05/05/12 社会保障審議会医療部会第10回議事録        第10回 社会保障審議会医療部会                              日時 平成17年5月12日(木)                      14:00〜                   場所 厚生労働省専用第15会議室 ○企画官 ただいまから、第10回「社会保障審議会医療部会」を開会いたし ます。皆様方におかれましては、お忙しい中をご出席いただきましてありが とうございます。  本日は、杉町委員、龍井委員、野呂委員、堀田委員からご欠席の連絡をい ただいております。なお、杉町委員の代理として、九州中央病院副院長の北 村昌之参考人、龍井委員の代理として、日本労働組合総連合会生活福祉局次 長の花井圭子参考人、野呂委員の代理として、三重県健康福祉部医療政策室 長の服部浩参考人がご出席です。北村委員は遅れてまいります。ご出席いた だいております委員の皆様方は、定足数を超えておりますので、会議は成立 しております。  本日、参考人として本部会にご出席いただいております先生のご紹介をさ せていただきます。尾道市医師会長の片山壽参考人です。横浜市南区医師協 会南区メディカルセンター訪問看護ステーションの管理者の高砂裕子参考人 です。ホームケアクリニック川越の院長の川越厚参考人です。以上、3名の 先生方におかれましては、本日お忙しい中をご出席いただきましてありがと うございます。後ほど、この3名の先生方から、それぞれ在宅医療の現状等 についてご説明いただいた上で、委員の皆様にご議論いただくこととしてお ります。  片山先生は、主治医機能を基盤に置いて、多職種協働での医療介護を包括 的に提供する、いわゆる尾道方式を中心に展開されておられる方です。高砂 先生は、訪問看護ステーションの管理者として、またケアマネジャーとして、 神奈川県介護支援専門医協会の副理事長としてご活躍されておられます。川 越先生は、自らのクリニック、そして地域のケアグループにおいて、在宅ホ スピスを実施されており、また在宅ホスピス協会の顧問でもあります。それ ぞれのご活動、ご経験を基にしてお話をいただけるものと思っております。  資料の確認をさせていただきます。座席表、議事次第のほか、資料1「在 宅医療の推進について」、資料2は各参考人からの提出資料です。なお、委 員の皆様には、片山参考人からご提供いただきました参考資料をお配りして おります。また、会議の開催日調整の1枚紙をお配りしておりますのでよろ しくお願いいたします。以降の進行につきましては、鴨下部会長よろしくお 願いいたします。 ○部会長(鴨下) 本日は、お忙しいところお集まりいただきましてありが とうございます。議事に入る前に、本日欠席の杉町委員、龍井委員、野呂委 員の代理として出席いただいております、九州中央病院副院長の北村昌之参 考人、日本労働組合連合会生活福祉局次長の花井圭子参考人、三重県健康福 祉部医療政策室長の服部浩参考人の出席につきましてご異議はございません でしょうか。 (異議なし) ○部会長 ありがとうございました。議事に入りますが、議題に入る前に、 本部会での審議に関し、事務局に対して確認したいことがある旨三上委員か ら発言を求められております。三上委員、ご発言をお願いいたします。 ○三上委員 ありがとうございます。部会長のお許しを得て、事務局にお伺 いいたします。5月1日の日経新聞の朝刊に載りました記事についてお伺い いたします。5月1日の日経新聞の1面に、有床診療所に関する記事が載っ ておりました。診療所も病院並みということで、人員・設備に関して基準を 設けるということ。  中身は、厚生労働省はどんな診療所でも一律で定めている規制を大幅に見 直す。複数の医師や看護職員の配置なども、病院並みの体制を義務づける。 一定以上の人員や設備がない状態では入院を認めないことで、診療所に質を 高めるか、入院医療から撤退するかの選択を迫る、という断定的な記事が載 っておりました。  前々回4月13日の医療部会において、有床診療所の議論をし、医療の質・ 安全の面から何らかの基準が要る、できれば病院並みの基準が要るのではな いか、という議論があったことは事実であり承知をいたしておりますが、同 時に、現在の有床診療所が地域医療に果たす役割であるとか、現在の医療分 化、メリット等についての議論もしたと思っております。  また決定していないことに関し、このような断定的な記事が載るというこ とは非常に遺憾であると思います。事実、これを読んだ会員から日本医師会 のほうに、どうなっているのかという問合わせが相次いでおります。また具 体的な内容として、診療所の人材配置や設備に応じて規制や報酬を数段階に 分け、最も高いランクが病院に近い水準となって、その診療所だけに手術を 手がけられる入院を認めるというような、議論をしていない内容までこの中 に記事として載っております。  これを見ますと、厚生労働省から何らかの情報提供、取材等による情報提 供があったのではないかと考えられるわけですが、この辺のところについて 事務局のご意見を伺いたい。どうなっているのかということです。 ○総務課長 5月1日の日経新聞の記事に関してのお尋ねですが、三上委員 からございましたように、有床診療所のあり方については、当部会において 4月13日にご議論いただきました。平均在院日数が長くなっている現状を踏 まえ、医療法の48時間の入院期間制限、人員配置等の基準のあり方をどのよ うに考えるか、あるいは有床診療所には機能の異なるさまざまな診療所が存 在することから、これらの機能の違いを踏まえた規制のあり方についてどの ように考えるか、といった論点を中心にご議論いただきました。  三上委員のご指摘にもありますように、先生方からはさまざまなご意見が 出されました。私どもとしては、当部会として、一定の方向に意見が集約さ れたといったものではないと認識をしております。  また、厚生労働省としては、記事には、方針を決めたみたいな書かれ方が されておりますけれども、私どもとしては今後当部会において取りまとめら れますご意見を踏まえ、有床診療所についての対応方針を決めていきたいと 考えており、現段階において新聞記事のような方針を固めたということは全 くございませんので、その点なにとぞご理解をいただきたいと存じます。 ○部会長 三上委員、よろしいですか。 ○三上委員 はい。 ○部会長 本日の議題は、「在宅医療の推進について」となっております。 事務局からの説明にもありましたように、本日は参考人として、在宅医療に 携わる3名の先生にご出席いただいております。最初の資料説明の後に、3 名の参考人の方々から、それぞれ在宅医療の現状等についてご説明をいただ き、それを踏まえて先生方にご議論をいただこうと思います。  まず事務局から、資料1「在宅医療の推進について」の説明をお願いいた します。 ○企画官 資料1の1頁に「基本的考え方」ということで、これは論点にも 書いているようなことです。在宅医療については、医療法第1条の2の2項 に「医療の提供の場」ということで、平成4年の第2次医療改正で、医療を 受ける者の居宅というのが医療提供の場として位置づけられました。  2頁は、保険給付の種類ということで療養の給付、訪問看護療養費、家族 訪問看護療養費等があります。療養の給付の中身として、もともと診察を家 庭でやった場合でもなっていたわけですけれども、4号の「居宅における療 養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護」ということが平成6年に 入りました。  「在宅医療の現状」ということで大づかみな話ですが、6頁以降のグラフ を見ながらご説明いたします。6頁に、在宅医療費が国民医療費に占める割 合ということで、昭和45年以来の数字で、棒グラフが全体で国民医療費です。 例えば2002年の数字でいうと、在宅医療費が6,737億円、その他の国民医療 費が30兆4,000億円ということで、全体が31兆円余になります。そのうち の在宅医療費が2%程度ということです。これについては、社会医療診療行 為別調査で、点数の案分で推計しております。  在宅医療費として推計した6,737億円の内訳を点数の種類で計算したのが 7頁で、在宅医療費の中身です。これを往診と訪問診療、在宅療養指導管理 料、その他に分けております。2002年では6,700億何がしの内訳を推計する とこうなるということです。上の四角にありますが、在宅で療養する患者に 対する診療としては往診の定義の話ですが、患家の求めに応じて赴くものの ほかに、計画的な医学的管理の下で行う訪問診療を分けて書いておりますが、 これも在宅に訪問してやるということにかけては同じような話です。そうい う形での伸びが出ております。  訪問看護については8頁です。これは平成4年度に訪問看護事業が創設さ れ、平成12年度にはその部分が介護保険に移行しました。データの空白があ り一部点々となっているところがありますが、およそこのような動きです。 平成14年度では、医療保険、介護保険を合わせて1,500億円程度です。国民 医療費が30兆円で、介護保険も含めますから内数にはなりませんけれども、 国民医療費に対する割合は約0.5%程度になっております。  訪問看護ステーションの数についてのグラフが9頁です。介護保険導入ま での、平成12年度までにかけてどんどん増えてきましたが、その後は概ね横 ばいで伸びは鈍化しています。約5,000ほどの訪問看護ステーションがあり、 約半分が医療法人立です。  10頁のグラフは観点を変えて、亡くなる場所がどう変わってきているかと いうことです。1951年においては自宅で8割の方が亡くなっておりましたが、 最近においては約8割が病院・診療所で亡くなられているということです。 都道府県により若干の違いはありますけれども、そんなに大きく違いがある わけではありません。  11頁は、終末期における療養の場所ということで昨年、終末期医療に関す る調査を検討会で行いました。痛みを伴い治る見込みがなく死期が迫まって いる場合の療養生活は最期までどこで送りたいかという質問に対し、「自宅 で」が約6割ぐらいありますが、自宅で療養し、必要になれば医療機関なり 看護ケア病棟という方もだいぶいました。6割のうちの6分の1、自宅で最 期までというのはその1割でした。  「自宅で」を希望しつつ、「最期までは」と言っているのが1割という差 は何があるのかを考えたのが12頁です。家族の負担、症状急変時の対応を心 配し、最期まで自宅というのは難しいのではないかという意識になっている ようです。  資料の3頁の「在宅医療の現状について」で○を付けて6つ書いてありま すが、いまグラフ等を使って説明したことがここに書いてあります。どうい うことが論点になろうかということが4頁です。「在宅医療の推進に当たっ ての論点(案)」ということで、1つ目は、在宅医療に関わる医師、歯科医 師等の専門性とか、どういった資源があるのか、そういう選択に資する情報 がしっかり提供されるような環境整備が必要であろう。2つ目は、在宅医療 の提供者である医師・かかりつけ医等の充実・普及ということ、また地域で のネットワークづくりが必要ではないか。3つ目は、訪問看護サービスの充 実・普及があるのではないか。この辺りは、医療計画のほうでも検討が必要 かと思います。4つ目は、終末期に関して、特に患者の死が目前に近づいた 場合の、関係者の連携のあり方。死亡診断書作成のところに*を付けており ますが、患者が亡くなった場合に、主治医の対応がうまくできないと、救急 車で病院に運ばれて、そこでは診断書を書けないということがありますので、 そこは全体でうまく連携できるような形、対応できるような形をとっていけ るように関係者が理解をしていくことが必要ではないか。  5頁は、在宅医療で非常に重要な1つである薬、特に麻薬に関する流通の 問題、あるいは適切な服薬指導、保管・管理指導等がうまくなされる形。ま た、医薬品以外の医療機器、衛生材料等についてもそういう仕組みが必要だ ろう。  2つ目の○は、介護する家族の負担の観点から、原則として医行為でない と考えられる行為についての解釈の明確化等で、ヘルパーが可能な行為が必 要以上に制限されないようにするべきではないか。これについては、資料の 13頁以下に、本年3月31日から先月末まで1カ月間、一般からの意見を募集 したものです。13頁の第2パラグラフで、個々の行為の態様に応じて個別具 体的に判断する必要があるわけですが、「医行為」の範囲が不必要に拡大解 釈されている、という声も聞かれているところでありますから、判断に疑義 が生ずることの多い行為で、原則として医行為でないと考えられるものを列 挙して示す、という形を進めております。現在意見を整理中ですけれども、 今後この通知の廃止等により、できるだけ疑義が生じないように対処する必 要があると考えております。  5頁に戻り、「その他、在宅医療関連」ということで、在宅医療に限りま せんけれども、その地域における関係機関の連携をしっかりやっていくとい うこと。また、在宅医療に関しては必ずしも居宅でなくても、ケアハウスな ど居宅に代わる場所での必要な療養という観点の話。医療廃棄物の取扱いに ついて、市町村との関係をうまくやっていくにはどうしたらいいかという検 討も必要かと思っています。  いちばん最後の頁に、4月27日の、介護保険法等の衆議院通過の際の、厚 生労働委員会での附帯決議の中にいくつか付いたわけですが、その2号とし て「在宅療養をより一層支援していくための必要な措置を講ずること」とい うのが付きましたので、参考までにご紹介させていただきました。 ○部会長 次に、参考人の方々から、資料2に基づきそれぞれご説明をお願 いいたします。最初に、尾道医師会長の片山壽氏からお願いいたします。 ○片山参考人 尾道医師会の片山です。提出資料と、本日私がしゃべらせて いただく内容とは一致しない部分がかなりあります。写真の部分は、個人情 報保護の関係で資料には付けられませんのでいろいろなものが付いておりま す。私が本日お話する内容の周辺の状況と思ってご覧いただけたらと思いま す。