05/05/25 社会保障審議会医療部会第11回議事録 第11回社会保障審議会医療部会                    日時 平成17年5月25日(水)                       14:00〜                    場所 専用第15会議室 ○企画官 ただいまから第11回社会保障審議会医療部会を開会します。皆様 方におかれましては、お忙しい中をご出席いただきまして、誠にありがとう ございます。本日は野呂昭彦委員がご欠席、北村委員、古橋委員、山本文男 委員は遅れるとのご連絡です。ご出席いただいております委員の皆様方で定 足数を超えておりますので、会議は成立しております。  次にお手元の資料を確認いたします。座席表、議事次第、資料1、資料2、 資料3、参考資料です。また、社団法人日本看護協会において、医療提供体 制の見直し等に関する意見を取りまとめたということで、古橋委員から事前 に提出いただいておりますので、委員の皆様に参考までにお配りしておりま す。以上です。落丁乱丁等がございましたら随次ご指摘ください。以降の進 行については部会長、よろしくお願いいたします。 ○鴨下部会長 本日はお集まりをいただきましてありがとうございます。医 療部会においては、2月に論点整理をした後、3月から大体月2回のペース で各論点について順にご審議をいただいてきたところですが、当初から説明 されていたスケジュールとしては、6月末、または7月に議論の中間的な取 りまとめをするということになっております。本日からは論点整理後の二巡 目になる議題も出てまいりますが、中間的なまとめに向けて、方向性をでき るだけ整理をしていくということで、ご議論いただければと思っております。  本日の議題については前回の続きで、在宅医療の推進について、患者・国 民の選択の支援について、および医療法人制度改革についての3つです。順 にご議論をいただこうと思います。それでは、本日の最初の議題である在宅 医療の推進について、前回3人の方にお越しをいただいて、質問を中心にし たご議論を行ったところです。事務局において補足的な資料も用意している ということですので、まず資料1、在宅医療の推進についての説明をお願い いたします。 ○企画官 在宅医療の関係では、大きなファイルの中に綴ってこれまでの資 料があります。前回の第10回、あるいは第8回の医療機能の連携の回の資料 1の54頁に絵を描くという形で、これまでの資料を出しております。2月、 3月に論点整理をした際に、その他の中にありました終末期医療に関して、 もちろん終末期医療は在宅医療だけの問題でないことは当然認識しておりま すが、在宅、ホスピスなどの議論もあり、在宅医療と関連することも事実で すので、終末期医療に関する状況の補足的な関連資料を用意させていただい ております。  「終末期医療について」ということで今日用意した資料が1枚あります。 現状で死亡者数、これは人口動態統計の数字で、平成15年は年間102万人の 方が亡くなられており、上位3位の死因が、この3つ、がん、心疾患、脳血 管疾患ということです。死亡場所は前回も紹介したように、平成15年は同じ 統計で、病院が8割、自宅が13%ということです。前回の説明の中で川越参 考人からありましたように、がんについて言うと、自宅は6%といった話も あったかと思います。また、緩和ケア病棟の施設については、日本ホスピス 緩和ケア協会のホームページに届け出が受理されているものがすべて紹介さ れていますが、5月1日現在で144施設2,718床ということです。  終末期医療に関しては、一昨年から昨年にかけた終末期医療に関する調査 等検討会において、昨年の夏に報告書がまとめられております。これについ ては若干詳しい資料が第3回の資料2の39、40頁に付けてあります。ポイン トとしては国民の終末期医療に対する関心は年齢によらず、どの年齢層につ いても高い。リビング・ウィル(書面による生前の意思表示)の考え方に賛 成のものは過半数であるが、「そういった書面が有効だという法律の制定を すべきだ」という国民は半数を下回っているという調査が出ております。ま た、延命のための医療行為を開始しないこと、行っている延命のための医療 行為を中止することに関して、手順や合法性について医師が悩む場面が多い というようなことが付されており、終末期における望ましい内容は学会、医 療機関、医師会等が協力してガイドラインを作り、普及を図っていくことが 必要というようなまとめになっております。  そういったことを受けて、16年度からガイドライン作成のための研究を支 援しています。参考として各国の状況、英国ではガイドラインを医師会、政 府等で協力して作っている。オランダでは法律が整備されている。韓国でも 医師協会による指針が発表されているということです。今後、医師会ととも にがん緩和ケアに関するマニュアルを監修し、関係者に周知をしていくこと にしているところです。なお、この問題に関連して、立法府では今年に入り 動きがやや活発化しており、超党派の尊厳死法制化を考える議員連盟という のが発足して、会期も残り少なくなっていますが、今国会にも議員立法での 法案を目指すということが伝えられておりますほか、尊厳死とホスピスを推 進する与党議員懇話会というような会も設けられており、検討が進められて いるということです。以上、報告です。 ○鴨下部会長 ありがとうございました。それでは事務局の説明に関する質 問や意見も含めて、前回ご欠席であったりして、ご発言いただけなかった方 もあろうかと思いますので、あまり長く時間はとれませんが、自由に意見交 換をお願いしたいと思います。 ○佐伯委員 前回のときも申しました在宅医療というのは、今回も終末期と いうのが出されていますが、命を支えるというのが医療であると思いますの で、生まれ出ずるところから全部含めていただきたいと思います。死ぬため の医療ということではなく、尊厳死など、終点に向かっていく電車だけでは なく、必ず始発もあるということで、そこから全部の期間を支えるというこ とで取り組んでいただきたい。その中の1つに在宅という形態があっていい のではないかと思っております。 ○堀田委員 在宅医療は患者の尊厳ある生き方の確保という点からいけば、 非常に望ましい在り方で、是非充実に向けてのいろいろな体制を整えてほし いと願っております。それから本日説明がありました終末期医療について、 これは在宅医療とダブる部分、ダブらない部分とあります。それについて、 かねてからの意見を簡潔に述べさせていただきます。専門家の方たちが集ま ってガイドラインを作成されるのは大変結構なことで、これはどうしても要 ることだと思いますが、実はこれは刑法上の殺人罪との関係で、非常に理論 的に難しい問題があり、大方の法律家、あるいは捜査官を含めた納得できる ガイドラインができないと、問題はなかなか進まない。ところが従来の伝統 的な刑法理論からすれば、やはり心臓が動いている、付けている呼吸器を切 ってしまう、あるいは心臓のペースメーカーを切ってしまうという行為は、 直ちに死亡に結び付くわけではありませんが、確実にその行為は、死ぬこと との因果関係が認められますので、どうしてもこれは殺人罪ということにな ってしまう。ですから、そこの殺人行為の刑法理論との整合性が図られない と、いつまで経っても暗黙の分野で、これが残ってしまうということになる だろうと思います。ですから、是非法律家を入れてのガイドラインにしてい ただきたいのですが、これは頭の固い法律家、つまり本当に専門的な研究者 であればあるほど、議論が固くなりまして、そうすると、結局尊厳死が認め られないという方向に多分いってしまうだろう。脳死のときのような非常に 精密な議論になって、結局実効性がないということになりかねない、その点 を私は大変心配しております。  死ぬこととの因果関係という面で考え出しますと、やはり尊厳死に至る行 為というのは、何らかの医師の行為があって、それが死と結び付きます。そ こからものを考えては事は始まらないので、これはあるべき治療行為という のをしっかり医学の方面で確立していただく。ですから、治療行為というの は人間が意識を持って、尊厳ある生き方をする、あるいは意識回復の可能性 があるというトータルな状態を回復するためであって、意識回復の可能性が ないときに、いたずらに心臓を動かしておく、あるいは栄養補給する、人間 としての生き方ができないのに無駄な治療をし、無駄な税金を使うというこ とはあってはならない。本来の治療行為とは何なのか、それは人の尊厳ある 生き方を支えるためなのだという、そこのところをしっかりと確立していた だかないと、いたずらに心臓を動かすだけの治療を続けることになる。家族 でもいればそういう悲惨な状態、あるいはスパゲッティ状態をやめてくれと いうことを言うと思いますが、それは本当にその人を思う家族なら言うと思 うのですが、そうでない家族や、あるいは家族のない人たちについて、いつ 医師が呼吸器を止めていいのか、心臓を止めていいのか、非常に難しい問題 で、いま言ったような正しい治療行為とは何か、治療行為の根本目的に立っ た理屈付けを医学界から出していただくことが大切であろうと私は考えてい ます。 ○杉町委員 この在宅医療を実際に受ける方は、病気があれば別ですがお年 寄りが多い。在宅医療と在宅看護との間が何かボーダレスになってくるだろ うと思います。もちろんお年寄りで看護を受けている方は、ほとんど何らか の病気があるわけなので、これをまとめたほうが考えやすいのかと思ってい ます。  イギリスの場合にはホームドクターという制度がしっかりしていて皆さん を診てくれますからまだいいのでしょうけれども、日本の場合にはこういう ホームドクターの制度がよくできていませんので、あまりこれは役に立たな い。  ドイツの場合には公的介護保険というのが最近できたみたいです。実際に 在宅で介護をしているのは大体4分の3ぐらいが女性、しかも、60歳以上の お年寄りだそうです。日本のように核家族、あるいは共働きの家庭で実際に 介護してくださっている。そのような方に、何かの保険で経済的にカバーす る制度をドイツで始めているようです。そうすると、実際に介護している家 族の方がある程度お金をもらう。月に400マルクと言いますから2万8,000 円でしょうか。その程度をもらっているというデータがありますから、介護 することによってむしろパートに行かなくてもいいとか、家庭の中でパート ができるという感覚になってくると、在宅の医療、在宅の介護が進んでくる ような気もいたします。ドイツがそういうことをやっているようですから、 こういうものを少し検討する価値があるような気がいたします。 ○見城委員 前回、いろいろな条件が整ったときに在宅医療というものに可 能性があるという成功例を示していただき、大変助かりました。在宅でなく なったから女性が解放されて社会に出られたという一種の流れがありますの で、年をとって末期になってきた家族の意思を大切にしたいということと在 宅を単純に一言で括って、あまり精査されないままに在宅の方向が出てきて しまうのは問題があると思います。現実に前回出たように、ご主人が在宅を 希望しても、介護するであろう奥様のほうが拒否をするというような例や、 治療を受けながらも結構普通に暮らせるような介護レベルの方もいらっしゃ るなど、さまざまな状況があります。また、終末期の医療とはまた違うレベ ルもあります。日本に生まれてどう最期を迎えるのか、この在宅の方向性が 希望を持たせてくれるか、そういう重要な意味もありますので、この辺はも っと議論し、精査されるべきではないかと思います。  終末期の医療において延命は、専門医ですら判断が難しいと思います。そ れを素人の家族に、切りましょうとか、どうしますかと問われるわけです。 家族はそれを聞かれたら最後、拒否はいろいろな意味でできない。そういう ような現状に対して、医療の現場にいる専門家にとっても、患者の家族側に とっても、明快で納得がしやすいガイドラインを早く作っていくべきだと思 います。 ○松井委員 事務局に質問です。前回の資料1で、在宅医療費はだんだん増 加してきていることが見てとれます。10頁の死亡場所の推移でいきますと、 かつては病院・診療所は非常に少なかったのがもう8割くらい病院・診療所 になってきている。そこでそうなってきている理由と、北海道と福岡は病院 で亡くなられているケースが圧倒的に多くて、和歌山や新潟は非常に少ない というのは、何か要因として説明し得るものがあるのかないのか。それはお そらく在宅医療を今後推進していくために必要なものは何か、ということの ヒントとなるものもあり得るのではないかと思いますので、理由等要因があ りましたら教えていただきたい。 ○企画官 厳密な分析というわけではありませんが、死亡の場所がこのよう に変化してきたことの背景には、医療機関の整備が進んできて、病院を使い やすくなったということがあることは間違いないと思います。前回の資料の 10頁で、地域によって率が若干違う。違うといっても数パーセントの差です が、違いの背景には、病床数の多い地域において、それだけ医療機関を利用 しやすいという面があって、在宅で亡くなる割合と病院で亡くなる割合がや や相関というか、どちらが先で後という話でもないと思いますが、そういっ た関係にはあるように思います。 ○箱崎委員 歯科側から、現状の歯科における在宅訪問診療というか、訪問 医療についてお話させていただいて、ご理解をお願いしたいと思います。ご 案内のように歯科においても在宅医療、訪問診療は、全体から見れば少ない のですが、現実にはあちこちで行われています。ただ問題点も多々あります。 現状では噛めない状況の人の噛み合わせを良くすることによって、要するに 口腔機能を向上させることによって、寝たきりであった人が立ち上がれたと か、健康を取り戻したとか、いろいろな非常にいい結果の事例も出ています。 ただ、これだけ広がらない理由の1つには、国民サイドにおける我々のPR が少ない部分があろうかと思います。あるいはもう1点は、在宅医療を行っ ている大半が歯科の開業医で、診療を休んで在宅訪問診療をした場合の経済 的なデメリットがあるからです。あらゆる部分の議論をし課題を見つけて、 歯科における訪問診療をもっとやりやすい形で、国民にとってメリットにな る方向を議論していただければありがたいと思っておりますので、お願いし たいと思います。 ○古橋委員 遅れまして申し訳ございませんでした。看護協会としてはこの 在宅医療と在宅ケアの問題というのは、自分たちの職能としては非常に取り 組む義務の多いものと受け止めております。今日お手元にお配りしました「医 療提供体制の見直し等に関する日本看護協会の意見について」の5頁から6 頁に、この在宅医療の問題について述べております。実際にいろいろな実践 から見ていますと、在宅医療というのは家族にそのケアが委ねられていくと いうことであってはいけない。そこを社会が担っていくという方向に、介護 保険等の制定から変わっているわけで、訪問診療、訪問看護、訪問介護、そ して訪問リハビリテーション、訪問薬剤師、訪問栄養士の活動等が整備され ていくことが大変重要だと思っております。厚労省から出す資料等でも、し かし国民の皆さんは最終的に死ぬ場所に病院等の施設をご希望だというのが 圧倒的な数字で出ています。そうした背景を考えると、1つには本当に最期 の臨終の場を自宅でという辺りには、まだまだ緊張感と大きな不安があると いうことで、受け入れられないということも事実だろうと思います。その場 面になる少し前の辺りで、住み慣れた我が家で一定期間を過ごしたいという 国民の願いに沿える体制づくりが大切ではないかと思っております。その際 に再入院がしやすい状況ということが大事です。入院なさる皆さんや家族に は、最初の入院のときにすぐに入院が叶わなかったということが残っていて、 一旦退院してしまうと、本当に緊急入院の必要なときにすぐに入れないので はないかと、ある種の抑止意識になっています。そういう点では在宅にある 方が、急変なさったときの入院受入れ体制はどうあったらいいかということ を、議論していくことが必要のように思います。  もう1つはここに出しておきましたが、病院の側の退院調整と退院支援の 機能をしっかりと強化していく、整えていくことが非常に重要ではないかと 思っております。したがって、医療提供体制の中では、こうした退院支援・ 退院調整部署というものをしっかりと医療機関の中に制度的に整えていくと いうことが重要と思えてならないわけです。  また、都道府県ごとでの医療計画上の訪問看護ステーションの整備は、ま だ格差があったり偏在があったりしているし、非常に広域な範囲でわずかな 箇所しかないという所とか、都市部では過密になっているなど、これは市場 原理からいって1つの自然的な結果かもしれませんが、できるだけ都道府県 における医療計画での訪問看護ステーションの目標値、数値目標の設定等、 そこに向かう施策が必要だと思っております。  最後に、訪問ナースたちの悩みの1つには、訪問看護の出発点にある医師 の指示が、非常に適切に機能するものと、非常に遅れてくる、あるいはその ためにスタートが切れないということもあります。医師の指示の在り方と指 示の必要な内容についても、もう一度整理をしていくことの必要性を感じて います。 ○辻本委員 たまたま私は身近な所で、医療者の方が家で18日間過ごして亡 くなった例と、多くの患者を診て死を看取ってきた心臓血管外科のドクター が、ぎりぎりまで家で過ごして最期の14日間を病院で過ごしたという、その 2つの例をいま思い起こしながらお話を聞いておりました。  前者の、18日間見事にご家族を看取りの主人公に仕立て上げていかれたそ の方の家へお見舞いに行ったとき、患者ご本人が2週間で死ねそうになくて 困っているとおっしゃったのです。なぜ2週間ですかとお尋ねしましたら、 家族が心を1つにして、本当に看取りを一生懸命にできるのは2週間が限度 だと、2週間を過ぎればそれぞれの家族に生活の歪みが生じてくる。だから、 私は2週間で死ななければいけないのに、どうやら2週間で死ねそうにない と嘆いていらっしゃいました。結局18日後にお亡くなりになっています。  心臓血管外科医の方は個室を望んでいましたが、周りの医療者たちが本当 に病院でありながら家で亡くなるような、そんな周辺を支えている見事な看 取りが行われました。在宅か病院か、私はいまもどちらがいいのかがよくわ かりません。どちらにも大切なことがあると思っております。前回の資料の 11頁、12頁に終末期における療養の場所並びに自宅で最期まで療養すること が困難な理由というアンケート調査からも、やはり患者・家族の不安が非常 に具体的に上がってきています。要はこの問題をどうするかということがい ちばん大切な点であり、限りなく患者が選択できるという形にしていくこと がベストではないかと思います。ただ、これだけ国を挙げて在宅死推進とい うような方向に向き、何やら家で死ななければ悪いことをしているような雰 囲気がもし出てくると、これは怖いことだと思います。それと同時に、多く の方たちがこうして家で死ぬということが当たり前になってきたときに、病 院のドクターやスタッフ、ナースなどがいわゆる死から遠くなっていく。い ま以上に患者に向ける意識が歪んできてしまったら、これもまた怖いことだ と、そんな懸念を覚えつつ、この議論を私はどうしたいかということはまだ 決まっていませんが、課題は非常に多いのではないかと、前回のヒアリング の中でも感じました。 ○佐伯委員 家族ということを私もちょっと思いました。今後はますます個 の時代といいましょうか、2007年から熟年離婚も増えてくるだろうと思いま す。この会場にいらっしゃる皆さんの中でも、家族に期待しても、それが叶 わない方も出てくるのは確実だと思います。それから子供の数が非常に減っ ていますので、家族の力は全然当てにしてはいけないと思います。月2万 8,000円ぐらいのお金ぐらいでは生活もできないので、個というか、1人で生 きていくということをきちんと支えられるような医療のシステムが必要では ないかと思います。 ○見城委員 先ほどもう少し具体的に話すべきだったと思った点があります。 高齢になって百パーセント健康ではないのですが、では「病人か」というと 「病人ではないのですが」という状況で、では施設に入ることはというと、 本人が家にいたいという方が結構多い。ある方の例なのですが、山の中だけ れども、どうしてもたった1人で自宅でと。病院に入る必要はないのだけれ ども、1人では暮らせない、だけど施設ではなくてという難しい状況で、結 局は多くの人が走り回って、朝の6時半から人の手当てができるようなシス テムをなんとか構築しました。いつ倒れるかわからないけれども、いい人生 の最期をやってほしいという気持で、そのような体制をつくるのを見ていま した。是非、医療と福祉の大変いい組み合わせをやっていただきたい。必ず しも在宅というのは、いまにも死にそうな場合ではなくて、実に「生きてし まう」という状況が結構周辺で多いので、この辺をカバーすることを是非シ ステムの中に入れていただきたいと思います。 ○山本(文)委員 いま私のほうで、全国の各町村会にどのようにやったら いいかという調査を出しているのです。そこで、在宅医療をやっている規模 別に、地域別に教えてほしいのです。地域別の場合は過疎と都市部の数を教 えていただくと、いまやっている調査に非常に参考になるのです。できれば、 私が帰るまでぐらいに教えていただくといいのですが、わからなければ大変 恐縮ですが、町村会の行政部長のところへ明日電話でも結構ですから伝えて くれませんか。お願いをいたします。 ○企画官 在宅医療の訪問看護ステーションや、在宅医療事業をやっている 事業自治体の数など、そういったデータを調べまして、町村会と事務局と相 談し調整させていただいて、あと1時間ぐらいでは難しいかもしれませんの で、ご連絡を申し上げます。 ○山本(文)委員 後でいいですからお願いします。 ○鴨下部会長 いろいろなご意見をいただきましたが、本日の皆さん方のご 意見を踏まえて、事務局で来月から議論をしたいと考えております中間まと めに向けた整理を行っていただきたいと思います。  次の議題、患者・国民の選択の支援について、議論をお願いしたいと思い ます。まず、事務局から資料2、患者・国民の選択の支援についての説明を お願いいたします。 ○企画官 それでは資料2に従い、説明申し上げます。その後スライドを使 います。先ほど部会長から、整理できるものは整理するという形での議論を お願いしたいという話がありました。そういったこともあり、資料の構成は、 2月・3月に一度整理をした論点とはどういうことだったか、それに関して 前回の審議の際にどのようなご意見があったかということにおいて、方向性 としてはこういうことではないだろうかという形としています。  1頁です。医療機関等についての患者・国民の選択の支援ということで、 論点としては広告規制の在り方に関する項目として4項目と、下に医療機関 からの積極的な情報提供に関する論点を2つ、合わせて6つまとめています。 実際に審議いただいた際に、広告とはどういうものか、あるいは情報提供に 関して包括的な議論が必要だろうという感じでしたので、1グループにまと めています。こうした論点はご認識していただいているとおりですが、それ を整理したのが2頁以降です。  2頁で、広告規制と情報提供の在り方の総論という形でまとめています。 広告も基本的に情報提供の手段の1つである。また、広告も情報の1つであ る。それはまとめて考える必要があるだろうということです。4つ目にある ように、ただ出したい情報と知りたい情報とは必ずしもマッチしていない可 能性もあるので、そういった面では分けて議論が必要だろう。一方で、どこ まで情報提供していくかというポジティブなご意見があったかと思います。  3頁です。まずかかりつけ医をどう選択するかの情報が必要であるとか、 第三者評価的なものも必要であろうというようなご議論があったかと思いま す。