05/05/23 「第5回へき地保健医療対策検討会」の議事録について              第5回へき地保健医療対策検討会                        日時 平成17年5月23日(月)                           15:00〜                        場所 厚生労働省専用第22会議室 ○宮本指導課長補佐  ただいまから、「第5回へき地保健医療対策検討会」を開催いたします。委員の皆様 方には、本日はお忙しい中、遠方よりお越しいただきましてありがとうございます。ま ず、委員の出欠を報告いたします。本日は、新庄委員、清藤委員、高橋委員、松村委 員、元山委員から、それぞれご欠席というご連絡をいただいております。本日は、自治 医科大学看護学部長の野口美和子様に参考人としてプレゼンテーションをお願いしたい と考えております。それでは、座長に進行をお願いします。 ○久座長  第5回目のへき地保健医療対策検討会にご出席いただき、ありがとうございます。事 務局から提出されている資料について、確認をお願いします。 ○宮本指導課長補佐  資料は1から3までと参考資料を1つお配りしております。資料1として野口様にい ただいた発表資料、資料2としてこれまでの議論の整理、資料3としてへき地医療に従 事する医師を確保するための新たな方策の検討、参考資料として前回の議事録、以上で す。確認をお願いします。 ○久座長  皆さんのお手元に資料があると思います。早速、議題に入りたいと思いますが、事務 局から前回の議事内容の確認をお願いします。 ○宮本指導課長補佐  前回検討した内容を簡単にまとめたいと思います。1つ目は遠隔診療の支援デモを行 い、奥野委員が勤務される鳥羽市立神島診療所と東京を結び、バーチャルプライベート ネットワークを途中に、それから端末の認証を行った形でセキュリティを確保して、遠 隔診療支援の実験を行いました。これは私どもの反省ですが、奥野委員にご発言いただ く機会をこちらから振ることができませんでした。それから、慣れなかったということ での反省として、カメラを通してこちらを見ていただいていますので、先生からすると どなたが発言されたかがおわかりにならないということがありましたので、そういった ことを各委員の発言の際に求めていけばよかったのかということで考えております。ま た、ご意見としてシステムそのものは評価できるとしても、相談する側の医者がいない ことには話が始まらないという点がありました。  2つ目として、北海道瀬棚町の村上医師によるへき地医療の実践について、説明いた だきました。いわゆる重装備の診療所ということで、CTや人工呼吸器なども装備した 診療所において、保健・福祉・医療といった多面的な活動を行うことにより、結果とし て老人医療費の低下なども見られているということでした。また、そういった活動を熱 心に行うことにより、自治体からもいろいろな意味でのサポートがある。そういった状 況に共感して、たとえ給料はそれほどでなくても、3人目の医者も希望していらっしゃ るということでした。  3つ目ですが、吉岡委員から、哲西町が新見市と合併したことによる効果・影響とい うことで説明がありました。旧哲西町3,300人余りの人口が、1市4町の合併で3万 7,000人ほどの新見市になったということです。その結果、統合されたことにより頻度 が増えた事業もある一方で、単独事業として行っていたような事業については再検討を 行っていく、そういったプロセスにあるということでした。また、医業全般においては これまでの積み重ねで行っているへき地医療支援機構からの支援も、かなり有効に機能 しているというご紹介がありました。  4つ目は医療計画の見直しについて針田指導官より説明し、主要な疾患または事業に ついて、どのような対策が講じられているかをわかりやすく示すことにより、へき地診 療も含めて、関係者が情報共有しながらわかりやすい体制をつくることを目指してい る。そういった状況について、説明いたしました。  5つ目ですが、これまでの議論のまとめについて資料を紹介し、現在進められている ような施設の集約において、同時にアクセスのしやすい環境も両立させていかなければ いけないというご発言がありました。また、拠点病院を指定することを、これまでのへ き地医療対策で行ってきたわけですが、そのへき地医療拠点病院に限らず、その地域の 医療資源を最大限活用していくことが重要だといったご発言がありました。主なものと しては以上です。 ○久座長  前回のこの検討会での議論の内容を簡単に説明していただきましたが、何かご質問、 ご追加はおありでしょうか。これは正式な議事録として、あとから出てくるのですか。 ○宮本指導課長補佐  前回のものについては、正式にまとめてホームページの掲載等を行ってまいりたいと 思っております。 ○久座長  やっていますね。もう皆さんに直していただいたのですか。 ○宮本指導課長補佐  そうですね。 ○久座長  議題の2ですが、本日は自治医科大学の野口看護学部長に説明をお願いすることにな っています。よろしくお願いいたします。 ○野口参考人  へき地保健医療対策検討会は精力的に開催されておられて、医療に携わる看護職の1 人として大変心強く感じております。また、本日はへき地で働く看護職の実情につい て、意見をお聞きいただけるということでありがとうございます。私どもの調査から、 特に常勤の医師がいないへき地診療所看護職の活動の実態について、その一端をご報告 して、それに基づいてへき地における看護職の活動に関する課題について、意見を述べ させていただきます。  昨年、第9次へき地保健医療対策実施要領で定められたへき地診療所のうち、閉鎖予 定のもの、巡回出張診療の形態のもの、歯科診療を除く924施設に勤務する看護職924人 へ、質問調査をしました。421人の看護職から回答を得ました。回答率は45.6%でした。 その中に、常勤の医師がいない診療所からの回答者が92人おられました。この中には、 医師も看護師も派遣で、1週間に2回巡回診療に出ているという方も一部おいでになり ます。平均年齢は45.6歳で、最低は23歳、最高は何と79歳の方がおられました。同居家 族を聞いており、「同居家族がある」という方は96.7%ですから、ほとんどの方がその 地区、またはすぐ近くに住んでおられるのではないかと思います。通院患者の主な受診 理由ですが、第1位が慢性疾患の管理で、急な発熱や腹痛もあります。  次に看護職が捉えた地域に特徴的な健康問題を聞いております。1位に「生活習慣病 が多い」が挙げられており、2位が「高齢者の問題」です。これは独り暮らし、老老介 護、受診ができないなどの内容になっております。3位ですが、「整形外科系疾患が多 い」が挙げられています。農林業の地域が多いので、それを反映しています。また、 「食事に問題あり」「健康認識に問題あり」がそれに続いております。1位から3位の 問題に対処する上で、4位から5位の健康問題が挙がっており、このことでへき地診療 所で働く看護職は日々奮闘していることが推測されます。  看護活動を見ると、第1位が「診療所の機能から外来での診療の介助や処置」です が、生活習慣病、高齢者整形外科系疾患が多いことを受けて、「外来患者への日常生活 指導」が続いております。高齢者が多いことから、保健所や福祉など、関係機関との連 絡もかなり行っております。  「要介護高齢者家族に対する助言」では、往診や家族が慢性疾患の管理で受診した 際、あるいは車での巡回診療の行き帰り、生活で買物をしているときなどで、「どうし ているか」とか「疲れていないか」など声をかけて、励ましているということが報告さ れております。  5位は、「地域住民同士のネットワークや支え合い」がどうしても必要だということ が挙がっております。しかし、狭い地域で人間関係が密なへき地であるがゆえに、人間 関係を把握することが、これらのネットワークをつくったりすることと一対で常に述べ られております。ここでも、へき地看護職の苦労・工夫がわかります。また、これは地 元に住んでおり人間関係に配慮できる、そういう勤務形態ならではの活動でもあろうか と思います。  7位に、「医師不在時の応急処置や初期対応」が挙がっております。半数が行ってお ります。9位の電話相談の内容ですが、主なものとして腹痛などへの対応や薬の飲み方 が挙げられており、これらによって急な発熱や腹痛時に受診せずに済んでいるというこ ともあるのではないでしょうか。また、地域に必要とされる社会資源として、老人ホー ムの受入状況も常に念頭に置いて働いているということです。  8位に、「要介護高齢者家族への介護方法の指導」が挙がっております。これも隙間 風の中の五右衛門風呂という所での入浴介助等ですから大変ですが、状況に合わせて工 夫していることが報告されております。  看護活動における問題・困難感についてです。1位に、研修研鑽の機会が少ないこと が挙げられております。従事者が少なく医師も常勤ではないことから、担当・専門以外 の仕事をしなければならないことも訴えられております。どういうことをしているかと いう内容ですが、多いものは血液検査、レントゲンフィルムの現像、調剤、心電図検査 などです。これは看護職単独で、医師不在時も行っているようですが、この調査ではそ のことははっきり出ておりません。こういうものを受けて、5位の「業務が明確にされ ていない」、9位の「マニュアルや引継ぎが不十分」が挙がっているのではないかと思 います。