総務課長から、主治医機能のことも含め、25分間でやるように指示をい ただいております。  尾道という場所は、日本では高齢化率が高くなっています。在宅医療を語 るといいますか、日本の医療のことを語るにおいて、日本の高齢化というの は必然性のあることです。世界一の高齢国家です。26.3%といいますのは、 高齢者研究会で想定した、2015年の高齢者介護のときの数値を超えておりま す。患者平均年齢で、通常のかかりつけの患者が来る6月ぐらいを見て、72 .26歳というのが私の診療所の平均年齢です。在宅については、平均年齢81. 12歳。101歳から56歳までということです。  病名と、がん病名の付く方がこの程度、神経難病の方。それから、胃瘻、 腸瘻、在宅酸素療法といろいろこういう方がおられます。尾道の場合は、 long-term care management programsをやっております。ですから、いま退 院予定の方はプログラムに入っております。この数値の中にもそれを含んで いるということです。それは、近日中に入所予定、あるいは検査入院予定の 方もこのように入っています。それから、複数の医師が関与し、在宅をチー ムで行っているものが14名。3名以上が8名なのですが、特徴的に高齢化率 が上がると、認知症を合併された方がこのような数であります。  これは、資料に付けておりますので、後でご覧いただけたらと思います。 これは尾道医師会が考えたというよりは、たぶん日本中こういう課題を持っ ているということだろうと思います。医療モデルの転換が必要であること。 この部会のお話からすると、主治医機能による在宅医療のシステムアップと、 フレキシブルな地域医療連携。地域医療の再編、在宅医療の充実と主治医機 能を介した急性期との機能分担。  病院施設、在宅における医療ケア提供の共通認識。平均在院日数が短縮し て、急性期病院との退院支援、これのケアマネジメント導入の必要性が背景 にあろうかと思います。  尾道はどのぐらいの高齢化率かをグラフで見ればこのようになります。15 年先行モデルといわれています。医師会としては、地域医師会として、担当 する地域医療の中で、1994年から高齢化地域に対してのプロジェクトをやっ ております。  これは1994年に出した基本コンセプトです。これは、連続的にシステムを つくるために医師会で事業を立ち上げていこうということを念頭に、こうい うコンセプトをつくっております。最も重要なレベルというのは「主治医機 能」です。要するに、「1馬力の主治医」がどこまで機能を発揮できるか、 ということが最も重要であるということです。いろいろやっていく医師会事 業の中で、主治医機能を最大限に発揮できる環境整備をするのが医師会事業 だということです。要するに、主治医機能支援システムをつくるということ です。あとはこのようなことを考えておりまして、研修空間を充実させると いうことです。  つくったものは、このような救命救急システムを1991年に立ち上げ、病診 連携のシステムはある程度確定し、右に書いてあるのは年次ですが、こうい うものをつくっていったということです。ここでは在宅看護、24時間の在宅 介護、これは尾道地域内に24時間介護を医師会でつくったということです。  老健施設をメインに置いたのは、在宅支援機能のある施設であるというこ とです。これで、医療・看護・介護というものが同軸から総合的に稼働する。 同軸から提供できるツールとしてケアマネジメントを地域一体で検証するた めに、ケアマネジメントセンターを、研修機構としてつくっております。  その研修機構が実際にやったアクションが、この研修講演会の連続的系統 的なものであります。もっといろいろありますが、これだけ書き抜いたもの ですが、このぐらいの方においでいただいております。介護保険が近づいて まいりましたときには、誤認識がないように官僚の皆さんにおいでいただい て、正確なお話をいただいているということです。地域のシステムとしては、 知識を注入することでレベルを揃えるということです。  主治医機能というのはどういうことなのかよくわからないと言われるので すが、これは2003年のバージョンではこういうことです。これは資料に付け ておりますので、後でご覧ください。1994年のオリジナルは、Mind of Welf areを入れております。この仕掛けとして3原則をつくったのは、コンセプト だけでは駄目なので、主治医機能が重点ならば、どういう主治医機能を果た せばいいか。当時は、かかりつけ医機能と呼んでおりましたが、中でも重点 は在宅医療、在宅ケアをきちんとやろうということです。ケアマネジメント というのは、介護保険対応というわけではなく、もっと広い空間のケアマネ ジメントということ。あとは連携をちゃんとやるということです。  フレキシビリティというのは、主治医、かかりつけ医の極意ではあります が、結果的には利用者本意のということにはなると思います。そこでいちば ん必要なアクセスをしなければいけない、という責任を主治医は負っている ということです。  アカウンタビリティについては言うまでもありませんが、とにかくその都 度きちんとした説明をする、「現状評価」「予測」「選択肢」についての説 明をすべて行う。尾道医師会方式のケアカンファレンスが非常に行われてい るというのは、主治医機能の一部として行っていて、介護保険が行っている わけではありません。尾道で目指したことというのは、こういうものをつく ろうということでやってまいりましたが、ここに介護保険が出てきたわけで す。作ったシャーシの上にケアマネジメントのエンジンが乗ったということ で、こういうことができていったということです。  医療というのは、システムとして提供されるべきである、というのが基本 的な我々の考え方でありますので、協力型・連携型医療圏をつくっていくこ とと、地域特性に合った課題解決型のシステムをつくる。そういうことで、 結果的に社協と医師会が合体したり、民生委員と合体したりということで 新・地域ケアという形がいま見えてきているところであります。  これは、堀田先生とご一緒させていただいた高齢社会研究会の報告書の中 で、施設・在宅の二元論はやめて、地域という統合概念を出す。あらゆる障 害があっても、自分らしく暮らせることということで、個人の尊厳を重視し て、できれば在宅で過ごしたい。こういう場合は、地域のシステムで在宅を 支えなければいけないのですが、これはサポートする地域医療連携のシステ ムレベルに規定される部分が多いということです。ここで地域ケアの総合力 が、高齢社会では試されるということです。そこの中での安心の基盤として、 在宅医療というものがあることが望ましいということです。  尾道医師会でサービス評価機構をつくったのは2000年ですが、どのように サービス評価を行うかというときに、ケアマネジメントの達成度を測ってい くということでやりました。現状、在宅で要介護でサービスを受けておられ る方も、肺炎、腸閉塞、転倒骨折というのが、急性期病院に入院される場合 はよくありますし、また何回もあるわけです。  そこで、脳卒中の麻痺や廃用症候群などで機能が落ちて生活障害が出たけ れども、ここで退院ができようということであれば、ここで退院時カンファ レンスを、この支援チームが参加してカンファレンスを行い、在宅復帰をし ていただきます。そこで、まだ無理であると。平均在院日数が短縮していて 無理で、回復期を過ごさなければいけない、回復期リハビリが必要であると いう場合は、こういう回復期の資源を利用し、ここでよければ帰っていただ きます。そこで、本人に不安があったり、生活上難しいということがあれば、 ここで老健施設が在宅プログラムを持っておりますので、ここでその人の生 活に合った個別リハビリをやって、カンファレンスをして帰っていただきま す。ただ長期で見れば、これは在宅に帰っていただくというよりは、地域ケ アの自立支援システムに帰っていただくことになります。  このサイクルチャートをつくると、医療と介護というのはケアマネジメン トでつながる、急性期もつながるということです。これは、その都度カンフ ァレンスが間に入っていることで、各段階での機能評価が可能になりますの で、Evaluation and Managementということで、OMA(尾道メディカル・ア ソシエーション)Method on long-term care management progremsと呼んで おります。これは、在宅の継続を重視した、長期継続ケアのサイクルであり、 地域医療連携と介護を含んだものです。これは、「在宅療養の継続」のため のケアマネジメントサイクルということで、太い矢印のごとく、在宅のほう に求心力が向いているということです。急性期病院か慢性・回復期病院、そ れから老健施設、その他すべて在宅療養のバックアップ機能である。地域医 療連携というのは、効率的機能分担の中にあって、在宅医療の推進の必要性 というのは、急性期との継続性の中に大きなものがあると考えております。  整理した図でいきますと、高齢者医療と介護を考えたときに、現状現場で どうなっているかというと、医療保険というのは平均在院日数の短縮化を進 める、介護保険は在宅重視を再確認した。在宅医療というものがあって、急 性期病院との機能分担、受け皿として在宅が機能する。介護保険としては、 在宅は連携共同空間です。こういうことから、ここに新・地域ケアといいま すのは、自立支援システム、要するに介護保険だけでは自立支援は無理です ので、自立支援システムとして長期にわたってその方を支えなければいけな い。その中で、安心の基盤として在宅医療がある。ケアマネジメントという ツール、いわゆる理論が全体に流れている。  これは包括されることでありますけれども、急性期病院には在宅の理解、 退院支援が求められます。これは地域のシステムに移行するということで、 医療保険と介護保険というのは、高齢者医療・介護については一体的な並給 状態があるということです。これは、ケアマネジメントがあることで可能に なっているということです。平成18年から地域医療センターの位置づけとい うのはこのようになろうかと思っています。だから、在宅医療推進の必要性 ということは、高齢者医療・介護と新・地域ケアと書いておりますが、在宅 医療の位置づけがきちんとしていなければ、これは難しいのではないかと思 います。  絵で描きますと、このように新・地域ケアの中に、急性期医療だけが飛び 出て、保健政策が前に出ております。これを書き抜いていくと、このように 地域というのはどうかということになると、急性期は臍のように外へ出て、 回復期は中です。医療機能がありますが、重度でも在宅でQOLが維持でき るということが目標です。介護保険の領域は、これだけしかないといえばな いわけです。  ここの回復期以後、フレキシブルな活用をし、自立支援を行っていくこと が必要である。長期に考えれば、地域福祉や医療の自治体サービスとかいろ いろなサービスが必要であります。ケアマネジメントというルールで長期継 続ケアを行いますが、ここにはいろいろなものが必要です。  これは、どこにでもある資源ですから、地域資源を再編することでこれは 可能であるということです。結局、在宅医療というものについて、ケアマネ ジメントが一体を支配し、長期継続ケアが可能になるのですが、在宅医療と いうものがここに位置づけがあったほうが、地域としてはいろいろなことが うまくいく。この主治医機能とくっ付いているわけですがそういうことです。  制度的に見ると、介護保険制度があって、在宅についてはいろいろありま したが、第1次医療法改正については、在宅医療の立ち後れが指摘されてお ります。1990年に訪問看護ステーションが制度化された後非常に変わってき ました。1992年に居宅が医療提供の場として明定されております。介護保険 が出て、これで随分とケアマネジメントの導入により、在宅現場は変わりま した。今度どうなるでしょうか、というところが大事なところであります。  これは、進行性核上麻痺という重度の方の在宅です。通院ができなくなっ たときのことで、1回目のカンファレンスを行っています。このように、い ろいろなチームが周りに付いております。この方が、1回目の入院をされた ときの、退院時のカンファレンスの風景です。これは、急性期病院でやって おります。こういうチームが在宅を支えています。白いほうが在宅で、黄色 のほうが病院です。  嚥下性肺炎で3度目の入院をされたときの、退院時のカンファレンスです。 このときは手術をしていますが、残った胃に胃瘻をつくり、気管切開をして 在宅に帰る。そういうことで、ここで気管・食道専門医が開業医ですが一緒 に付いています。病院主治医と在宅主治医の二元でやっているということで す。病室でそういう説明を本人にしています。頭は非常にクリアな病気です。  これは在宅の現場風景ですが、状況が良くなったときには、スピーチカニ ューレでしゃべれるようになっています。24時間で、18カ月在宅をやってお ります。気管切開のトラブルは随分あった人ですが、早朝に出血し、耳鼻科 医等が往診しています。  これは類天疱瘡という、非常に重度の皮膚疾患になり、皮膚科の開業医が 往診をして一緒にやっているところです。1日4回のガーセ交換があり、看 護管理を加えて、わりと早く治っております。  これは、その間いろいろなことの説明、それから生存期間の問題など、イ ンフォームド・コンセントを含めて、急性期病院でカンファレンスをやって いるところです。在宅主治医と病院主治医が並んでいるというのがその風景 です。  今度は、腸閉塞で入院していただいて、こういう風景です。この方の5回 目のカンファレンスには、仙台のカワシマ先生もおいでになって大変議論い たしました。その後2カ月経ったときに無呼吸が始まって、人工呼吸器を付 けて在宅に帰ろうというときのカンファレンスです。このときは、人工呼吸 器が付きましたので、訪問看護が2系統になっております。このように状態 に応じて、そのチームはだんだん増えたり減ったりということであります。  こういうのは、ただ介護保険を動かしているわけでは全くなくて、主治医 と医療への信頼ということに尽き、ケアカンファレンスやケアマネジメント をきちんとやっていくことです。