05/04/08 労働政策審議会雇用均等分科会第43回議事録            第43回労働政策審議会 雇用均等分科会 1 日時: 平成17年4月8日(金)14:00〜16:00 2 場所: 厚生労働省専用第21会議室 3 出席者:    労側委員:岡本委員、片岡委員、篠原委員、佐藤(孝)委員    使側委員:川本委員、前田委員、山崎委員、渡邊委員    公益委員:若菜会長、今田委員、奥山委員、佐藤(博)委員、横溝委員 ○若菜分科会長  ただいまから、「第43回労働政策審議会雇用均等分科会」を開催いたします。本日 の欠席委員は、吉川委員、吉宮委員、樋口委員です。  では、早速議事に入ります。本日の議題は男女雇用機会均等対策についてです。今日 は、その論点のうち、ポジティブ・アクションの効果的推進方策と、セクシュアルハラ スメント対策について、ご議論をいただきたいと思います。では、事務局からポジティ ブ・アクションの資料のご説明をお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  では、ポジティブ・アクションの効果的推進方策に関する資料についてご説明いたし ます。資料は4種類用意いたしております。  資料No.1−1は、男女雇用機会均等政策研究会報告書のうち、ポジティブ・アクシ ョンの効果的推進方策に係る部分の抜粋です。すでにご説明いたしておりますので簡単 にご紹介いたします。1頁の下にポジティブ・アクションの普及状況(平成12年度)、 少し古いデータですが、女性雇用管理基本調査について数字をご紹介いたしておりま す。「ポジティブ・アクションの意義や必要性についての理解は進みつつあるとみられ るが、なお大きな広がりをもった動きには至っていない状況にある」との認識を示して おります。その上でこの研究会では、諸外国におけるポジティブ・アクションの取組状 況についてまとめております。各国の取組は様々でした。具体的には2頁以降で、イギ リス、アメリカ、フランス、スウェーデンの4つの国の例をご紹介しております。その 上で3〜4頁にかけて、「我が国においてポジティブ・アクションの効果的推進方策を 検討するに当たって留意すべきこと」ということで4点まとめております。  資料No.1−2は、現在均等法の第20条に基づき、ポジティブ・アクションに取り組 む事業主に対し国が援助を行っているところですが、ここではポジティブ・アクション を推進するために実施している主な施策を取り上げております。最初に挙げております のは、企業の自主的取組のガイドライン及び現状の分析と問題点の発見のためのワーク シートの策定・普及です。2つ目は、財団法人21世紀職業財団に委託をし、実施してい るもので、業種別使用者会議、ポジティブ・アクション普及促進セミナーの開催です。 3つ目は、均等推進企業表彰の実施です。括弧内にありますように平成11年度以降、 253社、表彰をしております。このうち厚生労働大臣表彰29社については別添1として 添付しております。  次に掲げておりますのは経営者団体との連携によるポジティブ・アクションの普及促 進です。「女性の活躍推進協議会」という形で開催をしているところです。これについ ては別添2で後ほどご紹介いたします。最後がベンチマーク事業の実施です。これも21 世紀職業財団に委託をし実施しているもので、女性の活躍推進協議会で取りまとめた提 言に基づいて実施することとなったものです。企業がポジティブ・アクションに取り組 む際に、具体的な目標を立てて取り組むのが効果的である、その際にどのような目標を 立てたらよいのか、そのよすがとなるような情報を提供するために診断表を配付し、参 加した企業に対し同業種・同規模の企業と比較した自社の取組の状況を、客観的に把握 できるような診断結果をフィードバックする、そしてアドバイザーも派遣するといった 事業です。これも別添3で後ほどご紹介いたします。  別添1は平成11年度以降、厚生労働大臣賞を得た企業の一覧です。平成15年度、平成 16年度においては、この表彰区分のうち上のほうの区分、最優良賞に企業を初めて表彰 することができております。別添2は、これまでの女性の活躍推進協議会の活動状況で す。これは平成13年度に立ち上げたもので、最初にポジティブ・アクションのための提 言の取りまとめを平成14年4月に行っております。そして、その普及のためにフォーラ ムを実施しております。また1年遅れで各都道府県の労働局でも同様の組織、女性の活 躍推進協議会を設置、開催しており、ここにありますような活動例のとおり、さまざま に工夫をこらして実施しているところです。ベンチマーク事業は毎年3万社に診断表を 配付しており、ここにあるような回答が企業から寄せられており、この中で集計・分析 をしてフィードバックするということです。  均等推進企業表彰の実施方法の見直しでは、表彰制度自体は平成11年度から実施して いたわけですが、これをより効果的に進めるべきではないかという観点から、協議会の 提言を受けて平成15年度から公募制に切り換えております。公募制に切り換えるという 観点から選定の基準、表彰基準を明確にし、それを外部にオープンにする。さらには、 手を挙げやすいようにという観点から、従前、一区分でありました都道府県労働局長賞 に、もう1つ奨励賞を設け受賞しやすい仕組みとしております。  6番目ですが、女性の活躍推進協議会の中で、いわばユーザー側に立って、非常に必 要ではないかという観点からここに掲げてあるような資料を作ってきております。この うち『動き出すポジティブ・アクション』については後ろに添付しております。また、 いちばん最後にあります『本気のポジティブ・アクション』、これは平成16年度に作成 したもので、従前の取組として、現場の中間管理職の果たす役割が大きいにもかかわら ず、そこに目を向けた情報発信なり、そういうものが十分ではなかったという観点に立 ち、インタビュー形式で行い作成した資料です。  別添3はベンチマーク事業の流れです。毎年6月に3万の企業に対し診断表を配付 し、その回答を集計・分析し診断結果を作成いたします。さらには、参考となる情報も 合わせてフィードバックする。大企業はそれで終わりですが、中小企業に対しては、雇 用管理アドバイザーが訪問し、結果の解説、アドバイスをする事業を行っているところ です。実際に返信する「診断結果」の例もその後に付けておりますので、後ほどご参照 いただければと存じます。  資料No.1−3は、第36回雇用均等分科会に提出した資料からの抜粋です。ポジティ ブ・アクションの取組状況等についてまとめたものです。この説明は省略させていただ きます。  資料No.1−4はポジティブ・アクションに係る規定等です。1頁は均等法の関連す る規定ということで、特例を定めた第9条と、ポジティブ・アクションについて国が援 助することができるという第20条を載せております。2頁は第9条の特例の関係の指針 です。3頁以降は通達で、「12」と書いた所は法第20条、ポジティブ・アクションに関 係する規定について具体的な通知で示しているものです。資料説明は以上です。 ○若菜分科会長  ただいまのポジティブ・アクションに関して、ご意見、ご質問等がありましたら、ど うぞご自由にご発言ください。 ○岡本委員  連合としてポジティブ・アクションの考え方をまとめて私から申し上げます。ポジテ ィブ・アクションの有効性についてはここで改めて申し上げるまでもないのかもしれま せんが、今日いただいた資料の中にも、ポジティブ・アクションを積極的に行っている 企業としてのプラス効果というものが、具体的に数字として示されています。これから の企業はユーザーからの多様な要望に的確に反応していくことがより重要だと思いま す。そうしたことができない企業が淘汰されていくのだろうと思います。そのために企 業に多様な考え方を持つ人材をきちんと位置づけていく、多様な価値観を持つ人材がい て1人ひとりの能力をきちんと引き出していくことが、より重要になるのではないかと 思います。  ただ現実は、資料にもあるように、女性の活用は諸外国に比べても非常に立ち遅れて いると言わざるを得ません。報告書にもあったと思いますが、いまは企業への投資判断 としても、その企業における女性の活躍度が評価される時代になりました。これは連合 も関わって作った資料ですが、資生堂のCSR部の山極次長がポジティブ・アクション についてお書きになっております。その中で、本当にポジティブ・アクションというの は人材への投資なんだということを力説されています。また資生堂においては、女性の 要員構造の問題からいって、この先10年後に女性が位置づけとして増えていく、そのと きにどう活躍してもらうかを今から考えなければいけない、場を与えなくてはいけない ということが書かれています。  これは蛇足ですが、実は私の所もつい最近理事が全員代わったのです。女性が誰もい なかったということで非常に大きな批判を世の中から浴びました。管理職はもちろんい るわけですが、マネジメントをしていくというのでしょうか、そういった部分について 十分にやってこなかったのだろうと思いましたし、そのことをやることは、やはり時間 がかかるということを私自身、実は実感したところです。  そうしたことを考えますと、連合としては、まず均等法に、事業主のポジティブ・ア クションの行動計画の作成と実行の義務を明文化するよう求めたいと思います。この行 動計画は2年ごととします。ただし、法施行後3年間は、常時使用される労働者が100 人未満である事業主については、行動計画の作成は努力義務とします。これはコスト面 を配慮してのことです。なお報告書の中には、事業主のコスト面についても触れられて いましたが、ポジティブ・アクションを積極的に行っている企業へのインセンティブも 併せて必要だと思います。  