05/04/20 第2回「子どもの心の診療に携わる専門の医師の養成に関する検討会」議事録                    第2回        子どもの心の診療に携わる専門の医師の養成に関する検討会        日時:平成17年4月20日(水)15:30〜18:00        場所:中央合同庁舎5号館6階共用第8会議室 1.開会 ○事務局/母子保健課長補佐  定刻となりましたので、ただ今から第2回「子どもの心の診療に携わる専門の医師の 養成に関する検討会」を開催いたします。  開会にあたりまして、4月の人事異動により事務局担当の母子保健課長が苗村課長か ら佐藤課長に代わりましたので、佐藤課長から一言ごあいさつを申し上げます。 ○佐藤母子保健課長  4月1日より母子保健課長でまいりました佐藤でございます。本日は伍藤局長は出席 の予定でございますが、少々遅れているようでございまして、じきにまいると思いま す。どうぞよろしくお願いします。  冒頭にもお話をしましたように、私は4月の人事で替わりまして、今後ともよろしく お願いします。それで私から申し上げるまでもないのですが、今年度の初めての会議、 通算では第2回となるわけでございますが、今年度末、できれば18年の1月頃を目標 に報告書の形で取りまとめいただければと思っております。  それで第2回を開くにあたりまして、私も座長でございます柳澤先生と簡単に打ち合 わせをさせていただきました。最終的には「専門の医師の養成に関する短期的な研修の あり方」ということで報告書を取りまとめいただくことになろうかと思いますが、前提 条件として一つお願いをしたことがありました。それは、「子どもの心」という言葉自 体がお受取になる方によってさまざまなイメージとか概念で受け取っていらっしゃる方 がいらっしゃるので、おそらく「子どもの心」と言った場合にどういう疾病概念、どう いう状態が該当するのか。そして、それらは概念として学会レベルで既にもう共通のコ ンセンサスが得られているものなのか、そうじゃないのか。得られているとしたら、専 門医ベースではそういう概念が定着している。はたまた研修医レベルぐらいに降りてく るとまだ混乱していらっしゃる。そういうことを少し前提のような形で整理していただ くことになるのかなと思います。そういうこととセットになってそれぞれの分野での専 門の医師の養成に関するあり方がどうかということをご議論していただくのではないか と、そのように思っております。  少々長くなりましたが、そういうことを私どもも念頭においてご意見をお伺いしたい と思いますし、また今後の報告書の取りまとめにあたってもそういうことと平行してご 議論いただければというように考える次第であります。どうか今日は長時間ということ になりますが、どうかよろしくご審議のほどお願いします。 ○事務局/母子保健課長補佐  次に今回検討会委員の先生方でご所属先の異動がございました皆様方のご紹介をさせ ていただきたいと存じます。新しい検討会委員名簿につきましては、お手元の資料1の 別紙で、6頁としてお付けしてございます。  まず座長の柳澤委員のご所属が、国立成育医療センターから日本子ども家庭総合研究 所に替わりました。 ○柳澤座長  ただ今ご紹介いただきましたように、私は3月31日をもって国立成育医療センター を定年退職いたしました。4月1日からは母子愛育会の日本子ども家庭総合研究所に勤 めさせていただいております。今まで同様によろしくお願いします。  事務局/母子保健課長補佐 ありがとうございました。次に副座長の牛島委員のご所 属が、東京女子大学文理学部心理学科になりました。  牛島副座長 一昨年、東京慈恵医科大学を定年退職いたしました後、1年ほど遊びま したというわけではございませんが、クリニックその他で患者さんの相手をしておりま したが、4月1日付けをもって東京女子大の心理学科で教鞭をとることになりました。 引き続き子ども、それから精神科の患者さんについては診療を続けてまいりますので、 よろしくお願いします。 ○事務局/母子保健課長補佐  どうもありがとうございました。次に保科委員のご所属が、東京逓信病院から国際医 療福祉大学附属三田病院に替わりました。 ○保科委員  保科でございます。どういうわけかこの歳になってからまた大学に戻らなければいけ ないことになりました。できるだけ小児医療、こういう分野の子どもの心の診療につい てもがんばっていきたいと思っております。ただ、日本小児科医会副会長は継続してお りますので、これからも先生方にお世話になると思いますのでよろしくお願いします。 ○事務局/母子保健課長補佐  ありがとうございました。またこの度、国立成育医療センターから新たに奥山委員に 加わっていただきました。 ○奥山委員  国立成育医療センターこころの診療部の部長をしております奥山でございます。よろ しくお願いします。私はもともと大学に入るときから子どもの心の診療を目指したいと 思っておりました。なかなかそういうことを勉強する場所がございませんで、皆さんに 相談したところ、小児科をまず勉強せよということで小児科をやりました。そのうち本 当に子どもの心の診療をやりたいと言ったら、日本では学べる所が少ないからアメリカ に行けと言われて、アメリカに行かせていただいたという経緯がございます。それが 15年以上前の話でございます。日本に帰ってきまして、子どもの心の問題で受診され るお子様方の急増ということがありまして、本当に待ったなしの問題になっているにも 関わらず、なかなか仲間が増えていかない実状や、研修システムがなかなか整わないと いう苛立ちのようなものがございました。研修に関わって思ったのは、日本では皆さん 一生懸命に勉強されておられますが、私も含めて皆独学でやってきました。したがっ て、ある一分野に関しては非常に詳しい先生がおられるのですが、全体として、子ども の心の診療を行うのに、最低限ここを押さえましょうというもののトレーニングができ る場所が非常に少ないということを痛感しております。幸いに柳澤先生などにお考えい ただきまして、あいちの小児病院もそうですが、うちの国立成育医療センターでも小児 科半分、精神科半分ということでスタッフを揃えていただきましたところ、いろいろな 専門分野が重なりまして、かなり基礎がつくれる状態というのができるようになりまし た。私たちの時代をどうするかというよりは、次の世代を育てるということで、私たち の持っているノウハウをどうやったら良い形で次の世代に伝えていけるのかを考えなく てはいけないと思っております。  そしてもう一つ、ここにお集まりいただいている委員の方々のお顔を拝見させていた だくと、本当に小児科と精神科がタッグを組んで、子どものために対応しようという気 持ちが高まります。私たちの部だけでなく、こういう大きな中でも小児科と精神科の協 働ができるんだということをとても期待しております。以前には、こういう子どもの心 の問題を取り上げていくにあたって小児科と精神科のコミュニケーションが悪いという 問題がいろいろ言われたことがございますが、ぜひここでは力を合わせて、診る側のた めじゃなくて、悩んでいる子どものために皆で一致していろいろなことを考えていきた いというように思っています。よろしくお願いします。 ○事務局/母子保健課長補佐  ありがとうございました。最後に本日は日本小児科学会の別所委員がご欠席のため、 日本小児科学会から五十嵐委員にご出席をいただいております。 ○五十嵐委員  東京大学の小児科の五十嵐です。別所先生は所用がございまして、私は本日だけです が、出席させていただきます。よろしくお願いします。 ○事務局/母子保健課長補佐  どうもありがとうございました。事務局からは以上でございます。それでは座長の柳 澤先生、よろしくお願いします。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。それではさっそく議事を進めさせていただきます が、今回は事前に委員の先生方から資料をいろいろいただいております。まず事務局か ら資料の確認をお願いします。 ○事務局/母子保健課長補佐  はい、ではお手元にお配りしました資料につきまして順番に確認をさせていただきま す。  まず、一枚目に座席表がございまして、次に会議資料の内容でございますが、会議次 第がございます。まず1頁目が会議次第、それから資料の一覧を3頁目にお付けしてご ざいます。こちらに沿ってご確認させていただきます。  資料1としましては、検討会の開催要領、これが5頁です。それから先ほどご紹介が ございましたように、こちらは6頁の別紙が検討会委員名簿となっております。その 後、資料2としまして、検討会のスケジュール案、これが7頁でございます。次に本日 委員の先生方からご提供いただいております資料でございますが、資料の3が別所委員 からの日本小児科学会からのご提出資料、資料4が山内委員の日本精神神経学会ご提出 の資料、資料5が保科委員、日本小児科医会からのご提出資料、資料6が牛島委員、日 本児童青年精神医学会提出資料、資料7が冨田委員、日本小児心身医学会ご提出資料、 資料8が杉山委員、日本小児総合医療施設協議会提出資料、資料9が西田委員からの全 国児童青年精神科医療施設協議会からのご提出資料、資料10が吉村委員からの全国医 学部長病院長会議のご提出資料、そして別綴じで複数今回ちょうだいしましたために、 桃井委員からの日本小児神経学会のご提出資料を別に綴じさせていただいております。  それから最後に参考資料としまして、第1回検討会議事録、この議事録についてでご ざいますが、委員の先生方にご発言に誤りなどがないかをチェックをいただきまして、 その最終版となっております。こちらはまもなく厚生労働省のホームページにも掲載す る予定でございます。今回チェック前の未定稿議事録が一部出回っていたとのご指摘を 受けておりまして、未定稿段階の議事録につきましては申し訳ございませんがお取扱を ご注意いただきますようお願いします。本検討会でご配布させていただきますもの、ま た厚生労働省のホームページで掲載されたものが正式な議事録という扱いになっており ます。そして、また参考資料としまして「子ども・子育て応援プラン」、前回も白い表 紙のものをお配りしましたが、今回はカラーで印刷されたものができ上がりましたので 配布させていただきます。そして最後に発達障害者支援法の施行通知が出ておりますの で、こちらで以上でございます。もし資料がお手元にない場合はご用意しますので、お 知らせいただければと存じます。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。資料の方はお揃いだと思います。  前回の第1回の検討会では厚生労働省側から問題提起をしていただき、児童虐待、そ れから発達障害、その他摂食障害など思春期を含めて子どもの心の問題への対応が迫ら れているということが問題提起にありました。こういう子どもの心の領域に対応できる 専門家が現状では極度に不足しているという説明をいただきました。その説明の中に 「子ども・子育て応援プラン」には子どもの心の健康に関する研修を受けている小児科 ・精神科医の割合を今後5年間で100%にもっていくとか、それから「健やか親子 21」には2010年までにすべての児童相談所に児童精神科医を配置するとか、ま た、小児人口あたりの心の問題を扱える医師を増やす、そういうようなことが記されて いるという紹介がありました。  また、医師の養成について厚生労働省から三角形の図を示していただきながらお話を いただきました。逆三角形のイメージ図ですが、この検討会で議論の対象とすべき専門 の医師の範囲については3つの段階に分けて、初期対応を行うことが多い一般小児科、 精神科などの広い裾野の分野の医師、2番目として短期の研修を受けた精神科医あるい は小児科医、そして3番目として長期の専門的研修を受けた子どもの心の診療に専門的 に取り組む専門家、この3段階に分類されると、そのようなイメージというご説明をい ただいたわけです。それで、この検討会としてはこの逆三角形の全体を対象としてそれ ぞれのグループがどのような研修を必要とするのかということを検討する、それが求め られているというように理解しております。  それで、厚生労働省側からのご説明の後に多くの委員から子どもの心の診療について のご意見や認識が示されました。その代表的な意見としていくつか取り上げてみます と、心の問題をもった子どもたちがまず一般の小児科を受診する。しかし、小児科を受 診した後に紹介できる専門医療機関が極めて少ない。また医療機関の配置にも問題があ るというような意見がありました。