05/05/17 労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会第2回議事録      第2回労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会                       日時 平成17年5月17日(火)                          17:00〜                       場所 厚生労働省5階共用第7会議室 ○工藤座長  大変お忙しい中ご参加いただき、ありがとうございます。定刻を過ぎましたので、 「第2回労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会」を開催したい と思います。本日は、江口委員と西村委員が所用によりご欠席ですので、よろしくお願 いいたします。  それでは、早速議事に入ります。まず、前回の議論を踏まえて事務局で論点を整理し ていただいておりますので、説明をお願いします。 ○中央じん肺診査医  まず、資料の説明をします。第2回労働安全衛生法における胸部エックス線検査等の あり方検討会の議事次第があります。続いて、資料1として「労働安全衛生法における 胸部エックス線検査等に係る論点(案)」、資料2「労働安全衛生法における健康診断 の概要」、資料3「結核対策について」、資料4「胸部エックス線検査対策検討委員会 報告書」、資料5「労働安全衛生法第66条で規定する健康診断で胸部レントゲン検査を 実施する目的とその有用性」。また参考資料として、1「結核集団感染事例一覧」、2 「結核対策の包括的見直しに係る提言統計資料等」、3「結核の統計2004」、以上の資 料があります。お手元に資料はお揃いでしょうか。 ○工藤座長  資料1に基づいて、阿部課長から説明をお願いします。 ○労働衛生課長  それでは、資料1に基づいて胸部エックス線検査等に係る論点を整理してみましたの で、簡単に説明します。安衛法における胸部エックス線検査は、大きく分けて4つあり ます。それぞれにどのような論点が出てくるかということで、前回のご意見を踏まえて 事務局として整理をさせていただいたものです。  安衛則第43条、1.雇入時の健康診断。安衛法では適正配置、入職後の健康管理に資 するという目的で、常時使用する労働者を雇い入れるときに健康診断を実施し、このと きに胸部エックス線を義務づけているわけです。これに関して、雇入時の健康診断にお ける胸部エックス線検査は、結核も含めて胸部疾患の診断に役立つ。その結果から、適 正配置や入職後の健康管理に資するということで、事業者にその実施を義務づけている ものであるから、従来どおり、胸部エックス線検査を一律に実施すべきではないか、と いう意見があります。もう1つは、雇入時の健康診断で胸部エックス線検査を実施する ことは、海外の結核蔓延地域に居住していた等の、リスクの高い労働者を雇い入れる場 合の結核対策としても有効ではないか。今後の社会情勢に対応してまた必要ではない か、というご意見等もあります。  2.定期健康診断。則第44条ですが、この中には特定業務従事者の健康診断も含まれ るわけですが、(1)結核について、結核予防法が改正されたという内容は前回説明し たとおりです。結核予防法の改正は、厚生科学審議会感染症分科会で十分に専門家によ る審議がなされて、その結論に基づいて行われているというところから、本検討会にお いて、結核対策については結核予防法の改正内容に基づいて対応し、それ以外を目的と する胸部エックス線検査等のあり方について検討すべきではないか、という意見があり ました。(2)特に胸部エックス線では肺がんの問題があります。安衛法においては、 発がん性を有する有害物を取扱う業務に従事する労働者に対して、特殊健康診断でがん 検診の実施を事業者に義務づけています。このような労働者以外の労働者については、 業務起因性等は認められないということですので、従来より、事業者の行う一般健康診 断においては、いわゆるがん検診等の実施は義務づけていないという現状があります。  そこで、主に結核対策として、胸部エックス線検査を実施していく中では、肺がんが 発見されることもあるが、従来より安衛法に基づく一般健康診断は、肺がん対策を目的 として行ってきたわけではない。一応安衛法上では、はっきりさせておかなければなら ないと考えています。  もう1つは、保険事業として医療保険者等が任意に行うがん検診は、相当増えている という現実があります。考え方としては、業務起因性等が認められない以上は肺がん対 策を目的として、労働安全衛生法に基づく定期健康診断等において、胸部エックス線を 義務づけることは適切ではない、という意見があります。  (3)は、結核、肺がん以外の疾病です。これについては、業務起因性の観点から健 康診断としての胸部エックス線検査等の有効性等を考慮して、事業者に胸部エックス線 検査等の実施を義務づける必要性については、十分に検討すべきと考えています。ま ず、業務起因性と健康診断としての胸部エックス線検査に有効性があるのであれば、事 業者に胸部エックス線検査の実施を義務づける必要があるのではないか、という当然の 意見が出てくるかと思います。この業務起因性、それから健康診断としてのエックス線 の有効性について、医学的な見地ではどうなっているのかという評価が必要になるかと 考えます。もう1つは、わずかでも疾病が発見されていれば、胸部エックス線検査等の 実施を義務づける必要があるのではないかという意見もありました。  3.海外派遣労働者の健康診断。これは、海外に派遣する前に労働者の健康診断の一 部として、胸部エックス線検査を行うということと、海外での勤務を終えて帰国した労 働者に健康診断を実施するという義務が、事業者にかかっています。これについては、 海外派遣労働者の健康診断における胸部エックス線検査は、結核も含めて胸部疾患の診 断に役立つということで、海外に派遣する労働者及び帰国後の労働者の健康管理等のた め、事業者にその実施を義務づけているものであるから、従来どおり、胸部エックス線 検査を一律に実施すべきではないか、という意見があります。  4.結核健康診断。これは、改正前の結核予防法に基づいて、安衛法の規則に規定さ れてきたものです。改正前は、原則としてすべての労働者に対して、年2回の結核健康 診断を行う。2回目は、結核発病のおそれがあると診断された者に対してのみ実施す る、となっていました。改正後は、学校、病院等特定の業務に従事する者に対して、年 1回の実施を事業者に義務づけているという形になっています。  現行の安全衛生法では、改正前の結核予防法を踏まえて、結核発病のおそれがあると いう場合については6ケ月後に胸部エックス線検査を行うように事業者に義務づけてい ました。改正後は、安衛法上このような規定が必要であるかという議論が当然あるわけ です。これは、結核予防法においては医療機関において結核の発病のおそれがある場 合、あるいは発病している場合は、医療機関でフォローアップされるべきである。つま り、医療の範疇としてきちんと治療が継続的になされなければならないということか ら、事業者に義務づけとしてなされるべき胸部エックス線検査は、当然廃止すべきでは ないかという意見です。以上、健診と胸部エックス線検査の義務部分について、今後の 議論の要点を整理しました。 ○工藤座長  どうもありがとうございました。事務局から、労働安全衛生法に基づく一般健康診断 について、4つに分けて説明、並びに事務局としての意見を出していただきました。こ の4つは、1.雇入時の健康診断、2.定期健康診断、3.海外派遣労働者の健康診 断、最後に4.結核健康診断を6ケ月後に2回目を行うという点です。議論の進め方と しては、2番目の定期健康診断の部分がいちばん大きなテーマだろうと思いますので、 先に1、3、4をご検討いただいて2番のほうに進んでいきたいと思います。  まず、1番目の雇入時の健康診断。これは細則の第43条ですが、雇入時の健康診断に おける胸部エックス線検査は結核予防法を踏まえたものではないので、労働者の適正配 置あるいは入職後の健康管理のために、労働安全衛生法として独自に規定しています。 これは、事務局の案としてもこのまま実施を継続する考えですが、これに関して何か意 見はありますか。これについては、あまり議論がないと思いますので、継続するという ことでよろしいでしょうか。                 (異議なしの声) ○工藤座長  ありがとうございました。それから、3番目の海外派遣労働者の健康診断、則第45条 の2。これも、結核予防法を踏まえたものではなくて、もともと労働安全衛生法で定め ている海外派遣労働者の健康状態の適正な判断と併せて、帰国した場合の健康管理等の 規定です。これも、胸部レントゲン写真撮影については、従来どおり継続したいという 事務局の案ですが、いかがでしょうか。 ○加藤委員  この背景の1つには、今後労働市場での外国人労働者への開放という問題があると思 います。外国人労働者は入ってきたあとも、いろいろなストレスにかかわって既感染者 が1、2年後に発生するということもあります。三重県で集団感染の事件があってその とき調べたものと、2年後にまた患者が出て調べたら菌のパターンが違うということ で、あとから発病する例もあります。その辺は、これでいいかと言われると、専門家と してはこれだけで大丈夫だという議論には必ずしもなりません。では患者発見の方法と してどうするかというと、健診なのかほかの方法なのかということがあります。これだ けでいいということではない。 ○工藤座長  いまの加藤委員がおっしゃったことは、日本の労働者が海外に勤務して戻ってくると いうことではなくて、外国人労働者の問題ですか。 ○加藤委員  それが1つ大きく考えていることです。現在私どもとしては、特に今後の問題意識と して考えているところです。 ○工藤座長  外国人労働者は、この海外派遣労働者の概念とは少し違う部分ですよね。 ○加藤委員  違います。この議論を持ち上げているのは、結核予防法の改正の中でもハイリスク者 に対する健診はしなければいけないという考えを持っていますので、そのような意味で 今後の問題としては、そこをハイリスク者として、予防法の改正の考え方を踏まえたと しても、ある程度ケアしていく必要があるということです。 ○労働衛生課長  議論としては、海外派遣時というのがありますね。日本の場合は一生懸命結核対策を 兼ねてやってきて相当少なくなったとはいえ、先進国としてはかなり結核の罹患率の高 い国だという認識があります。要するに、米国やヨーロッパ諸国のように日本よりはる かに結核の罹患率の低い国に行って、帰ってきたときに両方義務づけてやることが必要 かという疑問は当然あるのだろうと思います。他の開発途上国で結核やHIVが相当数 蔓延している地域というのは、当然労働者を護るためにということで、必要性は出てく るかと思います。