05/05/11 第3回「子どもの心の診療に携わる専門の医師の養成に関する検討会」議事録                    第3回        子どもの心の診療に携わる専門の医師の養成に関する検討会        日時:平成17年5月11日(水)15:30〜17:30        場所:中央合同庁舎第5号館17階専用第21会議室 1.開会 ○事務局/母子保健課長補佐  それでは定刻となりましたので、ただいまから第3回「子どもの心の診療に携わる専 門の医師の養成に関する検討会」を開催いたします。座長の柳澤先生、どうぞよろしく お願いいたします。 ○柳澤座長  それでは早速ですが、議事を進めさせていただきます。会議の冒頭に当たって、前回 の検討会で私の方から、この検討会で扱う対象とする医師、検討会の名前としては「子 どもの心の診療に携わる専門の医師」というようになっているわけですが、大変長い言 い方ですので、もう少し短縮した言い方ができないものか。いわばニックネームという ふうにもいえると思いますけれど、それを「子どもの心の専門医」というようにしたら どうだろうかということをお諮りしたわけですが、私自身、その点について少し考えを 改めました。  この検討会で議論を行うのは、子どもの心の問題に関する一般の小児科医また精神科 医のボトムアップといいますか、プライマリの対応のボトムアップから高度専門的な技 能を持つ専門医まで、大変幅広いものでございますので、私もあれからいろいろ考えま して、この検討会で議論する対象としての医師の総体を、「子どもの心の診療医」とい うことにしてはどうかというように思います。  検討会の名前としても、もし短縮していう場合には「子どもの心の診療医検討会」と したらどうでしょうか。これはそう重大なことというか、決定というようなことではあ りませんので、そのようなことで、もしご異義がなければ、この検討会で扱う医師の総 体を子どもの心の診療医、そこには非常に幅の広い階層、一般的な医師から高度専門的 な医師まで、幅広い階層の医師が含まれている。その全体をある程度層分けした上で扱 うというように考えております。もしよろしければそのようにさせていただきたいと存 じます。  それから今回は議論に先立ちまして、事務局の母子保健課長の方から、今後の進め方 について1つご報告がありますので、それについてまずお願いいたします。 ○事務局/母子保健課長  母子保健課長の佐藤でございます。事務局体制の強化について事後報告的に申し上げ ます。この検討会ですが、大変に高度な内容につきまして、あるいは多岐に渡る問題に つきまして、種々ご議論いただいているわけでございますけれども、そもそも子どもの 心の診療という部分の現状はどうなっているのかという話で、前回もいくつかご議論が あったと思います。  そういったことを踏まえて、最終的には専門的な診療をしていただく医師の養成をど うすべきか、ご提言をいいただくということになるわけですが、事務局でも少し専門家 のお知恵をお借りしないと、なかなか準備も難しいという状況にあります。  そういうことで座長の柳澤先生とも相談させていただきまして、事務局の体制を少し 強化させていただくということで、何人かの専門の先生に、サポートをお願いするとい うことといたしました。これが事後報告的にお願いをすることになります。  お名前をご紹介させていただきますと、検討会から二人でございます。そちらにお座 りになっておられますけれども、国立精神・神経センターの齊藤先生、それから国立成 育医療センターの奥山先生、このお二人は委員として少し私どもの応援をしていただく ということになります。  それから検討委員会の委員の外からもお二人をお願いしたいと思っています。一人は 学会などにもご所属でして、児童精神科の領域でお子さんをたくさん診ていらっしゃる と聞いていますが、都立梅ケ丘病院の院長の市川先生、それから筑波大学大学院人間総 合科学研究科発達行動小児科学教授の宮本先生、合計4名の皆様方にこの会が開かれて いるときも会が開かれていないときも、陰に日向に私どもを応援していただければと思 っております。例えば、必要な資料を集めていただくとか、この会に出すための資料の アドバイスをいただくというようなことをお願いしたいと思っております。  早速、最初のご相談の結果が、お手元の資料の中にあります119頁に資料8として 今回提出しております。これは1つの事例として、今回早速、お力添えをいただいた結 果であります。  少し説明しておきますと、前回子どもの心といっても、その実態はどうなっているの かというようなご発言があったと記憶しております。実際、その発生の有病率とでも言 い換えましょうか、あるいは患者数はどうなっているのか。また、治療はどのように行 われているのか、フォローはどうなっているのか、現状についても一度整理しておいた 方がいいのではないかというお話がありました。  将来というかその先を見越しますと、最終的には国民の皆様やマスコミの皆様に見て いただかないとならないわけです。そういうことを考えますと、おそらく資料編的にな るのか、あるいは導入になるのかわかりませんが、提言に補足するような形でこういう 話も議論したという、言ってみれば証拠のようなものが必要だろうと思います。そうい う意味で、今日は子どもの心の問題のプロフィールとなっております。プロフィールと いう言葉も英語ですし、また抽象的な言葉です。言ってみれば、子どもの心の問題の診 療のお医者さんの研修の問題を議論するに当たっての導入とか、あるいは資料編に相当 する部分として、資料8をおまとめいただきました。  簡単にこれをご覧いただきますと、子どもの問題ということで、2番目に子どもの問 題とありまして、受診理由とあります。表面的に見える病状、病態ということで、1か ら26まで羅列をしていただきました。次の120頁を見ていただきますと、それが現 行のICD10ではどういう病名として取り扱われているかということを、120頁か ら121頁の上段ぐらいまで羅列しているわけです。  「子どもの心」と一口に言ってますが、表面的に見られる病状病態で言えば、119 頁。それからその結果としての診断名として見れば、120頁から121頁の上段ぐら いになるのだろうということで作っていただいております。  それからそのほか治療ガイダンスの対象、必要な連携の対象をどうなのかということ になっています。これは、あくまで導入とか資料編的なものです。また、これで完結し たので終わりですということではなく、それぞれについて、例えば、120頁にあるI CD10ごとに患者調査ではどういうデータが出ているのか。あるいは死亡することは ないと思いますが、人口動態統計の死亡表の中でどうなっているのか。そういったこと も今後、少しこれに随時追加をして、このプロフィールを充実させていただくことにな ります。  このように事務局サポートチームをつくっていただき、その始めのお仕事として枠組 み的なもの、こういうことをやっていただいたということでご紹介いたしました。次回 以降もこういう資料を提出しながら、対応していきたいと思います。以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。大変に結構なことだと思います。それでは既にスタ ートして、活動もされているというように伺いましたけれども、事務局サポートチーム の先生方にはよろしくお願いしたいと存じます。  今回も前回に引き続きまして、委員の先生方から資料をいろいろいただいておりま す。まず事務局の方から簡単に、資料の確認をお願いいたします。 ○事務局/母子保健課長補佐  ではお手元にお配りいたしました資料につきまして、簡単にご確認をさせていただき ます。まずお手元に座席表がございます。それから資料の綴りが1冊、少々多目のもの がございます。こちらの方にまず1枚目が会議次第、その次に資料の一覧がございま す。こちらに沿って確認をさせていただきます。資料の一覧の方に頁数がございますの で、こちらに沿ってご確認いただければと存じます。  まず資料1が検討会の開催要領と検討会の委員名簿。これが5頁となっております。  続きまして、検討会のスケジュール案ということで、7頁。次に委員の先生方からご 提出いただいた資料でございまして、こちらが資料3、星加先生、資料4、森先生、資 料5。齊藤先生、資料6、奥山先生、それから資料7、文部科学省の方からご提出いた だいているもの。そして、別資料といたしまして、伯井先生の方からご提出いただいて いる資料でございます。また伯井委員からは小冊子もいただいておりますので、別の資 料としてご用意させていただいております。  最後に事務局からは、新たに資料を2種類ご用意させていただいております。今、佐 藤課長からご説明がございました。資料8といたしまして子どもの心の問題のプロフィ ール、その1。受診の理由と診断。それから最後でございますが、第1回目の検討会の 際に、事務局からご説明させていただきました、検討会における議論の対象となりま す、診療医のイメージ図を子どもの心の専門の医師のイメージ図案として、ご参照いた だくためにご用意させていただきました。  最後にこの資料の小冊子には含まれておりませんが、未定稿という形で「子どもの心 の診療に携わる専門の医師の養成に関する取り組みの現状・概要」といたしまして、横 置き2枚の2頁の資料をご用意させていただいております。こちらは前回第2回の検討 会でご発表になられた委員の皆様方の学会などからご提出していただいております資料 を、事務局でごく簡単に取りまとめをしたものでございます。学会などの名称と会員構 成、対象とされている子どもの心の問題領域、または対象の疾患、それから専門の医師 の養成に関する取り組みの概要ということで、ごく簡単に一覧にさせていただいており ます。まだ全員の委員の皆様からご発表いただいておりませんので、空白の部分が多う ございますが、事前にご提供いただきました資料などをもとにいたしまして、事務局に て簡単な一覧表とさせていただきました。  こちらの資料の取り扱いにつきましては未定稿ということでございまして、改めて発 表いただきました委員の先生方にご確認いただいた上で、次回完成版の資料ということ で、ご用意させていただきたいと存じます。今回は主に前回第2回での検討会でご提供 いただいた資料の概要ということで、ご参照いただければと存じます。以上でございま す。 2.専門の医師の養成に関する関係者の取り組みの現状 II ○柳澤座長  どうもありがとうございました。資料の方はよろしいでしょうか。第1回の検討会で は、厚生労働省側から問題提起をしていただいて、その中で児童虐待から発達障害、そ の他摂食障害などの子どもの心の問題への対応が、社会的に大変重要な課題となってい る。そしてまたこういった子どもの心の領域に対応できる専門家が、極度に不足してい るということをご説明いただいた上で、医師の養成について、厚生労働省としてお持ち のイメージについても、お話いただきました。それが先ほどご説明のあった資料の中に 図示されているということです。  