05/04/26 胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会(呼吸器ワーキング・グループ) 第5回議事録 胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会(第5回呼吸器ワーキング・グループ)議事録 1 日時  平成17年4月26日(火)14:30〜16:45 2 場所  厚生労働省専用第17会議室 3 出席者 医学専門家:奥平雅彦、木村清延、斉藤芳晃、人見滋樹、横山哲朗             (50音順)       厚生労働省:明治俊平、渡辺輝生、神保裕臣、長嶋政弘 他 4 議事 ○医療監察官  「胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会 第5回呼吸器ワーキング・グループ」 を始めさせていただきます。本日は奥平博一先生におかれましては、所用のためご欠席 という連絡をいただいております。討議に入ります前に事務局に一部異動がございまし たのでご紹介いたします。長嶋職認官、福島事務官です。よろしくお願いいたします。 横山先生よろしくお願いいたします。 ○横山座長  今日はお忙しい中ありがとうございます。事務局から提出資料の説明をお願いしま す。 ○障害係  資料1「胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会胸部分野(呼吸器)報告書(案) 」、以上です。また、横山座長より「呼吸器ワーキング・グループ報告書添付用文献リ スト」と「業務が原因となった呼吸器疾患の治ゆ後の肺機能障害評価をめぐって」とい うペーパーをいただいておりますので、それぞれお配りしています。 ○横山座長  私はどうも余計なことをやったみたいなのですが、この報告書の案は、本来ならば私 どもが全部作らなければいけないはずなのですが、事務局が大いに勉強をしてくださっ て用意してくれました。ただ、私が拝見して気になったのは、一体なぜこれをやらなけ ればいけないのかということの説明がなくて、唐突に本文に入ってしまっていますの で、冒頭に何か一言あって然るべきではないかと考えました。昨日、循環器の会が終わ った後でどうも気になったものですから、お手元に今日お配りした1枚少しに注記とい うことを書いてありますが、何のためにこれをやるのかについての説明を書いてみまし た。まだ私も舌足らずな所があるなという気はしているのですが、その点ご承認をいた だきたいと思います。  文献リストをお手元に配っていますが、これは本当に仮のものです。実はこれは自分 の論文なども古く、自分で作ったデータベース。論文の始めの頁は書いてあるのです が、終わりの頁が書いてなかったので、しまったと思ったのですが、学会でゴタゴタや っていて、結局時間切れになってしまい、昨日、今日の間にその終わりの頁も全部わか ってきましたので、これは書き加えることができます。  先生方からいただいた資料の中で、私がいただいていましたものは組み込んでありま す。研究報告書の類はここからは漂落してありますが、論文になっているものは大体書 いたつもりなのです。先生方の中で、これは是非こういう所に入れておきたいというお 仕事がおありだと思います。先ほども拝見しましたら、人見先生は参考資料というので いくつか書いてくださっていますが、そういうものがきっとおありだと思いますので、 それは是非組み込みたいと思います。これは各ワーキング・グループの摺合せをしてい る段階で、どういう格好で何件ぐらい取り上げるかを決めなければいけないのですが、 まず、先生方からご自分あるいは所属の教室、病院の同僚の論文でも結構なのですが、 出していただいて、それを組み込ませていただきたいと思います。1週間か10日ぐらい をメドに神保さん宛に送っていただければ、それを並べ直して文献リストを作りたいと 思います。  ただいま当局からあった説明、私が蛇足的な説明をしましたので、何かご意見、ご質 問がございますか。もしありましたら後でも結構ですからおっしゃっていただければと 思います。  今日は主としてこの報告書(案)について、言い回し、表現についてのご意見、訂正 などを伺いたいと思います。切りのいい所で区切りながらお話をしていきたいと思いま すので、お願いいたします。 ○医療監察官  1頁です。前回まで、第1「肺の障害」ということで書いたのですが、前回のご議論 を踏まえて「肺」を改めて「呼吸器の障害」としています。同様に肺の機能障害につい て「呼吸の機能障害」ということで、こちらは直し漏れ等については、横山先生、奥平 先生からご指摘をいただいて、それぞれ、肺の障害あるいは肺機能障害は「呼吸機能障 害」ということで直しています。第1の2の所です。それを受けて肺の構造ということ で書いたのですが、「呼吸器の構造」ということで書きました。  (2)「胸郭の構造と呼吸調節」という項を新たに設けました。これについては人見 先生のご意見で、これは非常に大事だということで、この所を加筆いたしました。2頁 のじん肺についても、同様の趣旨から横山座長からご指摘がございまして、じん肺法の 用語では「肺機能検査」と法律上決まっているのですが、呼吸器ワーキング・グループ の大きな傷病を越えた1つの機能低下では、呼吸に着目したということで、そこは揃え ました。ただし、じん肺法の用語はわかっているという意味で「(じん肺法の用語では 肺機能)検査」という形で書いています。 ○横山座長  その辺で皆さん方のご意見を伺いたいと思いますが、何かご発言がございませんか。 ○人見先生  なかなか難しいところがありますが、1つは、(3)「血管系としては」と書いてあっ て、リンパ管系まで入れてしまっているので、脈管系としてはとして、「気管支動脈系 」と書いてありますが、これは気管支循環系だろうと思います。その2つを書いたらス ッと入ると思うのです。 ○横山座長  はい、ではそれをお願いします。その直前のアの(1)の所ですが、「気管・気管支・ 末梢細気管支」と書いてありますが、細気管支だけでこの末梢は要らないと思うので す。上の2「呼吸器の構造と機能及び業務上の傷病による影響」という所では、細気管 支になってもいいですが、これは末梢を取ったほうがいいと思います。(2)の「胸郭 の構造と呼吸調節」の所で、円錐台形のかご状の構造。神保さんが円錐というのがだい ぶ好きなようで、私の所に案がくると、私はパッと消してしまうのですが、そうすると またどこかに円錐というのが出てくるのですが、奥平先生、この表現はいかがですか。 ○奥平(雅)先生  私もこれ、台形よりは普通、梯形のほうが日本語としては一般かもしれないという感 じもしたのですが、私もちょっと。 ○横山座長  円錐と言うと、いわゆるコーンですね。ちょっと円錐とは違うのではないですか。 ○奥平(雅)先生  上下が平行になっているという意味で、こういう形になっている。表現としては確か にいい表現かなと思ったりしたのですが。 ○医療監察官  かご状の構造だけで、ここの所は本当に医学的な話なので、いちばん適当な表現を教 えていただければと思うのです。 ○横山座長  何かうまい表現がありませんか。 ○奥平(雅)先生  私は先ほど申し上げましたように、台形という言葉よりは梯形のほうがより一般的な のかなという感じはしたのです。 ○横山座長  いや、私の勝手な意見としては、「間にあり、次の構造をしている」というふうに、 ここの所を取ってしまったらどうかという気がするのですが、どうですか。かごと言う と何かザルみたいな印象を私は持ってしまうのです。神保さんがどこかに円錐形とか書 いたのですか。 ○医療監察官  これは南山堂かどこかから引っ張ってきたのではないかと、医学事典を2つ、3つ見 て、それの中で納まりがいいようなものを引っ張ってきて、私が発明したわけではない ものですから。 ○人見先生  何か要らないみたいですね。かごと言ってもいろいろなかごがある。台形といっても いろいろあるでしょう。強い、こんなの言わなくても。 ○奥平(雅)先生  取っちゃったらどうですか。 ○人見先生  いろいろ書くとかえって難しいですね。 ○奥平(雅)先生  細かなところですが、2番目のイのところで、「体内臓器に供給し」というのがある のですが、できれば「体内の諸臓器」のほうが理解をしやすいかなと思います。 ○横山座長  そうですね。「諸」というのを入れていただきましょうか。 ○奥平(雅)先生  2頁ですが、いま「呼吸の機能」という言葉がたくさん出ているのですが、これは全 部呼吸機能のほうが。 ○横山座長  昔は「肺機能」と言っていたのを、実は我々はここ10年ぐらいの間は、「呼吸機能」 と直して使っているのです。神保さんの意見では、じん肺法の用語では「肺機能」だ と、だからそれに準拠するのだという意見なのですが、じん肺法というのは昭和52、3 年のころの話で、その後で呼吸機能という言葉が普通に使われるようになっています。 これはおそらく法律を扱っておられる方たちの意見というのが、きっとあるのだろうと 思うのです。 ○奥平(雅)先生  「呼吸の機能の障害」になっているのですね。「の」が続くので。 ○医療監察官  呼吸機能という。 ○奥平(雅)先生  「呼吸機能の障害」のほうが、この言葉がたくさん出てくるものですから。 ○医療監察官  わかりました。ここは揃えます。 ○横山座長  ほかにございませんか。 ○人見先生  教えてほしいのですが、アスベストのことは全く触れなくていいのですか。入るのな ら2頁の上から2行から3行目の所でちょっと触れていいかなと。あるいはアスベスト はもう要らないのですか。 ○横山座長  じん肺という中にはアスベスト肺は入っているという理解をしているのだと思うので す。だから、書いたほうがよければ書いてもいいと思います。例えばじん肺という所に (アスベスト肺を含む)とかいう表現もいいし、いまかなり皆さんが神経質になってい るところだから。 ○人見先生  厚生労働省のこの課ではなく、ほかの課でいまアスベストのこと、中皮腫のことをす ごくやっているではないですか。