄でずっとやっていた産業開発 青年隊のようなノウハウを、主体評価して全体でやろうという試行実験である。これか ら個別的に対応していくためには、国が仕組んだプログラムではなくていろいろな自治 体がやっていくことで、いいことは積極的にそれを全体に広めていきましょうというよ うなことが、たぶんあると思います。  そういう政策的なこともあれば、県別に見ていくと、ニートの問題や就業率の問題と いうのは、決して一様ではない。  例えば、滋賀県は雇用の減少率が非常に低いわけです。滋賀県ではそのために何をし ているかなどというソフト面の対応は、おそらくもっと全国的に生かせるところが非常 にある。そういう地域で、いろいろな実践を育ててくださいという一方で、その実践は ちゃんと国も見ていて、それに関して全体に広げていくようなプランも考えますよとい うことは、やはり出していったほうが逆に地域にがんばってもらうとか、積極的にやっ てもらうということの戦略にもなると思います。  10本の柱はあるのだけれど、柱を束ねてどうそれを強い家にするかということの文章 が何か2、3あると、本当はとてもいいのではないかと読んでいて思いました。だか ら、個別の文章で、ここを変えたほうがいいとかは何もないですが、そういうことを考 えます。文章として書くのか、それは大きな会議でやるのか、それは知りませんが、そ ういうことを考えないと、うまくいかないのではないかと思います。以上です。 ○中井雇用政策課長補佐  この報告書のスタンスというか、この場でご議論いただいたことを整理して、委員の 方々がこういうことを今後、雇用労働政策で重要であるということをご提言いただい て、厚生労働省としてそれを受け止めてどう考えていくか、やるべきものをやってい く、これからまだ考えなければならないものもあると思っています。そういう意味で、 政策の概念、方向性、次に方法論という話でいえば、それを受け止めたときに我々がど う考えるかという話なのかなと思っております。広報については、個人的にも重要だと は思っていて、政策について実効のあるべきものにするために、そのことを重視するべ きだというご提案だというように、理解させていただきました。 ○小野座長  実現するための戦略のアイディアだと。先ほど樋口委員からも、ワークライフバラン スを具体的に実現するのに、個人に任せておいてできるのだろうかという、同じような 意識からの問題が出ているので、これからお書きになるのは難しいかもしれませんが、 対応は可能ですか。 ○勝田雇用政策課長  先ほど樋口委員がおっしゃった、個人に任せておいていいのかということと、それか ら政策評価をやって、政策に反映する話、いまの玄田委員の例えば地域のベスト・プラ クティスみたいな話ですとか、広報のような、これは共通して政策全般にわたって出て くるような話だと思います。ですから、例えば最初に研究会のご意見として入れさせて いただくなり何なり、ちょっと私どもで少し考えさせてください。ご相談させていただ きます。 ○小野座長  そうですね。お願いいたします。 ○諏訪委員  3点ありまして、1点は「就業率」という考え方を今度前に出すということになりま すと、就業という言葉の使い方をもう少し再整理したほうがいいと思います。例えば8 頁ですが、上から2行目に「就業形態は」と出てきますが「パート、派遣、有期雇用等 で働く者が増加しており」と。これは就業形態ではなくて、雇用形態なんですね。同じ ことを言えば、注の25の下のところにある「21世紀職業財団の多様な就業形態」、これ までも就業形態というとき、全部これは雇用形態のことなのです。  ですから、雇用形態の中における多様化をいままで扱ってきたけれども、これから就 業率を考えると、まさに就業形態なのですね。アウトソーシングだとかインディペンデ ント・コントラクターといったような、こうした問題も政策視野の中に入れていきます よということなので、私はいままでの言葉の使い方を再整理するということをどこかに 書いたほうがいいと思います。就業構造基本調査とかいうのも、あれは実はほとんど雇 用しか扱ってこなかったわけでして、その点についてはもう一度再整理をしたほうがい いのではないかということを感じております。これはお願いしたいと思います。場合に よってはちょっと注を付けて、当面こういう言葉を使うとか、これからはこういうふう に変えるとか、何かお願いできればと思います。  