05/06/29 第4回「子どもの心の診療に携わる専門の医師の養成に関する検討会」議事録                    第4回        子どもの心の診療に携わる専門の医師の養成に関する検討会        日時:平成17年6月29日(水)14:30〜16:30        場所:中央合同庁舎第5号館6階共用第8会議室 1.開会 ○事務局/母子保健課長補佐  定刻となりましたので、ただいまから第4回「子どもの心の診療に携わる専門の医師 の養成に関する検討会」を開催いたします。  本日は、日本小児神経学会の桃井委員がご欠席のため、東京北社会保険病院から神山 先生にご出席いただいております。  座長の裄V先生、どうぞよろしくお願いいたします。 ○裄V座長  それでは早速、議事を始めさせていただきます。まず最初に、事務局から簡単に資料 の確認をお願いします。 ○事務局/母子保健課長補佐  お手元にお配りいたしました資料の確認させていただきます。一番上に座席表があり まして、次に資料が冊子になっておりますが、1頁が会議次第、3頁に資料一覧があり ますので、こちらに沿って確認をさせていただきます。  資料1:検討会の開催要項と検討会の委員名簿、5頁からになります。  資料2:検討会のスケジュール(案)、これは7頁です。  資料3:「子どもの心の診療医」のイメージ図(案)、9頁からになります。  資料4:子どもの心の診療医の養成について、13頁からですが、その中には資料4 −1から4−4まで4種類ありまして、いずれも事務局サポートチームの奥山先生をは じめ先生方にご相談して作成していただいたものでして、今回からの議論のたたき台と してご用意させていただきました。  資料4−1:これまでの議論のまとめ  資料4−2:「子どもの心の診療医の養成の現状〜教育およびトレーニングに関して 〜」  資料4−3:周辺課題  資料4−4:「子どもの心の診療医の養成に関する検討課題」  資料4のつづりには別紙として3種類の資料がついております。  別紙1、19頁ですが、「子どもの心の問題のプロフィール 〜受診理由と診断名〜 」  別紙2、23頁からですが、「子どもの心の診療に携わる専門の医師の関する関係者 の取り組みの現状(概要)」という横の一覧表になっています。これは先生方から第2 回、第3回の検討会でご発表いただきました各学会や団体の取り組みについて事務局で 簡単にまとめておりまして、学会の名称、対象とされている領域、医師の養成に関する 取り組み等について、先生方に最終的に確認させていただいて取りまとめたもので、今 回は完成版となっております。  別紙3、29頁ですが、「子どもの心の診療医検討会の検討課題図」となっておりま す。  資料5、31頁からですが、「中間報告と最終報告に係る作業日程(案)」  資料6、33頁からですが、「中間報告のための検討内容(案)」、これは議論のた たき台として用意しております。  また、今回は第2回と第3回の検討会の議事録を配付資料としております。1週間以 内には厚生労働省のポーム頁に掲載される予定です。  最後に、杉山委員からオレンジの2枚の紙ですが、第94回日本小児精神神経学会の ご案内を頂戴しておりますので、併せて配付させていただきました。以上です。 ○裄V座長  ありがとうございました。資料はよろしいでしょうか。  少し時間をいただいて、これまで3回の検討会について取りまとめてみたいと思いま す。この検討会では、最初に厚生労働省側から問題提起がありました。特に児童虐待、 発達障害、摂食障害など子どもの心の問題に対して社会的に対応が求められているにも かかわらず、専門家が不足している。これを幅広く養成することが緊急の課題となって いるということが説明されました。  子どもの心の問題への対応を行う小児科医、精神科医などの総称として私がとりあえ ず提案させていただきましたが、「子どもの心の診療医」という呼び方をしよう。その 子どもの心の診療医をどのように養成するか、具体的な道筋を検討すること。これが、 この検討会の目的だと思います。  この検討会は、これまで現状把握がほとんどされていない子どもの心の診療の現状を とらえて、その上で集中的に議論を行っていただき、医師の養成方法を提言するという 非常に重要な使命を担っていると考えます。  子どもの心の診療医をいかにして養成していくかを検討するにあたって、まずは大き くとらえて、どのような医師が必要とされているのかというイメージが示されていま す。これが資料3の逆三角形の図になります。  この検討会で議論を行うのは、子どもの心の問題に関する一般小児科医・精神科医か ら高度専門的な技能を持つ専門医の養成まで幅広いわけですが、最終的にフォーカスを 当てるべきところは、この逆三角形の最も広いすそ野の部分である一般小児科医・精神 科医のレベルアップであるということが厚生労働省からも要望されております。そうい うことを念頭に置いて、これからの議論を進めていただきたいと存じます。  委員の皆様から、子どもの心の問題というのはあいまいな上に広がりも大きい概念な ので、そもそも専門的な対応を必要をするような子どもの心の病気にはどのような種類 の疾患があるのか、その認識を共有することも必要だという議論もありました。  そこで、前回の検討会では、実際にどのような心の問題への対応が必要とされている のか、認識を共有するために、別紙1として「子どもの心の問題のプロフィール〜受診 の理由と診断〜」を取りまとめていただきました。実際に医療機関を受診している子ど もの訴えと、その訴えに対応した診断として分類される疾患の種類を明確にするために 一覧を作成していただきました。  このような作業をしていくために、事務局にサポートチームということで、奥山委 員、齊藤委員と、さらにそれを支える何人かの専門家に加わっていただき、その方々に よって作業を進めていただくということも前回の議論の中でお決めいただいたところで す。  議論の第一段階として、第2回目と第3回目の検討会では、委員の皆様の所属してお られる学会や関係団体などが、本検討会の趣旨である子どもの心の診療医の養成につい てどのような認識を持っておられるのか、また、具体的にどのような取り組みを行って おられるのかということについて発表していただきました。これをまとめたものが別紙 2の「子どもの心の診療に携わる専門の医師の養成に関する関係者の取り組みの現状 (概要)」という資料です。  これまでの3回の検討会の議論をざっとまとめてみたわけですが、それをいったん総 括して、具体的に子どもの心の診療医の養成方法の検討を進めるために、別紙3として 「子どもの心の診療医検討会の検討課題」を事務局とサポートチームに作成してもらい ました。これらに沿って議論を進めていただきたいと存じます。  資料4「子どもの心の診療医の養成について」、中身は資料4−1から4−4まであ りますが、たたき台という形で示されているものについて、ご質問、ご意見をいただき たいと思います。  資料4−1は「これまでの議論のまとめ」ですが、見出しとしては、1番目は、子ど もの心の問題が検討されなければならない背景、需要の増加、需要に追いつかない供給 の問題に分けてあります。  2番目は、対象となる子どもの心の問題、これは別紙1にプロフィールが示されてい ます。  3番目は、子どもの心の診療の特徴として、子どもの特徴、子どもの心の診療の特徴 に分けてまとめられています。  なぜいま子どもの心の問題への対応が求められているのか、社会に対してわかりやす い問題意識の共有を図ることを目的として、このような形でまとめられていますが、こ れをたたき台として、肉づけしていきたい。