それに対してこれを全部読んでも中皮腫が出てこない のですが、中皮腫のことをちょっと視野に入れていることは、どこかになくていいのか なと思うのです。 ○医療監察官  私どもの理解としては、ここでご討議をいただくものは、いちばん最初胸部を一緒に やったとき、何度となくご議論をいただいたのですが、業務上の疾病が発症して治った 時に、後遺障害があったときの評価についてご議論をいただく。私どもの理解として見 ると、中皮腫というのはかなり悪性のものだと、そうすると極く稀にあるのかもしれま せんが、中皮腫になって治ゆしましたというほうが、なかなか想定しにくいのかなと。 ただ、ここでは当然業務上の疾病で、呼吸機能が低下すれば同じようにやりますよと書 いているので、当然、中皮腫というのは業務上の疾病としていま非常に注目されている ということは、人見先生ご指摘のとおりなのです。もしそれが治った結果、呼吸機能が 低下しているというのであれば、当然この枠組みで評価していきます。 ○横山座長  一応これは検討をしたのだと。ただ深くはこの文章の中では触れないということであ れば、冒頭の文章のほうにむしろ入れて、これは必ずしもこの報告書の目標にはならな いのかもしれないけれどもということで、一言触れるということで、先生、どうです か。 ○人見先生  厚生労働省のほうは特にそれは困られるのではないかと思うのですが、そんなことは ないですか。後遺症ではもう治らないと思いますので、言われていることはよくわかる のです。いま厚生労働省から中皮腫のことの調査がいろいろくるのですよね。 ○医療監察官  実は補償課の中で職業病認定対策室が業務上外のほうの認定基準を取り扱っているの ですが、そこでは、それこそ人口動態調査と、実際に業務上になる方の割合が件数がえ らい違うので、認定基準をよく知らしめようとやっているのですが、逆に書くと、治る と思っているのかと言われてもちょっとどうかなというのがあるので、もしあれでした ら、こういうこともあるけれども、まあほとんど治ゆになることは想定しにくいという ことをちょっと書いておくのかなと。当然、業務上疾病としては非常に重要なものだと いうのは、私どもも。 ○横山座長  本文ではない所で、こういう問題についても、一応検討をしたというのを何か一言入 れましょうか。ではそうさせていただきます。 ○奥平(雅)先生  非常に細かい点ですが、2頁の上から4行目「外傷による肺又は胸郭等の損傷」にな っているのですが、これ「外傷」より「外力」のほうが。 ○横山座長  そうですね、傷が重なってしまったから。ほかに何かございますか、後で気がつかれ たら、どんどん言っていただくということで、次の検討の視点に入ります。 ○医療監察官  検討の視点については基本的に先ほど申し上げた肺の所を「呼吸」にしたというとこ ろと、3頁の(3)の所は横山座長のご指適で、これ非常に重要な観点が落ちていると いうことで、低酸素血症になる原因として、換気障害のほかに拡散障害が触れられてい たのですが、「換気・血流比不均等」が落ちていたということで、こちらについては是 非入れるべきだという座長のご指摘をいただいて加筆をしています。  (4)について、見え消しに二重線で消してある所は、結論を先取りするようなこと を書いているので、問題提起としては、むしろ呼吸機能の低下による主要な症状という のは呼吸困難だけれども、呼吸困難はいろいろな原因によって生じるので、自覚症状と しての呼吸困難の程度をそのまま障害の重症度を示す指標として用いるのが適当か検討 をしましたというほうが、ご議論をいただいたものに沿った検討の主な視点だろうとい うことで、ここは少し改めさせていただきました。 ○横山座長  ここまでで、何かご意見はございませんか。 ○人見先生  (3)の「臨床的には肺機能」、これは呼吸。その次の行、「程度を基本として肺機 能障害」、呼吸機能障害、揃えてください。 ○斎藤先生  「換気・血流比不均等」が入るとすれば、シャントも入らなくていいのですか。 ○横山座長  シャントは換気・血流比不均等の極端な場合という理解でいいのではないですか。 ○斎藤先生  それでよろしいのですか。 ○横山座長  そう思います。 ○人見先生  5番の段落があって、「その際」というところの次の行から、「運動能力の評価のた めに通常行われている運動負荷試験は運動開始直後の呼吸循環機能の立ち上がりを評価 するものであり」と書いてありますが、これは立ち上がりだけではない。どういう根拠 ですか。 ○横山座長  8時間労動という1人前の仕事に比べると、運動負荷試験というのは、かなり短時間 の。 ○人見先生  いま6分とかすべて使いますね。 ○横山座長  そういうつもりだったのです。むしろ成績のバラツキのほうが大きいというほうが私 は問題です。 ○人見先生  いまはもう根拠としていろいろ使っていますね。あまり否定してしまうのはどうでし ょうか。 ○横山座長  これはたしか、もう少し先のところに、運動負荷試験の位置づけというのが出てくる と思うので、そこでまた。 ○人見先生  ある程度困ったときはこれを使うということですから、この文章ですと、運動負荷試 験を否定してしまうようなことですね。 ○医療監察官  これは否定するというわけではないのです。補助的に使うというような意味合いで、 見る必要があるのだけれども、いくつか留意しなくてはいけないようなことがあるの で、全面的な採用は難しいですよということもみたのですと。 ○人見先生  前書き程度のことでいいのではないですか。横山座長がちょっと入れるとおっしゃ る、ああいう書き方程度にしないと。これ読むとかなり否定的な感じがするのです。 ○横山座長  ここの職場における8時間の業務に耐え得るかという、8時間というのはどうです か。私は標準的なというのを入れたらどうかという気がしたのです。いわゆる8時間労 働というのは、厚生労働省で夏のポスターなどに、定時退庁云々というのが出ています が、皆さん方は夜中まで働いていらっしゃるような実態があると思うのです。時間外勤 務の部分ができるかできないかというのは、この中には考慮する必要はないのですか。 ○医療監察官  労働の制限の中には時間外を制限しなければいけないとかいうことは、当然問題には なってくるのですが、実際の話として、定時の労働に耐えられるかどうかというのは、 まずは問題になってくるだろうとは思うのです。ただ、こちらの書きぶりについて、先 ほどの一定程度評価した上で、制限的に使うということなら、もう少し表現を弱めたら どうかという人見先生のご意見がありましたので、今日いただいた横山座長の文章をい ただきながらここの所を修文させていただくということでいかがでしょうか。 ○横山座長  これはもう少し検討をするということで。3頁の上から2行目のところに、「労務の 制限は」云々という言葉がありますが、制限という言葉ではなくて「制約」というので はどうでしょうか。 ○医療監察官  制約でも支障でも制限でも、そこは。 ○横山座長  制限というのとちょっと意味が違うと思うのです。(3)の4行目、「低酸素血症は 」云々というところに、呼吸中枢機能が入っていない。呼吸中枢機能は呼吸器ではない のだという解釈をしておられるのではないかと、私は想像したのですが、低酸素血症を 言う場合には、やはり呼吸中枢機能も入って然るべきなのではないかという気がするの ですが、どうでしょうか。 ○人見先生  当然でしょうね。 ○横山座長  詳しく述べることは必要ないでしょうけれども、項目としては挙げておかないと片手 落ちになるのではないかということで、これは挿入をすることにします。次をお願いし ます。 ○医療監察官  4の「検討の内容」以降です。5頁で(2)のアンダーラインを引いている箇所で す。前回治ゆについて若干ご議論をいただきました。治ゆについて一定の基準を示すと いうのはあまり適当ではない。低酸素血症や肺性心の有無及び程度というのは、療養の 要否について非常に重要な情報を与えてくれるけれども、個々の症例によっても違う し、その症状の程度によっても違うので、そういった状況を踏まえて、本来の労災保険 にいう、症状が安定して治療効果がないかどうか、ということで決めればいいのだと。  ここのところでは症状が安定して治療効果がないとなったときに、どのような呼吸機 能障害が残っているかどうかで認定すればよいというご議論であったかなということ で、5頁(2)「労災保険における障害の評価と採用すべき検査等」のアンダーライン の所は、いま申し上げた観点から、まず障害補償というのは治ゆになった場合に行うの で、治ゆに該当しないと障害の程度が問題になることはない。そのときに低酸素血症や 肺性心の有無は非常に重要な情報だけれども、程度によっても違うし、個々の症例によ っても、同じ数値を示していても必ずしも療養の要否を一概に決められない。したがっ て、治ゆに該当するか否かについて一律の基準を設けるのは適当ではないので、個々の 症例に応じて症状が安定し治療効果がないと認められ、治ゆとなったものについて、障 害認定をすべきである。  木村先生から事前に肺性心が抜けているのではないかというご指摘をいただいたので すが、ここのところはいま申し上げたところで書いたつもりです。(2)のところはこ この部分を変えさせていただきました。 ○人見先生  6頁の(3)の上から6行目で段落がありますが、「そこで呼吸困難の定義をみるに 」となっています。この呼吸困難の定義を自覚症状であるというふうにはっきり決まっ ているので、ここを少し、客観的に外から見るのと文章を一度切る。呼吸困難の定義は こうこう主観的な感覚であると、一度切って、第三者から見ると呼吸数の増加や努力性 の呼吸様式が観察されるというふうに分けたほうがいいのではないかと思いました。こ の混在しているとか。 ○医療監察官  これは確かに南山堂があったという記憶があるのですが、南山堂ともう1つぐらい見 たと思うのですが、それは概念のほうの規定が混乱していて、呼吸困難は呼吸に関して 感ずる不快感としての自覚症状なのです。 ○人見先生  ここで切って、外から見ると呼吸数が増加したり、努力性の呼吸をしているのだと、 そういう状態という。 ○横山座長  この「フレッチャー」云々という言葉があるのですが、呼吸困難の程度を表わすフレ ッチャーの仕事というのはあまり外国の論文には引用していないのですね。何かこれは もう当然だというふうに「フレッチャー・ヒュー・ジョーンズ」という言葉が出てくる のですが、これどうですか。 ○医療監察官  いま先生からご指摘がございましたように、この下のほうに フレッチャー・ヒュー ・ジョーンズ分類は我が国でよく使われています。MRC息切れスケールは諸外国でよ く使われています。逆にいうとフレッチャーは日本でしか使われていないというのは書 いてはいるのです。 ○人見先生  前よりは良くなっていると思います。 ○横山座長  この辺でいきましょう。 ○医療監察官  8頁、「スパイロメトリーの検査結果による障害認定」です。これも前回のご議論で 60Torr以下については、原則血ガスのほうでやるのですが、それが臨床所見等に齟齬し ている場合に、スタイロメトリーの検査結果及び臨床所見を踏まえた障害等級により障 害認定をすべきであるということで、そこのところをまず8頁、アンダーライン部分で 強調させていただきました。逆にいうと、9頁の9行目から、「ただし」ということ で、動脈血酸素分圧が60Torrを超え、軽度又は正常を示している場合にあっては、動脈 血酸素分圧等による障害等級と医師により判断された呼吸困難度が齟齬している場合も 少なくない。したがって、動脈血酸素分圧が60Torrを超えている場合には、原則として スパイロメトリーの検査を行って、その結果及び臨床所見を踏まえた障害等級により障 害認定をすべきである。こちらは前回のご議論を踏まえて、60Torrを超える場合には、 原則、スパイロの検査を行うということを明確に書きました。あとは表現のような話で す。 ○人見先生  8頁の血液ガスの所を少し。座位で測るか背臥位。この背臥位という言葉も仰臥位で ないかという気がしますので、一遍ご検討ください。座位なのか仰臥位、あるいは背臥 位で行うのかと、(1)(2)(3)とありますが、これはいいと思います。これは、太った人 は仰向けに寝ているほうがガスが悪くなるということが出てくる。太っていますから圧 迫して肺が小さくなるわけです。そのことがあるので、どうしても座位でないといけな い、あるいはどうしても臥位でないといけないということがあるのかなという気がする のです。 ○横山座長  これはアメリカの胸部疾患学会でも問題にされて、座位で採血をすると換気・血流比 不均等が表面に出てきて、異常の識別能力が低下するということなのです。 ○人見先生  (4)ですね。 ○横山座長  いま先生が言われたように、肥満者の場合に背臥位だと具合いが悪いということがあ りますが、これまたどちらでもいいということになると、また勝手にやればいいじゃな いかという話になってしまうので、背臥位を基準とするということにして、肥満の場合 には背臥位のほうが悪くなる場合があり得るという文章を1つ入れてもいいと思います が、そういうことで処理させていただきます。 ○木村先生  7頁のアの所の動脈血について書かれている5行ぐらいがあるのですが、動脈血が非 常に大事な検査であるということは、被験者の努力を必要としないというところに客観 的で優位性があるかと思うのです。今回採用した大きな理由がそこにあるのだろうと思 いますから、それをこの5行の間に入れる必要があるのではないでしょうか。従来行わ れていたスパイロと違って、被験者の努力を要しないと、そういう優位性があるのだと いうところを。 ○横山座長  確かにそれはそういうふうに関係していると思うのです。もう1つは、例えばじん肺 などの場合には、わりにスパイロの異常のパターンというのが決まってくると思うので すが、職業性肺疾患全般について見た場合に、閉塞性なのか拘束性なのか、混合性なの か。要するにスパイロの結果が同じ土俵で議論できない場合があるわけです。その全体 を通して障害程度の評価が可能になるのは、やはり動脈血ではないかという気が私はす るのです。 ○木村先生  座長がいま言われた点は、この5行の中に入っているのですが、もう1つは非常に客 観的な指標なのだと、本人の努力を判断する必要がないのだというところも、非常に優 位なのではないかと私は思います。 ○横山座長  それ入れましょうか。 ○木村先生  はい、ほかのどこにも入っていないものですから、ここで触れられたらと思います。 ○横山座長  下手な人がやると痛みがあるときに、かえって変なことになる可能性があるのです。 これは神保さんが作ってくださったフローチャートは入れないのですか。 ○医療監察官  報告書に入れるのが適当なのかどうかですね。職員は通達というよりは、先生方のお 手元にある緑の本で実はやっていまして、書いていただいている先生方もこれを見て、 こうですよと職員が説明をして、これのとおりにやってくださいというふうにお願いを しているものですから、もしあれでしたらこの必携のほうには、こんな形でやってくだ さいというフローみたいなものを載せたらどうかなとは思っているのです。 ○人見先生  このフローチャートの問題ですが、私は皆さんの目につく所に載せたほうがいいと思 います。あれはわかりやすいです。 ○医療監察官  それでしたら報告書自体にも載せるということで、末尾の参考辺りに。 ○人見先生  9頁の中間に「なお、今日においては」というのがありますね。「1秒率と異なり年 齢を考慮する必要がない」、これは間違っています。 ○横山座長  それは取りましょう。いいですか。 ○人見先生  はい。 ○横山座長  次お願いします。 ○医療監察官  10頁です。先ほど紹介しましたように、これは前回のご議論で、フレッチャー・ヒュ ー・ジョーンズあるいはMRC息切れスケールそのものを扱うのは、あまりよろしくな いのではないかということで、それらの分類を踏まえながら、この程度のものはどうだ というようなものを作るべきだというご議論を受けまして、高度というのは、呼吸困難 のために連続しておおむね100m以上は歩けないのです。中等度というのは、呼吸困難 のために平地でさえ健常者と同様に歩けないのです。軽度は、呼吸困難のために健常者 と同様には階段の昇降ができないのです。障害がないというのは、同年齢の健常者とほ とんど同様の労作ができ、階段昇降も健常者並にできる。こちらについては奥平先生、 木村から具体的にご指摘をいただきまして、このような形にさせていただきました。  あとスパイロのほうですが、前回のご議論で、基本的にはまずスパイロの検査所見が 前にきますと、それと呼吸困難度がマッチしていますかということで、呼吸困難度が先 にきて、スパイロが裏付けという形ではないということ、こちらについても前回のご議 論を踏まえて修文をいたしました。 ○人見先生  9頁下から7行目、「70以下が閉塞性の障害である要件であることから」と書いてあ りますが、ここの直前までは、学会で言っているのは、1秒率のことを言っていますか ら、これは直前のパーセント1秒量でずうっといっていて、突然70以下、これは1秒の 話の定義でポッと入ってきますので、これはどうしたらいいのですか。ここは1秒率が 70%と丁寧に書いておいたほうが無難ではないかと思います。それかもう取ってしまう かですね。 ○横山座長  これは誤解を受けるから取ったほうが。 ○人見先生  考えることからこのように区分したものであると。それなら1秒率がという主語が要 るでしょうし、けれどもここは1秒率を取ることで、ずうっと話が進んでいますから ね。 ○横山座長  そういうのが出てくるようでは、むしろないほうがスッキリしますね。  次お願いします。 ○医療監察官  11頁、運動負荷試験について、アの必要性のところで、なお書き以降のアンダーライ ンを引いてある部分については、横山座長から呼吸機能障害が全身的な機能障害に与え る影響が報告をされているということで、こちらについて検討をしたのだということを 書くべきではないかというご指摘がありましたので書きました。  まず、全身的に機能障害をもたらすことが報告されているということですが、本当に 因果関係があるのかどうかというのは、慎重に検討をしなければいけない。また、仮に 因果関係があるとしてもいまの障害認定の考え方はどういうものかといいますと、障害 の生じている部位と機能に着目して行うものですから、筋力が低下しているというので あれば、例えば関節の可動域の制限の有無とか程度でやります。循環器のほうは低下す れば、循環器のほうで評価するのが本筋の話ということなので、結局、こうしたいろい ろな影響を及ぼすかもしれないからということで、運動負荷試験を実施する必要性は障 害認定という考え方からすると乏しいのですと書かせていただきました。  12頁、前回13頁以下に書いているような理由で、11級、結局、血ガスないしスパイロ で全く障害がないとしたときに11級にするのが現時点では最大限なのではないかという ご指摘をいただきました。さらには運動負荷試験を実施させること自体が被験者にとっ て負担になるというご意見を踏まえて、どのような試験がいいのかということで、前回 6分間歩行試険ということでどうですかと、それに応じてかなり高い所までということ だったのですが、前回11級が適当だということだったもので、一旦、あまり採用しない 方向で考えていた50m歩行試験でどうですかと。一般的にはあまり用いられていない試 験だけれども、所見ありとする場合でもいろいろな理由から11級で認定することが適当 であることからすると、いたずらに被験者に負担をかけるのは避けるべきだとした観点 からすると、50m歩行試験というのは短時間の歩行で、被験者負担が少ないのです。ゆ っくりと歩かせるので特段の設備は不要だということから、適当なのだということで50 m歩行試験でどうかということで書いています。  呼吸機能の障害が認められる要件については、基本的に分かれがないのですが、Cの 所で運動負荷試験を中止したものについて、斎藤先生から、本当に呼吸困難でやめたの かどうかは非常に難しいので、むしろモニターで見ていて、非常に下がってきたからも うやめさせたというものにしたほうがいいのではないか。