05/06/29 第23回今後の労働契約法制の在り方に関する研究会議事録         第23回今後の労働契約法制の在り方に関する研究会                      日時 平成17年6月29日(水)                         18:00〜20:00                      場所 厚生労働省7階専用第15会議室 ○菅野座長  時間になりましたので、ただいまから第23回「今後の労働契約法制の在り方に関する 研究会」を開催いたします。本日は、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうご ざいます。本日は、西村先生、内田先生、土田先生、山川先生から御欠席の連絡をいた だいております。  まず、本日の資料の構成等について、事務局から御説明をお願いします。 ○労働基準局監督課調査官(秋山)  本日のお手元の資料ですが、大きく分けて資料1から3までが、前回御議論いただき ました「労働関係の展開」の続きに関する資料です。資料2は、前回の御議論を踏まえ て一部修正しておりまして、のちほど御説明いたします。  続きまして、資料4から7までが、今回の「労働関係の展開」の議論が終わりました ら、次に御議論いただきたいと考えております「労働関係の終了」についての資料で す。資料6−1は、労働政策研究・研修機構の行った実態調査の抜粋で、資料6−2 は、本年6月に東京商工会議所が発表されました労働政策に関するアンケート調査のう ち、労働契約法制に関係する部分、解雇の関係ですが、それの抜粋となっております。  資料8は、5月20日から一か月間実施しました中間取りまとめに対する意見募集に対 して、寄せられた意見を取りまとめたもので、この次に概要を御説明いたします。資料 9は、毎回提出しております中間取りまとめについての検討すべき論点に関する資料で す。以上です。 ○菅野座長  まず、中間取りまとめに対する意見募集に対して寄せられた意見の概要について、事 務局から説明をお願いいたします。 ○労働基準局監督課長(苧谷)  資料8をご覧ください。前々回の研究会におきまして、中間取りまとめに対する意見 募集を行うことにつき、御了承をいただいたところですが、翌日5月20日から6月20日 までの一か月間にわたって意見募集を実施しました。その結果、557件の意見が寄せら れました。内訳は、資料8の表紙のようになっております。寄せられた意見の概要は、 各項目ごとに整理して、別紙にまとめております。1頁から順に、労使の代表的な団体 の意見を御紹介します。  まず、労働契約法制全体の意見に関してです。1から11頁までが、「全体」の意見の 関係です。1頁の最初のポツは、連合のほうから提出された意見です。簡単に御説明し ますと「中間取りまとめ」は、今後の議論のための中間的論点整理のために作られたも のではなく、最終報告のたたき台として作成されたものと言わざるを得ない。各方面か らの意見を求め、議論を深めるための論点整理の文書の作成を求める。あるいは、労働 契約法では、労使自治に委ねるだけでは妥当ではなく、労使の非対等性を補強し、実質 的に対等に近づけるような仕組みが必要である。労働契約法を制定するにあたっては、 必要なルールは明確に法律化して、労使の行為規範となり、紛争発生の予防に資するも のにしなければならない。「中間取りまとめ」では指針やガイドラインを作ることに重 点が置かれているが、これらは労使の行為規範になり得ることがあったとしても、裁判 官には一顧だにされず、重要なルールは法律化が必要である。権利義務の「要件」と 「効果」をはっきりさせ、立証責任の在り方についても考察しなければならない。労使 の非対等性にかんがみれば、立証責任は基本的に使用者が負うものとすべきである。も し労働契約法に任意規定を多くすれば、結局は使用者が提案する労働条件等に合意せざ るを得ない労働者にとって、労働契約法の意義は薄らぐ。労働契約法の基本は、労使の 意思に関わりなく適用される強行規定とすべきである、となっております。  次に2番目のポツですが、これは日本経団連の意見です。労働契約法は契約自由の原 則を最大限尊重し、労使の自主的な労働条件の決定を補完する法律であるべきである。 その性質は任意規定であるべきで、実体規制をすべきではない。「中間取りまとめ」に ある試用期間の上限の規制、兼業禁止規定や合意を無効とすることには反対する。「中 間取りまとめ」では、懲戒処分、有期雇用契約、採用内定の留保解約事由、試用期間、 転籍、競業避止、秘密保持などについて書面化を要求し、書面で明らかにされていなけ れば無効など、使用者に不利に取り扱われる。これらの強行法規による規制は、かえっ て労使紛争を誘発するおそれがあるため反対である。契約法であるから、使用者側の義 務に偏することなく、労使双方の義務を規定すべきである。労働契約法はわかりやすい シンプルなものであるべきであり、就業規則の不利益変更の考慮要素の指針、整理解雇 の指針については不要である。また、契約法の指針であることから、「使用者が講ずべ き」とするような行政指導的なものを定めることに反対である、などとなっておりま す。  次に「労働契約法制の必要性」の関係ですが、11頁をお開きください。最初のポツは 連合の意見です。労働契約に関する紛争の増加の大きな要因は、労働契約に関するルー ルの未整備にあり、労働契約の成立から展開、終了まで、包括的に労使の権利義務を規 定する労働契約法が必要である、となっております。  一方、12頁に入って二つ目のポツですが、これは日本商工会議所からの意見です。就 業形態や就業意識の多様化により、労働者ごとに個別に労働条件が決定・変更される場 合が増え、それに伴う紛争も増えている状況を考えれば、むしろ個別事案にあったケー スバイケースの解決方法によらざるを得ず、労働契約で定めるべき基本的な項目を除け ば、統一的・画一的なルールの法制化はなじまない。あくまでも労使自治の原則と契約 自由の原則を最大限に尊重すべきであり、個別労使紛争の迅速な解決、未然防止、労使 双方にとっての行為規範となる指針もしくはガイドラインレベルにとどめるべきであ る、とされております。  続きまして「労働契約法制の履行確保措置」関係です。16ページの最初のポツです が、連合の意見です。「中間取りまとめ」では、労働者への情報提供や手続規定を重視 する傾向が見受けられるが、これらの充実だけでは労働者の権利実現が図られない。ま た、労働契約法で一切の罰則が排除されるべきなのかは、十分に検討すべきである。例 えば商法では、手続規定に違反した場合の罰則が発達しており、履行確保のための罰則 の有用性を示している、とされております。  「労働契約法制の対象とする者の範囲」の関係につきまして、18頁の最初のポツで す。連合の意見です。請負、委託といった契約だが、実際は労働者と変わらない働き方 をしている人が増えている問題だけではなく、労働者ではないが労働者に近い働き方を している人が増えているという問題もある。こういった人たちにも、何らかの保護が与 えられるような法制度が現在求められている、とされています。その下の二つ目のポツ は日本経団連の意見で、明確性を図るべきであるので、基本的には現行労働基準法が定 める労働者、使用者とすべきである、とされています。  「労使委員会制度」関係ですが、20頁の最初のポツです。これは連合の意見で、「中 間取りまとめ」における労使委員会制度は、労働組合との性質や役割の違いが不明確、 労使委員会の民主性確保のための方策が示されていないという点で問題である。労働組 合と違って、ストライキ権や不当労働行為制度がない労使委員会が、労働条件等につい て使用者と対等に協議・交渉することは到底不可能である。また、「中間取りまとめ」 では、労使委員会の決議と労働協約の関係が一切論じられていない。両者が重複した場 合にも、労働協約が優先とするべきである。労使委員会の民主性確保のためには、少な くとも改正前の企画業務型裁量労働制の労使委員会のレベル以上のものが必要である。 「中間取りまとめ」で示されているような労使委員会に就業規則の変更の合理性を推定 させる効果等を認めることは絶対にできない、とされております。二つ目のポツは、日 本経団連の意見です。労使関係のあらゆる場面に、手続的要件として労使委員会におけ る同意等を要求することは疑問である。労使委員会については、必要性や現在の労使協 定の活用、労働組合との関係なども十分考慮した上で、導入の是非については慎重に検 討すべきである。仮に導入するとしても、組織・決議要件、画一的な多数決(5分の4 )要件などについては疑問であり、労使自治に委ねるべきである、とされております。  一方「就業規則」になりますと、30頁の就業規則の最初のポツは連合の意見です。就 業規則の変更による労働条件の不利益変更について、労使委員会の委員の5分の4以上 の賛成があれば、合理性を推定することについては反対である、とされています。二つ 目のポツは日本経団連の意見で、過半数組合が合意をした場合には、変更後の就業規則 の合理性を推定することには賛成であるが、不利益変更について、現行判例法理以上の 厳格な制約を課すことには反対する。例えば、「一部の労働者に対して大きな不利益の みを与える変更の場合を除き」との要件を付加することは、規定を不明確にするため反 対であり、このような事情は原告が主張立証し、合理性の推定を覆す仕組みとすべきで ある、とされております。  「雇用継続型契約変更制度」の関係で、これは37頁です。真ん中の雇用継続型契約変 更制度の最初のポツは、連合の意見です。最初の段落は省略しまして、労働条件の変更 を提示された労働者が、変更後の労働条件に異議があれば訴訟を提起しなければならな いが、ドイツと違って日常的に労働事件が裁判所に持ち込まれる状況にない日本では、 労働者にとっては解雇を背景に労働条件変更を迫られる制度でしかない。雇用継続型契 約変更制度と解雇の金銭解決の二つの制度を新設すれば、労働条件は解雇を背景に変更 できるようになり、違法な解雇であっても、最終的には金銭を払えば解決することにな って、使用者にフリーハンドを与えることになる、とされています。二つ目のポツは日 本経団連の意見です。雇用継続型契約変更制度は、要件・効果を具体的に検討する必要 がある。不十分な検討状況のまま拙速に取り入れるべきではなく、慎重な検討が必要で ある。同制度が本来認められるべき解雇に対する新たな規制となる制度なのであれば反 対である、とされております。  