05/04/18 エイズ予防指針見直し検討会 第5回議事録 第5回 後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(エイズ予防指針)見直し 検討会 議事録 1.日時 平成17年4月18日(月)14:00〜16:00 2.場所 中央合同庁舎5号館17階 専用第21会議室 3.出席者   (委員)池上千寿子、石井美智子、市川誠一、大平勝美、木原雅子、木村哲、       島宮道男、白井千香、玉城英彦、藤井久丈、前田秀雄、南砂、山本直樹       (以上13名、敬称略)   (厚生労働省)関山健康局疾病対策課長、小野課長補佐、他 4.議題   (1)前回議事確認   (2)エイズ予防指針の見直しについて     −1 研究開発の推進     −2 施策の評価     −3 関係機関との連携 5.内容 (照会先)健康局疾病対策課      電話:03−5253−1111(内線2354) − 以下、別添ファイル参照     第5回後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針見直し検討会           日時:平成17年4月18日(月)14:00〜16:15           場所:中央合同庁舎5号館 専用第21会議室 ○事務局(川口課長補佐)  定刻でございますので、これより第5回後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予 防指針見直し検討会を開催させていただきます。委員の先生方にはお忙しい中、御出席 を賜りまして、まことにありがとうございます。  開会に先立ちまして、私の方から委員の出欠状況につきまして報告させていただきま す。本日、木原正博委員、雪下委員は御欠席の連絡をいただいております。また、今回 より長谷川博史氏、それから藤原良次様にもオブザーバーとして御参加をいただいてお ります。また、前回の検討会以降に事務局の人事異動がありましたので報告いたしま す。小野でございます。大山でございます。私、川口でございます。よろしくお願いい たします。  それでは会の進行を木村先生、よろしくお願いいたします。 ○木村座長  大幅な異動がございましてメンバーが変わっておりますけれども、こちらからもどう ぞよろしくお願いいたします。  きょうの予定ですが、お手元の議事次第、1枚紙でございますけれども、きょうは前 回の議事録の確認をいただいた後、(3)−1の研究開発の推進に約40分、施策の評価 に40分、関連機関との連携を10分ほどいただきまして、その後、残り時間で、全体につ いてまたさらに御意見をいただき、4時ごろには終了したいという予定にしております ので、どうぞよろしくお願いします。  それではまず資料の確認と前回議事の確認につきまして事務局の方から御説明をお願 いいたします。 ○事務局(川口課長補佐)  それでは説明させていただきます。まず資料の確認をさせていただきます。資料(5) −1−1は山本委員より提出いただきましたものでございます。山本委員はエイズ対策 研究事業の主任研究者でございまして、企画と評価の研究をしていただいております。 この資料につきましては後ほど山本委員から御説明いただきたいと思います。次に資料 の(5)−1−2でございますが、こちらはエイズ対策研究事業につきまして、研究費の 現状や論点、今後の方向性等をお示しした資料でございます。次に(5)−2−1でござ いますが、施策の評価ということで、厚生労働省における施策評価につきまして概要を まとめました。それに続きまして(5)−2−2でございますが、同じく東京都における エイズ対策事業にかかる資料でございまして、こちらにつきましては後ほど、前田委員 の方から御説明をいただきたいと思っております。  続きましてお手元の資料11でございますが、こちらは前回の議事録となっておりま す。内容につきましては、委員の皆様にはメールで御確認をさせていただきまして、適 宜修正させていただいたと存じておりますが、何か再度ありましたら、こちらの方にお 寄せいただきたいと思います。この議事録につきましては後日、厚生労働省のホームペ ージに、いつもどおりでございますが、掲載させていただく予定でございます。事務局 からは以上です。 ○木村座長  ありがとうございました。資料の11、前回議事録につきまして、もし表現などで意味 が違うというようなところがございましたら、後ほど、事務局まで御連絡いただきたい と思います。  それでは前回及び前々回、医療の提供というところでいろいろ御議論いただきました が、その都度、問題にはなってきましたけれども、今までの予防指針、文章としては非 常にいいものがつくられてきているけれども、なかなかそれが実践されていない面が多 いということで、それを改めるためにどうしたらいいかということがだいぶ議論になっ てまいりました。今まで自治体の役割というのがあまりはっきりされていない。一部、 一生懸命、熱心にやっておられる自治体はありますが、全体として活動が非常に不十分 な面があるのではないかというような印象を強く持っております。この辺りについては 委員の方々、どのように感じておられますでしょうか。私、前にも申し上げたと思いま すが、それぞれの自治体がもっと責任を持って、どう行動すべきか、どういう施策をす べきかというようなことをもう少しはっきり打ち出して、できれば数値化できるところ は数値目標をつくるなどしてそれを実践していくような、もう少しアクティブな活動が 必要かなと感じているところであります。自治体の方から、難しいという御意見もあり ましたが、木原委員どうぞ。 ○木原(雅)委員  各自治体で明確なアクションプランを作成する必要があると思います。その場合も1 年単位だけでなく、3〜5年と、時間の幅を持たせた中長期にわたるプランも作成し、 科学的な効果評価を伴った実施体制を作る必要があるのではないかと思います。 ○大平委員  具体的な問題として地域、地域行政の施策というのは大変重要かと思いますが、この 前にもちょっとお話ししましたが、偏見の問題、差別の問題、医療全体の問題として、 HIV感染症に対しての社会の厳しい目がまだあるということを考えますと、全体で、 指針の中で国が一定の方針を持って、そして各自治体とか現場で頑張っていただくとい うような方向性を持っていくことが確保されていないと混乱を招くのではと危惧しま す。自治体での独自の活動というのも大切かもしれませんけれども、それは一つの大き な国の方針の枠の中で動いていただかないと、最終的にいろいろな問題が生じたとき に、どこで患者、また、そういう被害を受けた方たちについて、日常生活のいろいろな 弊害についての回復を図る手立てというのがきちんと確保できるのかどうかというとこ ろが感染者にとっては大変重要な問題だと思います。その観点から、大枠としては国が 施策として方針を持って、そのもとに各自治体のそれぞれの実情に応じて動くというよ うな形をとっていただいた方が、私はよいのではないかと考えます。 ○木村座長  大平委員のおっしゃったのは、国のやるべきことをはっきりさせた上でということ で、全く当然のことと思いますので、そういう前提の上で自治体がどう活動していく か。 ○前田委員  自治体が何も言わないわけにはいかないですね。いろいろな側面があるのですが、一 つには今、大平委員が言われたように、ナショナルミニマムという部分もありますし、 国としてのスタンダードというものが必要かと思います。ただ、かなりいろいろな場面 で長いことエイズ対策の方に携わっておりまして、今、エイズ対策というのは、過去の 数をまず整理するという状況から、だんだん質の問題に入ってきているという中で、な かなか自治体として単純な形での政策の指標というものを立てにくくなっているという 状況がございます。前回等、御議論されましたエイズの拠点病院にしても、当時はまず 数をそろえる、東京都としては二次医療圏単位に複数というのを一つの目標としてやっ てきたわけですが、現実にその数がそろったときに、その質については一様ではないと いう状況です。ですので、エイズ対策というのが進んできた分、評価というものが単純 な形ではできなくなってきているということがあるんだと思います。  ですので、この後、議論されるようですが、研究開発という部分におきまして、いろ いろな研究班の方に、私ども東京都も部分的に参加させていただいておりますが、なか なか政策評価という意味での研究、非常によくマッチングした形での研究というものが 必ずしも行われていない状況にあるのではないか。こういう言い方はよくないのかもし れませんが、研究者側も私どももそれぞれいいとこどりをしていて、それが完全に歩け るようにした形で今後の施策に近づいていくような形になかなかなっていないというこ とがございますので、科学的な政策評価ということの裏にはそういう科学的な分析をも って行っていかなければならないということで、その辺を今後、打開していくことが必 要ではないかと思っています。後段、私も東京都の事業計画を資料としてつけましたけ れども、ごらんいただければわかるように、そうした指標があってというふうな、いわ ゆる政策評価のレベルのものにはなってございません。 ○木村座長  ありがとうございました。こういう自治体の取り組みというものを、医療計画という ようなものの中にエイズ拠点病院等のことも盛り込んで、より医療体制、ケアの体制と いうものを整えていくような、それぞれの自治体に応じた対応というものをもう少し考 えていく必要があるかなというふうに思っております。 ○市川委員  自治体のことで意見があります。予防指針の中に個別施策層がうたわれていますが、 この数年間、同性間のことについてかかわってきて、いろいろな自治体のエイズ担当者 に話をしたときに、個別施策層については、MSMの人たち、セックスワーカーの人た ち、外国人の人たち、あるいは、個別施策層には入っていないがIDUの人たち、これ らの人たちへの取り組み方が、実は地域では難しいという意見をよく聞きます。  例えば同性愛者の人たちの対策を地域でやっていく場合ですが、地域住民全体に向け て対策を立てていくという視点は行政の施策ではあるけれど、MSMの人たちに向けて 個別に事業を展開していくことには、なかなか財務とかの理解が得にくいということを 聞きました。予防指針には、国民全体に向けた施策とは別にして個別施策をうたってい るけれど、実際に個別施策に向けた対策をどう進めたらいいのかということの道筋を地 方自治体の人たちに示せなかったというのがこの予防指針の欠点の一つだと思います。  その辺のところをこの予防指針できちんとうたわないと、地域の中で個別施策層への 対策を立ててほしいといっても、地域の同性愛者の人やセックスワーカーの人たちに自 治体としてどう施策を立てたらいいかということに比べれば、対象にしやすく、事業的 にも予算的にも立てやすい一般全体に話がそれてしまう。今後も個別施策層への対策を 地域の事情にあわせてというと、また地方自治体にはどうしたらいいかわからない状況 が続くと思うのです。具体的な方法を予防指針でうたわないといけないのではと思いま す。 ○木村座長  個別施策層については各自治体がまだ不慣れでどう対応していいかよくわかっていな いのではないかと、簡単にいうとそういう危惧があるということですかね。それに対し て具体的に今後どう対応していくか、この指針の中にどこまでそういうことを書き込ん でいけるのかということですが、何かそれについて具体的な提案など、どなたかおあり でしょうか。 ○長谷川氏  個別施策層というものは本来、予防指針が立ち上がってくるときにはターゲットグル ープですとか、あるいはもともとあったハイリスクグループというちょっとネガティブ な表現に対してこちらで出てきた言葉だったと思うのです。そのときに例えば、実は私 どもの患者だけをとらえても非常に多様です。さらに個別施策層となっているMSM、 ゲイをとらえても、それだけでも実はその中にかなりの多様性があるということなんで す。ターゲットを明確にしないと予防施策がうまくいかないということが言われていた ということは、そういったゲイの中にさらにターゲットを絞り込むということも必要で すが、さらにほかの個別施策層、例えば青少年であるとか、前回のヒアリングで私は、 若者の中のHIV陽性の中には7割方のMSMが含まれているということを申し上げさ せていただいたのですが、それと同じように女性とか、若者とか、あるいは外国人とか という部分の中でも多様性があると思うのです。多様性の個々の文化とかけ離れた施策 をやってもなかなか効果が上がらないと思いますので、個別施策層という形が一つをう たいながら、一般予防が展開されているようなのが現状だと思うのです。ですから、さ らにそこの個別施策層の意味をもう少し確認していく方向で入れられたらいいのではな いかと思います。 ○木村座長  それぞれ特徴があるので、全体を表現する、指針の中でどう表現するか、言葉として なかなか難しそうですね。ほかに御意見ありますでしょうか。 ○藤原氏  この予防指針をつくっていくときには、このようにいろいろな方々が集まりますが、 実際に行ってそれを評価するというときに、こういった方々すべてが集まるというとこ ろがないと思うのです。前につくったときも見直しのためとか、それがうまくいってい るかどうかを評価するために会議を持ちましょうということが決められていましたが、 この5年間何もできていなかったというのも事実であります。それと、社会というもの は毎日動いていますので、例えば1年前のターゲットがことしも必ずしもターゲットに なるとは考えられませんので、何年かに1度はみんなで集まって全体のこの予防指針の 評価をするということを盛り込んで、それに沿って集まっていくということを書き足す というふうな方法をとらないと、何年かまでの見直しの期間はみんなばらばらにやって いて、社会も変わっていて、それぞれ変わっているみたいな形ではまた5年たったとき に問題が出てこないのではないかと思いますので、きちんとした評価のときには皆さ ん、いろいろな分野の方々が集まって見直しの会議を持つみたいなようなことを書き足 していくということが必要なのではないかと考えます。 ○木村座長  事務局にちょっとお伺いしたいのですが、2番目のところの施策の評価というのがあ りますが、今御発言があったような点はその中に入ってきますか。 ○関山課長  その中に入ってまいります。 ○木村座長  そのときにそれではもう少しこの先の議論をさせていただくということにいたしま す。 ○木原(雅)委員  ここ数年間、地方の青少年のエイズ予防にかかわっています。個別施策層の中では青 少年は比較的取り扱いやすい対象ではありますが、それでも地域によって性に対すると らえ方が大きく違い、成人に対する対策とは異なる困難を伴います。たとえば、とても 性についてオープンに話せる地域もあれば、まったくできない地域もあり、大きな地域 差があります。初期の日本のエイズ流行が主に東京(大都会)を中心に広がってきたた め、これまでの施策は東京中心の発想に偏っていたのではないかと感じます。現在、わ が国のエイズ流行が徐々に地方拡散を始めていることを考慮しますと、地方でも実施可 能な施策が必要ではないかと思います。都会向けの施策をそのまま地方に導入しようと すると、地域の様々な抵抗を受け実施が困難な場合も多く見受けられます。国としての 基本施策は呈示して、あとは各地方に合わせたテーラーメイドの施策が作られる必要が あると思います。  先ほどの、市川先生のご発言にもありましたが、では地域にあった具体的な施策はど うしたらいいのかとなると、そのアクションプランの作り方がわからないという問題に ぶつかります。そのような状況に対して研修会が必要ではないかと思います。現在、私 は幾つかの県のエイズ対策のお手伝いをさせていただいていますが、県によって状況が 全て異なります。県教委が活動の中心になっている県もあれば、県保健行政と地域保健 所が中心の県もありますし、県PTA連合会などNGOが中心の地域もあり、各地域に より様々な特徴があって、全く違うアプローチをしないと施策実施が難しくなります。 このようにそれぞれの地域の特徴をとらえたテーラーメイドの施策実施のための、アク ションプランを立て、その効果を科学的に評価することが重要だと思います。 ○木村座長  個別層に対する経験は自治体によってだいぶ違いがあり、その受け取り方も温度差が あると。今お話があったような研修会のようなものが可能ですか。幾つかの自治体が集 まって、こういうふうな対応とか、考え方がいいのではないかとかいう議論をするよう な場、そういうのがあったらいいのではないかというような御意見ですよね。具体的に はそういったところも少しそれぞれの立場で考えるということにしたいと思います。自 治体のこと、特に今、冒頭で取り上げさせていただきましたが、今まであった議論、資 料の5−4、いつもの4段表に載っておりますが、この中でまた御意見があれば伺いた いわけですが、事務局の方からこの4段表について御説明ありますでしょうか。前回の 委員会の後、さらにいただいた意見も盛り込んであると伺っていますが。 ○事務局(川口課長補佐)  いつもどおりでございますが、この4段表につきましては前回までに委員の先生方か らいただいた意見をそれぞれの該当箇所に落とし込んでおりますので、ごらんいただき たいと思っております。以上です。 ○木村座長  これをごらんいただいて補足とかありましたら自由に御発言いただきたいと思いま す。ところどころ対応策が出ていないところがございますので、できればその辺りを中 心に御意見をいただければ、最後のまとめのときに助かると思います。 ○事務局(川口課長補佐)  すみません、時間がありましたらまた後ほどということで。 ○木村座長  先に進みますか。きょうの研究開発のところなど、まず検討しないといけないという ことになりますので、ではまたお気づきの点がありましたらこの4段表については御意 見をいただく。最後のその他のところ、少し時間をとっておりますので、御意見いただ きたいと思います。ではきょうのテーマの一つであります研究開発の推進というところ に入りたいと思いますが、山本先生の方から資料をいただいております。その前に事務 局から現状についての説明をお願いいたします。 ○事務局(川口課長補佐)  説明させていただきます。資料(5)−1−2をごらんいただきますようお願いいたし ます。まず事実関係の御確認をさせていただきます。研究費に関しまして、左の下の表 でございますが、研究費の配分につきましてはここ5年でその構成要素が変わってまい っております。縦軸は金額ベースでその割合を示したものでございますが、臨床医学系 の研究が減少傾向にありまして、社会医学系の研究が増加傾向にあるということでござ います。1枚おめくりいただきまして、その研究内容、平成17年度のものでございます が、詳細をお示ししております。一番下、ちょっと小さくなるのですが、現在32個の研 究班が走っているわけですが、平成11年度に関しましては12個と、研究班はふえている というような実態がございます。その間、予算額につきましてはほぼ横ばいということ で、班ごとの研究費というものは若干減ってきているということが言えるかと思いま す。  戻っていただきまして、評価委員会等で言われていることでございますが、論点とし まして、研究事業にはこういう社会医学、疫学、臨床医学、基礎医学の4分野がござい ますが、近年、社会医学と基礎医学分野に変動があります。シーズ探索型の研究が多い 傾向がありますが、長期的・基礎的な研究も重要なのではないかという御意見がありま して、方向性としまして、我々事務局で今、漠然と考えておりますところは、可能な限 り明確な目標設定を行いまして、研究成果の達成が図れるような研究にしてはどうかと いうような考えを持っております。以上でございます。 ○木村座長  ありがとうございました。最近5年間の研究費の動きを念頭に置きまして、山本先生 のお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。 ○山本委員  お手元の(5)−1−1に簡単にまとめておりますので、お話をさせていただきます。 これは研究の内容ということよりも、むしろ研究体制についてということで考えを述べ たと言いますか、結局、研究体制ということは簡単にいうとお金の話だろうと思いま す。限られたリソースをいかに有効に使うかと。これまでのやり方でどうだったのか と。これからどうあるべきかというようなことについて、いろいろな人に私がインタビ ューをしました。その結果作成したものでありまして、その理由はもちろん私一人の手 に負えるような話でもないだろうし、私一人が考えるとその意見が私の意見になります から、一人だけ憎まれ者になってしまいますので、そういうこともやりたくないという ようなこともあります。  恐らく10分ぐらいでお話は済むと思いますが、最初の方から読ませていただきます。 しばしば、マンネリ化しているのではないかというようなことが言われるわけですが、 このマンネリ化がもしあるとしたら、その理由というのは恐らくは(1)の研究メンバー が固定している、それから題目も固定しているということですが、その理由は簡単で、 我が国というのはこのエイズ研究に携わっている方を集めてもその総数が非常に限られ ているというようなことがあります。現在の日本のこの研究費配分のシステムというも のの実際は、実はこれがtargeted grantと言われるものが主というところなのですが、 必ずしも研究題目でなくて、研究者レベルでの組織づくりがなされるところに問題があ るかもしれないと。したがって、そういうものが評価のときに、班レベルでの評価とな って、個々の人たちの顔が見えないというか、そういうことにしばしばつながると。一 方これに対してアメリカのNIHのopen grant、こういうものの例が示されています が、ここではおおよそエイズに関係することは何をやってもいいと。したがって、研究 者個々のアイデアが生かされる。基本的に単独研究者の責任ですべてが完結。結果が出 なければ研究費や期間の延長・更新はなく、必然的に新陳代謝が進む形でマンネリ化と いうものがなくなるのではないかということです。  本当に絞り込んだ題目を厚労省側が提示して、それに見合った研究体制をもった研究 者たちがグラント申請を行うのがtargeted grantということなのですが、実際にはこれ が行われているだろうと。