例えば、次世代法の行動計画では「次世代認定マーク」が与えうるのですが、このた めに企業も積極的に計画に取り組んでいることを新聞等でも書かれています。現在は 「均等推進企業表彰」がありますが、企業のインセンティブに資するためには、この認 定マークのようにもう少し見える形のものも検討したらどうかと考えます。また中小企 業の取組がどのように進むかが非常に重要なポイントになるかと思いますが、そのため にも税制上の優遇措置も検討課題にしてほしいと思います。労災保険には、いわゆるメ リット制がありますが、例えばポジティブ・アクションに取り組んだ企業は何らかの優 遇措置をすること、または助成金を出すということも考えられるのではないかと思いま す。こうしたことを検討していくことも、企業がポジティブ・アクションに取り組む一 助になるのではないかと思います。  いま積極的に取り組んでいる企業も出始めていると思いますし、厚生労働省も相当支 援をされていますが、もう一歩進めた取組が必要だと思い、連合としてはこういった形 の考え方をまとめました。 ○佐藤(孝)委員  関連して言いますが、いま認定マークの話が出ました。行動計画について、連合とし て策定ということを言っているわけです。認定マークは先日の新聞にも記事が出ました が、食品関係が積極的であるという話がありました。当然業種の性格から、商品に認定 マークが付く付かないというのは、その企業のイメージ、消費者のイメージがついてき ます。  私はフード連合出身ですが、ほとんどの企業が認定マークを取るという動きがありま す。今までは積極性があまりなかったのですが、そういうものが1つのきっかけとな り、ただ認定マークを取るというだけではなく、企業がそれを取ろうとなると末端ま で、社内で通報といいますか、連絡も取りますし、逆に言うと企業も宣伝もするという ことになって、そういう点では大変効果があったという感じを受けております。ただ、 実際の効果があるかどうかはこれからの問題ですが、そういう気運になったという点で は、今回そういうようなものを少し考えたような行動計画の作成を義務化することが重 要ではないかと思っています。 ○川本委員  私どもも当然ポジティブ・アクションを進めています。先ほど企業にとっても進めて いることが効果があるというご発言もありましたが、それは同じであります。併せて、 お手元に『動き出すポジティブ・アクション』ということで、厚生労働省と女性の活躍 推進協議会とで作ったパンフレットも配られております。これには経営者側のメンバー も加わっている会合ですが、こういう取組は非常に重要だと思っております。  先ほどの義務化の話ですが、これについては難色を示さざるを得ないと思っておりま す。日本はイギリスと同じような形で、使用者の自主的取組を尊重する制度をとってい て、それを政府が支援する形になっております。均等法第9条で、ポジティブ・アクシ ョンの取組は妨げるものではないということになっており、そして第20条で、企業の自 主的取組に対して国が支援するということになっております。ポジティブ・アクション は事業主のみならず、現場の上司であったり、女性従業員本人の意識や取組、併せて男 性従業員の意識や取組ということがそれぞれあり、そういう取組に対して、それぞれの 立場の対応はどうしても必要だろうと思っております。  したがって、企業の努力も必要ですが、実は個々人の実力アップをどう図っていくか も非常に重要であろうと思っております。現行の規定上、また考え方で、企業は自主的 にやっていくのだ、これを進めていくのだという考え方がいいのではないかと思ってお ります。縛りをかける義務化は、現状の考え方の趣旨にそぐわないのではないかと思っ ております。  表彰制度では、この表彰制度をより大々的にして認定マークのようなものというお話 もありました。先般次世代の認定マークがありましたが、それと少し違うのは、これは 結果の数字を求めているという意味合いのものでもないので、大々的にした場合はどの ような基準を作り得るのかと思っています。つまり、全体のコンセンサスを得て、どの ような基準の中で認定マークを出していくのかは大変難しい問題なのかなと、簡単な話 ではないのかなという気がします。  極端な例で言うと、例えば創業以来女性の上級管理職が1人もいなかった企業があっ たと、そういう中で1人の上級管理職が出てきた企業と、一方女性の上級管理職が多い 所で、そこはさらに増えましたという所があった場合、どちらをどう評価するか、少し 技術的な話になると結構難しい問題があるのかなという気がいたします。また、職種や 産業・業種によっても状況はだいぶ違うでしょうし、だからといって職種とか産業ごと に基準を変えるのも簡単なことではないような気がしますし、技術的にはなかなか難し い問題があるのかなと思ったところです。これは感想です。  もう1つは、このポジティブ・アクションは、いちばん最初のころ議論しておりまし た「男女双方差別禁止」という話になってきた場合は、どう取り扱うのかなという、実 はこういう問題もあるかなと思っております。いろいろな数字、データ等が出されてお りますが、平均的な数字を見たところの実態から見れば、やはり女性のポジティブ・ア クションを進めていく必要があるだろうという考え方もあろうと思います。一方で、男 女双方の差別禁止ということになってきた場合は、理屈というところからいきますと合 わなくなってくるのかなと。その中で、一方の性だけのポジティブ・アクションとなる と非常に理解を得にくかったり、理屈が通らなかったりするものもあるのかなと思って おります。  いずれにしても問題の本質は、女性、男性それぞれの意欲や希望にどう機会を与えて いくかということであって、結果的に男女同数とか半々を目指すということではないは ずだと思っております。男性が少ない所には男性に対するポジティブ・アクション、女 性の少ない所には女性に対するポジティブ・アクションという考え方もあるのですが、 そういうことで単純に進めていいかどうかというのも、多少疑問があるというか、どう したらいいのかなと迷っているところです。この問題は、男女双方となった場合は考え 方を少し深めて議論をしたり、私ども自身も、もう少し検討を深めてみたいなと思って いるところです。 ○山崎委員  行動計画の義務付けという話がありましたが、その前に中小企業のデータを見ても普 及がなかなかされていないということがあります。ポジティブ・アクションという言葉 自体が、こういう所でやっていると何だかわかるのですが、町へ出たとき、ポジティブ ・アクションという言葉自体がまだわかっていない。ご案内のとおり「男女共同参画社 会基本法」の中には、積極的な改善措置ということで書かれております。これについて は市町村あるいは国とか地方公共団体がいろいろやる義務があり、特に都道府県は計画 を立てる義務があります。市町村は努力義務のような形になっています。実際にやって いる市町村はどのぐらいあるかわかりませんが、多分半分ぐらいではないかと思うので す。  いずれにしても、市町村のほうが、行政がもう少し進んでその辺を積極的にやってい くことから始めないと、企業はそれに食いついていくことがとれないのではないかと思 います。そういう意味において、地方の公共団体が、より女性を活用する実績をつくっ ていただくことが先ではないかという気がします。もちろん中小企業あるいは企業にお いてやることは必要ですが、実態としてこういう結果が出ていることをみますと、各地 方においてはポジティブ・アクションそのものの取組は、行政からの取組がないとなか なかできないのではないかという気がします。 ○片岡委員  いま山崎委員がおっしゃった「行政が積極的にやる」ということは私も賛成です。連 合も十分状況を把握しておりませんが、行政の中ですでにやっている都道府県、市町村 レベルも含めてあるように聞いていますので、どのようなやり方をしているか。具体的 に進める前提で資料などもあれば出していただきたいと思います。いくつかインターネ ット等で検索するとそういうものが紹介されているので「ああ、やっているのだな」と いうのは、そういう点からもあるように思います。  先ほど岡本委員から連合の要求の内容に伴って、趣旨を話し合った中で、企業の社会 的な責任が非常に問われる時代、状況になっているという話もありました。自治体の中 には、例えば自治体が公契約を行う際に、その判断基準に労働条件基準のようなものが 入っていたり、中に男女平等に関わるものが入っていたり、つまり民間企業に仕事を委 託する際、その企業の女性の活躍の度合いなども判断基準にしていくという動きがある とも聞いております。これも連合の会議で知ったのですが、結構、連合の中央組織がそ れぞれの自治体に赴いて、そういう公契約に当たって男女平等の基準であるとか、労働 条件全般に関わった基準をきちんと盛り込むよう働きかけていることもありますので、 私はそういう意味からも、企業の社会的責任が問われるということに対応する上でも、 ポジティブ・アクションを今から積極的に進めるために連合が言う義務付けが必要だと 思います。  先ほど石井課長から、行政が取り組まれた内容をご紹介いただいたわけですが、それ ほど積極的にやっていても、残念ながら現状がまだまだということを受け止めて、少し 時間がかかるけれども、これから積極的にやっていくことが企業の社会的責任に応える ことにもつながるという点を含めて、今の均等法の規定ぶりに事業主への行動計画策定 義務付けを、今回、是非入れていく必要があると思います。 ○篠原委員  他の労働側委員の意見と同じような形になるかもしれませんが、先ほど岡本委員から もありましたように、積極的に進めるべきだと。また、企業の独自性を積極的に進めた ほうがいいのではないかというお話もありました。