「解雇の金銭解決制度」は、57頁をお開きください。冒頭のポツは連合の意見で、最 初の二つの段は省略しまして、労働者からの申出については、現在でも裁判上の和解で は金銭解決が可能であるし、労働審判制度では金銭解決を求めることも可能なので、労 働者側にニーズがあるとの指摘は妥当ではない。使用者からの申出については、金さえ 払えば解雇できるとの風潮が広まる。あるいは、中間取りまとめで提案するような仕組 みとしても、このような複雑な基準は一般的には理解できない。要件をどれだけ厳しく しても、職場復帰を望む労働者が職場に復帰できなくなるケースが発生することは、や はり納得できない、とされております。  他方、二つ目のポツは日本経団連の意見で、解雇の金銭解決制度は早急に導入すべき である。ただし、解雇か金銭解決かは労働者個人の選択する問題であり、使用者の申立 てに「事前の集団的な労使合意」を要件とすることには反対する。また、「雇用関係を 継続しがたい場合」に要件を限ることにも反対する。さらに、紛争の早期一回的解決の 観点から、解雇手続の中で金銭解決の申立ても可能とするべきである。有期労働契約の 雇止めについても、金銭解決制度を導入すべきである、とされております。  「労働時間法制との見直しとの関連」につきまして、71頁をお開きください。最初の ポツが連合の意見で、なぜ労働契約法に関する研究会であるにもかかわらず、労働時間 法制の見直しについて言及するのか理解できない、との意見です。次が日本経団連の意 見で、ホワイトカラー・エグゼンプション制度を導入すべきである、となっておりま す。  「その他」の意見としましては、76頁ですが、その他のところの最初のポツが連合か らの意見です。研究会は労働契約に関わるあらゆる論点を洗い出し、いま一度、自由活 発に議論を行い、意見を踏まえて最終の取りまとめが行われるよう強く要望する、とさ れております。次が日本経団連の意見で、「中間取りまとめ」の内容は大変広範にわた り、法制化されれば労使に多大な影響を及ぼすものであるため、法案の提出時期を決め て、そこから遡って決めた期間でのみ検討するのではなく、審議会で十分な議論を尽く す必要がある。その際、審議会では研究会での取りまとめに縛られることなく、よりよ い法制化に向けて自由な議論がなされることが肝要である、とされております。さらに 三つ目は日商の意見で、労働契約に関する指針・ガイドラインの整理にあたっては、特 に中小企業の実態を十分に反映して、はじめて実効性のある内容となるため、十分な配 慮が必要である。今後研究会の最終取りまとめにあたっては、企業経営や経済活動の実 態を十分に踏まえた議論がなされるべきである、とされています。以上です。 ○菅野座長  ありがとうございました。ただいま御説明のあった意見につきましては、今後の研究 会の検討に生かしていきたいと思います。  次に、前回の「労働関係の展開」に関する議論を踏まえて、事務局において資料の修 正を行ったということですので、説明をお願いします。 ○労働基準局監督課長  引き続きまして、資料2の3頁をお開きください。これは就業規則の変更の関係で す。右側の欄にありますように、「一部の労働者に著しい不利益のみを与えること」を 合理性の推定の要件にするのか、それとも反証として見ればいいのではないか、という 意見に対して、著しい不利益があることが明らかな場合でも、内容の合理性の推定を認 めることは、手続的に多数決の濫用ともいえるわけであるし、変更の内容としてもその 一部の労働者に対して酷であり、不適当であるということです。また「一部の労働者に 著しい不利益のみを与える」場合を法律上位置付けずに、単なる合理性の推定を覆す反 証としてのみ取り扱うとすると、裁判官によっては、その事情を汲んでもらえずに合理 性を認めてしまうおそれもある。このために、推定の要件として法律にこれを規定する ことが必要である、という形に修正をしました。  また、「著しい不利益」というのは抽象的なので、これはなかなか推定の要件になじ まないのではないかという御議論がありましたが、これにつきましては、使用者のほう が変更が著しい不理益ではないことの説明責任を負っているであろう、このような抽象 的な評価を含む要件でもやむを得ないのではないかとしております。「ない」ことの証 明はしがたいという話ですが、これにつきましては、そうは言っても、使用者は全労働 者の労働条件を把握しているわけであるので、およそすべてのものがないわけではない ので、証明についてはできるのではないかという中身としております。  4頁の「雇用継続型契約変更制度」の関係ですが、案(1)が契約の変更をまず提案し て、協議をして、受け入れなかった場合に、再度提案して解雇の予告をするという案。 案(2)は、ストレートに使用者の変更権を認めるという案なので、それぞれ変更合理性 について質的違いがあるのではないか。それについて右のほうで、案(2)であっても変 更に従わない場合には解雇ということがあるわけですので、そういう意味では案(1)で も案(2)でも同様ではないかということです。どちらも、整理解雇を認める場合でも均 衡のとれた要件が必要であると考える。一番下の段に書きましたが、この判断基準につ いては、労働契約の変更ができないとしたときに行われる解雇の有効性判断を参考にし て、そういう意味では、同じレベルで考えるのが適当ではないかということです。以上 です。 ○菅野座長  ただいまの修正箇所の説明について、御質問、御意見があればお願いします。 ○筒井参事官  就業規則の変更の件です。今回ここで議論されているような過半数組合の合意といっ たような手続的な要件を中核として整合性を推定するというスキームについては、それ が法律上の推定ということで、立証責任の転換を伴う非常に強い効果を伴うものである ことから、その推定の合理性についてはなお慎重に検討すべき必要があるのではないか と考えております。しかし、仮にそのような方向での取りまとめをするという前提に立 った場合には、ここに書かれているように、一部の労働者に「著しい不利益」のみを与 えることについては推定の消極要件、すなわち、その事実についての立証があった場合 には推定が覆る、推定されないと位置付けるほうが望ましいのではないか。そのような 意味でこのペーパーに追加で記述された部分については、その限りで賛成したいと思い ます。  これに関連して。私は、前回、特に「著しい不利益」といった抽象的な要件、そのよ うなものを推定の前提事実とすることについては、必ずしも適当ではないのではないか という趣旨の発言をいたしました。しかし、仮にそうしないと、そのような推定の前提 要件、あるいは前提となる消極要件とせずに推定された後の労働者側の合理性がないこ とについての評価根拠事実、一つの根拠事実となるに過ぎないと位置付けてしまうと、 今回、事務局のほうで記述されているような問題が生じるので、むしろ多少抽象的な要 件ということで、問題がないわけではないですが、このように「著しい不利益」のみを 与えるものでないということについては、推定を覆す要件として位置付けたほうが適当 ではないかと考えます。 ○菅野座長  結局、ここに書いてあるような整理でよろしいと受け取ってよろしいでしょうか。 ○筒井参事官  そうですね、前提としてのこの推定規定を設けることの合理性についてはなお意見を 留保したいとは思うのです。ただ、このような方向で議論をするのであれば、一部の労 働者に不利益を与えるという件については、その推定を直接覆す要件と位置付けていた だいたほうが適切ではないかと考えます。 ○労働基準局監督課長  推定の要件ですね。覆すではなく、推定のもともとの要件ですね。 ○筒井参事官  そうですね、推定を覆すというのは適当でなかったかもしれません。その事実の立証 があれば推定されないということです。 ○労働基準局監督課長  推定要件ですね。 ○筒井参事官  はい、推定要件です。 ○荒木先生  その場合、推定の要件ですと、使用者のほうで著しい不利益がないことを立証しなけ ればいけないということになりますか。 ○筒井参事官  はい。 ○荒木先生  それでいいわけですね。 ○筒井参事官  はい。 ○菅野座長  ほかにいかがでしょうか。 ○曽田先生  修正されたものに「著しい不利益のみを与えることが明らかな場合」とありますが、 「明らかな場合」というのも入ってくるわけですか。 ○労働基準局監督課長  ここで言っているのは、そのようなことはありませんが、一部の労働者に著しい不利 益のみを与えることがないということを証明してもらってまず合理性の推定を働かせよ うという。ここで書いているのは、そのような不利益のみを与えることがはっきりして いるにもかかわらず、合理性の推定を認めてしまうのはいかがかということで書かれて います。 ○曽田先生  書かれているというだけであって、推定を覆す要件としては著しい不利益のみを与え るものではないということですか。 ○労働基準局監督課長  推定の要件。 ○曽田先生  推定の要件としてですね。 ○菅野座長  一番下に書かれているのがそうですね、「不利益のみを与える変更の場合は除き」 と。これは変わっていないのですね。 ○労働基準局監督課長  「除き」とするかどうかで最終的には、前回内田先生が言われたように、著しい不利 益のみを与えることがないということを要件としてということですから。「除き」と書 くと立証責任がまたかかってきますので。 ○菅野座長  はい。 ○村中先生  ちょっと混乱させるかもしれませんが。この「一部の労働者に著しい不利益のみを与 える、あるいは与えることが明らかな場合」についてですが、最高裁がこれを言ってい る趣旨は、結局、労働組合が本当は組合員全体の利益を配慮しその利益を公正に配慮す るところを、そういうことをきちんとせずに一部に不利益を押し付けている場合を考え てのことです。そう考えるなら、むしろ過半数組合が適切に組合員の利益を代表してい ることを要件として書いてしまったほうがわかりやすいのではないかと思います。。こ れだけを取り出すと何か違和感を感じます。 ○菅野座長  そうすると非常に不明確になりませんか。 ○村中先生  不明確は不明確かもしれません。 ○菅野座長  推定要件の段階では、やはり絞る必要があるのではないかという気がするのです。 ○労働基準局監督課長  まだ不利益というのははっきりしますが、適切に代表しているというのは、何をもっ ていうかがまた分からなくなりますので。 ○村中先生  それはそうなのですが、例えばここにも「一部の労働者に」と書いてありますが、こ の「一部」とは何かなどですね。