今日の議論はそこからスタートしたいと思 いますので、これについて何かご意見はございますでしょうか。  今日は齊藤委員はご欠席ですが、奥山委員は出ておられますので、4−1について追 加して説明するところがあればお願いしたいと思います。 ○奥山委員  最終的には報告書をイメージしながらまとめているわけですが、なぜいま心の問題を 議論しなければならないのかという中で、不登校とか摂食障害とか、こういった問題が 実際に増加しているのか、表面化しただけなのか、そのあたりを皆さんからご意見を伺 いたいと思います。  もう一つは、ここに入れるべきかどうかわかりませんが、内容の変化ということがあ ると思います。齊藤先生が示されていたように10年前と今とでは内容が変化してきて いる。行動の問題をもったお子さんが多くなって大変になってきているというか、そう いう部分も入れたほうかいいのかもしれないと思っております。皆さんからご意見をい ただきたいと思います。 ○裄V座長  今回の検討会から出てくる資料は報告書をまとめるために、たたき台を修正し、加筆 していく作業になりますので、そういうことを念頭に置いて話していただくといいと思 います。 ○杉山委員  この中に書かれていないことは経済的な問題だと思いますが、何故、今まで子どもの 心の問題が十分に進まなかったのかというと、採算性の悪さです。その問題というのは 5年、10年、15年という単位で社会的な計算をしますと、ニートの問題でも、不登 校の段階できちんとした対応をすれば減っていくはずだと思います。虐待も放置すれば 5年後、10年後、15年後に社会的な不安定要素を作ってしまう。  もっと極端な問題は、青少年の重大事件がことごとくといっていいほど広義の広汎性 発達障害の未診断・未治療のグループで起きてしまっている。このことは、この領域に 手を抜いてしまったが故に、逆に、将来に社会的な予算の発動を必要とするツケが回っ てしまうということだと思います。微妙な問題ですが、この点は一言、どこかで触れて いただく必要があるのではないかと思います。 ○裄V座長  今、杉山委員が言われたのは、診療報酬ということ以上に、もっと幅の広い意味での 経済的な問題という観点だと思います。 ○牛島委員  杉山委員が言われたことは、この検討会の最初から私はずっと言い続けていることで はありますが、人格形成の問題をもった若者が非常に増えているということですよね。 ニートだけじゃなくて、手首を切ったり、その他の衝動行為とか、ここ数年、目立って 多いのは暴力的な対象関係に基づいた暴力行為です。背後には家庭に暴力があって、そ れが結果として現れているのですが、これらの問題まで扱えるかどうかということが一 つあるだろうという気がします。人格障害というと大人になりますから、人格形成の問 題とか、何か一言入れてもらった方がいいような感じがいたします。 ○奥山委員  報告書にしていくにあたり、エビデンスがあると説得力があると思いますが、不登 校、摂食障害というのは増加しているというエビデンスが整えやすいと思ったので挙げ てみました。そのほかにニートが増えているというのも、こういうエビデンスという か、数字とか、ひと目でわかるようなことがあったら少し入れていただけるといいと思 います。こういうエビデンスがあるというのがありましたら教えていただきたいと思い ます。 ○杉山委員  後期の広汎性発達障害の問題、特に自閉症系の発達障害というのは世界的にどのデー タを見ても増えてますね。日本においては診断基準の問題だけではない増え方を示して いると思います。今やどの学級にも1人いるぐらいの増え方をしていますので。これは いろいろなデータが出ていますので、入手は可能だと思います。  ニートまでいく前の不登校から引きこもりにいくデータは齊藤先生等もいろいろ出さ れていて、引きこもりの予備状態としての不登校というのがあるというエビデンズが出 ていると思います。 ○裄V座長  報告書においては、増加している、内容が変化しているという記載に際しては、でき るだけデータを盛り込んだものにしていくということですね。 ○神山先生  今日、初めて参加させていただきました。私は保育所とか幼稚園の保母さんから話を 聞く機会が多いのですが、急に隣の子をたたいてしまったとか、そういった子どもたち が増えてきているような印象があるということをおっしゃいます。  もう一つは、私の仲間がやっている仕事の中で三角形が描ける描けないという話があ りまして、これは5歳児の知能検査の中にあったと思うのですが、奈良教育大学の郷間 先生が、20年前は90%の子が三角形を描けるのが4歳8カ月ぐらいだったのが今は 5歳を過ぎているというデータを出されています。これが直接心の問題と結びつくかど うか難しいところもありますが、そういったこともエビデンスとして加えられるかなと 思って発言させていただきました。 ○裄V座長  子ども家庭総合研究の研究班がありまして、今年の春からスタートしていますが、神 山先生が言われたような子が保育所、幼稚園で増えているのかどうか、どのくらいいる のかという調査も行われようとしているのではないかと思います。  それでは先に進めたいと思います。次は資料4−2「子どもの心の診療医の養成の現 状〜教育およびトレーニングに関して〜」ですが、第2回、第3回の検討会で委員の先 生方から発表していただいた取り組みの現状を簡単にまとめたものです。これも報告書 の最初のたたき台としてまとめられていますので、修正し、肉づけしていくという観点 からご意見をいただければと思います。 ○森委員  2番目の初期研修のところに「小児科、精神科それぞれ3カ月」とありますが、実際 には精神科は1カ月です。しかも、レポートを書かなくてはいけませんので、児童、思 春期のことをここでやることは全くできません。2番目のところでやることは現状では 不可能です。  全体のボトムアップをしていくことと専門医として養成していくという2つの段階が あって、一般の先生方が子どもの心の問題に目を向けていくためにはプライマリーケア としての研修が必要で、それをやるところが初期研修です。ところがその場がありませ ん。そこをどうするかというのはとても大事な問題だと思います。 ○裄V座長  正式な呼び方は新医師臨床研修ですが、小児科と精神科は基本科目ではなくて必修科 目という位置づけになっています。期間は3カ月となっていますが、小児科にしても3 カ月行われているところは非常に少ないです。大学病院でも1カ月から2カ月、3カ月 とあって、2カ月の研修が一番多い。内容としても小児のプライマリーケアを主体とい う形で取り組まれていると思います。精神科も3カ月行われているところはほとんどな いと思います。  検討会として今年度中に答申を出すわけですが、長期的な見通しとして、卒前教育で もっとこういうことに力を入れるべきだとか、初期臨床研修においても実質的な研修が 行われるようになるべきだとか、そういうことは必要だと思います。しかし実際問題と して、この部分について速効性のある変化を期待するのは非常に難しいというのが私の 個人的な印象です。  小児科専門研修は3年間が目安になっていますから、初期研修2年と小児科専門研修 3年を合わせて5年の研修で小児科専門医の試験が受けられる。基本領域に関しては共 通のパターンだと思います。専門研修の中で今も触れられてはいるけど、充実した研修 が求められているのではないか。そこから一般の小児科医、一般の精神科医が生まれま すので、その中で子どもの心の診療に対してもう少し充実した研修を行うようにもって いくべきではないか。 ○森委員  現状では各学会が主催する専門医の養成が後期研修に当てはまると思います。小児科 の場合はわかりませんが、精神科の場合は、今回、学会の専門研修が作られた。その中 のプログラムに必ずこういうものを入れてくださいということを、ここがどういう形で 出すことが可能なのでしょうか。 ○裄V座長  小児科専門医の研修カリキュラムの到達目標のようなものが精神神経科についてもあ ると思いますが、その中で、ここで検討するような問題がどのくらい取り入れられてい て、それをどのくらいにすべきなのかということは、ここでの最終的な報告書にあって もいいのではないかと思います。現状でどのくらいかというのは、前回、前々回の発表 の中で一部触れられていたと思います。 ○山内委員  資料4−2の「子どもの心の診療医の養成の現状」のところは、先ほど座長が指摘さ れたように、9頁にある逆三角形で考えております。卒前、卒後の時系列で書かれてい ますけど、本当は逆三角形のボトムの一般小児科医・精神科医がプライマリーケアでど のように対応できるのか、その次の段階ではどのように対応できるのかという発想で考 えたほうが考えやすいように思います。  一般小児科医・精神科医が現場で子どもの問題に的確に対応できるようにするには、 今どういう問題点があって、それを解決するにはどうしたらいいのか、その次のステッ プとしてはどうなのか、最後の専門医師についてはどうなのかというふうに考えはどう かなと思って拝見しました。  6番は専門性の高い場所について問題が指摘されていますが、小児科医、精神科医に なる人たちに対して、子どもの心の診療医としての研修が十分でないということを我々 は認識しているわけです。実際に研修する場がほとんどないので、講義ですることにな ってしまう。そういう仕組みをどうするかということも提言できればいいと思いますの で、切り口を考えたほうがいいように思います。 ○裄V座長  森委員、山内委員のご意見は、これから育っていく若手の小児科医、精神科医の研修 についてですが、既に第一線で子どもたちの訴えを受けとめておられる先生方に対して も研修・講習の場を作っていくべきではないかということも今までの議論の中にあった と思います。実際に小児科医会では何年かにわたって行っていますが、そういったこと もこの部分の研修のあり方だと思います。 ○牛島委員  その点に関して考えておかねばならないのは、例えば精神保健指定医の中で思春期症 例を一つ入れなくてはいけないというので皆さん大変な苦労をしています。どういう条 件なのかというと、18歳以前に発病していた症例だったら思春期症例として認めると いうことになっています。そういうことだと、初期研修よりも後のレベルでの問題にな ってしまいます。その辺りを考えなくてはならないのですが、現実に子どもが精神医療 の中に入ってこないという問題があるような気がします。児童精神医学が精神医学その ものから遊離してしまって、そこで別になされているということをどう考えるかという ことは重要な問題だと思います。  統合失調症と躁うつ病さえ知っておけば精神科医だという時代が昔あったのですが、 このごろ2つの変化が起こってきているような気がします。1つは成人の軽度の発達障 害が精神疾患の中に入るようになってきたことです。それが発見されて治療されるよう になってきたし、皆さんの認識がだいぶ変わってきた。私の外来でも人格障害として送 られてきたかなりの部分にアスペルガー障害その他が認められます。普通の精神科医は 自分とは関係ないと思っていた疾患が現実に自分の対象になってくると、そこから振り 返って、子どもの精神医学にも親しみをもってくるようになるのではないか。そのこと によって今までの垣根がとれてくる可能性があるのではないかという気がします。  次は、不安障害とか身体表現性障害、いわゆる神経症といわれる疾患についても今ま で精神科の先生は背を向けてたのですが、このごろは薬が効くということから、不安障 害、うつ病、身体表現性疾患など、不登校、摂食障害につながる病気に対して立ち向か うようになってきてます。山内委員の努力に期待するところですが、精神医学そのもの がこれから変わってくるという視点も入れていいのではないかという気がします。 ○森委員  私は愛知県に住んでまして、児童、思春期の専門家ではないのですが、愛知県の中央 児童相談所の虐待対応精神科医というのを数年やっております。毎月、たくさんの数の 困った例がくる。子どもの問題は虐待だけではなくて、最近はお子さんが学校でうまく いかない問題まで中央児童相談所にくる。そういう場合、両親のどちらか、あるいは両 方が精神科に通院しているケースが非常に多いです。クリニックに通院していて、そこ の先生にお子さんのことも相談したらどうですかというと、まずだめなのです。子ども のことは専門じゃないからわからない。お父さんの不安障害については治療するけど、 子どもについてはよくわからないということになります。  ここ4〜5年、それをやっていて非常に困るなと思うのは、一般精神科医が児童、思 春期の問題を遠ざけてしまっていて、アプローチもしない。実際に現場では次々と問題 が起こっているわけです。例えば、母親に躁うつ病があって、そのために子どもが学校 へ行けない。母親の気分次第で学校へ行ったり行けなかったりする。とうとう子どもが 家で大暴れするようになってしまった。  母親のことを診てくれるクリニックはたくさんありますが、子どもを診てくれるとこ ろがありません。母親の様子を知っている先生が子どもを診たほうが絶対いいわけで す。そういうケースが1つ2つではなくて、ものすごくある。現場でそういう仕事をや っているとそういうケースがたくさんありますので、個別に児童、思春期のことを専門 でやるというよりは、プライマリーのところで一般の先生たちがそういうものに対して も連携がとれるようなシステムができるといい。 ○裄V座長  ただいまのご発言は資料4−1の問題にもかかわってくると思いますが、精神科医療 の中でそういう問題が出ている。私は小児科医ですので一般小児科医のことを先に考え てしまいますが、一般の精神科医の診療の中でもそういう状況があって、子どもの精神 的な医療についてレベルアップが必要だという重要な指摘だと思います。 ○保科委員  いろいろお話が出ましたけど、一番問題なのは、精神科というと日本人は行きたがら ないのです。小児科医がこれはおかしいなと思って送ろうとすると、精神科と聞いただ けでお母さんのほうが二の足を踏んでしまう。うちの子は精神病ではありませんと言わ れることが一つあります。この辺りが、これから認識を変えていただかなければいけな いところです。  私も研修にかかわりましたが、心の問題がありそうだなと思って患者の話を聞いてい る時に、親は若いドクターがいても話をしてくれます。だけど子どもは若いドクターが いると、そっちをじっと見ていて、言葉が出てこないのです。話が進まないということ がある。若い人の研修の場を作りたいと思って、若いドクターをそういう場に呼びます が、お子さんが話をしてくれない。入院したらその人の受持ちになるので若いドクター にも話してくれるのですが、研修させにくいというのがありますので、この辺りも検討 していただきたいと思います。  小児科医は子どもの発達については長い年月みていればパッとみただけでわかるので すが、精神的な問題が入ってきた場合、一般の開業医とか病院の先生方がどれだけ対応 できるかというのは非常に難しい。精神科の先生も大人ばかりみていて、これから子ど もをみろというと二の足を踏む。この垣根をいかにとっぱらうか、お互いに連携を保つ というのはどうやったらうまくいくのか、いくら考えても出てこないのです。