05/05/24 第26回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会議事録          厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細移植胞委員会                  第26回 議事録             平成17年5月24日(火)10:00〜12:00               航空会館  B101会議室 ○永野補佐  定刻になりましたので、ただいまより第26回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞 移植委員会を開催いたします。  本日は、新美委員、西川委員、橋本委員、麦島委員からご欠席との連絡をいただいて おります。  また、本日は、議事に即し、東北大学の北本先生、東海大学の加藤先生に参考人とし てご出席いただいております。  次に資料の確認をさせていただきます。議事次第をめくっていただきますと、配布資 料一覧がございます。  資料1−1 造血幹細胞移植における変異型クロイツフェルト・ヤコブ病に関する取        扱いについて  資料1−2 国内における変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の発生について  資料1−3 臓器・組織移植におけるvCJDの危険管理  資料2−1 骨髄ドナーの適応年齢の引き上げについて  資料2−2 血縁者間骨髄ドナーにおける有害事象発生状況調査        (加藤参考人提出資料)  資料3   臓器移植における狂犬病に関する取扱いについて        (第20回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会配付資料)  資料は以上ですが、不備等がございましたら事務局までお申しつけください。  それでは、議事進行を委員長にお願いしたいと思います。 ○齋藤委員長  おはようございます。朝早くからありがとうございます。今から12時まで2時間を使 って活発なディスカッションをお願いしたいと思います。  最初の議題は「造血幹細胞移植における変異型クロイツフェルト・ヤコブ病に係る対 応について」であります。  変異型クロイツフェルト・ヤコブ病については、2月4日に国内初の発生例が報告さ れたことを受け、造血幹細胞移植についても対応をしており、先生方にもご連絡を差し 上げているところです。この間の対応について、事務局よりまとめて説明をお願いしま す。 ○斉藤主査  それでは、資料1−1に基づいてご説明申し上げます。  造血幹細胞移植のドナー適応基準におけるクロイツフェルト・ヤコブ病の取り扱いに つきましては、これまで欧州渡航歴に関する問診内容として、1ページにまとめており ますとおり、平成13年より献血における取り扱いを参考として、滞在国と滞在歴による ドナーの提供制限を実施しています。当初は英国1カ国のみでしたが、その後、滞在国 や通算滞在歴の追加が行われ、さらに今年2月の国内患者の確認を受け、当面の措置と して、英国のみ通算1カ月以上の滞在歴で提供の制限を行うこととしています。  この内容につきましては、9ページの別添1ですが、骨髄移植推進財団及び日本さい 帯血バンクネットワークに通知をしております。  2ページですが、3月8日、この患者の英国滞在歴が24日間という発表を受けまし て、献血では1980年から96年の間にイギリス、フランスの滞在歴が1日以上あった方か らの採取の制限を行うという案が示されました。この案に基づき、献血者における実態 調査が開始されたところでありまして、骨髄ドナー、さい帯血ドナーにおいても同様の 調査を実施しています。  骨髄移植とさい帯血移植それぞれについての結果を2ページにお示ししています。  まず骨髄移植ですが、イギリスに1日以上の滞在歴を有する方は約4%、フランスに 滞在歴を有する方は約5%、いずれかに滞在歴を有する方は7.4%でした。  さい帯血移植においてもほぼ同様の結果でして、英仏いずれかに滞在歴を有する方は 合わせて7.7%、イギリスのみですと3.3%、フランスのみですと6.4%という結果が出て います。  4ページですが、献血に対する対応をお示ししています。こちらの案ではイギリス、 フランスに1980年から96年の間に1日以上の滞在歴を有する方からの採取は見合わせる ということになっていますが、フランスについては需給状況を考慮して、現時点では6 カ月以上の滞在で制限をすることになっています。  なお、献血の採取制限についてはまだ実施はされていないということですが、5月中 にも本格的に実施をすると伺っております。  また、臓器移植につきましては、4月25日に開催されました第20回臓器移植委員会に おいて、vCJDに関する海外渡航歴を有する方については原則として提供を見合わせ るものの、移植医療における緊急性や代替性を考慮して、レシピエントがその旨につい て説明を受け、移植を受ける意思を明らかにしている場合は移植が可能な取り扱いにす るということで合意をいただいております。  次に資料1−2ですが、国内におけるvCJD患者の発生を受けまして、厚生労働省 及びCJDサーベイランス委員会にてまとめた資料です。  1ページは、2月4日に患者の確定について報告をしたものです。病理所見から国内 初のvCJD症例と確認されたこと、原因としては英国滞在時の暴露が考えられるこ と、今後の調査の実施等についてまとめてあります。  2ページは、3月7日に発表されました感染経路についての概要です。  当該患者の海外渡航歴調査を行ったところ、1990年前半に英国に24日間、フランスに 3日間の滞在が確認されたこと、感染経路の可能性としては、血液や医療行為を介して の可能性はほとんど考えられず、BSE牛の経口摂取の可能性が高く、BSE牛の発生 頭数から考えて、英国滞在時の暴露の可能性が有力であるとまとめられています。  3ページ以降は、感染経路の報告の全体を掲載しています。  7ページは、4月8日に発表されました二次感染についての報告の概要です。  CJDサーベイランス委員会が調査をした結果ですが、英国から帰国後、当該患者に 観血的医療行為が行われた事実は確認できなかったものの、下部消化管の内視鏡検査が 実施されていたということです。  内視鏡検査による二次感染の危険性については英国の専門機関等にも確認しました が、これでプリオンが伝達する可能性は非常に低く、特段の措置は必要ないという判断 がなされております。  これまでの経過については以上です。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。  これまでの経過を説明していただきましたが、北本先生より補足等がありましたらお 願いします。 ○北本参考人  感染経路について、サーベイランス委員の先生方数名ですが、英国と打合せに行って いただきました。1カ月未満の短い滞在歴で、本当に英国で食事によって感染したと考 えていいのかということをヨーロッパの科学者の方たちとディスカッションしたそうで す。  