第2回目、前回におきましては、9名の先生方が所属されている学会あるいは関係団 体などが、この検討会の主旨であります子どもの心の診療に携わる専門の医師の養成に ついて、省略して言えば、子どもの心の診療医の養成について、現状の認識とまた具体 的にどのように取り組まれているのかというようなことをお話いただきました。  今回は6名の残された委員の先生方から、ご発表を続けていただきたいと思います。 今回ご発表いただくのは、前回小児神経学会の桃井委員からは、簡単なご説明があった わけですけれども、スライドの資料が一部ご覧いただけなかったということで、桃井委 員から追加してお話をくださる。それから2番目としてオブザーバーとして参加いただ いている文部科学省、そして伯井委員、星加委員、森委員、齊藤委員、奥山委員、以上 の委員の方々から、ご発表をいただきます。  それでは早速ですけれども、発表に入りたいと思います。時間の関係上、特に今回は 前回に比べて時間が限られております。2時間ということで、限られた時間ですので、 手際よくいきたいということで、1人10分以内でぜひお願いしたいと思います。代表 されている学会、またご所属の団体としての、子どもの心の診療に関する問題認識、そ して子どもの心の診療に携わる医師の養成についてどのような取り組みをされているの か、お話をいただきたいと存じます。前回と同様に全員の発表が終わった段階で、全体 的な意見交換をしたいと思います。発表ごとにどうしてもその場で確認しておきたいと いうようなことがございましたら、質問をお受けしたいと存じます。  それでは早速桃井委員からお願いいたします。これは配布資料ということではなく、 スライドを使って発表されるということでございます。 ○桃井委員  前回、機器がなく掲示出来なかった資料につきご説明させていただきます。前回の提 出資料です。日本小児神経学会は日本小児神経科の専門医を認定しています。小児神経 科専門医について、この前概略をご説明いたしました。研修内容は以上です。  研修内容は、総論として、薬理学、療育、EBM、医療安全などここに示すような項 目の研修と同時に、疾患各論の研修が明示され、疾患各論の研修の中で専門医となるた めに必要な心に関するところは、周産期脳障害は高率に発達障害を来しますので周産期 脳障害、脳炎脳症等の後遺症としての発達障害、てんかん等でもいろいろな発達障害と 関係し、発達障害を中心とする精神神経疾患および睡眠障害などが、この委員会の内容 の範疇であろうと思います。  これらを含む研修を経て更新を繰り返している、かなりしっかりとした専門医制度を 持っております。現在は約1,000名専門医がおります。特徴は小児神経でございます し、発達障害をかなり中心的に診療しておりますので、小児病院などの小児医療施設な らびに療育機関、そして大学病院やいろいろな小児の神経専門診療施設、総合病院の小 児科などに多く専門診療に従事しています。  私自身も小児神経科専門医として児童相談所の相談医であったことがあります。また この前書面でご説明いたしましたので、数だけ申し上げて省かせていただきますが、評 議員の1週間の発達障害診療数をお示ししました。ADHDや自閉性障害が、多い方で は100名以上、週に診察されている。これは評議員ですので、私のように週に1回し か診療しないという者も含めますので、診療の実態は反映いたしません。管理職が多い 評議員以外の専門医の方がより多くの発達障害を診療しておられると思います。学習障 害、アスペルガー障害、自閉性障害等の発達障害が、かなり小児神経科専門医の診療範 疇に入っていると、私自身も実感しております。  うつ状態、不登校などの患者さんの診療も増えてきたということを示していますが、 心因反応が少ないのは、これは小児神経科外来で診療している患者さんの数をお問い合 わせいたしましたので、例えば私が小児科の一般外来で診療している心因反応や不登校 は、この中に入っておりません。小児神経科専門医としてこれらの疾患を診療している 方も、基盤が多くが小児科専門医でございますから、大変多いものと思われます。あく まで小児神経科外来でということで、お伺いした結果です。  これも前回お示しいたしました一部ですが、発達障害を診療するときの特徴は、学校 との連携が日常的にあるということを示しています。このように医療機関以外、学校と の連携、保育園との連携等が多い診療体制をとっているというのが特徴です。  この詳細は今日は資料はご提出しておりませんが、「脳と発達」2004年、前年度 に学会が全専門医1,000名に広範な調査をいたしました結果です。専門医のうち 92.3%が発達障害を日常的に診療しているという現状でした。その内容はここにあ るとおりですが、多くは小児神経科専門医として、学校や幼稚園と連携を進めつつ、発 達障害の診療をしています。診療体制として、これは前回お示しいたしませんでした図 ですが、発達障害は乳幼児健診で見つかる例が非常に多いのです。小児科専門医、ある いは小児神経科専門医は、健診の後、一般の小児科の先生が見つけ出してくださった、 あるいは疑いを持ってくださった発達障害の方を診断し小さい時期からフォローしてい るというのが特徴です。主訴は言葉の遅れや発達の遅れや会話の問題などですが、乳幼 児、そして保育園、幼稚園では、集団不適応、多動、行動上の問題、発達の遅れ、言葉 の遅れなど多彩な理由で、一般的な健診で見つけていただいた方々を小児科専門医、あ るいは小児神経科専門医が診断、長期に渡り、高校卒業まで、もう大丈夫だよというま で診ているというのが現状です。  学校、学童になりますと、集団不適応や学習障害、多動、注意欠陥、不登校、行動上 の問題などで受診いたしますが、乳幼児は、乳幼児健診や就学前健診などで問題を感じ られた方々、あるいは保育所、幼稚園からの紹介で小児科のサブスペシャリティである 小児神経科専門医に受診し、その後長年フォローするのが特徴で、長年のフォロー、サ ポート、医療の結果、大きな問題の発生を予防しています。  もう1つ、小児神経科の特徴としては周産期の脳障害、低出生体重児の診療です。。 低出生体重児は、虐待や発達障害のハイリスクですが、この低出生体重児を障害があろ うとなかろうと、障害がある方はもちろんですが、生まれた時点から、周産期センター を卒業した時点から、長期に渡ってフォローして発達障害をサポートするというのが、 医療の1つの大事な使命です。  他の専門医との連携を図示しました。家庭医や小児科医、あるいは新生児の専門医か らリファーされた発達障害を持っているお子さんが、小児神経科専門医により、我々が この1,000名の専門集団で、多くは高校卒業ごろまでです。思春期の大変な時期を 経ながら、破綻なく成長できていることを確認して、診療の終わりとするというのが大 部分です。  成人まで問題を持ち越すと思われるような例、2次的な精神疾患を発症した例などは 精神科の専門の先生方にリファーさせていただいて、診療をしていただくというような 体制が、恐らく大部分の診療体制だろうと思います。  こういう診療の中で特に大事なのは、保育園、幼稚園、学校との連携を取りつつ、こ こは結構時間のかかる大変な医療でございますが、これをやりながら、同時にご家族と の調整をして育児支援をしながら、破綻のない、2次的な精神障害を発症しない、社会 適応できる、学校適応できる状態になって、診療をオフとするというのが、小児神経科 専門医の大多数がしている専門診療です。  しかしながら、中にはやはりこのルートをとらず、あるいはこのルートでもやはり大 きな問題を抱えて、精神科の専門の先生にバトンタッチをお願いするというような例も 一部にございます。  私どもの考えます小児精神保健医療体制は、先ほどボトムアップとそれから重症の方 を診る児童精神科医の早期の育成という2つの面があるというふうに、議長がおっしゃ いましたが、小児科専門医の中で心のケアをするのをどれだけ広く、多くの専門医がそ れを実際にできるようにする体制をとるかということ、あるいはとれているかというこ とが問題になろうかと思います。実際には1,000名の専門医を抱えている小児神経 科専門医は、発達障害においてかなりの役割を現在果たしている。実際に児童相談所の 相談員をしている方もいらっしゃいます。鳥取県などでは発達障害に関して、あるいは 発達のいろいろな相談施設に関しては、小児神経科医を必ず派遣するというような体制 をとっておられるような県もあります。5歳児健診を始めるなど、子どもの問題の発症 を予防するというのが、保健医療の基本でございますので、予防する体制をいかに早期 からとるかということに関して、小児神経科専門医が、かなりの役割を果たしていると いうのが現状でございます。  この図は前にお示しいたしましたので、図を示すだけにいたしますが、最後の新しい 保健医療の取り組みとしては、決して子どもの体の専門医、子どもの心の専門医と分け るのではなく、小児の心身の保健医療体制をどうするか。すなわち、このボトムアップ をどうするか。そして小児神経科専門医という既に出来上がっている、確固たる専門医 体制を発達障害の診療に、どのように行政で活用なさるか。そしてまだまだ足りない児 童精神科医の専門医の研修制度をどうやって充実させるか。このような点がこれから問 われるべきであろうというふうに思います。以上でございます。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。今の発表について、この場でぜひ聞いておきたいと いうことがありましたら、どうぞ。 ○牛島委員  1つだけ。先生のおっしゃる心因反応というのは、どういうことでございましょう か。 ○桃井委員  小児医療の中では身体症状の原因が心である場合です。 ○牛島委員  心因反応というのは、心因性の精神病のことです。子どもにはまず起こり得ない状態 です。だから、どういう状態を指しておっしゃっていらっしゃるのか聞いているので す。 ○桃井委員  子どもには心因反応が起き得ないというのは、精神科の定義でございますか。 ○牛島委員  精神病性状態でございますから。心因性に起こる、妄想とか、うつとか何とかで、と ても普通の一般の方が扱えるような状態ではないのでございますが。 ○桃井委員  精神科の定義は、そうかもしれませんが、小児科では、そうは使っておりません。 ○牛島委員  だから聞いているのです。おっしゃる心因反応というのは、どういう状態でございま しょうか。 ○桃井委員  小児科医が、一般的に使っている心因反応は例えば、身体症状で足を痛がる、お腹を 痛がる場合に、身体の病気、基質的疾患がなく、精神的な、あるいは心理的な原因で身 体症状を呈している場合を指します。 ○牛島委員  それは心身症とどう違いますか。 ○桃井委員  心身症は、私の理解する限りでは、心身症はあくまで身体の疾患です。 ○牛島委員  わかりました。先生のおっしゃる意味はわかりましたけれども、ぜひここで心因反応 という言葉は外していただきたいと思います。「心因反応」は精神医学が営々として築 いてきた概念ですから。 ○桃井委員  小児科学会の先生、いかがでございましょうか。 ○柳澤座長  サイコロジカル・リアクションという、それを心因反応と訳して、小児医療の中では かなり一般的に使っていると思いますけれども。 ○牛島委員  クルトシュナイダーが定義しました心因反応というのは、かなり歴史的にははっきり したものでございまして、それが全然別の意味で使われるのは、ちょっと私は意外だ し、困るなという感じがいたします。 ○星加委員  牛島先生のお話はよくわかるのですが、小児科の中では、精神科とはかなり違った立 場で、長い間使われてきたように思います。小児科にかかわるいくつかの専門学会の中 では、先生がおっしゃるような定義でやるのですけれども、少し歴史的な流れが若干違 っていたのかもしれません。 ○牛島委員  サイコロジカル・リアクションは心理的な反応ですよね。心因ではない、サイコジェ ニックではないです。 ○柳澤座長  ここで、あまりそういう議論をしていてもしょうがありませんので、また。 ○奥山委員  恐らく、例えば心因性視力障害という言葉を使ったりします。つまり、心因性の身体 症状という観点から、それを総合して心因性反応と言っているのだと思うのです。です から心理的な原因による視力の障害であるとか、心理的な原因による腹痛とか、そうい うようないわゆる身体化障害、適応障害、今の診断名で言えばそういうようなものを、 心が原因で起きる身体症状というような形でとらえて、そういう言葉になってきたので はないのかと思っています  先生のおっしゃるように、定義づけということになると、今使われているような診断 基準というのを明確にしていって、共通言語にしていくということが必要なことだろう と思います。 ○柳澤座長  今までこのように精神科の先生方と小児科医とが一堂に会して、ディスカッションす る場というのがむしろ非常に少なかったと思うので、そういうことが今の議論の中にも 現れているかと思います。そういう点で共通の基盤で議論するような場所、そういう意 味でも非常に貴重な機会になるかなと思います。今の問題に関しては、これから改めて もうちょっと議論する必要があれば、機会を持ちたいと思います。 ○吉村委員  少しよろしいですか。今、先生が最後に精神科に渡すとおっしゃったのですけれど も、どんなときに精神科にお渡しになるのでしょうか。 ○桃井委員  精神科にお願いする疾患は、それは場合によっていろいろございます。今後、長らく 成人としてその状態とつき合っていく必要があると考えられた場合には、小児の専門医 から精神科にお願いをする。あるいは2次的精神疾患を発症された場合、あるいは発症 されそうな状態がある場合には、精神科の先生にバトンタッチをすることが多いと思わ れます。  年齢、重傷度など大変いろいろなケースがございますので、一概には言えませんが。 ○柳澤座長  よろしいでしょうか。それでは次に進みたいと思います。今回は文部科学省の方か ら、文部科学省の立場での、この問題に関する認識、また取り組みといったものをご説 明願いたい。資料番号は7です。どうぞよろしくお願いします。 ○文部科学省  文部科学省高等教育局医学教育課課長補佐の小谷と申します。どうぞよろしくお願い いたします。私の方からは、吉村先生、山内先生を始め、現在医学教育にご尽力いただ いております先生方を前にして大変恐縮ではございますが、現在の医学部の学部教育の 取り組みの状況と特に子どもの心の診療に関する取り組みについて、簡単に紹介させて いただきたいと思います。  まず、資料の97頁をご覧いただきたいと思います。現在の学部教育の状況を簡単に 図式化しております。文部科学省におきましては、現在患者中心の医療への期待などを 踏まえまして、平成13年3月に自治医科大学学長の高久先生に座長を務めていただけ ました、「医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議」から報告書をいただ きまして、その報告書に基づきまして、各大学における教育改革を支援しているという 状況でございます。  報告書の概要につきましては、1枚おめくりいただきまして、98頁、99頁に添付 しております。時間の関係で詳細にはご説明できませんが、カリキュラム改革、臨床実 習開始前の共用試験の実施、臨床実習の充実、教育能力開発の推進。こういった4つの 柱でできているという状況です。  特にこのカリキュラム改革について、簡単にご紹介させていただきます。この協力者 会議におきましては、学生に基本的な臨床能力を身につけさせる学習内容を明確に整理 するとともに、コミュニケーション能力の育成、安全管理、倫理教育や情報管理教育な ど、医師に必要な基本的な教育の量的質的充実を図るという観点に立ちまして、各大学 におけるカリキュラム改革を促すためのモデル・コア・カリキュラムといったものを提 示させていただきました。  このモデル・コア・カリキュラム、全体は大部になりますので、その構成のみ100 頁と101頁の方で載せさせていただいております。この協力者会議におきましては、 このモデル・コア・カリキュラムの分量を既定の必修科目単位数の大体3分の1程度と いうふうに見込んでおります。残りの部分で、各大学がその特色を十分に発揮していた だいて、独自のカリキュラムを編成していただくという考え方に立って、このモデル・ コア・カリキュラムというものを提示しているところでございます。  実際の導入状況ですが、昨年6月に実施いたしましたアンケート調査におきまして は、防衛医科大学校も含めまして、国公私立大学、80校中42校におきましては、既 にこのコア・カリキュラムの導入が完了し、さらに35校においては導入への作業が進 行しているといったような状況が出ております。もう1年近くたちますので、またさら に進捗しているものと思っております。  その中で特に子どもの心の診療についてということで申し上げますと、このモデル・ コア・カリキュラムの小児科に関する部分、あるいは精神科に関する部分を抜粋いたし まして、資料102頁から106頁まで添付させていただいております。特に子どもの 心の診療についてということで申し上げますと、105頁、106頁のところにアンダ ーラインと網がけをしておりますような項目、小児行動異常を列挙できるといったよう なもの、あるいは思春期と関連した精神保健上の問題を列記できるといった内容を到達 目標として掲げております。  文部科学省といたしましては、この到達目標に向けて、各大学におかれて、それぞれ 自主的自律的に具体的な教育課程の内容を決定していただいているというふうに考えて いるわけでございますが、文部科学省として個々の大学において、具体的にどのような 講義や実習が行われているのかというところにつきましては、公立大学、私立大学につ いては、従来からも把握できておりませんし、国立大学につきましても、昨年4月の法 人化後からは、それまでは個々の大学の講座や学科目も省令で決定しておりましたけれ ども、そういったことがなくなりましたので、今の時点では網羅的には把握していない のが状況でございます。  今回、ご説明の機会をいただきましたので、私どもといたしまして、毎年各大学附属 病院のご協力のもと、ご提出いただいております概況資料をもとに検索いたしましたと ころ、例えば大学附属病院におきましては、平成14年から信州大学医学部附属病院に おいて、「子どもの心の診療部」が、名古屋大学医学部の附属病院におきましては、 「親と子どもの心療部」、また平成15年には千葉大学医学部附属病院で、「子どもの こころ診療部」、神戸大学医学部附属病院におきましては、「親と子の心の診療部」と いったものが設置されているようでございます。  さらに、平成16年10月には香川大学医学部の附属病院におきまして、「子どもと 家族・こころの診療部」といったものが開設されているようでございます。これにつき ましても昨年の調査をもとに検索しておりますので、今年度に入って新たにそうした診 療部を設置されたところまでは、現在のところは把握できていないという状況でござい ます。  このうち、具体的な取り組みの例といたしまして、香川大学の取り組みについて、ご 紹介をさせていただきますと、資料107頁でございます。香川大学におきましては、 診療部を担当されております石川元教授が、108頁で具体的な講義内容について、説 明を載せておりますけれども、学部教育においても3年次の必修科目として医学心理 学、これは児童精神医学入門というべき内容ということでございましたけれども、2単 位担当されている。そして来年度は既存の講座を組みかえて、4名のスタッフからなる 児童精神医学の講座を設置されるといったような動きがあるということでございます。  また、先ほども学校、幼稚園、保育所との連携というお話がございましたが、石川先 生はこちら大学や附属病院での活動にとどまらず、平成15年度より文部科学省が、 47都道府県を対象に2年間、特別支援教育推進体制モデル事業というものを実施させ ていただきました。これにつきましては、110頁、111頁に内容をつけてあります けれども、具体的には香川県教育委員会の委嘱を受けて、香川県下における特殊教育の 対象にはならない、普通学級における軽度発達障害のある児童生徒への支援のために、 調査研究運営会議では、石川先生が会長として特別支援教育体制の確立のための議論を リードされたとお聞きしております。自らも専門チーム、あるいは巡回相談員の一員と して県内の小中学校を巡回していただいて、普通学級における学習障害、注意欠陥多動 性障害、アスペルガー症候群などの診断と療育活動にも当たられたとお聞きしておりま す。  この事業につきましては、昨年度で終了したところでございますが、文部科学省とい たしましては、こういった医療機関と教育委員会、学校との連携が重要だと考えており ますので、112頁以降にもありますような新たな事業を、今年度よりまたさらに拡充 した形で取り組む。香川県においてはまたこの新たな事業にも、石川教授にも参加して いただく予定であるといったようなことを伺っております。  ご参考までに石川教授が、こういったものにかかわられるきっかけというか背景とい うことでございますが、教授ご自身が香川大学に着任されてから8年間ぐらい、医療ボ ランティアとしていろいろな地道な活動されておりました。例えば平成14年度より、 香川県学校医療ADHD連絡協議会を主催して月例会を行い、ADHDが疑われる子ど もを抱える保育園、幼稚園、小学校、中学校の要望に基づいて、チームを編成して訪問 し、家族への説明ですとか医療への導入を支援するといったようなボランティア活動を 続けてこられたということがあるそうでございます。  診療部設立後は訪問活動はされておりませんが、受診不可能なケースの無料相談とし て月1回19時半より外来で活動を継続中というようなことでございます。アスペルガ ー症候群や高機能自閉症を抱えていらっしゃる家族で組織される香川県アスペ一人立ち 支援親の会といったような会があるということでございますが、それにつきましても精 力的に後援されると、そういった活発な活動が背景にあって、現在の活動に結びついて いるというようなことを伺っているところでございます。  時間の制約上、簡単ではございますが、私からの説明は以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。 ○文部科学省  続きまして、文部科学省初等中等教育局児童生徒課課長補佐をしております今泉から 説明させていただきます。