高齢国家における高齢者医療における包括 的医療サービス提供のモデルとして重要ではないかと思います。退院時のケ アカンファレンスをやると、急性期病院はどんどん変わっていきます。簡単 に言えば患者本位になっていくということです。  医療政策のモデルを推進化するためにも、このカンファレンスは必要であ る。介護保険がないときに、あのような病院でのカンファレンス風景という のは現実にはなかったということです。これは、ただみんながお見舞いに行 っているわけではなくて、一定の業務として、ケアカンファレンスとして、 利用者支援の共通認識の下に、急性期病院の中、あるいは病棟で集まって、 利用者のためのケアプランを検討しているわけです。  いままで、退院患者がこのようなサービスを受けたことがあったでしょう かということになるので、これは介護保険というのは医療を変えたというこ とになると思います。利用者本位というのは、患者本位の確認であり、利用 者の利益のためにするわけですから、ケアカンファレンスは非常に重要だと いうことです。  環境の変化というのは普通に書いてあることですけれども、在宅医療の環 境というのが単一の医療ではなく、地域包括ケアシステムにおける在宅医療 という位置づけでこれからはやっていかなければいけないだろう。高齢化は 必然だということです。それから、平均在院日数の短縮化、退院支援の課題 という、病院難民という言葉が出ているようでは困るということです。主治 医機能がきちんと機能すれば、こういうことは可能であろうと思っています。  これは、遷延性意識障害で全く意識のない方を在宅に連れて帰りたい、と いうことでやっているカンファレンスです。この方が介護者で、こういうメ ンバーで病棟でやっております。気管切開をやって、留置カテーテルで前立 腺がんがあってということです。いままで苦労して一緒に家を造ったから、 そこで看取ってやりたいということでいまやっているところですが、ちょう ど1年経ちました。15分ぐらいでやりますので、脳外科の手術中で上がって きて、カンファレンスをやって、また手術に戻るということです。  このときのプログラムをしてある中で、急性期病院をこの方が退院される ときの課題はこうです。これは資料に付いています。これについては、在宅 療養のときのチームはこういうチームであります。これで支えて、課題を解 決していくということです。  このグリーンのところに、右側の赤い触手が当たると見ていただいて、こ れは24時間対応です。喀痰吸引は大変上手にやられています。これは、初日 に確認しております。耳鼻科と初日訪問をしています。  これは、在宅44日後にどのぐらいのレベルでいけているか、微調整は必要 かということでカンファレンスをやっています。これは、モニタリングカン ファレンスということで泌尿科が来ています。在宅ではこういう風景で、ず っと寝たままでやっています。この方も在宅酸素療法を始めて、パルスオキ シメーターという酸素を測る機械を付けながら介護をしています。身体の向 きによって酸素が大変下がりますので、パルスオキシメーターを見ながらヘ ルパーが仕事をするということです。胃瘻の管理はこっちがやりますけれど も、カニューレの管理は全部耳鼻科医がやっています。留置カテーテル、前 立腺がんの治療は全部泌尿科医がやります。この人は、もともと意識がある ころからの主治医です。在宅医療というのは、バラバラでいくのではなくて、 ちゃんとシステマティックに必要な資源を投入しているということです。  感染症がいちばん重要ですから、冬に入ったときに肺炎で亡くなる率が大 変高いので、感染症目的のカンファレンス、それからモニタリングカンファ レンスを兼ねてやっています。排便コントロールや、感染・拘縮予防という のは、訪問看護が全部やることです。訪問看護の領域は大変広いということ です。訪問看護の看護管理が支えているということが言えます。  口腔ケアについては、歯科のドクターがやっています。尾道では、尾道歯 科方式口腔ケアプランというのがあります。これは、歯科衛生士が代わりに やっているところです。この方には皮膚疾患が4種類あり、皮膚科とのコン タクトは大変重要であります。11時に頼むと1時に来てくれる皮膚科の先生 ですが、在宅医療はスピード・アンド・プロフェッショナリズムなどと言っ ています。場合によってケアマネが把握しておかなければいけないことは、 ケアマネもこのように来ているということです。3台の車が、患者の家に来 ることはよくあります。バックアップについては、急性期病院がいつでも受 けます。腸閉塞ではないかということでチェック入院をして、4日間だけで 退院しています。  こうやっていくと、介護者を囲んで5人のベテランの医師が支えています。 このときのカンファレンスは、20%が介護で、80%が医療です。在宅医療と いうものはこういうことで、地域医療連携の中で成立しています。  これは尾辻大臣においでいただいたときのカンファレンスで、同じ型のカ ンファレンスです。1年経ったということで、それから介護者の方の話も聞 いています。この方は主治医が支えていきながら、このような医療提供があ り、こういう訪問看護・介護があり、これをケアカンファレンスでつないで、 きちんと系統的に長期フォローアップしていくのがProgressive geriatric careということで、OMAmethod on long-term care management programs というのはこういう成立をしております。  尾道の場合は、利用者があると、その課題を解決するために主治医がいる、 ケアマネがいるということでできておりますから、医師会で上から傘のよう にシステムを作ったということはありません。主治医機能が各々機能して、 それがつながって1つの地域を成立させている。いろいろ温度が高ければ、 いろいろな医師がそこへ協力する。独居であれば民生委員が行く、認知症が あれば除外診断チームが行く、予備軍を含めて尾道のDDプロジェクトとい うのは認知症対応のシステムとして動いております。  最後にアンケート集計を見ていただきます。主治医対応機関110のうち、 70医療機関が継続ケアをやる医療機関です。往診医療90%、何人ぐらいかと いうといちばん多い所は病院です。ハイテク系は50、看取りは64、緩和ケア が65、居宅療養科指導が64、カンファレンスは94、ケアマネとの連携も93、 訪問看護の利用は8割、診診連携はいいです、連携層をよく知っている、病 診連携もよい。歯科との連携は75%、民生委員と70%接点があるというのは かなりの成果だと思っています。痴呆の診断は約8割は可能。  カナダへ行ったときにいちばん勉強になったのは、このCCACというの があり、病院からの退院支援は急性期病院からの依頼が70%ということでや っています。こういうシステムが日本でもたぶん必要ではないかということ です。ご清聴ありがとうございました。 ○部会長 ありがとうございました。続きまして、高砂裕子参考人にお願い いたします。 ○高砂参考人 訪問看護事業の現状と課題、社団法人南区医師協会、南区メ ディカルセンター訪問看護ステーションの高砂です。資料の2頁目は、本日 の内容として、訪問看護ステーションの活動状況、全国的な内容と私どもの ステーションの紹介。そして、訪問看護ステーションにおける訪問看護の実 際。現行制度における訪問看護ステーションの課題についてお話させていた だきます。  3頁目の「訪問看護のしくみ」は、現在大きな制度として医療保険制度と、 介護保険制度によってサービスが提供されています。訪問看護をするに当た っては、主治医から指示書を頂戴し、利用者の所に訪問看護をしています。 また、介護保険制度においては、ケアマネジャーとの連携は必須で、居宅介 護サービス計画に位置づけられないと、訪問看護が提供できない制度になっ ております。  4頁目では、訪問看護ステーションの利用者の内訳を傷病別にお話いたし ます。循環器系の疾患の方が43.7%、次に神経系の疾患の方、次に精神及び 行動の障害という順になっております。循環器系の疾患の多くは脳内出血や 脳梗塞の方です。これは2001年度の結果ですが、訪問看護ステーションがで きた平成7年のころの調査では、循環器系の疾患の方が53.7%で、神経系の 疾患の方は9.7%、悪生新生物の方は4%ということで、この約10年におい て循環器系の疾患の方が10%減少している一方で、神経系の疾患及び悪生新 生物の方の増加が見受けられます。  5頁目は、保険の種類に関しての利用者の割合です。介護保険と健康保険 の割合は2対8で、これに関しては全国的にも、私どものステーションにお いても割合は同様です。  6頁目は、私ども南区メディカルセンター訪問看護ステーションの施設概 要です。平成7年2月に開設し、10年を迎えました。南区医師協会の定款で は、地域住民の健康保持及び増進に関する事業を目的とする事業を行ってお り、休日急患診療所や、訪問看護、そして災害時における医療救護に関する ことの中の1つとして、この訪問看護ステーションが運営されております。  横浜市においては、訪問看護ステーションの開設が少なく、最初は横浜市 と横浜市医師会がモデル事業に取り組み、その中で訪問看護ステーションを 運営することにより、高齢者の生活の場に訪問看護が入ることで、高齢者の QOLの向上が確認され、各区の医師会が訪問看護ステーションの開設を進 めております。現在、横浜においては135個の訪問看護ステーションがあり ます。  当訪問看護ステーションは、南区で初めてのステーションであり、現在は 私どものステーション以外に病院併設のステーションが2施設、社会福祉法 人が2施設、民間事業所が1施設、計6つのステーションがあります。南区 は、人口約20万人で、高齢化率が19.9%ですが、この6つのステーションが いつも目いっぱいの状況で活動をしております。  訪問看護ステーションの運営規定では、疾病や負傷等で寝たきりの状態、 又はこれに準ずる状態にあり、かかりつけの医師が訪問看護の必要性を認め た高齢者等に対し、看護師等が訪問し、療養上の世話、又は必要な診療の補 助を行うとともに、在宅福祉サービス及び保健サービスの連携・提携を図り、 在宅要援護者の生活の質の向上を図ることを目的としております。  私どものステーションは、介護保険制度の創設とともに、居宅介護支援事 業所、ケアマネジメント機関も併設しております。  パワーポイントを見ていただきますが、これが私どものステーションの玄 関です。就業者数は、看護師20名で、常勤が7名、非常勤が13名です。作 業療法士が1名おります。ケアマネジャーとの兼務は職員の6名です。訪問 は、7台の軽自動車と、14台の自転車で回っております。  看護師は、1人で1日に大体4軒を訪問していて、私どものステーション のいちばん高齢看護師ですが、おはようございますと、玄関にお邪魔する風 景です。  これは、私どものステーションの利用者数と平均利用回数です。人口約20 万人、高齢化率19.9%の地域ですので、地域の利用者ニーズは非常に多く、 どんどん利用者数は増加いたしました。いつも看護師の許容量目いっぱいで 活動している状況です。しかしながら、介護保険制度創設後は、利用者ニー ズをさらに重視し、そして重度化により訪問回数は増加している現状があり ます。  これは私どもの組織理念です。私どもは、どのような生活、医療が必要で あっても、その人らしく、その家らしく生活できるように、利用者や家族に 寄り添った訪問看護を専門性の高いチームで実践しています。  この利用者は、開設当初からの利用者で、訪問看護を10年使っています。 66歳のときに脳内出血になり、在宅療養を2年経過したところで訪問看護を 使っています。そして訪問看護ステーションは24時間対応による、安心感の 提供、いつでも相談できる場所としての役割を担っております。  これは、サービス担当者会議の写真です。脳梗塞の方が大腸がんになられ、 人工肛門を作り、奥様、利用者、訪問看護師、ケアマネジャーで今後ストマ 管理をどのようにしていくか、退院直後奥様に任されていたのですけれども、 ご主人が少し参加してみようということで会議を行いました。ケアマネジャ ーは福祉職であり、ストマ管理に関して、訪問看護師がこのように計画をし ていくとよい、というアドバイスをしております。南区の地域における他職 種との連携、協働の実践、専門性を認め合った関係づくりをしております。  実際の訪問看護の中でどのようなことをしているかというと、地域におけ る看護の専門性の発揮。看護の専門性とは、退院調整、症状コントロール、 病気があっても在宅で生活の質を確保する。合併症の予防、再入院の回避、 看取りを含めたターミナルケア、医療ニーズの高い利用者への看護、家族支 援です。  退院調整に関しては、在宅療養の円滑な導入・継続を目指した人・物・サ ービス、療養環境や社会資源の調整をしております。家に帰る地域(在宅) での受け皿の準備、訪問看護師の援助体制の整備、往診医の調整、家族に対 する介護・医療機器などの取扱いの指導、衛生材料の調達、医療廃棄物の処 理・取扱いの指導などを行っております。  医療依存度の高い方というのは、在宅酸素をしている方、腹膜潅流をして いる方、人工呼吸器を使っている方、さまざまな医療機器を使っている方が 現在は増えています。ただし、IVH(中心静脈栄養)の方に関しては、業 者がこれで3社目になっていて、採算性が合わないということで、業者の変 更が現在行われています。  訪問看護師が往診医を探すことに関して、皆さんはそうなのかと感じてい るかもしれませんが、まず退院のときに相談をお受けして、この患者にはど のような往診の先生がよいか、仲人役を頂戴することもあります。  病院においては、いろいろな衛生材料がありますけれども、家には衛生材 料が何もありません。そういう意味では、安心して在宅療養が提供できるよ うに、必要な物品の管理や、医療廃棄物に関してもどのように処理したらい いか、どのように管理をしたらいいか、ということの相談に乗っています。 