児童精神 をやってらっしゃる奥山先生や杉山先生はおわかりなのでしょうけど、私は小児科だけ だったのでわかりにくいというのが現実です。 ○裄V座長  小児科医と精神科医の垣根を低くするという連携のことも重要ですし、一般の小児科 医が単純な症例については対応できるようにレベルアップすることが中心的な課題であ るわけです。  例を挙げてみますと、単純な運動性チックをもった小学校1年生の男の子が開業の小 児科を受診した場合、その先生が子どもと家族に対して適切なアドバイスをして、そこ で完結できてほしい。落ち着きがなくて困るということで来た子どもがADHDらしい という場合は、そこで対応できれば対応しますし、できなければ、より専門性の高いと ころに送る。ADHDに対する薬物療法を継続的に行うというレベルだったら、紹介し ないとだめだと思います。  さらに重症な神経性食欲不振症の患者の入院治療をするような場合は、高度に専門化 された病院でないとだめだし、そこで指導するのは高度専門医になる。それが逆三角形 のイメージだと思います。 ○杉山委員  先ほど裄V先生の仰ったことで気になっていることがあります。厚生労働省との話し 合いの中でボトムアップが一番中心の課題だとまとめられたのですが、この委員会その ものがそちらのほうに行くのでしょうか。 ○裄V座長  全体として逆三角形で表されておりますが、まず最初に取りかかってほしいと言われ るのはボトムのところです。順次議論を進めて、高度専門性をもった医師の養成という ところにもきますが、そちらから先にという順序ではないというように申し上げている わけです。 ○杉山委員  先生の仰るようなモデルなんだろうなと考えてたのですが、今の議論を聞いてます と、現場の先生たちの経験がないので、経験をつけるためにはコンサルテーションをや れる専門家が必要になってくるわけです。高度な専門家も必要かもしれないですが、二 次医療のレベルのところで、こんな問題は見ておいていただければいいですというアド バイスができる方がいらっしゃると違ってくると思います。  トップの専門家の存在とか研修病院の存在というのは第二次、弟一次のほうに影響を 与えてくるのですが、そこの数が非常に少ない、あるいはなかったので今のような問題 が起きていると考えますと、ボトムアップだけに焦点を当てると、短期的な講義をやっ て、ボトムアップにはならないでおしまいという形になるのではないかという懸念を覚 えるのです。  よくない連想なのですが、漁師が魚を釣った時に何センチ以下の魚は放して、何セン チ以上はとっていいというのは、生態学的には反対なのだそうです。何センチ以下の小 さな魚は食われてしまう危険性が高いけど、大きな魚はこれから先、何年も卵を産ん で、子どもをたくさん育てるわけです。その発想でいきますと、トップダウンこそが必 要なのかもしれないという感じもします。 ○裄V座長  底辺を広げるためには上のほうも十分に確保しなければいけないということはあろう かと思いますが、過去3回のここでの議論、厚生労働省からの要請から、そういう方向 でやっていきましょうと申し上げたわけです。 ○山内委員  今の議論は両方あいまっていて、どちらか一つということはないので、専門性の高い ほうもプライマリーケアもよくなれば一番良いのだろうと思います。  保科先生の話は私にも関係があるので一言申し上げますと、精神科へ行くことに対す る偏見は昔からあったわけで、それをどうするかということが、我々がずっと抱えてき た問題です。現状は、一般の人々は精神科に対してかなり敷居が低くなって、「行って みたら」というと、「そうですか」といって相談に来るようになっています。しかし医 者のほうに偏見があって、その中でも教授が一番悪い。そういうところが問題ではない かと思います。精神科も変わらなくてはいけませんが、「そういう問題を抱えてつらい 思いをしているのだったら専門の先生に聞いてみたら」といっていただければ、かなり よくなるのではないかと思っています。  もう1点は、小児科の先生は18,000人ということですし、精神科医も学会員は 1万を超えていますが、その人たちがみんな同じようにというのは無理なので、学会員 の年齢も違いますし受けてきた教育も違いますので、ここで精神科医とか小児科医とい ってくくらないほうがいいのではないかと思います。一般の診療場面で、来た子どもさ んをどのように判断したらいいか、あるいはどこかにリファーして送ってお願いしたほ うがいいかとか、それを受けて立つような専門性のある方を各地区にいてもらうにはど うしたらいいのかとか、緩やかに考えていただくほうがいいのではないかと思っていま すので、よろしくお願いします。 ○神山先生  今の山内先生のお話は私も共感できて、小児科医、精神科医という感じではなくて、 目の前に来た患者さんを十分に把握できればいいなと思います。心の問題が大きくクロ ーズアップされてきますと、心の問題に過度に反応する小児科医もいるのかなという気 はします。現場では「大丈夫だよ」と小児科医がいって、よくなっているケースもある ので、小児科医も自信をもってやってもいいのかなと思いました。  先ほど杉山先生が仰った、コンサルトできる医者の存在がすごく大事だと思います。 すぐリファーできるサブスペシャリストというのは逆三角形の真ん中の「基礎研修を終 了した医師」のところですが、この部分の医師を供給することはすぐできるのかなと思 います。専門家の養成とかボトムアップは時間がかかるかと思いますので、その部分に 焦点を当ててやるのがいいのかなと思います。  資料4−2のVの2に小児神経学会のことを書いていただいているのですが、専門医 が千人近くおります。全部が全部、心の診療医かというと、そうでないところもあるの で、我々の学会では発達障害を診られるようにという形で、300人弱のドクターの名 前をあげているのですが、そういうドクターとか小児心身症学会の先生方とか、小児科 医会の心の相談員とか、そういう先生方がサブスペシャリティのところに早い段階でか かわれるのかなと思っています。 ○牛島委員  一般小児科・精神科の医師のボトムアップと専門医というのは裏と表の関係にあるよ うな気がします。この検討会は専門医をどういう形にもっていこうとしているかという のを考えておいたほうがいいと思います。ここでは小児精神医学となってますけど、日 本児童青年精神医学会には小児精神医学に対して抵抗があります。児童精神医学であっ て小児精神医学ではない。自分たちの持っている特殊なものに対する誇りがあって、普 通のものと一緒にされては困るという意識が先輩の中には強いのです。  それだけに、児童青年精神学会が作った輪郭を、ただ単に専門医とするのかと問題が あります。小児科でも心の問題に造詣の深い人たちが少なくないですから、そういう人 たちも入れるような専門医にするというのも考えておいたほうがいいのではないかとい う気がします。それができると、その次の真ん中のところができるし、上のほうもでき ていくのではないかと思います。  これは逆三角形になってますが、下のほうになるほど難しい患者を扱うことになりま す。そうすると逆三角形のボトムの部分にコメディカルのスタッフがたくさん必要にな ります。実際は三角形じゃなくて四角形です。医者の数が減っただけコメディカルが埋 めるのだし、施設その他が埋めるのです。どんなに専門的な知識と技能を持っていて も、一人でクリニックをやって、どんな難しい患者でも扱うことはできませんから、専 門的なものを扱うのはナショナルセンターとか、6番目に書いてあるところに偏ってく るのです。