それに関しては、我々が厚生労働省で発表したことを皆さんにほぼ認めていただける と思います。一般的に旅行者として英国で感染する可能性は低いと思われますが、当時 の日本で感染する可能性はもっと低いので、この症例に関しては英国で感染したことは 間違いなかろうという結論になっています。付け加えることは以上です。 ○齋藤委員長  それでは、引き続き、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病に関する今後の取り扱いに ついて議論したいと思います。  この問題については、骨髄移植、さい帯血移植において一番大事なのは安全性への配 慮ですが、同時に提供制限による影響も考慮しなければならない。したがって諸外国の 状況や、献血・臓器移植でどういう対応をしているかということを参考にして決めてい かなければならないと思います。  諸外国の状況と今後の取り扱いの案について、事務局より説明をお願いします。 ○斉藤主査  資料1−1の3ページをご覧ください。  2.移植等によるCJDの感染事例ですが、弧発性CJDについては、角膜移植、硬 膜移植による感染事例が確認されています。変異型については、輸血による感染の可能 性が疑われる事例が確認されています。  3.海外における渡航歴の取り扱いですが、骨髄提供については、アメリカ、オース トラリアにおいて、英国滞在歴はリスクファクターとしてドナーより確認すべき事項と なっています。主治医と患者はこのことを踏まえた上で当該ドナーからの移植の可否を 決定することとなっているようです。  米国FDAの「ヒト由来細胞、組織及びこれらの加工製品に関する指針」というのが ありまして、その中で、欧州渡航歴に関してはリスクファクターとしてドナーの不適格 理由となり、原則として採取制限がなされるべきであるとしていますが、造血幹細胞は HLA適合のために必要であり、利点がリスクを上回る場合は用いることも可能である としています。  参考として、臓器移植に関しては、滞在歴のみによる制限を行っている国は日本以外 には確認されておりません。  資料1−3をご覧いただきたいと思います。4月25日に開かれました厚生科学審議会 疾病対策部会臓器移植委員会において東邦大学の長谷川先生にご報告いただきました 「臓器・組織移植におけるvCJDの危険管理」という資料です。  海外における臓器・組織移植を中心としたvCJDに対する渡航歴等の扱いについ て、リスク評価も含めてご説明いたいたのもです。  9ページに「リスクとベネフィットの比較衡量」というスライドがあります。臓器移 植、骨髄・腎臓、眼球・組織・血液と3種類の移植に分かれていまして、骨髄・腎臓に ついては滞在歴は除外基準として不適ではないか。組織・血液については除外基準を適 用することはありうるのではないかという考えが示されています。  資料1−1の5ページに戻りまして、5.造血幹細胞移植におけるリスク評価等とい うところです。  (1) 公衆衛生上の配慮としては、移植を受けたレシピエントは献血や臓器提供のドナ ーとはなれないことから、レシピエントからの3次感染は防止できるのではないか。  (2) レシピエントのリスク評価については、免疫抑制剤の投与によりプリオン病の発 症率が上昇するという知見は今のところ得られていない。  また、移植医療における緊急性、代替性を踏まえ、移植を受けないリスクとの比較衡 量が必要であり、次の2つに言及しています。  骨髄移植については、HLA適合ドナーが存在するにもかかわらず、海外渡航歴を有 するため、当該ドナー以外を選択しなければならない場合、適合したドナーから移植し た場合と同等の予後が期待できないことから、代替性には乏しいと考えられます。  さい帯血については、保存さい帯血が目標数に達している状況であることを踏まえ、 より安全性に配慮した措置が可能であると考えられます。  6ページですが、6.移植医療における対応案を示しています。  骨髄移植については基本的には臓器移植と同じ考え方で、献血における採取制限が実 施されている国や滞在期間によっては原則として提供を見合わせることとしますが、レ シピエントがこうした情報について十分な説明を受け、その上で移植を受ける意思を明 らかにしている場合には例外という扱いにしたいと考えています。  また、このようなケースで移植が行われた場合には、レシピエントのフォローアップ を十分行うよう促すこととしています。  さい帯血移植については献血と同様の採取制限を行うこととしまして、当面、英国滞 在1日以上の滞在歴を有する方からの提供を見合わせることにしたいと考えています。  8ページは参考として、vCJDに関する評価についてご紹介させていただきます。  1.英国での推計値による感染確率ですが、手術によって摘出された扁桃と虫垂の病 理学的検査を行い、その中に異常プリオンが確認された割合です。13,000検体を調べた 結果、そのうち陽性のものが3件認められたということです。  2.輸血によるvCJD感染が疑われる事例ですが、血液提供後にvCJDを発症し た人から輸血を受けた人がvCJDを発症した、また、体内での異常プリオンが確認さ れたという報告があります。  3.プリオン病の臓器別感染性についてWHOのまとめですが、各組織においてプリ オンが確認された頻度を示しています。  骨髄については現在のところ感染性が認められていないという報告があります。さい 帯血については、ヒトのさい帯血を用いた感染実験によって感染が認められたという報 告が出ています。以上です。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。これまでの説明につきまして、ご意見等がありましたらご 発言をお願いします。 ○青木委員  事務局案は極めて一般的な、私どもの常識にも合う案だと思います。レシピエントの ことを考えれば、これだけ低いリスクですから、十分説明した上でご了解が得れられれ ば提供すべきだろうと思います。 ○齋藤委員長  北本先生に教えていただきたいんですが、資料1−1の8ページの英国での潜在的感 染者の推計値の13,000人中3人という、この13,000人というのは健康な一般人口という ことですか。 ○北本参考人  vCJDの異常なプリオンたんぱくというのは脳以外にリンパ節で見つかります。そ れは潜伏期間のうちにも見つかるということがわかっています。見つけられる場所は扁 桃腺と、もう一つは虫垂炎の手術の時にとられる虫垂の組織、この二つが以前からの材 料が集めやすかったんですね。それで英国内で20,000件近くの虫垂の材料と扁桃の切除 術の材料を使って、のちに調べた。それらの手術を受けるのはあまりにも若年齢、高年 齢の人はいないために、このあたりの年齢が絞り込めたということで、そういう13,000 検体を調べて、3例が陽性だったという意味です。全くの健康というわけではないんで すが、変な病気ではない。一般的な病気の人たちです。 ○齋藤委員長  年齢としても若年から中年ということですか。 ○北本参考人  vCJDの発病平均年齢は27歳なんですね。今は10代から70代まで発病してるんです が、20代が圧倒的に多いので、ターゲットを絞るのもこの年代でよかろうということで す。 ○齋藤委員長  2番目の輸血による感染ですが、15〜48名に輸血して、2名が発症ということです か。 ○斎藤主査  そうです。 ○北本参考人  ここには記載はありませんが、これが起こっているのはすべてイギリスでのことで す。非常に低いながら、食事によって感染した可能性もあるわけです。たまたま輸血を 受けて陽性になった例が2例あるとお考えください。すなわち輸血が原因とは断定でき ないわけです。 ○齋藤委員長  食事かもしれないわけですね。 ○小澤委員  英国に1日でも滞在した場合を問題にしているようてすが、厳格すぎるように思いま す。皆さん普通に英国に旅行することはあると思うんですが、1日でも問題にするとい うことになると、一般の人にとっては必要以上にリスクを考えすぎてしまうことになる のではないでしょうか。推定でも、どのくらいの危険性があるかというのが数値化でき るんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょうか。 ○北本参考人  数値化はかなり難しいと思います。 ○小澤委員  実際は限りなくゼロに近いわけですね。それをここまで神経質に考える必要があるの かどうか、ちょっと気になります。  8ページの感染性の表ですが、白血球がワン+で、全血とか骨髄が0というのは矛盾 するような気がします。どういう考え方でこういう表記をされてるんでしょうか。 ○北本参考人  WHOのまとめの前にポール・ブラウンというNIHの研究者が今まで行われた感染 実験のすべてのデータをまとめたことがあるんです。それからの転用です。カッコづけ は1施設で確認されただけだという意味合いだと思います。  これはマウスとチンパンジーを使った感染実験なんです。ですから種のカベを超えて ない。感染性をチェックするものとしては低いものと言わざるをえないんですね。(0 )の意味合いが本当に今でもゼロリスクと考えていいのかというと、ちょっとクエスチ ョンであるということです。 ○小澤委員  白血球を+にするのでしたら、全血も骨髄も+にしたほうがいいですよね。 ○北本参考人  普通に考えるとそう思いたいんですけど、現実問題としてはそういうデータは出てい ない。 ○齋藤委員長  扁桃とか脾臓にあるとしたら、血液にあるのが普通ですよね。 ○北本参考人  これはあくまでも弧発性のプリオン病のデータです。vCJDはもっと広いと考えら れます。 ○石井委員  1施設で行われた感染性の実験というのはどういう実験なんですか。 ○北本参考人  1施設というのは、その当時であればNIHで行われた実験であるとか、九州大学で 行われた実験であるという意味の1施設です。実験そのものは、例えばクロイツフェル ト・ヤコブ病の患者さんから材料をとってきて、マウスの脳に直接投与するというので 調べられています。 ○石井委員  白血球に見つかったとか、そういう形でということですか。 ○北本参考人  そうです。白血球というのは血液からバフィーコートの成分を取っていって、それを マウスの脳ないしはチンパンジーの脳に打ったという意味の感染になります。わかりに くいですか。クロイツフェルト・ヤコブの患者さんの血液を採取します。そこから白血 球を精製します。その白血球を小さな注射器に入れて、マウスの脳に接種していくわけ です。マウスであれば2年半ぐらい、寿命いっぱい観察期間を設けて、そのマウスがプ リオン病になるかどうかで判断する。 ○石井委員  患者さんのさい帯血を移植したマウスに感染があったということですか。さい帯血が プラスになってるということは。 ○北本参考人  これは日本人のデータですが、日本のある施設で妊娠中のお母さんがクロイツフェル ト・ヤコブ病になったんです。原因は弧発性のクロイツフェルト・ヤコブ病です。妊娠 末期に発病したので、その後、普通の分娩の形態をとってるんです。その時に採取した さい帯血の血液をマウスに打ったんですが、そのマウスは発病しなかったんです。その マウスの脳をすりつぶして、増幅して次のマウスに打った。初代のマウスではすべてネ ガティブで、2代目のマウスが陽性になっという実験結果が New England Journal of Medicineという医学雑誌に載っています。  世界的に見ての評価ですけど、セカンドパッセージをすることによって、実験室内で のコンタミネーションが起こる可能性がものすごく高くなるんですね。ふだんプリオン の実験をしてるもんですから。ファーストパッセージに関してネガティブということが 世界的には利用されているデータになっています。 ○小達委員  ファーストステージでネガティブだったマウスは、1匹だけのマウスで試されたんで すか。 ○北本参考人  うろ覚えですが、ファーストステージは5匹か10匹やってます。あとで私もチェック させてもらいましたが、すべてネガティブです。 ○小達委員  次世代のマウスはどのくらいの確率で発病してるんですか。 ○北本参考人  次世代のマウスはけっこうな発病率になったんです。当時、そのラボではプリオンを 不活化するのに有効だとされている滅菌法でホモジナイザーを滅菌してた。それは今の 常識では完全な滅菌法とは言えない。論文としてはそういう経過なんですが、1番目の マウスから2番目のマウスへのホモジナイザーを作る時にコンタミがあった可能性があ った可能性が否定できないだろう。最初のさい帯血は組織を壊す必要ないですから、直 接マウスに入れられますから、ここでは混入は起こらない。セカンドパッセージをする ことによる混入が否定できないという理解だと思います。 ○中林委員  プリオンの場合、胎盤通過性というか、母親から胎盤・胎児への移行は世界的にどの ように考えられてるんでしょうか。 ○北本参考人  垂直感染のことだと思いますが、ヒトでは珍しいんですね。大体が中高年の病気です ので、妊娠の時期と合致しないということで、現在までのところではヒトに関して垂直 感染は否定的です。事象は少ない。マウスのデータはありますが、マウスに関しても垂 直感染は否定的です。胎盤の構造は動物によってものすごく異なる可能性があって、マ ウスは垂直感染の実験をするのに適さない動物らしいんですね。ヒトでは例がないとし か言えないですし、マウスでは否定的なデータだった。このようにご理解いただければ と思います。 ○中林委員  分子量その他からみると通過してもよさそうに思うんですけど、そうでもないんです ね。 ○北本参考人  経胎盤的に垂直感染を成功させたというデータはありません。 ○中林委員  New England Journal of medicineのデータは、実験室内での混入の可能性のほうが 高そうに聞こえるんですけど。両方ともデータが少ないから、なんとも言えないんでし ょうけど。 ○北本参考人  結論づけることはできないんですが、あるサイエンスのデータを考えて、対策を立て るということをWHOでもしなくてはいけないですから、その時にさい帯血感染という のは常に問題になります。