資料の115頁をご覧いただきたいと思います。本会議の趣 旨に直接的に関係のある内容ではございませんが、参考になるものといたしまして、文 部科学省で現在、子どもの心の発達に関する研究等を行っているところでございます。  まず一番最初でございますが、情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会と いうものを開催しております。この会議は何を目的としているかと申しますと、子ども の心の発達に関してこれまで脳科学、精神医学、社会学、教育学、また栄養学、そうし た各学問分野においてそれぞれ各学問分野でできる子どもの心の発達について、研究成 果が出てまいりました。  ただ、これについては、相互の学問間の連携というものができておりませんでしたの で、学問間の連携を図って、子どもの心の科学的解明について、その成果をより有機的 な形で出すための会議として、立ち上げてきているところでございます。  またはこの会議においては、せっかくの研究成果がなかなか教育現場、または臨床心 理の現場において、十分な活用がされているとは限らないので、そこら辺のシステムづ くりについても検討しているところでございます。  さらに、文部科学省関係で行っている研究の動向といたしまして、これは文部科学省 ではないのですが、日本学術会議において、子どものこころ特別委員会というものがご ざいます。これも先ほどの情動の科学的解明の会議と、目的がかなり重なるところがご ざいますが、広範な学問間の連携を果たして、子どもの心について科学的な解明を行っ ているというような取り組みが行われております。  また、脳科学の観点から子どもの心の発達について解明していこうという動きが、例 えば独立行政法人科学技術振興機構いわゆるJSTにおいて、社会技術研究システム、 その研究領域IIIのところで、脳科学と教育というものが設けられております。この中 で具体的な、非侵襲計測を活用いたしました脳科学の研究成果をどういうふうに教育に 活用することができるのかという研究を行っているところでございます。  また、独立行政法人理化学研究所において、脳科学研究センターの中で4つの領域を 設定いたしまして、脳を知る、脳を守る、脳を創る、脳を育てる。その各部分について 研究を継続中でございます。  さらに、これは21世紀COEプログラムとして、既に各大学において個別に研究が 進んでいるところがございます。心の問題に関して21世紀COEプログラムで採択さ れている大学名について、このように列挙させていただきました。  このような形で文部科学省においても、子どもの心の発達について、どのような刺激 を与えれば、どの段階でどういうふうに子どもの心というのが発達していくのか、一般 的なあり方について研究を進めているところでございます。以上でございます。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。文部科学省の方から、大学における医学教育の現在 の方向、その中での子どもの心に関する教育としての取り組み、新しい診療部が、次々 とできつつある。前回東大にもことしの4月に子どもの心の発達診療部ができるという 報告がありました。それともう1つ脳科学の観点からの心の発達について、文部科学省 として取り組んでいるというようなご説明がございました。  今のご発表に対して何かご質問ございますでしょうか。 ○山内委員  ただいまモデル・コア・カリキュラム等のお話がありました。確かにそのとおりなの ですが、前回現場の話として、私が話させていただきましたし、吉村先生からも同種の 意見がありましたけれども、実際の卒前教育の中で講義が行われる児童精神医学につい ては、本当に1コマか2コマくらいの程度という現実があります。それから国試のガイ ドランのブループリントなどでも、本当に1%程度しか重みづけが行われていないとい うようなことがありまして、実際に医学部を卒業する学生、あるいは医師になったばか りの人というのは、こういう領域についてはこんな病気があるんだといった程度の認識 しか持てなくて、ここで言う子どもの心の診療に対応できるような能力は、とてもない という現実があります。  我々が考えるときに、そうして医師になってきた人たちに、例えばプライマリケアと か、あるいは専門医としての力を持ってもらうためにはどうしたらよいかという、そう いう視点も非常に重要ではないかと思って、あえて前回のことをリマインドしていただ くためにお話させていただきました。 ○柳澤座長  ありがとうございました。おっしゃるとおりだと思います。それでは次に進みます。 伯井委員、日本医師会の立場で、よろしくお願いいたします。資料番号は3です。 ○伯井委員  日本医師会の伯井でございます。日本医師会における子どもの心の問題に対する取り 組みについて、簡単にご説明をさせていただきます。資料をご覧いただきたいと存じま す。  日本医師会は、会員数は約16万人でございます。そのうち小児科を主たる標榜科と している会員が約9,000人、診療内科が約600人で、精神神経科等が約6,200 人でございます。したがいまして小児あるいは精神を主たる標榜としている会員は約1 割の1万6,000人ほどであります。  標榜ではございませんが、学校医の先生の数でございますが、学校医は内科の先生が 多く、耳鼻科、眼科の先生もおられます。1人で複数校の学校医をなさっておられる人 もありますので、数は不明です。  したがいまして日本医師会は、本検討会の委員が所属されておられますいくつかの学 会のように、子どもの心に特化した形での事業を行っているわけではございませんが、 いくつかの取り組みをご紹介したいと思います。  まず、乳幼児保健講習会、そして学校医講習会を毎年開催しておりまして、参加者は 全国から約500名でありますが、その記録を毎年日医雑誌に掲載して、全会員が生涯 教育の一環として、それを勉強できるようにしております。  2頁に乳幼児保健講習会の平成15年度からのテーマを掲載しております。平成10 年度は「乳幼児からの心の健康」、平成12年度は「心の健康と医師会の役割」という ように、子どもの心を中心としたテーマで開催しております。それ以外の年でも、3 頁、4頁をご覧いただきますと、講演あるいはシンポジウムの一部として、子どもの心 の問題を取り上げております。  5頁には学校医講習会における子どもの心についての講演、シンポジウムをリストア ップしております。  2番目といたしまして、日本医師会には多くの委員会が設置されておりまして、さま ざまな問題についての検討を行っておりますが、その中に乳幼児保健検討委員会、それ と学校保健委員会がありまして、2年ごとに会長から諮問を受け、答申、報告書を取り まとめております。6頁に諮問、答申の一覧を掲げております。乳幼児保健検討委員会 では、平成14年度3月の報告書が、「乳幼児の健全な心の発達に果たす医師および医 師会の役割、育児支援を含めて」ということでありまして、その目次は7頁にございま す。  学校保健委員会におきましても、平成10年3月の報告書が「学校精神保健の具体的 展開方法、それに対応する学校医の研修のあり方」ということであります。目次は8頁 にございます。  そのほかの年の報告書におきましても、本日は割愛いたしましたけれども、子どもの 心の問題について提言等がなされております。子どもの心の問題について、子どもの心 の問題の健診票の作成など、さまざまな指摘、提言がなされておりますけれども、問題 はそれらが具体的な施策に結びついていないことだと考えております。  それと3番目といたしまして、日医雑誌の特集がございます。単発の論文としてでは なく、平成12年5月1日号、平成13年12月15日号に特集が組まれております。 具体的な内容は9頁をご覧いただきたいと思います。  本検討会の委員であられます奥山先生、保科先生にも講習会の講師、あるいは執筆者 としてご協力いただいておりますことに、この場をお借りいたしまして、御礼申し上げ ます。  そのほか子どもの心と直接は関係がございませんが、「児童虐待の早期発見と防止マ ニュアル」を刊行しており、本日資料として配らせていただきました。また「改訂 保 育所、幼稚園園児の保健」、あるいは「学校医の手引き」等を刊行しており、この中で 子どもの心の問題について、掲載されております。本年度も「学校における健康教育」 を作成する予定でございます。  以上、簡単でございますが、日本医師会の取り組みを紹介させていただきました。私 は第1回の検討会の場でも申し上げましたが、いわゆる専門医の養成も重要と存じます が、専門医だけではとても現状には対応できないと考えておりますので、母子保健・医 療を担当しておりますかかりつけ医、あるいは学校医に対する子どもの心についての研 修が、非常に重要ではないかと考えております。以上でございます。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。日本医師会としての取り組みをご説明いただきまし た。時間の関係で先に進みたいと思います。それでは星加委員、お願いいたします。 ○星加委員  私は日本小児精神神経学会を代表する形で呼んでいただいているのだろうと思いま す。この学会は活動内容といたしましては、学術集会の開催が年に2回あるのが特徴で す。機関紙の発行は年に4回でございます。  学会の会員の構成を見ますと、会員数は平成16年4月の段階で、1,021名。医 師の中で小児科医が317名、精神科医が111名、その他これは科が不明といいます か、恐らく臨床の現場を離れて、大学で教職に就いておられたりする方などがここに入 るんだろうと思いますけれども、131名です。それから心理の先生方が279名、教 育の関係が67名などが主なものであります。  学会で対象とされている子どもの心の問題に関する領域、それから対象疾患に関して は、基本的にこの学会は発達障害を主たるテーマとして据えております。自閉症、アス ペルガー障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、そういったものが最近の学会の演題を 見ても多いと思います。それ以外に摂食障害、不登校、トレット障害、そういった内容 が含まれています。  学会の子どもの診療にかかわる医師の養成研修等に関する取り組みとしては、これは 実際にはまだ全部決まっているわけではないのですが、学会認定研修施設を検討中でご ざいます。  それからここ数年間は、年2回開催される学術集会のときに企画委員会、これは学会 の中でそういった研修や教育のための企画を行う委員会がありまして、そこでその時々 のトピックスやあるいは必要と思われるいろんな知識について、各学術集会の会長の先 生にお願いして、30分から1時間程度の時間をいただいて、教育講演を行うという、 そういった形をとっております。  今回のこういったテーマに関連して有用と思われる資料といたしまして、今回の資料 の中に入っているのですが、青少年犯罪に関する日本小児精神神経学会の提言が中に添 付されています。