その際に、今までと違って、例えばここに書いたような、比 較的狭い目的を提示して、それに呼応できる研究者が申請を行う形をとると。とったら どうだろうという意味なんですね。結局、今の班構成のお題目は非常に幅広いおかげ で、多くのメンバーが一つの班に含まれるために、結果的に各研究者の個性が見えな い。全体としてマンネリ化を招いているというようなことがあるのかもしれないと。も ちろんこの事業とすべきテーマの話というのは別の話だろうと思います。  ここで少しだけ追加説明なのですが、確かに厚労省の研究費というのは、多くはもち ろん行政対応という重要な部分がありますので、targeted grantがあるわけですが、そ れでopen grantももちろんないわけではないです。その一つ、明らかにこれはまずいだ ろうと私が前から考えているのは、targeted grantで、これを公募という形で出される わけですが、一生懸命、応募する方は応募するのですが、最初から、悪い言葉でいえば デキレースというか、そういう部分もあるわけです。そういうテーマもあるわけです。 だからそうではなくて、最初から行政対応の、そういう必要な研究というのは公募の対 象としないというようなことをしないと、研究者の方というのは非常に無駄な時間とい うか、一生懸命やるわけですね。そういうところに対して説明ができないということが 出てくるかと思います。  次に、研究題目の選定ですが、あまり大きな枠組みではなく、予算配分側が達成して ほしい内容を細かく設定すべき。これには社会疫学、臨床、基礎研究の比率、そういう ものも当然考えの中に入るべきであろうと。ただ、この設定には十分な下調べ、現況の 把握が必要ですので、お題目設定の行政サイド、研究者サイドから構成される委員会の ようなものが必要ではないかということです。とにかく、非常に高いレベルからこうい うことをやられる、そういう委員会、そういう集まりが必要ではないかということで す。  しかし、どのような議論がなされても、お題目の選定には困難が予想されるので、そ こで上記のopen grant、こういうものも併用したらどうだろうと。そして、targeted grantで行政サイドの意向を重視、open grantで研究者個々の自由を尊重するといった 研究がいいのかもしれない。このとき、open grantを盛んに言っていますが、問題があ るとしたら、文科省の研究とどこが違うんだと。文科省というのは一般には大体この方 式、open grantですね。だからそこの部分も考えに入るだろうと。入れるべきだと。  研究期間が3年というのが、3年から5年ぐらいは長い目で見るだけの寛容が必要で はないかと。5年たった後で評価して、だめならその班は消滅しても仕方がない。この 評価の目的にも班のお題は均一かつ明確なものであるべきではなかろうかと。  その下に、評価は行政と科学を明確に分けるべきだと書いてありますね。ここで、行 政対応のテーマには必ず研究がついているわけです。これをあまり強調する必要はない のではないかというのが意見です。これをあまり言いますと、やっている方が非常に縛 られます。それはしばしばこの論文につながらない、だけれども日本のこの厚生施策に とって必要だと。そういうものはいっぱいあるわけですね。そういうことについても考 えた方がいいだろうということの意味です。  一番最後ですが、HIVのワクチンの開発研究という、これは研究の内容についてで はありません。これについては、例えば非常に大きな問題ですね。どれぐらいこのエイ ズのワクチンの研究の金を出すかという話は大変な話です。というのは、本気でやると したら非常に巨額になってきます。今の12億なんかいつの間にか吹っ飛んでしまうぐら いの話になりかねないわけです。だからそれはここで申し上げませんが、一つだけ申し 上げたいのは、このG7、G8で盛んに、エイズワクチンの開発には世界的な協力が必 要なんだと。G7のエイズエンタープライズという構想もありますが、感ずるのは、我 が国というのはこういうものに対して少し対応が遅れているのではなかろうかというこ となのです。そういうことで、そういう点についても十分考えていただく必要があるか なと考えております。  個々の研究班連携の欠如と書いていますね。エイズ対策事業における基礎医学、臨床 医学、社会医学、疫学的研究、それぞれの班研究活動において活発な研究が行われてい ますが、その一方、研究班の間での情報共有があまりなされていない部分があるかもし れない。例えば、社会疫学各班はその目的、評価手法、強い共通性を持つが、連携は? と書いてあります。これが実際にあるのかどうかわかりませんが、個々に挙げた理由 は、臨床基礎班では、岩本班、佐多班、佐藤班、こういう3つがいつも連携して班会議 をやっておりまして、そうすると全体の流れというか、お互いの協力関係とか、そうい うことについてはよくわかるのですが、社会疫学関係でこれをやられているかどうか。 もしやられているんだったらこの部分は失礼ながら削除いたします。  もう一つ、これは実際の研究内容に入らないと言いつつ入ってしまうのですが、社会 疫学でこの研究の内容が現実との乖離はないだろうかと。例えば、よい子の研究仲間と いうか、例は先ほどのMSMということなんですが、残念ながら明らかにふえ続けてい るわけですね。そういうものに、本当にコンドームを使うような方の側に立場に立った 研究なんだろうかと。例えば、極端にいうと、快楽を損なわないような方法、そういう ものの研究をやった方がいいのではないかというような話だってインタビューの中から 出てくるわけですね。もう一つは、昨年の暮れにニューヨークで、急速に進行する、薬 が効かない例というものが非常に話題を呼んだわけです。こういうものというのは、ど こがやっているかもちろんわかりませんけれども、おどしの教育というか、こういうも のがあるんだというようなことでやっている可能性があるということを言う日本人の研 究者もおりました。したがって、ここで申し上げたいことは、本当に実際のそういうこ とをやられている方の立場でやられているんだろうかというところです。  今こそ本丸攻めをと書いたのは、例えば小池班と書いて、皆さん何のことか恐らくお わかりにならないと思います。小池先生の班は肝炎の班なのです。これはHIVの感染 者で肝炎の方が多いということでつくられた班なのですが、少しひずみがあるかなとい う疑問が、ある人から提示されました。それは、例えばこの小池班というのは5,000万 ででき上がっています。ところが、肝炎というのはエイズを離れても極めて重要な日本 の国民病というか、アメリカでもそうです。その本家の肝炎では1,800万しかもらって いない。この辺の、ちょっとおかしいと言ったら変ですが、逆の方が普通はあり得る話 ではないかと。それとも肝炎の方の研究費がとれないのか、そういうところはちょっと わかりません。  最後のエイズセンターの話というのは、もちろん国の唯一のエイズ研究センターとし て重要なんですが、ここでは説明を申し上げないようにします。以上です。 ○木村座長  非常に有意義なおまとめをしていただきましてどうもありがとうございました。エイ ズの対策を進める上で研究をいかに進めていくかというのも一つの大きな柱であります が、今の山本先生の御意見というか、おまとめについて。 ○市川委員  2ページ目のところの社会疫学研究に関する各班での連携のことですが、木原先生の 疫学研究班と検査体制の今井先生の班と私のMSMの対策班は3班合同の班総会をここ 数年続けています。もともと疫学研究班は大きい研究班で、そこに検査や、今でいう個 別施策層に関する研究グループが含まれていました。個別施策層がうたわれる前から同 性間のことを手がけていました。それが、検査体制とMSMが別々の研究班になってし まったので、少なくとも対策や動向を考えていく上で、この3つの班は一緒に検討して いく方がいいという観点から、研究班の成果発表会という一般国民も参加できる形で、 3班合同の総会を開いて意見交換をしてきています。  もう一方で、これらの研究班が今後どうしていったらいいのかということについては もう少し詰めた議論をする、そういう会議を持たないといけないとも思います。発表す ることに加えて、もう少し有機的に次の年度、あるいは3年度を考えた、そういった計 画を含めた議論をするような場を持つ方がいいと感じています。これは補足で、全くや っていないわけではないので、そういう交流をしているということです。  あともう一点、山本先生の話には全く賛成するところが多いです。そもそもエイズ対 策研究事業は事業なのか、研究なのか、その色をはっきりさせることが必要だと思いま す。基礎研究やワクチン研究のように、こういったものは本当に研究として進めなけれ ばならないこととして、山本先生のいうopen grantの形で採用していくということも必 要だろうと思います。また一方では、施策として必要なことについてはどういうふうに やっていったらいいのかという事業的なものを含めた研究を、厚生労働省の視点で研究 班をつくって、3ないし5年の期間で有効な対策を求めるような研究やっていくという 必要があると、前から考えています。全く先生のおっしゃるとおりだと思います。  一方で、研究班は評価される側に立っており、社会医学、疫学、基礎、臨床と非常に 幅の広い範囲の研究班に対して、それぞれに合った評価委員を選んでいるとは思うので すが、評価する側に将来の見通しや、あるいは戦略を立てた視点で評価をしているかと いうことがあると思うのです。例えば、今日の山本先生の意見の中には、実際に現場で やっている人たちの顔が見えないということがあって出ているんだなと思うことがあり ます。評価発表会ではおよそ20分の発表であり、現場でやっている人の声を聞いてもら うような発表は難しいと思うのです。こうしたことを含め、実際のことを評価できるか ということについては非常に疑問だと思います。評価については、3年間の研究をどう 持っていくのかということ、対策等も含めて評価をしていくという形でぜひこの研究班 のあり方を考えてもらいたいと思います。 ○木村座長  この中に研究班の主任研究者、あるいは分担研究者、研究協力者の方々も多いと思い ますが、この研究班のあり方について何か御意見ございますでしょうか。 ○池上委員  私も過去5年間、初めて主任研究者としてこのエイズ対策研究事業に参加させていた だいたのですが、その中で感じていることは、研究と事業を分けてほしいということで す。私たちは研究という枠の中に、特に予防啓発的な事業部分をいかに押し込めるかで 毎年苦労するのです。しかも評価委員に一定の評価をいただかないと継続が危ぶまれま す。  例えば、私たちは過去3年間、予防の効果に関する研究の一環として予防啓発のため の人材育成事業をやっています。これは科学的なデータとか、評価ということになじみ にくいのです。その成果は専門学校のなかで性と健康のカリキュラムが膨らんでいくと いう形できちんと出ているのですが、ではそれをどう提示したらいいのかというのが、 現在のスキームの中ではわかりにくい、やりにくいということがございますし、3年で 一応終了せざるを得ません。