本当に難しい患者を扱えるのは医者なのか施設なのかということになりま す。 ○裄V座長  周辺の問題として病床のこととかコメディカルのことは重要な課題ですが、ここでフ ォオーカスを当てているのは医師です。逆三角形の先端の専門の医師というのは、児童 青年精神医学会の専門医だけではないと私は思ってますし、そういうふうに申し上げて います。日本の医療の中で専門医といった場合は、学会の認定した専門医制度と裏腹に 使われていますが、ここで専門医という言葉を使った時に、関係している学会が合同で 新しい専門医制度を作るかどうかというのは違った議論ですし、時間的にも簡単なこと ではない。この検討会として方向性を示すことはあるかもしれませんが、具体的な検討 は無理ではないかと私は思っています。 ○牛島委員  児童青年精神医学会の専門医制度で認定した人と、日本小児精神神経学会で認定した 専門医と、この2つをもってこの検討会の専門医とするというのはできるのかという と、そう簡単にはできません。そこの難しさはあるような気がします。 ○西田委員  子どもの心の専門医に要請されていることは、いろんな問題を持っている子どもが問 題を改善して、それまでの生活が保障されないといかんと思います。そうすると必ず子 どもの育ちを保障するという視点を持った専門医がいないといけないと思います。子ど もの医療ができるシステムを持ったところがあって、そこを利用しながら、そういう知 識を持った医師が実際の臨床活動ができないと無理だと思います。  ある県に行くと、何もないところがあります。ある県に行くとかろうじて1つあっ て、そこが三次医療としての機能を備えていて、二次的な専門医、一次的な医療機関の 人たちが利用できる。利用することでお互いの知識を交換しながら、何ができて何がで きないかというのが自分たちもわかってくる。いくらスクリーニングをかけて問題とわ かっていても、その問題を解決する方法がなければ、結局、何もなくて終わってしま う。今の日本で、問題を持った子どもたちを引き受けるところはほとんどありません。  総合病院の中で、入院してもきちっと教育も受けられ、治療も受けられ、育ちも保障 されるところがあれば、そこを利用しながら専門医がどんどん養成されていくと思いま すけど、ほとんどありません。そうすると知識だけになります。 ○裄V座長  理想的な姿としては、この検討会での議論を経て、西田委員が言われたような形が報 告書として書かれなければいけないと思いますが、それは中長期的なビジョンであっ て、その前に、具体的にそういうシステムを作り上げなければいけないのはボトムのと ころだということを申し上げているわけです。 ○西田委員  ボトムのところを上げるためには、そういう治療もあるのだとわかるところが身近に ないと、ボトムにならないような気がします。逆三角形の底辺にすごい加重がかかって いて、あそこがつぶれてしまうような感じを受けました。問題ばかりあげてもらって、 専門医のところに来た時にはなくなってしまう。 ○裄V座長  そういう訴えを持った子どもたちが社会にあふれているわけです。現場の小児科医に しても精神科のドクターにしても受けとめているわけですが、そこでの対応をもう少し レベルアップしなくてはいけない。トリアージするにしても、もう少し精度を上げなけ ればいけない。そういうことから始めるべきではないかということを申し上げているわ けです。 ○神山先生  社会にそういう子どもたちがあふれているとか育ちということが出ましたので発言さ せていただきますが、この問題は医療だけの問題ではないと思います。骨太の政策で社 会保障費を減らそうという話がありますが、子どもに対するお金を将来の投資という形 で別枠で考えるような根本的な提言ができたらいいなと思いました。 ○南委員  社会にあふれている困っている方たちが医療に対して医療的な解決を求めて来るわけ で、そこで何をしたらいいかということが課題だと思うのです。お子さんですから小児 科医のところに来るケースが多いと思いますが、そこでの受け皿が必要なのは当然のこ とながら、そこから先が保障されなければ、そこでいくら拾えても意味がないわけで す。どちらかという問題ではなくて、トータルに保障されなければ結局は意味がないこ とになります。  逆三角形の一番下のところが今の日本の現状では、西田先生が仰ったことが現実だろ うと思いますから、それを受けとめるところが最後はないとすると、それは非常に大き な問題で、そこを保障しながら、なおかつ幅広く受けとめること以外、困っている人を 解決する方法がないということを強く提示する必要があると思います。 ○星加委員  ご意見はよくわかります。初期診療を担当する医師にとって送り先がない状態で診療 するというのはとてもつらいと思います。私の場合は距離的に一番近い都立梅が丘病院 にお願いすることが多いのですが、病床はいっぱいなはずなのに、やりくりしながら、 本当に大変だったら早めに診てくれるわけです。私どもの大学から研修のために人が出 ているのでよくわかるのですが、あの状態でなんとかぎりぎりやっているというのは、 大変なことだと思います。このあとは府中に移転して、不採算性のためにベッド数を減 らすことになっているという話を聞きました。  下のほうを育てるのはいいのですが、上のほうを切ってしまっては送り先がなくなっ てしまいます。初期の診療を担当する小児科医としては気になるところです。そのあた りも含めてお考えいただきたいと思います。 ○裄V座長  切ってしまうというのは論外の話だと思いますよ。 ○星加委員  梅ヶ丘は縮小という予定で、平成19年が少し延びて21年になったのでしょうか。 それは決定したことであると聞いておりましたので、気になりました。 ○裄V座長  それでは、先に進みたいと思います。資料4−3には周辺の課題ということで、診療 報酬の問題、病棟基準の問題、精神保健福祉の問題、医療システムの問題、専門医資格 の問題、ポスト(就職先)の問題、コメディカルの問題が挙げられています。これまで の議論の過程で委員の先生方からご指摘のあった課題について事務局で類型化したもの です。この検討会の中心課題ではありませんが、養成を行う上で考慮することが求めら れているものです。ご意見があればお願いいたします。 ○冨田委員  診療報酬の問題の1の(3)の「投薬が少ない」というのは非常に現状にそぐわない書 き方ではないかと思います。投薬すれば儲かるみたいな、ふた昔前の医療に対する一般 の人の感覚で、今やこの分野で薬云々が診療報酬とは全然関係ないと思います。 ○西田委員  実際に児童精神科で入院にかかわっている者として今まで思っていたのは、親御さん が同意しないと治療ができないのです。子どもの治療を受ける権利からするとおかしい です。最近、三重県と厚生労働省が協議しまして、第1種自閉症施設という名目があり ますので、児童福祉法の入院も可能となりました。児童福祉法が子どもの人権を擁護す るという立場から精神科への入院もできるということで、医療保護入院という手続きを とらなくてもいいという判断を出したのです。そんなことできるのかと思ったいたので すが、読み込んでいくと、子どもの治療を受ける権利を守るというのは、児童福祉法が もっと前に出てくれば精神科の治療も受けられる。  小児科は子どもが治療を受けることができます。児童福祉法に絡むと、親御さんの同 意がなくても道筋があるわけです。心の問題になるとそれができないというのはおかし いですね。しかも人格の形成上で、将来、大人としての自立を阻むような問題が起こる わけです。そこがもう一歩前進すれば、精神保健福祉法の問題はクリアできる。