05/06/10 今後の労働時間制度に関する研究会第4回議事録           第4回 今後の労働時間制度に関する研究会                     日時 平成17年6月10日(金)                        17:00〜                     場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○諏訪座長  皆さん、こんにちは。今日はいかにも梅雨の入りらしい天候でございますが、そうい う中をご参集いただきまして大変ありがとうございます。定刻より少し早いのですが、 ただいまから第4回の研究会を開催させていただきます。本日は守島先生からご欠席の 連絡をいただいております。  さて、本日の議題ですが、ヒアリング調査を続けさせていただきます。今後の労働時 間制度のあり方につきまして具体的に議論を進めていくに当たり、実際の現場における 現状を把握するため、関係の皆様からご意見をいただいているところですが、本日は、 前半に東京商工会議所からのヒアリングを、後半に個別の企業からのヒアリングを実施 したいと思います。なお、前回の会議でもご確認申し上げましたとおり、後半の個別企 業からのヒアリングにつきましては、個別の企業の雇用管理に関する内容となるため、 「公開することにより、特定の者に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある 」ことから、非公開とさせていただきます。傍聴者の皆様におかれましては、誠に恐縮 でございますが、前半の東京商工会議所からのヒアリングが終了したところでご退席を お願いすることになります。あらかじめご了承いただけますと幸いです。  それでは、早速、東京商工会議所からのヒアリングを始めさせていただきます。まず 出席者をご紹介いたします。東京商工会議所産業政策部長の原田平様です。 ○原田様  原田でございます。よろしくお願いいたします。 ○諏訪座長  同じく産業政策部労働・福祉担当課長の森まり子様でございます。 ○森様  森でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。 ○諏訪座長  東京商工会議所からのヒアリングは1時間程度を予定しております。あらかじめ資料 も提出していただいておりますので、早速ご説明をお願いできればと思います。よろし くお願いいたします。 ○原田様  基本的な考え方について私からご説明し、ご質問については、森と2人で対応させて いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  早速ヒアリング調査項目に従って意見発表をさせていただきます。最初は(1)「裁 量労働制について」ということで、現行の専門業務型・企画業務型裁量労働制の問題で す。  裁量労働制は働き方を労働者の裁量に委ねるもので、いわゆるホワイトカラー労働者 に適用された制度だと考えておりますが、現実にはその導入がなかなか進んでいないと 考えております。その実態につきまして、実は今年の5月、会員を対象に労働政策に関 するアンケート調査を実施しておりますので、その結果を報告させていただきたいと思 います。  お手元の「アンケート調査結果」の3枚目、質問7です。「裁量労働制について」の (1)で「貴社での企画業務型裁量労働制の導入についてお伺いします」ということ で、その導入の実態を聞いております。これによりますと、企画業務型の裁量労働制を 「既に導入している」という企業が7.4%です。資料にはございませんが、昨年も同じ ような調査を実施しておりまして、その時の導入割合は5.7%という結果でした。した がって、1年経っておりますが、ほとんど導入が進んでいないという結果なのかと思っ ております。  同じ設問の中で、「検討したが導入は見送った」あるいは「一度導入したが廃止した 」という企業を合わせると10%です。その理由が(4)に書いてありますが、「対象者が 極めて少なかった」あるいは「手続が複雑」、「管理ができない」、「対象範囲が狭い 」といったことをその理由として挙げています。このような結果から考えて、対象労働 者の範囲に関する規定が厳しい、導入手続が煩雑であるというようなことから、本来な ら裁量労働制の導入が望ましい労働者についても実際は導入ができないケースが多いの ではないかと考えております。  今後望まれる規制緩和については、(2)で「企画業務型裁量労働制には、今後どの ような規制緩和並びに対策が必要と考えますか」という質問をしております。  これに対しましては、右のグラフをご覧いただくとはっきりわかると思うのですが、 「対象業務の制限の撤廃」、「労基署への諸届出の更なる簡素化」、「労使委員会の設 置・決議でなく、労使協定でも導入を可能とする」という回答がいずれも4割以上を占 めるという結果でした。したがって、企業としてはこの辺りの規制緩和を望んでいるの かなと思っております。  続いて、裁量労働制の見直しについてどのような要望があるかという項目です。仕事 の成果が必ずしも労働時間に比例しない働き方、あるいは労働時間管理になじまない自 律的な働き方が増えているということに関連して、同じくアンケート調査結果の(3) で、「裁量労働制の労働時間規制は『みなし労働時間』となっておりますが、労働時間 規制の適用除外にすべきとの考え方があります。労働時間規制のあり方についてはどの ようにお考えですか」という設問をいたしております。  これにつきましては、現行どおり、みなし労働時間でよいというものも13%ございま す。しかしながら、専門業務型のうち、特に専門性の高い業務については規制の適用除 外とする、あるいは全員を規制の適用除外とするというものが、それぞれ12%ありまし た。