連合のほうで作ったパンフレットの 中に、21世紀職業財団の「企業の女性活用と経営業績との関係に関する調査」では、女 性の能力を積極的に推進したところ、5年前と比較したときに、売上が上がっているか 上がっていないかという指数が出ている表があり、これを見ますと、積極的に取り組ん でいる所は、5年前を100とした場合、111.5%ということで、積極的に女性を活用した ほうが売上にもつながっている、というデータもこの中にありました。このような点か らポジティブ・アクションを今後も積極的に進めなければいけない。特に大手はポジテ ィブ・アクションに積極的に取り組まれていると思いますが、中堅・中小はなかなか進 んでいないというところもありますので、今後そういうところに対してどのような方策 をとるか、行政だけではなく、やはり企業も一緒にやっていくべきではないかと思いま す。  そういう中で何点かご質問をいたします。今日いただいた資料No.1−2の所のベン チマーク事業と別添3で、中小企業に対してアドバイスを行うとなっております。昨年 の例で結構ですが、中堅・中小企業にアドバイザーが行った件数はどのくらいでしょう か。  あと、資料No.1−1の4頁に、(2)「企業及び行政それぞれにコストを伴う」とあり ます。この辺りのコストは、どのくらいを想定されているのでしょうか。 ○石井雇用均等政策課長  お答えいたします。中小企業にアドバイザーが行った件数ということですが、この仕 組みは大企業には単に送るだけで、中小にはアドバイザーが全部行くことになっており ます。ただ、業種によって中小企業の規模とする人数に違いがあります。資料No.1− 2の別添3の別紙1の3頁の「参考」で、参加企業数8,701とあります。300人未満の所 が概ね7,000社前後。どうしてもアポイントメントが取れずに行けなかったもの、取り こぼしがあると思いますが、このくらいのオーダーの企業に対し、実際にアドバイザー は行っています。これは過去2年間の実績です。  2点目のコストの関係ですが、資料No.1−1で、具体的にどのぐらいというのは、 金額ベースではなかなかお答えしづらいのですが、ここで念頭に置いたのは、同じ資料 No.1−1の2頁に、「政府調達企業への雇用状況報告及び改善のための計画の提出の 義務付け及び審査を実施する例」としてアメリカの例を取り上げております。アメリカ は一定規模以上の政府契約を締結する事業主に対して統計的分析と計画を毎年作成を求 め、なおかつ、必要に応じて審査があるというスキームになっております。「この手法 については」以下をご覧いただきますと、確かに「一定の効果は上がっている一方、企 業においては毎年実態把握や計画を策定しなければならず、政府も審査体制を整えなけ ればならないなど、各々コストを伴っている」。ここで言うコストは、企業側のコスト だけではなく行政側のコスト、双方を指して言っているものです。  ちなみにアメリカの場合は、これは奥山委員がお詳しいので後ほど補足があるかもし れませんが、マイノリティと女性について具体的にどのぐらい雇っているのか。それと 活用状況、どのぐらい活用ができているのか、通勤可能な地域の中で、どのぐらい資格 を持った人がいて、何パーセントぐらいそれを十分使えていないかという分析をし、具 体的にそれに基づいて、来年の採用計画で何人、あるいは何パーセントそれを埋めてい くか、あるいは内部登用でどのくらいそれを埋めていくかという詳細な計画を策定し、 1年後の実施状況、問題点などをまとめ、それがギャップがある限り、そういう計画を ずっと作っていくという形になっております。抜き打ち的に審査もあり、あまり件数は 多くありませんが是正をしなさい、契約企業の対象から除外しますといったところまで 入ってきますので、審査自体は相当厳密な形になっております。例えばこういったよう なイメージで捉えていただければと思います。 ○奥山委員  ここでいう企業及び行政それぞれにコストを伴うということは、私ども研究会で、特 にアメリカなどポジティブ・アクションを積極的にやっている所を調べたときに、お金 の問題といいますか、量的にどのぐらいコストがかかるかというのは、どこの国でも調 べたものはないのでおおよその推測でしかないのです。特に企業の場合は企業の規模で 大企業がやる場合と中小企業がやる場合では、やはり経済的な余裕度が違いますから、 そこでもコスト負担の重さがだいぶ違ってまいります。  ポジティブ・アクションでも多様なものがありますので、どういうものをメインとし てやることにより違ってきます。特に教育研修などは直接的にお金のかかるものです。 意識改革のようなものはお金は必要ありませんが、何をポジティブ・アクションでやる かによっても企業にとってはコストが変わってきますので企業に対し一律にこのぐらい のコストがかかるというのは言いにくいところがあります。  行政にとっても、特にアメリカの場合は、一定規模の一定額以上の契約を政府や連邦 ・州と締結する場合は、ポジティブ・アクション・プログラムを立てなければいけない のです。そのときに毎年計画を出させるわけですが、アメリカの予算不足、人員カット などで毎年行政が各企業等から出されてきたポジティブ・アクション計画、アメリカで は「アファーマティブ・アクション・プラン」といいますが、そういうものを見てい く、いわば時間的、コスト的余裕がないのです。私がお聞きしたところ、行政の担当者 は、やはり毎年きちんとやるべきだが、それはいまのような事情でできなくて、結局5 〜6年に1回、抜き打ち的にポンと調べていく、業種や規模を探りながら抜き打ち的に やる。企業の意識からすれば、これは理屈の問題ではないのですが、何でうちがという ような形で少し不公平感が出てくることもある。それは避けなければいけないのでいろ いろ努力しているのですが、結局はそういうことが、行政にとっても管理・監督をして いるときにかかるので、そういう中でどれだけコストを考えながら法律的にやっていく のかが、非常に大きな課題なんだという話を聞いています。  そういう点では、こういうポジティブ・アクションを進めることは非常に意義のある ことですが、やはり企業・行政にとって、何が効果的な、つまり必要なコストをかけな がら求める成果が出てくる方法として何がベストなのかということはどこの国でも悩ん でいる、あるいは、努力しているところだと感じております。 ○岡本委員  企業が自発的に取り組んでいくものだという話がありました。私も今回初めて『動き 出すポジティブ・アクション』を読み、こういう考え方を持っているトップが、すべて の企業にいたら本当に世の中変わるなとつくづく思って大変この言葉に感心したのです が、残念ながら今回のデータにもありますように、なかなかその広がりをもっていな い。この数年間の中でも広がりをもっていないということから言えば、やはりそこに何 らかの形のものが必要だと、つまり法改正が必要だということを改めて申し上げておき たいと思います。  認定マークについては、これも1つのポジティブ・アクションと。それこそ名前のと おり、企業が行っている所に何らかの積極的なインセンティブがあったらどうだろうか という中で、認定マークということを私たちとしては検討したわけです。テクニカルな 問題は確かにあろうかと思いますが、いまの厚生労働大臣の表彰のようなものである と、なかなか広がりをもたないというのでしょうか、あまりわからない。世の中であま り知られていないことも含めてです。テクニカルな部分は、これからこういう形でやり ましょうということであれば、検討課題になっていけばそこで解決していくものではな いかと思います。  男女双方という考え方で言えば、均等法そのものが基本的には男女ということで議論 をしてきたわけですから、もちろんポジティブ・アクションも、本来的に言えば男女か かわりなく行っていくものだと思いますが、いま現実は、やはり女性の登用に対して、 あまりにも大きな差があることから言えば、当面は女性に限ってというのでしょうか、 女性の部分についてのポジティブ・アクションというものを、まず積極的にやっていく ことが必要なのではないかと、連合としてはいま整理をしております。  コストについては、コストがかかるからこそ何らかの優遇制度が必要になるのではな いかと思います。ただ、行政の性格からして審査をしていくことの行政側のコストは私 もよくわかりますが、こういった計画を出していくことにどれだけ企業のコストがかか るかというのは、私はちょっとわかりません。特に日本のように終身雇用制度の中で は、どの企業も労務構成の把握は当然されていると思いますし、それの分析も基本的に されているのではないかと思います。持っている要員構造の把握、知っているものにつ いて計画を具体的に出していくところにどれだけのコストがかかるのかというのは、個 人的にはちょっと疑問があります。  ただ、先ほどおっしゃったように能力を引き出すための研修にはお金がかかることは 十分理解できますが、まさしくそのことがポジティブ・アクションは人材への投資なん だと資生堂の方が言われているように研修は当然企業にとって行うべきもの、能力を引 き出すための研修というのは当然企業が行うべきだろうと思いますので、そこのところ は、もちろんバランスの問題もあるかもしれませんが、それを超えてでもきちんとやっ ていくことが、より有効ではないかと思います。 ○山崎委員  先ほども言いましたが、やはりPRが浸透していないのが根本にあると思います。法 律などが改正されたときリーフレットやパンフレットを出されると思いますが、大体何 万通、100万ぐらいの単位なのでしょうか。先ほど3万のベンチマークとか、7,000の中 小企業と言われましたが、事業所数は460万ぐらいありますし、企業数は370万あって、 99.7%は中小企業です。全部は無理だとしても、それだけの数があって、いろいろな施 策も活用しているのは本当に一部の企業で、知っている所は何回も何回も繰り返してや るのでしょうが、知らない所は全く、存在さえ知らないというのが実態だと思うので す。