05/04/06 予防接種に関する検討会第8回議事録            第8回 予防接種に関する検討会 議事録                             平成17年4月6日(水)                             10:00〜17:30                        於:厚生労働省7階専用第15会議室             議事次第      1.予防接種の制度的課題について       (1)参考人等からのヒアリング       (2)討論      2.その他 ○皆尾課長補佐  定刻になりましたので、ただいまから第8回「予防接種に関する検討会」を開催いた します。本日は御多用のところ、予防接種に関する検討会に御出席いただき、誠にあり がとうございます。  本日は、岩本委員と蒲生委員が午後からの出席との御連絡をいただいております。ま た、本日も参考人として11名の方々に御出席いただいておりますので御紹介いたしま す。  茨城県の前保健予防課長の荒木参考人です。  原土井病院内科の池松参考人です。  カンガエルーネットの井上参考人です。  沖縄県福祉保健部技監の稲福参考人です。  財団法人化学及血清療法研究所の岡参考人です。  ふじおか小児科の藤岡参考人です。  福島県立医科大学小児科の細矢参考人です。  永寿堂医院の松永参考人です。  長崎大学大学院医歯学総合研究科の森内参考人です。  横浜市立大学小児科の横田参考人です。  日本消費者連盟の古賀参考人でございますが、少し遅れておられるようでございま す。  また、4月の人事異動により事務局の担当者が入れ替わりましたので、御紹介させて いただきます。塚本総括補佐の後任の大橋でございます。  申し遅れましたが、私は江崎の後任の皆尾でございます。  それから、小林予防接種専門官の後任には伯野が着任いたしましたが、本日は欠席さ せていただいております。  それでは、開会に当たり、牛尾結核感染症課長よりごあいさつを申し上げます。 ○結核感染症課長  皆さんおはようございます。委員の方、そして参考人の方々、朝早くから御出席いた だきましてありがとうございます。  この検討会は、昨年10月に設置されて以来3月までに計7回、これまでは個別疾患の 予防接種の在り方について最新の医学的知見を踏まえて議論してまいりました。そし て、本日も配付させていただいているかと思いますが、7回までの議論を整理した中間 報告をとりまとめて3月31日に公表させていただいたところでございます。  厚生労働省につきましては、この中間報告書を参酌して、必要な法制上の検討を加 え、所要の行政措置を講じたいと考えております。ただ、前回議論のありましたように 横断的な、制度的な問題と関わりますので、それについては更に検討することもあり得 るべしということでございます。  さて、この検討会もこの4月から後半戦に入るわけでございますけれども、この4月 以降は、予防接種に関する制度的な課題について御検討していただく予定にしておりま して、すなわち予防接種について制度面で見直すべき事項があるか、あるいは見直すべ き必要があるかということについて御議論いただくわけでございます。  この議論を開始するに当たりまして、日ごろさまざまな立場から予防接種に関与され ている方々を幅広くお招きしまして御意見を伺い、討論を行うことを目的としまして本 日の検討会を企画させていただきました。開業医の先生、大学の専門家、行政、それか ら保護者の立場や市民団体の方、メーカーの方ということで、計11名の参考人にお越し いただいているところでございます。非常に長時間、丸1日でございますが、活発な御 議論をいただくことを祈念しております。  本日いただきましたいろいろな提言につきましては、可能な限り我々としてはこれか らの今後の制度改正のために参考にさせていただきたいということを考えているわけで ございますので、どうか忌憚のない御意見をいただきますようお願いを申し上げまし て、私のごあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。 ○皆尾課長補佐  この後の議事の進行につきましては、加藤座長よろしくお願いいたします。 ○加藤座長  おはようございます。それでは、本日の議事を進めさせていただきます。  ただいま、牛尾課長の方からもごあいさつございましたけれども、今日は非常に長時 間の会議となりますので、白熱した議論が交わされることを期待いたしております。  それでは、事務局の方から資料の確認をお願いいたします。 ○皆尾課長補佐  それでは、資料の確認をさせていただきます。  議事次第が表紙になっております「第8回 予防接種に関する検討会」という厚いも のでございます。  この資料の中で、事務局の手違いがございまして、お伝えしておきます。議事次第を 1枚おめくりいただけますでしょうか。   続きまして、先ほど結核感染症課長からも説明がございましたが、「予防接種に関 する検討会 中間報告書」という資料でございます。  本日用意いたしました資料は、この2つでございます。不足等がございましたらお申 し付けください。 ○加藤座長  ありがとうございました。  よろしゅうございますか。各委員、参考人の方々、御確認のほどをお願いいたしま す。  それでは、本日の会議の進め方ですけれども、これも事務局の方から御説明いただけ ますか。 ○前田課長補佐  結核感染症課の前田と申します。  本日は、10時から12時までの午前中が第1部。そして、昼休みを挟みまして、13時か ら15時までが第2部。その後、30分間程度の休憩を挟んだ後に、15時半から17時半まで の2時間程度を第3部という3部構成とさせていただければと思っております。  まず、第1部でございますが、お手元の予防接種に関する検討会の97ページの資料の 3枚目でございますが、「資料一覧」という欄がございます。ここの資料1から資料12 まで、各参考人の方々、委員の方々からありがたい御資料を提供していただいておりま すが、第1部におきましては医療従事者の立場ということで、松永参考人、藤岡参考 人、森内参考人、細矢参考人、そして池松参考人、横田参考人、この資料1から6まで の6人の方々の御説明を午前中に承るということを考えてございます。  午後の第2部でございますが、ユーザーサイドの立場から資料7を蒲生委員、そして 資料8の井上参考人、古賀参考人。そして、行政の立場から10番目の稲福参考人、荒木 参考人。そして、ワクチンのメーカーの立場から岡参考人の順に発表をしていただくと いう予定でございます。  そして、第1部及び第2部の発表を踏まえまして、最後に2時間程度で総合討論を行 っていただくという予定としているところでございます。  以上でございます。 ○加藤座長  ありがとうございました。  それでは、早速先生方から御発表いただくわけですけれども、前もって座長の方から お願いをいたしておきます。  今日、参考人としてお呼ばれになっている先生方、たくさんの資料を用意されて十分 御発表いただくということは大変ありがたいことなのですけれども、今、御説明があり ましたとおり、かなり時間があるようですけれども、たくさんの方々が発表されます。 したがって、時間に制限がございます。一人当たり15分、せいぜい延びても20分以内に 必ず発言をやめていただきたい。  その後、十分にまた討論の時間もございますので、言い足りなかったところは3時半 からのところで少し補足をしていただくということにいたしますので、20分経ちました らば、私が声をかけてやめさせていただきますので、その辺のところだけはあらかじめ 御了解いただきたいというふうに考えますので、よろしくお願いいたします。  それでは、まず松永参考人からお願いいたします。ただいま10時10分ですから、ここ から20分ということで。 ○松永参考人  まだスライドが出ていませんが、東京の葛飾で開業しております松永と申します。こ こにあるように、本日は「一開業医から見た予防接種事業に関する問題点と提言」とし てお話しさせていただきます。  私の標榜科目は小児科、内科ですが、大学在職中は小児科で、主に感染症を中心に教 育・臨床・研究に従事しておりました。 (PP)  葛飾は東京の東の外れにあり、足立、江戸川、墨田の各区と境を接していると同時 に、埼玉県、千葉県の2県とも境を接しております。このため、これらの県からも患者 さんがお見えになります。当然、医療の広域化の不備の矛盾を感じつつ、毎日医療を行 っております。 (PP)  また、葛飾区は東京でも一番貧しい人々が住む区の一つでもあります。ここに示す棒 グラフは、葛飾区民と他区民の一人当たりの住民税の比較です。港区の46万8,000 円に 対し、葛飾区民の平均住民税はその約四分の一の10万9,000 円です。また、納税義務が ある人は住民の半分以下の45%しかおりません。  さて、このようなまじめな会で不謹慎のそしりを受けるかもしれませんが、2名の葛 飾区民を御紹介します。1人は、葛飾区公園前派出所の両津勘吉巡査です。もう一人 は、柴又の車寅次郎、通称フーテンの寅さんです。両さんは納税者、寅さんは多分非納 税者で、経済的余裕はないものと思われます。このような方々にもお子さんはおられま す。子どもは国の宝です。国民、皆ではぐくむものです。  しかし、事、予防接種に関しましては、親の経済力とワクチンに対する理解力などに より、予防接種の恩恵を受けたり受けなかったりしております。これが、悲しいかな、 現在の日本の現状であります。 (PP)  さて、経済力はともかく、両さん、寅さんともにワクチンに対する正確な知識は持ち 合わせていないのではないかと推察されます。一般の方はともかくも、感染免疫を専門 としていた小児科医の私自身でさえ、医師になって10年ぐらいの間は麻疹の本当の怖さ を知りませんでした。そばに麻疹の子が居たら、自分の子を連れていってうつしてもら えばよいと考えておりました。  しかし、ちょうどそのころ、私の勤めていた病院に重症麻疹のお子さんが矢継ぎ早に 運び込まれ、次々に死んでいったことを経験してからは一気にその考え方を改めまし た。  これは、そのような患者さんの一例です。当時としては最善で最高の治療をしました が、大体三週間の闘病の後、死亡していきました。今でも根本的治療法はなく、最善の 対抗手段はワクチンだと思っております。 (PP)  幸い、日本医師会などによる麻しん撲滅キャンペーンが功を奏し、麻疹ワクチン接種 率は驚くほどの高まりを見せました。葛飾でも、はしかゼロ作戦を実施中です。このお 人形の着ている洋服は、アメリカ小児学会でただでもらってきた宣伝のTシャツです。 (PP)  葛飾では、1歳半での麻疹ワクチン接種率が平成9年は対象者の半分以下でしたが、 今では91%にまで上昇しています。 (PP)  これに伴い、平成13年には、こんなに多かった麻疹の発生報告が、今ではほとんどな くなりました。  一方、法律の定めのない水ぼうそうやおたふくは毎年同じように発生しています。こ れが正月から12月で、13年はこのように麻疹があったんですが、今は大変減少している と。その一方、水ぼうそうやおたふくは毎年同じであります。 (PP)  さて、インフルエンザに話題を移します。  インフルエンザワクチンの効果には多くの議論があります。しかし、一旦インフルエ ンザ脳症になると、発症から数時間で死亡するのが厳しい現実です。  これは、ある1歳の女児の経過です。これを見ると、午後3時くらいまで普通の生活 を送っていた乳児が、約七〜八時間後には医療の手の及ばないところに行ってしまった ことがわかります。 (PP)  そのインフルエンザワクチン並びに水痘・ムンプスワクチンについて、先月、3月14 日から1週間、当院の患者を対象にアンケート調査を行いました。 (PP)  回答者の年齢分布と回答者のプロフィールです。  当院では、積極的にインフルエンザワクチンを打つよう指導しているため、インフル エンザワクチンを打った方は、76%でした。しかし、打ったにもかかわらず30%の方が インフルエンザに罹患してしましました。 (PP)  さて、これは今年インフルエンザワクチンを受けた方の結果です。  左が、インフルエンザにならなかった人。配付資料にはなったと書いてありますが、 ならなかったです。ほとんどの人が、来年もまた受けると言っています。  右は、受けたのに罹患した人です。興味深いことには、このワクチンを今年受けたに もかかわらずインフルエンザになった人は、全員、来年もまた受けると回答しているこ とです。かかったけれども、軽く済んだので来年もやると半数以上の方が答えていま す。これは、当院での患者に対する予防教育の効果ではないかと自負しております。 (PP)  このグラフは、インフルエンザワクチンを受けなかった方々の理由です。ほとんどの 方には明確な理由はないように思います。 (PP)  このインフルエンザワクチンをしなかった人たちの来年のワクチンの希望です。  罹患して大変つらい思いをした人は、来年はワクチンをすると全員答えています。し かし、ワクチンしなかったが罹患もしなかった人の半分以上の人は来年はすると答えて います。これは、周囲にインフルエンザで大変であった人を見聞きしているのが理由と 思われます。  しかし、残りの人は、今年同様来年もワクチンを受けません。その理由の3分の1が 経済的理由、また3分の1がワクチンに対する理解不足でした。 (PP)  結局、実際にインフルエンザにかかる、または院内教育などでワクチンに対するモチ ベーションができれば、罹患の有無に関係なくインフルエンザワクチンを来年も受ける ことがわかりました。  以上述べたように、インフルエンザワクチン接種率の向上のためには経済的理由を解 決する必要があると思います。アンケートでは、ここに示すように92%の方が無料化ま たは一部公費負担を望んでいました。 (PP)  さて、これは重症の水痘です。アメリカ合衆国では、水痘ワクチン導入前は毎年100 人くらいの死亡者があったというのに、水痘の怖さに対する一般の認識はまだ低いよう です。 (PP)  おたふくかぜも、睾丸炎のことは有名ですが、200 〜2万人に1人に出現すると報告 されている難聴やその他の余病については十分認識されていません。また、ワクチンの 存在自体の認識も高くはありません。 (PP)  そこで、今回のアンケートでは、インフルエンザワクチン接種の有無と水痘・ムンプ スワクチンの認知度の関係についても調べました。  これがその結果ですが、インフルエンザワクチンを受けた人のほとんどは、水痘・ム ンプスワクチンを知っていました。しかし、インフルエンザワクチンを打たなかった人 は余り知っていませんでした。 (PP)  この傾向は、インフルエンザワクチン接種の有無で分けた水痘・ムンプスワクチンの 接種率でも同じでした。インフルエンザワクチン済みの人の63%が水痘ワクチンを受け ていましたが、インフルエンザワクチンをしていない人で水痘ワクチンを受けていた人 は15%でした。 (PP)  この傾向は、ムンプスでも同様でした。 (PP)  インフルエンザワクチン接種群と非接種群の間には、接種率にこれだけ差があるもの の、水痘・ムンプスワクチンをした理由は、両群とも「子どもを病気から守りたい」と いう気持ちが「仕事を休めない」という理由をはるかに凌駕していました。ここに親心 があるように感じられました。 (PP)  水痘・ムンプスワクチンを受けない理由をここにまとめました。  インフルエンザワクチンをしているという親は、水痘・ムンプスワクチンを受けない 理由として、国が決めていないという理由などを挙げている一方で、インフルエンザを していない人の親は経済的理由を挙げています。 (PP)  ここにもまた、経済的理由と周知不足が大きな因子となっていることがうかがわれま した。  以上をまとめますと、「ワクチン接種率低下の理由」は、非小児科医の医師も含めた 多くの方の「無知・無理解・無関心」と「経済的理由」に集約されると考えます。  これは私の若かりしときの写真ですが、ちょうど子どもが1歳のときです。はしかは 隣の子にうつしてもらったらいいんじゃないかと言っておりました。余りお金もなかっ たので、1歳の誕生日で写真館に行くお金はあったんですけれども、着物を買うお金は なかったようです。 (PP)  さて、法律で定まったワクチン接種状況を確認する最後の機会は就学時健診です。し かし、実際には、このスライドに見るごとく、小学校入学時にすべてのワクチンが終了 しているのは約六割くらいです。  これは、私が校医をしている学校ですが、こち亀の作家が出た学校でもありますが、 全部終わっているのが大体六割です。 (PP)  アメリカ合衆国では、小学校入学に際して州で規定している予防注射が完了している ことが要求されていると聞いています。そのためか、この2003〜2004年のデータを見ま すと、ポリオ、DPT、麻疹、ムンプス、風疹、B型肝炎、水痘などのワクチン接種率 は概ね95%前後と高率です。 (PP)  これは、就学時のワクチンを規定しているバージニア州の学校法です。一方、日本で は就学時健診でワクチン接種歴を問い、未接種者には勧奨するということが長い間しづ らい状況がありました。  しかし、平成14年3月に文部科学省から1通の通知が出まして、これを行うことが成 文化されました。しかし、通知が出てから約一年経った地点で、私が調べたところ、肝 心の教育現場ではこの通知が周知・徹底されていないことがわかりました。配付資料を ごらんください。  文部科学省の通知ではありますが、厚生労働省を始めとする関係諸官庁のさらなる連 携でアメリカ並みに就学児童のワクチン接種率を上げていただければと考えます。 (PP)  予防接種には、当然費用がかかります。ある大学病院での水痘ワクチンの接種料金は 8,300 円でした。しかし、病気になると1万円〜2万円の医療費がかかります。  ただし、葛飾では就学前のお子さんの医療費の受益者負担分は公費が払ってくれるの で、一銭もかかりません。要するにただです。そのため、本当はワクチンの方が安上が りなのに、親から見れば病気になった方が安いということになります。  このように、国民全員がかかる水痘にワクチンの経済効果は明白です。ただ、現在の 医療費負担の仕組みでは、ワクチンの方が受益者の負担が高くなるため、ワクチン接種 率が上がらないという結果をもたらしているのではないかと考えます。 (PP)  前のスライドは個人のレベルの試算でしたが、集団でもワクチンのもたらす経済効果 の報告があります。  北海道瀬棚町では、かつては北海道の212 の自治体の中で老人一人当たりの医療費の 額は第1位でした。しかし、平成12年から13年にかけてインフルエンザと肺炎球菌ワク チンを積極的にさせたところ、医療費がそれまで第1位だった瀬棚町では187 位まで後 退しております。このすべてがワクチンの効果とは言えないでしょうが、ワクチンがこ の医療費減少に大きな寄与をしていることは確実と思われます。  この数字を、これからの日本を背負い、明日の生産活動に従事する子どもに対するワ クチンと、その健康増進効果をはかるデータとして見た場合、費用対効果から見た経済 効果は更に大きなものとなるのではないでしょうか。 (PP)  ワクチンの意義に関する教育については、どうでしょうか。ヨーロッパでは、ホメオ パシーや自然との調和といった観点からワクチンに抵抗を感じている人はかなりおられ ます。このスイス人の親友もそのような一人です。  しかし、先日、麻疹で亡くなった患者さんの写真などを見せたところ、ワクチン絶対 反対ということは言わなくなりました。このように、信念を持ったワクチン反対派にさ え教育は必要であると感じました。 (PP)  さて、私事で恐縮ですが、私はこれまでてんかんや脳性麻痺に対するワクチンの論文 を書き、現在も出身大学で安定期にある悪性腫瘍を持ったお子さんや毎日けいれん発作 を起こしている重症てんかんのお子さんにもワクチンを打っています。このため、私の 事を、強硬なワクチン推進論者と考える方もいるかもしれません。 (PP)  しかし、その一方で、おたふくワクチン株による髄膜炎患者を本邦で初めて報告した り、「ワクチンに用いられているヒト・アルブミンに対する疑義」を英文論文にしたり して、現行のワクチンに疑問・改善点も表明しております。つまり、予防接種推進にア クセルを踏みつつ、同時にブレーキも使っている人間であると自負しております。 (PP)  昨年、かつて社会主義国だった旧東ドイツの医学生、東西統合時は10歳でしたが、こ の方がホームステイしたことがあります。彼の言によると、当時はいや応なく接種させ られたため接種率は100 %だったと言って、接種医のほかにワクチン査察官のサインの 入ったワクチン手帳を見せてくれました。しかし、副反応やワクチン禁忌者などのこと は論外という感じでした。  しかし、もう少し年を取られた上の年代の女医さんとの話を聞くと、アレルギーその 他の子は事前にチェックし、免除の上で、小学校のクラスでそろってimpfhausという予 防接種所に行くのがならわしだったそうです。予防接種を受けるのは当然と考えられて おり、反対運動はなかったそうです。現在の統一ドイツで予防接種が任意になっている 点について、親が子どもの健康について知識が乏しいということでもあるから、上から の指導が必要だと力説しておりました。 (PP)  昨今の風潮として、接種率さえ上げればよいという流れがあるやに感じることがあり ます。しかし、予防接種は、元来健康な人間に意図的に病原体などを接種する医療行為 であります。  厚生労働省からは、予防接種健康被害認定状況がこのように毎年報告されています。 このような事故が予見される、緊急性のないワクチン接種という医療行為を人手が手薄 な日曜などに行うことはいかがなものでしょうか。これをキャンペーンを張った「運動 」として行うことに対して、国はもう少し慎重な姿勢を保持すべきではないでしょう か。 (PP)  これは、人口13万のドイツの小都市Wolfsburg の市立病院です。これは総合病院です が、ここには小児科医だけで18名が働いています。翻って我が国の現状を見ますと、例 えば、人口が Wolfsburgの2倍の25万の高崎では、小児科常勤医が2名しかいない国立 病院が中核病院としてあるのみだそうです。  このような医療体制の下で、万が一、休日のワクチン接種で事故が起こり、休日であ るがゆえに十分な対応ができず、不幸な結果に終わったとき、国民の間にワクチンに対 する拒否感情が出ることを私は深く憂慮しております。  海外の医療事情のよい点を見習うことはよいことだと思います。しかし、全体のバラ ンスの上に成り立っている制度から、その一部だけ切り取って導入する場合には慎重な 姿勢が望まれると思います。 (PP)  最後のスライドです。まとめです。  ワクチン接種率の向上には、(1)ワクチンの正しい知識の周知・徹底。(2)経済的支援 が必要と思われます。  この(1)の具体的対応としては、特に普段ワクチンを扱っていない医師のレベルアッ プが重要です。このためには、例えば産業衛生に例を取ると、労働衛生コンサルタント のような合格率1〜2割程度の厳しい試験によるワクチン接種指導医制度と、産業医に 対比できるような、比較的容易に資格の取れる予防接種認定医のような2段階による専 門医制度の確立と導入が必要ではないかと思います。これら医師全体の予防接種知識の 質の向上に伴い、看護師、公務員、教員並びに一般市民のワクチンに対する関心と知識 の質の向上が期待されると思います。  (2)経済的支援としては、ワクチンの公費一部または全額負担や健康保険の給付対象 とするなどの対策を是非検討していただきたいと考えます。水痘で示したり、瀬棚町の 例で示したように、一時的には医療費の増加があっても、それを上回る経済効果が期待 されるのではないでしょうか。  最後に、就学時健診時の予防接種などに見られる複数の関係省庁が関連する場面での 各省庁の連携と協調体制のさらなる整備、また、安全なワクチン接種体制の維持・向上 なども再検討くださるようにお願いして、私のお話を終わらせていただこうと思いま す。  御清聴ありがとうございました。 ○加藤座長  どうもありがとうございました。  個々の細かい御質問、御答弁、コメントはおありと思いますけれども、それは先ほど も申し述べましたように、後ほどまとめて行うことといたしますが、事実上の関係等で どうしてもここで一時聞いておきたいということがございましたらお受けいたしますけ れども、事実関係の確認、その他はよろしゅうございますか。  それでは、松永先生どうもありがとうございました。  それでは、続きまして藤岡参考人から御発表いただきたいと存じますので、よろしく お願いいたします。 ○藤岡参考人  大阪で小児科を開業しております藤岡と申します。  私自身は、大学在籍中や勤務医時代に感染症や予防接種に特別に関わっていたわけで はありません。