05/04/21 第24回厚生科学審議会科学技術部会議事録                   第24回               厚生科学審議会科学技術部会                    議事録              厚生労働省大臣官房厚生科学課             第24回厚生科学審議会科学技術部会                   議事次第 ○ 日時    平成17年4月21日(木)15:00〜17:00 ○ 場所    厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階) ○ 出席委員  矢崎部会長         今井委員 井村委員 垣添委員 加藤委員 岸委員 北村委員         倉田委員 黒川委員 笹月委員 永井委員 中尾委員 長尾委員         長谷川委員 南委員 【議題】  1.平成18年度厚生労働科学技術政策について  2.今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会中間報告について  3.国の研究開発評価に関する大綱的指針の改定について  4.独立行政法人医薬基盤研究所の設立等について 【配付資料】  資料1 平成18年度厚生労働科学技術政策について  資料2−1 今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会中間報         告書概要  資料2−2 今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会中間報         告書  資料3−1 国の研究開発評価に関する大綱的指針の概要  資料3−2 国の研究開発評価に関する大綱的指針(平成17年3月29日内閣総理         大臣決定)  資料4 独立行政法人医薬基盤研究所の設立等について  参考資料1 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿 ○高山研究企画官  傍聴の皆様にお知らせ申し上げます。いつものお願いでございますが、傍聴に当たり ましては、既にお配りしています注意事項をお守りくださいますようお願いいたしま す。  定刻になりましたので、ただいまから「第24回厚生科学審議会科学技術部会」を開催 いたします。委員の先生方におかれましては、ご多忙の折、お集まりいただき、厚く御 礼申し上げます。  本日は予め、金澤委員、佐藤委員、竹中委員、橋本委員、松本委員からご欠席との連 絡を頂戴しています。なお、2、3の委員におかれましては、若干遅れて出席されると いうことでございます。委員20名のうち出席委員は過半数を超えていますので、会議が 成立することをご報告申し上げます。  冒頭ですが、会議の資料を先に確認させていただきます。お手元にあります議事次第 の1枚紙、そのあとに資料1「平成18年度厚生労働科学技術政策について」、資料2− 1として「今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会中間報告書 概要」、資料2−2として中間報告書の本体、資料3−1として総合科学技術会議の 「国の研究開発評価に関する大綱的指針の概要」についての見直しの説明紙1枚、資料 3−2として、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」の本体、資料4として「独立 行政法人医薬基盤研究所の設立等について」という資料です。また、委員の名簿を参考 としてお配りしています。  以上ですが、欠落等ありましたら事務局までご連絡いただきますようお願いいたしま す。それでは部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  本日は年度当初で、お忙しい中をお集まりいただき、大変ありがとうございました。 早速、議題に入りたいと思いますので、よろしくお願いします。  まず最初は「平成18年度厚生労働科学技術政策について」でございます。この検討ス ケジュールについて、まず事務局からお話ください。 ○上田厚生科学課長  平成18年度の政府の資源配分方針の検討スケジュールについて説明します。研究費関 連の資源配分方針の検討スケジュールですが、総合科学技術会議において、平成18年度 の研究分野における資源配分の方針について検討が進んでいます。4月25日に総合科学 技術会議の本会議があり、厚生労働省をはじめ、各省大臣から平成18年度の重点分野に ついてのプレゼンテーションを行うことになっています。これらを踏まえ、6月中旬に 改めて総合科学技術会議本会議が開催され、そこにおいて政府全体としての平成18年度 の研究分野における資源配分の方針が決定される予定になっています。 ○矢崎部会長  そのような予定ですので、来年度、平成18年度の政府全体の資源配分の検討に向け て、私ども科学技術部会においても重点分野についてご議論いただきたいと思います。 そして6月中旬の政府の研究分野における資源配分方針を踏まえ、次回の科学技術部会 では、来年度、18年度の厚生科学技術分野における研究課題についてご議論をいただく ことになるかと思いますので、よろしくお願いします。  それでは、平成18年度の厚生労働科学技術分野の重点領域について、叩き台に分かり 易い図で示していただいていますので、事務局から説明をよろしくお願いします。 ○上田厚生科学課長  お手元に資料1、縦長のものがございます。「平成18年度厚生労働科学技術政策につ いて」という表題を打っています。カラー刷りで4枚ばかりの資料が付いています。先 ほど申し上げましたが、4月25日に総合科学技術会議の本会議が開かれますが、そちら で私ども厚生労働省としてこの資料を提出する予定にしています。その点も踏まえ、皆 様方のご意見も賜ればと考えているわけです。  また、25日の会議におきましては、関係各省から多くの資料提出がされるということ で、極めて単純に、非常に分かり易い形でポイントを絞って資料を作ったものというこ とですので、その点もお含みおきいただきたいと存じます。  次の頁、「平成18年度の厚生労働省の科学技術研究の推進の基本的考え方」というも のでございます。実は総合科学技術会議においても、健康安全・健康安心ということに ついて「安心・安全」がキーワードで議論が進んでいると聞いています。健康安全の確 保、健康安心の推進、あるいは先端医療の実現というのは従前からあった大きな柱です が、18年度もやはり継続をしてこれらの大きな3つの柱を中心に、さらに上部、左側の 上に書いてありますが「ターゲット重点化」、その下に「アプローチ改善」と書いてあ ります。この3つの柱、そしてここに書いてあります10の事業を念頭に置いてターゲッ トを重点化し、研究のアプローチを改善していくということで、18年度は科学技術研究 を推進していきたいと考えているところです。その結果として、中心にあります国民に 対して「安全・安心で質の高い健康生活を実現」ということが提供できればと考えてい ます。  また、今年度から開始される、いわゆる「健康フロンティア」についても健康安心と 先端医療の実現を軸としてさらに推進をしていく。18年度も引き続き、この「健康フロ ンティア戦略」を推進していきたい。このような気持を込めてこの資料を作っていま す。  なお、左側にございます「ターゲット重点化」については言うまでもなく、少子高齢 社会の進展に対応して、ライフサイエンス研究を重点化していきたい。下の「アプロー チ改善」ということですが、その中で政策目的志向型研究を進展させる。あるいは効率 的・効果的研究手法の開発、さらに人材育成といったことを念頭に置いて、方法論を改 善していくということで考えているところです。  次に、もう少し具体的に取り組みの事例を挙げています。先ほどの「健康安全の確保 」「健康安心の推進」、さらに「先端医療の実現」について例示的に挙げています。 「健康安全の確保」の中には新興感染症・人獣共通感染症への対応、そして食品のリス クを把握し、安全性を確保する。そういうことで健康安全の確保/危機管理の充実を狙 っています。  その下の先端医療の早期実現ですが、様々な先端科学技術の成果、ゲノム科学等、ナ ノテクノロジー等を活用して、1,2次予防、さらに診断治療・創薬ということに向け ていこう。さらに右側、「健康安心の推進」ということで、特にいま焦眉の急である生 活習慣病の予防や最適な治療法の開発ということで、糖尿病、あるいはそれらを含めた メタボリックシンドロームをいかに押さえ込んでいくか。そのための基礎的な基盤とな るような研究もしっかり進めていこう。さらに、がん医療水準における均てん化及び先 端的がん医療の実用化ということも、この「健康安心」の中に含まれて取り組んでいこ う。このような具体的事例を挙げました。  もう1枚開くと、先ほど1枚目の資料にありました「ターゲットの重点化」と「アプ ローチの改善」について少しここで説明しています。ターゲット、目標ということであ れば、少子高齢社会の進展に対応したライフサイエンス研究が重点化をする。この資料 に書いてありますが、国民の悩み、不安、要望、やはりこれは「老後の生活設計」や 「健康」「医療・年金等の社会保障構造改革」に非常に国民の関心、あるいは不安、悩 みが集まっているということです。そういうことであれば、やはり国民のニーズに沿う 最も効果的な領域というのは「健康安心の確保」であり、また「医療等持続可能な社会 保障の構築」ということの中で、具体的には下にあります先ほどの「健康フロンティア 戦略の策定」、具体的には健康寿命の延伸、あるいは医療費の適正化、健康安全の確保 ということがあるのだろう。こういうように、少子高齢化社会であればこそ、さらにラ イフサイエンス研究を推進する、重点化するという考え方を示しています。  しかし、その研究をいかに効率的・効果的に推進するか。「アプローチの改善」とい うことで3つ挙げています。「政策目的志向型研究の更なる進展」。例えば、先ほど申 し上げた糖尿病の患者を減少させ、重症化を防ぐ研究などをやりましょう。2番目です が「成果に直結する効率的・効果的研究手法の開発」ということで、成果契約型事業の 導入や大規模多施設共同研究の推進、連携施策群の活用など、確実な研究成果が確保で きるように取り組みましょう。さらに「人材の育成」ということで私どもの政策目標が 必要とする研究、あるいは研究成果を支えていただけるような人材をしっかり育成して いこう。このような厚生労働科学研究を取り巻く、方法論についても改善をしていきた いということを示しています。  4枚目は既に何回かご覧の資料ですが、まさに17年度から「健康フロンティア戦略」 がスタートする。