本当にぐんぐん下がるような ものであれば、どちらかに引っかかってくるのが通常ではないかというご指摘がありま して、このような形に提案しています。 ○横山座長  この辺で先生方のご意見をお伺いします。 ○木村先生  12頁のアンダーラインの所の、「この方法は」から、アンダーラインの引いてある6 行が、前のほうの文章から考えて、少し連続性がおかしいというか理解し辛いような文 章になっているのではないかと思うのです。「この方法は」と「こうした点に着目する と」というこの順番をむしろ入れ換えるほうがいいのかなと思います。最初に「一方、 50m歩行試験は」というのが出てきますね。「歩行試験は、一定の負荷で歩行させ、動 脈血酸素飽和度を測定することにより、運動負荷時の酸素飽和度の低下の有無及び程度 等を把握する方法である」。その後の「こうした点に着目すると」という部分は除いた ほうがいいのかもしれませんが、「この50m歩行試験はあまり用いられていない試験で あるけれども、短時間の歩行であることから被験者の負担が少なく設備も不要であるこ とから、運動負荷試験の方法としては適当である」とつなげて、「ただし、所見ありと する場合でも下記の理由のとおり11級にすべきだ」というほうが、流れとしては理解し やすい。この6行が上のほうから考えると少し意味不明の文章になっているのではない かなと思います。 ○横山座長  これは後から50m歩行試験というのを挟んだから、こんなになってしまったのではな いですか。 ○木村先生  そうだと思います。 ○人見先生  50m歩行試験のデータはあるのですか。 ○斎藤先生  確かにそんなにたくさんあるわけではないです。これは田口先生がやっていて、労災 病院の先生方と災害医学会雑誌に報告書を出したのです。 ○横山座長  道具は要らないと言われますが、再現性といいますか、データのバラツキということ からいうと、運動負荷試験はトレッドミルで見るとか、そういうものを使ってやるべき であるというのが一般の通説だと思うのです。ですからここであまり道具の要らない50 m歩行試験というのは。例えば50m歩行ができないような人は、もうそこでふるう。で きるかできないかという程度の振り分けでいくのだったら私はいいと思うのですが、こ れ、あまり細かく評価しようとすると、またデータのバラツキが問題になってくると思 います。 ○斎藤先生  じん肺の患者で50mを自分のペースでゆっくり歩かせても、明らかに肺の機能の悪い 人は下がります。そういう意味では下がるような人は仕事をさせられないというのは言 えると思うので、非常に簡便な方法としては少なくとも安静時に障害がなくて、安静時 に引っかからないような人であっても、呼吸困難があるものを引っかけるのには、私は 有用な方法だろうと思っています。 ○人見先生  いろいろな所でやられているのですか。 ○斎藤先生  そのようなことはないと思います。ただ、どのぐらい使われているかはわからないの ですが、我々の感じからいうと、例えば在宅酸素療法などの適用を考えるときに、普通 は在宅酸素というのは、55Torrが基準になっています。でも実際はいまの考え方として は60Torr以下であっても、運動負荷によって酸素飽和度が下がるような人は状況によっ ては使ってもいいという話になっているのです。実際にその場合は、病棟の中で50m歩 かせるとか、20m歩かせるという形の中で酸素飽和度が下がってくることを確認して、 ガス交換が悪いのだからと納得した上で、在宅酸素にもっていくことがあるし、そうい うことはよく使われているという話も聞いているし、我々もやっているのです。ですか ら、そういうことから見ると、簡便な方法としては私はいいと思っています。 ○横山座長  在宅酸素療法の55というのは、厚生労働省で保険で在宅酸素療法を採用するに当たっ て、何人ぐらいの患者がいて、そのための予算をどれぐらい取ったらいいかということ から55という線引きを、費用の点からしてしまったのですよね。だから学問的にはこれ はあまり意味がない数字です。私はこの50m歩行試験というのは、無意味とは思わない ですが、あまり細かく評価しようとするといろいろな問題が出てきてしまうのではない かという気がします。 ○斎藤先生  ですからこの場合は、私が読んでいて納得したのは、少なくとも歩行試験を行う対象 者というのは、パーセント肺活量が80%以上で、%1秒量が70%以上の症例に限られる わけですね、この文章の流れから言うと。ですから、そういう人たちの落ちこぼれた分 をチェックするにはいいのかな。少なくとも本人にとって負担がかかるような負荷より も、安全な歩行でやるのが実際、実用的ではないかという理解をしました。 ○横山座長  気をつけなければならないのは、これは全国規模で、いろいろな先生がいろいろな施 設で検査をするので、答えがいろいろ出てくるような検査というのは、こういう所では 取り上げるべきではないのではないかという気がします。 ○斎藤先生  それでは、やはり運動負荷試験そのものが難しいのかなと思ってしまうのですが。 ○横山座長  私もそうです。だから、11頁の(4)のアに「運動負荷試験の必要性」とあります が、必要性という言葉を使う以上は、ではなぜ、これを基本の検査に入れないのかとい う議論が出てくるはずで、必要性という言葉は、ここではちょっと強すぎるのではない かと思いますね。運動負荷試験の意義とか評価というような言葉にしておいたほうがい いのではないか。運動負荷試験無用論を言っているのではなくて、なるべく、全国のド クターがいろいろな施設で検査をして同じような結果が出る。患者にも公平に評価され るということが大事なので、その点で。なんて言うかな、必要性があるのだったら、こ れだけで検査をすませてしまってもいいはずですが、私はそこまでは運動負荷試験とい うのは信用しかねるのではないかという気がします。 ○斎藤先生  50mの負荷のことですか。運動負荷そのもの。 ○横山座長  運動負荷そのもの。 ○斎藤先生  それはそうかもしれませんね。 ○人見先生  でも、ここにもちゃんと書いてあるけれど、最大・最小摂取量とは非常によく一致し ますからね。やはりいいものです。ただ、それに耐えられないような人にさせたらかわ いそうです。肺移植のほうでは、ギリギリの人をやるのです。6分間歩行とか、CDの 音楽を聞かせながら行ったり来たりさせて、その音楽のテンポをだんだん上げていっ て、これ以上はしんどいと言ったときの距離、これと最大酸素摂取量VO2maxが非 常によく相関する。この2つといままでのトレッドミル、この3つはわりと良い、誰が 言ってもわかる。50mは私も知らなかったのですが、非常にいいと思いますよ、特にこ の補償のほうではね。 ○斎藤先生  50m歩行というのは、事務的な仕事をやれる程度のMETだという話です。ですから、 この辺ができるというのは、やはり今回の会議の中の1つの分かれ目の線ではないか。 何も、6分間一生懸命歩けたから、それで基準が高いとか低いとかいう議論ではないよ うな感じが実際はするのです。 ○人見先生  そうしたら木村先生の文献を、どっちみち載せるでしょうが、それをきちんと載せる ということ。それで、もうちょっとこれを読むのがしんどくないような基準ですね、50 mで判断するぐらいのことにして、そのほかのいま申し上げた3つの負荷試験の意味 も、あまり否定しないようにしてほしいのです。ただそれはおっしゃったように、あま り先に書いてしまうとちょっと順番が違うという感じですね。どっちみちそれはあまり 推奨しないならということでしょうからね。  必要性という言葉は私もいやです。それはやめて運動負荷試験になったのですね。必 要ではなくて「ついて」か何かにしておいて。 ○横山座長  先生がおっしゃったように、文章の表現を順番をちょっと変えて、こういうようなも のも参考になるという表現でどうでしょうか。 ○人見先生  木村先生の文献をつけて、50mの意味を。やはり、ゆっくりした仕事には非常にいい テストなんですよね。 ○斎藤先生  SaO2が下がるようだったら、やはりなんとかしてあげないといけないだろうと思うの ですが、ただ、エビデンスがないと言われるとなんともこれはしょうがないです。エビ デンスがないから駄目だと言うのだったら、むしろやめてしまったほうがいいのかな と、運動負荷試験そのものを。運動負荷試験でもう一歩進めようと思えば、かなり患者 に負担をかけなければいけないのではないかというように考えてしまうものですから、 50m歩行で納得ができるならばいい線かと、私は理解しています。 ○横山座長  例えば、肥満が高度にあるような人だと、歩いただけでガタッと酸素飽和度が下がっ てしまうというようなこともありますよね。 ○斎藤先生  でも、それは初めから決まっている話で、もともとこの呼吸障害は、災害が原因とな って肺の障害があるという初めの前提があって、話が始まっているわけでしょう。それ は先ほどの、太っている人が横になると下がるという血ガスの話と同じで、太っている というのは初めからある話であって、それは今回の議論とは別の話だろうと思うので す。太っていることを理解すれば。 ○横山座長  お話の意味はよくわかるのですが、必要性ということになるとちょっと行き過ぎてい るのではないかという気がします。同じことで11頁の下から4行目と11行目に、「必要 がある」あるいは「必要性に乏しい」という表現があります。これはちょっときつすぎ るのではないかと思う。 ○斎藤先生  呼吸機能が正常で、でも本人が「苦しくてしょうがない」。それで、なんかおかしい よといった人を、いまのやり方だとチェックする方法がないわけです。それを、それは 50mか6分間歩行かは別にして、歩行試験で引っかかるところがあるかどうかというこ とで、よいのではないかと思うのです。 ○人見先生  そういう書き出しでいかれたらどうですか。いまおっしゃったとおりすーっと書いて いったら、すっと入るのではないですか。いまのお言葉ね。 ○横山座長  速記がありますよね。だからそれを入れて文章を。 ○医療監察官  必要性を意義に変えて、もう少し通りがいいような形に変えるというのは、そのよう にさせていただきたいと思うのですが、結論としてどうなんだと。いわば、11級で評価 する必要があるのか、あるいは、こんなのがあるんだけれど、行政としては採用しなく ていいよということでよろしいのかですね。結局、11級だけでやるということで、こう いう簡便なものでいいのではないかということですが、要はスパイロとかそれだけで迷 ったときに、何かほしいというだけの話で、別にこれでは何も等級などは決まりはしな いのですよというように書くのか、あるいは、これだけで11級ですよというように書く のか。前回のご議論では、何もないときに否定するのもあれなので、11級だけ設けまし ょうということだったかと思うのですが。 ○横山座長  これは改正前のじん肺法で換気指数という階段昇降弛緩、あれも確かに大した道具は 要らない検査です。私はそういう、安直だから採用しましょうということをやってしま うと、かえってまたあとで、データのバラツキがとんでもなく大きくて信用できない、 というのが出てくると思う。これからの検査というのはやはり再現性とか、十分信頼が おけて、意味づけもできるというものを、正式には取り上げるべきだと思うのです。だ から、これだけでもって11級云々というようなことにしてしまうと、あとでまた首を絞 められるようなことになりかねないと思うのですけどね。 ○斎藤先生  安易な方法という話ですが、いまはパルソオキシメーターというのは非常にいいもの が出ていると思うのです。5秒ごとに確実に記録するような方法で、それをあとで再現 して見ることもできるし。 ○横山座長  パルソオキシメーターについて私の意見を言わせていただくと、機械そのものはある 水準に達しているのだけど、装着する方法が、人によっていい加減だというようなこと になると、結果がかなり違ってきてしまうのです。 ○斎藤先生  でもそれはスパイログラムで息を思いきって吹かせるかどうかという技術的な問題と 共通する問題ということは言えないでしょうか。 ○横山座長  あれ以上に大きな問題が出てくると思います。私はパルソオキシメーターというのは 信用しない。 ○木村先生  ただ、安静時の動脈血なりスパイロなりでは一応引っかかってはこないが、呼吸困難 有りと担当医が判断した場合に、初めてこういう形で運動負荷試験ということで、救う 道をつくっておこうということですから。ただこれだけでやろうと言っているわけでは ないので、いままでの検査からすれば、確かに判断やバラツキはあるかもしれません が、それはきちっとした枠をはめてやっているわけですから。 ○横山座長  それは先ほど神保さんが言われたように、ほかはあまり異常がなくて、この検査だけ で異常がある場合に11級としていいのかどうかという。 ○木村先生  それはやはり担当医が、これは心臓とか何かによらない、呼吸器による障害があると 判断されたケースに、この負荷試験をやろうという適用になるわけですから、決して安 易にということはあたらないのではないかと思います。 ○横山座長  その辺どうかなあ。私は、誰がどこでやっても同じような結果が出るという検査法 を、こういう国レベルのあれでは守るべきではないかという気がする。運用の上でどう するかということはこれまた、自治体その他で決めればいいことなので、国の方向とし てはやはり再現性の高い方法を選んでおくべきだと思うのです。 ○斎藤先生  いまのお話は、例えば安静時の肺機能で引っかからないような人でも運動負荷試験に よって評価することができる、という言い方だけにとどめておいて、その具体的な方法 については触れないとか、そういう言い方、考え方ですか。 ○横山座長  ただ、それに触れないと、安直な方法でやってしまう所が出てくると思うので、方法 はある程度規定しておかなければいけないのではないかという気がします。 ○斎藤先生  逆にそれは、決めてしまうと患者にある程度きついところを強制してしまうような可 能性も出てきてしまうのかなという感じもあるのです。 ○横山座長  私が言っているのは、救済する余地を求めていくことになると思うのです。 ○医療監察官  救済する余地というのは、血ガスでもスパイロでも正常なときに、呼吸器がおかしい ですよ。本人が、普通にしていると問題はないのだけど、動くと呼吸困難を訴える。こ れはどうも医学的に見ても呼吸器によっているというときに、11級だけというのが救い の道なのか、あるいは、そういう基準は定めないということで。例えば、問題はあるが やらないという方法としては、ほかの部会ですが、例えば整形で、握力の評価をしてほ しいというのがありまして、握力低下は確かに困るのですが、それこそ再現性がない、 努力依存性が非常に高い、だから今後の検討課題ですということで、最終的にまとめさ せていただいたという事例がありました。11級という最低のところだけつくっておく か、あるいは、再現性が現時点では非常に乏しいので、そういうことがあるということ は承知しているが、今後の検討課題ですというようにするのか、これは2つに1つかな と。 ○横山座長  私は頭ごなしに運動負荷試験、あるいはこの50m歩行試験を否定しようというのでは なくて、それをやるのは勝手だけれど、それをどう採用するかということについて、11 級とかなんとか、はっきりした線でやってしまうと、あとで。 ○医療監察官  そういう意味からすると所見なりというのはあまり、何も決めないほうがよろしいと いうことになるのでしょうか。例えばこのa、b、cとかいうのではなくて、有所見と 医師により認められるというのでもういいですと。 ○人見先生  いろいろ、少しずつわかってきたのですが、そういった一見正常な換気機能とかね、 そんなのでいけていて、なおかつ、やはりしんどそうだから、主治医の熱意と患者の協 力、熱意があって、運動負荷試験というのがありますと。それには、しばしば使われて いるものもあるし50m、これから発展しそうな50m、そういうものがありますと。それ で異常があると主治医が認めたときは、たぶん11級でしょうが、申請する。それで判定 するのは誰か知りませんが、あげるということにして、基準をあまりきちっとした数値 まで出すのは、それは難しいと思うのです。 ○横山座長  私はそれがいちばん無難ではないかと思う。こういう所見がありましたと。それで、 主治医はどう考えるか。主治医というか、その申請書を書くドクターがどう考えるかと いうことをはっきりと書面に書いてもらって、それを上のレベルで検討するなりなんな りというのは、それは結構だと思いますが、機械的に、これこれになったらば11級にす るとか、これこれにならなければ11級にしないというようにここで書いてしまうと、引 くに引けなくなってくる危険性があると思います。それほど信憑性の高い検査とは私は 思わない。やってみることは確かに値打ちのあることなんだけれども。それだったらむ しろトレッドミルとかなんとかがある、いわゆる標準化された運動負荷試験というのを 取り上げるべきであって。 ○人見先生  主治医になったらそれを選んでもいいということでどうでしょう。 ○横山座長  そうですね。 ○人見先生  これほど下がったんだという申請書が出てきたら認めるでしょうしね。50mもそうで すけどね。 ○木村先生  ただその場合も、認められる等級は11級か無しかですね。 ○人見先生  そういうことですね。よくわからないけれど、11級というのは、その補償の程度はど のくらいなんですか。 ○医療監察官  11級は223日分です。ですから、給付基礎日額が1万円だとすると、223万円ぐらいと いうことになります。 ○横山座長  そこでもう1回振り返りましょう。 ○医療監察官  13頁。「運動負荷試験の結果の評価」ということで、安静時の検査による障害等級と いうのが、臨床所見なり検査所見に照らして齟齬していると認められる場合には、その 運動負荷試験の結果を踏まえた等級の認定を行うことができる。ただし、以下の理由か ら呼吸機能障害があるとされた場合においても、現時点においては第11級の9に該当す るにとどまるとすることが適当である。誤差が大きいということと、本人の運動負荷試 験の対応によっても異なるというようなこと、さらには先ほどちょっと話に出た、短時 間のことを見たぐらいの話だということで、11級の9にとどめることが適当ですと。こ れは先ほど来出ているようなことです。  14頁は、いま申し上げたことをもう一度書いたぐらいの話ということです。  17頁以下は先ほどご説明、ご論議いただいたことをもう一度まとめて結論を書いてい るような話ですので。 ○木村先生  13頁の「運動負荷試験の結果の評価」の所の(1)(2)(3)にちょっと抵抗を感じます。 横山座長とちょっと違うのですが、こんなに規定していいのかという気がします。ここ まで書かなくても。座長は運動負荷試験をどんな根拠で不信、信じないと言われるので すか。 ○横山座長  これ、運動負何試験と言ってもわりに簡単に、安直にできる運動負荷試験のことだと 思うのですが、データのバラツキが大きいはずなんですよね。それから、いろいろな要 因が絡んでくる。例えばあとで出てきますが、たばこを吸う人が運動をする、運動負荷 をした場合にどういうことになるか。運動負荷試験の結果というのを頭ごなしに否定す るのであれば、やる必要はないわけですよね。 ○木村先生  そうですね。いや、そうでなく、いまのところはやろうということになったわけです ね。そうすると、あまりここできつく。どうですかね。自己矛盾になるのではないです か。 ○医療監察官  先ほどの先生のおまとめでは、運動負荷試験は残す、結論としても11級です、変わり ません、ただ、一定の基準値はなかなか示せないので、何もない、安静時にはその障害 がないという人が、これを持ってきたときには個別に判断して、本当に呼吸機能障害が あるというなら11級ですよということだと、その額面どおりには受け取れないのですよ という、このくらい書かないとなかなか。