05/06/24 今後の労働時間制度に関する研究会第5回議事録            第5回今後の労働時間制度に関する研究会                     日時 平成17年6月24日(金)                        17:00〜                     場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○諏訪座長  定刻となりましたので、ただいまから第5回今後の労働時間制度に関する研究会を開 催させていただきます。本日はお忙しい中を、また蒸し暑い中をご参集いただきまして 大変ありがとうございます。  今日の出欠ですが、守島先生と山川先生から、それぞれご欠席というご連絡をいただ いております。また、今田先生は少し遅れてご参加ということですから、開催させてい ただこうと思います。  本日の議題ですが、ヒアリング調査を継続させていただきます。前々回からヒアリン グを行ってきておりまして、関係団体や個別企業の担当者の方々から大変貴重なご意見 を頂戴しているところです。本日は、前半に日本経済団体連合会から、後半に全国中小 企業団体中央会からヒアリングをさせていただきます。早速日本経団連のヒアリングを 始めさせていただきます。  出席者を紹介させていただきます。常務理事の紀陸孝様です。どうぞよろしくお願い いたします。日本経済団体連合会からは、あらかじめヒアリング事項及びホワイトカラ ー・エグゼンプションに関する提言についての資料を提出していただいておりますの で、資料をご参照いただければと存じます。紀陸様、よろしくお願いいたします。 ○紀陸様  資料のほかにレジュメを付けさせていただいておりますが、ヒアリング項目の順序に 沿って私どもの考え方を述べさせていただきます。  ヒアリング項目の(1)は「裁量労働制について」ということで2つ項目をいただい ております。まず(1)の上の方の○の点については、基本的に、現行の専門業務型、 あるいは企画業務型、いずれも労使の働き方に対するニーズに十分に応えているかとい うと、そうとも言いにくい面があると私どもは考えております。裁量労働制は、みなし 労働時間の仕組みをとっており、所定外、深夜、休日、休憩時間は適用除外になってい ない点が主な不満であります。  加えまして、この2つの裁量労働制とも、適用の対象範囲というのは非常に限定され ているという点で不満です。専門業務は19業務に限定されています。また、企画業務型 の方も、企画・立案・調査・分析となっておりますが、実際に会社の現場の中では、い ろいろな仕事にまたがってやっているケースもたくさんあります。行政解釈で一定の範 囲を限定されていますが、実際の現場というのは、それだけの仕事でなくて、領域的に はいろいろな仕事にまたがっているという業務の運営実態があります。そういう点から も、この対象範囲の解釈というのは非常に狭いと思っております。  また、導入の手続は、企画業務型裁量労働制の場合に、労使委員会の設置が必要で す。その際の決議要件が5分の4というのは、縛りとして非常に厳しい。労使自治の考 え方で物事を決めようという基本的な点は、私どもも大いに評価すべきであると存じま すが、それにしても、5分の4以上の要件というのは相当に厳しいものではないか。10 人いたら労使5人ずつがメンバーとなって、そのうち2人を超えて反対をされれば「5 分の4以上」はクリアできないわけですので、非常に厳しい要件ではないかと思ってお ります。  企画業務型の裁量労働制で、本人同意がその要件となっておりますが、実際の会社の 中でチームを組んで仕事をするような場合に、1人でも反対だという人がいると、その 職場の運用がうまくいかない。結果的には、そういう人を異動させるような必要性すら 出てくるわけで、賃金処遇で一種の不平等が出てくるようなことにもなりかねないので はないかと思っております。  次は裁量労働制の見直しについてどういう要望があるかという点です。基本的に私ど もは、ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入を求めたいと思っております。し かし、それは次に置きまして、現行制度の中でという前提で問題解決を考える場合の要 望を申し上げたいと存じます。  先ほど述べたように、効果としては、みなしの労働時間の仕組みではなくて、適用除 外の方向で行くべきではないか。現在の労基法第41条の適用の拡大を求めたいと思って おります。すなわち、対象業務の範囲拡大、特に労使で適用対象業務を拡充できるよう にならないかということであります。  特に企画業務型裁量労働制にしぼって、具体的に5つほど指摘させていただきます。 1点目は、本人同意の要件を削除していただけないか。2番目は、労使委員会の委員の 決議要件が現行5分の4ですが、これを更に緩和していただけないか。3点目は、労使 委員会の決議事項について、労使の自治というものをもう一歩進めていただけないか。 4点目は、労基署への定期報告が現行は6カ月に1回になっていますが、この半年に一 回というのは多いのではないか。もう少し長い期間、1年でもよいのではないかと思い ます。あるいは、監督署のチェックが必要であれば、定期監督の際にチェックを行うよ うな方向に改定していただけないか。5点目、これは少し実務的な話になりますが、全 社的に同じような内容、同じような形態の業務があれば、事業所ごとの委員会の決議で はなくて、全社一括の労使委員会の決議で対象業務を選定する、そういうことができな いだろうかということです。以上がヒアリング項目(1)の裁量労働制についてです。  (2)の「労働時間規制の適用除外について」申し述べたいと存じますが、お手元に 概要版でA3の資料を配らせていただきましたので、それに沿って説明させていただき ます。  「ホワイトカラーの働き方」について、先生方もご承知のとおり、最近、働き方の中 身は従来と非常に大きく変わってきました。労働時間の長さではなく、仕事の成果、評 価によってその個人の処遇を行うという、広い意味での成果主義が浸透してきていると 言えるかと思います。成果主義についてはいろいろな評価がありますが、本質のところ は、単なる年齢とか勤続とかでなくて、アウトプットでそれを適正に評価して個人の処 遇に結び付ける、そういう形のものが今相当に浸透してきているかと思っておりまし て、そういう働き方に即した労働時間管理というものが必要ではないかと思います。  基本的に私どもは、ホワイトカラーの方とブルーカラーの方とを一律的に扱うという ようなことが今の法律の根底にあるのではないかと思っておりまして、ホワイトカラー の働き方が変わってくるのであれば、それに即した管理の変更ということも必要であろ うと思います。  特に、結果として、残業代は払わないで済むというコスト管理の面だけではない点を 強調したいと思います。上から3つ目の箱の中に「労働者」と書いて、多様な働き方、 柔軟な勤務時間、仕事と生活の調和と書いてありますが、どんどん少子化の時代になっ て、働く人が自分で働き方の中身をできるだけ自律的に決められるような仕組みはない だろうか。仕事の内容がどういうものかによって、それは当然変わってくるわけです が、それでも、できるだけアウトプットを高める工夫を、働く人本人が管理できる。そ ういう方向に持っていった方が、アウトプットとしても高まるであろうという意図で す。企業の方にとっても、それは結果的に生産性の向上という格好で評価できますの で、労使のニーズが合うという趣旨で、制度改定は必要ではないかということです。  労働時間の柔軟化を図るための制度は今までいろいろ導入されてきており、かなりき め細かい制度はあると思うのですが、それにしても、裁量労働制の部分をもう一歩先へ 進めることができないか。現行で管理監督者の適用除外が設けられていますが、それに 加えて、仕事の専門性と時間管理について、裁量性の高いホワイトカラーを労働時間等 の規制の適用除外とする仕組み、それをここで提言させていただいているわけです。  左下の横長のところに「エグゼンプションの具体的内容」と書いてありますが、これ については2つの仕組みを考えております。1つは、現行の専門業務型裁量労働制の対 象部分。ここは仕事自体の範囲も相当にきちんと確立されていて、対象業務としても、 はっきりしております。私どもが具体的な内容を決める場合に、賃金要件と対象業務と 2つの観点から対象を考えたいと思っているのですが、19業務については、対象範囲が はっきりしているという観点から、賃金要件は不要であろう。  それ以外の裁量的業務については、ある程度法令で対象範囲を決められないか。