医師法の現状からも、担当業務を明確にできない事情も伺えます。  3位の「設備・物品の不足」、4位の「困ったときに頼る人がいない」、8位の「バ ックアップ機関がない」、これはへき地の医師にとっても同じことが言えるのではない かと思います。6位に「休暇が思うように取れない、休日・夜間に急に仕事が入る」が あります。以前はポケベルで、いまは携帯電話で患者から直接連絡が入ることも多いよ うで、それにも対応している。これもへき地に勤務される医師も同様のことが言えるの ではないかと思います。  6位に「自分の行った内容を確認評価してもらう機会がない」があります。私どもの 財団で昨年、初めてへき地診療所の看護職の研修をしました。研修会最後のミーティン グでは、「自分たちの行っている看護活動を、住民の健康を守る活動として位置づける ことができたことがとてもよかった」ということが述べられております。また、研修で は新しい知識を得たことや相互の活動報告をすることにより、「へき地医療に格差があ る。同じような医療や看護が等しく受けられるように努力したい」という意欲が述べら れています。  調査では、最後に自由回答で意見・感想を求めています。アンケートの調査に答える だけでは満足できず、強調したいことが書かれておりました。その内容を資料でまとめ てありますが、「初めてへき地診療所に働く看護職のことを聞いてもらえてうれしかっ た」という感想が述べられていたことが印象的でした。へき地の健康問題についてです が、「糖尿病が増えている。生活習慣病が多い。内科の患者は薬が治療と思っている。 農林業で腰痛等に苦しみながら、なお働いている。若い人がいないので受診できにく く、我慢して受診が遅れる。飲酒や塩分摂取の食生活の問題がある」、このようなこと が切々と訴えられております。  看護職の役割や対応、他職種との連携では、「受診を待っているだけではなく、状況 が悪い人には毎日電話している。受診日なのに来ない人がわかるので、電話している。 来れないとわかると様子を見に行ったり、血圧を測りに行く。医師に電話して、やっぱ り診療所に来る必要があるとなると、車で連れてくる」といったことが書かれておりま す。このようなきめ細かい仕事をしていることが書かれており、町から呼んだ救急車を 患者宅に案内しなければならない事態も、へき地ではあるようです。へき地に住む多く の高齢者は交通手段を持ちませんので、薬を届けるというのは日常的なようです。ま た、住民と医師のパイプ役を務めているというのがあります。  今回の調査に先行する面接調査では、住民はへき地に赴任してくださった医師に大変 ありがたいと感謝しており、その医師が処方してくれた薬で、どうも副作用らしい不都 合があっても医師に言えない。また、家族やほかの住民にも言えない、思い余って道で 会ったときにこっそり看護職に聞いてみる、といったような状況も聞いております。  保健師との連携は必須です。特に巡回診療のみの看護職がおります。この調査の中に は、医師と一緒に週に1回、巡回診療というような人も何人かいらっしゃいまして、そ の方たちは保健師にもっと来てもらいたいと切々と訴えております。地域のネットワー クづくりなどをやっているところもあります。また、子供夫婦が町へ出ていく、島外に 出ていくということで、老後の不安を訴えております。独り暮らしの高齢者ではちょっ と寝込んでも、遠く離れた施設に入らざるを得ないことが目に見えておりますので、そ れらの不安を訴えており、看護職がそれに対応し、できるだけ自立性を維持するように 励ましているということが書かれています。このような活動を通じて、看護職は住民と のコミュニケーションを大事にしたい、包括ケアに力を入れたい、へき地だからこそ能 力や人間性にも優れた看護職を必要だと痛感しているといった意欲が述べられておりま した。  これらの調査を行って、へき地診療所で活動しておられる医師の方々ともお会いし て、私がいま考えているへき地診療所看護職の活動に関する課題を簡単に述べます。住 民の状況を見て、必要に迫られ、また電話相談や往診の途中で呼び止められるなど、住 民の求めに応じて文字通り時と場所を問わず、診療所看護職は健康相談、生活指導、訪 問による心の支援を行っております。また、薬や医療に頼る住民に対して、上手に工夫 して予防的健康管理意識を育んでおります。このような看護活動の意義を認めて、何ら かの形で制度に乗せていただく必要があるのではないかと思います。  へき地医療は、少ない医療職でのチーム医療です。看護職のこのような活動がない と、へき地に赴任した医師はその力を十分に発揮できません。また、研修に出ることも できません。病気になっても休むことすらできないのでは、ますます医師の確保は難し くなるのではないでしょうか。  次に医師不在時の定期処方薬の投与や救急対応についてです。これは法律との関係で もありますが、受診では、生活習慣病や整形外科系の疾患による慢性病の管理が多いわ けですが、多くのところで医師不在時にも定期処方薬を出しております。しかし、慢性 病であっても、その時々で患者の状況は変化がないわけではありません。検査などをし て状況を捉え、医師と連携したり、また地域の開業の先生方にお願いしたりしているの が実情です。このような判断と連携は、看護職だからできることだと思います。  次のような状況が報告されております。これは調査のあと私どもにお便りが届いてい るものです。「数年前までは医師の裁量で電話による医師の指示の下、薬を出したり、 注射をしたり、酸素吸入をしたりしていた。しかし、体制が変わり」、これは市町村合 併によるのではないでしょうか。「ここも市立診療所で、市が管理者であるということ が強調されるようになり、医師不在時の看護師による医療行為は厳禁になった。薬や注 射について困ることはないが」、どうして困らないのかわかりませんが、「最も悩んで いることは酸素吸入もできなくなったことである。脳血管疾患の発作時や出血者、喘息 患者等、呼吸が苦しそうで明らかに酸素吸入が必要であるとわかっていても、建前上は 酸素吸入をできないというのです」と書いてあります。「先日も喘息発作を起こした患 者がおり、対応に迷って」、迷ってどうしたかは書いてありませんし、電話をしました が聞き出せませんでした。「保健所にも相談してみたが、医療行為なので看護師はでき ないと、建前論を言われるばかりである。そこで、いま考えていることは、他の離島の 実態等について情報収集し、当診療所におけるマニュアルのようなものを作成・検討 し、認めていってもらう必要があるのではないかという話が持ち上がっている」という わけです。  ある県立病院で、「離島診療所の業務手順」を出しております。その中に「医師不在 時の対応」というものがございました。そこには休診日の医師不在では、「定期処方の 薬のみ投薬を行う」とあります。風邪症状などに応じての投薬は、「あとから医師への 報告、患者へ電話をして経過を伺う」と書いてあるんです。風邪症状などに応じての投 薬は行うのか、行わないのか、不明なんです、これは明示できないのではないでしょう か。医師法等、法律の規定にもかかわらず、包括指示、プロトコール、マニュアル等を 活用して、またへき地の医療チームに特有な状況に対応して、医療法上の特区を設ける など、特有のチーム医療の方策を開発して、住民の安全・安楽、希望を持った生活を守 れるような体制を検討していただきたいと考えております。  明日24日、NHKの「プロジェクトX」で、終戦後の占領軍の下での沖縄の公衆衛生 看護婦の活動が放映されると聞いております。日本でも終戦直後、昭和21年に緊急開拓 事業実施要綱が定められて、農林省において開拓保健婦制度がとられております。昭和 22年、全国で180人が働いており、昭和37年に厚生省に移管されて、都道府県の職員に 組み込まれたときには317人働いていたということです。当時は、母子保健、開拓労働 に伴う問題、感染症対策が健康課題でした。開拓保健婦は、開拓農民とともに巡回診療 の医師が来るのを待ちながら、その間、開拓農民の命と生産力、そして健康意識の向上 を支えてきたのです。  手記を見ると、いまのへき地医療の看護師と同じように活動し、保健婦であっても救 急活動をし、投薬し、そして生活指導、保健指導をしているのです。医療従事者が十分 得られない地区での活動は、緊密なチーム医療体制が必要で、かつ医師はもちろんのこ と、看護職であれ、保健師であれ、助産師であれ、個々の医療者の包括的な活動をオー バーラップさせることが求められているということは、時代が変わり、母子保健が高齢 者保健に、感染症が生活習慣病に変わっても同じではないかと、つくづく考えさせられ ております。本日はありがとうございました。 ○久座長  いまのお話について、どなたかご質問をどうぞ。 ○吉田委員  いまの野口先生の話は、私は北海道にいますので北海道の現状とダブりながら拝聴し ていたのですが、現場で働く看護職の悩み、あるいは要望などがよく理解出来て、非常 に貴重なご報告だと思います。北海道も同じで、やはり医師がもうちょっと看護職の立 場を理解してやらなければならないのかなと思って聞いていました。先生が講演の中で おっしゃっていましたが、制度を変えるのか、あるいは協力体制を強化するのか、この 2つがポイントだと思うのです。  北海道で何ができているのかというと、これは自問自答なのですが、私たちの所では 前々回に遠隔医療についてお話しましたが、いまテレビ会議システムを導入して、大学 の看護学部の教授が地域の看護師に講演会を開いたり、あるいはITを使うことによっ て、少しだけですがナースの負担を改善する方向を考えております。  