それからまた、子どもの心の問題の領域には医師の 不足ということだけでなく、さらに医療経済の問題とか、医師の教育とか、研修制度の あり方、現在問題となっている医療の分野の共通する問題が集約されているという意見 もありました。この領域に関わらず小児医療体制自体が課題としてあるという意見もあ りました。それから、専門医が職人化しているというそういうお言葉もありましたが、 問題があまりにも大きすぎて専門医のみでは対応できないことが明白であって、幅広く 一般診療で対応でき、かつ地域のネットワークづくりも視野に入れた議論を行う必要が ある。そして、子どもの心の診療に関する全体的な医療レベルのボトムアップが必要で ある。専門の医師の養成を行うためには、研修を受けた医師が活躍する場の確保も含め ての議論が必要だと。そういうようなさまざまなご意見がありました。  以上のようないろいろな意見を踏まえて第1回の検討会において得られた共通の認識 として私なりにまとめてみますと、子どもの心の診療という分野は小児科医療、精神科 医療の2つの分野の接点にある。それはまたこれまで大変手薄であった分野であって、 まず小児科・精神科あるいはまた母子保健の関係者に幅広く子どもの心の問題に関心を 高めてもらう必要がある。そして、これは山内委員からいただいた意見ですが、私はま ったくその通りだと思いますが、出自は違っていても小児科医あるいは精神科医は子ど もの心を包括的な視点で考えるべきだという意見、そういうことが共通の認識として得 られたのではないかなというように思います。  少し時間をいただいて、前回の議論の内容をサマリーしてみました。大変時間をいた だいて恐縮でありましたが。それで、第2回目の本日と次回の第3回目は、委員の皆様 の所属されている学会や関係団体などがこの検討会の趣旨である「子どもの心の診療に 携わる専門の医師の養成」について、現状の認識と具体的にどのように取り組まれてい るのかということについて発表いただくということになっております。委員の数も大変 多い検討会ですから、事前に事務局に委員の先生方の都合などを確認した上で調整して いただいて、今回は9人の委員の先生方に、次回は6人の委員の先生方にご発表いただ くという予定にしております。今回発表いただくのは、別所委員の代理としての五十嵐 委員、山内委員、保科委員、桃井委員、牛島委員、冨田委員、杉山委員、西田委員、そ して吉村委員。それぞれの学会または関係する団体の立場でのご発表をいただきたいと 存じます。それぞれの先生方から資料を提出いただいております。次回の第3回には、 伯井委員、星加委員、森委員、齊藤委員、奥山委員、それにオブザーバーとして参加い ただいている文部科学省から発表をいただく予定です。こういう区分けは作為的なもの ではなく出席の都合というようなことでこのように分けたと聴いております。  それではさっそくでございますが、委員の皆様方から発表に入っていただきたいと存 じます。時間の関係上、お一人10分以内で代表されている学会ないし団体の子どもの 心の診療に関する問題認識、そして子どもの心の診療に携わる専門の医師の養成につい て、どのような取り組みをされているのかということをお話いただきたいと存じます。 全員の発表が終ってから全体的な意見交換をしたいと思っておりますが、発表ごとにど うしても聞いておきたいというか、内容を確認しておきたいとか、特に数字その他内容 の確認をしておきたいというようなことに関してはその都度ご質問いただきたいと存じ ます。  それでは最初に日本小児科学会の五十嵐委員からお願いします。 2.専門の医師の養成に関する関係者の取り組みの現状 I ○五十嵐委員/日本小児科学会  資料3と、後ほどお配りしました「小児科医の到達目標」というのがございますが、 これをごらんになっていただきたいと思います。  2つ質問を受け取りましたのでお答えしたいと思います。まず、学会組織などの子ど もの心の診療に携わる専門の医師の養成・研修に関する取組みということで、小児科学 会の取組みについてお話をいたします。小児科学会としては、小児科医が子どもの心の 診療ができるということを小児科医の到達目標の一つと考えております。この点につい ては小児科の初期研修としても重要ですが、専門医となるための卒後研修としても重要 な分野であると考えております。それで今日お配りしました資料は、実は平成元年に小 児科学会が作成した小児科医の到達目標のはじめの部分と、各論21のところに精神疾 患、心身医学、これは25頁、26頁から抜粋したものですが、実は平成14年の2月 にこれが改訂されまして、小児科専門医の教育目標として替わっておりますが、この2 1番目の精神医学・心身医学の内容はまったく今日お配りしたものと同じものでありま す。つまり、平成元年の時点で既に小児科学会として子どもの心の診療ができるという ことを非常に重要視しているということがおわかりになると思います。  お読みいただければ直ぐにご理解できると思いますが、まず一般目標として小児科医 は小児の精神科領域の主な疾患と心身症を診察・診断し、すべて自分たちで診るという わけではなくて、必要な場合には専門医に紹介できることを一般目標の第一に掲げてあ ります。それから2番目に、精神発達異常の早期診断ができる。それから身体症状の中 には精神的な問題によって起きることもある、というようなことが一般目標としてこう いうことを知ることが大事だというように言っております。それから行動目標について は、知識、その他診断技能、検査等いろいろ書いてありますが、こういうようなことを 具体的に経験すべきであるということをお示ししております。  学会としましては子どもの心の問題に特化した研修プログラムとか、あるいは認定制 度というものは持っておりません。しかし、現在小児科学会の中のいくつかの委員会に 跨って動いております子どもの心に関する検討事項をまとめて検討するために、子ども の心の問題に重点を置いた「次世代育成のあり方に関する検討委員会」というのを今、 立ち上げて動いているところです。まだ具体的な構成委員などについては決まっており ません。これが学会としての取組みであります。  次に、子どもの心の診療に携わる医師の養成についての意見、あるいは情報提供とい う点につき、発言いたします。学会としては特別なことはしておりません。既に多くの 大学病院で昔から心理の相談員を小児科に所属させていろいろな心の問題について対応 してきたと思います。私は東京大学ですが、30年前から外来に心理相談室がありまし て、専門の心理相談員が4名配属されております。数年前からそのうちの一人は小児科 の助手になっております。医師とこの心理相談員が協力して外来で心理相談に当たって いるわけですが、いわゆる精神疾患以外にも罹患患者の心理的な問題とか、それからご 両親のいろいろな心の問題とか、こういうものに対して入院している患者に対しても、 あるいは親御さんに対しても適切な対応をとるように努力しております。しかし、現実 は精神疾患というのはこれは小児科の外来ではなかなか診れないということで、私ども のところでは精神科の外来に専門の小児部というのがございまして、そちらでいわゆる 精神疾患の方を診ているという状況にあります。  後で文部科学省の方からもご報告があるかもしれませんが、東京大学では今年の4月 に医学部に「心の発達診断部」というのが1講座として正式に認可されました。今の状 況でなかなか新しい講座が認められるということは難しいですが、これは文部科学省の 特別なお計らいで認めていただいた次第です。発足したばかりですので、まだ教授、助 教授、講師の3人からなる小さな講座です。そこでは小児科医と精神科医とが参加し て、先ほどの奥山先生のお話にもありましたように、協力して子どもたちの心の発達と それに関わる問題を診察する医師を育成するということを目的にしているわけです。そ のほかに大学のミッションとしましては、教育関係者に心の発達の正常と異常とを教育 するプログラムをつくって、医師だけでなくコメディカル、あるいは学校の先生たちに も、場合によっては幼稚園の先生たちにも心の発達に関する知識を持っていただくよう な短期間のプログラムなども考えております。以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。ただ今の発表についてなにか内容的に確認しておき たいというようなご質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは順を 追って続けていきたいと思います。  次は、資料番号で言えば資料4ですが、山内委員に日本精神神経学会の立場でご報告 をお願いします。 ○山内委員/日本精神神経学会  山内です。よろしくお願いします。  日本精神神経学会は前回にもお話しましたように、いわゆる精神科関連の基本的な学 会ということで、この上にいろいろスペシャライズされたものがあります。日本精神神 経学会として、この問題にどう取組みしていくかということをお話する前に私は大学に おりますので、医師になるための卒前医学教育で子どもの心についてどの程度のことが 教えられ、卒業して精神科医になったときにどの程度子どもの心の問題について学習す るかといったことを少しお話申し上げて状況を認識していただければと思います。  21頁にサマリーがございますが、まず、卒前医学教育が子どもの心についてどの程 度のことを教えているかについてお話しします。各大学の精神科主任教授の集まりであ る担当者会議というのがありまして、そこでの調査によりますと、いわゆる児童精神医 学というのは全体の精神医学の講義の中で1コマ分ぐらい与えられています。また、国 家試験のガイドライン、いわゆるブループリント、これは卒前教育に影響力が大きいの ですが、その中で見ますと、幼児・小児・青年期の精神・心身医学的疾患及び成人の人 格障害・行動障害といったような項目で、知的障害、特異的発達障害等々が挙げられて おります。しかしこれは全体で計算しますと全問題の1%程度ということでありまし て、そういう意味ではサラッと勉強する程度に過ぎない。そういうようにして皆医者に なっていって自分の専門分野で診療しているということです。  次に卒後精神医学教育ではどうかということですが、今度は医師になった人たちが精 神科医になろうとして例えば大学、最近ではいろいろな研修病院でも勉強しますが、卒 後ではいったいどういうようになっているかを調査しますと各大学で児童・思春期等の 精神医学についての勉強会。あとは外来とか入院で患者さんを通して経験をする。ま た、教室の中に児童・思春期・青年期の診療グループ、あるいは研究グループがありま すとそういうところで勉強する機会が多いわけですが、いろいろな大学の精神医学教室 をみますと児童・思春期の研究グループはマイナーな感じがありまして、あまり大きな 部分は占めていない。ですから研修の場があったり、関連の施設があるときにはそこで の勉強ができますが、そうでないとさわりだけやって終ってしまう。ただ、精神科の中 では、精神保健福祉法の指定医が精神科専門医のような役割を果たしてきたのですが、 そこでは必ず申請症例の中に児童・思春期に関連した症例を出しなさいということが義 務付けられております。実際には年齢的にそういう年齢の人で統合失調症であってもい いというようなことにもなっておりますので、本来的な児童・思春期の精神疾患という ことには必ずしもなっていないというのが状況であります。  それでは3番目の日本精神神経学会はどうかということですが、日本精神神経学会は 23頁をごらんいただきますと、「精神医学と神経学の研究を進めて、会員相互間の連 絡提携を図り学術文化の発展に寄与する」ということが目的ですが、実際に平成17年 の1月末の会員数は、約11,000人近くとなっております。精神科医がそのうち97 %で、その中には小児精神科医と言われる方々も含まれております。ほとんどが精神科 医ということになります。もちろん精神科医も子どもの心に関する診療に当たっている 方がたくさんおります。24頁にありますように、精神神経学会は精神科領域のコアと なる学会であって、スペシャライズされた学会との連携を重視してサポートしたり推進 していくというように考えています。学会ではそこにありますように、学会総会、学術 集会などでは教育講演、研修等で必ず児童・思春期精神障害に関連したものがとりあげ られて挙がっておりますし、学会としても児童精神医学講座の新設といったようなこと をこの度も要望しております。25頁には、例えばどんなものが学術集会で取り上げら れたかというようなことが参考のために載せられております。  