05/07/11 社会保障審議会介護給付費分科会第25回議事録          社会保障審議会 第25回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所 : 平成17年7月11日(月) 午後4時から6時           全社協・灘尾ホール 2 出席委員:浅野(代理:加藤参考人)、井形、池田、石井、井部、漆原、大森、        沖藤、喜多、木下、木村、見坊、田中(滋)、田中(雅)、対馬、        永島、野中、花井、村川、矢田(代理:山田参考人)、矢野、横山        (代理:福間参考人)の各委員 3 議題  (1)介護保険制度改革に伴う介護報酬の見直しについて  (2)その他 ○渡辺企画官より資料に沿って説明。 (野中委員)  前回も質問したが、現場で契約も含めて居住費とか食費という部分が本当に利用者や 家族に理解できるかが疑問である。この制度改革は制度持続可能性というが、実際には 利用者が疑問を持ってはいけないし、この制度改革は現場がただ単に契約書とかで変え て済むのではなくて、国が国民に向かって説明しなければ、現実には現場の職員と契約 者の大きな争いになってしまうと思う。本当にやむなく施設を利用しなければならない 人たちの尊厳を守ることになるのか、強く憤りを感じる。  契約が結べないとか理解できないことになったら、追い出すとか退所ということまで 契約書の中に入れるのか。施設だけでなく国民にどのように周知して理解をしていくの か、厚生労働省がどういう説明をするのか、そのことに対して現在考えていることを聞 きたい。 (三浦老人保健課長)  今回の制度改正に伴う利用者に対する負担の問題については資料の6ページ「実施に 当たっての周知等」という観点から、厚生労働省としても保険者とともに現場における 利用者への周知あるいは円滑な実施のための支援を行っていくとしている。  この制度改正によって食費・居住費が給付外になることについて丁寧な説明を行う必 要があるので、わかりやすい資料を作成し、説明が円滑に進むように努めたい。 (野中委員)  現在でも居住費とか食費を取っているグループホームでもやはり払えないということ で退所が相次いでいるという新聞報告もあるが、お金が払えないから退所ということが 簡単に言えるのか。また退所後についてどう保障していくのか。 (三浦老人保健課長)  まず制度論として、介護保険施設の指定基準に提供拒否の禁止として、正当な理由な くサービスの提供を拒んではならないという規定があり、例えば要介護度とか所得の多 寡を理由にサービスの提供を拒否することを基本的には禁止するという規定の趣旨であ るが、その上で、運営基準、運営規定の概要など、重要事項についてあらかじめ文書を 公布し、説明を行い、利用者の同意を得るということが原則になっている。  委員指摘の支払いが困難な場合の見極めがまず必要であると思うが、正当な理由なく 滞納している場合は、退所もやむを得ないと考えられる。その場合も利用者あるいは家 族と十分な話し合いを持つなど、慎重な対応が必要であり、それが提供拒否の禁止の趣 旨を生かしたものと考えている。 (野中委員)  医療が必要で退所できないという方々がいるが、在宅できちんと対応できる体制にな っているかという点が重要だと思う。やむなく医療依存度が高い方に対する在宅でのサ ービスあるいは金額が確保できるのか、利用者に対して非常に不適切な環境で生活する ことになると思う。  居住費と食費の話がなぜ10月なのか、そこが腑に落ちない、むしろ環境整備の方が元 だと思うが。 (三浦老人保健課長)  退所後も円滑なサービスの利用継続が図られるように努めていくことが大原則だと思 っている。そういう意味では、施設には継続性の努力をお願いしたいし、合わせて国と しても在宅サービスでの支援体制の充実を図っていく必要があると考えている。 (矢野委員)  1ページの「制度改正の趣旨」に書かれている制度の持続可能性とか給付と負担の公 平性という観点は最も重要なポイントであり、この考え方に全面的に賛成する。しか し、各論を読むとその趣旨が必ずしも徹底していない。  まず、7ページの「第4段階以上の世帯に関する特例」ということで、資産の調査を どのように行うのかということは方法論として片方にあるが、申告制によって区分けを していく場合、申告漏れあるいは誤りがあった場合には、遡及して補足給付相当分を返 納する仕組みなどを設ける必要があるのではないか。  