理論的に地域による枠に入れなくていいのかという疑問も出てくるの ではないかと思いますが、それについてはどのようにお考えでしょうか。 ○加藤委員  おっしゃるとおりだと思います。もっと言いますと、細かく言って、業務内容によっ ては必ずしも高いリスクがあるとは限りません。例えば、現地の建設労務者等を相手に するなどということは、非常に高いリスクがあるのでしょうが、実際オフィスの中だけ で、例えば身の周りの人たちはそれなりに健診しているということであれば、必ずしも 高いリスクがないかもしれません。私自身フィリピンに3年住んでいましたが、自分が そんなに高いリスクがあったとは思っていません。 ○工藤座長  結核蔓延国に派遣されて帰ってきた場合と、そうではない国に行って戻ってきたとき は、当然違うのではないでしょうか。この辺は、今後運営法上の問題でいろいろあるの かもしれませんが、基本的にはいま全体シェアをやるということにしておかないと駄目 なのではないかと思うのですが。 ○加藤委員  もちろん、結核だけという話に限定して申し上げています。 ○工藤座長  それを定めるのは、年間罹患率何%以下の国に行った場合にはいいというように、ど のように線を引かれるのか。むしろ、これは結核対策との関係で厚生科学審議会の結核 感染分科会あたりで議論いただかないといけないことだと思います。 ○加藤委員  それについては、学校保健の健診方法を変えたときに、問診票を取って、そこでリス クの高いものを拾い上げることになっています。その中では、高蔓延国に6ケ月以上居 住したものに限定していまして、毎年該当国については入れ替えて出すような形で、外 国へはそのような対応をしています。 ○労働衛生課長  これは、事務局でも資料がないのでちょっと困っているのですが、特に西欧先進諸国 は日本よりはるかに結核罹患率が低いです。しかし、この先進諸国に相当数途上国から の労働者が流入しています。その人たちが労働力として派遣されるときに、このような 検査は一応して行くのでしょうか。 ○加藤委員  実際にロンドンで見てきたのですが、これは労働保険側ではなくて入国時に地域で健 診するというシステムを持っていますし、それを許可しようという動きになっていま す。ですから、必ずしも労働保険の問題としては捉えられていません。実際に結核患者 の半数が外国人や新入国者という状況ですので、そのような対応になっています。 ○藤村委員  いまのお話を伺っていますと、要するに健診を濃厚にするか、なるべくそれを除こう かという議論になってきていると思います。しかし、胸部レントゲンは結核だけを対象 にしたものでないことは当然で、仮に結核だけを考えたとしても、いま言ったように外 国に結核を輸出してはいけないわけです。これは前にやるべきだと思います。ストレス にさらされて苦労して帰ってきた労働者が病気になっていないかどうかをチェックする のは当たり前です。ですから私は濃厚にやるべきだと思いますが、それをなるべく緩や かにやろうという考え方は、現時点ではいけないのではないかと思います。 ○工藤座長  いま藤村委員がおっしゃったように、基本的にはこの則第45条の2はこのまま残すと いうことですから、そのうえでまた運用を更に細かくしていくというのは、この下の約 束事や運用の手順などにかかわると思います。基本的には、労働安全衛生法の細則とし てはこれを残しておくということでよろしいでしょうか。 ○矢野委員  海外派遣労働者の健康診断、第45条の2項について、労働者を本邦外の地域としてい ますが、これを別に政令で定めるというような形にして、もう少し科学的な検討の余地 を残すことは、現時点ではなじまないのでしょうか。 ○労働衛生課長  いまのところは考えていません。ただ先ほど加藤委員もおっしゃったように、海外に 6ケ月以上派遣した労働者が帰って業務に就くとき、というのもあるわけです。そのと きに例えば地域で医療をやると、また国に指導してもらっている内容とは違うのかな ど、いろいろな問題が出てきますので、いまのところは考えていないです。 ○矢野委員  例えば、厚生科学分科会で検討して良い結論が出ても、法律の本文にあると海外とい ってしまうと自動的にニオイがすべてになりますね。 ○主任中央じん肺診査医  海外でも、同じ国に都市部もあれば農村部もあります。何ケ月行ったなどいろいろあ ります。 ○矢野委員  ですから、そのようないろいろな状況に対応できるようにしておいたほうがいいのか なと思いました。 ○堀江委員  第45条の2で現在定められている規定の中に、医師が必要と認める場合に追加できる 項目というのがいくつかあります。本来、国においてリスクが一律なわけでもありませ んし、加藤委員がおっしゃったように仕事の内容その他、かなり多様なリスクになって きます。理想的なことをいえば、専属の産業医あるいは関係する専門家である医師がそ れを判断するというのが1つの方法ではないかと感じました。 ○工藤座長  ここの部分はいじらないということですね。要するに単純化しないということです よ。 ○堀江委員  いや、ですから第45条の2の中に必ず実施しなければならない項目のほうに、いま胸 部レントゲンが入っていますが、例えばそれを医師が必要と認める場合に追加する項目 に移すという考え方はあり得るのかなと思います。 ○工藤座長  なるほど。はい、わかりました。 ○相澤委員  確かに産業医に判断を委ねるということも1つの方法だと思います。先ほど課長も言 われたように、先進国でも外来者がいます。飛行機の中でも感染を起こす可能性もあり ますし、リスクは全くないとはいえないと思います。それを産業医に判定してもらうと いうのはなかなか難しいのではないかと思いますので、私はこのまま残しておいたほう がいいのではないかと思います。必要な頻度もそれほどないと思いますし、結核以外の 病気も、海外で治療を受けやすいか受けにくいかなどいろいろなこともあります。福祉 ということもありますし、残しておいたほうが安全ではないかと思います。 ○工藤座長  ほかの委員の方、いかがですか。特にありませんか。そうすると、基本的には残すと いうか継続をするということで、今回は基本路線はそういうことにしておいて、再度細 かなところは踏み込めるのかどうか、ほかの法規との関係もあると思いますので、検討 していただいて、次回事務局で整理して出していただくということにしたいと思いま す。海外渡航に関しては、渡航時、帰国時、両方について労働安全衛生法の下で行うこ とは継続するということで、ご了解いただけますか。                 (異議なしの声) ○工藤座長  ありがとうございました。それでは、4.結核健康診断(則第46条)。従来発病のお それがあると診断されたものについては、年2回、おそれがあると判断されてから6ケ 月目にもう一度行うことが、結核予防法で義務づけられていましたが、それが廃止され ました。したがって、安衛法での胸部エックス線検査に関しても6ケ月目のものはやめ ようということです。その理由は、加藤委員、発病のおそれがあるというのは、いわゆ る予後系や治癒系統がはっきりいえないようなものがある場合に、もう一度半年後に撮 りなさいということですよね。結核予防法で外した理由は、これは医療で医者に紹介を して、そこできちんと追ってもらう、むしろ健康保険の範疇の問題として、医療として やっていただきたいということですね。 ○加藤委員  はい。 ○工藤座長  そのような理由で、これを廃止してしまったほうがいいのではないかということです が、よろしいでしょうか。 ○加藤委員  ポイントとしては、健診機能全体にもかかわることなのですが、いま健診を整備する という議論をしています。予防法の議論の背景というのは、結核患者の発見自体を健診 よりもむしろ有症状者の早期発見に重点を置き、それによって効率的に確実に感染を防 ごうという基本的な考え方です。ですから、健診を整備する議論だけをするのは、ちょ っと危険な部分があります。減らす分を担保するだけのきちんとした患者発見の部分が なければいけない。これは今回の議論からは外れるかもしれませんが、是非裏側の議論 として考えていただきたいということが、結核対策に携わるものからのお願いです。 ○工藤座長  要治療者あるいは要結核観察者は、いずれにしても判断された時点で医療へバトンタ ッチしていくというようなことだろうと思います。 ○坂谷委員  いまの加藤委員のお話に引き続いて申し上げるなら、1つは疑いのある患者を医療で カバーしても、労働者にとって不利益は生じないと思います。もう1つは、接触者健診 を積極的に充実的にやろうと。1人患者が出たときに、例えばその周囲の健診をきちん とやる、そのときに、会社側も労働者も保健所の対応に対して、誠実にいままで以上に 乗っていただきたい。こういうことが、いまの加藤委員のお話で、裏打ちをきちんとせ よということだと私は理解しました。 ○工藤座長  これは、今度の結核予防法そのものの改定の趣旨がそういう形で、もし発生した場合 には、接触者健診はより義務化、よりきつくなりました。積極的に接触者健診には応じ るようにということが、結核予防法の大きな変わり方ですので、それに応じた話だと理 解していただくといいかと思います。 ○藤村委員  この第46条は中止しても構わないと思います。ただ、安衛法の健診の費用負担が、ま ず事業主にあり、そこでいろいろ難しい問題が生じてくると思います。すべての健診で 有所見率が40数%あるという状態で、病気や病的な状態に対する事後措置が十分できて いるかどうか。例えば事業者に残業を少なくしなさい、過労を避けさせなさいというよ うな注意の事後措置でなく、その疾患に対する事後措置、他の医療機関にきちんとした 紹介をしてフォローアップさせるというようなことができていればそれでいいです。や めて構わないと思います。これをもしやめるとなったら、疾患や疾病に対する事後措置 をきちんとすることという付則をつけるべきではないかと思います。 ○工藤座長  いかがでしょうか。 ○労働衛生課長  藤村委員がおっしゃった事後措置ですが、実は健康診断結果に基づき事業者が講ずべ き措置に関する指針というのがあります。平成17年3月31日というものが最新版です。 その中で、就業上の措置の決定、実施の手順等すべて決まっていますので、これの充 実、周知でいいのではないかと考えています。 ○藤村委員  私はその内容はよくわからないので、しっかりしていれば、それでよろしいと思いま す。 ○工藤座長  よろしいでしょうか。 ○安全衛生部長  慢性疾患の事後措置と結核の事後措置というのは、全然違うと思います。結核の場合 は、法的にもある程度の事後措置が規定されています。いまの事業所のものもそれに倣 った形で、結核の場合はこうだというように規定しています。藤村委員がおっしゃった のはたぶん一般的なことで、46%も異状が出るという原因の多くは高脂血症や高血圧と いった形です。その事後措置がどのぐらいきちんと行われているかというところは、確 かにご指摘の部分もあるかと思います。ただ、結核に関してはそういう形にはなってい ませんので、そこは大丈夫だと思います。 ○工藤座長  第46条は結核の規定の部分ですので、そのような形で要医療のレントゲンの影が出た 場合、あるいは要経過観察というような影が出たような場合には、健診レベルで追いか けるよりはもう医療できちんと追いかけていただきたいという趣旨です。むしろこれは 前進だろうと思いますので、これについては事務局が示した案のように、これは廃止す るということでよろしいでしょうか。                 (異議なしの声) ○工藤座長  ありがとうございました。それでは、次に定期健康診断に戻りたいと思います。 ○加藤委員  結核に関することでいえば、結核予防法の議論の中でもハイリスク者に対する健診が ありまして、リスクに応じてということですから、その部分については、先ほどの高蔓 延国の入国者もそうです。実際は、いまの健診の中では飯場の労働者や零細企業におけ る健診などは、非常にハイリスクになっています。その辺の予防法改定自体の議論の中 であったことをある程度取り込んでいただきたいと思います。 ○工藤座長  具体的に加藤委員のほうで、どのようなことかを示していただけますか。定期健診の 中でもう少し議論をしたらということで、よろしいですか。 ○加藤委員  そうですか。はい、わかりました。 ○工藤座長  定期健康診断についての議論に戻りたいと思います。先ほど事務局から説明がありま したが、その1つの趣旨は、結核については予防法の改定がすでに厚生科学審議会のほ うで十分に審議がなされ、その結論に基づいて今回の改定がなされているということで す。基本的には予防法の改定内容に基づいて対応するということで、結核対策以外を目 的とした胸部レントゲンについて、その問題を議論することでよろしいかということで すが、加藤委員、これについて特に何かございますか。 ○加藤委員  基本的には異論はないのですが、いま抜けていたのが、ハイリスク者へのということ が議論の中に入っていましたので、そこを是非含めていただく必要があるのではないか と思います。 ○労働衛生課長  加藤委員がおっしゃったように、結核予防法にも、結核のハイリスクについて規定が あります。それが安衛法に持ってきたときに、安衛法はその中で十分であるかどうかの 評価は、一応私どもにさせていただきたい。要するに、この検討会で先生方にお考えい ただきたいと考えております。 ○堀江委員  加藤委員に質問があるのですが、今日の資料3で「結核対策について」というものが あります。25頁の裏に26頁がありまして、いま加藤委員からご指摘のあったハイリスク 者の選定の方法がここに出てくるのかなと思って拝見していたのですが、いわゆる市町 村が独自にリスクを判断して健診の指示をするという仕組みが載っています。これは前 の頁から続いていますので、施行令第2条第2項の第2号になるのでしょうか。「定期 健診の必要があると認める者、市町村が定める定期」と書いてありますが、これは具体 的には市町村の中にいる専門家がリスクの判断をするという考え方が入っているのでし ょうか。 ○加藤委員  誰が判断するのかは、法律は書かれておりません。考え方の概要は、大臣告示で出さ れました「結核対策に関する基本的指針」の中にいくつか書かれています。例示の1つ としては、外国からの入国者などについてはいくつか書いてありますが、法律条項とし ては具体的なことは載っていないと理解しています。 ○堀江委員  そうしますと、大臣告示の中で全国斉一的に実施されると。権限は市町村にあるとし ている。 ○加藤委員  住民健診の実施主体は市町村ですから、決定するのは市町村ということになっていま す。実は技術的には市町村が決めるというのは非常に難しい部分がありますので、若干 議論があることは確かだと思います。先生がおっしゃるように、具体的に誰がというこ とは書かれておりません。 ○堀江委員  事業場に反映させるには、モデルになる仕組みかなと思いました。先ほど来、海外派 遣のところにもありましたが、もし仮に定期健診から胸部レントゲン検査が除かれるこ とになりますと、自分の事業場では非常にリスクが高いと判断した産業医がいた場合 に、それを事業者に対してきちんと提言する仕組みを残していただくべきではないかと 思った次第です。 ○工藤座長  産業医、あるいは医師の判断という問題は、そういう考え方があり得るかどうかにつ いては、全体の最後に多少議論も必要かと思いますが、現在全体の方向としては結核予 防法自身が一律に健診をすべきではない、そういう時代ではないという結論を出してい るわけです。  加藤委員にお伺いしたいのですが、結核予防会でも300万人ぐらいの健診をやってお られますね。あの中で発見される結核の患者さんは、日本全体で言うと約3万人新規に 出ますが、健診発見は大体15%ぐらいでよろしいですか。 ○加藤委員  ただ、ここら辺は年齢によって違いがありまして、若いほうの年齢はいまデータを出 しますが、20〜30%が健診発見です。 ○工藤座長  割と高いですね。 ○加藤委員  高いですね。高齢になりますと10%以下ぐらいになりますが、労働人口の場合は。 ○工藤座長  大体健診発見は、トータルとしては15%とかそんなもので、20%はいかない。 ○加藤委員  全体では、いま結核は高齢者が多いですから、それを含めますとそんなにならない。 ○工藤座長  有症状発見というか。 ○加藤委員  そのほうが圧倒的に多くなっていますね。 ○工藤座長  健診発見の中で、大体住民健診が入っていますから、職場健診発見というと日本全国 でおおよそ何人ぐらいですか。 ○加藤委員  住民健診では高齢者が圧倒的に多いですから、若いほうの年代の多くがおそらく事業 者健診の発見だろうと思います。 ○工藤座長  そういうことから、基本的にはハイリスク者に絞った健診に持っていくということ で、一律にはやる方向に踏み切ったのだと思いますが、安衛法の改正についても、結核 に関しては先ほど来申し上げているように、結核予防法に基づいてその具体化というこ とでやっていく立場を明確にしておかなければならないだろうと思います。それ以外の 疾患となりますと、これは先ほど、事務局のほうからは肺がんをまず取り上げてお話が ありました。肺がんについて、基本的には安衛法自身が、一般的ながん検診は職業起因 性となじまない、安衛法になじまないのではないかという明確なお話があったわけです が、この議論はあとに残しておきたいと思います。その前に、胸部のレントゲン写真 は、結核以外の疾患の発見に関してその有効性はいかがかということを、お2人の委員 から少しまとめてお話をいただいて、それを基に議論をした上で、最終的にはこれが有 効であっても、あるいは有効でないという議論があっても、落ち着いてくるところはこ れ自身が安衛法に基づくことが適正かどうか。これはまた最後の議論に入ってくると思 いますが、一旦そこは置いておいて、まず胸部エックス線検査の必要性に関して、過去 の健康診断における有所見率、あるいは結果としてどのような疾患がどの程度発生して いるかに関して、柚木委員、お願いします。 ○柚木委員  全国労働衛生団体連合会が胸部エックス線検査のあり方の検討会をしたので、資料 No.4にまとめてみたのですが、その報告書に基づいて説明したいと思います。  1番の胸部エックス線検査の意義と有効性についてです。要約しますと、労働者の定 期健康診断等における胸部エックス線検査は、肺結核の予防のためだけではなく、胸部 疾患と循環器疾患の診断、及び健康増進法の基本方針である一次予防にも役割を果たし ており、健康診断の要として機能している、ということです。すなわち、現在もこの検 査で発見される疾患は、肺がん、肺炎、気管支拡張症などの胸部疾患、心臓、大動脈血 管の病変など非常に多種に及んでいる。また、1回の胸部エックス線検査で受診者が受 ける被ばく線量は、年間の自然放射線を下回ると見られているので、有効性の観点から はレントゲン検査を廃止する理由は見当たらないというのが、胸部エックス線検査の有 効性の要約です。  また、定期健康診断における胸部エックス線検査の法律上の意義ですが、この問題に ついては、労働問題に関しては第一人者と言われている安西弁護士の意見によります と、要点は、まず胸部エックス線検査は立法当初はその主目的が結核予防であったとし ても、法的根拠は、現在ではそれと異なる労働者保護基準としての最低労働条件の1項 目となっているのではないかということです。すなわち、今日では労働者の「健康権」 ないし「健康保持請求権」を護る上で重要な役割を果たしており、他方、健康診断を中 心とする労働者の健康管理は、事業者にとって健康配慮義務となっているのではないか ということです。したがって、公衆衛生を目的とする結核予防法が改正されたからとい って、直ちに労働安全衛生法上の健康診断規定を改正するのは適当ではないと思われ る。  資料No.1の中ほど、2番の下段ですが「国が規制緩和に名を借りた、労働者のため に経営者側が支出する健康管理経費の削減という労働者の健康管理の低下・手抜きを図 るものであるとみられ、いずれにしても連合等の労働組合側の猛反対にあうのではない かと思われる」ということも、安西弁護士は指摘しております。  3番として、スクリーニング検査としての胸部エックス線検査の有用性です。全衛連 における胸部エックス線検査の実績調査結果から、次のことが言えるのではないか。こ れも、のちほどこの報告書を十分検討していただければよくわかるのですが、調査実施 機関は、全衛連の会員機関が105機関、また非会員機関が151機関、胸部エックス線の検 査数は全部で1,517万6,401人で、大きな母集団についての調査、分析ができたと思って おります。有所見率は、報告書の2頁や別添資料No.2を見ていただくとわかりますが、 会員機関と会員機関以外の機関を合わせた分で6.51%。有所見のうち要精検率は、同じ 群で1,19%であり、有意義な健診の評価基準とされている率は0.02〜0.04%ですが、そ れと比べると有所見率は160〜320倍、要精検率は30〜60倍と、非常に高かったわけで す。  なお、有意義な健診の評価基準とされる率ですが、結核予防法施行令改正時に行政が 採用した基準で、定期健診が政策上有効であると判断すべき患者発見率を言います。そ の数値は、イギリスやドイツにおいて健診の有効性を図る基準として提唱された数値で す。3番目に部位別の有所見では、会員機関が89機関、非会員129機関から有効回答が 得られまして、その内訳は肺野の病変が最も多かったようです。肺野以外にも、胸膜・ 縦隔・心臓・大血管・胸郭などに病変が多数認められ、胸部エックス線検査は、呼吸器 だけでなく循環器や運動器の疾患の診断にも役立っていることがわかりました。これも 報告書の2頁、また別添資料No.2を参照していただきたいと思います。  確定診断病名については、回答のあった15機関のうち症例数の多い5機関について集 計しました。