05/06/08 「第20回医療安全対策検討会議」議事録について 第20回医療安全対策検討会議                        日時 平成17年6月8日(水)                           14:00〜                        場所 厚生労働省専用第15会議室 ○事務局  傍聴の皆様にお知らせします。傍聴に当たっては、既にお配りしている注意事項をお 守りくださるようにお願いいたします。 ○高久座長  ただいまから、「第20回医療安全対策検討会議」を開催いたします。委員の皆様方に は、ご多忙のところお集まりいただき、ありがとうございます。本日は、17名の方のご 出席の連絡を事務局が受けています。飯塚委員、楠本委員、山崎委員からは、ご欠席の 連絡を受けています。今年度から新たな方が委員に加わりましたし、本日は参考人の方 に来ていただいています。事務局のほうから、ご紹介をお願いします。 ○医療安全推進室長  今年度から委員の任をお引き受けいただきました、財団法人日本医療機能評価機構医 療事故防止センター長の野本亀久雄委員です。よろしくお願いします。また、参考人と して堺秀人神奈川県病院事業管理者病院事業庁長にご出席いただいております。堺参考 人は、医療安全対策検討ワーキンググループ座長およびヒューマンエラー部会部会長で すので、本日の議事の関連でご出席をいただいているところです。 ○高久座長  堺参考人、よろしくお願いいたします。最初に、事務局から資料の確認をお願いしま す。 ○事務局  資料の確認をさせていただきます。皆様のお手元には、議事次第、座席票、委員名簿 に続いて、資料1と2、参考資料1〜5がありますので、ご確認をお願いします。 ○高久座長  皆さんの所に資料が揃っていると思います。これから、議事の1の「今後の医療安全 対策について」、ご討議いただきます。初めに資料1について、事務局から説明してい ただきます。そのあと、ワーキンググループの座長である堺参考人から追加のご説明を お願いします。 ○医療安全推進室長  資料1について説明いたします。「今後の医療安全対策について(報告書)」です。 この医療安全対策検討ワーキンググループは、3月4日に開催されたこの検討会議で、 今後の医療安全対策の検討を行うために設置の承認をいただいたものです。参考資料1 にあるとおり、3月18日から5月19日までに計7回の会議を開催し、この報告書を取り まとめていただきました。ワーキンググループ委員の名簿は、資料1の14頁に付けてあ ります。このワーキンググループにおいては、3月4日の検討会議の資料として提出し た、本日の参考資料2の「医療提供体制の改革に関する主な論点項目」を基に、詳細な 論点整理メモとして作成した参考資料3の「医療安全対策の方向性」に基づいて、順に 議論を進めて、最後の2回の会議で論点整理ペーパー、また報告書として意見を取りま とめていただいたものです。本日ご出席の堺参考人には、7回の会議に座長としてご出 席いただき、約2カ月という短期間に報告書を取りまとめていただいたところです。検 討の経緯は以上のとおりです。  本報告書については、あらかじめ委員の先生方に送らせていただいたところですが、 内容について簡単に説明申し上げます。まず、1頁の「はじめに」から2頁の上7行目 までですが、平成14年4月にこの検討会議において取りまとめた「医療安全推進総合対 策」の概要を紹介したものです。この総合対策の全文と、検討に当たって整理した総合 対策の実施状況は、それぞれ参考資料の4、5に付けてあります。  2頁の上から8行目からですが、こうした関係者の努力にもかかわらず、我が国にお いては未だ十分な医療安全体制が確立されておらず、医療の安全と信頼を高めるために 一層の取組が求められている、ということで、この「医療安全推進総合対策」の考え方 を尊重しつつも、それに加え、医療の安全と両輪をなすべき「医療の質の向上」という 観点を一層重視し、施策を充実していくことが求められる。医療の質の向上を実現して いくためには、これまでの医療機関、医療従事者による取組だけでなく、患者、国民の 主体的参加を促進することが重要である。この報告書においては、医療に関する情報を 国民、患者と共有し、国民、患者が医療に積極的に参加することを通して、医療の質の 向上を図り、医療安全を一層推進するという考え方を重視している、という基本的な考 え方が述べられております。  「安全文化」が醸成されることを通じて、安全な医療の提供と、患者、国民から信頼 される医療の実現を目指していくためには、「医療安全推進総合対策」に基づく対策を 強化するとともに、新たな課題への対応を図る必要がある。これらの基本的考え方に基 づき、この報告書においては、ここにあるIからIIIの3本の柱を重点項目として、それ ぞれの項目ごとに将来像のイメージを示し、その実現に向けて、早急に対応するべき課 題と施策を掲げることとした。以上が総論的な内容です。  2頁の下から3行目からです。また、医療安全対策上の重要な課題の一つである院内 感染対策については、院内感染対策有識者会議において別途専門的に検討されて、「今 後の院内感染対策のあり方について」の報告書に基づいて実施することとされている。 院内感染対策についても、医療安全対策と同様に医療機関等の取組と同時に、国、自治 体、関連団体等が相互に連携し、組織的、体系的な取組が重要であることから、今後 は、医療安全対策の一環として総合的に取り組んでいくこととする、とされておりま す。前回の医療安全推進総合対策では、院内感染対策は別途検討ということで整理され ていましたが、今回は併せて報告書に盛り込んでおります。  次からが各論ですが、1つ目の柱の「医療の質と安全性の向上」です。まず、将来像 のイメージとして、(1)の「医療機関等における医療の質と安全に関する管理体制の 充実」です。1つ目は、医療を提供する全ての施設、薬局等において、必要な管理体制 が整備され、有効に機能している、2つ目は、必要な人材が確保され、必要な制度が整 備されている、3つ目は、各医療機関において、クリニカルインディケーター等を用い て、医療の質の評価が適切に行われている。  (2)(3)は内容が共通するところがありますので、併せて説明いたします。「医 薬品の安全確保」について、1つ目は、医薬品が明確な責任体制のもとに使用され、関 係者、関係機関の間の十分な連携が図られていること、2つ目は、夜間・休日の安全管 理体制の確立、3つ目は、特に安全管理が必要な医薬品の業務手順の確立と実施、4つ 目は、医薬品と医療機器の有害事象の早期発見、重篤化防止のための体制確保、5つ目 は、医薬品メーカー等の積極的な対応により、安全管理上問題を有する医薬品の改善等 が図られ、医療機関においてもこのような安全面に配慮されたものが積極的に採用され ている、という内容です。また、「医療機器」に関しては、併せて1つ目は、全ての医 療機関等において、医療機器の集中管理と定期的な保守点検、2つ目は、医療機器の使 用前の点検と使用に関する研修、3つ目は、医療機器の管理および使用に関し、必要な 研修や情報提供が行われていること、4つ目、5つ目は医薬品関係と共通の事項です。  (4)ですが、「医療における情報技術(IT)の活用」です。1つ目は、医療にお けるIT化を促進するため、必要な基盤整備が図られていること、2つ目は、ヒューマ ンエラー等が発生しやすい部門や手技に、使う人の使いやすさを考慮したIT機器が導 入され、事故の未然防止が図られていること、3つ目は、IT機器の活用により、患者 との情報共有が推進されていること、4つ目は、職員教育に有用な方法と媒体の開発、 5つ目は、データマイニングの実用化、6つ目は、医療機関全体でのITの統合、とい うことです。  (5)ですが、「医療従事者の資質向上」として、安全文化の醸成が図られ、全ての 医療従事者が、効果的なコミュニケーション、職業倫理の実現、科学的根拠と情報を十 分に活用し良質な医療を提供すること等が可能な資質を身につけていること、医療従事 者の資質向上による医療の質と安全の向上、それらを客観的にモニターするための手法 の開発と整備です。  (6)は「行政処分を受けた医療従事者に対する再教育」ですが、行政処分を受けた 医療従事者が再教育を受け、医業再開後、適正に医業を行っている。以上が将来像のイ メージとなっています。  5頁ですが、当面取り組むべき課題として、(1)の「医療機関等における医療の質 と安全に関する管理体制の充実・強化」と(2)の「医療機関における院内感染対策の 充実」は共通事項が多いので、併せて説明いたします。現在、病院、有床診療所に対 し、一定の安全管理体制の確保が義務づけられていますが、これに加えて、その他の医 療施設(無床診療所、歯科診療所、助産所)及び薬局等、医療を提供する全ての施設に おける施設の規模や機能に応じた安全管理体制、院内感染制御体制の充実・強化が謳わ れております。指針とマニュアルの整備、研修の実施、ヒヤリ・ハット、事故等事案、 感染症の発生動向の院内報告と、それに基づいた対策、効果的なクリニカルインディケ ーターの研究と実用化の検討。こういったことについては、介護老人保健施設や訪問看 護ステーションにおいても、これに準じた体制整備についての検討が行われるべき、と されております。  (2)の「医療機関における院内感染対策の充実」ですが、ほとんど(1)と共通部 分で、(4)(5)(6)のように、病院又は有床診療所における院内感染対策のための委員会 の開催、特定機能病院と高度な医療を提供する医療機関については、組織横断的に院内 感染対策を行う部門の設置、医療機関の規模や機能に応じて、院内感染対策を行う担当 者の配置を順次進める、ということが追加されております。  (3)の「医薬品の安全確保」と(4)の「医療機器の安全確保」については共通部 分が多いので、併せて説明いたします。6頁ですが、1つ目の医薬品の安全使用、医療 機器の管理にかかる責任者の明確化など、責任体制の整備、2つ目の医薬品の安全使用 のための業務手順書の整備、3つ目の特に抗がん剤については重点的な対策を講じるこ と、4つ目のすべての薬剤について、薬剤部門から患者ごとに薬剤を払い出すことを推 進すること、5つ目の有害事象の情報収集、医療従事者及び患者、国民への情報提供が 医薬品、医療機器共通の事項です。6つ目に入院時に患者が持参してきた薬剤等の情報 共有と連携強化を図ること、7つ目に医薬品、医療機器メーカー等による情報収集・共 有、情報提供体制の整備、安全管理に十分配慮した医薬品、医療機器の供給、医療機関 における積極的な採用、ということが謳われております。医療機器に特化した問題とし ては、(4)の(2)のように、医療機器の定期的な保守・点検と使用に関する研修を行 うことが言われております。  7頁の(5)の「医療従事者の資質向上」です。(1)は医療の質と安全の向上に資す る研修資料や教材等の提供と更新、(2)は職種横断的な研修や意見交換の実施、(3)は臨 床研修の指導者を対象とした医療安全に関する研修の充実です。  (6)の「行政処分を受けた医療従事者に対する再教育」です。本年4月に被処分者 に対する再教育の具体的内容について、行政処分を受けた医師に対する再教育に関する 検討会の報告書が取りまとめられております。この報告書の主な内容が(1)から(7)に書 かれております。8頁の(7)の下ですが、以上のように行政処分を受けた医師や歯科医 師に対しては、検討会報告書や試行的対応における知見を踏まえ、再教育制度の構築に 向けて取り組まれることとされているが、看護師等他の医療従事者についても、行政処 分を受けた後の再教育等について検討する必要がある、とされております。  8頁の2が2つ目の柱の「医療事故等事例の原因究明・分析に基づく再発防止対策の 徹底」です。将来像のイメージとして、(1)の「医療事故の発生予防・再発防止策の 徹底と医療事故の減少」です。(1)でヒヤリ・ハットや事故等事例の背景要因や根本原 因の分析。それに基づく効果的な再発防止策の提案と実行、(2)で集積されたヒヤリ・ ハットや事故等の事例の分析に基づく発生予防、再発防止対策が迅速に周知され、効果 的な対策が講じられていること、(3)でこの(1)、(2)により、ヒヤリ・ハットや事故等 の発生率が年々減少し、国民に信頼される安全、安心で質の高い医療が確保されている ことが謳われております。  (2)は「医療事故の届出、原因分析、裁判外紛争処理及び患者救済等の制度の確立 」です。(1)は、医療事故の届出に基づき、中立的専門機関における原因分析、患者等 への速やかな説明により、医療の透明性の確保、情報共有が図られ、事故の発生予防や 再発防止に結びついている、ということです。9頁の(2)は医療における苦情や紛争、 患者については、患者の身近なところで解決されるための仕組と裁判外の中立的な機関 で解決を求めることができるといった裁判外紛争処理制度が確立し、短期間で紛争が解 決され、患者及び医療従事者双方の負担が軽減されていること、(3)は事故等の際の補 償制度の確立、(4)はこれらの制度が一体として適切に運用され、医療従事者がリスク の高い医療についても、萎縮せずに必要な医療を提供することができること、(5)はこ れらの制度が、事故の発生予防や再発防止対策と連動し、効果的な医療安全対策に結び ついている、という内容です。  当面取り組むべき課題ですが、(1)の「医療事故等事例の原因究明・分析に基づく 再発防止対策の徹底」として、(1)で対策を講じるために有効なヒヤリ・ハットや事故 の報告の様式の作成、(2)で医療機関の管理者及び医療安全管理者の役割の明確化、研 修内容等のガイドラインの作成、(3)で我が国における有害事象の発生頻度と動向等の 把握、(4)で薬局におけるヒヤリ・ハット事例の収集等、(5)で集積されたヒヤリ・ハッ トや事故等の事例の分析結果、発生予防・再発防止対策について、医療機関、国民に対 して迅速に周知させるためのルールの明確化、システム化と、(6)でその効果の検証が 謳われております。  (2)は「医療関連死の届出制度、中立的専門機関における医療関連死の原因究明制 度及び医療分野における裁判外紛争処理制度」です。10頁の3行目ですが、平成16年9 月に日本医学会の基本領域19学会により出された共同声明があります。これを受けて、 国は平成17年度から「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」を実施すること としております。医療事故の届出、原因分析、裁判外紛争処理制度及び患者に対する補 償制度等については、一体として検討することが望ましいが、異状死の定義、中立性・ 公平性の確保方策、死亡以外の事例への対応の必要性等をはじめとして様々な課題の整 理等が求められる上、人的や財政的な検討も必要となるということで、(1)は「診療行 為に関連した死亡の調査分析モデル事業」を実施する中で課題の整理を行うとともに、 事業実績等に基づき制度化等の具体的な議論の際に必要となる基礎資料を得ること、 (2)は医療機関、医療従事者や患者遺族等との調整、調停を担う人材の養成方法等につ いて検討する、というものです。  3つ目の柱は、「患者、国民との情報共有と患者、国民の主体的参加の促進」です。 将来像のイメージとして、(1)は「患者、国民との情報共有と患者、国民の主体的参 加の促進」です。(1)は患者、国民とともに、わが国の医療を改善する仕組が構築され ているということ、(2)は患者、国民に必要な知識と情報が提供され、患者、国民が医 療に主体的に参加することの意義について理解しているということ、(3)は医療従事者 と患者との間にリスク情報を含めた情報の共有が進み、患者の参加も含めたチーム医療 が推進され、医療のリスク軽減と質の向上が図られていること、(4)は高齢者、障害者 などの患者及びその家族との十分な情報共有、(5)は全ての施設等において、施設の規 模や機能に応じ、患者との情報交換や相談等を行う窓口があり、専門の知識や技能を身 につけた職員により、患者の人権に十分配慮した対応が図られ、患者との情報交換、情 報共有等が行われている、(6)は患者からの相談等が医療に反映され、医療のリスク軽 減と質の向上にも役立てられている、ということです。  