資料2

医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等の
あり方に関する検討会中間まとめ案(骨子)

I はじめに

 1 検討会の趣旨

 医療部会における論点整理を踏まえ、患者の視点に立って医療安全を確保する観点から重要と考えられる保助看法等看護職員に関連する課題について検討を行い、一定の方向性を示す。

 2 検討会の開催経過

 これまで○回開催し、
 看護師資格を持たない保健師及び助産師の看護業務
 免許保持者の届け出義務
 助産師、看護師、准看護師の名称独占
 行政処分を受けた看護師等に対する再教育
 助産所の嘱託医師
について検討。ただし、助産所の嘱託医師については、さらに検討を続行。


II 個別の論点

 1 看護師資格を持たない保健師及び助産師の看護業務について

(1)現状及び問題の所在
 保健師助産師看護師法においては、保健師及び助産師は看護業務を行うことが可能とされていることから、看護師免許を持たない保健師や助産師が看護業務を行っている実態がある。

 4年制大学の急増により、看護師資格を持たない保健師及び助産師が増加する可能性が高くなってきている。

 その場合、看護業務の実施に求められる知識、技術の確認がないまま、看護業務を実施していることになる。それによる医療安全上の実際上の危険は不明であるが、医療安全を制度的に高めていくべきとする方向性からみると、改善が望ましい。

 患者の視点からみても、看護師資格を持たない保健師、助産師が、看護師として働いているという実態は想定外で、患者の不信を招くことになりかねない。

(2)保健師、助産師としての資格の意義・理念

 保健師、助産師は、制度上、看護教育修了を前提とした資格であること
 保健師、助産師の業務には、実質的に看護業務が含まれるものであること
などから、看護業務の実施は資格に内在している要素と考えられる。

 現行制度の創設時において、保健師、助産師には看護業務についての知識技能の確認が行われていたということを踏まえれば、単に看護教育を修了したことに止まらず、一定水準に到達していることを公に確認することが求められているといえる。

(3)今後の方向性

 上記のような資格の理念から考えれば、看護業務に必要な基本的な知識・技能の確認ができるような制度的な措置を講じることも考えられる。

 その際、様々な方法が考えられるが、法改正をせずとも、改善する方法を模索することが望ましい。

 2 免許保持者の届出義務について

(1)現状及び問題の所在

 医師等については、厚生労働大臣に対する免許保持者の届出となっているが、看護職員については、都道府県知事に対する従事者の届出となっている。

 55万人と推計される潜在看護職員の状況が把握できない実態がある。

 これについては、以下のような指摘がある。
 国家資格であることから、離職した看護職員のフォローを何らかの形で国が行う必要がある。

 国家資格を有する者として、求めに応えるという倫理感を持つべきであり、届出義務を果すという姿勢も必要である。

 国全体のリスクがあったときの対応としても、看護職員の把握は必要である。

 医療安全の確保を図る観点から、ある程度の看護職員を確保する必要があり、今後、潜在看護職員の活用を図るために、その把握が必要である。

 他方、免許保持者の届出制の導入については、以下のような指摘もある。

 潜在看護職員の把握を始め確保対策のためのデータを集めることと届け出制とは別問題である。

 潜在看護職員の把握について実効性は期待できない。

 未就業者に対し届出を義務付ける場合、罰金が重すぎる。

(2)今後の方向性

 仮に免許の更新制が導入されれば、未就業者に届出を課すことにより生ずる負担の問題は、自ずと解決する。この課題については、今後、さらに検討を重ねて結論を得る必要がある。

 保助看法本体ではなく、人材確保の観点から措置を講じることも考えられる。

 3 助産師、看護師及び准看護師の名称独占について

(1)現状及び問題の所在

 看護職員の名称独占については、保健師に関して、その保健指導業務上の名称独占が認められているだけである。

 これについては、以下のように問題点が指摘されている。
 他の医療関係職種や福祉関係職種において名称独占がかけられているが、それと比べて不整合である。

 名称独占がかけられていないことから、過去に不適切な事例が存在し、患者に対する正しい情報提供という点から問題である。

 守秘義務のある資格でありながら、名称独占がない結果、逆に資格としての信頼感に欠けるおそれがある。

 医療の質、安全の確保を図る上で、名称独占がないことは問題である。

 保健師の名称独占についても業務を限定せずに一般的な名称独占にすべきである。

(2)今後の方向性

 次期医療法改正と合わせて、保助看法に、助産師、看護師及び准看護師の名称独占を導入すべきである。

 保健師については、保健指導業務に限定しない、名称独占とすべきである。

 4 行政処分を受けた看護師等に対する再教育について

(1)現状及び問題の所在

 看護職員についても行政処分事例、特に医療事故をめぐる処分が増加している状況にある。

 医師、歯科医師については、行政処分を受けた者についての再教育を実施すべきであるとの方向性が打ち出されている。

 業務停止の行政処分を受けた者が、一定の時間の経過のみで業務を再開できることには下記のような問題がある。

 技術不足による医療事故の場合、安全で確実な技術が提供できる保証がない。

 長期間の停止の場合、医療知識、技術が低下する危険性がある。

 患者の立場からみた場合、医療事故再発防止に向けた取組みがないことは、医療の信頼を回復することにならない。

(2)再教育の有効性・必要性

 行政処分を受けた看護職員については、倫理観や知識・技術など個々の資質の再確認を行う再教育制度の必要性が認められる。特に医療安全の確保、患者の立場からすれば当然の措置である。

 ただし、医療事故については、行政処分を受けた個人の再教育だけではなく、組織の責任者を含めて組織全体の指導・教育等もあわせて推進される必要がある。

(3)今後の方向性

 医師、歯科医師に対する再教育のあり方、行政処分のあり方の検討も踏まえ、看護職員についても基本的には同様の措置をとるべきである。

 再教育のしくみを検討する際には、次の点に考慮する必要がある。

 再教育を受けるべき対象者の範囲
 再教育の内容
 再教育の助言指導者
 再教育の修了評価基準と認定
 再教育の実施主体
 再教育の実施責任者 等


III おわりに

 今後、下記のような残された課題について検討を行う予定である。
  ・ 助産所の嘱託医師
  ・ 新人看護職員研修
  ・ 産科における看護師等の業務
  ・ 看護記録
  ・ 看護職員の専門性の向上
  ・ その他(保助看法の全般の見直しの論点等)

 なお、国民・社会のニーズに応じた看護制度とするため、保健師助産師看護師法 の全体的な見直しを視野に入れ、さらに検討を進めるべきとの意見もあった。

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