我々の経済団体がやっていないということもあるかもしれませんが、知らしめるこ とが先決で、どんどんついてこいというやり方もありますが、もう少し浸透してからや るべきではないかという気がします。 ○石井雇用均等政策課長  ベンチマーク事業については、これは10年計画で企業規模30人以上、全部、総当たり で送るつもりですので、いずれ全部行き渡るだろうと思います。ただ回答のない所は、 そういうものが来ても左から右へということで、トップの目に止まらないままに終わっ てしまうこともあり得ると思います。  資料の関係では言われるとおり予算にも限りがあり、一定部数作った後は市販という ことで組み合わせてやっております。最近はネット社会ですので、可能なものはネット を通じて見ていただくということで拡大していますので、中小企業の中ではそういうも のはあまり使わない企業もあると思いますが、アクセスをどうやって進めたらいいのか に次なる課題があるのではないかと思ってお話を聞いておりました。 ○佐藤(孝)委員  受賞企業とありますが、そういう企業は、実際にこの件でどのぐらいのコストがかか ったのかについての調査はあるのですか。企業のコストといってもよくわからないわけ です。受賞企業の担当者を講師に招いて講演会をやったことがあるのですが、最後に言 われるのは「あとはやる気の問題」と。コストをかけても最後はやる気の問題という話 になったわけです。受賞した企業はかなりあるわけですが、そうした企業はどれだけの コストがかかって、それが企業に大変な影響力を与えるほどのコストなのか。逆に、そ のことにより企業がイメージアップしたと。その辺の調査はやったことがあるのかどう か、お聞きしたいと思います。 ○石井雇用均等政策課長  調査はやっておりません。受賞企業の選定の過程で、どういう取組をしたのか、それ がどういう効果を上げたのか、数字としていまどういう状況なのか、その辺りを判断し ておりますが、具体的にその裏にあるものとして、例えば教育訓練費にいくら投じたか といったようなことは、直接受賞選定の必要性にかかってこないものですから、正直な ところ把握していません。折角受賞いただいた企業ですから、私どもも皆さんに知って もらいたいということで、こういう企業が受賞しているということを財団や「女性と仕 事の未来館」のホームページも含めて発信しているところです。実際に受賞された企業 から、受賞したお蔭で非常に質のいい応募者が来ている、という声も寄せられていると ころです。 ○片岡委員  いまコストのことに集中した話になっていますので、中小企業でのポジティブ・アク ションを推進する上で、具体的に数値を示して、理解を図ることで、これぐらいのもの はかかるとか、そういうものを出すことは必要かと思います。そもそもこの方策自体 は、いま投資をして将来それを回収するという関係で考えることだと思います。積極的 にセットする材料としては先ほど岡本委員が言われたとおりで、いろいろな面でコスト はかかるわけです。  いま研究会報告の4本柱の1つに、このポジティブ・アクションをどう積極的に推進 するかという議論でこのテーマを扱うということでは、コストの話はそれを上回るもの を回収できるということを、どうすれば仕組みの中でつくれるかということで、吸収す ることにしないと。人材教育自体が、それにコストをかけることは従来から必要であっ たことの一環だと考えて、将来それをきちんと回収する、そのための行動計画を作る、 というふうに話としてもっていきたいと思っています。  もう1つは、先ほどから岡本委員がインセンティブのお話を出しています。当然ポジ ティブ・アクションに積極的に取り組む会社、あるいは男女平等に取り組む会社がもっ と評価を受ける仕組みを見えるように作ることがとても重要なことだと思います。その 点で言うと、佐藤委員が先ほど次世代の例を言われましたが、今回10年間の時限立法で 法ができて行動計画を作って、企業が認定を取ろうとなった。そういう法律ができ、行 動計画を義務付けて認定制度を作ると。なおかつ、この間の審議会の報告では、今まで の助成金の仕組みを行動計画を作ることとセットで行政もやろうとなさったわけです。 こういういろいろな状況を考えると、先ほど来申し上げている、企業が社会的な評価を 受けることを今から準備するのは非常に大事になっています。  例えば、この間の野村証券の裁判で、外国から国際批判的な形で問われ、企業自ら人 権尊重の倫理規程を作った。もっと前からやっていればということもありますが、もち ろんそういうものができたことは評価する、そういう動きで私は紹介したいと思いま す。あるいは、「環境経営格付機構」というのがあるそうですが、そういう所でも女性 の社会進出や就業支援や法令遵守を格付の中身に付け加えて企業を評価することが始ま っているわけですから、そういうことを企業が評価されるということにつなげて、計画 策定の義務付けを是非、今回の議論では積極的に進めたいと思います。 ○渡邊委員  大変結構なことなのですが、労働側の皆さんは義務化ということをおっしゃっている ようですが、確かにポジティブ・アクションで表彰された企業を見ますと、必ずしも大 手だけではなく、特に女性の進出に対して非常に積極的にやっている企業体が多いので はないかと思います。全部に網を掛けて義務化というのは少し行き過ぎではないかと。 特に中小企業の場合は、就業される方の構成が、いくら女性を奨励しても女性の比率が 非常に低い所もあります。特に製造業などの場合では、実態としてはあまり実行できな い面が多いのではないかと思います。奨励や表彰制度や認定マークを進めるのは大変結 構だと思います。しかし、この法律の施行に当たって義務化というのは中小企業には向 かないと私は思います。 ○佐藤(博)委員  中小企業ではポジティブ・アクションの普及度が低いということですが、気をつけな ければいけないのは「ポジティブ・アクションをやっていますか」と言うと「わからな い」「やっていない」と答えたとしても、その中身を見ると、例えば調査分析をやって いるとか、女性を的確に登用ということに「積極的にうちは採っているわけじゃない 」、「いい人が来れば男女関係なく採ってる」と考えている、女性を積極的に採ってい る、普通にやっているという会社が結構多いです。  ですから、『動き出すポジティブ・アクション』の中身に書いてあることをやってい るかと言うと、多分やっている会社は結構あるかもしれない。ポジティブ・アクション の中身を見ると、どうも大企業を想定して考えています。そういうことも少し考えなが ら、中小企業が遅れているというのは、それだけを見ると中小企業の実態に合っていな い可能性が高い。それは注意する必要があるかなと思います。  私は男女別なく機会を与える、意欲・能力あれば登用していく中小企業は相当あると 思っています。だからといって、ポジティブ・アクションをやっていますかと言うと、 そんなことはやっていないとか、女性を登用していますかと言うと、別に女性だからや っているわけではない、うちはいい人がいればどんどん使っているのです、という人も 結構いるのではないか。それはひとつ注意したらいいかなと思います。  それとの兼ね合いで、規模別に女性の管理職比率はどうなっているのか、次回でも用 意していただくといいなと思います。もう1つは、ポジティブ・アクションを少し宣伝 したほうがいいと思います。ポジティブ・アクションというのではなく、「女性の活躍 推進協議会」と名前を変えてやってきたのは非常にいいと思います。ただファミリー・ フレンドリー表彰と比較すると世の中の認知度は低いのです。毎年同じように表彰制度 をやっているのですが、例えば新聞の記事を検索して見ると数が全然違うでしょう。フ ァミリー・フレンドリー表彰のほうはその都度取り上げられるのですが、均等表彰のほ うは取り上げられていないということもありますので、既存の制度の中でももう少し企 業にこの制度を理解してもらうことも、マスコミを巻き込んだ形でやっていくこともす ごく大事かなというのが2点目です。  3つ目は、認定についてですが、法律でどうするかは別ですが、多くの場合、海外な どはNPO等の法人がやっているのです。ですから、労働組合で是非やってください。 連合としてまず。情報を持っているのですから、連合として制度を作るのはすごくいい のではないか、すぐやれますので。これはお願いです。 ○山崎委員  いま委員から言われたようなことがマスコミからもありました。この間もほかの会議 で言ったのですが、いま6月に「均等月間」というのがあります。今度は、例えば「ポ ジティブ・アクション月間」なるものをつくって、地方は地方でシンポジウムや先進事 例の発表などをやる。中央は中央でPRを打つとか雑誌に特集を組むとか、全国的な規 模でポジティブ・アクション月間をつくって、テレビでCMを打つとか何かすると、 「何だ」ということで、かなり知れ渡ってくるのではないかと思いますので、その辺を お考えいただければ。 ○佐藤(博)委員  いまはポジティブ・アクションに取り組んでいる所を表彰しています。だったら、ポ ジティブ・アクション積極取組企業表彰とかに変えたほうがアピールするのではないか と。いま山崎委員が言われたように名前を変えたほうが宣伝効果はあるかもしれない。 名前が変わるとマスコミは、何か違うことをやるのではないかと誤解して取り上げるの ですね。 ○石井雇用均等政策課長  先ほど佐藤委員から、女性管理職の比率は規模別にどうなっているかという質問があ りました。これは36回の資料に含まれておりますが傾向だけ一言で申し上げますと、女 性管理職の割合を規模別で言いますと、大企業のほうが「いる」と答える企業割合は高 いのですが、実際の管理職比率で見ると中小のほうが高く大企業のほうが低いという関 係にあります。 ○佐藤(博)委員  数字で見れば、中小は全体的に低いが遅れているわけではないと。 ○石井雇用均等政策課長  数字的には大企業より中小企業のほうがいいという傾向です。 ○若菜分科会長  ポジティブ・アクションについて、特にご意見がなければ次のテーマに移りたいと思 います。 ○奥山委員  一言だけお願いします。これは行政の方の説明にしていただいたらいいと思います。 いま佐藤博樹委員が言われたように、別に6月の均等月間だけではなく11月でも地方の 各財団がいろいろな催しで、講演会などにときたま私もお招きをいただき、均等月間の 均等表彰に合わせてポジティブ・アクションを進めている企業を表彰されます。多くの 所では、その地域の新聞社、マスコミの方もお招きして表彰しているのですが、それを 写真に収めていただき、できるだけ地域の新聞に載せていただくこともやっておられま す。それは私も何度も経験しています。規模的な問題から言えば全国的かどうかは別に して、やるようになってきているのではないかと思っております。 ○若菜分科会長  それでは、次のセクシュアルハラスメント対策に関する資料の説明をお願いいたしま す。 ○石井雇用均等政策課長  資料No.2をご覧ください。2−1〜2−7と7種類の資料を用意しております。  資料No.2−1は、セクシュアルハラスメント防止のために実施している主な施策を 並べております。1番目と2番目は非常に基礎的なところですが、まず実効ある防止対 策の周知・啓発ということで、企業の取組を促すということでパンフレット、あるいは 自主点検表を作成し、配付し、周知・啓発を図っております。  2つ目は、雇用均等室において行政指導と相談の対応を行っています。3つ目は、以 前この分科会でも話がありましたが、セクシュアルハラスメントについては、かなり心 に傷を負って相談に来られる方がおられます。そういう方々の精神的な苦痛を癒しなが ら心をときほぐして、具体的な事案について話を聞いて、相談をし対応していくという 観点から臨床心理士とか、産業カウンセラーの方にお願いして、セクシュアルハラスメ ント・カウンセラーの配置をすべての均等室で行っております。  4つ目は21世紀職業財団に委託し、実施していますが、実効ある防止対策推進のため に、事業主に対しての支援ということで、均等法に基づく指針を受け対応するために、 具体的にどのように取り組んだらいいか、事例やノウハウを提供するために、相談対応 マニュアルやそのビデオといったものを作成、普及する取組を行っております。また、 実践講習も実施しているところです。  資料No.2−2は、雇用均等室における行政指導等の状況です。セクシュアルハラス メント関係の相談件数の推移、均等法第25条に基づく助言等の件数の推移を載せており ます。「3」は、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律、通称「個紛法」と呼ん でいますが、この法律に基づきあっせんを行うことができることになっており、平成14 年度、15年度のあっせん件数を掲げております。  資料No.2−3は第37回雇用均等分科会で提出したもので、セクシュアルハラスメン トに関わる「女性労働者の相談とその後の状況」ということで、具体的に10ほど事例を 取り上げ、まとめたものです。再掲ですので、説明は省略させていただきます。資料 No.2−4も再掲ですので説明は省略しますが、「セクシュアルハラスメントに関する 主なデータ」ということで、法改正前の平成10年度の数値と、平成15年度の数値とをそ れぞれ比較できるような形で、セクシュアルハラスメント防止のための取組の内容別企 業割合、相談・苦情への対応の窓口の設置状況について示してあります。かなり規模間 格差が大きく、大規模企業ではさまざまな措置を組み合せ、実施しているという状況が ご覧いただけると思います。  資料No.2−5は、セクシュアルハラスメントに関する主な裁判例です。第37回分科 会で基本的にはお出ししたわけですが、これに2つ事案を追加していますので、追加し た事案のみ簡単にご紹介いたします。2頁は「鹿児島セクシュアルハラスメント事件」 で、平成13年鹿児島地裁で判決が下され、すでに確定しております。この事案は均等法 第21条が引用されているので、今回新たに追加しております。概要は上のほうに書いて ありますが、医師会の職員であったXが、研修旅行の懇親会の2次会の際にセクシュア ルハラスメントの行為を受けたということで、上司たる事務局長Zらに対して民法第 709条により、そして使用者である医師会Yに対して、民法第715条により、また職場環 境の維持等についての注意義務を怠ったとして民法第709条により、損害賠償の支払い を求めております。  判決の要旨はそれぞれについて記述しておりますが、まずZが行った行為は、社会通 念上、許容される限度を超えるものということで、Xの性的自由及び人格権を侵害する 不法行為というべきと判断を下しております。2つ目のパラグラフは、第715条に基づ く使用者責任についてで、これは事業の執行と密接に関係するかどうかということで判 断を加えております。本件については、一旦解散した後に偶然出会った懇親会の場で起 こった事案ということから、事業の執行を契機とするものとは言えないということで、 使用者責任を否定しております。しかし、次のパラグラフで、医師会Yの責任として は、職場環境の維持等に係る民法第709条の責任について、均等法が施行され、すでに 配慮義務が規定されているので、職場環境配慮義務がかかっているにもかかわらず、こ の事案が起こる前、この医師会は何も措置を取っていなかったということで、不法行為 に基づき、加害者たるZと共同して賠償する責任を負うという判決を下しております。  最後の5頁は、「大阪セクシュアルハラスメント事件」で、平成16年9月に大阪地裁 で判決が下されましたが、現在なお、控訴係争中です。この事案は、被害者が男性であ るということで取り上げております。この事件が起こった場所は郵便局で、男性職員X が時間休を取得して浴室利用中に、防犯パトロール中の総務課長代理で、なおかつセク シュアルハラスメントの相談員でもある女性職員Zに浴室内に立ち入られ、何をしてい るかなどと質問をされるというセクハラ行為を受けたというものです。この事件が起こ った後、総務課長Aらに苦情を申し立てたが、適切な対応が取られなかったということ で、国賠法に基づき訴えを起こしているものです。  判決の要旨ですが、この訴えについては加害者個人についても責任を問うた訴えでし たが、最初のパラグラフで適用する法律関係について整理をしております。セクシュア ルハラスメントの存在を認め、なおかつその責任については、Z個人ではなく、使用者 である郵政公社Yに責任があるということを示しております。中程にある「また」以下 ですが、この事案について郵政公社自身は防止規程を設けており、それに沿った対応が できていなかったということをここで縷々指摘しております。相談を受けた後の対応と して、まず加害者たる女性職員Zから事情聴取をしたという点、あるいはもう1人の相 談員であるB郵便課長、これは訴えを起こした男性職員と日ごろから折合いが悪く、な おかつ男性職員が立会いを拒んでいたのにこれに固執し、実質的に被害者たるXから事 情聴取ができなかったといったことについて縷々述べた上で、適切な行為、行動が取ら れていなかったということで、国賠法第1条第1項に基づき、賠償責任を負い、なおか つYがその責任を承継すると判断を下しております。  資料No.2−6は先ほど同様、規定についてまとめました。1頁目は均等法第21条の 規定です。2〜4頁は指針について取り上げております。5〜9頁は施行通達です。10 頁以降は、労働者派遣法の中で、派遣先についても配慮義務を課すという第47条の2の 規定を掲げており、後に関係の通知を記載しております。  資料No.2−7は、諸外国におけるセクシュアルハラスメントに係る規制ですが、未 定稿です。取りあえずアメリカ、EU、フランスの3つについて整理しております。ア メリカは法律上、セクシュアルハラスメントに関する明文の規定はありませんが、判例 により蓄積もなされており、EEOC(雇用機会均等委員会)のガイドラインもありま す。アメリカでは性差別にセクシュアルハラスメントが含まれるという解釈がなされて おります。セクシュアルハラスメントの定義はEEOCガイドラインに規定がなされて おり、対価型と環境型それぞれについて、その中に含めて定義をしているものです。  さらに、使用者の義務・責任ですが、行為者が管理職、上司の場合とそれ以外の場合 とで分けておりますが、対価型のセクシュアルハラスメントについては原則として責任 があるということです。しかし、上司の人事権限が行使されなかった場合、なおかつそ れによって具体的な不利益が発生しなかった場合については、使用者に積極的抗弁の余 地があるとしております。(2)の行為者が人事権を有しない同僚や部下、顧客等の場 合についても、使用者自身が仮に紛争の解決処理のための迅速、適切な措置を講じなか った場合には責任を問われるということで、逆に言えば、適切な措置を講じていれば、 責任は問われないということになっております。これは最高裁の判例で考え方が確立し ているものと聞いております。  EUは2002年の指令改正により、セクシュアルハラスメントを性差別と見なす旨の規 定がなされております。セクシュアルハラスメントの具体的な定義は、中程の「男女均 等待遇指令」の中にこのような形で規定が盛られております。なお男女均等待遇指令で は、セクシュアルハラスメントに加えて「ハラスメント」というものの定義も併せて行 っており、記載のような形で規定が設けられております。