それで21頁に戻りますが、日本精神神経学会もいよいよ精神科専門医制度を施行す ることになったわけですが、その中で研修すべき内容というものがございます。そこで は児童・思春期症例を経験すべきであるということで、そこにあるような具体的な項目 を挙げてございます。ただ、下の方にサマリーが書いてあるように、医師に向けての子 どもの心の診療に関連する卒前教育はさわりだけの教育であって、卒後の精神科医に対 する教育は児童・思春期が視野に入っておりますが、精神医学全体からみると力点はそ れほど置かれていない。コアの学会としてはそれぞれの専門領域のサテライトの学会に お願いしており、コアの学会で専門の医師をどのように養成するかというのが問題にな っています。  最後に、私の経験を元にして、埼玉県で行ってきたことでご参考になればと思ってお 話しします。  実は埼玉県では平成3年に「埼玉児童思春期精神保健懇話会」というのをつくりまし た。最初は医師の連携を目的として小児科医とか精神科医と良い連携をとってこの方面 を推進すればといったようなことで発足させましたが、実際にはそういうことにはなり ませんでした。埼玉県は広いものですから4地区に分けて各地区でそれぞれ4回〜5回 の集まりを持って、年に1回だけ全県で集会をもってシンポジウムとか事例検討を行っ ています。これまで不登校、児童思春期の諸問題、児童虐待等々に至るいろいろなテー マを挙げました。それから会合のときには地域情報コーナーというものを設けまして、 各地区で活動しているグループの紹介や情報の提供をするというようなことをやってき ているわけです。参加者は毎回130名〜180名ですが、最も多いのが教職員、養護 教諭あるいは教諭です。それから相談員、そして医師、看護師、心理士、それから警察 関係、司法に亘る様々な方々が集まります。最初は医師の会と考えていましたが、実際 のニーズはそれを取り巻く方々にありまして、連携とかネットワーク、情報を共有でき る、どういうところに相談すればいいのかといったようなことに役立つという感想が寄 せられています。その地域のネットワークという意味でこの会が非常に良かった。それ で今回のこの検討会は「医師の養成」という問題に特化しているようですが、実際には そういうネットワークづくりのようなことも視野に入れないと良い形で動かないのでは ないかということも考えておりますので、ちょっとご参考までに申し上げました。以上 です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。それではただ今の精神神経学会としての発表に対し てのご質問はございますか。よろしいでしょうか。では次に進みます。  それでは保科委員お願いします。資料5でございます。 ○保科委員/日本小児科医会  社団法人 日本小児科医会は会の目的や何かはここに書いておりますが、この中で事 業として12の事業部がありまして、その中に「子どもの心対策部」というのを設けて 活動をしております。  それで、次の頁からは今まで第1回からずっとやってきた研修会を、これは前期2日 間、土日、後期2日間、土日という形でずっとやってきておりますので、プログラムだ けを見ると簡単そうですが、これは全部75分〜90分の講義を受けております。講義 を受ければいいという問題ではないですが、少なくとも小児科の卒前教育ではほどんど こういう細かなところは充実した講義を受けていないのが一般の小児科医であるという のが実情です。先ほど奥山先生のごあいさつにもあったように、そこをはじめからやり たいという方は非常に少ないのですが、小児を扱っているうちにだんだんおかしいなと いうことでそちらに興味をもってくる先生というのがいるわけです。こういう先生にプ ラスαの活動をしていただきたいというのが本当の意図でございます。  それでそこから先ずっとプログラムが出ておりまして、そのうちに17歳の問題が平 成11年から問題になりまして、では思春期ももっと重点的にということで思春期の臨 床講習会などをやり始めたということで続けております。そこらへんで大体36頁まで の内容はごらんいただければ結構でございます。  それで、これにプラスαで、現在はちょっと時間的な余裕とお金の余裕がなかったの で東京都内だけですが、子どもの心相談医という、だから専門医ではないのです。いわ ゆる小児科医であって、専門の先生に橋渡しする間の意味、一度相談はしなさいよと。 チェックできるところをつくっていくのが小児科医会の役目だと。そこから先の専門の 先生はやはり学会や何かで指導して、それを幅を広げてやっていただくのが私たちが希 望しているところでございます。それで37頁にも書いてありますが、そこらへんで見 ていただければわかりますし、それから東京都内の相談医に対してはカウンセリングの 実際をどういうようにしていくか、ある程度は診て自分のところで対応できそうならや ってみる、そういう形でカウンセリングの実際をやっております。それで実際に心理の 先生にロールプレイをやらせてもらったりしていますが、それは人数が限定されており まして、20人、30人と一度にはできませんから、10人1グループで、それを2グ ループでもう限度という形でやっております。  そういう形でやっておりまして、これからもはっきり言って小児科医と本当の専門の 医者というのはどこに区別をつけるのかというのは、そこに興味を持った先生が専門医 になっていくということ。一般の小児科医がどういうようにそれに近づいていって、よ り本当の専門の先生に橋渡しをしていくかというのが私たちの本来の義務であろうと考 えております。というのは、心療科でカウンセリングをやって一人に1時間掛かったの では、とてもではないけど外来はさばけない。特別な日程を組まなければいけなくな る。そういうのはきちんとそういう専門の先生にお願いすると、東京都内でも患者様を おくると大体早くて3ヶ月、遅いと半年、8ヶ月と。受けてくれる先生がいないという のが現実問題です。以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。保科委員のご発表に対して確認したい事項などござ いますか。よろしいでしょうか。  それでは次は日本小児神経学会というお立場で桃井委員、お願いします。資料は別綴 じになっております。 ○桃井委員/日本小児神経学会  資料が大変多いですので、簡潔なコンフォートの資料を用意したのですが、ご担当者 の引継ぎで十分に情報が伝わらなかったと思いまして、最近の資料が抜けております。 お手元の資料に沿いましてご説明します。  まず日本小児神経学会ですが、学会というよりは日本小児神経学会が認定する小児神 経科専門医の方をご説明したほうがよろしいと思いますので、学会の資料1と2は省か せていただきます。専門医に関しましては資料3〜7まででして、資料3に小児神経科 専門医制度規則というのがございます。平成3年からスタートしまして、小児神経認定 医を経て小児神経科専門医という状況になっておりまして、現在、日本専門医認定制機 構のサブスペシャリティの専門医になっております。約現在は1,000名おりますが、 1,000名の専門医は95%が小児科専門医を土台にしておりまして、小児科専門医 の上にプラス小児神経科サブスペシャリティとして小児神経科専門医であると。これの 5%は小児神経はいろいろな領域の先生方が必要ですので、そういう先生方が基盤の専 門医を持っておられます。したがいまして、大部分は小児科を専門医とし、さらに小児 神経科を専門医としているところでございます。  その全体の概略が資料4に書いておりますので、これはご覧いただければわかると思 いますが、どのような研修システムをとっているかと言いますと、日本専門医認定制機 構の調査の中でもかなり厳格なものが積み上がってまいりまして、資料5に、改訂した ばかりの資料をお付けしましたが、小児神経科専門医のための到達目標・研修項目をご 覧ください。これは一番最初に小児神経科専門医は何を診療するかということが書いて おりまして、これは第1回でも申し上げましたように、小児の神経に関する神経系の発 達及びその偏り、及びその障害、及び疾患に関する診療を専門とするというところでご ざいます。  次の頁の到達目標・研修項目に含まれる領域と内容の概説にありますように、総論は 省かせていただきまして、各論に関しましては神経系の疾患ですのでいろいろなものが 含まれますが、主に17番の精神神経疾患、あるいは脳血管障害などでもモヤモヤ病な どでは精神的な問題を多く発症したりしますので、いろいろな領域の神経疾患が精神神 経疾患のみならず対象になっております。精神神経疾患の17の大部分は発達障害でご ざいます。詳細はブルーの資料に載せておりますので省かせていただきますが、これを 受検してさらに講習するときにこのような冊子を元にチェックをしながら、何を研修し たかということをチェックしながら講習しているというのが現状でございます。  そして診療の実態としましては資料8でお示ししました。これは急遽学会の評議員に 調査しまして、約半数の返答でしたが、評議員が1週間発達障害及び心の診療に関わる 患者さんをどのぐらい診療しているかということを調査しました。評議員は管理職が大 部分ですので、例えば私のように週1回しか専門外来をしないというのも含まれており ますから、週の症例数が全体の会員、この小児神経科専門医の診療数を反映するわけで はまったくございません。おそらく評議員の先生方以外はもっと診療されていると思い ますが、そこにございますように発達障害を中心に不登校なども含めてこういう心の診 療を含むようなものがカバーされているという状況でございます。内容は省かせていた だきます。  そしてさらにこの資料8の7頁です。特徴は小児科に属していたり、小児科の中で中 心的な専門医として働く者、あるいは療育センターで働く者さまざまですが、臨床心理 士との診療連携及び言語聴覚士などとのコメディカルとの診療連携、さらに8頁で精神 科医の先生方との診療連携、その他学校との連携、これは発達障害の方が必要とします が、それと一般小児科との連携、そして低年齢の方を診察することが多いものですか ら、私ども小児科及び小児神経科専門医は乳幼児検診からあがってきた発達障害の方々 をまずキャッチしてそこで長年フォローするということが大変多いものですから、保育 園・幼稚園との連携等々の医療機関以外との連携をとりながら、主に発達障害を中心と する神経系の発達の問題の診療を続けているというのが現状でございます。児童相談所 との連携も大変必要でありますし、実際に小児神経科医で児童相談所に相談するものも 結構いるというのが現状でございます。  資料9は学会の論文の抜粋ですので省かせていただきます。  最後に資料10ですが、これは小児神経科専門医としてのこの検討委員会の課題に対 する考え方の概略を書かせていただきました。先生方の総括的・包括的お考えそのもの ですが、基本的には一番最初の表紙の(2)の図にありますように、従来の保険医療の 枠組みである身体疾患は内科・小児科医、精神疾患は精神科医という枠組みでなくて、 やはり小児の心身の保険医療体制をたてるのは小児科医、そのサブスペシャリティが小 児神経科専門医、そして児童精神科医というこういう枠組みの中で全体を心身をどうや って考えていくかという枠組みをぜひ考えながら、その研修体制を考える必要があると いうように考えております。  そして最後の頁ですが、資料10の5頁にあります小児は小さい乳児検診の頃からい ろいろ問題が発見されまして、大人になるまでフォローするのですが、やはり大きな医 療の目的は予防でございます。二次精神障害の予防をするためには、やはり基本的な乳 幼児検診から挙がってくるような発達障害の家庭医小児科医、そして二次検診は小児神 経科医のようなところで長年育児支援並びに保育園・幼稚園・学校などとの連携で二次 障害、社会不適応、行動障害などをいかに発症させないか。そして、それが我々小児科 専門医の範疇を超えたときにいかに児童精神科医の先生方とうまく連携をとっていくか というような、連携の医療構造が極めて必要であろうというように思います。この連携 の医療構造を構築するための研修をどうやってつくったらいいかということをこれから 考えてもらいたいというように思っております。以上でございます。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。ただ今の桃井委員のご発表に対してご質問はござい ますか。よろしいですか。  では、次は牛島委員からお願いします。 ○牛島委員/日本児童青年精神医学会  私の資料は39頁からです。