「著しい」も抽象的だと思います。 ○菅野座長  しかし、裁判例の事例の中から類型的にはかなり明確に、例えば高齢層などが浮かび 上がってきていると思うのです。それを外して一般的に実質的に公正に代表するなどと すると、ありとあらゆる類似型が入ってくることになりますから。 ○村中先生  そうですね。しかし、気になるのは、みちのく銀行事件は非常に例外的なケースで、 その事件のその判示の部分だけが突出した形で法文の中に出てくる点です。これは、法 文の在り方としていいのかなと思うのです。 ○菅野座長  いいえ。それだけを取り出してそれだけの件に限定するというのはあくまでも推定要 件であり、その推定されたあとの反証と言うのですか、今度、それを覆す段階ではあり とあらゆる類型が、公正に代表しているかどうかの別の類型が出てき得るわけです。 ○村中先生  ええ。しかし、判例の理解としても「一部の労働者に不利益のみを与える場合」以外 にどのような例があるのかと言われると、スラッと言えませんが、そういうケースも公 正代表できていない点で同価値だと思うのです。 ○菅野座長  一つは労働協約の規範的効力ではないですか。労働協約に規範的効力、あれは一般的 拘束力でしょうか、のところにも出てくる。あとはみちのく銀行のように圧倒的多数組 合と協約を結んでそれを就業規則化するような、そのようなケースで就業規則の合理性 を否定する。その両方で出てきますが、いずれも多数組合による利益調整がなされてい るとの推定は働かないというコンテクストですね。 ○村中先生  そうですね。 ○菅野座長  あのケースはそれに限って言えばいいことだったので、そう言っているのだと思いま すけれども。 ○村中先生  確かに私が言うような踏み込んだ要件は判例を超えているといった批判が当然出てく るでしょうが、ただ、法律にしていくにはもう少し一般化した形での観点が書かれてい るほうがいいのではないかと思うのです。 ○菅野座長  推定を覆す場合とはどのようなものかという説明は、いずれ要るようになると思うの です。このような場合には推定要件がこのようにあって推定される、しかし、このよう な反証が許されるという、そちらの中の説明では当然出てくると思うのです、村中先生 が言われたようなそのような考え方に基づいていろいろな類型があるということで。 ○村中先生  そうであればあえて書かないということも、すべてその反証の中で考えるというのも あり得るのではないでしょうか。 ○菅野座長  そうすると、個々に書いてある推定段階で考慮すべき事情が考慮されない。 ○村中先生  というようなものが出ると思います。 ○菅野座長  その点だけはチェックしておいてほしいと、そのような事情ではないかということで しょう。 ○村中先生  きわめて重要な事項ですし、ある程度明確性が必要だからこのような形になったとい うことは理解できますが。 ○菅野座長  この間内田先生も言っていましたが、その点の押さえというかチェックがないと少し 不安だという感じがある。 ○村中先生  しかし、もう一つの心配として、要するにこれさえクリアしていれば、反証における 実質面でのチェック、反証がなかなかしにくくなるのではないかという点があります。 ○労働基準局監督課長  逆に、一部の不利益というのは書かなければますますですから、書いておいたほうが いいということには変わりない。 ○村中先生  ですから、それは裁判官がどう感じるかという話で、このレベルの話をすると、裁判 官としては、合理性に関して一応実質的な利益面にもチェックをかけているということ になれば、あとは、反証を許すと言ってもそれ以上の実質的な面でのチェックは軽視し てしまうという方向に進む可能性がある。そのような心配も、出てくると思います。 ○曽田先生  条文として書かれれば、裁判官がどう考えるかという裁判官の個性というよりは、や はりその条文でどのように考えていくかを考えなければいけないと思うのです。ですか ら、いま先生がおっしゃっているようなこの「一部の労働者に著しい不利益のみを与え る場合、与えるものでない」ということが要件になり、そして5分の4以上の賛成と条 文的に規定すると、それ以外のことについての推定を覆す要件は考えられないのではな いか、ということは言えるのではないかという気がするのです。この掲げられたことが 推定を破る唯一の場合であると読まれる危険性はあるだろうと思うのです。それをそう でないように読めるように、条文化できなければいけないということなのだろうと思う のです。 ○労働基準局監督課長  推定とはそのようなことではなく、あくまでも立証責任は入るだけですので、それで もなお内容が各人に至ってもなかなか受忍しがたいものがあるということを証明すれ ば、推定は覆るわけですよね。 ○曽田先生  ですから、例えば一部の労働者でなくかなりの部分の労働者にとって非常な不利益を もたらす変更である、ただし、労使委員会の5分の4以上の賛成はあった。このような 場合、その推定を覆すために、その変更はあまりにも不合理であるということが立証で きるかどうかですね。現実問題としては難しいのではないか。 ○労働基準局監督課長  逆に言うと、それだけだいぶ合理性のところまできているということでもあると思う のですが。 ○曽田先生  合理性の判断のところにきていると。 ○労働基準局監督課長  正しい方向に進んできているということでもあると。 ○菅野座長  変更の必要性、経営状況やそのような変更についての社会的な相場というか情勢など 最高裁が判例でも考えているような要素がいろいろありまして、それとどのぐらい交渉 をやったか、代償措置をどのぐらい講じたか、経過措置など、そのようなものは全部条 文に書くわけにいかないわけで、必ず何か解説が要るのです。解説の中で、公正に代表 しているという点の要素も入ってくることは書く必要があるので。条文上掲げられなけ れば条文として完成しないかと言うと、そうなると今度はすごく長い条文になってしま うのです。網羅できるわけでもないのです。 ○春日先生  仮に村中先生のおっしゃるような考え方でいくと、合理性を推定するための要件は、 具体的にどのような形になるのですか。 ○村中先生  多数組合がその事業場の労働者の全体の利益を考慮したということになるのではない でしょうか。 ○春日先生  それが前提事実になるということですか。 ○村中先生  はい。 ○労働基準局監督課長  決議が意見集約したという要件も入っていますので。 ○春日先生  そうすると、逆に一部の労働者に著しい不利益のみを与えるということは、形の上で は相手方のほうでそれを証明して、それで合理性を覆すということになるのですか。 ○菅野座長  そうではなくてたぶん、一類型として入っているわけですね。 ○村中先生  そうです。労働者の全体の利益を、当然代表しているという言い方をすると、確かに 手続的な側面と実体的な側面と両方がそこに入ってきます。 ○春日先生  しかし、それはもう合理性があるということになるのではないですか。そういったこ との証明が難しいが故に、今ここでの推定規定のようなものを作ろうという考え方が出 ているのではないかと思うのですが。 ○村中先生  前回、内田先生が最後にこだわられていたところで、実体的な面が全く推定のところ に入ってこないのはいかがなものか、ということに繋がっていくのかなと思います。 ○春日先生  ただ、ここでの考え方では、変更は著しい不利益でないということを使用者側が証明 することになっていますね。そうだとすると、不利益などの中で実体的なものも判断の 対象にはなるのではないかと思うのです。 ○村中先生  ですから、その実体的な問題のうち一部だけを取り出しているわけです。 ○春日先生  この「著しい不利益」というのはですね。 ○村中先生  はい。 ○春日先生  確かに、おっしゃるとおり、そうだと思います。 ○村中先生  それをもう少し広げて書いておけないかということなのですが。確かに推定規定を設 ける意味がなくなると言われれば、そのような側面は否定できません。 ○菅野座長  また最初に戻ってしまって、最高裁の一般論に全部戻ってしまって、ありとあらゆる 事象を総合判断しなければ結論が出せませんよという、ただそれだけになってしまいま すからね。 ○荒木先生  多数組合の合意、そして労働委員会の5分の4というのも労働者側委員の過半数を意 味しますから、すなわち過半数主義、多数決主義を合理性判断の一つのメルクマールに しようという考えだと思います。そのような判断が妥当しない場合とは何なのかと言う と、一つは多数決主義の濫用で、少数者に全部しわ寄せしていて、多数が得をするから いいよという場合で、それで合理性を推定するのは妥当でないでしょう。  もう一つ、意見集約の適正さもやはり同じです。適正に集約した結果、多数がこれで いいだろうと言ったのであれば合理性を推定しよう。そのような考え方から、多数決主 義が妥当しない場合をここで書いていると考えれば、そのほかにも実質的な合理性を否 定する要素は別にありますから、それは推定をさらに覆す反対事実と言いますか、その 立証として行わせるということで一応理解はできるのではないかという気がします。 ○労働基準局監督課長  前回の内田先生のお考えと荒木先生はおそらく一致されていると思いますので、それ でよろしければ、我々もそのようにさせていただきます。 ○菅野座長  いまのような考え方で整理しているということで、まとめさせていただければありが たいのですが。 ○村中先生  しかし、法文の上では過半数主義というか、民主主義が機能不全に陥っている場合と して、推定の要件としては一部の場合だけが出てくると理解だということですね。 ○菅野座長  一部の場合というか代表的な場合というか。しかし、そのほかの場合を一切考慮しな いということではないので、それは推定を覆す、そこのところでは考慮されるのだと。 ○村中先生  例えば組合の代表者が組合内で十分な討議をしなかったといったことは、あとで反証 で出てくるのですか。 ○労働基準局監督課長  それはもともと推定の要件として、意見の適正な集約をしていなかったということで すから。 ○村中先生  手続的な側面ではね。実体的な側面の一つだけが突出してそうなったのですか。 ○労働基準局監督課長  ええ、そこは非常に代表的ですから。 ○菅野座長  よろしいですか。 ○村中先生  はい。 ○菅野座長  ほかに何かありますでしょうか。