中間取りまとめについてなお検討すべき論点について

1 総論
 労働契約法制の対象とする者の範囲
 労働基準法の労働者以外の者を労働契約法の対象とする必要性について、どのように考えるか。その際、どのような者について、どのような条項を適用する必要性があるか。
 例えば、個人で業務を請け負い又は受託する者であって発注者に経済的に従属している者について、どのように考えるか。

 労使委員会
 労働者と使用者が実質的に対等な立場で労働条件を決定するために労働組合制度があることを踏まえつつ、労働組合が存在しない場合でも労働者の交渉力をより高め、また、多様な労働者の意見を反映するための恒常的な労使委員会の意義や必要性について、どのように考えるか。
 また、労働組合と労使委員会との関係について、どのように考えるか。
 これを踏まえ、労使委員会の委員の選任等の手続や、労働者委員の独立性を確保するための方策、労働者委員が当該事業場の労働者の意見を適正に集約するための方策について、どのように考えるか。

 総則規定の必要性
(1)  労働契約法制を定める場合、総則的な規定としてどのようなものが必要か。
(2)  労働契約における人種、国籍、性、信条、社会的身分等による差別禁止規定の必要性について、どのように考えるか。

2 労働関係の成立
 採用内定
 採用内定時及び就労開始時の労働条件明示の在り方について、どのように考えるか。ここで、いつ採用内定がなされたか(労働契約が成立したか)を判断するに当たっての考慮要素について、どのように考えるか。

 試用期間
 試用期間は、どのような目的のために設けられ、また、試用期間中の労働者は労働条件その他についてどのような地位に置かれているか。また、現実に、目的に見合った期間が設定されているか。
 これを踏まえ、試用期間の上限の在り方について、どのように考えるか。

3 労働関係の展開
 就業規則
(1)  就業規則と労働契約との関係
 就業規則の内容に合理性があっても、これに労働者が拘束されないこととすべきであるのは、どのような場合であり、それはなぜか。
 これを踏まえ、就業規則の内容が合理的なものであれば労働契約の内容になるという判例法理を立法化するに当たって、推定規定を設けるとすれば、推定される事実は何か。また、反証が認められるのはどのような場合か。
 さらに、推定規定が働かない場合は、どのような場合か。
(2)  就業規則を変更することによる労働条件の変更
(1)  就業規則の変更が合理的なものであっても労働者が拘束されるべきでないのは、どのような場合であり、それはなぜか。
 これを踏まえ、就業規則の変更法理を立法化するに当たって、案(1)を取る場合に推定される事実は何か。また、反証が認められるのはどのような場合か。案(2)を取る場合に、使用者の変更権がないとすべきであるのはどのような場合か。
(2)  就業規則の変更の合理性の判断に関し予測可能性を向上させることの必要性について、どのように考えるか。
 過半数組合の合意や労使委員会の委員の5分の4以上の多数により変更を認める決議がある場合の合理性の推定について、合理性の推定が働かない場合及び推定が覆される場合について、それぞれどのように考えるか。

 雇用継続型契約変更制度
 労働者が雇用を維持したまま労働契約の変更を争うことができるようにすることは、労働者にとって、また、使用者にとって、どのような意味を持つか。
 これを踏まえ、案(1)(2)のそれぞれにおける労働契約の変更に必要な具体的な手続について、どのように考えるか。また、労働契約の変更が経営上の合理的な事情に基づき、かつ、変更の内容が合理的である場合とは、どのような場合か。

 配置転換
 配置転換の目的と労働者に与える影響を踏まえ、配置転換に当たって、使用者はどのような措置を講ずべきか。

 出向
 出向期間中の出向労働者と出向元・出向先との間の権利義務関係についてどのような問題があるかを踏まえ、出向中の賃金に関する規定のほか、任意規定を置くべき事項があるか。

 懲戒
(1)  懲戒処分が労働者に与える影響を踏まえ、減給、停職(出勤停止)、懲戒解雇のような労働者に与える不利益が大きい懲戒処分について労働者の非違行為や適用する懲戒事由等を書面で労働者に通知することが必要とした場合に、使用者が当該通知を行わなかったときには、どのような効力を及ぼすこととすべきか。
(2)  懲戒解雇を理由とした退職金の減額・不支給は、労働者にどのような影響を与え、これについてどのように考えるか。

