雇用均等分科会における主な意見


1 男女双方に対する差別の禁止について

【男女双方差別の禁止と均等法第9条の特例措置の在り方について】
 ○  従前から主張してきたように、均等法は男女双方に対する差別を禁止すべき。
 ○  女性の職域拡大があまり進まない中、第9条の措置により積極的に男性の進出を促進することまでは時期尚早。
 ○  理論上は第9条も片面性をなくすべきだが、実態も踏まえて慎重に議論する必要がある。

【均等法の目的について】
 ○  男女平等というとき、男性の仕事中心の生活に女性を合わせるべきではなく、均等法を男女双方差別の禁止とするのであれば、良質な労働条件や人間らしい生活の観点から、「仕事と生活の調和」を均等法の目的に規定すべき。
 ○  両立は重要だが、育介法や男女共同参画社会基本法、時短法等もある。「仕事と生活の調和」を、労働権を男女平等に確保するための法律である均等法に入れると法の目的が曖昧になる。目的は特化して絞ったほうが機能しやすい。
 ○  「仕事と生活の調和」については、働き方が多様化した今日の実態にそぐわないため、理念に入れるべきではない。


2 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止

【不利益取扱いの禁止について】
 ○  育休の申出・取得を理由とした不利益取扱いの禁止と併せて妊娠・出産に係る不利益取扱いを禁止することが実効性を高める。
 ○  不利益取扱いとは何かという事例を社会に示し、事前に防止することが必要。
 ○  妊娠・出産を理由とした不利益取扱いを性差別禁止の枠組で捉えるか、妊娠・出産を理由とした不利益取扱い自体として禁止するかは規制の枠組の相違にすぎず、違法となった場合の法律的な効果は異ならない。

【不利益取扱いの内容等について】
 ○  育児・介護休業は男女双方を対象としているが、産休は女性のみの権利であり、少子化の中で、我が国の社会政策として同じ扱いで良いのか(むしろ手厚くする必要があるのではないか)、議論が必要。
 ○  妊娠・出産に伴う症状で労働能力が低下した場合は、まさに妊娠・出産そのものと考えるべきであり、妊娠・出産に伴う不就労に応じてマイナス評価とされることを当然視して良いのか疑問。
 ○  妊娠・出産したこと自体を理由とする不利益取扱いは判断しやすいが、能率低下、労働不能、復職時の問題などは、公正性の概念が重要であり、慎重に議論すべき。
 ○  本来、能力のみで判断すべき部分を、社会性の観点から、より保護をするために平等ではない部分を作る枠組である。その範囲をどうするかという議論の際には、当然、企業経営の側面も考慮すべき。
 ○  保護の範囲の検討に際しては、不利益の性質や内容、権利を抑制する効果等の総合的な判断が必要。
 ○  能率低下や不就労は育児・介護の場合にもあるがすべて働いた者と同様に扱えというのは企業では担いきれないであろう。
 ○  (1)育休の不利益取扱いと同様に考えることができる部分と(2)能率低下など妊娠・出産に固有の部分とに分け、(1)については基本的に育休と合わせる方がよい。
 ○  ILOの母性保護条約を批准するためにも、出産手当金の給付率を引き上げるべき。


3.間接差別の禁止

【間接差別の禁止について】
 ○  間接差別は使用者にも抗弁の機会があり、結果の平等を求めるものではない概念である。形を変えた差別に対応するのに有効な概念であり、均等法に規定すべき。
 ○  間接差別は漠然とした概念であり、無制限に広がりかねず、現場が混乱する。判例等の蓄積により概念化が進み、法制化に至るのが本来の流れであり、間接差別の検討自体、時期尚早。現段階では、ポジティブ・アクションで進めていくべき。
 ○  中小企業の現場では、間接差別の概念は分かりにくく、まずは認識を高めることが必要。
 ○  前回改正での議論を踏まえ、間接差別の概念は明確にできており、間接差別の概念が不明確だから議論するのが難しいという時期は過ぎている。また、間接差別の法理も機会の均等の実質的確保が目的。
 ○  法治国家では法文化しないと社会の規範にならない。

