資料3
平成17年6月27日
厚生労働大臣 宛

要望書(抜すい)

(社)日本助産師会・全国助産師教育協議会

要望事項
 IV  助産師の業務の安全確保
1. 連携医療機関制度を設置されたい

要望の理由

 IV  助産師の業務の安全対策
1. 連携医療機関制度を設置されたい
 近年、自然なお産に対する関心が高まり助産所や助産師が介助する家庭での出産へのニーズが増加している。助産所や家庭での出産の多くは生理的な経過をたどり、健康な子どもの出生と母子と家族の大きな満足をもたらしている。しかし一方で、分娩は絶えず異常に移行する可能性があり、また異常の緊急対応は一刻を争うものである。
 助産所は、開業に際し医療法第19条に嘱託医が義務付けられているが、このような緊急事態発生時に迅速に対応するためには、嘱託医を経由せず、助産所から救急に対応可能な医療施設に直接搬送できることが望ましい。また、救急対応可能な医療機関は予め決めておくことができるシステムの構築が望ましい。そこで、医療法における嘱託医制度に代わって、連携医療機関制度を新たに設置されたい。
 また連携医療機関制度の設置に際しては、以下の点に対する配慮もいただきたい。病診連携では、診療所と病院相互の紹介の制度があり、両機関ならびに受診者に利益があるようにシステム化されている。しかし、助産所はこの制度の枠内にないため、助産所から医療機関への紹介では、不利益を蒙ることになる。連携医療機関制度の新設に際しては、助産所から紹介される妊婦に不利益のあることのないような配慮をいただきたい。



日本産婦人科医会報第55巻第1号(2003年1月)

助産婦さんへのアンケート調査結果(抜すい)
付、助産所に対する支援の検討と提言

医療対策委員会委員長 可世木 成明

調査の概要

 平成13年10月25日〜11月20日の期間に全国助産婦会から推薦された開業助産婦438名に無記名で回答を依頼した。
依頼数:438件、回収数:236件、回収率:53.9%

調査結果

 契約産婦人科医師について
 ・ 契約医師との意見交換:52.7%が年間1〜5回、25.4%が月一回程度意見交換している。意見交換のなかったのは9.2%であった。
 ・ 契約産婦人科医に業務内容の説明:ありは87.8%。
 ・ 契約医師(施設)の数:なしが4.7%、1〜2人が75.8%、3人以上が19.4%であった。
 ・ 契約産婦人科医の分娩取り扱いの有無:7.7%が分娩を取り扱っていない医師であった。
 ・ 契約産婦人科医の入院設備:なしが13.7%であった。
 ・ 契約に経済的に裏付けのあるのは17.7%に過ぎなかった。医師の無償の好意に寄っていることになる。
 ・ 契約の確認:51.9%が口頭による依頼であり、文書による依頼は48.1%に過ぎない。

 契約医師、産婦人科施設、そして周産期医療システム
(1) 契約医師および産婦人科施設への要望
感謝している、現状で可との回答が22.5%であった。
近くの病院に嘱託医になってほしい。気軽に診てくれる病・医院があるとよい。
助産師をもっと理解して欲しい。助産所の立場を考えて説明して欲しい。「送るのが遅すぎる」とか「この程度で送るのか」と言わないでほしい。助産所でお産予定というと扱いが悪い。流産も見てくれない。
分娩後患者さんを返してほしい。
医師間の医療方針の統一を、患者・家族への対応に気を付けてほしい。
検査結果を書面で書いてほしい。妊婦健診時の母子健康手帳への記載を。
緊急時の薬剤使用許可をもらっておきたい。進んでいる検査項目など採用してほしい。
医師・助産師のコミュニケーションの場がほしい。
(2) 周産期医療システムに対する要望
現行では原則として契約医師を介して搬送、紹介状が必要となっているが、時間のロスが惜しい。地域の救急医療システムに助産所も組み入れてほしい。急変時に高次医療施設に直接搬送できるシステムがほしい。ドクターカーを配置してほしい。

助産所に対する支援の検討と提言

 医療施設側からみた問題点

(1) 助産所での出産は総て安全であると言うべきでない。
(2) 助産所では病院以上に患者を選択する必要がある。
 ハイリスク症例を選択できるように診断技術の向上をはかるべきである。
 「安全な医療」のためには以下の検討が必要である。
 現行の嘱託医制度には問題が多い。嘱託医師の施設では日常的な妊婦健診や外来検査には対応できるが、突発的な産科救急への対応が困難なこともある。助産所から高次医療機関に搬送する場合も嘱託医を介することがネックのひとつになっている。
 地域の医師会の中に助産所との協議会を設けたり、大学病院が助産所の症例の管理を行ったり努力している地域もあるが、今後は各地の周産期救急医療体制に組み込んでいく必要があると考えられる。助産所は医療施設でないため正式に協議会に加わることは容易ではないかも知れないが、オブザーバーとしてでも協議に参加の道を開き、勉強会において安全・非安全の見極めを十分に教育することが重要であろう。

 嘱託医師契約書
   助産所の嘱託医師には以下のことが望まれる。
1) 契約は必ず契約書をもって行い、その内容を詳細に明記する。
2) 産婦人科医であること。
3) 2人以上あること。
4) 緊急に対応できる距離にあること。
 以上の観点から契約内容を明記する契約書(案)を作成した。



嘱託医師委嘱契約書(案)

 助産師   (甲)と医師   (乙)は、本日、以下のとおり契約した。

  甲は、乙に対し、乙が甲の助産所の嘱託医師となることを委嘱し、乙は嘱託医師となることを受諾した。
甲および乙は、相互に緊密は協力関係を築き、甲の患者の妊娠から分娩に至るまでの安全を確保することができるよう最善の努力をする。
嘱託医師の委嘱期間は平成 年 月 日から平成 年 月 日までの 年間とし、期間満了時に甲乙双方に異議のないときはさらに同一期間本契約を更新するものとし、以後同様とする。
甲は乙に対し、嘱託医師委嘱の報酬として、年額  円を支払うこととし、これを毎年 月 日限り支払う。
甲および乙は、相互の協力関係を明確にするため、次の事項を確認する。
(1) 甲は妊娠経過観察中の患者については、分娩までの間少なくとも妊娠の前期、中期および後期の3回は乙の診察を受けさせるよう努め、乙は甲から診察の要請があったときはこれに応ずる。
(2) 甲乙間の協議で必要と認めた妊娠中の検査については、甲または乙において必ず実施する。
(3) 甲が乙に対して患者の紹介、往診を要請したときは、乙は事情の許す限りこれを受け入れる。患者の搬送が必要となったときは、乙は事情の許す限りこれを受け入れるか、または、患者の搬送先を紹介する。この場合、甲は、乙に対して、診療録を開示すると共に、患者やその家族に説明した事項を報告する。
(4) 分娩その他のために患者が甲の助産所に入院したときは、甲は乙に対し、診療経過の概略を連絡し、分娩が終了したときまたは退院時にはその旨を連絡する。
乙は、甲のために、その責任において、予備の協力医2名を委嘱し、その氏名を甲に知らせる。
やむをえない事情により乙が本契約に定める嘱託医師としての責務を履行できないときは、甲は予備の協力医に対して協力を要請することができる。
 この契約の締結の証として、本契約書2通を作成し、甲乙各自その1通を所持する。

平成 年 月 日
 (甲)
 (乙)

トップへ