本当に普通のどこにでもいる開業の小児科医です。本日は普通の開業小 児科医として日々感じていること、実施していることを通じて、予防接種体制に関する 意見を述べさせていただきます。 (PP)  子どもというものは、病気や事故を経験しながら成長していくものだということがよ く言われます。しかし、ここには軽いという形容詞が必要です。  小児科を受診する子どもたちは、普通のかぜや下痢、嘔吐などの感染症を繰り返しな がら成長していきます。子どもたちが日々成長していく姿を保護者の方々と一緒に見守 らせていただけることは、開業小児科医の大きな喜びでもあります。 (PP)  しかし、麻疹や百日せきなど重症化しやすい感染症は、医学の発達した現在でも効果 的な治療法がなかったり、適切な時期に治療を行うことが実際には困難であったりしま す。麻疹や風疹脳炎で亡くなったり、百日せきで呼吸停止をきたし人工呼吸を必要とし たり、先天性風疹症候群で生まれたお子さんのことなどは忘れることができません。  当然ながら、このような重症の感染症にかかった子どもたちに責任はありません。し かし、このような感染症にかからなければ、すなわち、だれかからうつされていなけれ ば、その子たちの人生はまた違ったものであったわけです。  幸いなことに、このような疾患の多くに対しては効果的な予防接種があります。効果 的な予防接種があり、今の時代なら予防できたにもかかわらず、その恩恵を受けること ができなかった子どもたちのことを考えると、小児科医としては申し訳ないという気持 ちでいっぱいになります。  私は、小児科医としていうだけでなく、大人の責務として、このようなワクチンで予 防できる感染症から子どもたちを守らなければならないと思っています。そのために も、一人でも多くの子どもたちが適切な時期に予防接種を受けてほしいと考えていま す。更には、子どもたちが安全に、そして安心して受けられるように接種体制を整備す ることも必要であると考えています。 (PP)  さて、どのような医療機関においても院内感染はできるだけ防がなければなりませ ん。とりわけ、ワクチンで予防できる感染症であればなおさらです。  スライドに示すように、当院では1歳以上で麻疹ワクチン未接種・麻疹未罹患の感受 性者は0歳児と接触しないように配慮しています。また、受診時には必ず母子健康手帳 を持参していただき、予防接種歴を確認しています。必要な予防接種を勧奨し、確実に その後の接種までつなげるように心がけています。  このように、ワクチンで予防できる感染症の院内感染を予防するためには、一医療機 関においても受診者の感受性・非感受性の把握が基本となります。 (PP)  子どもたちに予防接種を受けてもらうためには、保護者の方々に受けさせていただく よう説明するわけですから、予防接種の目的は個人予防ですね。今の法律では、受けさ せる受けさせないは親の自由ではと言う保護者の方がときどきおられます。そんなとき には、予防接種法では病気の流行予防も目的としているし、親は受けさせるよう努力す る義務があるんですよと説明するようにしています。  当院の受診者数は、毎月1,000 〜1,500 人ほどですが、例えば麻疹予防接種を受けた くないとおっしゃる方は1年間で5人もおられません。 (PP)  実際の診療場面においては、保護者の方々に予防接種の目的や効果、副反応などにつ いて御理解していただく必要があります。私は、かからないために、重症にならないた めに、そしてほかの人にうつさないためにという目的のため、予防接種を受けてくださ いと説明しています。始めは、個人予防だけが目的と思っている方が多いのですが、予 防接種は100 %の効果があるわけではないので、自分の子どもだけが受ければそれで大 丈夫というものではないことを話しています。  また、医学的理由で予防接種を受けたくても受けられない子どもたちもいれば、予防 接種を受けても免疫が付いていないこともあります。地域にはいろいろなお子さんが生 活していますから、ワクチンで予防できる感染症を他のお子さんにうつさないようにす ることも同じくらい大切な目的ですので、是非予防接種を受けてくださいとお願いして います。  次に、効果と副反応についての説明です。  予防接種の効果で、自然に罹患する子どもたちが減り、結果的に重篤な合併症も減 り、予防接種の効果を実感できなくなってきています。また、麻疹や百日せきにかかっ て死亡したり危険な状態になっても報道されることはほとんどありません。そのため に、予防接種後の重篤な副反応と同じくらい自然罹患時の重篤な合併症についてきちん と説明する責任があると考えています。自然罹患の危険性をきちんと説明することがで きず、予防接種を受けないという選択をされ、もし自然罹患で重篤な経過を取ってしま ったらかかりつけ医としては悔やむことになるでしょう。自然にかかったのだから仕方 がないというのでは、小児科医としては余りにも無責任です。  また、副反応については、軽微なものと重篤なものを区別するとともに、重篤な副反 応の頻度は自然罹患時の重篤な合併症の頻度よりも低いことを御理解いただくようにし ています。  小児科医としては、予防接種の後で重篤な健康被害を受けた方々がおられることを絶 えず念頭に置きながら、それでも子どもたちのために予防接種を受けるという選択をし ていただけるよう勧奨していきたいと考えています。危険性がゼロでないことを承知し て手術を勧める外科医と同じです。 (PP)  さて、効果・副反応のバランスの考えの説明ではこのような図で説明するようにして います。効果100 %、副反応ゼロのワクチンが理想ですが、実際にはあり得ないと説明 します。  例えば、風疹ワクチンは妊娠しようと思う女性だけがワクチンを受ければよいのでは と言う保護者の方がおられます。しかし、この考えは、ワクチンを受けておれば風疹に は絶対かからない、すなわちワクチンの効果が100 %であるということを前提としてお り、残念ながらそのような完璧なワクチンは存在しないのですと説明しています。 (PP)  実際には、このように効果と副反応のバランスで考えていきます。 (PP)  免疫を得られる効果が幾ら高くても、副反応の強いワクチンは使えません。これはど なたにでもわかっていただけます。 (PP)  また、ワクチンでは免疫の付きが弱いので自然にかからせたいと思っているという保 護者もよくおられます。そのような方には、自然にかかることは副反応の一番強い最も 危険なワクチンを受けることと同じです。そんなに危険なワクチンをお子さんに受けさ せることはできませんねと説明しています。 (PP)  また、ほかの人にうつさないことの大切さについては、次のように説明しています。  赤色は免疫を獲得している人、水色が免疫のない人です。人から人に伝染していく病 気の場合、予防接種を受ける人が少ないとその病気の流行は阻止できません。まるでド ミノ倒しのように自分の周りにいる人、すなわち兄弟や友達にうつしていきます。そし て、だれかは必ず重症になっています。自分の子どもが元気に治ったからといって、ほ かのお子さんも元気に治ったかどうかはわかりません。 (PP)  予防接種を受けた人が多いと、流行は阻止されます。その病気に対して免疫のない 人、例えば病気や妊娠、年齢制限のために予防接種を受けられない人や、予防接種を受 けても免疫の付かなかった人や、一旦付いても弱くなった人もその病気から守られます と説明します。  それから、このような状況を社会防衛と言うこともありますが、誤解されやすいので 注意しています。すなわち、ワクチンで守られるのは社会とか国家とかという実体のな いものではなく、自分たちの周りの人たちです。それは兄弟であったり友達であったり 自分のおなかの子どもであったりします。強いて言えば隣人防衛でしょうか。 (PP)  これは、麻疹の年齢別患者報告数ですが、1歳早期に確実に予防接種をすれば、赤線 より右側の患者数は減少し、結果的に麻疹予防接種を受けていない0歳児の罹患も減少 します。 (PP)  沖縄県では、「沖縄県はしか“0”(ゼロ)プロジェクト」を展開しています。その 啓発ポスターには、「あなたのお子さんの予防接種によって、よその子も守られます。 みんなが受けることによって、あなたのお子さんも守られます」と記されています。 (PP)  例えば、自然罹患のブースターが減ると2次性ワクチン不応が増加します。スライド では緑色で示しています。  麻疹2回接種の必要性に関して言えば、その集団に罹患者が紛れ込むような状況を放 置するのであれば、罹患者が紛れ込むとここからまたみんなにうつっていきます。2次 性ワクチン不応者対策としての2回接種を検討せざるを得ません。 (PP)  しかし、その集団に病原体が入り込まなければ、すなわち罹患者が紛れ込まなけれ ば、感受性者であっても感染も発症もしません。 (PP)  次に、予防接種を受けやすい体制に整えるために、かかりつけ医での個別接種、無料 化・広域化・通年化の推進、健康被害報告制度の徹底、健康被害救済制度の拡充、健康 被害認定作業の迅速化などがあります。 (PP)  予防接種法第24条は、市町村は経済的理由により費用が負担することができない場合 以外には実費を徴収することができるという内容です。予防接種、とりわけ1類疾病に 対する予防接種の受益者は被接種者だけでないのですから、これらの予防接種の無料化 は当然のことと考えられます。  日本外来小児科学会アドボカシー委員会では、全国の市町村の麻疹予防接種にかかる 自己負担金を調査しました。平成13年末と16年末では、麻疹予防接種有料の地域は大き く減っていますが、いまだに一部を徴収する市町村が残っているのは残念なことです。 予防接種法24条は削除あるいは修正していただくよう希望します。 (PP)  次に、予防接種歴の確認は、接種勧奨のための入り口ともいうべき事柄です。接種記 録が記載されている母子健康手帳で確認することが必要です。種々の健診時の確認や勧 奨が法律等で定められています。 (PP)  まず、母子保健法施行規則により、1歳半児健診、3歳児健診で予防接種の実施状況 を確認することが定められています。確認すれば、勧奨するのは当然です。 (PP)  次に保育所ですが、保育を行う上での基準として厚生労働省から出されている保育所 保育指針によれば、「第12章 健康・安全に関する留意事項」の中で、「予防接種は、 子どもの感染症予防上欠くことのできないものであり、一人一人のかかりつけの医師や 嘱託医の指導の下に、できるだけ標準的な接種年齢の内に接種を受けるように保護者に 勧める」と明記されています。 (PP)  また、「8 乳児保育についての配慮」として、「乳児は、疾病に対する抵抗力が弱 く、また、かかった場合にも容易に重症に陥ることもある。特に、感染症にかかりやす く」とあり、集団生活の中では、年長児がDPTや麻疹などの接種を受けておくことで 乳児への感染の危険性を回避する必要があります。 (PP)  また、幼稚園、学校の定期健診では毎年6月30日までに予防接種歴の確認を行うとと もに、未接種者には接種を受けるよう指示することが定められています。 (PP)  新たに小学校に入学する際には、学校保健法、施行令、施行規則によって就学時健診 での予防接種の確認、勧奨についても定められています。 (PP)  平成14年3月に学校保健法施行規則が一部改正され、文部科学省から局長通知が出さ れました。この通知により、就学時健康診断票には、就学前に済ませるべき予防接種の 名称を記載し、記入漏れのないようにすること。「予防接種」の欄には、健康診断の当 日までに受けた定期の予防接種の種別及び接種年月日を記入すること。そして、事後措 置として、未接種者には接種を受けるよう指導することが明文化されました。  この通知は、平成15年度就学予定者に対する健康診断から適用されることになってい ます。網掛けで示すように、就学時までに受けるよう努力するべき定期予防接種の名称 が明記されています。 (PP)  また、就学時健診票の下部には「事後措置」として「就学に関し保健上必要な助言」 の欄があります。就学予定者に済ませていない定期予防接種があれば、健診医はその場 で助言できるだけでなく、その名称を記入して教育委員会に報告するようになっていま す。 (PP)  これは、今回の参考人でもある松永先生が全国の教育委員会にアンケート調査を行わ れた結果です。規則で定められた第1号様式を用いてないところが多いことがわかりま す。 (PP)  同じことを大阪府内で調べたところ、定められた様式に準拠していない市や町が44市 町村中25もあり、人口比で見ると81%が準拠していませんでした。 (PP)  松永先生の論文によると、接種歴確認後の事後措置を行った教育委員会も全体の20% 強に過ぎませんでした。 (PP)  大阪府内で健診票の事後措置欄の有無を調べたところ、事後措置欄のない市や町が44 市町村中22もあり、人口比で見ると79%が事後措置を記入する項目を作成していません でした。  このように、法令等が整備されていても、現場では担当者が知らなかったり実行され ていなかったりするところが極めて多いようです。 (PP)  就学時健診は、受診率がほぼ100 %ですので、省令に定められた様式の健診票を使用 することで、未接種児を就学前に確実に把握できるとともに、校区ごとの接種率も簡単 に算出できます。  スライドに示す表は、兵庫県小児科医会の岡藤先生から提供いただいたものですが、 K市H区内14小学校の健診票調査から得られた平成16年度就学児の各予防接種率です。 K市では予防接種台帳を作成していませんので台帳を用いての全数調査は不可能です が、この健診票を用いれば就学時の接種率調査が可能となり、適切な接種勧奨につなげ ることができます。 (PP)  しかしながら、仮にすべての健診をきちんと実施していたとしても、確認及び勧奨の 場としては少ないと言わざるを得ません。また、集団健診では、普段からよく知ってい る医療関係者が担当するとは限りません。  当院では、母子健康手帳で予防接種歴を確認し、接種勧奨、接種実施あるいは電話等 による接種確認を行っています。繰り返し勧奨することで、当院をかかりつけにしてい ただいている子どもたちのほとんどは必要な予防接種を受けてくださります。これによ って、当院を受診される乳児や妊婦さんは、これらの疾患についてはほとんど心配する 必要なく、安心して受診していただけます。  このように、一人でも多くのお子さんに予防接種を受けていただこうとすれば、健診 の場だけでなく、かかりつけ医による日々の診療での地道な勧奨がより重要であると考 えます。 (PP)  ところで、市町村の方にお願いしたいことは、予防接種台帳の作成と勧奨への利用で す。定期の予防接種実施要領には、予防接種台帳を作成し、5年間以上保存することに なっています。大都市部を中心に、台帳を作成していない自治体もあるようですので、 厚生労働省から強力な働きかけをお願いいたします。 (PP)  予防接種台帳の様式は決まっていますが、被接種者の生年月日と該当する予防接種の 接種年月日を記入するので、何歳何か月に接種したかが台帳の記載内容から把握できま す。紙の台帳に手書きする様式であっても全く差し支えありませんが、集計することを 考えればパソコンで動かせるデータベースソフトを厚生労働省で作成していただき、全 国の自治体に配付していただくことは実現可能な方策であると思います。 (PP)  また、予防接種を実施した場合は、「地域保健・老人保健事業報告」に従って記入、 報告することになっています。 (PP)  しかし、この報告内容は、その年度に実施した予防接種実施数を年齢別に記入しただ けのものです。  この表は、大阪府T市の平成15年度報告から麻疹分を抜粋したのものですが、2歳以 上の接種者は分母である今年度の1歳児ではありませんので、接種率が100 %を超えて しまっています。この算出方法の問題点は以前から何度も指摘されていますので、正確 な接種率の算定が可能な事業報告となるように、前述のデータベースソフトの開発を重 ねてお願いいたします。 (PP)  まとめに代えて、厚生労働省に対する要望は以下のとおりです。  1.予防接種歴確認に関する現行の法令等の遵守を市町村に指導すること。  2.早急に予防接種台帳を作成・整備するよう市町村に指導すること。  3.正確な就学年次別接種率算定や接種勧奨につながる予防接種台帳ソフトを開発 し、市町村に配布すること。  4.正確な就学年次別接種率算定が可能となるよう「予防接種報告」の作成要領を変 更すること。  また、就学時健診票を省令に準拠した内容に速やかに改訂するよう文部科学省と連携 し、全国の市町村に指導していただきたいと考えております。  御清聴ありがとうございました。 ○加藤座長  藤岡先生、どうもありがとうございました。  先ほどと同じように、何か質疑応答以外に事実関係等で先生に御質問がおありの方は どうぞ。 ○結核感染症課長  数々の提言をいただきまして、その一つが予防接種台帳でございますが、御指摘の点 につきましては私も問題だというふうに思っておりました。  平成16年度以降の予防接種の実施報告におきましては、年齢階級別に接種者数を把握 できるよう報告制度を改正したところでございますので、平成16年度以降は接種率につ いての従来のような100 %を超えるようなでたらめの数字が出てくることはないという ふうに思っております。 ○加藤座長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。  今の件については、また後ほどディスカッションのところが入ってくるかと思います けれども、また厚労省の方から詳しく御説明があると思います。どうもありがとうござ いました。  それでは、先に進めさせていただきます。今のところ、非常に各参考人の先生方、時 間を守っていただいておりまして感謝申し上げますので、引き続きよろしく御協力をお 願いいたします。  森内参考人からお願いいたします。 ○森内参考人  ということで、ちょっと早口になるかもしれませんけれども、お手元の資料もござい ますので、そちらの方も見ながらやっていただけたらと思います。 (PP)  今日は欲張って、2つのテーマについてお話をしたいと思います。  まず、第1点は、「医療従事者への予防接種」という観点でお話をさせていただきま す。 (PP)  これは、昨年度、既に『日本小児科学会雑誌』というものに報告してありますし、ま た日本小児科学会のホームページにもありますけれども、予防接種・感染予防委員会の 方で行いました「医学部学生および附属病院研修医に対する感染予防対策の実態調査」 を行ったその結果について、簡単に御報告をいたします。 (PP)  まず、医学生への職業感染に関する講義。4年間にわたる医学部の教育の中で、これ に対する講義の時間は1時間半というふうに出ております。また、担当する部署、小児 科、内科、その他もろもろ、非常に多岐にわたるところが担当している。逆に言うと、 どこが責任を持っているかよくわからないという実態です。 (PP)  医学部の実習を開始する前に行う検査としては、B型肝炎ウイルスが最もよく行われ ておりまして、約三分の二で行われています。逆に言うと、3校に1校はこれもしてい ないということです。  それから、麻疹、風疹、ムンプス、水ぼうそうに関しては施行していないところの方 が過半数を占めます。そして、施行していると言われるところでも、実は聞き取り調査 をしているだけというところもかなり多く含まれておりまして、全く何の調査もしてい ないところもあります。 (PP)  また、この医学部の実習生に対する検査の費用の負担ですけれども、医学部が負担し ているところがほとんど。それから、附属病院の負担などを含めまして、大体学校側が しているということになります。 (PP)  予防接種に関しましては、やはりB型肝炎ウイルスがよく行われていますが、麻疹、 風疹、ムンプス、水ぼうそうに関しては3割程度しか行われておりません。 (PP)  この予防接種への費用ですけれども、先ほどの検査に比べると個人の費用負担の部分 が少し増えてきているようです。 (PP)  過去5年間に限って、この医学部の実習で実際に医学部の学生さんがどのような感染 症にかかってしまったかというアンケートで、実は何らかの経験があると答えたところ が大半に及んでおります。個々の感染症で最も多かったのは、インフルエンザ28校35% で、そのほか、麻疹、風疹、ムンプス、水ぼうそうといった病気もここに挙げられてい るような頻度で報告されておられます。 (PP)  次には研修医ですけれども、研修医に対しての職業感染に対する教育は、特にしてい ない15%、幾つかの診療科でしている、何か怪しげな答え方が16%ということで、全員 にしているところが68%あったんですが、その内容を見てみますと、研修プログラムに しっかり組み込んでいるところは勿論いっぱいあるんですが、指導医で個別に教育して いる、また怪しげな書き方で答えているところも少なからずあります。ということは、 少なからぬ施設において、研修医が職業感染の危険性について認識をする機会が極めて 不十分であると思われます。 (PP)  研修を開始する前に、どのような検査をしていますか。やはりB型肝炎ウイルスはよ く検査をされていますが、やはりまだ3割の病院ではそれもしていないということで す。  麻疹、風疹、ムンプス、水ぼうそうは、さすがに医学部の実習生に比べるとよくして いますけれども、抗体検査まできっちりやっていることとなりますと、やはり半数ぐら い。しかも、その半数の学校でやっているということなんですけれども、よくよく見て みますと、小児科を研修する場合だけという限定条件つきです。全研修医を対象として いるところは、全体の6分の1に過ぎないということです。 (PP)  この費用の負担ですが、附属病院、医局もしくは附属病院と医局の折半などという形 でほとんど行われているというのが実態です。 (PP)  実際にやっている内容ですけれども、B型肝炎ウイルスのワクチンがやはりほとんど です。そして、麻疹、風疹、ムンプス、水ぼうそうもこの程度ということで、全く施行 していないところもある程度ございます。 (PP)  その費用に関しても、やはり先ほどと同じように附属病院や医局の方が負担すること が非常に多いという結果になっております。 (PP)  そして、過去5年間、研修医がどのような感染事故に遭ったかということで、これは ほとんどの病院で感染事故の報告をしております。  個別の感染症では、やはりインフルエンザが一番多く、そのほかには水ぼうそう、は しか、ムンプス、風疹などが10〜20%程度。そのほか、結核もありますし、また、これ はワクチンでは防げないんですが、流行性角結膜炎、そしてB型肝炎もこのぐらい報告 がありました。 (PP)  今日は、個別の疾患を取り上げるのは目的ではありませんが、麻疹、風疹、ムンプ ス、水ぼうそうは非常に感染性が高いということ。それから、子どもの疾患とみなされ がちですけれども、大人の例も非常に増えている。そして、大人の方がむしろ重症化し やすい。特に妊婦さんは危険であるというふうなことは認識すべきです。看護師、研修 医、妊娠している方もいっぱい働いております。  有効なワクチンがあるにもかかわらず、感受性を持ったままでベッドサイドに向かう ということは、残念ながらまれではありません。先ほどお示しましたように、今回の調 査でも多くの感染事故が報告されております。 (PP)  例えばですけれども、しばらく前に日本感染症学会というところで報告のあったもの で、後ろにある病院は長崎大学病院ですけれども、うちの話ではありません。  とある病院の皮膚科に、高熱と発疹のために24歳の女性が入院。呼吸不全が進行し、 血圧も低下して、ICUに入ってやっと改善です。ところが、この患者さんの主治医で あった27歳男性。この患者さんの受け持ちになった11日後、やはり同じように発熱、発 疹が起こり、次には全身臓器不全に陥って、ICU管理でようやく一命を取りとめた と。  後で2人とも血液検査をしますと、はしかのIgM抗体は陽性。はしかであったとい うことがわかったと。はしかというこの事実を診断できなかったというのは非常にまず いことではないかと思うんですが、医療従事者もはしかには御用心ということです。 (PP)  というふうに考えますと、医療従事者にとってこのようにワクチンで防げる病気への 対応はだれのためか。勿論、自分のためです。自分の健康・生命を守るためですが、も う一つは職業生命を守るためでもあります。つまり、患者さんを助けようとして頑張っ ている医師が、逆に加害者になってはいけないということです。それは、自分のため、 患者さんのため、そして訴訟や社会批判から守るという点では病院のためでもありま す。 (PP)  以上の調査でわかったこと、容易に予測されることといたしまして、職業感染への対 策は教育であるとか検査、そして予防接種に至るまでの過程で、病院や地域によって非 常に大きな格差があります。