ただ し、世の中の動きに合わない、あるいは個別の会社でいろいろな仕事がありますので、 そこは労使で、例えば労使協定なり労使委員会の決議で、対象業務の範囲拡大を考えた らどうか。  その場合でも、賃金について、ここでは1つ例示的な考え方ということで示しており ますが、例えば年収が400万円未満の方々を対象にするような場合ですと、残業代が入 らなくなって生活の面でも圧迫があるとすれば、400万円という部分は、仮に専門性と か裁量性があるにしても、これを適用対象にするのが妥当ではないだろうということ で、この400万未満の方々は対象外にしました。  700万円と400万円で切っております。400万〜700万円、これは中間的なレベルといっ ていいかもしれませんが、ここについては労使委員会の決議で対象を決める。そして 700万円以上の場合には労使協定、あるいは少し要件がきつい労使委員会の決議で考え る。このようなことで対象の範囲を限定してはどうかと考えます。  国税庁の民間給与の実態調査で、日本のサラリーマンの収入の平均値が440万円とい う数値が出ております。そのデータによりますと、700万円以上ですと上位層の20%く らいが対象になります。平均が440万円で、それより1割程度下のところが400万円にな ります。400万〜700万の層辺りを対象にする場合には、労使委員会の決議で対象の範囲 を決める。このように賃金と手続きの2つの要件で考えるというのがこの案です。  その他の要件に話を移します。労使委員会の決議や労使協定は、基本的に会社の中で 定めることですが、実効性を担保するという意味で、監督署にちゃんと届ける。しか し、それによって効力が云々ということではなくて、届出義務の違反については罰則を 科す方向で、きちんと担保してはどうかということがあります。  次に、ホワイトカラエグゼンプション導入と合わせて見直すべき点です。こういう制 度の導入に合わせて、現行で管理監督者に深夜割増規制がかかっていますが、深夜の部 分だけ労働時間の把握が必要になるというのは、適用除外と言いながら、それは部分的 に制度のいびつな点ではないかと考えています。もう一歩適用除外を進めて、深夜業の 割増賃金支払の規定を見直すべきではないか。かつ、ここで入れている全部のエグゼン プションも同じような扱いをすべきであると考えています。  ただし、無制限に働くようなことがあっても非常にまずいわけで、私どもとしては、 健康確保のための措置、あるいは苦情処理の措置、それをきちんと入れるべきであると 考えております。  お手元の報告書「提言」本体の15頁に労働者の健康への配慮措置についてとして、過 度の働き方にならないように、いくつか健康管理の仕組みの考え方を入れております。 しかし、会社によって事情が違いますので、何らかの形で、いずれかの仕組みを、労使 協定なり労使委員会の中できちんと取り決めて実行するということが必要ではないかと 考えます。  苦情処理に対しましても、いろいろな労働者がおられるわけでして、現場内に苦情処 理の窓口を置く、人事とか総務の部門に置く、労働組合があれば労働組合の中に苦情処 理の窓口を置く、あるいは労務担当の役員に声が届きやすいように、目安箱的な仕組み をつくる、社外の弁護士やコンサルタントのところに苦情受付の仕組みを設ける等いく つかの方法が考えられるわけで、そういう措置も同時に入れるべきであると考えており ます。これがエグゼンプションの話です。  (3)の管理監督者の問題に移らせていただきます。ここは従来から経営側が申し述 べてきている点ですが、現行の労基法第41条第2号で非常に抽象的な規定が置かれて、 それについて行政解釈や通達が出ているわけですが、基本的に、現場の実態に即して管 理監督者を把握する必要があるかと思います。  今、会社の中の組織的な仕組みというものがいろいろ変わってきております。従来は 結構縦に長い管理職のラインというものがありましたが、それがだんだん狭まってき て、いわゆる組織のフラット化、あるいは役職位のフラット化が進みつつあります。そ うなるとどうなるかというと、基本的に、上の方から下の方に権限を移譲するという仕 組みを中に入れていかないと、その組織の運営はできないわけです。従来のように、経 営者と一体となってという、言ってみれば、上から管理監督職を見るという形ですが、 もう少し現場の目線に立っていただき、管理的な仕事をしている人たちは相当に増えて きていることをご理解いただければ幸いです。  スタッフ職などは典型的かもしれません。スタッフの人は、部下はいないけれども、 外部といろいろ折衝するときに、意外に大きな権限を持っている。そのような実態にな ってきているわけです。実際に、いろいろな会社でどういう人が管理監督者かというの はかなり見極めが難しい。監督官の方々の運用も、いろいろな意味で差異があるわけで すが、この部分についても、もう少しきちんとした運用ができないであろうか。文章で 書くと非常に難しい点ではあるかと思いますが、少なくとも、仕事のやり方や会社の運 営の仕方を変えざるを得ないという実態について、もう少し監督署の方々の実態認識を お願いしたいと思っております。  深夜労働についても、適用の除外をお願いしたいのです。基本的に、管理監督職は労 働時間管理を自らすることによって、対象の外になるわけですが、「深夜労働だけは」 ということになりますと、時間把握が必要になってきます。健康管理の面では何らかの 確保、担保が必要でありますが、自ら疲労の蓄積を感じた人は申し出て、医師による面 接指導を受けさせるようにするというようなことで安衛法の法案が出来ております。し たがって、基準法上も、割増賃金の深夜の部分は外すべきです。今は昔と違って、賃金 水準は相当高まってきておりまして、管理職自体が日常生活に大きなダメージがない限 り、深夜割増の適用を外すということも組み込むべきではないかと考えております。  (4)の「年次有給休暇の取得促進」という点について私どもの考えを述べさせてい ただきます。確かに年休の取得は人によってかなり差異があります。全部取ってしまう 人も多いし、なかなか取らないという人も現実にたくさんいるわけです。  海外と比較して、日本の取得率が低いとよく言われますが、私どもは取得率につい て、平均的にみんなが取るのが是だとは言えないであろうと考えています。日本の場 合、祝日も相当増えておりまして、今は年間で15日だそうです。そうすると、「104+15 =119」、約120日休みがある。年のうち3分の1は休みということです。普通のサラリ ーマンですと完全週休2日ですし、最近は、休日に付けて連続して休めるような仕組み もできておりますので、もっと連続して休暇を、というニーズはそんなに多くはないの ではないかと考えます。  当然ながら、取得率を上げるためには、労使で決める計画年休の仕組みが大事だと私 どもも思っていますが、さらに発展させて、これは法律上いろいろ問題があるかもしれ ませんが、一定日数以上の年休については、使用者の方で時季を指定して休んでもら う。時季の指定権は使用者の方が持って、それで休暇の取得率を上げる。個人の権利で すから、全部というわけにはいきませんが、ある程度の幅を決めて、使用者に時季指定 権を与えるような内容の形ができないかと思います。  (5)は割増賃金の問題です。割増賃金の率を高めると、所定外労働の削減になるの ではないかというようなご意見もあるかと思いますが、かえって逆ではないかと考えま す。だいたい、残業して賃金をという人が結構多いわけですし、時間外の単価が上がれ ば、かえって所定外労働が増えてしまうようなことにもなりかねないのではないかと思 っております。  今、長時間労働が良いと思っている企業というのは基本的には乏しいのではないかと 思っております。いろいろな工夫があって、ノー残業デイとか、一定時間が来たら一斉 に電気を消して社内から出ていくというような仕組みもとっているところがあるわけ で、割増率云々ということが所定外労働の削減に果たしてつながるかというと、私ども は大いに疑問ではないかと思っております。大雑把ではありますが、5点について私ど もの考え方を述べさせていただきました。 ○諏訪座長  どうもありがとうございました。それでは委員の皆様からご自由にご質問、ご意見を いただきたいと思います。 ○佐藤様  お話いただいたことの確認という性格が強いのですが、1つは、A3の図の右上のと ころで、ホワイトカラーの働き方の特性などを踏まえて、時間的な長さではなくて成果 で処遇するという傾向である。現在のホワイトカラーの働き方は裁量制が拡大している とか、多様だとかということをお書きになっているわけです。