肺結核は1,506例中34例で、全体の45分の1に過ぎず、原発性肺癌、転移 性肺癌、過誤腫、縦隔腫瘍、甲状腺腫、肺炎、サルコイドーシス、じん肺、肺のう胞 症、肺気腫、気管支拡張症、無気肺、自然気胸、胸膜炎、心肥大、大動脈瘤など、様々 な疾患が胸部エックス線検査によって認められております。  次に年齢階級別有所見の調査は、7機関が追加調査を行いました。胸部エックス線検 査の有所見率は65歳以上が最も高く約30%であり、若い年齢階級ほど低いわけですが、 29歳以下の若年層でも有所見率は約2%であり、有意義な健診の評価基準とされる率 (0.02〜0.04%)の50〜100倍であったということが報告されています。このうち4機 関は、肺野の病変後詳細に調査しており、有所見中に活動性肺結核が占める割合は、各 年齢階級とも100分の1〜500分の1に過ぎなかったという報告です。これは、報告書の 3頁、または別添資料No.6を参考にしていただきたいと思います。  胸部エックス線検査の有効性に関する文献の評価です。日本呼吸器学会、日本肺癌学 会、国立がんセンター、大学病院等の呼吸器専門医に学術論文の紹介を求めて文献評価 を行いましたが、健康診断における胸部エックス線検査の改廃を、積極的に支持する科 学的根拠はなかったようです。むしろ、肺がんについては、国際的にも健康診断におけ る胸部エックス線検査の有効性が再評価され、胸部エックス線検査を定期健診に含めな いとする従来のエビデンスは、2004年に否定されております。またその評価には、わが 国の厚生労働省からの委託研究を含む複数の論文が採用され、そういう否定になったよ うに報告されています。1回の胸部エックス線検査で受診者が受ける被ばく線量は、年 間の自然放射線を大きく下回っております。これは報告書の4頁、別添資料No.9を参 考にしてください。資料No.8に引用されている16〜19の論文は、元東北大学教授フジ ムラ研究班員により発表されたものと言われております。  5番ですが、胸部エックス線検査に関するその他の考察として、1番目に考えられる のは、検査目的の変遷と多様性です。これは、報告書の4頁です。胸部エックス線検査 の見直しの必要性に関する行政側の論点として掲げられている「労働安全衛生法では、 主に結核対策として、原則としてすべての労働者に対し、胸部エックス線検査等の実施 を義務づけている」との見解は立法当初のものであり、今日では胸部エックス線検査に よるスクリーニング対象疾患は非常に多種に及んでいると説明されています。これは、 厚生労働省労働衛生課が出している『一般健康診断ハンドブック』にも出ております。  次に検査の特異性ですが、これは報告書4頁をご覧ください。胸部エックス線検査の 見直しのもう1つの論点として「胸部エックス線検査及び喀痰検査以外の項目について は、現在行われている健康診断項目の有所見率等を考慮し、必要な見直しを行う」と し、「定期健康診断実施結果」を参考に示しておりますが、胸部エックス線検査そのも のは胸部疾患のスクリーニングを目的としていますので、健診の骨格を形成するもので す。ですから、血圧測定をやるとか、肝機能検査とか、血中脂質検査等の生活習慣病予 防などの検査項目とは、その法的な位置づけが自ずから異なってくると考えておりま す。  厚生労働省第1回検討会に提出された資料6「労働安全衛生法における胸部エックス 線検査のあり方に係る議論のポイント」の2、その他の健康診断項目に関する説明につ いて、全衛連としてはいま述べました基本認識のほかに、次の2つの事項を使用したい という考えです。1つは、胸部エックス線検査を生活習慣病予防などの検査項目との横 並びで、異常所見率を対比するのは適当ではない。また現行の定期健康診断等において は、胸部エックス線フィルム等の結果記録の保存によって個人認証がなされております が、胸部レントゲンがなくなってしまうと、健康診断書や個人票は証明書としての価値 が消失してしまうのではないかと考えられます。  制度改正が健康診断機関等に及ぼす影響についてですが、5頁を参照してください。 胸部エックス線検査の有効性に対する評価結果に基づかないで性急な廃止決定が行われ ますと、職域の健康管理体系が大きく崩れるおそれがあり、労働者の健康の保持増進に 取り組んでいる関係労使から、労働衛生行政及び企業外労働衛生機関である健診機関に 対する信頼が失われてくるのではないかということです。このような制度改正は、会員 機関を初めとする健診機関にとって、高額な胸部エックス線検査、レントゲン車等への 設備投資が無駄になるほか、この検査を基軸とする健康診断体系が崩れると、さらに予 測し難い経済的打撃を受けることが危惧されております。また、健診機関に雇用されて いる多数の診療放射線技師、エックス線技師の雇用管理上の問題が生じるおそれも出て きます。  最後に結語とありますが、それはまた是非お読みいただきたいと思います。以上で す。 ○工藤座長  どうもありがとうございました。長年にわたり現在もですが、健診事業を進めてこら れた全衛連の柚木委員のほうから、胸部レントゲンに関する健診は継続すべきであると いうご意見を拝聴したわけですが、いまのご説明にご議論をいただく前に、もう一方、 少し別な角度から、この問題についてのご意見をいただきたいと思います。矢野委員に お願いしたいと思います。 ○矢野委員  資料の5です。まずタイトルですが、いちばん最後に有用性と書いてあります。先ほ どの資料リストの所では有効性と書いてありましたが、有用性と書きましたのは例え ば、大変良く効く薬では有効なわけですが、それが副作用が強いと有用ではないという 意味において、トータルに考えたいという意味で、あえて私はここで有効性と分けて有 用性としています。この検討の中でも胸部レンドゲン検査の有効性のみならず、有用性 としての検討をしたいと考えています。資料の流れに従って、ご説明させていただきま す。  まず1番に、労働安全衛生法で規定している一般定期健康診断をすることの目的、と いうことですが、66条で規定されている一般定期健康診断にはいくつかの前提条件があ りまして、費用負担が事業主にあって、それをやらないと事業主が罰せられるというこ とがあります。だから必ずやらなければいけない、しかも事業主の負担でやらなくては いけない。罰則はなくても労働者のほうは受診の義務があり、受けないと怒られるとい う状況になります。それから、一律に行われる。咳をしていようがいまいが、一律に行 われるということ。既往歴や前回の検査結果は関係なく、1年ごとにやるということで 実施されています。  こういう条件を考えますと、この健康診断というのは、ともかく労働者がかかり得る 病気のすべてをやるという目的ではなくて、特別な目的があるのではないかと。事業主 の負担、義務化、罰則付きというようなことから考えると、下にある3つのような場合 が、こういうときに適用するのではないか。  1つは、労働者の持っている身体的な特性を考慮しての作業配置などを考え、適正配 置のために、あるいはその前提としての身体状況の把握というような場合。作業に関連 して発生し得る、古典的には職業病、最近では様々な作業関連疾患がありますが、そう いうものに関連しての健康障害を、早期に発見するというのが2番目です。3番目に は、単に患者を早く発見することだけではなく、職場の状態をつかまえる。個々の患者 にとっては利益がなくてもそういう把握をして、全体的な改善をする、この3つぐらい の目的が考えられるのではないか。  個々の具体的な例というのは、その下に文章であり、1番については、例えば最近話 題になっているSARSの問題や、2番については鉛の例を挙げてというようにして考 えています。3番は、専門的にはスクリーニングの2番に対してサーベイランスと呼ば れているものであることを述べています。  大きな2番に移りますが、健康診断の有用性ということですが、行政で義務づけられ ているということは、単にそれが目的はもちろん明確でなくてはいけないのですが、た しかに有用であるということのしっかりした証拠が必要ではないかと思います。常に医 学は進歩しているし、状況が変わっていく中で、いろいろな考え方があって当然で、健 診についても受けたい受けたくないというのが常にあるわけですが、66条の項目という のは、受けたい受けたくないを認めないということであるという以上は、はっきり役に 立つということが大前提条件になるかと思います。  健診の利益を考えるときには、必ず不利益との対比の中で考えなくてはいけないと思 います。まず健診による利益ということを私なりに、できるだけ広範にいろいろなレベ ルで考えてみたのが、後半のほうに資料として出していますが、6頁の表1に書かれた ものが、私の考える広い範囲の健診の利益で、最終的には下のほうにある病気が治る、 死なないで済むということですが、決して健診を、それだけで狭く考える必要はないと は思います。しかし、そういう広い範囲で考えてでも、とりあえず何の利益があるかと いうことを明確にしないと、ただ診断がついたというだけでは済まないのではないかと 思います。ただ利益・不利益の評価というのは、価値観や状況によって非常に難しいと いうことで、とりあえずこの場で検討しているレントゲンに関連して、比較的、量的に 評価がしやすいものということで、胸部レントゲン検査の中でのそういう部分だけを取 り出します。  第3の項目ですが、胸部レントゲン検査実施の利益と不利益という所ですが、利益と して、本日別の資料にもあったと思いますが、平成11年の地域保険事業報告の中にある ものと同じ数字ですが、職域の定期健診で結核発見率が0.007%、言い換えますと10万 人当たり7人です。胸部レントゲン間接撮影で被ばく線量が0.26mGy、これはほとん ど同じ数値で、ただいま私の前にご報告いただいた先生からの資料の中ではレンジを持 った表現で、単位もシーベルトで表現していましたが、同じ範囲の数字があったかと思 いますが、表面ではもう少し多い数字になります。この数値というものをICRP(国 際放射線防護委員会)勧告の「放射線被ばくに伴うがん死亡の生涯リスク」ということ で見ますと、その報告は、1Gy当たりの被ばくで10万人のうち500人ががんになると いう数値を報告しております。これを胸部レントゲン間接撮影による中心被ばく0.26m Gyという値に当てはめてみますと、10万人当たり0.13人になります。これは10万人当 たり7人の発見ということと、10万人当たり0.13人が、この検査によってがんになると いうことを併せて表顕しますと、項の最後になりますが、結核患者を54人見つけるため に、1人のがん患者をつくっているというのが現状だと思います。  確かにこれよりはるかに多いがんが、自然放射線でできているということはあるわけ ですが、自然放射線は避けられないのに対して、健診によってがんが、自然放射線でで きるがんに加えて発生している、これも事実であるということは見ていかなければいけ ないと思います。  4番は、今日の議論のひとつの核心になるかと思いますが、結核以外の対象疾患の発 見をするということ、これがこの委員会の大きな検討課題であるかと思います。