そこら辺をぜひ整理していただきたいなと考えます。  また、一定程度継続しないと成果は見えてこないということもままあるかと思いま す。特に予防的なことでは短期的にすぐ結果が出るものではありません。短期的に評価 をする部分と長期的に見て評価をする部分と、評価の仕方についても多様性があってい いのではないかと思います。  あと、社会医学研究とありますが、研究員が偏っているというか、経済学とか社会学 の専門家は一人もいらっしゃらない。エイズ対策研究にかかわっている人たちの少な さ、それが研究範囲のマンネリ化ということにもなるかと思うのですが、これは日本の いわゆる専門家の中でエイズに対する関心があまりにも低いということを反映してしま っているのだろうと思います。そういう意味でいうと、エイズ対策研究事業の班員同士 の連携というだけではなくて、厚労省系の母子保健とか他の研究班でも関連しているテ ーマや研究は多いと思うのです。広範囲の情報交換の場もあればいいと感じています。 ○木村座長  私自身も評価のあり方については、個人的には大変疑問を持っていまして、私の班な どは行政的な、事業的な要素が非常に多い。だからいろいろなパンフレットをつくった り、会議をやったり、そのための旅費なり出版の費用がかかると。むしろ自分たちの本 来の臨床研究とか、基礎研究、そういうものを犠牲にしてそういう事業的なことを一生 懸命やっているわけです。それを研究成果のわりにお金がかかっていますねというよう な評価をされると、本当にやる気がなくなってしまうという気がしております。山本委 員が言われたように事業的研究班と、科学的研究の研究班とは評価の方法を変えた方が 良い。 ○大平委員  この4段表の第4の研究開発の推進のところでは、これだけの3項目で、当初は研究 開発の推進の中身というのがそれほど将来を見据えた形でつくられているとは思えなか ったんですね。その間に見直しとかがあればかなり充実したいろいろな項目が盛り込ま れてきたんだろうと思いますが、残念ながらそれができなかったわけです。このまま進 んできて、結局、エイズ対策研究事業、この予算の中でいろいろやられているわけです が、医学的な面と、患者、感染者、また予防に対しての社会啓発の面とか、ここでの振 り分けというのが明確ではないなと感じます。一方、医療に対しての経済負担とか、そ ういうのも何も研究されていないとかがあります。ですからそういった面で社会全体と して目を通した形の研究というのが本当にされているのか、されてきたのかどうかとい うところの、もう一回評価をすべきです。また医学的な、本当に基礎医学の面とか、臨 床の面とか、成果についてもきちんと評価する。整理した形で、山本委員のところで書 かれていますが、科学的な面と行政的な面というところの振り分けの中でももう少し社 会科学というのでしょうか、そういったところで、性感染症の問題としてのいろいろな バックグラウンドの問題、予防啓発の問題など結構社会としては深いテーマがいっぱい あると思うのですね。ですからある程度研究として深い研究がされていかないと、予防 にもつながらないし、そしてまた医療の進展にもつながっていかないのではないかなと いうふうに、素人なりには考えるわけです。  その辺で現在、HIV感染症の患者さんたちの身体障害者手帳を交付されている方た ちの厚生医療の見直しのところで医療費の問題とか、そういうのが出てきておりますけ れども、それは社会・援護局の一つの厚生医療の見直しの中で議論されていますが、H IV感染症にとっては公衆衛生の問題とか、医療費の問題としては、HIV感染症の患 者さんたちが抱えている医療費の負担とか、医療確保に有効かどうかとの研究とか、そ ういうのがちっともされていないというところがありまして、そのデータがないまま保 険の問題とか、そういうのでいろいろ増額されていく。そういうような一つの問題もあ ります。  ですからそういったことを考えますと、もう少し社会のテーマとしてのいろいろな研 究というのも盛んに行われる必要があるのではないかなと思いますので、ここの研究開 発の推進の中の充実の中で、ワクチンの開発もそうですし、臨床の医学の進展のための 政策的ないろいろな対策というのもここに十分書き込まれなければいけないと思います が、それとともに社会的な面でのいろいろな研究のテーマというのがここに具体的にあ る程度書かれていって、それを対応策というより、指針の中で解決していく、それをも とに進めていくということが、あまり今までなかったところで、きちんと書き込まれる ということが必要なのではないかなと思います。 ○木村座長  ありがとうございました。山本先生の御報告、御提案の1ページ目に研究テーマのあ り方、あるいは研究班の組織の組み方などに対する考え方についての御指摘があって、 今、大平委員の方から、これまでの研究で欠けている分野が若干あるのではないかと。 そういったものをきちんと補っていく形での研究推進が望ましいという御意見がありま した。今年度は始まったばかりですが、今年度で終了する研究班が結構数が多いですよ ね。将来に向けてどういう研究班が必要かというようなこともありますので、この辺り に関連した御意見があればもう少し伺いたいと思います。 ○長谷川氏  むしろ、そこに関連してというよりも、ちょっと話題を戻すようで恐縮なんですが、 今、大平さんがおっしゃったことに関してなんですが、研究成果をどう施策に対して反 映していくか。研究自体の問題もあると思うのですが、それがどう実際の対策に対して 反映されていくのかということがもっと明確に明言なされるべきではないかなというふ うに思います。  あと、またさらに戻ってしまうのですが、山本先生の御指摘の中で、MSM班に対し ての効果は、患者がふえているじゃないかという御指摘があったのですが、これは、私 は逆にフィールドで見ていまして、一番有効な施策に対して反映されているケースとし て御認識いただければと思います。というのは、まずこの7〜8年から10年、主に現 在、地方も含めましてMSMに対しての予防施策の体制が、非常に細いながら、九州、 沖縄から北海道まで現在やっとネットワークが組めてまいりました。中心になっている のはMSM研究班、男性同性間の研究班の主導によるものです。あと、ほかの研究班と 比較しましても、具体的に成功度、コンドーム使用率まで、例えば10ポイント以上の、 限られたグループではあるのですが、そこに対して変更、行動変容を促した実績を上げ ているものは、私は国内の研究班では認識しておりません。そういう意味では非常に有 効な研究がなされていると思います。これは逆に受け手として、ゲイコミュニティの中 でHIVに対する認識がこの5年から7〜8年、10年ぐらいの中で大きく変わってきて おります。そこに関しても、インパクトはあったのではないか。むしろ、一般予防です とか、あるいはほかの個別施策層に対してそういうことが可能かどうかということを今 後とも御検討いただければと思います。 ○山本委員  もし長谷川先生がそうおっしゃるんだったら、これはインタビューの結果、ある人た ちはこういうことを言っているということなんですが、その辺の認識がまたちょっと違 うということになります。そのことはまた伝えます。 ○白井委員  今まで、行政と科学のすみ分けとかいう話もあったのですが、今後、研究をどういう ふうにしていくかの中で、実際は研究でこのような効果があったものを行政で事業化し て取り入れるようにしていきたいなと思っているのですが、行政の方では事業化はでき ないから研究費としてどこかの研究班の中に入って、例えば即日検査なんかをしている 地域においても、自分のところの事業費用で実施しているところもあるかもしれないの ですが、研究班に入ってというところもあると思うんですね。それをどういうふうに自 治体が自分でお金をとってくる、または厚労省の補助金をうまく使うかどうかという、 そういうようなノウハウも、研究と言えるかどうかわからないのですが、私たちが自治 体として身につけなければいけないことだと思いますし、そういうようなところを、特 に社会医学、疫学の研究分野では、取り入れる方向としても示していただけたらありが たいと思います。 ○木原(雅)委員  先ほどの長谷川委員の御意見に追加発言です。私も研究班の分担研究者をしています が、研究成果が上がったものでもなかなか行政の施策として普及していくのが難しいと 感じています。これまでの、私たちの研究班のグループで実施した青少年に対する大規 模な予防教育モデルの中で確実に科学的エビデンスとして、「寝た子を起こすことなく (未経験者を活発化させることなく)」、知識の大幅増加、リスク認知の上昇、コンド ーム使用率の10%以上の上昇、および、性関係の容認の割合の減少などの成果が得ら れていますが、それでもなかなか行政の施策としての広がりに時間がかかっています。 昨年度より厚生労働省の青少年エイズ対策事業としてモデル事業の全国展開が始まって いますが、実際に青少年が一番いる学校を束ねる文部科学省との連携がなかなか結べて いなくて、研修会に学校の先生方が参加しにくい状況があります。特に青少年対策には 学校の理解協力は必須であると考えられますので、厚生労働省と文部科学省の連携が必 須だと思います。 ○木村座長  なかなか成果が行政に反映されないという表現でよろしいのでしょうか。そういうと ころになかなか持っていけていないというところがあるので、それをもっと行政なり、 事業なりに反映するようにすべきであるという御意見だと思います。 ○市川委員  先ほどの評価の中で、MSMの中ではHIV感染者がふえているではないかという話 がありました。少なくとも、地域のボランティアの人たち、ゲイのボランティアの人た ちがいろいろな啓発を始め、その結果として検査を受けることを普及したのです。大阪 の例を挙げますと、MSMを対象にした調査では、過去1年間の受検率が19%だった99 年のデータが、3年でMASH大阪の啓発目標だった30%を達成しました。さらに今は 36%という受検率に達しています。これは研究評価発表会にて発表しました。受検率の 上昇が、大阪でのHIV感染者が増加している一因になっていると思うのです。  また、東京の場合も、南新宿検査相談室が土、日の検査を開始したことですが、これ は厚生労働省が開いた同性間のHIV感染対策検討委員会の中間報告を受けて土日のオ ープンになりました。そこでの受検者動向を見てみますと、やはりMSMの人の受検割 合がふえています。こういったことが東京あるいは大阪で見られています。名古屋の場 合は、地域のボランティアの人たちが臨時検査会を開いて、そこにMSMの人たちの参 加者を集め、検査を提供するということをしています。これはボランティアベースの事 業です。そこでの検査を受ける人は増えてきており、名古屋でのHIV感染の報告数も 増えてきているという現状なのです。  どうしてそうなったかというと、それまでの同性間の人たちへの予防対策が十分では なかった。これまで感染していた人たちが検査を受けるようになって感染がわかる状況 が今あらわれているということなのです。今後、対策が進んでも感染者数の減少という のはもっと時間がかかるということを考えてほしいと思うのです。