ただ衛生材料に関しては、現在は訪問看護ステーションから物販ができませ んので、そういう手伝いができると、さらに利用者が安心するのではないか と思っております。  退院調整を図に表してみました。病院から、このような方がお帰りになら れるという相談を受けると、病院へ行ってどのような状況なのかを拝見しま す。その時点で医師が決まっているときもありますし、私たちが相談に乗っ たり、訪問看護師の予定を調整したり、そしてケアプランを作ったり、その 時点で他職種、ヘルパーや入浴サービスなど、チームづくりの中心を担うこ とになります。必要物品の手配においては、衛生材料や薬、医療機器、そし て公費の手続等に関しては、例えば介護保険が申請されていなければ、介護 保険の申請等の手伝いをすることがあります。  現在、私どもの利用者の主治医の内訳は、区内の施設の先生もいて、病院 勤務医21施設、63人になっています。開業医の先生が51人で、病院との連 携、会議においては都内の病院や神奈川県下の病院に出向いて、このような 会議に参加することがあります。訪問看護を利用したいという相談は、大体 目いっぱいの状況ですので、毎月10件ぐらいありますけれども、そのうち2、 3件は在宅医療に移行できない現状です。相談だけ受けて、実際に訪問看護 ができないという状況です。  そしてほとんどのケースは、在宅医療への相談とともに、退院調整が開始 され、約1週間ぐらいで退院となります。重症ケース、がんの末期の方や、 ALSの方においては、退院調整に約1カ月ぐらいの期間を要します。  在宅へ戻るタイミングを逃がす要因としては、退院調整の開始が遅い、病 状の悪化や変化が急激に起こったり、在宅へ戻る時期の見極めが十分ではな い、在宅へ戻れる患者が戻れていない、在宅医療・訪問看護に関する認識不 足ということで、例えば相談を受けて、家族と約束をして病院に行くと、今 日の朝から状態が悪くなっていて、家に帰れる状況ではない、ということに も遭遇いたします。  これは、がんの末期の患者の退院調整の実際です。70歳の男性で、前立腺 がんの末期の方でした。大変厳しい状況であるが、とにかく本人が家に帰り たい、家族も連れて帰りたい、ということで相談を受け、退院調整に時間を 要していると退院できないと思い、退院調整をしながら、実際には1週間程 度で家に帰りました。  この写真は、中心静脈栄養に関するものですので、この方ががんの末期の 方ではありません。退院調整とは、身体状況を拝見し、それに基づいて必要 な物品や準備、そして家族が安心して過ごしていただけるように支援いたし ます。ベッドやエアーマットの準備、そして安心して帰ってきていただける ような移送の手配、そして家族の中心静脈栄養に関する指導をしております。  この方の場合、患者が望む生活を実現するために、患者や家族を支援する。 訪問看護は退院日から毎日訪問を予定し、大体90分目いっぱい1回当たりの 訪問をしております。ただし、利用者や家族からの要望があればその限りで はなく、この方の場合も、土曜日に家族みんなといろいろな話をして非常に 元気だったのだが、翌日から話もしないし、ずっと寝てばかりで大丈夫なの だろうかという緊急の連絡を受けて訪問しております。  訪問看護の内容は身体の状況を拝見したり、疼痛コントロール、苦痛が少 しでもないように先生に相談しながら、薬剤のコントロールをしたり、身体 を拭いて少しでも楽にする手伝いをしたり、少しでも口で召し上がれるので あれば、食べる物を一緒に考えたり、そして中心静脈栄養の管理や、バルー ンカテーテルの管理、そして利用者だけではなく、家族が非常に不安な状況 でいますので、いまの状況でいいということや、今後どのような状況になっ ていくかということを説明し、医師への報告をし、医師が24時間タイミング よくかかわっていただけるように先生への報告をしております。そして最後 は、家族と一緒に身体を拭かせていただきました。  ALSの患者の退院調整の場合においては、在宅療養を受ける準備が整う までに、1カ月以上の退院調整期間を要することがあります。しかしながら、 この写真の方はALSなのですが、3年間の退院調整の期間を要し、在宅に 戻った方です。非常に今と違っていて時間がかけられた時代だったのかもし れないのですが、1年間は院内において人工呼吸器の方を在宅に出すための 準備、2年目が私たちが入って実際にどうやって在宅で暮らすか。そして3 年目が外泊の準備をしたりしながら実際に在宅を始めました。ここに写って いるのが人工呼吸器なのですが、これは3台目の呼吸器で、どんどんと呼吸 器自体もコンパクトになり、性能が更にアップしていったという状況があり ます。  どうしてALSの患者さんの退院調整に時間がかかるか、今後の疾病の経 過や治療方針が医師や看護師、利用者や家族に共有されていなかったり、現 実的には在宅移行時の利用者や家族、環境等の状況が難しい。例えば呼吸器 を付けるか付けないか、利用者の思いや家族の思いが十分に共有化されてい ない。そして24時間のケアが必要であり、利用者や家族の思いを尊重したチ ーム作りが重要です。  例えばALSの患者さんのご家族との1日を、このような表にしてみまし た。そうすると、ご家族は休む間もなく介護に当たっていらっしゃいます。 この方の場合は訪問看護を朝と夕方の2回お伺いすることによって、身体を 拭いたりしながら肺に溜まっている痰をお出しするようにして、1日2回訪 問看護をすることによって吸引の回数が、いつもは3時間ごとぐらいに目覚 しをかけたりしながら吸引をなさっていたご家族が、訪問看護によって吸引 の回数が減ったという状況があります。排便の状況だとかご家族のご支援を しています。  これは、どのような状況にある方でも環境を整えれば自宅での療養が可能 です。訪問看護はその可能性を現実に変えていく力を発揮します。この手前 にいらっしゃる方はパーキンソン病の方で、この文字盤を使ってコミュニケ ーションを取っていらっしゃいます。訪問看護師がいま写真を撮っているの ですが、実は偶然にこの方が小学校の同級生だということがわかって、この ALSの方のご主人であり娘さんです。この方の所に行っている訪問看護師、 そこに行っているヘルパーさんで、何十年ぶりかにこの2人が対面しました。 このALSの方は呼吸器を付けずに生き抜かれた方です。  訪問看護の現状と課題ですが、24時間、365日の生活の中で求められる要 求に、訪問看護は十分に応えることができていない。医療ニーズが高い方へ、 1人の利用者に対し頻回に、また長い滞在時間の訪問看護が求められていま す。病院の看護師が退院調整機能を発揮しきれていないため、必要な患者が 必要なタイミングで訪問看護を利用できていない。それは訪問看護師の人材 確保と育成、病院職員の在宅医療に対する理解の促進、退院調整機能の充実 のため、人員の育成と医療施設における退院調整支援部門の強化、支援、必 要な物品を患者宅へ供給するためのシステムの見直しが、今後、必要になっ ていくかと思います。訪問看護を知っていただくことが、まず大切であり、 そして病院を含む地域の皆さんと私たち、互いの協力が必要です。  今回、写真を提供いただくにあたり、ご利用者様に許可を頂戴するときに、 是非、在宅療養の充実をというふうに承ってまいりました。このような機会 を頂戴し心より感謝しております。ありがとうございました。 ○部会長 ありがとうございました。最後に川越参考人、お願いします。 ○川越参考人 私は在宅で働くホスピス医ですけれども、その立場から日本 におけるホスピス緩和ケアというものを見たいということと、どうして家な のかという話をしたいと思います。スライドを見ながらお話します。  これは横軸が、私たちの所へ相談に来られた患者さんが亡くなるまで何日 かかるか、そしてどのくらいで亡くなっているかということを表わした表で す。平均が2ヵ月以内です。ご覧になってわかるように大部分の方は非常に 早い時期に亡くなっています。つまり非常に回転の早いケアであるというこ とが言えるし、ケアの時間というのも非常に短いケアです。なかには例外的 に長く生きられる方もいらっしゃいますけれども、こういうケアの期間から 見て、いろいろな問題点が浮き上がってきます。 ☆スライド ここでポイントだけ申し上げますが、死亡までの時間が短いと いうことは、がん以外の病気をホスピスケアの対象にという議論もあると思 いますけれども、これをどう考えたらいいか。この問題点だけ挙げたいと思 います。PCUでは入院待ちの問題が非常に大きな問題になっていますが、 2ヵ月弱の中で2週間ぐらい待つわけで、そういう問題をどう考えていった らいいかということです。長期に生きられる方は緩和ケア病棟では限界があ ると思います。経済的な問題も出てくるわけで、では在宅でもいいかという と、在宅でも1年間、2年間生きられる方には特別な対応が必要になってき ます。そういう問題を出しています。  歴史は、ですから「死の病院化」ということで、家で亡くなる方が非常に 少なくなったということを表わした図です。ピンクが在宅者の頻度です。が んの方は家で亡くなる方は6%という数字を覚えておいていただければあり がたいと思います。  これはいろいろな状況が原因と考えられますけれども、情報不足、意識の 問題、サービスを提供する側の問題、制度、その他の問題があると思います が、問題の所在だけを挙げるにとどめます。  そうは申しましても、在宅医療というのは非常にやりやすくなった。特に がんの末期について、私は20年近く前からこの医療に関わっていますが、当 時と比べると非常にやりやすくなったということです。このグラフはモルヒ ネの使用量を表わしたものです。非常に伸びている。これは疼痛緩和がどの くらいのレベルにあるかの国のレベルを表わすと言われていますけれども、 そういう意味からいくと日本の疼痛緩和は非常に進歩してきたと言えます。 ピンクや黄色でいろいろなコメントが書いてありますが、こういうモルヒネ の消費量が増えたということは、さまざまなモルヒネ製剤が発売され、そし て使いやすくなり、いろいろな規制緩和があったからです。  では今はどうかという問題があるわけです。実際問題、現在の末期がんの 方が家でどういう生活をして、それをどういうふうに医療者が支えているか というデータはほとんどありませんでした。実は2年前、ここに書いている データベースを私たちの所で作り、そこである程度のことがわかるようにな ってきました。現在、1万8,000人ぐらいの方が家で亡くなっていますが、 ここに登録されている全国522の医療機関で1年間に亡くなった方の数をト ータルすると、2001年で1,978人ということで、大体1割強を医療機関がカ バーしていることになります。ここのデータを参考に、これからお話をした いと思います。 ☆スライド どこが在宅の末期がんの方を支えているか。これは在宅死をど こで診たかということなのですが、無床診療所が圧倒的に多いのです。1,370 で70%という数字が出ていますが、これは予想したとおりです。中心は無床 診療所で担われているということです。  この統計を取っていて私は非常に驚いたことがあるのですが、それは無床 診療所の中にも非常に多数の在宅死に関わっている医療機関があるというこ とです。月平均2以上というのは2週間に1人、がんの方が亡くなっている 計算になるわけですが、2以上の在宅死を支えている無床診療所が9、月に 4以上の在宅死を支えている所になると5例で、これは正直驚いています。  大体どういう所かということがわかるのですが、皆さん、数字がピンとこ ないと思いまして緩和ケア病棟との比較を出しました。緩和ケア病棟では1 年間平均107人、1つの施設で死亡退院しています。それと比較したのが右 です。仙台の岡部先生の所は117名で平均をはるかに超えています。こうい う医療機関が各地で頑張っていることがわかって非常に心強く思ったわけで す。  ではどういう医療内容のものを提供しているかについては、実は非常に難 しい問題がありますが、この3つの点です。末期がんの方をホスピスケア、 緩和ケアとして診るときにどういうことが必要か。必要最低限のサービスは どうあるべきか、目標としてどうあるかということを簡単に述べたいと思い ます。  在宅ホスピスケアというのは、この字のとおり在宅ケアとホスピスケアが 一緒になったものです。単に患者さんが家にいて、そこで過ごして、たまた ま家で亡くなったということとは違うわけです。家でホスピスケアを受ける ということです。  ホスピスケアの要件はたくさんあるわけですが、その中の3つに絞って説 明したいと思います。1つは24時間、365日担う。2つ目にチームケアでサ ービスを提供する。3つ目に高齢者と違って症状が日々刻々と変化しますの で、医師が特に頑張らなければいけない医療ですが、症状緩和がきっちり行 われることがホスピスケアでは要求されるわけで、この点についてお話しま す。  24時間体制では初級から上級という形を取りましたが、いろいろな24時間 体制があります。がんの方を家で診るときに24時間対応しないのは論外です。 電話対応だけという所もあるのですが、そういう所ではすぐ入院になってし まい、そこは諸々あるということで上級というか、本当に必要に応じて医師 や看護師がいつでも訪問する体制にないと無理だと思います。  そういう点から見ると、往診24時間体制でいく。あるいは訪問看護を行う 所が意外と少ないことに驚くとともに、この辺は医療機関ががんの方を診て いると言うからには頑張っていただきたいと思っているデータです。  チームケアですが、これも論外というのは医師や看護師だけで在宅ケアを 行うのは無理です。ホスピスケアとしてのチームはいろいろあるわけですが、 そのチームの中にボランティア組織がしっかり根付いていることと、スピリ チュアルケアを担当するチームメンバーがいることが、ひとつの質の高いケ アを提供するために必須だろうと思っています。  そういう点から申しますとまだまだです。いちばん右のボランティアのと ころを見ていただくと、チームの中にボランティア組織がある所は4分の1 です。  症状緩和ですが、特にがんの場合は痛みの緩和がいちばん問題になってく るわけです。