私は先週シンガポールとタイに出張したのです。それは総務省が実施しているアジア ・ブロードバンド計画の中に、国際遠隔医療というのがあって、旭川医大とシンガポー ル,タイと遠隔医療を行うことになり行ってきたのです。その中で非常に驚いたのは、 地域との連携の中で、へき地の病院のナースをいかに支援していくかというプログラム がその中にあるのです。ですから、日本も負けてはいられないと思って、そういうこと を強く感じて帰ってきました。そういう意味で、野口先生は、我々医師がよくわからな かったような細かいデータを出していただき、非常に感銘を受けました。 ○樋口委員  いまの話は、大変そのとおりだと思うのです。それは医師のいない所で、看護職の行 為というのがあるのです。看護職の行為の範囲を、結果的には拡大してやっているわけ です。最近では、介護者が人工呼吸器の喀痰を吸引するのはよいということになったと 同じように、これは医師がいないわけですから、緊急避難的にやらざるを得ない、実は やっているわけですね。  いま医師がどうしても集まらないわけですから、地域・へき地における看護行為とい うのは、医療行為に近いようなことがいっぱいあるのです。そういうものを拡大しても いいようなことも法律的に考えることが、1つは必要なのではないかということも考え ております。お役所にお伺いを立てますと、全部駄目だと言われます。そうすると、ち ょっと手を出せばいいのに、喀痰を取ってあげればいいのに、窒息死してしまうという ことが実は起こっているのだろうと思っております。 ○吉新委員  基本的に対診といって、医者が患者を診ないと診療したことにならないという、医師 法の問題があると思うのです。ですから、例えば我々もへき地の診療所にいて、4日目 のケガの処置は看護師がやっておいてくださいということは実際にあるわけですが、現 行の法律ではそれは禁止なのです。定期的な処方も禁止になっていますし、風邪で解熱 剤を欲しがっていたので出そうと思ったのですが、電話が来たということで、一応お願 いするなどということもあって、相当違法性のあるところがある。絶対医者が診ない と、ナースはそれを補助するだけですから、現行法律はできないのですが、もうやるこ とがほとんどわかっている場合、1日だけお願いするなどということは、実際かなりや られてしまっている部分があると思うのです。本当は違法行為なのですが。  例えば前回の5年前の第9次のときにも、十島村など鹿児島の離島にナースがいて、 へき地診療所があって、ケガの患者の写真を撮って、鹿児島の日赤に写真を送って、指 示を仰いでヘリコプターを飛ばしたという話があったと思いますが、実際医師がいない 看護師だけの離島ではそうせざるを得ないこともある。医師の代わりということでは問 題なのですが、ナースの権限を超えて、緊急の場合にはやむを得ないと思うのです。日 常でも若干緩くしてもらえたらありがたいという部分はあると思うのです。ただ、勝手 にすでにそうしているナースもいて、医師の正常な活動をかえって邪魔するというケー スも聞いていますので、その辺はきちんとコントロールしなくてはいけないと思いま す。 ○久座長  その場合でも、電話で相談しては駄目なのですね。やはりドクターが患者を診なけれ ばならない。 ○吉新委員  たぶん遠隔医療では、緊急の場合等に関してはいいということになったのだと思いま す。 ○吉田委員  はい。先生がおっしゃったように制度を変えるのか、あるいは支援を強化するのかと いうことになると思いますが、とりあえず支援の強化のほうには電話やファックスでは なくて、少なくともテレビ電話とか、遠隔医療的な手段が必要なのではないかと思うの です。 ○久座長  そうすれば、いまの法律下でもある程度可能だと。 ○奥野委員  いまの話の中で1つ、保健師の役割というのが気になっています。いま診療所の看護 師が地域住民の方を把握されて、これから予防の活動もされて云々とあったのですが、 実はそれは基本的には保健師の役割で、過去において沖縄の活動であるとか、高知県の 活動で、すごく地域に入られていろいろな活動をされたという、素晴らしい歴史がある と思うのです。どうも最近の保健師は、私のところだけかもしれませんが、地域から下 がって、例えばその地域を担当してその地域に入り込んで、そこの方々を全部把握して ということが非常に少なくなってきているのではないか。  つい先日、定年退職された看護師は、わずか2万少しの市ですが、ほとんどの地区と 住民の方をものすごくよく知っているわけです。ですから、地区地区のエリアを見るの は診療所の看護師かもしれないのですが、例えばもう少し大きな目で見る役割として、 保健師が現場に入り込むというのが最近どうも少なく、あるいは方法として引っ込んで いるような感じがしているので、医療資源の少ないへき地では、保健師がどんどん現場 に出ていただくことが必要ではないかということを感じました。  もう1つ研修についてですが、三重県でも県立の看護大学の先生方と協力して、へき 地の研修を行っているのですが、これも現場に行って研修を行うことによって、その現 場でのニーズが上がってくる、それから現場で何が問題になっているかが上がってくる ということがあります。これは非常に時間がかかって大変だと思うのですが、遠隔にあ るので、研修会をいくらやって「出てきてください」と言っても、出てこられないので す。ですから、やはり出前研修をして、その地域地域に合った研修を組み立てて、その 研修を沸かして、さらにいけば地域の看護職の方々がこういう研修をしたいのだという ところまで持っていって、それに対してこうして研修をしていくといった方向性が要る のではないかと感じました。 ○吉岡委員  私は保健師なのですが、看護師たちが保健師の役割としての予防の教育、その他をい ろいろされているという先ほどの発表を伺って不思議だったのが、その地域での保健師 の体制がどうなっているのかということです。町村などには何人も配置されていますの で、実際保健師のほうも地区担当など、いろいろ個別の対応をしていますし、私も20年 近く勤務していますが、大体ほとんどの住民のことは理解しているつもりです。ただ、 合併の関係などで、市の単位が大きくなると担当する部署も大きくなりますし、全体の 教育のレベルアップをすることで、個別の対応が多少少なくなる傾向もあると思いま す。今後としては、地域の保健所なり行政なりの保健師との連携を、看護師などともい ろいろ相談されるのがいいのかと思います。  医師の指示などですが、先ほどおっしゃっていた哲西支局の場合は、診療所で24時間 体制ということで、医師が不在のときでも患者からの電話を行政が受けて、それを医師 に連絡して、患者の家族と医師が直接話をして、そのあとの指示を看護師に伝えるとい う形で、医師が不在の対応もきちんとやっているつもりです。ですので、へき地でもあ る程度工夫したら、そういう対応ができるのではないかと思って聞いていました。いま の段階では、ただいろいろな所があるのだなという感想です。 ○久座長  へき地保健医療対策検討会では、あまり看護職の問題について議論をしたことがなか ったものですから、本日は野口先生からいろいろなことをお伺いいたしました。どうも ありがとうございました。  次の議題に移りますが、これまでの議論の整理ということで、事務局から説明してい ただけますか。 ○宮本指導課長補佐  資料2ですが、これは前回のご議論などを踏まえて若干加筆したもので、前回お出し したものとほぼ同等です。若干修正したところをご紹介すると、3頁の2の、それぞれ の立場からと今後の対応の考え方という所で、総論的に医療者と行政で連帯して責任を 負っているということと、住民の皆さんのほうも考えていただく必要はあるということ を、以下の文章からまとめた形ではありますが、明示しております。  4頁の都道府県の役割ですが、その後の国のところと併せて、国と都道府県とそれぞ れが責任を連帯して負っている、ということを明示しております。5頁の(6)の国の ところにも、同様の記述を付け加えております。  6頁ですが、へき地診療所への支援の中で、複数の医師の配置などの対応にも支援を 行っていくということ、補助要綱には人口要件を示しているわけですが、そういったも のだけではなく、地域の実情に合わせて柔軟な対応を行うということです。こちらは正 直に申し上げると現状でも対応している部分で、そういったところを明示してはどうか という形で修文しております。  7頁の2)のいちばん下の○ですが、先ほど紹介したように、遠隔医療の技術があっ ても片方側での相談に応じられる体制がないと、あまり有効に機能することはないとい うご発言もあり、そういうものも踏まえて今後相手先を確保していくようなことが必要 ではないか、ということを明示しております。  8頁のいちばん上の2つ目の○ですが、へき地医療拠点病院だけではなく、地域の医 療機関すべてがへき地診療に支援を行っているということを踏まえるべきであって、そ の力を最大限にすべきだというご発言がありましたので、ここも追加をしております。 主な修正は以上です。併せて、細かい修文も行っております。 ○久座長  何かご質問・ご意見はおありですか。 ○吉田委員  細かな解説をありがとうございました。特に7頁の(2)の中の2)の「情報通信技 術による診療支援」の○の4つ目は、いまおっしゃられたように遠隔医療等の相手先を 確保するということを入れていただき、本当にありがとうございました。  