最初に申し上げておかなければならないことは、現在の 我が国の子どもの精神医学というものは一般で考えられているような、つまりは今、社 会が児童精神医学に期待しているものとはかなりかけ離ているということです。と言い ますのは、精神医学が統合失調症、昔は精神分裂病と言われていた例の疾患を中心にい ろいろ発展してきたという面がございます。これはかなり最近まででございまして、私 が東京にまいりましたのは14年ほど前ですが、厚生省の精神保健福祉課の課長さん に、もっと子どもの問題に対する研究費を出してほしい、と強く迫ったことがありまし た。それがやっと8年かけて、やっと出されるようになった。それまではそういう統合 失調症その他の研究費しか出さないという状況にあったような気がしますね。なぜ、そ んなに子どもの問題が一般に受け入れられないのかというと、ひとつに児童精神医学の 自閉症と言われる子どもたちの病気を中心に発展したからではないかという気がしま す。これは統合失調症とは少々質が違うわけでして、大人の精神医学を少々勉強してい てもほとんど何の役にも立たないわけです。しかし、そういう一部の患者さんたちがい ることも事実です。その児童精神科医というのはほとんどそれに埋没していたという、 そういうところから少し乖離が起こってきていたということを考えておかなければなら ないような気がします。  日本児童精神医学会は1960年に発足し、今年で45回になりますが、自閉症を中 心に発展したことと、それからかつて登校拒否と言われた、いわゆる学校不適応の問題 がございますが、それについて若干の関与したこと。最近になってADHDと言われ る、いわゆる注意欠陥性障害を中心にした発達障害、そういうことが中心に進んできて いるわけです。おそらく、一般社会が我々に求めておられるのはもうちょっと違った視 点での問題ではないかという気がします。特に私は登校拒否であるとか、手首を切る自 傷行為、家庭内暴力といった、いわゆる精神発達、特に人格形成の問題を中心にして専 門にやってきている関係上、私はこの学会に入りました頃は何か違和感を感じたもので ございます。それだけに一般に受け入れ難いということもございますし、児童精神科医 の持っている知識や技術というのはそういう意味では特殊な領域に限られているもので すから、これがいざ現実的に人格障害その他が社会で問題になりますときに、普通の児 童精神科医がまず手がつけられない。これらに対応できるのは、児童の発達心理をやっ てきた分析医や臨床心理士にぐらいになる。そういうようなところが一つ大きな問題と してあると考えておかなければいけないような気がします。だから普通に講習会をやっ ておけばそれでいいかどうか危惧しているのですが、そこらあたりを少しご理解いただ ければなと思います。  したがいまして、今、児童青年精神医学会が中心に扱っている疾患と言いますと、自 閉症とADHDその他の発達障害、これはアスペルガーも含みますが、それから社会的 に大きな問題になっております児童虐待、それから一部摂食障害といったところが中心 になってくるかと思いますが、自傷行為とか家庭内暴力とか、いわゆる人格発達に関す る問題に関しては今一つという感じがあることを申し上げておきます。そこらあたりを 少し考えていかなければならないかと思います。そして、これらが、小児科の先生方が なさっていらっしゃるいわゆる臨床、それを通じてお持ちになっていらっしゃる児童観 というものとどこらあたりで結び付くかということも今後は議論していく必要があるよ うな気がします。  それで現実には児童青年精神学会はもう45年以上になりますのでそれなりの発展は しておりますし、それから学会その他で発表されるテーマというのはかなり幅広くなっ ていることも事実でございますので、まったく一部に偏っているというばかりではござ いません。児童青年精神医学会は専門医制度を敷いて10年以上になりますが、実際に は41頁にございます学会のメンバーの数2,773名のうち、精神科医は1,232 名、小児科医が182名、併せて1,400名ほどおりますが、専門の資格を取ってい るものはせいぜい100名を少々越しただけです。おそらく私が先ほどから申し上げて おります領域の部分とある程度なにか関連しているのではないかという気がしますが、 先ほど奥山委員からも話がございましたように、一人の精神科医がすべてを網羅するよ うなトレーニングを受けてきた、したがって専門医となればすべてに亘って対応できる とばかりも言えない面のあることも知っておかなければならないような気がします。  ただ、この学会の資格はお読みになればわかりますように、最近5年間に18歳以下 の患者さんを30症例を挙げ、そのうち3例だけ詳しい症例報告として出すことが義務 づけられています。最近、専門医制度の議論が盛んになり、先ほど日本小児精神神経科 会からお話がございましたように、到達目標、それから教育機関をどういうところにす るかとか、そういう細かい規則が提示されていますが、本学会はそこまで細かく規定し ていないというところがございます。  それから3番目に忘れてならないのは、子どもの情緒障害への対応が精神科医だけで はどうにもならないということでございます。学会としては教育に関する委員会その他 でいろいろな職種の人たちの卒後研修について図ってまいりました。例えば養護教員、 それから幼稚園、保育園で働く人たちの問題、それから医学部の学生にどれほどの児童 に関する教育がなされているかという調査をしたりしておりますが、非常に多岐に亘り ましてなかなか難しい問題が一つあります。それから臨床心理士となるとすぐに子ども の問題が対応できるというように考えがちですし、それから臨床心理士を雇っていると 言えば、なんかそういう心的な問題は全部やれているという空気がありますが、臨床心 理士は我々が調べてみると、子どもの診療の経験はまったく資格としては必要がないの です。そういうような子どもの問題に関しては比較的児童精神医学が培ってきたところ の知識と技術というのはあまり採用されていないということも一つ考慮に入れておかな ければならないと思います。  そういうようなことのために我々児童青年精神医学会では、なんとか大学医学部に総 合的に教育ができるように児童精神医学講座の設置を求めて学術会議その他を通じてい ろいろ働き掛けてまいりましたが、まず論議に乗らないまま終っているというのが実情 です。やはり社会のニーズが非常に大きくなっている中で、今、5つほど子どもの心の 問題に関する診療ないしは講座ができているわけでございます。名古屋大学、信州、横 浜、千葉、そして最近先ほど五十嵐先生からお話がございましたように、東京大学で新 しく開設された、それから九州大学でもできたというように伺っておりますが、少しず つそういうのができつつあることも報告しておかなければなりません。大体そういうこ とでございます。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。ただ今の牛島委員のご発表に対して確認しておくこ とはございますか。よろしいでしょうか。  それでは次は冨田委員、お願いします。 ○冨田委員/日本小児心身医学会  それでは資料7の56頁を見ていただきたいと思います。私たちの日本小児心身医学 会の設立は昭和58年でございますが、研修に関する試みと現状という形で少しまとめ させていただきました。  私たちは一般の小児科医が心身医学的、つまり心と身体を診なければいけないという 気持ちを非常に持っておりますので、最初から日本小児科学会の分科会として発足して おります。それで研修に関する委員会は3年ほどして昭和61年にこしらえまして、い わゆる研修内容とかガイドラインに関しての検討に入りました。そして学会が発足して 7年目のときから、それまで金曜・土曜と開いておりました学会に研修会を日曜日に加 えることになりました。これは現在まで1回を除き、毎年日曜日に研修会を開いてきま した。それから第16回の、平成10年から学会開催期間中、夕方に時間の制限なし に、研修を、ロールプレイをしたりとか種々の形式でそこに書いてあるようなことをし ております。次の頁の地図の下にも大体どういうことをやっているかということを書い ております。  それから、私たちは現在多施設の共同研究ということで、こういう問題はどこも施設 によって若干の差がございますので、そういうものをできるだけ共通の形で、疾患に対 しての考え方を共通にしていく、そしてできれば多くの先生方が全体として共通概念を もてるように小児科によく来る自立性調節障害、不登校、摂食障害、それとちょっと疾 患とは違いますがEBMという形で4部会が3年前から発足して、基本的にガイドライ ンを3年間でつくることをしております。  私たちのところでは専門医は設けておりません。団体自体が800名ぐらいの小さい ところですから、基本的には小児科学会の専門医であり、成人の日本心身医学会の専門 医を持つものを小児心身医学の専門医というように考えて、現在大体これが約30名ほ どおります。それから全体としての能力を上げていくというか、心身医療をする小児科 医を増やすという意味で横の地図がありますが、地方会を開きまして、ちょっと本学会 とは違う形で非常に入りやすく発表しやすいような形式にしています。そこから心身医 学に対する一般の先生方の啓発とかそういうようなことを考えて実行しています。  それからもう一度56頁に戻りますが、専門医養成への問題点として私個人の意見を 述べさせていただきたいと思います。専門医の養成と言いますと経済的ということはほ とんど問題にされないと思いますが、基本的に経済的な問題は避けて通れないのではな いかと思っております。ここにいらっしゃる先生は私を除いて皆さん大学の先生か公的 病院の先生です。ですからいただいている給料というのはどんな疾患を診ても一緒だと 思いますが、そういう先生方が子どもの心を診るのであれば来月から月給は半分か 1/3になるというように仮定された場合に、ここにいらっしゃる先生はそれでも続け られると思いますが、それぞれの先生方の下で働いている方全員がそうされるかどう か。つまり、私たちのような民間でやっておりますと、こういう分野の診療はまったく と言っていいほど採算性のないことで苦労しております。ですからこの会は専門医の研 修を考えるということでありますが、ぜひ少しは視野の中に経済を入れておいていただ かないと、いくら専門医を養成し、そういう施設をつくっても、やはり公的機関が赤字 覚悟でやるシステムである限り、発展性はないと思います。民間でも少しはできるとい うようなシステムにならないといけないと思います。  私たちのところは現実にこれまで8人ほど小児の心身医学の研修医を受け入れてきま した。そういう方は小児科学会の専門医をとられた後に私たちのところで3年間やって おられます。やはり理想的には小児科のある病院及び児童精神科のある病院で研修をす るのが一番良いと思っておりますが、それは現実にはないということでこれからこの委 員会でぜひ考えていただきたということです。  日本小児心身医学会としては、それなりに研修のことをこれまで考えており、具体的 な行動をしてきました。小さい学会ですが、地方会という形でいろいろ活動して、でき るだけボトムアップをやりたいと思っています。それからちょっと個人的になりました が、ぜひ経済的ということも、もちろんこれがメインにはならないと思いますが、少し 視野に入れておいていただきたいと思います。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。ただ今の冨田委員のご発表に対して確認事項等はご ざいますか。よろしいでしょうか。それでは先に進みます。  次は日本小児総合医療施設協議会から杉山委員、お願いします。 ○杉山委員/日本小児総合医療施設協議会  私が日本小児総合医療施設協議会の代表としてお話をしていいのかどうか非常に躊躇 されるのですが、私は総合医療施設のメンバーとして非常に一番新しい「あいち小児セ ンター」という子ども病院に勤めております。この日本小児総合医療施設というのは何 かというと、日本の子ども病院のグループです。このチーフは実は柳澤先生がやってい らっしゃるのですが、柳澤先生ご自身から伺った方がいいのかもしれません。  昭和40年に国立小児病院ができてから子ども専門病院というのが日本でポツポツと つくられてきました。この施設協議会は約35年目です。