なお、患者・国民の選択の支援の回ではないときですが、人員配置標準 の議論をいただいた際に、それとの関係でスタッフの数の開示というのは当 然必要なことだろうし、そういったものの広告の義務化をして、わかるよう にしていくことが大事な話ではなかろうか、できるだけ情報を出していただ きたいという話がありました。  4頁も同様に、知らせる形をつくる。これは人員配置標準の在り方との関 係で、こういったご意見もあったところです。この辺りが情報提供の話と広 告規制関係の総論的な関連についてです。その中で広告規制はポジティブリ ストか、ネガティブリストかどういう方式が望ましいかという議論について は、最初の2つのご意見というのは現在の実際のやり方の正当性は変わらな いということで、ポジティブ方式の維持が必要であろう。一方で、4頁の下 から5頁にかけては、広告規制の方法としては、ネガティブリストという方 式のほうが優れているのではないか、そういった形に変えていくべきではな いかというご意見も出されていたということです。4頁から5頁にかけては ポジティブリスト方式、ネガティブリスト方式という規制の方式に関しての ご意見を6頁まで書き、整理しています。  こういった発言がありましたということをベースにして、事務局で整理を しているのが6頁から7頁の広告規制と情報提供の在り方の総論です。1つ 目の広告可能な事項については、患者・国民の選択を支援する観点から、客 観的で検証可能なものについては極力、広告できるようにすることが適当だ ということは、おおむね合意だったのではないか。ただ、広告可能な事項の 中から任意のものを医療機関の判断で広告するというだけではなくて、医療 機関がその趣旨の医療機能にかかる一定の情報を積極的に提供する仕組みに 改めるべきである。具体的には一定の情報を都道府県に届け出て、都道府県 がそれらの個別機関の情報を集積して、住民にわかりやすく情報提供をする という枠組みの制度化をすることがいいのではないか。これに関連して医療 機関による積極的な情報提供の推進についての努力義務規定も、社会福祉法 などの例を参考に置くことが考えられるのではないかということを、総論と しての整理としています。  その上で、7頁、広告規制の方式です。前回かなりご議論があったところ ですが、ポジティブリスト方式、ネガティブリスト方式という規制の方式に ついては、患者の情報ニーズ、利用者保護、あるいは規制の実効性といった ことを考慮した上で、それぞれの方法のメリット・デメリットを考慮しつつ、 引き続き議論が必要なのではないだろうか。その際の議論のポイントとして は、ネガティブリスト方式については「利用者保護」という広告規制の趣旨 を踏まえると、客観性や検証可能性が確保されているかどうかの検証をしつ つ、どういうものをネガティイブな範囲とするかということの検討が要るだ ろう。ポジティブリスト方式については、広告できる事項の追加を迅速に行 う仕組みをどう導入するか。また、広告できる事項というのをポジティブリ ストで書いた場合に、その範囲が不明確だとか、わかりにくいといったとこ ろの改善策をどう図るか検討が必要だろうということです。  なお、その他として病院の名称についての行政指導の在り方、規制の仕方 等についても広告事項拡大を勘案していくという関連等から、こういったこ とについても拡充を行うということではなかろうかということを整理してい ます。  次に広告の場面、あるいは情報提供の面でも医療の実績情報(アウトカム 指標)の取扱いについては、患者の関心の高い情報である治癒率、生存率等、 満足度等についての設定を検討することが必要ではないかということです。 これについては大事な情報で、医療機関に聞きに来た方には丁寧に説明する し、インターネットでも公表もされているということですが、エビデンスが 十分でない中で、数字のみでの広告というのはまだ適切でないのではないか というご意見、きちんと説明のあるところで聞くべき話だろうし、ただ、そ うはいってもこういったことの客観性の研究は進めるべきだろうというよう なご意見だったかと思います。  そういったことをベースに9頁です。この問題はアウトカム指標に関する 整理案として、患者が医療機関を選択したり、評価を伴う実績情報の理解の 上では、かかりつけ医に相談して、専門家としての助言、あるいは他の医療 機関への紹介等のサービスが得られる、これが実効ある仕組みになっていく ようにした上で、体制の構築が基本となるだろう。実績情報についての客観 性、検証可能性確保のための手法の研究開発、あるいは情報提供の基盤の整 備を進めるとした上で、できたものについては広告可能事項に入れていくと いうことではないか。ただ、広告可能事項にするとした場合でも、答えだけ を出すのではなくて、その根拠を提示するということを義務付けて、一定の 間接的根拠を出さない場合は広告してはいけないとか、国が関与する仕組み の導入が必要ではなかろうかということです。  10頁の上はインターネットなど、広告ではなく広報による情報提供につい ての論点です。これについてはインターネットであれば何でもいいという話 ではなく、一定のガイドラインが必要であろうということが議論であったか と思います。ただ、インターネットに規制ができるのかどうか一定の整理を する議論が要るのではないかということで、11頁に議論の紹介があります。  そういったことをベースに11頁、方向性についての整理案です。インター ネットを含む広報については、広告規制と同じような規制の対象とはしない けれども、虚偽など著しく不適切な内容が提供されている場合に、法令での 規制の枠組みの検討が必要ではないか。また、インターネットを含む広報に ついての信頼性確保のためのガイドラインについては、自主的、自立的なも のとして作っていただくというのが基本ですが、関係団体との協力を得て作 成・普及するということで、どういう形でやるか検討が必要だろう。そのガ イドラインを作る際には、先ほどのアウトカム指標については、広告におけ る取扱いを踏まえつつ、信頼性確保の努力が行われる必要があるということ は、ガイドラインの必須条項ではないか。また、医療安全支援センターの充 実など、都道府県レベルでの医療情報に関する相談機能ということで、患者 の理解を助けることが必要だろうということを書いています。  12頁は公的機関等による医療に関する情報提供です。現在パンフレット、 あるいは医療機能評価機構で評価が行われたり、さまざまあるわけですが、 そういったことを助ける方策というのも必要ではないかという論点があった わけです。これについては会議での議論はそれほどはありませんでした。  整理案としては、先ほどもあったように、医療機関が一定の情報の届け出 を都道府県にして、都道府県がそれを集積してわかりやすい情報を提供する 枠組みの制度化。また、医療機関の医療機能というだけではなく、地域の医 療機能、あるいは医療水準など、医療計画に記載している内容を住民にわか りやすく提示し、広義の医療情報が十分に伝わることも必要であろうという こと。また、独立行政法人福祉医療機構が全国レベルの医療機関情報の集積 と公表をやっています。あるいは各医療機関で医療機能評価機構の受審を促 進して、それを公表していることがある。こういったことも引き続き進める ことによって患者・国民の選択を支援していく。また、先ほど申しました医 療安全支援センターの充実など、都道府県レベルでの相談機能の充実といっ たことや、医療機関についての努力義務規定も、合わせてこういったことを 背景として国、地方公共団体についても医療に関する情報提供に関する責務 があるのだということを、法律上明確にしていくことも必要なのではないか。 これまでの社会福祉法の例も以前にお示ししたところです。ここまでが医療 機関等についての選択の支援です。  次に13頁からは診療を受けた後の、診療情報の提供の推進と患者の選択の 尊重という場面についてです。13頁は論点に書いていたもので、診療情報の 提供、あるいはEBMの推進、その他に、患者本人の医療提供の環境づくり とあります。14頁はここについての整理案です。1つ目のポツ、個人情報保 護法に基づくカルテやレセプト等の開示といったことも法律ができたわけで すが、適切な診療情報の提供がなされるように進めていく必要がある。また、 EBMについてのデータベースの充実、診療ガイドラインの整備を引き続き 図っていく。また、インフォームドコンセントやセカンドオピニオンといっ た考え方が普及、定着していく中で、患者本位の医療提供が図られるように するために、医療安全支援センターの活用を含め、患者が提供する情報をよ く理解し、主体的に考えて自己決定できるよう支援できる整備の検討が必要 だろう。また、こういったものに加えて、医療機関からさまざまな形での情 報を分かりやすく説明されるというような取組みを促進していく必要、また、 苦情等についての受付け窓口の体制を整えていただくことが大事ではなかろ うかということを整理案として書いています。  ここまでご説明した中で、福祉医療機構のWAM−NET、あるいは都道 府県での情報提供というのがありました。本日はスライドを用意しています。 現在WAM−NETにおいてどのような診療機能情報の検索等ができるよう になっているか。都道府県の情報提供の例として、東京都で行われている例。 EBMに関して医療評価機構のホームページで診療ガイドラインを出してい ますが、そういったもので例を見ていただきたいと思います。 (スライド開始)  いま出しているのが福祉医療機構のWAM−NETのトップです。この左 上にタブがあります。この「医療」をクリックすると、「病院・診療所情報」 が出てきます。上のほうに絵が4つありますが、そこが基本情報です。所在 地や診療科でさがすというものがあります。その中で、例えば「所在地でさ がす」をクリックしますと、都道府県名が出てきます。例えば大阪をチェッ クして、下の市区町村から吹田市を選択して検索すると、494件というのが出 てくるわけです。大阪府の吹田市に494件ある。さらに件数を絞り込むこと にします。例えば診療科目、手術の種類、といった画面があります。そこで、 「診療科目」でやろうということで、例えば「循環器科」のチェックボック スを選んで検索すると、31件出てきます。そこでさらに件数を絞り込もうと 「手術」でクリックすると、人間の身体が出てきます。「心臓・血管」でチェ ックをすると「施設基準」を選ばなければいけない。いくつか埋込型のもの、 冠動脈などチェックをして検索をし、絞り込むと、このケースでは検索結果 一覧ということで3つの病院が出てきます。  その3病院が、大阪府吹田市、循環器科、心臓手術、というような形でや るということです。さらに当該病院のホームページにもジャンプできるよう な仕組みにもなっているという形で、こういう検索ができます。  もう1例やってみますと、「医療」のクリックをして、また最初の画面に戻 し、「病院・診療所情報」。今度は「施設の特色」でさがしてみます。「入院施 設の種類」でさがそうということをやる。そうすると、さまざまな入院施設 の機能が出ています。10個ぐらいあるわけですが、例えばこの中の「緩和ケ ア病棟がある」というのを検索すると、全国でこの時点で180件ある。自分 の近くだと何があるかと「所在地」でさがすと、先ほどのように「都道府県」 が出てきます。そこで千葉県をチェックし検索すると、5件あると出てきま す。それの一覧表示を出すと、千葉県で緩和ケア病棟のあるのが5つという ことです。例えば4番目に総合病院国保旭中央病院があります。これで右側 の「詳細を見る」にいきますと、それぞれの病院についての各情報、基本情 報、検査、手術、入院は何があるか、当該病院のホームページなどがいろい ろ見られます。  次は、東京都の医療機関案内サービス、ひまわりネットというのがありま す。これはちょっとカラフルで、1番上に緑があって、オレンジになってい るところが「医療機関をさがす」です。