ほとんど対策がなされていないところも残念ながらありま す。対策が行われている場合でも、「小児科限定」で行われているところが非常に多い ということです。そして、現在費用は医局がかなり負担しているケースがあります。  このようなことがありまして、実は医局というものが存在しない大学病院以外の病院 では、実態はもっと悪いというふうなうわさが多いです。報告されただけでも非常に多 くの職業感染が起こっております。そして、医療従事者から患者への感染というのは今 回の調査の内容ではございませんけれども、あったのではなかろうかと危惧しておりま す。 (PP)  このような予防対策の問題点に対して、いろんな障壁があります。  まず、費用がかさむこと。これまでは病院が捻出してくれない分を医局が肩代わりし ておりました。しかし、今研修制度が変わって直接医局に入局するということがなくな りますと、そういうサービスもなくなっております。  それでは、病院が持ってくれと言いましても、病院はどこも大赤字です。しかも、こ れからは附属病院も独立採算を求められますと、お金のかかることはしたくないという ことになるわけです。しかし、一旦重篤な感染事故が起こった場合には経済的損失はそ れ以上であると思われます。 (PP)  もう一つの問題点は、全国的に足並みがそろわないことです。これまでは卒業した大 学に残る学生がほとんどでした。しかし、今の新・研修制度の中で、多くの学生は全国 的に展開するマッチングによってさまざまな経路をたどります。そして、すべての医学 生、すべての研修医は小児科の実習を必ず経験することになります。  また、卒前の実習で行われた予防対策と卒後の研修での現場での対応に整合性がない と、効果的かつ効率的な対応は難しくなります。  したがいまして、全国すべての附属病院及びその他の研修病院で、統一した職業感染 予防対策を遵守すべきではないでしょうか。 (PP)  もう一つの障壁は、認識不足、そして責任の所在がはっきりしないということです。  最初にお伝えいたしましたように、卒前・卒後の教育の中でもどこが責任を持ってど こまでしっかりと職業感染の重要性を教育するのかが必ずしも明確ではありません。  したがって、全国的な指針として、卒前の実習、卒後の研修のカリキュラムの中にこ の感染症に教育の在り方を明記し、その中に予防接種、職業感染の項目を盛り込んでい きたいと思います。このためには文科省、厚労省の共同の指針というものが必要ではな いでしょうか。 (PP)  この最初のテーマについての提言ですが、医療従事者への予防接種。これは医療に関 わる職種を選ぶ権利がある一方で、感染防止に努める職業上の義務というものもあるは ずです。したがって、医療従事者向けにはまた別の定期予防接種指針を国として定める べきではないでしょうか。 (PP)  つまり、予防接種は医療従事者の義務であるという観点で、日本では病院とか医学部 がお金を出してくれるというパターンですが、米国を始め多くの国では医学生が臨床実 習に参加する際、そして研修医、新任の看護師が就職をする場合には、学生もしくは研 修医、看護師の方にそれを証明する義務があります。つまり、ワクチンを接種していま すもしくは当該の病原体に対する抗体を私は持っていますという証明書を出さないと実 習も受けられない、就職もできないという形になっています。 (PP)  もう一つ、ちょっと今日触れていない観点であえて取り上げますが、新興感染症。こ れはバイオテロも含みますが、その拡大防止の対策に医療機関での、もしくは医療従事 者を介する感染の防止は非常に重要です。  これはせんだって、SARSが世界的にはやったときに、その大半が病院を舞台とし て起こったことを考えていただけると御理解いただけると思います。つまり、医療従事 者のために、このような新興感染症、バイオテロの病原体に対する非定期予防接種指針 というものを国として定めるべきではないかとも思います。 (PP)  例えば、ここで挙げているインフルエンザウイルスは毎年のインフルエンザウイルス というよりも、新型のインフルエンザがはやったとき、つまり急いでワクチンをつくっ ても数が少ない、全員には間に合わない。そういうときのワクチンの接種順位というも のを、危機管理意識のある国はきちんとつくっております。  アメリカ、イギリス、ここではイギリスの例を取っておりますが、一番最初に上がっ てくるのは医療従事者です。これは当然私たちの義務でもあるし、ある意味での権利で もあるかと思います。以下、必要なものをずらっと並べてあります。 (PP)  このように、予防接種の取組みには非常に日本とほかの国では現場での温度差という ものも大きいと思いますが、政府の方での政策の面でも違いがあると思います。ここで は日米の違いという観点で少し取り急ぎお見せしたいと思います。 (PP)  アメリカの予防接種の施策について簡単にばあっと流していって、一個一個取り上げ る必要はないのですが、これは私の感覚として、生命保険というものがアメリカはみん な掛け捨てなんですけれども、日本は貯蓄型ではなかったらだれもお金を出さないんで す。その違いかなといつも思っております。  個別の違いは、皆さんお手元の資料でごらんになっていただければ結構ですので、ち ょっと飛ばしていきます。 (PP)  国として施策を行う場合には、どうしてもコストというものが非常に大きな問題にな っております。既に松永先生、藤岡先生がお話しになられましたし、また、この後細矢 先生や横田先生も同じようなテーマのことを話されるかと思います。 (PP)  ここではアメリカの計算の仕方をお出ししています。  ここに挙げている代表的なワクチン、3種混合ワクチン、MMR、B型インフルエン ザ菌に対するワクチン、B型肝炎、水痘ワクチンに対して、左の方の列は1ドルワクチ ンにお金を使ったときにどのくらい医療費が直接節約できるかというふうな数字です。  1ドルを超えればワクチンを使った方がもうけということになるわけで、3種混合と かMMRは文句なしにもうけます。ところが、下の方になりますと、B型肝炎、水ぼう そうは1ドルのワクチンを打って医療費の節減は50セント、90セントということで、一 見損するように見えます。 (PP)  しかし、例えば水ぼうそうに関しても、先ほど松永先生たちもお話しになりましたけ れども、ここでも、ただ医療費はゾビラックス、水ぼうそうのウイルスに対する薬を使 わないときの計算です。したがって、ちょっと安上がりです。そうしたら、することが ないんです。それでも90セントかかりますけれども。ただ、子どもが水ぼうそうにかか ったときには直接の医療費だけが問題ではありません。水ぼうそうにかかると、親は仕 事を休まないといけないんです。そうすると、親は損します。会社も損します。社会全 体も損します。そういうことを考慮いたしますと、1ドルのワクチンでもうけるのは5 ドル40セントということになります。  したがいまして、ワクチンの功罪とか損得を考えるときには、接種を受ける人だけで はなくて、家族、社会の利益も考慮しないといけない。ただ、家族も、日本では以前は 父親だけが外で働いていましたが、今では共稼ぎの世帯の方が多いわけです。ワクチン で防ぐことのできる病気に子どもがかかって親が仕事を休む不利益も考えないといけな いわけです。  ただし、ワクチン接種のために親が仕事を休む、これも非常に休みにくいですね。子 どもが病気のときに休むのも何か後ろめたいのに、健康な子どもにワクチン打つのに休 みますと言うと、非常に周囲の冷たい目を感じることがあります。勿論、だからといっ て土日にすればいいというのも問題でありますということは松永先生が御指摘されたと おりです。したがいまして、それぞれの国での事情を考える必要があります。 (PP)  また、社会全体を見ましても、日本は、世界の中でも人口密度が高い国です。通勤通 学、私も今日久しぶりに東京の通勤時間帯に移動してまいりましたけれども、満員電 車、満員バスの中で動きます。  職場も学校も人であふれています。感染症の伝播にはうってつけの環境です。感染症 のために欠勤する人が増えますと、企業、官庁、いずれの職場も大変不効率・不採算に なってしまいます。 (PP)  これも、既に御発表になっている中にございましたけれども、アメリカ合衆国は比較 的日本に比べると予防接種の率が高い。ここで挙げていますのは先ほどの数字とは違い まして、例えば3種混合でもすべてこの段階まで終わっていると。ただ単に途中まで行 っているということだけではなくてすべて終わっているということになりますので、ポ リオとか3種混合の率はむしろ日本より低く見えますけれども、ただ風疹、ムンプス、 水ぼうそうなどに関する接種率は非常に高いです。  それから、B型肝炎に対する接種率もこのように高いです。これは幼稚園です。小学 校ではありません。だから、日本の先ほどのデータよりも更に数年手前のところの数字 が何でこんなに高いかということです。 (PP)  それは、アメリカでは、これも先ほども御説明があったとおり、入園、入学前にさま ざまな予防接種を済ませておくことが義務付けられているからです。州によって随分違 います。ここではフロリダ州の例を示しておりますが、幼稚園に入るときにはポリオ、 3種混合、麻疹、風疹、おたふくかぜ、B型インフルエンザ菌のウイルス、B型肝炎ウ イルス全部済んでいないと入園できませんということです。 (PP)  このように、ワクチンの考え方、勧め方というのはこの3段階、承認・勧奨・義務と いうものがありますが、まず承認は、FDAというところがワクチンの有効性、安全性 を検討して行います。次には学会レベルで、今度は利益やコストというものを更に加味 して今度はワクチンの使い方を勧奨をするということになります。 (PP)  そして最後に、今度はおのおのの州の政府が以上の環境内容に応じ、また州の現状を 踏まえて、就学前の接種義務の内容を定めるという3段階になります。 (PP)  このように、接種義務についての日米の考え方の違いがあります。これも先ほどから お話に出ておりますが、日本では定期接種に関しては「努力義務」です。時期について は、就学前に一応チェックしていこうということをだんだん打ち上げておりますけれど も、ただし就学前までにきっちり済ませようという意識はまだまだそんなに強いわけで はありません。  一方、アメリカでは州によって違いますが、日本の定期接種を凌駕する内容を就学前 までに済ませることを義務付けています。 (PP)  日本では、努力義務を怠っても就学に支障はございません。でも、アメリカでは州に よって違いますが、義務を怠ると就学に大きな支障を来します。 (PP)  このように、ワクチンの接種義務と拒否をする権利というものを考えると非常にデリ ケートな問題です。  アメリカでは、州によって随分違います。例えば、ペンシルベニア州では医学的な理 由以外にも宗教的、それに準ずる理由で義務付けられているワクチンの接種を親権者が 拒否することができます。 (PP)  しかし、その結果非常に悲惨な出来事も起こります。同じペンシルベニア州で、十数 年前に麻疹の流行で1,600 人の子どもが罹患して9人が死亡しています。これは、今、 アメリカでは日本から輸出しない限り麻疹はいないんですけれども、このころはこうい う流行がありました。  その理由は、この地区にいるアーミッシュと言われる、ある宗教の方たちが宗教上の 理由で予防接種をすべて拒否しておりました。それは拒否する権利で認められたんです けれども、その方たちを中心にして起こった流行が更にその周囲の、ワクチンをちゃん と打ったんだけれども、どうしてもワクチンが付かない人が20人に1人ぐらいはいま す。そういう人たちや医学的な理由で受けたくても受けられなかった人たちにまで感染 が拡大し、その人たちを含めて9人の子どもが死んだわけです。  この場合、拒否をした親が自分の子どもを失ったのは自己責任なんでしょうか。そし て、周囲の子どもたちまで巻き添えをくって亡くなったことへの責任はどう取るべきな んでしょうか。 (PP)  最後に提言ですが、あくまでも日本の現状に応じた接種義務の導入というものをもっ ともっと推し進めていく必要があるのではないかと思います。つまり、個人の接種を拒 否する権利と社会のそのほかの隣人たちの感染症から身を守る権利のバランスを時代と ともに、地域の実情とともに、そしてワクチンの進歩とともに、刻々と時代の要請に応 じて変えていく必要があると思います。日本の現状に合わせ、特に集団生活の現場に必 要とされる接種義務の導入を考慮していきたいというふうに思っております。  御清聴ありがとうございました。 ○加藤座長  森内先生どうもありがとうございました。特に事実関係で何か御質問がございました らお伺いいたします。  どうぞ。 ○廣田委員  最初の方にお示しいただいたスライドで、「医学部実習開始前の検査」、それから 「医学部実習開始前の予防接種」というのがございました。あれで、ツ反が28%で行わ れて、BCGが9%で行われたというところでございます。  これは、BCG接種することを前提に、その適用判断のためにツ反をしているのか。 あるいはツ反とBCGは全く別々に考えて、ツ反は感染あるいは集団感染みたいなこと が起こったときの確認用に事前のツ反をチェックしているのか。そういったところの情 報はございますでしょうか。 ○森内参考人  今回の検討調査では、それをしっかりと把握するだけの内容では問いかけてはおりま せんので、あくまでも後でいろんなアンケートに答えていただいたところへ個人的に聞 いてみた印象程度のことですけれども、必ずしもリンクはされていないと思います。先 生も御存じのとおり、医学部に入るぐらいの年の人にBCGを再接種しても、この点で メリット、デメリットどちらが大きいかは非常にわからないところだと思います。した がいまして、あくまでもツ反でベースラインを知っておくということが一番重要であ り、BCGをその手でつなげるかどうかということは問題外だと思います。  したがいまして、ワクチンをつなげてあげるということを一応この中に並べてはおり ますけれども、あくまでも全体的なデータの一つとしてということであり、私個人もし くは予防接種委員会の方としても、この年齢のBCG接種を勧めているということでは 決してございません。 ○加藤座長  ございますか。どうぞ。 ○松永参考人  補足です。先生が水ぼうそうのワクチンで、私のスライドでゾビラックスを使ってい るということに言及されましたが、時間がなかったのでそのようにしましたが、あれは いわゆるマルメ。包括医療費で計算しておりましても、マルメの場合にもやはりあのよ うになりますので、使う使わないにかかわらず、非常に日本の保険制度は値段が複雑な んですが、使わなくてもあのような値段になるという場合もあるというふうに御了解く ださい。 ○森内参考人  先生のデータは非常に貴重で、実はアメリカで紹介した、日本で本当にお金が常にあ るかどうかもしっかりと検証していかないといけないと思います。ありがとうございま した。 ○加藤座長  どうもありがとうございました。  それでは、続きまして細矢参考人からお話を伺います。よろしくお願いいたします。 ○細矢参考人  福島医大の細矢でございます。よろしくお願いいたします。 (PP)  それでは、早速発表していきたいと思います。  今日、私がお話ししたいと思いましたのは、やはり問題になっているのは接種率を何 とかして上げたいということが第1点。  第2点目は、できれば公費負担の予防接種、定期とは限らないのですけれども、公費 の補助のあるような予防接種を拡大していただきたいというのが第2点。  第3点目は、ワクチンによって予防が可能な疾患については、もっとその流行状況、 予防接種率、個人のこういった感染歴といったものをもう少しはっきりできないかとい った3点でございますが、特に今日はこの定期予防接種率の算定の統一、もう図られた ということのようですが、この点が第1点。それから、費用対効果といったものの検討 について考えていただきたいという2点について話させていただきます。 (PP)  最初は、福島県の中南部、須賀川市といったところを中心にして起こったはしかの流 行の話であります。  須賀川市は、人口が約七万人、周辺地域合わせて約十五万人の地域でありまして、15 歳未満の小児の人口が2万5,000 人の地域です。ここではしかの流行がありまして、須 賀川市内1つの病院に、2002年から2003年にかけて380 人のはしかの患者さんの入院が ございました。380 人といいますと、小児人口2万5,000 人分の1.5 %に当たる数であ りますが、これを年齢別に見ますと、大体どこでも同じように出てくるのですけれど も、6か月から24か月までのワクチンの未接種者がほとんどであるということになりま す。この未接種者、2歳未満にいたしますと人口の6%が麻疹罹患者ということになり ます。 (PP)  右の下の図になりますが、これはワクチンの接種率の算定です。  ここの病院の医長先生が、須賀川市の接種率は95%あるのに何でこんなにはしかにか かるんだ、はしかのワクチンが悪いのではないかというふうなことをおっしゃられたん ですけれども、確かに平成13年度で見ますと95.3%という接種率になります。平成14年 度になりますと90.8%になりますが、このときにはここではしかの流行があって6%が 罹患しているわけですから、既に免疫がある人は95%以上はいるという計算になるわけ です。  ところが、同様の他の地区で検査した結果では、30%あるいは40%といった接種率に なってしまいます。これは接種率の算定の方法が違うからでありまして、一番上の標準 的接種年齢を分母にしまして、接種者を分子にしますとどうしても高く出てしまいまし て、場合によっては100 %を超えるというふうなことになってしまいます。 (PP)  福島県におきましては、定期予防接種の接種率算定方法を改めてみました。それは、 接種者数を年齢階級別に求める。それから、対象人口も年齢別に求めるということを行 いました。  そうしますと、例えば、この四角で囲みましたが、これは福島県全体を示しますが、 平成15年度の1歳児の麻疹ワクチン接種完了率というのを求めます。すなわち、分子に 1歳児の麻疹ワクチン接種者数2万398 人となります。それから、平成15年度の1歳児 の人口2万2,393 人で割りますと89.1%という数字になります。 (PP)  右側に行きまして、先ほどのをずっと合わせてみますと、計算方法によりまして大分 ばらつきがあったわけですが、実際にはほとんどの地域が70%から80%という接種率で あったということになります。 (PP)  次の図はちょっと見にくいんですけれども、本当はこれを出したかったのですが、90 %以上を青で示してあります。それから、50%から90%を黄色で示しまして、50%以下 を赤で示した図があるんですけれども、これで見ますと、福島市、郡山市、いわき市と いった地区では90%以上の接種率を保っているわけですが、先ほどの麻疹の流行があり ました県中南部においては接種率は90%を切るという状態になっております。 (PP)  右側は、1歳児における風疹の接種完了率を示したものでありますが、全体的に色が 変わっておりまして、ほとんどが90%を切っている状況であります。そして、その中で も先ほどの県の南部、相総地区、南会津地区といったところでは50%を切るというふう な状況で、風疹については更に接種率が悪いということがはっきりいたします。 (PP)  左側の下になりますが、非常に簡単な方法でありまして、年齢別に接種者人口を求め ますと比較的簡単にこういったことを求めることができます。接種完了率が年齢ごとに 算定できますし、市町村間の比較が比較的容易にできます。更に重ねてまいりますと、 同様に年次別に接種率の推移がわかるということになります。 (PP)  右の下の写真から取ったものなんですけれども、これは日本の地図が載っているんで すけれども、このときには北海道と九州と沖縄がはしかの流行が非常に大きかったとい うふうに言われているんですけれども、このとき、実は福島県でも大きな流行がござい ました。恐らくこういったことが福島県の方にも入りまして、比較的腰の重い行政なの でありますが、このときはやはり何とかしなくてはならないということで、接種率を算 定ということが始まりました。  実際の発症率だけでなくて、やはりこういった地図でもってどこの接種率が高い低い ということを出されますと非常に効果があるように思いますので、是非日本地図あるい は各都道府県ごとの接種率を算定しましてこのような図に示していただけますと、接種 率の向上につながるのではないかというふうに考えております。 (PP)  次の話は少し変わりますが、福島県の地図がありまして、相馬市というところにマル が付いているんですけれども、相馬市の人口がおおよそ5万人の地域であります。全国 の人口からしますと、約2,600の1ということになります。  この相馬市には、公立相馬病院という病院が1か所だけありまして、ほとんどの小児 患者さんをここの病院で診ているということになります。ここで感染症のサーベイラン スを行いますと、ほぼ全数の把握ができる地域であります。 (PP)  最初に、ここでロタウイルスの胃腸炎の疫学的検討というのを行っていました。 (PP)  見にくいのですけれども、ロタウイルスが棒グラフで示してありますが、4月から5 月の間にロタウイルスの感染症があります。 (PP)  年齢別に見ますと、0歳、1歳、2歳というところにロタの感染症が見られます。 (PP)  左の一番下の図になりますが、3歳までの罹患率、入院率といったものを求めてみま した。  相馬地区の年間の出生数が、大体450人から500人ですので、5年間を合計しますと 2,500 前後になります。すなわち、5年間の合計ですと大体2,300ぐらい。かつては 2,6 00ぐらいあったわけですけれども、徐々に出生数が減少してこのような数字になっ ておりますが、患者数を見ますと0歳、1歳、2歳の合計で大体12%、すなわち3歳に なるまでに12%がロタウイルスに感染するということになります。そして、入院患者さ んは6%。大体子どもの6%がロタウイルスに感染して入院するという結果になりま す。 (PP)  医療費をこれで求めてみました。そうしますと、1年当たりの医療費や入院費用が相 馬地区で550 万円。それから外来治療が40万円ということになりまして、人口から日本 における医療費を推計しますと、入院医療費が150 億円、外来医療費が20億円というふ うに算定されます。  (PP)  これは、相馬市の5年間の平均から求めたものでありますが、次に岡山市の病院で求 めたものが1999年、1年で求めたもので、これで入院医療費が145 億円、外来医療費が 8億円。そして、舞鶴市で求めたものが入院医療費が101 億円、外来医療費が19億円と いうことになります。若干のばらつきはございますが、ほぼ同様の値であったのではな いかというふうに考えております。 (PP)  次に、同じ相馬地区におきましてインフルエンザの罹患率とワクチンの予防効果とい うものを求めてみました。この表は非常に細かくてわかりにくいんですけれども、2002 年、2003年シーズンと2003年、2004年シーズンに分けて書いてあります。  縦に月齢が書いてありまして、一番下がトータルを表しております。書いている本人 がわかりにくいのですけれども、ワクチンの接種率は2002年、2003年シーズンで38.1% でした。このときは香港型とBの2つが流行しておったんですけれども、香港型の罹患 率が非接種者では16.8%、そのくらいでした。接種者においては5.3 %となりまして、 流行率が68.3%ということになります。  Bの罹患率が18.7%でありまして、接種者における罹患率が6.7 %、有効率が64.2% ということになりまして、いずれも非常に有効であったという結論になります。  それに対して、2003年、2004年シーズンはAH3香港型の流行が主でありまして、こ のときの罹患率が21.7%、接種者の有効率が46.1%というふうに求められました。 (PP)  この結果を基にしてワクチンの経済効果といったものを求めてみました。  ワクチン非接種者では、罹患率が02、03年が35.5%、03、04年が21.7%。入院率が 02、03年が3.4 %、03、04年が2.6 %という数字でした。  ワクチン接種者におきましては、罹患率がそれぞれ12%、11.7%。入院率が0.4 %、 1.4 %という数字でありまして、外来医療費を1人2万円、入院医療費を15万円、ワク チン接種費を2回で5,000 円というふうに設定しますと、2002年、2003年シーズンのワ クチン非接種者における医療費が1万2,200 円、ワクチン接種者の医療費が8,000 円と いうことになりまして、ワクチン費5,000 円を負担したとしても医療費は減少するとい うことになります。  