上級というのは、ホスピスケアと言うからにはこのくらいのこ とができなければいけないということです。モルヒネの持続皮下注射ができ る。オピオイドローテーションと言われているオピオイドの変更が自由にで きる。こういうことが要求されると思います。そうすると最後まで痛みを在 宅で十分緩和できるわけです。こういうように末期がんの在宅ケアというの は、ある意味で非常に専門性の高い医療です。  この中で右下のところを見ていただきたいのですが、モルヒネの持続皮下 注射ができるかというのは64%ということで、坐薬や、飲めなくなって長く 生きる方がいますけれども、こういう方には皮下注射ができない。最近はパ ッチができましたけれども、そこで行き詰まってしまって入院ということに なるわけですが、医療者サイドさえしっかりしていれば、最期まで痛みのた めに入院することはないわけです。  努力目標としてホスピスケアの要件を幾つか挙げました。これは24件以上 やっている所を挙げましたけれども、大体、そういう所ではホスピスケアと しての要件を満たしていると言えると思います。  私たちの活動を紹介します。パリアンという、これは在宅ホスピスの専門 チームだと思ってください。クリニックと訪問看護ステーション、その他に スピリチュアルケアを担当する部分、ボランティアの部分、研究部門、倫理 委員会というものがこのグループの中にあります。同時に地域のいろいろな サービスとも連携して活動をやっています。  私たちの所は4年半で626人、年間に139人のがんの末期の方が相談に見 えています。その中で403人の方に在宅ケアを行っています。相談外来だけ で終わった方は232人いるわけですが、なぜ相談外来だけで終わったかとい う話をします。実は半分以上の方は他の往診医にお願いしています。その理 由は私のほうが手いっぱいということと、ちょっと距離があるということで す。ここで是非皆さんに知っておいていただきたいことは、施設ホスピスの 場合はベッドが空くまで待つということがあるわけですが、在宅の場合はそ ういうことがありません。そういう意味でこの53%を私の所で診れないから といって、私の患者さんが亡くなるまで待たせたわけではないのです。他の 所ですぐ在宅ホスピスケアを開始したということです。  実施した方が403人いますけれども、去年の12月31日時点で生きている 方が13人、中止した方が4年半で29人います。それを除いた361人の方が 亡くなっています。そのうち344人(95.3%)は家で死亡しています。これ はホスピス病棟で言うと20床弱の緩和ケア病棟に匹敵します。私がケアした のが大体60日弱と申し上げましたが、日本全国の緩和ケアの病棟の平均日数 よりは2週間長いわけです。これは待ち時間がないことと関係しています。  これは先ほど、大体どのくらいの規模なのかということで、前医師会長の 坪井先生の所よりちょっと少ないかなというところです。あそこは18床の緩 和ケア病棟です。  私たちの所が、なぜそういうケアができるかというお話をします。このホ スピスケアは医療チームのシステムが非常に大事です。6つほどお話します。 やはり人です。これがクリニックと在宅の看護師さんも含めたすべてのスタ ッフです。大体同じ規模の施設と比べて3分の1の人数で済んでいます。い ろいろな方が加わっているということで、その内訳です。哲学の共有という ものがない、ばらばらの考え方で1人の亡くなる方を診ることはできません ので、こういうフィロソフィーを共有することを大事にしています。情報の 共有ということで、火曜日と木曜日は朝の9時から30分ほどケースカンファ レンスをやっています。  我々は電子化した記録を取っていて、カルテだけでなく訪問看護も電子化 されています。そして共有のサーバーを使っていますので、もちろんいろい ろなパスワードをかけたりしていますけれども、お互いに情報の共有ができ る格好にしています。  ボランティアが非常に大事です。これは地域の方で、現在、42人の方が登 録してアクティブに働いています。全員無償のボランティアです。ボランテ ィア・コーディネーターが1人いますが、この方はパートの職員です。活動 内容については時間の関係で省略します。  データベースを非常に大事にしています。これは一人ひとりの患者さんに おける電子カルテと違ったK−DBと呼んでいますが、患者のデータベース です。  教育も非常に大事です。現在、スーパーローテーターが2名来ていますが、 開所当時から医学生と看護大生の教育に力を入れてきました。同時にやると いうことが私たちの教育の特徴だろうと思います。  そのほか幾つか活動をしています。独り暮らしの方にも十分問題なくでき る。デイケア、遺族ケア、地域への働きかけをやります。  これは16人の独り暮らしの方を診たということです。大体5%の方が独り 暮らしです。いまは私たちの所では独り暮らしの末期がんの方でも在宅ケア ができない、最期まで在宅死ができないという禁忌ではありません。普通に 診ます。  長期にわたる方に工夫が必要だという話をしましたが、デイケアが非常に 大事であることがわかってきました。ホスピスケア、在宅ケアというのは医 師も大事ですが、看護師の役割も非常に大事な役割です。私たちは看護師さ んが中心になってこのデイケアを運営しています。ここに写っている末期が んの方は全員がもう亡くなっていますが、亡くなる前にマージャンをしまし た。これが私たちのデイケアスタートになっています。  亡くなってからの患者家族もホスピスケアの対象ですから、遺族に対する プログラム化されたケアを行う。これは非常に大事なことで、手紙を出すこ とをここに記しています。  地域に対する働きかけ、ヘルスプロモーションがホスピスケアで重視され ていますが、地域の方を対象に、私が講師で無料の講演会をやったときのス ライドです。  ご存じのように両国では「吉良祭」というのがいつもあるのですが、一昨 年からボランティアの方がここのいちばんいい場所をいただいて、自分たち の活動資金を集めるということでやっています。そのときの図です。このボ ランティアの活動は自分たちで自立することと同時に、社会に対しての働き かけということを重視しています。後ろに私たちの活動のことが書いてあり ます。家にいてがんになっても最期まで十分できるんだよということを、ボ ランティアの人たちが率先して語ってくださる、そういう場を大事にしてい ます。  なぜ「家」なのか、この住まいのスライドでお話したいと思います。これ は44歳の男性ですが、直腸がんで家で亡くなった。なぜ家なのかということ があるのですが、本人も家族も満足する医療であるということが言えると思 います。これは本当にそのとおりだと思います。ボランティアとして支えて くださる多くの方がご遺族の方ということで、ご遺族の方がこういう医療を 進めなければいけないと率先してくださり、非常に満足度の高い医療です。 同時に、医療者にとっても非常に満足度の高い医療だと言えると思います。  もう1つ教えられたことですが、これは2年前でしょうか、読売新聞の作 文コンクールで総理大臣賞を取った姫井さんという方の作文を引用させてい ただきました。実はこの方は私が最期まで診たお祖母さんのお孫さんが書い た作文なのです。この作文は、小さい時からかわいがってくれたお祖母さん が年を取ってきて、特に最後はがんになって、最期の時を家で過ごして家で 亡くなった。そういうことを通して命というものについて考えたということ を書いた内容です。  私はこれを読みまして、お祖母さんが亡くなったということはどこにあっ ても起こることですが、家にいたからこそ命の継承ということがなされたの ではないかと非常に思ったわけです。そのことが現代の若者が命を非常に粗 末にする。あるいは1回きりの命であることを知らないようなことが普通に されていますが、この在宅でのホスピスケアというのは、人と社会、あるい は国を変える力を秘めている。そういう大事な医療だなということを最近、 しみじみと感じています。  最後に、今後の提言ということです。現在は病院から地域の診療所へ直接 ということで、先ほど片山先生から詳しい話がありましたけれども、私は頭 がシンプルな男なので、できるだけ物事を簡単にということを考え、こうい うふうにシンプルにしました。普通、いまはこういう格好になっています。  これからは患者さんが家で過ごすというときに、こういう地域の緩和ケア センターというものを想定してやったらいいのではないか。それには患者の 振り分けとか、大事なことは緩和ケアセンターで在宅ケアを実践することが 必要だと思います。コンサルテーションや教育、地域に対する働きかけをす る。地域の診療所は年間に1人か2人の末期がんの方の在宅死しか関わらな いような所ですから、非常に戸惑っているわけです。そういう所とも相談す るといいと思います。実は先ほどから話をしましたように、こういうセンタ ー的な役割をしている施設が日本には既にいくつか誕生しているということ です。  どうしてもこういう在宅でのホスピスケアというと、外国と比較してしま うのですが、そうでなくて、我が国の歴史、文化、我が国の土壌に合った在 宅ホスピスケアが、もう既にスタートしているのだということ。その土台の 上に乗って、これからの在宅ホスピスケアを考えていくことが重要ではない か。そういうことで私からの提言を終えたいと思います。ご清聴ありがとう ございました。 ○部会長 ありがとうございました。参考人のお三方、ご説明ありがとうご ざいました。最初の事務局の説明、関連する資料に関する質問、ただいまの 参考人の方々からの説明も含めまして約1時間弱、ご自由な意見交換をお願 いしたいと思います。 ○佐伯委員 尾道に暮らしたいなというふうに思いました。片山先生からい ただいた資料の中に、とても参考になったというトロントの例が挙がってい ました。その中で、0歳から100歳の社会保険に加入している市民であれば 必ずケアを受けられるという、そういう医療の提供モデルみたいなものが出 ているということでした。今回のお話、ややもすると国家の高齢医療という ことにポイントが傾きがちではあるのですが、0歳あるいはマイナス1歳ぐ らいからの市民も視野に入れていただいて、在宅医療全体を考えていただけ ればなと思いました。 ○古橋委員 お三方の先生にご質問させていただきたいのですが、まず片山 先生には、ご活動の拠点はキーワードとして「地域ケア」という視点を持っ てということでした。こういう非常に高度なというか、ワイドで行き届いた 地域ケアを推進できるたくさんの概念の図があって、私も伺っていて混乱し て付いて行きにくかったのですが、主治医のケアとケアカンファレンスの重 要性というあたりは見えたのです。大変多くの人が関わる、そこのコーディ ネーターというのは、結局どういう方たちがやったのか。それは事例によっ て変わるのか。それと尾道方式を推進していく原動力というのは結果的に何 だったのか。もう1つは、提供されるサービスにはある意味で人件費等も含 めて原価があると思います。そうしたサービス行為の原価と、そこに伴う医 療に支払われる費用を、行儀の悪い質問ですけれども、ある意味の採算性と いうあたりについてご検討があったのかどうか。更にもう1つは、インパク トのある事例をたくさん教えていただいたのですが、いま、尾道市立病院で は地域ケアに移行なさる対象者の増減の動向というのは、どんなところにあ るのか。すべての退院者に占める地域ケアにオンラインなさる人の割合とい うのは、どんなあたりなのかを伺いたいと思います。  訪問看護ステーションからの直接のご報告の中では、私も看護界にいて提 言のありましたように病院側の退院調整部所の力、退院に伴う看護職の力量、 能力、関心、取組みにとても問題があると思います。退院調整、退院支援機 能が非常によく働いていて、見事なディスチャージプランが、患者さんにと って有益なものになっている施設が全体の中でどのくらいあるのか。看護界 は医療提供体制として、そこを強化していくことが大変重要だと思います。 訪問ナースの人材育成とともに医療機能、病院機能としての退院調整支援機 能の強化がないと、なかなか進んでいかないと思います。そのあたりについ てもう1回、ご意見をいただければと思います。あと衛生材料や医療材料の 入手の困難性と、現行の中でのシステム整備ということのご提案がありまし た。現実的に利用者に納得度の低い、あるいは訪問ナースとして納得度の低 い現実というあたりを、教えていただきたいと思います。  川越先生には、パリアンの門を叩く人たちは、その方の居宅地からどのく らいの距離の方たちが来ていらっしゃるのか。結局、訪問サービスというの は、居宅地と拠点との距離の問題が大変大きいと思います。ある調査による と、結果的に過疎と過剰という現象が在宅ケアサービス提供拠点には既に起 きていることもデータとして出ています。そのあたりで具体的に600名を超 えて門を叩かれる方たちの、パリアンとその方たちとの居宅地との距離はど んな実態があるのか、教えていただきたいと思います。 ○片山参考人 ご質問ありがとうございます。まずコーディネーターという のは、結局、長期継続ケアです。1場面でなく継続的にということです。今 日、サイクルチャートをお出ししました。資料にも付いていますのでご覧に なっていただくと、コーディネーターの場合はほとんどはケアマネがやるよ うにしています。ただ、メディカルな部分は当然、主治医間の連携をします が、カンファレンスの場というのは、いわゆる多職種協働の集約的なイベン トですので、だから医療部分についてはドクター間の意見が出る。いわゆる 危機管理をしてケアの安全を期す。そういうことがまず必要です。  全体のコーディネートについて、ケアプランの原案そのもの等については ケアマネジャーが全部やります。看護管理についてのポイントは訪問看護か ら出ます。言ってみれば学際的手法ということをやっているわけです。そこ はいろいろな専門性の機能分担でそういうものが成立するのが、多職種協働 のいちばん優れた点であろうと思います。ですから、皮膚的疾病があれば皮 膚科のドクターがそこにいる。