 労働契約に伴う権利義務関係
(1)  兼業禁止義務
(1)  兼業禁止規定はどのような目的のために設けられ、また、労働者にどのような影響を与えるか。
 これを踏まえ、労働者の兼業の禁止はやむを得ない場合を除き無効とすることの必要性や、その際、兼業の禁止がやむを得ない場合とはどのような場合であるかについて、どのように考えるか。
(2)  使用者の命令による複数事業場での労働の場合を除き、労働時間を通算しないこととした場合に、複数就業労働者の健康確保に対する配慮について、どのように考えるか。
(2)  競業避止義務
(1)  労働者に退職後の競業避止義務を課すことによる労働者の不利益と、これを課さなかった場合の使用者の不利益とは、それぞれどのようなものか。
 これを踏まえ、労働者に退職後も競業避止義務を負わせる個別の合意等が有効となる要件について、どのように考えるか。
(2)  退職後の競業避止義務の内容が明確でないことは、労働者にどのような影響を与えるか。
 これを踏まえ、退職後の競業避止義務の対象となる業種、職種、期間、地域を退職時に書面により明示することが必要とした場合に、使用者が当該明示を行わなかったときには、どのような効力を及ぼすこととすべきか。

 労働者の損害賠償責任
(1)  業務とは明確に区別された留学・研修費用に係る金銭消費貸借契約は労働基準法第16条の禁止する損害賠償額の予定には当たらないこととする場合、「業務とは明確に区別された」とは、どのようなものをいうか。
(2)  金銭消費貸借契約で留学・研修後の勤続年数に応じて返還すべき額を逓減させることについて、どのように考えるか。

4 労働関係の終了
 解雇
 どのような場合に解雇が権利の濫用とされるかについての予測可能性の向上を図ることの必要性や、解雇に当たり使用者が講ずべき措置を示すことの必要性及びその内容について、どのように考えるか。
 特に、整理解雇について、これらをどのように考えるか。
 また、解雇に当たり使用者が講ずべき措置を指針で示すこととした場合、その効果について、どのように考えるか。

 解雇の金銭解決制度
(1)  解雇の金銭解決制度に関して、中間取りまとめに示した事項で更に検討を深める必要があるものがあるか。
(労働者から申し立てる金銭解決において本人の辞職の申立てと引換えに解決金の給付を認める場合に、当該辞職の申立てはどの時期まで認められるべきか。また、使用者から申し立てる金銭解決の場合に、裁判においてのみ労働契約の解消を認めることについて、どのように考えるか。)
(2)  解決金の性格について、どのように考えるか。

5 有期労働契約
 有期労働契約をめぐる法律上の問題点
 有期労働契約が良好な働き方として活用されるよう、「有期雇用とするべき理由の明示の義務化」や「正社員との均等待遇」について、法律的な観点から整理しておくべき事項があるか。

 有期労働契約に関する手続
(1)  契約期間の書面による明示
 使用者が契約期間を書面で明示しなかったときに期間の定めのない契約とみなすこととした場合の実務上の影響について、どのように考えるか。
(2)  有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準
(1)  雇止めの効力の判断に当たっては解雇に関する法理を類推適用するとの判例法理により雇止めが制限される場合の予測可能性が低いことは、労働者と使用者にどのような影響を与えるか。
 これを踏まえ、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に定める手続を労働契約法制の観点からも求めることの必要性について、どのように考えるか。
(2)  契約を更新することがありうる旨が明示されていた場合には有期契約労働者が正当な権利を行使したことを理由とする雇止めはできないことしたときに、使用者が契約の更新を予定しているにもかかわらず更新をしない旨を明示し実際には更新を繰り返すことへの対応について、どのように考えるか。
 また、有期契約労働者を長期間継続して雇用する場合であって、更新することがあり得る旨が明示されていなかったとしても正当な権利を行使したことを理由とする雇止めはできないこととすべき場合には、どのようなものがあるか。

 試行雇用契約
 試行雇用契約において期間満了後に引き続き期間の定めのない契約を締結する可能性がある旨を明示した場合に有期契約労働者が正当な権利を行使したことを理由とする本採用の拒否はできないこととする場合、その法的効果について、どのように考えるか。

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