2003年、2004年、このときは流行規模は少し小さかったわけですけれども、こういう ときは1人当たりの医療費が8,090 円、ワクチン接種者では9,440 円ということになり まして、ワクチンを接種した方が医療費が高くつくというふうになります。  こういった場合には、例えば、個人に1回当たり1,000 円を負担していただくという ことになれば、ワクチン接種者の医療費は7,440 円ということになりますので、十分に 医療費としては元が取れるのではないかというふうに考えております。 (PP)  左の一番下になりますが、定期予防接種をもう少し拡大できないかということでお話 ししたわけでありますが、我々のような地方であれば、福島県全体とはいきませんが、 ある程度の規模で全数調査は可能であります。こういったところで罹患率、入院率、ワ クチンの有効率といったものを求めることができます。1か所だけではなくて数か所で こういったことが確認されれば、ほぼ確からしい値だろうというふうに考えておりま す。  こういったデータから非接種者における医療費といったものを比較して、非接種者に おける医療費の方が高ければ、個人負担のない予防接種の対象として検討してもいいの ではないか。逆に、接種者に関わる医療費の方が高いような場合には、個人負担を設け て接種する対象として検討してはどうかというふうに考えます。 (PP)  最後のスライドになりますけれども、まずは予防接種率の向上についてであります が、やはり接種率を算定して評価するということが大事だと思いますので、是非そうい った方法で行った結果を日本地図のようなもので示していただければというふうに思い ます。  第2点でありますが、定期予防接種の種類を拡大していただきたいということです が、これまでの効果と副反応といった視点のみでなくて、費用対効果といった視点を含 めて検討していただきたい。  ただし、現在あるデータを利用してというのではなくて、できれば定期予防接種化を 方向した研究といったものを進めていただきたい。そのためには、そういったものをア ドバイスするような機関が必要でありますので、予防接種諮問委員会といったものが、 例えばこの予防接種検討会の下の組織として常設して存在するといったものが必要なの ではないか。  更には、例えばそういったところから我々のようなところにこういった研究をしなさ いというふうに命令していただければありがたいわけでありますが、是非、ここはひと つ厚生労働省から資金的なバックアップをお願いしたい。これは額の問題ではなくて、 ごくわずかでも構わないのですが、厚労省からお墨付きをいただいたということになり ますと、各自治体あるいは医師会といったものに非常に協力していただけますので、是 非検討いただきたいというふうに思います。  以上でございます。 ○加藤座長  どうもありがとうございました。  少しパソコンの方の調子が悪かったので、先生には失礼申し上げましたけれども、大 体プリントに書かれてございましたので御理解いただけたと思いますけれども、何か1 〜2御質問がございましたらばどうぞ。特にございませんか。  どうぞ。 ○古賀参考人  須賀川市周辺における麻疹の流行というのは以前新聞記事で見せていただいたことが あると思うんですけれども、このとき死亡というのはどの程度あったんでしょうか。  と申しますのは、昨日厚労省の方からいただいた資料の中に2002年と2003年の麻疹の 罹患者数の報告があるんですけれども、地方の局地的にこのような大きな流行があった ということが果たしてサーベイランスに反映されているかということをちょっとお尋ね したいので、お聞きいたします。 ○細矢参考人  麻疹が恐らく関係しただろうと思われる死亡例は、この中に2例含まれております。 ただ、1例は別の開業の先生が診断していたのですが、自宅で亡くなられて運ばれてき たということで、実際にそれが麻疹によって起こったかどうかというのがわからない症 例です。  2例目が、やはり実際に入院している最中に呼吸不全で亡くなられたという症例であ りまして、1例は確実だと思いますが、1例については確認が取れておりません。 ○加藤座長  それでは、サーベイランスの件ですので、岡部委員からちょっと発言をいただきたい と思います。 ○岡部委員  ちょっと補足させていただきます。  どのデータをごらんになったかわからないんですけれども、いわゆる感染症のサーベ イランスの方では、病気になった時点での届出ですから、その後の予後、その方が入院 したか、重症だったか、亡くなったかというのはわからないと思うんです。ですから、 そちらからは数字は出てこないと思います。 ○加藤座長  システム上、今の御質問にはそこまで答えられるようなシステムになっていないとい うことで御了解いただければと思います。  それでは、細矢先生どうもありがとうございました。  続きまして、池松参考人から御発表をお願いいたします。 ○池松参考人  福岡県の原土井病院というところからやってまいりました池松と申します。  今日は、予防接種といいますと大体小児科の先生とか公衆衛生の先生とか行政の方で 議論されていることが多いのではないかと思うんですが、私は内科医で高齢者を診る機 会も多い。また、一方で新薬の臨床試験などにも関わっておりますので、今日は内科医 の立場からいろんな要望を出してよろしいというお許しを得ましたので、少し意見を言 わせていただけたらと思ってお話しさせていただきます。 (PP)  前の先生方とかなり重なっている部分があるんですが、予防接種について考えるとき に、私が呼ばれたのもこのような社会環境が変化しているのではないかということで、 お手元の資料にありますように、まず高齢者の数あるいは高齢者の社会に占める割合、 そういうものが非常に増えてきている。  そして、高齢者の集団生活の場、高齢者入所施設とか集まってくる学校、幼稚園のよ うなデイケアセンター、このようなものが非常に数が増えてきたということで、高齢者 を対象として予防接種を考える、高齢者の予防接種とはどのようなものかというのを考 える必要が出てきたのではないかというふうに考えております。この典型的な例が、マ スコミで非常に話題になりましたインフルエンザの例で、国は早速対応を取られて公費 負担を始められたということではないかと思います。  もう一つ、私たち内科医の立場として非常に困るのは海外渡航人口が増加していると いうことで、いろんな企業、そのほかの方からもいろんな問い合わせが来たり、旅行か ら帰ってきた方が調子悪いとか言って訪れてこられると非常に困るわけで、やはりそう いうものに対して少しグローバルな考え方から旅行医学の発展と予防接種に対しての指 針みたいなものがもう少しできないのか。そういうのをつくっていただけないかという のを切に思っている次第であります。 (PP)  予防接種の目的というのは、やはり御本人を病気から守るというのが主たる目的で、 その最も有効な効果は死ななくて済む、本人が助かるということが一番大事なんでしょ うけれども、そのほかに直接医療費あるいは間接的な医療費が助かることは御本人だけ でなく、社会全体、国にとってもよろしいでしょうということ。  あと、関連コスト。これは家族とか集団に介護をしなければいけないとか、会社に行 けないとかそのようなことが起こるということで、このような利益を目的として打たれ るということは先ほどからいろんな先生が述べられています。  もう一つ、でも、この問題点は、このような利益が集団や社会にとってあるのに、予 防接種の不利益、副反応が起きたときの不利益はほとんど個人が負担しなければいけな い。特にお子さんの場合は、そのお子さんが障害があるということになると問題になる ということで、予防接種に対する非常に難しい問題点が存在しているのではないかとい うふうに、私は個人的には思っております。 (PP)  接種率向上のために、今いろいろなことが行われているのではないか。とにかく向上 するにはよく知っていただくということが大事ということで、いろんなことが行われて いるのではないか。  行政が国、県、市町村を通じてやる。あるいはマスコミの方々が感染症のことを報道 したり、予防接種の効果とかを報道されたりしている。あるいは医師会では医師によっ て一生懸命やっている。学校では、もう少しカリキュラムの中にそういうことを勉強す るのを増やしたり、また国家試験、そういうものへの出題率をもっと高めればいいので はないか。そうすれば接種率が向上する、知識が向上するというふうに思うんです。  とにかく、接種率向上のためには啓蒙活動が必要であるというのは皆さん一致した意 見ではないのかなと思います。どのような情報をどのようなルートで流すのかというこ とが非常に問題になってくると思います。 (PP)  そこで、今日私が最も言いたいのは、やはり情報を流すにしても適切な情報がない。 日本でこういうことがありましたとか、こういうふうになっていますとか、そういうも のがまだ十分に集積されるというふうな状況にない。  そういうシステムは、いろんなシステムが今構築されつつありますが、やはりそのシ ステムのコストあるいは効率というものをもうちょっと評価して、いろんなシステムが 多重的にあってもいいと思うんですが、それをゆっくり検討していただきたい。そし て、もう少しコストをかけていただいてもいいのではないかというふうに考えます。  私、高齢者のインフルエンザのワクチンの効果とかそういうのをいろいろ論文にする んですが、やはり評価方法の刷新。ワクチンの効果は、先ほど先生の発表にもありまし たが、新しい評価方法が要るのではないか。現在評価する方法として、ワクチンの整理 としてプラセボワクチンを置く。こういうことが果たして本当にできるのか。実際はで きないのではないか。特に、小児である程度効果がわかっている、あるいは今のインフ ルエンザワクチンでさえダブルブラインドとかというようなプラセボを置く。このよう なことは不可能な社会状況にあるのではないか。  もう一つ、ワクチンの研究で問題点は、毎年はやるのが違うわけですから、効果があ るとかないとかと言われてもはやらなければ効果がないわけですし、すごくはやったら 本当は効果があるのかもしれない。でも、実際にそのウイルスをまいて回って感染をコ ントロールする、そんなことは不可能なわけですから、非常に難しい。そういう点を御 理解していただいて、いろいろなデータを取って総合的に評価する。そういうことをま た毎年繰り返していただく。ある一つのときのデータだけがずっと何十年も生き残っ て、それによって政策が決まるような、あるいはそれを基にいろんな議論がなされるよ うな、そういうことがないように新しいシステム、新しい評価方法、これを是非開発す るように国の方で誘導していただけたらというふうに考えています。 (PP)  もう一つ、このようなワクチンの仕事とか研究開発に携わる医師が少し日本では少な い。特に、感染症関連の医師が少ないのではないかというのが私の日ごろの印象で、若 い世代がもう少しこの世界に入りやすくするためには、やはり研究開発という側面から 国の支援をいただきたい。特に基礎研究と、これだけではだめなので、開発臨床研究、 特にGood Clinical Practiceということで、世界共通でこういう臨床試験をやる。こう いう体制に見合ったものを、ワクチンに関しても日本につくっていただきたい。  それから、副作用・健康被害状況。いろんな個別なものが報告されるのですが、それ の統計が、母数がよくわからない。あるいはどのように対処されたのかとか、どのよう な結末への報告とかそういうのがわかれば皆さんもっと安心できるのではないかと思い ます。 (PP)  具体的に、もう一回、この基礎研究ということですが、やはり今、基礎研究は世界で 競争をしているわけですから、いろんな専門化、特殊化をしているわけです。そういう チームを形成するための仕組みが余りない。  それから、今後非常に問題になるのは、企業の方が参加する便利な方法が余りない。 やはりお金がかかることですから、そういう民間の方の資金が活用できるようなルール が、それからほとんどの国際協力とかというのが欧米主導で、日本主導のこういう国際 協力の枠組みづくりは、もっと日本に積極的に参加してもらいたいというふうに思って います。 (PP)  それから、臨床試験。これが非常に日本では遅れていて、製薬業界も非常に困られて いるようなのですが、やはりそういうのを実施する施設の整備、あるいはそういう医師 ・看護師の教育。それから、そういう意味で参加してくださる、特にワクチンに関して はボランティアの方のそういう団体。それから、実際に試験をする行政上の仕組みとか 審査の仕組み。そういうものを是非もう少し発展させていただきたい。 (PP)  それから、先ほどの繰り返しですが、副作用とか健康被害、こういうものが非常に心 配になっているわけですから、データを収集する仕組みをもう少しして、それから、ど のようなものが健康被害か。それを認定する仕組みをもっとクリアーにしていただく、 あるいは議論していただく。  それから、補償・賠償制度が実際にありますが、額も少ないし、今使いにくいもの で、それを見るとやはりしたくないというような方も多いのではないかと思うので、是 非こういうのを充実させていただきたい。 (PP)  今後、内科領域で私が内科医として考えるのは、やはり接種率を向上させる、あるい は新しいワクチンの開発をする。それから、アウトブレークに対する準備。こういうこ とが必要であって、インフルエンザワクチンあるいは日本脳炎、ウエストナイルウイル ス、この2つは親戚ですが、こういうもの。あるいは、海外渡航者を考えたらマラリア のワクチンの開発なども進めるので、是非こういうものを日本でやっていただけたらと いうふうに考えます。 (PP)  更に、今後の方向性として、もっとワクチン関連の基礎研究を発達させてほしいとい うことと、そういうものを使えるような製造技術あるいは効果・安全性の評価で、特に 観察研究、疫学的な方法論を促進。それから、もう一回WHOやODAというものの中 へのワクチン領域での日本の役割というものをもうちょっと見ていただけたらというふ うに考えております。  非常に要望ばかり国の方にお出ししたのですが、やはりこういうワクチン、予防接種 を支える人材を育成していただくためには、やはり公的なところあるいは民間にそのよ うな人材が育ち、生活ができる場をつくっていただくことが大事なのではないかと思 い、それが皆さんの御理解を得られるように、社会的に必要であるというふうな議論を 得られることを期待して、今日は発表させていただきました。  御清聴ありがとうございます。 ○加藤座長  池松先生、どうもありがとうございました。  何か1〜2点御質問がございましたらお受けいたしますけれども、よろしゅうござい ますか。  それでは、横田参考人の方からお話を伺いたいと存じます。横田先生、お願いいたし ます。 ○横田参考人  横田でございます。よろしくお願いいたします。 (PP)  私の発表は、これまでの5人の先生方のお話とはちょっとニュアンスが違うかと思い ます。皆さんは厚生労働省結核感染症課にこういう要望をしたいということをずっと申 し述べられてきたと思いますが、結核感染症課もしくは厚生労働省が実際お話を受け取 って、さあどうしようというふうにお困りになっているのが大変多いのではないか。す なわち、こういう問題を考えるシステムが必要ではないかというふうに私は考えまし た。  と同時に、まず風疹が一昨年の11月から局地的な流行が進んでいて、CRS、先天性 風疹症候群の子どもさんが現在認定で9例、私の情報では14名ほどあるというふうにお 聞きしております。そして、昨年7月に、流行が始まってから約半年後に研究班が設置 されました。  出てきた問題は大きく2つあって、1つは予防接種法の改正時の問題で、接種漏れの 世代が存在するということ。それから、それより以前には男性の風疹のワクチンは行わ れていなかったという事情がございまして、男性の側がリザーバーになってしまってい るというようなことがあるかと思います。  また、麻疹に関しましても、昨年メキシコのカンクンで世界小児科学会がございまし て、そこでアメリカの小児科学会のリーダーたちとお話しする機会を得たのですが、お 会いした途端に、日本の麻疹の輸出はもう止まったのかというようなお話を聞きまし て、それから、ポリオの問題も残念ながら不活化のポリオが再検討という形に入ってい たりします。  また、Hib、インフルエンザ菌のワクチンを何とか導入してほしいということを小 児科学会からの申し出があったようなこともございます。また、もう少し広く見ます と、鳥インフルエンザ、SARS、それからウエストナイル、こういう感染症が次々と 起こってきています。  こういうことを考えますと、対策が後手後手に回るのではなくて、予防接種の制度そ のものを中期的、長期的に考える常設のシステムが必要ではないかと考えました。  また、今日前の5人の先生方がいろいろ現場での具体例あるいは細かい点について御 発表がございましたが、それも大変大事なことですが、こういう問題を吸い上げてもう ちょっとネーションワイドに、あるいはもうちょっと言えば世界的規模、グローバルな 形で問題の解決に当たるようなシステムが必要ではないかというふうにも考えました。  3つ目には、感染症は動いております。鳥インフルエンザ、SARSを挙げるまでも なく、毎年毎年いろんな感染症の問題が生じてきております。こういうことを常にタイ ムリーにものを解決していくシステムが必要ではないかというふうに考えて、ちょっと 前置きが長くなりましたが、今日はそういうことの話をしたいと思います。  私がたどり着いた結論は米国にあるACIP、Advisory Committee on Immunization Programというシステムがあるということです。しかし、先ほどどなたかが御指摘され たと思いますが、1つだけの制度をおいしいところだけ持ってきてそれをやろうと思っ ても、これはなかなか無理な話ですし、我が国の実情に合わせてどういうふうにこれを 考えるか、そしてこのACIPも単独で成立しているわけではなくて、いろいろなシス テムの中の一つとして動いているわけですから、そういう全体のシステムの流れの方向 性というものに一致した形で、我が国もこういうものであればいいということを報告し たいと思います。 (PP)  まず、このACIPという、日本語に訳しますと「予防接種の実施に関する諮問委員 会」というふうに訳せるかと思いますが、これは保健社会福祉省の長官並びに疾患管理 予防センター、CDCです。これに対して助言と提言をするシステムであるということ です。後ほど申しますが、主軸は15人の委員から成り立っています。ここに行政担当者 が出席する。更には、協力機関それから企業の代表者も出席します。  そして、これは中長期的に予防接種に関するいろいろな問題を考えるシステムですけ れども、同時に言わば作業班と考えられるNIPというものがございます。National Immunization Program の略ですが、こういうものであるとか、NCID、米国国立感 染症センター、こういうものの動きの上に全体的に予防接種について考えるシステムで あるというふうに理解しました。  そして、この会は毎年2月、5月、10月に定例の会議を開催して、現在の感染症の流 行状況であるとか予防接種の実施状況であるとか、そういうことのすべての予防接種に 関しての会議を2日間にわたってやっているようです。そして、NIPとかACIDか らの報告を元に報告書を作成するということになります。 (PP)  その構成は、先ほど15人と申し上げましたが、委員長が1名と委員長以外の構成員が 14名、この15名が核になっております。現在委員長としておられる方がコロラド大学の 小児科のプロフェッサーです。そして、このメンバーの14人の構成というのは、小児科 医、感染症の専門家、小児病院の代表、保健所の代表あるいは薬学の専門家、ナースの 代表、そういう方たちで構成されています。  そして、執行行政官が1名いて、行政担当者として8名が入っているわけですが、こ の8名の担当官の出身が大変ユニークで、食品医薬品局、FDAとかNIHが入ってい るのは当然のことだと思うんですが、感染症、予防接種の問題を国家のリスク管理とい うふうにとらえているのだと思いますが、国防省、それから在郷軍人局が入っておりま す。こういう方たちも交えて予防接種戦略というものを打ち立てていくというのがこの 会の目標です。  更に、その協力機関、企業の代表者もここには入っておりまして、この多くは学会の 代表者です。アメリカの小児科学会であるとか、家庭医学会であるとか、薬学の学会で あるとか、もう一つはバイオテクノロジーの会社あるいは予防接種をつくっている会社 の代表者もおります。また、もう一つユニークなのは、近接している国の代表者もこの 中に入っています。これは例えば、カナダ、イギリスのロンドンからの代表者、メキシ コなどが入っております。 (PP)  そして、ACIPの業務内容ですが、ワーキンググループを設置して課題となる問題 の細部にわたる調査、それから方針に対するオプションを準備する。また毎回の会議で の草案の策定をするというようなことがあります。そして、このバックには先ほどのN IPであるとかNCIDとかがあって、理論的な武装がここでされるということになり ます。  そして、ここで話し合われたことが皆さん御存じのMMWRに掲載されるということ になっています。ACIPの発行するワクチンに関する各種情報資料、それをMMWR に掲載されるということがされています。  また、小児の予防接種プログラムを策定するということが仕事になっております。 (PP)  予防接種に関する戦略としましては、定期接種ともう一つ、日本ではなかなかこの問 題が明確に語られないと思うんですが、ハイリスク者に限定した予防接種というふうに 大きく2つに分けていまして、1つは小児期の予防接種です。それから、今ございまし たような成人の予防接種についての戦略も立てる。  また、ハイリスクというのは、医学的にハイリスクな問題もありますが、先ほどござ いましたように、職業感染症としての問題を扱って予防接種で対応していこうというよ うなこと。海外渡航者、曝露後の対策、アウトブレーク時の対策。既に鳥インフルエン ザのアウトブレークのときに、どういうランクで対応していくかというようなことがで きているわけですが、そういうことの対策をプロスペクティブにつくってあるというこ とです。 (PP)  これが一つのプロダクトですけれども、つい最近、2005年版の小児の予防接種スケジ ュールが発表されております。 (PP)  それから、予防接種実施に関する勧告の基礎がどこに置かれているかというと、ワク チン接種により予防可能な感染症への影響力をどういうふうに保つかということなんで すが、勿論ワクチンの効率と安全性、対費用効果、コスト・ベネフィットの問題。それ から、公衆衛生面並びに医療従事者に対しての認識と取組み。こういうアナウンスメン トもやっているということでございます。 (PP)  また、これは去年のデータですけれども、今ACIPが抱えている課題というものが 書かれていまして、それを挙げてみますと、天然痘ワクチン、炭素菌ワクチン。これは すぐにおわかりのとおり、生物兵器としてのワクチン、国家危機管理対策としての問題 だと思います。  それから、話題になっておりますインフルエンザの予防接種。一昨年1月からの流行 で150 人ほどの子どもさんが亡くなったという大変憂慮される事態が起きたということ で、最近インフルエンザ脳症の研究班長をやられている森島先生が個々に対応した問題 に対してのプレゼンテーションでアメリカに行くというようなことを言っておられまし た。  あと、肺炎球菌ワクチン。これは、今、日本でも話題になっております。  更に、ワクチンの安全性の検討であるとか供給体制の確保であるとか、こういうこと もACIPの欄に上ってきているようです。 (PP)  これはプロダクトの1つですけれども、超過入院に対する資料。こういうものがどん どんどんどん出てくるわけです。年齢によって、罹患者がどの程度で、どのぐらい入院 したか。それに対するコストがどのぐらいかかったかというようなこと。こういう資料 が次々に出てくるわけです。これは後にお話しするところと関連があります。 (PP)  また、外来でインフルエンザの感染であるのに抗菌薬がどの程度使われてしまってい るのか。医療費の抑制からすれば、この過剰投薬を少なくするような方策を考えなくて はいけないということになるかと思います。 (PP)  また、このACIPが自分たちの成果として一番最初にほこるのは、やはり天然痘が エラディケートされたという問題でありますし、今ポリオがエラディケート寸前に来て いるというお話ですし、あるいは麻疹がエリミネーションできたというようなことをイ ンターネットでは高らかに宣言しております。 (PP)  今日、私にもこういう話が来たわけですが、国がやるべきことと、日本では県がやる べきことあるいは現場でやるべきこととの役割分担をどうするかというようなことが恐 らく問題になるかと思います。  そして、連邦政府と州政府がCDCとかFDAとか州連邦法、州政府の仕事。こうい うことで、中央としてやる問題、連邦USとしてやる場合、州政府のやる問題。こうい うふうにきちきちっと分けて物事が進んでいるというところが我が国でも見習うべきこ とかなというふうに思いました。 (PP)  特に、連邦政府の諮問委員会としてFederal Advisory Committees というのがありま して、食品衛生局であるとか疾患予防センター、社会保健省、そういうものが委員会を つくって、常に予防接種についてのコメントを出しているというようなことをしている わけですし、私はちょっとわからなかったのですが、米国ワクチン情報センターという のは実際市民団体の一つらしいんですが、こういうことにも関わっているということに なります。 (PP)  今お話ししたような事情で、我が国にも予防接種を効果的に進めていくシステムが必 要だろうと。その一つのモデルになるのが、米国のACIPではないかと。しかし、最 初に述べましたように、ACIPも単独で成立しているわけではなくて、さまざまなワ ーキンググループがあるということです。  しかし、象徴的にACIPが必要だということを申し上げたいんですけれども、それ はなぜか。1つは、この予防接種の検討委員会の1回、2回、3回という報告を読んで みてもよくわかるわけですが、接種目的が最近随分と変化してきている。当初は、やは り集団防衛、社会防衛というようなことが言われていて、やがて平成6年の予防接種法 の改正のときに個人防衛だという話が導入されたと思います。しかし、現在少子化がど んどん進んでいるこの状況で一人でも子どもは、社会を運営していく上で大変大事な存 在です。  先ほどからコスト・ベネフィットの問題が出ていますが、子育て支援を含めて、家庭 そのものの援助ということが必要になってきています。それから、感染症が起きてどう するかという問題。起きる前に予防していこうという考え方もかなり強くなってきてい て、当初の起きたことに対する社会の防衛だ個人の防衛だという問題よりも、もっと積 極的な問題へと、接種目的へと意識が変化してきているのではないかと私は思います。 パラダイムシフトが起こりつつあるのではないかということです。  それから、流行疾病の迅速な把握、機動的に即立ち上がるような対策、そういうもの を樹立する必要があるだろう。これまであるような県、国レベルのサーベイランス解析 の問題。それから、これまでの5人の先生がさまざまに提言されたことがこういうとこ ろに入ると思いますけれども、何よりも大事な点だろうと思います。つまり、待ってい るのではなくて対策をあらかじめ立てておいて、始まったらそれにどういうふうに対応 するかということを我々がやるべき時期に来ているのではないかということがありま す。  私は、我が国にACIP的なものができたとして、そういう提言を強制力のある形で 全国に実施していくというようなことも必要かと思います。そうすると、我が国でこれ がもしできた場合にACIPをどこに所属させるかということが非常に大きな問題だろ うと思います。これはただの例を示しただけで、厚生労働大臣直属にした場合にその強 制力が発生するのではないかとただ思っただけです。いろいろなことをお考えいただけ ればいいと思います。  それから、当初言いましたような中長期的な対応。それから、ここが大事だと思いま すが、インフルエンザワクチンもそうですが、ワクチンの効果・副反応の検討と同時 に、治験ということがどうしても避けられないものだと思います。しかし、我が国に小 児の治験というのはずっとなじまないで来ておりました。そのために、小児科で使って いる医薬品の80%が未認可、未承認ということで現在に至っています。これはある意味 で小児科医の怠慢であったのではないかと私は考えます。  現在、国立成育医療センターの中村先生が通常の薬品の治験システムを小児医療の中 に持ち込もうということでネットワークをつくっておられますが、そういうネットワー クを小児科医自身がつくらざるを得ない、あるいはつくっていくことが子どもに対する アドボカシーになるだろうというふうに考えます。厚生労働省にお願いするばかりでは なくて、小児科医に何ができるのかということが大事だと思います。  それから、この治験システムはローカルに動くものではなくて、全国規模で動かない と意味がないと思います。そういうことを考えますと、この治験システムを置くのに適 切な機関はどこかというと、小児病院、子ども病院だと思います。現在全国に26か所の 子ども病院がございますが、それを核にして、その地域の大学病院あるいは地域の基幹 病院、そういうもの。それから、ホームドクター。たくさんの予防接種はホームドクタ ーでやられているわけですから、そういうネットワークを小児科医自身がつくるべきだ ろうというふうに考えております。  以上です。 ○加藤座長  横田先生、どうもありがとうございました。1つ、2つ御質問ございましたら承りま す。  どうぞ。 ○古賀参考人  極めて単純な質問で恐縮なんですけれども、麻疹の輸出国であるといって日本がよく 非難されるというお話は、ここだけでなくてポリオ、麻疹の検討委員会等からずっと言 われている議論ですけれども、私などもよくお母さんたちから質問されます。実際、ア メリカのような広大な国で麻疹を持ち込まれて流行が起きるということがあるといわれ ますけれども、実際どういったところでどのような流行を起こしているのかということ を、アメリカの事情にお詳しいようですのでお聞きしたいということ。  それと、実際どれぐらいの接種率と抗体価が維持されればそういった流行が起こらな いのかということ。と申しますのは、どちらかというと、麻疹輸出国だという批判は持 ち込まれるアメリカ側の問題ではないかというふうに私たちはいつも考えているもので すから、そこのところを教えてください。  それと、もう一点、51ページの「米国の予防接種スケジュール−2005年版」のところ のインフルエンザなんですが、ちょっと図がよくわからないんですが、この6か月以降 16か月までとそれ以降のところの「未接種者の暫定接種」と「接種の確認」というのは どのようなことが行われているのかということと、アメリカにおける小児の接種率につ いて教えてください。 ○横田参考人  CDCから今のACIPのインターネットで情報が取れます。また、イミュナイゼー ションプログラムについては最近更新されました。それもCDCで送れますので、それ をどうぞお読みください。  麻疹の件ですけれども、米国でのおおよそのこういうワクチンで予防できる疾患の表 は90%以上ということになっております。これは古いデータで、今それが適用するかど うかはわかりませんが、接種率が70%以下のときには非常に大きな流行が起こるとされ ています。それから、70〜90%の間であれば、局地的な流行は防げないということがわ かっています。局地的な流行も含めて、ワクチンで予防できる疾患というのは90%以上 の接種率が保たれるべきであるという、これがコンセプトだと思います。  米国のサーベイランスに引っかかってくる麻疹の発生者は、自国の人が発生したとい うよりは海外から来た方が麻疹を発症するということがほとんどなんだそうです。それ が局地的な大きな流行につながっているかどうか。これはつながっていないと思いま す。海外からの渡航者の麻疹の中のかなりな部分というのが何%かよくわかりませんけ れども、かなりな部分が日本から来た若者が発症しているのだということが言われてい ます。  岡部先生、いかがですか。 ○岡部委員  横田先生が言われたことに付け加えるならば、米国では局地的な流行はしていないと いうことと、それからはしかが1996年から2003年で290人ぐらいの外国例があって、そ のうちの44例が日本からの輸入で、そのほかにもドイツであるとかフィリピンであると か中国であるとか、そういう国からの輸入の報告はあります。ただ、トップランクが日 本であるということで目立っているということがあります。 ○加藤座長  今の御質問ですけれども、米国での輸出国であるというのはMMWRなどの報告をち らっと見ると、ほとんど数人のレベルで報告されるんです。ですから、今度のスマトラ の地震でもはしかが出たということで新聞の記事にどんと出ますけれども、あれも数人 で出ますね。地震で起きたはしかが数人。日本では、後でどなたか御発表になるかもし れませんけれども、数万人ですから、単位が違うんです。  もう一つは、今、両先生もおっしゃったように、米国で発生する場合のはしかの場合 はほとんどネイティブではないということがほとんどのところで書かれているというこ とが事実のようでございます。  ほかによろしいですか。またディスカッションのときに少しお話があると思います。  ちょっとお待ちください。一つだけ。 ○岡部委員  ついでのような追加で申し訳ないのですけれども、ACIPは確かに50人ぐらいでや っておられるのですけれども、会議そのものはオープンで、オブザーバー参加は自由で ある。それから、勿論その中にはいろんな分野の方があるので、その方がそれぞれのと ころで発言する時間があるというふうにしてディスカッションを進めているということ です。 ○加藤座長  ありがとうございました。横田先生、どうもありがとうございました。  それでは、各受け持ちの先生方、予定どおりの時間でお済ませいただきまして、大体 予定どおり進行させていただきました。  以上をもちまして、午前中に予定しておりました6名の参考人からの御発表を終わり にさせていただきます。  午後は、13時ちょうどからこの場所で再開させていただきますので、それまでの間は 休憩時間といたします。よろしくお願いいたします。  事務局から、特に何かよろしいですか。 ○皆尾課長補佐  5階でございますけれども、専用第12会議室に控室を準備させていただいております ので、そちらの方へお願いしたいと思います。                   (休憩) ○加藤座長  それでは、1時になりましたので、検討会を再開させていただきます。これから3時 まで、午前中に引き続いて6名の方から御発表いただきますが、繰り返しますけれど も、お時間の方はお一人当たり15分、多くても20分までということでおまとめいただき たいということでございます。  順番から行きますと、蒲生先生の予定なんですが、まだお見えでありませんので、井 上参考人から先にお願いいたしたいと思います。 ○井上参考人  それでは、始めさせていただきます。ちょっといきなり来ると思っていなかったので 動揺しているんですけれども、よろしくお願いいたします。  これから15分の間、本来だと『ひよこクラブ』さんの、全体の親の、広く数の多いデ ータの中から抽出された御意見というのが聞けた後に私かと思っていたので、私の方は ある親たちの疑問ということで、予防接種に疑問を持っている、正確にはどうしたらい いか迷っているとか、悩んでいるとか、そういった親たちがこういうことを考えている んだということを話題提供させていただけたらと思っております。よろしくお願いいた します。 (PP)  今回、厚労省様の方から、4月の検討会で親の意見ということで参考人になってくれ ないかというお話の打診をいただいたときに正直びっくりいたしまして、まさか傍聴の 側からこちらの参考人の側に来るとは思っておりませんで、想像すらしておりませんで したので戸惑っていた状態です。素人の情報提供ですので、お聞き苦しい点もあろうか と思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。  まず、カンガエルーネットとは何かというお話が一番に来ると思いますので、自己紹 介からさせていただきます。  この集まりは、組織だって会として何か意見を持って何かをやっているとか運動をし ているとかというわけではありませんで、ただ予防接種に疑問を持ったことがきっかけ でめぐり会った親等を含む5人の管理者によって2003年6月に立ち上げたインターネッ トの一サイトです。  みんなきっかけはさまざまなんですが、例えば私なんかは、学生時代はばんばん予防 接種を打って東南アジアに旅行に行ったりとか、研修をしたりとかしておりました。子 どもが生まれてはたと考えまして、4か月の健診でツ反をやって、そのままBCGに2 日後に行くんですけれども、果たしてこのまま受けていいのだろうか、余りにも情報が なくて困って小児科の育児相談に行ったんですけれども、お母さん、素人が考え過ぎよ という、そういう一笑に付された経験から、そこでひるめばよかったんですけれども、 そのときに、多分、藤岡先生のような先生にお会いしていたらまた違った人生を歩んで いたかもしれないんですけれども、今、判断できなくて困った経験からこういったサイ トの管理者をボランティアベースでやっております。  こちらでは予防接種のことに限らず、日常の育児にまつわるさまざまな情報交換の場 として良識のある参加者同士の情報交換の場となっています。1日当たりのページビュ ーが約一万五千回、検索された当サイトに来られる方のキーワードの例としては、予防 接種というキーワードが1日約70〜80回。副作用というキーワードでは1日当たり約20 〜30回です。最近では季節柄インフルエンザ、とりわけタミフルの話題が多うございま して、最近ではそのような状況になっております。 (PP)  当サイトの常設アンケートとして、「予防接種に疑問を持ったきっかけは?」という 常設アンケートをさせていただいております。回答数が、もうすぐ100 件ということ で、サンプル数としては少ないかと思いますけれども、こういった疑問を持った親の声 というのは、なかなか小児科でも怖くて本音は言えないことが多いので、見ていただけ たらと思います。貴重な意見ですので、よろしくお願いします。  これは、もともとうちの方で設定していた回答なんですけれども、この中から選択し て選ぶというような形になります。まず回答の内容を見てみますと、私が意外に思った のが、「その他の理由」というのが多いこと。あと複数回答が多いことです。これは回 答数が94なんですけれども、すべての項目の横に出してある数字を足しますと182 にな りますので、一人当たり平均2個、きっかけは複合しているというか単純なものではな いということがわかります。 (PP)  その次、資料の方にもありますが、その他の理由ということで、まず一番代表的に、 このピンクで示させていただいているのが副作用についての心配ですとか、実際に経験 して、それまでそういうことを予期もしていなかったのでびっくりしたとか、そういっ たところから入ります。本来は、これをとうとうと9枚全部話そうかと思ったんですけ れども、15分というお時間の制限もありますので、資料の方でごらんいただけたらと思 います。 (PP)  この中でピンクに示していますのが、副反応的などのワクチン製剤への不安。 (PP)  こちらのブルーに示してますのが、予防接種行政とか医療関係者への不満です。本当 はここから入りたいのですが、最後にお時間があったら読ませていただこうと思いま す。 (PP)  次に、この複数回答者のコメントの中ということで、これはうちの方で把握している コメントのほぼ全量をほぼ生の状態で示しています。若干語尾等を修正させていただい たり、余り長いものに関しては要点のみにさせていただいていますが、こういった形で 皆さん疑問を持たれて、どこかにすがりたいような状態でめぐってこられているという のが実情です。 (PP)  アンケートの上位としては、「人間の体は、自然感染によって抵抗力を付けていくも のだ」ということで、これが182 分の41。  「体内に異物を直接注入することに抵抗を覚えた」というのが、182 分の29。  「スケジュールが過密すぎると感じた」が、182 分の21。  このほかに、先ほどの41件あった「その他の理由」ですとか、複数回答の方が書いた コメントに関しては、ワクチン製剤自体への不安、副作用・副反応・添加物等。接種行 政への不満ということで、情報提供不足・予防接種に対する姿勢に疑問ということがこ ちらの常設アンケートの結果でわかりまして、同じようなことで悩んでいる親御さんと いうのは結構いらっしゃるんだなということを自分自身が感じました。 (PP)  次に、それでは何で副作用等の経験で不安や不信感が増大してしまうのかというとこ ろで、「ゼロリスク症候群と予防接種」というタイトルで出させていただいております が、先ほど先生方のお話にもありましたように、予防接種に関してはリスクはゼロでは ないということで、自然にかかって合併症になることよりもリスク的には少ないと統計 的にはわかっていても、実際に自分の目の前にしてしまうとどちらの方がいいのか選択 に迷ってしまう。  必ずしもどちらもゼロではないので、親の判断というのが重要になってくることにな るんですが、例えば『予防接種と子どもの健康』、後でちょっと話を出していますが、 怖がらせないためなのかもしれないんですが、余りにも副作用の情報が少な過ぎて、そ れでは実際にどうなのかというところの疑問もしくはそれすら考えていなくて、実際に 腕がはれてしまって驚いたとか、そういうところから入っていらっしゃることが多いで す。 (PP)  「ゼロリスク症候群に陥らないために必要なこと」としては、「副作用は起こりうる 」というスタンスを明確化して、きちんと情報提供を行ってほしい。より正確な数値を 把握するための改善を行ってほしい。実際に、自分のお子さんが予防接種後に体調が悪 くなったけれども、接種医さんに相談したら、それはお母さん、かぜ引いたんですよと か、それで終わってしまう。そうなった場合に、自分がそうであれば、副反応の数字と いうのは本当にどういうふうに取られているのかという疑問に思われるお母さんも結構 いらっしゃいます。実際に、現在『予防接種と子どもの健康』には、「8.その他」と いうところに、副反応の疑われるようなことがあったら接種医さんに相談しましょうと あります。それで接種医さんの方が保健所なりに上げますというのが書いてあるのみな ので、親としては接種医さんから上に上がらなければもう上がらないと思われる方も多 いです。直接保健所に相談される方もいらっしゃると思いますが、保健所の対応もそう いった対応があると聞きます。任意接種の副反応状況等も把握していただきたいという ものを感じています。  「接種者全員に健康状況調査を行ない、公表する」と出していますが、実際、現在の 副反応報告ですとか健康状態調査報告は、一応副反応報告は申請をして接種医さんから 保健所なりということでいきますが、健康状態調査報告というのは、サンプリングでさ れているかと思います。これは接種者全員に、例えばインターネット等だとまだそんな に普及はしていない、全員が関われるわけではないと考えられれば、はがき方式ですと か、今後親でも結構インターネットでこうやってアクセスしてくる人も多いので、そう いった窓口も設けて、おかしいなと思ったら必ず報告できるような体制を取っていただ きたい。  「病院側への匿名アンケートの実施による実態調査など」。これは投稿の中でもあっ たんですけれども、3種混合の後に川崎病になられる子が見受けられるとかというのを 医療関係者の方が、匿名だとおっしゃっていたりするんですけれども、多分実名だとな かなかおっしゃられないのかなと。そういう玉石混交した情報の中から正しいところを 見きわめていただくというのを専門家の方にお願いしたいなと思っています。 (PP)  「判断のための情報収集は?」ということで、与えられる情報、先ほどお話ししまし た『予防接種と子どもの健康』というのが我々母親には一番身近にいただく情報なんで すけれども、こちらでは納得できない親もいる。  上記以外の情報は、保健所や小児科の育児相談などではなかなか取り合ってもらえな い。一方的に推奨されるので、客観的な視点で相談に乗ってもらえる専門家がいないと いうことで戸惑う親もいます。自分で情報収集をしてみるんですけれども、この『予防 接種と子どもの健康』プラス予防接種ガイドライン、厚生労働省さんの方でいろいろ医 者向きにあると思うんですが、そちらの内容をコピーペーストしている情報が多いの で、対立する慎重な意見の情報との間で、それでは実態は何が正しいのか、自分はどう 判断していいのかというところまでなかなか行き着かないということがあります。 (PP)  「親が判断をしやすくするために必要なこと」としては、判断材料としての正確な情 報収集と情報公開を更に徹底していただきたい。  専門的な情報を的確に一般に橋渡しできるファシリテーター的存在というのを提供し ていただけないかなと考えています。このファシリテーター的存在というのが、よりユ ーザー側に近い実施主体である市町村関係者で、資料をいただいた中に、国は研修をす る義務があるというのが入っていましたけれども、これが国であっても第三者機関であ っても、リスクコミュニケーションですとか、公平なファシリテーター育成のためのプ ログラムなどが、現在の研修内容に盛り込まれているのかというのがちょっと疑問に思 っています。これは実際に保健所の方とお話をしたりとか、自分が身近に感じたことで もそう思います。  「感染症そのものに対する勉強の機会を作る」。今、言われています核家族化ですと か、親自体がどう対応していいかわからない。恐怖心でとりあえず打ちに行こう。その 方が接種率は向上するのかもしれないんですけれども、ただ恐怖心をあおるだけではな くて、一般的な経過と重篤な経過についてのそういった例ですとか看病の仕方について だとか、そういった感染症そのものに対する勉強会の機会があるといいと思います。  予防接種の話からちょっと逸脱するかもしれませんが、実際妊婦健診だと、病院でも 自治体でもお風呂の入れ方をやっているのであれば、必ず生まれてくれば親は病気に対 応しなければいけませんので、どこかそこでそういった機会もあったらいいなと考えて います。  「接種する・しない両方の判断を尊重する」ということで、午前中にもお話がよく出 ていましたけれども、乳児健診ですとか就学時健診等で確認をされることはいいと思う んです。ただ、こういう情報があってこういう状況ですと御説明をされることはいいと 思うんですけれども、それを確認したことによって強制的な指導をするような方向とい うのはやめていただきたいと考えています。それは、親が判断をするのにも接種すると いう選択肢しかなくなれば判断するということは無意味になりますので。 (PP)  「そもそも予防接種をさらに推進する必要性があるのか?」。これはかなり爆弾的な 発言なのかもしれないんですけれども、ウイルスとの共存という観点でもうちょっと広 い視点での議論はできないのか。先ほど松永先生のお話にあったホメオパシーをされて いるヨーロッパの例、アメリカ型とヨーロッパ型があると思うんですけれども、ヨーロ ッパ型の路線についてももうちょっとこういったことを検討会の中で紹介していただき たいと考えています。  親としては、自分の子どもだけでなく孫とかひ孫とか、100 年オーダーで自分の子ど もたちがどうなっていくのかというのはやはり心配で、数年ごとにごろごろ状況が変わ るようだとやはり不安です。  危機感をあおるのはだれの利益になるのかということで、はしかの死亡者数ですとか インフルエンザ脳症の話ですとか、確かに実際に絵を見させていただいて、データを見 させていただいて、非常にそういったことがあるんだ、身近になくてもそういったこと があるんだというのはわかるんですけれども、かえってそれはゼロリスク症候群に陥っ てしまうのではないでしょうか。ワクチンを選択しても、自然感染を選択しても、その 比率はちょっとは違いがあるとしてもある程度のリスクはあるものです。そこを過剰に あおってしまっているのではないかというのがちょっと感じているところです。  「予防接種が長期的に人体に及ぼす影響は研究されているのだろうか。」これも素朴 な疑問なんですけれども、子ども時代にそういう感染症を経験しなくなるということ は、例えば5年おき、10年おきですとか病気を先送りするような状態になります。それ 自体が高齢化社会になりますが、高齢時代の抵抗力はどうなるのか。そういったところ も、実際目の前で子どもを見ながら子どもの80年後を考えています。 (PP)  「判断に戸惑う親の素朴な疑問」の例ということで、はしかは撲滅もしくはエリミネ ーション、排除できるのかというところなんですけれども、予防接種が100 %近くにな ればちまたにはしかウイルスがなくなるということで、先ほど先生のお話にもありまし た。