第17回社会保障審議会医療保険部会 資料
5−2
平成17年7月29日

中央社会保険医療協議会の新たな出発のために

平成17年7月20日
中医協の在り方に関する有識者会議


 始めに

 ○  昨年12月17日に、厚生労働大臣と内閣府特命担当大臣(規制改革、産業再生機構)、行政改革担当、構造改革特区・地域再生担当との間で「中医協の在り方の見直しに係る基本的合意」がなされ、厚生労働大臣は、中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)の在り方について、内閣官房長官が主宰する社会保障の在り方に関する懇談会の審議を踏まえつつ、第三者による検討機関において検討を行うこととされた。

 ○  中医協の在り方に関する有識者会議(以下「有識者会議」という。)は、この基本的合意を受け、中医協の在り方について検討を行うため、厚生労働大臣が有識者の参集を求め、開催するものとして、本年2月に発足した。

 ○  有識者会議は、本年2月以降、常時、厚生労働大臣の出席の下、上記「基本的合意」に掲げられた以下の検討事項に沿って、本日まで7回にわたり公開の会議による精力的な議論を積み重ね、ここに「中央社会保険医療協議会の新たな出発のために」を取りまとめるに至ったので、報告する。

  (1)  診療報酬改定に関する企画・立案の在り方との関係を含めた中医協の機能・役割の在り方
  (2)  公益機能の強化
  (3)  病院等多様な医療関係者の意見を反映できる委員構成の在り方
  (4)  委員の任期の在り方
  (5)  診療報酬の決定手続の透明化及び事後評価の在り方
  (6)  その他、医療の現場や患者等国民の声を反映する仕組み等の在り方等


 診療報酬改定に関する企画・立案の在り方との関係を含めた中医協の機能・役割の在り方について

(1)  診療報酬の位置付けについて

 ○  中医協の所掌事務については、社会保険医療協議会法(昭和25年法律第47号)第2条第1項に規定されており、診療報酬等に関する事項について、厚生労働大臣の諮問に応じて審議し、文書をもって答申するほか、自ら厚生労働大臣に文書をもって建議することができることとされている。

 ○  診療報酬とは、保険医療機関等が行う診療行為に対する対価として公的医療保険から支払われる報酬である。これに関する定めは、保険適用とする診療行為の範囲を定める「品目表」としての性格と、保険適用とされた個々の診療行為の公定価格を定める「価格表」としての性格を併せ持つものである。

 ○  健康保険法(大正11年法律第70号)等の関係規定により、診療報酬については、厚生労働大臣がこれを決定する権限を有しており、厚生労働大臣は、診療報酬を定めようとするときは、中医協に諮問するものとすることとされている。

 ○  診療報酬改定は、(1)診療報酬改定の改定率の決定、及び(2)診療報酬改定に係る基本方針を踏まえた具体的な診療報酬点数の設定、という2つのプロセスを経て行われることとなるが、それぞれにおいて、中医協の機能・役割を明確化していくことが求められている。

(2)  診療報酬改定の改定率の決定について

 ○  診療報酬改定の改定率は、医療費に係る予算編成の際の算定根拠となる係数であり、その決定は内閣の権限である。

 ○  一方で、具体的な診療報酬点数の設定と改定率とは密接に関連するものであることから、現在、中医協においては、全国の医療機関の平均的な収支状況等、物価・賃金の動向等のマクロの経済指標、保険財政の状況等を踏まえつつ、改定率についても議論が行われ、年末の予算編成に向けて、議論の成果を「審議報告」として取りまとめている。

 ○  改定率については、法律上、中医協の機能・役割としての位置付けがなされていない中で、いわば慣例として中医協で議論が行われていることが、中医協において改定率が決定されているかのような印象を与える原因となっていると考えられる。

 ○  したがって、まず、改定率は、予算編成過程を通じて内閣が決定するものであるということを、ここに明確に確認する。その上で、中医協においても、医療経済実態調査等を踏まえ、改定率について議論を行い、その結果を厚生労働大臣に意見として進言することがあり得るものとするべきである。
 なお、ここで言う「意見として進言」とは、法的な効力を有するものではなく、中医協が厚生労働大臣の諮問に応じて行う答申や、中医協がその権能として行う建議とは異なるものである。

(3)  診療報酬改定に係る基本方針について

 ○  現在、診療報酬改定に当たっては、改定年の前年12月に、中医協において「診療報酬改定の基本方針」が取りまとめられ、これに沿って、中医協において、具体的な診療報酬点数の設定に係る審議が行われている。