その中の、例えば「住所でさがす」 というのは、自分の家の近くだと何があるかというわけです。例えば東京都 の地図が出ているので練馬区をクリックすると、練馬区内の住居表示が出ま す。例えば光が丘とやり、さらにまた「診療科目」で内科としますと20の病 院なり診療所が出てくる。この一覧表の中には、自分は何が得意かという「得 意マーク」や「手話対応できます」といったマークが載ったりという形で、 そこからさらに病院の情報に当たれる。そこではどんな機器をもっているか、 どんな医療機能に対応できるかといったことが検索できる。その上で詳細は お問い合わせくださいという話になっているということです。  最後に日本医療機能評価機構のMindsです。EBMの関係で、医療関 係者向けのガイドラインを作り、さらにわかりやすい、一般の人向けのガイ ドラインを作るということを申し上げました。胃潰瘍とクモ膜下出血、急性 心筋梗塞、喘息の4疾患について、一般向けのガイドラインも既に公開され ているということです。右側の緑色のところに3つ、医療従事者向け、一般 向けという形で分かれています。そこで、それぞれ情報を得ることができる ようになっています。このようになっているというご紹介も含めてご説明申 し上げました。以上です。 (スライド終了) ○鴨下部会長 どうもありがとうございました。ただいまの説明や資料2に 関する質問も含め、ご自由に意見交換をお願いいたします。 ○福島委員 資料の6頁、「広告規制の在り方について」の方向性についての 整理案ですが、前回のこの場での論議から見ると、大勢はネガティブリスト という雰囲気だったと思います。この資料上は両論併記ということでまとめ てありますので、それはそれでいいにしても整理の仕方、将来の中間まとめ になると思うのですが、その中で1、2、お願いしたいと思います。(1)の「広 告規制と情報提供の在り方総論」、まず1行目に「客観的で検証可能なものに ついては」という表現があります。細かい表現の仕方はどのようでも結構で すが、例えば「客観性に乏しく、検証不可能なものを除いては極力」、以下は 同じですが、どうも選択的に、客観的で検証可能なものというところが非常 に入口を狭くするものですから、ここの表現はむしろ、繰り返して申し上げ ますと、「客観性に乏しく、検証不可能なものを除いては極力云々」というよ うに変更していただけないかという希望です。  2つ目は(2)「広告規制の方式」があります。その上から3行目、「引き続き、 今後さらに議論を行う必要がある」という文面があります。私の感じでは、 いつまでとは非常に言いにくいと思いますし、どういう形の表現がいいのか わかりませんが、具体的にいつごろまでにという目標になるような期限が書 ければいちばんいいのです。「引き続き」という部分に目標の期限のようなも のを入れていただかないと、このままずっとまた延びるのではないかという 心配があります。  その下、ネガティブとポジティブのことがそれぞれ2行で書いてあります。 1番目のネガティブ方式のところについては、「利用者保護という広告規制の 趣旨を踏まえ」というやや制約的に聞こえる言葉が入っています。下のポジ ティブリスト方式については、「広告できる事項の追加を迅速に云々」とあり ます。下にも同じように、「ついては」のあとに、なるべく選択肢を広くする という意味で「利用者の選択の支援という観点からも」というニュアンスを 入れられないか。  ついでに申し上げて恐縮ですが、9頁に「方向性についての整理案」があ ります。これもアウトカム指標のところで同じように、「客観性や検証可能性 が云々」という言葉が続いています。「速やかに進める」と書いてある、その 「速やかに」をいま申し上げたことと同じように、大体どの時期までにどう いう項目をというような、何か目標的なものが例示できないか、あるいは目 標が掲げられないのかということです。  最後にもう1つ、12頁に同じく「方向性についての整理案」があります。 真ん中にいまほど説明があった「WAM−NET云々」というところがあり ます。我々健保連でも、医療情報、あるいは医療機関の情報等を広く出して います。ほかにも相当数の医療情報等が出ていますので、信頼性なども頭に 置かれていると思いますが、WAM−NETだけに限らないので、「WAM− NET等」という、少し解釈を広めるような表現を入れてもらえないかとい うことでございます。以上です。 ○総務課長 福島委員のほうから具体的な修文の意見が出ました。この文章 については今日、これから各委員の先生方から出された意見を踏まえ、事務 局で整理をして、「中間まとめ(案)」という形でまたご相談いたします。  1点だけ、誤解があってはいけないと思いましたので発言いたします。資 料7頁、「広告規制の方式」の「引き続き」というところ、具体的な目標がな いとまたずるずる長引いていくのではないかというご意見でした。ここのと ころは、これまでの部会の議論ではまだどちらが優れているかという議論が 熟していない、対立する意見もあるということで、中間まとめの段階ではま だ集約できないのではないか。もう少し、深めた議論を年末に向けてしてい ただく必要があるのではないかという意味で、両論併記をしております。私 どもとしてはこの部会で、年末の最終的な意見の取りまとめまでには是非議 論を深めて一定の方向を出していただければという意味で書いています。ほ かのところの「速やかに」とは、ちょっと意味合いが違っているということ をご理解いただければと思い、発言いたしました。 ○大橋委員 情報提供のところでお話させていただきたいと思います。患者 に情報提供するとき、例えば患者の具合が悪くなったら、まずはかかりつけ 医か身近な開業医へかかると思います。そこで相談を受けると思います。か かりつけの医者もその地域で、また全国的に、例えばその人が心臓であれば 地域でこういう内科外来、例えば5、6人で見ている所で、あそこの病院は 心臓弁膜が強い人、こちらの病院は気管系が強い。そういうことをよく知っ ていれば、その患者が地域で最高の医療を受けられるし、また全国的にもい ろいろ知っていれば日本の最高レベルの医療を受けることができるわけです。 そこで、患者の多くはいちばんいいところで治る。治らない場合もあるでし ょうが、いちばん最高のものを受けられる。やはりかかりつけ医、開業医が 情報をよく知っていなければいけないということがいちばん大事ではないか と思います。  また、市町村に地域の情報も、全国的な情報も入っていることが必要では ないか。窓口へ聞きに来れば、この病院がいいのではないですかという指導 もできるのではないかと思っています。開業医、医師会、そして行政との連 携がよく取れて情報をみんなつかんでいるということが大事ではないかと思 います。患者が勝手に、「自分は心臓が悪いからここだ」などと言うと大体間 違えているのではないか、私はそのように感じます。ですから、身近なかか りつけ医がよく情報を知っていることが患者にとってはいちばんいいのでは ないかと思います。以上です。 ○松井委員 いまの大橋委員のご指摘は、もしそのように出来るならば大変 望ましいと思います。大橋委員の場合は24時間対応されておられるというこ とで、そういうことも可能なのかもしれません。ただ、常にかかりつけ医に 戻れるかどうかというと、場合によってはそうでない形で緊急に病院や診療 所を選択をしなくてはいけないというケースもあると思います。  いまおっしゃられたことは、今回の資料の8頁にある三上委員の意見と非 常に似ているところがあります。例えば、いまWAM−NETの紹介があり ました。医師会などではどのぐらい相談に乗ってくださって、「どこそこに行 きなさい」ということまでやっておられるのか。具体的な例をもう少し教え てもらって出来ればいいと思います。さらに、おっしゃられたように、市町 村が責任を持って情報を十分集めて提供してくださるということは、大変望 ましいことだと思います。 ○三上委員 医師会としての対応についてですが、緊急の場合ですと各自治 体、あるいは各都道府県の医師会等に救急情報センターというものがありま す。そちらに電話をしていただくと、どういう症状であって、緊急にどこに 行かなければならないかという情報は言ってくれる。  それ以外に、健康相談窓口のようなものを作っている医師会もあります。 どういう症状であれば、どういう診療科にかかればいいのかという、細かい 相談にも乗っていただけるということです。WAM−NET等についてもか なり医療情報が入っているわけですが、自治体の医療情報システムの中にも かなりの情報が入っています。一般の国民の方々はいろいろなツールを使っ て、医療情報を知ることはできると思っています。  また、今回、ポジティブとネガティブの議論が出ています。もう1つの切 り口としては医療情報、いわゆる広告について事前チェックをすべきものな のか、あるいは事後チェックでいいのかという切り口も1つ必要ではないか と思います。私自身はポジティブリストを主張していますが、その大きな理 由は事前チェックでなければ、生命に関する誤った情報が流れます。そうい ったことが伝わると、患者にとっては非常に不利益になる。利用者保護とい うのはいわゆる事前チェックで、まず確実な情報に行くことが大切だという ことでネガティブリストを言っています。  ネガティブリストであっても、事前チェックができるということであれば、 別にネガティブリストでもかまわない。当然、WAM−NETや各自治体の インターネットに載せられている情報についても、ポジティブリストという か、アンケートに答えてくださいという形で情報が収集され、それが載るわ けですから、一応事前チェックされたという形にはなっているのではないか と思っています。 ○杉町委員 13頁の「根拠に基づく医療」というのは非常に大切なことだと 思います。日本の場合、各病院のエビデンスがあまりはっきり出ていないよ うに思います。国民の立場、あるいは患者の立場から言うと、例えばAとい う病院で心臓の手術を受けた場合、この程度合併症で亡くなる頻度があった、 5年間で生きている確率はこれだけである。こういうものを出来るだけ各病 院ではっきりしていただくことによって、患者はより成績の良いところを選 んで手術を受けるわけです。  アメリカなどではそれをはっきり出していますが、日本ではまだ透明性が はっきりしていない。特に日本全体で何パーセント、あるいは世界全体で何 パーセントというデータはあるのですが、患者サービスというか、国民の立 場から言うとどこの病院をどう選んでいいかわからない。こういうことがあ りますから、将来的にはできるだけ各病院でそれぞれの成績を出していける ような方向で指導していただくというのがありがたいと思います。 ○北村部会長代理 いまの杉町委員の件ですが、いちばん患者が知りたい情 報の1つは、その場所で手術等を受けた場合に水準より高いレベルの治療、 手術を受けられるのかどうかということだと思います。これはいま杉町委員 も言われたように、イギリス、あるいはアメリカの各州によって違いますけ れども、インターネット上で病院のみならず、医者がその年に何例手術をし て、何人亡くなってと、持っている手術の危険率を公表したわけです。  ご存じの方も多いと思いますが、イギリスで大きな事件があり、それが発 端になっています。しかしながら、問題はどのようにリスクをアジャストす るか。 例えば、循環器病センターなどは1,000例を超える緊急例を1年間 で受け入れているわけです。そのように緊急例を扱う病院と紹介患者という か、予定患者だけの場合とでは違いますのでリスク調整の必要があります。  そのためにはデータベースというものが絶対要るわけです。我が国ではが んは少しずつ進んでいますが、循環器のデータベースなどは全然できあがっ ていない。莫大なお金がかかるわけです。こういったデータベースをいかに 築くか。学会レベルでは始まっているのですが、なかなか国家レベルには及 んでいない。  