玄田委員が脚注がいいと言っていたのですが、私もこうやって、脚注を付けるのは、 とてもいいことだと思っております。ワークライフバランスのことでいろいろご注文い ただいておりますが、検討会議に関わっていたものですから、もしできればあの報告書 もあるということを、ちょっと注に入れていただけたらありがたいなという感じがして おります。  3点目なのですが、全体として、いま広報体制のことを玄田委員もおっしゃったし、 ほかの方々もおそらくお考えなのだろうと思いますが、やはりこれからの時代の市民教 育のような部分が成熟社会では非常に重要になってきます。公民という教科は、本来 は、あれは市民教育のはずなのですが、市民としてどう知恵をつけるかというよりは、 知識をつけるというようなことばかりやっている。例えばスウェーデンの公民の教科書 が翻訳されて、大ベストセラーになっておりまして、学生たちとゼミで読んでみます と、非常にあれは知恵を重視した教科書になっております。あの中で、働くということ にも、キャリアデザインの問題から始まりまして、随分いろいろなことが書いてあるの です。  もちろん市民としての将来、日本でいえば、審判員になっていくようなことに関わる 基礎教育みたいな部分ですとか、いろいろなことも入っています。いずれにしまして も、私は労働市場を円滑に運営していくためには、その担い手に対する教育が非常に重 要だと思いますが、労働市場の担い手に対する教育訓練というものが、この中には少し 欠けているな、言及が欠けているなという感じがします。その中には、もちろんハロー ワークの職員もあるでしょうし、民間の人材サービスの人たちのこともあるでしょう し、あるいは学校教育ですとか、いろいろあると思います。  更に言うならば、やはり働いていく人たちに対する、単なる情報提供ではない、もう 少し包括的な、労働市場に自分が向かっていくための基本教育みたいなものをどうして いくのかという点についても、せっかくこれだけ脚注を重視していますから、本文に書 けとは言いませんので、どこかに、例えば「能力開発」というときにも、それは非常に 重要な部分ではないかという感じがいたします。 ○猪木委員  ちょっと質問です。諏訪委員のおっしゃった第1点ですが、雇用と就業ですが、我々 は労働力調査的に、就業者と求業者がいて、就業者は雇用されているから、自営か無給 の家族従業者かというような、それは労働法的にはそういう使い方は必ずしもなさらな いということですか。 ○諏訪委員  いや、基本的にはなります。ただ、今度就業率と考えるときには、やはり雇用の周辺 にいるような、セルフ・エンプロイドみたいな部分がある点を我々は視野に入れていか なければいけないし、現に調べてみると、かなり行き来があるのですね。 ○猪木委員  だから、「就業」と広い言葉を使ったほうがいいと。 ○諏訪委員  はい、しかし、今までの法政策は雇用になれば、非常に万全な手厚い保護が受けられ るけど、就業になった瞬間に裸で放り出すというような感じのところがあって、自己責 任になっていますが、実はそんな簡単ではないんだということに、これから我々は徐々 に踏み込んでいくのだと思います。  したがいまして、就業という言葉の再整理をしておかないと、いままで、例えば、就 業形態の多様化、多様化と言っているけど、少なくとも厚生労働省の関係では雇用形態 に過ぎなかったのですね。 ○猪木委員  わかりました。ありがとうございました。 ○玄田委員  私もそう思っていて、失業率から就業率へ、ある意味で政策目標をシフトされて、非 常に大きな転換なので、相当な概念整理もとても大事だと思います。ただ、一方で、考 えられる批判もあって、つまり働くというのは数さえ増やせばいいのかというふうなこ とを言われかねない。そうすると、同時に考えるべきは就業の質の問題をこれからどう 議論するか、ということの問題提起も必要です。そういう概念があるかどうか知らない けど、クオリティ・オブ・ワーク、のような言葉ってあるのですか。QOLではなく て、QOW。それを賃金と同時に、先ほどのワークライフバランスもあるし、自由度と かということも含めて、クオリテイ・オブ・ワークを高めるというのはどういうことか という指標作りとか、目標作りということを同時にしないと、量的なことだけを考えて いるのかという批判もされると思います。 ○猪木委員  たぶん、それが高質の労働市場の基本概念ですね。 ○八代委員  細かい点で、いま諏訪委員が言われなかったのですが、私が労働契約研究会の報告書 を読んで、非常に面白いのは、雇用者と就業者の最大の違いは何かというと、従属性と いうふうに書いてあるのです。これは我々は想像もつかない発想であって、想像もつか ないというのは大げさですが、そこに注目するというのが、やや前時代的なのかなとい うような気もするのです。ある意味で、派遣がいちばん典型なのですが、雇用者の規制 を縛ると、みんな請負に逃げてくるのですね。それで、より悪い状態になるのです。そ ういう意味で、製造業の派遣が認められたのは、そういうような要素なのですが、ある 意味で規制を考えるときにも、これはつながった労働市場のプールなのだと。1カ所だ け締めると、こちらに逃げてしまうということも考えた、広い意味の労働市場の制度作 りが必要なのだというところを訴えるのは、この研究会しかないのではないかと思いま す。そこを是非基準局との連絡をよくお願いしたいというのが1つです。  玄田委員が言われた点は、私も非常に目が覚めるような思いですね。戦略というのを どう考えるかということなのですが、1つは民間のノウハウを生かすということはよく 言われているのですが、いまはどうしても民間を政府が下請的に使っているのですね。 つまりハローワークの業務の一部を切り出して、民間を使ってみる。ただそれだと民間 のノウハウをほとんど生かせないわけで、任せるなら、かなり包括的に任せないと、駄 目ではないかと思います。  例えば、今回、市場化テストのモデル事業でキャリア交流プラザを民間に委託すると いうことが行われて、あまりこれはどこかに書いていない、書いてあれば、これも脚注 ぐらいで是非お願いしたいと思います。その使い方でもいちばん大きな問題点は、例え ば、肝腎の民間に任せたキャリア交流プラザのお客はどこから来るかというと、ハロー ワークから紹介されて来るのです。  つまり玄田委員が言われた点と関連するのですが、せっかく民間が任されたキャリア 交流プラザの営業努力ができない仕組みになっている。勝手にお客を連れて来てはいけ ないのです。それはそれで1つ別な理由でそうなっているのですが、だから、せっかく いい制度を作っても、それを知らしめようとしたときに、知らしめるインセンティブは やはり民間から来るわけで、それはお客を増やさないと民間では商売できないわけです が、官だと必ずしもそうではないという、そこの基本的なインセンティブの違いが残っ ているわけです。その意味で、せっかく作った制度を活用するとなると、やはり一部だ けではなくて、かなり包括的に民間を使わない限りは難しいのではないかと思います。 それが第1点です。  それから、いま若年者の就業支援とか、失業対策について、ハローワークが非常に重 要な役割を果たしているのはそのとおりなのですが、もっとハローワーク間の競争があ ってもいいのではないかと思います。つまり地域ごとのハローワークが独自の政策や試 みをして、その競争の中からいいものが広がっていくというような発想ですね。  実はこれが地域の知恵を生かすという、玄田委員が言われたことなのですが、これを 制度的に体現化したものが特区なわけです。ところが、労働行政は、なぜか特区は絶対 駄目だと。労働行政は全国画一でなければいけないんだということで、これまでも特区 はあまり認めていただいていないのですが、これから、やはり何がいちばんいい労働政 策かというのがわからない時代には、地域とか、ハローワーク単位でもできるだけアイ ディアを生かす仕組みが大事なのです。いいものをできるだけ生かしていくという仕組 みの場合はもう少し多様性を、労働者だけではなくて、行政当局においても政策の多様 性は考えていく必要があるのではないかと思います。これが第2点です。  第3点は、先ほどどなたかおっしゃったのですが、福祉と雇用の連携とか、教育と雇 用の連携という、行政を跨いだ政策の連携が必要なのです。これは実は役所の最も苦手 とするところで、違う局の間の連携もなかなか難しい。だから、それをするためにはど うしたらいいかというと、これも馬鹿の一つ覚えで恐縮なのですが、結局民間に包括的 に委託すると。民間が多様な政策を、もちろんお金をもらってですが、統合してやるこ とができる。