お話の中でも、組織のフ ラット化の中で権限を移譲されて、ある種裁量度の高い働き方が増えてきているという ようなニュアンスのことをおっしゃったと思うのです。  妙なことを伺うようですが、実際に裁量度の高い仕事というものがそんなに多いのか ということがあります。これもいろいろな調査があって、その調査の結果にもよるので すが、いわゆる通常の職種で企画的な業務をやっている人たちに対して、裁量度がある のかと聞きますと、実はあまりないと。それから、本来職種特性としてはあるのだけれ ど、業務が多すぎて自由に裁量が発揮できるような状態になっていないとか、そういう 現状があるようにも聞いているわけです。  実は、その辺のところの認識がとても大事だと思っております。要するに、裁量度の ある仕事は本来たくさんあるのだ。しかし、現行法の仕組みの下では狭すぎるのでカバ ーできていない。したがって、現状に合わせるならば広げるべきだと、こういうロジッ クでお話されていると思うのですが、まずその出発点のところです。そうであるがゆえ に、そこが大事になってくると思うのですが、その辺りについて、紀陸常務の方でお調 べになっているものなど、追加的にお話していただければと思います。 ○紀陸様  私どもも、ホワイトカラーのそんなに広い部分が裁量労働に関わる分野だとは思って いるわけではありません。この19の業務のほかに、法令で定めたもの、かつそれに加え て、我が社ではこの範囲はとかと、労使協定で決める。こういうことによって、かなり の領域がカバーできると思っておりまして、そんなにどんどん広がるようなものではな いと思っています。  よく企業から声が出てくるのは研究開発の分野です。今現在でも、研究開発について は、労使協定で裁量労働制の導入はでき得るはずなのですが、本当にいろいろな企業に そういった仕組みがきちんと整ってしているかというと、意外とそうではなくて、労使 協議の仕組みすらないところも、現実にはたくさんあるわけです。そこで、かなり専門 性が高いという研究開発の人は、管理職と同じような形で適用除外ができるということ が可能になれば、かなり使い勝手がよくなる。そういうことによって労働時間の柔軟化 が進んでいく、現実にはそういう流れにあるのではないかと思っています。ホワイトカ ラーだから裁量の対象になる、というものではないと思っていまして、そこは個別企業 の中で、労使がもっと、今よりもう少し柔軟な形で適用の範囲を決めていけばよいので はないかと思っています。 ○佐藤様  あくまでもその職場の特性を一番よく知っている方々がその観点から議論して、範囲 を確定していくという考え方なわけですね。 ○紀陸様  そうです。結局、企業の中で、それこそ研究開発になると、一時期にずっと集中して やることが、どうしても必要なわけです。そこの部分は、労働時間の上限規制があると 細切れになってしまう、そういう不満はかなり多いのです。だから、そこの部分はいっ そのこと、プロジェクトが終わるくらいの期間は除外の制度にする。そういうふうにし ても、そんなに大きなマイナスというのですか、悪影響は出てこないのではないかと思 っております。そこはまさに労使で話し合って範囲を決めて、柔軟に運用できるような 形にした方が、働く人本人のレベルも上がっていく要素が増えるでしょうし、年収要件 もあるわけですから、そんなに無茶苦茶に広がるものでもないだろうというようなイメ ージを持っています。 ○佐藤様  業務量の方は、どうですか。つまり、本来裁量性のある仕事なのだけれども、それを 発揮できるよりも上回るような業務量なので、もうこなすしかないような状態になって いるので裁量的にできない、というような指摘もあるのですが、その辺りはどうです か。 ○紀陸様  それも実態を見ないとわかりませんが、仕事の割り振りを会社の方でどういうふうに やるかにかかるわけです。私もはっきりした表現ができにくいところがありますが、突 発的に大量の受注があったときに、チームを組んで、それを何人で回すか。あるいは、 いついつまでの目標を達成するために、どういうチームを組んで、人を集めて、プロジ ェクトをつくるか、現実にはそういうことでしかコントロールできないわけです。業務 量のコントロールというのは、まさに仕事のやり方の問題にかかってくるわけでありま して、そこは労使でチェックの仕組みを中に入れていくということで、極端な形になら ないように運用していくしかないのではないかと思います。 ○佐藤様  そこの職場をよく知る労使が、やり方も含め、量も含め、議論を尽くしてやってい く。その方がいいだろうと、こういう考え方ですか。 ○紀陸様  そうです。 ○佐藤様  追加的にもう1点伺います。深夜のことなのですが、現行でも、管理監督者は、そこ の部分がかぶさっているので時間計算しなければならないという話になっているという ことを、実態と併せて考えると、それは外した方がよいのではないかという指摘なので す。  それもまた現状なのですが、いわゆる10〜5時までの時間帯での業務というのは、非 常に多頻度にあるのか。このペーパーでも、グローバル化する中での対応が求められて いる中では、これからますますニーズが強まっていくとお書きになっているのですが、 それがそんなに高頻度であるものなのですか。 ○紀陸様  いわゆる管理監督者のそれぞれの仕事の内容にも関わるのです。海外との関係がある 仕事、それから非常に短期間で成果を上げなければいけないような仕事の内容がありま す。そういうものは恒常的に、頻繁にあるということではないと思いますが、部分的に は出てきています。常に海外と応対しなければいけないところは、朝と晩がまさに逆な ものですから、どうしても、そういう所では必要な仕事になってくるでしょう。それか ら、緊急的に何かやらなければいけないような場合がありますので、そこにある程度の 人員を投入するということでいくと、この問題にぶつかってくるわけです。  実態がどうのこうのということのほかにもう1つ、労働時間管理を自分でやってよい と言いながらも、それは建付けとしておかしいということです。そこの部分だけ時間把 握しなければいけないということはどういうことなのだろうかという、素朴な疑問にな るのですが、その2点です。 ○西川様  いくつか質問があります。1点目がヒアリング項目の(1)、裁量労働制の見直しに ついての要望のところでご説明があったことです。特に企画業務型の方について、様々 な仕事にまたがっているので、対象範囲の限定が難しいというようなご説明があったと 思うのです。実態としてはそうなのだろうと理解するのですが、果たして限定が難しい のが努力をしていないからなのか、雇用システム上それは全く不可能なのか。  欧米でよく言われることは、職務とか役割とかの範囲がかなり明確である。それに比 べて、日本の場合はその辺が曖昧であるということなのですが、努力をしたら、それを もう少し明確にすることが可能なのかどうかという点が1点目の質問です。  2点目の質問です。この提言を読ませていただき、また先ほどの説明の中でもあった のですが、3頁目に労働時間の概念を「賃金計算の基礎となる時間と健康確保のための 在社時間や拘束時間とで分けて考えることが重要である」というようなことをおっしゃ っているのです。健康確保のための在社時間、拘束時間についてどのように考えている のか、その辺のご説明があまりなかったように思いますので、是非その辺を伺いたいと 思います。  3点目ですが、A3のチャートの右側の方の「ホワイトカラーの労働時間法制に対す るニーズ」の労働者側のところで、「仕事と生活の調和の実現」というのがあります。 そこでのご説明で、働く人が働き方の中身を決められる、管理できるというような説明 の仕方をされたと思うのですが、実際に、この点の中身というのはどの部分をおっしゃ っているのか。その3点です。 ○紀陸様  まず1点目の裁量労働制の範囲です。ここは今現在の企画業務型裁量のところの仕事 の対象を、この範囲の仕事だったらできますが、こちらのものはできませんというよう に、ガイドラインの中に相当細かく書かれています。しかし、私の方は、営業や人事な ど、いくつか領域別に記述がありますが、ああいうものをいくら書いても、それに当て はまらない仕事というのは現実にあるわけです。机の上で文章を書いて、これが想定さ れる領域だと、いくら書いていっても、それだけで追いかけられるかという話なので す。極端に言うと、かなり細かいところまで説明を加えるようにしても、限度があると 思っているのです。だから、どの範囲にするかは労使で決めればよいのです。そういう ふうな労使の話合いができるようなことに早く持っていった方が、意味がある制度にな ると思っているのです。  