この中で今回の検討会に関連するところでは、連携、学際システムの 構築、小児精神保健のインフラストラクチャーの構築の必要性についてまとめられてお ります。この部分は青少年犯罪のことだけでなく、広く子どもの心の診療について、必 要となる部分だろうと考えています。  それから学会の子どもの心の問題の診療にかかわる医師の養成についての意見でござ いますが、私どもの学会は、小児科医が多いという特徴がございます。そういう点から 見ますと、桃井先生のご意見とも重なるのですけれども、一般小児科医の診断と初期対 応の水準を向上させることが必要だろうと考えています。  それからもう1つは、確かにこういった分野の専門医といいますか、十分に診療が実 際に可能な先生方の育成であります。基本的には小児専門医の資格をとった後で、つま り卒業5年で一応小児科医の専門医になりますので、その後の研修分野を考えていく必 要があるのではないかと考えています。実は非常にそういった研修の場が限られており まして、東京医科大学の場合ですと、今までに4名の小児科医の研修をお願いしたので すが、1人は国立国府台病院、3名は都立梅ケ丘にお願いいたしました。しかしある程 度のその地域で、あまり遠くないところでの研修ということになると非常に限られてし まうのが、現状だと思います。  それから研修システムの構築にかかわる問題なのですけれども、恐らくこのあと私の 予想では、小児科医はかなり数が減っていくというふうに予想しております。これは初 期研修が義務化されて2年間、実際に研修に人が入ってこなかったという問題。それに かかわる例えば夜間の救急当直に関する過重労働の問題が表に出て、学生たちが少し心 配をいたしております。そういう面では小児科医が増えるとはちょっと考えにくい。恐 らく減少が起こるだろうと思いますので、そのときのために非常に多様な研修の形を構 築しておく必要があるように思います。  つまり本当だったらこういった分野の研修というのは、2年から3年ぐらい必要だろ うと、個人的には考えます。ただ現実の問題として、東京医大からも研修のために人を 出すときに、最初は1年間出せました。それがだんだん短くなってきまして、一番最後 に出した人は、4カ月しか送ることができませんでした。  こういった現状を考えますと、例えば3カ月か6カ月とか1年という、比較的長期と いいますか、あるいは短期といいますか、そういったいろいろな形の研修のシステムを 考えておく必要があるのではないかということです。  それからもう1つ、おそらくこういった状況で3カ月出るというのは今の大学病院の 小児科に関しては極めて大変なことだというのがよくわかります。そういう点では例え ば1週間に1回だけ、半日外来を見学するとか。あるいは実は私の東京医大の外来に、 年に2回か3回だけ大阪から来られている先生がいます。小児科医の方なのですが、そ こで外来を診ていただく。  おそらく講義を聞くというのは勉強になるのですが、やはり限度がある。実際に外来 についてもらって、その中でそういった子どもたちがどういった動きをするのか、どう いった対応をするのか、あるいは心理検査に一緒に立ち会ってもらって、そのときの反 応を見てもらう。そういったことがかなり実際の診療場面では役に立つのではないかと 考えておりますので、そういったことも含めて、いろんな多様な研修のシステムが必要 かなというふうに考えています。  それからもう1つ私の外来でも、平成7年から突然にADHDの子どもたちが増えて まいりました。それから現在私の外来の約半数を広汎性発達障害、特に高機能広汎性発 達障害のお子さんたちが占めております。そういった現状を逆に振り返ってみますと、 学校との連携が非常に大事なことで、これをどうやって構築していくか、これもまた大 きな問題ではないか、こういうふうに考えております。こういった部分も研修の先生方 に知っていただくというようなことをやっております。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。大変時間が限られておりますので、先に進みたいと 思います。それでは日本精神科病院協会の立場で、森委員からお願いします。 ○森委員  私の方では資料の35頁に、日本精神科病院協会の概要について書いてございます。 いわゆる日精協といわれている団体でございまして、1,200あまりの病院が所属し ております。全日本の精神病床数の約85%、30万床を抱えております。従業員を含 めますと、12万5,000人がこの日精協の関連に入っているということになります。  私は前回、前々回と欠席させていただいて申しわけなかったのですが、本日のお話を 聞いておりまして、大変いろいろな団体がうまく機能しているかのような発表がたくさ んございますけれども、それはそれで結構でございますが、こういう会は本来国民に向 けて、本当に役に立っているかどうかという問題点を出すべきだろうというように思い ますので、日精協としては、問題点を中心にお話をしようと思います。  ここの資料のところにございますけれども、39頁からが、私どもがやっております 思春期対策でございます。これは「こころの健康づくり対策」研修会というものでござ いまして、5年前に厚生労働省の方から、当初委託でやってくれないかというお話でご ざいましたので、その後補助金事業というように変わったわけでございますけれども、 そこで思春期精神保健対策専門研修会というものを開かせていただいております。  その次の頁からその内容でございます。今年が5年目でございます。これはコメディ カルが2回、医師が2回、45頁以降には各研修会の時間割表をつけてございます。各 専門の先生方にご講義をいただいて、3日間の研修をしております。  これでアンケート等を回収するわけでございますけれども、実はこういう研修をやっ て初めて私どもはわかったわけでございますが、医師のコースですと、人数はある程度 少なくしてやっているわけですが、最初のころで半分ぐらい、最近では半分以下が実際 に子どもを診ている、児童、思春期を診ている先生方で、ほかは初めてここでそういう 勉強をしたという先生がたくさんおられるのです。  先ほど山内先生の方からお話がございましたように、大学ではほとんど学んでいない んです。こういった研修会で初めて勉強しましたという先生方のアンケートがたくさん ございます。初めて勉強して、それを現実に生かしていただけるかといいますと、残念 ながらそういうわけにもまいりません。というのはこれはもう既にこれまで何回かの会 で話が尽くされていると思いますけれども、まず児童思春期に関する医療のインフラが 悪すぎる。これは外来もそうですし、入院もそうですし、施設もそうです。入院に至っ ては、これはエマージェンシーにかかわるものもはっきりしたものはできておりません し、軽症の短期の入院もできておりません、重症の方も入院できない。いろいろなスタ イルの患者さんがたくさんいらっしゃるわけですし。あるいは障害をお持ちの方がたく さんいらっしゃるわけですけれども、私ども精神病院としては何とも対応ができないと いう状況でございます。  ですから先生方がせっかく研修会に出て興味を持たれても、自分の病院に帰られて、 じゃ児童思春期をやってみようかというと、採算がとれない、病棟がない。病棟をつく ろうと思ってもそんなことができるような予算はないというような現状でございます。  私どもとしてはこれははっきりと、国民に向けてきちんと、困っている人たちを何と かするんだということであれば、現実的に法的な整備と財源の整備をきちんとするとい うことが最も大事なことだというように思っております。  それと先ほどからたくさんのいいお話を聞かせていただきましたけれども、私の地元 であります国立大学にも、先ほどの、親と子どもの心療部というのが、文科省からご紹 介がございました。しかし、予算がないので、実際には自分たちのポストの方から児童 思春期の方に回したんだというお話を聞いたばかりでございます。現状は全く予算も回 っていない。ユーザーはそこで非常に待たされていて、すぐにかかりたくてもかかれな い。現実に非常に大きな問題をたくさん抱えているわけです。そういった問題を本当は きちんと出していくべきだろうと思っております。  その中で先ほどから出ておりますようなプライマリケアをどうしていくのか。あるい は、多くの方々が入り口としてみんながこういう問題に目を向けるにはどうしたらいい のか。あるいはその中で専門性というのは、どのようにあるべきなのかということをき ちんと議論するというのが、この会の目標ではないかと私は思って、聞いておりまし た。時間がないようでございますのでまた後で申し上げます。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。先へ進めさせていただきます。それでは齊藤委員、 よろしくお願いいたします。国立精神・神経センターのお立場で。 ○齊藤委員  よろしくお願いします。私の方は資料5です。最初に我々、精神・神経センターの児 童精神科部門のお話をすることは、基本的には卒後教育の中で、精神科の観点から見た 児童思春期の専門家を育てるという役割に関しての、ご説明をさせていただくというこ とになろうかと思います。  そのバックグラウンドの資料として、最初に外来の初診統計と入院についての統計を 4枚ほど並べてございます。その最初の外来統計をご覧ください。平成10年、11年 ごろから急速に受診ニードが上がってまいりまして、100人ぐらいずつ毎年初診の人 数が増えていくということです。平成14年にもうこれ以上増えることに、我々の人的 キャパシティとしては耐えられなくなって、年の真ん中で初診を予約制に転じました。 にもかかわらず、次の年15年にはさらに増えて770人に達したというところです。 その後ようやく予約制の導入の成果が出てきまして、700ぐらいに今年度は落ち着き そうな感じです。  それともう1つはどんな疾患を見ているかということになるわけですが、見ていただ きますと、下の2つの柱は、いわゆる摂食障害までも含めて、神経症性、人格障害性の 水準の障害と一般にされるようなものでして、その上の1つが、精神病性障害。その上 の3つの柱が発達障害のグループということになります。  そうしますと漸増はしておりますが、神経症性、人格障害性の障害というのは、そん なにこの10年間は増えていないわけです。それから精神病性の子どもたちの受診も微 増もしくはあまり変わらない。増えているのはひたすら発達障害だということになるわ けです。しかもこの増えているケースの多くは、精神遅滞の中等度以上のお子さんや、 典型的自閉症のお子さんではなくて、軽症、高機能の広汎性発達障害とかそれからこの 真っ白の柱がそうですが、ADHD、注意欠陥多動性障害です。このあたりの受診ニー ドが非常に高まっているのが現状であるという背景をお示ししました。  我々のところは、大きな一般精神科と小さな児童思春期精神科という組み合わせで、 機関内でバランスをとっておりますので、15歳を一応初診の上限とさせていただいて おります。年齢の分布は、発達障害が主たる受診者である低年齢では男子が圧倒的に多 く、思春期年代に入ると女子の方が多くなってくるという傾向を示しています。  