健診で 期待される利益ということで、先ほどの報告の中でもいろいろな疾患が発見されるとい うことをお話いただきまして、それはおっしゃるとおりかと思います。前回の委員会の 資料でも資料8として入れておりましたので、今回の私の資料でも5頁にそれを再掲さ せていただいておりますが、こういうような疾患が発見される。私は、あえてこれを偶 発的な発見というように考えたほうがいいのではないかと思っているわけです。と言い ますのは、2頁の下のほうに書いてありますが、問題があります。  1つは対象で、そういう疾患を見つけようという体制でやっていないものですから、 非常に有病率というか発見の頻度が少なくて、その目的という意味では効率が非常に悪 い。疾患ごとに見つけやすい検査法というのがあるかと思います。あとで述べますが、 例えばじん肺を発見するためのレントゲンの電圧設定と、通常のレントゲンの設定とい うのは、かなり違うということを聞いています。そうしますと、そういう形でやられた 判断というもの、例えば有所見ということになったとしても、その有所見の誤判断の可 能性が非常に高くなる。誤判断ということは、それに伴って引き続き行われるべき、先 ほど事後措置というお話がありましたが、事後措置をやっていくことの負担を無用に増 やすことになるかと思います。そういうような問題がありますので、こういう偶発的発 見ということについては、見つけたから良いというだけではなく、それの特質について 十分検討される必要があるかと思います。  3頁目にいきますが、健診の項目をどのように個々に考えていったらいいかというこ とは、世界的には1968年にWHOを中心にして、あとのほうに表3で示していますが、 健診の項目として選んでいくときに考えるべき条件というものが提案されています。  英国はスクリーニングに関する暫定委員会というものをつくりまして、健診項目をか なり細かく検討して、その特質というのをやっているわけですが、そこでも項目を提示 しているわけです。こういうものを私なりに整理しますと、健診を進めるにあたって考 えるべき項目というのが、大きく、何の疾患を目的とするかということに関連してと、 どういう検査を健診で行うかということ、健診というのはスクリーニングですので、ス クリーニングであとの確定診断のための精密検査で何を行うかということと、最終的な 目的である治療や生活指導というような介入、その4つの段階を考える必要があるので はないかということ。それは表の5に、私の資料の最後の頁に整理をして、それぞれの 4つの段階の中にさらに細かく2つずつ挙げているわけです。この考え方を用いまし て、前回の参考資料8の5頁にある疾患にかかわるものを少しずつ拾いましたのが、5 の項目に書いてあります。まず(1)として対象集団の中で目的疾患の有病率が高いか 否かということですが、例えば挙げられていた悪性胸腺腫は、全国から非常に珍しい症 例が集まってくる国立がんセンターでも年間に3例しかないということは、この疾患が 見つかることがあるからといって、健診を有効化することはとてもできないと思いま す。  目的疾患というのは、年に1回やる定期健康診断になじむということは慢性疾患でな くてはいけないし、潜伏期がある程度長く強い自覚症状が先にあるようなものを、わざ わざ健診でお金をかけて、あるいはその期間まで待ってする必要がないということを考 えますと、例えば急性肺炎の発見ということを健診の目的にする必要は、自ずとないか と思います。  肺気腫や、前回の議論でもCOPD等は問題だというお話がありましたが、通常から 考えて、まず咳や痰のかなりひどいものが出てというほうが大事であろうし、レントゲ ン所見を待つ必要は決してないものであるかと思います。サルコイドーシスについて は、この辺は私が話すより、工藤座長を初めとしてご専門の先生方がいらっしゃるの で、医学的な内容や現在の進歩も含めて、ご修正いただければありがたいのですが、一 応私の理解の範囲で申しますと、サルコイドーシスというものについては明確な治療法 がないにもかかわらず、自然治癒というのが結構あって、見つけることの利益がそれほ どないということがあります。  検査の費用・侵襲ですが、放射線による発がん性ということはありますので、たとえ 1例でも結核がいるなら見つけなくてはいけないという議論は、逆にその結果として1 例でもがんをつくっていいのかということと併せて考えないと問題になりますし、平成 14年に厚生労働省が行った労働者健康状況調査を見ますと、以前に比べて健診を実施し ない事業所の実施しない理由が、費用の問題を多く挙げているわけです。これは決して いいことではないのですが、実施率を高めるという中で、できるだけ大事なものをやる ということ、その必要性が強調されなくてはいけないのですが、費用が高い検査を残し ていくと、バリヤが高くなっていくということはあるかと思います。  検査の有効性を厳密に言いますと、私は有効性は感度と特異度というように言い換え ています。例えばじん肺を間接撮影が大部分である、職域の定期健康診断で見つけるの は非常に効率の悪いことであって、じん肺法では厳密に高圧直接撮影ということを決め ているかと思います。これは胸部レントゲンの1枚のPAで撮っていきますと、肺門部 や胸膜、あるいは循環器、心臓大血管系というのは、大変大きな異状が見つかります が、それを見つけるための手法としては不十分なものではないかと思われます。  精密検査の問題に関しては、先ほどの全衛連の方のご報告にもありましたが、CTの 検査は感度が高くいろいろな所見を発見するわけですが、同時に放射線の被ばく量が非 常に多くなり、そちらの害を多くする。そうすると、有所見をたくさん見つけるという ことは、そういうものに被ばくするチャンスを増やす危険性があるということを認識す る必要があるかと思います。  例えばCTは感度が非常に高いわけですが、何を見つける感度かということまで含め て考える必要があると思います。治療の対象でないもの、あるいは治療できないものを 見つけるということにおいて感度が高くても困るわけで、治療すると良いものを見つけ るかどうかという意味では、現在らせんCTが肺がんの検診として普及しつつあります が、これが本当にやるべきものを見つけているかどうかという議論は、まだ決着をつけ てないという理解をしています。  疾患発見後は診断をつけることで終わりではなくて、疾患を見つけて診断したら治療 をする。何かしら改善をして、最終的に受診者、患者さんの利益にならなくてはいけな いわけですが、それがないもの、先ほどではサルコイドーシスがありましたし、結核の 治癒所見を見つけるということ自身に利益があるわけではないと思います。多少とも治 療ができるにしても、ほとんど望み薄のもの、例えばアスベストでよく起こる胸膜悪性 中皮腫については、まだ非常に治療成績が悪いということもあって、それがどの程度か は、医学の進歩とも併せて考えていかなければいけないと思います。  今後の職域健康診断の中で胸部レントゲン検査はどうあるべきかということを、4頁 で最後に述べていますが、以上の4つの大きな領域、細かく分けますと8つの点から検 討してみますと、労働安全衛生法という、いろいろな罰則を伴う費用負担が事業主であ るというようなことも併せて考えますと、結核以外の疾患を対象というように考えるこ とはできないのではないかと考えています。結核というのは時代とともに有病率、罹患 率が変わってきたわけで、伺うところによると現在は全体で0.04%の発見率ですが、こ れは諸外国で、すでにやめたというレベルをはるかに下回っているということで、結核 予防法改正のときにあったと伺っている議論であるハイリスク群、デンジャー群に絞っ た、より効率の良い健診ということを考えていくべきではないかということです。 ○工藤座長  どうもありがとうございました。いま矢野委員のほうから、労働安全衛生法に基づく 胸部エックス線写真検査についての有用性に関しては、むしろ否定的な立場からのご意 見だったと思いますが、両方のご意見を踏まえて、少し皆様方からご意見をいただきた いのです。いずれにしても、今回こういう問題が提起されてきたきっかけは、結核予防 法の改定であるわけですが、戦後50年ぶりの改定ということで、そもそもこうした集団 健診が日本の結核を減らすために大変大きな役割を果たしていたのは事実であります が、発足の当初からすれば、罹患率で言えば大体25分の1で、死亡率で言うと100分の 1に減っているというのが現状だろうと思います。そういう中で、今回のこういう見直 しが出てきているわけです。  先ほども申し上げましたが、議論には2つあるわけです。1つは有用性、あるいは有 効性といったような問題点が1つ。これは科学的に本当に有効であるか、国民医療にと っていかがかという問題があるのと、もう1つはこれを労働安全衛生法として取り扱う ことが、果たして妥当かという問題があると思います。最初に、前者の問題について少 しご意見をいただきたいのですが。 ○安全衛生部長  その前にいいですか。 ○工藤座長  はい、どうぞ。 ○安全衛生部長  柚木委員のペーパーの所で、我々行政に関する所がありますので、そこだけちょっと お答えさせていただきたいのです。審議の内容と直接関係するわけではありませんが、 ここで何か結論が初めにあって、そのための見直し案であるというような書き方になっ ていますが、それはこの議論をしていただいている立場から、いわゆる労働安全衛生上 必要かどうかということをこの場で議論していただくだけであって、我々は予断をもっ て何かをしようというわけではないということを、ひとつ申し上げたいと思います。  結核予防法が改正されたからといって、直ちに労働安全衛生法の健康診断規定を改正 するのは適当でないと書いてありますが、すでに4月に改定されていますが、労働安全 衛生法上はまだ改正されていませんので、特にそれが改正されたからといって直ちに改 正しているわけではなくて、ここで議論を踏まえて改正するかどうかを決めるというこ とです。  もう1つは、労働政策審議会の審議を経ないと、ということがありますが、これはす でにこの委員会は労働政策審議会に、こういった委員会を設置するということを審議し ていただき、ご報告させていただいています。もちろん報告の結果、労働安全衛生法の 規則、規定を改正するということになれば、それは労働政策審議会のほうの審議を経な いといけませんし、改正しないことになると、また労働政策審議会のほうにはご報告を させていただくというようなことですので、その点は誤解のないようにしていただきた いと思います。  だんだん議論が細かくなっていきますと論点を見失いがちになりますので、少しだけ 我々の考え方を申し上げますと、定期健康診断の見直しは、あくまで結核健診では、す でにハイリスク者等に対しての健診は実施しますが、それ以外の一般の方については、 胸部レントゲンは撮らないということになっていますので、労働安全衛生上果たしてハ イリスク者たる方が、すでに結核予防法の議論の中で行われた人たちだけでいいのか、 あるいはさらに海外派遣労働者の方々が雇われる際にはどうするのかといった点につい ては、またこの中でもご議論をいただきたい。