一方、そういうデーターを公表すると、今度はリスクを取らない医者がい っぱい出てきたわけです。2003年の『ニューヨーク・タイムズ』でも、統計 によって医者は萎縮してしまい、危険な緊急手術はよそへ行ってほしいとい う事態も発生しています。データベースを作ってからの話になると思います が、このアメリカのシステムをすぐ我が国に導入することは非常に難しい問 題ですので、これをよく考えないとならない。これを進めろと社会の方々は おっしゃると思うのですが、そのためにまず要るのはアメリカのデータベー スではなくて、我が国でのデータベースです。それにはバリデーション、正 確なデータの取得が極めて重要です。そのためには専門官、調査官というも のが必要になる。どうしても外国のように公的資金を導入しないと、学会の レベルではできるものではない。「こういった事をやれ」とおっしゃること を我々もやらねばならぬと思いますが、そのためには第三者的判断による組 織が必要である。それを作れとおっしゃってくださる方が増えることを祈っ ているわけです。そのような大きな問題があります。アウトカムの公表とい うのは「やれ、やれ」と言われても、大変難しい問題があると感じています。 ○山本(信)委員 資料の1頁、「国民・患者の選択の支援について」で、 適切な情報を提供するという考え方については私も大賛成です。是非、そう いう方向で情報が整理されることが大切だと考えています。  その中で、いわゆる広告も情報の1つということについても、十分そのよ うに思っています。例えば6頁、12頁、14頁の「整理案」の中で、ここでは 何が問題かというと国民、あるいは患者の方々に地域の医療提供体制がどう なっているかがきちんと整理されて、理解されるような情報提供がなされる べきだと思っています。そういった意味では、まず医療機関があることにつ いては当然だと思います。  夜間であったり休日であったり、あるいは相談の一部もあるでしょうが、 薬局でもきちんとした対応ができるということも考えられます。是非具体的 に、例えば14頁であれば、薬局に多分相談窓口が必要になるのだろうという 気がします。12頁の「整理案」であれば、医療計画の中に薬局がそうした機 能を持っているという情報を十分に国民、あるいは患者に出せるような仕組 みをつくっていただきたいと思います。  先ほど事務局からご説明に東京都の「ひまわり」の例が出ていました。た またま、医療機関の検索ということで、多分忘れられてしまったのだろうと 思うのですが、あそこの脇には確か薬局の情報が載っていたと思います。わ ざわざ医療機関と別に、脇のほうに「薬局」とあります。これは決して意地 悪ではなくて、たまたま仕組みがそうなってしまいました。何年か前からも う既に動いていて、4月からは各薬局41項目ほど、例えば所在地であったり 開局時間であったり、何ができるか、どのような相談ができるか。あるいは、 言葉も含めたそれぞれの特徴を示して検索できるようなシステムもできてい ますので、そうしたことが医療計画の中にきちんと組み込まれないと、折角 情報を作っても使えないということになります。そうしたことがないように、 この中にきちんと書き込んでいただけないかということをお願いしたいのが 1点です。  もう1点は広告とは離れるのでしょうが、インターネットは広告ではなく て広報だという取扱いをされています。医療安全を含めて、さまざまな情報 を国民、あるいは患者の方々が知って、そこを選択するということについて は賛成です。しかし、薬の世界で言えば中国製の医薬品があれほど、医薬品 と言っていいのかどうかわかりませんが極めて乱暴に売られている。片方で 安全を担保するためにさまざまな情報を出せ、あるいはきちんとした判断が できる情報を並べろと言われても、そうしたものが広報なのだといってあま りにもルーズに流れてしまうと、結果としては大変大きな被害を及ぼすこと ははっきりしています。ここでは「一定の規制が必要か」という範囲にとど まっているように読めるのですが、きちんとした広告と同じように、情報提 供でもあるわけですので十分な規制が要るのではないか。そういったことも お考えいただきたいと思います。 ○見城委員 インターネットのことではそれにつながる意見かもしれません が、もうインターネットの世代にとっては広報も広告もすべて区別などせず、 若い世代は自分に良ければ良い情報として取る世代なのです。  これは堀田委員にもお伺いしたいのですが、インターネットによる犯罪と いうのはさまざまなところで起きています。特に医療に関して、インターネ ットというメディアが広報も広告も、同時に1つのメディアに混在してきた ときに、特に人の生命にかかわることですので罰則が設けられないか。例え ば、規制が難しいインターネット上でこのような情報を流した、偽りがあっ たり、人の危険にかかわるようなことをどんどん流した、それによって事件 が起きたような場合、特別に罰則をきつくするようなことというのはできな いのでしょうか。  規制がなかなか難しいメディアであるだけに、ネット上がこれから大いに 利用されていく場合は、やはり先回りして人の生命を守るという施策を取ら れるべきだと思いますので、法的に何かできないかということを伺いたいの です。 ○堀田委員 直感的な答えしかできませんが、なかなか難しいだろうと思い ます。つまり、発生した結果が同じでも方法の特殊性に応じて罰則を重くす るというのはなかなか難しい。やはり、生じた結果の悪質性とやる者の考え 方の悪質性、故意という点かと思います。捕まえるのがなかなか難しいから 重くしてやれ、という発想というのは一般的にはなかなか難しいのではない か。直感的にそう思います。 ○見城委員 なぜ、インターネットのことでこのようなことを伺ったかとい うと、やはり医療に関しての情報で本来信頼があるかどうかわからないとし ても、信頼してしまうのは口コミュニケーションなのです。あの人が行って とても良かったと言うと、その病院がどのような実態かは別としても、信頼 して行ってしまうということが現在でも多い。その中で、インターネットは 口コミの代わりになっているわけです。その規制ができないなら、罰則がで きないかということを伺いました。罰則が難しいなら、ここでの規制という ことはもう少し慎重に考えて、患者を守るという設定をしていくべきではな いかと思います。 ○山本(文)委員 12頁のところに「都道府県」と書いてあるのですが、都 道府県は必ず市町村に来るのです。だから、都道府県単独でやるということ はいまだかつてないのです。特に、このような事務事項については必ず市町 村へ来るわけです。  ところが、「公表」と書いてありますから責任が生まれます。先ほどの罰 則と同じで責任が生まれます。そうすると、罰則をいちばん先に適用するの は私どもになります。それは私どもも困る。この辺、どのようにして、具体 的にこのような仕組みで情報公開するかということを関係者と話し合った上 で、こういうところに出すべきではないでしょうか。そうしないと、「その ままやりましょう」「いいですよ」ということになってしまう。法制化する までにまだ時間がありますから、協議をなさるとは思いますが、ご存じだと 思うのですが、情報公開条例でさえまだ40%しか行っていないのです。やら なければならないことはきちんと決められているのですが、情報公開条例を 制定していない市町村がまだまだたくさんある。まだ半分ぐらいしか行って いないのです。  そういう状況下で、仮にこういうものが来年度出たとしたら、ますます市 町村はこの関係で混乱していくことになります。おそらく、いまから1年の うちに情報公開条例はほとんど制定が終わると思いますけれども、やらなけ ればならないものでさえ時間がかかっているのです。  これがもし本格的実施になると、いちばん心配なのは、医療は常に動いて いるので、今日公表した情報がずっと恒久的に維持できるかというと、でき ないのです。専門家の先生方がたくさんいらっしゃるからおわかりだと思い ますが、しょっちゅう医療は動いていますから、今日出した情報が必ずしも、 いまから3カ月後にそのとおりであるかというのは保証し難いのです。確か にいま、情報を皆さんに提供していくことは大事なことだと思います。やら なければならないと思いますが、やり方が問題だと思います。ここだけはほ かの部分と違って、専門的な皆さんたちで検討会を作って検討していただい て、本当の意味での情報公開ができるようにしてあげることがいちばん大事 ではないかと思います。以上です。 ○三上委員 インターネットの話が出ましたが、インターネットによる広報 といわゆる広告と言われるものは全く違うものである。インターネットはネ ガティブでもない、ノーチェックの状態で出てくるものであることを国民に 十分啓発していくというか、知った上で利用していただくというのが必要だ ろうと思います。  医療は刻々と変わるということですが、名医がそこにおられても、明日は いらっしゃらないかもしれないわけですから、当然刻々と変わる。その都度、 ある程度チェックされた情報の中で、必要になればかかりつけ医、医師会、 あるいは自治体なり専門家に情報を聞いて必要な情報を取っていただくとい うのが、利用者保護のためにはいちばん良いと思います。それをネガティブ にして、利用者の責任、国民の責任、自己責任で情報を選択しろというのは ちょっと無謀ではないかと思います。 ○佐伯委員 13頁、14頁にかかっている点、外側の情報はさて置くとして、 実際に目の前でお世話になる患者とドクターのことに焦点を当ててみたいと 思います。インフォームドコンセントの考え方の定着、セカンドオピニオン 等の自己決定を支援する仕組み等はまだまだと思います。  3月27日の朝日新聞で、第一生命経済研究所が出した記事に、セカンドオ ピニオン希望者の4割は実際には聞けないという結果が出ています。あるい は、これも同じ3月23日の日本経済新聞ですが、医薬産業政策研究所の調査 では治療方法を決定するとき、実際には医師と相談したいと思っていても1 割ぐらいの人しか相談ができなかったということが出ています。私も医療を する人のコミュニケーションの研修会とか、いろいろなことをやっているの ですが、説明力があまりないというか、目の前の患者が理解するということ を第一に考えていらっしゃる方がまだまだ少ない。これは非常に困ったこと だなと思います。実際に生涯教育として、是非医療をする人一人ひとりの説 明能力を研修会等を通じてやっていただきたいということが1つです。  それから、そういうことをする前提として、やはり患者が自分で考える。 主体的に取り組むことが大事なのだ、という意識改革をもっと進めていただ きたいと思います。もし、辻本委員からそのような種類の相談等ありました ら、少し補足をお願いできたらと思っています。 ○辻本委員 ありがとうございます。相談はいまも引きも切らず、むしろ増 える一方です。いまお話がありましたが、情報はありさえすれば幸せになれ るわけではないのです。むしろ、最近では情報の海に溺れて、より不安を高 めた方のお話もたくさん届いてきています。  要するに、どの情報が私にとって最適であるかをともに考えてくれる医療 者とのコミュニケーションにお話が戻っていくわけです。13頁、14頁あたり の問題で、インフォームドコンセント、セカンドオピニオン、のちにお話さ せていただこうと思っていたのですが、まだまだ一方通行というよりもます ます、医療者が身を守るための防衛的なインフォームドコンセントになって きているということが相談から見受けられる1つです。  セカンドオピニオンにおいても、都会ではかなり有効利用が進んできてい るやに聞いています。しかし、いわゆる地域、地方ということでは前医、前 の医者にそれを言うことすらはばかられる。ましてや、セカンドオピニオン 外来ということで、特定療養費外というのは一体どういう位置づけなのかよ くわからない状況のままに、例えば京都大学のように30分3万円などという、 言ってみれば「来るな」という高いハードルを課している。