70頁にはこれは入院の疾患対象の統計に関しましては、これは病棟のキャパシティ ということがありますので、そんなに毎年大きな人数の変化があるものではございませ ん。15年の新入院統計を示しますが、入院となりますとまたちょっと障害の事情が変 わってきます。児童精神科的な専用病棟における入院の半数は、神経症性、人格障害性 の障害疾患ということになります。その中でも強迫性障害、それから不登校を主訴の1 つにしているような不安障害、適応障害。それからかつて小児ヒステリーと呼ばれたよ うな転換性障害や解離性障害、そして拒食症を中心にした摂食障害といったあたりが中 心疾患ですけれども、これが約半数です。それから残りの半分を精神病性障害と発達障 害の子どもたちで占めています。  発達障害といいましても、発達障害そのものを治すわけではありません。発達障害の 子どもに生じた適応障害、適応不全に関して介入する、あるいは精神的な疾患の2次的 発症に関して対応するということになります。  年齢はやはり児童思春期精神科の病棟となりますと、12歳から15歳という思春期 年代が圧倒的に多いわけですが、図にお示ししましたように、これだけ小学生も入院し ているというのが現状であります。  次にレジデントという形で、我々3年間の児童思春期精神科の専門トレーニングのコ ースを持っておりますけれども、これを簡単にご説明します。我々のところは3年間の レジデント医師の受け入れということを行っております。そのうちの一部は、専門修練 医というさらに上級レジデントといいますか、2年間の方に進む方もいます。  3つのコースがございまして、第一コースはこれから入ってくるかと思いますが、臨 床研修医2年間を経た人たちが集まってくるコースです。第二コースは、精神科医とし て既に2年以上、別の機関で専門研修を経た方たちです。第三コースは小児科医とし て、同じように専門研修を経た方たちです。このような図になるわけです。まず、レジ デントの現状というのはこれは大きな間違いをしておりまして、第一コースと書いてあ るのはすべて第三コースの間違いです。ご訂正をお願いします。第一コースはまだ入っ てきておりません。  このような感じで、実際には今年は8名のレジデントが研修中であるという状況で す。残り3名は、一般精神科の研修中です。  内容的にはここに書きましたようないろいろな疾患がございますが、要するにできる だけ広くいろんな精神疾患を診れる専門医になるということと、それから疾患や症状そ のものも大事ですが、その後ろにある行為の障害がどんどん悪循環化していくケースと か。あるいは虐待による影響を受けている難しいケースであるとか、このあたりはぜひ 経験をしてほしい。それから機関との連携ということ、そして内部のチーム医療という ことに関しては、繰り返し経験してほしいということで、我々のところの特徴は、最初 から実際に入院、外来のケースの主治医となって、それを我々指導医がサポートし、ア ドバイスし、修正を行うという、そういう形で、ケースを通しての研修ということをや っております。  大体そういうところなのですが、一番後ろについているカリキュラムの評価方法とい うのは、このように広くいろいろ獲得してほしいということです。特に法的な問題や自 分たちの活動のバックグラウンドというものをきちんと持って活動できる医師に育って いくということを目標にやっております。以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。それでは最後になりますけれども、国立成育医療セ ンターのこころの診療部長、奥山先生よろしくお願いいたします。 ○奥山委員  よろしくお願いいたします。こちらのパンフレットを1つ用意してあるのですけれど も、これは国立成育医療センター全体のパンフレットです。成育医療という言葉はおな じみがあまりないかもしれないのですけれども、胎児から小児期を経て思春期、それか ら父性、母性、それから胎児、妊婦さんという形で1つのリプロダクションサイクルと いうことを考えた上での医療ということを、新たに成育医療という名前で呼ぶようにな り、少しずつ浸透している概念です。  現実的には、小児病院と周産期医療。そして多少キャリーオーバーを診るというよう な状況とお考えいただいてよろしいのではないかと思います。  その中でこころの診療部ということで、79頁、資料6をご覧いただきたいと思いま す。構成はご覧のようになっております。こころの診療部は医師とそれから心理士で構 成されておりますけれども、他の部署で作業療法士、医療ソシアルワーカーさんなどと もかなり密接な関係をもって、治療をしています。  対象となる子どもたちと書いたのですけれども、子どもに関しては0歳から概ね18 歳ぐらいを対象としております。周産期の問題がありますので妊婦さんに対する対応も あります。キャリーオーバーという子ども時代に身体的な病気を持って大きくなられた 方々への対応ということで、成人に対する対応も入ってくるという状況になっておりま す。  対応疾患に関しましては、先ほど少し出ました資料のICD−10分類全体が、私た ちの方でも対応している対象になります。  国立成育医療センターのこころの診療部の特徴というのをいくつか挙げさせていただ いておりますけれども、小児科出身の医師と精神科出身の医師が協力して部を運営する ということが非常に大きなコンセプトでございます。アメリカなどではトリプルボード という形で小児科を研修し、精神科を研修し、そして小児精神科、つまり児童精神科を 研修するという形で、3つのボードをとるようなシステムというのもございますけれど も、日本では両方できるというドクターはそんなに多くはございませんので、両方の知 識と経験を総合して、1つのものとして成り立たさせて、トレーニングもその中でやっ ていこうというのが、1つのコンセプトでございます。  国立成育医療センターそのものがチーム医療ということを1つの柱にいたしておりま すので、1つの科で診るというよりはいろいろな科の先生方が集まって診るというのが コンセプトでございます。ですからうちの科の入院の患者さんというのは、ほとんど、 チームで診ているという形になります。  資料の82頁のところにチーム医療という形で入院された患者さん379名ほどにつ いて示してあります。統計の問題があり、2003年7月から翌年の3月までの9カ月 間をお示ししてあります。ですから1年よりも短いので、大体3分の4倍していただく と、1年の数になるのかなと思います。1年にすれば恐らく400名近い患者さんとか かわるということになります。直接患者さんとかかわるということに関しては、196 名、約200名の患者さんに9カ月の間にかかわったということです。診断名としては ここにお示しした状況です。  チーム医療の内容としましては、非常に時間をとられるし、大変なのは、神経性食不 振症、いわゆる拒食症でございます。総合診療部、いわゆる一般小児科が主科となりま して、私たちと一緒にチームを組んで医療をするという形をとっております。  また、疾患を持った子どもの精神的な問題でありますとか、身体化問題という心の問 題を体の症状で現している問題もあります。器質的な問題はないけれども、身体的な症 状で出てきているお子さんたちのことです。更に、精神障害をもったお子さんの医療対 応、例えば自閉症のお子さんが手術をしなければならない。そういうときに対応したり ということがあります。  それから移植などの場合には一番最初のときからチームの一員としてこころの診療部 も入って対応いたしております。あとは周産期のケアということになります。それから もう1つ大きいのは子どもの虐待防止対策委員会、およびその下にありますSCAN (Suspected Child Abuse snd Neglect)チームという虐待対応チームに関与しており ます。虐待が疑われる例には、即座に集まれるチームです。86頁、87頁に図を示し てあります。  それからもう1つ、家族のケアを重視しております。症状を出してきているのはお子 さんであっても、背景に家族の問題があることが多いので、家族全体へのケアを非常に 重視しているということです。  また、待ちの医療で、精神障害をこじらせてきてしまった方々に対応するだけでな く、予防という観点も含めて精神保健、メンタルヘルスという考え方もレジデントには 持っていただくようなことを考えております。  最後に、レジデント教育を重視しています。この辺が我々の部の特徴と思います。  この会の主要なテーマとして一番最初にお話がありました、発達障害や虐待等の特徴 的な問題にどのように対応しているかということで、簡単に書かせていただきました。 発達障害とかADHD等の行動の問題に関してですけれども、主に発達心理科という科 の方で対応しております。心理科となっておりますけれども、これは1つの診療科で す。83頁に発達心理科のことが書かれていますけれども、ここで9カ月で355名ほ どの初診患者さんがおられて、診断としては、発達の問題、F8のあたりが非常に多い 状況です。178名はF8に入っております。  ただ、先ほど桃井先生もおっしゃいましたように、乳幼児健診で上がってくるような 典型的な精神遅滞であるとか精神遅滞を伴った自閉症という方は、かなり早くに発見さ れて、神経科もしくは総合診療部が担当しているケースの方が多いと思われます。総合 診療部のレジデントの先生を、こころの診療部の医長がスーパーバイズする時間という ものも設けております。そういう形でいわゆる一般小児科、神経科の先生方と連携を持 ってやらせていただいているということになります。  うちの部に来られる患者さんはどういう問題を持っておられるかというと、精神遅滞 やそれを伴う自閉症を持っている方というより、学校などで適応の問題を持ってしまっ た方、あるいは確定診断を求めて来られる方、あるいは先ほど出ています精神遅滞を伴 わない発達障害、行動の問題ということで来られる方が、多いということになります。  親が子どもの行動を理解するということで解決されるような場合もありますし、投 薬、療育、学校との連携、などの多角的な治療が必要になる場合も結構多うございま す。  次に虐待に関してですけれども、私たちの部では虐待に関しては二方向からのアプロ ーチがあります。1つは発見のところで、先ほどお話しましたSCANチームに関与す る、要するにどうも虐待らしいというお子さん、例えば頭の骨を折って虐待らしいとい うお子さんが見えたときに、そのお母様の精神的な状態であるとか、お子さんの精神的 な状態も含めて直接、間接的に判断をし、チームとして参加をしていくというようなこ ともございます。  それ以外に今度は虐待を受けたことによる子どもの精神的な問題があって、こちらを 受診されることもあります。その二方向からの問題があると思われます。SCANチー ムの統計の方は後ろの方に、88頁に載せさせていただいております。それから治療に 関しましては、その次に研究報告をしたものがございまして、その中の表を少しまとめ て載せさせていただいております。こういう形で関与をしております。  思春期の問題としては、神経性食欲不振症の問題が非常に大きな問題でございます。 