私どもは従来から、労使協議の仕組みをもっときちんと、大企業だけでなくて、中堅 ・中小も入れられるようなところへ早く持っていこうと、そういうプロパガンダをずっ としてきているつもりなのですが、法令で細かく書いて、それで本当に担保できるかと いうと、そうではないだろう。やり方としては逆で、もっといろいろな形で、労使協議 あるいは労使協定で決めるような仕掛けをつくる方に力を入れることが大事だと思って おります。それで決めれば、あんなに細々と、それこそ何頁にもわたって書く必要がな いわけです。大事なことは両方が納得して「これでいきましょう」と言えば、もうそれ でいいわけです。法令の解釈とか通達とかガイドラインでいくら決めると言っても、追 いつきっこないのです。外から見ている人は、会社の中の仕事がわからない。働く人の 生活や健康、そういうものが担保されていて、「では、これでいきましょう」と納得し て決められれば、それでいいのではないかと思うのです。あまり細々と、それこそ「箸 の上げ下げまで」みたいにやっていくと、きりがないようなことになってくると思いま す。問題は、労使でやったものをどういう形でチェックするかで、本当をいうと、そち らの方が大事だと思っています。  今いろいろな会社で、傾向的に分社化しています。先ほどフラットといいましたが、 大会社もだんだん細かく分けて、事業部制にしたりして、相当に組織を変えているわけ です。そうしていたら、1人でいくつもやらなければいけないとか、いろいろな仕事が またがって出てくるわけです。まさに管理監督的なところと、そうでない定型的な業務 が交じるとか、様々です。しかも、基本的にはどんどん人の数が減っていくわけですか ら、相当に異動があるとか。これはアバウトな言い方ですが、少ない人数でいろいろな 仕事を効率よくやるということが絶対に必要になってくるわけです。  また、そこでコストの競争をしなければいけないわけですから、当然ながら、生産性 の向上というのが今までより必要になってくるわけです。だから、そこのところで労使 が話し合う方向で行ければ、その方が効率はよくなるのではないかと思っているので す。 ○西川様  質的な仕事であるから、言語的に規定することが難しいという話ですね。 ○紀陸様  そうです、おっしゃるとおりです。 ○西川様  最初に伺ったときに勘違いしまして、要するにルーチンワークとノンルーチンワーク が混在していて。 ○紀陸様  ええ、それもあります。例えば、どんどん異動しますよね。部門によっては混在する 仕事をしているけれども、タスクチームをやるときはそうでない単純・定型はもうやら ないで、こちらの方の仕事だけを一定期間やってくれと、そういう人の使い方を結構す るわけです。  1人の人だって、一定期間は単純的なものと高度のものと交じっている。チームに入 る場合には、専門的なことだけやる。単純・定型のところは他の人、例えば派遣に入っ てもらうとか、そういう働き方というのは結構あるわけです。 ○西川様  それは切り放すことができないということですね。 ○紀陸様  そうです。 ○西川様  健康確保のため云々のことについては、どうなのでしょうか。 ○紀陸様  3頁のところですね。今、基本的に会社の中でいろいろな時間管理をすることがあり ますが、一番多いのは出と入りの時間、会社に入ってから出るまでの時間を何らかの形 でつかむことなのです。私どもとしても、それは大枠としてやむを得ない部分だと思い ます。安衛法の精神ではないですけれども、管理監督であっても無制限というわけには いきません。ですから、そこを何らかの形で会社がチェックしようと思うと、会社に入 った時間と出る時間を、最低限大枠としてつかむ。あとは、実際にどのくらいが労働時 間なのか分かりませんから、それはまた別の仕掛けで確認する。健康確保の場合、最低 限そのくらいのことは必要なのかもしれないという感じはありますね。 ○西川様  把握はしているけれども、マックスがこれだけだというような考え方はしないという ことですか。 ○紀陸様  それは会社によります。労働の密度がどのくらいかによっても違うでしょう。例え ば、労働時間が比較的短いといっても、肉体的にかなり負荷があるとか、そういうこと が違います。だから、マックスがどのくらいというのは、そういうことも含めて決めれ ばよいと思います。  仕事と生活の調和の部分ですが、ある仕事を仕上げるのに、1日8時間、1週間で40 時間という枠があるけれど、その中身は自分で考える。極端に言いますと、3日間で集 中的にやってしまって、あとの2日間は、ほんのわずかでよい、あるいは出なくてもよ い、という形もあるだろうと思うのです。  これから共働きの世代の方が核になりますよね。ほとんどそういう形になってくるで しょうから、配偶者と相談して、1週間の使い方を自分たちで考える。アウトプットを 基本的に会社に投げて、あとは家でやるというようなこともあり得ますし、そこはいろ いろな形が出てくるわけですが、仕事と家庭の時間の割り振りというのですか、そうい う意味での選択肢があった方がいい、私の方はそういうふうにイメージしております。 ○西川様  スケジュールと働く場所、その辺がこの中身で指しておられる部分ですね。 ○紀陸様  そうです。典型的に、こういうところは、まさに裁量性が高い部分があれば、自分で 管理できるわけですし、逆にそういうことを目指していた方がよいのではないかと思い ます。 ○水町様  いくつか質問がありますが、単純な質問なので、簡単にお答えいただければよいと思 います。まずA3のチャートについて、いくつか伺いたいのです。ホワイトカラー・エ グゼンプションの現行の専門業務型裁量労働制のところで、労使委員会や労使協定のこ とが入っていませんが、ここは何で入ってこないのか。もし労使で決めていくというこ とを重視するのであれば、ここでも労使委員会なり労使協定が入ってくるのが自然な考 えなのではないかというのが1点目です。  2点目はその下のところです。400万円未満のところがエグゼンプションの対象外と なっていますが、これは、現行の管理監督者で、場合によっては400万円未満で、管理 監督者としてエグゼンプションされている人が、この改正によってエグゼンプションの 外に出てくる。そういうことも考えられた上でこういうふうにされているのかというこ とです。  3点目は労使委員会のあり方です。現行の労使委員会の、特に労働者側委員というの は、過半数組合ないし過半数代表者がその委員を指名することになっていますが、必ず しもそれが多様な意見を反映していない。組合員でない人もいますし、組合がある場合 に、少数組合である場合もある。そういう意味で、多様な意見を吸い上げる場合には、 労使委員会の労働者側委員の選出の仕方をもう少し工夫して、企業の中にあるいろいろ な意見を吸い上げるということに対しては、もちろん賛成だとお考えになっているの か。それとも、それは困るとお考えになっているのか。  もう1つだけ伺います。先ほど、15頁にある労働者の健康への配慮措置について、労 働時間と切り離してこういうことをやるべきなのではないか、とおっしゃっていました が、それは今まで実際に行われてきたのか。もし、それが実際に健康面での改善につな がっているような例があれば教えていただきたいのです。 ○紀陸様  この19の業務とそれ以外のものとの仕切り分けですが、私どもとしては、この19の業 務というのは、職務の範囲としてかなりはっきりしている。SEやデザイナー等、一種 職種的な賃金、職務給的賃金の対象にもなり得るものと。 ○水町様  切り方はそうなのですが、実際の中身で過剰労働の問題があったような場合に、現行 で労使協定が入ることがあります。もしそこで裁量労働に関して企画業務型と同じよう な問題があるとすれば、そこも労使で話し合いながら柔軟に進めていこう、というよう な考え方はないのでしょうか。 ○紀陸様  適用対象業務をどうするかという話ですから、例えば健康確保措置のようなものにつ いては、労使の協定で、あるいは労使協議をつくって19の業務も、あるいはそれ以外の 業務も労使に広げてやるのは構わない。 ○水町様  入口の切り方だけなのですか。 ○紀陸様  そうです、対象業務範囲の決定のところだけです。  400万円の話ですが、先ほどちょっと申し上げたように、400万円というと440万のち ょっと下です。大企業の管理監督職というレベルの人ですと、実際の年収はこれより高 いと思います。また、通常の企業のレベルの方で管理監督職というと、全労働者のう ち、上の2割ぐらいのところですから、この要件を超えているだろう。それより相当下 のところでというのは、実際にはあまりおられないのではないかと思っているのです。 ○水町様  逆に言うと、線の引き方として、400万円というのは今の実態よりもかなり低いとい うことですね。 ○紀陸様  そうです。 ○水町様  今労働者側委員にどういう人がなるかというと、法律によれば、過半数組合もしくは 過半数代表者が指名をして選ぶことになります。そうなると、基本的には過半数組合に 入っている人たちが全員選ばれるということになって、場合によっては少数組合の方、 あるいは組合に入っていないパートの方から委員としての意見が吸い上げられることが あまりないのではないか。多様な働き方とか、多様な働き方に反映された制度を作って いって、企業として労使で話し合って進めていこうとすれば、労使委員会の構成自体も 柔軟で多様なものにすべきなのではないかと思うのですが、そのことに対して、どのよ うにお考えでしょうか。 ○紀陸様  それは選び方、どうやって選ぶかという話ですね。 ○水町様  そうです。 ○紀陸様  そうですね、そこまで私どもも詰めては考えておりませんでした。私どもがここで5 分の4はきついと言っているのは、もう少し下げてくれという話なのですが、それ以前 の話で、どういう形で労使委員会をつくるか。  実は、この話はよく問題になる話なのですが、私どもで労使協議制をどういうふうに 回すかというときに、パートの方もおられるし、派遣の方も増えている。それから、今 お話のように、少数組合もあるし、もう少し大きな組合もある。そういうところの人た ちをみんな選んで、代表性をできるだけ高めるようなやり方をとる。それでないと、本 当の意味でのコミュニケーションにならないので、それぞれの会社の中でどういう仕掛 けで労使委員会をつくるか、それを決めていただくしかないと思っているのです。過半 数とか何とか言っても、問題はどういうふうに選ぶかです。事業所ごとですから、でき るだけいろいろな人の意見を反映できるような委員会の仕組みを作る。そこはやはり、 個別の会社の中で、きちんと回していくより仕方のない問題ではないかと思います。 ○水町様  健康配慮措置への具体的な例は、いかがですか。 ○紀陸様  これは今現在でもいろいろな企業でやっておられることですが、やっていないところ も結構ありますので、具体的にこんなやり方もありますよということで、いろいろな企 業でやっていることをここに例示として掲げたわけです。 ○水町様  健康の問題、過労死・過労自殺の問題というのは、法律で細かく決めて直るかという と、実は企業の組織や企業の文化に関わる問題で、あまり上でテクニカルに動かしても 変わらないのです。もし労使でこういうことをやって、本当にこれを運用していこうと 思うと、実際、今日本で諸外国と比べて非常に深刻な形で起こっている問題は、現実に 解決できると確信されていますか。 ○紀陸様  また繰り返しになりますが、私どもは労使の協議の仕組みが非常に大事だと思ってい るのです。今いろいろな意味で、会社の社会的責任などが問われています。その場合、 組合なり従業員の声をどこまできちんと会社の中で反映できる仕組みを持っているか。 そのようなものがきちんとあると、このような問題も、これとは他に例えば苦情処理の 問題など、改善できるというのは結構多いと思うのです。そのようなことをきちんとや っている会社というのは、大きな問題にならずに淡々とやっているのだと思っていま す。そのようなことを仕掛けの中で作っていけば、このようなことは大きなトラブルに ならないで済む範囲の問題だと思っています。 ○諏訪座長  ほかにご質問があればお願いいたします。 ○荒木様  確認ですが、主張としては、A3の紙に従うと、現在の裁量労働制というものはやめ て、すべて専門業務型の適用除外、それ以外の裁量適用分についての適用除外というの を新たにつくる。いわゆる裁量労働制のみなし制は廃止してという提言ですか。 ○紀陸様  そうです。わたくしどもの提言する内容でホワイトカラーエグゼンプションを実現し ていただければ、先生のご指摘の通りです。 ○苧谷監督課長  15頁のところで、労働者の管理は行わないで遅刻、早退とか控除は行わないというこ とですから、全く労働者は自由だと考えていいのですね。ただそうした場合、先ほどル ーチンワークでの混在の話がありましたが、ルーチンワークも別に時間では縛らないと いう考えなのか、例えば電話番のように何時から何時までいろということも含めてやら せるということなのか。理論的に言えば、遅刻、早退、要するに1分でも2分でも会社 に出てくれば、その日は出勤とみなされるのであれば、そのような業務はおそらくさせ られないと思うのですが、その辺の考え方はどうなるのですか。 ○紀陸様  結局、会社の中でどのような仕事を対象に据えるか。それが決まれば、後はその中で 運用していけばいいだけの話であって、ちょっとこの業務はまずいなということなら、 またその後話し合って見直すなど、このような運用の問題はそのようにしていけばいい 問題だと思います。 ○苧谷監督課長  例えば調査をやらせるときに、別にルーチンみたいなのをやらせるとしたら、そのル ーチンも労働者が自由に、いつやってもいいというものだけを入れるということです か。 ○紀陸様  そういうことです。ほとんどの仕事が、ちょっと言い方がおかしいですが、例えば9 割程度あって、1割程度が定型的な、あるいは単純的なものが交じる。しかし、9割の ところのレベルが相当高いといったものであれば、この業務をこれにしましょうと、そ れは労使が納得してやることですから、それはそれでいいのではないかと思います。 ○苧谷監督課長  その業務は、つまり1割の部分も時間に縛られないようにということですか。 ○紀陸様  はい。それはもう割切りです。収入の問題など、会社の中で考えて決められるでしょ うから。 ○諏訪座長  まだいろいろお聞きしたい点もあろうかと思いますが、予定した時間になりましたの で、以上をもちまして、日本経済団体連合会からのヒアリングを終了させていただきま す。紀陸常務におかれましては、ご多忙のところわざわざいらしていただきまして、貴 重なご意見をいただきました。どうもありがとうございました。 ○紀陸様  どうもありがとうございました。                (紀陸常務ご退席) ○諏訪座長  引き続きまして、全国中小企業団体中央会からのヒアリングに移りたいと存じます。 最初にご出席のお二方をご紹介させていただきます。まず、全国中小企業団体中央会調 査部長の原川耕治様です。同じく調査部主幹の三浦一洋様です。全国中小企業団体中央 会からもすでに資料を提出していただいております。お手元に配付されているとおりで すが、それに沿って、ご説明をいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたし ます。 ○原川様  私どもの資料はホチキスでひとまとめにしてあり、最初の2枚が意見、その後に表が 載っていますが、これは労働時間に関するデータです。先に私が意見を説明させていた だきまして、データについては三浦から説明をいたします。このヒアリングに先立ちま して、私どもは中小企業の意見をなるべく聞こうということで、各都道府県の中央会の 意見、それを通じた事業主団体の意見等を聞きその最大公約数的な意見としてここに取 りまとめを行ったわけです。ヒアリングの項目に沿って述べておりますが、順を追って 説明したいと思います。その前に、中央会とはどのような団体かということを先にご紹 介した方がよろしいと思いますので簡単に申し上げます。  私どもは中小企業団体中央会と申しますが、全国中央会が全国に1つ、都道府県の中 央会が47の都道府県それぞれに1つずつございます。その傘下に、都道府県内で事業主 団体と言われるもの、例えば事業主の協同組合あるいは財団法人、社団法人等の組織が 都道府県中央会に所属しております。さらにその事業主団体に個々の中小企業が加入し ているという組織です。縦のピラミッドのような組織で、事業主団体というのは大体業 種別に構成されているものです。  現在、日本には4万7,000ほどの事業主団体、協同組合あるいは社団、財団といった 組織があります。私ども中央会は会員制ですので、そのうちの3万2,000ほどの団体が 参加しております。さらに、その構成員である中小企業をみると、現在我が国の中小企 業は個人・法人合わせて470万企業ほどありますが、そのうち私ども3万2,000の会員主 団体に加入している中小企業は、約322万企業という数に上ります。私どもの中央会と いうのは、こうした組織になっておりまして、中小企業の代表組織として活動している ところです。  まず「裁量労働制について」ですが、これまで私どもの方では、労基法の改正におい ても裁量労働制について緩和を求めてきたところです。