私がお伺いしたいのは、5頁の(6)国の上から2つ目の○ですが、「目的が明確化 されているへき地・離島保健等への財政支援、一定の成果を見たところであり、このよ うな支援は今後も引き続き重要」と書いています。非常に心強い文章なのですが、「目 的が明確化されている」というのは、具体的にどんなイメージなのでしょうか。例え ば、先ほどの遠隔医療なども含むのでしょうか。 ○宮本指導課長補佐  ここは、全体の概況の中での「三位一体改革に基づく地方公共団体の権限強化と国及 び地方公共団体における財政構造改革」という所で説明している内容を踏まえて、記述 しているものです。こういった動きの中で、そもそも補助事業として全体を行っていく べきかどうかということで、三位一体の改革の中では地方交付税との整理、国から地方 への税源の委譲、こういうことも併せて考えていくべきだとされているわけです。へき 地診療にかかわるものについては、これまでへき地・離島の保健医療対策として、目的 を明確化して行ってきたことの一定の有効性があるのではないかと。そういう考え方を 踏まえて、今後もそういった考え方を引き継いでいくべきではないかと、このようにま とめているものです。そういった背景の事情に対比して行った記述であるということで す。 ○吉田委員  そうすると、地財法の弾力的な運用もあり得るという考えなのでしょうか。 ○宮本指導課長補佐  具体的にはどういうことですか。 ○吉田委員  国と地方との財源の配分です。地方から国・国立の機関への援助、例えば遠隔医療な どもそうなのですが、そういったことも含んでいるのですか。 ○宮本指導課長補佐  後ほどまたご議論いただこうと思うのですが、もう1つの資料の「へき地医療に医師 を確保するための新たな方策の検討」の所に、おそらくご指摘の趣旨の内容も盛り込ん でおります。どちらかというと、いまご紹介した資料は現状ベースで書いており、現状 は大体こういった対策を行っている。それを少し改善すると、こういった感じになるの ではないか、というところでまとめております。後ほどご議論いただくこちらのほう は、もう少し遠距離を見据えて、すぐできなさそうなことも含めて書いているもので、 そちらのほうでご議論いただければと思います。 ○吉新委員  第9次の施策のへき地医療支援機構というのは、非常に有効だったと思うのです。 ○久座長  それも入っているわけですね。いま吉田委員がおっしゃったことです。 ○吉新委員  この数年のことですが、中核病院のドクターが非常に不足している。へき地の支援を するよりも自分の病院が怪しい、というような話があるのです。四国では、担当専任官 お一人で、代診などにほとんど毎日のように日が取られて休めないということがあっ て、どうもへき地医療拠点病院群の力が非常に衰えているのではないか。専任官は一人 で悩みを抱えて、不眠不休でへき地の代診等で頑張っているという現実があります。専 任官が調整すべき、派遣できる医師があまりにも少なすぎるということで、これまで我 々は公的な医師ばかりを派遣の要員として考えてきたわけですが、できれば拠点病院以 外にも、例えば民間病院で「年に少しだったら私が行ってもいい」などといった、ボラ ンティア的な医師にもプールに入っていただいて、専任官が使えるカードといいます か、頼りにすべき医師として登録しておくといった仕組みもあってもいいのではないか と思うのです。  いままでへき地というと、どうしても身分を県立病院や日赤、済生会といった職員を 中心に考えていたのですが、もう少し幅広くできれば、専任官の仕事というか、支援機 構そのものが広く認識されて、活動も活発になるのではないかと思うのですけれども。 ○久座長  その問題は前の委員会でも奥野委員から指摘されましたが、次の議題の「へき地医療 における医師を確保するための新たな方策」の所で、また議論していただきたいと思い ます。ほかによろしいでしょうか。  次の議題に移ります。「へき地医療に医師を確保するための新たな方策」ということ で、事務局から説明をお願いします。 ○宮本指導課長補佐  先ほどご紹介させていただいたとおり、これまでのへき地保健医療対策の中心は、へ き地診療所の確保、それからへき地診療所に勤務される医師の確保とその支援、という ことを中心に行ってきたものと思っております。私どもも一定の成果を見たものと考え ているわけですが、一方で現在さまざまな所から課題であると言われているのは、それ を支援すべきそれぞれの地域における中核的な医療機関における医師、もう少し幅広く 医療の確保ということが問われているのかと思います。それは総合診療的な役割を果た す医師という部分の意味合い、またいくつかの診療科において、その確保が地域におい て非常に問われているというところも含んでおりますので、さまざまな内容がその中に 合わせて問われているものと思います。  資料3は、さまざまに議論されている中で、さまざまな方面からそういうことを考え てはどうかと言われていることを列挙しているもので、この中には性格的にすぐできそ うなものもあれば、調整が困難であることも予想されているものも含まれています。是 非皆様にそういった広い観点からのご議論をいただいて、今後の対応の方向性をつくっ ていきたいと思っております。内容を順次、紹介します。  1は、そもそもの医師の確保というところで、地元医師の医師育成を促進する方策を どのように考えるかということです。現在も一部行われておりますが、医学部における 地域枠の設定、奨学金制度の導入ということを考えてはどうかというものです。  2は、へき地に勤務する医師の確保・紹介のための持続的な、持続可能なシステムづ くりということで、紹介をしていく、紹介された方をサポートしていく、そういったシ ステムづくりをどのように考えるかというものです。  3も一部の自治体などで既に行われておりますが、へき地に勤務する医師の医育機関 ・医療機関からの派遣について、例えばこれまで1つ1つの医局に対してお願いをして いって、そこから派遣を受けるということから、公正で公明な方策、例えば医育機関全 体の医師紹介の窓口の一本化を行って、地域全体の状況を見据えた上で、行政も噛んだ 形で最大の地域の医療機能を向上させる形での派遣を行っていくことが考えられるかと 思います。  4は、医師に対して、へき地勤務を動機づける方策をどのように考えるかということ で、典型的には医療機関側が行う報酬という点での動機づけもあるかと思うのですが、 (1)はそのほかの勤務条件として、へき地勤務が終わったあとの就職とか、ある意味で 昇進の条件のようなものを考慮して行っていくことが可能かどうかというものです。 (2)は、へき地診療所などにおいて行われている、幅広い診療科の内容を含む、いわゆ る総合診療と言われているものを1つの専門性と認識して、これらを一定の制度、一種 の資格制度というか、専門医制度のようなものとして評価する方法を考えてはどうか。 そういったものが医師に対して動機づけになるのではないかというものです。(3)は、 最初にお話したように、専門医療のへき地・地域における確保が課題になっている部分 もありますので、そういった専門医師の方にも積極的にへき地勤務に行っていただくこ とを促進するための方法として、学会など、専門医認定を行っている機関の協力も得 て、専門家としての専門医の認定においても、へき地勤務を行ったことで一定の評価を 行っていただけないかどうかといったものです。  5は医師の社会的責務をどのように考えるかということで、これは強制をしていくこ とはなかなか難しいことですが、へき地医療、そのほかの救急医療なども含むのでしょ うか。公益性の高い医療に従事することを医師の責務であるというように、何らかの法 律上の理念規定のような形で明示することができないか。そういうものが役に立つかど うかということです。  6は、医療機関のへき地医療実践・支援についての動機づけや誘導の方法をどのよう に考えるか。4は医師に対するインセンティブでしたが、6は医療機関に対するインセ ンティブをどのように考えるかという点です。(1)は、先ほどもご紹介がありましたよ うに、財政的支援です。独立行政法人ですから、国立大学、国立病院機構などに対する 地方公共団体からの補助は現在のところ認められていないわけですが、これらを何らか の制度と組み合わせて対応することが有効かどうかというものです。(2)ですが、これ も先ほどご紹介いただいたように、へき地医療は公立病院、公的な病院が中核になって 行われていますので、そういったものに民間医療機関の活力を導入することができない かという視点があります。そういうものの1例として、へき地に診療所の開設などを行 い、持続して支援する医療法人に対する医療計画上の配慮があります。もう少し具体的 に言うと、例えば病床が過剰になっていて、それ以上増床が認められないような地域の 病院においても、へき地の診療を支援する医療機関、医療法人に対しては特例を認めて いくという方法ということです。そのほかにも、民間医療機関に活躍をいただく方法は 考えられるのかと思います。(3)ですが、これも前々回の議論にもあったかと思います。 地域医療支援病院といった地域の医療を支援する形での評価を行う制度を行っているわ けですが、その認定評価を行っていく項目の中に、へき地医療支援を行っていくことを 組み入れてはどうかというものです。