11頁の(2)の「医療安全支援センターの充実」として、(1)は専門の知識や技能を 身につけた職員が、患者が安心して医療を受けることができるよう対応していること、 (2)は患者の医療への参加を総合的に支援するための機能を有する機関となっているこ と、(3)は医療機関等の相談窓口における担当者が、患者からの相談に適切に対応でき るための支援機能を有する機関となっていること、(4)は保健医療の課題を分析・評価 し、解決に向けての方策を地域単位で確立するための連携の要となっていることです。  当面取り組むべき課題ですが、(1)の(1)、(2)は国及び自治体は、医療機関による 患者、国民の医療への主体的な参加を促すための情報提供、啓発、普及活動を行う、 (3)は医療機関等の規模や機能に応じ、患者からの相談等を受け付ける機能や窓口の設 置の検討、(4)(5)は医療機関等の患者相談等の担当者、医療従事者に対する必要な研 修、情報提供です。12頁の(6)は医療従事者に対する医療安全の研修等に医療事故の当 事者や被害者を講師として招き、医療従事者と患者、国民がともに医療事故の再発防止 や安全対策を考える機会を設けるよう考慮することです。  (2)の「医療安全支援センターの充実」として、(1)は医療安全支援センターの機 能の充実と評価の実施、(2)は制度的な位置づけの検討、(3)は職員等に対する必要な研 修の実施とカウンセリング等による心身面での健康保持です。3つ目の重点項目は以上 です。  4つ目の項目は、これらについて、特に「国と地方の役割と支援」を整理したもので す。将来像のイメージとして、(1)は国、都道府県、医療従事者の責務及び医療安全の 確保における患者、国民の役割等の明確化、院内感染対策等、医療安全の関連施策の法 令上の整理と体系的な施策推進、(2)は都道府県が医療安全の直接の所管として具体的 な取組を進め、国は法令の整備や情報提供、IT化の促進、研究の推進等の技術的な支 援及び財政的支援等、医療安全推進へのインセンティブを高めるための役割を十分に果 たしていることです。  13頁の当面取り組むべき課題として、(1)は国は、医療安全対策に関する国、都道府 県、医療従事者の責務及び医療安全の確保における患者、国民の役割等の明確化を図る こと、(2)は国及び都道府県によるハイリスクの部署や診療科に特化した対策と、個別 具体的な取組の推進、(3)はこれらの財政的な側面についての十分な配慮、(4)は国、都 道府県による医療機関における機能分化と連携等、効率的、効果的な医療提供体制を構 築するとともに、医療における必要な人材の確保とその適切な配置促進を行うことで す。  最後に「おわりに」ということで、委員の先生方の締めの言葉ですが、「これらの早 期実現に向けて、行政、医療機関等、関係者の一層の努力を期待したい」ということで す。 ○高久座長  ワーキンググループの座長を務められた堺参考人から、追加をお願いします。 ○堺参考人  ただいま事務局から、ワーキンググループの報告書について、推移、内容の報告があ りましたので、私はワーキンググループの作業をどういう基本的な理解で始めたか、委 員の方々がどのような考え方でこの報告書を取りまとめていったかということを報告し たいと思います。参考資料5は平成14年に医療安全対策検討会議が報告された、第1回 の対策報告書です。私どもは第1回の報告書を基に、その後のいろいろな内外の情勢の 変化を踏まえて、現状に即し、かつこれからの情勢の行き先に沿うものを作りたいとい う考え方が基本でした。  そのためにどのような作業を行ったかですが、参考資料4に「医療安全推進総合対策 の実施状況整理表」があります。これは平成14年に対策ができて今日に至るまで、平成 14年に提言されたものがそれぞれその後どのように運ばれたかということが整理してあ ります。  参考資料2は、前回第19回の医療安全対策検討会議の資料として、これまでのさまざ まなご議論、あるいはご報告に基づいて作られた論点を整理したものです。  このような流れと考え方に基づいて、ワーキンググループは参考資料3の第1回ワー キンググループ資料である「医療安全対策の方向性」にこのような考え方で論議してい こうということでまとめてあります。その結果がただいま事務局が報告した報告書です が、その内容について、前回の報告書にはまだ記載されておらず、今回新しく追加され たものを報告したいと思います。参考資料3の1頁の「基本的考え方」は、先ほど事務 局からもお話がありましたが、「医療安全の確保や信頼の確保に加えて、医療の質の向 上を図る」ということで、安全と質は両輪であるという考え方が基本になっておりま す。  もう1つ今回新たに加えたのが「医療安全対策の柱」のIIIの「患者への情報提供・ 共有と患者参加の促進」です。患者参加は以前から言われておりましたが、今回はそれ に加えて情報の提供と共有によって、患者が主体的に医療にかかわっていくことをさら に推進すべきだろう、という考えになっております。  このような考え方に基づいて、いろいろな柱について議論しました。いま事務局から 報告がありましたように、それぞれについて、「将来像のイメージ」と「当面取り組む べき課題」に分けました。もちろん、この両者は厳密に区別できるものではありませ ん。できるだけ当面実現したいということも書いてありますが、実際にはさまざまな情 勢により、それぞれの項目によって、実現には多少時間の違いは出るだろうと考えてお ります。1頁の「新たに取り組むべき主な課題」の中でも、特に今回新しく取り上げた のは、医療の安全性の向上については、前回は院内感染対策は挙げていませんでしたの で、今回取り上げました。それから、医薬品はありましたが、医療機器に関する取組の 記載が少なかったために、これを取り上げました。IT化を重視する、医師に対する再 教育といったものを取り上げました。  IIの再発防止については、医療関連死の届出制度、中立的専門機関における原因究明 制度、裁判外の紛争処理制度などについて検討すべきであろうということを提言しまし た。最後に、医療安全への患者参加の促進というものを掲げました。  内容について、少し細かく申し上げます。参考資料3の4頁ですが、安全性の向上で 今回新しく付け加えたのが、全ての医療提供施設や薬局においての安全管理体制を構築 していくべきであろうということと、医薬品と同じように、医療機器も安全使用体制を 構築すべきであるということです。先ほども申しましたが、再教育制度、あるいはIT 化ということがここに書いてあるわけです。  5頁の安全管理体制の充実も、今後、診療所、歯科診療所、助産所及び薬局における 安全管理体制も整備していくべきであろうということを掲げております。  6頁は、医薬品については従来からさまざまいろいろなことが提起されてまいりまし たが、今回それをさらに強化すること、処方せんの記載方法等の整備も必要だろうとい うことを掲げております。  7頁のいちばん下に「医療機器の管理体制を明確化するよう検討」と書いてあります が、全ての医療機関において、この体制の整備が必要であると指摘しております。  8頁の医師の再教育については、現在、検討会が具体的なご提言をしておられます。 それをここに書いてあります。  9頁の原因究明・分析、再発防止の所は、現在行われているヒヤリ・ハットの収集事 業、事故情報の分析等も加えて、中立的な専門機関による死因究明、医療分野における 裁判外紛争処理制度の必要性を書いてあります。  10頁は重複するので飛ばします。11頁は、医療関連死の届出制度、中立的専門機関等 です。これは今年度から「医療行為に関連した死亡の調査・分析モデル事業」を発足し ておりますが、これの充実と裁判外の紛争処理制度のあるべき姿について、検討すべき だと提言しております。  12頁の患者への情報提供・共有は、患者の医療への参加のためには、情報提供と共有 は是非行わなければならないだろう。もちろん、情報共有といっても、現実に医学用語 を一般の方々にどのようにご理解いただくかという技術的な問題が多々あることは、委 員の方たちは十分理解しております。