さらに企画業務型につきましては、本人の同意があれば、労働時間規制の適用除外 とするというものが28%あるということで、この3項目を合計すると何らかの規制緩和 を望むという意見が52%、過半数を超えていました。  続いて(2)「労働時間規制の適用除外について」に移らせていただきます。調査項 目のアメリカのホワイトカラー・エグゼンプションを参考にして労働時間規制を適用除 外とすることをどのように考えるかですが、私どもとしては、基本的にこの考え方に賛 成であります。ホワイトカラーが、創造性や専門性が要求される仕事になればなるほ ど、会社にいる時間だけでは仕事が完結しないというようなことが実態だろうと思いま す。在社時間をそのまま労働時間とすること、あるいは、仕事の成果を労働時間で計る ということに少し無理があるのではなかろうかという観点から、別の物差しで見ていく 必要があるのではないかと考えております。  ホワイトカラーにおきましては、調べる・読む・考えるといった作業が重要な仕事に なると思っておりますが、これらをすべて就業時間中に行っているかといいますと、必 ずしもそうではないだろうと思います。業務に必要な知識は、例えば通勤途上や帰宅 後、あるいは休日に文献を読むといったようなことをして修得することもありますし、 帰宅してから良いアイディアが浮かんだ、あるいは休日に考えがまとまったというよう なこともあろうかと思われます。  しかしながら、現状では、終業後も会社に残って考えたり、文献を読んだりした場合 は、特に成果というものがなくても所定外労働という扱いになるということであります が、逆に、退社後に別の場所で考えがまとまったとしても労働時間にはカウントされな いことになり、この辺に問題があるのではなかろうかと思っております。したがって、 ホワイトカラーに裁量のある働き方を認めれば、会社の机にしがみついて仕事をしなく て済む。そのことによって対象労働者が、例えば仕事と生活の両立をするというような ことも可能になると考えております。  次に(2)の2つ目の問題、労働時間規制を除外する場合のいろいろな要件です。先 ほどの設問とも重複しますので、対象者等については省略いたします。健康確保や苦情 処理の問題につきましては何らかの措置があって然るべきではないかと考えておりま す。ただ、現実には、例えば健康確保のために1つの企業が単独でカウンセラーと契約 をするということになりますと200万円以上かかると聞いております。このような金額 を支払うことにつきましては、中小企業にとっては大変厳しいと言わざるを得ないと思 っております。  次に(3)の「管理監督者」です。管理監督者の範囲についてどのように考えるかに つきましては、例えばアメリカのように、賃金の額や部下の数といった形式要件で決め るということがあってもよいとも思いますが、中小企業が多い我が国におきましては、 一定の形式要件ではそぐわないケースもあることから、要件から外れることがあって も、実態で判断される余地が必要ではないかと思っております。  2つ目、その他管理監督者に係る労働時間規制の適用除外の見直しの問題ですが、こ れについては、自分の裁量によって仕事をしているということですので、時間規制にな じまないという適用除外の趣旨から考えても、深夜業についても時間規制の適用除外に すべきではないかと考えております。  次は(4)「年次有給休暇の取得促進」の問題です。一般的に考えて、計画的に年休 を取った方が取得しやすいということがあろうかと思いますが、そうではないケースも あります。中小企業の中では、突然の発注に対して速やかに対応、納品していくという ことが必要な場合があります。この場合は、社長も営業社員も総出でこなしていくとい うことになろうかと思われますが、このようなケースにおきましては、特に従業員が少 ない場合は、1人でも休まれてしまうと、残った社員に負担がかかることになります。 取引先から発注が計画どおりに来るケースの場合は見通しも立てられますけれども、そ ういう取引形態でない場合には見通しが立ちません。したがって、年休も計画的に取得 させるという意味からは若干難しい面があるのかなと思っております。  これに対しては、このような場合には、急な発注にも対応できるような人員の配置を すべきではないかというご意見もあろうかと思われますが、中小企業におきましてはマ ックスの業務を前提に従業員を保有するということは人件費が増加することになり、か なり難しいであろうと思われます。したがって、通常時に必要な最低限の人数を保有し ておきまして、急な繁忙期にも同じ人数で対応せざるを得ないのが実状かと思っており ます。このようなことを考えますと、現状では、年休の取得については、経営トップが リーダーシップを持って、取得可能な時期を見通して取得を促進していくしかないかと 考えております。  次に(5)「所定外労働の削減」の問題です。ここでは割増賃金のことも絡めてとい うことですが、この問題については、労働者からすれば、仕事さえ終わらせれば早く帰 ることができるとか、仕事を労働時間ではなく成果で評価するといったような仕組みが あれば、相当程度減らせるのではないかと考えております。前々から指摘されているこ とでありますが、現行法では、仕事ができない人、だらだらと取り組む人の労働時間が 長くなる。その結果、そうした労働者の方が、効率的に仕事に取り組んだ労働者より賃 金が高くなってしまうというような問題があろうかと思われます。  これに関しまして、例えば製造現場からも、優秀な技能者への処遇に苦慮していると いう声が寄せられております。具体的には、作った部品に不具合があれば、担当者を残 して直させている。そのことに関連して、その間の時間外労働が発生することになる。 一方、不具合が全く発生しない優秀な技能者の賃金との比較をしますと、前者の方が賃 金が高くなってしまうということであります。また、接客業についても、ある小売店の ケースですが、従来は閉店後に事務作業を、おしゃべりしながら、だらだらと3時間か かってやっていたという実態があったそうです。