うちの病院でも積極的に取り組んでいるつもりで、常に病棟に5人から10人の間は入 院をしている状態であります。このお子さん方が10人近くずっと入院されると、病棟 自体もかなり大変になります。しかしながら、実を申しますとこれは正確な数字がない ので資料には出しませんでしたけれども、これでも入院希望の恐らく半数近くはお断り をしなければならない状態です。  私どものところに見えられる患者さんは、大体9歳から14歳ぐらいの低年齢のお子 さんが多いです。50%以上のやせなどという非常に重症のお子さんが多いという特徴 があります。  最後にレジデント教育のところなんですけれども、92頁のところにレジデントカリ キュラムを載せてあります。ここに書いてありますように、子どもおよび家族での社会 心理学的な医療を行うのに必要な基礎的な知識と技術と態度を習得するということを、 非常に大きな目的としております。そして、習得すべき知識と技術に関してはここに挙 げさせていただいております。連携ということもございます。  年度ごとの目標や、週間スケジュールが書いてあります。レジデント教育をする上 で、私たちの非常に大きな悩みというのは、スタッフが診療に従事する時間が非常に長 くて、レジデントの教育に携わるのは夜中という感じになりがちでございます。何とか 火曜日の午前中だけは全員でレジデントの教育をしようということで、そこだけ頑張っ て今のところ確保しているのが精一杯というところです。なかなかレジデント教育に時 間を割くということができない状況というのが、大きな問題の一つだろうと思います。  それからレジデントが終了した後に就職がどうなるか。これは私たちのレジデントの 終了の第1期生が出るのが来年の3月ですので、その辺がどうなるかというのが、私の ちょっとした悩みでもございます。  その上に書きました診療に関する問題点ということになりますと、大体外来の初診の 予約待ちは2カ月です。ただし、緊急性のあるものに関しては、常時できるだけ早くお 受けするという形になっております。  また、病棟の構造の問題がございます。内科系の病棟ですので、出入りが自由なとこ ろがございますから、離棟とかそういったいろんな行動上の問題がありまして、時には お隣の齊藤先生のところにお願いしなければならなくなったりということもございま す。  それからこれまでもいろいろ出ていますように、診療報酬の問題があります。不採算 部門であるというところは、皆さんおっしゃっているところだと思います。ちょっと怖 くて、収支比率を私は国立成育医療センターで聞いたことがありません。聞いたら大変 なんじゃないかと思って。私が前に勤めておりました小児病院のときの精神科の収支比 率は約20%でした。要するに20円稼ぐのに100円かかるという状況でした。ここ ろの診療部とか児童精神科、小児精神科といわれるところは、大体そのぐらいだろうと 思います。  もう1つの問題としては虐待対応への診療報酬の問題があります。虐待対応もものす ごく時間がかかる割に、全く収支、つまり、診療報酬のない分野でございます。私たち のところはSCANチームというようなチームを持たせていただいておりますけれど も、こういうチームが、広がっていかない実状があります。それにはやはり診療報酬の 問題というのが非常に大きく響いているだろう思います。何らかの施設基準とかそうい う形でインセンティブがないと、医療における虐待対応は進んでいかないのではないか と思われます。以上、お話を終わらせていただきます。 3.専門の医師の養成方法について ○柳澤座長  どうもありがとうございました。今日は前回の9人の委員のご発表に続いて、5名の 委員のご発表、それからまた文部科学省の方からのご発表がありました。残された時間 は25分程度ですけれども、まずは今日は途中から個々の質疑を省かせていただいてし まっておりますので、何か今日のご発表についての質問があれば、まず最初にそこから 伺いたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。 ○森委員  先ほどの齊藤先生のお話ですけれども、発達障害がもっぱら増えているという話があ ったかと思いますけれども、これは発達障害に伴う、例えば気分障害とかそういったも のももちろん含まれているということでしょうか。というのはご存じのように、米国等 では今、児童思春期で問題になっているのは、気分障害とか不安障害でございます。そ れが非常に増えている。先ほどの成育の方でも出ておりましたけれども、パーセントを 見ますと非常に少ないということは恐らく児童思春期の方へ行かないで、違うところで 診ておられるかもしれない。ここら辺が隠れたところなのかもしれないのです。  私は自分の病院を持っておりますけれども、そこにも前はまず来なかった高校生とか 中学生、小学生の気分障害が受診するようになっております。そこら辺のところがござ いますので、発達障害だけが増えているというのは、恐らく発達障害が全体に認知され た。広汎性発達障害などが認知されたことによって、受診率が上がっているということ ではないかと思うのですけれども、先生はいかがお考えでしょうか。 ○齊藤委員  結局はそういうことなのですが、ただこれはここに挙げてある発達障害は、発達障害 を受診理由にして来ている人たちだけで、構成されているわけでは全くないのです。む しろ全く別の、不登校なり家庭内暴力なり、それから何より行為障害系の行動の問題を 持って現れたケースの中から、ADHDや広汎性発達障害を見いだすことがあって、そ の場合にはどうしてもそっちの発達障害の診断名をつけて統計的には扱ってきました。  ただもし統合失調症を主訴に現れたお子さんが、例えばADHDが背景にあったとし ても、多分それは統合失調症の方でという、主たる病名でやっていると思います。  先生の続くご質問というかご意見のところですが、ほとんど同じように考えておりま す。やはりそういう目を持って我々が、子どもの病理についてそういう評価の軸を持つ ことができた時代に今いると考えていいのではないかと考えています。 ○奥山委員  先ほど気分障害が少ないというようにおっしゃっていただいたのですけれども、確か に子どもの場合、気分障害、F3に入るということは少ないのです。私たちが見えるの はどうしても小学校、中学校が中心です。多くがうつを伴う適応障害の方に入ってしま います。それを入れればうつは多いです。要するにマイナー・デプレッションは多いの ですけれども、適応障害の方に入ってしまうので、気分障害に入らないということで、 診断名にしてしまうとこういうふうになってしまう。いじめによるうつとかそういうの は、かなり多いです。 ○森委員  ご指摘のとおりでございまして、要するに気分障害の件では、マイナー・デプレッシ ョンを含めまして、気分障害系が非常に多くなっているという認識はしておかないとい けないものですから、その部分の指摘があればいいかなというように思います。  これは統計で見ますと、何かあまりそこは出てこないですね。これはメジャー・デプ レッションの話をされていると思いますので、マイナー・デプレッションを入れると、 ほとんどwith depressive mood という方がたくさんいらっしゃってそこが問題になっ て、それが自殺にかかわったり、いろんな問題にかかわってくるかも知れないので、そ こら辺のことを少しつけ加えていただきたいです。 ○奥山委員  結局単にうつだけでなく、やはり双極性の問題を持ってこられる中学生以降の方々、 それからそのときのリストカットみたいなものは、今、アメリカでもかなり注目されて いますけれども、その辺はこれからかなり注目していかなければいけない分野ではない かと考えています。 ○齊藤委員  今の自殺という言葉で、小児を診ていての実感なのですが。やはりマイナー・デプレ ッションと自殺との結びつきはそんなに、現時点で子どもの世界で深刻な問題だとは私 は思いません。  やはり死ぬ子どもたちは、気分障害と関連があるなら、メジャー・デプレッションの お子さんだと思います。その一方でものすごく広いマイナー・デプレッションの現象を 我々は抱えています。リストカットなども、日常茶飯事ですけれども、そこから死が出 てくるわけでは必ずしもないというように理解しています。 ○柳澤座長  ほかにございますでしょうか。 ○山内委員  齊藤先生にお伺いしますけれども、レジデント制の話がありましたけれども、先生の ところで11名児童精神科コースのレジデントということですが、これは希望者がそれ だけなのか。あるいは研修するのに枠があって、たくさんの希望はあるのだけれども、 11名で切っているのかその辺はどうでしょうか。 ○齊藤委員  それは時には選抜なしで11名が決まるのですが、多くの場合は3人ないしは4人の 方は途中の問い合わせ段階で、既にいっぱいになっていますのでお断りしています。 ○山内委員  そうしますと希望者は結構いると。ただそれに対応するキャパシティということです か。 ○奥山委員  うちも同じでお断りするということもございます。ただ多分齊藤先生のところも梅ケ 丘病院のお話を聞いても、うちのところもそうなのですが、小児科からの希望者がかな り増えてきているような気がします。どうですか?精神科からの希望者もおられるので すが、どちらかというと小児科の方がぐんぐん増えているというような感じは持ってい ます。 ○齊藤委員  私のところはずっと50%ぐらいずつです。半々です。小児科からも半分はご希望が ありますけれども、精神科もそれなりにあります。 ○牛島委員  今のに関連して、もう1つ考えておかないといけないのは、星加先生がちらっと言わ れたこととつながるのですけれども、先生が3カ月以上出すのは教室の事情としてとて もではございませんとおっしゃったが、精神医学教室も希望者はたくさんおりますが、 教室の都合でなかなか希望どおり出せない、そのうちに本人があきらめてしまうという 事態があることも、確かなような気がします。そこらあたりをどうするかということ も、今後の課題ではないかと思っております。 ○柳澤座長  他に今日の発表に関連したご発言はございませんでしょうか。 ○杉山委員  国府台で、3年を単位とした研修ということなのですが、実際には1年だけとかいう 方もいらっしゃいますよね。これは現実に研修としてものになるというと、最低の期間 はどのくらいですか。 ○齊藤委員  やはりものになるのは3年です。3年欲しいです。1年で見よう見まね、2年で大体 緊張しながら一通りこなせる。3年目にようやく自分のやり方でやれるというところで す。 ○杉山委員  それはいわゆる専門医として自立するような形の最低基準でしょう。 ○齊藤委員  そうです。 ○杉山委員  いわゆるボトムアップ議論で言った場合に、例えば3カ月とか4カ月研修でも、ボト ムアップになるかどうかというところは、いかがでしょうか。 ○齊藤委員  実は星加先生のところから1年間来てくれた小児科医がいるのですが、彼は小児科へ きっちり戻っていくつもりで来た、そういう意味で非常に目的意識のはっきりした方で した。彼は1年は長すぎたと言っています。戻るときにかなり適応に苦労したそうで す。でも半年では絶対短かったと彼は言っています。  