次に、12ページのガイドラインについてであるが、施設の利用者に対し、利用者負担 について十分な説明を行うためのガイドラインというものは必要だと思っている。同時 に、利用者や家族がそのガイドラインを理解して、かつ介護事業者を適切に選択できる ようにするためには、できるだけ早くインターネット上での情報公開によって比較可能 になるような環境整備が必要なのではないか。 (藤木介護保険課長)  7ページの夫婦2人暮らしの方の例で4段階で特養等に入った場合の対応について は、フローの収入以外に資産要件をきちんと見るということとしており、金融資産や、 住んでいる以外に持ち家があるのかという不動産関係の要件も確認した上で適用すると いうことにしており、保険者へも指導をしていきたい。 (池田委員)  12ページの利用者負担のガイドラインで、こうしたガイドラインをつくるのは確かに 必要だし、インターネット上で比較ができるような体制がつくられるということも極め て重要だと思う。  ただ、「居住費・食費の利用者負担のガイドラインに盛り込む事項について」が参考 として出ているが、実質の負担はそれだけではなく、例えばテレビが1日300円から始ま って、非常に細かい積上げをして6万あるいは10万という実質上の負担を徴収している ところがかなり見受けられる。そういった負担に利用者が納得をしていないケースが非 常に多いので、ガイドラインの範囲を施設利用に関する負担全般まで広げられないか。  もう一つ、ガイドラインを利用者が理解できるかということで、認知症の場合はそれ がままならない場合がある。地域包括支援センターの権利擁護というのも必須事項にな ったのだから、その中にガイドラインと利用者の関係をチェックする機能を考えること が必要ではないか。 (香取振興課長)  まず現行の指定基準上、保険外のサービスについての費用徴収については規定があ り、保険給付の対象になっているサービスと明確に区分されないあいまいな名目による 費用の徴収は認められないということで、個別にその内容を明らかにして取ることを求 めていて、その他の日常生活に要する費用といったものについては利用者、家族の選択 と同意を取ることを義務付けている。  費用も、実費の相当額の範囲内ということで、その内容及び金額については重要事項 として説明をし、施設内に掲示をすることを求めており、違反した場合は、保険外のサ ービスではあるが、指定基準違反という取扱いになる。  もう一つは、今回居住費と食費が保険の外へ出るということで、この部分については ガイドラインその他を定め適正手続きを求めるが、その内容は18年4月施行予定の情報 の公表制度の中で、それぞれの施設が事業者との間でどういう内容の契約を結ぶか、あ るいはどういう負担を求めるかということについては、施設自身が開示をすることを義 務付けるという規定をすることになる。 (池田委員)  問題は現在、基準に違反している事例があるが全く事態は変わっていないということ だ。診療報酬の問題が大きな原因だとは思うが、都心ではとても今の診療報酬ではやっ ていけないから、保険外の費用を取るのは当たり前いう意識が医療系施設の中にあると 思う。  そういう事態は、情報開示というものが動き始めると変わるものなのか。 (香取振興課長)  基本的には入所、入院者と施設との関係できちんと情報開示、説明をするということ になる。公表ということは、広く一般に対してどういう費用を取っているかということ を不特定多数に対して開示をすることなので、外部の方がそれを見て、実際に利用した 方との関係で事実に反していれば、そのこと自体が虚偽の開示をしたことになるので、 その部分は開示制度を導入することによって改善が期待できると考えている。 (木下委員)  契約について、前回現在の利用者と施設の契約が9月30日で切れるという話だった が、施設側が十分に説明してもそれ以降の契約ができない場合は施設の説明が悪いとい う対応なのか、施設利用を拒む理由になるのか。 (香取振興課長)  現在の入所者は例えば施設の入所契約ということで、それは介護保険の給付を受ける という一種の介護保険法に基づく公法上の契約として行われている。それに対して、サ ービスの提供と自己負担の支払いという相互関係が発生する。  