3番目の「使用者の義務・責 任」ですが、男女均等待遇指令においては、「均等待遇原則とは、直接または間接を問 わず、性を理由とするいかなる差別もあってはならないことを意味する」と言った上 で、ハラスメント、セクシュアルハラスメントは性差別と見なし、したがって禁止する という規定です。加えて、国内法等に則り、使用者、職業訓練機関の担当者は、あらゆ る形の性差別、特にハラスメントとセクシュアルハラスメントの防止策を講じることが 奨励されています。  フランスは労働法典に規定があります。ただフランスについては、いわゆる対価型の セクシュアルハラスメントのみ規定がされているという特徴があります。2段目の欄に セクシュアルハラスメントの定義がありますが、「労働者、その代理人その他の者が、 その職務上与えられた権力を濫用して、自分または第三者のための性的利益を得るた め、労働者に対して命令、脅迫、強制などの圧力を加え、ハラスメントをした場合であ って、当該労働者がハラスメントを拒絶したこと等によって懲戒等を行う場合」となっ ております。参考として位置づけておりますが、フランスにおいてはセクシュアルハラ スメントとは別に、労働者の「モラル・ハラスメント」というものの規定も設けられて おります。使用者の義務・責任は、ここにあるように、かなり詳細に、具体的に何をや ってはいけない、何が無効になる、あるいは拘禁、罰金が付くといった形で規定が設け られております。資料の説明は以上です。 ○若菜分科会長  資料に関する質問も含めて、ご発言をお願いいたします。 ○岡本委員  セクシュアルハラスメントについては定義ができたということと、前回の法改正で企 業の配慮義務になったということで、取組は格段に進んだと思います。相談しやすい環 境も整ってきたと思うのですが、いまの説明にもあったように、取組においては規模間 格差が非常に大きいことは明らかだと思います。特に、小さい職場であればあるほど、 二次被害も含めて被害者の救済というものは大変難しくなっていくと思いますし、これ まで再三指摘されてきたように、セクシュアルハラスメントの防止が何よりも重要だと 思います。ただ、現状はセクハラはなかなかなくならないし、むしろ根深いものになっ ているのではないかと思います。報告の中にもありましたが、被害者が職場を辞めざる を得ない状況に追い詰められるといったことは、本当はあってはならないのですが、そ のようなことが非常に起こっていることは否定できない現実だと思います。  現行法は助言、指導、勧告までとなっていますが、連合としては、より抑止力の強い 法律に改正するべきだと思います。現行の配慮規定から、禁止規定とすることを求めま す。セクハラの定義にジェンダーハラスメント、いわゆる性別役割分担意識に基づく言 動ということも、付け加えることを提起したいと思います。人事院のセクシュアルハラ スメントの指針では、「性別により差別しようとする意識などに基づくもの」という項 目があり、その中に、例えば女には仕事を任せられないという言動や、女性であるとい うことだけで、職場のお茶くみや掃除を強要することなどを具体例として挙げ、これら もセクハラとしています。  こうした性別役割分担意識というものがあるからこそ、差別意識が生まれてくる、な かなかなくならないのではないかと思います。このような意識に楔を打ち込んでおかな いと、本当の平等意識には繋がっていかないのではないかと思いますし、ジェンダーハ ラスメントは女性だけではなく、男性にも同じことが言えます。男が育児休職を取るな んてなどということが相変わらず言われておりますが、このようなことを言っている限 りは性別役割分担意識というものは変えられないし、男性の育児参加ということもなか なか期待できないと思います。  さらに、これまでの報告にもありましたが、セクハラを訴えた本人が、結局退職に追 い込まれるケースが多々あります。また、その職場で好奇の目で見られてしまうとか、 働き続けることができなくなるのではないかという不安といったこともあるからだと思 いますが、退職してから均等室に相談に行くことも現状では多いという報告もありまし た。このような現状を見据えて、こうしたことを防ぐためにも、不利益取扱いの禁止に ついても、この規定に新たに盛り込むことを提起したいと思います。 ○片岡委員  岡本委員と重複しますが、意見を述べたいと思います。先ほど説明された資料の中 に、男性の裁判例などもありましたが、もともと既に論点項目になっている男女双方の 差別禁止については対応が可能ということになるので、その点も実現が求められている という感想を持ちました。いまの規定について、連合は禁止という考え方であることが 岡本委員から紹介されましたが、諸外国の規定ぶりと比較をしても、現在の配慮義務と いう規定では、正直、やはり弱いと受け止めています。規定を強める意味合いは、何と しても予防をするということと、被害が生じた場合に、どう適切に対応するかというこ とを明らかにすることが目的であり、予防義務あるいは事後対応義務というものを連合 は言っているのですが、まさにそのとおりだと思っています。  すべて予防したいという気持ですが、その点で今日改めて強調したいのは、被害にあ った後の問題が非常に大きくなってきているということです。問題が解決されて職場に 戻っても、周囲が好奇の目で見たり、周囲の言動から被害を受ける、そのような状況か ら、働き続ける環境になかなかならない中で仕事を続けることが困難になっているとい う事例も聞いております。精神的なダメージの大きさから、就業継続が困難な場合は、 当然経済的な問題も抱えてしまう。この点については、何回か前だったと思いますが、 連合からも、実際に労災申請をしてその認定がされたケースがあるのかどうかというこ とを伺ったわけですが、経済的な問題、精神的なダメージ、非常に深刻な状態に置かれ るということを、改めて議論を深め、事後対応の中で解決策を考えていく必要があると 思います。  先ほどの資料で、派遣法の規定が改めて紹介されましたが、正社員以上に、派遣社 員、パートや契約で働くといった雇用形態が多様な職場では、立場の弱い人におそらく そういった行為が行われる、その人たちにとってみれば、それは即仕事を失うことにな ってしまうわけです。派遣社員で被害に遇った例では、問題を起こした人間との扱い、 むしろ批判を受けるという扱いを受け、失業を余儀なくされるケースもあると聞きま す。私自身も実感するところですが、派遣先、派遣元の力関係から、派遣先で行われた セクシュアルハラスメントに対して、何らかの対応があっても、派遣というのはまた別 の人に来てもらえばと、それで済ませてしまうようなこともあるわけです。立場の弱い 人たちにとって、セクシュアルハラスメントを受けるということは、即仕事を失うこと にもなる状況にあります。  この間、いろいろな外部の方からも事例などを多くいただいておりますので、時間が あれば改めて細かくご紹介したいと思いますが、いま述べたように、セクシュアルハラ スメントが起こったときに生じるさまざまな問題を、事後的にどう対処するかというこ とが、いま述べた状況からも重要だと考えています。連合では、性別役割分担意識に基 づく言動も定義の中に含めていくという要求があることを、岡本委員が紹介されました が、やはりセクシュアルハラスメントを起こさない土壌をつくる上では、そういった言 動も含めていくことが大変重要だと思います。  ちょっと古い資料を引っ張り出したのですが、前回1999年に施行された法律の指針を つくるときに、設置された三者構成の研究会がありました。その研究会の中でも、職場 におけるセクシュアルハラスメントの原因に関連する問題、いわゆるグレーゾーンとい うか、先ほどジェンダーハラスメントという言葉もありましたが、そういったものも防 止のための配慮の対象としていくことが必要と書かれてありました。こういったことを 改めて取り出し、土壌をどう変えていくかという点では、先ほど女に仕事は任せられな い云々、男性へも向けられる言葉云々という話がありましたが、結局、そのような発言 が放置された職場というのは、言われている本人だけでなく、周りの人も能力発揮でき なくなります。これも聞いた例ですが、女は使えないとか、女は家にいろなどという暴 言を言い続ける上司のいる職場では、言われている本人だけでなく、女性社員が仕事に 集中できなくなる、会社としてはそのような上司にきちっと対処していくべきだと思い ますが、そのようなことなども聞きました。  いまの通達では、固定的な性別役割分担意識に関わる問題は少し除外的に解釈してい ますが、そのような関係からも、いまの性的言動の定義に、性別役割分担意識に基づく 言動も含めることを是非知っていただき、通達自体も変えていくことが必要だと思いま す。先ほど、労災認定の状況について以前伺ったと述べましたが、私どもでいただいて いる資料の中では、申請はしたが認定が下りなかったという事例があると聞いており、 それは性的被害の判断基準が非常に厳しかったから認定されなかったと紹介されていま した。申請をした事例があるということはこちらでも把握しておりますので、その点補 足して付け加えました。 ○篠原委員  岡本委員や片岡委員からいろいろありましたが、いま配慮義務が規定されてはいます が、やはり弱いと常々感じております。ここできちんと義務づけながら、セクハラとい う部分に取り組んでいくという姿勢でやっていくべきではないかと思います。今日、提 示された資料No.2−4でも、1番目の企業規模別にいろいろなデータが出ていますが、 ちょっと労働組合の力不足というところもあるのでしょうか。労働協約の中で、きちん と書面で行うというのは、大手に比べ、中堅・中小はやはり少ない。全般的に比べる と、まだまだセクハラ、特に防止という部分は重要ではないかと思います。  加えて、2番の「苦情処理の窓口の設置」においても、これからまだまだ相当程度積 極的に取り組んでいかなければいけないのではないかと感じております。