そういう意味でも、民間活用というのはどこかの会議がうるさいことを言 うからやるのではなくて、まさに労働政策の質を上げるためにも、できるだけ民間の活 用はそれ自体大事なのではないかと思います。  だから、行政というのは労働市場の政策を司る責任があるのですが、自らやるという ことではなくて、うまく労働市場のスキームを作るような形で知恵をしぼるということ ですね。その考え方はこれと決して矛盾しないと思いますが、そういうような点をフッ トノートに入れていただきたいということです。 ○小野座長  いまのに関連してですか。 ○樋口委員  はい、冒頭政策評価と政策への反映という形で大人らしく言ったのですが、内容的に はたぶんそういった八代委員や玄田委員が言っているようなことになってくるのだろう と思います。ただ、時間的にこの雇用政策研究会のレポートの中に具体的なものが織り 込めるかどうかというようなことで、そういった提言をさせていただいたのです。  もう1つはフットノートの話がだいぶ出ているのですが、雇用戦略についても、ここ にいらっしゃるお二人の先生が中心になって雇用戦略研究会をJILでやっているわけ ですから、それを近刊という形で、フットノートに入れてもらえたら、具体的なものが 出てくるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○小野座長  ここは人口減少の切り口で雇用政策を考える。我々はどういう視点からというのは模 索中でありますが、それはもちろんそれによって。少し時期をずらして、報告書を出す 予定であります。 ○勝田雇用政策課長  もしよろしければ、少しだけお答えします。諏訪委員のおっしゃった雇用形態と就業 形態という言葉の使い方ですが、たしかにおっしゃるとおり、雇用の話しか出ていない のに、就業形態という言葉になっているのはおかしいのではないかというご指摘はごも っともでございます。ただ、このときにパート・派遣・有期雇用等とやっていますけれ ども、等の中に本当はほかの就業に当たる部分を込めたつもりだったのです。そこの部 分があるものですから、就業形態になってしまったとか、いろいろありますので、そこ はちょっと個別に就業と雇用の使い方はもう一度精査した上で整理してみたいと思いま す。  最後のJILの雇用戦略研の話を脚注に入れるかどうかは、本文との関係でどこか適 当なところがあるかどうか、もう一度見させていただきます。 ○小野座長  フットノートが随分褒められていますが、このフットノートは太田政策統括官のとき はやりましたか。 ○太田政策統括官  あまりなかったです。 ○青木職業安定局長  3年前ですか、やはり研究会をまとめていただいたとき、ちょっとだけ入れたので す。今回は、かなり議論としても精密なものをしていただいたので、本文のほうが実は いままでよりも量が少ないのです。ですから、むしろそういった難しいところはフット ノートの形のほうが読んでいただく方に優しいだろうと思っています。 ○小野座長  3頁のところに、ニートについては定義で家事を含めるかどうかというような差が出 ていますが、フリーターのところも差があるのだから、代表的な例をポンと出しておい ていただけると、読むほうは大変便利だと思います。 ○玄田委員  八代委員の言われたことと関連して、もうちょっと大げさなことを言うと、民間を活 用するとか、委託するというのは、とても大きいのですが、これからは雇用政策とか、 労働政策を担う民間の人材の組織を育成するということを本当に戦略的に考えていかな いと、すべて行政でやるという時代ではないのではないかと思います。先ほどの自立塾 だって、何で10億円も予算をかけて1,200人のためにやるのかという批判は当然あり得 ると思います。  ただ、民間で自立支援する組織、NPOを含めて、育成していくということの大きな 社会実験としてきわめて意味があるわけです。この間も人間力会議でも言いましたが、 100人のニートを国が何とかするのは大変ですが、100人のニートを何とかする10人の若 者を育てるほうが絶対に効果が高いです。例えば、例の5年間・5万人キャリアコンサ ルティング計画も1つのきっかけとして、これから労働市場を整備するとか、人材育成 する人材をどう育てていくのかということだと思います。民間自体も育てていく、そん なことを大きく謳ってもいいのではないかと思います。以上です。 ○大石委員  先週も申し上げたのですが、いまのことと関連しまして、福祉から就労へというよう なところで玄田委員がおっしゃったのは、全くそのとおりだと思います。