そこで、使用者が時間外を削減するた めに、1日のお客の入り具合と合わせて業務分析を行ったところ、開店中の、お客の入 らない時間を利用して1時間で事務作業を終わらせることができたという例も聞いてお ります。  この件につきましては、使用者が所定外労働削減のために動いたということでありま す。経費節減のためには、使用者が当然やるべきことをやったという側面もあります が、一方では、労働時間ではなくて、成果で仕事を評価する仕組みになっていれば、閉 店後に3倍の時間を使って仕事をするというようなことも避けられたのではないかとい う見方もできると思っております。  これはまた別の事例ですが、来月からは残業代は払えないから定時に帰るように、と いうような連絡をしたところ、翌月の時間外労働が大幅に減ったというケースもあった ようです。このようなケースを考えますと、仕事を労働時間だけで評価する仕組みのま ま時間外の割増率だけを上げても、あまり効果を生み出さないのではないかと考えてお ります。逆に、割増率を上げると、能率が上がらないまま賃金だけが上昇して、コスト に跳ね返ってきて、大きく考えれば、国際競争力をそぐ結果となるということもありま す。また、個別企業にとりましては、給与として支払える原資には限りがあるというこ とから、時間外の割増率が上がれば本給を引き下げざるを得ないというケースもあろう かと思われます。その結果、時間外労働が生じない優秀な労働者にしわ寄せがいってし まうようなことも考えられるわけです。簡単ですが、以上で私どもの基本的な考え方の 発表は終わらせていただきます。 ○諏訪座長  どうもありがとうございました。ただいまのご説明をめぐりましてご質問、ご意見等 がありましたら、よろしくお願いいたします。 ○佐藤様  非常に参考になるお話をありがとうございました。いくつか教えていただきたいので す。特に、中小企業の持っている、大企業にはない固有の性格というものがいろいろな 形で出てくるというお話があったのですが、それは大変重要な視点だと思うのです。そ こで、願わくは、この集計はサンプルが20人未満から1,000人以上までの675社をお取り になった分析が示されているわけですが、例えば300人未満であるとか、100人未満であ るというような、いわゆる比較的小さな企業でのクロス集計、そういうものがもしおあ りでしたら教えていただけないかということです。特に、全体の平均と比べた場合の特 徴のようなものがもしおありでしたら教えていただけないかということが1点目です。  2点目は、先ほどの導入の意向についての設問ですと、既に導入しているという所、 これから検討するという所、さまざまありますが、その結果と、規制緩和についての要 望の結果、この辺りはとても大事だと思うのです。現行で導入がなかなか進んでいない のは、規制の手続がやや煩雑できついから導入がとどまっている。逆に言えば、そうい うものがなくなればこの導入が増える、あるいは、いま検討をする予定はないという所 でも検討を始めると考えるのか。この辺りは、特に手続の問題との関係でいうと非常に 重要なところだと思います。その辺りの分析の傾向なりご意見なりを踏まえて教えてい ただければというのが2点目です。  3点目は、能率との関係で言いますと、生産性が低い方が、所定内に片付かない分、 本来の仕事が残ってしまう。しかしながら現行ですと、その分の割増賃金が付いてしま うということで、ある意味では不効率な者の方が手取額が多くなる、このことは非常に 重要な問題です。そこで問題になるのは、業務量を処理するという場合の算出式は、基 本的に通常、「人×時間」で、一定の要員とそれに投入される時間の積で考えられてい るのだろうと思うのです。特に、先ほどのお話の中では、中小の場合にはなかなか先が 見えない、ユーザーからの様々な要望にも応えなければならない等いろいろな状況があ ることが示されたわけです。しかし、他方マネジメントする側としましては、その辺り も含めて、一定の業務量をこなすのには何人の要員とどのぐらいの時間がかかるかとい う目安は当然に持っているのかと思います。そこで、その辺りのマネジメント上での工 夫、それから、そういうこととの関係で要員に対して時間内に処理できるか、できない かの目安のようなものがおありでしたら教えていただけないかということです。その辺 は少し難しいところなのですが、もしお気づきの点があればお願いします。 ○森様  最初の質問、大企業と中小企業とで差があるかという点について、アンケートでいく つかクロスを取っているところがありますので、口頭で恐縮ですが説明させていただき ます。まず、企画業務型の裁量労働制の導入について、既に導入をしているかどうか、 あるいは導入を検討しているかどうかについて、大企業と中小企業ではほとんどばらつ きがありません。平均で「導入している」が7.3%、「導入を検討している」が5.4% で、従業員規模別ではほとんど大きなブレがありません。ただ「導入について検討する 予定」「検討はしたが導入は見送った」でかなりばらつきがありました。300〜1,000人 で、「検討予定」が15.7%、1,000人以上になりますと19.7%と、かなり高い数字が出 ております。そして「検討はしたが導入を見送った」も、300〜1,000人で11.6%、 1,000人以上で20.8%という数字です。逆に「今後とも検討の予定はない」あるいは 「わからない」が、20人未満と20〜50人で9割を占めます。ですから中小企業はほとん ど、わからない、知らないというのが正直な回答だったのかなと思っております。 ○原田様  導入が進まない理由の2つ目のご質問、規制緩和がされれば導入が進むのかという質 問ですが、これも、規制緩和だけが導入が進まない理由なのかどうかが分からないとこ ろがあります。ここでは規制緩和だけを対象にして聞いているものですから、そこら辺 のところは取り切れていないところがございます。  