前立腺がんがあれば泌尿器のドクターがいる。 こういうことというのは、利用者の方が持っている課題に対応したチームが そこにあり、そこで必要な議論がなされるということ。  コーディネーターについて、退院調整、退院時のカンファレンスについて も、介護保険の場合は全部ケアマネジャーがやります。緩和ケアだけの場合 であったら主治医のほうがやることがあります。介護サービスを使わない場 合です。  原動力ですが、これは主治医機能だと思っています。主治医機能は尾道で は1994年からセットしたのですが、自分が主治医をしている患者さんに発生 したいろいろな支援が必要な状況については主治医が全部対応する。急性期 の入院であればタイムリーにアクセスする。在宅で継続する場合であれば、 例えばリウマチについて整形外科医にとか、他の科の必要性があればそれを するし訪問看護を頼む。ただ、いわゆる多職種協働を運営するコアとしての 主治医機能が当初の原動力です。介護保険ができてからはケアマネジメント が入りましたので、原動力は変わってきました。当初の原動力は主治医機能 を中心にしました。  人件費やサービス原価となると、これは報酬の関係かと思いますが、サー ビスについて訪問診療は全部医療保険でやります。いろいろなサービスも介 護報酬がありますが、ケアカンファレンスについては、一度も診療報酬を請 求したことはありません。退院時カンファレンスもありません。  これは、だから主治医機能の一部として行っているのと、ご存じのように 居宅療療管理指導というのは、在宅で療養されているところへ訪問診療して いる方にしか算定はできません。軽度の方で通院されているけれども、かな り不自由があって要支援になった、要介護1の方がお出でになります。車椅 子で通院されるとか、そういう方の場合に、軽度の方については、いま言わ れた予防の概念で予防のカンファレンスをやるわけです。悪化しないことと いうのが、そのカンファレンスの中の大きな主眼になります。いま、いわゆ るサービスとしては、通院されている人についてのカンファレンスについて も行いますが、居宅療養管理指導は次の方には付きません。要するに報酬が 付いている場合にやる、やらないでなく必要なことをやるということで、医 療というものはもともとそういうものだと思っています。  330床の市民病院で急性期対応をしていますが、これは対象者の退院時カン ファレンスが増えています。昨年は51件やりました。資料に院内カンファレ ンスを全部含めたのが224件というデータが出ていますが、最近はまた非常 に増えてきています。これは平均在院日数短縮の中でやるのは非常に時間が 限られますけれども、要するにクリティカルパスの途中からケアマネジメン トパスをダブらせて、早期の要するにearly supported discharge service というのがヨーロッパにあります。あれは病院側の都合と言えば言えなくも ないのですが、早期に退院に対しての準備をすることで、地域連携数の練度 がかなり上がってきています。それとケアマネが早い時点から関わることで、 早期退院に備えるということができています。  地域ケアへの割合ですが、地域ケアに返るということは、要するに長期継 続を見た場合のサポート体制の問題ですから、最初にお示しした独居の方は 民生委員の方が退院時のカンファレンスにも上がってきている。だから地域 チャンネルがちゃんと継続できるというのは、1つのカンファレンスを利用 して関係し、将来的にも関係する方についても関係者にお出でいただいて共 通認識をしていただきたいということで、自発的に上がって来ていただいて います。上がって来てというのは、急性期病院まで民生委員の方にも来てい ただいているということです。長期継続ケアの中でのいろいろ必要な形とい うことで、地域ケアというのは成立していっているということです。 ○高砂参考人 退院調整に関してご質問をお受けしました。ALSの方の退 院調整というのが3年間かかって実際に在宅に出られたということですが、 本当に稀なことです。どこの施設ができている、できていないではなく、そ この施設も現在は非常に在院日数が短くなってきているので、同じような状 況の方でも準備の期間は短くなってきています。そういう意味では、どこか の施設が、あるとかないとかではなく、たぶん社会の変化や病院の医療の変 化に基づいて、退院調整というものが昔と内容や質が変わってきているので はないか。  それに気づくのに、私、10年経って最近やっとわかってきて、少し前は何 で病院がもっとやってくれないのかと思い、病院の看護師からは、何でこれ ぐらいが病院でできないのかと、なかなかチームがうまく組めなかったので すけれども、今では新たな退院調整の機能が必要であるという認識をお互い に持って、お互いにできること、できないことをカンファレンスや電話等の 中で確認し合うようにしています。  その中の1つとして衛生材料のことも含まれると思いますが、病院で使っ ているものを、そのまま在宅でお使いになりたいというのが利用者やご家族 のご希望です。しかしながら、病院においてはシステム上、どうしても供給 できない。厚生労働省から、病院のほうから十分な衛生材料等の供給をしな さいという通達文もお出しいただいているので、それをいつも片手に握りし めて病院のほうに、このような文書に基づいて衛生材料を出していただきた いと言うのですが、ナースや医師はわかっていても、事務部門の方がそれは 駄目だということで出せないということがあります。また、出してくださる 病院も果てしなく出していただけるわけではなく、人工呼吸器が付いている 方などは認められていないものとか、いろいろな種類があり、利用者の方々 のご負担が非常に大きい現状です。そういう意味では、例えば私たち訪問看 護師が、その方たちに合った衛生材料を持って行くことができれば、利用者 や家族の負担や危険性、感染に関するところまでお手伝いできるようになる のではないかと思っています。 ○川越参考人 相談外来に来る方はどの辺からかということですが、相談外 来に来る方は北海道や九州からという方がいらっしゃいます。だけど実際、 私たちが見ている患者さんはどうかと申しますと、距離にしたら大体10kmぐ らいではないでしょうか。車で大体20〜30分の距離です。これは一般の地域 医療をやっている所から言うと遠いわけですが、その理由は地域にこういう 末期がんの方を診る先生がいないので、遠くまで行くということと、本来、 がんの患者さんといっても回転が非常に早いので、そんなにたくさんいるわ けではありませんから、少々遠い所も我々のほうでカバーするという気持で やっています。 ○山本(信)委員 お三方のご説明を伺い、いくつか感じたことがあります ので少し申し述べさせていただきます。今日の論点整理の中でも整理されて いるのですが、例えば川越先生や片山先生の話を伺うと、薬剤師の必要性と いうものについて是非、考えたほうがいいのではないかというご指摘があり ました。それを踏まえると、今回の論点整理の中に麻薬の提供に関して、薬 剤師あるいは薬局がどういう役割を担うかについては大変評価されている点 では、この整理は感謝しています。  ただ、1点気になるのは、例えば4頁にあるように訪問サービス実施時の 医師と看護師の連携が求められているわけです。そうした中で、ただいま高 砂先生からお話のありました医療材料にしても、これは私の個人的な例です が、現実には患者さんの求めに応じて、必要な医療材料については十分な提 供をさせていただいています。  また訪問看護についても、先ほど実際にどういう形で服薬が行われている かの管理等が大変だということもありましたが、現実には認知症の患者さん について、ヘルパーさんがおられる1週間のうち、月曜日から金曜日までは 特に問題ないわけですが、週末になるとなかなか通って来られない。そうい ったケースには訪問看護をされる看護師さん、あるいは地域の診療所の医師 の方々と十分な連携を取りながら、服薬状況について例えば電話をするなり、 あるいは訪問するなりして日付を押さえたものを毎日チェックし、また月曜 日になると確認するといったことで、その報告をする作業をしています。  例えば、こういった訪問サービスについては、当然、訪問看護ステーショ ンも大きな力を持っておられると思いますが、地域の薬局でも具体的に医薬 品を供給した後のフォローについては、十分な体制を取っていますから、医 師・看護職の連携というだけでなく、具体的に患者さんが受ける療養を確保 するという観点からも、そこは薬剤師あるいは薬局がフォローする。本来的 には患者さんのお宅にお邪魔するわけですから、誰でもよいというわけにい きません。普段から先生方と同じようによく見知ったという意味で言えば、 かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師のような形で連携をするという論点も、 ここでは是非考慮していただかないと、いま参考人のお三方からご説明があ ったようなことが、十分に確保できないのではないかという思いがしました。  薬剤師の部分がいくつか論点に挙がっています。その部分については現在 でもそれなりのことはさせていただいていますが、残念ながら今後、安定し てこうしたものを続けていくという観点からしますと、先ほど申しましたよ うに、患者への医療の確保という意味では当然必要なわけです。訪問看護と いうケースがあるでしょうし、往診というケースがあるのでしょうが、薬剤 師が仕事をする場合には必ず薬局という施設が付いて回りますので、施設外 での調剤が全く認められていません。そういった意味で言えば、医療現場、 例えば在宅の現場の中で何か事が起こったときに、直ちに対応できるような 仕組みがあれば、患者さんのご不自由がなくて済むのではないかと思います。  医療に馴染むかどうかなかなか難しい問題ですが、先ほどの在宅での医療 材料ということについて、これは販売という作業になりますが、薬局は調剤 と販売の両方を持ち合わせています。そうした医療提供体制の中で薬局が持 っている機能を、それぞれに見合った形で地域医療を提供する施設、あるい は医療関連施設という位置づけをしていただくことが、大事なことだと思い ます。併せて、薬剤師が自主性を持って役割を担えるような環境整備につい ても、是非、整えてほしいという気がします。 ○部会長代理 高砂参考人にお教えいただきたいのですが、在宅医療を受け られる訪問看護を望んでおられる方々で、医療保険を使っている方と介護保 険を使っている方で、介護保険のほうがはるかに多いということですけれど も、提供されるサービス内容について、緩和ケアやがんに関するものであれ ば医療が大きくなるのか、あるいは認知症のような方であれば介護になるの か、そういう基本となるサービスを必要とする疾病構造とかは、どのように なっていますか。ご高齢の方が多いとか、状況がいろいろ変わる場合があり ますね。そういう場合、使う保険を交換することがあるのかどうか。一本で 切ってしまうのかどうか、そのあたり、実際の状況を教えていただけますか。 ○高砂参考人 ありがとうございます。まず使う保険のことを先に申し上げ ると、ケアマネジャーから、訪問看護は非常に使いにくいサービスだと言わ れています。その1つが、介護保険なのか医療保険なのか、どちらでいくの がこの方にとって良いサービスが提供できるのか。それと介護保険と医療保 険で訪問看護がどんなふうに異なるのか。そういうことをお尋ねされる状況 で、非常に訪問看護がわかりにくくなっている部分があると思います。  実際のところは、医療保険のほうはベビーちゃんからで、例えば私どもで あれば横浜市南区に神奈川県立子ども医療センターがありますので、他地域 よりは特殊的かもしれませんが、例えば生まれたての極小未熟児から医療保 険で訪問看護は提供しています。介護保険の年代になると厚生労働省が定め る疾病等というように、私たちが決めるのではなく、こういう病気の方の場 合は医療保険でということで、主には神経難病の方とか人工呼吸器を使って いる方、がんの末期の方が医療保険の対象になっています。 ○部会長代理 ご高齢の介護保険を使っている方の主な対象疾患は、先ほど 言われた循環器系の疾患が多いということですか。 ○高砂参考人 いちばん多いのは脳血管障害とか脳内出血の方ですけれども、 ご高齢でもがんが治ってというか、ある程度状態が良くなって生活する方も いらっしゃるという意味では、神経難病やがんの方が増えている中に、高齢 の方も同様に数は増えてきていると思います。率的には脳血管障害の方が多 い。そういう意味では介護保険の半数ぐらいは認知症をお持ちの方がいらっ しゃいます。 ○尾形委員 お三方から大変すばらしい活動報告をしていただきまして、大 変感銘を受けました。在宅医療の重要性あるいは大切さということが認識で きたと思います。そのことを踏まえて事務局に2点ほど伺いたいのですが、 今日、ご用意いただいた「在宅医療の推進について」という資料の1頁に、 在宅医療についての法的位置づけというのが書かれています。これを見ると、 在宅医療は非常に重要だと言いながらといいますか、医療法上はこの程度の 規定しかないという現状だと思います。これは、もちろん施設法規だからな かなか難しいという面はあるのだろうと思いますが、ただ、今回の見直しで は、医療法にどういう規定を在宅医療の関係で導入することが考えられるの か。何かお考えがあれば教えていただきたいというのが1点目です。  もう1つは、同じ資料の9頁ですが、先ほどからお話が出ている訪問看護 ステーションの統計が載っています。これを拝見すると、説明にも書いてあ るように、介護保険制度が導入された平成12年以降の伸びが鈍化していると 書かれています。一方で、先ほど参考人の方の資料にもあったと思いますが、 訪問看護ステーションの利用者の方は、8割以上が介護保険の適用であると いう事実があるということですが、そうしてみますと、在宅医療あるいは介 護の非常に重要な柱の1つである訪問看護ステーションの数が伸び悩んでい ることについて、どういうふうにその辺を分析されているのか。あるいは今 後、どういう政策を取るべきなのか。