法律改正の効果については、介護保険の提供範囲が変わるということで、保険外に出 る居住部分と食費部分については、現在提供している介護保険の契約のいわば権利義務 関係から外へ出るということになるので、食費と居住費については別途、利用契約が締 結されないと継続の関係が発生しないということになる。その契約を結ばないというこ とになれば、そのサービスは契約が成立しないので、提供する義務が事業者側には発生 しないことになる。  保険外の部分の契約が成立しないからサービスを提供しない問題は先ほど野中委員の 質問と同じで、そのこと自体が本体の介護保険の給付を提供することを拒否する正当な 理由になるかどうかという判断になる。その上で、それを承知であえて払わないという ことになれば、それは事実上契約の継続はできないことになると考えているが、現実問 題としては最終的に個別のケース・バイ・ケースの判断ということにならざるを得ない と思う。 (沖藤委員)  11ページの注6の、高齢者夫婦2人暮らしで1人がユニットケアに入った場合の「資 産が一定額以下となる場合」とは大体どのぐらいか。 (渡辺企画官)  7ページの「第4段階以上の世帯に関する特例」にあり、金融資産等が450万以下、 それから残された配偶者のフローの収入が80万円以下ということになる。 (喜多委員)  制度の持続可能性、または負担の公平性という意味で、今回改正をすることは当然と 思っている。  7ページの低所得者対策についてはもう少し制度として明確にしていく必要があると 思う。先ほど野中委員のPRも必要との発言は、一番大事なことだと思う。もっと国 民、市町村民の皆が肌で感じられるような説明を国は果たしてほしいと思う。パンフレ ットや、いろいろなマスメディアを使って十分に改正した内容を説明する責任が国にあ ると思う。 (田中(雅)委員)  12ページのガイドラインに盛り込むべき事項について、訪問介護を始めとする10の介 護サービス事業の情報項目について検討されているというのはこの度、公表されたが、 通所系のサービスや、介護療養型医療施設等においての検討はどうなっているのか。ま た、これまで検討されてないサービス事業についても同じように来年の4月から情報の 公表が始まるのか。 (香取振興課長)  今回問題になる特別養護老人ホーム、介護福祉施設と老健施設については、15・16年 度で具体的基準についての検討事業を行い、これは18年4月から施行予定となってい る。  それから、療養型については今年度具体的指針の策定を、18年度にモデル事業を行 い、施行は19年度ということになっており、基本的には19・20年度で全対象サービスに ついて開示のスキームに乗せることができると考えている。 (田中(滋)委員)  居住費と食費を保険給付から外すということは、公定価格から市場価格に移行するこ とだと思う。市場価格は福祉の世界では今までなかったが、市場は公正、フェアでもあ り得るし、アンフェアでも不平等でもあり得る。アンフェアだとかえって悪化すること もある。  在宅との公平性のために保険給付から外す以上、その制度が公平でなければならな い。例えば、市場価格というが、食材料費と調理費用の地域差は現行介護報酬にある地 域差より多少大きい程度で済むが、居住費の地域差は大変大きくなり得る。先ほど池田 委員の発言で都心の医療機関が成り立たない理由はコストよりも地代のせいで、地代は 原価には反映しない。その市場価格との関係性について、質問を3つさせてもらうこと とする。  1番目は、低所得の方から利用額負担上限額以上の居住費・食費を徴収した場合、補 足給付がなくなるのか。それとも、補足給付がその分だけ減額されるのか。  2番目は、自由料金になる以上、保険料負担の第4段階以上の方の場合には標準的な 負担よりも超えることが幾らでもあり得る。そのときに、同じ施設の中の低所得者に給 付される補足給付に影響しないと私は理解しているが、それでよいのか。  3番目は市場価格、自由料金である以上、逆に標準的な負担以下、あるいは低所得者 利用者負担上限額以下の設定でも構わないのか。この3つで、市場価格との関係をどう 理解しているかを確認しておきたい。 (藤木介護保険課長)  7ページの補足給付の図の食費の方で説明すると、第1段階、第2段階、第3段階の 低所得の方については、第1段階の利用者負担は1万円、第2段階は1万2,000円、第 3段階は2万円と書いているが、これ以上の額を利用者から取った場合は補足給付は行 わない、と法律上なっている。これは、利用者の負担上限額を設定した趣旨を生かすと いう観点から、法律上整理しているものである。  