「健康フロンティア戦略」の推進に向け
取り組むべき施策について


文部科学省
厚生労働省

I.趣旨

   国民一人ひとりが生涯にわたり元気で活動的に生活できる「明るく活力ある社会」の構築のため、与党においては、平成16年5月に、国民の「健康寿命(注 参照)」を伸ばすことを基本目標に置き、「生活習慣病予防対策の推進」と「介護予防の推進」を柱とする平成17(2005)年からの10カ年戦略(「健康フロンティア戦略」)を策定した。
 平成16年6月の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」においては、この「健康フロンティア戦略」の推進のため、関係府省が連携して重点的に政策を展開することとされたところであり、これを踏まえ、文部科学省及び厚生労働省は、今般、「健康フロンティア戦略」の推進に向け取り組むべき施策を、以下のとおりとりまとめるものである。
注) 健康寿命:健康で自立して暮らすことができる期間

II.施策の目標

   「健康フロンティア戦略」を踏まえ、生活習慣病対策と介護予防の推進による成果について以下の数値目標を設定し、その達成を図ることにより、健康寿命を2年程度伸ばすことを目指す。

(1) 「生活習慣病対策の推進」
 がん対策 5年生存率を20%改善
 心疾患対策 死亡率を25%改善
 脳卒中対策 死亡率を25%改善
 糖尿病対策 発生率を20%改善

(2) 「介護予防の推進」
 軽度者(要支援・要介護1)の重度化予防
  ・・・ 要介護2以上への移行を10%防止
 要支援・要介護状態となることの予防
  ・・・ 要支援・要介護状態にはないが、そのおそれのある者について、要支援・要介護への移行を20%防止

III.施策の内容

   国民各層を対象に、それぞれについて重要性の高い施策を重点的に展開する。

 働き盛り層  :  『働き盛りの健康安心プラン』
 女性層  :  『女性のがん緊急対策』
 高齢者層  :  『介護予防10ヵ年戦略』
 『健康寿命を伸ばす科学技術の振興』


(1) 『働き盛りの健康安心プラン』

<ねらい>
   働き盛り層を主な対象として「3大死因(がん、心疾患、脳卒中)」と「糖尿病」について食育を含む総合的予防対策を、地域と職域を通じて推進するとともに、「心の健康問題(メンタルヘルス)」に積極的に取り組む。

<具体的施策>
 (1) 個人の行う「健康づくり」の支援
ITを活用した健康づくりの支援(「eーヘルス」の推進)
健康づくりの「場」と「機会」の提供
職場における個人の健康づくりの支援
身近に地域・職域で受けられる専門相談・指導等

 (2) 健診データに基づく継続的な健康指導
有効性の高い健康診査の推進
効果的な保健指導の推進

 (3) 迅速な救命救急と専門診断・治療の確保
自動体外式除細動器の普及啓発
救急医療体制の整備
がん医療の「均てん化」
ITを活用した遠隔医療の普及
職場におけるメンタルヘルス対策の推進
心の健康問題を抱えた人に対する早期発見・治療の実施

 (4) 身近な地域で安心リハビリ
脳卒中・心筋梗塞等の急性期リハビリテーションの推進
切れ目ないリハビリテーションの推進
心の健康問題を抱えた人の早期社会復帰を図るリハビリテーションの推進

(2) 『女性のがん緊急対策』

<ねらい>
   女性のがん罹患率の第一位である「乳がん」と発症年齢が低年齢化している「子宮がん」について緊急対策を講じるとともに、女性の生涯を通じた健康支援対策を推進する。

<具体的施策>
 (1) 「女性のがん」への挑戦
マンモグラフィの緊急整備などの「乳がん対策」の推進
20歳からの子宮がん検診の普及などの「子宮がん対策」の推進
安心で利用しやすい検診体制の整備

 (2) 女性の生涯を通じた健康支援
女性特有の病気等に関する情報提供など「女性にやさしい医療」の推進

(3) 『介護予防10ヵ年戦略』

<ねらい>
   高齢者の生活機能の低下や、要介護となる主な原因である「骨折」や「脳卒中」「認知症」をできる限り防ぐために、効果的な介護予防対策を推進する。

<具体的施策>
 (1) 家庭や地域で気軽に介護予防
介護予防拠点の整備
生涯スポーツ、文化活動を通じた介護予防の推進
介護保険制度の見直し(予防重視型システムへの転換)

 (2) 効果的な介護予防プログラムの開発・普及
介護予防プログラムの開発・普及
家庭や地域での介護予防の取り組みへの支援

 (3) 骨折予防対策の推進
地域における「転倒・骨折予防教室」の普及
「骨粗鬆症予防」の推進

 (4) 脳卒中対策の推進
救急医療体制の整備(SCUの整備)
切れ目のないリハビリテーションの推進・医療と介護のリハビリテーションの連携強化

 (5) 地域で支える「認知症ケア」
地域における認知症サポート体制の整備
認知症ケアの人材育成

(4) 『健康寿命を伸ばす科学技術の振興』

<ねらい>
   健康寿命を伸ばすことに資する科学技術を振興する観点から、基盤的技術や最先端技術の研究開発を推進するとともに、医療や介護の現場を支える各種技術の開発普及を図る。

<具体的な施策>
 (1) 基盤的技術と最先端技術の研究開発
老化及び老化抑制機構の解明(認知症を含む)
治験推進体制の充実
ゲノム科学、たんぱく質科学、ナノテクノロジーの推進

 (2) 医療現場を支える技術の開発普及
がん、心疾患、脳卒中、糖尿病の画期的な予防・診断・治療法の開発
認知症、骨折の画期的な予防・診断・治療法の開発
再生医療技術等の研究開発のさらなる推進
がん患者等のQOLの向上(生活機能を温存する治療法の開発等)
専門医等の育成、医療安全の推進、診療ガイドラインの一般医への普及

 (3) 介護現場を支える技術の開発普及
認知症性高齢者のリハビリテーション技術の確立
介護支援機器の研究・開発
身体機能を補助・代替する機器の開発

 (4) 国民による自己選択を可能とする評価と公表
技術評価と政策評価の推進

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