このほかにも、特定機能病院など、理論上いろい ろな制度と組み合わせていくことが考えられるというものです。  7は、へき地等における人員配置標準における特例をどのように考えるかということ で、これも医師が直ちに増えるという性格のものではないわけですが、さまざまな立場 の方からご議論いただいている、へき地等における医療機関の医師の配置標準をどのよ うに考えるかというものです。  8は、へき地診療に従事する医師の負担を軽減する方策をどのように考えるかという ことで、医師の業務の内容の見直しがあります。1は、例えば麻酔科の医師ですと、麻 酔を直接かける業務だけではなく、機材の準備など、現在さまざまな関連する業務を行 っているところがあるというご意見があります。そういったものを他の職種の方、ほか の診療に従事されている医師の方などと分けることによって、働きやすい環境をつくる ことができるのではないかというものです。(2)は、病院、一部の不足している産婦人 科、小児科といった診療科目の再編成を地域の中で行うことによって、地域としては高 度な医療を確保しつつ、従事している医師にとっても24時間縛り付けられることがない という形での負担の軽減が図れるのではないかといったものです。  9は、女性医師が働きやすい環境整備ということで、育児をしながらの医療従事の支 援、育児が終わったあとの職場復帰の支援といったものが考えられるのではないかとい うものです。  10は、へき地診療に対する自衛隊医官の協力をどのように考えるかということで、現 在さまざまな所で研修をされている自衛隊医官の方々について、地域診療の中での活躍 をお願いできないかどうかといった視点です。  非常に多岐にわたっていますが、いちばん最初に申し上げたように、性格としてはそ ういったアイディアがさまざまな所から出されていて、さまざまに考えていただくこと ができるのではないかということで、議論の材料として提出したものです。 ○久座長  いま事務局から説明がありましたが、非常に多岐にわたります。このような問題を議 論する機会が今後もあると思いますので、あまり議論が行ったり来たりするよりは順番 に議論していって、時間が来たらそこで終わりにして次回に延ばしたほうが良いと思い ます。最初の「地元出身の医師育成を促進する方策」ということで、2つの案が出てい ますが、一部は既に県立の医科大学などで始められていますし、自治医大は初めからそ ういう制度で始まったわけです。この事についてどなたか意見おありでしょうか。文部 科学省のほうでも、医学教育のあり方の中でへき地、特に地域に従事する医師の育成に ついて、大学としてどういう方策をとるかということを議論されることになっています ので、この事は共通の課題だと思います。1の「医学部における地域枠の設定」は、い まいくつぐらいの医科大学で始まっているのですか。私の知っている範囲は、福島医大 ですが、あとどこかありましたか。 ○吉岡委員  島根大です。 ○久座長  札幌医大は始めてなかったでしょうか。 ○事務局  全部で6大学です。 ○久座長  6大学ですか。 ○事務局  そうです。文部科学省から。 ○文部科学省医学教育課  いまお話のありました医学部の入学定員に地元出身者に枠を設けて行っている大学 は、平成17年度で7大学の予定です。平成18年度以降も、いま検討中というのは1桁く らいで、検討が済めばその数も少し増えていくのかなと思っております。 ○樋口委員  岩手県の場合地元の大学が私立なのです。ですから、地元枠をやろうとしても入学金 という問題がありまして、それで一律にならないということで、既に岩手県が毎年5人 ずつ6年間、10何億の予算をつくりまして、いま5年目に入りました。つまり、入学金 とか、そういうものを保証してあげて県が地元枠をつくってあげたという感じです。そ ういうふうにしますと、その辺の補助をしなければならないのではないか。国立大学病 院とは別な援助といいますか、奨励策が必要なのかなと思っております。 ○久座長  県立の場合、地元枠を作ることには問題がないと思います。国立大学も、今度独立行 政法人になったから良いのでしょうね。本来ですと、国立だと入学試験のときに地域に よる差をつけると問題になると思いますが、独立行政法人になったから可能になったの か、それとももともと可能だったわけでしょうか。 ○文部科学省医学教育課  基本的には、これまでも地域枠をつくるということは、文部科学省として認めていな かったということはありません。確かに一部の先生方からは、受験機会の均等から考え ていかがなものか、というご意見もありましたが、いろいろお聞きいたしますと、枠を 設けてしまうと学生の質が少し下がるという懸念があり、なかなか進んでいなかったと いうことがあるようです。ただ、いま医師が不足ということですので、特に地方の大学 を中心として、いまこういった動きが進んできているということです。 ○土屋委員  今年度に入って1つ2つ増える状況のようですが、実際には、その枠といいましても 数人の枠ですよね。 ○久座長  そうです。多くて10人ぐらいです。 ○土屋委員  札幌医大だけ20人推薦ということになっているようですが、推薦枠内の中の数人とい う。5人とか2人とかということになっております。根本的に考えてみますと、東北の ほうのある大学、これはホームページに出ておりますのでいいかと思いますが、その大 学所在地の県の出身者が大体25%ぐらいです。東北全体になりますと6割ぐらいになり ます。ですから、その人たちがその大学を卒業して地元に残ってくれたらと。いま東北 と北海道でいろいろな問題が起こっていますが、そのようなことにはならないだろうと 思うのです。  実は、この人たちを含めて若い医師は全員どうも都会志向なのです。地方のある大学 の医学部長や病院長に伺いますと、将来的には、都会に行った若いドクターはまず戻っ て来ないのではないかと大変懸念しておられます。こういう形で枠を設けて、地元の枠 ということで縛りつけた格好にしても、若い将来あるドクターたちが、仲間たちと比べ て自分だけが地方にとり残されるような感覚を持つとすると、折角の妙案も根づかない のではないかと危惧しています。 ○吉新委員  自治医大が出来る昭和47年以前にも、各都道府県に奨学金制度があったと思うので す。数人がその奨学金をもらって、大学を出て義務を果たすということだったのです が、当時の義務の履行率というか、義務完遂率は、多分1割にも満たなかった、県によ っては全滅と。そういう仕組みが今回また誕生しますが、本当に有効かどうか、前回と 同じことになるのではないかという感じもしています。  自治医大の一期生として言わせていただきますと、我々のときも、例えば長崎県の離 島医療保健組合とか、5〜6人、北海道や、兵庫も山形もやっていましたが、義務の完 遂率という意味では必ずしもそれほどいい成績ではなかったと思うのです。自治医大が うまくいったのは全寮制にある、とほかの所から言われた。あと、組織と全員がへき地 の義務を背負っているので「仲間がたくさんいるのだ」、「同じ境遇の連中がいるのだ 」ということで6年間教育されたのは非常に良いことで、これが成功したという指摘が あります。  私は前々回のときに自治医大をもう1校と言いましたが、自治医大をもう1校つくる のは非常に有効ではないかと。それと、自治医大には3人取ってくれという都道府県が いまでも30以上あり、ちょうど1つの医科大学分になるわけです。いま定員100人で、 義務の完遂率は99.7ぐらいだと思うのです。そういう意味では、もう一つ自治医大をつ くってもいいのではないかなと。これから奨学金制度と地域枠・推薦枠がどういう動向 になるか分かりませんが、それらがあまり有効でなかった場合の対策を考えておくべき ではないかと思います。 ○樋口委員  自治医大はきちんと義務を果たしています。私の見るところではそのまま地域に残る 方が結構おられます。自治医大そのものが奨学生みたいなものですから、あまり悲観的 に考えなくてもいいのではないかと。推薦制度が地元枠みたいなものですから、それが まずいということはあまり考えなくてもいいのではないか。そういう場をなるべく多 く、広くしたほうがいいのではないかと思います。 ○奥野委員  若いときにへき地を経験するのは大事なことはたしかです。アメリカのへき地の医療 対策を行うときに、ある大学がへき地へ行く医師を選ぶには、へき地からの出身者がい いというお話がありました。それを裏づける資料をアメリカ医師会の名簿を利用して、 最終的に医師がどういう所に腰を落ち着けたかという調査をしたら、自分の出身地と同 じような人口規模の所に落ち着く結果が得られたので、それを基にして田舎から選んだ というのがあります。そのような調査はなかなか難しいとは思いますが自治医科大学で やってみようという気はしています。  先ほどの県のほうで言いますと、大都市、50万、60万の所から来た方は、また出身地 に戻って、県の中でも中心部にとどまって、なかなか行かないという部分もあるという ので、なかなか手がつけられないと思うのです。1つの方法として、そういうこともや ってみたらどうかなということもあります。 ○高久座長  土屋委員が言われたことに関係するのですが、自治医大の場合は全員が行くという事 で皆さんが納得しています。それが5%か10%になりますと、あとの90%や95%の学生 は、自分が行きたい所、やりたい専門を選ぶとなると、やはり迷いがおきるのではない かと思います。  奥野委員のお話ですが、アメリカの場合一部の大学で行っていますね。