平成26年度まで進むわけですが、そこに書いてありますように、働き 盛り層、女性層、高齢者層、それぞれに対してターゲットを絞り、最終的には「健康寿 命を延ばす科学技術の振興」ということで、これらを支える研究を下にあるような糖尿 病、がん、あるいは生涯を通じた女性の健康や介護予防の推進、ゲノム科学・タンパク 質・ナノテクノロジー、先端医療に必要な治験環境整備の推進、こういうものを実際に 進めていこうということで、具体的な戦略としてこの「健康フロンティア」を今年度か らスタートすることにしています。以上、このような形で私どもの18年度の取り組みの 方向をポイントを絞って整理しました。  総合科学技術会議においても、やはりライフサイエンス分野はこれまでの重点分野と して残るのではないかという情報も聞いています。それから、先ほどの「安心・安全」 ということについても、あるいは政策目標をしっかり掲げた研究ということについて も、そのようなことが非常に重要だという認識がされていると伺っています。そういう 点では、私ども厚生労働省の考え方と総合科学技術会議の間でそれほど大きな齟齬はな い。むしろ、我々の意見を受け入れていただいているものだと理解しています。よろし くお願いいたします。 ○矢崎部会長  以上の点に基づき、ご議論いただければと思います。前回もいろいろ活発な議論をい ただき、ありがとうございました。今日の「安心・安全の推進」と「ライフサイエンス 」に重きを置こう。厚生科学課、あるいは厚生労働省の科学研究費への対応についてご 意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。 ○笹月委員  最初の図に「先端医療の実現」という項目があります。ここはいうなれば方法論かと 思います。例えば生活習慣病、その他の疾患で本当に安心・安全、あるいは予防、重症 化の予防、そういうことを本当にやろうとするとやはり疫学的な解析、いわゆる環境要 因の解明が必須のことになると思います。  もちろん、そういうことをお考えだとは思いますが、いわゆる方法論として疫学とい うのは古くからある伝統的な学問なものですから、ナノテクノロジーやゲノム科学は出 てくるのですが、いわゆる「先端医療の実現」というところに項目として出てこないの です。ですから、どこか言葉として是非疫学、遺伝疫学、あるいはゲノム疫学というこ とを加えていただいて、そういう分野にきちんと光を当てて、資金面でも十分にサポー トするというところを示していただくのが、私は非常に重要ではないかと思っていま す。よろしくご検討ください。 ○矢崎部会長  我が国はこの領域の研究がいちばん遅れていると言われていますが、どのように組み 込みますか。 ○上田厚生科学課長  ご指摘の点はまさに重要だと思っています。ただ、先端医療の中と言うと少し収まり が悪いのかとも思います。「健康安心の推進」の中で、健康寿命の延伸などを支える基 盤的なものとしてという認識です。いま、このペーパーの中にすぐに入れるというのは 困難かもしれませんが、先ほどご提案の「先端医療」も念頭に置きつつ、多分形の上で は「健康安心の推進」に入ると思うのですが、実はその間をつないでいるのは「健康フ ロンティア戦略」というものですので、実態としてはこういうところに入ってくるのか もしれません。少し検討させていただきたいと思います。 ○笹月委員  2枚目の「健康安心の推進」という中で、真ん中辺りに「大規模介入試験等を実施し 」と書かれています。まさに、こういうところに入ってくるのだろうと思います。文言 として疫学、あるいは環境要因の解明、ゲノムと環境要因の相互作用の解明、そういう とこで出てくればそれでよろしいのではないかと思います。 ○中尾委員  前回も発言させていただきましたが、今回の1枚目、2枚目、3枚目の流れの中で、 前回ディスカッションした分を少し追加させていただきたいと思います。  2頁目では、例えば先ほどの「健康安心の推進」では、いま笹月委員からもお話があ りましたように環境要因に関する重要性が言われました。生活習慣病領域の予防という ことに関しては、2枚目のところでは糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満が糖尿病だけに 偏らず図式化されています。特に、肥満のところにドクロが付いています。これが何を 意味するのか、私は完全にはわかりませんが、下から支えて環境要因の中心になってい るのが肥満ということを意味しておられるような気がします。  1頁目と3頁目、やはりがんよりも糖尿病が先に来るというのは、重要性から言うと 少し糖尿病に偏り過ぎているという印象を否めない。アカデミアの現在の風潮は、この 領域に関しては、beyond cholesterol beyond glucose、が世界的な傾向であって、コレ ステロールの対策はかなり進んできているというのが現実です。しかし、アメリカでは コレステロールを下げただけでは循環器系の疾患はこれ以上には減らないということが わかって、さらにその次の対策が必要と考えられています。糖尿病は極めて重要な強い 危険因子ですが、それをグルコースだけを捉えていては駄目だというのが現在のコンセ ンサスであり、それをさらに取り巻く環境、肥満を含めたところが大きいというのが、 いま世界の認識するところです。  日本でも先週の内科学会で、内臓肥満を含めた肥満をメタボリック症候群の必須基準 として挙げることが発表されました。これから5年間推進するのに、その部分をかなり 認識した対応をしないと、時代から取り残される雰囲気にならないかという心配をして います。  かなり修正されてきているようには思いますが、がんは全てのがんを含めています。 その一方で、あと循環器系の対策として糖尿病だけを1つ前に出すことに関しては、こ れからの5年間の中では少し厳しくなるのではないかと危惧しています。 ○矢崎部会長  前回の中尾委員のご発言で、この肥満のドクロが加わったのではないかと思います。 一般的には、糖尿病や高血圧を新しい概念として、肥満というよりは代謝障害(メタボ リックシンドローム)ではないか。ですから、是非、中尾委員に糖尿病だけではなく て、メタボリックシンドロームだという国民的な受け取り方、それを大いに宣伝してい ただくことが重要かと思います。ここは「糖尿病等」となっていますし、あるいは(メ タボリックシンドローム)となっていますので、その辺は斟酌していただければと感じ ます。そのほか、いかがでしょうか。 ○笹月委員  図の3枚目「少子高齢社会」で、老後の生活設計、年金云々と高齢社会のほうはかな りキーワードも出てきて配慮されているように見えますが、いわゆる少子化というとこ ろであまり具体的な項目が出てこないように思います。  人口問題ともなるとまたいよいよ事が大きくなって、難しいのだと思いますが、しか し、いまから20年、30年たったときに、本当の社会を支える20代、30代の人口が激減し ている。その時になって何か言っても、もう時既に遅しですので、何か子どもを抱える 母親が働きやすい環境づくりや健康、あるいは数少ない子どもの健康をどのように守る か。いわゆる、少子化に対する対策がもう少し見えてもいいのではないかという気がす るのですが、いかがでしょうか。 ○上田厚生科学課長  確かに、おっしゃる点は非常に重要であります。私どもでも子どもというか、母子と いうか、そういうところについての研究費が当然あるわけです。ただ、なかなか、そう いうものが少子化問題の改善につながっていないことも事実です。  一方、どこまで研究というもので少子化を改善できるのかということも、まだ十分議 論がされていないところもあります。むしろ、この研究をこういうように持っていけ ば、この少子の問題に対して良いアウトカムが出るのではないかということをもう少し 真剣に議論してもいいのではないか、そういう気持は持っています。もしよろしけれ ば、ここで委員の皆様から、こういう研究面でのアプローチということも言っていただ ければいいのではないか。事務局として答えになっているかどうかわからないのです が、ここは我々もいままで悩んできたところではあるので、ずばり少子化の問題に対し て研究が応えていないのではないかという、忸怩たるものがあることはそのとおりでご ざいます。 ○笹月委員  研究のカテゴリーの中に、「提案されたものについて1年かけて議論する」という新 しいご提案があります。あのような中に何か1つテーマを設定して行うことが可能性が あるのではないでしょうか。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。 ○垣添委員  厚生労働省の科学研究がディジーズオリエンテッドというか、ミッションオリエンテ ッドの研究であることはたびたびこの会議でも確認されています。そういう観点からし て「第3期科学技術基本計画」に向けて、厚生科学のあり方としてライフサイエンスの 重視、あるいは安全・安心の重視といったことが取り込まれていて大変結構だと思いま す。「第3期科学技術計画」の検討のキーワードの1つとして、「国民の目から見て分 かり易い」ということがあったと思います。その際、先ほどご説明いただいた資料の4 頁の中にある「先端医療の実現」という中で、ゲノム科学やタンパク質科学とナノテク ノロジー等の応用ということで、いろいろ基礎的な研究成果がたくさん挙がってきてい ます。それが我が国ではなかなか、例えば薬の開発で言うと新薬の開発に結びつかない というところが、これまで我が国の弱い部分だったと思います。こういうところで、例 えば基礎研究の成果として、あるがんに対して極めて有効な薬が開発されたという結果 が出てくると、国民にとっては端的に結果が分かり易いという点につながると思いま す。その次に書いてあります「先端医療の実用化」、特に「治験環境の整備の推進」、 ここの部分が弱かったから我が国は基礎研究の成果が臨床につながっていないというこ とだと思います。言葉として既に書いてありますけれども、ここのところは是非とも厚 生科学、厚生労働科学、あるいは厚生労働省の研究として重要なのだということを重ね て発言しておきたいと思います。 ○北村委員  いまの垣添委員の話につながるところなのですが、医政局から医薬品の産業ビジョ ン、あるいは医療機器産業ビジョンというものができて、厚生科学研究の出口として実 用化できるものを医薬品にしろ、医療機器にしても作ろうというビジョンが出てくる。 それに合わせるような厚生科学研究費というもの、これがいま垣添委員が言われたよう な先端医療のところに入ってくるのではないかと思います。ペーパーはたくさん厚生科 学研究でも出ている。いま、米国で同じことが言われていますが、実際それが治療とし てつながっていないというところがあるのではないかと思います。やはり、局は違うか もしれませんが、厚生労働省の産業ビジョンを推進する研究費も厚生科学研究費として 位置づける。治験環境の整備のほかに、ペーパーではなくて医薬品、医療機器の実用化 を推進するという項目が1つあってはどうかと思います。 ○中尾委員  いまのお2人の委員の立場と全く同じ立場です。科学行政にかかわるところの研究費 は、いくつか厚生労働省以外にもあるわけです。私も大学にいますので、そういう点で は一定の充実があるわけです。