ブースター効果が期待できなくなるということは、ブースターがかからないと5年 で中和抗体は約100%から約80%に減少してしまうというのは、私が参加させていただい た第2回の検討会での先生のデータの中から出ていました。  先ほど、質疑の中でお話ありましたけれども、地域的な流行を抑えるには90%を保持 しなければならないというお話もありましたが、仮に100 %接種ができたとしても5年 経ったら80%になってしまうので、それでは死ぬまでに5年ごとにずっと打ち続けるの かというところが疑問になっています。  はしかを輸入しないように対策するのか、接種を5年おきに将来的にどうしていくの か、将来どうやって行くのかというのが見えてこないので、また何かちょっとしたらい ろいろ方針が変わるのではないか。親としては不安なところです。  撲滅、排除をするならば、長期的な視野のアクションプランの提示が必要だと考えて います。 (PP)  「判断に戸惑う親の素朴な疑問」ということで、はしかに対してまた両極端なところ で行きましてインフルエンザワクチンについてです。インフルエンザは怖いとあおりす ぎていないのかということで、効果的な看病の仕方ですとか症状の経過、緊急の場合の 対処の方法など、そういったところも含めて広く情報提供をするべきではないでしょう か。  厚生労働省によるワクチンの効果研究ということで、これは私ではないんですけれど も、同じ管理者の中で疑問に思った者がおりまして、これに関してのデータに対する問 題点の検証的なことを行っていて、別添資料に示させていただいております。それは後 ほど見ていただければと思います。  過去の集団接種から高齢者対象に切り替わったワクチンと、現在小児科で乳幼児にも 任意接種されているワクチンというのは同じものなんですよね。これはメーカーの方も いらっしゃると思うので素朴な疑問としてお話します。しかし現在、私の身の回りなん かでも小児科に行って親子全員でワクチンを接種する方もいらっしゃいます。あれはた しか、私たちが体育館で打っていてやめになったものと一緒なんですよねというところ が疑問です。  予防接種の有効性、効くということと、有用性、役に立つというものの違いというの はどうなのかですとか、自然感染による免疫と予防接種による免疫の違いはどうなの か。毎年打つのが必要なものなのか。予防接種のプライマリー効果とブースター効果に ついてはどうなのか。病気、感染症を人にうつすということを防ぐことがどこまで可能 なのかというところが非常に疑問に思うところがあります。これはうちのホームページ の管理者でたまたま前橋レポートという存在を知りまして、今だと論文とかになってい ませんので身近に見聞きすることができないという関係から前橋市医師会の方に御連絡 をして、ホームページの方で掲載していいかというようなことを伺って、ちょっと勉強 させていただいたりしました。その中で、子どものことを考えて、子どもにとってこの 方法が一番いいことなのかというのを非常に考えてつくられたレポートだなということ が、素人でもひしひしと感じることができました。 (PP)  「子どもの子どものそのまた子どもまで気になってしまう親たち」ということで、ち ょっと特殊なのかもしれませんが、「次世代の健康を考える」ということで、ウイルス に接触する機会がまれになってしまってブースターがかからないことは、本当に人類、 子どもたちのためになるのか。  高齢者のはしかや、母子移行免疫の低下によって新生児感染症の増大が起こって6か 月未満の赤ちゃんははしかになってしまう、ですとか、自分の子どもが親になったとき にどうなのでしょうか。問題を先送りしているだけではないのでしょうか。  予防接種の種類が増えて、これは混合ワクチンも含みますけれども、接種率が向上す ることが真に次世代を担う子どもたちの「健康」に寄与するのか。もしかすると、かか った子どもを会社を休んで看病してあげた方が次世代のためにはなるのではないだろう か。そういうことを考えている親もおります。  長期的視点を忘れずに、真に子どもたちのためになることを考えて予防接種行政を実 現していただければと考えております。  あと何分くらいあるんでしょうか。 ○加藤座長  終了です。 ○井上参考人  ありがとうございます。 ○加藤座長  どうもありがとうございました。1〜2何か御質問がございましたら、今、承ります けれども、よろしゅうございますか。  どうも、井上先生は時間を20分ぴったり守っていただきましてありがとうございまし た。  それでは、蒲生委員が参りましたので、蒲生委員にも最大20分でお話を終えていただ きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○蒲生委員  済みません、遅くなりました。井上さん、大変申し訳ありません。ありがとうござい ました。  私、『ひよこクラブ』という育児雑誌の編集長をしております蒲生と申します。今回 パワーポイントはないんですけれども、お配りしておりますお母様たちの実際の声を基 に分析したことについて簡単にお話を差し上げたいと思います。  まず、弊誌の概要ですけれども、『ひよこクラブ』は月刊の育児雑誌で、0歳から大 体一歳半の、ちょうど予防接種が一番多い時期のお子さんをお持ちのお母さんのための 雑誌です。勿論、予防接種だけを取り扱っているわけではありませんので、赤ちゃんの お世話全般、実際に日本のお母さんたちを取り巻く育児の状況も含めてお話しいたしま す。  今、購読してくださる方が月に36万人ほどいらっしゃいまして、これは第一子を出産 なさった日本のお母さんの約八割の方が一度は手に取っていただいておりますので、多 くのお母さんの代表的な意見として受け取っていただければと思います。  皆様にお配りしております、お母さんたちは何を考えているかということについてな んですけれど、これは毎月送られてくるお手紙とかメール、ファックス、お電話でちょ うだいしておりますいろいろな疑問の中から、特に予防接種について多い質問を取り上 げております。弊誌は12年発行しておりまして、その中で、これについてほとんど変化 はありません。12年前も今も同じような疑問が続いております。これは私どもも含め、 情報提供ということにおいて非常に足りないのだということをまず第一に感じていま す。  お母さんたちの質問なんですけれども、大きく分けると3つほどに分けられます。  1つは素朴な疑問。こんなに小さい赤ちゃんに、短い時間にたくさん予防接種を受け させて本当に平気なのか。それから、熱があって受けてはいけないのはなぜなのか。そ もそも麻疹とは何のことかみたいな非常に素朴な疑問の質問。  それから、言い伝えのような、口コミのような質問。例えば、大きくなって体力がつ いてから病気になった方が免疫がつくのではないかとか、母乳で育った子はもう免疫が あるからわざわざ予防接種を受けなくていいのではないかとか、だれかから何となく聞 いたという口コミのような質問が2つ目にあります。  3つ目に多いのが、アレルギーを持っているお子さんたちのお母様からの質問で、ア トピーがあると副反応が強く出るのではないか。卵アレルギーがあるからインフルエン ザを受けてはいけないのではないのかとか、麻疹はだめなのかとか、いろんなところで 情報がはんらんしておりますので、アレルギーに関しては非常に多くの質問が来ていま す。  このような質問に対して、私どもでは年に2回ほど予防接種だけを特集した50ページ ほどの別冊付録というものをつくっているんですけれども、その中で一つひとつ丁寧に 答えて疑問を解消していただくということにはなっていますが、やはり多くの方からい ただく質問にしか答えられないので、個別の質問というものはとても網羅することはで きません。そこに関して、予防接種の付録が出た後、編集部の方にはたくさんのお問い 合わせが来まして、フリーダイヤルなんかもあるので、うちの県ではやっていない、う ちの県では書いてあることと違うとか、うちの町では違うとか、こう書いてあったけれ ども、お医者さんにはこう言われたけれども、どっちが本当なのかとか、編集部の予防 接種の担当の者はいつも質問にお答えするだけで時間を取られてしまうような状況が続 いています。  このお母さんたちの、先生方からごらんになると取るに足らないような、麻疹とは何 かというような質問が来ること自体が、ちょっと言いにくいんですけれども、今まで行 政がやってきたことが実際のお母さんたちには浸透していない証拠なのではないかなと 思います。12年前と今と変わっていないということもそれに当たるかと思います。  それでは、私の立場というものも読者の方々に正しい情報をお伝えするということは 非常に大きな使命ですので、それを踏まえて考えますと、何を行政に望み、また私たち が何をしなければいけないかということを考えました。  まず第一に、お母さんの現状は予防接種だけではありません。赤ちゃんは病気にもな る。ミルクを飲んでくれないこともある。泣きやまないこともある。自分の母乳が出な いこともある。それから、少し大きくなったら、幼稚園はどこに入れようかと考えなく てはいけないこともある。寒かったら洋服を着せて、暑かったら脱がせなければいけな い。急に肌にぼつぼつが出てくることもある。そういう日常的な、本当に大変な瑣末な 生活の中で、予防接種について正しく勉強し、正しく理解し、あなたが判断しなさいと 言われてもやはり難しいところがある。  そもそも、普通のお母さんは医学については何も知りませんと言っていいぐらいのと ころにいるので、副反応と言われてもそれは一体何のことかみたいなことが現状です。 その中で子どもを産んでみたら、3か月後から更にその3か月後までの間にBCGを受 けなければいけないと言われても、さてそれを本当に正しく判断できるのかということ をもうちょっと考えないといけないのではないかと思います。  実際に子どもを産んでみて、初めて予防接種に触れる方がほとんどです。そうなって くると、例えば中学までが義務教育なので中学ぐらいの保健体育か何かの時間に、日本 にはこういう制度があって、とりあえず、あなたたちがもし親になったらこういうこと を判断しなければいけないというさわりぐらい知っていてもいいのではないかとも思い ました。  それから、やはりいろんなことに忙殺されて心を砕かれているお母さんたちに、いか にわかりやすく予防接種の情報をお伝えするかということは本当によくよく考えて、勿 論私どもの雑誌でもやりますけれども、行政の方にもお願いしたいと思います。  今、井上さんが話していただいて、私はしたりと思ったんですけれども、お配りいた だく『予防接種と子どもの健康』という本では全然わからないというのが現状かなと。 あれを手元に置きながら私たちの方に相談の電話がかかってくるので、やはり本当に基 本的なことをわかりやすく必要なことをちゃんとお伝えしなくてはいけないのではない かと思います。  教育の機会ということもありますが、情報の出し方で、特に私は普通に雑誌をつくっ ている者なので、行政の方にお願いをするとすれば言葉がわからないのです。私は、実 はこの会に何回か出ていて、罹患率とか、ブースターとか、わかりましたけれども、そ れはある程度私がこの雑誌をつくっていて勉強しているからであって、普通のお母さん であればブースターとは何のことか全然わかりませんし、そもそも副反応もわからな い。先ほど申しましたように、水痘とか麻疹が一体何の病気かわからない。その中で、 いきなり麻疹の問診表が来ても何のために受けるのかというのが現状なんです。  言葉について、いろいろ中間報告ですとか議事録とか送られてくるときに、私は多分 厚労省の小林さんはとても困ったと思うんですけれども、いつも真っ赤にしてしまいま して、そういうところで言葉の使い方、一般のお母さんがわかる言葉。中学を出られた お母さんもいらっしゃれば、大学院をお出になったお母さんもいて、いろんな方がいら っしゃる中で、わかりやすい言葉を使うということは心がけていただけたらと思いま す。  そして、教育と情報と、もう一つは相談窓口を是非設けていただきたいと。私たち は、先ほど申したように、個別の相談には応じることはできません。私は専門家ではあ りませんので、雑誌の上で専門の先生に回答していただいたものを雑誌に載せることは できますけれども、編集部に電話をかけていただいても本当にすぐお答えすることはで きなくて、また監修の先生に御連絡してそこからお返事をという形を取ることになって しまいますので、どうしたらいいのかなとお母さんが思ったとき、すぐに電話するなり メールで相談するなり、そのとき、決してそんなことも知らないのかみたいな態度では なく、親切に教えていただければ本当に気持ちが楽になるのではないかと思います。  何回目かの会でお話ししましたが、全国に育児相談という電話の窓口がありますが、 弊誌のアンケートでは、その相談窓口を利用したことがないという人が7割以上いらっ しゃいます。私たちの方でもこういう相談窓口があるということは電話番号も載せ、受 付時間も載せ、こういう相談に乗ってくれるということも載せていますが、そこにかけ ようとは思わないでいるお母さんたちの現状。何でかけないのかと言えば、怒られるか もしれないと思っている。本当にそれが普通のお母さんの感覚なので、その辺は是非く み取っていただきたいと思います。  このお配りした素朴な疑問は、もしかしてとても想像できないのではないかと思い、 みんなからは本当に瑣末かもしれませんし、こんなことも知らないのかと思われるかも しれませんが、こういう質問が来ている、それが日本のお母さんの現状なのだというこ とを是非知っていただきたいと思ってずらずらと挙げさせていただきました。  この会などで、非常に有効なお話し合いがされていることをみんなも知りませんし、 それは私たちにも伝える義務があるということも非常に深く感じておりますが、是非行 政がどうとか民間がどうとか、そんな立場の押し付け合いみたいなことではなく、本当 に赤ちゃんのためにいろんな知識を持っている大人が一番できることをしなくてはいけ ない、そういう時期に来ているのではないかと思います。  カンガエルーネットさんの方がお話ししたように、予防接種を受けること自体に疑問 を持っていらっしゃる方もいるにもかかわらず、私たちも推奨する付録をつくっており ますし、なかなか両方の意見を載せるとかえってお母さんたちが混乱したりすることも あって本当に難しいんですが、教育と情報と、それから是非相談窓口をつくっていただ ければと。  私は『ひよこクラブ』を10年つくっているんですが、その間ずっと普通のお母さんに 接してきて、そういうことをいつもいろいろ考えております。是非お母さんたちの現状 を知っていただければと思います。  以上です。 ○加藤座長  蒲生委員、どうもありがとうございました。  何か言葉やそのほかの簡単なことで1、2御質問がございましたらばお受けいたしま す。  横田先生、どうぞ。 ○横田参考人  蒲生さん、大変ありがとうございました。小児科医として発言したいんですけれど も、先ほどの井上さんのお話とも関わるかと思います。  当初の、藤岡先生とか松永先生のような方が日本中にいたら心配するお母さんがいな くなるのではないかということを言われましたが、そのとおりだと思うんですが、今の お話、状況把握は私はすごくよくできていると思うんですが、その持って行き場所がち ょっと違うかなと思うんです。どこが違うかというと、今のお母さんたちがどういう状 況に置かれているかということが実は基本的に非常に大きな問題で、これはこの予防接 種とはとりあえずは関係ないかもしれませんが、ほぼ24時間、お母さんと子どもだけで 過ごしているという家庭がいかに多いかということです。  横浜市では、NPOで普通のお母さんたちが子育て支援に関しての支え合いです。ち ょっと先輩の方がお母さんたちと出会う場所をつくって、そこで例えば予防接種のこと のお話を、そんなに心配することはないの一言で解決してしまう問題、そういうものが 非常にたくさんあるという話をつい先週聞きました。つまり、予防接種ということとし てこういう問題が井上さんの場合にも浮上してきているわけですけれども、そのことは 実は非常に根が深くて、社会が物すごく今、変動していて、ここで話しているのはほと んど男ですね。こういう者がしゃべっているわけですけれども、実際お母さんたちは子 どもさんと2人で密室にいるという状況が今の日本の状況であるということが実は7〜 8割そういうことで、あえて社会に出るとすればスーパーマーケットだという状況なん だそうです。  だから、持っていき方は、多分厚労省に易しい言葉で話してくれとかそういう相談窓 口をつくってもらうということは一つ正しいことだと思うんですが、もう一つは地元で のお母さん同士の支え合いのシステムをどういうふうにつくっていくかという問題では ないかというふうに私は感じました。 ○加藤座長  議論はたくさんありますので、それはまた後ほどゆっくりやることにしましょう。  それでは、先に進ませていただきます。それでは、古賀参考人からの発表をお願いい たします。 (PP) ○古賀参考人  こんにちは。日本消費者連盟、ワクチントーク全国の古賀と申します。  日本消費者連盟は、1969年に設立されました消費者団体でございます。ワクチントー ク全国というのは非常に緩やかな市民のネットワークですが、団体と個人で構成され、 予防接種による被害にあった方、保護者、薬害などの被害者団体、医療関係者、養護教 員などが参加されています。この中には、20名近いお医者さんも参加されております。 そういったところで組織している予防接種のことを考える団体です。  専門家かどうかに拘わらず、みんな同じ立場で安全な予防接種を求めて発言し、行動 していくというスタンスです。このワクチントークはもともと被害者の方を中心にでき た団体でして、みんなで被害をなくすためにはどのような予防接種の制度を求めていっ たらいいかということを中心に進んできているわけでございます。 (PP)  最初に、「最近の予防接種改正」というふうに出したんですけれども、予防接種の制 度ができて以降、私たちにとって非常に大きな改正が2回ございました。  その1つが、1976年、昭和51年に予防接種健康被害救済制度が創設されました。これ は70年の閣議決定を受けて救済制度というものができたんですけれども、それまでは、 予防接種というのは罰則を設けてまで義務として社会防衛のために行われておりまし た。ところが、種痘を始めとします非常に大きな被害の声を抑えられなくなりまして、 1970年に閣議決定後、この救済制度というものができました。  2度目の改正でございますが、1994年、平成6年に大改正がございました。全国各地 で4大訴訟というものがございまして、東京高裁で92年に国が全面的に敗訴するという 司法判断が出ました。それを受けて、当時丹羽厚生大臣が涙を流して謝罪され、予防接 種制度を全面的に安全なものに変えるという決意の下に94年に大改正が行われました。  その後、2001年に二類疾病というカテゴリーが新設されまして、インフルエンザが高 齢者向けの対象疾患になりました。 (PP)  これは皆さん御存じの、一類疾病と二類疾病の違いでございます。 (PP)  その後、2001年以降の改正というのが、実は私どものような消費者団体には余りよく 知らされていないうちに行われております。痘瘡が一類疾病の対象になったりとか、こ れは大変よろしいことなんですけれども、ポリオの二次救済事業が開始された。ポリオ について不活化ワクチンの問題や、麻疹についての接種の見直しというようなことが行 われて、どちらかといいますと法令の改正ではなくて、担当課と検討会のレベルでの改 正というものが現在進んでいるように見受けられます。 (PP)  今回の検討につきましてはこのようなことで、私がこれを説明するほどのことでもあ りません。省略させていただきます。 (PP)  改正の方向といたしましては、もしこの後で議論をさせていただく時間があれば是非 参加させていただきたいと思いますが、今日が第8回ですが、第7回の検討会では、類 型化を再考するということがかなり大きなテーマになっていたと思っております。それ について、後で詳しく述べさせていただきます。 (PP)  本論なんですけれども、「現行制度」に対する意見ということで、国が果たす役割。 これはいただいた資料の中にあったことなんですけれども、予防接種法19条では「(1) 知識の普及」並びに「(2)予防接種事業従事者の研修」、それから「(3)健康被害発生状 況に関する調査、予防接種の有効性及び安全性の向上を図るために必要な調査及び研究 」というようなことが国の責務というように規定されております。  しかし、この知識の普及、事業者の研修につきましては是非とも付け加えていただき たいことが具体的な提案としてございます。それは現在、先ほどの蒲生委員と井上さん のお話にもありましたけれども、『予防接種と子どもの健康』、それから医師向けの 『予防接種ガイドライン』に是非とも副作用、対象疾患の罹患者数、死亡者数というも のを明記していただきたいということでございます。同じく予防接種に従事される方の 研修の中にも是非とも副作用、対象疾患の患者数、死亡者数というものを明記していた だきたい。それを判断材料に入れていただきたいということでございます。  それから、これは是非国の責務として4番目に、ほかの条文に類似の規定もございま すけれども、特に責務として「(4)健康被害救済のための迅速な体制の整備」というも のを入れていただきたいと思っております。 (PP)  それでは、健康被害を生じさせないためにはどうしたらいいのかということなんです けれども、ちょっと飛びまして、お手元の資料の方の86ページを見ていただきたいと思 います。私などが言うのも何なんですけれども、一言で言えば温故知新と申しましょう か。 (PP)  過去の予防接種の集団訴訟やMMRの問題、そういったものを検証した上で新たな制 度というものを模索していく必要があるのではないかということでございます。  MMRの問題というのは大変著名な問題ではございますが、89年に接種を始めて4年 で中止になったものでございますが、それから10年以上経ちまして、今、大阪高裁でま だ熾烈な訴訟が展開されております。  これは1989年4月に導入されたMMR、はしか、風疹、おたふくかぜを混合した新3 種混合ワクチンですが、被害認定されているだけでも1,049 名もの被害者を生みまし た。しかも、このワクチンにつきましては、導入前に外国で、これはカナダ等ですが、 副作用が問題とされていたこと。それから、接種開始直後から死亡や難聴・小児片麻痺 などが起き、無菌性髄膜炎等の副作用が多発したことなどから、審議会等でも何度も接 種についての議論がなされ、その都度、当時の厚生省のいろんな通知がなされておりま したにもかかわらず、4年間にわたってその間、統一株ではだめなら自社株をというこ とで接種が強行されました。そして、10年以上も経って、市民団体の調査で当時期限切 れのワクチンが使用されたという信じ難い薬事法違反の事実も判明しております。 (PP)  戻りまして、「健康被害を生じさせないために」ということですが、まずワクチンの 安全性について厳密な評価が必要であるということです。  それから、導入前の調査も厳密なものが必要です。  副作用の監視、情報収集体制の整備。これらがMMRでは本当に機能していなかった ことが歴史的な事実として明白となっております。  そして、何よりも問題が生じたときの素早い対応を怠ったことがその後の被害の拡大 につながっております。  過去の予防接種禍集団訴訟やMMR問題の検証を踏まえて、新たな予防接種の安全な 行政というものを是非とも模索していただきたいと思います。 (PP)  それでは、具体的に健康被害救済のための迅速な体制にはどのようなものが考えられ るでしょうか。  重複になりますが、ワクチンの安全評価についての慎重な検証というものがまず必要 です。  それから、ここの2番、4番。これは同じようなことなんですけれども、96年の見直 しのとき、予防接種実施要領により「予防接種後副反応報告」というものがなされるよ うになりました。しかし、これはお医者さんですとか市町村窓口、これらの報告に基づ いておりまして、決して副反応自体の厳密な調査をしなければならないという義務に基 づくものではございません。この「予防接種後副反応報告」では、症状等、年齢等、そ ういったものも含めて、それから、先ほどの先生のお話にありましたように、事後の対 応等も含めて、副反応後どのようなことが起きたかということを明確に国民に示す必要 があります。  それから、新規ワクチンの導入。特に今回、混合ワクチンというものが提案されてお ります。それに際しましては、薬害エイズ後に作成された「健康危機管理」の指針等を 参考に、迅速に正確にモニターできる制度というものをつくることが必要です。  