その辺についてお考えを伺いたいと思 います。以上、2点です。 ○企画官 1点目の在宅医療についての法的位置づけですが、現状は1頁の 1条の2に書いてあるというぐらいのことで、これで強く書いてあると思っ てご紹介しているわけではないということがあります。今度、医療法改正に なった場合にどういうことをするのかというのは、まさに今後、在宅医療の 論点というのを14頁以降に書いていて、また今後ご議論いただきたいと思っ ています。在宅医療の推進に関して、法的措置も含めてどのようにやってい くのかと相まって、具体的な話も含めて法律に何を書いていくのかだろうと 思います。現時点で在宅医療について今後の法改正で何をするかまで、いま 申し上げるのは難しいかと思っています。そういった新たなことを書き込ん でいくことも含めての、ご議論をいただければと思っている次第です。 ○看護課長 訪問看護ステーションの伸び悩みということについては、介護 保険制度の中での訪問看護の報酬の問題とか、訪問看護に携わる看護師の志 向の問題等、さまざまな影響要因があるかと感じています。現在は、平成16 年度から医政局で訪問看護推進事業を予算化をしておりまして、7億円を超 える比較的大きな金額の予算を確保しています。ただ、各都道府県における 事業の取組みは、まだ必ずしも十分に進んでいないという実態があります。 今年度は、さらに訪問看護ステーションの多機能化に向けた検討も行ってい ただけるように事業を広げているところです。 ○辻本委員 それぞれお三方にお尋ねしたいことがあります。尾道方式とい うことで片山参考人に是非伺いたいと思っているのですが、チーム体制とい うことで、協働であり連携であるということのお話がありました。私どもは 電話相談などを受けているのですが、利用者の方たちからのお声を聞いてい ても、チームとして患者・家族、特に家族が不安を抱えるような状況という ことで、愚痴まじりのお話が届いてまいります。主治医機能中心という辺り ではうまく機能していたとしても、例えばケアマネジャーがコーディネータ ーとして中心になったときに、ドクターたちが素直に動いてくださっている のかどうか。言葉が適切でなければお許しいただきたいのですが、そうする ためのドクターの意識改革にどんな努力をなさったかということと、今後の 課題ということ。ドクターも世代交代をしていくと思いますが、その辺り、 どんな取組みをお考えになっているかを片山参考人にお答えいただきたいと 思います。  高砂参考人には、それに準ずる話かと思うのですが、「ケアする人のケア」 ということにどのように取り組んでいらっしゃるのかを伺いたいのです。私 どもには、例えば家族が非常に非協力的であるというようなケアする人の愚 痴も届いております。そうした不満が積もり積もっているというような声を よく伺うことがあるので、特に南区の看護ステーションで、「ケアする人の ケア」ということにどんなふうに取り組まれているのか聞かせていただきた いと思います。  川越参考人には、資料の中で2点お尋ねをいたします。1点は63頁の下の グラフで、中止に至った人が29人(7.2%)というご紹介がございました。 どんなことで中止に至るのかを教えていただきたいということが1点。それ から58頁の下のスライドですが、理想的なチームとして、「ボランティア組 織、こころのケア担当者がチーム内に存在する」とありますが、これはどの ように取り組まれていらっしゃるのか。全国でこうした取組みをしていると ころで欠落しているのがこの部分だと思うのですけれども、ほかの地域の人 たちがどのように取り組んでいったら、利用者が安心できるような状況がつ くれるのか参考になると思います。その辺りのお考えをお聞かせいただきた いと思います。 ○片山参考人 チーム体制ということですが、1994年に尾道医師会方式とい うものを考案したときに、ケアマネジメントについてカンファレンスを開催 することについての最初の留意事項は、「均等な発言力」、そして「合議」 であるということでした。医療は医療面の責任を持つということです。それ から、利用者かご家族がおいででないカンファレンスは開催いたしません。 利用者(患者)の発言は、完全にそこで担保されます。そう無茶苦茶な意向 を言われることはめったにありませんが、要するにアカウンタビリティ(説 明責任)をきちっとやる空間であるということはあります。  当初から、ケアマネに対してドクター(主治医)はサポートにまわるとい う約束をしております。1999年に6時間研修を2回やり、カンファレンスと 実践配備の研修も同じ年にやりましたが、延べ230人ぐらいが参加しており ます。そこで、ドクターは一切強権発動してはならない、サポートをするの だということで行っております。  それから、主治医が参加することというのがいちばんの課題になる可能性 がありましたので、主治医医療機関で開催することとしました。これは、ま ず取っ付きがいいといいますか、よそまで、わざわざ行く必要がない。要す るに、医療機関というのは集まりやすいのです。それから、カルテを外まで 持ち出せませんし、検査データもそこから持ち出すわけにいきません。無く したら大変な話です。それから、ケアマネジャーが発生しても、その前10何 年、20年と主治医をやっている先生が多いわけでありまして、医療機関でそ ういうことをやることについて、何も摩擦はなかったと思っています。  カンファレンスの効果は、結局は利用者の不満が解消することです。課題 解決型のカンファレンスしかやりませんので、これが困るという課題分析か ら抽出したニーズに対して、どういうチームが当たっていくか、医療はどう いう役割をするか、ケアマネは、どういう所でどういうサービスについての ウエイトが高いかと。例えば、こちらは通所サービスのほうにウエイトが高 い、そうするとショートステイが必要なのだと。そういう個別のことに関し て、利用者意向を入れながらでなければカンファレンスはできません。利用 者が1つでも疑問があれば、そこで言っていただくのです。  それから、カンファレンスできちっと専門職を集めて客観性が担保された 中で、要するに、きちっとしたアセスメントツールでやっていますと、いわ ゆる自己誘導型のようなことはないわけです。そういうところで学際的な手 法を用いておりますので、利用者が「見積書」として納得できるケアプラン がそこで提示され、客観的な説明がなされる。現状の重要なポイントは、疾 病管理である場合もあれば、日常のケアである場合もありますが、そういう ことについて、利用者が持っている負担、家族が介護の中で持っている負担 を解決する。ケアプランというのは、そのためにあるわけです。苦情があっ たら、すぐに言ってくださいと言っておりますが、あまり出てはおりません。  ケアマネと主治医がチームとしてダブルヘッドで確立すること、そこで利 用者をまず支える。そして、状況に応じてチームが変わる。そういうことで、 いつも状況を共有しているわけです。時系列的にカンファレンスで変化に即 応する形をとっていますから、ニーズが変わったときには、その場でケアプ ランを書き換えます。説明不足にならない、利用者視点は必ず担保している ということで、カンファレンスの効果は、簡単に言えば、医療提供について 非常にレベルが高くなる。患者を無視した医者はいなくなる。それから、周 辺の職種との連携もシステマティック(系統的)になっていく。こういうこ とで、カンファレンスで全て利用者視点を満足できます。これでお答えにな っているでしょうか。当初からそのようにシステム設計をしておりますが。 ○高砂参考人 「ケアをする人のケア」は非常に大切になっていると思いま す。介護保険制度が出来て、いい意味でも悪い意味でも市民がサービスの消 費者になられた部分があって、私自身も傷ついたというか、思うことがござ います。  それに関する回答は、ステーションの組織理念の(1)が「どのような生活・ 医療が必要であっても、その人らしくその家らしく生活できるように、利用 者や家族に寄り添った訪問看護を専門性の高いチームで実践」と。この言葉 は当たり前のことなのですが、医療に対する価値観も生活の中で、例えば糖 尿病の方で、80いくつになったら、何を食べて死んでも、自分は悔いはない とおっしゃる。そういう方に対して医療の価値観を共有していくというのは、 結構大変なことなのです。  そのためには、南区メディカルセンター訪問看護ステーションの1人の看 護師であるという認識を持つこと。それと、困ったときには必ずみんなでバ ックアップする。私たちはチームでサービスを提供しているのだということ の認識というか、教育・研修制度にあると思います。  月に1回事例検討会をします。そして、行っている看護師だけではなくて、 どこにどういう方がいて、どういうケアをしているのかという共有化もいた します。それと、訪問看護は1人で看護を提供して帰ってくる。そういう意 味では、今日の訪問看護はこれでよかったのかというのがまず聞きたい。帰 ってきたときに、その患者のことを知っている人が、私だけではなく、絶え ずいて、「今日誰々さんがこうだったのだ、これでよかったんだよね」とい うことが言えるようなチームづくりというものを目指して実践しているのが 「ケアする人のケア」への取組みです。  達成感についてですが、どちらかというと、悪くなっていく方やALSで 呼吸器をつけている方というのは、そんなにハッピーな出来事はないのです。 そういう意味では、少しでもみんなでできたこと、例えば、一緒にお花見に 行ってみんなで喜べたとか、その達成感というものを共有する。目標を明確 にし、生活の中で目標づくりをしていくことによってバーンアウトすること を予防しています。 ○川越参考人 2つあったかと思いますが、まず中止例がどういうことから だったかということをお話したいと思います。家族内のほうに問題があった 場合、医療者のほうに問題があった場合、その他ということがあると思うの ですが、正直に申しまして、圧倒的に多いのは家族内の問題です。特に、財 産問題が絡んだりして、長男の家で、あるいは嫁さんのところで亡くなられ ては困るということで、本人が泣く泣く、子どもたちがうまくいくようにと 入院された方もいます。家族の理解がどうしても得られないというのは高齢 者の男性に多いのです。本人はどうしても家で最期まで過ごしたいと言うの ですが、身体が弱って奥さんの手がかかるようになったら、気持ちが付いて いかないと言うのです。私はさんざん若いときに苦労させられて、どうして、 ここにきて最期まで看なければいけないのかと。我々はいろいろトライして やるのですが、なかなか‥‥。自分でこう言われているような気がするので すが、そういう方は、もうどうしようもないというのがありますね。家族間 の調整というのがいちばん難しいと思います。  医療者のチームの問題としては、私たちのところでは、症状緩和が家で難 しくなって入院したというのは、正直に言ってゼロです。ときどきあるのは、 病院の医師から十分告知されていなくて、帰った途端「お前、何しに来たん だ」というような感じのことがある。ここに書いてある「中止」というのは、 私が1回でも往診した患者ですから、行った途端「何もしてくれないのだっ たら、いいよ」というような感覚でとられて困ってしまうという方も何名か いらっしゃいます。  ボランティアの件ですが、私たちは、ボランティアの方はチームの宝とい うような考え方をとっております。そのためには、誰もがボランティアにな るということではなくて、養成プログラムを終えた方がボランティアとして 登録する資格があるということです。  登録された方にとっては、チームの一員ということで我々は歓迎して、登 録された方のウエルカムパーティーを、全員スタッフのいるところで行いま す。それから、ボランティア・コーディネーターがいるのですが、ボランテ ィア担当の専属ナースというのが連絡をとるような格好にしております。  そのボランティア・コーディネーターには、スタッフのミーティングがあ るので、そこには必ず入っていただいて、ボランティアの情報をお互いにチ ームで交換するということに心がけています。  こころのケア担当の方は、私たちにいま2人パートの方でいるのですが、 本職は牧師です。しかし、私からお願いしていることは、パストラルケアの 常道、当たり前のことなのですが、患者が何を望んでいるかということが第 一です。自分の主義主張があるわけではないですから、牧師さんには基本的 に、聖書の話は本人の訴えがあるまでは絶対にしないでくださいとお願いし てあります。そういうことには経験のある方たちが関わってくださっており ますので、うまくいっているのではないかと思っています。ただ、どういう 方に入っていただくかというのは、スタッフとナースと私とで非常に慎重に 討議いたします。そして、具体的にどういうサービスをこころのケア担当者 にやっていただくかということも含めて、そのことを伝えて入っていただく というような格好をとっています。 ○佐伯委員 片山参考人と川越参考人にお伺いしたいことがあります。尾道 での10年間のめざましいシステム構築というのは、普遍化できるものなので しょうか。例えば、来年これを国で全部やりましょうと計画して、10年後に 日本でこれが実施できるものなのか。もしできないとしたら、どういうこと がいちばん困難点に挙げられるのか。こちらのスライドの中に、医療者がケ アというものへの理解が少ない、連携がとりにくいということが挙がってい たと思いますが、もしそれが明確であるならば、どうすればそれを克服でき るのか。いまアイディアをお持ちだったらお聞きしたいというのが1つです。  川越参考人にお伺いします。実は、私は1988〜1993年までイタリアのミラ ノというところにおりまして、北イタリアの緩和ケア協会のボランティアを していました。いまから既に20年以上も前に北イタリア、ミラノも含めて、 その地域のどこに住んでいても、がんやエイズの末期患者は、1人暮らしで も24時間のサポートケアが受けられました。これは、患者自身は無料で、衛 生機材や薬品、あるいはボランティアの医師や看護師を手配してコーディネ ートする。