それを実際に、患者さんに応用する際に非常に多くの困 難に毎日ぶつかっています。  特に私どもの立場だと2つの治験行為、すなわち製薬会社がやる際の科学的な推進に 関するコンサルテーションを、私どものアカデミアにいる人間が相談に乗る場合もあり ますし、医師主導の臨床治験に関するところで、その実践者になる場合があるわけで す。その2つともに非常に時間がかかり、基準に関するところのいろいろな曖昧さの中 で行かなければならない。患者の応用の段階に近づけば近づくほど困難が大きくなっ て、ネズミの実験だけをやっていればハイ・クオリティーの論文がいくらでも出る状況 にあります。若い研究者は「これ以上臨床応用に近づくとしんどい。これから困難なと ころが非常に多くて」という場合が多く、大学にいると「これでいいのだろうか」とい うことによく遭います。特に、ネズミの研究だけやっていれば、ハイ・クオリティーの トップ・ジャーナルに出るが、それを臨床に持ってくる段階でスローダウンして、とて も大学院の間の4年間でそれが現実に近づくなどということはほとんどない。臨床応用 に近づけば近づくほど、研究費もどちらかといえば当たりにくい。夢ばかりが大きくて どうなるかわからないというところに、逆に研究費が行っているような場合がありま す。  ですから、医師主導の研究や臨床に近づいたものをもう一歩、背中を押すようなシス テムの充実と促進の体制を作ることが極めて大切であると思います。日本はいま、そこ の段階で急激にブレーキがかかっているというのが現状だと思います。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。実際、トランスレーショナルリサーチというのは、言葉は 極めて分かり易いのですが、実施体制となるとなかなか難しいというお話ですね。どう もありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。 ○倉田委員  これはどちらを使っても間違いではないのですが、2頁「人獣共通感染症」、学術用 語はこうなのです。ところが、国が出した感染症法上は「動物由来感染症」という言葉 に置き換えられています。法律用語は「動物由来感染症」で、学術用語は「人獣共通感 染症」となっている。どちらでもいいのですが、厚生労働省が出すのなら「動物由来」 という言葉に置き換えたほうがいいような気がします。どちらでも間違いではありませ ん。 ○矢崎部会長  それはまた検討していただきたいと思います、よろしくお願いします。 ○今井委員  1頁目の健康の安全の確保、安心の確保の部分、ずっと気になっていたのですが、食 についてはかなりいろいろと考えられているわけです。しかし、行動については全くな い状態です。生活習慣病などに関しても、内科専門医たちが出している一般向けDVD などでも、例えば運動の効果みたいなことというのは出ていて、エビデンスのとれてい る疾患がいくつか挙がっています。  また、同じ運動をするのでも、これは厚生労働省と林野庁が一緒になって調べている のですが、森林空間と都会とでは都会の空間で運動すると、逆にストレスが増すという ようなデータが出ています。これは昨今、光トポグラフィーなどが発達したのでそのよ うなデータが採りやすくなっていて、多分世界的にも日本がその意味では先行した状態 でデータを出していると思います。  そういうことを考えると、昔、運動と休養と食事と言われていた健康の3原則から考 えても、行動に関する安心や安全の確保というところが非常に大きいのではないかと思 います。ただし、内容的には非常に変わってきていて、例えば大気汚染状態がどれぐら いであるか、水質汚染がどれぐらいかということによって、身体的に受ける影響という のは違ってくると思います。  先ほど、少子化の問題も出ていました。非常に漠とした話になってしまいますけれど も、もう「子どもを産めよ、育てよ」みたいな単純な話ではいかなくなっていて、産ま れてきたお子さん自身にもいろいろな異常が出てきている、というところまでをきちん と見て考えると、今度は子育てする側の親がもう既に、脳生理学者などに言わせるとい わゆる母性の発現が少ないなどというデータが出ています。そのようなところまで来て しまっていますので、かなり真剣に、身体の環境でなく周囲の環境、いわゆる自然環境 だったり都会環境だったりという環境、その中の汚染に関する問題とかを組み込んだ上 で話をしていかないと、少子化のみならず子どもの虐待など、ノーマルな子ならばそれ ほど泣かないのに、ADHDやLDのような子どもたちだと泣きが激しく、親が手に負え なくなる。そういう状態までが出てきているわけです。  そういうことをすべて含むと、ただ食べているものだけ何とかすればいいという問題 ではなく、周囲の環境すべてが問題で、その中で行動したときのストレス状況も違って きているという状況です。やはり、行動の安心と安全の確保というところも、これは全 く新しいことになってしまうので難しいと思いますが、できれば入れていただけるとう れしいと思います。以上です。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。事務局で何とかいまの趣旨を。 ○上田厚生科学課長  1頁目の「健康安全の確保」「健康安心の推進」「先端医療の実現」、3つの柱に4 つないし2つの中身のコンテンツが書いてあるわけです。これはあくまでも代表の事例 ということです。おっしゃる点については何ぶん厚生労働科学研究費は、むしろ課題数 が多いと言われておりますが、1,400ほどの課題がありますので、その中でそういう柱を 立てて吸収できる分野はあると思っています。担当当局に伝えて、11月に課題の選定も この会議でも行っていただくことになると思います。それまでにいまご指摘の点、いか に吸収できるかを検討させていただきたいと思います。 ○矢崎部会長  検討していただくということで、ある程度選択と集中という方向性を出さないといけ ませんね。そのほか、いかがでしょうか。 ○垣添委員  2頁の左の下に「先端医療の早期実現」が書いてあります。青い色2つをつなげる、 様々な先端科学技術の成果を1,2次予防・診断治療・創薬へということで。先ほど申 し上げたことが真ん中の矢印の上に「臨床研究等の体制整備」ということで書いてあ り、大変ありがたく思います。このことと臨床試験を進めていく上での体制整備のほか に、もう1つ「健康安心の推進」の真ん中辺にある、大規模介入試験等を実施し、根拠 に基づいた最適な予防・治療法を構築して、それを健康の増進・医療費適正化につなげ るとあります。厚生労働科学研究として非常に重要だと思いますが、大規模介入試験と いうのは研究費の額の面で非常に大きなことになる。体制整備と同時に、研究費のこと も是非考えていただければと思います。  例えば、ヘリカルCTで非常に早期の肺の病変を見出す。それが、肺がんの死亡につ ながるかどうかを検討しようとして、試算した研究者がおります。1万5,000人を11年 間フォローアップすると、それだけで最低に見積もっても24億円の研究費がかかる。そ うすると、ヘリカルCTは確かに肺の早期病変を見つけるけれども、死亡の減少につな がるかどうかを明らかにしようとするとそれだけのお金がかかる。大規模になり、研究 が長期化すればするほどお金がかかる。しかし、本当に大事な研究はやはり狙いすまし て実現していかなければいけないだろう。体制整備と同時に、やはり研究費のことも是 非お考えいただければと思います。 ○矢崎部会長  そういう意味でも選択と集中というか、研究費ができるだけ広い範囲に行き渡らない といけないのですが、やはり大体その辺を重点的に行う。先ほど、事務局からお話があ ったのは重点分野をどうするかということについて、いままでの議論をまた反映させて いただければというように思っています。よろしくお願いします。 ○北村委員  3頁の「人材の育成」ですが、「人材の体系的な育成」とあります。これは非常に重 要な問題ですが、体系的育成というのはどういうことを踏まえてのことなのでしょう か。もしあれば説明をお願いします。新しい教育システム、大学、ナショナルセンター といったところでの連携とか、何か意図があるのでしょうか。 ○上田厚生科学課長  この点はもう少し議論されなければならないかと思っています。のちほど、黒川委員 にお願いした中長期の委員会の報告の中でも、その点が若干触れられています。例えば 研究を支える様々な統計学者、あるいはデータマネジメントを担当する方々とか、そう いうような基盤も必要であります。それから、それぞれのナショナルセンターなどがど のような形でこれに関与していくか、国の研究所がどう関与していくかというのも大事 です。さらに、こういう研究を担ってくれる若手をどのように養成するのか。これはの ちほど、若手にターゲットを絞った研究費の枠を作ろうではないかという議論もありま す。こういうものを複合的にやることによって、人材を育成していく必要があるのだろ うと思っています。  ただ、確かにこの部分は、どのようにして我々の厚生労働科学分野の人材を育成して いくか。あるいは、それを支える基盤をどのように形成するかについて、もう少し詳し い検討をされてもいいのではないかということであります。いくつかのアイデアという か、方向性についてはのちほど申し上げる黒川委員の委員会のほうで議論はされている ということで、のちほどご報告したいと思っています。 ○笹月委員  いまの件ですが、6つのナショナルセンターでは義務化された2年間の研修のあと、 どのように人材を育成するのかをワーキンググループで議論しているところです。ある いは、こういうように書かれた中に含まれてのことなのか、それとも全く別途、人材の 体系的な育成について議論する場を別に設けられるのか。その辺の考えの進め方という か、検討の進め方についてお教えいただければと思います。 ○上田厚生科学課長  やはり、科学技術を任う人材の育成についての検討はこの審議会でやったほうがいち ばんいいのだろうと思っています。もちろん、ナショナルセンターの中で議論がある程 度成熟すればそれをご披露していただいて、やっていただくのはいいと思いますが、こ の審議会が私どもの科学技術行政を進める上での唯一の重要な機関だと思っていますの で、是非、ここでご議論していただければと思っています。 ○長尾委員  2頁目の「先端医療の早期実現」ですが、これは多分国民にはいちばん分かり易いと ころだと思います。先ほど、臨床試験がネックだとありましたが、それも非常によく知 られているところです。医薬品は最終的には物ですので、人に使える品質などは早目に ルールを作っておくと非常にスムーズに行くのではないかという感じがします。  かつて、インターフェロンの実用化のときには産官連携でいろいろなルールを作って いった経緯もありますので、こういう面も官と民で一緒にやらないといけない。是非、 今後もそこを重点の1つにしていただければと思います。 ○中尾委員  先ほどから「体系的な人材育成」という話が出ています。