それから、4段階以上の人は自由契約なので、例えば基準額は4万2,000円と書いて いるが、施設と利用者の契約で幾ら取るかが決まるわけである。仮にその施設で4段階 以上の方から5万円とか6万円取っているとしても、補足給付のラインは4万2,000円 となり、それと利用者負担との差額を埋める形で補足給付を行うということになる。  仮に、第2段階で1万2,000円とあるが、1万円しか徴収しなかった場合は4万2,000 円と1万円の差額を補足給付するのかというと、そうではなく、1万2,000円との差額 を補足給付として出すという考え方になっている。 (矢野委員)  前回のこの会議でも言ったように、多床室について、1人当たりの床面積が少ないと いった居住環境の違いを考慮し、減価償却費相当分を負担しなくてもよいという建てつ けでは、持続可能性や公平性という観点からすると一貫性がないと思う。個室と異なり 複数人で分担し合うことができるので、1人当たりの負担分は当然少なくて済むという ことになるので、多床室についても減価償却費相当分を負担すべきである。  年金給付との二重給付の是正が徹底されないとか、利用者負担の不均衡が解消されな いといったことになり、今回の改正は一歩進んでいるにしてもそこに十分な一貫性がな いし、徹底さに欠けているのではないか。  20ページの「厚生労働省としての考え方」には、多床室について、「光熱水費相当」 を「居住費」として設定したものであり、国会審議の中でもその旨説明してきていると 書かれているが、事務当局の意見としてそう述べていたのであり、介護の議論をしてき たこの部会での話ではないし、それで意見が一致しているとは思っていない。  それから、政策判断ということでいろいろやっていこうということだが、定員ベース で9割程度を占めている多床室において、光熱水費相当分のみ自己負担化するという判 断自体が、結果として個人の尊厳を尊重しようとするユニットケアの推進の方向性に逆 行しているのではないか。  ここまでは意見だが、次に、これに関係して2点ほど確認したいと思う。  1つ目は、今後、介護保険施設を整備するに当たって、原則としてユニット型個室し か認めないという方向であるのかどうか。  2つ目は、来年3月までに是正される多床室におけるケアというのは、ユニット型個 室におけるケアよりも低い評価と考えてよいのかどうか。  それから、20・21ページの経過措置についてである。これは改正の趣旨から言えば、 本来、不要であり、激変緩和措置の観点で一定の経過措置を設けるということであれ ば、要らないと言いながらも必要なことであろうと思う。その場合、従来型個室の居住 費水準、これは月5万円ということのようだが、これに基づいて減額幅を検討すべきで はないか。 (川尻計画課長)  まず施設整備の関係の質問について、現在施設整備費の助成については交付金化し、 都道府県等の裁量性を認める形に変わっているが、その対象とする特別養護老人ホーム については、ユニット型を基本としていくということで考えている。  ただ、交付金ということで裁量性があるため、絶対に個室ユニットでなければいけな いという縛りはかけていないものである。 (三浦老人保健課長)  ユニットケアや多床室などにおけるケアの評価については、資料の20ページの「厚生 労働省としての考え方」の枠の2番目にあるように、今回の見直しでは10月施行に伴う 改定として居住費の保険負担外化の作業を行っているものであり、それぞれの類型ごと のケアの評価については今回は行っていない。したがって、そのバランスを含めて来年 4月の改定に向けての議論の中で行っていくことと考えている。 (見坊委員)  資料の21ページに従来型個室の経過措置が出ているが、まずここにある従来型個室の 報酬適用に係る経過措置の(1)で、既入所者について対象者の範囲を、従来型個室の既入 所者のうち今年の9月30日時点で過去1か月間にわたり特別な室料を徴収していない者 と書いてあるが、これはどの程度の方が、また過去1か月間にわたってということの意 味を確認したい。  もう一つは、従来型個室の新規入所者の場合、感染症や治療上の必要など、ここに個 室への入所期間が30日以内と書いてあるが、施設側の事情によって入所が必要な場合で あって、なおかつ入所期間が30日以内と限定しているのはどういう事由なのか。 (三浦老人保健課長)  まず、従来型個室での経過措置に関連して、既入所者の占める割合について、基本的 には特別養護老人ホームにおいては個室に入所して特別な室料を払っている方はほとん どいない状況である。  介護療養型医療施設の場合、55%程度が特別な室料を払っている方、それから老人保 健施設においては75%程度が特別な室料を払っている方であり、残りの部分が経過措置 の対象になってくるということとなる。  それから、新規入所者の30日以内ということについては、基本的に30日の範囲の中で 入所が継続できるかどうかということを判断し、それを超えて特別な治療等が必要とい うことになるのであれば、それに対応した機能を持つ医療施設等に転院してもらうとい うことが必要なのではないかということから、30日という限定を置いているということ である。 (見坊委員)  まず既入所者の問題については、これ全体を読むと多床室と同額の報酬を適用すると いうことが大半に適用されるのであって、ここに書いてある対象者の範囲は例外的にこ れを除いた人は皆、大体多床室と同額保障を適用すると読めるが、是非そういうふうに 実施上はお願いしたい。  個々の施設、特に既存型の個室の問題というものについてはいろいろな意見が出てお り、もともと老人福祉法で老人ホームを整備した経過では、社会福祉法人が経営をす る。社社会福祉法人というのはかなり公共的な性格を持って運営をする経営主体として 戦後つくられたもので、そこにかなり補助金を投入して施設整備をしてきた。大体多床 室が原則で、個室というものは原則とは認めないという指導もあったのであり、今日の 介護保険の施設の考え方、特にユニット型というものとは非常に違う。  そういう経過を踏まえて、個々の施設における利用の仕方、施設長の運営の仕方とい うものを相当尊重する必要があると思っている。多床室と個室というふうに厳格に分け るのは問題があるということを前回指摘して、今回の経過措置でもいろいろと配慮して もらっているが、この点については施設あるいは市町村の裁量といったものを十分に尊 重するということでお願いしたい。  また、従来型の個室の新規入所者についていろいろと制限をしているが、これは余り 制限し過ぎない方がいいと思う。特に他害行為がある人の他害行為というのは、かなり 同居者に対して被害を与えるということであろうと思うが、実際には夜更かしの方、あ るいは早起きの方、認知症の方、頻繁にトイレに行く人など、周りの生活のテンポと合 わない人をどうするかというのが、多分老人ホームの苦心のしどころだと思われる。  そうした点で、従来型の個室というものは非常に問題であり、是非、多床室とほぼ同 じような考え方で実施してもらいたい。そしてまた、施設長その他の判断、裁量、行政 の判断もあるだろうが、弾力的な運用をお願いしたいと思っている。  今回の介護保険法の改正については、国会審議段階からいろいろと解説されてきたの で、一般の高齢者も危惧している。特に、利用者負担額は大体5万円ということが一人 歩きをしている。  しかし、実際には実施上いろいろな配慮をするということで、低所得者対策ももっと はっきりさせるという方向でいっているので、この辺のPR、解説を厚生労働省はよほ ど丁寧にしてもらいたい。そして、一人歩きしている非常にショッキングな5万円とい う数字はある程度十分実態がわかるように説明をお願いしたい。 (永島委員)  21ページの従来型個室の新規入所者の経過措置について、これは特養施設入所の8割 の方が認知症の症状を持っているということを考えると、著しい精神症状というのは認 知症と同じことと考えていいのではないか。  在宅でどうして施設入所を申し込まなくてはならなかったかという一つの例として、 割合穏やかな人で、ショートステイを繰り返しているうちに1日中テーブルをたたいて 介護者を呼び続ける。そういうことで施設に入居せざるを得なくなったという現状があ って、そういう方たちは施設にたくさんいるということを、是非とも理解してほしいと 思う。  それから、本人はもちろん家族も、その理解がどの程度できるのか。成年後見とまで はいかなくても、説明の後ろ盾になるような人が必要なのではないか。  それと、どうして10月実施なのかということがよく分からない。今から説明をしてい ろいろな資料が出て、10月に自己負担がこうなるという納得がいく時間があるのか。例 えば同じ地域でのAの特養とBの特養と払う費用が異なるというようなことが今、利用 者に理解ができるのか。