マネジメントの問題ですが、これも私どものヒアリングでもアンケートでも取ってお りませんのでお答えができない状況です。 ○諏訪座長  ほかにご質問はございますか。 ○水町様  いくつかありますが、順不同で伺います。組合のない事業場でも、労使委員会をつく って企画業務型裁量労働制の導入がされている所があるのか。あるとすれば、その場合 の労働者側委員の選び方は具体的にどうされているのかというのが1つです。  それから年次有給休暇のところですが、年休の計画的取得は難しいというその後で、 企業のトップが取得可能な時期を見通して取らせるしかないというお話がありました。 計画年休ということで、例えばヨーロッパでは「年休カレンダー」といって、年の初め に労使で話し合って、その1年間、どこで年休を取るかということを、カレンダーを作 って見通して取らせるということなのです。しかし先ほどあった、企業のトップが取得 可能な時期を見通して取らせるしかないというのは、1年の最初からわかるわけはな い。例えば前の週とかその前の日に、明日からだったら取っていいとか。どれくらいの タイムスパンで見通すことができるのか、できないのか。それとも、およそ計画年休と いうのは中小企業にはなじみにくい制度なのかという点を教えていただければと思いま す。  もう1点は私が聞き逃したところですが、(3)の管理監督者の1番目の○の、管理 監督者の範囲についてどのように考えるかというところです。実態から見て判断すべき だということをおっしゃったと思いますが、その辺をもう少し詳しくお教えいただけれ ばと思います。 ○森様  最初のご質問です。労働組合がないところで、労使委員会をつくって実際に裁量労働 制をやったところがあるかということなのですが、労組を持っているかどうかというス トレートな聞き方をしておりませんでした。しかし人数要件でいきますと、20人未満で も4社、20〜50人でも「既に導入した」というのが3社あります。そして50〜100人で8 社ということです。この辺は労働組合を持っているとは思いにくいので、ここは労使委 員会をつくってやったのではないかという推測はできます。労働組合がないところとい うのは、この人数ですので、ある程度該当しそうな人、場合によっては全員が裁量労働 制の対象になっている可能性もありますし、50〜100人ぐらいですと、裁量労働制の対 象になるであろう人全員を対象として労使委員会をつくっている可能性はあると思いま す。 ○水町様  合理的に推測すると、労使委員会の委員の選び方というのは、36協定を結んでいるよ うな過半数代表者というのがいらっしゃって、その人に「では委員を指名してください 」と言って指名させているということなのですか。それとも会社の方が、ここら辺とこ こら辺のを委員にしましょうということでやっているのですか。 ○森様  企画業務型裁量労働制は、どちらにしても、最終的に本人の同意が必要になりますの で、対象となる人全員と話し合っているという可能性は非常にあると思います。 ○原田様  2つ目の計画的な年休の取り方のところです。私も経営者でないのでわかりません が、たぶん、何かの納品をして発注があってというようなやり方をしている中で、この 取引先の考え方はこうだとか、そういった経験則の中から考えるしかないのかという気 がしております。それが翌日から取っていいということになるのかどうか。そういう話 になりますと、ただ休むだけということになりますので、少なくとも2週間程度前で何 か見通せるような話になればいいということです。特にこれも根拠のある話ではありま せんで、希望的な見通しですが。 ○森様  管理監督者のことですが、中小企業の場合ですと、人数要件で、例えば部下が2人以 上いなければいけないとか、があり、なじみにくいと思っております。中小企業です と、ほとんど部下がいないケース、一人部長というとおかしいですが、ほとんど自分の 裁量で営業もこなし、自分で自己管理をしてというケースも相当あるだろうと思ってお ります。  また、所得なのですが、中小企業の実態でいきますと、部長だから、課長だからとい って、一般の大企業のような所得の水準とは限りません。そういう意味で、一律にこれ 以上の所得の人だったら、というようなアメリカ的な形式要件は、なかなかなじみにく いのかなと思っております。 ○水町様  部下が何人いるとか、所得が何万円以上というと、企業の中にもいろいろな企業があ るからなかなか難しい、という意味ですか。 ○森様  参考ですが、中小企業の場合、肩書というのがあまり大きな意味を持たないケースが あると思います。例えば、営業上「部長」という肩書があった方がいいからということ で名刺に刷り込むことは往々にしてありますし、肩書がそういった実態といいますか、 大企業のような、本当の意味での部長職かというと、必ずしもそうでないケースはかな りあるだろうと思います。 ○水町様  今のこととの関係で1つ追加して伺いたいのですが、いま言った管理監督者というの はある定義があって、それに合っていれば管理監督者になるけれども、それに合わなけ れば管理監督者ではないというようなアプローチがなされています。しかし、そういう 形式的な基準を決めて適用するというよりも当事者の話合い、当事者が現場で話合って その人たちの納得を得ながら、手続を重視した形で管理監督者の範囲も決めてしまおう というやり方がもう1つのアプローチとしてあるとすると、そちらの方がなじみやすい ということですか。 ○森様  ケースバイケースだと思いますが、なじむケースはあると思います。 ○山川様  先ほど、健康確保措置と苦情処理措置のお話がありましたが、もう1つの聴取事項と して、賃金減額への制約というのがあります。アメリカですと、遅刻早退については1 日単位ですと賃金減額ができない、ということになっているのですが、もしアメリカ的 に考えるとすると、そういうあり方についてどう考えるかというのが1点です。  