基本的な考え方として、今後、患者に情報を提供 していただく方向で検討すべきであろうということです。  結果として、医療安全に加えて、患者による医療の選択を総合的に支援する体制を築 くべきであろうということです。  13頁は、国と地方自治体に求めることです。国はさまざまな必要な基盤整備を行って いただきたい。地方自治体は住民の方々への教育、情報提供、相談業務、あるいは地域 の医療機関への指導・監督を行っていただきたい。このように資料1の報告書を取りま とめました。一応、背景を説明しました。 ○高久座長  いまの資料1の説明について、どなたかご質問、ご意見はおありでしょうか。かなり 詳細にご説明いただきましたが、よろしいでしょうか。 ○望月委員  とてもわかりやすく、将来像と当面取り組む課題という形で整理をしてまとめられ て、いまどこまで対策が進んだのか、社会に向けて理解していただきやすい形になって いると思います。細かい点になるのですが、2、3教えていただきたい点があります。 3頁の1の「医療の質と安全性の向上」の中で、(2)「医薬品の安全確保」の中の (3)に「業務手順」という言葉が出てきます。後段の医薬品に関する安全確保の所にも、 6頁の上から4行目の(2)の中にやはり「医薬品の業務手順」という言葉が出てきます。 この「業務手順」というのは具体的に、いままでの私たちのイメージでは内規のような ものを想像してしまうのですが、以前のここの議論でも内規のようなものはあまり医療 安全対策上好ましくないという議論があって、これを何らかの形で標準化されるという か、そういったものを想定されているのかどうか確認させていただきたいと思います。 ○堺参考人  私からお答えいたします。業務手順が整っていないと、いろいろ間違いが起こりやす いということは、当然、皆様すぐご理解いただけるところです。やはり現実の医療の現 場を見ると、いまの時点ではそれぞれの機関、あるいはそれぞれの現場においてそうい う手順が定められているというのが現状です。それが万全かというと、場合によっては 必ずしも万全とは言いがたいということになると、やはりそういうところはお互いに情 報を交換して、今後より良い、現実的でかつ安全性の高い手順を構築していくべきでは ないかという考え方です。 ○望月委員  そうすると、ある程度標準化していくような方向でご検討されていく、ということで よろしいでしょうか。 ○堺参考人  標準化という言葉には、どうもプラスの面とマイナスの面があるようです。しかし、 よその手順と比較して、自分たちの機関で行っている手順に改善すべき点があるかとい う点を検討するという意味では、標準化というのは存在してよいのではないかと思って おります。 ○堀内委員  いまの点について、これは大変大事なことだと思いますが、参考資料3の6頁の中段 に「医薬品の安全使用体制について検討すべき方向性」として、「医薬品の安全使用体 制を充実させるために、下記事項については法令上位置づける必要があるのではないか 」というようになっていると思います。私はいまご質問のあった点については、それを 反映して各医療機関できちんとやり、各医療機関に合った手順書を作るのは当然です が、基本的なことについては法令上位置づける、中央的に位置づけることが大変大事で はないかと判断をしたのですが、それでよろしいでしょうか。 ○堺参考人  まず委員の理解を申し上げて、そのあと必要がありましたら、事務局にお答えいただ きたいと思います。委員の理解としては、いまの堀内委員からのご指摘のように、いち ばん基本的なところは法の定めも必要であろうけれども、いちばん最後の所で「国の責 務」ということで、基盤整備という考えを掲げました。その中には法令の整備も当然入 りますが、先に法令ありきかという議論もありました。私ども委員の考え方ですが、で きるところからまずやっていくべきだし、それからできるだけ早い時期に必要なところ の国全体の整備も進めていただきたい。そういう同時平行的な理解で、このことを書い ています。もし事務局のほうで何か追加することがありましたら、お願いします。 ○医療安全推進室長  先ほどのご指摘も含めて、業務手順書もともとの議論の発端は、薬事法上、毒物、劇 物といった取決めはあるのですが、医療安全上、問題となる医薬品というグループが存 在するのではないかという議論がありました。そういったものをどのような手順で取り 扱うかということを検討したらどうかというところから、この文章ができてきたものと 伺っております。ですから、法令上位置づける必要性については私どもの宿題となるわ けですが、そういった一定のルール化を必要とするようなものをどう取り扱うかを十分 検討すべき、というご提言と受け止めております。 ○高久座長  法令化を含めて検討するということですね。 ○堀内委員  例えば次の所に「処方せんの記載方法」というのがありますが、医療過誤やいろいろ なヒヤリ・ハット事例を見ていると、処方せんの書き方、例えば「×3」という捉え方 など、指示書等への記載の理解の仕方の違い等によって、起こる例がたくさんありま す。したがって、共通の問題についてはできるだけ全国で共通にすることが大変重要だ ろうと思いますので、法令化という言葉が妥当かどうかわかりませんが、各医療機関ご との努力は当然で、それ以外に共通に処理をするという考え方は大変重要ではないかと 考えます。 ○寺岡委員  質問から入らせていただきます。参考資料3の12頁の「見直しの方向性」の中で、 「患者への情報提供・共有と医療安全への患者の参加促進」という項目がありますが、 本日の報告書を見ても、全般に非常にこの面が強調されているように思います。これは 新しい方向性として、確かにそういう流れというか、社会の要請その他があることは、 私も承知しているつもりです。例えばこの頁のいちばん最後に書いてあるような「医療 安全支援センターに対し、医療安全に加え、患者による医療の選択を総合的に支援する 機能を付与することについても検討する」となっておりますが、このことが医療安全に どのように結び付くのかという多少具体的な記載がないと、ただ医療安全や患者の参加 が必要だという強調のされ方では、2通りの解釈がされます。1つは医療事故は患者に も責任があるという捉え方、もう1つはさまざまな整理をされないまま、医療安全の問 題、あるいは医療事故の問題でこういう投げかけ方をされると、かえって患者にいろい ろ不安を押し付けることにもつながるということです。この文言は、私としては理解で きる面もあるのですが、その辺の背景はもう少し具体的な記載がほしかったと考えてお ります。 ○堺参考人  少し追加の説明をさせていただきます。医療安全というものの中に、客観的な安全性 と主観的なものもあろうかと思います。医療安全は両方の面で推進されなければいけな いと考えて、なるべく医療を受ける患者も医療の情報について、それを患者自身が持っ ておられる、あるいは理解しておられることで、主観的な安全性を高めるだろうという 考え方です。ただ、もちろんいまの寺岡委員のご指摘のように、具体的な話で恐縮です が、医療関係者の1人として申し上げると、いわゆる診療録をすべて医療知識のない方 に理解していただくようにすぐに書けるか、という問題があります。全く個人の試みで すが、試みに全ての診療録を普通の日本語で書こうとしてみましたが、これは非常に大 変です。医療の情報が全ての患者100%に共有されることがすぐにできるとは思っており ませんが、できるだけ今後は患者自身の医療の情報を本人、あるいは家族に持っていた だく方向に進むべきであろうという理解です。 ○高久座長  そういう理解は良いのですが、12頁の医療安全支援センターについては、役割や機能 等を明確化するということで、今後の方向に2つ加えています。いちばん下のものは余 計なのですか。 ○堺参考人  実はこれはスタートのときの資料で、最後の報告書で医療安全支援センターにそのよ うな機能を付与することは、提言としては入れておりません。これはスタートのときに そういう考えが1つあったということです。 ○寺岡委員  わかりました。その点、了解いたしました。もう1つ、医療安全支援センターについ て、本文のほうですけれども。 ○高久座長  何頁ですか。 ○寺岡委員  11頁ですが、医療安全支援センターの役割について、ここで強調されているのは患者 からの相談受付を容易にする、あるいはこれを促すという書きぶりになっております。 しかし、もう1つの大切な機能は、医療安全や医療事故に関するデータベースを個々の センターに整備して、最善の医療の実践モデルを医療施設に示して、医療安全活動を支 援するという、もう一方の機能も具備すべきだと思います。改めて医療安全支援センタ ーが最初に設置されたときの目的や要綱などをもう一遍見直してみると、患者からの苦 情というか、相談を受け付けることに非常に機能が重点化されており、医療安全を実施 するために、医療施設をどのように支援していくかという機能と視点が欠けているよう に思います。この際、こういったものを改めて具備すべきではないかと思いますので、 その点について意見を述べておきたいと思います。 ○堺参考人  いま寺岡委員がご指摘のことはワーキングの中で議論が出て、情報を是非還元すべき であると。いま日本医療機能評価機構、その他いろいろ情報の収集をしていますが、そ の結果、あるいは対策の提言を還元すべきだというご意見がありました。報告書のどこ ということなのかわかりませんが、もし十分ご理解いただけないところがありました ら、これは補足すべきかと思います。 ○高久座長  いまの寺岡委員のおっしゃることはもっともだと思いますので、報告書の追加意見と して堺参考人と事務局で相談して、付け加えていただく必要があると思います。やはり 医療安全についてのデータの提供は、医療安全支援センターの重要な役目だと思います ので、もし入っていなければ、それを是非付け加えていただく必要があると思うのです が、ありますか。 ○医療安全推進室長  9頁の(1)の(5)ですが、「登録分析機関に集積されたヒヤリ・ハットや事故等の 事例の分析結果、及び、それに基づく発生予防・再発防止対策については、『医療安全 緊急情報(仮称)』として、医療機関はもとより、国民に対して迅速に周知させるため のルールの明確化、システム化を図る」ということで、情報の集積と還元のルールを作 りたいという提言です。 ○高久座長  寺岡委員は、それを医療安全支援センターの中で、業務として明確化すべきではない かというご意見だと思うのですが、寺岡委員そうですね。 ○寺岡委員  ここには確かにおっしゃるように書いてあります。私も読みましたが、これはどのよ うにして通知するのかというものがないと、やはり通知すべき機関などが必要だと思う のです。ほかにもっと良い方法があればいいのですが、医療安全支援センターの機能が あまりにもワンサイドというか、一方的な面しか付与されていないように思いますの で、そのようにしたらどうかと思ったわけです。  全体を通じてですが、医療事故対策というのは、どうしても後追い的取組になりま す。医療事故が起こった後に、薬剤に関する事故が多い、あるいはさまざまいろいろな ことに対して後追い的な取組になりがちなわけですが、医療の制度そのもの、あるいは 医療施設のあり方、地域医療提供体制といった構造的欠陥が原因になっているという視 点が、この報告書は全体に欠けているように思うのです。報告書は大変熱心に作ってい ただいたので、それはそれとして理解できるものばかりだと思いますが、これが全てで はないと思います。個々のシステム構成員の欠陥ばかりではなくて、構造的欠陥が医療 事故を生む、再生産する構造になっていないかという検討が是非必要ではないかと思い ますので、この際意見を述べておきます。 ○辻本委員  2つの質問と1つの提言をさせていただきたいと思います。質問は報告書6頁上の (3)です。私ども患者の立場としては、無菌調製の推進を心待ちにしておりました。社 会保障審議会のときにパーセンテージを伺ったところ、日本の全医療機関のわずか1割 がいま実施しているというご報告を聞いた限りには、何か背筋の寒くなるような思いが いたしました。ここに無菌調製の推進のことが載せられていることを大変喜ばしく受け 止めたのですが、これを国が支援する形でやっていくのか、各病院の自助努力を考えて のご提案なのか、少し各論過ぎるかもしれませんが、実現を願う患者の立場として1つ お聞きします。  もう1つの質問です。報告書本文11頁目の(2)「医療安全支援センターの充実」の 最後の項目、(4)で突然、「保健医療」という非常に幅広い問題が出てきてしまってい るのです。医療安全支援センターと保健医療の課題、分析・評価、これがどのように結 びつく内容であるかが理解できなかったので、この2点については質問させていただき ます。  提案です。この度の報告書はもちろん、毎年、この検討会でまとめられるペーパーが 患者の情報共有、医療安全への参加促進を支援していただけ、本当にうれしく拝見しま した。同時にいま、これだけの成熟、自立を果たし得る患者が果たしてどのぐらいいる のだろうかという、これもまた背筋の寒いような思いも一方でしております。提言です が、私も、県単位の医療安全支援センターの活動などに多少協力・参加をしておりま す。現場の人たちの声を聞くと、彼ら、彼女らが非常に孤独な中で神経をすり減らし、 しかも、次に誰につなげていくかといった目安も立たない不安の中で仕事に取り組んで いらっしゃる、そのような実状に接しております。医療安全支援センターがある意味で 県単位で行われているので、この支援センターの活動に位置づけていいかどうかはわか りませんが、自治体単位で患者の自立・成熟の支援などをどのようにすべきか、むしろ ワーキンググループを作ってでもしていただかなければ、決して簡単なことではないと 思うのです。私どもCOMLは15年間、そうした目的を持って電話相談による患者の自 立支援の小さな歩みをささやかに続けてきておりますが、患者の意識がドラスティック に変わるといったことも一向に見受けられませんし、そのことがいかに大変かを身を持 って感じております。それだけに、地方自治体に丸投げしても、自治体は、何から始め ればいいのかと不安になるのではないかと思うのです。そういったことを含め、むしろ 国にリーダーシップをとっていただくためのワーキンググループ辺りを是非とも作って いただくことを提案いたします。 ○高久座長  いまの質問に答えていただけますか。 ○医療安全推進室長  11頁の(2)の(4)、「医療安全支援センターは、保健医療の課題を分析・評価し、 解決に向けての方策を地域単位で確立するための連携の要になっている」の所です。自 治体の委員から、支援センターが単に相談を一方的に受ける機能だけでなく、そういっ た個別の医療の問題のみならずその地域にある保健医療の問題を分析・評価し、要する に地域全体でそういった問題を解決するための要の機関になっているべきではないかと いうご提案がありました。こういったことを視野に入れて機能を充実させてはどうかと いう将来のイメージで書いております。いますぐにこれをどうやるかというのはなかな か難しいところですが、そういった幅広の保健医療に関する役割を担えないかというイ メージであると伺っております。 ○辻本委員  例えばどのようなことでしょうか。 ○医療安全推進室長  現在、個別の医療の相談を受けております。例えばその地域の中での医療情報などを 持ってその地域の中で例えば非常に充実している医療、少し足りないものなどがあった 場合に、そういったものをどのような形で連携しながら拡充していくかといったこと等 があるのだろうと思います。そういった情報を住民の方に提供する上で関係者の連携を 図るという中での要の役目も担えないか、といった非常に高い理想なのです。 ○辻本委員  禁煙や生活習慣病の改善など、そういった意味での保健医療ではないのですね。わか りました。 ○高久座長  最初の質問はいかがですか。 ○堺参考人  抗がん剤の無菌調製をただちに法令化するといった議論は、ワーキンググループの中 では出ませんでした。ただ、全体に言えることですが、個々の医療機関における努力 と、そこだけでは十分に達成できなかったときに制度の支援をお願いするということを 並行して進めなければいけないかなと思っております。 ○高久座長  黒田委員と北村委員、これで質問を終わらせていただいてよろしいですか。では4人 の方、短くお願いします。 ○黒田委員  意見が2つございます。第1の意見です。4頁に医療に関するITの必要性が挙げら れていますが、当面取り組むべき課題にはひとつも触れていないのです。医療に関する ITのいろいろな問題とは、電子カルテの問題、病歴の問題、バーコードの使い方、I Cの問題など、世界中で大変論議されている課題なのです。まだはっきりとわかってい ませんし、おそらく、してもいいこととしなくてもいいことがあると思うのです。その 意味で、日本の医療界の中で大変迷われているのです。ですからこれは、当面取り組ま なければいけない課題ではないかという感じがいたします。最後の所にITの研究を進 めるべきであると書いてあるので、当面取り組むべき課題としての具体性が見えてこな いところを何かはっきりと書いていただければという感じがいたします。  第2の意見です。12頁の国と地方の役割の問題の所に書いてあると思いますが、これ は3本柱ではなく、4本柱なのです。いままでの医療の安全の研究をずっと見ています と、医療界でやれることの方向性は大体見えてきていると思うのです。しかし、どうし てもぶつかる壁があります。看護師の数やワークロードの問題、医者の勤務の時間の問 題など、寺岡委員がおっしゃった医療費を含めた医療の構造的な問題だけがついにぶつ かる壁として残ってしまっているのです。そのような意味で、この委員会が出来て既に 4年が経ちますが、そろそろ最後に突破すべき道がどこであるかを4本柱の中から見え るようにしていただきたいという感じがいたします。 ○北村委員  3頁の「将来イメージ」の(1)の(2)に「必要な人材が確保され、必要な制度が整 備されていること」とあり、大変必要なことだと思っています。私は現在、厚生労働省 も認可して公告を認めている学会が認定している専門医というものが、医療安全でも責 を担うべきことをはっきりと明言していただきたいと考えています。それを認定してい る各学会にも自分たちの認定する専門医は医療安全でしっかりした貢献をしなければな らないということを明示していただくことも大変重要ではないかと思っております。そ ういった面では、認定している医学会に明らかに期待が持たれていることを資するため にも、ここに「専門医という人材教育の中で医療安全に取り組むこと」と明言していた だけたらと思うわけです。それが1つです。  もう1つ。4頁の(5)医療従事者の資質向上の(2)に「客観的にモニターするため の手法が開発され整備されている」とあります。現状でもいろいろな専門的な医師が社 会問題を起こしており、そういったことも含め、訴訟にも医療の水準というものが挙げ られるわけです。その施設が水準的医療に劣ることをしていなかったかどうか、それが 患者に障害を与えたかどうかといった医療の水準の判定には、医療界、医学界がデータ ベースを作成し、科学的に現代の医療の水準とは何なのかということを示す必要があ る。信頼できる指標集めと分析をする必要があります。あるいは、研修指定病院や特定 機能病院にはデータを出すことを義務づける、そういったものをある程度第三者的に判 断するようなものが必要ではないかと思います。これは私の意見です。  堺参考人にお聞きします。8頁、既に日本医師会のほうでも厚生労働省のほうでも閣 議のほうでも決定されている医師の再研修の問題です。特に技術研修というものがあり ます。倫理問題の研修は、比較的容易に行えると思うのです。しかし、再教育における 技術研修はどうあるべきかについて、8頁の(4)ですが、ワーキンググループで話が出 たのであれば、先生が何らかのお考えを持たれているのであれば、教えていただきたい のです。我々、現実問題として、医療事故で処分を受けた人をどのように再研修するか 悩んでいるところです。 ○堺参考人  北村委員がご指摘になった2番目の医療の水準にかかわるお話がやはり出ました。そ こで、水準とはこういうものだ、そこへ到達させるにはどうするか、そのような包括的 な話は出ました。ただ、個々の医療の分野あるいは技術についての具体的なところまで は議論がいっていませんでした。 ○中村委員  私どもの所は、AB会員733名、病院数が38名の医師会です。この3年間で医療安全 対策検討委員会を立ち上げ、奇数月に講演会、セミナー等を行い、医事紛争の届出件数 を半減させることができました。本会議の資料、各医療機関からの資料の持ち寄りで主 に医療従事者の資質の向上に努めてきたわけですが、ここに至り、いままでのやり方で いいのだろうかといった話が出てきているのです。最近、「ネジ切れ症候群」とよく言 われていますが、あまりネジを締め上げるとどこかでプッツンといくのではないかとい うことなのです。そのようなことがあるのかもしれません。麻酔医、外科医、産婦人科 医の減少、新卒の看護師がわずかな期間で離職している。最近の新聞によると、研修医 もその4分の1がうつ状態である等と言われています。ネジをギリギリ巻くのにも限界 があるのではないか。したがって、13頁にあるように、いよいよ人材の確保と財政的な 側面が必要になってきたのではないか。そのようなことを思います。 ○野本委員  日本医療機能評価機構で厚生労働省の委託事業で医療安全センターの総合支援という 仕事を担当している立場から、お願いが1つございます。皆さんは、たくさんのケース にぶつかって苦労しているのですが、センターの権限がいま一つ不明確です。私は、パ スを通したりするのに苦労をするという声を生で聞いております。また、12頁の(2) の(1)に、「法令に明記する」などとあるので非常に安心できるところですが、生の要 望として、できればどこかで権限と役割をバランス良く検討していただく、ないしはし てあるといったことが入れば、メンバーの人たちにも安心して頑張りなさいと言えるよ うになると思うのです。その点について、是非ともお願いしておきたいと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。もう1つ議題がありますので、短めにしていただけ ますか。 ○細田委員  先ほど黒田委員から、ITに関してすぐやるべきことが具体的に書かれていないとの ご意見がありました。ITを使ったときに安全の問題に関していちばん大事なことは、 その医療計画の標準化、医療の記録の精度を上げて正確な記録が残る、そういったこと だろうと思います。それに関連して医療の現場で毎日起こっている人まちがいの問題、 あるいは人まちがいでなくてもそれをやった人が誰であるかという記録が残っていない ということがあります。私は前回のこの会議で申し上げましたが、バイオメトリックス を使った個人認証を正確にやることでそういった問題が予防できる、あるいはなくすこ とができると感じております。このことは、技術的にはそう難しいことではないと思い ます。ただ、各医療機関が行うと、非常にお金のかかることです。ですからそれを全国 的に、先ほど標準化や総括などの言葉が出ていましたが、その例としてミニマム・リク ワイアメントとしてその個人認証をきちんとすることをやっていただくという計画を立 てていただければ、ありがたいと思います。 ○高久座長  まだまだご意見があると思いますが、これで議論を終わらせていただきます。ただい まの議論の中で寺岡委員のおっしゃったインフラストラクチャーの問題、黒田委員のお っしゃったマンパワーの問題、当然、医療経済の問題が大きな課題になると思います。 私自身も以前から、構造的な問題を科学的に解明していく必要があるのではないか、医 療関係者が忙し過ぎることが医療事故に繋がると思っており、この点について報告書に 明言していただきたいと思います。お金のことになると難しい点があると思いますが、 忙し過ぎることが事故の大きな原因であることは世界的に共通の認識です。それについ てはこの報告書でも結構ですし、将来検討課題としてでも是非加えていただきたいと思 います。この報告書をこの検討会議全体としてご承認いただき、さらに今日委員の方々 からいろいろなご意見を伺いましたのでそれを追加の意見として加えて、医政局長なら びに医薬食品局長に報告するという形をとりたいと思います。