その時に私が説明しているのは、いま説明したとおりのこと を説明して、世界の方々が納得されてる。 ○柴田委員  さい帯血の例は日本人だとおっしゃいましたね。硬膜ですか。 ○北本参考人  いえ、違います。弧発性、原因不明のクロイツフェルト・ヤコブ病です。 ○柴田委員  若い人ですよね。 ○北本参考人  30代だったと思いますけど、若いですね。 ○柴田委員  8ページの表ですが、プリオン病について、白血球は+、リンパ節も+ですね。とこ ろが骨髄は0ですよね。ということは、これはリンパ球を意味するわけですか。リンパ 球以外の白血球はそうではないというふうに理解していいんですか。 ○北本参考人  動物モデルないしはヒトでも、vCJDの場合、異常なプリオンたんぱくを含有して いる細胞は、フォリキュラーデンドリティックセルという濾胞樹状細胞だけなんです。 そこにはたまってるということはわかっています。そこに感染性があることもわかって います。それはリンパ球のBセルの教育係ですので、流血中をどんどん動くという細胞 ではないんですね。何が単体となっているのかを考える時に、Bセル系が関与している という一派もいますし、そうじゃなくてマクロファージかもしれないという一派もいま す。私が言えることはここまででして、キャリア細胞をわかっているけど、流血中のど の細胞がと聞かれると、まだわかっていない。 ○柴田委員  輸血に関しては白血球除去をやるというのは、この線ですよね。リダクションのほう がいいんでしょうけど。 ○北本参考人  白血球除去はある程度効果があるのではないかと考えられている理由は、先生のおっ しゃるとおりです。もともとプリオンたんぱくというのは細胞の膜表面にあるたんぱく ですので、細胞に関連して感染性があるだろう。それだけではありません。全く細胞成 分のないプラズマ中にも感染力があります。一つの考え方としては、プラズマといえど も、細胞が壊れて、膜辺が少しはコンタミするのではないかということで説明できるの かもしれません。白血球除去が、ある一定のリスク低減にはなると思いますが、完全に それでプリオンの感染性が除去できるとは誰も考えてないと思います。 ○小寺委員  イギリス滞在者で輸血を受けた方が輸血からなのか、それとも食事からなのかわから ないとおっしゃったんですが、もし食事由来のプリオンがわかり、輸血由来のプリオン もわかり、感染者のプリオンもわかった場合、株というか、どちらの由来かを同定する 方法はあるんですか。 ○北本参考人  それはございません。輸血による感染に関しては、モデル動物で、ある程度わかって います。どういうことをやったかというと、BSEに感染した牛の脳を羊に食べさせる わけです。羊は4〜5年で発病します。食べさせてから2年以内の羊の血液を採取し て、イギリス産じゃない羊に輸血します。ニュージーランド、オーストラリアから輸入 した羊でされています。24匹にそういう実験をして、4頭がBSEを発病しました。ヒ トに関してはまだ確実なデータではないんですが、羊に関してはBSEは輸血で感染す ることは確かな事実です。株によって分かれるかというのは、現時点では分かりませ ん。同じ株だと思われます。 ○小澤委員  幹細胞というか、未分化の細胞と分化した成熟した白血球でプリオンを持ってる持っ てないというスタディをされたことはありますか。幹細胞だったら大丈夫とか。CD34 を分離して調べてみるとか。 ○北本参考人  それはなかなか難しいと思います。実験する系がないんですね。一つのヒントは、プ リオンを常に持っているバイオ細胞はあるんです。ニューロブラストーマ系がメインな んですが、ニューロブラストーマ系じゃなくても、正常のプリオンたんぱくをよく発現 する細胞であれば、プリオンがそこで増えることができるというのがかなりの常識にな っていますので、未熟かどうかでは区別できないと思います。 ○齋藤委員長  プリオン病について基本的なことを伺ったんですが、その対応については、先ほどの 事務局案としては骨髄移植とさい帯血移植を分けて考えるという考え方です。骨髄の場 合は、どうしても移植が必要であるとか、せっかくHLAがフルマッチしているのに、 それ以外の一座不一致その他を使うよりは、それを使ったほうがメリットがあるという ことと、もう一つは変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の感染リスクと、はかりにかけ て、レシピエントに十分説明して、それでも受けるといわれた場合はやってもいいので はないかという取り扱いです。  さい帯血の場合はたくさん保存してあるわけですし、献血と同じように扱ったらい い。今後、さい帯血を採取する場合、イギリスなどの滞在歴のある人からは取らないと いう方針です。今まで取ってあるものについては、そこまでは調べない。2万個につい て、お母さんに手紙を出してやるというのは難しいですよね。そういう取り扱いです が、いかがでしょうか。 ○中林委員  先ほどのお話ですと、さい帯血にこの疾患が移行するかどうかに関しては学問的には 極めてネガティブに近いようなデータだろうと思うんですが、それで輸血と同等に扱え るかというと、1日でも英国滞在というのが除去する理由になるかどうかは、常識的な 線からいうと、ちょっと不思議だなという感じがします。今まで1カ月という線で決め ていたものが、月のオーダーの次は一般的には週のオーダーで考えますが、1週間前後 というのが出てこずに、いきなり24時間とか1日というオーダーにパッと変わるという のは奇異な感じがします。  さい帯血も数があるとはいえ、こういう状態が続けば、合うさい帯血がなくて命を失 う人も出てくるわけですから、そういうことを考えると、移植に一般的な輸血とさい帯 血移植を同等にするというのには、もう少しディスカッションしたほうがいいように思 います。 ○齋藤委員長  資料1−1の2ページに骨髄移植推進財団と日本さい帯血バンクネットワークのアン ケート調査結果があります。1日以上の英仏滞在歴を有するドナー候補者及びさい帯血 提供者の割合ですが、さい帯血の場合は3.3%、骨髄の場合も4%です。この範囲の方が 引っかかってくるわけですね。 ○小寺委員  資料1−1の6ページの対応案の骨髄についての確認なんですが、(1) を採用した場 合、同じ資料の9ページの2月7日付の通達はなくなると考えていいんですか。そうい うことですね。 ○斎藤主査  そのご理解で結構でございます。 ○小寺委員  イギリスだけで4.1%、イギリス、フランス合わせて7.4%というのは絶対数としては かなり多いわけであって、この人たちに普通の人と同じようにコーディネートを進め、 ある時点でレシピエントの意向を聞くということですが、コーディネートの効率を考え た場合には、なるべく早期にレシピエントの意向を聞く必要があるかなと思いますが、 そのへんはいかがでしょうか。 ○斎藤主査  現在でも問診の段階でドナーの方から詳細な海外渡航歴が確認されていますので、そ の時点でこの例に該当するようなものがあればレシピエントに説明して、希望される場 合にはコーディネートを進めるとか、そういう形をとっていただくことになると思いま す。 ○齋藤委員長  骨髄移植についてはこのような取り扱いでよろしいでしょうか。  ありがとうございました。  さい帯血ですが、中林委員、小澤委員から1日でもというのは厳しすぎるのではない かというご意見がありました。献血と同じようにしなくてはいけないかどうかというこ とですね。 ○小達委員  骨髄移植に関してはまだ目標に達していない、したがって採取はいいだろう。結果的 にHLAが一致した、患者に対して、あなたのドナーはこういうことがありますよとい うことは説明すると思うんですね。  さい帯血に関しては目標数値に達しているといっても、予備軍に合致者がいない場 合、それでも説明はなしにして…。 ○齋藤委員長  さい帯血の場合は保存したものの中から合致するものがあるかどうかを見るわけで す。既に2万個は保存してあるので、保存したものについては過去の滞在歴までは調べ ない。しかしリスクがあることは知っていただく必要があると思うんですね。今後採取 するものについてはそれを避けたいという方針だと思います。 ○青木委員  骨髄については最初に申しましたように、これでよろしいと思うんですが、話を伺っ てると、限りなく安全に近いという感じを受けたわけです。献血の場合は1日以上イギ リスというのは厳しすぎるような気がしております。さい帯血についても1日以上とい うのは厳しすぎるような気がします。我々バンクが頑張って採取施設を増やしていけ ば、さい帯血の場合は保存数を確保できるかなという気もありますけど、1日でもイギ リスに滞在した人を排除することによって、稀なHLAの人を排除してしまう可能性も ある。極めて少ないHLAのタイプの人から採取しないという可能性もあるのではない か。 ○齋藤委員長  それはわずか3%ぐらいですし、稀なHLAの人の方がイギリスに行く機会が多いと いうこともないと思うので、確率からいったら極めて少ないということです。 ○青木委員  結論としては、従来どおり1カ月滞在でいいのではないかということです。 ○斎藤主査  事務局から補足させていただきます。1日以上の滞在が該当するのは、1980年から96 年までにおいて特に厳しい措置をとらせていただきたいという趣旨でして、表をご覧い ただくとわかりますが、97年以降は英国においても6カ月以上となっております。リス ク評価については、今回この措置をとるにあたって一部見直している部分もありますの で、そういったところも加味していただければと思います。 ○掛江委員  保存したさい帯血は調査しないというのは、コストとかいろんなことを考えてという ことだと思うんですけど、こういった情報について国民が知った場合、提供者自ら申し 出てくださる方もおられる可能性はあるかと思うんです。「私はさい帯血を提供してい て、かつこの期間にイギリスなりに滞在した渡航歴があります」という申し出があった 場合、そういうものに対して対応できるようなシステムになっているのかどうか。ま た、そういうことは検討していただけるのかという点はいかがでしょうか。 ○齋藤委員長  これは中林先生にお聞きしたほうがいいと思うんですが、さい帯血は6カ月まではド ナーとつながってるんですよね。 ○中林委員  1980年から96年の間が1日で、97年からは6カ月ということですが、なぜ1日なのか なというのは科学的には解釈できないだろうから、一般常識からしか分けられない。先 ほど申し上げましたように、月のオーダーの次は週のオーダーで制限するのではないか と思うので、急に1日というオーダーにいくことが私は理解できないと申し上げている わけです。ほんの少しの日時の差で1日と6カ月という差が出てくるのはどういう意味 なんでしょうか。 ○関山課長  1日にしたことについては、輸血の審議会においてご議論いただいた結果だと伺って います。議論の過程において参考にしたものとしては、資料1−2の6ページをご覧に なっていただきますと、短期暴露での発症の可能性というのがあります。ヒトにおける vCJDの発症機序はまだ解明されてないんですが、牛がBSEを発症するBSEプリ オンについては、牛15頭を対象とした最少量の実験で3頭の発症が確認されています。  ただちに1日に結びつけるのは難しいかもしれませんが、少量でも発症しうるので、 イギリスにちょっと滞在しても可能性は否定できないということで、かなりの安全性を 見込んでこのような対応をされたのではないかと思います。 ○齋藤委員長  資料1−1の8ページのWHOのまとめの表で、さい帯血もプラスとなっていますの で、安全性を重視すれば、やむを得ないかなという気がします。考え方が変われば解除 すればいいわけです。さい帯血はそういう取り扱いということで、お認めいただけます でしょうか。今まで保存したものについては問わないし、問えないわけですね。 ○青木委員  1日というのは理解できないですね。この患者さんはイギリスに24日いた、フランス に3日いた、なんで1日以上滞在したら排除しなくてはいけないのか。20日だったらわ かるような気がします。その気持ちは変わりませんけど、私どもが努力して採取施設を 増やせば量は確保できるわけですから、それはそれで頑張るしかないかなと思います。  先ほど掛江委員が言われたように妊婦から申し出があって、1日以上イギリスにいま したといった場合、さい帯血バンクはどう対応するのかということについてご指示をい ただきたいと思います。 ○齋藤委員長  東京さい帯血バンクの場合は3年前に採取した方を遡及調査できますか。その方のさ い帯血はどれだというふうにたどりつけますか。 ○青木委員  情報担当管理者がIDナンバーから遡及することはできます。提供者が白血病になっ た事例等もそういう形で遡及できます。 ○齋藤委員長  加藤先生、このことについて何かご意見はありますか。 ○加藤参考人  安全性というのは問われるべきことでありまして、血液と同様にさい帯血も遡及でき なければいけないと理解しています。これは連結可能、不可能、管理のあり方をしっか りと議論すればいいことでありまして、遡及できる体制にいくべきだと思います。  先ほど来のご議論の中で「目標数を達成したから」という発言が何回かありました が、決して達成されていないと私たちは理解しています。実質的に利用できるさい帯血 は、現在保存してあるものの半数にも満たない状態です。今後拡大していく際に、この ような情報をきちんと押さえた上で、なお安全性の確保に努めるというのが一番適切な あり方だと思います。 ○齋藤委員長  ありがとうがざいました。  これまでの議論をまとめますと、造血幹細胞移植においては、英国等の欧州渡航歴を 有する者からの提供を原則として禁止する。  しかし骨髄移植については、緊急性、代替性等にかんがみ、当分の間、骨髄ドナー候 補者が英国等の欧州渡航滞在歴を有する場合であっても、当該レシピエントが、vCJ D及び移植に伴う感染リスクについて移植医から十分な説明を受けた上で、当該骨髄ド ナーから提供を受ける意思を明らかにしている場合にあっては、移植可とする。  