第2点は、適用除外の範囲というのは就業規則に書いてあるかどうか。今の水町先生 の質問とも関係があるのですが、もし法律の適用範囲が変わったとすると、就業規則の 変更のような手続が必要になる状況なのか。その点をお聞きしたいと思います。 ○森様  賃金減額について、もう少しご説明をお願いします。 ○山川様  アメリカでは、適用除外者について、1日の一部の遅刻早退は賃金減額できないので す。アメリカの制度をそのまま導入するとそういうことになるのですが、そういうこと をどう考えられるかという点です。 ○森様  ちょっと難しい質問で、イメージが湧かないのですが。 ○水町様  適用除外になってしまうと、午前中来なかったとか、午後来なかったという場合にも フルでお金を払わなければいけない。つまり裁量的に働いているから、何時に来て何時 に帰ったという管理をしないし、そういうふうに所得のベースを保障するという要件に なります。 ○森様  管理監督者ということで、就業規則上明記があるかどうかという問題は別としまして も、実態的に営業職などは往々にして直行直帰というケースも多いでしょうし、おっし ゃられたような意味での賃金減額が実態として日本でできるか、できないかといいます と、それは中小企業でも当然やっていることだと思っております。 ○山川様  それは事業場内労働でも同じということですか。 ○森様  中小企業で裁量的に働いている労働者の場合は、事業場内か、事業場外かというよう に、きれいに分かれて業務をしている人はあまりいないのではないかと思います。 ○苧谷監督課長  根本的な話で恐縮なのですが、2つございます。1つは、ホワイトカラー・エグゼン プションを導入する際のことです。労働の質や成果を時間で計れない、だから必要だと おっしゃるのですが、ある意味、裁量労働制がそのために出てきたところがございま す。例えば、裁量労働制で8時間と決めれば、賃金もそこで決まるわけですから、エグ ゼンプションとどこが違うのか。裁量労働制がいまある中で、例えば8時間と決めてあ れば、更にホワイトカラー・エグゼンプションが必要だという、もう少し具体的なメリ ット、それを教えていただきたいというのが1点です。  もう1つは、例えば工場労働でも、成果が悪い人の方が金がもらえるという話です が、今の成果主義の議論を聞いていますと、目先の成果によって余計に人事がおかしく なる。むしろ長い目で見て、人事で報いる方がよいという説もあります。例えば、すぐ に駄目になる労働者については昇進・昇格・賞与、そういうことで報いた方がよいとい う説もあるのです。仮にそうだとすれば、そもそも議論が成り立つのかどうかという気 もするのです。その2点をどうお考えなのかお伺いしたいのです。 ○森様  1つ目のご質問ですが、時間では計れない、つまり今の「みなし労働時間」と「適用 除外」はほとんど変わらないのではないか。今のままでもいいではないかということだ と思うのですが。 ○苧谷監督課長  どう違うのかということです。 ○森様  実態として、皆さん違いをそう大きく認識していないのだと思います。ですから逆 に、質問にありましたように、実際にはみなし労働時間を採用している専門業務型も、 企画業務型も、できればほとんど適用除外にしてほしいという希望があった。ほとんど 同じだからというような声が多かったと思います。 ○原田様  2つ目の昇進・昇格で報いる方法もあるのではないかという話ですが、普通の働いて いる方が、いわゆる昇進・昇格の対象となるような形での処遇がされているのかどう か、その辺の問題もあります。その人たちにとってそういう選択肢がないとすれば、時 間の働き方ということで考えることの方がベターではないかという気がしております。 ○今田様  聞き逃したのかもしれないのですが、アメリカのホワイトカラー・エグゼンプション には大いに賛成とおっしゃられました。それは、今の日本で裁量労働制とされている専 門業務型と企画業務型というのが前提と考えておられるのですか。それと関わって、対 象となるための要件について、どういうふうにお考えなのでしょうか。 ○森様  実態からして、既に企画業務型、専門業務型はみなし労働時間ということで適用され て、近い状態ができておりますので、こういう人たちを適用除外にしていくことについ ては大きな問題はないのではないかという気持でおります。ただ、それ以外のホワイト カラー全ての層について一定の形式要件等々で適用除外にすることについてはどうか、 それついてはまだ議論をしておりませんで、明確な答えを持ち合わせていないのです。 ○西川様  聞き逃したのか知識不足で理解ができていないのかによると思うのですが、2つ質問 があります。1つ目は、アンケート調査の中の(1)の質問で、「検討したが導入は見 送った」ということでいろいろ理由を挙げておられます。管理ができないという理由に ついて、なぜ管理ができないのかというようなところをもう少し具体的に教えていただ ければと思います。  2つ目の質問は先ほどの今田先生の質問と重なっているのですが、ここでホワイトカ ラー・エグゼンプションのような形で時間規制を適用除外することについて賛成である とおっしゃいました。そのときに、場所によって知的生産活動の区分けをするのは無理 であるというようなことをおっしゃいました。また、それに合わせて、仕事と家庭の両 立にもプラスになるだろうというようなお話をされたのですが、その辺をもう少し詳し くお聞きしたいのです。どういう形でプラスになるのかを教えていただければと思いま す。 ○森様  ではアンケートの方からお答えいたします。管理ができないというのは、言葉足らず といいますか、誤解を招いて分かりづらかったかもしれないのですが、実際に、小さな 事業場で、みなし労働時間を採用する人と通常の残業代のつく人というのが混在してし まうと、非常に不満がたまるというとおかしいですが、やはり狭い事業場ですので、ど うせなら、みんな同じようにやってくれというようなことで違う不満が起きてしまっ て、実際には「うちでやってみたけれども、そぐわないね」ということだったと聞いて おります。 ○西川様  それは実際に従事されている仕事にそれほど差がないからなのですか。それとも、そ こには差があるのだけれども、制度的な側面で不公平感や不満が起こっているというこ となのですか。 ○森様  調べた限りでは後者だと思っております。  2つ目の質問、仕事と家庭の両立に資するのではないかということですが、時間に張 り付いていなくてもいいということであれば、自分である程度仕事の裁量をコントロー ルして、自分のための時間ということでメリハリがつけられるかなと、その程度の理由 です。 ○西川様  仕事を事業所でやるか、家に持ち帰ってやるかということになるかと思うのですが、 場所を選べるからといって、仕事の量や負担というものがもし減らなければ、家でやっ たからといって、生活との両立が可能になるかというと、必ずしもそうは言えないので はないか。むしろ難しくなってくるのではないかという気がしましたが。 ○森様  前回連合の方からも、裁量の余地がないぐらいたくさんの業務がある場合もあるでは ないかというご指摘もあったかと思うのですが、それもそのとおりだと思います。仕事 の与え方の問題だと思いますので、それはたぶんホワイトカラー・エグゼンプション云 々というよりも、会社としての仕事のさせ方というのでしょうか、本質的にもう少しそ ういったところは見直していく必要があるのだろうと思います。 ○荒木様  2点お聞きしたいのです。アンケートの2頁目の(2)企画業務型裁量労働制につい ての規制緩和要求の(1)に、対象業務の制限の撤廃がありますが、これは具体的にはどう いうことなのでしょうか。どの点が過剰な規制と認識されているのでしょうか。38条の 3の専門業務型は業種特定ですが、38条の4の方は企画・立案・調査・分析です。これ の相互関係をどう解するかという点もあるのでしょうが、監督署の指導が非常に厳格で あるという趣旨なのか、それとも、これを非常に限定列挙のような感じで受け取られ て、内容的にイメージが湧かないが何か制限的だというような、そういうアンケート調 査結果なのか。その辺を教えていただきたいのが1点です。 ○森様  この298社にはすべてが入っていると思っております。今のご指摘のように、まず 「企画・立案・調査・分析」の正しい理解がなかなかできなくて、何となくこれには合 わないのではないかと勝手に解釈しているわけです。そして、例えば一部企画とか立案 をしたとしても、中小企業ですと、一部庶務的な仕事もやるでしょうし、一部経理をや ったり総務をやったりという部分もあり、専任というか、それだけに関わる人というの がなかなか特定しづらいというところもありますので、そういった部分での制限、もう 少し要件を緩和してほしいということも、声としては相当あったと思います。また、こ の4つ以外でも駄目なのかということでの制限の撤廃という意見もあったと理解してい ます。  ここではあえて企画業務型に限定しての規制緩和を設問として書いたのですが、逆に それ以外の専門業務型でも、規制緩和を求望しているところがあります。例えば、ある 程度限定列挙なのですが、サムライ(士)業ということで理容、美容のように資格を必 要とするようなところがなぜ専門業務型として認められないのだろうか、という意見も 一部ございました。 ○荒木様  前回のヒアリングでもちょっと感じたのですが、裁量労働制というのは、要するに労 働時間では管理をしないということですから、例えば8時間とみなした場合に、賃金の 払い方をどうするのかというのは全く別の問題のはずです。ところが、例えば10時間と みなしたら2時間分は割増しなのだから、3時間働いた場合は何かみなしの違反が生じ ているというような誤解があるような気がするのです。みなし制を導入した場合のみな し時間の定め方というのは、実態としてはどういう感じなのでしょうか。今までも、こ のくらいは時間外労働をやっているということで、2時間ぐらいやっているのだったら 10時間とみなすのか。それとも、裁量労働制というのは時間の長さに関係ないのだから 8時間とみなす、しかし賃金の処遇の方は、今までの長さとは関係ない、例えば年俸制 を入れるとか、いわば裁量労働制のもともとの趣旨に従って運用されているのか。それ とも、いわば時間外手当の定額払の代わりとして受け取られているのか。その辺はいか がでしょうか。 ○森様  正確に統計を取っているわけではないので推測ですが、おそらく後者の方が多いだろ うと思います。ただ、いろいろ聞かせていただく中で、みなし労働時間が9時間とか10 時間という所が多いと思いますので、そこはおそらく、8時間プラス1、2時間の時間 外というイメージで皆様が設定されているのかなと思っております。 ○荒木様  8時間とみなす、あるいは9時間とか10時間とみなす。そういうことについての大体 の統計はございますか。 ○森様  統計は取っていないですね。 ○岡監察監督官 アメリカのホワイトカラー・エグゼンプションを参考にして、導入す ることについて賛成というお話でしたが、アメリカの場合ですと、普通の時間管理をさ れている方ですと、法定時間以上働く場合は5割増とかそういう割増があります。また 違反した人に対しては、刑罰も日本より高かったり、行政罰が科される等、サンクショ ンが厳しいという側面があるのです。一方でアメリカのホワイトカラー・エグゼンプシ ョンを導入するのであれば、時間管理をやる方はしっかりやるべきだという考えもある かと思うのですが、そういったことについて、どのようにお考えになるかというのが1 点です。  それから、今はみなしとはいえ、時間管理で労働時間の状況を把握することになって いますが、今後時間管理をしないということになりますと、能力がある人は短い時間で 早く仕事を終わって、さっさと帰ることができるのですが、一方で、能力がないと言う と言い方が悪いですが、同じだけの成果を出すために、どうしても時間が長くなってし まう。