そういうことには全部お金がかかるのですが、それはある電気メ ーカーの財団の寄付によって賄われていたわけなのです。  いま日本で、川越先生のような活動が非常に珍しい。数はあるとおっしゃ いましたが、まだまだ少ないということで、この20何年間、日本では何をや っていたのだろうという気がしていたものです。  情報不足で患者が家でそれを選ばないということがあるのですが、すでに WHOの疼痛緩和プログラムは1995年ぐらいから出ていたわけです。しかし、 どうして日本でそれが行われなかったのか。そして連携といいましょうか、 そういうサポートチームというものがあまり発展的につくられてこなかった のか。その辺り、こういうことが理由ではないかと思っていることがあった ら、教えていただきたいと思います。 ○片山参考人 是非尾道に移住していただけたらと思います。資料の23頁の 下側が新・地域ケアの構成図のような形にはなっておりますが、これは地域 資源、どこにでもある資源です。これを再編成する手法として、まず各団体 の長が握手をして、ではやりましょう、ということでは、地域では絶対にで きないことは、日本中の皆さんがご存じのことだと思います。普遍化するこ とについて新たなものをつくる必要はない。結局ケアカンファレンスという ものは、一つひとつ利用者について課題を解決するチームがだんだん出来て いく。  パワーポイントでも若干お示ししたところですが、25頁の下の図のような 形で、多職種協働という形が、利用者の方をサポートするために、だんだん 地面近くから出来ていったということです。要するに、傘のようなシステム を上から投げてはいないのです。システムをつくるに当たって、システムと いうのはソフトですから、「人間と人間がつながってシステムが出来る」と いつも言っておりますが、そこは共通認識として、同じ理念を持って利用者 に対する支援を行う。  ケアマネジメントというのは、サービス提供手法までをちゃんと読み込ん で介護保険で法制化したわけですから、ケアカンファレンスという位置づけ も、ちゃんと出来ている。人と人がつながることで多職種協働が可能になり、 そこには介護保険以外のサービスの人も入ってくるわけです。独居であれば、 民生委員も入ってきます。社協の担当者が入ったり、自治体が入ったり、そ してボランティアの人が入ってきたりすることでソフト面が仕上がっていく。 ケアカンファレンスというのは、そういう地域づくりの手法であると言って おります。ですから、これはそう難しくなく、どこでもできることだと私は 思っておりますが、地域づくり手法という問題、要するに地域包括支援セン ターが介護保険見直しで設置されるのは、主にそういうことのように認識を しております。やはり団体間協議で、ものが、地域が出来るのではなくて、 もっと現場の職種がきちっとした業務を行っていく中で、自然につながって いくことですので、普遍化ということは何ら難しいことではないと思ってお ります。それだけケアマネジメントに対する認識がまだ低い。ケアカンファ レンスということについて、そんなに難しいとは私は思っていません。主治 医が協力しないのがどうかという問題もありますが、結局24頁の上の絵にあ るようなことです。  尾道方式ケアカンファレンスというのは、1999年の集中研修をして出来た ことで、介護保険については大変順調なスタートが切れましたが、その前に は「1馬力の主治医」が最大限の機能を発揮するためのシステムということ で作っていったわけです。  27頁の上の図で、普遍化に向けて日本医師会の「高齢者医療と介護におけ る地域医師会の取り組み指針」を出しております。これは、高齢化の中で地 域医師会が重要な役割を果たして、そういうものを作っていかなくてはいけ ない。包括的なシステムを構築していくべきである。2番目として「在宅医 療の推進と主治医機能に求められる長期フォローアップの強化」という問題 が入っております。3番目は「ケアマメジメントにおけるケアマネジャーと の連携」という問題も入っております。これは今、日本医師会に属する地域 医師会が鋭意取り組んでいることですので、こういうことが各地域医師会単 位で進んでいけば、いま言っていただいたようなことが普遍化できる形にな るのではないかと思っております。 ○川越参考人 実は、在宅ケアと申しましても、片山参考人がおっしゃって いた、いわゆる高齢者を対象とした在宅ケアと、私がいま一生懸命やってい る在宅ケアとは、少し性格が違うと思いながら、いまの質問を聞いておりま した。先ほど、0歳児等の在宅ケアもあっていいのではないかというご質問 がありましたが、本当にそのとおりです。特にNICUという新生児のIC Uを持っている施設があるのですが、NICUを卒業して、やることが無く なった赤ちゃんをどうしたらいいかというのは、本当は大問題なのです。私 の病院自体もそういう医療に関わっておりましたので、病院長として非常に 苦労したのですが、在宅での支援があったらいいなと、しみじみ思いました。 そういうことで、がん末期の方や0歳児、あるいは呼吸器疾患を持って在宅 でレスピレーターを使うような方、そういう方の医療はかなり専門性を持っ たものになりますので、開業医といっても、もっと開業医の医療チームの中 に専門性を持った者を育てていかなければ、これからの高度医療、専門化し た医療の中では対応できないのではないかと私は思っております。  尾道方式はどうだというのは、ちょっときつい質問だったのです。尾道方 式は非常にいいと思うのですが、1つ北上市の話をしたいと思うのです。  北上市はもう10数年前から、医師会と行政と地域の中核病院が一生懸命に 在宅医療、特に末期がんの方の医療に取り組んでまいりました。先日、私は 北上のほうへ行って講演する機会があったのです。10年前に招かれたときは 「これでいいかな」と思ったのですが、この10年間に、すごく地域が変わっ ていったのです。その一番は、がんの方の在宅死率を聞いて驚いたのです。 いま26%ぐらいです。墨田区も私が行って変わって、たぶん10%を超えてい ると思いますが、それどころではないのです。ですから私は、片山参考人が やっていらっしゃる方式もいろいろ参考にすべきだし、北上市でやっている ところもあります。それから、仙台で岡部先生たちが中心になってやってい る仙台方式というものもございますから、そういうところをいろいろ参考に する。がん末期の方は、そういう意味で特殊性がありますから、そういうこ とを加味して検討されたらよろしいのではないかと思います。  それからもう1つ。北イタリアでは20年前に出来ていたけれど、日本はど うなっているのかというお叱りを受けたのです。確かにおっしゃるとおりで すが、患者にとっても家族にとっても医療者にとっても満足感があり、しか も社会が変わっていく医療がなぜ進まないのか。私自身も本当にもどかしい 気持を持って眺めております。  しかし、これは私の感覚ですが、変わってきているという実感を持ってお ります。そういう気持を持った若い先生方が、特にがんの在宅医療に取り組 むという方がいろいろな地域に出てきたということがございます。とは申し ましても、現状は、病院と同じくらいの疼痛緩和が家でできるということを 病院の先生方が知らないということが非常に大きな問題です。ですから、そ ういうことを変えなければいけないということになるわけですが、「鉄は熱 いうちに叩け」という言葉があるように、医学教育のところから変えていか なければ、この問題の根本的な改革にならないのではないかと思っておりま す。 ○山本(文)委員 立派なお話ばかり聞いて関心しているのですが、私は個 人でここに出てきているわけではありませんので、自分なりに機関で、どれ がいいのかという話をして、了承をいただかなければなりません。  今日3例のお話を聞きまして、大変立派なことだと思います。全部がああ いうふうにできれば、いちばんいいわけですが、できない地域もあるのでは ないでしょうか。だから、そこら辺りを一体どうするのかということを考え なければならないのです。それを皆さんがどういうふうに考えているかとい うことも聞きたいのですが、それらの時間的な余裕がありません。  それから、介護と医療をうまく使っているので、私は感心しました。私は 介護部会で、医療と介護は別々に分けるべきであるということを主張してま いりました。ところが、医療と介護は一緒に使っているのです。今日初めて お聞きして、「なるほど。それで頑固に、医療と介護は一緒だという主張を されたんだな」と今わかりました。勉強不足なのですが、医療と介護が同居 しているなんて。これをうまく使っているといいますが、技術的にどういう ふうに分離して使っているのかというのがわかりません。ですから、そこら 辺りも少し勉強したいと思います。  そういうことで1、2点どうしても分からないところがあります。例えば、 私がよく言う、開業医と在宅医療というのはどういう関係であればいいのか ということなども考えなければならないと思います。今日は立派なお話を聞 いて、それにはどうこうと言う意思は全くありませんが、今日黙って帰りま すと、了承したととられると困ります。私は機関の代表で出ておりますから、 それなりに機関で話をして、皆さんたちから、それでいいという了承をいた だかないと具合が悪いところがございます。そういうことで、今日は了承し ない。聞いてそのままであるとご理解ください。この次にまとまった意見を 申し上げます。 ○松井委員 先ほど質問しようとしたことは佐伯委員がおっしゃられたので、 1点論点だけを絞ってお聞きしたいのです。お三方の参考人の先生方が、現 実に行っている在宅看護なり在宅医療の中で、いまの医療制度上の問題でこ ういう点が変わったら、よりやりやすくなるのではないかと、そのような点 がもしあれば、ご指摘願えるとありがたいのですが。大変うまくやっておら れるので、それは克服されているのかもしれませんけれども、更によくする ために、こんな点が変わったほうがいいとか、そのような点があったら教え ていただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○片山参考人 今日私がお話させていただいたことでは、急性期との関係を 整理するべきだと思うのです。急性期との関係を整理して、いわゆる病院難 民ということのないように。在宅がきちっと受け皿として機能することは、 当然医療側や、いわゆる在宅資源のほうに求められますが、急性期病院がま ず在宅を支援する機能を持つべきであると。急性期病院にできる在宅支援機 能というのは何か、そういうことをきちっと急性期病院側で整理していただ いたら、病院難民という言葉は発生しなくなるのではないか。具体的には、 退院支援に向けた動きであるとか、そういうふうな病院の勝手のことではな く、在宅において継続性をきちっと担保する形を制度化していただくこと。 それから、その中で、在宅の困難さを除くために、今日訪問看護のほうの、 いわゆる時間を延ばした訪問看護とか、それに付随する、困難さを解消する 何らかの手だてはあってもいいのかと思います。しかし1点と言われますと、 急性期と在宅の機能分担を政策的に明確にしていただく、また、病院の機能 としてやっていただくことです。在宅のほうは当然、受け皿として機能する ことを高めなければいけませんが、やはり先にやるのは上流のほうからです。 上流のほうから在宅の視点を持っていただく。そういうことが政策誘導でで きれば、患者の利益は大きいと思います。 ○川越参考人 いまのことと関連して、在宅医療を推進するといういまの方 向性は非常に素晴らしいことであり、これからも続けていただきたいと思っ ております。ただ、これが在院日数を減らせという。そのために在宅を推進 するということではなくて、在宅は素晴らしいという中で、在宅の良さがよ り出るような形で、いろいろやっていただきたいのです。緩和ケア病棟は今、 在院日数のしばりがございません。これは大きな問題だと思います。しかし、 いまの段階で在院日数のしばりを無くしてしまいますと、末期がんの方が家 に来ても困ってしまいますので、そういう状況はないようにしていただきた いと思っております。 ○高砂参考人 退院調整の話を片山参考人にも少ししていただきましたが、 いま病院と在宅と両方で、どのように病院から在宅に支援していくかという ところがあるのです。そこの隙間に落ち込んでしまうと、いちばん困るのは 利用者やご家族だと思いますので、その辺を具体的に、教育システムなども 含めてお考えいただきたいのです。  もう1点。本日の内容をまとめているときに気が付いたのは、お祖父ちゃ んを看取った方のお祖母ちゃんを看取っていたり、お祖母ちゃんを看取った 方の息子さんを看取っていたり。利用者や市民の方々がどうやって生きるか という場の1つとして在宅があるということを、もっと知っていただくよう に、私たちも情報提供していきたいと思います。 ○部会長 まだまだ議論は尽きないと思いますが、時間を少しオーバーして おります。本日いろいろ出していただいたご意見を、いつものように、事務 局のほうで整理していただいて、再度議論できるような機会を持ちたいと思 います。本日の議論はこれで終了したいと思いますが、事務局のほうから、 今後の日程等について説明をお願いします。 ○企画官 ただいま部会長からご指示がありましたとおり、本日の議論につ いても事務局ほうで整理を行いまして準備をさせていただきたいと思います。 また、次回以降の日程ですが、次回は5月25日(水)午後2時からの開催を 予定しております。議題と場所はまだ決めておりませんので、改めて連絡さ せていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。なお、先ほ どお配りした7月分までの日程表に必要事項をご記入にうえ、できれば明日 中ぐらいに送っていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○部会長 本日はこれにて閉会にいたします。特に参考人のお三方、ありが とうございました。 照会先 医政局総務課 山口、野崎 連絡先:03−5253−1111(内線2518)