主として小児科医として、そういう心の問題に関心を持ってやれる評価ができるとい う目が少し出てくるというのには、半年と1年のちょうど間あたりに最低限の線がある のではないでしょうか。 ○柳澤座長  その辺の細かい議論はまたこれから少し階層に分けた上で、カリキュラムといいます か、あるいは到達目標というか、スケジュールを考えていく議論にしたいと思います。  今日は残された時間が非常に短いのですけれども、事務局の方から、事務局サポート チームの助けを借りてまとめたというご紹介がありましたけれども、資料8でしょう か。子どもの心の問題のプロフィール、受診理由と診断名、こういう受診理由とそれに 対応した診断名というものが羅列してあります。  前回、課長さんの方から、ここで扱う子どもの心の問題というのは、どういう広がり を持っているのか、それについての少し明白な枠を示してもらいたいというような内容 のお話があったと思います。そのような観点から、こういうまとめを作っていただいた ものだと思いますけれども、これからの議論をしていく上で、訴え、また病気として は、ここに挙げられているようなものを対象にしていくというのでよろしいのかどう か。あるいはまたここまでは、無理だ、あるいは幅が広すぎるとか、あるいはまたこれ 以外にこういう問題もあるとか、議論というか、ご意見があろうかと思います。ここで 資料8として示されているプロフィールについての、この場での何かご意見があった ら、お聞かせ願えないでしょうか。 ○杉山委員  疾患単位は、これは非常に貴重だと思うのですけれども、児童精神科領域の児童精神 科医たるゆえんというのは、他のセクションとの絡みなのです。特にこういう疾患で分 けてしまうと全然出てこないような、親指導であるとか家族治療とかという問題が全然 抜けてしまうでしょう。  実際には多問題家族であるとか、二世代、三世代に渡る虐待の連鎖であるとか、それ からそういう末広がりに広がる問題にどう絡むかということが、抜け落ちるのではない でしょうか。 ○奥山委員  そういう意味でまず子ども中心に、子どもの受診理由とか診断名を書いたのですが、 その次に書きました治療ガイダンスの対象としての親へのガイダンスとか家族への治療 ガイダンス、それから連携とか、この辺を少し膨らませていかないといけないと思って おります。 ○柳澤座長  しかし、問題は非常に大きいわけで、そうやって膨らませていくと、この検討会とし ての議論の対象というのが、際限なく広がっていくというのもありますので、ある程 度、次回からの議論については少し的を絞った議論をしていくべきではないかというよ うにも思います。どうぞ。 ○森委員  今、お話がございましたように、医療をベースに話をするということを決めるべきだ と思うのです。医療の中には、先ほど杉山先生がおっしゃったように、家族とのガイダ ンスがあったり、いろんな問題が含まれるバックグラウンドがあるわけでございます。  ここにわっと書いてございます障害というのは、わかりにくい呼び名でございまし て。その中には当然、院外連携というように書いてございますけれども、医療と福祉と 教育がごちゃまぜに入っているんです。こうなってくると多分これは収拾がつかなくな ってしまいますので、医療をベースにした上で、教育とどう連携をとるかというふうな 考え方。あるいは福祉とどう連携をとるかという考え方をするべきです。だから医療が ベースだということで、その医療の中に杉山先生がおっしゃったような連携がある。医 療の連携を考えるべきで、ほかのものは少し横に置いておかないと、多分議論が拡散す るのではないかと思いますけれども、いかがでしょう。 ○柳澤座長  おっしゃるとおりだと私も思います。そういう視点というのが、もちろん無関係では ないわけですし、重要な問題ではあるにしても、ここの検討会としての議論というの は、医療であって。特にその中の医師の養成ということを常に意識して議論を進めてい きたいと思いますし。そのようにお願いしたいと思います。 ○牛島委員  今のことに関連してちょっと一言申し上げておきたいと思います。先ほど先生が、子 どものうつ病が増えたとおっしゃっていらっしゃるんです。ここで考えておかないとい けないのは、子どもの人格構造というのは、大人と違うということです。親との関係の 中で、初めて成り立っているのでございます。だから子どもの中にうつ病が起こると、 それに反応するのは親なのです。大人は自我が反応して疲弊するわけですが、子どもで は親の反応が子どもの人格に影を落とすのです。大人みたいなうつ病の状態で来るとい うのは、18、19歳にならないとないんです。  したがって子どもの医療という中にはやはりある程度家族というのを念頭に置いてお かないと、成り立たないのです。そこら辺を押さえておいた方がいいのではないかとい う気がいたします。 4.その他 ○柳澤座長  何かほかにご意見はございませんでしょうか。特に今私としては、ご意見をいただき たいと思っているのは、子どもの心の問題のプロフィールということで、今日、事務局 の方からお示しいただいた資料についてです。これはもちろん金科玉条ではありません し、変えていくということで、その1ということですけれども、こういったものをベー スとして、医療、それから医師の養成というような観点から議論をしていくということ に関してです。 ○吉村委員  この資料8は大変参考になるのですけれども、子どもの受診理由とそれから後ろに書 いてある診断名とのつながりが、素人にはちょっとわかりにくいのですが、もう1つ皆 さんがよくおっしゃる発達障害という言葉があるのですけれども、発達というと何が、 精神的な発達もあるでしょうし、身体的な発達もあるでしょうし。あと情緒障害とか行 動障害といろんな言葉と、それがちょっとわかりにくいので、それをわかるようにして いただけるとありがたいです。 ○柳澤座長  今、吉村委員からご質問がというか、ご注文があったような、非常に基本的なことの 定義なり何なりといったことをまとめてお示しいただくというのも、さまざまな立場の 委員がいらっしゃいますので、共通の認識を持つという意味でも、そういうものがあっ た方がいいかもしれない。 ○奥山委員  少し受診理由と診断名だけご説明させていただきます。受診理由というのは単なる症 状というように考えていただいてよいものです。例えば、咳がある、熱があるのと同じ ようなことです。熱があるから肺炎と決まるわけではありません。やはり診察をした上 で、その咳が喘息だったのか、肺炎だったのか、あるいは熱が髄膜炎だったのか何なの かということがわかってくるわけですから、それと同じように考えていただいてよろし いのではないかと思います。 ○柳澤座長  この受診理由と診断名の関係というのは、そういうことだと思います。 ○吉村委員  関係はないわけではないですね。 ○奥山委員  症状とその診断名。 ○柳澤座長  もちろんそうです。 ○吉村委員  もう1つ皆さんがおっしゃる人格障害とか、人格形成の異常とかそういう言葉があっ て。先ほど小児科と精神科でちょっと定義が違っていたような気もしましたので、その 辺をよくもう少しわかるような、素人にわかるようにお願いいたしたいと思います。 ○柳澤座長  そういうのは、例えば報告書というようなことをまとめる場合には、その前置きみた いな形で、そういうことにも触れておいた方がよろしいということでしょうか。 ○奥山委員  これはICDによる診断名ですが、これがいわゆる国際的な現代の診断名のつけ方と いうことになると思いますけれども、ここで議論をしている中では通常用語がかなり出 てきておりますので、その辺を通常よく使われる言語みたいな形で、少しコメントなり まとめなりをさせていただいたらどうかなと思ったのですけれども、それでよろしゅう ございましょうか。 ○柳澤座長  その点はどうでしょうか、やはり病名というような形で出てきた場合には、私はIC D10というか、そういうものにきちんと沿って、あるいは、DSM4にのっとってと か、そういうことがはっきりされている方がいいと思いますけれども。 ○奥山委員  そうですね。通俗的なものが大体どこにどういうふうに入るのかという。例えば発達 障害ということになりますと、ここで言うと、心理的発達の障害F8とF7の精神遅滞 というのが入るのですけれども、日本ではかなり行動の障害である多動性障害を発達障 害に入れている方々もおられるということになるのです。その辺のところのコメントを 少しつけないとわかりづらい部分があるかなというふうに思いました。 ○柳澤座長  まだまだ議論やご意見はあろうかと思いますけれども、予定されていた時間になって しまいました。前回と今回2回に分けて、委員の先生方からそれぞれ代表する学会やあ るいはまた関係する団体としての認識と取り組みについて、発表いただいたわけです が、今後、そういった内容を踏まえて、専門の医師の養成ということについての具体的 な議論を始めたいと思います。それではちょうど時間にもなりましたので、最後に事務 局から連絡事項があればお願いします。 ○杉山委員  星加先生が理事長をしてみえる小児精神神経学会の秋の学会を私は仰せつかりまし た。そこのメインテーマは「子どもの心の専門家になる、子どもの心の専門家を育てる 」とさせていただきました。次回パンフレットを用意いたしますが、ぜひ厚労省からも 指定討論の方とか、それから吉村先生、医学部長会からどなたかおいでいただくことは できないでしょうか。よろしくお願いいたします。次回にパンフレットを持ってまいり ます。 ○柳澤座長  それは大変時宜にかなった企画だろうと思いますので、何らかの形でこの検討会とも 関連を持たせていただきたい。それではどうぞ事務局の方から。 ○事務局/母子保健課長補佐  それでは最後に事務的なご連絡でございますが、次回第4回目の検討会につきまして は、委員の先生方の日程調整をさせていただきまして、最も多くの委員にご出席いただ けるということで、資料の2の方にもございますが、6月29日水曜日14時30分か ら16時30分を予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。また会場 などが決定いたしましたら、ご案内させていただきます。  また第5回目の日程につきましても、調整の結果7月27日水曜日の16時からから 18時を予定しておりますので、会場につきましてはご連絡をまた別途差し上げます。 以上でございます。 5.閉会 ○柳澤座長 どうもありがとうございました。それではちょうど時間がまいりました。 これをもちまして、第3回の子どもの心の診療に携わる専門の医師の養成に関する検討 会を閉じさせていただきます。どうもご協力ありがとうございました。次回またよろし くお願いいたします。                   ―終了―                    照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課                    電話 :(代表)03−5253−1111                             斎藤(内線:7933)                             飯野(内線:7938)