26施設の団体ですが、I型、 II型、III型と分けておりまして、I型というのは独立した子ども病院で、療養施設、乳 児院とか重身とかの割合が3割以下、II型というのは独立した子ども病院ですが、乳児 院とか重身が3割以上、III型というのは例えば総合病院の中に小児科病棟とNICを 持つ複数の小児科施設がある、それをIII型と言っています。26施設は大多数がI型な のですが、I型と言っても例えばこの中には発達障害専門の施設である愛知県コロニー も含まれております。  次の60、61頁が、施設のいろいろな詳しいデータです。不正確な部分があって自 分で調べ直したのですが、余計に不正確になっているかもしれません。主にインターネ ットで情報を取っています。心の診療の専門外来があるかという、心の診療に関する専 門病床があるか、病床数はいくらか、一番大事なデータがこの一覧の中の一番左のとこ ろに集まっています。これを集計化しますと、まず常勤医によって心の診療の専門外来 がある子ども病院は13施設です。それとプラス非常勤が2施設で、非常勤の専門外来 というのはちょっとカウントしない方がいいと思うので、約半分と考えられる。それか ら固有病床があるところは9施設です。いくつかの病棟に跨って固有病床と見なしてい るところもカウントして9病院ですから、1/3しか持っていません。子ども病院がこ の状況ということは、調べてみて私自身もびっくりしました。これはどういうことから 来ているかと言いますと、子ども病院は大赤字になるのです。1病床1千万円の赤字と いうのが大体の相場です。ですから200床ですと年間20億の赤字を出すのが日本の 子ども病院の相場なんですが、その中でも心の診療部門というのは赤字中の赤字で、威 張るわけではありませんが、仕事をすればするほど赤字になるという非常に困ったセク ションです。ですから子ども病院ですら手が出せないというのが現状ではないでしょう か。  脱線しますが、愛知県は病院事業庁という独立した県立病院だけのグループができま して、病院事業庁長が赤字を減らすためにずいぶん活躍されていて、先日も子ども病院 にいらしたんですが、心の診療は非常にニードが高いセクションで、外来の待機をたく さん抱えていて、病棟の入院患者の待機も抱えていると申し上げましたら、ニードがい くらあっても不採算部門は要らないとおっしゃいました。この不採算部門ということを 改善しない限りはたぶんこの状況というのは変わらないだろうと。  それから2番目が層の薄さです。全国の児童相談所に児童精神科医を配置するという プランニングがありますが、児童精神科医を配置できるそれだけの児童精神科医の数が いるのかと。多分、いません。例えば今日この会の中で言うと、児童青年精神医学会、 それから今日は星加先生はいらっしゃいませんが、日本小児精神神経学会、それから日 本小児心身医学会、これに日本思春期精神医学会、それから乳幼児の医学心理学会、こ の5団体で合同で最近学会をおりますが、この5学会の役員の8割が同じ人間です。私 はそのうちの3団体の役員と編集員をやっています。非常に層が薄いということです ね。それからこのことを考えてみますと、結論的には日本の医療全体がまだ後進性が残 っているということになってしまうと思いますが、一昨年に日中30周年医学会が、北 京であり、北京子ども病院に見学に行きました。しかし、そこは児童精神科がないので す。ないだろうなと思っていたのですが、やはりありませんでした。  私は子ども病院にある心の診療のセクションは、これから専門医の研修のためには非 常に重要な場所だと考えています。特に小児科サイドからも精神科サイドからも研修が できるということ。それから特殊外来とその病棟を持っているということ。それから指 導者がいるということ。そういうことから我々のシステムはこれからの専門医を育てて いく一つの中核としてがんばらなくてはいけないのかなというように考えています。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。日本小児総合医療施設協議会、私の名前も出ました が、今、杉山先生がおっしゃったことは我が意を得たという感じです。それでは次は西 田委員、お願いします。資料番号は9です。 ○西田委員/全国児童青年精神科医療施設協議会  資料番号9で、63頁からです。全国児童青年精神科医療施設協議会、全児協と略し ますが、その内容を説明します。  そもそもこの協議会が始まったのは、児童精神科医療施設が試行錯誤で入院治療に取 り組んでいる中、研修会を開こうとあすなろ学園から呼びかけて1971年に初めて第 1回の研修会を三重県で持ったことからで、そのときには6施設でした。それから毎年 1回、今年で35回の研修会が行われています。会則というのは63頁に書いてありま すのでご参照ください。  資料の66頁に今日本の中にある児童青年精神科医療施設を地図で示してあります。 そこの協議会が行った研修会が来年で36回なのですが、このようにテーマを選んでや っています。そのテーマの選び方は児童青年精神科医療施設の場合は職種が協力してチ ーム医療を形成しないと子どもたちの入院治療は成立しませんので、その年に決めたテ ーマの沿って1年間それぞれの施設で職員がチーム医療を組んで、仮説と治療計画を立 てて実施して発表するという形態をとっています。テーマは読んでいただいたら本当に 子どもの生活に密着したようなテーマを選んでいるということがわかると思います。  それで次の資料はそれぞれの施設が今、現在どういうようなチーム医療体系とか組織 を持っているかというのが大体書いてありまして、74頁にそれを全部まとめまして、 1年間の外来の診断カテゴリー、年齢別、すべてここに網羅してあります。  それから75頁が入院している子どもたちの診断名と年齢別が書いてあります。それ で見ていただくとわかるように、すべての疾患の子どもたちが入院治療を受けていると いうような結果になっています。ここに入っている施設の条件は、子ども専門の入院病 棟を持っていることと、必ず義務教育を保障しているということが条件になっていま す。今、正会員は15ヶ所で、オブザーバー施設が7ヶ所です。最近の心の診療のニー ズを踏まえて3施設くらい入会希望をされています。長い間正会員施設10ヶ所でした が、最近増えているという現状があります。  会員数は463名です。総入院病床は16施設を総合しますと792床あります。そ の中で児童精神科医は76名、看護師が206名、保育士が32名、心理士46名、教 諭が37名、PSWが11名、指導員7名です。職員は児童精神科の最前線で働いてい るというアイデンティティを持っていると思います。それぞれの地域で子どもの心と発 達の問題の最後の砦になるべく期待されている施設でして、外来、入院、地域との連携 が診療の大きな柱になっています。  日々、学校や保育園、幼稚園との協力、さらに養護施設や自立支援施設との協働が診 療に必要となりますが、先ほど、おっしゃったように、それは保険点数でカバーされて いるのはごく僅かでして、学校の先生と1時間話しても親が参加しないとゼロなので す。あすなろ学園は年間3億5千万ぐらいの赤字です。小児科医が勤めてくれて小児特 別加算をとって1億3千万ぐらいの売上アップをして褒められたのですが、保険点数が 上がらない限りはとても増えていくような状況ではありません。しかし、子どもを取り 巻く現状は入院施設をもって子どもたちの心のケア、しかも収容施設ではなくて治療機 関としての役割を担う病院・病棟が必要となっています。  それで、そういうところに働いている医者に求められることは、コーディネーター的 ないろいろな職種をまとめるような役割を求められますし、発達と情緒、精神医学的な 知識も要求されますし、それから長い経過をフォローする、短期間の治療ではなくて子 どもたちの育ちに沿って長い経過をフォローするような役割も求められています。そう いう教育体制というのはまだまだ十分にはなくて、それぞれが独学と経験と試行錯誤を 重ねながらやっている現実があると思います。齊藤先生なんかも同じで、協議会のメン バーとして苦労されておられると思います。以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。今のご発表に関して何かご質問はございますか。よ ろしいでしょうか。  それでは今日の発表の最後になりますが、吉村委員からお願いします。 ○吉村委員/全国医学部長病院協会  ご発表をお聞きしまして、山内委員、牛島委員、西田委員と重複することがあるかと 思います。全国医学部長病院協会、全国80大学の国公立私立のすべての大学の医学部 長と病院長をまとめております。それで11の分科会を持ちまして、委員もたくさんい て、いろいろな検討をいたしております。その中で資料の81頁をお開きください。ま ず精神神経科のカリキュラムですが、これは2003年のカリキュラム、実は総合カリ キュラムがございましたので、61大学の精神神経科の講義時間が平均35.2時間、 コマ数でいきますと22コマ、1コマ90分。それから実習は39の大学で、1〜2週 間、3週間というのは2つぐらい。ただ、今、ご案内がありましたように、大学の中で 小児のそういう精神科の外来を持つところはほとんどないということで、ほとんど実施 がなされていないというのが実情でございます。  それから2番目に、実はこれは私の北里大学の佐藤助教授がアンケートを、日本児童 青年精神医学会でアンケートいたしまして、ご了解を得まして後で資料を付けておりま すが、これは74大学の精神科からの回答で、やはり講義時間が31.5時間で、平均 21コマ、少ないところは11コマ、最大が45コマということで非常にバラ付きがあ るということです。その中の児童の精神神経医学の講義は大体平均3.7時間で、下の ( )に書いてございますようにゼロというところもございます。1コマが20校、2 コマ21校、3コマ15校、このようになっております。それから教育スタッフは1名 のところが47%、2名が19校、また「いない」というところも19校、25.7% ということでございます。  82頁ですが、非常勤の方がおられるというのが33校。それから講義の内容です が、精神科の方では自閉症、多動障害、精神性食欲不振症、これにつきましては1校を 除いてすべて講義されています。ただ、夜尿症とか、チックとか、小児虐待ということ について触れない大学がほとんどで、メンタルヘルスについてはほとんど触れないとい うことです。それから発達障害についても触れていないところがあるということです。  一方、小児科の方から71大学から回答があったところですが、児童精神医学の講義 は大体平均で1.47コマで、ゼロというところもあります。1コマが15校、2コマ が12校ということでございます。それで講義の内容は、先ほどの精神科と非常にダブ っているんですが、自閉症、多動性障害、精神性食欲不振症、そのほかに小児科の方で は少し幅広く夜尿症とか、チックとか、不登校とか広く触れております。教員も常勤の 小児科の先生が、児童精神の専門家の方が32%、常勤または非常勤の小児精神科の先 生が教育を担当しているところが6校ぐらいあります。まったくいないところも17校 ほどあります。  それから3番目は御承知のように、医学教育モデル・コア・カリキュラムと言いまし て、この教育内容に沿って最低限の講義を行うことが決められておりますが、ずっと次 の83頁を見てみますと、精神科の到達目標として下の方の16と17ですが、精神遅 滞障害と広汎性発達障害、それと他動性障害と行為障害、これだけは少なくとも概説で きなければいけない。それと先ほどございましたが、国家試験のブループリントを見て みますと、次の84頁ですが、各論の中で、下の方になりますが、知的障害、特異的発 達障害、広汎性発達障害、多動性障害というものは大体5%ぐらいが、精神科医学の中 の5%程度が国家試験に出るということです。ちなみに、去年は自閉症の問題、それと 精神的摂食障害にも出ております。350問ですから、大体1%程度になります。  それから85頁に簡単にまとめさせていただきましたが、大学教育における問題点で すが、大体20〜40時間の講義、30コマ程度で1〜2週間の実習が行われておりま すが、この実習はほとんどの大学で小児の診療はやっておりませんので、ほとんど入っ ていないということでございます。それから専門家が非常に少ない。1/4の大学でい らっしゃらないと。それと3番目に、大学の中で小児の精神科の診療を行っているとこ ろはほとんど皆無に近いということです。それから、先ほどから話題に出ておりました が、非常に診療報酬が低くて、時間が掛かる。言葉を使わないコミュニケーション能力 のトレーニングが必要で、時間が掛かる。