 ○  中医協自らが「診療報酬改定の基本方針」を定め、さらに具体的な診療報酬点数の設定に係る審議を行う取扱いは、利害関係者を含めた三者構成をとっている中医協が、診療報酬点数の設定を通じて医療政策を誘導しているのではないか、との批判の一つの原因となっていると考えられる。

 ○  したがって、改定率を除く診療報酬改定に係る基本的な医療政策の審議については、厚生労働大臣の下における他の諮問機関にゆだね、そこで「診療報酬改定に係る基本方針」を定めることとし、中医協においては、この「基本方針」に沿って、診療報酬改定に係る考え方を整理しつつ、具体的な診療報酬点数の設定に係る審議を行うこととすべきである。

 ○  例えば、保険適用とする診療行為の範囲については、「必要かつ適切な医療は保険診療により確保することとし、有効性、安全性、普及性、効率性、技術的成熟度及び社会的妥当性の観点から適当と認められる先進的な医療技術については、専門家による科学的評価を踏まえ、保険導入する」という基本的考え方の次元に属する事項については、厚生労働大臣の下における他の諮問機関の審議事項となるが、この基本的考え方の適用として「個々の診療行為を保険適用とするかどうか」については、中医協の審議事項となる。

 ○  いずれも厚生労働大臣の所管事項の切り分けの問題であるので、「基本的な医療政策は厚生労働大臣の下における他の諮問機関で審議し、これに沿って中医協において具体的な診療報酬点数の設定に係る審議を行う」という基本的考え方に従って、個々の事例については、厚生労働省において適切に判断していくべきである。

 ○  なお、診療報酬改定に係る基本的な医療政策の審議を行う場としては、社会保障審議会の医療保険部会及び医療部会が考えられる。

(4)  診療報酬改定に係る中医協への諮問及び中医協からの答申の在り方について

 ○  現在、診療報酬改定に当たっては、改定年の前年12月に、中医協において「診療報酬改定の基本方針」が取りまとめられ、これに沿って、中医協において、具体的な診療報酬点数の設定に係る審議が行われている。改定年の2月頃には、中医協における審議の結果を踏まえ、厚生労働大臣より中医協に対し、診療報酬点数の改定案について諮問がなされ、即日又は数日後に、これを了承する旨の答申が行われる取扱いとされてきた。

 ○  このような取扱いでは、たとえ中医協における審議の結果を踏まえて作成されたものであるにせよ、大部に及ぶ診療報酬点数の改定案が、即日又は数日後に了承されることとなり、国民の目から見て、透明性が担保されているとは言い難い。

 ○  したがって、診療報酬改定に係る厚生労働大臣から中医協への諮問においては、予算編成過程を通じて内閣が決定した改定率を所与の前提として、厚生労働大臣の下における他の諮問機関において策定された「基本方針」に基づき、診療報酬点数の改定案の調査及び審議を行うことを求めるとともに、中医協においては、これを受けて慎重かつ速やかに審議を行い、改定案を作成して答申する取扱いとするべきである。


 公益機能の強化について

(1)  三者構成について

 ○  中医協の委員構成においては、「支払側委員と診療側委員とが保険契約の両当事者として協議し、公益委員がこの両者を調整する」という三者構成をとっている。

 ○  中医協の歴史を振り返れば、昭和2年の健康保険法施行当時は、診療報酬は支払側と診療側との契約により決められており、昭和18年に厚生大臣がこれを決定する仕組みになったときにも、支払側及び診療側の意見を聴いて決定することとされていた。昭和19年には、厚生大臣が診療報酬を定めるに当たって意見を聴くための組織として社会保険診療報酬算定協議会が設置されたが、ここで、支払側及び診療側のほか、学識経験者の意見も聴くこととされ、これが現在の中医協の原型となっている。

 ○  昭和25年に社会保険医療協議会法が制定されて中医協が発足したが、当時は、(1)保険者の代表、(2)被保険者、事業主等の代表、(3)医師、歯科医師及び薬剤師の代表、並びに(4)公益代表の四者により構成されていた。その後、昭和36年の社会保障制度審議会の答申を踏まえ、同年に社会保険医療協議会法が一部改正され、(1)保険者、被保険者、事業主等の代表、(2)医師、歯科医師及び薬剤師の代表、並びに(3)公益代表の三者構成となり、現在に至っている。