例えばインデ ィアン出身の人や恵まれない地域の人で、自分の家族や周りの者みんなのために医師と なって働きたいと考えている学生が手を挙げると。もちろん成績も関係しますが、そう いう学生を優先的に地元枠として入れている。県の地元枠ということで、単にその県の 出身者というのではなく、本当に周りの人のために自分は医師になって働くのだ、とい う強い意欲を持った人を工夫して選ばないと、地元枠という名前だけでは土屋委員が言 われたように、かなり難しいのではないか。それなりの工夫をして努力すれば、地元枠 の意味が出てくるのではないかと思います。 ○冨澤委員  私もこの地域枠というか、地元の方を優先していただく制度が非常にいいのではない かと思います。この地域枠というか地元の方を優先させる方策というか、具体的にどう すればできるのかを考えておかなければいけないと思います。その辺、具体的にどうい う方策をお考えなのか、教えていただければと思います。 ○久座長  何かわかりますか。文科省のほうで情報はありますか。 ○文部科学省医学教育課  優先させるというか、地元出身の方の入学の枠を別に設けるということで、そういう 意味での優先だけでございます。教育方法で何か特別にということではありません。 ○久座長  そのようなことではないですね。 ○文部科学省医学教育課  はい。 ○久座長  入学のときのですね。 ○文部科学省医学教育課  そうです。 ○久座長  私が申し上げたのは、単に県の出身者、福島県なら福島県の出身者ということだけで はなく、福島県のどこから手を挙げている学生かを本当は考えたほうが良いのではない かということです。 ○冨澤委員  国立大学法人といってもある程度交付金で縛られているところがありますし、国のほ うから何らかの指示なりがいかないと、大学が「はい」とは。例えば、私がいる宮城県 の東北大学が、お金もない、何もないのに「はい」と手を挙げることもできない。かと 言って地財法の関係があるので県から東北大学にお金を差し上げて、こういうことをす る、というのもなかなか難しいものがある。どういうふうにすればこれが進むのか、そ の辺のところを教えていただきたいのです。この理念はいいのですが、具体的なシステ ムを考えていただかないと、ここはなかなか難しいのではないかと思います。 ○久座長  そうですね。明日の文部科学省での会議で、吉新委員も委員になっておられますの で、また議論をしていただきたいと思います。  次は、「へき地に勤務する医師の確保・紹介のための持続的なシステムづくり」です が、2と3は共通のテーマだと思いますので、2並びに3について、どなたか。 ○土屋委員  いま座長が言われた2、3だけでなく、4、10に関係するのですが、お許しいただい て。「医師を確保するための新たな方策」については、ご案内のように医師の需給に関 する検討会で検討されてきております。その中で長期的な推計をして、どのような対策 を講じるかということと、地域の医療がいま危ない、崩壊しつつあるという話が私ども の耳にどんどん入ってまいりますが、この喫緊の課題を解決するにはどうしたらいいの か、ということと分けて検討する必要があります。へき地・離島の医療をいかに確保す るかということは、まずは、へき地医療に従事する医師をいかに確保するかということ です。しかし、これはへき地・離島に限ったことではなく、地域の医療も、いままさに そういう状況なのです。医療過疎の地域の中で、その一端としてへき地・離島の対策を 考えなければいけないのではないかと思います。  いまの医療提供体制の中で、へき地・離島の医師確保は非常に厳しいということは、 医療提供体制が、いまや現状に即していないといいますか、根本的に見直さなければい けないということで、今いろいろな検討会がもたれているわけです。そこで日本医師会 として、地域の医師をいかに確保するかについての具体的な提案を申し上げたいと思い ます。  地域偏在に対する対策という点で3つの提案をしたいと思います。1つは、自衛隊医 官の協力をどのように得るか。自衛隊病院の医師をへき地・離島へ派遣することです。 2番目としては、臨床研修2年目の医師にへき地・離島勤務を義務化する。3番目とし て、全国規模の医師紹介派遣システムを構築する。これを補足しますと、自衛隊病院の 関係者等から地域医療への参画を求められています。それは地域医療についての研修を したいということがその趣旨であります。突然いままでクローズの病院がオープン化さ れて、現状の地域医療システムそのものの調和を乱すことがあってはいけませんので、 そう簡単にできないことであろうと思いますが、へき地・離島へ交代して勤務すること は、地域医療を研修するのに、いちばんいい方策ではないかと考えるわけです。自衛隊 法によりますと国民保護と派遣というようなことも謳っており、これは何も災害時、あ るいは攻撃を受けたときに守るというだけではなく、いまや地域医療が危機的状態にあ るので、国として自衛官の先生方にこれに当たってもらう。医師がちょっと足らないか ら、その穴を塞いでくれというレベルの話ではなく、高い使命感と自負を持って、任務 を遂行していただいたらいかがかということです。  臨床研修ですが、これは2年目から小児科、産婦人科、精神科、あるいは地域保健医 療にそれぞれ3カ月の研修を行うことができるとなっております。この中に「へき地・ 離島診療所、中小病院・診療所云々」とありますが、まさに、これにぴったり合うわけ です。若いうちにいろいろなことを見聞きして経験することは大切で、実際には、へき 地というその言葉で、若い人たちが尻込みするといけませんので、これを義務化するこ とが必要ではないか。そうすることにより、広く日本の医療がどういう状況にあるのか を理解してもらうということがこれから大事であろうと。もっと申しますと、へき地・ 離島の医療がどういう状況であるかを知るということは、日本国民であるならばどこに 住んでいようと、やはり同じレベルの医療を受けることができなければならないという 憲法に保障されていることを体現できる良い機会になることでしょう。  もう1つは、持続的な紹介システム、あるいは医師紹介の窓口です。実は、全国21の 都道府県医師会、地区の医師会が、いわゆるドクターバンクを設置しています。この主 たる目的は会員の福祉向上に役立たせようということです。これを全国的に拡大し地域 医療対策にも資することができるようにする。これは無料の紹介システムですが単独で 動いており、日本医師会としては、ご希望があればホームページでご紹介いたしており ます。これをもう少し大きい網にして、本格的な紹介派遣システムを構築するのがいい のではないかと考えております。  以上3点について、私どもは緊急対策の具体的な提案として申し上げておきます。 ○久座長  どうもありがとうございました。ほかにどなたかいらっしゃいますか。樋口委員、ど うぞ。 ○樋口委員  ドクターの紹介システムですが、全国自治体病院協議会と国診協が一緒になり、この 4月から、とりあえず全国自治体病院の求人・求職センターという無料相談所として厚 生労働省のご指導をいただき始まり、1カ月ぐらいで100いくつかの病院から五百数十人 の求人が出ております。一方では、医師から百数十人の求職があります。マッチングす るかどうかは分かりませんが、求職百数十人のうち40人ぐらいが、現在2年目の研修を やっている人間です。こういったことを考えますと、この新しい臨床研修制度は医師の 移動を促し、今まで1つの大学に縛られるといったことがなくなってきています。  先ほどの日本医師会のドクターバンクもそうですが、大抵は恵まれないところから恵 まれた都会に就職を望むのではないかという懸念があります。その辺をどうしたらいい のか、これは相当考えなければならないと思います。喫緊の課題としてすぐできること は、都会の大病院は全部へき地診療の応援を出しなさい、これを義務とすると。私の病 院は毎日6人の医師がいろいろな所、特殊診療科や応援診療、あるいは留守番、当直な どどこかに行っております。それに対する補助金はほとんど付いていませんが、それが 地域医療の原則だという考えであります。  昔は、そんな地方に、自分は何々科の専門なのに行く必要がないという意識でした が、いまは国民の医療を守るという意識がだんだん強くなってきました。そうします と、そのような病院に対して、きちんとした評価をし奨励する作戦が必要ではないか。 例えば、現在地域医療支援病院があります。これはある一定の加算、我々ぐらいの病院 ですと年間1億数千万の加算が付いてしまいます。医師がたくさんいる都会だと成り立 つ制度です。紹介率があって、周りに紹介する医師が居なければできません。それと逆 紹介もたくさんしなければならない。逆紹介する先もなければ駄目だと。そうすると、 いまの地域医療支援病院の加算は何のことですか、どのような意味を持たせているので すか。ですから、その制度の中に必ず、何人以上の医師がいる所には3人の医師を、い わゆるへき地に出しなさいということが必要ではないか。それが今までできなかったわ けです。  最終的には、今まで需給の問題で医師はもう過剰と言われても、どんどん生まれてき たのに、ずっと地方のへき地の医師は満足されていないことを考えますと、いろいろな 制度があると思いますが、究極は、医師という者は、一人前になってから3年間ぐらい はへき地勤務を義務とするという方向にするしかないと考えております。いろいろな方 策は全部いままでやってこられました。  