もしそれが払えなければ、契約できないから退所してもらうと いうのは、過酷な在宅介護に帰らざるを得ないことになるのではないかとの心配があ る。  それから、7ページの第4段階以上の世帯に関する特例で450万の資産とあるが、単純 に計算すると、第3段階で60万円の費用を年間に払うとすると7年しかもたない。この あたりはどう考えているのか、ここの議論が非常にわかりにくくて困っているし、一般 の人もそうだと思う。 (川尻計画課長)  資料2の1ページに、介護保険3施設の居室類型の表があり、介護老人福祉施設にお いてユニット型の個室は1万9,000人分、従来型個室は約4万2,000室とあるが、このう ち、従来型個室で特別な居室料を払っている方というのはごく例外的で、そういう意味 で言えば、現在の従来型個室入所者は10月1日以降に急に、多床室ではない取扱いにな るということではない。  それから、認知症の方も含めて新規入所者の入所期間30日以内については、この30日 以内の特例をまず適用して、30日経過後も問題行動が収まらずに多床室では対応しにく いため施設の事情で個室に移る場合には多床室並びとすることができる。  それ以外の場合でも、21ページの従来型個室の新規入所者の(2)のところで、例えば 特養の場合10.65平米を満たさないものは多床室扱いにできるということで、相当従来 型個室については経過措置を設けるところである。  それから、介護老人福祉施設の従来型個室の報酬水準の設定については、見坊委員か らの御指摘のとおり国庫補助金等が入っており、そういうことを勘案しながら居住費の 5万円をどうするかということを考えていくこととしている。具体的に居住費あるいは 食費をどう設定していくかということは、利用者との間でそれぞれの施設が設定する形 となっているところである。 (漆原委員)  まず施設というと介護老人福祉施設、特別養護老人ホームの議論に偏りがちで、今の 低所得者の対策を受けられない人たちが他の施設にはもっと含まれているし、認知症の 高齢者でも、個室でしかいられないような高齢者でも、他の施設の利用者の方が多い。 特に在宅ケアを支援するという点では、他の施設の方が多いということも理解してもら いたい。  現在のユニット型個室あるいは従来型個室について言えば、個室の利用者の居住費は 自己負担ということになるわけであるが、これらの人たちについて言えば、既に入所者 の選択によって特別な室料、あるいは特別な療養の場の提供ということで、自己負担の 個室料が発生しているのが一般的である。この個室料の取扱いについては、民間の施設 であるならばおおむね減価償却費というものを基準にして事業の継続性、再生産、ある いは安定性というものを計算して経営をしているわけである。  今回は居住費を給付費から外すという議論であるが、老人保健施設について言えば、 在宅復帰を達成する施設ということで、その入所期間は短く、そして入退所が頻回とい うことになる。個室利用ということになるならば、その稼働率がどうしても低下する。 その辺のところを是非考えてほしい。  老健施設の個室の利用者について言えば5万円の従来型個室の導入ということになる が、それを今年の10月から、それも決して自分から望んで入っているわけではない施設 でいきなり5万円の負担は、余りにも利用者にとっても急激過ぎるという感じがしてい る。  また、ユニット型個室というのは実際には老健施設にはこれまで基準上も制度上も存 在をしていないもので、これを10月からユニット型個室の費用を取るということは、余 りにも唐突ではないか。段階的な導入とか、介護報酬上の評価とか、そういったものを きっちりしていただいた上で導入してほしい。  1つだけ、今回の施設利用者の居住費について理解できない点があるので質問した い。光熱水費に関しては特に理解ができるが、減価償却費相当というものが給付費から 減るということがどうしても理解ができない、そこのところをもう一度教えてほしい。  先ほどの説明では、居住環境に応じて、あるいは政策判断で決めたということだが、 家族あるいは利用者には、理解してもらえないだろう。30万円で入所していた人が個室 に入ったら25万円しか給付が受けられなくて、多床室だったら29万円受けられる、これ が本当に平等なのか。どういうふうに説明したらいいのか。 (池田委員)  厚生労働省は、どうしてパブリシティがこんなに下手なのか。