 ○  このような歴史も踏まえ、改めて診療報酬について考えてみると、診療報酬は保険医療機関等が行う診療行為に対する対価として公的医療保険から支払われる報酬であることから、その決定に当たって保険契約の両当事者の協議を尊重すべきであるという考え方には、一定の合理性があるものと考えられる。三者構成については、これを基本的に維持していくべきである。

(2)  新たな公益機能について

 ○  現在、公益委員は、三者構成の下で、支払側委員と診療側委員とを調整する機能を担っており、今後、新たな公益機能を位置付けていくとしても、このような調整機能が公益委員の機能の基本となるものと考えられる。

 ○  公益委員の調整機能を明確化する意味においても、例えば、「中医協における審議の状況にかんがみ必要と認めるときは、公益委員は、その協議による意見を提示することができる」といった形で、公益委員の機能を位置付けることについても、検討していくべきである。

 ○  一方で、公益機能については、三者構成の下で、支払側委員と診療側委員との調整に偏りすぎていたのではないか、との批判があることから、新たな公益機能というものを位置付けていくべきではないかと考えられる。

 ○  現在、中医協においては、診療報酬改定に係る審議は精力的に行われている一方、診療報酬改定の結果の検証については、医療費の動向の報告等が行われてきた程度で、診療報酬改定に至る取組と比べ、その取組は不十分であったと考えられる。

 ○  今後、中医協においては、診療報酬改定の結果の検証を行い、これをその後の診療報酬改定に係る議論に繋げていく取組が求められていると言えるが、このような診療報酬改定の結果を検証して国民に分かりやすく説明し、国民の評価に資する機能を、新たな公益機能として、公益委員に担わせるべきである。

 ○  なお、今後、公益委員が診療報酬改定の結果の検証の機能を適切に担っていくためには、公益委員の中に、医療経済、財政、会計等の専門家が必要とされてくるものと思われる。

(3)  公益委員の人数について

 ○  中医協委員の人数については、社会保険医療協議会法第3条第1項の規定により、支払側委員8名、診療側委員8名及び公益委員4名の合計20名により構成することとされている。

 ○  しかし、三者構成における公益委員の調整機能をより的確に発揮できるようにする観点から、また、診療報酬改定の結果の検証という新たな公益機能を適切に担っていく観点から、公益委員の人数については、現行の4名からこれを増やしていくべきである。

 ○  具体的にどの程度まで増やすかについては、「調整機能の的確な発揮のために、公益委員を全体の過半数とすべき」という意見、「公益委員の人数を増やし、支払側委員及び診療側委員と同数とするべき」という意見、「公益委員を増やすとしても、量より質、専門分野のカバーといった観点から考えていってもよいのではないか」という意見まで、様々な意見があった。
 今後、中医協の委員数全体の適正を維持するという観点も踏まえつつ、支払側委員及び診療側委員のそれぞれと同数程度とすることを基本としながら、検討していくべきである。


 病院等多様な医療関係者の意見を反映できる委員構成の在り方について

(1)  支払側委員及び診療側委員の委員構成に係る基本的考え方について

 ○  支払側委員及び診療側委員の任命については、社会保険医療協議会法第3条第4項において、各関係団体の推薦によることとされており、これに基づき、厚生労働大臣より各関係団体に対して、委員の推薦依頼がなされている。したがって、各関係団体から厚生労働大臣への推薦により、支払側委員及び診療側委員の内訳が決定される仕組みとなっている。

 ○  支払側委員及び診療側委員の委員構成については、現在の構成を踏まえつつ、医療費のシェア、医療施設等の数、医療施設等従事者数、患者数等の指標を総合的に勘案しながら、明確な考え方に基づいて決定していくべきである。

(2)  支払側委員の委員構成について

 ○  支払側委員の推薦団体については、現在、
 健康保険の保険者として、社会保険庁1名及び健康保険組合連合会1名
 健康保険の被保険者として、日本労働組合総連合会(以下「連合」という。)2名
 事業主として、日本経済団体連合会1名
 船員保険の被保険者として、全日本海員組合1名
 船舶所有者として、日本船主協会1名
 国民健康保険の保険者及び被保険者として、国民健康保険中央会1名
となっている。

 ○  支払側委員の委員構成については、現在においても多様な主体を推薦団体として取り込んでいると言えるが、一方で、時代の変化を反映した形で、推薦団体の見直しを行うべきと考えられる部分もある。