医師になるのにはあまりにも金がかかりすぎます。そうではなくて国が金を出す、そ の代わりそういう義務を持たせる方策に転換するしか解決策はないと、やや悲観的に考 えている部分があります。 ○久座長  吉新委員、いまの地域医療支援病院と、へき地医療支援病院とは別ですね。 ○吉新委員  全く別です。 ○久座長  ほかにどなたかありますか。 ○吉新委員  私ども地域医療振興協会も無料の職業紹介事業をやっております。去年は医師を出し てくれと150団体からありました。数百人の医師を派遣しろということです。場合によ っては自治体病院が、「病院ごと運営を任せるからお前ら来てくれないか」というのも あります。実際にこの正月、1月、2月、3月は沖縄の島の病院、ここはドクター定数 6名ですが、事実上1名しかいなくなり、結局東京から2名ずつ交代で行ってもらった のです。ついこの間、稲嶺知事から感謝状がきましたが、感謝状はいいのですけれど も、ヘリコプターで夜間、那覇から久米島まで飛んだり、逆に来たりして相当勤務は厳 しかったと聞いています。  何と言いますか、自治体としてのプランもなければ手持ちの駒もないという状態があ って、やはり県内に行政などが、相当自由度を手に入れて医師確保対策をやる必要があ ると思います。手法にはいろいろなものがあると思うのです。その地域によって全く違 うと思いますので。どの地方がオーライということではないのですが、県はどちらかと 言うと医療の監視等でチェックする機関だったわけですが、そういう意味でリソースを 集めるのは相当下手だと思うのです。それに支援をしてくれれば地域医療計画にも病床 規制のベッドを差し上げるとか、そういったことをしないと、一生懸命支援する病院 も、かつかつのベッド数で自由度を減らされて、それで人数を集めて支援して、支援も 安定しないで、ある程度期間が終わると、医師が揃ったのでもう結構ですというような ことになると、今度は医師を十分確保していて、それを出そうという準備をしていた場 合にも、不連続になってしまい非常に困るというようなことがあります。やはり安定し た、少しリザーバーがあるような形で、プールというのが正しいのかどうかわかりませ んが、地域的には今まで県単位だったのですが、それを超えたようなへき地支援機能を 持った病院グループや医師プールが必要かなと思います。  協会としては、研修医の2年目の方が数カ月、へき地勤務をするのはいいと思いま す。我々もいま20名ほど2年目の医師を抱えているのですが、まだヒヨコと言ったら何 ですが、やはり指導医がいないといけない場合が多く、複数の所に1名足す程度だとい うような印象を持っており、1人派遣、1人勤務はほど遠いと思っております。研修医 だけではへき地は無理だと考えます。 ○久座長  研修2年目のコアがたくさんあります。私個人的にはそのコアが多すぎると思ってい ます。厚労省の検討会で、一部の委員は、コア全部ではなくて、2つか3つを自分の将 来を考えて選ぶことを主張されたようですが、最終的にコアが、内科、外科はもちろん ですが、救急から精神科、小児科、産科、地域保健医療と多くなった。各研修は3カ月 ぐらい受けないと。1カ月では何もわからないうちに帰ってくる。いまの研修制度をい ずれ見直すことになっていますので、そのときに見直す必要があるのではないかと思い ます。  その中で、地域保健医療の研修は、将来どういう専門に行くにしても必要だと思いま す。例を引いて悪いですが、産科もコアになっていますが、現在は産婦人科の専門医で ないと怖くてお産の医療はできない。将来全く行わないことが、コアになっている事に は、問題がある。その機会を地域保健医療に回す必要があるのではないかと思います。  防衛医官の話が土屋委員からお話がありました。私はたまたま去年、防衛医学会で話 をしましたが、そのときに相談に来られた担当の方のお話ですと、若い防衛医官自身が 焦りを感じておられる。というのは、例えば基地のほうに行きますと、対象となるのは 健康な防衛官だけです。いちばん病気になりにくい人を対象にすると、ドクターとして の技術が落ちていくのではないかというジレンマです。一方自治医大の卒業生は、へき 地に行きますと、対象になる人がで生活習慣病ばかりだという悩みはあるのですが、住 民に頼りにされているという満足感があります。自衛隊の基地の診療所を地元の人達に 開放していただく。自衛隊の診療所を開放して、例えば同じ地域に自治医大の卒業生が いる診療所があれば、そこと共同して地域医療を展開してくれれば、それなりのやりが いがあるし、また勉強になるのではないかという感想を持ちました。お役所同士の話で すから、いろいろあろうと思いますが。  ほかにどなたか、ご意見はありますでしょうか。 ○樋口委員  ただいま座長のコアが多すぎるというお話、これはほかの大学の学長さんたちがおっ しゃっているのでしょう。座長はそうではないですよね。  自治医科大学の学生が、私のところで研修しますと、必ず産婦人科へ回すのですよ。 1週間も回っていると、大体お産に10人ぐらい立ち会うことができます。3カ月もいる と、急に産まれることもあります。お産を見たことがないという医師では困るわけで す。ですから、期間が短くても臍の緒を切ったことがあるかどうかで患者の安心が違う わけです。ですから、座長の言葉でなくて、ほかの大学の学長さんが言っている言葉と 受けとめたいと思います。 ○久座長  そのように受けとめていただければ。どうもありがとうございました。 ○冨澤委員  委員の方が言われているとおり私も全く同じです。臨床研修のときに3カ月ぐらい見 ていただくのは重要かと思います。特にへき地と言われている所ほどきれいになってい る病院も結構ありますので、そういう所も見ていただければ少し変わるのではないかと 思います。  あと、持続的なシステムというのでしょうか、例えば小児科が1人のところで、自分 が耐えきれなくなってやめてしまうとか。麻酔科もチームでやりますので、1人で心臓 ・胸部外科、胸部の手術をする場合、何件も1人でこなすのが難しいのでやめてしまう ところがあります。そういうところの医師の確保というか、医師をそもそも増やすとい うのでしょうか、それをしていかないと。何かメリットをつくって、そういうところの 専門をする医師を増やしていかないと、全体のパイが少ないところで取り合っている状 態ですので、そこを少し考えていただければ有難いと思います。 ○奥野委員  へき地の立場から2つばかりお話をしたいと思います。紹介をされる側としますと、 医師がいないのにどういうことだというかもしれませんが、クオリティー・コントロー ルといいますか。へき地というのは、小さな地区の医師が1人来ますと、住民と医師は お互い離れられない関係で、住民はいろいろな医師からその人を選ぶことはできないわ けです。紹介というシステムをつくるのであれば、来る医師のクオリティー・コントロ ールをしてほしい。それはその地域の方が言うように、何でもできて、人格的にも優れ ているということではなく、絶対ここにいては困るような、最低でもそういう医師が来 ないようなシステムといいますか、そこでザルで拾い上げられるような、あるいはどこ かで、それがちゃんとわかるような仕組み、仕組みの中の一部として取り入れていただ きたいということです。  受けるほうがちゃんとその医師を見て判断すればいいではないかということもありま すが、やはり田舎の、例えば行政の方ですと、来てほしいという一心でありますし、そ れから過去においても医師を選択する経験などは全くありませんので、そういうことに 陥って数年間苦しむこともあります。そういうことも中に含んでいただきたいというこ とです。  もう1つは、地方から見ていますと、地方の大学が医局制度といいますか、医師派遣 制度のコントロールをほとんど失いかけていて、ある科では派遣する制度自体をやめた という所があります。そうしますと医局は全くフリーになり医局自体がコントロールを 失うというか、県下のある科の派遣は全くしなくなった。つまり、個人個人で選ぶ時代 がきたということと、マッチングで人気のある病院にどんどん研修医が集中するわけで す。それで3年目に地元の大学に戻るかと見ていたら、そうではなく、地域の病院が囲 い込みを始めている。そうしますと、そこが今度は医師の派遣をコントロールする、い わゆるミニ医局化といいますか、そのような力をもってくる可能性がある。しかも、そ れが市民病院であるとか、そういうレベルですと今度は他市とか、小さな市町村に、そ の地域から行くという仕組みがなかなか難しくなったりするといういろいろな意味があ ります。  医育機関、これは大学のことだと思いますが、そうではなくて、あまたある、これか ら一気にたくさん出てくる2年目以降、あるいはシニアが終わった以降の医師のコント ロールをし始める地方の病院、特に研修医がたくさん集まって、将来も囲い込みをする であろう病院に対する公明な方策といいますか、相手が多数ですので、それをうまくコ ントロールするかは難しいと思うのですが、そういう方策も要るのではないかと思いま す。 ○久座長  3番目に、医育機関・医療機関と挙げられていますから、当然そういうことは問題に なると思います。この前に奥野委員が言われた地域中核病院には研修医も行かないです ね。 ○奥野委員  行かないです。 ○久座長  そこのほうがかなり深刻な問題になるのではないでしょうか。研修医が行く病院は、 あまり問題にならない。 ○奥野委員  そこは大丈夫です。 ○久座長  その施設が医師をプールして、中核病院を応援してくれれば良いかもしれませんね。 