先ほどから、何か5 万、6万円の負担が上がるというイメージがつきまとっているが、そんなに上がること はなく、例えば、第1段階の人であれば基本的に変わらず、むしろ多床室の人は負担は 減るし、国民年金グループの年収80万円以下の人は今より下がる、つまり、負担は今よ り減ることになる。  問題は、厚生年金グループの年収80万円を超える人たちであり、多床室で約1万5,000 円、ユニットで約2万円増えるということで、現実にこれからどれだけ増えるのかとい うことを明確にした方がわかりやすいと思う。あと、社会福祉法人の減免措置とか、さ まざまな措置がきめ細かくなされているわけであり、それを説明すれば、入所者は大方 合意すると思う。言い換えれば、それをやっていないから、あたかも入所者が5万、6 万もこれから払わなければいけないというイメージになってしまい議論が混乱してい る。10月施行ということが迫っているし、安心できる体制はかなりつくっているわけな ので、あとはきめ細かいパブリシティをすすめてほしい。 (渡辺企画官)  今、指摘があったとおり、例えば資料9ページに、これは特別養護老人ホームの例だ が、第1段階についてはトータル負担は変わらない。特別養護老人ホームの場合、第3 段階までの方が今は8割近くなので、これから周知を図っていくときには、もう少し具 体的に、今はどういう方がいて、そういう方はどういう負担が変わっていくのかとい う、個人ベースに落とした形での丁寧な説明をしていくことが必要だと思っている。  全体として見ても、個人ベースで見ていけばもう少し理解、安心してもらえると思う ので、そういった点に十分配慮しながらこれからも数値等について気を配ってまいりた い。 (福間参考人)  16ページの、特別養護老人ホームの従来型個室について報酬水準の設定に当たっては 国庫補助金相当額を勘案するという点については評価をしていきたいと思う。ユニット 型も共用部分については国庫補助金相当額が入っている。  それで、ここで設定されている6万、5万というのは報酬から除く額とが合わなくな ってくるので、そのことをきちんとしないと、本来の介護給付の中でサービスの対価と して行う額が居住費で除き過ぎることになるので、十分にここは検討してほしい。 (井形分科会長代理)  やはり負担が増強するときにはその代わりこういうことをするということをはっきり PRすべきだと思う。そういう意味では、栄養問題が悪いというデータが出ていて、介 護予防の重要な柱になっているわけだから、自己負担化したと同時に、栄養問題は解決 するというPRを是非してほしい。 (木下委員)  栄養管理体制加算と栄養マネジメントというふうに当面分けてあるのは制度導入につ いてはいいと思うが、栄養マネジメントについてはかなりのスタッフと労力が要るの で、それを勘案して十分機能が発揮できるような報酬体系というものが必要だと思う。 (木村委員)  26ページの「栄養ケア・マネジメントに対する評価」はあくまでも施設に入るわけだ が、施設の中での多職種協働、要するに施設の中に配置されている人員だけでやった場 合に評価されるのか。それとも栄養ケア計画とあるが、口腔ケア、摂食、嚥下リハ、服 薬指導など、これらに関わる職種の人たちが仮に外から関わった場合には、この後、18 年4月に向けての検討の中でまた議論をして、その辺の連携も含めて評価して考えてい くのか。  それから、もう一つ関連でショートステイについて、ショートの利用者というのは居 宅にいて何らかの問題等があって利用するので、その中での栄養のマネジメント等の情 報提供や、居宅ケアプランを立てているケアマネジャーとの連携を、この後、18年4月 の報酬改定のところで更に検討してもらいたい。 (三浦老人保健課長)  栄養ケア・マネジメントは施設給付についての評価ということなので、そこに参画さ れる方は基本的に何らかの形でその施設に所属している形が必要であると考えている。 (木村委員)  例えば、特別養護老人ホームには薬剤師の配置はないが、服薬指導等のときに関連し て地域の薬局から頼まれて入っていった場合の評価などをどうするかということを具体 的に説明してほしい。 (三浦老人保健課長)  今回は栄養改善に関するということであるので、ご質問の内容については4月改定に 関するものと思うので、その際にまた検討をお願いしたい。 (井部委員)  経口摂取への移行に関する評価について、経管により食事を摂取する利用者を経口摂 取に移行するためということで、とても重要なことだが、これは簡単ではなく、そしゃ く筋の運動障害、あるいは舌の運動障害のアプローチ等の運動訓練をして初めて口から 食べるということになるわけで、非常に人の手を必要とする。  