それでは、今日修正したようなことでこの段階での まとめとさせていただき、ただいまの議論を踏まえてこの表の一番右の欄の指摘に対す る考え方を中心に整理したものを最終報告案に盛り込むようにさらに作業をしていただ きたいと思います。  本日の議題に入ります。本日の議題である「労働関係の展開」について、前回に引き 続き、資料2に沿って議論をしていただきたいと思います。まず資料の7頁から8頁ま で、懲戒、昇進、昇格、降格について議論していただきたいと思います。 ○労働基準局監督課長  7頁の7「懲戒」のところから御説明します。まず、懲戒が権利濫用に当たる場合は 無効とすることをどうするかについて。一つは、懲戒が認められる場合は法律できちん と限定すべきではないかといった意見、あまり権利濫用のようなものを明文化する必要 はないのではないかという意見があります。それに対して右の意見として、一般的な権 利濫用法理を法律で定める必要性は高いのではないか。懲戒に関する権利濫用法理のう ち最も重要なものは、非違行為と懲戒の内容との均衡と考えられるため、その旨を法律 で明らかにする必要があるのではないか。ここの部分が新しく加わった部分です。  次に、減給、停職関係です。書面要件のところで減給、停職、懲戒解雇以外の懲戒処 分、例えば戒告のようなものですが、そのようなものでも書面通知をすべきではないか といった御意見がありました。確かにそれは適当ではあるが使用者の負担を考慮するこ と、あるいは労働者に与える不利益の観点から見ると、やはり労働者に与える不利益が 大きい懲戒処分に限って、書面通知を求めることが適当であるとさせていただいており ます。  懲戒の関係で労働者の弁明の関係です。これは中間報告でも書いたように、弁明を聴 取すると時間がかかって、その間に労働者は退職するといった弊害もあるということ で、まずは書面通知で行うことが大事だといったことを書いております。  書面通知をしなかったことに対して、効果として無効とすべきだという考え方と無効 とするのは不適当という考え方があります。これについては、書面通知は非常に重要な ことであり、また労働者の不利益に比較しては使用者の負担はあまり大きくないといっ たこともあり、使用者が書面通知を行わなかった場合の減給、停職、懲戒解雇は無効と することが適当であると書いております。  懲戒解雇を理由とした退職金の減額・不支給の件です。これについては、一番右のと ころですが、退職金の減額・不支給は、特に問題のある事例については就業規則の合理 的な限定解釈からして対応は可能である。したがって、このことについて特段の法律上 の規定を設けることは適当ではないのではないかといったことを書いております。  なお、本日御欠席されている土田先生から御意見を賜っており、それをこの場で紹介 してほしいとのことですので、御説明します。  まず、懲戒のところ、具体的に資料2の7頁の二つ目の段に関して。資料2では書面 通知の対象となる懲戒処分を減給、停職、懲戒解雇のように不利益が大きい措置に限定 し、その理由として、考え方の欄では使用者の負担への考慮を挙げているが、懲戒はそ れほど日常的な処分でないことを考えると、これらの措置に限定すべき合理的理由は十 分とは思えない。あるいは、客観的に見て説得力が十分とは考えられない。懲戒全体を 対象とすることにして議論すべきではないか、との御意見をいただいております。  8「昇進、昇格、降格」の右側です。昇進、昇格、降格は前提となる人事制度がきわ めて多様であるので、細部にわたっていちいち規制することは困難だ。したがって、権 利濫用法理のルールに留めるべきだ。ただ、職能資格の引下げについては、既に裁判例 において就業規則の規定等との明確な根拠が必要とされているので、これについては、 法律でルールを明確にしておくことは適当である。 ○菅野座長  御意見をいただきたいと思います。 ○曽田先生  懲戒の書面通知については、やはり土田先生の意見のように、懲戒の理由と処分の内 容を書面で通知する制度をとっても、それほど使用者に負担になることではないのでは ないかという気がします。もう一つ、書面通知ができない場合もあると思うのです。解 雇の意思表示をしようとするときには相手に届かないときもあると思うので、書面通知 ができない場合は除く、というような形にしておく必要があるのではないかと思うので す。必ず書面通知と言うと相手に届かなければいけないので、意思表示が到達しなけれ ばいけない。それが到達できないような場合、解雇が無効であるといったことにならな いように、そのような通知ができないような特段の事情がある場合は除く、というよう な規定を置いておく必要があるのではないかと思います。 ○労働基準局監督課長  中間報告では、相手に本当に届かなくてもその到達とは、最高裁判例でも例えば郵便 ポストに入ったなどということでありますので、その到達については心配しなくてもい いのではないかと書かれていたと思うのです。 ○曽田先生  そのような前提でしたら、要するに発信主義であるならばそれでもいいだろうと思い ますが。 ○労働基準局監督課長  発信主義と言いますか到達というのは、ポストに届いて、要するに受け取る人がいつ でも取れる状態になっていればいいということです。最高裁判例がありますので。あと は、軽い戒告といったものについて、書面性を求めるかどうか。それを求めたときに、 戒告ですからそもそも有効・無効とはどのようなことなのかもまたよく分からないとこ ろがあるのですが、そこを。 ○菅野座長  どこまでが懲戒処分なのかがそれほど明確でない場合もありますね。 ○労働基準局監督課長  極端に言いますと、例えば口頭注意は口頭ですから書面でやるのはおかしい。 ○菅野座長  そうですね。 ○曽田先生  一応、多くの場合は就業規則で懲戒はこのように定める、ということが規定されてい るわけです。ですから、その懲戒事由のどれに該当してどのような懲戒にするか、この ような形ではできるはずで、それがない口頭注意などは懲戒ではないということではな いかと思うのです。例えば訓告や戒告などが懲戒なのか懲戒でないのかは、それこそ非 常に曖昧ですね。しかし、懲戒ということで不利益を被るようなものであるならば、や はり書面通知を要求したほうがいいのではないかと思うのです。 ○労働基準局監督課長  減給、停職、解雇の不利益は法的にはっきりしているのですが、戒告の不利益は口頭 注意と訓告とどこが違うのか、制裁であるという意味づけがあるだけということなので すが。 ○村中先生  賞与の査定とか、そういうところではどうですか。 ○労働基準局監督課長  それは賞与の査定のあとに書いてありますが、賞与の査定の合理性の話で、勤務成績 がいいか悪いかの判断に当たっての要素だろうと整理をしております。 ○村中先生  しかし、それを書面で行っていなければ懲戒としては行わなかったということです ね。 ○労働基準局監督課長  懲戒処分を行わなくても、例えば遅刻をしたといった事実は残っていますので、たま たまそれが書面で戒告しなかったからといって、賞与の査定にどう響くかは勤務態度を 見るわけですから。そのときに書面で注意しなかったから、それは見てはいけないとい うわけにはいかないと思います。 ○曽田先生  そうすると懲戒の意義付けなのですか。就業規則で懲戒と定めていない部分も懲戒に 当たる場合がある、このような考え方なのでしょうか。 ○労働基準局監督課長  いいえ。と言うよりは、本当に法的に不利益のある懲戒は規定もするけれども、あま り意味のわからないものは入れていないということなのです。 ○荒木先生  懲戒である以上、例えば戒告でも3回重なった場合には具体的に不利益が発生すると いったこと、それから懲戒であれば記録に残るわけですね。残らないものは懲戒処分で はない注意だと思うのです。譴責や戒告として人事記録に残るような処分であれば、そ の処分自体から具体的な不利益が発生しなくても、これは懲戒の一つという位置付けに なるのだと思います。それを書面でやらせるか、むしろ個人の人事記録を個人が見せろ という、そちらの問題なのかどちらかわかりませんが、それを本人にきちんと認識させ るために、つまり処分がされたのだということをはっきりさせるために、書面通知をそ のような場合にまで認めるのか。それとも、ここではそのようなことも議論としてあり 得るのですが、法は具体的な大きな不利益が発生するものだけに限って要求するという ことなのか、そこは何か選択の問題のような気もするのです。 ○菅野座長  書面事由と書面を必要とすれば、口頭での戒告ができないということになるのでしょ うか。 ○労働基準局監督課長  口頭厳重注意のようなものが、矛盾するということになりますね。 ○菅野座長  就業規則の規定で、懲戒の種類等規定する中に戒告というのがあっても、やったとい うことを書面で通知しなければいけないとすれば、この種の規則何条による戒告をする ということを、口頭で伝えることはできなくなるということですね。 ○労働基準局監督課長  できなくなります。 ○菅野座長  そのようないわば要式性を戒告についても必要とするということになってくるのでし ょうか。そこまでする必要があるのでしょうか。 ○荒木先生  これは例えば戒告するそのときに書面でやらなければいけないということなのか、そ れがこの書面要求なのか、それとも要するにそのような処分がされたことが事後的にで もわかればいいということなのか、そこも少し違うのかもしれません。私が先ほど言っ たような趣旨は、口頭で戒告というようなものがあってもいいのですが、そのやったこ とが、ともかく懲戒処分であることが、事後的にでも本人にわかったほうがいいという 議論はあり得るかなと、そのようなことなのです。 ○村中先生  労働者にとってみると、戒告で口頭で注意されるというのは非常に不名誉なことです ね。ですから、一体自分がどのような行為で、それが就業規則上のどの条項に該当し て、それで処分されたということがはっきりわかるということは、当事者にとっては利 益です。ですから、手続的な面でそのような状況を作り出すことには賛成なのです。た だ、それが必ず書面でなければならないかという問題はあるでしょう。書面ということ にすれば一番簡単なのかもしれませんが、これを徹底させれば、土田先生のように全部 書面にしたらとなるだろうと思います。 ○労働基準局監督課長  そういう考え方もあるということです。 ○菅野座長  そのような意見もあるということですね。 ○労働基準局監督課長  ただ、その口頭注意というのは論理的にあり得なくなりますから、懲戒ではないとい うことにはなる。 ○菅野座長  今度は口頭注意という懲戒処分を設けることができなくなるということですね。 ○村中先生  少なくとも、いま荒木先生がおっしゃったように、口頭で注意はするのだけれども、 それとは別に書面があるということはあり得ますが。 ○労働基準局監督課調査官  資料3で実態の調査を載せていますので。懲戒処分の中に始末書の提出などがありま す。その始末書の提出がまさか紙で始末書を出さないということはないためまず紙で渡 されてきているので、たぶんそれは就業規則上では懲戒として掲げてあると思うので す。 ○菅野座長  懲戒処分にするかという限界線上はその企業が選べるわけで、そこについて全部書面 を要求することまで必要かどうかという感じは少しします。しかし、そのような意見が あったことを付記するというくらいにしますか。事務局、最終報告書の中にそのような 意見もあったことを付記するくらいでよろしいですか。 ○審議官(労働基準担当)(松井)  いまのを書面通知を行わなかった場合の効果と絡めて整理しておかなければという気 が少しするのですが、いかがでしょうか。このすぐあとにありますね。 ○菅野座長  全部要式行為にすることになるのですよ。ですからそのような意見もあったというこ とに。 ○審議官(労働基準担当)  それはそれで一つまとめにして。 ○菅野座長  そのような意見があったことは確かだ。 ○審議官(労働基準担当)  とにかく書面通知をしないときの効果はどう考えて言ったのかなというのが気になる のです。 ○菅野座長  いやいや、それは無効だということが前提です。そのような意味では、口頭注意や始 末書を提出せよというのも、通知しなければそれは義務付けはできないという意見だと いうことです。 ○労働基準局監督課長  意味があるとすれば、人事記録の開示請求をして、書いてあれば訂正請求をするとい うのが、今回出来た個人情報保護法上の関係で出てくるかもしれませんね。 ○荒木先生  書面通知をしなかったときの効果の関係で、この原案の上のほうの欄では減給、停 職、懲戒解雇は無効となるわけですが、確かに当初の懲戒、例えば減給処分のときは書 面提示を怠ったのだけれども、再度の処分はできるのですか。 ○労働基準局監督課長  手続違反の場合は、手続をもう一度やれば有効となります。例えば、労働基準法第20 条の解雇予告などは予告しなかったら無効だけれども、30日経ったので有効になるとい う裁判例もあります。要式行為をもう一回満たせば有効になる、という考え方もあり得 ると思います。 ○菅野座長  あり得るという解釈でも、そうなるかどうかはわからないですよ。有用な手続だった ら、それをしなければ駄目だという解釈も十分あり得るでしょう。 ○荒木先生  懲戒解雇のときに、書面を渡さなかったから懲戒解雇は一切できないというのもバラ ンスがとれない気がするのです。だから、いまのような解釈があり得るということなの でしょうね。 ○菅野座長  解雇理由の通知は、そこまではいっていないでしょう、あれは有効要件ではないでし ょう。ただ、あれは罰則があるのでそういう担保ができるけれども、契約法はそれがな いからね。そういう意味でも、重要な減給、出勤停止、懲戒解雇というのに限るのが本 当ではないかという気がします。でも、意見として付記したほうがいいというのであれ ばします。そこは、土田先生にも確かめられたらどうですか。  ほかにいまの段階でなければ、懲戒、昇進、昇格、降格については、ただいまの議論 も踏まえて、この表の指摘に対する考え方を中心に整理したものを最終報告案に盛り込 む作業をしていただきたいと思います。  次は、「兼業禁止義務」「競業避止義務」「留学・研修費用の返還」をひとまとめに して検討していただきたいと思いますので、事務局から説明をお願いいたします。 ○労働基準局監督課長  8頁の9の「労働契約に関する権利義務関係」です。「兼業禁止」関係で右側の欄を 見ますと、兼業の禁止でやむを得ない場合としてはということで、兼業が不正な競業に 当たる場合、労働者の働きすぎによって人の生命又は健康を害するおそれがある場合の ほか、兼業の態様が使用者の社会的信用を傷つける場合等も含まれることとすべきであ る。中間報告では、「不正な競業」の「不正」というのはなかったのですが、労働組合 等の意見で、ある小売店で働いていて、また別の小売店で働くというのはよくある話な ので、そういうのまで駄目というのはおかしいのではないかという意見がありましたの で、「不正な」というのを付けさせていただきました。  労働時間規制の通算の関係ですが、労働時間を通算して個々の使用者の責任を問うの ではなく、国、使用者の集団が労働者に対して配慮し、労働者自身の健康に対する意識 も涵養していくことがより妥当ではないか。どうしても通算をやめると、例えば、法人 格が違う企業で働いた部分について、労働時間を通算しないとなると、労働者の働きす ぎという問題が起こるのではないか。これは国の責任、それを個々の使用者の責任にか ぶせるのか、国あるいは使用者の団体、労働者自身で考えるべきという観点から、この ように書かせていただきました。  それから「競業避止義務」関係ですが、競業というのは使用者の利益を損なうかどう かは、その使用者の業種や労働者の地位、職務内容等によって異なり、一律に労働者が 競業避止義務を負うと規定するのはなかなか難しいだろうということです。そういうこ とで、競業避止義務も、秘密保持義務も、労働者が使用者の正当な利益を不当に侵害し ないように配慮し、誠実に行動すべきことから生じるものであり、一般的に労働者及び 使用者双方が誠実に各々の義務を履行しなければならないことを、法律で明らかにする ことが適当である。まず、誠実義務を書けばいいのではないかという考え方です。  退職後の競業避止義務を厳密に書くと、職業選択の自由との関係が出てくるというこ とに関し、契約に基づく退職後の競業避止義務を無制限に認めると交渉力の弱い労働者 に過度の義務を負わせることがある。しかし、契約に基づく退職後の競業避止義務を一 切認めないとすると、例えば競業しない代償に使用者が金銭を払うこともできないとい うことで、労働者にとっても不利になる場合もあり得るということで、大前提として 「使用者の正当な利益を侵害すること」を契約の有効要件とすべきだということで、そ の判断の考慮要素としては、上記競業避止義務の必要性のほか、業種、職種、期間、地 域、代償措置の有無及び程度があるということが書かれています。  それから、退職後の競業避止義務についての範囲を明確化するということで、書面で 明示しなかった場合には無効とすべきではないかということに関し、退職後の競業避止 義務の範囲を明確にすることは非常に重要だということだけれども、秘密保持義務の内 容とは少し違っている。秘密保持義務の秘密は、時々刻々変わるものですけれども、競 業避止義務はより大きなまとまりの「事業」であるから、ある程度明確ということもあ るので、退職時に明示がなくても、労働者が承知していることもあるので、直ちに無効 とするのは行き過ぎではないかと整理しております。  10の損害賠償関係ですが、これも労働組合からの意見の中に出てまいりましたが、労 働基準法で契約期間の上限は原則3年とされているので、留学・研修費用の返還を免除 する条件とする勤務期間も3年までとすべきではないか、ということ等があります。  これについては、10頁の下から2行目に、本来労働者が負担すべきであった費用を返 還すれば退職できる期間と、労働基準法第14条の定める契約期間とは趣旨が異なる。ま た、実態においても返還を免除する条件とする期間は5年としている企業が多いことを 踏まえて、その期間を5年以内に限ることが適当であるとしています。  これについて資料3の55頁に、海外留学制度を設けている企業のうち、早期退職労働 者から費用の返還を求めている企業というのは、海外留学後5年以内に退職する労働者 を対象とする場合が非常に多い。早期退職者に対する海外留学費用の返還制度の有無と いうことで、「ある」が40.9%、返還を求める対象者は「留学後5年以内に退職した者 」が88.9%、残りの11.1%は「留学後3年以内に退職した者」ということで、ほぼ100% が5年以内という形になっています。返還額については「全額」が77.8%、期間に応じ て「逓減」が2社で22.2%でした。  これは、基本的に企業がホームページ等で、留学制度がありますといっている所に当 たり、実際に調べた結果ですので、統計的に処理したわけではありませんが、一応こん な数字が出ております。  これに関しても、土田先生から御意見が出ております。兼業禁止義務について、資料 2の9頁の考え方の欄では、兼業の禁止はやむを得ない場合として、兼業が不正な競業 に当たる場合、労働者の働きすぎによって人の生命又は健康を害するおそれがある場 合、兼業の態様が使用者の社会的信用を傷つける場合を挙げておりますが、土田先生か ら、兼業の性質や時間によって、本来の業務への悪影響が生ずる場合、本来の業務に集 中できないなどを挙げる必要があるのではないかとの御意見がありました。  それから、競業避止義務について、資料2の10頁の二つ目の考え方の欄で、「使用者 の正当な利益を侵害すること」を契約の有効要件とすべきであるとしておりますが、土 田先生から、競業避止義務の要件について考える場合は、使用者の正当な利益を侵害す ることと同時に、労働者の正当な利益を侵害しないことも基本的要件とすべきではない か。資料2で、具体的な考慮要素として挙げられているもののうち、必要性は使用者の 利益から生ずるものであるが、職種、期間、地域、代償は労働者の利益から生ずる要素 であると考えられるとの御意見をいただいております。 ○菅野座長  後者の意見がよく呑み込めなかったのですが。 ○労働基準局監督課長  競業避止義務の関係ですけれども、使用者の正当な利益を侵害することという要件以 外に、労働者の正当な利益を侵害しないことというのも要件にすべきだ。考慮要素とし て考えているもののうち、職種、期間、地域、代償措置の考え方というのは、労働者の 利益を考慮して出てきたものなので、実際はそういう労働者の正当な利益を侵害しない というのが入っているのではないかという趣旨です。 ○菅野座長  わかりました。 ○村中先生  競業避止義務の論点・各指摘に対する考え方の二段落目で、「競業避止義務や秘密保 持義務等は、労働者が使用者の正当な利益を不当に侵害しないように配慮し」とありま すが、これは「誠実に行動すべきことから生じるもの」だと。