私は大学におりますが、お そらく大学でもスタッフと研修医の間の層の充実、それからナショナルセンターでもレ ジデントに相当する方の待遇の改善というのは必須のように思えます。国立病院のシス テムに関しては、レジデントの方の環境は大学から見て、若手の医師を派遣する場合に 非常に改善されてきたと思います。ナショナルセンターのレジデントの待遇は、国立大 学における医員の待遇とともに最悪であると言わざるを得ない環境にまだあるのではな いか。この4月からどうなったかがわかりませんが、大学はまだ同じ状況の中で模索し ている。おそらく、ナショナルセンターでの人材育成のシステムの改善というのはかな り急務ではないかというように感じます。 ○北村委員  現状は矢崎部会長のご努力もあって、初期研修の必須化が実現している。しかし、ナ ショナルセンターのレジデントになると2年目の人の研修の給料より下がると。学年は 上だけれども、それより低いというのが現状なのです。これを年齢とともに少し上げて いくということになると、数を減らして手厚くやるか、あるいは一人ひとりの総額枠を 増やすかぐらいしかないわけです。その辺、レジデントの非常な不満も出てきているの が実状です。大学も同じですか。 ○中尾委員  同じです。人を派遣する場合でも、そういう条件が常に付いて回っています。やは り、初期研修は環境として少しずつ整ってきつつありますが、それを指導する層、その 上の世代がかつてのシステムの真中に取り残されてしまっている。そこの部分がかなり 重要な人材育成のターゲットになるにもかかわらず、置いてけぼりになっているという のが現状ではないかと思っています。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。そろそろ時間もまいりましたので、一応「科学技術 研究推進の基本的考え方」については、いま委員の方々にご議論いただいた内容を少し 加味して、6月中旬の最終的なヒアリングに向けて活かしていただければ大変ありがた いと思います。よろしくお願いしたいと思います。  来年度の資源配分方針については、いつごろ決まるのでしょうか。6月中旬にヒアリ ングがあって、すぐ決まってしまうのでしょうか。 ○上田厚生科学課長  冒頭申し上げましたが、この25日にまず各省から考え方を示します。その上で総合科 学技術会議で、6月中旬に18年度の政府における資源配分の方針が決定される予定で す。それを受けて、私どものこの審議会においても、政府全体の資源配分の方針を踏ま えて、さらに18年度の方針の議論を進めていただければと考えているところです。次 回、この科学技術部会において、その内容についてご審議をいただければと考えていま す。 ○矢崎部会長  そうすると、6月中旬には大体フレームワークが示されることになるわけですね。あ りがとうございました。  次の議題ですが、黒川委員が若干遅れられている関係で3と4を続けてやって、2番 目の中長期はそのあとでということで、よろしくお願いします。 ○高山研究企画官  先に議題3、「国の研究開発評価に関する大綱的指針の改定について」ご報告させて いただきます。資料3−1が概要版、資料3−2が「国の研究開発評価に関する大綱的 指針」の内閣総理大臣決定の本文でございます。  研究開発評価については、この本文の1頁の中ほどにもありますが、まず「科学技術 基本計画」が平成8年に出来ました。その中で研究開発評価が重要である。それについ て、実施方法について全般に共通する指針を作りましょうということが出されました。 当初、平成9年8月に最初の「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方に ついての大綱的指針」が策定されました。その後、第2期の「科学技術基本計画」が平 成13年に策定されました。それに基づき、平成13年11月に「国の研究開発評価に関する 大綱的指針」というものが策定されて動いてきたわけです。  この中で総合科学技術会議において、横の1枚紙ですが、上にあるように大綱的指針 に基づき、例えば厚生労働省においては厚生労働省としての研究開発評価の指針を定 め、それに基づいて評価をし、必要に応じて総合科学技術会議などにその状況を報告し てきたわけです。そのような各省の状況や研究開発機関での独自の評価、あるいは大学 等での評価などが行われていますので、それについて総合科学技術会議のもとに評価の 専門委員会があり、そちらでフォローアップをされ、実施状況や進展状況、問題点、今 後の改善方法についてご議論いただきました。その結果を受けて、新たな大綱的指針が 今年の3月29日付、内閣総理大臣決定という形で示されています。  本当に大枠だけですが、ここに書かれているようにフォローアップについては省庁・ 研究開発機関別の評価の実施状況や全般的進展状況及び問題点などについて細かい調査 がなされ、それを総括的に議論されたところで1つのフォローアップを行う。それに基 づき、いまここに冊子が出ているものの原本となる13年11月の大綱的指針からどう変え ていくべきか、という議論が総合科学技術会議の専門委員会で何回かに分かれてなされ ました。そして、横表の右にありますように、見直しのところの大きな理念としては 「創造への挑戦を励まし成果を問う評価」や「世界水準の信頼できる評価」、「活用さ れ変革を促す評価」といった大きな理念のもとに、内容を充実、書き換え、加筆・修正 していこうということとともに、新たに「効果的・効率的な評価システムの運営」とい う観点で記載を入れたということでございます。それが新たに記述されたものが資料3 −2です。  これに基づき、今後、私ども厚生労働省やほかの省庁で作っている評価の指針、ある いは各研究開発機関等、大学等で行っている評価についての基本指針について、新たな 大綱指針に基づいて見直しを行い、こちらの方向性を踏まえて指針の改定を進めてい く。改定後にはその指針に基づいて評価を行っていく形の作業が求められることになり ます。  現在のところは、この指針が策定されましたというご報告です。事務局においては、 現在の指針についてはこの審議会においてもご議論いただき、そのご意見を踏まえた形 で平成14年8月27日に示していますので、それについて、どのような形になるか事務局 で精査させていただきたいという形で考えています。簡単ですが以上です。 ○矢崎部会長  いまの報告ですが、いかがでしょうか。見直しはフォローアップ結果のポイントとい うことで、冊子だと5頁がメインでしょうか。そのほかは大体あまり変わりないという ことでしょうか。 ○高山研究企画官  こちらがポイントです。文面と順番を入れ替えたりしているところもありますし、削 除されたところ等もありますので、概ねは部会長がおっしゃられた5頁のところでござ います。 ○矢崎部会長  「励ましの評価」を評価のポイントということではないかと思います。よろしいでし ょうか。どうもありがとうございました。その方向で指針を定めていくこととしたいと 思います。これも3月29日に一応、このバージョンは決定ということですか。 ○高山研究企画官  国の指針については、その直前に行われた総合科学技術会議本会議において最終的に は決定をいただき、それを内閣総理大臣に報告し、内閣総理大臣決定という形で、3月 29日付で出ております。したがって、これを受けて厚生労働科学研究の評価の指針につ いてどういう形で見直すかについて、事務局のほうで精査させていただきたいと思いま す。 ○矢崎部会長  よろしくお願いします。続いて「独立行政法人医薬基盤研究所の設立等について」よ ろしくお願いします。 ○高山研究企画官  資料4に基づいて「独立行政法人医薬基盤研究所の設立等について」ご報告したいと 思います。これにつきましては、1枚目に研究所の概要、2枚目に元となった組織から の移行がありますので、2枚目で少しご説明申し上げます。もともと医薬基盤研究所に ついては、いくつかの国立試験研究機関の組織を統合させていただき、その中から人員 や施設、いくつかの資源などを併せてつくったものです。もともとの母体となるのは国 立医薬品食品衛生研究所の大阪支所であり、これは平成16年から医薬基盤の研究を行う ような施設として施設整備も行われたものです。  それ以外に、国立医薬品食品衛生研究所の細胞バンク、薬用植物栽培試験場を移管 し、また国立感染症研究所からは遺伝子バンク、実験動物開発、医学実験用霊長類セン ターを移管しました。一方では、昔の医薬品機構といわれていたものがあります。平成 16年4月に(独)医薬品医療機器総合機構となり、その中で行ってきた研究開発振興業 務があります。基礎的研究、ベンチャー支援、オーファン支援などですが、その研究開 発振興業務を移管する形で平成17年4月1日付で発足しました。  その中においては、医薬品等の独自の基盤研究を行い、一方で医薬品等の研究開発振 興を行い、あるいは生物資源の研究を行うものです。1頁に施設の概要があります。非 公務員型の独立行政法人であり、職員数は約95名です。この研究所の活用ということ で、外部からいろいろな人材を規定に基づいて受け入れる予定です。一般会計の予算規 模、運営費交付金等は116億円程度です。その中には、先ほどの研究開発振興業務があ ります。その関係で外部への研究資金については90億円程度を予算上計上されていま す。  ここの位置づけですけれども、大学の基礎研究でも、企業の応用研究でもない基盤研 究という新たなカテゴリーの研究を創設しました。自ら研究を行う他、資金や研究資源 の安定供給で他の研究機関を支援する。場所は、大阪の彩都という所にあり、ライフサ イエンスの拠点にあり、そちらのほうで近隣の関係機関、あるいは関西圏、近畿圏地域 での産学公の連携をしていく、あるいは研究資金によって全国的な展開をするような機 関です。  このような機関ができたわけですけれども、これを作るに当たっては、いくつかの経 緯がありまして、それが3頁以降に出ております。国立試験研究機関の重点整備・再構 築がなされてきたわけです。平成7年1月に、厚生省の試験研究体制について、時代の 要請に迅速かつ的確に対応し、21世紀に向けて厚生科学研究の一層の推進を図るため、 試験研究機関の重点整備・再構築等の改革を実施することとし、「21世紀に向けた厚生 科学研究の総合的推進について」を策定した。  報告書本体については5頁以降に付けておりますが、ご説明は省略させていただきま す。その中で、順次国立研究機関の組織・再編を進めてきたわけです。その過程におい ては、政府の大きな行政改革等の流れがあり、特殊法人の整理・合理化や、行政改革の 会議で、独立行政法人制度の創設などがあり、それの対応もしました。  いくつかの機関については、組織の再編や組織体制の見直しを行い、現在のところ平 成17年4月で独立行政法人医薬基盤研究所を発足して、1つの所で大きな見直しは一段 落したところです。その概要については4頁に、重点整備・再構築の変遷の経緯図が出 ています。現在まで、報告書に従って進めてきた中で、まだ達成されていないものもあ りますので、引き続きそこは事務局で努力させていただきたいと考えております。