このような状況 の中でほとんど進んでいない、足踏み状態だということも、これまた患者の 選択の支援ということになり得ていないという現実が垣間見えるように思っ ています。  もう1つ、個人情報保護にも話がつながっていくのですが、本人の断りな く家族に説明すると、このたびは刑罰となる。かなり医療現場が汲々として おられるようですが、一方で患者の息子からは、高齢の父になぜあのような ひどい状況を説明してしまうのですかというご相談がいまも届いている。  先ほど外来患者の方、もっと言えば医療消費者の意識啓発といったことを 高めてほしいということが幾多の委員から出ていますが、最終的には教育の 問題にかかっていくのではないか。小学校、中学校あたりから自己責任、自 己決定を求めていく。いまは無理である、そのようにあきらめないで、いま からスタートするということで言えば教育というところで国民・患者の立場 に立つ人たちの意識啓発を努力することが非常に大切だと思っています。  いつかはそこにたどり着かなければいけない私たちなのですが、いま緒に ついたばかりで、そこで何が必要か。それは支援です。相談窓口の形ができ てきています。しかし、私どものほうへ結局ぐるぐる回ってたどり着く電話 は、親身になって話を聞いてもらえなかった、長い時間は困ると言って、早々 に電話を切られた。やはり、そこにも限界という問題をはらんでいます。ど うすればいいかという答えを残念ながら持ち合わせていませんけれども、ど れもこれも全て13頁の中に絡んでくる問題ばかりということが、患者の今日 を取り巻いています。電話相談から、胸を痛くするような思いで感じている ことをご報告させていただきます。 ○松井委員 いま、辻本委員がおっしゃられたように、いろいろな情報を読 み取れるようにするための教育をもっと充実してもらう。これがやはり重要 なのではないかと思います。部会長代理がおっしゃったように、いまの状況 でデータベースを充実していくには非常にお金がかかるというのはわかりま す。バリデーションや、モータリティ・レートも全部載せていくことは、萎 縮医療につながっているケースもあるというお話がありました。それならば、 そこに至るまでをどういう形でやっていくのかという議論が進められないと、 患者という立場からすると本当にどこに行ったらいいのか。三上委員は「医 師会に聞いてください」とおっしゃいましたが、その場合に本当に細かい情 報まであるのかどうかというのは、ご相談申し上げたことがないのでわから ないのです。おそらく、そのようなアウトカム情報のところまでの細かいも のはないと思います。  反対に、医療提供側という専門家ならば、このアウトカムは良さそうに見 えるけれども、本当は違うという説明が出来るかもしれない。確かに、それ をすべて医師会の窓口などに求め、相談に乗ってもらうのはいちばんありが たいのですが、情報の読み方も自分自身が努力をしなくてはいけない。それ を植えつけた上で、次に何ができるのか。そういうことを考えていってもら いたいと思います。 ○鴨下部会長 ありがとうございました。いろいろご意見を頂戴いたしまし たが、本日の皆様方のご意見を踏まえ、事務局で中間取りまとめに向けた整 理を行っていただきたいと思います。  最後の議題になりますが、医療法人制度改革について議論したいと思いま す。事務局から資料3、「医療法人制度改革について」のご説明をお願いし ます。 ○指導課長 医療法人制度改革については、資料3と参考資料の2種類があ ります。まず、資料3に基づきご説明させていただきます。医療法人制度改 革については現在、医業経営の非営利性に関する検討会という場において鋭 意ご検討をいただいております。本日はその進捗状況の報告を中心にご説明 したいと思います。  横の表は改革の基本的考え方をお示ししたものです。左右2つに分かれて いますけれども、2つの立場からの改革の必要性について整理をしたもので す。「医療提供体制の有力な担い手として、医療法人を今後とも伸ばしてい きたい」という立場から見たものを左側に整理しています。医療法が制定さ れ半世紀以上たち、実際の制度運営上の細部については変更も行ってきてい るものの、基本的な考え方というのは変わっていないわけです。IからVま で書いてありますが、制度発足当初の基本理念である、いまも変わっていな いのですが、非営利性というものについて関係者の理解がやや不明瞭になっ てきているおそれがあるのではないか。  また、医療というのは公益性の高いサービスであると一般には言われます けれども、住民の方々が考えられる、公益性の高い医療というものを医療法 人が提供しているかどうかと考えると、ミスマッチになっていることもあり 得るのではないか。3番目に、医療法人というのは、地域の医療を安定的に 供給してくださらなければ住民の方々がお困りになるわけです。例えば、放 漫経営などで倒産する例もあるわけです。法人組織として、経営のチェック 機能が働いていないおそれもあるのではないか。  それから、非営利性の問題ともリンクしますけれども、法人運営が恣意的 に行われ、経営の透明性が損われているおそれもあるのではないか。5番目 として、いままで申しましたようなことのすべての結果かもしれませんが、 法人制度の本来の趣旨である医業の安定的な継続が損われているのではない かということです。  一方、右側の囲みですが、株式会社の医療への参入要求を前提として医療 法人の規制改革を求める立場がございます。そちらからの視点として、現在 の医療法人の姿というのは実質的に非営利とは言えないのではないかという ご指摘もいただいているところです。また、株式会社であっても公益性の高 い事業というものは可能であって、医療の提供に際してもむしろ経営のチェ ック、透明性という視点からは、場合によったら株式会社のほうがいいので はないかという視点もあります。さらに、安定経営のための資金の集積とい うことについては、直接金融が可能な株式会社のほうが圧倒的に有利である という視点もあります。  こういった2つの視点というか、見方といったものを踏まえ、私どもとし ては本則に則り、非営利の原則というものを徹底し、公益性というものを高 めつつも、一方で効率性、透明性、安定した医業経営の確保という点につい ては、株式会社の持つメリットがあるのならそれを出来るだけ活用するとい う考え方に立つ。  図の下、1つに公益性の高い医療を提供する競争力のある医療法人という ものを実現できないだろうか。2つ目として、住民の方々が地域において支 えていくような、そういう医療法人制度への改革というものを通して、地域 における医業経営の安定化の実現を図れないだろうか。3つ目として、限ら れた医療資源の効率的な活用による住民の利便性の向上と負担の抑制、こう いう方向性の下に平成18年度の制度改革に向けて、「医業経営の非営利性に 関する検討会」においてご検討いただいているところです。  2枚目の図については、現時点における検討会での改革の方向性をお示し したものです。左側に「現行」と書いてありますが、医療法人というのは大 きく4類型となっています。それらを見直しまして、先ほども申しましたよ うに非営利性を徹底し、また公益性を高めつつ、公益性、透明性といったほ かの要件も見直した上で、右側に書いてありますけれども、認定医療法人と 名前を仮置きし新たな医療法人類型といったものをつくり、既存のものが移 行できるような施策を進めていってはどうかという議論がなされているとこ ろです。左側の「現行」で申しますと、上の2つの特定法人、特別法人がや や一般の医療法人よりはやや公益性が高いと言われる類型です。こういう特 定医療法人、特別医療法人は少なくとも認定医療法人に移行することが想定 されているところです。  「認定医療法人」のところに書いてありますように、医療計画において都 道府県がその地域で推進しようとする特定の分野の医療は、これまで国公立、 公的病院の専売特許のように思われていたものですが、そういった公益性の 高いものも今後民間の法人にも担っていただくことを明確にする。その代わ り都道府県は、その法人を支援していくという方向性が打ち出せないだろう か。法人制度の改革と医療計画制度の見直しも進めていますけれども、この 2つをうまくリンクさせられないだろうかという趣旨の下でご議論いただい ているところです。  一方、図の左下、一般の医療法人については、非営利性の検討において根 幹となる持分の考え方を整理いたしました。非営利性を徹底するとともに、 効率性、透明性については改善を図っていきたいと思っています。ただ、公 益性や安定した医業経営の実現という視点からは、認定医療法人ほどは高い 要件を設定しないという整理をしてはどうかという議論が進められていると ころです。いずれにしても、細かい要件についてまだ成案をいただいている わけではありませんので、検討会での議論を今後深めていただき、この医療 部会にもご報告申し上げたいと考えています。  なお、参考資料ですが、こちらでは検討会で議論されている内容として新 たな法人類型の満たすべき要件についての考え方、それ以外の医療法人の見 直しの方向性について、議論のたたき台というものを付けています。現在、 議論の叩き台をホームページに掲載していまして、広く国民からのご意見を 募集しているところです。その結果も合わせて、検討会のほうで引き続き議 論をしていただくことになっていますので、併せてご報告申し上げます。以 上です。 ○鴨下部会長 ありがとうございました。ただいまの説明、あるいは資料3 に関する質問を含め、意見交換をお願いしたいと思います。 ○山本(文)委員 医療法人が悪者のように書いてあるのですが、それなら どっち付かずの言い方をするよりも、全部具体的に、どこの医療法人が悪い と書いたらどうですか。私はこのような穿った見方をしているのですが、医 療法人の悪口を言っていますけれども、何年か前から株式会社という意見は ずっと出てきているのです。あなた方もご存じだと思います。去年、一昨年 でしたか、日本医学会のときも株式会社支援については「賛成できない」と いう意見を出しました。皆さん、みんなそう思っているのです。  釈迦に説法になりますが、日本の医療というのは患者対医師で出来上がっ ているわけです。アメリカのようなオープンドアシステムでやっているわけ ではないのです。こういう議論をするなら、開業医の在り方をどうしたらい いのか。占領軍時代のような、「48時間以上入院させてはいけない」という ことを未だにやっているではないですか。そのような意見を出さないで、医 療法人が悪人のように書かれているではないですか。それなら、そのような 医療法人の認可をなぜ早く取り消さないのですか。今日まで医療法人が病院 を経営してきて、医療を提供していることは事実なのです。それにもかかわ らずこのようなことを書いて、いかにも医療法人が役に立たない、もうその ようなものはなくてもいいという言い方をするのはどうかと思います。なら ば、そのような医療法人をあなた方の権限によって、「あなたのところはも う認めません」とやったらどうですか。こういうことを出すならば、それぐ らいのことをやってもいいのではないですか。ところが、うまくいけば、医 療法人よりも株式会社のほうがいいと皆さんが思うようなことを引っ張り出 そうとしているのではないですか。私はそういうことについてはあまり賛成 できません。株式会社ならなぜ良いのですか、医療法人ならなぜ悪いのです か。その辺、「検討会でやっていますから、検討会で結論が出たらまた皆さ んにお諮りします」などということでなく、株式会社なら良い、医療法人な ら悪いということを列挙したらどうですか。  もう1つは、先ほど言ったように悪い医療法人は全部取り消したらいいで はないですか。このような言い方はないですよ。ここに医療法人の方がおら れるかどうか知りませんが、医療法人で真面目に、一生懸命やっている人た ちは非常に憤慨しますよ。  