そのことと、次の「一般 的に労働者及び使用者双方が誠実に各々の義務を履行しなければならないこと」という ことはどういうつながりになっているのでしょうか。 ○労働基準局監督課長  いまの労働基準法でも、労働者及び使用者はお互い誠実に権利・義務を履行しなけれ ばいけないと書いてあります。それと同じことを書いて確認し、基本的なことは確認で きるのではないかということです。 ○村中先生  そのことと、上のほうの契約の相手方の正当な利益を侵害しないということとは、ち ょっと性質が違うように思います。契約の相手方の一般的な利益を保護する義務みたい なものを考えるのか、下のほうはそういう趣旨ではないですね。 ○労働基準局監督課長  何でもかんでも競業避止義務を負うというわけではなくて、そういう誠実な対応をし なければいけないという中で、負う場合、負わない場合というのが出てくるということ で、いきなり競業避止義務が有るとか無いとかとスパッと書けないので、その源泉を確 認すればいいのではないかという趣旨です。土田先生も、誠実義務というのは考えるべ きではないか、とおっしゃっていたこととの関係もあります。 ○村中先生  その誠実義務の中身の理解にもよるのかもしれませんが、一般的に使用者は労働者の 利益を全般的に保護してあげるとか、労働者は使用者側の利益をできる限り配慮しなけ ればいけない、ということを言いすぎるのもいかがなものかという気がするのです。契 約で合意した中身、その契約というものが目的を完成する、達成できる範囲内でお互い 相手のことを考えなければいけないということだと思うのです。  しかし、その契約の目的からどんどん広がっていくというのはいかがなものか。日本 の従来の雇用の在り方というのは、そこが無制約に広がっていたように思います。そう いうことについては、一般的な「誠実義務」という言葉を使うと、少し危険ではないか と従来から感じていたことで、ちょっと引っかかったのです。 ○労働基準局監督課長  「中間取りまとめ」では、在職中の競業避止義務や秘密保持義務については信義則で 対応できると書いてあります。それと同じ趣旨なのです。民法に書いてあるのを、さら にまた労働契約法に信義則みたいなものを書くかどうかというだけのことです。そこか ら何でもかんでも引っ張り出そうということではありません。 ○村中先生  中身自体に異論はありません。言葉遣いに関してのみです。 ○曽田先生  退職後の競業避止義務ということを考える場合に、労働者側の職業選択の自由や労働 権、という視点も必要ではないかと思うのです。競業避止義務を否定するものではあり ませんけれども、資料3の54頁を見ても、競業避止義務を課している企業はそんなにな いようです。本当に競業避止義務を課す必要性があるかどうかということを、労働者の 職業選択の自由との兼ね合いで、両方のバランスを考えないといけないと思うのです。 使用者側の必要性というのもあると思いますけれども、時期、地域的なもの、あるいは 職種ということで、競業避止義務を課する場合の合理性を求める、という配慮がもう少 し必要かという気がしました。 ○菅野座長  土田先生の言われている、使用者の正当な利益を侵害することを契約の有効要件とす べきであるというのは、これだけが有効要件だという意味でしたか。いま曽田先生も言 われたように、当然労働者の利益も考慮されて、競業というのは使用者の正当な利益を 侵害することがなければやってもいいのだという前提から出発しているのでしょうね。 それを、できるだけ限定すべきだ、制限する競業の範囲もできるだけ限定すべきだ、と いうところからも出発しているのだと思うのです。 ○労働基準局監督課長  労働者の正当な権利とは何かというと、職業選択の自由という意味ではすべてそうで す。それを、お金を渡すので遠慮してくれといったときに、それでも制約を受けている わけですから、それまで排除されるのかどうかよくわからなくなってしまうという意味 合いがあります。 ○荒木先生  土田先生の意見は表現の問題で、労働者の正当な利益に配慮していることとか、そう いうことではないですか。代償措置を要求する根拠として、競業避止義務を課すのだけ れども、その代わりこういう代償を払っていると。そういう場合には認められる、とい うことをおっしゃりたいのではないかと思います。そういう趣旨であれば、どういう場 合に労働者の正当な利益を考慮した措置がとられているか、という観点からも吟味しな さいということを書けばいいということではないのですか。 ○村中先生  労働者側が職業選択の自由を持っていて、競業避止義務がそれを侵害するということ が議論の出発点になっているのでしょう。そういうものだから、基本的には認めにくい ものだと。だから、使用者側が競業避止義務を課すことについて、特に正当な理由があ る場合ということに限定しましょうという話ですね。 ○労働基準局監督課長  そういう趣旨です。 ○村中先生  そうすると、その正当な利益というものから、それが認められる範囲が自ずと限定さ れる。場所的な限定、時間的な限定といった流れで書いてあります。 ○労働基準局監督課長  そういう流れになります。 ○菅野座長  使用者の正当な利益を侵害し、かつ利益を守る上で必要な範囲を超えないこととか、 そういうことなのではないですか。業種、職種、期間、地域、代償の有無・程度という のまで考慮要素として考慮しなさいというのは、制限の範囲の問題もある。それが表現 されていないということなのでしょうか。 ○荒木先生  業種、職種、期間、地域というのは、使用者の正当な利益を守るために必要十分な程 度でとどめよということなのだけれども、土田先生がおっしゃる代償が出てくるという のは、使用者の正当な利益の要件からは出てこないのではないか。これは、労働者の職 業選択の自由を侵害しているので、その代償が必要だろう。それは結局労働者の正当な 利益に配慮した義務の設定の仕方となっていることというのがないと、代償措置は出て こないのではないかという議論ではないかと思うのです。 ○菅野座長  労働者の利益は代償だけですか。 ○労働基準局監督課長  土田先生も、代償は必ずしも要件かどうかはっきりしていないということです。 ○荒木先生  だから、要素と書いているんだと思うのです。 ○労働基準局監督課長  むしろ代償がない場合もあり得るとすると、労働者の正当な利益のどうのこうのとい う話は出てこなくなります。 ○荒木先生  自ずと、その期間とか地域というのも、長期間にわたったり広範にわたると、その分 労働者の選択の自由が狭まると考えていますので、それは考慮されていないということ でもないので、それを明示したらどうかというのが土田先生の御意見でしょうか。 ○菅野座長  とにかく、これは労働者と使用者の利益の均衡点みたいなものでしょう。だからその 表現の問題ですね。その表現を適当に工夫してもらうということですね。 ○曽田先生  労働者の職業選択の自由みたいな視点からの書き方も、加えていただいたほうがいい のではないかというところです。使用者側の必要性とか、それを制限するという書き方 だけではなくて、労働者側の働く権利とのバランスだ、という感じの書き方が欲しいか なというところなのです。 ○菅野座長  その辺は、ちょっと工夫した書き方をしていただくということで、ほかにはいかがで しょうか。 ○荒木先生  資料3の54頁の、退職する従業員に課す義務というふうに書いた場合に、例えば、競 業行為を行った場合には退職金を没収するとか、つまり金銭的なところで不利益を課す という競業避止義務のあり方と、実際に差止めを要求する場合と、この要件・効果は少 し変わってくる可能性があります。そこは、これまであまり指摘していなかったです ね。 ○菅野座長  すみません、どういうことですか。 ○荒木先生  つまり、実際の訴訟で、差止めを求める場合に、差止めで認めるかという問題と、競 業行為をしたから退職金の半額を没収できるとか、そこで求める効果によって競業避止 義務違反の成立が認められたり認められなかったりと変わってきうるわけです。そうい う点は、ここであまり触れなくてもいいのか。一律に競業避止義務とはこういうもの だ、という議論のようにも取れるのです。 ○菅野座長  効果のことは書いてなかったですか。競業避止義務の違反に対してはどういうことが できるのか。それは、おそらく違うと思います。競業避止義務を認めるかどうか、契約 を有効にするかどうかの判断は微妙に違うのではないかと思います。 ○労働基準局監督課長  資料1の19頁の一番最後の段落の前の辺りですが、「このため、競業避止義務を課す 個別の合意等や、これに基づく使用者の差止請求、損害賠償請求等の主張が認められる 場合については、引き続き議論を深める必要がある」とだけ書かれています。  基本は、そもそも義務が有る場合、無い場合ということで議論し、あとは効果に応じ て判断が変わり得るというのはありますけれども、そうするとすごく細かい議論になり ますので、中間報告のときにはこれで止まっていました。 ○荒木先生  その判断の考慮要素は同じなのでしょうけれども、考慮の仕方が変わってくる、とい う点も少し付記するというか、そういう点に注意する必要がある、という趣旨を出して いただければいいかと思います。 ○曽田先生  競業避止義務を規定すれば、その効果は自ずと出てくるわけですね。義務違反で、例 えば差止請求できるほどの義務違反なのか、それとも単純に損害賠償請求だけが認めら れるような義務違反なのかというのは、競業避止義務を規定しておくだけでもいいと思 うのです。その先にさらにそういう具体的な効果を規定する必要はないのではないか。 そこまで書いてしまうと、あまりにも競業避止義務を非常に大きく評価しているように なってしまうので、あまり適当ではないのではないかという気がするのです。 ○菅野座長  特に、契約法上できるかどうかわからないような法律効果を認めようというのでない 限りね。 ○曽田先生  一応それが規定されていれば、それは当然そういう効果は出てくるわけです。 ○村中先生  退職金規定のところで、退職の限度額だけが書いてあるものを、競業避止義務の定め と見て、同じように判断するかという形になるのでしょうか。 ○菅野座長  退職金も、退職金規定の中にちゃんと書いておかなければ、減額、没収はできないで しょう。 ○村中先生  書いてあった場合です。 ○菅野座長  書いてあった場合に、その解釈をどうするかです。 ○村中先生  そのときに、同じような要件を課すかどうかです。 ○菅野座長  それはその解釈で、個別ケースです。 ○村中先生  退職金は退職金でまた制度設計の問題として別途の問題があります。 ○菅野座長  報告書の中で、その点はもう少し整理した記述をしていただくということで、基本は この義務の有無の要件と考慮要素をどうするか、というので整理していただきたいと思 います。ほかにないようでしたら、兼業禁止、競業避止、留学・研修費用の返還につい ての議論はこのぐらいにして、本日の議論も踏まえ、「指摘に対する考え方」を中心に 整理したものを最終報告書に盛り込む作業をしていただきたいと思います。  「労働関係の終了」に移ります。解雇権濫用法理と整理解雇について議論したいと思 いますので、事務局から趣旨説明をお願いいたします。 ○労働基準局監督課長  資料5です。解雇について、これは労働側の意見として出されていましたが、解雇に は正当な理由が必要という書き方で、その立証責任は使用者にあることを明確にすべき ではないか。法律での書き方をこのようにすべきではないかということがありましたけ れども、これは右側の欄の二段落目に、解雇の関係については平成15年の労働基準法改 正で立法化された、解雇権濫用法理がありますので、それでやっていくことが大事では ないかという趣旨でこのように書いております。  次の段落で、解雇に当たり使用者が講ずべき措置というのは、解雇が有効とされるた めの要件として法律で規定すべきではないか。指針等ではなくて、法律要件にすべきで はないかということです。右側に書いてあるように、なかなか複雑な事実関係に対応し て、法律で書くのはなかなか難しいということです。解雇権濫用に当たらない、最低限 の解雇の類型ということで、労働者に原因があるとか、企業の経営上の必要性があると か、労働協約という形で示しつつ、あとはそれぞれの類型において使用者が講ずべき措 置は指針で対応することが最も適切であると書いております。  解雇に当たって、例えば警告とか再教育ということを書いていくべきではないかとい うことについては、一番右側に、そういう事前に一定の警告を必要とするようなことが ある場合も考えられます。あるいは、労働者に対して弁明の機会を付与することについ ては、懲戒解雇の場合に解雇に時間がかかって、その間に労働者が退職してしまうこと に対応できないなどの弊害もある。  労働組合とか過半数代表者に説明や協議をするという問題はありますけれども、被解 雇労働者の個人情報の保護などの観点もあるので難しい面もあるということを書いてお ります。また、その指針をどのように書いて、どういう効果があるかについては、また 改めて労働契約法における指針の性格という形で別途議論という形で、ここでは整理さ せていただいております。  「整理解雇関係」では、整理解雇の四要件を法律上明確に位置付けるべきだという考 え方、あるいは四要件や四要素にこだわらずに書くべきで、整理解雇の濫用判断につい て法的規制は書くべきではないという意見があります。これについては、解雇権濫用判 断の予測可能性を向上させて、紛争を予防・早期解決するために、必ず考慮に入れなけ ればならない要素を、裁判規範となるように法律で示すことは必要であるということ。  解雇が有効とされるための要件を定めると、例えば手続に一部問題があったが、人員 削減の必要性が非常に大きかった場合などに、それぞれの考慮要素間のバランスを考慮 した柔軟な判断ができなくなるために適当でないと整理いたしました。  整理解雇について、予測可能性が向上、あるいは使用者の講ずべき措置を示す必要性 等をどう考えるか。整理解雇というのは、労働者側に原因がないにもかかわらず解雇さ れるものであり、予測可能性の向上や使用者が講ずべき措置を示す必要性は高いだろ う。使用者が講ずべき措置の内容は、裁判例の四要件・四要素を基本としつつ、労働市 場の動向を踏まえてさらに検討すべきであると整理しております。 ○菅野座長  御意見をお願いいたします。いまのところも含めて、指針で書く意義とか必要性、適 切さというのがだいぶ出ているから、それは本当に議論したらいいと思います。それが 特に感じているところです。 ○村中先生  1頁の二つ目のところで言葉の意味なのですが、「解雇が労働者にとって大きな不利 益である一方で」の4行目の最後のほうで、「濫用に当たらないために最低限該当すべ き解雇の類型」というのは、権利濫用にならない解雇の類型ということですか。 ○労働基準局監督課長  例えば、労働者の思想信条を理由としてというのは駄目ですので、最低限として、例 えば労働者側に原因があるもの、企業の経営上の必要性があるもの、ユ・シ協定等によ るもの、それ以外のものは基本的に濫用に当たるでしょうということです。それでも、 もちろん濫用に当たる場合もたくさんあるわけですけれども、まず絞れるところまで絞 りましょうという趣旨です。 ○菅野座長  客観的に合理的な理由となり得るような、というようなことではないですか、違いま すか。客観的に合理的な理由となり得るような大きな類型を示す、という意味ですね。 そういう書き方のほうがわかりやすいのではないですか。 ○労働基準局監督課長  そう直させていただきます。 ○菅野座長  ここのところは、中間取りまとめのときにだいぶ検討したので、これでいいだろうと いうことであれば、金銭解決のほうまで一挙に進んでしまいたいと思いますがいかがで しょうか。 ○荒木先生  3頁の一番上のところの、「使用者が講ずべき措置の内容は、裁判例の四要件・四要 素を基本としつつ、労働市場の動向を踏まえてさらに検討すべき」とされる、この「使 用者が講ずべき措置の内容」というのは、具体的にはどういうものを想定しているので すか。 ○労働基準局監督課長  実際に使用者が整理解雇をするに当たって講ずべき措置の内容で、結局は四要件のよ うに手続をきちんとやる、理由がある場合、解雇の必要性がある場合に行うべきだと か、その四要件的な書き方をするということです。 ○荒木先生  2頁の下のところでは、「必ず考慮に入れなければならない要素を、裁判規範となる よう法律で示す」という話があります。これは、具体的には左のところに書いてあるよ うな、「人員削減の必要性、解雇回避措置、解雇対象者の選定方法、解雇に至る手続等 を考慮しなければならない」ということを書くということでしょうか。それと、使用者 が講ずべき措置というのがどう違うのか。 ○労働基準局監督課長  基本的には、法律で極めて短い言葉で書かれたことを、もう少しブレイクダウンする ということと、あとは代償措置的なことがもう一つ出てこようかと考えています。 ○労働基準局監督課調査官  資料4の3頁から4頁にかけての部分が整理させていただいたところです。3頁の一 番下の「いずれにしても」の段落で、整理解雇について「解雇権濫用の有無を判断する に当たっては、予測可能性の向上を図るため、考慮事項を明らかにする必要がある」 と。具体的にはこの四つです。単純に人員削減の必要性とか、こういうレベルのことを 明らかにすることについて議論を深める必要がある。これは、法律でやるのだろうと思 っております。4頁では、もう少しブレイクダウンして、使用者が講ずべき措置として 次の事項を指針等で示すことについて検討することも考えられると。 ○荒木先生  考慮要素を具体的にブレイクダウンしたようなもの、ということですか。 ○労働基準局監督課調査官  そうです。 ○菅野座長  外資系企業で、転職市場があるような場合には、転職を援助するような費用を持つと いうのも、そういう措置に入ってくるようになるのですか。 ○労働基準局監督課長  最近の裁判例では、確かにアウトプレースメント会社を紹介した、というのも判断要 素になったりしていますので、そういうこともあり得ると思います。 ○菅野座長  それに対して、そういうのがないような長期雇用の企業では、そういうのはそんなに プラスにならないということなのでしょうか。 ○労働基準局監督課長  東洋水産川崎工場事件は外資系ではないのですが、退職金に基本給の二か月分を加算 した割増退職金を支払うことと、会社の費用負担での再就職支援会社の利用を提案して いることなどの諸要素を併せ考慮すれば、解雇権を濫用したものであると認めることは できないというものもあります。 ○菅野座長  それについては、またそれ自体を詰めた検討が必要になるかもしれませんね。 ○荒木先生  講ずべきというと、何か作為義務があるような感じを与えます。要は、どういう考慮 を払った措置であれば濫用に当たらないかという判断ですね。講ずべき措置というと、 具体的にこれをしなければいけないというイメージになるので、上のほうの「考慮しな ければならない要素」と、「講ずべき措置」との関係がちょっと。 ○労働基準局監督課長  講ずるのは使用者ですので、解雇に当たって考慮するということも、もちろん講ずべ き措置の中に入りますから、解雇するに当たってこういう考慮という形になり得ます。 そこは、指針の書き方のところでも議論していただけると思います。 ○菅野座長  考慮要素ごとに、プラスにカウントされる措置とか、具体的措置とかそういうことな のでしょうか。権利濫用とされないために、されない方向でプラスにカウントされるよ うな措置という感じでしょうか。 ○労働基準局監督課長  はい。 ○村中先生  1頁から2頁にかけてのところで、ここは解雇一般について、例えば労働者側に弁明 の機会を与えるということをすると、例えば懲戒解雇の場合にもそれが適用されて具合 悪いことになるのではないかという趣旨ですか。 ○労働基準局監督課長  そうです。 ○村中先生  2頁は、説明・協議を、組合や過半数代表者から求められた場合にどうするかという ことで、これは行き過ぎではないかということですね。例えば、労働者のほうが積極的 に組合と協議してほしいとか、過半数代表者も交えて話合いをしたいということを言っ てくる場合もあるかもしれません。 ○労働基準局監督課長  それは、あり得ると思います。 ○村中先生  そういうものは、先ほどの指針のようなところで示していくことになるのですか。 ○労働基準局監督課長  それは、いろいろあり得ると思いますので、もちろんそれは否定するものではありま せん。 ○菅野座長  この書き方が、そういう場合もあるのではないかという書き方のほうがいいですね。 ○労働基準局監督課長  ちょっと行き過ぎというのは、直させていただきます。「などの問題もあるかもしれ ません」と。 ○菅野座長  いまのところも、同じように最終報告に盛り込むように、各指摘に対する考え方のと ころを、本日の議論を踏まえて直すところは直して盛り込んでいただきたいと思いま す。ほかにないようでしたら、金銭解決のところに入ります。