1つ目の○ですが、裁量労働制 については働き方の多様化、中小企業のニーズ、これについては後からお話しますが、 こういったことに対応した制度になっていないのではないかということが、中小企業に おいては盛んに言われております。したがって、さらなる大幅な見直しが必要であると 考えております。  裁量労働制を、現在、中小企業で実際に導入している所は少なく、それほど活用され ているものではないということです。2つ目の○で、裁量労働制の対象業務、3つ目の ○で導入の手続といったところが、中小企業にとってはハードルが非常に高く、これが 活用されていない理由になっているわけです。  2つ目の○に書いてあるように、現在の対象業務の範囲が狭く中小企業においては専 門業務型にしても、企画業務型にしても、導入しようと思っても対象者が非常に少ない という問題があります。したがって、対象業務に裁量制の高い営業業務あるいは事務業 務というものを追加すべきであるといった意見が非常に多いということです。  実際には、営業や事務業務というのは、上から「これやれ、あれやれ」といちいち指 示しているやり方がすべてというわけではなく、個々の従業員の創意工夫、業務手法等 で一定の裁量性を持たせているという中小企業もあります。そういった点で、実際には 裁量性は高いのではないかという指摘もあるわけです。ここに「裁量性の高い」という 言葉を入れているように、すべての事務業務、営業業務というわけではありませんが、 今例で述べたような裁量性の高いものについては認めていただきたいということです。  3つ目の○ですが、企画業務型についてです。特に、ここでは導入手続のことを述べ ているわけですが、専門業務型と同様に、企画業務型についても、労使協定でも導入が できるように緩和をしていただきたい、それが1つです。そのほか労働基準監督署への いろいろな届出の緩和という要望も多くあります。このような点についてもう少し導入 手続が簡素化されると、利用できる道も開けてくるのではないかと思います。  中小企業のニーズについては、適用除外のところでも申し上げますが、働き方の変化 に中小企業も時代の要請として対応していく必要がある、対応していかなければならな いということですから、もちろん、その管理はしっかりやらなければなりませんが、潜 在的なニーズがあると考えております。  ここには書いておりませんが、対象業務の問題で、企画業務型の企画・立案・調査・ 分析という業務の解釈についてですが、特に中小企業の場合、職種が専門分化されてい ないことがありまして、例えば企画もやれば営業もやるということがあるわけです。企 画・立案・調査・分析という一連の相関し合う業務が100%でなければならないという解 釈は、緩和をしていただきたいと思います。  2番目は「労働時間規制の適用除外について」です。1つ目の○にあるように、これ はこの研究会を開催する目的でもあると思うのですが、成果等が労働時間の長短に比例 しない性格の業務を行う労働者が増加している中でそのような働き方の変化に対応し て、創造的・専門的能力を発揮できる、自律的な働き方をする労働者の労働時間のあり 方というものを考えるといことですが、こうした労働者の自律的な働き方を促すため に、労働時間規制を適用除外するということは、中小企業においても意義があると考え ておりまして、基本的には賛成であります。  働き方の変化は大企業でも中小企業でも同じようにあるわけですが、中小企業も時代 の変化に対応していく必要があります。今後は、特に中小企業の場合は、朝8時に来て 夕方5時に帰る、単にそのような働き方ではなくて、やはり自律的な、自らある程度の 裁量を持って自発的に仕事を行うといった働き方がさらに求められていくのではないか と考えております。そのようなことで、適用除外制度を創る場合には、中小企業でも利 用できる、活用できるような制度に是非工夫していただきたいとお願いする次第です。  2つ目の○は、対象者の範囲です。管理・運営的業務、専門的・技術的分野の業務、 あるいは企画・立案業務、調査・研究業務、研究開発、営業業務、事務業務といった分 野や範囲が考えられます。次の○ですが、そのような範囲で、対象者の要件を設定する に当たっては、創造的・専門的能力を発揮できる自律的な働き方をする労働者を、幅広 く対象とするように配慮していただきたいということです。こうした意見の中には、対 象者の範囲といったものは、労使協定によって労使の自主性に任せて決めさせてほしい という意見も含まれております。  年収レベルが、中小企業においては1つの問題になるわけですが大企業との賃金の格 差を考えますと、必ずしも年収だけで推し量れるものではないと考えますので、年収レ ベルは中小企業の実態を勘案して、設定する必要があるということをお願いしたいと思 います。健康確保措置についても非常に重要なことだと認識はしておりますし、できる 限り負担がかからず、中小企業でやりやすいような、しかも実効性の上がるような方法 を工夫していただきたいということです。  3番目は「管理監督者について」です。管理監督者の範囲については、賃金の額、部 下の人数といった形式的な基準だけではなく、実態的な判断が必要であることを申し上 げたいわけです。特に中小企業においては企業規模が小さいこともありますし、470万 もの企業があり、その組織、企業風土、文化、仕組みといったものは千差万別ですの で、中小企業においては、管理監督者の範囲を一律に賃金の額、部下の人数だけで決め るのではなく、例えば能力で管理監督者の地位にある場合もあるので、実態的な判断が 重視されるべきだと考えます。  2枚目の最初の○は、深夜業については時間の把握が必要になるので、時間管理が煩 雑になる。あるものはカウントして、あるものはノーカウントということになるので、 煩雑さが出てくる。深夜の割増賃金については、何らかの手当として支払われているの が実態だと思いますので、適用除外とすることについては私どもも賛成したいと考えて おります。別に、残業代をカットしたいからだけではないということです。  4番目は「年次有給休暇の取得促進について」です。ここに中小企業の1つの特徴が 出てくのですが、中小企業は、長引く不況やコスト競争が日に日に激化する中で、人件 費の抑制、人員縮小をずっと行ってきたわけです。既存の従業員だけで繁忙期を乗り切 る新たな採用ということになかなか踏み込めない、仕事がいつまであるかわからないと いうことがあります。したがって、現有勢力で最大限仕事をせざるを得ない。ここが大 きな特徴ですが、取引先からの突然の短納期発注、直前の短納期発注も多く、これを断 わると仕事がもらえないということになりますので、どうしても対応せざるを得ないと いう厳しい現実があるということです。したがって、親企業や取引先の事情によって、 中小企業の仕事は左右されるという特徴があるということです。  2つ目の○は、計画的付与については反対ではありませんし、計画が立てられれば、 企業にとってもプラスとなることが考えられますが、一方で突発的な受注や繁忙期への 対応で、計画的付与が中小企業の取引実態に必ずしもそぐわないということも事実とし てあるので、こうしたことを是非考慮に入れていただきたいと思います。3つ目の○で すが、この計画的付与というのは、労使自治に委ねるべき問題であり、法律等による義 務化は行うべきではないと考えております。  5つ目は「所定外労働の削減」に関連して割増賃金についてです。割増賃金について は現行のままでいいという意見が非常に多く、法定内時間の割増賃金、これは実際に支 払っている企業も多いのですが、本来の趣旨から言うと、強制して支払われるべきもの ではないと考えますので、義務化には反対だということです。私からは以上です。次に 三浦から説明させていただきます。 ○三浦様  お配りしてある有給休暇、残業時間、時間外の割増賃金の資料について簡単に説明い たします。これは私どもが毎年行っている「中小企業労働事情実態調査」から取ってき た数字です。平成16年度の数字がないものについては、その年度にその項目についての 調査がなかったということです。  1頁目は「中小企業の有給休暇の付与日数・取得日数・取得率」の表ですが、平成15 年度のデータが最新で、平均すると15日ぐらいの付与日数、そのうちの半分の7.5日の 取得があり、取得率にすると50%程度になっております。平成14、15年度は取得率が若 干下がっている傾向があります。平成15年度を規模別に見ると、ほかのデータですと、 中小規模の方が取得率が低いという数値が出ているものもあるわけですが、私どもが調 べた限りでは、特に30人未満あるいは10人未満の小零細の所で、付与日数が少ないとい うこともあろうかと思いますが、むしろ取得率が高いという傾向が出ております。