逆に言うと、ある程度信頼できるのだった ら、このくらいだったらもう、この要件を満たしたら11級だというようにする話なんだ ろうと。 ○人見先生  (1)(2)(3)の少し下に「結局」と言って結論を書いていますね。これでいいのではな いですか。あまり否定的なことをバーッと書いてしまわないほうが。 ○横山座長  いま先生がおっしゃった、「結局」云々というアンダーラインした所のおしまいに、 「障害等級により認定すべきである」という表現、これは私はちょっときつすぎるとい う気がするのです。「認定することができる」とかね。すべきであるということは、結 局そうしなければならないということですね。 ○人見先生  それについてウの最初の3行で謳ってありますよね。これでいいわけでしょう。だか ら、あまり運動負荷試験を否定的に書かなくても。書いてしまうと自己矛盾になります よ。 ○横山座長  これはないほうがいいかもしれませんね。 ○人見先生  「結果を踏まえた等級の認定を行うことができるとすることが適当である」と書いて あるから、それでいいのではないですか。それでその方法には先ほど言った50mも含め ていくつかあると。 ○横山座長  これは取りましょう。取ったほうが結局いいと思いますね。  先までやってしまってください。 ○医療監察官  そのあとは、17頁は先ほど見ていただいたスパイロの所ですね。これはちょっと結論 を書いているだけということです。胸膜の所は、ここは奥平先生のほうから何点かご指 摘をいただいて、そのご指摘に基づいて直させていただきました。例えば19頁で、「ろ く膜、すなわち胸膜と」という所は、「ろく膜、すなわち」というのは取らせていただ きました。20頁、これは人見先生のご指摘だったかと記憶していますが、「手術療法等 の術式」と書いたのですが、「等の術式」は除いたらどうか。胸腺の所については、奥 平先生のほうからのご指摘で、「胸骨の後ろ、心膜の前面、すなわち」という所を削除 させていただきました。22頁では、「影響」ということではなくて、「役割については よく解明されていない」ということで書かせていただきました。 ○横山座長  何かご発言ございませんか。 ○奥平(雅)先生  「胸膜、横隔膜の障害」の所で、肺の機能というのは全部呼吸機能に直したほうがい いと思います。19頁の2の(1)の3行目に「肺胸膜」という言葉が出てきているので すが、これは臓側腹膜のほうがよろしいと思います。21頁の「胸腺の機能」の所の4行 目、「胸腺の大きさ自体は思春期までは増加するが、その後減少し」とあります。病理 のほうで退縮という言葉を使うのは、胸腺とボタロ氏管だけなのです。非常に特殊な用 語として使われていますので、例えば「その後減少退縮し」とか、この胸腺の非常な特 殊性が出るような言葉を一言入れておくほうがいいのではないかという感じがしまし た。 ○横山座長  退縮ですか。 ○奥平(雅)先生  はい、退縮、インボリューションですね。 ○木村先生  この会議の第1回目のときに、じん肺だけ取り上げては考えないことにしよう、各論 的に話しても全体がまとまらないので、すべて呼吸器機能障害という形で見ていこう、 ということで進められてきたと思うのですが、もう1回ここで、いまがその最後のチャ ンスなのかなということでちょっと確認させてください。結局ここでは統一して、疾患 は関係なしに呼吸機能で障害を認定していくということが1つですよね。しかし、じん 肺の場合はいろいろな理由があって、課題が残っているということが今回の5頁にまと められて出ています。「じん肺の病態、現行労災保険法及び」云々ということで第1、 第2、第3とあって、じん肺はほかのものと一緒にはならないということになっていま すね。それが、今回の報告書というか出すときに、考え方として矛盾していないのかど うか。今回、呼吸機能障害ということで、同じに考えていくんだという大前提に立って 話をしてきたのですが、この会としてもやはりじん肺に関してだけは、こういう問題点 があるという表記の形でしか終わらざるを得ないのか。具体的にじん肺で結核の合併症 になって、そのときに労災扱いになった。それが、結核の治療は終わって、1年半たっ て再発はないというときに、治ゆと言えない。結核は治ゆしたが治ゆと言えない。その 場合の障害認定はしないわけですね。 ○医療監察官  これは、じん肺が治ゆするということであれば、全部同じ考え方でいくのですと。こ れは先ほど話題になった中皮腫でも同じような話です。ここでじん肺を特別に書いたの は、じん肺は進行性の病変で、基本的には悪くなっていくので、治ゆというのがないと いうことが前提になっているので、ここでも、明らかにその合併症で起こっているとい うのであれば、そこの部分は当然のことながら、病気に関係なく呼吸機能障害の程度で あるのですから、それでみますということなのですが、そこはもう完璧に治ってしまっ た、残っているのはじん肺ですということになると、実はここは私どもというよりは衛 生課の範疇ですが、じん肺による障害が一定以上にならないと、そもそも補償の対象の 俎上に上がってきませんと。それで一定程度悪くなったところでその管理業務なりとい うことで、これは障害補償ではなくて療養が必要ということでずっとみていきますとい う形になってしまう。 ○木村先生  ただ問題は、いま、結核なり気胸が治ったというその人の呼吸機能が、今回の障害の ある部分に入ってくる場合。それが全然入ってこない、11級より下であれば論外なので すが、問題はある基準、ほかの疾病であれば一定の障害の対象になるような人がいて、 それが合併症でなったのか、もともとのじん肺でなったのか、クリアでないケースがた くさんありますよね。それも結局今回のでは全部、じん肺は例外だという形でネグレク トされている形にならざるを得ない。 ○医療監察官  治ったものによって障害が生じているのであれば、じん肺の合併症であろうがなんで あろうが、いまは同じ基準で見るのですが、じん肺の合併症でなったということが明ら かではないということになると、対象にはできません、それはむしろじん肺によるので はないかという話ですね。 ○木村先生  ですから結局そこの判断が、ここにも書かれているとおり、手術して取ったとかいう ことであれば、前後の呼吸機能とかがあるからわかりやすいのですが、結局、明確に区 別できないようなケースが出てくるだろうと思うのです。そのときに今回のこの報告書 でいけば、じん肺は全部落とされるような形になる。それがこの報告書全体の整合性と してどうなのかなということです。  これは衛生課との関係もある問題ですし。ただ、疾患に限らず、呼吸機能でみていく というのが今回の大前提というか。じん肺も進行するとは言っても、ほとんど変わらな い人もいるという現実もあるわけですね。全員が必ず進行していくということなら、こ れはまた話は違ってくるのかもしれないのですが。 ○奥平(雅)先生  じん肺というのは、従来は不治で進行性の疾患であるという定義のもとに進められて いたのですね。それが今回の検討会でも最初のころ強く打ち出されたので、そういうふ うに決めつけないで、「とされている」という形にしたほうがいいのではないかという ようなことを申し上げたつもりだったのですが、じん肺は不治ということが前提になれ ば、治ゆはあり得ないので、これから外れていく。じん肺はじん肺法という法律で別に 扱っている。今回の検討は労災補償法ですね。こちらでは、触れないわけにはいかない ので、一応じん肺のことに触れているけれど、じん肺についての治ゆの認定については 全く触れない、という立場できたのではないかと思うのです。 ○木村先生  ただ、合併症自体は治ゆの時点があるわけですよね。結核の治療が終わった、気胸の 治療が終わったという時期は、判断せざるを得ないときがある、いつまでも結核の治療 をしているわけにいかない。患者にも、治療はやめますという時期があるわけですよ ね。その際に、一気にほかの疾病と違ってしまってくる、結核で治療している間はいわ ゆる労災、合併症になっているわけです。 ○横山座長  この問題は深く入れば入るほど、じん肺法という差し障りが出てくるという点がある のではないかという気がするのですが、どうでしょう。現行のじん肺法というのは昭和 52年で、それからもう30年近くたっているわけですね。だからこのじん肺法そのもの が、法改正以来変わらないということに問題が1つあるので、その辺は検討していただ かないといけないところだろうと思うのですが、補償課としては、それを検討しなさい よというわけにもいかないのでしょう。 ○医療監察官  ここに書いてあるのは、衛生課とすり合わせた内容で、現状のものを前提にするとこ れしか書けないということですが、ただ、問題はあるよと。先生ご指摘のような問題で すね。というのは十分わかっているということで、私どもで書けるのはこれが限度かな という。ただ、問題点はわかっているので、そこについては、今日、お集まりの先生方 の中から改めて強いご意見が出たということは、衛生課のほうに伝えさせていただきま す。ただ、伝えて衛生課がどういうふうにするかは責任を取りかねるところではあるの ですが。 ○斎藤先生  私はよくわからないのですが、じん肺法というのは、管理区分を決めますよね。管理 区分で管理IVになっても、療養はいいがそれは治療に結びつくものではないという話が あるわけですね。それはむしろ補償課の仕事になる話なのかなという理解をしているの です。じん肺法というのはそういう細かい補償の問題などは考えないで、結局は、労働 者の仕事を続けることの可否をきめるものなのかなという理解をしてきたのですが、そ れでよろしいわけですか。 ○医療監察官  確かに斎藤先生がおっしゃるようにじん肺法は、作業転換あるいはその予防、あるい はその状態を把握するための健康診断というものを規定しているのですが、その療養と の関係を規定しているような条文もあって、それとの兼合いで、こういうものは療養で す、こういうものは療養が必要ではないという話で。