事務局から説明をお願い いたします。 ○労働基準局監督課長  3頁の3の「解雇の金銭解決制度」ですが、考えられる指摘として、労働者のほうは 和解で金銭解決を求められるのでニーズはないのではないかということに対して、右側 で、労働者のほうがもう戻りたくないと思ったときに、解決金を請求できるという権利 が保障されるということでしたので、和解で使用者が同意した場合以外にも貰えるとい うことでメリットはあるということです。  違法な解雇を行った使用者に、金銭解決の申出を認める必要はないのではないかとい うことに対して、違法な解雇自体は無効とされているのであって有効になるものではな い。それまでの違法状態というのは是正される。未払賃金は当然払われるということも ある。  その後の問題としては、現実に職場復帰できない労働者にとっては、使用者から申立 てであっても解決金を得られるメリットがあるのではないか。そういう場合にも、公序 良俗に反するような解雇を行った使用者は申立てはできないのであるということを書い ております。  よく指摘されることとして、金銭解決を認めることは、金さえ払えば解雇できるとの 風潮を広めるのではないか。これについては、公序良俗に反するものは除外する、ある いは使用者の故意・過失によらない事情で、職場復帰が現実に困難だという特別な事情 がある場合に限るということから、金さえ払えば解雇できるという制度でないことを明 確にするということを書いております。  これは、日本経団連からの意見に出ていましたけれども、有期労働契約も同じよう に、金銭解決制度を導入するべきではないかということですけれども、金銭解決制度を 導入する前の問題として、それは解雇権濫用の法理と同じように、雇止めが客観的に合 理的な理由を欠き、かつ社会通念上相当と認めない場合は無効であるという扱いがまず あって、初めてその制度が使えるわけです。その確立を先行する必要がある。それを認 めるのであればこの制度は使えるということです。  それから、解決金の性格についてどのように考えるかということについては、解決金 というのは雇用関係を解消する代償措置の性格を有する。和解金や損害賠償とは完全に は一致しないのではないか。もちろんそういう側面もありますけれども、完全には一致 しないのではないかということです。  「労働者からの金銭解決の申立て」関係ですが、辞職の申立てはどの時点まで認めら れるのかについては、金銭解決を認める判決確定の日から一定期間、例えば30日以内に 辞職の意思表示をしなければ金銭の請求権を失うとしてはどうか。この場合は、辞職の 意思表示をしていないので、当然労働者としての地位はそのまま残るという考え方があ り得るのではないかということです。  「使用者からの金銭解決の申立て」関係です。いろいろ要件を限定していますが、こ ういう限定は非常に曖昧で、限定の機能を発揮し得るか疑問である。あるいは複雑な基 準は一般的には理解できない、ということを労働組合のほうから言われています。使用 者団体からは、「労働者の職場復帰が困難」であるというのは言う必要はないのではな いか、要件にすることは適当ではないのではないか。  両方からの意見がありますが、これについてはまず、労働者の職場復帰が困難である ということは、使用者からの金銭解決の申立てが認められるための大前提であり、使用 者による濫用を防止するためには必要である。「労働者の職場復帰が困難と認められる 特別な事情」にはどういうのがあるかについてはさらに検討する必要があるということ です。  どんなに要件を限定したとしても、やはり職場復帰を望む労働者が復帰できないケー スがあること自体が妥当でないという意見もありますが、しかし、それに対して右側で 書いているように、実際に職場復帰ができない労働者にとっては、解決金を得られるほ うがメリットがあるのではないかということを書いております。  使用者団体からは、解決金制度を法律に新たに設けるに当たり、企業における集団的 な労使合意までも要件とする必要はないのではないかということですが、これは使用者 と個々の労働者との間には交渉力格差があるので、集団的合意を噛ませる必要が出てく る。額の基準も含めて、あらかじめ集団的な労使合意を得ておく必要があるという考え 方です。  集団的な労使合意としてはどのようなものがあるかについて、解決金の額の基準につ いては、何をもって集団的な合意とするかについては、労使委員会の在り方なども含め て、さらに検討する必要があるのではないかということで、労使委員会、その他いろい ろあるということですので、労使委員会のところで議論があれば、またできるかもしれ ませんが、この場面ではこの程度で書かせていただいております。  それから、解決金が不当に低くならないように、解決金の最低基準みたいなのを定め る必要があるのではないか。もう一つは、支払うことができる金銭の額というのは、企 業の実情によっても異なるので、一律に決定することは困難ではないかということにつ いては、解決金が不当に低くならないようにしつつも、企業の実情に応じた決定ができ るようにするために、解決金の額の基準を個別企業の集団的な労使合意によって決定す ることにするということです。  あとはその下に書いてありますように、集団的に決定したというのであれば、額の最 低基準は要らないという考え方もあるということです。一番右側に書いてあるように、 確かに集団的な労使合意があるから、不当に低くならないということもあるけれども、 より確実なものとする必要があれば、額の最低基準を法律で定めることについても検討 すべきではないかということもあります。  使用者から申し立てる金銭解決の場合に、裁判においてのみ労働契約の解消を認める ことについてどう考えるかということです。一番右側にあるように、使用者による安易 な金銭解決を防止するとともに、金銭解決について労働者が納得するための適正な機会 を確保するために、裁判は必要ではないかと指摘しております。 ○菅野座長  随分力作でいっぱい書いてありますが、これはどこでも非常に注目されている制度で す。 ○曽田先生  質問ですが、右側の各指摘に対する考え方の二段目で、公序良俗に反する解雇を行っ た使用者からは金銭解決の申出を認めない。あるいは、使用者の故意又は過失によらな い事情で、労働者の職場復帰が困難な特別な事情がある場合に限ると書かれているので すが、公序良俗に反する解雇というのは、具体的にどういうことを想定しているのでし ょうか。 ○労働基準局監督課長  もともと労働者を解雇する段階で性、思想信条、労働組合といった差別的な意図をも って解雇した場合については、職場復帰させるしかないということです。 ○菅野座長  強行法規違反ということですね。 ○労働基準局監督課長  そうです。 ○菅野座長  みんな強行法規でしょう。 ○労働基準局監督課長  はい。 ○菅野座長  公序良俗という概念を使わなくても。 ○労働基準局監督課長  強行法規というのは、解雇権濫用の法理は強行法規かどうかということがあります。 ○菅野座長  特別な強行法規とか、個別的に解雇を禁止している規定という意味で、それ以外に何 か考えていますか。 ○労働基準局監督課長  労働基準法の最初に書いてあるような、差別的なものが念頭にありました。 ○菅野座長  労働基準法第3条ですか。 ○労働基準局監督課長  はい。あとは性別みたいなものです。 ○菅野座長  性別は、男女雇用機会均等法でカバーされていない性別というのは何かありますか。 ○労働基準局監督課長  ないと思います。あとは労働組合の所属です。 ○菅野座長  それも、第7条第1号は強行法規というのが最高裁の判例です。それから、いろいろ ほかのもあるでしょう。公益通報の解雇とか、そういうのも入ってくるのでしょう。 ○労働基準局監督課長  はい。 ○菅野座長  それを除く理由がないということになると、強行法規でもいいような気もします。確 かに、公序良俗の点でけしからんという意味合いも込められていますね。 ○労働基準局監督課長  強行法規でいうと、30日前の解雇予告の違反も強行法規です。 ○荒木先生  強行法規だと、いろいろな解雇がかかわってきてしまいますね。 ○菅野座長  解雇禁止規定かな。 ○荒木先生  現在、解雇禁止規定があります。育児休業を請求したこととか、申告したこととか、 現在解雇禁止規定に反したものは、大体ここでイメージされているものとかぶっている のでしょうね。 ○労働基準局監督課長  正当な権利を行使したことでいうと、そういう解雇に当たる事例もあるかもしれませ ん。 ○荒木先生  従来の差別的解雇、報復的解雇というものですね。 ○労働基準局監督課長  そうですね、差別的なのと、正当な権利を行使したことに対する報復的。 ○菅野座長  そのような書き方でよければ、そちらのほうがわかりやすいですね。 ○曽田先生  有効、無効とされるときというのは、大抵そういう場合ではないのですか。解雇無効 とされるのだけれども。 ○労働基準局監督課長  整理解雇で、まだそこまで至らないような。 ○曽田先生  整理解雇で、そこまで要件がないと。 ○労働基準局監督課長  あるいは懲戒解雇で、遅刻を何回かしたというような場合。 ○菅野座長  重すぎる解雇ですね。 ○曽田先生  金銭解決の申出を認めるということは、申出があったときには、労働者はそれに拘束 されるという趣旨ですね。使用者側に、金銭解決の申出を認めるということは、認めら れた申出に労働者は拘束されると。 ○労働基準局監督課長  将来に向かって、契約関係が解消されるということです。 ○曽田先生  将来に向かって、その申出によって解消されるということですね。 ○菅野座長  金銭解決についてはまだあるでしょうし、詰めておかなければいけないことが確実に ありますので、本日は途中で中途半端になりますが議論を終了させていただきたいと思 います。次回は、金銭解決のところから、労働関係の終了について残りの議論をお願い し、それから有期労働契約についても議論をお願いしたいと思います。できれば、その 次に御議論いただく予定の総論についてもそこに多少入れればありがたいと考えており ます。  事務局から、次回研究会の連絡をお願いいたします。 ○労働基準局監督課調査官  次回の研究会は、7月12日(火)の17時から19時まで、厚生労働省6階共用第8会議 室で開催いたします。 ○菅野座長  本日の研究会はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省労働基準局監督課政策係(内線5561)