最終的には、 裁判や紛争調整委員会等々に泣く泣く持って行くという方々が多いということもありま すので、まずは防止、どのようにセクハラについて防止していくかということの取組 を、もっと積極的に行っていかなければいけないのではないかと思っております。資料 No.2−2についても、平成14年と15年を比べると、相当程度件数が増えていることも あるので、配慮義務から義務化するという点と、事前に防止するという防止義務という ものは、均等法の中で明記しておくべきではないかと思います。 ○川本委員  セクハラがけしからんということは、誰しもがそうだと思うのです。資料No.2−4 の2頁目は「対応として特に難しいと感じる事項別企業割合」となっていますが、プラ イバシーの問題をおいて、真ん中に「当事者の言い分が食い違う」とか「事実認定が難 しい」というものがあり、事実や経緯は当事者間でしかわからないという場合が多いと いうのが実態ではないか。そのような中で、会社がどこまで深く関われるのか、本人の 責任追及はどのようにできるかということについては、一見、言葉では簡単ですが、実 態としては非常に難しいところがあるのです。会社がどのように事実認定を行い、処罰 できるのか、どのような権限を持って行使し得るのかということは、明確にわかるよう なものであれば明瞭ですが、グレーのものも多く存在するわけで、実態としては非常に 難しい問題を孕んでいるのではないかという気がします。  したがって、先ほどから義務化、防止義務の明記という話がありましたが、現行の指 針のままで、よりPRに努めていくことのほうが重要ではないかという感じがしていま す。セクハラだけでなく、そのベースになるということでハラスメント自体の範囲を広 げるという話もありましたが、セクハラの部分の話が非常にぼけてしまうし、拡大する ことについては難色を示さざるを得ないと思っております。 ○石井雇用均等政策課長  先ほど片岡委員から、かつてのセクシュアルハラスメントの指針を策定する前の研究 会での議論について紹介がありましたが、内容をクリアにするために、この場で補足の 説明をさせていただきます。資料No.2−6の2頁以降、均等法に基づく指針で、事業 主が具体的にセクシュアルハラスメントについて何をしなければいけないかが記されて おります。  3頁の3から、雇用管理上、配慮すべき事項ということで挙げられており、(1)事 業主の方針の明確化及びその周知・啓発とあります。(1)の下のほうになお書きがあ ります。「周知・啓発をするに当たっては、職場におけるセクシュアルハラスメントの 防止の効果を高めるため、その発生の原因や背景について労働者の理解を深めることが 重要である」と規定されております。なおかつ、(2)相談・苦情への対応、これは4 頁にわたっておりますが、(3)の直前のところに、同様になお書きがあり、「なお、 事業主は職場におけるセクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、 その発生の恐れがある場合や、職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否 か微妙な場合であっても、相談・苦情に対応することが必要である」となっておりま す。まさに、この辺りが先ほど片岡委員が言われた原因、背景、あるいは微妙なものに ついても対応しなさいということを定めているものであり、通知の中で具体的に明らか になっております。  8頁の中程に、「その発生の原因や背景とは」とあります。読み上げますと、「企業 の雇用管理の問題として、女性労働者の活用や能力発揮を考えていない雇用管理のあり 方や、男性労働者の意識の問題として、女性労働者を職場における対等なパートナーと して見ず、性的な関心の対象として見る意識のあり方が挙げられるものであること」、 さらに、「両者は相互に関連して、職場におけるセクシュアルハラスメントを起こす職 場環境を形成すると考えられること」とあります。同様に9頁には、相談等を広く受け なさいということが書かれているわけで、要は予防に関するところ、事業主の方針の明 確化及びその周知・啓発、あるいは相談・苦情への対応のところは、かなり広く予防と いう観点から受けなさいというのが現行の均等法並びに指針の考え方で、私どもが作成 するパンフレットの中でもそこは明確に記しているつもりでございます。その点、この 議論に関係すると思いましたので、補足いたしました。 ○岡本委員  先ほど、セクハラが起こった場合の対応の難しさということがありました。私も労働 組合として窓口をしておりますので、ここに書かれてある双方の言い分が食い違うとき の確認の難しさについては、身をもって何回も体験をしているところですが、そういっ たことがあるということで取組が遅れていくということにはならないと思いますし、だ からこそ、就業規則などにきちんと明記していくことが大事だろうと思います。先ほ ど、労働組合の役割としても忸怩たる思いがあるという話がありましたが、就業規則そ のものに、このセクハラの防止というものが明記されていないということは、299人以 下で明記をしている所が半分以下だということなども考えると、こういったことについ てきちんと取り組むということはともかく必要なことですし、職員にとっては、就業規 則などにそういったことが書かれていることによって、何らかの問題があったときには 処分を受けるということが非常に大きな抑止力になることは、どなたもおわかりになる ことだと思います。この1点だけを取ってみても、まだまだ遅れているということを考 えれば、もう一歩前進した形の法の改正があるべきだと思います。 ○今田委員  今後のセクシュアルハラスメントについてどうするか考えるために、現状の認識が重 要だということでいま議論されていると思いますが、先ほど岡本委員がセクシュアルハ ラスメントについては定義が明確にもなったし、事前、事後の対応という大きな枠組み は明確になったということで随分改善されているという認識を持たれていました。その ようなことを前提として資料を見た場合、資料No.2−2について教えていただきたい ことがあります。均等室が扱った相談件数のところで、平成11〜15年の件数の推移が示 されています。  まず2つ感じることがあって、いま言った枠組みがまだ未整備の段階は、おそらく、 事業主も働いている人もいろいろ混乱があったために相談があったのでしょうが、だん だん整備され、周知されることによって、この件数は減っていくことが1つの施策の認 識だと思います。それを見た場合、確かに事業主の件数は急速に減っているということ があるわけですから、初期は事業主側にかなり混乱があったが、枠組みについては徹底 されてきて、処理能力が十分ついて整理されてきたと思います。  一方、女性等被害者からの件数が減っていないという事実は、どう考えるべきなの か。いま言ったように、全体としての枠組みが整備されていっているにもかかわらずと いうのは、行政としてはこの件数の内容について何か変化があるのか。例えば就業形態 の多様化が進み、先ほど出た問題で、派遣やパートなどが増えることによって増えてい るものなのか、いくら周知徹底しても、このような問題はどこでも起きてくるという性 格のものなのか。考え次第では、さらに禁止など厳しくするべきなのか。それとも形態 別の細かな対応が必要な方向にも配慮していかなければいけないのか。今後の対応につ いて、戦略上つかんでおいたほうがいいのではないかと思い、敢えて伺うのですが、行 政としてはどのような認識を持っているのですか。 ○石井雇用均等政策課長  なかなか判断が難しいところです。おっしゃるとおり、平成11年度の事業主のところ の件数は非常に多かったのが、だんだん減ってきている、これは本当に初めての規定で したから、当初は一体どのようなものなのか、そのような内容から具体的に何をしたら いいのか、他社はどうやっているのかなどいろいろな相談がきましたが、その辺が削ぎ 落ちていき、いまに至ったということだと思います。  他方、2の助言等の件数を見ても、事業主の指導の中で、平成11年度に比べれば確か に落ちていますが、事業主を訪問すると、やはりまだ対応が十分でないケースもあり、 このぐらい指導しているという実態にあると。その辺を加味して考えると、女性労働者 の相談の内容は細かく分析できているわけではないのですが、2つの面が合わさった結 果がいまの状況ではないか。すなわち、対応としてはこのようなことをやらなければい けない、事業主はこのような義務が課されているということがわかった結果、比較的早 い段階、軽い段階で相談に訪れるような女性労働者が出てきている、これは一方で事実 だと思います。それは企業のセクシュアルハラスメントの相談窓口について、非常に徹 底してやっている所でも件数はそれほど落ちない。むしろ、早め早めの段階の早期な相 談がくるということで、内容が変わることによって件数自体はさほど落ちないと類似の 部分があるだろうと思っております。  ただ、片や、底流としてまだ十分ではないところがあり、中身的にはかなり多様な、 かつ深刻なものがこの中に含まれてきているという感じは持っておりますので、質量そ の他の面でさまざまなものが合わさって、いまこのような横這い状態になっていると。 ですから、確かに進んだ面でいい徴候と取れるところもあるが、そうではない部分も中 には含まれている。一言でなかなか言い表されていないのですが、この数字の見方とし ては、いい面と悪い面があわさった結果、このような横這い状態になっているというこ とではないかと思っております。 ○佐藤(博)委員  組合の方に質問です。セクハラの考え方は何かということである程度決まってきて、 事業主の取組、女性が被害を受けた場合、苦情を訴えることがやりやすくなってきた が、もう少しセクハラの概念を広げたほうがいいという話がありました。