家族に対しても治療が必要で、倍ぐらい時間 が掛かる。それから実際にリハビリとかやりますと、保険適応外の高額の治療が行われ ている。それから入院設備がある神経施設が全国で8ヶ所程度である。それから疾患の 患者さんは大変多くて、専門医、特に大体3ヶ月とか半年は待たされるというようなこ とです。国家試験では精神科全体では5%ぐらい入っておりますが、その中のさらに4 %というようなことになっているということです。実際に診療する専門医を養成すると いうことも大事なのですが、やはり学生教育というか、研修レベルの教育する指導者の 養成とか、あるいは講座が新設されることが必要でございます。それからカリキュラム も充実したいと思いますが、これは精神科と小児科と統合したプログラムをぜひ各大学 の中でつくるということと、実習が行える施設と連携してやっていきたいと考えていま す。  最後に私の個人的な感想ですが、やはり素人目に子どもの心のケア、診療というと非 常に幅広いということで、いったいどの先生がどういうことを受け持っているかという ことが一般の方にもわかるようなネットワークというのをぜひつくっていただきたいと 思っております。以上でございます。 3.意見交換 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。以上で今日予定しました9名の委員の方々からそれ ぞれ限られた時間ですが発表いただきました。それで残された時間で全体的な意見交換 をしたいと思いますが、いかがでしょうか。なにかございますか。  最初にちょっと言わせていただくと、この検討会の表題が「子どもの心の診療に携わ る専門の医師の養成に関する検討会」と非常に長いわけですが、テーマとすべきは「子 どもの心の診療に携わる専門の医師」にあるわけで、それをもう少し縮めることができ ないか。また「児童精神科医」という言葉も、これは今までご発表の中にもたくさん出 てきましたし、それから「健やか親子21」とかそういうところにもそういう言葉が使 われている。しかし、今、ここで検討しようとしている専門の医師というのは、冒頭の 前回の議論のまとめのところでちょっと触れさせていただきましたが、一般の医師のボ トムアップから専門の医師の養成まで非常に幅広いものでございますので、全体を通じ てここで検討するいわゆる専門の医師を、「子どもの心の専門医」というように呼んだ らどうでしょうかということを提案させていただいて、それをここでの検討課題として いきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○吉村委員  すみません、言い忘れたことがあります。資料の最後にアンケートの結果を、90頁 の左の3番のところで、皆さんのご意見が具体的に載っております。右側のDの3、4 というところで、「研修や研修後勤務できる施設、関連領域のポストが必要である」、 それと「児童青年精神医学の専門家をこういうところに置けるようにすべきである」 と。まさしくこの検討会がこれに則ったものでございますので。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。今、吉村委員の発表の追加でしたが、ここで検討す る医師の全体を、「子どもの心の専門医」という言葉で呼びましょうと。その中にはい くつかの階層があるというようにさせていただきたいと存じます。  それはそれとして、どなたかご質問、またはご意見があればぜひお願いしたいと思い ますが。今日は6時まで予定しております。ただ残された時間は僅かでございますが。 ○奥山委員  西田先生にご質問なのですが、精神科の医療施設でいろいろな基準がございますの で、その基準のことを少し教えていただければありがたいなと思います。 ○西田委員  学会で児童青年の医療費のことを見たのですが、第一次自閉症施設は厚生労働省も心 配があったようですが、やっぱり自閉症の入院施設がないと、医療型のがないと自閉症 の人たちの強度行動障害に発展するような問題を防止することはできないと思います。 それについては例えば40床あると、それについて医師が何名、それから保育士さんが 何名、生活指導員が何名というような括りはあります。ただ、すごくアバウトになって います。それから、それが重度加算が来ますが、でも第一次自閉症施設が基本的には精 神科の医療に被りますので、必ず入院形態は精神保健福祉法に則らなければいけないと 思います。行動の制限とか拘束の問題がありますので、そういう部分では精神科医にも 網が掛かりますね。 ○奥山委員  先生が職種に関しての人数をお話しいただいた中で、保育士さんが結構病棟に入って おられると伺いましたが、自閉症の施設として保育士さんがいるのか、それともほかで も保育士さんというのは配置できるのでしょうか。 ○西田委員  それは第一次自閉症施設だから配置ができます。あとは小児科入院病棟に一人配置さ れますが、それぐらいしかありません。それが医療保育士さん。保育士さんが多いの は、結局第一次自閉症の施設だからです。それと生活指導員、そういう人たちがいない となかなか子どもたちの健康な育ちを保障することはできないと思います。杉山先生の ところは小児科だから、人数はそんなに多くないですか。 ○杉山委員  かなり無理をしていろいろ付けています。あいち小児センターの場合は小児科病棟な のですが、実は中に13床の閉鎖ユニットを置き、子どもの心の問題の治療ができるよ うな構造をつくっております。保育士さんは非常勤をたくさん雇うという形です。作業 療法士や理学療法士も活躍しています。保健医療の中でやってもらうような形をとって いろいろ工夫をしていますが。今、とても頭を悩ませているのは心理士のことで、臨床 心理の場合にむしろこういう子どもの心の問題ではニードが高いのですが、医療保険の 中でぜんぜんバックアップがないものですから。 ○柳澤座長  他にございますでしょうか。今日の発表は9人の方にご発表いただいて、あとは次回 は5名の方に、それで全体の発表というか、それぞれの団体からのご意見が全部出る と。その上でそれをベースにして今後の議論に発展させていくということになるわけで すから、ある意味で全体的な議論というのは次回以降になるわけですが。 ○山内委員  いろいろな場合のお話を伺って、まさに委員長が最初に言った逆三角形というところ に行き着くと思います。それで、小児科学会とか精神神経学会がもっとジェネラルな学 会なものですから、最初のプライマリーケアのところでどれだけ底上げして、そういう 問題を抱えた子どもたちが来たときにそれをディテクトできるかということに我々の学 会が、大学の卒前教育もそうですが、そういうところで底上げをどうやってしたらいい か、そういう問題がありますね。そこでキャッチしたら、その次の段階として専門医、 これはもうほかの児童をはじめとしていろいろな専門に特化して養成するというか、そ ういう学会があるわけですから、そういうところがどうやってそれを増やしていくか、 機能させていくかという問題がある。それからその先に施設とか病院というものはどう いう形であればうまくそれが受け皿になれるかというように、学会それぞれ今日お話を 伺って違った持ち味というか、役割を持っていると思います。だからそういう視点でこ の問題を、それぞれの場面をどういうように良くしていくかというようなことで考えら れるかなと思って今日はお話を伺いました。 ○柳澤座長  大変貴重なご意見をいただいたと思います。これからずっと続く議論としてはそのへ んのところを整理して話を進めていく必要があるのではないかと思います。他に、どう ぞ。 ○杉山委員  冨田先生にご質問させていただきたいのですが、先生のところは民間で唯一うまくい っていらっしゃるということですが、先生はどのような裏技を使って民間で採算性を確 保していらっしゃるのか、あるいはこれはまったく採算を確保しないでやっていらっし ゃるのか。保険点数といっても具体的にどういうようにすれば採算性というのが保障さ れてくるのか教えてください。 ○冨田委員  私のところは医療機関と研究所という形になっています。それで研究所の方で自費を もらっています。大体、自費は一人あたり4千円から5千円をいただいておりますか ら、来られた方はこれに保険の3割負担が加算されます、それから小児科ですから親御 さんに1時間、子どもに1時間、同時にやりますと2倍払うことになりますから、来ら れる方は1万円以上必要になります。ですから、1万円以上払える方という制限がある ので来られる層が限られてきます。それで公的機関が3年待ちとか半年待ちでも診ても らえないということですが、うちでは、ほぼ予約されれば1〜2週間後に診ることがで きます。  それから実際の保険診療では、小児特定疾患を、月1回だと710点をいただき、月 に3〜4回来られる方は、精神科の算定で行います。それから親御さんのカルテもつく ります。でも、それだけしてもはっきり申し上げて常勤の医師は私一人、それと研修医 が一人で、あとは全部非常勤です。ただし、医者は非常勤で小児科医が7名、精神科医 が1名、内科医が1名おります。それは趣味でやってくれる医者だから来てくれていま す。ですから、先ほど申し上げましたように医者の給料、患者さんから平均1万円近く もらいながらも、一般の公的機関にお勤めの医師のおそらく半分から1/3で成り立っ ています。あとは臨床心理士とか事務職には普通に給料を払っています。それでやっと トントンで行けてるというところです。 ○柳澤座長  皆さんは内心こういう問題に関しては避けては通れない、そういう思いは持っておら れるのかもしれませんが、この検討会としてそこに話が進んでいきますと、この検討会 としての目的が達せられるかどうか非常に危うくなりますので、意識はしながら検討会 としての議論は、「医師の養成」というところにできるだけ集中させていくようにこれ からは進めさせていただきたいと思っております。他に。 ○吉村委員  先ほど杉山先生が3つの学会で、小児心身医学会と小児精神神経学会、思春期何とか と3つ兼ねているとおっしゃったのですが、それはほとんどの方がオーバーラップして いると考えてよろしいのではないでしょうか。そうすると、なにか一緒にやるというよ うな、あるいはそれぞれ目的が違うのでしょうか。 ○杉山委員  3年前から5学会合同委員会というのがスタートしています。つい先日、3月に2回 目をやったばかりです。 ○桃井委員  全体の流れが私も最後はどういう形になるかということはまだイメージできていない のですが、小児の心の専門医という形でするのであれば、やはり国民の方も「専門医」 ということに非常に関心を呼んでおられますので、決して短期研修でそれを名乗るとい うような形になってはいけないと思います。もっと重大な問題だろうと思います。それ で今、いろいろ学会の先生方がおっしゃっていただいて、それぞれにいろいろご尽力さ れて研修体制や医師の養成などをされておられると思いますが、やはり今、既存の学会 でやっておられるような医師の養成などをどのようにこれから迅速にプッシュしていっ たらいいのか、そういうところが一つ大きな課題であろうかと思います。そうしません と、医師の養成以前にやはり指導員の養成ということが急務ですので、もちろん日本で 児童精神科医はもっともっと千の単位で必要だと私は思います。また、同時に二次検診 を正確に受け皿をする小児神経科医がもっと必要だろうと思います。そういう意味で、 各子どもの心にいろいろな側面から関わる学会の方々がそれぞれまだまだ足りない。ま だまだ専門医をこれからつくっていく上に、速度と内容がまだまだ足りない。私どもの ところはまだまだ足りないと思っておりますし、そういうところを迅速に検討して行動 予定をしっかり立てることがまず必要ではないかなと思います。そうしませんと、ボト ムアップするといってもプライマリーケアの方の研修をどれほどクオリファイされた方 がするのかということも、単に経験がありますだけでは国民は納得しませんので、やは りきちんと国民にわかりやすいクオリフィケーションというものが必要になろうかと思 います。そういう意味では学会では迅速にクオリフィケーションのシステムをつくるた めに行動予定をきちんと立てながら、それではその過程の中でどういうボトムアップす るためのどういう研修体制が可能であるかとか、指導員は何人ぐらい必要であるかとい うようなことを具体的に検討する必要があるのではないかと思います。 ○牛島委員  今の点についていくつか明確にするために質問したいと思います。一つは、西田先生 が出してくれた15施設に伴う全児協の専門の病棟というのがございますが、ここで例 えばレジレントというのが何名受け入れることができるのか。 ○西田委員  うちはそういう制度はなくて、ようするに県の常勤医として雇います。それで今、現 実にこの6〜7年は2〜3年のサイクルで若い先生が来て研修を受けて帰って行かれま す。その指導教官は今のところ私一人なので、お恥ずかしい限りで。だから本当に私個 人としては経験だけで教えている、もっと理論的なことも教える必要があると考えてい ますが、できておりません。ただ、子どもを実際に診て、入院も診て、外来もやる、地 域連携も含めてやると、ずいぶん若い人のレベルは上がります。しかし、もっと根本的 なことを考えてもらわなければと思います。 ○牛島委員  そうすると、先生のところは1〜2名ですか。そういう研修を何らかの形で受け入れ ることができるのは。 ○西田委員  もし研修医として受けるとしたら、やっぱり1〜2名でしょうね。 ○牛島委員  そうすると全国で15出して、30名ぐらいですか。 ○柳澤座長  今の先生のご質問に対しては、国立精神・神経センター、あるいは国立成育医療セン ター、それも大きな役割になると思います。 ○齊藤委員  全児協の事情もある程度わかっておりますのでお答えさせていただきますが、全児協 の正会員病院15のうち、正式な意味で研修医を受け入れるシステムを持っている病院 は多分2ヶ所だけだと思います。その2ヶ所は都立梅ヶ丘病院、もう一ヶ所は我々、国 立精神・神経センター国府台病院です。それで、我々のところで言いますと、年間、成 人部門もまとめて大体10人前後のレジデントを取りまして、そのうちの3〜4人が児 童希望者です。大体4人ぐらいなのですが、我々のところはせっかく大きな大人の一般 の精神科部門がありますので、特に小児科出身の先生方でかなり深く研修したいという 方に対しては、当初1年間ないし2年間の大人の研修をやっていただいた上で、児童の 方であと2〜3年研修する、そういうようなことを我々はやっております。あとの全児 協病院は正式な研修システムはなくて、今、西田先生がおっしゃったように常勤の枠で やっている状況にあります。 ○牛島委員  おそらく今度は日本精神神経学会が山内委員長を中心に専門医制度を発足しますの で、おそらくそれが基盤になるわけですね。その上に子どもの専門医を育てていくとい うことになると思います。その前に児童青年精神医学会は先ほど申し上げましたように 専門医制度を既に設けているのですが、どこを頼りにやっていたかというと全児協とか 専門のところを頼りにやっていたようなものです。だからいっこうに増えないし、その 他の全児協の現場でもきちんとした研修カリキュラムがあって、専門医は到達目標に向 かっていくというレベルではなかったわけですね。 ○齊藤委員  我々のところはプログラムをもってシステム的にやっております。 ○牛島委員  実は母子保健課に刺激されて、私は児童青年精神医学会が惰眠をむさぼっていたとい う感じがしてならないと思うのですが、それでなんとかそういう研修システムみたいな ものをつくらないと、逆三角形の一番下の部分がしっかりしないんじゃないかと思って います。 ○柳澤座長  ただ今、ご議論いただいているのは、この逆三角形の一番先のところに近いところの 養成だと思いますが、その点で奥山委員はどうですか。 ○奥山委員  次回に詳しくお話しようと思ってましたが、私たちのところは小児科と精神科が両方 力を合わせてという形ですね。少なくとも小児科の研修を終られているか、精神科の研 修を終られているか、どちらかの研修をきちんとなされた方をお引き受けして、3年間 のプログラムということで現在6名のレジデントの研修医の方々がいらっしゃいます。 今までは卒後3年目ぐらいの方から入れる形だったのですが、この先はやはり小児科を きちんと後期研修で受けるか、精神科の後期研修を受けた方をお引き受けしたいという ように考えております。その中で基本的に、共通で最低限知っておかなければならない 知識・技術に関しては、3年間の間で学んでいただくことになります。その上にご自身 の興味を乗せていただくということになります。それを基準にやっております。詳しく は次回にお話をさせていただきたいと思います。  それともう一つ別のことですが、今までのご議論の中で診療報酬の問題もございまし た。もう一点、周辺の問題として、精神保健福祉法の問題があります。私の方でも虐待 への対応をしておりますが。精神保健福祉法がかえってすごいバリアになってしまうこ とがあります。子どもの権利を守れないという事態が生じてきてしまうことすらあるわ けで、精神保健福祉法が本当に子どものことまでを考えてつくられているのかというこ とに疑問を持つ部分もございます。それから地域とのネットワークをどうするかといっ たような、子どもの心の診療者を育てるシステムの周辺にいろいろなことを考えなけれ ばいけないことが出てきているのかなと思いますので、ぜひ次回に、あるいはその次ま でに事務局の方で周辺の課題の整理をしていただいた方が議論が進みやすいのではない かなと思っております。 ○齊藤委員  精神保健福祉法の話が出たものですから、ぜひ精神科医の一人として発言しておきた いのですが、確かに現在の精神保健福祉法を児童に当てはめるときに不都合な部分も無 きにしも非ずで、これは改善を進めていかなければならない面も常にあるかと思いま す。しかし、精神保健福祉法の拠って立つところは、少なくとも日本の精神医療の歴史 の中でやはり倫理基準というものをきちんと持っていなければ、情熱だけで決めてしま うと後になって情熱のない人間が悪いことを始めるということが必ず生じる、だからご く当たり前の社会的常識の中で最低限の倫理基準を決めておくというところにありま す。これは少々不都合でもやはりなくてはならないものだと思います。情熱だけで、今 は燃え上がっていますが、その後にもっともっとこれが普及していったときに、裾野が 広がっていったときにいろいろな専門家たちを我々は抱えることになるだろうと思いま すので、そのときのことを考えれば、精神保健福祉法は少なくとも精神科医療の枠組み の中でやる医療である限りはきちんとあるべきだと思っています。 ○柳澤座長  私のような門外漢は理解できないところと言うか、今、精神保健福祉法が子どもに対 しては不都合な面があるというようにおっしゃったんですか。少し具体的にこういうこ とだというのを教えていただけますか。 ○杉山委員  例えば、虐待防止法と精神保健福祉法は別扱いになります。虐待防止法の場合は、子 どもの保護になります。それで医療保護入院をさせる場合に親の同意が必要となりま す。それは県によってその規定がばらばらで、県によっては虐待防止法が負けるので す。そうしますと、虐待の事実があっても親の同意がとれないから子どもの保護ができ ないという事態が、逆に精神保健福祉法であるからこそ生じてしまうということです。 ○奥山委員  一つは今、杉山先生がおっしゃったように、本当に行動の問題が激しくて入院が必要 な虐待を受けたお子さんを入院させたいと思うときも、親の許可がなければ入院させら れない。虐待している親が親権者であればそちらが優先されてしまうというところで非 常に大きな問題が出てくるのが一つです。もう一つは齊藤先生がおっしゃることをもう ちょっと広げて考えると、今、逆に精神保健福祉法で縛られない病棟に関しては何もな いのです。そうすると小児科病棟では逆に何をやってもよくなってしまうという、ちょ っと矛盾した問題が生じているんだと思います。それで子どもの精神的な問題を扱うた めには、どんな子どもの権利擁護が必要なのかというところをきちんと押さえるような ものが必要ではないかなと私は感じております。 ○西田委員  虐待による行為障害の子どもさんを治療しますと必ず暴力が出てきます。そのための 対応をきちんとしておかないと暴力的な対応をとってしまう危険があります。暴力の連 鎖にならないような対応が必要です。そういう治療を考える時に精神科では法律で規定 された身体拘束が可能であり、子どもたちに暴力以外の対応を教えることができます。 また、子どもの暴力から治療構造も守られます。子どもの治療を受ける権利をどう保障 するのか、特に虐待のケースは治療を受けるために親の同意ではなくて、市町村長や児 童相談所長の同意でいいとかであればもっと子どもの治療が保障されると思います。そ のへんもここに至ってはきちんと考えなければいけないことではないかなと思います。 ○柳澤座長  ただ今のご議論もある意味でこの検討会の目標の一つの関連した領域だと思います が。子どもの心の診療に関しても入院施設というものはきちんと整備していくというこ とは避けては通れない問題だと思いますので、それに関連した体制の問題であるという ように思います。 ○南委員  違うことですが、私はここに座っている中では唯一の現場にいない人間ですから、ち ょっと的外れなことを申し上げるかもしれませんが、専門医がどのぐらい必要かという 以前に、子どもの心の診療の対象となるお子さんが果たしてどのぐらいいるのか。国民 の立場からすると足りなくて、行く場がなくて、半年も待たされるような状況になって おりますが、多分、取捨選択がきちんとなされていないのではないか。本当に重度の医 療が必要なお子さんと、そうではなくかなり健常な方で何かで躓いていろいろ問題を抱 えているとか、果てしなくいろいろな方がいらっしゃるのだと思います。マスコミにも 大いに責任がありますが、事件が起こりますと「ごく普通の子どもだった」とか、「普 通の子どもがなぜ」みたいな報道が非常に目立ちます。マスコミの好きな言葉である 「心の闇」という言葉も子どもを持つ人々に非常に不安を抱かせると思います。それが よく言われる育児不安ということで「健やか親子21」の提言もこのことと関わりがあ ると思います。このように心の問題を巡って国民が混乱している状態にあるということ を前提として、子どもの心を扱う医師を仮に「子どもの心の専門医」と呼ぶとします と、その専門医が対象とするお子さんの疾患、もしくは症候群にはどういうものがあっ て、それぞれにどのぐらいの有病率で、どのぐらいの数の該当者があるのか、子どもは 非常に減っているわけですから、減っている中で、どのぐらいあるのか。もっともっと 子どもが多かった時代にもこういうものは医療が整理されていなかった事情もあるでし ょうが、何とか皆育ってきているわけです。ですから、国民に説得力のあるような形 で、今の社会の中での現状認識を記録として、それを共有しなければいけないというこ とが一つあると思います。  また、これはここで議論するべき問題かどうかわかりませんが、育児不安も含めまし て今、「普通の子ども」、これもこの言い方がいいかどうかわかりませんが、子どもの 心の診療の対象にならないような、たぶん普通の子どもさんでも、こういう情報化時代 にあってITを使っていろいろな情報を受けたり、画像を観たりすることなどに関わる とみられる思春期のお子さんの問題というのがありますね。お子さんたちが不登校にな ったり引きこもったりという問題もあります。そういう、重度の医療の対象にはならな いようなお子さんたちが、ではどこに行けばいいのかという問題もまたあります。ま た、健常なお子さんでも、「ことさらに心を取り沙汰しないでもっと逞しくなれ。」と いう部分もたぶんあるのだと思います。そうした現代人の心の持ちようというか、メン タルヘルスについて、ぜひ、専門家の方には括っていただきたいなと思います。必ずし も重度の医療が必要な方だけじゃなくて、こころは、現代人の大きなテーマなわけです から。そういうように考えると、やはり交通整理を最初にしていただく必要があるかと 思います。 ○柳澤座長  今、南委員から今後の議論の進め方にとって非常に示唆に富んだというか、貴重なご 意見をいただいたと思います。まず最初のご指摘のニードというか、対象となるような 訴え、または病気、また、それがどのぐらいの割合でいるか、そのへんのところについ ては前回の検討会で杉山委員から出ていますが、そのへんのところをどのようにしたら いいか。それも今後の議論の中で整理して出していかなければいけないところだと思い ます。 ○奥山委員  7〜8年前と平成15年に埼玉県内で各保育園とか小学校、中学校、高校ぐらいまで 全校に調査をしまして、どのぐらい子どもの心の問題を持っているかを学校なり保育園 なりでどのぐらい把握されているのかという、全県下の調査というのが2回ほどされて おります。1回目は確か年間2万人ほどという数字が出ていたのは覚えております。正 しくは次回に資料としてお持ちしたいと思います。 ○齊藤委員  今の精神保健的な調査というのとはぜんぜん別ですが、今度は病態の重い方の本格的 に児童精神科的な入院治療が必要な子どもたちはどのぐらいいるかというおおよその数 字をあげてみます。平成15年度、全児協の資料を見ますと、全児協病院加盟の固有の 病棟を持つ病院というのが15あります。この15が分布している地域というのが実は 多少重複がありまして、15都道府県ではありません。確か12都道府県で、その全児 協病院が存在する県の平成15年の19歳以下の少年たちの中でいったいどのぐらいの 比率を入院させているのかという数字ですが、全児協病院のある地区においては平均し て10万人に15人ぐらいの入院率です。ですからおおむね10万人に15人ぐらいは 専門的な水準の児童精神科医療を提供する必要があるということを、現状だけですが言 えるのではないかと思います。 ○柳澤座長  それは非常に重い疾患、入院して治療を必要とするような疾患についての数字、それ もまた改めて議論する機会があると思いますが、その一方でもっと非常に幅広い子ども たちの今、現在持っている訴え、それを受け止めてスクリーニングして必要な次のステ ップに渡していく。その役目は小児科医会という立場で齊藤先生が言われた部分ではな いかなと思います。 ○牛島委員  今、南委員が言われたことはとても大切なことだと思いますが、前回にも私は申し上 げましたが、どんな病態を対象とするかということです。例えば私の専門としておりま すような思春期からヤングアダルトにかけて、例えばボーダーラインと言われる人たち が手首を切るとか、問題行動を起こす、20歳を過ぎて起こすのですが、既に私の診る ところその予兆というのは小学校高学年ぐらいからあるわけです。しかし、そういうよ うなところまで果たしてこの委員会が専門医を育てるという意味で、その対象を広げる ことできるかどうかという問題はとても難しいような気がします。南委員のおっしゃる ように、そこまで行かない、しかし多少元気がないとか、適応がちょっと普通よりも落 ちているけど、なんとかついていっているのではないかとか、そういう子どもたちのこ とまでこちらが心配りできるようなそういう体制を考えることができるかどうかとなる と、それは非常に難しいような気がします。私が申し上げているもう少し重症な人のと ころまで行くのさえも非常に難しいのではないかという気がする。というのは、あまり にも多すぎるということ。雲を掴むような話になってしまうということです。子ども時 代にそういう状態を捉えること自体が。それであるだけに、さし当たって今、問題にな っているかなり重症な子どもたちを中心にというように考えないと、話が前に進まない ような気がしています。 ○山内委員  今の問題は牛島先生は専門性の高い学会の理事長だからそういう話になるかもしれま せんが、実際に国民の側からすればやっぱり育児不安ということもありましたが、ちょ っとした問題を相談できるというのがすごく重要だろうと思いますし、先ほどどなたか がおっしゃったように、そのようなことが予防的な問題につながると思う。ただ、そこ は医者が全部やるかという問題がありますね。先ほど埼玉県の例を出しましたが、もっ と医者以外の方と連携して、状況を把握して対応することで問題が解決するというケー スもあるでしょう。やはりこれはプライマリーケア的な医者の方にまず行く、そういう 連携ができればかなり広くカバーできるんじゃないかと思います。それ以上だったら牛 島先生のところにお願いすると。 ○奥山委員  もう一つ周辺の話になると思いますが、今までのご議論の中で一つ押さえておかなけ ればならないなと思ったのは、保育所と学校の医者、校医とか保育園医とかそういう方 々の役割というのも非常に大きいだろうと思いますので、そういうところに子どもの心 がわかる方々に入っていただく、もしくはそういう方々に研修をしていくとか、そうい う方向も考えなければならないのではないかと思います。 ○桃井委員  今、先生がおっしゃったことを第1回の検討委員会で申し上げたのですが、確かに重 度のことは大変わかりやすくて医療提供体制を組みやすいのです。我々、例えば小児精 神神経専門医などでは検診から上がってきた方々をずっと育児診したり、サポートした り、学校と連絡したりして重度に陥らないようにしている方々はかなりの人数でいらっ しゃる。それもやはり専門医の医療提供体制であろうかと思いますので、「心の専門医 の養成」と一つに括ってしまうと議論が錯綜するということを最初に申し上げました が、重度の医療提供体制をどう議論するのか、それから検診などであがってくる方々、 これは二次検診というのはかなり極めて専門的な技能を要しますので、そこは本当に十 分かというところも含めて、そういうのを総括してきちんと議論しませんと。そういう ように総括して議論すれば、軽度というか、重度だけど小さいうちからケアをきちんと するから重度にならなくて済むという方はたくさんいらっしゃいます。そこも非常に重 要な医療提供体制だろうと思いますので、発達小児を含めた小児の精神保健、医療提供 体制も含めてどの層の議論をどうするかということを明確にしていただきたいと思いま す。 ○柳澤座長  今、桃井委員が言われた通りで、今日は6人の方のご意見の発表を伺った上での比較 的自由な意見交換ですから、いろいろな意見が錯綜するというと変ですが、出ておりま す。今後の議論を進める上ではそういう話の進め方ということがこれは当然必要だろう と思いますね。 ○牛島委員  そういう意味ではなにもそんな専門家、例えば臨床心理士とかケースワーカーとかい ろいろありますが、そういう人たちを専門家として教育していくということもあるけ ど、しかし、子どもを育てるのは親だし、学校の先生だし、そこらあたりのことについ ても考えなければいけないような気がします。  例えばこの間、鹿児島に防空壕に入って火遊びしているうちに亡くなってしまった子 どもたちがいます。あの中で僕は非常に不思議だったのは、何の議論もなくあの穴を塞 いでしまったことです。子どもの精神発達という面から見たら、ギャングと言われる子 どもたちは集団をつくってあそこで非常にたくましくなっていくのです。穴を塞ぐのは 子どもたちの発達のチャンスを奪ってしまうことになるが、そこの議論を誰もしない。 そういう問題は今、世の中には厳然として広がっているのです。子どもたちの精神発達 は誰も考えないということが。だから、むしろそこらあたりから考えていった方がいい ような気がします。裾野を広げてできるだけそういう専門家を養成していったらいいと いうよりは、子どもの問題は一番大事なのは親だし、学校の先生だし、地域の大人たち に対してもやっぱり押さえるところは押さえておくとした方がよいと思います。 ○冨田委員  今、牛島先生が言われたことと同じようなことについて、一言、言っておきます。こ の前大阪の寝屋川で小学校の先生が生徒に刺されるという事件がありました。直ぐに教 育委員会が5名の臨床心理士を派遣したという対応は、事件が起こると騒ぎすぎる結果 だと思います。事件や災害が起こった時に、最近は直ぐに「心のケア」「PTSD」と 言い過ぎます。マスコミが煽るだけでなく、専門家にも責任があります。直後は誰もが 急性ストレス障害を受けて当然で、大部分の子どもには、ほとんど障害を残さないので す。むしろ専門家が介入することで、「弱い子供を作っていかないか、潜在的なものを 掘り起こさないか?」ということを、阪神大震災から池田の小学校事件など、多くのこ の種の出来事に多少関与することで、私は感じてきました。「子どもの心の診療」を考 える時に、「心を診なくてよい」多数の子どもがいることを忘れないで、「必要な少数 の子どもに対応していく」という考え方も必要だと思います。つまり、専門性を言い過 ぎると、常識的なものが抜け落ちる心配があるのです。少し話題が外れたかもしれませ んが…。 ○柳澤座長  議論がますます難しくなってきているような印象を受けますが、何回も申し上げてい るように、今日は半分ぐらいの先生方からその立場々でのご発表をいただいて、その後 自由な意見交換をさせていただいております。次回に残った5名の委員と文部科学省か らの意見をちょうだいします。その上でそれで全体のそれぞれの立場からの発表という ことを受けて、少し話題を整理してこの議論を進めていくというようにしたいと考えて おります。大体今、予定された時間になりましたが、最後に何かぜひもう一言、言って おきたいというようなことがございましたら。どうぞ。 ○杉山委員  学会を中心に専門家の養成をやっていくかどうかという問題ですが、どうも児童青年 精神医学会にしろ、小児精神神経学会にしろ、どうも頼りないですね。 ○牛島委員  先ほどから言いますように、児童青年精神医学会の専門医教育というのは先ほどの全 児協に頼ってしまっていると。僕は面目ないながら認めざるを得ないような気がしま す。 ○杉山委員  そういうことでこの問題は次回にまた議論を重ねさせていただければと思います。 ○齊藤委員  やはり階層的な非常に専門的な領域と、それからそうじゃない子どもたちときちんと わけて話をしていくべきだという御意見、本当にその通りだと思います。その上でなの ですが、私は今日の各学会、あるいは大学という観点からのお話を伺っていて思います が、やはりなんとしても児童精神科とか小児精神科といった領域を専門家になって、医 師になって初めて触れて興味を持つというのではもう本当は遅いのではないでしょう か。やはりこの問題の専門家をつくっていくためにも、まずは学生時代からこの問題に 関心をもつ人間をリクルートしていくという発想がどうしても必要ですし、そのために はやはり卒前教育の問題をもっと深刻に考えておかなければならないのではないかと思 います。  私はたまたま今年度からある大学の心理学科で小児精神医学の講義を引き受け、90 分単位で1年間に計26回の講義を行っております。医者の忙しいカリキュラムの中に そのまま組み込めとは言いませんが、しかし片方ではそういうこともやられているとい う状況をある程度医者も考えておかなければならないのではないでしょうか。卒業した ときには既に専門性へのアフィニティがある程度出てきているということを目指さない といけないのではないかと思いました。 ○柳澤座長  おっしゃることはわかりますが、非常に難しいことだと思います。それもまた大事か なという気がしますが、卒前教育まで踏み込むと大変難しい問題だと思います。 5.閉会 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。活発な議論を今日もいただきました。今後の進め方 についてですが、資料にありますように予定としましては全体でおよそ8回程度の検討 会を開催して平成17年度の末には検討会としての報告を取りまとめるという予定にな っております。次回は本日の引き続きで委員の代表する団体・学会から、子どもの心の 診療に携わる専門の医師、今日のご発表の続きをお願いして、その上で専門家の養成方 法について議論を始めたいと思います。そういう進め方に関してこれまでも何回も話が 出ておりましたが、なにかご意見はございますか。よろしいでしょうか。それでは、最 後に事務局の方から連絡事項をお願いします。 ○事務局/母子保健課長補佐  事務局からのご連絡でございますが、次回の第3回の検討会につきましては先生方の 日程を調整させていただきました結果、最も多くの委員にご出席いただけるということ で5月11日水曜日の15:30〜17:30を予定していますので、どうぞよろしく お願いします。また、会場とか決定しましたらご案内させていただきたいと思います。 また第4回目以降の日程につきましても調整をさせていただきました結果、最も多くの 委員の先生方にご出席いただけるということで、第4回は6月29日の水曜日、第5回 が7月22日水曜日を予定しております。また会場等につきましては別途ご案内させて いただきます。以上です。ありがとうございました。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。それではこれで第2回の検討会を終わりにさせてい ただきます。ご協力をどうもありがとうございました。                   ―終了―                    照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課                    電話 :(代表)03−5253−1111                             斎藤(内線:7933)                             飯野(内線:7938)