業種 別には若干差があるということで、後でご覧いただければと思います。  2頁目は「中小企業の従業員1人当たり月平均残業時間」で、これは仕事量が景気に 左右される部分がありますので、年度の推移をどう見るかということがありますが、平 均で1人月9時間程度がここ数年続いているという状況です。中小企業の中でも一定の 規模を超えるものの方が、平均の残業時間も長くなっている。業種によっても、出版、 金属、機械、情報通信、運輸といった所は長く、業種、規模による違いがあります。  3頁目は「中小企業の時間外労働の割増賃金率」ですが、新しいデータがなく、古く なってしまいますが、平成10年のものです。時間外の場合は25%が大多数になっていま す。深夜労働の場合は25%と40%と上下に分かれてしまい、休日は35%がほとんどとな っています。先ほど申し上げました私どもの意見の主張を裏付けるデータというより も、現実はこうなっているということでご紹介をした次第です。以上です。 ○諏訪座長  ただ今の説明について、ご質問、ご意見があればご自由にお願いいたします。 ○佐藤様  中小企業のニーズに対応した制度になっているか、いないかということからお話にな って、現状では現行の制度がなっていないので、さらなる大幅な見直しが必要であると いうご意見なわけですが、そこで問題になってくるのは、中小企業のニーズがどのよう なものであるのかだと思うのです。先ほどのお話の中では、小さい企業なので、営業や 事務なども裁量の余地があるので、2の○のところにあるように、その範囲に事務的な ものが入っています。本来、普通の事務というのは対象にはなっていないのですが、そ れが入ってくるというのは、中小企業の特性だということになるのですね。それに関わ ってですが、そうすると、本来中小企業は裁量性のある仕事が多いとするならば、現行 の裁量労働の仕組みの対象の中でも、もう少し手続を尽くせば、導入が可能になってく るようにも思うのですが、統計を見ますと、実際には小さな企業ほど導入が少ない、現 行の仕組みである裁量などは少ないです。  しかし、本来、仕事は裁量の方が高いのだが導入が少ないということが理解としては あり得るのですが、そうすると、ちょっとよくわからない部分が出てくるのです。なぜ 導入が進まないのだろうかということになるのですが、その点を教えていただきたいと いうことです。お話の中では手続がいろいろあるので、そこが緩和されるという要望を 出されているわけですが、中小企業だから手続が難しくなるという理屈もそのままでは よくわからなくて、別に組合がなくても労使でいろいろ話し合っていけばできるような 仕組みになっているわけですので、そのようなものも含めてご指摘いただければという ことです。 ○原川様  中小企業のニーズがどのようなものであるかというご質問ですが、中小企業というと ころは大企業にはない良さが1つあると思います。それは規模が小さい故に自己実現の 場になるということで、大きな組織の中の一員として過ごすよりも、自分がやりたい仕 事を一生懸命やって自己実現を図りたい、そのような働き方が非常に適したところだと 思います。そうではあるのですが、実際にみますと、専門業務型の19業種をみても、中 小企業では社員としてそのような人を雇うということはなかなか難しいのです。企画業 務型でも、先ほど言いましたように、企画・立案・調査・分析といった相互に関連性が 高い業務ということになると、該当する者はなかなかいない。別に過重労働という意味 ではなく、従業員も思い切った、いわば能力を出し切るような働き方をしたいという場 合、今の制度では対象者がなかなかいない。やりたくても対象者が極めて少ないという 実情にあるということです。  今後このような働き方というのは、この委員会が立ち上げられたように、1つの重要 な働き方になってくると思います。いままでの時間に縛られた働き方ではなくて、能力 をもっと発揮できる、自律的に働くことができるような働き方の要請があって、あるい は世の中の流れがあって、この委員会でこのような検討が行われているのだと思いま す。大企業も中小企業も、区別なく、当然そのような働き方は必要となるわけです。こ れがすべての中小企業にあてはまるかと言えば、今はそうではありませんが、だんだん とそのような流れに中小企業も対応していかざるを得なくなると考えています。なぜ導 入が進まないのかについてですが、今申し上げましたように、繰り返しになりますが。 ○佐藤様  簡単に言うと、業務がないということですね。 ○原川様  そうです。今の制度では対象者がなかなかいないということです。先ほど私は中小企 業では職務分化がされていないと、専門分化がされていなくて、いろいろな仕事をやっ ていると言いました。それは中小企業にみられる特徴ですが、それがすべてであると考 えていただきたくはないのです。もちろん専門分化しているところもありますから、中 小企業のニーズを考える場合、それだけを前提として考えると、おかしなことになると 思います。中小企業の仕事は、そういった専門性を100%追求するような仕事ももちろ んあるわけですが、人数の制約がある中ではこれもやる、あれもやるということでマル チ的な業務の要素が強いということです。  中小企業だから手続が難しいという理屈がわからないということですが、我々は労使 の話合いをするなとか、軽視しているということでは全くありません。ただ、この裁量 労働制にしても、これから検討される適用除外制にしても、中小企業で、労使委員会を 立ち上げるというのはなかなか難しい。そのような状況があって裁量労働制が導入しに くいということがあるのです。規模が小さいことや人が少ないことからくるいろいろな 制約というのをもう少し考慮に入れていただき、例えば労使協定でできるものはそれで やると。その代わり労使協定はしっかり結ばなければいけませんし、いい加減にしろと 言っているのでも全くありませんが、中小企業が利用しやすい、活用という点から考え て、そうしたことにも配慮していただくことが必要であると考えるのです。それが結局 は、中小企業の労使の利益になる、中小企業の従業員もそのような働き方の実現という ことでは利益を享受できると思いますし、中小企業の事業主も利益に与かれるというこ とになりますので、是非とも配慮をお願いしたいということです。 ○佐藤様  追加的によろしいですか。規模で言いますと、先ほどの年休取得でも残業でも、中小 企業と言っても、10人以下の所と30人未満、100人未満、100〜300人では、仕組みを作 る場合のルール化の程度などは随分違ってくると思うのです。小さな所でルール化する のが難しいというのは、例えば30人未満の所とかとよく言われるのですが、今話された ことをもう1つ区切って考える必要がありますか。つまり、中小、中小と言っているの ですが、規模で見たときは、10人未満と100人以上とでは大変違うわけです。100人以上 の場合とそれ以下の場合とでは随分違うのでとか、そのようなのは何かありますか。そ こは300人未満で一緒にしていいですか。 ○原川様  300人以下を中小企業と言っているわけですが、そこはまだ詰めていません。ただ我 々が通常企業規模をみる場合、組織的な形ができている、できていないという点などか ら、やはり30人以下というのは1つのメルクマールになるのではないかと思いますが、 これは今後いろいろな視点から検討しなければならないことだと思います。 ○今田様  確認したいのですが、現状の裁量労働制というのが、中小企業のニーズにあまり適応 していないということで、お考えとしては対象業務を広げろ、緩和をしてほしいという 意見だということですが、それと、2番目の労働時間の適用除外とホワイトカラー・エ グゼンプション制度とはかくかく然々あるべしというのとの関係はどのように理解した らいいのか。先ほどの紀陸常務のお考えのように、裁量労働制をホワイトカラー・エグ ゼンプションという新たな制度に転換するという提案なのか。そこはどのように理解し たらよろしいのでしょうか。 ○原川様  ここで意見として書いてあることは、地方の意見の集約ということで、このほかに も、いろいろな意見はあるわけですが、全国中央会としてはこれまでも、ここに書いて あることを要望してきました。まず、裁量労働制については、中小企業のニーズに合っ ていないということで、対象業務を広げてくださいということと、先ほど言いましたよ うな導入手続の問題もありますというのが1つ。もう1つは、適用除外制の導入を検討 してくださいということです。裁量労働制と適用除外制との関係については、裁量労働 制はみなし労働時間などの労働時間規制がある。