【間接差別の内容について】
 ○  転勤要件や世帯主要件は女性にとって不利益であり、差別の一つであるのでどうしていくのか議論すべき。
 ○  コース別雇用管理制度全てが差別とは認識していないが、なぜ募集・採用という入り口段階で分けなければならないのかという問題意識がある。
 ○  パートの女性と正社員の男性を比較したとき、諸手当や定期昇給制度が適用されないのは間接差別ではないか。
 ○  結果の平等の追求から話がスタートしているように思え、転勤の有無や世帯主の問題も理解できない。
 ○  コース別について募集・採用段階から分けるのは、要員管理の必要性からは当然。
 ○  我が国における性別役割分担意識が強いため、男性が子育てに参加しないことから、女性が総合職を選べないとしても、そのことから直ちに企業がコース別雇用管理をやめるべきとはいえない。
 ○  間接差別は何かという議論とどのようなものを射程に入れて解決していくかは別の問題。


4 差別禁止の内容等

 ○  第5条の「均等な機会を与えなければならない」について、「差別的取扱いをしてはならない」とすべき。
 ○  現行法のステージごとの規制から漏れる問題もあることから、「仕事の与え方」も含め、雇用ステージ全般の包括的な規制とすべき。
 ○  雇用管理区分が異なっても同じような仕事をする場合は多々あり、指針が差別認定を狭めている。見直しを検討すべき。
 ○  労基法3条に「性別」を追加し、かつ労基法4条の賃金差別禁止を機能的に担保するため、均等法にも賃金差別禁止を規定すべき。
 ○  均等法に賃金差別を規定した場合、労基法では刑事罰で担保し、均等法では刑事罰は付かないこととなり、理論的整合性がとれない問題が生じる。
 ○  均等法は配置や教育訓練の差別的取扱いを禁止し、配置差別等の結果としての賃金格差を生じさせない仕組みになっており、既に賃金差別の禁止を機能的に担保している。


5 ポジティブ・アクションの効果的推進方策

【義務化について】
 ○  均等法に事業主のポジティブ・アクションの行動計画の作成と実行の義務を明文化すべき。ただし、法施行後3年間は、常時使用される労働者が100人未満の事業主については、行動計画の作成は努力義務とする。
 ○  行政側のコストは理解できるが、企業のコストについては、企業は労務構成の把握・分析を当然行っており、計画にすることにどれほどのコストがかかるのか疑問。
 ○  ポジティブ・アクションに取り組む意義は否定しないし、奨励は良いが、事業主の自主的取組を尊重すべきであって、義務化は反対。
 ○  中小企業では言葉の定義自体理解されていない。まずは周知や行政の取組を進めることが必要。
 ○  国が進めるポジティブ・アクションの内容は大企業を想定しており、中小企業の実態に合っていない可能性がある。中小企業でも、実際には男女関係なく機会を与え、登用している企業は相当数あるが、それをポジティブ・アクションだとは認識していないのではないか。

【ポジティブ・アクションの奨励措置】
 ○  企業へのインセンティブとして、次世代育成支援法の認定マークのような目に見える形の奨励策や、中小企業の取組を促進するため、税制上の優遇措置、助成金の支給なども検討すべき。
 ○  均等推進企業表彰よりも、認定マークという形の方が企業に積極的なインセンティブを与えることができる。
 ○  認定マークについては、均等の問題は次世代育成と異なり、結果の数字を求めるものではないため、基準の作り方が技術的に難しい。
 ○  PRの強化を考えて欲しい。
 ○  均等推進企業表彰をポジティブ・アクション積極取組企業表彰と変えた方がアピール効果があるのではないか。


6 セクシュアルハラスメント対策

【規定の強化について】
 ○  現行法では助言・指導・勧告の対象とされているが、抑止力を強めるため、配慮規定から義務規定(予防義務、事後対応義務)とすべき。
 ○  セクシュアルハラスメントがあってはならないのは当然であるが、現実問題として会社がどこまで深く関われるか困難な場合も多く、現行指針のPRに努めることが重要。

【セクシュアルハラスメントの定義について】
 ○  セクシュアルハラスメントの定義にジェンダーハラスメント(性別役割分担意識に基づく言動)も含めるべき。
 ○  ジェンダーハラスメントを含めると、本来のセクシュルハラスメント自体が不明確になってしまうため、反対。
 ○  性別役割分担意識を変えることはセクシュアルハラスメントの場面に限らず、女性の活躍の場を広げるために不可欠であり、ポジティブ・アクションの中でやっていくべきことではないか。

【その他】
 ○  男性もセクシュアルハラスメントの救済の対象とするとともに、セクシュアルハラスメント申出を理由とする不利益取扱いの禁止やプライバシー保護も法律に規定すべき。

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