児童福 祉法のもとに子どもがいろんな権利を擁護されながら精神科の治療が受けられる。  そうすると医療費の問題も少しクリアします。虐待の場合だったら、親御さんが医療 費を払わなくてもいいような措置もできます。今度、児童福祉法の改正があって、 第28条の申請をすると2年の有期限での検討ができますので、昔より家庭裁判所が親 権についての判断をしやすいと思います。その間に後進国的な司法の関与がもっとでき て、子どもの権利が守られながら、親から簡単に引き離すのではなくて、親との再統合 も含めた治療も見据えて、いろいろな保障ができていく。児童福祉法が絡めば、子ども の育つ権利を保障するようなサービスとか、医療だけではできないこともできてきま す。その辺りの一歩ではないかと思います。 ○裄V座長  今の西田委員からのご発言に関連したことを前回か前々回か、奥山委員もおっしゃっ てましたよね。 ○奥山委員  先週、厚生労働省の雇用均等・児童家庭局から児童相談所の所長さんたちにお話があ ったと伺っておりますが、西田先生が仰ったように、精神病床に児童福祉法でいう一時 保護委託ができるというのが厚生労働省の統一した見解として出されたということで す。一時保護委託ですから、入院した患者さんは児童福祉法に基づくわけです。拘束と か、個室にかぎをかけるというのは児童福祉法では許されてないのですが、どうしても 仕方がない時に全体としてかぎがかかっているところに入れるというのは不可能ではな いようです。  精神保健福祉法が子どものことは考えなくていいという問題ではないと思いますし、 本道として精神保健福祉法は子どもの権利についてきちんと組み込んでいってほしいと いうのは変わらないテーマではないかと思っています。  また、西田先生が仰ったように、一時保護や施設入所中の子どもの入院に関しては、 小児科としては治療をしていますが、手術の時の同意をどうするかというのはずっと横 たわっている大きなテーマですし、まだまだ解決しなくてはならない点はたくさんある と思います。 ○西田委員  一時保護委託というのはごまかしだと思います。受ける側からすると、すごく受けに くいのです。1日千いくらでは、受ける側にとっては採算性が落ちるので、きっと受け ないと思います。うちが受ける時は、第28条を必ず出したケースに限ったんですよ。 第28条を出しておけば、そのうちに審判が出て、その時には児童相談所長に親権の代 理をする人になっていただいて、精神保健福祉法をカバーできると考えております。児 童の権利を守るような、しかも親御さんが子どもの生命にかかわるような医療行為を拒 否している場合でもきちんととできるようなシステムができるといいと思います。それ の責任を取るような人がいたらいい。 ○裄V座長  周辺の課題の中に精神保健福祉法の問題も入ってくるのですが、そこにはあまりこだ わらないようにしたいと思います。 ○杉山委員  あいち小児センターでは小児科病棟で子どもの心の入院治療をやっているのですが、 閉鎖ユニットが必要です。精神保健法に準じた形の院内倫理規程を作りまして、拘束に 係る全部の文書を作り直して、院内の倫理委員会を通したのですが、そういうことをや らないと子どもの権利を守ることがうまくできない。  もう一つは、採算性の問題が気になっていますが、2年おきの見直しが今年度です。 今年の夏か秋の段階で見直されていないと、その次の見直しはさらに2年後になるわけ です。今の日本の非常に苦しい医療の状況ですと、何かを削らないと新しいものは認め られないようなのですが、お年寄りを削って子どもにつけろという議論が通用するかど うか。そういうことを考えると、この問題に関しては厚生労働省の見解を早めに出すこ とはできないのでしょうか。 ○裄V座長  「健やか親子21」にしても「少子化社会対策大綱」にしても、今までの厚生労働省 の文書にはすべて小児医療は不採算だということは書いてありますよ。この検討会にし ても、そのことが検討会の主題と切り離せない重要なことだということになれば、報告 書に書くことはできるわけです。書いたからといって、すぐ診療報酬に反映されるかど うかはわかりません。 ○伯井委員  不採算の問題はずっと言われてきております。厚生労働省の一部局が少し予算を取っ てきて、よそを減らしてということでは解決しない、政治マターなんですね。いろいろ な事件が起こったり、いろいろな問題があるということは誰もが認識しているわけです から、この検討会の意向をいかに政治マターにして大きなものを主張するかということ にかかっていると思います。  いろんな問題を検討されておりますけど、ハードとソフトという面から考えますと、 大きなところからいかないと、専門家をすぐ養成することはできません。現場をどうす るかという問題は専門家でなくても、かかりつけ医とか一般医が対応していかざるを得 ない。そのためには何をするか。そういうことを含めて大きな枠組みからいかないと、 あまり細かいことでいくと混乱してしまうかなという気がします。最終的には、せっか くこういう検討会が設置されたのですから、政治マターにしていかないと、机上の空論 になってしまって、いろいろと答申を出しても、そのまま机の上に積んでおかれること になりかねない。大きなところから政治マターにしていくことを考えたほうがいいと思 います。 2.専門の医師の養成方法について ○裄V座長  それでは、先に進みたいと思います。次に資料4−4は「子どもの心の診療医の養成 方法に関する検討課題」ですが、これが中心的な課題になります。  1番目、教育・研修の対象は、卒前研修、卒後研修とあります。  2番目、教育・研修内容の概要として、卒前教育に関してはこのようなこと。卒後研 修に関しては一般小児科医・精神科医というボトムの部分、心の診療短期研修終了医に 分けて書いてあります。  3番目、医師養成体制に関する検討目標が整理されています。  これについて、残された時間で議論をお願いしたいと思います。  GIO、SBOという言葉が出てきます。教育に関係している者にとってはなじみが 深いので、おわかりかと思いますが、あまり聞いたことがない言葉だと仰る方がおりま したら、あらかじめ説明しておきたいと思います。  「GIO」は general instructive objectives 、一般教育目標と訳されています。  「SBO」は specified behavioral objectives 、個別行動目標ですが、教育の計 画などを立てる時に必ず使う言葉なので、それを援用したのだと思います。教育につい て目標、目的、方法などを検討する場合、まず一般的な目標を書いて、それを実現する ための個別の行動目標をいくつか挙げるという一般的な手法がありますので、それに基 づいて事務局とサポートチームがまとめられたのだと思います。 ○森委員  IIの1の卒前教育の(1)医学部生のところのGIOとSBOの意味がよくわからない のですが、「子どもの心の問題についての配慮する必要性を認識している」という日本 語は正しいのでしょうか。 ○裄V座長  ミスプリントです。「子どもの心の問題について配慮する必要性を認識している」、 このほうがまだわかりやすいかもしれません。 ○森委員  一般的にSBOというのはスペシファイドした行動目標です。行動目標を全部重ね合 わせるとGIOが見えてくるものなのですが、GIOに対するSBOが「子どもの心の 問題の代表的なものの名称と対応の基本を述べることができる」、これを述べることが できると、配慮する必要性を認識したことになるのか。 ○裄V座長  学部の教育のレベルはこの程度だと考えたのだろうと思います。 ○森委員  そういうことではなくて、SBOは一般的に1つではないのでSBOsになってい て、そのSBOsを見ると最初の目標がわかってくるというものですから、もう少し細 かく分けていただいたほうがいいのではないかという意味です。 ○裄V座長  わかりました。GIOが1つあって、それにSBOが3つ4つ羅列されているという のが普通のパターンですね。医学部の卒前教育、卒後の初期臨床研修についての議論は 当検討会としては後回しにしたいと思います。  専門研修の中で一般小児科医・精神科医に対してどういう教育をしていくかというと ころから始めましょう。これは全くのたたき台的な記述だと思います。 ○奥山委員  大きな枠組みについてご検討いただきたいと思うのは、一番最初の時点で三角形を作 る時に議論があったのですが、先ほど神山先生から小児科がコンサルトできる医師、と いうお話も出てきたので、枠組みとして、一次、二次、三次という分け方をしたほうが いいものか、それとも一般小児科・精神科と専門医という形で大きく2つにすべきなの か。 ○裄V座長  これは3つになっているのではないですか。 ○奥山委員  実は最初は4つ考えていたこともあります。それを3つにしたのは、議論をして、外 来で週に1回、心の専門の外来を開いてます、というような二次医療をなさっている先 生方も専門医に入れてよいのではないか、という意見があって、これは成り立っており ます。これでよいのかどうか。全体を網羅し、難治性のものも診られる専門医と、二次 的な病院を分けたほうがいいかどうかをご検討いただいた方がよいかもしれません。い かがでしょうか。 ○裄V座長  堂々めぐりの議論はしたくないですけど、何かご意見はありますか。 ○吉村委員  20頁に病名がありますね。小児科の先生でもすべて診られるとか、精神科の先生は これだけが診られるとか、色分けあるといいと思います。最初に座長が仰ったのは、プ ライマリーのところは、小児科の先生も成人の精神科の先生もトリアージと簡単なもの はそこで対処できるようにする。二次のところは、私はこれは深く診ますよとか、全体 を診る医者ですよとか、そういう意味ですよね。三次のところは1つなのか。ナショナ ルセンターみたいになっていて、小児科の先生もいるし精神科の先生もいるし、すべて に対応できる入院の重症な難治性の治療をするところが三次という区分けである。とい うことは、二次のところはいろいろな色分けがあると思ったのですけど。 ○裄V座長  20頁にICD−10に準拠した病名が並べられていますけど、おのずから色分けが あると思います。それを整理してみることもできないことはないと思います。 ○吉村委員  一番深いところは、この中のすべてのものの重症なものなのか、あるいは何か特殊な 病気を入院治療するのか。 ○裄V座長  幅の広い病名であっても、その中の重症度の高いものと、この病名であればというも のと両方あると思います。 ○吉村委員  どこかに施設が1つあればよろしいようなものは一番深いところと考えてよろしいの ですか。真ん中のところはいろんなジャンルの方々がおられるということになりましょ うか。 ○奥山委員  二次医療にしても三次医療にしてもいろいろだと思います。施設によって診られるも のは限られますけど、自分の限界を考えながらコミュニケーションをとって、住み分け ていくことが必要だと思います。二次の中には、いろいろな得意分野の先生方がおられ ると思います。一般的に考えると、精神科の先生方は思春期までは診ていただけること が多いのですが、幼児期はなかなか診ていただけない傾向があります。小児科の先生方 は行動の問題などの見える問題を「こういうふうに対処したらいいよ」とお母さんにお 話しするような対処は得意ですが、病理性の深い問題に関しては対処しづらい傾向があ ります。一般的に小児科と精神科で考えるとそんな区分けかなと思います。 ○吉村委員  小児科の先生方の中で個々の専門医をつくっていかなくてはいけないし、精神科の先 生方の中で小児に特化した専門医をつくっていく。オーバーラップしているところがあ るというイメージになるのですか。 ○裄V座長  専門性の高い部分に関してはね。 ○吉村委員  一番深いところは1カ所じゃなくて、細かく分かれていくのですか。 ○杉山委員  子どもの心の専門家の私のイメージとしては、発達障害も情緒障害も両方ともやれる ということだと思います。三次医療で子どもの心のニードの高い部分としては、情緒的 な問題も念頭に置きながら発達の問題も両方ができないといけないと思います。二次医 療でも情緒的な問題も発達の問題もそこそこやれないとまずいのではないかと思いま す。発達障害はこれだけやれますというのでは子どもの心の専門家としては不十分なの かなという感じがしています。 ○山内委員  資料4−4は研修のステップで分けているようなところがありますよね。これまで議 論があったように、一次、二次、三次というふうにして、最初に患者さんが来た時にど ういうことができなければいけないかという意味のGIOを作って、それについてのS BOを並べる。二次の人はどの程度のことまでできなければいけないのか。一次、二 次、三次で分けて、研修もこの程度のことはすべきであるというようにしたほうがイメ ージがわきやすいように思われますが、いかがでしょうか。 ○奥山委員  教育の流れというのは全体の枠組みが決まっているわけですが、一次、二次、三次で 何をするかと考えたほうがいいでしょうか。 ○山内委員  先ほどの吉村委員の話とも結びつくわけで、三次のところではこういうことができな いと困りますよ、二次のところではこの程度までできればいい、一次については、卒前 教育ではこの程度のことしかしてないし、卒後の小児科、精神科の研修でもこの程度し てしてないので、こういうふうにしないといけないということが明確化されるのではな いかと思います。 ○裄V座長  貴重なご意見で、皆さんの賛同が得られれば、そういった観点から組み直すことはで きると思います。 ○神山先生  先ほど吉村先生から三次の具体的なイメージとしてナショナルセンターとおっしゃい ましたけど、診療する立場としては各都道府県に1つぐらいはそういうのがないと診療 できないと思うので、そのぐらいのところを目指していただけたらと思います。三次の ところではどんなに難しいことでも断れないわけです。但し、二次のところで全部でき る医者の数がそろうかというと、それは理想ではありますが、現実には難しいのかなと いう気がします。僕たちの中でも行為障害とか統合失調症は得意じゃないし、そういう のは無理だと思います。せっかく一次の先生から紹介していただいても素通りして三次 の先生にお願いしなければならない場面もあるとは思うのですが、三次の先生方にかか る負担を多少とも減らせるようにしたらいいのかなと思います。  二次のところに心の診療短期研修と書いてありますけど、短期研修をしたら情緒障害 を全部診られるのかというと、これまた相当難しいのではないかという気もします。 ○裄V座長  短期と書いてありますけど、それでいいのか。2年は必要ないけど1年はほしいと か、そういう議論が出ていましたので、ここで言っている短期というのはどういうもの かというのを整理しなくてはいけない。言葉を変えてもいいと思います。 ○神山先生  小児神経学のほうでは1年か2年、ナショナルセンターで勉強しますと、地域に帰る と専門家であって、ここで言う三次になるわけです。そんなイメージが重なっているの で、これとの違和感を覚えました。 ○裄V座長  ナショナルセンターでレジデント研修を終了した人は専門家だということですね。 ○冨田委員  20頁はICD−10に準拠とありますけど、ICD−10では心身症という名前は 消えてますし、身体表現性障害というと少し子どもの場合はすっきりしないと思いま す。子どもの場合は身体症状が重要になりますので、心身症的なものも語句の中に入れ ていただきたいと思います。また、日本の場合は発達障害でも情緒問題でも不登校とい う形で出てくるものが多く、不登校の場合は学校との関連も大きいので、是非、「心身 症」と「不登校」の2つを入れていただけたらと思います。 3.その他 ○裄V座長  この点は当検討会として中心的な課題ですので、次回も議論が続きますが、今日はた たき台をお示ししたということです。今日は活発なご意見をいただきました。資料4− 1から4−4までありますが、先生方のご意見を盛り込んで、次回までに事務局に修正 していただいて、次回はさらに具体的な養成方法の議論を中心に進めていきたいと思い ます。  これからの議論の進め方について事務局から説明をお願いします。 ○事務局/母子保健課長  活発なご議論をいただきましてありがとうございました。この会議が始まる前に座長 と打ち合わせをさせていただき、サポートチームの奥山先生などと話をさせていただい て、資料4がかなり形らしいものになったので、頑張れば、秋ぐらいにはそれなりの形 ができあがるのかなと思っておりました。そうしますと、来年度以降に走りながらでも モデル的な研修が実施できるかなと思っておりました。  今日のご議論を聞いておりますと、資料4は量的にも、たたき台としてはかなりのも のが出せたのではないかと思いますが、細かいところになりますと、例えば小児科と精 神科で共通の項目があり得るのかとか、小児科サイドの方はこの程度になるのかとか、 年齢をどうするかとか、対象疾患を絞り込むのかとか、いくつか大きな問題が出てきま した。  次回以降のご議論の程度にもよるのですが、希望的に申しますと、あまり寒くならな い秋の段階で、中間的なものをおまとめいただくような方向になればいいなと思ってお ります。今日は後半、貴重なご意見を頂戴しまして、皆さん方の中で意見が集約できる ことが重要ですので、焦らずにやりたいと思います。いずれにしましても寒くならない 秋口にはモデル的な研修のあり方に資するような中間まとめ的なものがご提出いただけ ればと思っております。以上です。 ○裄V座長  今日の活発な議論を受けて中間まとめを作るにしても、そうあせらずにいきましょう という課長さんからのお申し出がありましたので、議論を進めさせていただきたいと思 います。しかし議論が堂々めぐりしたくありませんし、散漫に広がっていかないほうが よろしいかなと思います。  資料5で中間報告と最終報告に係る作業日程、資料6で中間報告のための検討内容の 案が出ていますが、これについては目を通していただくということでよろしいでしょう か。 ○吉村委員  20頁と21頁の疾患の中で、これは精神科の先生が絶対に診るというのがあった ら、おっしゃっていただけるとありがたいのですが。 ○裄V座長  F2の統合失調症というのは今までの小児科の臨床の中では難しいと思いますけど、 ほかにもいくつかあると思います。 ○奥山委員  一般小児科では難しいかもしれませんが、二次では小さいお子さんは診ざるを得ない こともあります。ここは絶対に精神科でなくては診られないというのではなくて、程度 によると思います。薬物療法を少し行っている低年齢のお子さんが小児科に逆に紹介さ れることもあります。程度によるのではないかと思います。 ○裄V座長  先ほど吉村委員からのご意見に対して、病気によっては専門的な知識、経験が必要な ものがありますし、同じ病名でも重症度によってお願いするものもあるという言い方を しましたけど、そういうふうには必ずしも分けられないということですか。 ○奥山委員  精神科の先生がご覧になるのが多いだろうなと思うのは、F2とかF1の部分です。 しかし、精神作用物質といっても薬のステロイドといった問題だったら小児科でも扱い ますので、全てが精神科とは言えないのですが…。 ○吉村委員  どの程度の専門医を育てるかというのは、いま先生が仰ったように、その辺りは全部 診られるくらいの専門医を育てたいということですか。 ○奥山委員  15歳で発症して統合失調症だったら成人の先生方にするお願いすることもできると 思います。低年齢に関しては、ある程度のものは全て診られるということになると思い ます。 ○杉山委員  一つの問題はキャリーオーバーの問題です。例えば広汎性発達障害という診断ですと 生涯にわたる問題になるものですから、20、30、40になった方を小児科の先生が 診てくださるのかどうかということがあります。統合失調症にしても若年の問題という のは薬の効き方にしても非特異的な問題があって、一般の精神科のドクターのくせでバ ーンと出すと、それでおしまいということもあって、ずいぶん違う問題があると思いま す。そういう意味で、どのレベルもある程度やれるというのが専門医の条件になるので はないかと思います。 ○吉村委員  一つの専門医をつくっていこうというように考えてよろしいんですか。 ○裄V座長  専門性の高い部分に関してはそうですけど、その中でもいろいろあって、全く一つと いうものではないと思います。 ○奥山委員  外科が専門の先生でも、こっちの先生はこれが得意、こっちの先生はこれが得意とい うのはあると思います。しかし、それは、全員が最低限の知識や技術をある程度は修得 する必要があるという前提です。全員が知るべき基礎的知識や技術の上に、私は発達障 害が得意ですよとか、私は統合失調症が得意ですよというものが出てくるのではないか と思います。 ○裄V座長  次回以降、資料4、5、6の内容を中心に進めていきたいと思います。  時間になりましたが、事務局から何かございますか。 ○事務局/母子保健課長補佐  最後に事務的なご連絡をさせていただきます。次回、第5回目の検討会につきまして は、委員の先生方の日程調整をさせていただきました結果、7月27日、水曜日の16 時から18時を予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。会場が決ま りましたらご案内させていただきます。 ○杉山委員  オレンジの紙を配らせていただきましたが、10月14、15日に第94回日本小児 精神神経学会が開催されます。テーマとして「子どもの心の専門家」の問題を取り上げ ます。ここでシンポジウムを行う予定で、初期研修の方、真ん中ぐらいの方、高度の専 門医の方をシンポジストとして、自分はどんな研修を理想と考えているのかということ を出してみたいと思います。  指定討論として、厚生労働省の担当の方も、医学部長会からもどなたかにご参加いた だければと思います。小児科の先生を中心に300〜400人の方がいつも集まってい ますが、名古屋ですともっと多いのではないかと思います。この問題に関心のある方が 多く、非常に熱気があることが、おいでいただくとおわかりいただけると思います。ぜ ひよろしくお願いいたします。 4.閉会 ○裄V座長  それでは、以上をもちまして第4回の検討会を閉会とさせていただきます。ご協力ど うもありがとうございました。                   ―終了―                    照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課                    電話 :(代表)03−5253−1111                             斎藤(内線:7933)                             飯野(内線:7938)