それから、うまくいかないと誤嚥を起こして誤嚥性肺炎を誘発することにもなり得 る。そういう点から、経口摂取の移行に対する評価において、どのくらい体制が整って いるかということを判断をしなければいけないので、その点を十分に考慮してほしい。 (沖藤委員)  介護3施設の中にこんなに低栄養状態の人たちがいたのかということに大変驚いた。 確かに我が家にいても調理はするわけで調理コストがかかるから、施設に入っても調理 コストをとる考え方はある程度合理的な考えと思うが、栄養ケア・マネジメントをする ようにするから調理コスト等をとるという流れに、家族等は了承できるのだろうか。施 設に入ったことによって低栄養にさせられてきた過去はないのか、その責任は一体だれ が取るのか、基本的な理解が浅いため、調理コストを取るということで入所者の責任み たいな考え方に私などはなっていってしまう。  その辺で、例えば栄養ケア・マネジメントを一生懸命しても、調理員が経口摂取しや すいような形で本当に調理してくれるのか。その確認はどうしたらいいのか。漠然とし ていてわかりにくいので、わかるように説明してもらいたい。 (三浦老人保健課長)  資料の28ページに、「「栄養ケア・マネジメント」の手順」が示されているが、食事 の内容や形状、あるいは栄養のバランスを含めて栄養ケア計画を立てていく。その際 に、多職種協働として、調理の関係者も含めて協働で体制を組んでいくこととなるの で、栄養ケア計画の実施という点では調理員の協力は不可欠となる。 (石井委員)  今の低栄養に関して、データがないから示せないが、在宅の場合の方が低栄養の問題 は大きい、潜在しているだけである。むしろ3施設でも低栄養の問題はあるが、それで も管理されているからまだあそこまでできているということはきちんと言っておきた い。通所に来て初めてやっとまともに食事ができるという方がかなり多いという実態を 知っておいてほしい。 (矢野委員)  常勤の管理栄養士や栄養士を配置するということと、その働きというものを重複して 評価するというのは、本当はおかしいと思う。よい働きを評価して、それについて給付 をするというのが筋ではないか。これは介護報酬全体について言えることだと思ってい る。  そうすると、必ずしも常勤である必要はなく、経験豊富な管理栄養士を非常勤で活用 することによって栄養ケア・マネジメントができるという仕組みもあり、また、栄養ケ ア・マネジメント自体を外部委託するということも可能だと思う。そういうふうに、内 容を評価していったらいいのではないか。 (花井委員)  「療養食に対する評価」のところで、前回までに経管栄養のための濃厚流動食を加算 から除くという文言があったかと思うが、これは療養食に対する評価ということでそこ で読み込んでしまうのかという質問と、それから29ページの(2)の2行目の「特別食」 という言葉は、多分「療養食」のことかと思うが、確認をお願いしたい。 (渡辺企画官)  まず、経管栄養のための濃厚流動食を除くということは、今回は明記してないが、方 針としては変わっていない。  それから、名称を「療養食」と変えたのは、「特別食」というのは従来基本食事サー ビス費というものがあって、その中の加算としてであったが、今回は基本食事サービス 費がそもそもなくなって、施設サービス費の加算としてもう一度この栄養関係の再構成 をするというなので、名称も含め全体を見直すものである。また、29ページの(2)の2 行目の「特別食」というのは直し忘れのため「療養食」に修正願います。 (石井委員)  矢野委員の意見で、管理栄養士あるいは栄養士の非常勤ということだが、施設で栄養 ケアを考えたときにはほとんど不可能だと思う。3食すべてを、一人ずつすべてアセス メントして栄養ケア計画を立てていき、またこれまで介護スタッフがやっていたことを きちんと栄養スタッフも関わっていくということなので、常勤でないとできないだろ う。 さきの非常勤というのは施設にいない職種が非常勤であっても関わることによって栄養 ケア・マネジメントを実施していく、ということなら理解できるが、少なくとも最低限 1名以上は常勤が必要だと、実態を知った上で言っておきたい。 ○大森分科会長より閉会の宣言 照会先 老健局 老人保健課 企画法令係  TEL03(5253)1111(内3948 3949)