結局自立支援 するための人たちを作るのも、やはりそれはお金がかかると。ある程度お金がかかると いうことは覚悟しておく必要があるかなというふうに思います。  表現として、ちょっと気になりましたのは、18頁で、生活保護を受けている人が「働 く能力がありながらも働く意欲を失っている人がいる」と。そういう人がいるかもしれ ないけど、やや曖昧というか、「そうした中には適切な支援があれば、就労も可能な人 がいると考えられる」とか、そういったことでいいのではないかと思います。働く意欲 があるのかというところは、雇用機会との兼ね合いで決まるところですし、なかなか判 定が難しいように思います。  それから、保護費のかなりの部分は医療扶助で、高齢者もいるわけですし、ここのパ ラグラフだけ読んでいると、保護をもらっている人が働き始めれば、保護費が半分ぐら いに減るのではないかみたいなイメージを、何も知らない人はそういうふうなイメージ を持ってしまうかもしれない。実態はそうではなくて、ただ率としては増加しているの は確かに事実ですが、あまり制度を知らない人が誤解を持たないようにしたほうがいい と思います。また生活扶助をもらいながら、働いている人もいるわけですから、そこの ところの誤解がないようにしたほうがよろしいかと思いました。   最初の概要のNo.1の色刷ですが、ピンク色の丸で「適切な経済政策の運営」という のがポンと入ったのは、きっと先週小野座長や大橋委員が「いくら雇用政策あれこれと 言っても、マクロの施策がしっかりしてくれないと」ということをおっしゃったことの 反映だと思うのですが、この適切な経済政策の運営についての中身というのはあまり報 告書の中に具体的な記述としてはなかったと思います。注文だけではないのですが、多 少どこかで触れてもよろしいかなと思います。以上です。 ○小野座長  どうもありがとうございました。何か、いまのあれで。 ○中井雇用政策課長補佐  直すべき点はそのとおりだと思いますので、そこはまた考えて、ご相談させていただ ければと思います。「適切な経済政策」については、考えた結果は変わらないかもしれ ませんが。 ○勝田雇用政策課長  いま大石委員がおっしゃった中で、働きながら生活保護という話が出ていましたが、 この部分は次の「これらの人々に対して」というところで、福祉を受ける立場から就労 状態に切れ目なく支援するというのは、その中間で福祉も就労もという状態があるとい うことを意識した書き方をしております。そこを意図しているというふうにお読みいた だければとは思っております。 ○小野座長  そこはいいですか、そういう含みでやっているということで。ほかに何かご意見はご ざいますか。 ○猪木委員  先ほど玄田委員が安心という問題を取り入れられたのと、いま大石委員がご指摘の (4)のところですが、樋口委員が多様性ということがキーワードだとおっしゃったけ れど、それもそうではあるが、リベラル・デモクラシーは昔から多様性ということを言 っているので、むしろ多くの人は安心して、自立的に働ける社会を目指してというよう な意味の副題を、私の好みからいうと、「安心」と「自立」をキーワードにと。 ○樋口委員  私が多様性と言ったのは、たぶん安心などの意味が個人によってだいぶ違ってきてい るのだろうと思うのですね。かつての安心という意味と、多様化していろいろな価値観 を持っている人が労働市場に参加する、あるいはしてもらわないと困るという社会にお けるものというのは違ってくるのだろうと思います。  だから、副題を付けるのであったら、むしろ「多様な価値観を持った個人が安心して 働ける」というような。 ○猪木委員  個人によって、もちろん違うわけですから、自立や安心すると、各々の人が多様なも のを発揮できるわけですね。だから、そういう意味で、多様というと、先に持ってきて しまうよりも、自立して安心して働ける社会だと、自ずと多様になりますね。 ○八代委員  それはちょっと異議がある。みんな公務員になったら、雇用が保証されて安心したと いう社会になるのかどうか。 ○猪木委員  なりません。 ○樋口委員  安心という意味が違ってきているのだと思います。社会保障を充実すれば安心すると いうことでもない。逆に社会保障が破綻してしまうのではないかという。 ○猪木委員  安心というのは、少子化で先が見えないと。