男女の役割分 担意識から発するようなさまざまな言動までセクシュアルハラスメントにしたほうがい いという話があったのですが、男女の役割分担意識を変えていくということは、別にセ クハラ防止だけではなく、女性の活躍の場を広げていく上でも不可欠なことです。  例えばポジティブ・アクションとして厚生労働省が勧めている5つの取組内容の中の 1つで、男女の固定的な役割分担意識を解消するということは入っているのです。女性 の活躍の場を広げていくことは、全体の取組としてやらなければいけないと思います が、そのことをセクシュアルハラスメントの中で取り組むということなのか。取り組ま ないからやらなくてもいいという意味ではないのです。セクハラはきちんと防止をしな ければいけないが、男女の役割分担意識の解消ということを、セクシュアルハラスメン トを拡張する中で変えていくということにどのような意味があるのかという気がしてい るのです。女性の活躍の場を広げていくという中で当然それはやっていく。セクシュア ルハラスメントについては、現状の考え方の中でやっていくことだと何が問題なのだろ うか、それが質問です。 ○岡本委員  確かに、ポジティブアクションに関連するようなことであれば、どちらがいいのかと いうことを私も思ってはいるのですが、むしろ、役割の場を与えるということだけでは なく、女性に対してのハラスメント、言葉の上の暴力に対して、女なんだからこうしろ などといったことに対して、女だから仕事を与えないということではなくて、言葉に対 してどこで救済していけばいいかを考えているということだと思います。先ほども述べ たように、人事院の指針の中には、そういったところも明確に書かれていることもあ り、私どもとしては、ここに入っていくということに大きな違和感はないのではないか と思いました。ポジティブ・アクションに関連することも、ここに大きく入っている部 分は当然わかってはいるのですが、どちらでやっていけばいいのかということは議論の 中で詰めていけばいいのではないかと思います。  別のことで、先ほどいろいろと環境が整ってきたと言いましたが、セクハラがなくな ったということは全くないわけで、それはセクハラですよと言えることも含めて、相談 がしやすい環境というものは少し進んできたのかなと思っています。いま根深くなって きていると述べましたが、これについては連合で把握しているかどうかわかりません が、例えば職員に対してのセクハラは比較的少なくなってきているのかもしれません が、派遣労働の方やパート労働の方といった、より雇用関係上の弱い立場の方たちに対 するセクハラが進んできている、そちらのほうに向かっていっているような気が非常に しております。だからこそ、非常に根深いものがあるし、派遣法の中ではそこもこのよ うな形で規定はありますが、派遣元が派遣先企業に注意をしていくことは派遣元として は難しいというか、そこで契約が最終的には切れるかもしれないといったこともあるで しょうし、それを言ったことによって、あの人は使えないということで他の派遣先がな いとか、勤め先がなかなか見つからなくなるといったことが、いま非常に根強くあっ て、相談件数なども増えているのではないか。私の所だけで考えても、職員よりも直接 雇用関係にない方たちの相談のほうが増えているだけに、この問題の根深さを感じてい ます。 ○片岡委員  佐藤委員が言われたことに関連して、性的言動に、固定的な役割分担意識に基づくも のを入れることの効果について考えていることは、直接的なセクハラを起こさない土壌 をつくる上で、それを含めることは意味がある、必要だと思っています。性的と付くか らですが、言われている事柄によっては、実は性差別自体であるというものも、この言 動の中には多くあると思っています。ですから、性差別そのものをなくす上でも効果が あると思っています。もう1つは、パートナー意識というものを根付かせていくことも いろいろな意味で非常に必要なので、同僚間、あるいは上司、部下という役職的な上下 関係があっても、仕事の上ではパートナーといった意識を根付かせることからも、3つ ぐらいのことを効果としては期待できるのではないかと思っていますので、その点につ いて意見を申し上げました。  少し戻りますが、先ほど川本委員が、現行法の規定でPRをと言われたことは、理論 で言われたのか現実的な悩みで言われたのかちょっと区別がつかないのですが、事実認 定については先ほど岡本委員が別の角度から意見を述べられたと思います。プライバシ ーの保持が難しいということは、確かにこのデータの中にもあるのですが、これは相談 をした自分の体験から、どうしてプライバシーの保持が難しいかというと、性的な問題 ということに対して、何か好奇心みたいなものが働くからだと。しかし、そうではなく て人権侵害なのだということをきちっと打ち出していくこと。  一方で、企業は法令遵守など、社会から、消費者から、さまざまな第三者から企業の 行動が問われている事柄が多くあると述べましたが、法令遵守だけでなくプライバシー の保持ということも、企業はセクハラに限定せず、働く人に、それは駄目だ、きちんと 保持しなさいということを明らかにしていくことが問われていると思うのです。先ほど も述べたように、セクハラでそのように感じるのは、人権侵害であるという認識をもう 少しきちっと前に出すことによって、プライバシーの保持がなぜ必要かということも理 解しやすくなると思います。  体験と申し上げましたのは、加盟組合の中で、労働組合も入って相談体制をつくった のですが、結局、相談を受けた人間が不用意に、こんなことがあったと言ってしまった という例があるのです。つまり二次被害になっているわけです。相談員こそ、そのよう なことはもともとちゃんと決めてやっていたはずですが、このような性格のものはそう なるということを、相談に当たる人間にはもっと教育など、プライバシーの保持につい ては必要だと思います。結論として、先ほど岡本委員から、連合要求で、相談したこと や申し立てたことを理由に不利益な取扱いを禁止する必要があると言われたと思います が、プライバシーの保持もそれに加える必要がある、そのことを法律の中でもきちっと 位置づける必要があると思いました。  最後に、先ほど今田委員が、今後の対応を考える上で、女性の相談件数の状況につい て話されていました。確かに、行政が件数やこのような事例で取り上げ、内容を見なが ら対策を考えることが大変重要だと思いますし、件数で見ていく方法と、事例で見てい くことと両方必要だと思います。事例を見ていく上では、私どもが捉えている事例も限 りがあるというか、十分でないこともありますので、例えばそのような事例を今後の審 議会の中で、そのような活動をする人たちのヒアリングなどをやり、それを基に対策を 考えるといったことも方法としては必要ではないかという感想を持ちました。 ○石井雇用均等政策課長  片岡委員に確認ですが、法律で不利益取扱いとプライバシーのことを規定すべきだと いうことですが、現行指針の中に、この2つが位置づけられているのは承知の上で、そ れを格上げという意味でおっしゃられたということですね。 ○片岡委員  そうです。 ○石井雇用均等政策課長  わかりました。 ○奥山委員  不利益取扱いというのは、例えば雇用均等室に被害を受けたとする女性が苦情相談を 申し立てた、その申し立てたことを理由とする不利益取扱い、つまりセクハラに関する 苦情申立を理由とする不利益取扱いということで絞られるわけですね。つまり、均等法 に基づく全般的な苦情申立をしたときの不利益取扱いではなくて、セクハラに関する苦 情申立についての不利益取扱い禁止ということをイメージされているのですね。 ○片岡委員  私自身はそれを広げて捉えてはいなかったので、今日の時点ではセクハラに限っての ことで申し上げましたが、なるほどご指摘を受けると、均等法の全体ステージというこ とは必要ではないかと思います。 ○奥山委員  そこがどうかではなくて、おっしゃる趣旨がどこまでのものなのかわかりにくかった ので確認だけさせていただきました。  もう1つお聞きしますが、いま第21条は説明のとおり事業主の配慮義務になっている わけです。たまたま配慮義務を尽くさないで、ある企業あるいは事業所でハラスメント に関する第21条の手立てが講じられていなかった場合は、雇用均等室を中心とする労働 局が助言から指導、場合によれば勧告までやれる体制にはなっているわけです。現行の 規定ではいろいろなところで取りこぼしや問題も起こる可能性が高い、これは重々承知 し、認識しているところですが、現行の規定を配慮義務から、強いて言えば措置義務、 全事業主に対して、第21条と指針で要請している防止のための手立てを全事業主が講じ なさいという意味での義務化ということですね。  先ほど禁止規定にするとか、義務規定にするなどの言葉が頻繁に出てきたので、場合 によっては第5条〜8条の募集、採用から定年退職、解雇における禁止規定と同じよう な意味合いで言われているのかどうかちょっと迷ったところがあるのですが、あくまで も第21条の配慮義務を、いわば全事業主が義務づけをやる、措置義務的な形に変えると いうことですね。 ○片岡委員  はい。 ○奥山委員  わかりました。 ○若菜分科会長  そろそろ時間になりますので、他になければ本日はこれぐらいにしたいと思います。 本日の署名委員は労側は佐藤(孝)委員、使側は山崎委員にお願いいたします。最後 に、事務局から次回の予定についてご連絡をお願いいたします。 ○石井雇用均等政策課長  次回は5月12日(木)午後2時からの開催を予定しております。場所については調整 中ですので、決まり次第ご連絡させていただきます。 ○若菜分科会長  本日の分科会は以上で終了いたします。どうもご苦労様でした。 照会先:雇用均等・児童家庭局 雇用均等政策課 法規係 内線(7836)