例えば、早期検査を 進めれば、エイズ発症して患者として報告される人の数が少なくなってくる、MSMの 研究班ではそういうことを目標の一つに置いています。それがたぶん一番早い、早いと いってもどのぐらいかかるかはわかりませんが、そういった状態を早く達成できればと 思っているわけです。こうした活動をきちんと評価して欲しい。事業としての研究と何 かを発見する研究とを区別して、厚生労働省として、今起きているエイズに対して事業 的な展開をどうすべきかという方向性を持って研究班を構築することをして欲しい。木 村先生がおっしゃった研究班の事業の部分をきちんと評価されないと、本当にそれをや っている人たちは自分たちの実際の仕事以外のことをやっているわけですので、その辺 のところも含めてこの研究体制のあり方というのを考えてほしいと思います。 ○木村座長  この検討委員会の2回目ぐらいだったと思うのですが、感染者と発症してから感染と わかった人の比率みたいなものが事務局から出されましたが、確かに大阪、東京は感染 者の比率が多い。そういう意味で検査を受けるという啓発がだいぶ行き渡ってきている のかなというふうに思います。 ○石井委員  皆さんの繰り返しになるかと思うのですが、1点目は、研究開発という項目とは別 に、事業化というような項目を指針の中に盛り込んでいただきたい。今ある研究開発の 推進の第4に研究成果の事業化という項目を入れていただく形もあり得ると思います。 もう5年間やってきた、その次の段階として、研究成果を踏まえた事業化というものが 視野に入ってくる。指針の中にそういうものを入れていただく必要があるのではないか というのが1点目です。  2点目は、きょう、初めて拝見させていただいたのですが、項目分けはいろいろある と思うのですが、研究の中でも予防なのか治療なのかという目標がわかるような形での 項目の立て方も必要なのではないか。何を目標として研究しているのかという視点があ ってもいいのではないかというのが2点目です。  3点目は次の評価の問題に入るのかもしれませんが、先ほど何人かの先生方もおっし ゃったのですが、個々の研究の評価とともに、全体として研究がどこまで進んだのかと いう評価も必要である。そうした評価の結果、次にどのような研究が必要なのかという 全体を見る委員会的な評価の機関が必要なのではないかと思いました。以上です。 ○木村座長  特に最初におっしゃられた事業化をこの指針の中に盛り込むという建設的な御意見を いただきまして、ありがとうございます。 ○関山課長  私どもは、今までの研究自体が果たしてどういう成果があったのかというところを研 究班の方々に問いたいところなのです。こんなに長くやっていて、ではあなた方は5年 間で何ができたんですか、3年間でできたんですかと。果たしてそういうことの目標設 定がきちんとできているのかどうかというところが、今、石井先生がおっしゃられたま さにそこの目標設定と、そして、できなければ今後どういうふうなスケジュールで到達 目標に至りますというところが明確に示されていないというところが、私どもが評価委 員会なりを幾らつくっても評価しようがない。評価する基準がなければ達成しているの かしていないのかわからないというのが、現時点のこのエイズの研究の状況でございま す。  そういう研究ではいけないということで、今、難病の方では、今言ったような方向で 見直しをさせていただいています。したがって、個々の研究班の目標設定と、それに投 じた対応というのを評価させていただくような仕掛けが、私ども必要だと思っておりま すので、そういったことについての具体的な御意見がいただければありがたいというこ とと、まさに事業化するに当たっても、これは事業化してもいいものかどうなのかとい うものもあるので、ここら辺は3年間ぐらいじっくりやっていただいて、だめなら例え ばそれで打ち切るというようなクリアカットにしていく必要があると思っております。 しがらみにかかわらず、そういったことでしっかりと評価させていただくというシステ ムも必要ではないかと思っております。  私ども行政的な立場から見れば、かなりいい研究をやっていただいているもの、木原 先生にやっていただいている青少年対策、それから市川先生にやっていただいている同 性愛の方々に対する諸施策、こういったものは、成果が出ているものについてはその都 度、事業化させていただいているということで、この事業化するかどうかというのは、 一つは、各地方自治体においてその手法というものが一定程度普遍性があって、普及で きるものになっているか。手法の標準化ですね。そしてその手法がわかりやすいかどう かということにかかわってきていますので、成果があってもわかりにくい、F1ドライ バーのような人たちしかできないようなものはなかなかこれは進みづらいものでありま す。したがって、ある程度わかりやすい形での手法設定、そういうものができていない ものについては幾ら投下しても進んでいないというのが現状じゃないかと思っておりま す。また行政も理解できないということだと思っております。そういうことで手法の標 準化が進めば、大体進んでいくということで、今、この指針の見直しで、各研究班の先 生方にお願いしているのはまさにそういう標準化できるような手法を今年度中に整理で きないのかどうかということを問いかけさせていただいておりますが、そういったこと が必要なのではないかと思っております。事業化についてはです。  以上でございますが、いずれにしても先ほど申し上げた目標設定をしてどういうふう な仕掛けできっちりとやっていただけるような仕掛けをつくれるのかというのをもう少 し具体的にお話いただけると、幾らやってもワクチン開発できないんですよということ では、ではどうなんですかとか、こう言われたときにこれは困るじゃないかという押し 問答で終わってしまいますので、ここら辺のことも含めて具体的に御議論していただけ ればありがたい。 ○木村座長  さっき、私の方から、実際のところでは各自治体の目標設定をしっかりやってもらい たいというお話をしましたが、今のお話は、そういう研究班についてもきちんと目標設 定して、達成されたらそれを標準化できるようにということですが、前田委員どうぞ。 ○前田委員  これまで議論してきて、各自治体が地域の実情に応じてベストなポリシーメイキング をして、それに基づいて実施していくということが一つ必要だというふうなことが一つ の論点になっているのではないかと思うのですが、そういう中で、あと一つ思うのは、 研究班の成果については非常に活用させていただいています。ただ、その活用なんです ね。ポリシーメーキングのために研究はされて、その結果を直接取り入れているという ことではなくて、活用という部分。なぜ行政側がとりにくいかといえば、これは先ほど の山本先生の話にもありましたが、きっちりtargeted grantを決めても、行政のこの施 策を推進するために研究の体系をつくって、それぞれについて成果を達成していくとい うような形での研究の体系が、エイズの研究事業すべてがというのではないですが、一 つの分野としてそういうものが今後いるのではないかと。この対策指針なり、指針の中 で政策評価の指標ができたとして、その評価の指標を目標とした研究の体系というもの を一つつくっていただければ、それは直接私ども、行政を推進するに当たって非常に活 用しやすい。どこかにおいしい実がなっていないかというふうなことで、いろいろな先 生方の研究班、これはひょっとしたらうちの方に使えるんじゃないかみたいな形でそれ ぞれやっていく。先生方は当然、研究者としての自分の考え方に基づいていらっしゃい ますので、それを、最初に話しましたように、人ということで選ぶとどうしてもそれは 先生方御自分のお考えでやっていく。ただ、効率的にやるためには今回の指針に基づい た施策評価を目的とした研究の体系というのを一つつくっていただければと。 ○大平委員  今、課長さんからのお話がありましたが、今までは研究評価委員会というのが機能し ていたわけですよね。ですから評価委員会が、行政から見てもそれなりの評価ができて いなかったという話になるんでしょうか。 ○関山課長  それはより的確な評価をしていただきたいと。 ○大平委員  そうだとしましたら、それをどういうふうに構築していくかというのは、評価委員会 の人たちについてももう一回選び直すとか、それからまたこちらの方でいろいろな評価 基準というのをどんどん注文をつけていくかとか、そういうことをして、それをグレー ドアップしていかないといけない話なのでしょうね。ただ、そこで評価委員会をかけて 評価していただくにしても、HIV感染症というのは我が国で問題になってから20年 です。その中でまだ研究段階をこれからも進めていくというか、未知の分野とか、そう いうところがあるところだと思います。そこはここで評価が出せないという問題も多い と思います。ですからそこをどう評価していくかということがまた一つ大きな問題だろ うと思いますが、その中で、日本でのエイズの問題については、先ほど小池班の指摘が 出ましたけれども、薬害被害者の救済の面の研究班というのもその中に入っていまし て、そこの評価についての困難性というのもたぶんあると思います。それは被害救済に ついての特別な国の政策的な問題として、大きな位置づけがあるということは忘れられ てはいけない問題ではないかと思います。  また、どんどん感染者がふえていっている中でのどういう対応をとるかということ と、治療体制を組むということで、それは今、研究の課題として取り組んでいかなくて はいけない政策的な問題も含めた研究体制が、必要であればどんどんつくられていかな ければならない。その中で研究班の評価をしながらも事業化を進めていく中で、全体と して本当にエイズ対策としてのお金がきちんと投下されているかどうかということも評 価していかないといけないという、その評価がどこでされるかというところも、現在は たぶんないのだろうと思いますので、それについての評価をきちんとしていく研究とい うのでしょうか、それも必要だろうと思います。ですからそういった問題で、今後かな り感染者がふえていく中での日本の医療経済の問題も含めて、どういう対応をとってい くか、指針の中で考えていかなければならない問題というのはかなり多いのではないか と思いますので、そういう研究班と、あとはそれを評価してきちんと事業化できる問題 については事業化していって、感染している人、これからもしかしてふえるかもしれな いいろいろな予防対策について、私たちから見れば人間がもっと住みやすい環境として のいろいろな施策を十分ここの研究班の中でつくっていただきたいなと思います。  ですからそのためのいろいろな予算投下というのが重要な問題であろうと思います し、それが本当に十分なのか、もっと投下しなくてはいけないかということも、きちん とテーマとして研究できるようなものが指針の中に盛り込まれていないと、全体とし て、費用対効果の問題も含めて予防指針が本当に機能して、国の施策として予防に効果 を上げているのかどうか、それからまた感染者の方たちの良質な医療を十分反映してい るのかどうかという、そういうところも含めた評価がここで出てこないと、一つ一つの 個別の研究テーマの中でいい悪いというだけではなくて、さっき石井委員からもお話が ありましたように、総合的な評価というのも十分できるようなシステムになっていない といけないのではないかと思います。 ○関山課長  今のお話、ごもっともな点もあるのですが、きちんと今の時点においての研究の優先 順位なりも合わせて、せっかくこういった場ですから、御議論いただいく。そして啓示 的にきちんとやらなければいけないということについて企画評価するということについ て、社会学系ではありますが、皆さんのお手元にございますが、平成17年ですとエイズ 対策事業の企画と評価に関する研究とも合わせてやってはおります。では今後どういう 部分について重点的に軸足を置いて見ていく必要があるのかということも御議論いただ ければありがたいということです。目標設定と今後の重点化すべき分野というのはどう いうことなのかというところも合わせて御議論をしていただければと思っております。 ○木村座長  時間がだいぶ経過してきたので、今の点についての御意見、後ほど事務局の方にお寄 せいただいて、事務局の方で少し整理してもらおうかなと思いますが、それでもよろし いでしょうか。そういうことでよろしくお願いいたします。  次に施策の評価につきまして、厚労省あるいは都道府県からそれぞれ資料が出ている ようでございますので、まずは事務局の方から御説明いただけますでしょうか。 ○事務局(大山課長補佐)  説明させていただきます。先ほど来から評価について御意見を賜っているのですが、 現在の厚生労働省における政策評価をどういう形でやっていますよというのを(5)−2 −1でまとめたものでございますので、かいつまんで説明させていただきたいと思いま す。法律的に行政が政策を評価すると義務づけられたのが、1.策定時期及び法的根拠 のところの2番目の丸に書いてあります、平成13年の法律第86号の、行政機関が行う政 策の評価に関するという法律が初めてでございまして、それに基づいて私ども厚生労働 省として、厚生労働省による政策評価を行っているというのが時代背景でございます。 ですから指針をつくる際には法的な義務がございませんでした。  その内容といたしましては、行政全体、厚生労働省全体を対象としておりまして実施 し、どういう達成を目指すのかというのが3番の政策評価の目的ということで、行政の 説明責任を徹底することから後、質の高い行政を実現する、成果重視の行政への転換を 図る、戦略的政策展開を推進するというのを書いてございます。評価の方式といたしま しては、大きく分けまして「事業評価」、「実績評価」、「総合評価」という3つの方 式があるのですが、大体大きく分けて「事業評価」と「総合評価」というのが、厚生労 働省における重点的な事業と評価されたものがその評価をとっておりまして、エイズ対 策は2番目の「実績評価」をやっております。  「実績評価」を説明したいと思いますので、1枚めくっていただきたいと思います。 2)実績評価の(2)実施方法なのですが、まず基本目標の設定をいたします。この基本 目標の設定というのは疾病対策課がやるのではなくて、厚生労働省に政策評価官室とい うのがございまして、そこが大きな基本目標を設定いたします。そして、それに基づい て我々疾病対策課の方で具体的な施策の目標を設定いたします。その施策の設定をいた しまして約1年間、施策を実施するのですが、1年後にまた再度、我々の方で評価をい たしまして、来年もやるのかどうかという自己評価をするというのが流れでございま す。その自己評価の結果、その自己評価について査定課であります会計課の目が入った り、政策評価室の目が入ったりということで来年度もまた引き続きその施策を実施して いくかどうかというのが決まります。その評価の観点というのが(2)の「必要性」の 観点から見たり、「効率性」の観点から見たり、「有効性」の観点、「公平性」の観 点、「優先性」の観点からというのを見ることになっております。  先ほどから自己評価というのを言っているのですが、自分たちだけの評価では不十分 な場合には第三者の評価も取り入れていいですよという形になってございます。その評 価をもとに、行政だけで見るのではなくて、その公表も義務づけられています。その公 表結果はホームページとかで公表しておりまして、それを見て一般の方からも意見をい ただくという形になってございます。厚生労働省なら厚生労働省の施策の評価もするの ですが、それと並行して第三者的に財務省で予算の査定が入ったり、総務省が設置法に 基づく評価というのをやる規程になっておりますので、そこから評価を受けるというふ うな形になってございます。時間がなくて恐縮でございますが、以上が大ざっぱな評価 の流れでございます。 ○木村座長  ありがとうございました。施策の評価につきまして委員の方々から御意見をいただき たいと思いますが、先ほど、藤原さんの方から御指摘があった評価について、もう一回 繰り返していただけますか。 ○藤原氏  時代が流れていますので、ターゲットというものがだんだん変わってくるということ がまず一点あるということですので、去年やっていたことがことし正しいかどうかわか らないわけで、評価も変わってくるということがまず一点と、こういう指針をつくると きにはあらゆる方々がよってつくるのですが、改めて研究班なりが実施されたときにさ れたりして、その効果があるのか、効果がないのかというときに、もう一回集まって話 をするというところがないといいますか、だれが責任を持って研究を評価して事業化し たりするというようなことがされていないということがまず一点と、さらに、先ほど言 いませんでしたが、つまりこのエイズの対策というのは既にエイズに感染してしまった 感染者に対するものと、予防という形で感染していない人に感染させないようにすると いうものと、あるいはまだ性経験がない方々、例えば小学校の教育であるとか、そうい ったようなところの方々をこういった性感染症とか、エイズとかに感染させないように させるというふうなことで、それぞれ評価の基準が違ってくると思うんです。そういっ たことを一つの尺度でやっているのか、あるいはそれぞれの尺度が必要だと思うので、 そういったものをきっちりつくっていく必要があるのではないかと考えております。 ○木村座長  先ほどの事務局からの説明では、評価の基準というのが(1)から(5)まで、「必要性」 の観点から「優先性」の観点ということで、一応この評価項目というのが定められてい て、その基準みたいなものがどうなっているかということですかね。 ○藤原氏  例えばワクチンとかであれば、できたかできないかということで評価が決まります し、予防であればあるターゲットの人が何%ふえていたのが何人かに減ったであります とか、コンドームの使用率が何%に減ったであるとかいうふうなことは比較的わかりや すい評価もありますが、例えば患者に対する医療でありますと、先ほど大平先生が言わ れたように、社会福祉の施策が後退していくことによって底辺にこもってしまうであり ますとか、なかなか医療機関とつながらないでありますとか、そういったような問題に ついての研究に対しては評価というものが非常にしにくいものもあると思うんですね。 そういったことが、きちんとした個々によっての基準が定められていて、それを評価し ているのかどうかということが不明なのではないかと考えております。 ○木村座長  現時点で何か事務局の方から御意見、ございますか。なければ東京都の方のお話を聞 いた後、まとめてということでもいいのですが。ではそうしましょうか。前田委員の方 から東京都の方の施策についての資料が届いておりますので、よろしくお願いします。 ○前田委員  厚労省のこの評価指標を見た後でこのような事業計画的なものをお見せするのは非常 に恥ずかしいところではございます。幾つかの県では総合的に政策評価されている県も ありますが、東京都も、先ほど厚労省からありましたように、重点事業のみが事業評価 されておりますので、エイズ対策についてはそういう詳細な資料はございません。その ため本日は実施計画と事業結果についての中間報告の資料のみお持ちさせていただきま した。  こうしたエイズ対策につきましては、東京都のエイズ対策の基本方針というものをつ くりまして、それに基づいて実施しております。それを概括表にまとめましたのがお手 元の資料の1ページというものでございます。総花的ではございますが、普及・啓発、 相談・健診、医療体制、療養支援、調査・研究という5つの分野にわたってエイズ対策 を推進するという考え方になってございます。お手元の資料は、前段は17年度の事業計 画、後段は16年度の中間の実施状況の報告という形でなってございます。お手元の資 料、一番後ろに別紙で、東京都におけるエイズ対策の推進体制というものがつけてござ います。こちらで全般的にどういう形で評価といいますか、この内容についての検討が 行われているかということを示してございます。先ほど申しましたように5つの分野に ついて施策を推進しているわけですが、基本的にこの全体的な推進、東京都としてのエ イズ対策の推進につきましては、私ども東京都の福祉保健局長が座長となりました、関 係部局長によって構成するエイズ対策の推進協議会という、これは構成メンバーとして は都の職員だけでございますが、ここで全庁的な総合調整を行っております。  この資料はその際に提出された資料でございます。そのもとに5つの分野にとって実 施されているわけですが、その分野についてすべてをここで検討するというわけではご ざいませんが、それぞれの分野に、こうした事業内容について検討する場が設けられて ございます。例えば医療体制という面につきましては、エイズの拠点病院の体制及び医 療のあり方というものにつきまして、エイズ診療協力病院、連携協議会というものが設 けられまして、全拠点病院の担当者の方にお集まりいただきまして、総合的な会議、医 科・歯科それぞれ年1回という形で医療体制について検討されてございます。この中で 各医療機関における実績等を示しながら今後の連携のあり方、この会議でも常々論議に なりました各拠点病院での実施体制の偏りでございますとか、あるいはその連携のあり 方といったものも検討されているというところでございます。また歯科につきまして は、これもこの会議で議論になりましたが、歯科外来との協力関係ということで、東京 都が実施しております歯科協力診療所の体制の運営委員会等が実施されまして、ここで 学識研究者の方も交えながらその方向性について議論をしているというようなところで ございます。  実際、この評価表を見ていただければわかりますとおり、いわゆる事業の目標を定め てということになりますと、実は結果表に書かれている数がほとんど実績でございまし て、これは非常に行政的ですが、達成できる行政指標を定めて、それに向かって推進し ていくということになりますので、ほぼ、実績の評価という意味では達成指標を達成し ているという形になっております。ただ、科学的な施策評価という部分についてはまだ 検討しきれていないというところがございます。ですので、そうした事業可能かという ところは別として、本来的に、科学的に達成すべき指標というものがまだ十分示し得て いないということで、今後、この計画をより実効性のあるものにするためにはそうした 科学的な指標づくりというものが必要になってくるというふうに考えております。