もう1つ、実例を挙げると、ある大きな病院がある地域で中心的な存在だ った。これを株式会社がやっているのです。なぜそうなったかというと、昔、 石炭産業は全部自分のところで病院を持っていた。危険度が非常に高いもの ですから、病院をみんな持って石炭産業は運営をしてきたのです。それが1 つか2つ残っています。我々の地域では、いちばん大きな株式会社の病院が 未だに残って中心になっています。  先ほど、医療圏の中でセンターとしてこの機能を十分発揮するように、地 域の開業医や小さな診療所、そのほか中小の病院、そういったものを集めて ここが中心になったらどうかという提案をしました。ところが、開業医の方 たちが反対と言うのです。なぜ反対かというと、株式会社だから嫌だと言う のです。この病院ができた経緯は皆さんよく知っているのですが、株式会社 だから嫌だという。  私は言ったのですが、この病院はそういう趣旨のものではない。いま、国 は株式会社をよく言われるけれども、それとは違った意味での病院ではない か。長い間、この病院は地域で貢献しているではないか。こういうように言 って、どうやらこうやら皆さんが「それならいいでしょう」と言ってくださ った。  それは株式会社の病院が長い歴史を持っているからです。だから、皆さん が賛成した。なぜ、そこまで抵抗するかというと、開業医たちは株式会社に 反対なのです。株式会社というのはご承知でしょう。利益を上げて、株主に 配当しなければならないのです。それがなぜ、公益性が高くなりますか。こ れは馬鹿げていて理論になっていないではないですか。だから今日、言って おきます。私は、しっかり町村会で議論をして、これに対して抵抗するよう に提案します。皆さんが承知してくれるかどうかは私にはわかりませんが、 いちばん困るのは田舎の地域です。都市はいいのです。だから、そこら辺を 考えて、もう少し日本の医療は開業医から始まったのだということを忘れな いようにしてほしいと思います。そして、これを積み上げていって、大きな 病院にいくというやり方で考えていただくことが大事です。いま、ややもす ると上から下へずっと下りてきて、上を手入れしてやったら下のほうはどう でもいいというやり方ではないですか。これでは、私どもは賛成できません。 だから、私は今日ここではっきり申し上げておきますが、こういうやり方に は反対です。絶対に耳を貸そうと思いません。とにかく反対です。それだけ を言っておきます。これが出たらいちばん先に反対と言います。それ以外の ことは言いません。こういう議論は無茶ですよ。これを無茶と言わなければ、 無茶は世の中に存在しません。私はそのぐらいに思っています。 ○村上委員 いまの意見の意味がわからない。何を言われたのか、非常に矛 盾したことを言われているようにしか私には受け取れないのです。要するに、 医師は良いのですか、悪いのですか。それから、株式会社にしては良いのか 悪いのか。何が反対だということですか。 ○山本(文)委員 反対というのは、医療法人は公益性がないと言っている わけでしょう。いわゆる、非営利性でなければいけないと言っているわけで す。株式会社は非営利性ですか。 ○村上委員 だから、医療法人は非営利性を求められるべきだということで 出してきているわけでしょう。 ○山本(文)委員 そうですよ。だから、悪いのになぜやめさせないのかと 言っているわけです。それをやめさせないで、株式会社にもっていったら良 くなるというのは論理が合わないではないですか。では、株式会社ならば非 営利性でやれるのですか。やれるわけないでしょう。株式会社こそ、株主に 配当しなければならない。利益を上げなければ株式会社ではないですよ。 ○村上委員 この文章では、別に株式会社の非営利性とは一言も言っていな いではないですか。 ○鴨下部会長 指導課長から少し答弁をいただきたいと思います。 ○指導課長 私の説明が悪くて、多分混乱を生じさせたと思います。その点 についてはお詫びを申し上げたいと存じます。基本的に、いま山本委員がお っしゃったように、医療というのは非営利であることは医療法で最初から謳 われています。それもご指摘されましたが、片や株式会社というのは利潤を 配当することによって成り立っている組織ですから、非営利とはどう考えて も一向に合わない。ですから、我々としては医療というのは株式会社という 組織形態でもってやることについては、やはりおかしいというスタンスは最 初から持ち続けている。そこのところをはっきりと申し上げなかったのは、 私のミスだったと思います。そこの点についてさまざまなお立場や、経営と いうことについては若干まだ緩々なところもありまして、場合によっては地 域で倒産したりする病院もあります。そうなったら住民が可哀想だという意 味から、健全な経営に行政として何かお手伝いができないだろうか。しっか りした経営母体として、継続性が保てるような医療法人組織として育ってい くことのお手伝いができないだろうかという視点で、検討を進めていること はご理解をいただきたいと思います。詳しくは、また時間を取ってご説明さ せていただきたいと思います。 ○山本(文)委員 医療法人は最初から、ずっと40年以上やっているのです から、わかっているでしょう。わかっているから、もしそういうふうに指摘 するようなことがあるならば、なぜそういうのをあなた方のほうで規制しな いかということを言っているわけです。それから規制できないから、株式会 社でいいというなら理屈が合わないではないかと言っているだけなのです。 事情を知っているから言っているのでしょう。知らなければ言いません。よ く事情がわかっているから、断絶した時代があるのです。最初は医療法人が なかったのです。  ところが、なぜ断絶したかというのは言いたくないけれども、税制が優遇 されるという考え方から医療法人にしてしまったのです。開業者も医療法人 にしてしまったのです。それはご存じでしょう。そういう世代を越えてきた ものですから、いまのようなことを言われるようになるのです。そういうと ころは規制したらいいのです。医療法人は悪いというような書き方をされる と、医療法人で真面目にやっている人たちに大変迷惑をかけるのではないで すか。 ○堀田委員 意見を申し上げます。結局いい医療を提供する医療法人を作る いちばんの決め手は、患者の選択だろう。患者の選択のためには制度を決め こまないで、いろいろな選択肢のある医療法人を作っていくことが、基本的 にいちばんいい方法かと私は考えています。そういう前提で、2頁に認定医 療法人制度の創設というのが出ています。これも、1つの選択肢というか1 つの方法であって、絶対だとは思いません。選択肢を広げるという意味では これはあってもいいかと思いますが、ただここで構想されているように簡単 にこの制度でいけるのかどうか。まだまだ問題が多いことを申し上げたいと 思います。  ここで、まず非営利性の徹底ということが言われていて、いまの非営利性 ではいい医療を提供する仕組みになっていないという考え方から、さらに非 営利性を徹底しようということですが、もともと営利目的が馴染まないとい うのは結局金儲けのためにしなくてもいい医療をやったり、過剰な医療をや ったりして医療の質が落ちるという基本的な考え方からきていると思います。 それでは非営利法人だったら非営利性を徹底すれば、正しい治療よりも金儲 けを優先する医療がなくなってくるのか。これは決してそうではない。要す るに、非営利性というのは分配しないだけの話であります。それは形だけの 話で実質、法人の名前にしてすごい車を買って乗り回したり、交際費や調査 費の名目でお医者さんがどんどん金を使ったりする。それから、病院の中に すごい自宅もつくってしまう。そういった形で、形式的には非分配だけれど も、実質的にどんどん利益を自分のほうに流し込む。これはこの制度でも可 能なわけで、国税庁はそこまでなかなかチェックできない。ですから、この 非営利性の徹底は経費の偽装による自分へ金を流し込む行為、そこまでしっ かりチェックしないと徹底しません。それが、まだまだ問題だと思う第1点 です。  第2点は、金儲けを目的としない医者なら、いい医療を提供するのか。こ れがまたそうはいかない。例えば市区町村の病院などで楽をしたい。月給が 決まっているから夜中の泊り込みだの、そんなのはかなわない。なるべく言 うことはききたくない。これは別に金儲けをする気はないのですが、言って みれば自分が楽をするための不適切な医療なので、営利性を取り去ればまた 全部が良くなるかというと、必ずしもそうはいかない。そういった点までき ちんとチェックしていただかないと、認定医療法人になると大丈夫だという だけのチェックでは、まだまだ足りない。前にも申し上げましたが、実質上 暴力団が経営を乗っ取ってしまって、どんどん金を横から取っているような 医療法人もある。そういったいろいろな偽装行為による私益を得ているとこ ろがいろいろと見受けられますので、国税もなかなか調査しない、市区町村 もそんなところを調査しない。認定医療法人にそれが紛れ込んできたら、こ れは何のための制度かがわからない。いったい誰が徹底的に調べて、いい認 定医療法人、大丈夫だと判こを押されるのか。そのあたりも、よほど腹を据 えて実態を見て制度を立てていかないと、これで安心というわけにはいかな いのではないかと思います。 ○尾形委員 少し違う観点から、用意いただいたペーパーについて2つほど コメントをしたいと思います。1つ目は1頁で、先ほどから出ている議論と も関連しますが、非営利性や株式会社立という話で、賛成論者も反対論者も 必ず出すのはアメリカの例ですが、アメリカは5,800ぐらいの病院がある。 日本に比べると非常に少ない病院数だと思いますが、そのうち株式会社立と いうのは僅か13%ぐらいに過ぎない。むしろ、残りのマジョリティというの は、日本以上に非営利が非常にしっかりしているところだと聞いています。 そういう意味からすると、ここに書いてあるように非営利性の徹底について は、是非そういう方向で改革を進めていただきたいと思います。  2つ目は、2頁の図は大変わかりやすくていい図だと思いますが、真ん中 に効率性の向上ということで、前にも何回かお話しましたが、効率的な経営 管理体制は非常に大事だと思います。真ん中辺に「人材の育成と医療経営人 材の育成」ということが書いてあって、これは大変結構だと思いますが、そ れをやっていくためには、組織をつくるだけではなくて人材の育成までを考 えないと絵に書いた餅になるだろうと思います。一方で育成しただけでは駄 目で、育成した人材を本当に活用する、あるいは登用するような形がいまは 不十分ではないかと思います。このことは組織の体制とも絡む話ですが、人 材の登用あるいは活用について、いろいろと考えていただきたいと思います。 以上2点です。 ○松井委員 堀田委員のおっしゃられることは、全面的に賛成です。もう1 つ、論点として出ている公益性の確立という点があります。いままでの論点 で参考資料の5頁に、「通常提供される医療と比較して継続的な医療の提供 に困難を伴うものであるにもかかわらず、住民にとってなくてはならない医 療と定義する」と書いてあります。質問ですが、その場合、非常に範囲を狭 く取ろうとしているのか、あるいは医療というのはみんなにいろいろ必要だ から、もっと広く取れるのか。この範囲は誰がどうやって決めていこうとさ れているのかを教えていただきたいと思います。特に、へき地医療はもしか してこれに入るかもしれないし、小児科もそうかもしれない。救急かもしれ ない。あるいは、診療科別で見たものかもしれない。必要性についてこうい う理念を立てる、こういう基準を立てることはわかりますが、立てたときに 具体的にそれを仕組んでいった中身がどんなイメージなのか。ちょっと狭す ぎる感覚を持つのです。結論は出ていないかもしれないのですが、その点を 教えてもらえればと思います。 ○指導課長 結論から申しますと、結論は出ていません。検討会でも、いま ご指摘のような論点でご意見が出ています。