いろいろな年金の問題にしても何にして も、高齢化という意味で、安心というのはあまり先が見えないことによる不安を取り除 くという意味なんですけど。安心というのは、何もみんなのんきに安心にしてやるとい うのではないと思いますが。 ○諏訪委員  私は猪木委員のような考え方に同感するところがあります。それは何かというと、自 立と言った瞬間、不安ですね。だから、昔、『飛ぶのが恐い』というベストセラーの本 がありましたが、女性がだんだん均等の中でという、同じような状況がいまあると思い ます。だから、自立することが不安を持つかもしれないが、最終的にはやはり本当の意 味での安心を確保していく道なんだよという、このようなキーワードが1つだろうと思 います。  もっとも、安心という言葉は社会心理学の山岸俊男先生だと、信頼という言葉にしろ というふうに批判をされていますが。それはともかくとして、自立が不安ではなく安心 につながる社会、そういう雇用政策、労働政策が必要なのだというのは、私はその点は 同感です。 ○樋口委員  もし、そうするのであれば、安心の意味が時代によって変わってきているということ は是非入れてほしいと思います。そこは重要なポイントになると思います。 ○八代委員  全くそのとおりだと思います。とかく安心というと、私は雇用保障と結びつけられや すいと思うんです。 ○玄田委員  安心もたしかにいろいろ時代によって意味が変わりますが、多様性も気を付けない と。多様性というと、バラバラでいいのかというような解釈をする人が一方にいて、前 にダイバーシティ・ワークルールの研究会をしたときに、やはりダイバーシティがうま くいくためのポイントがあって、それはプリンシプルだとみんなが言うのですね。つま り、いろいろな生き方、いろいろな働き方があってもいいのだけれど、共通するプリン シプルだから、理念や価値観みたいなものをみんなが共有しないと、絶対にうまくいか ないというようなのがあって、もし多様性を強く押し出すのであれば、やはりルールを 作るだけでなくて、みんながルールを守ることがメリットがある社会とか、ルールをど う作ってみんなに信頼してもらうかというようなことを、プリンシプルを作るのが大事 だというようなことを出さないと、なかなか多様性という言葉も実は難しいなという面 もある。  ただ、政策的にプリンシプルをどこまで出せるかという問題もあるので、そういう面 では多様性も賛成で、タイトルが長くなっても、別にいいと思いますが。 ○樋口委員  ただ、ここで指摘されている、しかも新しい動きというのは、かなりそこのところな のです。多様性のところと関連した議論が多く出てきているのです。それで、逆にもっ ていったわけで。 ○小野座長  この報告書、短い言葉で表そうとすれば、いまのように議論がたくさん出てくるの で、全部取り払ったということで。それは事務局でもしいいのがあったら、お考えいた だきましょう。ほかにありますか。 ○山川委員  取り払ったなあと思って見ていたのですが、課題というと問題があるということだけ なので、やはり、3つをどうにか盛り込んで方向性が一目で見えるようなものがあった ほうがいいと思います。 ○小野座長  私は最後に小さい問題を1つだけ。これは質問です。11頁、上から5行目、「労働生 産性の上昇率が現状(1999〜2004年の年率1.7%)よりも低下すると想定する」という 考え方ですね。これは何%に想定したのですか。 ○中井雇用政策課長補佐  1.5%です。 ○小野座長  わかりました。ほかにご意見ありますか。ないようでしたら、事務局から何かありま すか。 ○中井雇用政策課長補佐  いろいろ、これまでご議論いただいて、ここまで報告書案を作成することができまし た。今日も言葉の指摘であるとか、脚注の話とか、いろいろありましたが、ただ全体的 な方向性ということは、これで委員の先生方にご了解いただいたのかなとは思っており ます。あとは細かい修正などして、整理させていただければと思っておりますので、よ ろしくお願いいたします。 ○小野座長  一応、以上の議論でよろしいですか。もし、特段のご意見がなければ意見交換はこの 程度といたします。本日、いただいたご意見については整理の上、必要に応じ、本文に 反映させるようにしていただきたいと思います。