そういう人の方がむしろ多いのではないかと思うのですが、そういう人につい て、健康管理措置をする。あるいは、自分はどうしてもこれは無理なので何とかしてほ しいとかといった苦情の処理をどうするかが1つ課題になるかと思うのですが、その辺 についてのお考えをお聞かせいただければと思います。 ○森様  1番についてですが、たぶんアメリカ型というのはイメージはアメリカのホワイトカ ラー・エグゼンプションであまり深い知識を持っておりませんので、何となくそれがい いということです。ただ、アメリカの場合、基本的にかなりフリーといいますか、形式 要件をきちっと決めてしまえば、それ以上は個々の契約で、それを破ったら大変だとい うことで、文化の違いというのでしょうか、労働に対する考え方の違いが多少あるので はないかと思っております。しかし日本で、全くアメリカ型とはいっても、ホワイトカ ラー・エグゼンプションがそのままなじむかということについては、ちょっと難しい。 折衷というか、何らかの日本的な今までのやり方といいますか、培ってきた労使の関係 ですとか、よいところを残しつつも、適用できるものがないのかと、そのような気持で はおります。 ○原田様  時間管理をしなかった場合の、早く帰ることができるケースと遅くなってしまうケー ス、そして、その場合の健康管理の問題ですが、そこまで能力がないということになり ますと、何か別の問題があるような気がします。具体的なケースを私も調べておりませ んので、今はっきりお答えできませんが、たぶん企業では、そこまでの違いが出てくる と、何か別の対応を考えざるを得ないのではないかという気がします。 ○森様  健康管理と苦情処理のあり方について、これはたぶん今もそうだと思うのですが、裁 量労働制を申請した段階で、必ず健康確保措置ということで何か書かなければ絶対受理 されない形だと思います。それで、今ほとんどが特殊健康診断を必要に応じてやりま す、というようなことを申請として書いている所が相当多いと思うのです。確かに企業 としてはそういった側面が当然必要になるはずですし、それについて苦情や不満はあま り聞かないです。  苦情処理についてですが、仕事のやり方や与え方について苦情がある場合、通常の会 社ですと、人事部のようなところに持ち込むのだろうと思うのですが、最近、健康保険 組合などで、そういったことについてのホットラインをかなり設けてきておりますの で、そういったところを活用しているという会社もかなり増えています。どうあるべき かということで正しいのは、大きい会社でしたら専用の窓口を設けるとか、ホットライ ンを専用で引くということもあるのだと思います。また中小企業でも組合単位で、ある いは会議所等でも設けておりますし、そういうところを使うのは可能だろうと思いま す。 ○佐藤様  私の質問はあまり細かな話ではなくて、実態としてどういう認識をしたらいいかとい うことの確認なのです。いろいろ伺っていますと、要するにホワイトカラー労働の特性 のゆえに、時間管理が通常ではなかなかできないという話があります。また、中小企業 で規模が小さいところでは、先ほどの管理監督者の話にもあったように、実態的にそれ ぞれの裁量で仕事をしていくのだと。まさに小さいがゆえに、ある種の裁量の余地が出 てくるという部分と、2つ入り交じったような話が随所に聞かれたものですから確認し たいのです。  例えば、中小企業といわれている場合に念頭に置かれている分野において、まさにホ ワイトカラー労働の特性というのは、裁量で想定されている性質を持った労働です。こ ういったものは、小さいからではなくて、いわゆるホワイトカラー労働の特性としてお ありになるという理解でよろしいかどうかということが1つです。  それと裏表の関係ですが、そうではなくて、製造業も入っていますので、ホワイトで あれブルーであれ、やはり小さいから、それぞれ裁量的にやっていくのだというような ことの方がむしろ強いので、そういうものとして理解した方がいいのか。この点をどう いうふうに理解したらよいかについてご教示いただけないかと思います。 ○森様  明確なお答えにならないかもしれないのですが、裁量労働制でいうところの企画業務 型などと限定しているものは非常に楽だと思うのです。しかし、それをホワイトカラー ということで、全く違った特性ということで言っていきますと、本来切れるところもあ るだろうと思います。 ○佐藤様  小さいところでは。 ○森様  はい。ただ、中小企業が思いっきり正確に切ろうとすると、いわゆるブルーとおっし ゃられたのですが、その辺の仕事はどうするのか。絶対あるはずで、それもやりつつと いうことになってしまうのです。ですからその辺は、仕事としてはあるけれども、明確 にそれだけをやる人というような、人での区切りというのは難しくなるのかなと思いま す。 ○佐藤様  渾然一体となっているというのが現状だという理解でよろしいですか。つまり、ホワ イト的な特性を持った仕事と、そうでないものが渾然一体となっているので、あえて 「ここはホワイトの仕事なのだ」という線引きは実際にはなかなか難しいという理解で よろしいですか。 ○森様  少なくとも中小企業に企画業務型や何かの裁量労働制ができていないというのは、そ ういうことだと思っています。 ○諏訪座長  水町先生、どうぞ。 ○水町様  先ほどから何回か出ていますが、仕事の与え方に対するコントロールです。私も企業 にヒアリングに行ったり、働いている方からいろいろな意見を聞いて実際に思うのは、 前回連合の方が言われましたように、1990年代後半以降仕事の量が圧倒的に増えて、1 人の正社員が負わされる仕事の量が増えている。大企業でも中小企業でも、それはさほ ど違う現象ではないと思うのです。  