 ○  具体的には、現在、政府管掌健康保険の運営主体については、国とは切り離された全国単位の公法人を保険者として設立し、保険給付、保健事業、保険料設定等の事務を実施させる方向で検討が進められている。健康保険の保険者としての社会保険庁については、このような検討の結論に対応して、見直しを行っていくべきである。

 ○  また、例えば、平成15年度の医療保険医療費の制度別の構成を見ると、船員保険は0.03兆円で、医療費総額29.1兆円の0.1%を占めるに過ぎない。現在、支払側委員の中には、船員保険の被保険者及び船舶所有者の代表が2名含まれているが、このような船員保険の現状を踏まえつつ、見直しを行っていくべきである。

 ○  このほか、例えば、平成17年4月より、国民健康保険制度の医療費の適正化と保険運営の広域化を進め、その安定的運営を図るため、税源移譲による確実な財政措置が図られる三位一体の改革に併せて、都道府県に財政調整権限を委譲するとともに、都道府県負担が導入されている。
 国民健康保険に限らず、医療保険においては、近時、都道府県の役割の強化が図られてきているが、これについては、支払側委員の委員構成の中で反映させていく方法だけでなく、都道府県が医療制度において持つ多面的な役割にかんがみ、増員される公益委員の中で反映させていく方法も含め、検討していくべきである。

 ○  なお、中医協委員に患者の代表を加えることについては、「中央社会保険医療協議会の在り方の見直しについて」(平成16年10月27日中央社会保険医療協議会全員懇談会了解)において、被保険者の代表を推薦する連合において、患者一般の声をより適切に反映できるような委員を推薦することとされ、本年4月から、連合に置かれた「患者本位の医療を確立する連絡会」の委員が中医協委員として任命されている。

 ○  この論点については、「患者の代表は公益委員として加えるべきではないか」との意見もあった。しかし、公益委員はいわば国民全体の声を代表して意見を言うという意味において、公益委員としての独自の位置付けを与えられているものである。したがって、公益委員が患者の声も含めて国民の声を代弁するものであるとしても、患者の代表にはむしろ被保険者としての側面が強いと考えられることから、現行の形を継続していくべきものと考えられる。

(3)  診療側委員の委員構成について

 ○  診療側委員の推薦団体については、現在、
 医師の代表として、日本医師会5名
 歯科医師の代表として、日本歯科医師会2名
 薬剤師の代表として、日本薬剤師会1名
となっており、また、平成11年5月より、日本医師会の推薦する5名の委員のうち1名については、病院団体の関係者が推薦されている。

 ○  診療側委員の委員構成についても、できる限り多様な主体の意見を反映させるべきである。特に、医師を代表する5名の委員について、病院の意見がより適切に反映されるよう、委員構成を見直すべきであり、2名を病院の意見を反映できる医師とするべきである。

 ○  なお、当該委員の推薦の在り方については、「病院団体が直接推薦をするべき」という意見が大勢であったが、「日本医師会が病院の代表も含めたバランスを考えて推薦をするべき」という意見もあった。いずれにしても、病院の意見を反映できる医師は、国民の目に見え、納得できるような形で選ばれるべきであり、病院団体自身が作成した推薦名簿が透明なプロセスで厚生労働大臣に届けられる仕組みとするべきである。

 ○  このほか、「診療側委員に看護師の代表を加えるべきではないか」との意見もあった。
 中医協においては、在宅医療の推進、特に訪問看護の充実等の事項について審議するため、平成15年12月から、看護の専門家が専門委員に任命され、中医協としての最終的な意思決定を行う総会及び基本的な問題についてあらかじめ意見調整を行う診療報酬基本問題小委員会に所属している。これらの審議に参加することにより、看護師の意見が中医協における審議に反映される仕組みが設けられている。
 現在、診療側委員として構成されている医師、歯科医師及び薬剤師は、保険契約の当事者として現物給付のサービスを提供する一方で、その対価として診療報酬を受け取る主体として整理されている。さらに進んで、診療側委員に看護師の代表を加えることについては、診療報酬を受け取る主体だけではなく、看護師を始めとする医療提供に従事する者の位置付けをどのようにするかについての整理が必要である。看護の専門家が専門委員として中医協の審議に参加している取扱いを継続しつつ、医療提供に従事する者の意見の中医協の審議への反映の在り方について、引き続き検討すべきである。