以上 簡単ですがご報告申し上げます。 ○矢崎部会長  新たに発足する医薬基盤研究所の説明でしたがよろしいでしょうか。母体は、国立衛 生試験所大阪支所ですが、いくつかの組織で再編し、1つの大きな組織体をつくったと いうことです。これは、非公務員型になっていますが、国立健康・栄養研究所はどうな のでしたか。 ○高山研究企画官  国立健康・栄養研究所は、発足時点では公務員型です。ただし、昨年来新聞等にも出 ておりましたが、今度5年を迎えますので、その時点での見直しを行っていこうという 動きがあります。 ○矢崎部会長  医薬基盤研究所は、最初から非公務員型で出発するということですね。 ○上田厚生科学課長  開発業務、研究業務ということで、民間との共同、あるいは人的な交流ということを 考えると、非公務員型のほうが適正ではないかというご意見もあったと伺っておりまし て、非公務員型でスタートしたということです。 ○松谷統括技術審議官  補足させていただきます。独立行政法人医薬基盤研究所の設立についてはご説明した とおりです。これをもちまして、平成7年ですからちょうど10年前の当審議会、当時は 審議会の名称が違いましたが、そこでおまとめいただきました「21世紀に向けた厚生科 学研究の総合的推進について」の中で、国立試験研究機関の重点整備・再構築という形 で進めてきたものが、医薬基盤研究所の発足をもって一段落することになります。  4頁のいちばん左が、平成7年の最初のご議論のときにあった国立の各研究所です。 合計8研究所、1支所でした。これを、その右にあるような形で再構築しようという案 で当時おまとめいただいたものです。それが、最終的にどういう姿になったかというの がいちばん右です。国立の社会保障・人口問題研究所、保健医療科学院、独立行政法 人、これは公務員型ですが国立健康・栄養研究所、感染症研究所とそれに付属するハン セン病研究センター、医薬品食品衛生研究所、そして今回発足する独立行政法人医薬基 盤研究所という形で最終的に再構築が一段落したということです。  この間、当審議会の委員の方にいろいろご指導いただきましてありがとうございまし た。ご報告申し上げる次第でございます。 ○矢崎部会長  10年間にわたる再編が、最終場面を迎えたということです。黒川委員が見えましたの で、2番目の「今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会中間報 告について」に移ります。事務局から簡単に説明していただき、その後に黒川委員から コメントをいただきます。 ○上田厚生科学課長  資料2−1と資料2−2でご説明いたします。資料2−2が中間報告書の全体です。 資料2−1は、中間報告書の概要ということです。概要に沿ってご説明いたしますが、 重要なところについては、本文にも触れたいと思います。  概要ですが、1「はじめに」ということで基本的な認識が示されております。2「厚 生労働科学研究の現状」のところで概況として、平成16年度当初における厚生労働科学 研究費補助金の予算額は、約422億円、4分野18事業から構成されております。この事 業の特徴は、厚生労働省の科学技術関係経費(約1,290億円)の3分の1を占め、ライ フサイエンス分野における投資額としては、文部科学省の研究に次ぐ規模になっている ところです。平成15年度の実績では、総数1,454件の研究事業に対して助成をしていま す。また、目的志向型の研究課題を設定し、原則として公募し、評価委員会で採択を決 定する。このようなことが盛り込まれているわけです。  3「厚生労働科学研究をめぐる課題」ということでまとめておりますが、(1)は制 度全般に関する事項として、他の公的研究助成制度との違いが曖昧、例えば文部科学省 などの研究費の助成制度との違いが曖昧で、政策目的や研究費の性格が不明確ではない かというご指摘があるということです。  また、政府全体のライフサイエンス推進戦略の中での、厚生労働科学研究費の位置づ け、役割というものがやや不鮮明ではないか。国民の健康に関する課題や、国民生活の 安心・安全に関する課題について、厚生労働科学研究による着実な取り組みと課題の克 服がさらに必要ではないか。基礎研究のすそ野を確保し、研究の多様性を保っていくこ とが不可欠ではないか。このような課題やご指摘があります。  (2)研究システムに関する事項としては、研究の枠組みとして、分野・事業横断的 な重点課題への取り組みや研究者の育成について配慮が不十分であって、長期継続的研 究課題では資源配分が硬直化しているのではないか。研究の実施に際して政策に直結す る成果が得られる様な工夫が十分されていないので、そういう工夫が必要ではないか。 評価の如何にかかわらず、必要とされる研究を競争的資金の枠組みの中で実施すること はかえって問題があるかもしれない。このようなことも言われております。  概要の2頁の研究評価のあり方については、総合科学技術会議による厚生労働科学研 究の評価は、個別課題が担う政策的意義に対する評価が不十分であり、保健医療分野の 研究評価の在り方と、評価を踏まえた事業予算配分の在り方について整理することが必 要ではないかと書かれておりますが、この部分は重要ですので、本文の5頁をご覧くだ さい。  5頁の「研究評価のあり方」の2つ目と3つ目の○で、政府全体の研究事業評価とし て総合科学技術会議による各省の研究事業評価がある。この評価は、主として学術研究 としての視点から評価される傾向が強く、その反面、厚生労働科学研究において個別課 題が担う政策的意義が十分に評価され難い構造となっている。  次の○で、近年、この総合科学技術会議の評価が予算査定の大きな根拠とされる傾向 が強まっており、学術的トピックス、官民遣携などの社会的注目分野など、時流に乗っ た分野に資源が集中する傾向が強い。しかし、健康に関する課題の中には、長期の適切 かつ地道な取り組みの結果として、注目されなくなった分野も存在するため、注目分野 に資源集中させるような対応を継続すれば、政策的重要性にも関らず置き去りにされる 分野が生じてしまう懸念がある。このように、現実問題として学術的評価の結果だけを 根拠に事業を廃止することが困難であるという特質を持つ保健医療分野の研究課題につ いて、その研究評価のあり方と、評価を踏まえた事業予算配分の在り方をどう調整して いくのか、整理する必要が生じている。後ほど、これの解決策などが提案されておりま すが、こういう問題認識を持っているところです。  概要の2頁の上から2つ目の研究実施体制についての、様々な課題や問題点というこ とでは、早期執行の実現には、交付時期の遅延要因を具体的に改善することが必要であ る。従前、厚生労働科学研究費は、やや交付時期等が遅延する傾向がありましたが、こ れを改善することが必要ではないかという指摘です。  先進的・国家プロジェクト的な分野では、専門的視点と政策的視点の両方に立脚した 研究企画や研究事業管理を行うことが必要。長期的視点から将来の研究を担う研究者の 育成に結びつく対策が必要。多施設臨床研究を我が国において推進していくためのしく みが必要。このようなことが言われております。  (3)は透明性の確保です。これは、既に総合科学技術会議でも透明性、国民に分か り易いということがキーワードとして言われております。さらに、今回は個人情報保護 法なども出てきておりますので、そういうことも念頭に置いてこのような項目が立って おります。研究に対する国民の理解と支持の獲得には研究費運営の不透明感や否定的な イメージを払拭することが不可決である。  個々の研究における個人情報に対する格別の配慮が必要。事業全体として社会貢献に ついての対応を図ることが必要。また、健康問題のグローバル化に伴い、特にアジア諸 国との緊密な連携とこの分野の科学技術研究の振興のための国際的貢献が必要。このよ うなことが書かれております。  先ほど、多施設臨床研究等の議論がありましたので、本文の6頁の下の○を読ませて いただきます。わが国では、今日まで、大学、国・地方自治体及び民間の研究機関、医 師会等が広く相互に連携するための十分な下地がなく、多施設臨床研究を実施していく ための体制基盤が弱いことが指摘されており、このような研究を推進するしくみが求め られている。このような問題認識を書かせていただきました。  概要の2頁の4「今後の厚生労働科学研究の在り方」からが具体的な提言の部分にな ります。(1)が資源配分の基本方針です。厚生労働科学研究は、目的志向型研究とい う役割をより一層明確化し、国民の健康を守る政策に関連する研究支援に重点化してい くことが必要である。  実現すべき基本理念の下、国民に分かり易い政策目標を設定し、その達成に資する評 価可能な実現目標を具体的かつ明示的に掲げ推進することが不可欠。その際、基本理 念、政策目標、実現目標は、客観的で国民から見て納得感のあるものとなる様体系化す ることが必要。  基礎研究と臨床研究の橋渡しを行うトランスレーショナルリサーチや治験を引き続き 支援していくことが必要である。政策目標や実現目標は、時流にとらわれず、あくまで 政策的なニーズをベースに設定し、研究の進捗に応じた適時の見直しが重要。  政策へのロードマップ上必要と考えられる研究は国際的ベンチマーキングを実施した 上で支援し、政策的対応に直結する研究はその学術面での手法等を改善しながらでも遂 行すべき。基盤となる基礎研究のすそ野が十分に確保される様、厚生労働科学研究を含 む関係府省の研究事業の中で、政府全体でこれを推進していくべき。この部分でいくつ かポイントになるところがありますので、本文でご説明いたします。  本文の8頁、概要の2頁の3つ目の○のトランスレーショナルリサーチのところの表 現は、本文では8頁の上から3つ目の○の下から4、5行目のところで、とりわけ、成 果への貢献重視という観点から、基礎研究で得られた様々な成果をより安全かつ速やか に臨床現場等に展開するという、基礎研究と臨床(応用)研究の橋渡しを行うトランス レーショナルリサーチや治験の推進は、政策成果を得る上で決定的に重要な役割を担う 分野の研究であり、厚生労働科学研究はこれを引き続き支援していく必要がある。この ように結論づけております。  その下の○の最後の2行で、当面の戦略的な研究推進の指針とするため、研究の進捗 に応じた適時の見直しを行うべきであると書いております。  概要の3頁の1つ目の○の、先ほど申し上げました「基盤となる基礎研究のすそ野が 十分に確保される様、厚生労働科学研究を含む関係府省の研究事業の中で、政府全体で これを推進していくべき」と簡単に書かせていただいておりますが、実はここはかなり 議論がありました。その部分に本文が対応しますのは、9頁の上の段です。  9頁の1つ目の○の6行ほどですが、これは非常に議論がありました。「基礎的研究 を推進し、同時にその多様性を維持していくことは、すべての科学技術の発展において 共通かつ必須の重要事項としてこれに努めることが不可欠である。