助産所と医療機関の連携について


日本助産師会
 山本助産院 山本 詩子



助産所における出産数

助産所における年次別出生数
助産所における年次別出生数の図


問題整理

1
 嘱託医師の問題 産婦人科以外でもできる

2
 緊急搬送の問題 緊急直接搬送が困難


1
 嘱託医師の問題
 
 ・ 産婦人科以外の専門でもできる
 ・ 個人にかかる負担が大きい
 ・ 忙しくて助産院からの救急患者まで診れない

 ・ 夜間対応をしない診療所がある
 ・ 病院の場合、勤務外の時間帯には対応できない

 ・ 分娩取り扱いをしなくなった
 ← 高齢、産婦人科医の削減
 ・ 閉院
 ← 高齢、分娩数の減少


2
 緊急搬送の問題
 
 ・ 緊急直接搬送を受けない医療機関
 ←  初診は診ない、紹介状がない
 嘱託医師を通さないと診ない
 嘱託医がいない助産所(出張のみ)からの搬送患者は診ない

 ・ 緊急時搬送先が特定されていない
 →  搬送が必要と判断されてから実際の搬送・診察まで時間がかかってしまう

 ・ 助産所初診者(医療機関も未受診や、夜間対応しない診療所の受診者)を搬送する場合


緊急時の約束規定

開業助産師が安全に分娩を取り扱うための緊急搬送時の約束

スローガン 「無理せず、抱え込まず、安全に」

1
 早めに母体を搬送すること
2
 搬送時、紹介状や検査データを添付し同行すること
3
 異常分娩は取り扱わないこと
4
 緊急時には直接搬送する


助産師の業務

<助産師の判断で行い得るもの>
1
 正常な場合の「助産」、「妊婦・褥婦もしくは新生児の保健指導」
2
 助産師の業務に当然付随する行為
  臍の緒を切る、心音聴取器・血圧計・骨盤計の使用など
3
 臨時応急の手当て
4
 受胎調節実地指導
  都道府県知事の指定を受けたものでなければならない

<医師の指示に基づいて行うもの>
診療機械の使用、医薬品の投与など衛生上危害を生ずる恐れのある行為
(緊急時の臨時応急の手当ては差し支えない)


地域医療機関の連携の現状

地域医療機関の連携の現状の図


神奈川における助産所分娩数と搬送数
2003〜2004年 35施設

分娩予定数に占める母体搬送数の図 分娩数に占める新生児搬送数の図


助産院と病院の特徴

助産院のメリット
主体的な分娩
 バースプランを活かす
継続したケア
助産師独自の技術の伝承
医療行為を最小限にするための準備(管理)とケア
 
病院のメリット
医療行為が可能
産婦人科以外の対応も可能
緊急時の搬送体制も万全
医療設備の充実
 
融合
 
助産院のデメリット
異常時の医療体制に不備


緊急時の搬送に時間がかかる
 
病院のデメリット
診療や分娩時にゆっくりと時間を割く事ができない
継続ケアが不十分
画一的なケアになりがち


山本助産院  
横浜市内の助産院・診療所・病院と連携

・スタッフ   助産師4名、保育担当2名
調理・事務担当 1名

・業務内容 入院分娩、自宅出産介助
《出産体位自由、夫立ち会い可》
産褥入院
健診(妊婦、褥婦、乳児)
《完全予約制、緊急は随時受付》
出産教室、マタニティビクス・ヨガ
相談(母乳、育児など)
自宅訪問 など

助産師研修、助産師学生及び看護師学生の実習の受入れ


助産院と医療機関の連携

池川クリニックふれあい横浜ホスピタルの図
分娩介助  ・ 母乳相談
妊婦健診  ・ 乳児健診
育児サークル  ・ 育児相談
マタニティクラスなど
妊婦健診
乳児健診
緊急時の医療行為など
患者の情報共有
技術交流/研修
後進育成など


開業助産師が関わることによる医療機関のメリット

1
 マンパワーの確保  熟練した助産師による産科管理
2
 コスト削減  非常勤による勤務体制
3
 妊産婦のニーズ  収集と蓄積
4
 地域密着したケア  継続ケア・自宅訪問など
5
 人材ネットワーク力  潜在助産師の確保、妊婦の紹介
6
 技術力  後輩育成・技術の伝承
7
 妊産婦向け企画提案と運営  マタニティクラス、母乳相談
 乳児健診・育児相談、育児サークル


開業助産師にとってのメリット

1
 妊娠中の妊婦健診  諸検査・処方依頼
2
 非緊急性の搬送  搬送後の分娩介助
3
 軽度リスク妊婦紹介  分娩介助
4
 搬送時の分娩介助  手術室に入室できる
5
 早期退院・転院  助産院へ戻ることができる
6
 継続看護  自宅訪問ができる
7
 気軽に相談できる


安全確保のために

妊産婦は、どこで分娩したとしても安全が確保されなければならない

開業助産師は、地域の医療機関と連携し契約書を交わし、互いに協力関係を結ぶ
 ・  助産師は、正常出産を担う
 ・  医療機関では、異常産をサポートする

医療機関の役割と地域助産師の役割を十分に発揮し、お互いを尊重し合う

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