ただ大枠のところの議論については、す でに結核予防法のほうで議論をしていただいていますので、そこについての議論はもう 必要ないのではないかと思っています。  これからご審議いただくもう1点は、労働安全衛生法の定期健診が、結核を除いた場 合に果たして必要であるかどうかといったところですので、そこだけを再確認させてい ただきます。どうもすみませんでした。 ○藤村委員  今朝の新聞で2紙ぐらいに、厚労省の姿勢として、保険者協議会を使って安衛法の健 診、老人保健法の健診、その他の健診を、もっと積極的にやろうと。それによって将来 の医療費を抑制して行こう、非常に抑制する効果があるというのが出ていました。これ は、たぶん厚労省はまだ言っていないものを新聞が書いたと思うのですが、厚労省とし ても健診をもっと充実させて、将来の医療費を抑制しようという気持はあるのだと思う のです。火のない所に煙は立ちませんので、今日の新聞記事になったと思うのです。厚 労省は、盛んに保険者協議会を立ち上げようと思ってやっていますが、それも同じこと なのです。  費用対効果の問題で、費用を誰が負担していて、その費用を少しでも減らしたいとい う意思がどこかにあるかどうか、それを理解しようとする人たちがいるかどうか、それ が1つの大きな問題なのです。そうではなくて、純粋に将来の医療費を減らして、健康 な国民をつくるためには、やはり健診したほうがいいと思うのです。  矢野委員のお話で、例えば54人の結核の患者を発見するために1人の悪性腫瘍をつく るという話がありましたが、文字どおりこれを伺っていれば、確かに1人がんをつくっ てもいいのかという話になりますが、54人を知らないでほうっておいたら、結核は職場 で54人には止まらないわけです。集団感染をして、これが4倍なり5倍なり、ときには 10倍になる可能性もあるわけです。そういう可能性を考えたならば、私が最初に申した ように、健診、スクリーニングは、なるべく濃厚にやるべきである。それがいまの「健 康日本21」や与党の「健康フロンティア戦略」の向かって行く場所でもあるわけです。 矛盾することを何か片方だけ突っついてものを言ったりしないで、もっと大局的に調べ たら、これは当然続けてやるべきである。日本医師会は、全く何かによって利益を得る ということはないのです。どこの医師も関与しておりませんし、影響を受けていませ ん。でも一般に医師という立場から言うならば、検査はできるだけしたほうがいいと思 います。 ○安全衛生部長  ちょっと誤解があるといけませんが、いま言われたのはたぶん健康フロンティア事業 のことだと思いますが、これは今年から厚生労働省で実施していますが、その一環とし て、いわゆる職域あるいは地域、職域の中でも労働安全衛生法、さらには健康保険証の 保険者がやる健診等について、きちんと体系的に整理して、あとエビデンス・ベイスト で行うべきではないかという議論で、いま健診全体の整合性等について議論していこう ということです。  その中でエックス線検査の扱いはそれぞれ違っておりまして、老人保健上は40歳以上 の健診ですが、エックス線検査というのは、いわゆる肺がんの発見のためのエックス線 検査として位置づけられています。あと労働安全衛生法上は、現在胸部レントゲン検査 になっておりまして、個々の健診ごとの意味が違っているということがあります。  もう1点は、やはりスクリーニング検査ですので、スクリーニングとしての有効性、 それから費用対効果、効率性といったものがなければいけないのだろうと。労働安全衛 生法上は事業者の費用負担でやっておりますので、当然ながらスクリーニングとしての 有効性というのは、求めざるを得ないだろう。そのときに果たして別格で見直しがあっ て、それ以外の疾患を対象としてスクリーニングとしての有効性があるかどうか、その 辺が先ほどの矢野委員、柚木委員の報告書の中に、それぞれの立場からのご意見がある と思いますが、そういったことではないかと認識していまして、決して一方で健診を進 めろと言って、片方で何か見直しをしているということではありませんので、1つの政 策の中でそれぞれ有効性等について議論はしていかなければいけないだろうと思ってお ります。 ○土肥委員  現場の産業医をしている者として、せっかくいいお話をお伺いできたので、ご質問を させていただきたいと思います。まず、柚木委員がお話になられた中に「胸部エックス 線検査が、健康増進法の基本方針である一次予防にも役割を果たしており」と最初にお 話になられた部分がありますが、この点について後段の部分ではほとんど触れなかった ので、具体的にそこがどのようなこととしてお示しをされているのかということを、お 教え願えませんでしょうか。頁数ですが、2頁の最初の部分に「一次予防にも役割を果 たしており」という文章が出ていて、そのようにご発言もされたと思います。 ○柚木委員  定期健康診断の中に胸部のレントゲンがあることによって、1つの労使関係の安心 感、それと蔓延することを考えると、結核の発見であっても、やはり健康増進につなが るということが言えると思うのです。  労働安全衛生法で独自で護られているから、結核が蔓延しないで水際作戦で済んでい るわけです。 ○工藤座長  作業現場で、実際に産業医としてのお話をいただきたいのですが。 ○土肥委員  是非その部分についてお話したいと思います。一次予防として意味があるかもしれな いという期待を持つわけですが、いままでの議論の中で、疫学的には、具体的な効果と しては示されなかったのだと思います。例えば胸部エックス線を撮ることによって、喫 煙に対する抑止力になっている可能性がゼロではないことや、いろいろな生活習慣を改 善すべきモチベーションの1つになっているかもしれないという期待は持つのですが、 具体的な一次予防の効果として、胸部エックス線を現場ではあまり感じないというよう に思ったものですから、何か具体的な根拠があれば、是非お話をお伺いしたいと思いま す。 ○藤村委員  いまの話ですが、一次予防に役に立たないだろうという話ですよね。 ○土肥委員  いや、役に立つのではないかという期待を持っているのですが、具体的な数字として はあまり出てこなかったというように思うのです。 ○藤村委員  要するに、私が申し上げるまでもなく、胸部レントゲン検査は、肺結核だけを対象に しているわけではないですね。 ○土肥委員  もちろんそうです。 ○藤村委員  例えば心胸比をやってみると、血圧と高脂血症の値とを比較して、胸部レントゲンを 診てみる、そういうことによって一次予防に役立つというのは、エビデンスがないとか データがないとおっしゃいましたが、実は大変な報告がありまして、アメリカとスウェ ーデン、日本から同時に出たもので、例えば糖尿病を減らしたり、脳、心臓疾患を減ら したりするために、運動指導や運動療法、食事療法などが非常に役に立っています。お そらく病気の半分ぐらいは減らすだろうというようなデータが、同時に出ています。つ まり一次予防の役に立っています。 ○工藤座長  藤村委員、胸部のレントゲンについて、一般健康診断の話ではないですね。 ○藤村委員  胸部のレントゲンについても同じでしょう。ですから、胸部のレントゲンを見れば、 例えば心臓が大きくて危険があるということもわかるわけです。ですから、そういうも のを見て、それが一次予防に役立つということを申し上げているのですから、それは理 論をもっと大まかに、大局的にみてもらいたいのです。 ○工藤座長  そうですね。先ほどの藤村委員のお話は、胸部レントゲン写真は厳密に、より厳重に 健診はやればやるほどいいというようなお話と伺ったのですが。 ○藤村委員  厳重にとは言っていませんが、現状を廃止したり変えたりする必要はないでしょうと いうことを言ったのです。 ○工藤座長  実際には10万人のレントゲンを撮って、7人結核の患者さんが見つかっている、昔は 10万人やれば600人ぐらい出ていた時代もあります。ですから、それが果たしていま。 村田委員が放射線診断学の専門ですが、その立場からどうですか。 ○村田委員  いま胸部エックス線写真で健診するためには、何かターゲットを絞ってないといけな いというような議論があったと思うのですが、胸部エックス線写真の能力は、逆にいろ いろなものを拾い上げることができて、それは必ずしもほうっておいていいものばかり でなくて、心臓もそうですし、縦隔の病変やいろいろなものを拾い上げることができる ので、それは確かに感度や、そういう数字を出すのは難しいですが、臨床的な1人の患 者さんの健康を、そこで病変を拾い上げるという意味での役割は非常に大きいので、必 ずしも一人ひとりの個別の疾患をターゲットにしないとスクリーニングの意味がないと いうことにはならないのだろうと考えます。  もう1つ、先ほど結核の患者さんを10何人か見つけるのに、エックス線の被ばくによ って肺がんを1人つくってしまう、というような議論があったと思います。でもそれは まだ決着がついていない、スウェーデンが持っていますICRPのほうですが、考えら れるのは、確かにエックス線被ばくによって肺がんは発生するのですが、逆にそれによ ってより多くの肺がんを拾い上げている可能性もあります。先ほど肺結核を何例か見つ けるのに1例の肺がんという話をされました。でも同時に、肺がんも何例か見つかって きているはずです。だからそのベネフィットとリスクを考えるときには、エックス線被 ばくによるデメリットのほうが強調される嫌いがありますが、私は必ずしもそれはまだ 決着はついてないと考えています。 ○工藤座長  それはまだいろいろ決着がついていない部分があって議論をしているので、大変難し いですね。 ○村田委員  肺がんのスクリーニングの有用性に関しても、いまアメリカやヨーロッパでランダマ イズドのスタディが進行中です。ですから、肺がんの健診の有効性というのはまだ決着 がついていない問題ですから、先ほど出ていましたが、イエスでもノーでもまだないも ので、それに基づいていま判断するというのは、難しいのではないかという印象を持っ ています。 ○工藤座長  日本肺癌学会のこの間の理事会でガイドラインの提案がありましたが、従来は胸部レ ントゲン写真は肺がんの検診に関して、エビデンスBというように位置づけているので すが、これが現在のガイドライン委員会の提案はエビデンスCに落としたんですね。 ○村田委員  アメリカで胸部エックス線写真による健診は有効ではないというのが、まだ現時点で あります。  日本ではケース・コントロール・スタディをたくさんフジムラ班でやられて、かなり 一定のデータが出ていますので、日本とアメリカでの意見が食い違うということで、あ のときはグレードをCにした、まだきちんと言えないということにしました。 ○工藤座長  その辺が、まだ本当の結論が出ていないところでのものですね。 ○村田委員  2010年ぐらいにいろいろなスタディ。 ○工藤座長  逆に言うと、完全に有用だというところもちょっと言いかねるというか、そういう灰 色の部分で議論せざるを得ないと思っています。 ○坂谷委員  健診の有用性に関しては、こんな言い方もできると思います。安心料であると。異常 を見つける率ではなくて、健診を受けた労働者が異常なしと言われた、異常所見がない ということでの安心を得て云々という有用性も1つあるということを、ちょっと考えま した。  どなたかがおっしゃいますように、健診の網を細かくして、たくさんの健診を余裕が あれば全国民にやるというのは、できればいいのは当然です。ところが今度の住民健診 のほうは、機会をたくさん与えるのですが、決して国民が受領の健診を受ける義務もあ りませんし、健診を受けなければいけないという罰則もないのです。いつにもってこの 問題は、安衛法で義務と罰則が付くようなものとして採用するかどうか、その1点だと 思うのですが。 ○工藤座長  おそらくそういうことだと思うのです。 ○坂谷委員  全く不勉強で申し訳ないですが、柚木委員の資料の中に書かれている血圧測定や採血 ・生化学的検査、肝機能や手術の検査は、これは仕事上に生じる異常ではないはずで す。もちろんわずかにはありますが。採血・生化学的な検査は、生活習慣病に関わるも のは、安衛法で規定されている検査なのですか。 ○労働衛生課長  そうです。 ○工藤座長  その辺の根拠を、ちょっとお話いただけますか。 ○労働衛生課長  何回かに分けて検査項目をいろいろと拡張してきたのですが、少なくともいま坂谷委 員がおっしゃられたように、生活習慣病に関する部分であるということで、現在では当 初の導入時プラスこのような生活習慣病を基調にして、例えばいまいちばん問題になっ ている、労働者一般の過重労働におけるストレスの増加による脳疾患、心疾患、心筋梗 塞等の梗塞・出血、そういう致死的かつ重症なものの危険リスクファクターとしてスク リーニングして、かつ産業医が把握しておいたほうが良いという考え方でこれが入って いる、というように私どもは解釈をしているわけです。 ○坂谷委員  直接的ではないですが、一種の労務災害にあたると、こういうことですか。 ○労働衛生課長  あたる場合もあるということです。 ○坂谷委員  あるということですね。 ○労働衛生課長  関連が非常に強いということです。 ○坂谷委員  なるほどね。 ○安全衛生部長  この考え方は、作業関連疾患という考え方で、いわゆる職業病という発想ではなく て、業務そのものが何らかの発症に影響を与える、そういったことについて基本的には チェックすると。作業関連疾患といっても、遠いものと近いものがあります。先ほどの 胸部エックス線などは、そういう意味からすると作業関連疾患としては、いろいろな疾 患が入っているので、結核や肺がんとなるとかなり遠いかなという感じはしますが、基 本的には作業関連疾患ということでチェック、ということである程度フォーカスされて いると。 ○坂谷委員  同じ意味で胸部レントゲンも議論されるべきだろうと思います。 ○安全衛生部長  そうです。そういうことをご審議いただきたいということでお願いしているわけで す。 ○坂谷委員  堂々巡りになってしまいましたが。 ○工藤座長  作業関連で肺に影が出るものに関しては、じん肺があるのと、もう1つは発がん性物 質の場合は、特殊業務の健診というのも別にあるから、そこから外れてしまうのです。 いま坂谷委員がおっしゃったように、詰まるところは嫌だと言っても受ける義務があっ て、そしてやらせる義務があって、事業者並びに受診者の側も、これを義務づけられて いる、そういう労働安全衛生法で胸の写真を撮ることが果たしてどうか、結局そこに尽 きてしまうのです。 ○村田委員  確かに胸部エックス線上、所見が出てくる一部の有害疾病については、特殊健康診断 が義務づけられているというのが現状だと思うのですが、すでにまだエビデンスのない 作業環境要因が存在する可能性や、それが疑われるということが起こり得る可能性を持 っているわけで、一般定期健康診断というのは、そういうものをそのときに発見する可 能性の1つであるという考え方もできるかと思うわけです。  先ほどの結核も当然そうなります。海外に行ったときの結核というのもそうなるかも しれませんし、例えば有機粉じんの対応については一般粉じんとして対応されています ので、その中に入ってこない。正確に言うと、明確で有害性がはっきりしたものについ ては、特殊健康診断が存在しているわけですが、そうではない有害要因について、これ からエビデンスが出てくるかもしれないという形の胸部エックス線という考え方の議論 があってもよろしいかと思うわけです。というのは、いまあるものをやめようとしてお りますので、将来それがあればこういう疾患が発見されたのではないかというリスクに ついて、議論なしにやめてしまうという部分については、どうかなと思うということ と、当然そういう余地を残すのであれば、先ほど堀江委員が言われたように、一部のリ スクについて、胸部エックス線を定期健康診断から外したとしてもできるという仕組み の中に置いておくのが適切ではないかというように、現場にいる者としては感じていま す。 ○工藤座長  難しいものが、認知のものに対する話をやっていくとなると、大分難しい。 ○村田委員  質問なのですが、労働安全衛生法の基本的ないちばん最初のポリシーというのは、労 働によって起因する疾患のみを拾い上げるということなのか、それとも健康で労働でき るような状態を維持するというための法律、というそこなのですね。 ○工藤座長  それとはまた違いますが、労働安全衛生の話ですね。 ○村田委員  労働安全衛生というか、結局健康で仕事ができる、そういう状態に保つための健康診 断なのか。わかっているもの、あるいはわかっていないものを含めた職業に起因する疾 患に限っていこうという考え方なのか。 ○工藤座長  それは事務局からお答えいただきます。 ○労働衛生課長  基本的には事業主は、労働者を労働力として使用する場合に、健康確保の義務がかか っています。それは要するに、労働することによって健康が損なわれることのないよう に、配慮を義務づけられているということなのです。だから仕事が終わって暴飲暴食を して、酒を飲みすぎてアル中になったというのは、事業主には全然責任はないわけで す。  ところが、昨今ですと、朝から晩まで何十時間も残業をさせて、それで疲れたところ でストレスがたまって、血圧が上がって、例えば脳血管に何か障害が出たという場合 は、労災認定のいろいろな審査がありますが、これは事業主の責任であると認められる ようなことになるわけです。そのような事例が現在は増えているということです。 ○工藤座長  ストレスが強くてタバコを止められなくて肺がんになったというのは、これは駄目で すか。 ○労働衛生課長  それはタバコを吸うというのは、仕事ではないでしょう。 ○工藤座長  そういうのは、むしろ判例でですかね。 ○労働衛生課長  判例というか、まあ。 ○安全衛生部長  もうちょっとクリアに言いますと、いわゆる旧来の職業病で、ある作業が一定確率で ある疾患を引き起こす、これは特定業務従事者の特殊健康診断です。定期健康診断の場 合は、ある作業がある疾患を引き起こすというわけではないです。これは一般的な貧血 にしろ血中脂質や血糖にしても、例えば糖尿病や高血圧、心疾患があって作業が影響し て発症するという、いわゆる作業関連疾患の考え方を、基本的にとっているのではない かと思われます。ただ、そこまで厳密に考えているかどうかは、ちょっと確認ができな いのですが、大体労働現場との関係という位置づけでは、そういう考えです。結核もか つては労働者の疾患であって、それもかなり一般的な疾患であって、特定の業種等の関 連であるじん肺などは、職業病としてもやるのですが、そういうことで作業関連疾患と 職業病、それが定期健康診断と特殊健康診断と、大体そのくらいの意味づけかと思いま す。 ○坂谷委員  もう1度申しますが、いま課長がおっしゃった肝機能検査の血中脂質等の検査が業務 関連で悪化し、発病する可能性があるというような理由で安衛法の中で認められた検査 であるならば、胸部レントゲン検査もほぼ同等の位置づけになるのではないか、単純に 考えていまそう感じました。 ○労働衛生課長  念のため資料2の2頁をご覧ください。(3)ですが「医師が必要でないと認める場 合の健康診断項目の省略」というのがありまして「以下の項目については、医師が必要 でないと認めるときは、省略することができる」ということになっておりまして、身長 の検査は、20歳以上の者は身長が大幅に変化することがないであろうと。喀痰検査は胸 部エックス線検査によって病変の発見されない者、結核発病のおそれがないと診断され た者。先ほどの貧血、肝機能、血中脂質、血糖検査及び心電図というのは、40歳未満の 者(35歳の者を除く)と。これは35歳は節目でやれと、こういう話なのです。尿中の糖 の有無の検査は、血糖検査を受けた者については省略してよろしいというようなことで す。  先ほどの生活習慣病の検査項目に該当する部分につきましても、実際は年齢でもって 省略可という形にはなっています。ただエックス線については省略なしに、雇入れが行 われれば毎年1回きちんと全員やりなさいというようなことで、結核が華やかなりしこ ろの状態では、それがかなり効果があったということですが、現在ではここの部分でど うでしょうかという評価も、またあろうかと思うわけです。 ○坂谷委員  いいものを出していただいたと思います。まさしくこれと同等ではないでしょうか。 この縛りの右半分の省略できる者というようなところで細かく考えてみて、その左側の 貧血検査、肝機能検査は並んでではなくて別立てになりますが、胸部レントゲン写真と いうような所に落とすのがよかろうかと、こんな感じがしました。 ○安全衛生部長  ここで問題になるのは、先ほど来から申し上げているスクリーニングとしての有効性 の問題なのです。要するに胸部レントゲンで結核を撮るというのは1つの目的がはっき りしたスクリーニングですが、胸部レントゲンで目的のない、要するに胸部疾患で発見 される疾患を撮りますよ、見ますよということが果たしてスクリーニングとして有効性 があるのかということを議論していただきたいということなのです。ほかのものは貧 血、肝機能、血糖値にしても、目的ははっきりしているのです。ですから、胸部の疾患 だけは結核をとってしまうと、目的というのが非常にぼやけてしまう。  先ほど言った、いわゆる有害的な、健康に対する有害性の問題、そういったものも含 めてどうかということを先生方にご議論していただきたいのです。 ○坂谷委員  わかりました。 ○相澤委員  血中脂質とか高血圧というのは、おそらく本人の生活習慣とか、そういったものが悪 いためにリスクを抱えているものだと思います。その方々に対して、同じような仕事を してると、いわゆる作業関連疾患の脳血管疾患とか心臓疾患を発症するおそれがありま すから、そういう場合には、産業医は、作業時間が長ければ本人に指導しなければいけ ない。