以上 でございます。 ○木村座長  どうもありがとうございました。この施策の評価につきましてさらに御意見あれば、 どうぞよろしくお願いします。 ○白井委員  意見というよりも、東京都の例を示していただきましたので、口頭で神戸市の状況も ちょっとお知らせしたいと思うのですが、このような形で実施計画を、神戸市の方では きちんと立てられてはおりません。ただ、基本方針については平成5年にできて、それ を細々と継承しているような状況です。内容としましては普及啓発、相談検査、医療体 制、それと各関係機関との連携強化ということでの4本柱で実施しているのですが、数 値目標的なものはつくっておりませんで、むしろ、健康日本21の中の世代別の目標の中 で、神戸版があるのですが、青少年の項目にエイズ・性感染症を予防するという目標を 入れております。評価についてはどこまで達成できたかというようなことを、どういう ような基準にしたらよいかということがわからないというか、まだ設定できていないと いう段階です。その事業目標の中では思春期対策の中で全中学校にことしはすべて健康 教育を実施していくとか、啓発冊子をどれだけ配布するとか、数でいえばそういう形に なっています。  8月に全国の保健所、自治体に、この予防指針の中で性感染症に関する取り組み状況 のアンケートを実施しまして、これは結核感染症課の所管の方での厚労省科学研究の中 で実施したのですが、数値目標を立てているのが都道府県の自治体でいえば1カ所だけ だったのです。それと中核市、政令市では3カ所ありましたが、どのような数値目標か というのは詳しくは聞いておりませんので、問い合わせないとちょっとわからないと思 います。その所管では全国600近くある保健所の中で22カ所が数値目標を立てているとい う状況でした。実際は子育てアクションプランとか、そのような青少年に関するところ の連携が目標としては立てやすいのではないかというような印象を持ちました。  数値目標につきましては、先ほど、どのような数値を目標とすべきかというお話もあ ったと思うのですが、発症数、報告数が上がった方がいいのか、下がった方がいいのか はもちろんエイズで発症される方とポジティブな段階で発症される方の割合をこの数値 目標として見ていくのかとか、検査体制、どれだけ検査の提供をしているかということ を目標とするとか、受検者数を目標とするのか、また啓発についてもどれだけいけばい いのかとか、また研修の話もありましたが、中央の研修にはなかなか地方から行きにく いということもありますので、地区別講習のような形も結核なんかにはあるのですが、 そういうことを提供していただくとか、そういうことに参加できるというようなものを 目標にするのか、ポジティブな方を医療にどれだけつなげたかということなどを、総合 的に数値目標を立てなければいけないのかなと思っています。  自治体の中でも、プラン・ドゥ・チェック・アクションで自治体がそのような事業評 価をするような癖はついてきましたので、それに乗せていって、エイズ対策ということ もその中での評価ができるのではないかと思うのですが、大きな目標の中で、市政の中 で、経営方針の中で幹部が目標と設定しているのは実は自治体の職員の削減であったり とか、そういう問題の中で、どのような形でこのような実際の事業の対策のプラン・ド ゥ・チェック・アクションの優先順位を上げるかというのはすごく難しいと思っており ます。 ○木村座長  確かに予算も削られる自治体が多いので大変かとは思いますが、今の日本の現状を見 ると、やはり何かきちんとしたアクションを起こさないと、この流行の広がりというの は抑えられないのではないかと思います。前々回でしたか、患者、感染者の報告の様式 も少し変えて、主な居住地についての報告もいただくというような形になる見込みです ので、各自治体にそれぞれの都道府県の患者の、あるいは感染者の状況をより正確につ かんでいただいて、東京都から出ておりますようなアクションプラン、事業計画という ものを立てていって、それを自己評価していく方向性がより効果が出るのではないかと いうふうに思います。今までブロックごとにやってきましたが、そのブロックは幾つか の県にまたがるので、そのブロック拠点病院がほかの県に対してなかなか発言しにくい というような状況もあると聞いておりますので、各都道府県毎に中核拠点病院というの をつくって、そこを中心に各自治体で、医療体制を含めてより積極的に事業計画を進め ていただくというのがいいのではないかと思っております。この自治体の事業計画ある いはその評価について御意見を。 ○木原(雅)委員  白井委員の御意見に追加です。予防啓発事業の評価で、達成度を評価とする場合、例 えば、パンフレット配布数、予防教育実施の学校数、あるいは講演会実施数等というプ ロセス評価と、もう一つ、それらの啓発事業を行うことによって、実際にどうなったか という結果(アウトカム)も見る必要があると思います。日本の場合、各県レベルのH IVの感染者の報告数の動向だけで啓発事業の効果評価をするのは、とても無理がある と思います。それに代わるものとして、一般の性感染症の流行の動向を指標として見る のが大切ではないかと思います。現在、既にSTDサーベイランスがありますが、各県 レベルですると定点医療機関の数が少ないため、県の対策を評価するには不十分ではな いかと思います。できれば各県のSTDの定点医療機関の数を増やして、各県での対策 の評価をSTDの動向で見るという方法も必要ではないかと考えています。  しかし、そのような定点医療機関をふやすと簡単に言っても、具体的には難しいと思 われます。そのときに、一つ提案ですが、各県には泌尿器科と産婦人科の臨床の先生方 を中心としたSTD研究会がございます。そうした各県のSTD研究会にご協力いただ いて、定点医療機関をふやし、各県のSTDの動向をモニタリングし、県としての事業 評価をすることができればと願っています。明確な目標を設定し、実際にどのような事 業が行われ、その効果はどうであったかを評価可能な方法で測定する必要があると思い ます。これまで人工妊娠中絶率の動向をある程度の参考として使用することができまし たが、最近は、緊急避妊薬の導入などにより、中絶率の動向を予防行動の指標にするこ とが困難になりつつありますので、やはり性感染症という形で評価していく必要がある と考えています。ただし、このようなSTD感染率の減少までにはかなりの時間を要し ますので、短期間の評価の場合は、先ほどお話がありましたが、コンドーム使用率の動 向などを含む、行動サーベイランスも必要ではないかと思います。以上です。 ○木村座長  ありがとうございました。性感染症の方の指針、見直しとも絡んできますので、今の 点は性感染症の方のワーキンググループですか、指針の見直しワーキンググループの方 に申し送りたいと思います。 ○池上委員  私は東京都のエイズ専門家会議の委員なので、毎年事業計画と成果表を見せていただ いています。啓発資料をどこまで何通配布したとか、どこで事業を実施したとかはわか るのですが、その結果どうなったのというところが大変わかりにくい。ではどうしたら いいかというところで、わかりやすい方法として、数値目標というのが出されてきま す。それで検査件数の上昇ですとか、罹患率、あるいは中絶数の変化が重視されます。 数値はとても客観的に説得力があるので重要だとは思うのですが、その数値はなぜ達成 されたかという因果関係はじつはわかりにくい。数値が唯一目標みたいになりますと、 その数値を達成することに焦点が移ってしまって、それ以外のところは実は軽視される という点を常に危惧しています。  といって具体的にどういう評価を提案するのかと言われると大変難しいのですが、例 えば検査の数がふえれば疫学データは増えます。陽性の方が早めにわかって、早めに医 療に結びつくという意味でばいいのだと思いますが、果たしてそうなっているのかとい う懸賞がされにくい。一方で陰性という結果で自分は安全という誤解をしてしまうと か、検査自体はあまり予防には結びついていないという落とし穴もあることを常に意識 していないと危険ではないかと思います。 ○藤井委員  今のことと関係しているかもしれませんが、きょう資料として、高校生の性のアンケ ートというのを持ってまいりました。それといささか関係しているように思うのです が、実は昨年、全国高等学校PTA連合会で、各地でシンポジウムを行いました。その ときに、性感染症という話の中で、人工中絶の件数、いろいろなことを考えた場合に、 都会の方といなかの方、あまり変わらないということだけでも親たちはびっくりしてい たわけですね。そういった意味で、一つのサーベイランスという意味では、数値だけが 動くということも懸念はありますが、自治体でのサーベイランスというものは意外と私 は遅れているという印象を持っておりまして、それを少なくとも大人たち、親たちに教 えるという意味ではそういうサーベイするポイントというのは、もっともっと必要では ないかなと。むしろ東京とか都会の方は、逆にいえば数値が一人歩きしないように、あ るいは教育という意味でも、性教育といった意味でも、一人歩きしないかという懸念も あるのですが、むしろ地方はそうではないというような印象を持っております。  これは次の、いろいろな関係機関にどう働きかけていくかという話の中で、いわゆる 個別施策層といいますか、青少年の問題に関して、例えば学校での教育ということを考 えてみた場合に、それぞれの自治体での対応、意識というのはかなり違っております。 そういったことを考えるときに、こういったサーベイをしっかりと各都道府県でやるこ とと同時に、こういった実情を踏まえてのことを、これは後でお話ししようと思ってい たのですが、高校生という立場、青少年という立場から、ここではいつも厚生労働省の ニュアンスと文科省のがいささか違うものですから、まずは文科省の方に働きかけると いうことで、きょう、資料を持ってまいったのですが、このアンケートと同時に、文部 科学大臣の方に3月に要請をしてきたところであります。  ちょっとこれはまた話がずれるかもしれませんが、いろいろな研究の中でどうしても エイズ、あるいはSTDから来るそういう健康というものの有害さを教える方から、特 に高校生の親たちに対しては出発してきたわけですが、このアンケート等をとった結果 からはむしろ教える立場での、即病気という立場からの教え方でなくて、もっと人間と してのコミュニケーションづくり、あるいは人との関係といいますか、そういったとこ ろまで踏み込んでの教育というのは必要だと思いまして、これは厚労省だけではなく て、文科省も絡みますし、ある意味では、先ほどから話がありました研究のテーマにも もっとそういったところからの視点での研究、あるいは調査研究といいますか、そうい ったものをもっと進めていただきたいと思っておりますので、話はいろいろ飛びました が、そういったことを要請しますし、先ほどから聞いている話の中では、やはり自治 体、特に東京ではなくて、もっと地方での現状ということを、ちょっとニュアンスが違 うということだけわかっていただきたいと思いまして、今発言させていただきました。 ○木村座長  ありがとうございました。