それでよろしいでしょう か。                   (了承) ○高久座長  追加のご意見については、たくさんあったので私と事務局で検討させていただきたい と思いますが、それでよろしいですか。 ○医療安全推進室長  意見がたくさんあったので、いまいただいているご意見の確認をさせていただいても よろしいですか。 ○高久座長  どうぞ。 ○医療安全推進室長  「医療安全支援センターの機能の充実に当たっては、医療安全に関する情報の医療機 関への提供や患者、国民に対する医療安全教育等に関する機能についても考慮するこ と。」これが辻本委員、寺岡委員からのご意見だったかと思います。  「医療の質の向上と医療安全の更なる推進を図る上で専門医育成の在り方等について 検討が必要であること。」北村委員からのご意見だったと思います。  「患者の取り違えの防止等の観点からも複数のバイオメトリックス(生体情報を使用 した精度の高い個人認証システム)を導入するなど医療におけるIT化の推進を図るこ と。」これは、医療のIT化のお話とバイオメトリックスのお話でした。  こういった内容を文言については座長とご相談させていただいてよろしいでしょう か。 ○寺岡委員  肝心な医療事故の構造の問題、インフラストラクチャー、経済的な支援、そういった こともきちんと書いてもらいたいのです。いまおっしゃった説明の中にはそれが欠けて います。 ○医療安全推進室長  報告書の最終頁に記載があります。 ○高久座長  私もその2つの点がきわめて重要だと思いますので、あとで付け加えて、確認したい と思います。 ○医療安全推進室長  それでは、そのようなご意見を踏まえ、ただいまお配りしたような形の中に追加のご 意見を記載させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○高久座長  議題の2番目、ヒューマンエラー部会から出された「処方せんの記載方法等に関する 意見」について、事務局から説明をいただき、次いで、ヒューマンエラー部会長の堺参 考人から補足のご説明をお願いします。 ○医療安全推進室長  資料2、「処方せんの記載方法等に関する意見」です。1頁目、ヒューマンエラー部 会の堺部会長から高久座長宛の意見書です。  2頁目、意見の内容です。「当部会においては、医療安全対策のうち、ヒューマンエ ラーに関わるものについて議論を行ってきたところである。処方せんについては、医師 法等に基づき記載が行われているが、記載方法、記載項目等については、医師、医療機 関の間で統一されておらず、そのことに起因した処方せんの記載ミス、記載漏れ、指示 受け間違い等のヒヤリ・ハット事例や医療事故が後を断たない状況にある。このような 認識の下、当部会としては、医療安全の観点からも、記載方法、記載項目の標準化を含 めた処方せんの記載等に関する検討を早急に行うべきであるという結論に達したところ であり、医療安全対策検討会議においても議論が行われることを強く期待し、その旨意 見を具申するものである」。  3頁目に新聞等で報道があった記載間違い、記載に起因した間違い等の事例がありま す。4頁目に法令等があります。処方せんに関しては医師法に基づいて処方せんの交付 義務がありますが、その抜粋です。5頁目、これに関連して診療報酬の関係で保険局か ら出されている通知の中に記載方法等について書かれています。4頁、5頁に基づいて 書かれている中で間違いが起こっているということで、このような意見書が出てきたも のです。ヒューマンエラー部会ではこの問題について長期に議論がされており、今回、 意見書としてご提出いただいたものです。 ○高久座長  堺参考人、何かご質問ございますか。 ○堺参考人  いまのご説明に尽きています。喫緊の問題は多数ありますが、その中でも特にこの処 方せん等に関する検討は至急行うべきであるという委員の意見であり、これを持ってま いりました。よろしくお願いいたします。 ○高久座長  資料2「処方せんの記載方法等に関する意見」について、ご質問、ご意見はあります か。 ○望月委員  先ほどのSOPと関連するお話だと思うのですが。参考資料1に4つの報道記事の例 が出ています。現在、医療機関で他の医療機関から転院されているケース、保険薬局な どにいろいろな医療機関の処方せんが集まるケース、処方せんを書かれた医療機関が異 なる場合は、かなり多く存在していると思います。おそらく、その都度、こういったミ スが起こる可能性は大だと思うのです。昔から院内の取決めという形で処方せんの書き 方が流通していることにより、それがいま申し上げたようないろいろな医療機関の処方 せんがシェアされるという状況になったとき、こういった大きな事故あるいは過誤に繋 がることは大いにあり得ることです。したがって、きちんと共通化した形の記載方法を 検討していただくことは、安全対策上、非常に重要なことではないかと思います。  今回のご提案がよく理解できていないのですが、ヒューマンエラー部会でこういった ことが重要であるということが議論され、それをこの会議の場でももう一度検討してほ しいというご提案であるという理解でよろしいのでしょうか。 ○医療安全推進室長  ヒューマンエラーの観点のみでなく処方せんに関しては、医師法上位置づけられてお り、さまざまな医療関係者に影響する問題ですので、この検討会議でご議論いただき、 できればこの検討会議としてオーソライズした形でご提言をいただけないだろうかとい う部会のご意向です。 ○望月委員  そうすると、具体的な案は部会のほうから提案されるという形で上がってくるという ことで、それをここで議論するという形でよろしいのでしょうか。 ○堺参考人  では、ご説明します。ヒューマンエラー部会はこの検討会議の下部組織ですので、ま ず、上部組織にその検討を至急に始めていただきたいとご提言します。そこの検討をど こが行うかといったことも併せてということです。 ○黒田委員  ヒューマンエラー部会のミッションは起こった事象を公表することなのですか、それ とも再発を確実に防止する方法を提案することなのですか。例えばここに4例ありま す。4例の中にアレビアチンのケースがあり、細粒の販売を中止していますね。このよ うなものは防止計画ですね。また、こういう処方の仕方で間違いがありましたよ、とい うのは現象記載ですね。ヒューマンエラー部会は、どこをねらって行うのですか。 ○堺参考人  もちろんその再発防止、安全性の向上がミッションだと思っております。ただ、部会 ですべて決定して行動するような組織ではないと思っております。この検討部会にご報 告し、ご決定をいただく事項もあると考えております。 ○黒田委員  検討部会というのはどこが対策を。 ○堺参考人  ここです。 ○黒田委員  ここが対策を提案するわけですか。 ○堺参考人  ここで対策を至急に行うようにというご決定をいただければ、という主旨です。 ○黒田委員  わかりました。是非とも対策を行ってください。 ○堺参考人  はい。 ○高久座長  意見をまた医政局長に出すということになるので、この検討会として意見を出してい ただく。ヒューマンエラー部会の報告をお認めいただければこの報告を医政局長に出し ます。ということになると思います。 ○黒田委員  これは、厚生労働省からこういう対策をとって再発の防止になったという報告がいつ かはあるわけですか。 ○医療安全推進室長  ただいま、資料を配らせていただいておりますヒューマンエラー部会からのご意見を 受けて、こちらの検討会議から医政局長、また、この検討会議の所管である医薬食品局 長宛にこういったご提言をいただき、私ども厚生労働省として適切に対応するという宿 題をいただくことになります。それらの対応については、また対応ができたときにご報 告することになると思います。 ○高久座長  そのフォローアップについてはまたこの部会で報告があるそうですから。ほかにいか がですか。 ○堀内委員  先ほども少しお話しましたが、処方せんの記載の仕方が各医療機関あるいは地域によ ってさまざまであることにより、その捉え方がその医療従事者の間でも違ってきてしま い、それが過誤に結び付くといった事例がたくさんあるというのは、ご存じのとおりで す。やはり、これは統一をする、間違いのないように統一した書き方をする、それがま た指示簿等にも同じように反映することが大事だと思います。習慣ですから、指示簿に も正確な指示が出せない、それが具体的に患者に投与するところで間違ってしまう、と いうようなことはたくさんあります。ですから、是非やっていただきたいと思います。  もう1つ。処方せんについて、ここでは医師法のことだけが書いてありますが、薬剤 師法では、処方せんを監査し、問題がないことを確認した上で調剤を行い、患者に渡す ということが記載されています。私は群馬大学病院におりますが、処方せんが打ち出さ れると病名と処方内容が薬剤部にすぐに打ち出されるようになっており、病名と処方内 容を比較しながら監査をするということをやっています。全処方せんについて行ってお りますが、最初、これを始めたとき、多数の処方せんに問題がありましたが現在、それ はフィードバックにより大幅に減っていますが、監査の仕方なども、チームワークの中 で過誤が起こらないようにしていくということが大事だと思います。その点について も、是非ご検討いただければありがたいと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。その点について何かご意見ありますか。それでは、 先ほども議論がありましたが、処方せんの記載方法等に関する意見ということで、この 検討会議の座長の私の名前で医政局長に意見を出すことでご了承いただけますか。                   (了承) ○高久座長  ありがとうございました。医療安全対策検討会議の座長として今後の医療安全対策に ついて、平成17年5月の今後の医療安全対策についての報告書を医政局長に提出します が、この資料の「これに加え」という所で先ほど議論のあった専門医の制度の問題、I T、個人認識の問題、さらにインフラストラクチャーの問題、マンパワーの問題、など この委員会で議論された重要な事柄について、別に記載して出すようにしたほうが良い ですね。ここの文章に付け加えるよりは、特に「これに加え」という所で記載させてい ただきたいと思います。具体的な文章については、また私と事務局のほうで相談をして 付け加えさせていただきたいと考えています。  議題3のその他については特にご意見等がないようですので、先ほど議題1について 少し強引に議論を打ち切らせていただきましたので、何かご発言がありましたらどう ぞ。 ○寺岡委員  これは言わずもがなのことかと思いますが私が少し気になるのは、医療の質と水準 化、標準化という話もありましたが、医療の質と医療安全が車の両輪であるといった書 きぶりになっています。しかし、質が高ければ医療事故が起こらないというわけではあ りません。むしろ、質の高い医療を目指したほうがリスクが高いということもあるわけ です。しかも、医療事故は人の名前を間違えるといった非常に細々したことに及び、こ れは医療の質の内容とはあまり関係がないということになってきます。その辺を少し混 同される向きもあるのです。そういった意味では、例えばいま北村委員がおっしゃった 専門医の教育の中で高い水準を目指す専門医の教育の中で医療安全はどう位置づけられ るかといったような検討も是非必要ではないかとも思います。その辺の書きぶりが少し 気になっていますので、一言追加させていただきます。 ○高久座長  どうもありがとうございました。 ○武田委員  先ほどのマンパワーの問題は、我々麻酔科という立場ではかなりせっぱ詰まったとこ ろがあります。安全を確保するためにインフラの問題とマンパワーの問題は是非引っく るめてお考えいただきたいというのが、先ほど高久座長からも再三ございましたように 是非お願いしたいということです。  もう1点、提案です。私どもの学会でクローズド・クレーム・スタディーというもの をやっております。これは、アメリカの学会がやっているものを真似させていただいた ものです。医師賠償保険の加入している保険会社から大変ご協力をいただき、我々の学 会員がそのデータを調べさせていただき、それをフィードバックさせようというもので す。是非そのようなものも一緒にお考えいただきたいと思います。中に膨大な資料があ り、結構参考になり役に立つものが手に入るかと思いますので、是非お考えいただけれ ばと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。 ○高津委員  先ほど法令化を含めて検討するという法令化の問題が1、2回出ました。例えば歯科 診療所等で今回、「それに加え」という所で義務化されていない所がかなり具体的な方 向性が出たわけです。将来、この報告書がその先どのような手順で法令化のほうに向か っていくか少しわかれば、現場で対応の仕方を手早く検討しなければいけないかなと考 えております。いかがでしょうか。 ○医療安全推進室長  この報告書については、本日ご承認いただければ、私どもの両局長宛に提出していた だくことになります。その後、この報告書を受けて行政としてできること、関係の団体 や医療機関にお願いすることなどを踏まえ関係者に周知いたし、特に行政の宿題になる ことについては、私どもがこれから医療部会に意見を提出し、再度必要なご議論をいた だきたいと思っております。その上で具体的に法令の整備の問題等が生じた場合、また 関係者の皆様方とご相談させていただきたいと考えております。ただ、間に合うものに ついては、平成18年の医療法改正を視野に入れ、医療部会でご議論いただいておりま す。スケジュール的にはそういったことを考えながら内容についてできる所から進めて いきたいと考えております。 ○寺岡委員  法令化の問題です。いま医療法のお話が出ましたが、その法律の中に何を書き込むか により、対応策がいろいろ出てくるわけです。医療安全対策を法令化の中に書き込むこ とになれば、当然のことながら先ほどから話題になっているそれに対する国としての対 策、人材確保の問題や財源確保の問題といった見通しがなければならないと思うので す。そうでなければ、法令化と言っても、結果を生み得ない法令化になってしまうわけ です。その辺については、十分にお考えいただかなければいけないと思っております。 ○堀内委員  マンパワーのお話が出ましたが、これは大変重要なことだと思います。先ほど辻本委 員からもお話がありましたが、医薬品の安全を確保するためには責任体制を明確にして いくことが大変重要だと思います。先ほど、注射薬の混合等で例えばIVHの調整が1 割程度の病院でしかできていないというお話がありました。いま、少なくとも抗がん薬 についても、すべて無菌的に薬剤部で調製するべきであるということになっています。 また、前回の診療報酬では、重症患者に対する注射薬の混合のフィーは付いたのです が、結局、ほとんどできていないというのが実状だろうと思います。これもまさにマン パワーの問題です。医療安全の推進は、医師、看護師、薬剤師など、いろいろな医療人 のマンパワーが確保されなければなかなか難しいのです。その辺について十分にご検討 いただきたいと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。では、議論を終わらせていただきます。事務局か ら、次回の日程等の連絡事項をお願いします。 ○医療安全推進室長  座長からご説明がありましたように、先ほど机上配付させていただいた資料に座長と ご相談した上で追加のご意見を整理して最終の鑑を作成させていただきたいと思いま す。次回の日程については、委員の皆様の日程を確認の上、後日ご連絡させていただき ます。 ○高久座長  以上で本日の検討会を終了します。いろいろとご意見をいただき、大変ありがとうご ざいました。                       (照会先)                       医政局総務課医療安全推進室指導係長                       電話 03-5253-1111 (内線2579)