報告書案の細部につきましては、私に ご一任いただければ大変ありがたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○猪木委員  八代委員と話していたのですが、副題はやはり付けていただいたほうがいいと思いま す。 ○小野座長  そういうご意見ですか。では事務局において検討してください。 ○勝田雇用政策課長  座長とご相談の上、付けることを前提に検討をさせていただきます。 ○小野座長  私に一任していただけますでしょうか。                  (異議なし) ○小野座長  ありがとうございます。委員の先生方には、昨秋から、何回にもわたってご出席を賜 わり、大変ありがとうございました。この報告書は7月中を公表の目処として作業をし て、公表の際には、委員の先生方に事務局から連絡を行うことにするということであり ます。最後に戸苅厚生労働事務次官から、ご挨拶があります。 ○戸苅厚生労働事務次官  どうも大変ありがとうございました。いま小野座長からお話がございましたが、昨年 の10月29日に第1回を開かせていただき、ほぼ9カ月、今日が12回目ということでござ います。いま、多様性、多様化というお話がありましたが、そういった中で、諸先生方 はいろいろなご意見がありますので、報告書がよくまとめられたなというのが正直な感 想でございまして、小野座長をはじめ、委員の方々には大変ありがとうございました。  ご議論にもありましたが、2007年、人口が減少し始めるということで、我々行政の担 当者はもとよりですが、国民の方々もこれから人口減少社会はどんな社会になるのだろ うという不安、あるいは戸惑いを持たれている中、労働市場、あるいは雇用について、 一定の見通しをということで検討をお願いしたわけであります。就業の場に1人でも多 くの方々に参加いただくということで、この10年は持ちこたえられるというか、社会の 活力も維持できるだろうということで、まとめていただいたと思います。  個々の政策についても、先生方からいろいろなご意見があるということで、私もだい ぶ事務局を督励しまして、とにかく怖気付かずに思い切って書けということを後ろか ら、随分バックアップしたつもりであります。そういった中で、やはり時間に比例した 処遇のあり方ですとか、長時間労働対策ですとか、あるいはワークライフバランスです とか、短時間雇用者への社会保険の適用拡大の問題ですとか、さらには最賃制度、なか なかこれまで最賃制度について、基準局の外で触れるというのもあまりなかったことだ と思いますが、いろいろな論点をまとめていただきまして、大変ありがとうございまし た。  課題が非常に変わってきている、また多面化してきているという中で、やはりそれに 合った政策手法に我々も切り替えていかないといけないという思いは非常に強く持って いるところであります。先ほど来、玄田委員からお話がありましたが、意図的に我々は ニート問題、あるいはフリーター問題をこの1年大きく取り上げようということで取り 組んできましたが、やはり最近、ヤングジョブスポット等の利用度が非常に高まってい るということであります。これはおそらくニートの人たち、あるいはその親の人たち、 家族の人たちが自分の問題だというふうに思っていたところ、実は同じような問題が社 会の問題になっているのだということで、ある種、勇気づけられたというのも変です が、動機は非常に高まったということもあるのではないかという気もいたします。  そういった意味で、今日のお話もありましたが、我々もやはり従来の政策手法から更 に思い切って踏み出して、様々な政策手法を駆使して、まとめていただきます報告書を 1つでも多く実現し、効果の上がるように取り組んでまいりたいと考えておりますの で、引き続きよろしくご指導をお願いしたいと思います。   いろいろ難問をいただいておりますが、何とか7月中には取りまとめたいと思ってお りますので、引き続きよろしくお願いいたします。どうも大変ありがとうございまし た。 ○小野座長  以上で研究会を終了いたします。どうもご苦労さまでした。 照会先 厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係  〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2  電話 03−5253−1111(内線:5732)     03−3502−6770(夜間)