このため厚生労働科 学研究費の目的志向型研究という特質を維持しつつも、その基盤となる基礎研究のすそ 野が十分に確保される様、支援していく必要があることから、厚生労働科学研究を含む 関係府省の研究事業の中で、政府全体でこれを推進していくべきである」と、このよう な結論にさせていただいております。  概要の3頁で(2)研究システムの見直し、ということで研究の枠組みです。時間軸 上に目標を明示しつつ効果的・効率的な成果達成を確保する戦略的アプローチが実施で きる研究の枠組み、府省の責務として実施する研究の枠組み、研究者育成に重点をおい た枠組み、研究計画の審査に十分な時間をかけて実施する研究の成果が期待できるもの とする枠組みの創設が必要、という提言を行っております。  研究実施体制の強化ということで、資金交付時期の適正化のため、研究費交付審査事 務の見直しが必要。将来的に電子申請・審査体制の確立や事務の更なる簡素化を推進。  次の○はかなり重要です。外部機関への研究費配分事務の移管の検討・実施、いわゆ るFunding Agencyの創設と、ここに記載される厚生労働科学研究を担当するプログラム オフィサー、プログラムディレクター、データマネジメント担当者等の育成や配置が必 要。評価委員の確保と人材育成の観点から若い評価委員の積極的登用が必要。研究者を 育成する観点から評価結果のフィードバック等の配慮が必要。またアジア諸国との連携 を重視する観点から、アジアにおけるこの分野の研究者の養成への協力が必要というこ とも書いております。  (3)透名性・社会的貢献の重視では、推進事業の見直しや成果広報用資料のインタ ーネットホームページでの公開等により積極的に研究成果を発信し普及啓発活動を推進 することが必要。申請者に対する適正執行の啓蒙と、不正執行者への厳格な対処が重 要。研究における個人情報保護法や各倫理指針の遵守の推進が必要。社会全体への貢献 について事業全体で工夫することが不可欠である。このようなことを書いております。  この中長期の委員会の大きな目的の1つである、第3期の政府の科学技術基本計画へ の提言といいますか、アプローチといいますか、そういうものとして5「第3期科学技 術基本計画と厚生労働科学研究」という形でまとめております。中でも、特に(1)ラ イフサイエンス分野のさらなる振興と推進という形で、ライフサイエンス分野が今後も 政府の最重点分野に位置づけられることが不可欠であり、その統合的な政府全体の推進 戦略の策定において、厚生労働省の積極的参画と貢献が必要である。(2)ライフサイ エンス分野における府省連携ということで、この分野の府省連携の中で厚生労働省は積 極的役割を担うことが必要とまとめております。  (3)総合科学技術会議の研究事業評価について、少し提言的に強い表現で書かせて いただきました。総合科学技術会議は「各省と十分な意志疎通や調整を行うよう、評価 のあり方を見直すべき」ということでちょっと強い口調になっております。本文では12 頁の最初の○の下から4行「このような観点から、総合科学技術会議による各省の研究 事業評価については、仮に各研究事業の資源配分に直結するような活用を想定するので あれば、その評価のあり方や評価基準について、各省と十分な意志疎通や調整を行うよ う、見直すべきである」というように、少し強い言い方をさせていただきました。  概要の4頁の(4)公的研究機関と厚生労働科学研究のところも様々な議論がありま したが、ここの2行で「厚生労働科学研究制度と国立試験研究機関、国立高度専門医療 センター等の施設運営を総体として、引き続きさらに検討することが必要」ということ で、この部分についてはさらに検討させていただければと思っております。  本文では12頁の(4)公的研究機関と厚生労働科学研究の2つ目の○です。今後は大 学や他の研究機関との連携を図りながら、大規模臨床研究の実施、疾患データベースの 整備、健康危機管理等、政策目的を戦略的に推進するための研究拠点施設としてリーダ ーシップを発揮すべく、その機能の充実・強化が図られる必要がある。従って今後、厚 生労働科学研究という制度と国立試験研究機関、国立高度専門医療センター等の施設運 営を総体として効果的・効率的に運用するために、引き続きさらに検討することが必要 であるとまとめております。  概要の4頁で6「終わりに」ということで、3つ目の○に「さらにライフサイエンス 分野の研究は政府の最重点分野に位置づけられることが必要」ということを強調させて いただきました。  概要の5頁は別紙になっておりますが、本文の14頁でご説明いたします。研究の枠組 みの見直しということで考えておりますが、ここ全体としては「厚生労働科学研究の具 体的見直し案」ということで括っております。これは、できれば平成18年度の厚生労働 科学研究から、このような具体的見直しに取り組んでいきたい。あるいは、平成17年度 からできるものについては、こういう見直しをするということでいくつかのことを書い ております。  1「研究枠組みの見直し」では、従前の一般公募型と指定型、その下に表が付いてお りますが、いわゆる一般公募型と指定型に加えて、今後、戦略型、プロジェクト提案 型、若手育成型という3つの新しい研究類型を提案していただいております。従前の一 般公募型と指定型以外に、この3つを新たに作るということです。(3)の戦略型は、政 府として必要なエビデンスを得るために、研究のアウトカムを事前に明確にして、その アウトカムを達成できるような研究を進めていくものを戦略型、という形で位置づけた いということです。  15頁で(4)のプロジェクト提案型というのは、従前の公募型の研究では、ややもすれ ばその研究課題に合致していれば、それだけで採択されるということがあったわけで す。その場合に、必ずしも成果が十分約束されないということで、公募した課題の研究 結果を仮採択して、その研究者との対話を1年ぐらい重ね、あるいはこの間ごく一部の 研究費をここに支給することにより、研究計画などを十分練っていただいた上で、2年 目以降研究をスタートする。さらに、その場合にやや大型の研究費を配分するというや り方があってもいいのではないかということです。  (5)の若手育成型は、今後私どもの研究を担っていただくような若手研究者を育成す るということで、そういう所に重点的に配分できるように、年齢や研究の経験年数みた いなものを考慮し、若手に集中的に与えられるような枠を作ってはどうかと考えており ます。  15頁の下のほうの、2「研究実施体制の見直し」ですが、従前私どもの研究費はやや もすれば執行が遅いということもありましたので、一定の要件を満たす優良な申請者、 優良な課題がある場合には“ファーストトラック”を設定し、全体よりも早く予算執行 し、研究費を交付するということ。  (2)に対策本部の設置と書いてありますが、従来この連休前後から7月ごろまでに、 研究の申請書等が一斉に上がってくるものですからそれに対応するために、今後は本部 を設置して一気にそれを処理するといった本部制を敷いて、この申請事務に対応しては どうかということを書いております。  さらに、このような交付や採択にかかわる各種の取扱い規定、細則などの改正作業は 毎年行う必要があるのですが、これを前年度からかなり前倒しに行うことも提案がされ ております。  (2)研究体制の強化ということで、エフォート管理の徹底、その下に若手研究者育 成の充実ということで改めてここに書いております。年齢制限等により若手研究者のみ に応募資格を限定した研究の枠組みを設定する。人材育成の観点から各段階での評価結 果を逐次フィードバックする等、教育的配慮を付加的にやってみようということも書い ております。  最後に、研究基盤を支援する専門家育成の支援ということで、疫学/統計学の専門家 が研究協力者として参画することを奨励する。研究費の運営上、そのような場合の研究 費の上乗せする。あるいは、推進事業を活用することにより、疫学/統計学の専門家の 研究基盤を支える専門家を育成支援する仕組みを導入できないか検討する。今年度、来 年度に向けた、かなり具体的なご提案をいただいております。 ○矢崎部会長  厚生労働科学研究の在り方に関しては、いままでなかなか中長期的な戦略を立てて進 めることを少し欠いていたような状況ですが、このような方向をまとめていただきまし た。それだけではなく、直面している課題について、具体的な見直し案を最後に示され ております。これが、非常に大きなインパクトのあるものではないかと思います。黒川 委員も大変ご苦労されたと思いますが、追加していただくことがありましたらお願いい たします。 ○黒川委員  確かに研究者というか、これからライフの分野は非常に注目されており、政策として も大事な分野だと思います。特に、グローバルなイシューでは、WHOがわざわざヘル スはメジャー・イシューだということを、国連の2000年だったミレニアム・ディベロッ プメント・ゴールドも、貧困と健康はこれからいちばん大きな問題だということを言っ ていますので、そういう意味では非常に大事です。  厚生労働省的なライフの研究というのは、それなりに行政的な目標もある。そうなる と、長期的な印象のアウトカムスタディのような、戦略的な話をかなり明示しないと、 いままでのようにただ公募しているだけというわけにはいかないのではないかという話 が1つです。  そうはいっても、臨床の現場と、その基礎研究といわれるものをやっている人たち は、常に出口を見た基礎研究をしているわけですから、そういうのは必ずしも無視する 必要もない、という話のバランスをどうするかということではないかということです。  そういう長期的なことをやろうとすると、バイオスタティックスをやるとか、デザイ ンをするといった人材は非常に限られているというのは事実だと思います。そういう人 材が、どのように社会的なアカデミックなポジションにしろ、プロフェッショナルのキ ャリアとして認識されるようなことはすごく大事だと思いますので、その辺もこういう 研究には欠かせないということですので、是非育成してほしいというところが大きな目 玉かと思います。 ○矢崎部会長  先ほど、人材の体系的な育成という課題があり、それは先生の言われるようなワーク で弱いという領域の人材育成にも力を入れていかないといけないと思います。いまの報 告と、黒川委員のご発言に対して皆さんのご意見はいかがでしょうか。 ○今井委員  最後のところで、5つの研究類型の具体案が出て、特に後ろの3つが新しく付け加え られたというか、この3つは本当に大切なものだと思います。いわゆる基礎的なことを やっている先生たちの中には、おたくっぽくなってしまって、実利的なことが見えなか ったりいろいろなことがあるので、実際に戦略的な形でやることも必要だし、プロジェ クトを組んでやることも必要だと思います。  ちょっと気になったのは、プロジェクト提案型のものの公募した課題を、対話を重ね つつ1年かけて詳細な研究計画を審査・改善し、最終的な研究計画というところです。 この審査をする側に、改善する能力ありということですね。