いま合併症の話だけが出ています が、合併症がなくても、重い肺機能障害にならなくても、例えば11級になるような方は あり得るのですが、そこは全然補償の対象にならないというのが現行じん肺法と、現行 じん肺法を踏まえた形の労災補償というものですから、そこは、2つの法律の連動の仕 方として、そういう仕組みに、いまのところはなっているということです。それで、こ れを前提にするとこうなりますよとした上で、こんな問題がありますよと。2回目ぐら いでしたか、そういう問題があるということで、問題は問題としてきちんと書いておい たらどうかという、この場での合意を踏まえて、このように書かせていただいたという ことです。これ以上はなかなか難しいのでご容赦いただければなと思っております。 ○横山座長  これはあまり深く首を突っ込んでやるといろいろ差し障りが出てくるのですよ。 ○木村先生  ですからここで問題点として指摘していただいたということでも大事なことなのかな とは思っているのですが、全体の整合性ということから考えると、確かにちょっと矛盾 があるのかなという感は拭えないものですから、もう1回、ここで確認をというか、こ の会としてこれで仕方がないのかなと。 ○横山座長  このワーキング・グループの中で議論をするのは、これはどうということはないと思 うのですが、報告書という格好で出てくると、いろいろ差し障りが出てくることを私は 心配しているのです。この辺でご勘弁願って。 ○人見先生  5頁の「第1は」という所の文章はもう少しわかりやすく書いてもらえませんか。わ かっている人にはわかるのでしょうが、とても難しいです。お願いします。 ○医療監察官  論旨が変わらないことを前提としてもう少しわかりやすい表現にさせていただきたい と思います。 ○横山座長  「第2は」という所で「峻別」という言葉が出てきますが、これは普通に使っている のですか。 ○医療監察官  最初は峻別ということではなくて、区別ぐらいのことを使っていたのですが、これは 誰のご指摘だったか覚えがないのですが、先生方から峻別のほうがよろしいのではない かということで峻別と書かせていただいたという話で、これはもう少し違う言葉で。 「じん肺によるものかそうでないものか」ということで規定している、これは間違いが ない話なので。 ○横山座長  昭和52年のじん肺法の改正のときに、私も末席でちょっとお手伝いをしたのですが、 結局、合併症云々というような問題で、ごまかしたと言っては悪いけれど、そこであま り深く突っ込んでいくと矛盾するようなことが、もうすでにじん肺法の中であったわけ です。だけど、これはこれでいこう、いいじゃないかとナカムラ教授が言ってみんな口 封じをされてしまったわけです。だからそれはそれとして、この際こういうようなもの を出して、衛生課のほうでもじん肺法の問題をもう1回検討していただくきっかけをつ くるということでご勘弁いただきたいと思います。 ○医療監察官  先ほどの運動負荷試験の所で確認させてください。いくらあっても11級というのは、 いままでのご議論どおり変えませんと。こういう要件のときに11級だというのはやめ て、安静時に何もない人について、あるよと言って運動負荷試験をやりましたというと きに、個別に、主治医がやったものについて専門医が判断して有りと認めれば、それは 11級にしますよというぐらいの表現にする。 ○横山座長  専門医の制度というのはないわけでしょう。 ○医療監察官  専門医というか、個別に検討してという具合に書いて。 ○横山座長  誰が検討するのですか。 ○医療監察官  実際上は局医にやらせることになると思うのですが。あるいは、主治医にやらせると いうのだったらもう、主治医が有ると認めれば11級にするということでもよろしいので すが、できれば私どもとしては、最小限の、プロトコルはともかくとして、これぐらい が呼吸機能障害ですよというものが、もし主治医にやらせるならほしいと。 ○横山座長  主治医にやらせるとしても、こんなことを言っては申し訳ないけれど、主治医の先生 たちが広い、全国的な視野で判断できることを期待するのは、ちょっと無理ではないか と思うのです。だから評価機関というか、評価の組織があれば、そこに委ねればいいと 思うのですが、いまはないわけですよね。局医というのは、呼吸器の専門家が必ずいる わけではないでしょう。 ○医療監察官  いなければじん肺審査医にお願いすることになると思うのですが。 ○横山座長  それでうまく動きますか。 ○課長補佐  何があればいいということになるのでしょう。 ○医療監察官  横山座長は、もう明確な基準というのはやめたらどうか、ただ、運動負荷試験は残す べきで、安静時の検査で何もないときに11級というのも変える必要はない、ただ、こう いう場合だったら11級というのはやめたほうがいいのではないか、そのときに主治医に は任せられないなと。 ○課長補佐  だからその前にこういうものがあったらいいというところが。わりと単純な話であれ ば、それは本当の呼吸器の先生でなくてもできる。例えばここに書いてあるように、酸 素飽和度を測ればいいのだと、これがある一定以上あればいいということでも十分、100 件全部というわけにはいかないかもしれない、中には1、2件間違うかもしれないけれ ど、90何件はこれで大体判定がつきます。特殊な例は難しいですという程度の誤差で大 体できる程度のものであれば。それはそれなりの先生、外科の先生にこんなことをやれ といっても無理なのでしょうが、そういう程度のものであれば。 ○横山座長  外科の先生のほうが詳しいかもしれないですね。 ○課長補佐  そこがどの程度のものがあればいいかが決まれば、大体できるでしょうでもいいので はないか。現実にはそれ以上の対応は難しいかなと。先ほど先生がおっしゃったよう に、判定医みたいなものが全然おりませんし、局にはじん肺診査医の先生や、あるいは 局医ということで、呼吸器ないしは内科のかなり高度な経験を持っている方がいらっし ゃいますが、場合によっては、これは監督署レベルでも行うことになります。そう考え ると、呼吸器のことについて詳しい相当なレベルを持っている先生が、必ずしもやると いうことではないと思います。呼吸の障害の場合には、大体局レベルで判定することに なりますかね。そんなに多くないですから。 ○斎藤先生  例えば、続発性気管支炎のときに問題になったのですが、結局主治医が紙に結果だけ 書いて提出すると、これは何も根拠がなくて、チェックする機構がないというので、全 部無原則的に通ってしまったという話がありますね。運動負荷試験などでも、ある程度 結果が表示される形で評価されないと、預けられたほうも困るだろうと思うのです。酸 素飽和殿評価には飽和度の動きを示すグラフのようなものを提示しなければいけないと か、何かそういうものを出さないと、判断するほうは無理だろうと思います。ただ、そ れは何がいいかという話になると、いまのところはちょっと。飽和度の話は難しいとな ってくると、モニタリングして呼吸数や脈拍数を一緒に見ないといけないという話にな ってくるのかなと、いま考えていたのですが。 ○横山座長  どこかに、運動負荷したときに酸素飽和度が何パーセント以上下がったらどうという ものがありましたが。 ○課長補佐  12頁です。 ○横山座長  負荷前の状態に比べて酸素飽和度が4%以上低下するなどということは、割にしばし ばあるわけですよね。 ○斎藤先生  動脈血酸素分圧の低い場合の方が運動によって酸素飽和度が下がりやすいと思いま す。 ○横山座長  (ア)のbのところに、「動脈血酸素飽和度が90Torr以下に低下したこと」。飽和度 が90Torr以下に低下することはないですよね。パーセントならわかるけれど。 ○斎藤先生  そうですね。飽和度ですね。 ○横山座長  こんな難しいことではなくて、例えばある運動負荷、50mの歩行でもいいですが、そ れができなかったらどうすると、あるいはドクターの立場からこれ以上やっては危険だ というときに、とにかく運動負荷試験が完全に実行できなかった場合には、11級が結構 だということにしておけば、あまり難しい問題にならないけれども、酸素飽和度が何パ ーセント以上低下する云々となってくると、これはなかなか難しいことがあると思うの です。だから、先ほどおっしゃったように、運動負荷を中断せざるを得なくなった場合 には認めますという程度ではいけないのですか。 ○斎藤先生  判断は難しいような気はするのですがね。 ○横山座長  難しいですが、ただ酸素飽和度が何パーセント以上低下した場合ということよりも、 やめてしまったというほうがはっきりしますよね。 ○人見先生  それは主観になる、患者さんが嫌だと言ったら終わりになる。 ○斎藤先生  50m歩けなかったら、これは11級ではないですよね。例えば3級とか。 ○横山座長  ……。 ○斎藤先生  でも、50m歩けなかったらそうなるのではないですか。3級の基準は、100m歩ける かどうかという基準ぐらいのレベルだと書いてありますよね。だから、むしろ何かほか の病気があるかどうかを判断しなければいけない話になってしまうのではないか。スパ イログラムと血ガスが正常であって、50m歩けなかったら。 ○人見先生  これは学門的な論文があるわけだから、これでいいのではないですか。それをつける のだから。でなかったら、4%以下に低下したとか90Torr以下になるという数字は出て こないでしょう。これは論文があるわけでしょう。 ○横山座長  これは論文があるのですか。 ○医療監察官  4%以上低下というのは、ガス交換障害が優位に認められる1つのもので、それがど れだけのものなのかは少し問題なのですが、11級ということでいえば、確かに障害はあ りますねと言えるものとして、4%を持ってきているのです。ただ、これも誤差が大き いではないかと言われれば。 ○人見先生  ……あるのですか。 ○医療監察官  ございます。 ○横山座長  例えば、運動負荷をやっている最中に呼吸を止めてしまう人もいるかどうかわかりま せんが、浅い呼吸をするなどすると、4%などはすぐに下がってしまうわけですよ。 ○医療監察官  そういうことがあるので、せいぜい11級ぐらいしかできないのですということなのだ ろうと思います。