さい帯血移植においては、これから採取する分については、英国等の欧州滞在歴を有 する者からの採取を不可とする。このようなことでいかがでしょうか。 ○小澤委員  リスクを数値化できないという話でしたけど、骨髄移植の場合、そういう説明を受け たとしても患者さんは判断できないでしょうし、コーディネーターも移植医も十分に説 明ができないと思うんですね。かといって北本先生が日本中を回るわけにもいきません ので、どういう説明をしたらいいのかを作っていただくといいと思います。 ○齋藤委員長  共通に使えるようなものを作っていただくといいですね。 ○掛江委員  別のコメントになりますが、例えば5人の方を見つけていただいた上で、そのうち何 人の方は渡航歴がありましたということになるのか、もしくはコーディネート最初の段 階から渡航歴のある方は外して探していただいて、それでもいなかったら、渡航歴のあ る方も含めて探すという手順になるのか。患者の側としては、切羽詰まってから、実は この人は渡航歴がありましたといわれても選択の余地がないと思いますので、そのあた りの手順を事前に明確にしていただければと思います。 ○齋藤委員長  それは財団のほうで検討してもらうようにします。  それでは、事務局においては、通知の発出など必要な作業をしていただくようお願い します。  次に、「骨髄ドナーの適応年齢幅の拡大について」議論したいと思います。年齢につ きましては、すでに18歳から登録、20歳から提供ということを決めていただいておりま す。  今般、加藤先生が、厚生科学研究の成果として、血縁者間骨髄移植での高齢ドナーか らの提供における状況についてまとめられました。その結果について、加藤先生からお 話を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。 ○加藤参考人  前回のこの委員会において宿題をいただきましたものですが、スライドをご覧いただ きたいと思います。  ☆ 造血細胞移植学会のドナー委員会は小寺委員が委員長でいらっしゃいますが、合 同でこの研究班において調査をいたしました。  ☆ これまでにこの学会に造血幹細胞移植の登録を行っている286診療科に対してア ンケートを送りました。そのうち191の診療科、3分の2から回答がありました。3分 の2というのは少ないと思われるかもしれませんが、実際のドナーの絶対数を推測しま すと、もっと高い捕捉率であると推測されます。  191診療科のうち骨髄移植推進財団の認定診療科が152 、非認定診療科が39という数 でした。  ☆ 研究班と学会の合同で各診療科に対してアンケートを発送して戻ってきたという ことです。  ☆ 2000年より前と2000〜2004年と時代を分けました。古い時代になりますと担当者 も替わっておりまして、十分に把握できない事例も多々あります。私たちがいろんな判 断をする際に最も重要なのは直近の2000〜2004年の5年間だろうと判断したわけです。  2000年以前の血縁者間の骨髄の提供数は4,100件、2000年以降は1,821件、合計5,921 件でした。  学会に登録されている数は2000年以前は5,048件、2000〜2003年は1,342件です。最近 の1年の分はその次の年の集計では全部が捕捉されませんで、2000〜2002年がきちんと 捕捉されている数になります。学会への登録数を今回の2000〜2002年の数で割りますと 91.6%ということで、比較的高い捕捉率だったと思います。しかし100%ではありませ ん。  2年前に私が学会の会長だった時に学会の登録の捕捉率を調査したことがあります が、その時の調査では血縁者間移植の全体の捕捉率が85%でしたので、今回はほとんど の状況を把握できているのではないかと推測されます。  ☆ この棒グラフは、骨髄バンク認定施設が藤色、非認定施設がエンジ色ですが、年 間300から400のほぼ一定した数で骨髄移植が行われていることがご覧いただけると思い ます。  ☆ 認定病院と非認定病院におけるドナーの年齢分布を示した棒グラフです。非認定 のほうが絶対数が少ないのでなんとも申し上げられませんが、今回問題になります50歳 以上の年齢層における採取は認定施設のほうが割合としても多いと考えられます。  ☆ 今回、有害事象をA事象とB事象に分けて調査をしました。A事象というのは生 命に直接かかわる可能性のある重篤な有害事象です。B事象は生命にはかかわらない が、治療を要するもの、厳密な観察を要するものです。  1999年以前のものは記憶、記録等が十分とは言えませんが、A事象については記憶も 記録もBに比べれば残っている可能性があるということで、2000年より前についてはA 事象のみを伺いました。しかし結果的にはB事象についても報告がありました。ここに は報告があったもののうちA事象4例の方だけを掲げてありますが、これよりも軽微な B事象に相当する方が5例で6件、(同じドナーの中で2つの有害事象があり、)1人 は亡くなられています。  その内訳は、16歳の女性はショック状態になられて、同種輸血を必要とされた。35歳 の男性は死亡された。これは新聞等で報道されたものです。37歳の男性は悪性高熱症、 38歳の男性は肺水腫です。  2000年以降の5年間に限定しますと、1,821件の採取の中でA事象に相当するものは ゼロでした。B事象に相当する方が12人で、その中で3人の方は複数の有害事象が報告 されていまして、15件ということです。  ・ 2000〜2004年の方々について一覧表で示しています。年齢の若い順から高齢へと 並べてあります。時期は順不同です。アスタリスクをつけている方1人は非認定施設で 行われた方、★じるしがついている2人は骨髄移植推進財団の定めるドナー適格性とい う点で何らかの問題があると報告されたものです。1人は高度の肥満、1人は内容はわ かりませんが、治療中で服薬中だったということです。  B事象が12人の方々にあったと報告されています。  ・ 骨髄バンクの認定病院の中で、骨髄バンクの定める適格性基準と採取基準のマニ ュアルに合致したドナーに限定して有害事象の発症率を出しました。  15〜19歳では123人のうち1人に有害事象が報告されています。20歳代では281人中 0、30歳代では267人中2人、40歳代では273人中1人。合計しますと、現在の骨髄バン クの年齢基準に合致する20歳から50歳までのドナーは821人中3人(0.4%)という有害 事象が報告されています。  この基準よりも高齢の51〜55歳では138人中2人(1.6%)、56〜60歳では60人中2人 (3.2 %)となっています。  有害事象の絶対数が1とか2とか最大3ですので、意味の差があるのかの検討方法が 問題になります。パーセントを見るとかなり違うように見えますが、1人違うだけで半 分になってしまいますので、統計学的にきちんとした解析をする必要があります。  ・ 通常のカイ2乗検定だけでは不十分ですので、Fisherの直接検定で統計学的な解 析をしました。