それから、最終的な研究計 画については、誰のものになるのか。結局、1年間かけて案を練っているうちに、よそ が持っていってしまう可能性もあるのではないかとか、かなりシビアなところでいうと の話なのですが、その辺はどうお考えなのですか。 ○黒川委員  これは1980年代から、アメリカやイギリスでもそうですけれども、公的な資金をある 程度投入し、アウトカムスタディを随分やりました。それはなぜかというと、そういう 5年とか6年のアウトカムを見ると、例えばサージャリーが良いとか悪いという話がど う出るのかというのは、結構ナショナルプロジェクトでやっていますから、具体的なそ れぞれの国の特徴ある医療制度の中で、どのぐらいそれが普及しているのか。それが、 どのようなプラットホームに乗せられるかという話はここでやりますけれども、公募し てしまうと日本の性格上、例えば同じようなプロジェクトなのだけれども、東大系と京 大系と阪大系が出てきたときに、なぜ一緒にやらないのかなどということはできないわ けです。  そういう話で、このプロジェクトを提案し、関係する学会の人たちや関係しそうな人 たち、例えば栄養士のグループなど、ものによってはうんとヒアリングしないとどこま でできるのかがわからないので、それで十分1年かけてデザインをして、どういうエン ドポイントを目標にして、誰が参加して、どのようにお金を付けるかという話もやった 上でフィージビリティをやらないと、実際に始まって、5年したときに成果が出るかと いうとたぶん出ないで挫折してしまうだろうと思うのです。  その辺を十分にやっておかないと、一旦予算を付けてしまうと行きっぱなしになっ て、最初から成果が出ないのがわかっているなというのはすごくまずいという話で、1 年間皆さんにヒアリングをしながら、実際にできるかどうかというところまで詰めてや っていくことを考えているのだと思います。 ○今井委員  それは非常によくわかるのですが、出した人がいます。これを皆でもんでいくうちに 改善するというときのリーダーシップを取る人がいます。それから、これが公開されて いる状況になっているときに、日本だけが見ているわけではありませんね。 ○黒川委員  そうです。 ○今井委員  その辺のところのセキュリティやリーダーシップの問題をお聞きします。 ○黒川委員  行政的にどういう問題があるかというと、例えばいま自殺が多い。ここ6年間で30% 増えています。自殺をどうやって予防しようかとなると、もちろん社会的な問題もある し、うつの問題があったときにうつをどうやってやるか。日本のソーシャルなストラク チャーだと、精神科の医者に通うということ自身がマイナスでしょう。実際にうつとい うのはどういう指標でやれるかを専門家に聞くと、いろいろ違うことを言う人がいる。 そういうわけで、この1年間というのは結構必要です。  実際にそれがインブリメントしたときに、どれだけそういうマンパワーがあるのかな というのを調査しておかないと、ただ公募すると、私もやりたい、私もやりたいと言っ て、さあ審査していかがでしょうといって3年ぐらいいってしまいますから、最初から 出ないのは見えているわけです。そういうことはやめたい、というのが大事な視点なの ではないかと思います。  そういう意味では、研究計画もヒアリングもしているし、そのプロセスも公開してい ますが、そういうことを是非やるようにするのが、厚生科学的に大事ではないか。それ を医療政策に反映させられますので、そういう科学的なエビデンスを出しながら、政策 に反映させることには、こういうプロセスが大事かなと。  1年間いろいろヒアリングして、これはいまのところ間違いではなくて無理だという ことであればやめればいいわけです。そういうプロセスを組まないと、一旦始まってし まうと、なかなかやめられないというのはすごくまずいのではないかという意味です。 具体的なイメージはなかなか出てこないかもしれません。 ○上田厚生科学課長  今井委員のご指摘の1つであります、オリジナリティとかセキュリティの問題はケー ス・バイ・ケースで事務局のほうでどうするか検討します。評価はピアレビューの形で やっていくことになると思うのですが、それはものによってはセキュリティをかけて公 開しないようにするというやり方もあるでしょう。もともと疫学研究的なものであれ ば、オープンになってもそれほどオリジナリティについては問題ないかもしれませんの で、それは運用の中で考えさせていただきます。 ○矢崎部会長  これは、非常に画期的なことだと思うのです。いま、エビデンスを求めるための大型 研究は、毎年5,000万円とか4,000万円で、3年とか5年のプロジェクトがあります。そ の場合にA、B、Cのグループが応募して、ヒアリングしてCがいちばんいいでしょう ということになると、そこにお金がポンと行くわけです。  そうした場合に、私が中間評価をやったときに、そこからプロトコールの検討、先生 が言われた1年間の仮契約のことが、本研究としてやられていて、中間評価のときにこ れから登録を始めますというのが結構あります。そういう意味で、まず仮契約をして、 先生が言われるようにA、B、Cの人たちが本当に集まって、いちばんベストのプロジ ェクトができるかどうか。  その間に、仮契約の間にプロトコールなどを練って、本試験のときには登録から研究 が開始できる。そういうスキームがこれによって可能になるのではないか。これは、極 めて画期的な提案ではないかと思います。 ○黒川委員  そのA、B、Cが出て、Cだと言ったときに、CもAもBも一緒になってプランが始 まって、1年でさあ、どういうことができるかというところまで来て、そこからエント リーを始めると別のお金がかかってくるわけです。例えば、外来の診察や看護師とかイ ンフォームドコンセントとか、そのマンパワーにどうやって予算を付けられるかという 話も入れてあげないと、結局うまくいかないというのは、そこはまずいのではないかと いうことです。  その間の、患者情報のセキュリティなどは、先ほどのトランスレーショナルリサーチ なりいろいろなことと同じなので、そのインフラをどうやって築くかというのはいま考 えてもらっています。それによって行政が肥大しないようにということだけは十分注意 しなさいと言ってあります。 ○笹月委員  1年かけて検討するということですが、それは1年と限らず流動的にしておかない と、必ず1年でスタートするというふうにするとまた問題が出てきます。いまはあるか どうか知りませんが、かつて文部科学省に検討班というのがありました。これは、年間 に会議費だけ100万円ぐらい出す検討班ですが、全くこれと趣旨は同じことだと思いま す。  必ずしも、1年検討したからといってすぐ立ち上がるかどうか、2年検討した、長い 場合には3年検討したというのもありますので、その辺は流動的に少し残しておいたほ うがいいのではないでしょうか。 ○岸委員  大変いろいろな角度から、今後の中長期的な在り方についてまとめられていて、本当 に素晴らしいと思いました。先ほど来、疫学とか統計学の専門家、その基盤が日本では ちょっと足りないということが出ておりました。私は、大学で公衆衛生学を教えていま すので、どちらかというと疫学/統計学のことが普段から大切だと思っています。実際 ご承知のように、アメリカでは30ぐらいの公衆衛生大学院の中で、疫学/統計の専門家 を教えて、あるいは育成しています。日本は根本的に立ち遅れているので、おそらく厚 生労働省から見ると、本当は文部科学省がちゃんと育成しなければいけないのに、それ で16頁の最後のところに書かれています。  私は、この突っ込んでいることの意味がわからないところがあります。「研究基盤を 支援する専門家育成の支援」で、質の高い研究成果が得られるように、疫学研究デザイ ンということだと思いますが、統計学の専門家が参画することを奨励する。それから上 乗せする。これは、いままでも少しはなさっていたことだと思います。  その下の、推進事業を活用することにより、疫学/統計学の専門家等の研究基盤を支 える専門家を育成支援する仕組みが導入できないか検討する。これは、具体的にどうい うことを考えているのでしょうか。 ○上田厚生科学課長  必要があれば事務局のほうから補足させますが、推進事業というのは、留学とか海外 から人を呼んで講演してもらう。あるいは、短期にリサーチレジデントというような形 で就職するとか、こういうものを支援する事業です。そういう人件費的なものがここに あるので、そういう方が一定期間専門的な教育や訓練を受けられるようなチャンスを与 えてはどうか、ということで書かせていただきました。 ○矢崎部会長  いまのポイントですが、疫学/統計学の解析する人材が極めて乏しいのではないかと いうことは、笹月委員が最初のときに言われて、資料1の絵に、そういう視点を文字で どこかに入れたほうがいいのではないかと。人材といいますか、疫学的なアプローチの 解析に基づいたということを入れられないかという議論がありました。事務局でよく考 えてやってくださいと言ったのですけれども。 ○黒川委員  「人材育成」だけでは不十分という意味ですか。 ○矢崎部会長  そうです。言葉としてどこかに入らないかということです。戦略としてのですか。 ○黒川委員  それは確かにそうなのだけれども、例えばこういうことをやる医師も、いままでは少 ないとか、臨床研究が少ないと言っているけれども、それは医師のコミュニティで評価 されないからということが1つあります。早くペーパーを出さなければ教授にしてやら ないなどと言われれば、しようがないからやっているのです。  もう1つはMPHみたいな人はどういう所にたくさんいるのか、医師の中にはMPH を取る人もたくさんいるのだけれども、厚生労働省の医系の技官はそういう人が多いで す。やるのはいいのだけれども、それを実際にこういう所に役に立てて活躍できる人材 という場所を増やしていかなければいけない。もちろん、厚生労働省でもMPHを持っ ている人がたくさんいるのは政策上も非常にいいのですけれども、実際に現場の仕事に かかわれる人たちをもっと増やさなければいけません。この人材育成は、そういう意味 で医師の世界でも同じことがあるし、そういう意味なのです。 ○北村委員  指定型というのが、ミッションオリエンテッドのプロジェクトを扱う上では非常に必 要で、現在でも特別研究事業としてあるのだと思います。承りますと、総合科学技術会 議のほうは、ほとんど指定というものはなくせ、公募型で統一して厚生労働科学研究費 はもちろん公募型が中心になる。これは、こういう形で認められたのか、それともこれ はいまから出す案なのですか。  例えば、第3次科学技術基本計画という中で、こういう指定型のプロジェクト研究費 を、厚生労働科学研究費として、大型にしていく、広げていくということが、現在の総 合科学技術会議の考え方からして承認され得ると考えているのですか。 ○上田厚生科学課長  こちらの戦略型、プロジェクト提案型、あるいは若手育成型は、いずれも最終的には 競争的資金に分類されるものだということです。