どこまで絞り込むのか、その線 をどこで引くのかという話が出ていまして、この検討会でもまだそこまで至 っていないのが現状です。具体例として、いまおっしゃったへき地の問題や 小児医療の問題も確かにそうかもしれませんし、SARSのように本当に医 療従事者でさえ命の危険が及ぶようなものは、普通の医療機関にしてみたら 大変な話もありますので、そういったものを担っていただけないだろうかと か、いろいろと意見は出ているのですが、そういったものとして一般的な線 をどこで引くのかという結論はまだ出ていません。  堀田委員からのご指摘も確かにそのとおりで、非営利だけでそういった要 件を十分に満たすことは考えにくいだろうと考えています。したがいまして、 利益を産むこと自体は特に悪いことではないので、剰余金の使い方、使途、 使い道を明確にするというところで、ちゃんと要件として認められるような ものができるかどうかの議論を合わせて検討会でしていただいています。そ の辺については、今日の部会のご意見等を検討会にお伝えをしまして、ご議 論をいただきたいと考えています。 ○堀田委員 剰余金ではなくて偽装損金です。 ○松井委員 非営利性のこういう基準だけでは不十分だというのであるなら ば、先ほど医療機関の情報の提供の在り方について議論がなされ、難しいと いうご意見もありましたが、おそらくここに書いてある以外にそこの診療所 なり病院の、アウトカムも含めた情報が明らかにされていて、悪い言い方を すればあそこは大したことをやっていないのに儲けているなど、そういう判 断ができるところまで情報の透明性が確保されることが重要なのではないか と思います。非営利性の徹底、考え方はそれはそれでいいのですが、経営情 報も含めて病院の、あるいはお医者さんのパフォーマンスがわかるというこ とで、ある程度患者も知識が豊富で、情報が読めるという前提になりますが、 そういう中で選択をされていく。それで残っていく医療法人であってほしい と思います。以上です。 ○鴨下部会長 いかがでしょうか。医療側からのご発言がやや少ないように 思います。強制するわけではありませんが、どうぞ。 ○三上委員 医療法人制度については、現在非営利の検討会で検討中で、ま だ結論は出ていませんので、結論めいたことを申し上げるつもりはありませ ん。医療法人の非営利性というのは本来、昭和25年に医療法に「非営利」と 書かれたときから、剰余金は配当しないという1点だけで非営利が担保され ている。ところが、非常に言いがかり的なことですが、剰余金が解散のとき に残余財産を分配すると配当に当たるのではないか。あるいは先ほど言われ たように、経費でもって非常に高い車に乗っているとかで、実際にはそれが 配当に当たるのではないかという指摘が規制改革・民間開放推進会議のほう からされてきた。これを徹底するためにはどうしたらいいかということで認 定医療法人なりの話が出てきて、持分に応じて剰余金の使途を明らかにしよ うという、途中で捻じ曲げられたような形になったわけです。しかし、本来 の昭和25年にできた医療法のときは、剰余金は特定の個人には帰属しないこ とになっている。いわゆる出資持分という考え方ではなく、出資金自体は拠 出金であって持分ではないという判断があったのに、途中でモデル定款が変 わったことによって持分という形になって、株式のような形、法人株のよう な形になって、そこに相続や継承、途中退社の社員に対して課税がかかると いうような非常に誤った方向に行った。これを是正するために今回も見直し 案が出てきているわけですが、現在持分のある医療法人制度をこれからどう するかは、いままで50年間にわたってこういう経過でやってきたわけですか ら、急に変えることはできないということで非常に苦労しながら議論をして います。  ただ、特定医療法人あるいは特別医療法人については、私財を手放すとい うか国に寄附するような形で公益性の高さを認めている。また、同族要件等 についても3分の1以下というような、非常に透明性が高いものにしている し、ガバナンスについてもその辺で担保されている。本来医療法人というの は公益性のある医療をやりたいという人たちが集まってやるものですから、 株式会社のように利潤を分けて株主に配当したいという人たちの集まる組織 とは全く違う。この非営利性の担保をされるということは、非常に診療報酬 自体低く抑えられていて収益があまり出ないけれども、少しでも出た収益を できる限り医療に還元するというのが趣旨というか理念ですので、医療法人 が非常に悪いことをしているという発想が全面に出てくること自体は、非常 に不本意な感じがします。 ○鴨下部会長 ほかにいかがでしょうか。もう少し時間があります。 ○杉町委員 よくわからないのですが、特定医療法人や特別、財団法人、社 団法人といろいろな法人がありまして、今回はさらにまた認定医療法人がで きるということで、何が何やらさっぱりわからないのです。要は、問題は非 営利性を高めるとか透明性を高めるということですから、いまある法人は少 し規則を変えることによって非営利性を高めるとか透明性を高めるとか、そ ういうことはできないのでしょうか。医療法人がたくさんあって、もう何が 何だか私も理解しにくいのです。 ○指導課長 今日は、詳しくご説明をしなかった点もありまして申し訳なか ったのですが、参考資料のほうにはこれから作ろうとする公益性の高い、い わゆる認定医療法人の場合にはこういう要件をかけてはどうかという論点と、 いま既存の中でも将来認定医療法人にいかないかもしれないような普通の医 療法人でも、いまおっしゃった非営利性の問題や公益性の問題をもうちょっ とこれぐらいは高めてもいいのではないか、という視点を検討会で議論して いただいていますので、それを2つに分けて書いてあります。ですから、一 般的に杉町委員がおっしゃいましたように、どの医療法人についても公益性 の高いものは、さらにややハードルの高いものになるかもしれませんが、そ れ以外についても多少はそのハードルは低くても、いまよりは良くしていく という姿勢を出すための議論をしていただいています。 ○三上委員 認定医療法人のお話が出ましたが、今日の新聞に公益法人の見 直しの有識者会議の記事が出ていまして、いわゆる公益性の高い法人をその 有識者会議が認定をする。認定をすると、その税制上の優遇が受けられると いう記事が出ていたのですが、認定医療法人というのは公益法人の見直しの 有識者会議の認可を受けてなるということが決まっているのでしょうか。あ れは、どういうところから記事が出たのかを教えていただきたいと思います。 ○指導課長 私も記事は読みましたが、ニュースソースまでは確認をしてい ませんで、いま三上委員のご指摘の質問には答えられない状況です。 ○辻本委員 的外れなお話かもしれませんが、いまこのお話を伺いながらこ んなことを思い出しました。ある大きな病院の治験審査委員会に委員として 参加しました。それまで、どういう人が委員で参加していたのかその実態を お聞きすると、地域の名誉職という方が病院からお声をかけていただいて、 そして議論の間中ほとんど眠っていた。そこへ私のようなうるさいおばさん が行ったものですから、IRBが非常に活性化したと薬剤師から喜ばれたこ とがありました。誰かからは嫌われたと思いますが、例えば透明性や公益性 を確立するために、地域住民から理事者を公募するというようなことができ るならば、私はこういう制度があってもいいのではないかと考えていました。 余談ですみません。 ○山本(文)委員 私が言っているのは、医療法人がこのように良くないと 言われるのは、株式会社を導入しようということをやっているからではない かと思ったのです。それは、以前に話がありましたから言っています。今日 初めて聞いて、そういうふうには言わないです。以前も話があったのです。 ですから、株式会社については賛成できませんと。医療というのは、先ほど 言った公益性の高いものであって、株式会社というのはそういうものではな いでしょう。だから、反対しますと言ったのです。今日ではないです。以前 ですよ。できれば、株式会社の話は、こういうところに出さないでほしいと いう要望もしておきました。  それから、しばらく出てきませんでしたが今日に突然出てきまして、しか も説明では医療法人が公益性を失いつつあって、だからこれで株式会社とい う話ですから、医療法人が悪ければ、先ほどのお話のように規制をかけてや めなさいと言えばいいのです。ところが、それをやらないで、こういうとこ ろで議論をしてこうしていますというのは、少しおかしいのではないかと思 います。  もう1つは、社会福祉法人は税率が低いです。同じ病院でも、社会福祉法 人でやっているところもあります。そういうところは税率が低いです。病院 には、経営そのものが非常に厳しい時期があったと思います。そういうとき、 医療法人になれば、言うなれば税率がそう高くなくてうまくいくのではない かと考えられたのではないかと思いますが、それでかなり断絶をしたことは 事実です。しかし、その人たちがみんな、先ほど言ったようなことをやって いるとは思いません。みんな真面目です。もしやっているとするならば、地 域でそういう声が出ます。ところが、私の県ではそういう話は聞いたことが ありませんので、みんなきちんと決められたとおりに運営をしている、医療 を提供していると思います。ですから、片一方が悪いから片一方に入れます よという論理の言い方をするから、私は先ほど少し腹が立ちましたから申し 上げました。だから、そういうことですから、わかっておいてください。ま た、この機会がある度ごとに申し上げます。反対をどこまでも言います。 ○村上委員 考えは山本委員の意見に同意なのですが、途中で多分飯塚病院 の株式会社のお話をされたのでわからなくなり申し上げたわけで、いまおっ しゃったことなら大変よくわかりました。  1つだけ意見として言わせていただきたい。多分認定医療法人が出てきた 根底は、私どもは公立病院ですし公的病院は税金なしで、かなり公益性を持 ったことをやっているけれども、医療法人の中にも実際に地域の救急医療な どを背負ってやっている所があるのに税務上の措置がない、ということがあ って出てきたのではないかと思います。したがって、これを認定医療法人に どうしても通して実現するためには税法上の措置、すなわちほかの公的病院 と同じようなことをしてあげなければ意味がない。先ほど申し上げたSAR Sは、確かに千葉県では受け入れるのを民間病院は全部拒否しまして、私ど もみたいな公的病院だけになりましたが、今度こういう形で認定医療法人制 度ができて、そういうところになっていった場合には、その地域のそのよう なことも確保できるのではないかと思います。これは是非税法上のことを考 えて実現していただきたいと思います。 ○鴨下部会長 ありがとうございました。まだご意見はあるかもしれません が、本日いただいたご意見を踏まえて、また事務局で中間取りまとめに向け て整理をお願いしたいと思います。非営利検討会においても、引き続き検討 されているということですので、事務局から医療部会のいろいろな意見や声 を伝えて、議論を深めていただきたいと思います。  ちょうど時間ですので、本日の議論はこれで終わりにしますが、何かほか にありますか。なければ、事務局から今後のことについて、ご説明をお願い します。 ○企画官 本日ご議論をいただいた論点については、ご指示がありましたと おりまたご意見を踏まえながら、事務局において中間まとめ案に向けました 整理を行って、また見ていただきたいと思います。  次回の日程ですが、6月7日(火)午前10時から開催の予定です。場所は本 日と同じ、この専用15会議室を予定しています。なお、議題については追っ てご連絡を申し上げます。お忙しいところ恐縮ですが、ご出席をいただきま すようよろしくお願いします。 ○鴨下部会長 よろしいですか。本日はこれで閉会にします。どうも長時間、 ありがとうございました。 照会先 医政局総務課 山口、野崎 連絡先:03−5253−1111(内線2518)