繰り返し述べているように、裁量労働 制の対象範囲が狭い、解釈が狭い、導入のハードルが高いといったことが、もし、適用 除外制の方で解決できるのであれば、そちらの方で解決する方向にいっていただければ ということです。 ○西川様  2点あります。1点目は裁量労働制について、「労働時間規制の適用除外について」 のところで、事務業務というのが出てきたのですが、裁量制の高い事務業務というもの が一体どのようなものなのか。ちょっとイメージしにくい部分があるので、具体的に教 えていただければと思います。2点目ですが、これももしデータがありましたら教えて いただきたい、もしなければ大体どのくらいをイメージしているのかということです。 中小企業においての裁量労働制であるとか、労働時間規制の適用除外になるであろう対 象者というのが、職務経験でみた場合、大体何年ぐらいの人たちなのか。データがあれ ばいいですし、もしなければ、ご意見等をお聞かせ願いたいと思います。 ○原川様  最初に、事務業務というものがどのような内容かについて言いますと、事務業務とい うのは広く言えばホワイトカラーの業務ということになるわけですが、例を挙げれば、 総務系統の税や、経理業務のうちのすべてというわけではないのですが、重要な業務と いうイメージになるのではないかと思います。  2つ目は後で三浦に補足をしてもらいますが、経験年数というところまで掘り下げて 議論はしておりませんので、軽々には言えませんが、地方に照会した中では、例えばで すが、経験10年とか、そういった経験の高い人に適用すべきだという意見も中にはあり ました。 ○三浦様  対象者の範囲として管理・運営から営業業務までと書いてあるのですが、必ずしも勤 続何年で専門的・技術的分野の業務をするようになるということは必ずしもないので す。例えば、10年というのはおおよその目安になるかもしれませんが、5年ぐらいで管 理の業務に就く人もいれば、もう少し10年ぐらいかかるというケースもありますので、 一般的に何年ぐらいの職務経験でそういった業務に就くというのは言いにくいのではな いかと思います。個別のデータを取ってないので感触ですが、そのように思います。 ○西川様  職種によるということですか、それとも企業というか業種であるとか、あるいは企業 によるとか。 ○三浦様  業種と企業によると思います。例えば経営者の方針として、かなり短期間でそういっ たところに登用していくということをする企業もありますし、ある経験を積ませようと いう形でやるという企業もありますので、それが一般的にこうだというのはなかなか言 えないところがあります。 ○原川様  あと能力があると思います。 ○諏訪座長  ほかに質問はよろしいですか。苧谷監督課長、どうぞ。 ○苧谷監督課長  先ほど2点ほど、例えば対象業務を今よりも広げた方がいいという話と、どういう手 続上の問題があるという話をお伺いしました。対象業務を仮に広げたとして、裁量労働 制にしてもホワイトカラー・エグゼンプションにしても、大前提は労働者が出退勤の時 間は自由に決められるということはあるわけですが、使用者がいついてほしいと、その ときに業務命令を出したいということができない労働者は、中小企業、労働者はいろい ろな仕事を兼ねているということですが、そういう人は本当に何人も抱えていられるの かどうか、実際に本当におられるのかどうかですね。対象業務が狭いからなのか、それ ともそういういつ来るかわからないような労働者を抱えていられないからではないかと いう感じもするのですが、その辺のところはいかがかなというのが1つです。  もう1つ、労使協定でやった方がいいという話があったのですが、これでも過半数代 表者を選出しなくてはいけないわけでして、この選出をきちっと手続的にやる負担と労 使委員会を開く事務負担で、具体的にそんなに負担が違うのかですね。もし労働者代表 をきちっと選ぶのであれば、そう違わないのではないかという気もするのですが、その 辺のところを具体的にどう負担かというのをもう少し教えていただければと思います。 ○原川様  課長のご質問は、対象業務を広げると出退勤が自由になっていつ来るかわからない人 が増えるということで、複数の業務をやっている中小企業では不便ではないかという趣 旨であるかと思います。いつ来るかわからないから導入をしない、ということはあまり 聞いていません。導入が低いのはあくまでも成果が時間に比例しない仕事が増えている 状況の中で、そういう働き方ができればいいのだけれども、その範囲が狭くて対象者が 極めて少ない、あるいはいない、ということで使えないということが主な理由であると 思います。 ○苧谷監督課長  いや、そうではなくて、いつ来るかわからない労働者は実際におられるのかというこ とです。 ○原川様  いや、実際にいると思いますが、具体的なところまでは私はよくわかりません。まだ 実際に導入しているという所もごくわずかでありますし、その事例は。 ○三浦様  いろいろな事例があるわけではないのですが、いつ来るかわからないというレベルで 言うと、例えば中小企業で特別な技術を持っている人、例えば、特許を持つまでに至ら なくても、特に必要な技術を持っている技術者がいる場合、その人は常駐しなくても、 必要なときに来て仕事のアドバイスをしてくれればいい、というレベルではいつ来るか わからない、必要なときに、あるいは来てほしいと言ったときに来るという人がおりま す。これは数が多いとは思いませんが、おります。ただ、通常の、例えば製造業だと工 場の中で仕事をしている設計の部門で、いつ来るかわからないというのはそういないと 思います。  先ほどの導入の問題ですが、例えば、これはいろいろな考え方はあるのでしょうが、 業務範囲が狭くて中小企業の中で対象になる人がほんの一部しかいないといった場合 に、その人たちのために手続を尽くして委員会をつくって裁量労働制を導入して、それ だけの努力をした効果が実際に経営として得られるのかどうかということもあると思う のです。例えば30人の会社で1割、2人とか3人、裁量労働制の対象者がいるとして、 そのために裁量労働制の手続を尽くして導入し、本当に裁量労働で働いてもらう効果が 会社全体としてあるのかどうかという問題は、導入があまり多くない理由の1つにはな っているのではないかと思います。 ○苧谷監督課長  それは過半数代表でも同じことですね。 ○三浦様  過半数代表でも同じです。 ○苧谷監督課長  だから、あまり差はないと思いますね。過半数代表者で労使協定を結んだ場合でも労 使委員会でやっても。 ○三浦様  ただ、委員会とかそういった会議は、労働組合があるということだったら別ですが、 労働組合がない企業で、特に、例えば先ほどの形で言うと30人以下の企業で改めて委員 会をつくって、形式的な要件を整えるということを進んでやるかというと、なかなかや らないということがあると思います。ある人をある場所に集めて委員会を開く、そうい った手続は簡単ではないかと思われるかもしれませんが、実際に仕事を毎日やっている 中で時間を割いてそれをやるというのは、実際に何時間負担になっているという数字で は少なく見えるかもしれませんが、負担感というところではかなりあると思います。 ○諏訪座長  ほかにご質問はいかがですか。よろしいですか。  それでは、予定されていた時間にもなりましたので、以上をもちまして全国中小企業 団体中央会に対するヒアリングを終了します。原川様、三浦様、お忙しい中をわざわざ いらしていただきまして、大変貴重なご意見をいただきまして、どうもありがとうござ いました。               (原川様、三浦様、ご退席) ○諏訪座長  以上が本日のヒアリングとして予定したものです。今回はこれをもちまして終了にな りますので、事務局から次回の会合についてのご連絡をお願いしたいと思います。 ○前田賃金時間課長  次回は7月8日(金)午後5時から開催を予定しています。また、正式には追ってご 連絡します。次回は個別企業からのヒアリングを予定しています。 ○諏訪座長  ということですので、どうぞよろしくお願いをします。なお、次回は個別企業に対す るヒアリング調査になりますので、前回と同様に自由闊達な議論を行っていただくため に、研究会は非公開としたいと存じます。後日、ヒアリングの概要を資料として公開す ると、そうしたやり方にしたいと考えますが、いかがですか。                   (了承) ○諏訪座長  よろしいですか。それではそのように処理をします。以上をもちまして本日の会合を 終了します。皆さま、お忙しい中をわざわざありがとうございました。                  照会先:厚生労働省労働基準局賃金時間課政策係                  電話: 03-5253-1111(内線5526)