それにはなかなか時間がかかりますね。  ほかにどなたかございますか。この中のどの問題でも結構です。  いまのところ持続的なシステムづくりということで、ドクターバンクの話は出ました が、それ以外に何かうまい方法はありますでしょうか。医師会、自治体病院協議会、あ るいは吉新委員の、社団なのでバンクというか、ドクタープールをつくっておられる。 たしか長崎県でも離島保健医療組合が医師を公募して、何人か応募があったという話が 前にありましたですね。  どなたかご意見おありでしょうか。 ○土屋委員  全国的ネットワークが必要だと思います。私が知っている限りでも、いまリタイアさ れて元気な医師は、相当プライマリー・ケアに造詣の深い、自信のある医師がほとんど です。したがって、まだ俺は頑張れるからへき地・離島に行って、自分の最後の仕事と して務めを果たしたい、というドクターは都会に大勢いらっしゃるのです。しかし、こ の医師らが「じゃあどうしたらいいか」というと、実情は不案内いうことです。大学の 病院長会議でもこれは提言されていることでもありますし、自治体病院でもそういうこ とだというお話です。吉新委員のお話のネットワーク化も含めて、いずれは一本化して それぞれアクセスできる格好にすれば相当機能するのではないでしょうか。もちろん、 国にはネットワーク化に対する積極的な支援をやっていただかなければいけないと思い ます。そうなれば、これは相当有効ではないかという希望を持っています。 ○久座長  その場合に数カ月でも教育というか、へき地医療のためのトレーニングを受けられて からという事になると思います。 ○鈴川委員  いまのお話で、たしかに開業医の医師はプライマリー・ケアは非常にお得意だと思い ますが、逆に大学にずっと勤めてきてリタイアしてしまうと、必ずしもそうではないと いうところも多いかと思います。地域医療と一部違うへき地医療のミニマム・リクワイ アメントというのでしょうか、こういうものは必要であるというのをもう一度きちんと 出して、それで自分の技量と見比べて、何が必要であると。そうしたら、それを何カ月 かどこかで訓練をしてからそういう所へ行くようなシステムが、きちんとできるといい かなと思います。 ○久座長  その事は第10次の対策検討会の1つのテーマになりますね。 ○吉新委員  昨年私どもの病院でお二人、65歳と70歳になる方、大学の教授と、県立病院の副院長 でしたがお一人は沖縄に、もう一人は青森のへき地で働いておられます。やはり1つは 研修です。いろいろな研修科を回られるということと、もう1つは人脈といいますか、 何かあったときにいつでも応援に来ますよということが非常に大事だと思います。 ○久座長  サポート体制ですね。 ○吉新委員  そうです。あと、かなり長期の休暇を取りたいと言っておられるので、例えば夏休み 1カ月は。 ○久座長  交代制ですね。 ○吉新委員  そうです。自由に海外でも行って来てくださいなんていう話もしております。そうい うことがだんだん知られてくれば、どんどん参加していただけるのではないかと思いま す。 ○久座長  大学の先生をずっとやっておられる方にはなかなか難しくて、老健施設の医師になっ ておられる方多いと思います。 ○奥野委員  私も既存のマンパワーの利用を考えました。三重県の南にあります病院が医師確保で 悩んでおり、そこの医師確保対策の委員会を任せられております。そのときに、そこの 病院のOBやOG、過去に勤務された医師が260人ぐらい見えて、その方にアンケート をしたのです。うち120人ぐらい返ってきました。それは簡単なアンケートで、生活は 楽しかったですか、仕事は楽しかったですかとか。その中に「もう一度勤務したいこと はありますか」を調べてみましたら、きれいに相関していまして、生活が楽しかった、 仕事が楽しかったという人は、また勤務したいと答えられております。その中には吉新 委員が言われた条件もありました。  もう1つは、期間を区切っていろいろな勤務体系ができないかと。例えば1週間のう ち半分勤務して半分休み、その代わり給料は半分とか。1年のうち半分勤務して半分休 みとか。OBの方が心配されているのは、子供の教育は終わっているが自分の体力をす ごく心配されていることです。それに配慮したいろいろな勤務体系が工夫できないか と。  公的なところですからそう言っても、既存の体制に組み込むことはできないのでそれ は無理です、という返事ばかりなのですが、そうではなくて新しい考え方、給料は半分 で、勤務も半分とか、そういうものをいっぱい組み合わせればOBの方々も気楽に、過 去に勤務された所に来られて、過去の思い出もそのまま、いい形で過ごされてというこ ともありますので、休暇も勉強も大事だと思いますが、勤務もいろいろな形でできると いうことも考えていただければと思います。 ○樋口委員  いまのお話は紹介・斡旋業のような話ですが、パターンは3つあると思うのです。1 つは、それを商売にしている民間の紹介業、年商10億円ぐらい上げる会社もあるそうで す。日本医師会は、お互いの顔を利かせてという、おそらく互助会みたいな感じだと思 います。全国自治体病院協議会の動機は、いわゆる医師不足の所、過疎地、へき地、そ ういう所の医師をどう確保するかというのが根底にあるのです。ですから変な形には進 まない。その辺を見極めて指導なり政策なりを立てる必要があるのではないかと思いま す。 ○久座長  はい、わかりました。ほかにどなたか、前野委員、どうぞ。 ○前野委員  お話を伺い問題点の多様性を感じるのですが、論議がドクターの頭数をどう確保する かという所にいってしまっているように思います。そうせざるを得ない現状かもしれま せんが。片方で、へき地・離島も含めて地域が魅力あるものであるならば率先して行く 形になる、そのつくりを根本的に考えていかないと、いくら義務化やドクターバンクで 一時的に確保しても、派遣された医師が孤軍奮闘したが実際は話と違うのではないかと ならざるを得ないのではないか。特に若い研修医を派遣するというお話では、患者サイ ドからすれば、研修2年目のドクターが3カ月ぐらい来て、そこで地域に馴染めるかな という感じもしますし、技量もまだ十分ではないでしょうし、そういう意味では絶対的 に指導医が必要でしょうし。ただ指導医の側からすれば、3カ月程度来てもらっても足 手まといなるだけで、それより長い期間と研修の末、一人前になっていく部分が必要で はないかと思います。  現在へき地へ行きたがらない最大の理由というのは、孤独感・孤立感だと思うので す。そこへ行ったら帰れるシステムもない、そこでの評価もされないと。プライマリー ・ケアは大変ストレスもかかることでしょうし、それを地域、自治体、地元の体制とい った全体を考えてシステム化し交代してやっていくことが求められています。今まで地 域のドクターというのは、非常に孤軍奮闘して、その人たちの努力だけでなっていて、 その人たちが倒れたりすると、それは後に続かない部分がかなりあると思います。永続 化させるためにはどうシステムをつくっていくか、どう支援していくか。その中にはド クター1人を確保すればいいという発想ではなくて、やはり看護師、保健師も含め、チ ーム医療全体の形での流れをそれぞれがつくっていくということではないか。  多分、その地域で、都道府県単位になるかもしれませんが、それを示したことによっ て、ここならばドクターの経験としても非常に身につく実効策を指向しないと根本的な 解決策にならない感じがいたしました。 ○久座長  前野委員のおっしゃるとおりでして、その事を求めてずっと暗中模索をしてきたとい うのが現状です。確かに義務化と言っても嫌々行くと、本人にとってもそうですが、特 に住民の方々にとって非常にマイナスになります。私どもの大学では学生を卒業生がい る診療所に、必修ベッドサイド・ラーニング(臨床研修)として送り、そこで勉強させ ています。第一線でしっかり診療している卒業生を選んで、そこに学生を1カ月と、か なり長く行かせています。そのことで学生が学ぶ事は非常に多い様です。へき地でちゃ んと働いている卒業生の所へ送らないと、かえってへき地医療に幻滅を感じる可能性が ある。かなり精選をした卒業生に臨床講師になっていただいて学生を送っています。  それから、先ほど奥野委員が言われたように、へき地の地元の人達はドクターを選べ ないわけですから、住民とのコミュニケーションや行政とのコミュニケーションをうま くとるなど、人格的にもバランスのとれた人が行かないと、へき地ではもたないと思い ます。  前野委員がいろいろおっしゃったとおりでして、それを目指して今回もいろいろ検討 したいと思っています。ちょうど時間になりましたので議論はこれぐらいで終わりたい と思います。次回の予定について、宮本指導課長補佐、よろしくお願いいたします。 ○宮本指導課長補佐  次回は第6回でございますが、6月8日(水)16〜18時でお願いしたいと思っており ます。会場は厚生労働省5階共用第7会議室です。委員の皆様には別途お知らせいたし ますのでよろしくお願いいたします。 ○久座長  次回は6月8日(水)16〜18時ですので、委員の方々はご予定いただきたいと思いま す。本日は、地域・へき地医療に医師を確保するための新たな方策ということで、いろ いろご意見をいただきありがとうございました。これで終わらせていただきます。 【照会先】  厚生労働省医政局指導課  宮本、川畑  03−5253−1111 (内線)2554又は2550