胸部エックス線については、そういった意味よりも、むしろある病気を見つける というスクリーニングの意味のほうが強いと思います。ですから、それが意義があるか どうかということは評価しなければいけないと思います。今日、柚木先生が示した資料 4、これは大変貴重なデータで、これだけの数を集めたものはないと思います。資料 No.2の表ですけれど、そのA−3によると、有所見率が6.51%で、要精検件数が1.1で す。この胸部エックス線というのは、あまり特異性がないということが一つの表われで あって、先ほど先生が安心料とおっしゃったのですが、有所見と言われると労働者は不 安に思うわけですが、実際は疾患を持っている人は非常に少ないということの一つの表 われだと思います。  さらに次のページでは、資料4ですが、確定疾病を見ると、肺野の病変で、いわゆる 陳旧性炎症性病変とかいったものが3割ぐらいあって、その他の疾患についても治療が 必要なのは、肺結核とか腫瘍性の疾患とかいくつかありますが、そういったものに限ら れるということです。  見つける率は非常に、感受性は高いけど特異性は低い、そういったことを併せている のではないかと思います。やはりそれを労働者全員に対して行うことの意義が問われて いると思います。私も、今日ある事業所に行って来ましたが、女性の労働者に対しては マンモグラフィーをやるとか、エコーをやるとか、あるいは内視鏡なんかも備えている 診療所がありまして、そういった会社ではやりたいことはどんどんやっていただくとい いと思いますが、全国の労働者に対してやるべきものかどうかというのは疑問です。 ○坂谷委員  わかりました。 ○堀江委員  現在、老人保健法では、他に健診を受ける機会がある住民に関しては受診する資格が ない形になっていると思います。仮にこれは、医師が必要でないと認めるような、一般 的な事務所等の労働者が会社でエックス線検査を受けられない場合は、老人保健法で受 診の機会を与えるという政策は可能でしょうか。 ○労働衛生課長  市町村によって、老人保健法に基づく健診内容と健診のやり方そのものは全部異なっ ておりまして、市町村によっては、安衛法上の健診を受けたか受けないか、まったく別 立てで健診に入ることが可能な所もかなりあります。受診率を上げろと言われて、会社 の健診と市町村の健診とがん検診と、全部受けていらっしゃる方もいますし、また、一 切受けないという方もいるわけで、ですから、厚生労働省としては、今回のものも全体 の健診を、もう一回再検討しなければならないのではないかということです。 ○堀江委員  先ほど来の議論を伺っていて、目的疾患も不透明、また、効果も不透明なところで議 論せざるを得ないわけですが、確かに作業関連疾患に限定するという意味からは、事業 者ができることが限られているものに対してここまで健診を徹底する必要性まではない と思います。一方で、国民の健康増進とか健康確保ということを考えれば、やはり、ど こかで労働者である住民がそういった機会を得るという政策も併せて担保していただく のが、事業者側あるいは労働者側の安心にもつながると思います。 ○安全衛生部長  胸部レントゲンは基本的に肺がん検診でやっていて、老人保健事業の健診そのもの は、他で受診機会がないものが対象になっています。  先ほど課長から申し上げたように、やり方は市町村によってもバラバラです。東京都 などではかなりお金がありますので、それこそ我々みたいな、明らかにどこに勤めてい るかわかっている人にも全部配って、受けても別にお金をとらないという状況ですが、 市町村なんかだと、この人は勤めている人とか、地域に行くとわかっているので、その 人を外したりしている場合もありますが、基本的に受診機会がないと、胸部のレントゲ ンを撮っていない、老人保健事業でいえば肺がんの検診を受けていない、ということに なれば、それは基本的な対象になると思います。ただし、その肺がん検診の実施率が、 各市町村全部で100%やっているかどうか、私自身はいま承知していません。 ○労働衛生課長  もう1つ、話を進めます。 ○工藤座長  加藤委員、どうぞ。 ○加藤委員  先ほど、ハイリスクの話をしたのですが、いまのご議論で思いついたのですが、胸部 レントゲン健診について、結核についてもその中に入れておいて、除外項目について除 外することができると言った場合と、ハイリスクだと必要だとして規定していること と、法的な意味は違うかと思いますが、その辺をちょっと解説していただけますか。 ○安全衛生部長  それは現在の健診項目が、胸部エックス線検査については現在、ドクターの判断で省 略することができることになっています。ですから、原則をどちらにするかです。胸部 エックス線検査をやるということになれば、必要のない人には除外すると。しかし、ハ イリスクにしかやらないということになれば、法律はどう書くか難しい部分があります が、単純に書くとすれば、医師が必要であると認める者についてだけやりなさい、とい うことで書きます。  ただ、いまも、言ってみれば職域の中で、一部の職域については結核予防法で決めら れているので、いずれにしろあの部分は直さなければいけなくなりますね。 ○工藤座長  そうですね。 ○安全衛生部長  仮に一般の人はやらないということ、結核予防法に併せて、結核健診という意義から やらないことになった場合は、その部分だけはやりなさいと書かなければいけなくなり ます。そこはまだやらないという前提の話だったらそうなりますが、別にやらないとい う前提ではないので、おそらく議論した上で最終的に決まると思います。 ○労働衛生課長  よろしいでしょうか。時間も経ってきましたが、専門家の先生方にお諮りしている内 容は、基本的には結核予防の変化ですけど、先ほどのように、貧血や肝機能や血中脂質 については医師の判断で省略できる、という項目があります。それは、当時はまだ雇用 の若い世代について、そんなに頻繁に検査する必要はないだろうということでやってき たわけです。ですから、レントゲン検査、胸部エックス線についても、例の柚木先生か らの資料でいくと、20歳台で精検率は0.2ですけど、50歳台だと1.4になって60歳台で 2.6に上がるというような、世代によるリスクの差は結構あるわけですね。男女による、 また、被ばくのリスクの差というのもあります。いま市町村で肺がん検診をやっていま すが、これもおそらく一律でやっている所はほとんどないと思います。たばこを吸って きてインデックスがいくつになったとか、そういうリスクを持っている方々を中心にス クリーニングをかけていくのが効果的である、という形でやっています。例えば残すと 言ったときには、リスクの少ない所をどうやって除くのかという話、やめると言ったと きには、リスクの高い所をどうやってきちんと押さえるかということをご議論していた だいて、ある程度固めていきたいと思っています。  今日は各委員にもいろいろ資料を出していただいたところですので。文献や他の健診 との兼合いで、保険者が社会保険やいろいろな所でやっている部分があるので、これら との関係についても少し整理した上で次回お出しできるようにしたいと思います。 ○安全衛生部長  この4月から結核の一般事務健診で、胸のレントゲンがなくなりました。市町村によ っては、結核の健診のフィルムをそのままがん検診として読み換えている所が昔は相当 あったのです。そうなると、そこもかなり変わりますので、果たしてがん検診としての 胸のレントゲン写真をどれだけの市町村がこれから撮るのか、というのはわからないの です。そこら辺は非常に不確定になっています。 ○加藤委員  逆もありまして、高齢者は一応65歳と年齢はついているのですが、実際は市町村で決 められるようになっているのです。ですから、逆に結核健診はやめたのだけれど、肺が ん検診の中で結核を診ていくというふうに変えた所まで現われました。私がいま思った のは、リスクの高い人を挙げていくというのは非常に難しいものですから、そういう意 味で逆の発想ができるのかと思ったので、お聞きした次第です。 ○工藤座長  予定の時間を過ぎてしまったので、今日の議論はこれでおしまいにしたいと思いま す。  全体として、従来どおり胸部健診について、レントゲン写真を撮ったほうがいいとい うご意見も出してもらいましたが、同時に、やはり旧来のままでこれを事業者、あるい は労働者、双方に義務づける、そういう特殊な労働安全衛生法、その下でやるべきかど うかということについてはいろいろ疑義が出されたと思います。これの最終的な決着と いうか、考え方をどちらに転がすかということについては、次回に持っていきたいと思 いますが、もしやらないということになっても、それでは、ハイリスクのようなところ をどうきめ細かくケアするかというような問題も出てくるでしょう。それから、横並び の様々な法規があります。先ほども出てきた老人保健法の問題だとか、健康増進法とか じん肺法とか、いろいろあります。それぞれで規制している胸部レントゲン写真の取扱 いとか、その辺の所ももう一度眺めていただいて、最終的な結論に至りたいと思うの で、今日はここまでにしたいと思います。  誤解があるといけないので、私のほうから申し上げますが。先ほど柚木先生から出さ れた資料の3ページに、日本呼吸器学会と日本肺癌学会の見解が書いてあります。実は 私も呼吸器学会の常務理事ですし、肺癌学会も理事ですので、どのような対応をしてい るか、その経過は全部よく知っています。それで、ここに書いてあるとおりではないこ とだけご承知おきください。  単純に反対しているということですが、これは専門家集団ですので、もう少し慎重な ご意見をまとめているようです。それは近々厚生労働省に提出するということを聞いて おります。そういう内容ではありません。 ○柚木委員  ここに書いてありますように、4月4日が全衛連の最終回になっていて、その段階で この辺までのことはみんな冨田先生がまとめたのです。 ○工藤座長  それはたぶん、いろいろ伝聞があっての話だと思います。廃止に反対だということで はないです。 ○柚木委員  ああ、そうですか。 ○工藤座長  単純ではないのです。 ○柚木委員  報告しておきます。 ○工藤座長  そういうことで。 ○主任中央じん肺診査医  次回の会合までに、論点を再度整理させていただき、検討するための資料を準備した いと考えています。本日は柚木委員と矢野委員にご出席をしていただきましたが、他の 委員の中で、次回以降プレゼンテーションを行う先生がおられましたら、できれば今週 末までに事務局までご連絡いただければと思います。また、本件等に関してヒアリング を行う必要がある団体、学会等があれば、併せて事務局にご連絡いただければと思いま す。事務局でも、関係団体、学会等に質問して意見等を求めていきたいと考えていま す。次回の会合の日程は決定次第ご連絡したいと考えておりますので、よろしくお願い いたします。 ○工藤座長  それでは、どうも。 ○労働衛生課長  どうもありがとうございました。 照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課(内線5493)