あるいは、そういうものは握力と同じで、再限性が確保できないとい うなら、今後の検討課題にしてしまうのがいいのかなと。 ○横山座長  今後の検討課題とすると、運動負荷試験保護ドクターは大変不満なのではないです か。 ○課長補佐  こういう例、要は血ガスは全然何ともないのでしょう。 ○木村先生  安静時ですね。 ○課長補佐  これでやるとかなり障害が出てくる例は、やはりそれなりに頻度としてはあるのでし ょうか。先生方の経験では。 ○斎藤先生  私はないと思っています。だから、動脈血酸素分圧が80Torr以上あったら、80Torrだ ったら下がる人もいるかな。でも、飽和度は4%は下がらないと思います。どこまでも この検査の占める意味あいは非常に軽いものだろうと私は理解しているのですが。 ○課長補佐  極めて例外的なものだということですね。ただ、あるのはあるけれど、極めて例外的 なものであるということであれば、1つは特別に何かをする。我々はよく何か基準を作 るときに、こういう場合は本省に聞いてきなさいと、いろいろな観点から判断しますよ という手を使うことがあるのですが、それと似たようなことで、こういう場合には呼吸 器の専門医にいろいろな試験をしてもらって、総合的に判定させなさいといったような こと。基準化できないけれども、あるかないかは、呼吸器についての専門医であればわ かります。その先生に診させなさい、そこで判定してもらいなさいという手法を取るこ とは可能だと思います。 ○横山座長  それをやるとなると、今度は相談をする先の専門医にお礼を誰が払うのかなど、いろ いろな問題が出てきてしまうのではないですか。 ○課長補佐  それは当然行政の経費でやりますので。 ○横山座長  できるのですか。 ○課長補佐  はい。場合によっては、ここにいる先生方に鑑定をお願いするといった手法を取るこ とも可能だと思いますし。 ○横山座長  労災が問題になるような患者さんは、年に100例以内だと私は聞いていると思うので すが、その中で運動負荷の問題が出てくる患者さんは、もっと少ない数だと思うので す。そのもっと少ない数については、本省に稟申をして労災担当の先生にご意見を伺う 格好に、この報告書ではしておいて、具体的にどうするかの点はまた検討していただく ということでどうでしょう。 ○課長補佐  そういう形でまとめていただいてもよろしいと思います。 ○横山座長  機械的に何級にするとかしないとかとすると、やはりいろいろな問題が出てくると思 うのです。じん肺の場合ももちろんそうなのですが、担当医師あるいは患者さんのもの の考え方が表面化してくると、いろいろ問題が出てくる。だから、なるべく全国ベース で公平にいくような方法を考えておかなければいけない。公平にいくというのは、この 場合には、私はおそらく年に何例もないと思うので、中央労災委員の先生と相談をする ことで処理しておいたほうがいいのではないかという気がするのですが。 ○課長補佐  具体的な行政上のやり方については私どものほうで決めますが、先生方の報告書の中 ではなかなか一律の基準として決められないということがあるので、個別の判断をすべ きだぐらいの報告をいただければ、私どものほうでそれなりに。 ○横山座長  そうしていただければ大変ありがたいと思います。 ○斎藤先生  この場合は、運動負荷試験ということに限らない話になったわけですね。つまり、安 静時異常がないにもかかわらず、呼吸困難があって何かおかしい場合に対してはどうす ればいいかという相談ですね。 ○課長補佐  そうですね。呼吸困難が認められるということですね。そういうことでもいいと思い ますが。 ○医療監察官  安静時の検査上全く障害がないけれど、確かに呼吸器の障害によって呼吸機能障害が あるというものについては、一律に基準を示すことができないので、ここに検討すべき であるということでまとめさせていただく。 ○横山座長  あまり断定的な結論は控えておいたらどうでしょう。 ○課長補佐  そういう形でまとめさせていただきましょうか。 ○横山座長  はい。お願いいたします。 ○奥平(雅)先生  小さな問題なのですが、先ほど人見先生が8頁のところで、背臥位を仰臥位とおっし ゃっていましたね。文部科学省の学術用語集を見ますと、日本語の索引で引くと背臥位 しか出てこないのです。英語の訳で見ると、背臥位と仰臥位が出てくるのです。ですか ら、先ほど何回も仰臥位という字を見たので、私もどちらがいいのかなと思って調べて みましたら、結局、文部省の学術用語集では背臥位を主として取っていると理解される ので。 ○横山座長  日本医学会はどうでしょうか。 ○奥平(雅)先生  日本医学会の辞書は、ほぼ同じです。でも、そのあとで2003年に文部科学省から 学術用語集が出たのです。それにはそうなっています。先生はきっと最後まで気になさ ると思うものですからお伝えしました。  あと、いまの行のところで「以下の問題がある」ですね。「が」が抜けている。 ○人見先生  はい。 ○奥平(雅)先生  細かな問題はあとでご連絡いたしますが、是非人見先生にご了解いただければと。 ○人見先生  背臥位のほうが古いかなと思っていたのですが、そんなことはないのですね。わかり ました。  「採用すべき運動負荷試験」のところで、トレッドミルとか、時間内歩行試験など、 この辺りの文章は前後が変わるのでしょうが、1つ、最大酸素摂取量と一致するという ことで、シャトルウォークテストを割と使っていますので、これも入れておいてくださ い。 ○医療監察官  はい。 ○課長補佐  この辺も起こり得るのですか。 ○人見先生  先ほどの話だけは入れて。 ○医療監察官  こんなものがあるのだけれど、いろいろな問題があるからということで。 ○課長補佐  紹介をする形で書くと。 ○人見先生  文章は後ろのほうに入れるとなったのではないのかな。 ○課長補佐  場合によっては、運動負荷試験の必要性もほとんどなくなってしまう形になるのかな と、私の頭の中でそのように思ったのですが。 ○医療監察官  かなり簡単になることは間違いないのですが。 ○横山座長  表現が難しい。 ○人見先生  取ってしまうのは駄目ですよ。運動負荷試験は大事な試験なので。 ○医療監察官  わかっています。 ○横山座長  神保さん、2頁の下から3行目の「労作時にどのような支障が生ずるかということに 着目して行うこととなる」。私は「いうことにも着目して」と、「も」を入れたほうが いいと思うのです。  大体こんなところで一通り終わったわけですが、先生方、お帰りになってお気づきの 点がありましたら、どうぞ遠慮なくおっしゃっていただければ、それについて検討いた します。 ○奥平(雅)先生  もう1ついいですか。文献のことなのですが、先生方の文献が載ることは望ましいと 思いますが、先ほどのお話のように、ある特定の所に文献があるという形だと、普通の 論文と同じように引用箇所が特定されてまいりますね。そういう形で出すのか、ただ並 べるのかという問題があると思うのです。ですから、引用箇所に応じて文献を出す形に するのか、ただ一般に参考という形にするのか、いま先生に決めていただくほうがいい と思うのですが。 ○横山座長  引用箇所云々ということはなかなか難しいのではないかと、私は思っております。大 体これはどの辺に関係しているかはおわかりいただけるかと思います。あくまでもこれ は参考文献ということで、このようなことがありますよと。特に外国人の論文などの場 合、日本の業務上疾病の云々にそっくり当てはまらないことが多いものですから、参考 としてこういうものがありますという程度にとどめておいたほうがいいのではないかと 思います。よく型に何番とつけますが、あれをやり出すととても大変なのです。正直な 話、私は学会から帰ってきてから、思いつきでいろいろ書いたようなことになってはい けないと思って、参考になる文献が約680〜700近くあったのですが、それを削るに削っ てそのような格好に持っていったわけです。 ○人見先生  私もそれは気になっていましたが、そういう結論でいくわけですね。私も、今回大分 文献を読みましたので、またそれはお送りしたらいいのですね。 ○横山座長  送っていただければ、それを組み込みます。では、今日ご指摘いただいたことの表現 その他を直しまして、また一度先生方に原稿をお送りしてもよろしいですね。 ○医療監察官  はい、いまのご議論を踏まえて、至急直させていただきます。今日はもう少し集約し た議論になるかと思っていたのですが、かなり多様なご意見が出ましたので、いったん 先生方に見ていただいたものについて座長に取りまとめをいただくことで、方向性とし ては先生方にはご了解いただいたのかなと思っています。一応見ていただいたものを座 長にまとめていただく形で、今後取りまとめをさせていただければと思っております。  今後の予定ですが、これから一度先生方に見ていただいたものを、もう一度座長にご 指導いただきながら報告書を仕上げる。仕上げた報告書につきまして、これは審議会等 の約束事項がありまして、患者団体のご意見を聞いた上で、その結果を先生方にご報告 する場を設けたいと思っております。ご報告いたしまして、必要に応じて再度検討をし ていただくこともあろうかと考えております。  日程ですが、6月下旬ぐらいを考えております。もう少し近づきましたら、日程調整 をさせていただきます。6月には、今日取りまとめていただいたものの報告書について 各患者団体の意見をご報告し、必要があれば手直しをするし、必要がなければ必要がな いということで、6月下旬に再度お集まりいただきまして、ご検討いただきたいと思っ ております。日程のほうは、また先生方にお伺いして決めさせていただきます。 ○横山座長  それでは、どうもありがとうございました。一応格好はついてきたと思うのですが、 まだもう1歩突っ込まなければいけませんので、よろしくお願いいたします。ありがと うございました。 照会先  厚生労働省労働基準局労災補償部補償課障害認定係      TEL 03−5253−1111(内線5468)      FAX 03−3502−6488