(4)  推薦制の在り方について

 ○  支払側委員及び診療側委員の推薦制については、「支払側委員と診療側委員とが保険契約の両当事者として協議し、公益委員がこの両者を調整する」という三者構成を基本的に維持していく前提に立てば、保険契約の両当事者の代表は、厚生労働大臣が一方的に任命するのではなく、それぞれを代表するにふさわしい者を関係団体が推薦し、これに基づいて厚生労働大臣が任命するものとすべきである。社会保険医療協議会法第3条第1項において、「○○を代表する委員」という形で規定がなされているのも、このような思想を背景としているものと考えられる。

 ○  したがって、支払側委員及び診療側委員の推薦制については、三者構成と併せ、基本的に維持することとしつつ、その運用の改善について検討していくべきである。
 例えば、厚生労働大臣より関係団体に対して期限を附して推薦依頼をしたにもかかわらず、関係団体が正当な理由なく期限内に推薦を行わないような場合には、厚生労働大臣が職権で委員の任命ができるものと解するべきである。


 委員の任期の在り方について

 ○  中医協委員の任期については、社会保険医療協議会法第4条第1項の規定により、1期が2年とされており、また、「審議会等の整理合理化に関する基本計画」(平成11年4月27日閣議決定)において、「一の審議会等の委員に10年を超える期間継続して任命しない」こととされている。

 ○  委員の任期の在り方については、委員の任期が長すぎる場合の弊害(「長い在任期間を持つ委員が、他の委員に勝る診療報酬に関する知識・経験を通じて、中医協における議論の方向性を事実上決定してしまうような事態が生じるのではないか」)と委員の任期が短すぎる場合の弊害(「診療報酬体系は専門的かつ複雑であり、委員の任期が短すぎると、診療報酬改定について実質的な議論ができなくなってしまうのではないか」)とを総合的に考慮すべきである。

 ○  具体的には、中医協委員の任期については、最長6年までとし、再任の回数で言えば2回までとするべきである。

 ○  なお、社会保険医療協議会法第4条第2項の規定により、委員に欠員を生じたときに新たに任命された委員の任期は、前任者の残任期間とすることとされている。したがって、上記のような取扱いとした場合にあっても、前任者の残任期間を引き継いだ場合の任期の上限は、引き継いだ残任期間に応じて、4年1日から6年未満までの期間となることとなる。


 診療報酬の決定手続の透明化及び事後評価の在り方について

(1)  診療報酬の決定手続の透明化について

 ○  昨年、中医協を巡り、歯科診療報酬について、一部の診療側委員及びその推薦団体が、自己に有利なものとなることを目的として、一部の支払側委員に対し金品の授与による不正な働きかけをした、という贈収賄事件が発覚し、中医協における審議の透明性の確保についても疑問が投げかけられた。

 ○  診療報酬決定手続の透明化については、上記贈収賄事件も一つの契機としつつ、これまでも中医協において以下のような取組が行われており、引き続き、中医協における審議過程の一層の透明化や客観的なデータに基づく議論の一層の推進を図っていくべきである。

 例えば、中医協においては、平成9年から会議を公開するとともに、「中央社会保険医療協議会の在り方の見直しについて」(平成16年10月27日中央社会保険医療協議会全員懇談会了解)を踏まえ、昨年から議事録を厚生労働省ホームページ上で公開している。

 また、「中央社会保険医療協議会の在り方の見直しについて」(平成16年10月27日中央社会保険医療協議会全員懇談会了解)においては、「非公開の協議を行った場合には、公益委員から、協議の経過について、公開の場で報告する」こととされている。

 このほか、平成15年には、中医協の審議に資するためそれぞれ専門的な立場から調査を実施する診療報酬調査専門組織が設置され、客観的なデータの収集に着手している。

 ○  また、診療報酬決定手続の更なる透明化を図るため、いわゆるパブリック・コメント手続を参考としながら、中医協が診療報酬点数の改定案を作成し、答申するに至る過程において、広く国民の意見を募集する手続をとるべきである。

 ○  このほか、現在、中医協の議事規則は、中医協自身が定めている。この中で、定足数については、各側委員の3分の1以上が出席し、かつ、その出席委員が委員総数の半数以上であることとされ、また、議事については、出席委員の過半数をもって決し、可否同数の時は、会長の決するところによることとされている。
 議事の公正を確保する観点から、近時の立法例に倣い、議事手続の中心的な事項について、政令で規定することを検討するべきである。