今御指摘があったように、関係機関との連携というのはき ょう、やらなくてはいけない項目の一つに入っております。時間も押してきましたの で、これの資料について事務局から御説明いただいて、合わせて、短時間ですが議論し たいと思います。事務局の方から、関係機関との連携についてお願いいたします。 ○事務局(大山課長補佐)  この項目を入れた趣旨は、従来からいろいろな医療とか、啓発活動の議論の中で関係 機関との連携が必要だというのが結構言われてきたとは思うのですが、改めてこういう 部分が抜けていますよというのがあればと思いまして項目を入れました。資料は特につ けてございません。自由に言っていただければありがたいなと思います。 ○木村座長  今、御指摘があったのは文科省との関連、連携ということですね。 ○藤井委員  そうしましたら今の話の続きになりますが、青少年の問題というのは、私は高校のP TAの代表として出ているわけなんですが、高校生というのは非常に最近は若年化して おりますので、精神的にもちょっと幼いなという子がおりますので、小中のPTAと関 係しているようでもありますが、いわゆるティーンエイジャー、あるいは若い人たちの 問題とも非常に関係しておりまして、そういった意味では、個別に施策を立てる層であ りますから、自治体ではなかなか解決できない部分が非常にあるわけです。そしてまた いろいろなものを含んでおりますので、どうしても厚生労働省サイドの、もっとわかり やすく言いますと医療的なサイドからの話だけではなくて、教育的なサイドからの取り 組みということを少し入れていただきたいという話の中で、厚生省と文科省の話し合い をもっとしていただきたいというふうにも考えているわけです。  ここで資料として、特にこの1枚ございますが、文部科学大臣の方にお願いした中 で、今、非常に問題なのは、このアンケートから出てきたのは、いわゆる性の情報が早 期から暴露されているためにいろいろ起きることですね。こういったことが、これは高 校生だけではなくて、若者全体に言えることでもありますし、もう一つは、3番目に書 きました予防教育の充実という中でも、これはぜひこういう文章をつくる上でお願いし たいのは、コンドームの正しいつけ方の教育というふうにすぐ考えてしまいますが、子 供たちのいろいろな知識の差、あるいは状況の差によって大変違っているわけなので、 そういう個別の教育のあり方というのをもっと考えてほしい。それは高校生だけではな くて、もっと青少年全般に言えることだと思いますので、本当にこういった部分に関し ては教育という面からのアプローチをもっともっと指針に入れ込んでいただきたいとい うふうに考えております。そういったことでちょっと資料を持ってまいったのですが、 これは実は木原先生の方でまとめてもらったアンケートでもございますので、この緑の これを少しまた参考にしていただければいいかと思います。 ○木村座長  ありがとうございました。きょうはちょっと時間がなくなってしまいましたので、た だいまのこの1枚紙、それから緑色の冊子についての御意見についてもまた事務局の方 にお届けいただければと思います。この部門が最もふさわしいかどうかわかりません が、私にも個人的に御意見をいただいているものがありまして、それは各企業の役割と いうことです。国民のかなりの部分が会社員ということでいるわけですが、そういう社 員教育、あるいは企業としての社会貢献の一つとしてエイズ対策にどう取り組むか、こ ういったこともきちんと指針の中に盛り込んでいくのがいいのではないかという御意見 をいただいております。御意見については事務局の方にメールでお送りいたしたところ でございますが、それに関連して、企業の中でも特にマスコミ関係の役割というのも大 きいのではないかと思うのです。NHKのような公的なマスコミは国民に対していろい ろな正しいメッセージをきちんと伝えていく必要があるでしょうし、そういった企業と しての役割というものもあるのではないかと思いますので、そういった点も指針の中に 何らかの形で反映できればと思っております。ほかに関係機関との連携というところで 御意見ございますでしょうか。 ○長谷川氏  ここの関係機関連携というのはどの範囲を言っているのか十分理解していないのでち ょっと的外れかもしれませんが、NGO、あるコミュニティでの予防活動というのは、 特に先ほど申し上げましたMSMの中において、そのボランティアの動きというのはか なり大きく貢献しているわけですね。そのときに行政、特に保健所ですとか、そことの 連携を図ろうとするときに非常に難しい部分、制限が出てきます。それはどうしても保 健所の枠の中での活動とコミュニティでの活動の温度差がある。それと制限がどうして も行政主導になりがちで、当事者性がそこの中で失われがちになってしまうというこ と。あと病院と保健所の連携とか、そういったさまざまな連携のあり方を今後、検討し ていく必要があると思っています。 ○木原(雅)委員  施策の評価モニタリングに話を戻しますが、先ほど藤井委員が言われたように、学校 で子供たちを対象とした知識・意識・行動の定期的なモニタリングも必要ではないかと 思います。定期健康診断と同様の感覚で、“定期意識診断”が実施できればと考えてい ます。具体的には例えばマークシート方式を用いるとあまりコストもかからずに実施で きるのではないかと思います。さらに、高校卒業後あるいは学校外の人たちに対して は、質問数を限定してランダムサンプリングによるオムニバス調査に加えると、コスト もかからずサンプルの代表性も保証された方法で、意識、知識、行動の変化を客観的に モニタリングできると思います。 ○山本委員  また関係機関、そちらにちょっとだけ戻るのですが、こういうものがなくていいのか なと思ったのは、宗教的な関係なんですね。例えば、日本人というのはほとんどが無神 論者というようなことになるかと思うのですが、性教育に行く前に重要なことというの は、生命の教育というか、ありがたさというか、そういうことなんですが、仏教徒の方 にしても、キリスト教の方にしても非常に重要な観点をお持ちなんですね。だからそう いう方面のことはいいのかなというのは質問です。 ○木村座長  それではそれは事務局の方で項目の中に盛り込めるか検討いただければと思います。 ○市川委員  関係機関との連携になるかどうかなのですが、例えば基礎研究などのエイズに関する 研究ではあると思うのですが、国レベルでの研究センター的に予防啓発にかかわる研究 をやっている場所があるかというと、日本ではないように思います。例えば疫学情報を 集めて、ニーズを見つけて、そこにどういう対策を立てていくかという視点を持った研 究の場所がどこにも日本にはないと思うのです。たぶん医療については今まで長年、非 常に大変な時期を経ながらも体制をつくっていると思うのですが、予防に関して見ると どこでそれを担っていくのかという場所がないように思うのです。予防というのは感染 する前の人だけを対象にしているわけではなくて、感染した人の社会復帰も含めていま す。そういう視点でやっているセンター的な場所が日本にはない。これについて、厚生 労働省あるいは文科省といったところで何らかの形で疫学あるいは社会学的な研究セン ターをつくるということを考えてほしい。そこにある程度集約するようにする。エイズ の研究者は今非常に少ないです。本当に、そのことを考えるとこの先どうなるのかとい う心配がありますので、こうした点もぜひ考えてほしいと思います。 ○関山課長  宗教のお話というのは一つの事例として受けとめさせていただいてよろしいですね。 要するにこれは、大平さんからも常々お話がありますが、自分の体を大切にということ に尽きると思いますので、したがって宗教のお話というのはいろいろな方々がどういう アプローチをするかという、その方々の考えによって自分の体をいかに大切にしていく かというようなとらえ方でよろしいかということと、今のセンターをつくればいいとい う話については、箱もの主義的な発想になりかねないので、コンテンツも含めてよく御 議論していただく必要があるんだろうと思っております。それも含めて整理はさせてい ただきます。 ○大平委員  関係機関の問題ですが、厚生労働省とか、文科省の方に働きかけとか、いろいろ頑張 っておられると思いますが、総合対策としての国のあり方というのが、政策的な決定に も一番重要な位置づけがあると思います。このエイズの問題というのは国全体で最初取 り組み始め、そしてエイズの総合対策大綱とか、そういうのが出ました。そこの中から だんだん厚労省の方でいろいろと担当官が担当して日本全体のエイズ対策というのを広 めてきたわけですが、もう一回、国全体としてこうした状況になった中で、戻っていた だいて、もう少しエイズ大綱として、例えば総理府の公報ですとか、法務省の方とか、 労働環境を整理するとか、もう一度、指針の中に盛り込む中で欠けている面があるかも しれませんので、そういった点も私たちの方も御指摘させていただく中で充実させてい ただきたいなと思います。 ○石井委員  最近、性教育はけしからんというような報道もなされたりするので、エイズ対策とし ての性教育の必要性みたいなものを発信していく、そういう関係機関との連携も必要だ と思います。もう一つは、労働の場における差別の問題がある、人権擁護は全体の中で 議論するということでしたが、そういう観点からも関係機関との連携を深めて対策をた てとていく視点が必要なのではないかということです。  また、評価という点では、きちんと分担を定めないと評価はできないのではないかと 思いますので、役割分担を明確にしていくことが必要なだと思います。 ○木村座長  どこが何をやるかということをはっきりさせることが大切とのご意見をありがとうご ざいました。さて、時間となりましたので、この4段表につきまして、議論の視点とい うところに項目が挙がっていながら、対応策について特にブランクになっているところ についてはメール等でできるだけ御意見を書き込んでいただけるとありがたいと思いま す。本来ならばこれにもう少し時間をかけてこの場で御意見を伺うべきでしたが、時間 が来てしまいましたので、きょうはこれにて終了にしたいと思います。長時間にわたっ て、どうもありがとうございました。次回以降の予定につきまして事務局からお願いし ます。 ○事務局(川口課長補佐)  次回、第6回につきましては5月13日の金曜日、時間は本日と同じ午後2時から、場 所につきましては経済産業省10階の会議室を予定しております。また、第7回、最後に なりますが、これにつきましては5月30日の月曜日を予定しております。次回からは基 本的に総括討論ということで、これまで御議論いただきました内容を今一度整理してい ただきたいと考えております。以上でございます。 ○木村座長  ありがとうございます。次回と次次回はできれば報告書をどういう文言にするかとい う辺りの、できれば事務局で原案的なものをつくっていただいて、それに対する御意見 をいただきながらという形にしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。きょう はありがとうございました。                                     (了)