今日のお話の中でも、来月から残業代が出ないからと言うと、その次の月には残業を しない人が増えるというお話がありました。そういう意味では、残業代を払う、払わな いということが残業を減らすための1つの要因になっているとすると、もし適用除外な り裁量労働を緩和して、残業代と労働時間の長さは違うと、あるいは「残業代」という 概念がなくなったりすると、果たしてどこで仕事の量のコントロールをすることができ るのか。  それが会社として本質的に見直していくべき課題とおっしゃいましたが、例えば外部 のカウンセラーを入れるとしても、コストが非常にかかるから難しいと。では組合によ って内部で集団的にチェックできればよいという考え方もあり得るかもしれませんが、 組合がないところもあります。そうなると、本当に仕事の与え方自体のコントロール が、残業代規制が外れた場合にできるのか。こうやったらできるのではないかという見 通しというか、そういう具体的なイメージは何かあるでしょうか。 ○森様  難しい質問ですが、先ほどの話はたとえでございます。実際に会社が翌月に本当に払 わなかったかというと実はそうではなくて、たまたまやってみたら本当にグッと減っ た、と笑い話ではないのですが、雑談の中で何となく出てきた話でございまして、たぶ ん、そういった業務の改善の余地のあるような会社では導入すべきではないのだろうと 思います。業務分析がある程度きちっとできている会社でないと、おっしゃられたよう に、仕事の与え方についてもそうですし、仕事の質についてもそうですし、コントロー ルのきかない中での導入というのはやるべきではないと思います。 ○苧谷監督課長  今の水町先生の関連なのですが、労働者に仕事のやり方も委ねなければいけないはず なのです。例えば、朝10時にAという仕事をやらせて、これは今週中だと。そして1時 間後の11時ごろに、これは今日中だとか、そして午後2時ごろに、これは1時間後だと か、これは明らかにそうではないと思うのですが、何かそういう切り分けというのはイ メージされているのでしょうか。あるいは、例えば仕事は1週間以上のタームでなけれ ば駄目だとか。そうでないと、雑用みたいなことをどんどんやらせて裁量労働という危 険性も確かにあるのです。そういうことはかなり難しいかなと思っているのですが、コ ンサルタントを入れるのか、労使でチェックするのか、それとも、いちいち基準を決め ない方がいいのか。その辺、何かお考えがおありですか。 ○森様  うまい知恵というか、切り分けで何かできるのかということについては、申し訳あり ませんが、答えを持ち合わせておりません。 ○今田様  水町先生がご指摘になったこととダブるのではないかと思うのですが、お話を伺って いたら、労働時間規制を外せば、働いている時間が短くなる。そういう要素は大いにあ るのだとおっしゃいましたね。なぜならば、時間規制があるために、ダラダラと残業代 を稼ぐためにだとか、そういうことがあるというご指摘と、もう一方、時間規制を取り 払うと、長時間労働へといくのではないかという、極端に両極というか、そういう考え 方があると思うのですが、改めて、そういう2つの議論があり得るということから、経 営組織サイドとして、働いている労働者の職務と量と労働時間との関係について、どう いうアレンジというか、編成というか、そういうことをやってきたのか、やってきてお られたのかなということがあるのです。  ある意味で、すごく、現場に任せられるような形で、職務の量も働いている時間も、 そういう編成をさせられてきたのでしょうか。もう少し何らかの客観的な根拠なり、あ るいは、水町先生がおっしゃったような労使の話合いの枠組みとか、そういう点に関し て、どのように理解していらっしゃるのか、お考えをお聞きかせいただければと思うの ですが。 ○森様  難しいご質問ですが、あえていくつか聞いているヒアリング等々の範囲内でお答えし ますと、逆に労働時間でお金さえ払えばいいのだという、逆に分析をしなくても、賃金 総額というか、人件費としての管理ができればよかったという企業が比較的多かったの かなと思います。  業務の中身というよりも、当社は労働時間9時〜5時で7時間で、「人×時間」とい うことで、先ほども図られてきたということであると思うのですが、逆に今回このヒア リングをさせていただいて、裁量労働制を採用しようという会社は、逆に、やはり業務 分析というか、そこもきちっとしないと絶対無理というところがほとんどで、中小企業 でも、いくつか導入しているところのバラつきはほとんどなかったと申し上げました が、やれるところはきちっとやってきているというのが実態で、本当に自分の会社が、 こういう裁量労働をやろうとか、もっと会社として変わっていかなくてはとか思えば、 やはり働き方、社員がいまどういう仕事をしていて、どういうことをさせなければいけ ないのかということを、本当はしなければいけないのですね。ですから、今の中小企業 がわからない、あるいは関心がないという方の企業でいけば、やはりまだまだその辺 は、経営者といいますか、分析をしていく必要性はあるだろうと思います。 ○諏訪座長  いろいろとまだご質問したい部分があろうかと思いますが、お約束の時間がちょうど やってまいりました。そこで、東京商工会議所からのヒアリングは、以上をもって終わ りにさせていただきたいと思います。原田部長及び森課長におかれましては、ご多忙の ところをわざわざおいでいただきまして、大変貴重なご意見を頂戴しました。本当にあ りがとうございました。  次に、先ほど申し上げたように、個別企業間のヒアリングに移らせていただきます。 大変恐縮ですが、傍聴の皆様におかれましては、ご退席をお願いしたいと存じます。                  (傍聴者退場) (以下非公開)                  照会先:厚生労働省労働基準局賃金時間課政策係                  電話: 03-5253-1111(内線5526)