(2)  事後評価の在り方について

 ○  前述のとおり、今後、中医協においては、診療報酬改定の結果の検証を行い、これをその後の診療報酬改定に係る議論に繋げていく取組が求められていると言える。

 ○  診療報酬改定の結果の検証に当たっては、「個々の診療報酬改定が企図した効果を挙げているか」といった観点からの検証のほか、「そもそも厚生労働大臣の下における他の諮問機関が策定した診療報酬改定に係る基本方針に沿った改定が行われたかどうか」といった観点からの検証も必要となる。

 ○  検証に当たっては、公益委員がその機能を担うべきであるが、必要に応じて専門的な立場から調査を実施する者の活用についても検討していくべきである。

 ○  また、検証の結果については、これを公表して国民の目にさらすとともに、その批判に耐え得るような内容のものとしていくべきである。


 その他、医療の現場や患者等国民の声を反映する仕組みの在り方等について

 ○  中医協において診療報酬改定に係る審議を行うに当たり、医療の現場や患者等国民の声を反映させるため、中医協委員が国民の声を聴く機会を設定していくべきである。
 具体的には、地方公聴会のような場を新たに設けることとすべきである。

 ○  また、中医協における審議に多様な医療関係者の意見を反映させるため、医薬品、医療機器等の医療関係者の団体を参考人として呼んで意見を聴取する機会を、積極的に設けていくべきである。

 ○  なお、診療報酬改定に国民の声を反映させるための方策は、中医協において国民の声を聴くだけに限られない。改定率を除く診療報酬改定に係る基本的な医療政策の審議を行う厚生労働大臣の下における他の諮問機関においても、そのような国民の声を踏まえた審議を行っていくことが求められる。


 終わりに

 ○  有識者会議としては、「中央社会保険医療協議会の新たな出発のために」と題して、中医協の機能・役割の明確化や透明性の確保など、国民の目から見て分かりやすい仕組みとするための提言を行った。

 ○  この提言の内容をすべて実現するためには、社会保険医療協議会法の一部改正を行うことも必要となってくるが、これを待たずに可能な対応については、できる限り早期に実現して、平成18年度に予定されている次期診療報酬改定に対応していくことが、国民の要請に応えることとなるものと考える。



(参考)

「中医協の在り方に関する有識者会議」開催要綱

 目的
 厚生労働大臣と内閣府特命担当大臣(規制改革、産業再生機構)、行政改革担当、構造改革特区・地域再生担当との間の「中医協の在り方の見直しに係る基本的合意」(平成16年12月17日)に基づき、中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)の在り方について検討を行うことを目的として、厚生労働大臣が有識者の参集を求め、開催するものである。

 検討項目
 (1)  診療報酬改定に関する企画・立案の在り方との関係を含めた中医協の機能・役割の在り方
 (2)  公益機能の強化
 (3)  病院等多様な医療関係者の意見を反映できる委員構成の在り方
 (4)  委員の任期の在り方
 (5)  診療報酬の決定手続の透明化及び事後評価の在り方
 (6)  その他、医療の現場や患者等国民の声を反映する仕組みの在り方

 有識者会議参集者
大森 政輔  (国家公安委員会委員、弁護士)
  奥島 孝康  (早稲田大学大学院法務研究科教授)
  奥野 正寛  (東京大学大学院経済学研究科教授)
  金平 輝子  ((財)東京都歴史文化財団顧問)
  岸本 忠三  (総合科学技術会議議員、大阪大学客員教授)
◎:座長 (五十音順、敬称略)

 運営
 (1)  有識者会議は、公開とする。
 (2)  有識者会議には、常時、厚生労働大臣が出席する。
 (3)  有識者会議は、中医協の在り方について、平成17年夏〜秋までに結論を得るものとする。
 (4)  有識者会議の庶務は、厚生労働省保険局医療課において処理する。



「中医協の在り方に関する有識者会議」開催経緯


平成17年

 2月22日 第1回会議
  ・ 中医協の概要について事務局より説明の後、フリートーキング

 3月22日 第2回会議
  ・ 中医協会長より意見聴取
  ・ 事務局より「中医協の在り方に係る論点(たたき台)」提示

 4月12日 第3回会議
  ・ 規制改革・民間開放推進会議議長より意見聴取
  ・ 検討項目に沿った議論を開始

 5月10日 第4回会議
  ・ 6つの検討項目のうち、1〜3について議論

 6月 1日 第5回会議
  ・ 6つの検討項目のうち、4〜6について議論

 7月 5日 第6回会議
  ・ 6つの検討項目の議論のまとめに沿って、細かな論点について議論

 7月20日 第7回会議
  ・ 報告書取りまとめ

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