指定型は従前からあるのですが、9割 以上が競争的資金になっているということです。これ以上指定型から振り変るものはな い。むしろ指定型をこれ以上減らすと、本来どうしてもやらなければいけないものがで きなくなることもあります。その辺は、総合科学技術会議において、できるだけ競争的 資金を増やせというご指導もあるのですが、これは限界ですということを申し上げてい るところです。 ○北村委員  それに対する非難とまではいかなくても、注文が書いてありましたが、是非頑張って いただきたいと思います。 ○中尾委員  かなり新しい試みがなされていることは大変いいと思います。厚生労働科学という部 門の研究というのは、いわゆる文部科学省とかほかの省庁のものとは違うという特徴を 再認識する必要があります。この項目はこれで大変いいのですけれども、その中に、さ らに厚生労働科学というところの縛りが反映されることがいちばん望ましいのではない か。そういう中で、トランスレーショナルリサーチなどもかなり重要視されており、大 変新しい方向性が出てきていると思います。  厚生労働科学としたら、この分野はクリニッシャン・サイエンティストという言葉が 一方では使われるわけです。サイエンティスト・クリニッシャンというか、そちらのほ うの先端医療の実用化というところがゴールである、というスタンスを明確にすべきで ある。それがないと、ほかのものとの差別化といいますか、特徴が生きないのではない かと思いますので、是非それぞれの項目の中で、厚生労働科学としての特徴が反映され ることを認識し、医療、治験を含めた実用化ができやすいような研究費ということを特 徴づける必要があると思います。 ○永井委員  戦略型というのは、どのぐらいの規模なのかよくわからないのですが、これは5年間 ぐらいの大規模研究ということですので、相当大きいものと考えてよろしいのでしょう か。もしそういうことであれば、コーディネーター、プロジェクトオフィサー、あるい は仮免許ということもこちらについても必要になってくると思います。 ○黒川委員  そこのところに十分な予算の配慮をしてあげないと、結局うまくいかないのです。看 護師にしてもCRCにしても医師にしても普段の業務プラスこれなどというのはとても できませんから、そういうことをある程度透明なプロセスで作り上げて公募してやるか らには、そこのところもちゃんと財政的な支援をしてあげなくてはいけない。そうする と、雇用の関係がどうなるかという話がまた出てきます。今度、いろいろな所が法人化 されてくると、雇用がそこでプロパーな雇用である必要はないわけだから、そういう話 がもうちょっと柔軟に、全体としてできるように考えていけばいいのではないかと考え ています。 ○上田厚生科学課長  戦略型と、プロジェクト提案型との違いというのは、戦略型というのは、むしろ行政 としてこういうアウトカムが是非欲しいと。プロジェクト提案型は、こういうことの研 究をしてもらいたいのだけれども、どういうアウトカムを出せますかということを尋ね て、研究者の側からアウトカムもこれまで以上に具体的に提示してもらう。アウトカム の求め方が国でやるのか、研究者側が提示するのかという違いがあります。そういうこ とで、国として是非欲しいということですから大型研究であるということになります。  大型になりますから、期間も5年ぐらいを想定していくということです。ちなみにこ れは黒川委員に昨年度、特に糖尿病とうつについて、この戦略研究をいかに進めるべき かということを、研究班で議論していただきました。その結果、予算も獲得できまし た。糖尿病の戦略研究に充てる金額としては、単年度8億1,000万円、これを大体5年 間程度を想定しています。  うつに対しては、単年度で2億円、これも5年程度ということで、それぞれ40億円と か10億円という研究費を投入することになっているところです。 ○黒川委員  そうなると、戦略型というのはある程度行政的にこれをやってほしいと言ったとき に、私たちがやっているのは、私たちができるわけないから、そのフレームはどうやる かという話になると、糖尿病と決めるのは私たちが決めるのではなくて行政的な判断だ と思うのです。そうすると、糖尿病学会、糖尿病団体、看護師の会、栄養士の会、医師 会とかいろいろな人たちからヒアリングして、1年間猛烈に時間がかかりました。  私たちの研究班の研究費などというのは、それを入れて500〜600万円です。やる人た ちはものすごいお金が出るのだけれども、きちんとできるように全部ヒアリングをし て、いまのプラクティスでどのぐらいができるかという話を随分聞いているわけです。 外国の分献と比べると、日本とは何が違うかという話になります。今度3つ出すと思う のだけれども、1つは、いまの糖尿病の患者というのは、ほとんどが開業している先生 が診ているのが普通です。ヒアリングするといろいろなことがわかってきます。  その先生たちが、例えば糖尿病だと足の潰瘍が出ます。1年に1万2,000人ぐらい出 るらしいです。そうすると、普段から足を診ていますかというと、必ずしも診ていない かもしれない。そうなると、そういう診療のパターンを、これをやることによって向上 していくというデザインを入れておくと、みんながそのようになっていくという話を入 れる必要もあるかなと。  アメリカやイギリスでは結構やっていますから、それで全然違った3つのプロジェク トだけれども、糖尿病の違ったフェーズをやっていくのがいいのではないかという話 が、糖尿病の先生方だけではなくて、医師会の先生も、看護師の会とか栄養士の会とか いろいろな所の意見をまとめた上で、これでどうでしょうかといって、そちらにやって いただく。そういう格好になると、5年すればどのぐらいのことができるだろうか、と いうことは皆さんの意見の交流をした上でやっていくことが大事なのではないでしょう か。  行政的には、戦略的に何をしたい、あるいはプロジェクトだったらこんなことをした らどうだというのを出したときに、1年ぐらい十分検討した上で、やれるかどうか判断 してということだと思うのです。  私の所も研究班をやらされたのはいいのだけれども、猛烈に時間を取りましたね。最 初、厚生科学課長とかと大体10何時間ブレーンストーミングして、ああじゃないこうじ ゃないやりました。それから、いろいろな団体のヒアリングをやって、そのためにもの すごい時間がかかりました。それで、皆さんのいろいろな意見を聞きながら作っていく ことは結構大変でした。  これからその先生方に作っていただくプロセスと、どうやって先生が先ほどおっしゃ ったようなマンパワーにどうやって付けていくかという話で、それをどこがやるかとい う話をいま検討しています。これがうまく成功すればいいかなと思っています。 ○笹月委員  指定研究と競争的資金ということですが、例えば日米医学協力の研究費が、いままで は委託費といいますか、わりと指定研究的だったのが、競争的資金になりました。しか しながら、あれは日本とアメリカの国同士で決めたプロジェクトですので、これはやら なければいけないわけです。一方、競争的資金にせよということで、競争的にします。 そうるすと、本当に競争的資金としての審査ができるように、本当に競争させることが できるのならいいのですけれども、一見指定研究的になってしまい、実が伴わないとい うことになるかも知れません。  競争的資金は結構だと思いますので、どこかに競争原理が入るようにしていただきた いと思います。例えばプロジェクト提案型みたいに、審査する側がいろいろなことをサ ジェストして、少し変更を要求できるとか、何かそういうふうにしないと、形だけ競争 的資金にしたけれども、実態は指定ですということで、やはり空しさがあると思いま す。  逆に、国のリーダーシップを担うための会議費を出しますという科学技術振興調整費 があって、それで一生懸命やって、いざやりましょうというときに、今度は研究費は競 争的資金で取りなさいと。そういうカテゴリーがないと、また今度は逆に困るのです。 ですから、そういう場合には指定型の枠をつくり、そこで競争させるとか、もう少しダ イナミックな、あるいは本当に実のある仕組みを考えていただくことが、個々の例を見 ますといくつかあるのではないかと思います。その点もよろしくお願いいたします。 ○黒川委員  それは、確かに現場におられる先生方には実際の問題の認識があるわけです。それを 全体にまとめて厚生労働省は政策的に予算を取る役割があるわけだから、そのときに実 際の現場に来たときに、私たちがある程度プロフェッショナルコミュニティとして、パ ブリックのファンドを使ってどういうことをするのか。社会に責任を持っているのだと いう意識があるかというとあまりないです。陳情して、予算を取ってくればありがたい と思ってお上を向いてしまうのだから、そこに問題があるということを言っているだけ の話です。  それを、できるだけフィードバックして、行政として政策に作って予算を取れるよう にしてあげるのが私たちの役割ではないかと思っています。ここでもそうだと思いま す。それで、最初に10何時間もブレーンストーミングやりました。そうすると、お互い に共通の理解が出てくるから、そういうものかなという話がお互いに理解できると、政 策を作る、予算が取れる。そうすると、実際に実行できる所の人たちも、そういうこと でできるのだという話に作っていくのが私たちの役割ではないかと思っています。 ○矢崎部会長  議論は尽きないと思いますが、時間がまいりましたので議論はここで終わらせていた だきます。黒川委員のご苦労で、研究類型の具体案が出て、これは非常に画期的なこと ではないかと思います。こういう研究の類型ができたときにファンディングエイジェン シー、その体制の整備、それからファンディングだけではなくて、いま黒川委員が言わ れたような、プロジェクトをサポートするような実施体制をどうするか。厚生科学研究 費というのは、本省の各課が研究費で持っているので、それをどこかに体制を作って、 それをいい方向で研究が円滑に進めるということも重要ではないかと思いますが、その 議論は時間がないのでできませんでしたが、それについては是非厚生科学課でよくお考 えいただけるとありがたいと思います。  今後の予定について、事務局からお願いいたします。 ○高山研究企画官  今後の予定については具体的に申し上げられませんけれども、6月ぐらいにいくつか 項目が挙がってくると思いますので、おそらく6月にお願いすることになると思いま す。別途日程調整させていただきますので、その際にはご協力方よろしくお願いいたし ます。 ○矢崎部会長  大変お忙しいところを活発なご議論いただきましてありがとうございました。これで 部会を終了させていただきます。                                     −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:志賀(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111    (直通)03-3595-2171