21〜50歳の年齢層と比べて51〜55歳の年齢層の間には統計学的な有意差 はありませんでした。Fisherで危険率15%です。  上限を60歳まで拡大しますと、20〜50歳の年齢層より統計学的に有意に有害事象が増 加するという結果でした。  今回の調査はそれぞれの施設に残っている記録と記憶の範囲の中から抽出したもの で、100%正確とは言いがたいものです。しかし、おおよその傾向として、55歳までの ところではやや増える傾向はあるものの、統計学的な有意差にはなっていない。さらに 55歳以上に広げますと有意差が出ていますので、このあたりが一つの判断のもとになる のかなと思います。  学会としては、これまで末梢血のドナーについては移植前の登録を行っていました。 今後は血縁ドナーの骨髄の方々についても全員を把握する努力をしようということで、 4月からその事業が始まっていることを付け加えさせていただきます。以上です。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。  次に、事務局において対応策を検討しておりますので、説明をお願いします。 ○斎藤主査  資料2−1をご覧ください。骨髄ドナーの適応年齢の引き上げにつきましては、これ まで第4回、11回、17回、24回の委員会で4回、ご議論いただいております。そこで出 ました主な意見をここに挙げております。  主な論点をまとめますと、ドナーの安全性、治療効果の問題、コーディネートの効率 性、こうした観点から議論していくことが必要ではないかという流れになっています。  2ページは、前回25回における検討結果ですが、骨髄採取時の安全性に関してドナー の年齢が及ぼす影響について調査研究を行うことになりまして、加藤先生に調査を実施 していただいたわけです。  調査結果ですが、ただいまご説明があったとおり、骨髄バンクの適格性基準に合致 し、採取マニュアルを遵守したドナーにおける有害事象の発生率については、20〜50歳 と51〜55歳との間では統計学的に有意差はなかったということです。  次に対応策を示しています。  ・20〜50歳と51〜55歳の群において、現行のドナー適格基準及び骨髄採取基準に照ら して適格であった場合、有害事象の発生率に有意差を認めなかったことから、提供年齢 の上限を55歳に引き上げることが妥当である。  ・提供年齢の引き上げに伴い、登録年齢の上限を54歳に引き上げてはどうか。  コーディネート期間を考慮しますと、ドナーとして登録されてから実際に提供に至る までの日数として1年をみておけば提供が可能ではないかということに基づいて、登録 年齢は1歳下げて54歳までとしています。  ・既存のドナー登録者については、満51歳になってドナープールから登録が取り消さ れる時点で、提供年齢が55歳に引き上げられたことについて説明を行い、登録継続の意 思が確認できた場合のみ、ドナーの登録が継続されるように配慮したいと考えていま す。  ・ドナー登録歴があるものの、すでに登録が取り消された54歳以下のドナー登録希望 者については、新規登録希望者として取り扱う。  3ページに参考として、各国の骨髄提供年齢の状況を示しています。  4ページ以降は以前の委員会にも提出しましたが、米国骨髄バンクの資料で、ドナー の年齢別の移植の効果、ドナーの有害事象の発生率等についてまとめとものです。  9ページは骨髄移植推進財団でまとめていただいた「団体傷害保険の適用数」という 資料です。有害事象の発生について平成12年度から16年度までの件数を示しています が、右下にありますように、この5年間の率は平均1.07%となっています。以上です。 ○齋藤委員長  ありがとうございました。  3ページの各国の骨髄提供可能年齢を見ますと、55歳までが4カ国で、59を含めて60 歳までが5カ国ですね。  9ページの非血縁者間の骨髄移植における障害保険が適用された有害事象は、すべて 捕捉されてると思うんですが、平成12年度からの調査で、2.17%、0.95、0.83、1.09、 0.49で、平均して1.07%。加藤先生が血縁者間で調査してくださったのが1%前後です から、ほぼ同じですね。このくらいはあるということかと思います。  この問題について、いかがでしょうか。 ○掛江委員  5歳刻み以外では解析はされなかったんでしょうか。57歳とか58歳で区切った場合の 有意差はどうかとか。 ○加藤参考人  今後そういう検討も必要になろうかと思いますが、今回は短期間で調査をしたいとい うことから、先ほど申し上げた年齢で切りました。55歳ではどうかとか56歳ではどうか ということが判断の際にあればなおいいというお考えかと思いますが、今回はそこまで はわかっておりません。 ○中林委員  今まで検討した結果で、55歳に引き上げることには賛成です。ただし今回加藤先生に お出しいただいた統計では、55歳に引き上げると数が増えてきて、60歳がだめで55歳が いいということにはなりません。先ほどの有害事象から見ますと、加齢とともに循環器 系の疾患が増えてきます。数が増えてくれば、50〜55歳では統計上に有意差が出てくる 可能性があります。今回の統計をもとにOKということにしますと、数が増えてきた場 合、50歳まで引き下げるかというディスカッションになります。そういうことではなく て、あくまでも参考として55歳ぐらいが妥当であるという今回の統計をもとに、全体の 流れとしていいのではないかということにさせていただきたい。そうでないと、数が増 えてきた時にまた変えましょうというディスカッションをしなげればいけなくなりま す。本当に統計的にどうなのかというと、あの数でははっきりしたことが言えないとい うのも事実だと思います。 ○柴田委員  今までの経緯を見ますと、初年度が一番悪くて、だんだん下がってくるという傾向が ありますので、中林先生がおっしゃったようなことに留意すれば、十分に気をつけてや るということで、55歳に上げることは賛成です。 ○石井委員  今の中林先生のご発言は、数が増えてくると55歳まででも有意差が出る可能性が高い という…。 ○中林委員  そのように見えますけど。 ○齋藤委員長  それはわからないと思います。 ○石井委員  私は統計学はわからないんですけど、素人的には数から見ると、明らかに危険度が高 まっているように見えてしまったんですね。それについての情報をドナーに提供する必 要性はないかということなんです。50歳まで提供年齢を引き上げるけど、統計学的には 有意差は今のところない。しかし危険性は高まるということを言う必要性はないんでし ょうか。 ○齋藤委員長  統計で調べて有意差がないということは危険率がないということなんですね。この段 階では。将来、数が増えた時に危険率が減るのか高まるのかというのは全くわからない んですね。 ○小澤委員  統計処理の結果というのは統計のマジックであって、若い人と比べれば有害事象は増 えて当然だと思うんですね。ですからその頻度がアクセプタブルかどうかということだ と思うんですね。先ほどくらいの発生数であればよろしいでしょうという議論で、50歳 までの時と比べて有害事象の発生頻度に有意差がなかったからどうのこうのというの は、適切ではないと思います。 ○齋藤委員長  今の段階ではまだ出てないということですよね。もう一つは、9ページの非血縁の表 にあるように、50歳まででも1%前後あるわけですから、リスクは同じようなレベルだ ということです。 ○青木委員  最初に一覧表が出た時に、Bの有害事象12例のうち51歳以上が5例あって、ずいぶん 多いかなと思ったんですが、結論としてはそうでもないということなんで、よく理解で きないところです。  前回の委員会で、年齢を引き下げる時に、登録してから実際に移植できるまでに2年 かかるという話で18歳という提案があったわけです。今回は提供年齢を55歳までとし て、54歳まで登録を認めるというのは、前回と今回の矛盾が出てくると思うんです。 ○齋藤委員長  54歳までというのは、1年間あるわけですね。調べてみますと、登録してから1年間 で2割ちょっとぐらいのドナーが提供してるというデータがありますよね。財団のほう で数字は出ますか。1年で3割ですか。1年以内に3割ぐらいは提供してるんです。そ こを無駄にしないようにということです。下のほうは法的な成人との関係があって20歳 にしたと思うんです。 ○石井委員  20歳だけど、2年前までいいとしたのは、移植まで2年間かかるからということです ね。 ○齋藤委員長  今までのご意見をまとめますと、高齢ドナーにおいても、他の年齢層と健康被害のリ スクは同等であることから、骨髄ドナーの適応年齢の上限について、現行の50歳から55 歳に引き上げる。それに伴って、登録年齢の上限についても、現行の50歳から54歳に引 き上げる。ということになりますが、よろしいでしょうか。  ありがとうございました。  次に、事務局より報告事項がありますので、よろしくお願いします。 ○斎藤主査  資料3「臓器移植における狂犬病に関する取扱いについて」をご覧ください。4月25 日に開催された厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会で配付した資料です。  1.報告されている事例ですが、アメリカでは昨年、ドイツでは今年、臓器移植によ って狂犬病を発症した事例が報告されています。以前にも角膜移植を介して狂犬病を発 症したという事例の報告がありましたので、この件についてご議論いただきました。  2.狂犬病の特徴としては、哺乳動物による咬傷、ひっかき傷が感染契機となる。発 症した場合は致死性である、潜伏期間の個人差が著しい、発症前のスクリーニングは不 可能といった特徴があります。  狂犬病の詳しい情報については、4ページ以降に、国立感染症研究所の佐多先生にご 説明いただいた資料をつけておりして、臓器移植委員会ではこの資料でご説明いただい ております。  8ページの下に「狂犬病の特徴」というスライドがありますが、その中に「血行性に 感染が広がるものではなく、血液からのウイルス分離例はない」という記述がありま す。こういう特徴がありますので、臓器移植による対応が必要ではないかと考えられま す。  1ページに戻りまして、3.臓器移植との関連については、神経組織を介しての感染 が疑われる。免疫抑制剤の投与が発症に及ぼす影響についても不明ということです。  4.海外における制限ですが、英国では保健省のガイドラインで、「全身性疾患に伴 う既往を有し、かつ過去6〜12カ月の間に海外渡航歴または海外での動物咬傷を有する 」ことがリスクファクターとされ、レシピエント及び近親者に十分説明することとされ ています。その他の国では具体的な扱いは確認できておりません。  2ページに、5.臓器移植における対応案を示しています。  ドナー候補者については過去7年以内の海外渡航歴及び海外における哺乳動物による 咬傷等の受傷歴を確認し、該当する場合には、移植医が、レシピエント候補者に対し て、狂犬病及び移植に伴う感染リスクについて十分に説明するよう促す。  7年という期間は、現在報告されている最長の潜伏期間からとっています。渡航地域 については、3ページにお示ししている狂犬病の発生地域情報なども参考にしていただ きたいと思います。  このような扱いについて、臓器移植の関係機関に情報提供を行う予定にしておりま す。  また、その他の感染症への対応については、諸外国の状況等を参考として、引き続き 検討することになっています。  なお、造血幹細胞移植につきましては、先ほど申し上げましたとおり、血液による感 染例、ウイルス分離例がありませんので、この注意喚起は臓器移植に限らせていただき ます。 ○齋藤委員長  ただいまの説明に関してご質問等がありましたらお願いします。  狂犬病ウイルスの場合は感染した動物を食べることによっては感染しないんですか。 犬を食べる国もありますよね。 ○小達委員  3ページに、狂犬病の発生がないと日本が認めている国が示されてるんですが、日本 は発生しているのでしょうか。 ○斎藤主査  日本は狂犬病のない国ということになっています。 ○小達委員  この中に日本も入るわけですか。 ○斎藤主査  これは農林水産省で示している地域ですので、もともと日本は入っていないという整 理になっていると思います。 ○石井委員  ヒトが感染してないということですよね。最近、犬の予防接種があまり行われていな いという情報を見たような気がするんですけど。 ○齋藤委員長  日本には狂犬病の犬はいないんでしょ。 ○斎藤主査  国内では確認されていないということです。 ○坂本委員  ヒトの感染が確認されてないということですか。 ○斎藤主査  ヒトもそうですが、日本国内の犬からも確認されていないと伺っております。 ○坂本委員  3ページの発生がないというのは、犬の発生がない国じゃないんですか。 ○斎藤主査  ヒトと犬も含めた動物での感染例が認められなかった地域と伺っております。 ○小達委員  ヒトでの感染は発表されてないけど、犬では発症したことがあるんですか。 ○斎藤主査  ここにある地域は狂犬病の発生がなく、かつ輸入動物に対する検疫体制も確実だとい うことでここの対象に入っているというご理解で結構だと思います。 ○齋藤委員長  全般を通じて、ご意見、ご質問はございますでしょうか。よろしいですか。  最後に、事務局より連絡事項をお願いします。 ○永野補佐  次回の日程につきましては、各委員の日程を調整させていただき、決まり次第、文書 にてご連絡をさしあげます。先生方におかれましては、お忙しいところ恐縮ですが、日 程の確保をどうぞよろしくお願いいたします。 ○齋藤委員長  それでは、北本先生、加藤先生、どうもありがとうございました。以上で会議を終了 いたします。                     ┌─────────────────┐                     │問い合わせ先:健康局臓器移植対策室│                     │担当者   :矢野、高岡     │                     │内線    :2366、2362 │                     └─────────────────┘