ちなみに、この薬害エイズのときの指針には非常に感動的な言葉が書いてあります。 第2のところに、因果関係が不明である場合または入手した安全性情報が不確実なため 健康被害の発生のおそれの有無が直ちに判断できない場合には、常に最悪の事態を想定 して安全対策の立案、実施に努めるものとする。これを是非とも薬害だけでなく、予防 接種にも導入していただきたいと思っております。  それから、先ほどカンガエルーネットの方のお話にもありましたが、保護者にも副作 用の報告が容易にできるようにする。自治体など、例えば大阪の豊中市では、予防接種 後にどのような症状が起きたかということをはがきで知らせるシステムをつくっており ます。これは10年以上前からやっております。こういったものを是非国の制度の中に も、勧奨してほしいということでございます。  それから、先ほどのお話にもありましたが、是非とも副反応被害相談窓口を創設して いただきたい。特に、今、インフルエンザで非常にこのことが問題になっております。 高齢者(65歳)もしくは60歳以上の基礎疾患をもった方以外の方が、高齢者にうつして はいけないということであらゆるところで接種の勧奨がなされており、実際に被害も起 きています。ところが、そういった被害の救済窓口というものが全く知らされてないと いうか、機能しておりません。そういったことも、今回ワクチン行政を見直す上で検討 の対象、健康被害救済のための体制として入れていただきたいと思います。 (PP)  「現行制度に対する意見」といたしましては、これは認定制度でも言えることなんで すけれども、現状では都道府県が市町村と国の間の橋渡しの機能しかしていないと思わ れる節がございます。是非とも安全で有効な感染症対策の実施のために、都道府県が積 極的な役割を果たしていただきたいと思っております。  例えば、予防接種法第3条2項、予防接種を行う必要のない区域の指定。それから6 条、臨時の予防接種の活用。そういったことが規定されておりますが、現在4月1日か ら乳児のBCG接種のことでも非常にいろんな混乱が起きておりますけれども、こうい ったBCGの根本的な対策としての接触者健診の実施と乳幼児健診、それから好発地域 での接種の在り方なども含めて、自治体に予防接種の選択権というものを認めてもいい のではないかというふうに思っております。 (PP)  特に、日本脳炎の予防接種につきましては、96年改正前は臨時接種として義務接種で ありました。しかし、実施は都道府県に任されていましたので、北海道ではそもそも実 施はしない。東北地方もしていない県が非常に多かったんです。東日本でも必要がない ということで基礎免疫と1年後の追加をして、その後はしないところが非常に多かった わけです。熊本のように隔年にわたって追加接種をしていたところもございますが、日 本全体の接種率は30%前後。しかし、改正で定期接種とされて、接種率の引き上げが始 まって、発生のない東北地方でもやめると判断しない限りは実施されるようになりまし た。  現在、ADEMの問題などが生じておりまして、新しいワクチン導入の動きもありま すが、果たして本当に日本脳炎の予防接種がどの地域に重点的に必要かという議論もし ていただきたいというふうに思っております。 (PP)  それでは、先ほど来議論になっております、接種率向上のためにはどんな方法がある のか。これは、非常に私の立場としては逆説的な言い方になってしまうんですけれど も、下の方から言いますと、これは前々回の改正、98年からの予防接種検討の小委員会 の中でも非常に議論されていたことですが、休祭日の接種、十分な問診の体制、それか ら市町村会間での相互乗り入れ方式を採用して、できるだけかかりつけの小児科医で接 種をするようなことを保障していくべきではないかというような議論がございました。  ただ、この中で抜け落ちていることは、やはり基本は、本当に必要な人に必要な接種 をということを明確にしていく必要があるということでございます。過密なスケジュー ルの中では、親はどうしても優先順位や取捨選択をせざるを得ないということになりま す。はしかの予防接種をやめてインフルエンザワクチンを打ってしまった、日本脳炎を 打ってしまったというようなことについてどのように考えていったらよいのかというこ とも考えていただきたいと思います。 (PP)  「接種率向上のための方策II」といたしまして、これはちょっと専門的になります が、ガイドラインを再検討していただきたいというようなことですとか、今、大変父兄 の間でも疑問になっている三種混合ワクチンをDT二種や破傷風単独で打ちたいという ようなことを検討していただきたい。  何よりも、予防接種を推進するのであれば、被害を受けた方への充実した救済制度と いうものを明示していただきたい。その際、救済制度さえあれば良いということではな く、予防接種の必要性について十分な説明を行うことが大前提になります。 (PP)  この十分な説明というのが何であるかということですが、1つ、「川崎市保育園での 接種強制?」の事例をちょっと挙げさせていただきたいと思います。  これは、2003年に私たちが、ある雑誌が川崎市では予防接種をしていないと認可保育 園に入れてもらえないというような記事があるという情報を得まして、その後、川崎市 医師会、それから川崎市の行政の担当の方などといろいろと数回にわたるやりとりをい たしまして、最終的に川崎市医師会の保育園医部会長の方からいただいた回答です。  この中で麻疹の例を出していただいて、麻疹は怖い感染症で、年間数十人の死亡例が ある。麻疹に対する確実な治療のない現在、予防接種しかないという回答をいただいて おります。原則として、任意接種は除いて、予防接種を受けていただきたいというのが 川崎市保育園医部会の基本的な方針ということで回答をいただきました。  ただ、この中で麻疹に対することしか回答をいただかないことにつきまして、いろい ろほかにも質問をさせていただいていたんですが、麻疹の例だけを挙げて回答をいただ いております。ですから、ほかの予防接種、例えば日本脳炎ですとか、ポリオとか、ほ かのものも定期接種になっているわけですけれども、そういったものについてもやはり 一つひとつ理由を説明していただきたいとお願いしましたがだめでした。それがやはり 説明する側の責任だというふうに考えております。 (PP)  それでは、「健康被害の救済措置」というものは現状で十分なのでしょうか。  「認定制度の問題」「認定機関の問題」「認定基準の問題」というふうに書きました けれども、基本的に認定基準というのが大変狭められております。不活化ワクチンです と、48時間以降のものについては一切認めない。これは司法の救済の事例としてはそれ 以降のものも勿論認められておりますけれども、それを勝ち取るためには大変な努力が 要るわけです。  それから、それ以前の段階で、保健所ですとか接種していただいたお医者さんのとこ ろに行った段階で、それは全然副反応ではないと一刀両断に切り捨てられている事例は 非常にたくさんございます。  救済は幅広く、窓口を広げ、しかも複雑な書類等の手間、それから長期間にわたる認 定の期間、そういったものから解放して、こういった認定がやりやすくなる制度が求め られていると思います。  1つ付け加えますと、認定されるためにはまず市町村の予防接種担当課などに行きま して書類を出しまして、予防接種健康被害救済委員会というものにまずかけられます が、例のMMRの件では、ここの被害救済委員会の中に阪大微研の理事の方がいらっし ゃいました。つまり、ワクチンをつくられた方と被害を認定する方が同じであると。そ ういったところで果たしてチェック機能が働くのであろうか。そういったことも付け加 えさせていただきたいと思います。 (PP)  2001年に予防接種制度が改正されました。これが直近の改正でございます。先ほどお 話ししましたので省略いたします。 (PP)  現在、一類疾病、二類疾病という区分けがされておりますが、2001年改正時にもやは り類型化論というものが小委員会の中で議論されておりました。99年の第16回の小委員 会での議論では、このような発言が委員の方からありました。  インフルエンザを現状の7疾患に上乗せして持っていくのは難しい。推奨というスタ イルで高齢者に持っていきたい。勧奨はするが保障はないという制度もあっていい。勧 奨の程度による類型化。努力義務を対象疾患により変える。勧奨と任意の中間位置付け の類型化。勧奨しないで情報提供のみする類型化。このようなことが類型化論として提 案されました。 (PP)  結局、類型化によってインフルエンザワクチンは2001年11月、高齢者への予防接種と して法の制度の中に入りました。99年に提案されて以降、2度にわたる廃案の後、よう やく成立したものでございます。当時、テロ問題関連法案、BSE問題、医療保険制度 などで非常に国会が揺れておりました。その中で野党の、高齢者の同意を受けて必ず接 種をするという修正要求を受け入れる代わりに、1日で審議を終わらせることを条件に 可決されたものでございます。  現在、80年以降激減の一途をたどり、94年には30万本にまで生産が落ち込んだインフ ルエンザワクチンは、この冬には2,016 万本でしょうか。2,000 万本を超えるという本 数が生産されております。 (PP)  しかし、ここの類型化の問題点を特に申し上げたいと思います。  現在、水ぼうそうですとかおたふくかぜのように、任意のワクチンを類型化の中に包 摂して予防接種法上の接種にしようという考えが出ていることは承知しております。し かし、類型化は、とにかくワクチンがある病気はすべてワクチンで防げるからワクチン をすればいいという考えで進めていってしまってよいものでしょうか。まずワクチンの 必要性から出発すべきであり、また、ワクチンを選択する場合には必ずEBMが必要で あると思います。  そして、何よりも予防接種法上の接種とする以上は救済の枠組みを絶対に緩めてはな らないと思います。現在の定期接種、任意接種という枠組み以上に、定期接種に類する その中間形態というもの、それがまさに二類疾病ということになると思いますが、それ は私たち接種を受ける側にとっては、非常に接種は受けやすいけれども、実は救済はな いに等しいという結果になることを危惧します。 ○加藤座長  古賀先生、そろそろまとめにお入りください。 (PP) ○古賀参考人  はい。  今日、外で水俣病の上告に対する反対の人たちがリレートークをされていました。被 害の拡大に対する行政の責任ということ。水俣病、カネミ油症など食品、公害、スモン などの薬害、消費者被害事件において、初期の被害情報を無視あるいは軽視して対応を 遅らせたことがその後の被害を拡大させたという歴史的教訓にもう一度立ち返る必要が あると思います。  重大な副反応であれば、医学的判断をする前にまず接種を中止し、被害の拡大を防ぐ べきで、予防原則を徹底していただきたいということでございます。 (PP)  その次に、これはインフルエンザワクチンについての意見です。関係学会がどういう 役割を果たすべきかということですが、非常にNSAIDsの問題ですとかインフルエ ンザワクチンの問題については抑止的な、極めて常識的な回答を小児科学会の方で提案 されて、今、BCGの問題もそうですが、いただいているということを高く評価いたし ます。 (PP)  これは以前、こちらに出させていただいたMRワクチンの導入に対する申し入れで す。後で御参考にごらんください。 (PP)  ワクチンで感染症を防げるかについては、いろんな議論があるわけです。病気の根絶 ではなくて、やはり合併症の予防ということも考える必要があるのではないか。それ は、この検討会の方向性として是非考えていただきたいと思っております。 (PP)  まとめといたしまして、これを読んでいただければいいんですけれども、健康被害救 済のためには迅速な体制の整備をする。  地域に応じた感染症対策を行う。  接種率を向上するためには、まず情報提供と充実した救済制度をつくる。  類型化論は慎重に。私どもが慎重にというのは反対という意味でございます。類型化 論には反対いたします。  検討会にはもっと市民感覚を入れてください。危ないときはやめて見直すという、そ ういった常識に反しない行政の対応こそ求められていると思います。  以上です。 ○加藤座長  古賀参考人、どうもありがとうございました。討論は後ほどまとめて行いますけれど も、1人、2人何か御意見がございましたら今、伺いますが、よろしゅうございます か。  それでは、先に進ませていただきます。続いて稲福参考人から御発表をお願いいたし ます。 ○稲福参考人  稲福でございます。予防接種の制度的課題について、私の場合には沖縄県でやってき たことを主体にしながら、行政的な点を中心に、これまでの先生方の話と重複するとこ ろもありますが、逐次述べていきたいと思います。  まず、お手元のレジュメにありますように、「1 保健事業における予防接種事業の 位置づけについて」ということで、総論的になりますけれども、予防接種事業は市町村 の業務として現在定着しておりますが、長期的スパンでの、いわゆる健康危機管理の中 での感染症対策としての位置付けが弱いと思われます。つまり、予防接種事業は感染症 対策のシステムとして機能させる必要があり、そのためには発生動向調査、流行を含む 発生時の対応、医療提供体制、情報提供体制といった一連の対策と連動して実施させる 必要があると考えております。  そのためには、県の最前線にあります保健所と市町村との連携体制が重要であること は言うまでもありませんけれども、特に予防接種については保護者への働きかけという ことで、1・6健診あるいは3歳児健診を母子保健事業や保育所などの児童福祉部門と 網目状に連携した情報提供体制の構築も不可欠だと言えます。  この予防接種を受ける義務につきましては、これまでもありましたけれども、1994年 の改正で集団防衛から個人防衛、義務接種から勧奨接種へと変わりましたけれども、そ れにつれまして予防接種率の低下も見られ、接種により防げたであろう疾病、特に麻疹 などによる医療経済的な損失や、あるいは不幸な転機を取る乳幼児が毎年出ているこ と。それから、風疹罹患が直接的な要因でないにせよ、多くの要因の一つとなって行わ れた可能性のある、現在でも正確に把握することが困難な人口妊娠中絶など少子化問題 にも関連することを考えますと、いま一度ここで他者への感染防止という公衆衛生の観 点も深く考えてみるべきと思慮いたします。  次に、これまで述べたことをバックに、「2 沖縄県の予防接種推進事業」について 述べていきたいと思います。  沖縄県では、これまで予防接種率の低さを要因とした数度の麻疹の大流行を経験して おりまして、特に1998年から1999年の流行後、2001年4月に小児科医が中心となりまし て、県、市町村の行政機関も加わりました「はしか“0”プロジェクト委員会」が発足 しました。そして2002年には、委員会の協力の下、沖縄県麻疹発生全数把握実施要綱を 策定いたしまして、2003年1月からは県内の麻疹発生の動向を全体的に把握する体制を 整えまして、更に10月には、流行のレベルによる関係機関の対応も記載しました「沖縄 県麻疹発生時対応ガイドライン」が策定され、現在このガイドラインに基づく地域の麻 疹対策を推進しているところであります。  ちなみに、12か月から24か月未満児におけます本県の麻疹の予防接種率は、2000年度 が80.1%、2001年度が71.9%。これは麻疹流行によりまして、対象者のうち既に罹患者 がいたために率が低下したと考えられますけれども、2002年度は79.1%、2003年度は 83.4%と徐々に上昇してきております。また2003年度の実績では、具志川市、那覇市等 の市部におきましても90%の接種率を達成する実績が出てきておりまして、市町村の予 防接種率向上対策の成果が現れてきております。  そして、更に県では予防接種対策協議会を毎年開催しておりまして、市町村における 予防接種の実績報告を基に、医師会等関係団体とともに接種しやすい環境づくりについ て協議するとともに、流行時には随時開催して緊急対策について助言を受けることとし ております。また、市町村に対しましては予防接種担当者会議、研修会を開催しまし て、県全体で取り組む麻疹対策について周知を図り、各市町村で行っている対象者の把 握や通知方法等、接種率向上のための具体的な工夫について情報交換の場としておりま す。  2004年度のこの会議におきましては、接種率向上策として乳幼児健診等とのタイアッ プ、母子保健推進員による訪問活動の効果の報告あるいは的確な評価のための予防接種 の累積接種率の活用、更に定期的な予防接種台帳の更新の重要性などの議論等、更に麻 疹発生時に迅速に対応するために日ごろから保育所主管課あるいは保育所等との情報交 換の重要性等の意見が出されております。  また、モデル市町村において保護者の意識調査を実施しましたが、その中で保護者の 麻疹予防接種に対する知識、情報の入手については行政や医療機関の役割が大きいこ と。接種率の向上につながることにつきましては、子どもの体調のいいときに当日予約 ですぐ接種できるようにしてほしいなどの意見がありまして、市町村へ相談窓口の設置 あるいは医師会等連携した医療機関の確保など、改善策についての助言を行ったところ であります。  また、県としての予防接種対策への関与としましては、麻疹発生時の早期対応のた め、現行の定点報告制度だけでは不十分であることから、医師会の強力も得まして「は しか“0”プロジェクト委員会」を核としました医療機関や保健所の積極的疫学調査、 それから衛生環境研究所の連携の下に検査における小さな集団感染の分析と早期の対応 も必要との認識から、県単独での全数把握事業を行っております。これにつきまして は、お手元にお配りしました「沖縄県からはしか発生“0”にむけて」という資料をご らんになっていただきたいと思います。  そして、この中ではレベル1からレベル3までのレベル設定を行いまして、例えば複 数の保健所管内で1週間以内に複数例発生するなど県内流行の兆しがあるレベル3の対 応として、市町村は生後6か月から12か月未満児への予防接種勧奨、それから、公費負 担を検討するとしています。ここで非常に大きな課題として挙げられますのが、健康被 害への対応であります。これにつきましては、次の「臨時予防接種」制度活用とも関連 がありますので、その時点で述べます。  とにかく、この全数把握事業による届け出とそれに伴うウイルス検査事業によりまし て、これまでの発生動向調査事業の機能が補強されたと思いますが、現在2004年10月か ら国立感染症研究所感染症情報センターと共同で、この事業のシステムとしての迅速 性、感度的中率等に関する検討を行っているところでありまして、後ほど岡部先生から 補足があればお願いいたしたいと思います。  「沖縄県麻疹発生時対応ガイドライン」につきましては、資料を参照いただきたいと 思います。  さて、「4 『臨時予防接種』制度活用の検討」についてですけれども、現時点では この制度は天然痘発生時の緊急事態が想定されていると思われますが、それ以外に都道 府県または市町村が必要と認める場合、定期予防接種に該当するものも対象にできない かということです。そして、健康被害への対応も定期接種と同様に扱うことができない かということです。  この制度につきましては、できてからこれまで一度も利用されていないと思いますけ れども、その理由としては手続の重さと2県にまたがるという政令の厳しさがありま す。特に、沖縄県のように島嶼県の場合は九州その他と異なりまして陸続きではないた めに、全国的に蔓延した後でない限りその活用は無理であります。  都道府県が認めた場合ということで、健康被害への徹底した手厚い救済措置を含めて この制度が活用できるようにすれば、先ほどの麻疹流行時の6か月以上の乳児への接種 の勧奨や妊娠可能年齢女性の中の風疹感受性者対策について、地方自治体の個人を守り 全体を守るという立場から強く接種を勧めることが可能となりまして、また保護者ある いはその対象者の不安も少なくなる可能性があると考えます。  次に「5 個別のリスク層への対応」ですけれども、それは感染症対策の3原則の感 染源経路を断つための方策でありまして、これにつきましては保育所入所、小学校入学 等の集団生活を開始する際の予防接種規定の設置、あるいは医療従事者等の職業的に予 防接種を行う必要が高い者へ積極的に県あるいは国として関与できる仕組みなどが考え られると思います。特に、卒後臨床研修事業が義務化された現在、セカンダリーフェイ リアで、感受性のある研修医たちが感染に曝露される機会も増えていると考えられまし て、ワクチンが極めて有効で副作用も少ない疾患であります麻疹、風疹あるいはB型肝 炎などの医療従事者への感染率も高いことが知られているところであります。  ですから、医療従事者が感染源、感染経路とならないようにするためにも、学生の臨 床実習も含めて、これは文科省とも関係してくると思いますけれども、学生の臨床実習 も含めてワクチン接種を必須とするなどの何らかの積極的な関与ができる仕組みが必要 であると考えております。  ちなみに、沖縄県におきましては、県立病院の中の感染症管理委員会を中心として、 看護師あるいは研修医を含めたワクチン接種対策が現在浸透してきているところであり ます。  これまで述べてきましたように、予防接種の向上ということで、いろいろ自治体で考 えていろんな方法を行っておりますけれども、それだけではやはり限界があります。そ して、そのために今、国として地方自治体に対してある程度の指針を出していただきた いというふうに考えております。その中で、まずMRですけれども、これにつきまして も行政的な視点あるいは利用者の視点からも、あるいは接種率向上のためにも早目に同 時接種ができるようにしていただきたいと思います。  それから、地方自治体が接種勧奨を、宗教上の理由などを除きまして、強力に進める ことができるように、健康被害に対しては、任意接種についても、先ほどから申してお ります全面的な手厚い救済措置をやる制度にしてもらいたいということでございます。  あと、啓発に関連しますけれども、次世代育成支援対策とこの感染症予防の中での予 防接種の事業、これらを結びつけた事業の創設も考えていただきたいと。例といたしま しては母子保健推進員がありますけれども、彼らは育児相談を受けたり、あるいは現在 子育て中のお母さん方とよく接します。そういう中で、先ほど来、説明というふうなこ とがありましたけれども、そういうようなことをその方々にもやってもらうような仕組 みです。  あるいは、予防接種を受けやすくする環境ということで予防接種休業制度。予防接種 をするということでなかなか予防接種をしている場所に行きにくいというふうな声もア ンケート調査の中で挙がってきていますので、予防接種を受けるためには1日休業して もいいですというふうな制度です。  それから、説明をするということです。今は非常に小児科医の熱心な方々がいろいろ 説明して理解を求めるようなことをしておりますけれども、例えば労働部門と連携し て、あと何年事業が続くかわかりませんけれども、緊急雇用創出事業等があります。そ ういうものを利用して、医療法人なりがそれを受けて、そこで看護師さんを雇用して、 そしてその方々が市町村の1・6健診、3歳児健診等に行って、希望する人に対しては よく説明して、その後のフォローもするというふうな形です。その他の分野との事業の 創設、そういうようなこともまた必要ではないかなと考えております。  それから、リスクの高い職業、特に臨床実習生あるいは研修医等に対して、ある意味 義務化と何らかの支援が必要ではないかと。特に臨床研修事業が義務化されて以降、先 ほどの森内先生の報告でもありましたけれども、大学病院ですら、私はすらと言いま す。あれくらいの認識でしかないと。ましてや一般の病院はそれ以下であります。です から、医療従事者が感染源にならないようにする対策も私は義務化してもいいくらいで はないかと思います。  ということでございまして、あと風疹の予防接種率あるいは抗体価調査等から、現在 の妊娠可能年齢女性については当分リスクが続くと思われます。その中で、現在の定期 予防接種を補足する予防接種事業を行って、このプランの感受性者対策を今後進めてい く必要もあると思いますし、そう願いたいと思います。  以上、他の参考人と重複するようなこともございましたけれども、これまで保健衛生 に関わってきた者として所感を交えながら意見を述べさせていただきました。  どうも御清聴ありがとうございました。 ○加藤座長  稲福先生、どうもありがとうございました。  討論はまた別にいたしまして、何か1〜2簡単な御質問がございましたらばお受けし ます。  どうぞ。 ○井上参考人  お配りいただいてる別添資料「沖縄県からはしか発生“0”にむけて」の様式1の方 なんですけれども、そこの中の真ん中から下の方、「免疫を持った(麻疹にかかったこ とがある・麻疹の予防接種を受けた)母親から生まれた乳児は母親からの移行抗体が生 後6ヶ月頃〜9ヶ月頃まで持続し、その後は免疫がなくなるといわれています」という 記述があるんですけれども、こちらの方の「麻疹にかかったことがある」というところ と「麻疹の予防接種を受けた」というのが同列になっているんですけれども、この移行 抗体に関しては現在では同じように扱っていいのかどうかということと、将来に向けて どうなのかということがもしおわかりの方がいらっしゃったら、後でもいいんですが、 教えていただきたいんです。 ○加藤座長  お答えになりますか。 ○稲福参考人  麻疹、野生株にかかった場合には抗体価はずっと持続しますけれども、確かに予防接 種を受けた場合には、その抗体価が持続するかどうかについてはいろいろと論点がある ところなんです。しかし、お母さんにわかりやすいような言葉ということで、こういう ふうな表現を取っているということです。 ○加藤座長  ほかはよろしいでしょうか。  それでは、先に進めさせていただきます。続きまして、荒木参考人から御発表いただ きます。 ○荒木参考人  私は、茨城県の保健福祉部の荒木と申します。今年花粉症になりまして、今、顔がか ゆくてしようがないんですけれども、早く花粉症の予防接種をつくっていただきたいと 願うところでございまして、感染症とは違いますので結核感染症課にお願いしても違う のかなと思いますけれども、そんな中で、実は茨城県では平成10年4月から予防接種カ ードというものを導入して各市町村でやっていただいております。それの御報告をさせ ていただきたいと思います。 (PP)  まず「予防接種カード」ということなんですけれども、理念としては乳幼児から学童 期までの一貫した予防接種記録ができるシステムをつくりたいということで始めたもの でございます。  ちょっと考えていただきますと、就学前の予防接種につきましては、皆様御承知のよ うに母子手帳に記録をされます。就学後も母子手帳には記録ができるようにはなってい るんですけれども、ただ母子手帳を一々持っていって記録をするということがなかなか できないものですから、市町村が予防接種法の施行令で定める予防接種済み証というも のを交付することになっておりまして、その予防接種済み証を家に持って帰って母子手 帳に記入するというシステムでございます。この予防接種済み証の事務というのが市町 村ではかなり負担になっております。  それから、先ほどお話ししたように、済み証を発行して家に持って帰ってもどこかに 紛失してしまう。だから、いつやったかがわからなくなってしまう。具体的には、海外 に行かれる方が大変多いんですけれども、海外渡航前の予防接種歴の把握を求められた ときに、それができないというような問題点が出てきております。  そこで、乳幼児期から学童期までの一貫した予防接種記録が何かできないかというこ とでこの予防接種カードというものをつくりまして、市町村に協力を求めたものでござ います。後でわかりますけれども、この予防接種カードというのはむしろ就学後に使っ ていただくというところで有効性が出てまいります。  お手元のところに、皆様のページの裏側のところに予防接種カードのコピーをお渡し してあります。委員の先生方には1枚のぺらの緑色のこういうのがお渡ししてありま す。これは3つに折るようになっておりまして、3つに折ったらちょうど母子手帳と同 じ大きさなものですから、後で挟み込めるようになって保管していただくというもので ございます。 (PP)  ちょっと見ていただきますと、予防接種カードのまず一番最初のところでございます けれども、記載の方法につきましては、乳幼児期の接種記録について健康手帳の様式を できるだけ変更しないようにしようという国の意向も踏まえまして、県が様式をつくり まして、市町村がそれに基づいて作成をするという手順でございます。  ここに、見本1というのがありますけれども、見ていただきますと、学校で管理、保 管できるということを前提にしまして、氏名のほかに学校名、学年、組、こういうもの の記入欄をつくってございます。 (PP)  次のところの欄でございますけれども、これは母子健康手帳の予防接種の記録欄の様 式に準じた基といたしまして、集団で学校で接種するときにはゴム印をぽんぽんと押し ていきますので、そのゴム印が押せるように大きな欄になるような様式にしておりま す。  その次のところなんですけれども、学校で使うということなんですけれども、やはり 小さいときの、乳幼児期の接種歴もきちんと把握できるようにしましょうということ で、母子健康手帳の記録を保護者がこの予防接種カードに転記する欄も設けておりま す。その転記は、就学前の説明会で予防接種カードをお渡しするんですけれども、その ときにお母さんに書いてもらうことになります。その際に接種漏れがあったかどうかと いうのを自分で確認をするといういい機会になっております。 (PP)  次のものも同じものでございます。 (PP)  「予防接種カードの導入率」なんですけれども、これは先ほどお話ししたように平成 10年4月に導入をいたしまして、平成16年10月に調査をいたしました。ちょうど7年経 っていますけれども、県内83市町村ございましたけれども、67の市町村で導入をしてお ります。導入率は83%という状況でございます。  導入を中止した市町村が2市町村ございます。2市町村ということは、中止したとこ ろが非常に少ない。いったん導入すると、ほとんどすべてのところで継続をしていると いう状況でございます。  導入をしていないところ。これはなぜ導入をしなかったかということなんですけれど も、これも後で出てくると思いますけれども、これは学校で保管をしていただくことに なるものですから、学校サイド、つまり教育委員会サイドと市町村の保健部局との折り 合いが悪いところなんかは、おまえのところで保管しろというようなやり合いがあって 実現できていないという、そんなことも聞いております。 (PP)  予防接種カードの活用法。どんなときにこれが役に立ったかということを県内の自治 体からアンケートで聞いております。  学童期の追加接種というのは、学校でやる予防接種が円滑に実施できたということで ございます。  それから、就学時の記入をお母さんにしてもらいますので、未接種がわかると。学校 でも未接種の状況がよくわかるということがございます。  風疹の予防接種の経過措置というのが昨年ございましたけれども、そのときにこの予 防接種カードから確認をスムーズに進めることができました。大変役に立ったと聞いて おります。  それから、転入・転出をしたときに、学校で予防接種をするかしないかというような ときにこのカードを持っていっていただければ、転入したところ、転出したところの学 校でもスムーズに予防接種の取扱いができるということが言われております。  海外渡航時には健康診断書を作成するということで、医療機関から接種記録の提示を 求められることがございますけれども、学校は本人を通じて速やかにカードを提出する ことができますので、証明が非常にスムーズにできるということです。  それから、集団発生のときに予防接種をしているかしていないかと。茨城県でも2002 年、中学校での麻疹の集団発生がございまして、そのとき、この予防接種カードでして いるかしていないかというのが割と簡単に確認できたというふうに聞いております。  そんなようなことで、結構役に立ったという情報が多く寄せられております。 (PP)  確認でございます。ある市でこれを活用しているんですけれども、その活用例でござ います。契機としては、10年4月から予防接種の一貫した記録と接種率の向上のために 導入したということでございます。 (PP)  そして、どういうふうにしたかということでございますけれども、県から文書で、原 則学校保管となっておりますので、教育委員会の方に連絡をいたしました。県の方で も、保健部局から教育庁の方に協力依頼を出しまして十分に説明をしたというのが、こ の導入をうまくスムーズに、円滑にした大きなポイントではないかと思っております。  それから、予防接種カードへの学校での接種の後の記録については、保健センターの 職員が手書きで行っているという状況でございます。 (PP)  次に、予防接種法の改正などに、いろいろと各市町村がカードの変更をしておりま す。様式の変更を県が一斉にすればよろしいんですけれども、市町村の方も細かいとこ ろをやっております。例えば、氏名を裏の面にも加える方がいいというようなこともや っております。大きな変更はしていないようです。  住民も初めは戸惑ってたようでございますけれども、これが定着するのに3〜4年か かって、現在は大変安定した状況というふうに聞いております。 (PP)  予防接種状況が必要なときには、学校に問い合わせをしていただくということ。  海外に転勤する、留学する、旅行する、こういうお子さんがいらっしゃるときには大 変役に立っている。  それから、記入時に未接種の状況が非常によくわかるということで勧奨しやすいとい うふうに聞いております。 (PP)  流れをもう一度確認させていただきます。  小学校の入学前の説明会で、保護者にこの予防接種カードを配布いたします。そのと きに母子手帳を持ってきていただきまして、保護者に母子手帳から予防接種カードに記 録を転記していただきます。そのカードについては、小学校で回収をして管理をいたし ます。  それから、追加接種を学校でやるときには、保健センターの職員がそのカードに接種 歴を記入していく。それでまた学校で保管する。中学校の卒業のときには本人に返却を して、母子手帳に一緒にくっつけておいていただく。こういう流れでございます。 (PP)  実施市町村の様式が微妙に違うという話をさっきいたしましたけれども、そんなに大 きな違いはないんですけれども、多少違っているので戸惑いがあるというふうなことを 聞いております。  公立の学校には周知してうまくいったんですけれども、私立の学校に通っているお子 さんがこれを使っているかどうかというのは私立学校の方には問い合わせておりません ので、現状が不明になっております。  それから、予防接種カードの作成、記録、保管。こういうところに事務作業のいろい ろな時間を費やすということなんですけれども、これはそんなに大変な作業ではなく て、一度カードの様式なんかはパソコンに入れて管理をしてしまえば、あとは出力する のは非常に簡単であるというふうに聞いております。 (PP)  この予防接種カードの問題点なんですけれども、7年間実施をしまして次のような問 題点や課題がございます。  まず、予防接種カードを学校でなく保護者に管理してもらうという市町村が幾つかご ざいまして、これは紛失が非常に多いようでございます。大変だったと聞いておりま す。  母子手帳からの転記が、就学時のときにしてもらうんですけれども、これがはっきり うまくできなかったというような問題点もあるようでございます。  それから、転記をするという二度手間です。  予防接種カードの統一化ということは、先ほどお話ししたように様式が微妙に違って くるということです。  実は、本県の中に日立市というところがございまして、そこは独自に、昨年から母子 手帳の中にこの予防接種カードをとじ込むようにしました。新しい試みなんですけれど も、ただ学校での予防接種のときには生徒にそれを持参してもらわなければならないの ではないかということで、ちょっとその辺の徹底が大変なのではないかなというふうに 考えております。 (PP)  最後になりますけれども、そういう予防接種カードをつくりまして、市町村から要望 を聞きましたところ、こういうような生涯を通じた予防接種の記録が記入できるものと いうのは大変ありがたいと。特に、他県から転入してきた方なんかはそういうものを持 っていないのでまたつくらなければならないから、できたら全国的にもこういうような ものを導入してもらえると助かるという話がございました。  それから、母子手帳の予防接種の記入欄との整合性もあるので、磁気化されて、でき たらこういう母子手帳とか予防接種カードとか健康手帳が一体化されて、今後スムーズ に運用されていくとありがたいというような御要望がございました。  以上、簡単でございますけれども、茨城県が導入した予防接種カードの概要を御説明 させていただきました。ありがとうございます。 ○加藤座長  荒木先生、どうもありがとうございました。  今の荒木参考人の御発表に何か御質疑がございましたらば、1、2お伺いいたしま す。  それでは、どちらでもどうぞ。 ○井上参考人  1つ教えてください。これは予防接種の記録なんですけれども、ここの中に罹患歴を 入れることは何か問題があったりとか、大変だったりするのでしょうか。というのは、 留学時などに予防接種の記録だけではなくて罹患して抗体があればいいというようなお 話もありますので、その辺を教えてください。 ○荒木参考人  入れなかったのは、できるだけ簡単にして二度手間をできるだけ省略化しようという ことで罹患歴は入っていないというふうに聞いております。 ○加藤座長  私も、全く同じことを質問しようと思っていたんです。できたら入れてほしいと思っ たんです。  古賀参考人、どうぞ。 ○古賀参考人  この4月1日から個人情報保護法というものが施行されたんですけれども、このよう な予防接種カードの導入を今、活用されているということで、そういった目的外利用に ついての指針なりそういう措置というものはされていらっしゃるんでしょうか。  それから、これが例えば目的外利用で結核などの場合には、家族の罹患などについ て、例えば保険で非常に不利な扱いを受けるというようなこともあると思うんですが、 その辺の措置はどのようにしていらっしゃるんでしょうか。 ○荒木参考人  目的外利用については、まだ市町村の方に県の方から何かこういうふうにしてくださ いというような話はまだしていないと思います。今後、検討する課題かなというふうに 思いました。ただ、保管なんかについては徹底するように周知しております。 ○加藤座長  これは、市町村がやるんですか。個人がやるんですか。 ○荒木参考人  学校の方で保管していただきますので、市町村が保管することになります。 ○加藤座長  というのは、個人情報保護法ですと5,000 人以上の事業主ですから、ただ学校が対象 になるのだったら5,000 人以上の学校は余りないでしょう。だけれども、市町村だとあ りますね。すると、どちらになるんですか。 ○荒木参考人  保管していただくのは学校です。それから、場所によっては市町村が、学校が保管し てくれないので、各個人にお渡しして個人が持ってくる場合もあるようです。 ○加藤座長  わかりました。どうもありがとうございました。ほかによろしゅうございますか。  どうぞ、雪下先生。 ○雪下委員  これは、就学時検診に間に合うように配られているかどうか。それが1つ。  もう一つは、一昨年でしたか、母子手帳に入れるときにいろいろ問題になって、やは り罹患歴等を入れるといろいろプライバシーの問題でまずいということで省いたと思う んですが、だからそういう点でこれを母子手帳から離して、あるいはそこに挟んで保存 するということにいろいろプライバシーの問題がないのかどうかというのがもう一つ。  それから、小学校から中学に移るときには、これは学校から学校へ移されているの か。個人に渡して中学に行くときに持たせているのか。その辺のところを教えていただ きたいと。 ○荒木参考人  一番最後のことからあれなんですけれども、個人にお渡しして学校に提出していただ くようにしているというふうに聞いております。  個人のプライバシーの問題がどうかということなんですけれども、それについては、 当時そういう罹患歴を書くか書かないかという、それが個人のプライバシーの問題とい うことで議論をされたかどうか、ちょっと私も導入時のことがよくわからないものです から、わかっておりません。  それから、もう一つございましたね。 ○雪下委員  就学時健診についてです。 ○荒木参考人  就学時健診の前の、就学時の説明会のときにこれをお渡ししますので、そのあと就学 時健診が行われるというふうに考えています。 ○雪下委員  それでは、そこでチェックされているというふうに考えればいいわけですね。ありが とうございました。 ○加藤座長  荒木先生、どうもありがとうございました。  それでは、続きまして、最後になりました。岡参考人からの御発表をお願いいたしま す。 ○岡参考人  化学及血清療法研究所の岡でございます。  私は一企業の人間でございますけれども、本日の発表のチャンスはワクチン製剤並び に供給を行っております細菌製剤協会という団体に発表の要請があったという認識をし ておりますので、本日は細菌製剤協会を代表して発表させていただきます。  しかし、何分準備する時間が余りございませんで、各企業の意見を確実に議論を尽く してコンセンサスを十分得たかと言われると、必ずしも一字一句コンセンサスが得られ るほどは議論の時間が取れなかったという点もございますので、概略は皆さんに了解い ただいているという前提で、場合によっては話題提供というような面もあるという前提 でお話をさせていただきたいと思います。 (PP)  細菌製剤協会がどういうメンバーで構成されているかと申し上げますと、古くは北里 柴三郎先生が設立された北里研究所に始まる、各企業それぞれは相当歴史が古いものが ございます。左半分に記載してありますものが製造及び輸入、いわゆる物を調達すると いうグループでございます。それから、右に書いてあります5つのグループがこれを流 通で皆様方のところへ供給するという販社という構成で、合計16社でこの協会は成立し ております。 (PP)  この協会が、現状としてどういう役割をこれまで果たしてきたかということを少しこ の1枚で紹介させていただきます。  先ほど言いましたように、各企業は相当長い歴史がございますけれども、協会そのも のができ上がりましたのは昭和21年、戦後の非常に衛生状況が混乱している時期でござ いまして、そのときに発疹チフスあるいは痘瘡、そういう病気に対するワクチンを製 造、供給することで国民の保健衛生の向上というものに寄与してきたというところから 協会の歴史が始まっております。  国際的にはそんなに大きく貢献はしておりませんけれども、JICWELSあるいは JICA等の途上国の研修生等に関する保健衛生の行政の指導といいますか、そういう 面の貢献というものも幾分果たしてきたというようなこともございます。  最近では、既存の製品に加えまして、新興あるいは再興感染症についても何がしかの 貢献ができるように努力をしているという団体でございます。しかし、この業界そのも のが400 億ないし500 億程度の市場規模でございまして、先ほど申し上げましたメーカ ーだけで言いましても10社程度あるいは販社を入れると16社と、それを単純に頭割りし ますととてもとても大企業というわけではいきませんで、言わば零細企業あるいは中企 業の寄せ集まりというぐらいのレベルのところで一生懸命頑張っておるというところで ございます。  こういう協会が行政にどういうことをお願いしたいのか、あるいは自分たちは何をし たいのかということを今から少しお話をさせていただきたいと思います。 (PP)  感染症というものに対しては、いろんな種類あるいは大きさというものがございます けれども、特に国として重要であるというこれからの感染症のワクチンの研究開発とい うのはある意味では国主導、これは国が実際行ってほしいという意味ではありません で、国がきちんとしたポリシーを示していただいて、国あるいは国の研究機関あるいは 私どもの協会が一緒になって開発するとか、そういうことをぜひ考えていただきたいと 思っています。  既存の製品に関する製造レベル。これは現在のcGMPというものが非常に年々厳し くなってきておりますけれども、既存品のそういうものの製造あるいは品質管理に関す るレベルの向上というのは各メーカーが当然やる責任がございますので、自分たちの体 力と、場合によっては若干時間をかけてでもそれをやっていくという必要があろうかと 思います。  しかし、先ほど言いましたように、新製品というものについては、国外の大手の企業 が我々の2けたぐらい大きい力を持っているところと同等に開発するということはなか なかしんどいものがございますので、そういう意味では一企業というレベルで勝負ある いは開発するというよりも国の施策の中で開発するという体制が何かできないのか。是 非そういう考え方をやっていただけないかというふうに思っております。  特に、疾病の防衛という意味では国益という観点もございましょうから、同じような 姿勢で官民一体となってやっていく必要があるのではないかというふうに思っていま す。 (PP)  それでは、具体的にどういうものがそういうジャンルに当てはまるかという、これは あくまでも参考という意味でございまして、具体的にこういうワクチンをというイメー ジでとらえていただくとちょっと言い過ぎというふうにつながっていくかもわかりませ んけれども、例えば国防的に非常に重要、最近ではバイオテロというような言葉がよく 議論されておりますけれども、こういうものについて痘瘡ワクチンは、日本にはもとも とから痘瘡ワクチンがございましたけれども、果たして炭素菌のワクチンを開発する必 要があるやないやということについては、私は一回も議論されたという認識を耳にして おりませんので、アメリカのペンタゴン任せということで果たしていいのかどうかとい うこともやはり議論すべきではないかなという感じがします。  2番目のプライオリティーとしましては、国内での感染流行の可能性が非常に高い。 外国にもワクチンがない。今で言うパンデミック用の新型インフルエンザとか、SAR Sとか、こういうものはこういうジャンルに当てはまるのではないかと。新型インフル エンザは国の主導で開発が既に着手されておりますので、ある意味では既に発している という理解が正しいかと思いますが、SARSについてはいろんなところで研究はされ ておりますけれども、どこまで国策という考え方で開発が進んでいるのかということに ついて議論がまだ残っているのではないかなというふうに思います。  3番目のプライオリティーとしましては、国内への侵入の可能性はあるとは思います けれども、そんなに重要性がまだまだない、高くはない。そういうものは、国策という よりも各企業の判断あるいは大学等の研究機関との共同研究あるいは産官学という考え 方。これもイメージとして申し上げますと、マラリアとかウエストナイルとか、そうい うものは3番目ぐらいの位置付けというぐらいの認識でもいいのかなという感じを持っ ております。  実際、各メーカーが物を開発していくときに、先ほど言いましたように、いかんせん 体力はそんなに強うございませんので、開発の意欲、あるいは投資というものを何がし かの形で支援していただくことを切にお願いしたいというふうに思います。これは単純 に開発費だけの、費用だけの問題ではなくて、いろんな意味のバックアップということ を考えて、総合的に議論するということの中で一体となってやっていくことが是非必要 ですし、お願いしたいというふうに思っております。 (PP)  話は変わりますけれども、ワクチンを所管する部署というものが、大きく言いますと 今日議論されている場の結核感染症課というものと、もう一つ、私どもはよくお話をさ せていただきます血液対策課という、これが健康局と医薬食品局というものと2つの局 にまたがって課も違うということで、予防接種制度と供給というものが分断された形で 行政が行われるということは、必ずしもスムーズに物事が進むわけではなかろうと素人 的には思っておりますし、私どもとしても2つの部署に大体同じような話を持っていか なければいけないし、場合によってはそれはあっちだと言われることもないわけではな いということは、非常に相談ということについてもやや混乱を招くような形になってい るというのが現状ではないかというふうな感じを持っています。これはすべてそういう ことが起こっているというわけではありませんけれども、先ほど荒木先生がおっしゃら れました花粉症のワクチンというのがもし開発するというふうになったときに、それは どこに議論を持っていけばいいのかと。  多分、その話を受けてくれる部局、課はないのではないかという気すらしておりまし て、ワクチンというものはすべて何がしかのところに一応議論を持っていくと、昔は生 物製剤課というのがありまして、いいか悪いかわかりませんけれども、いろんなことを 相談し、製造から供給までいろんなことの情報がそこに集約されていたということで、 我々としても非常に動きやすかったし、ありがたかったとは思っております。それが、 いろんな事情でこういう体制になってきていることというふうに理解はしておりますけ れども、果たしてこれが本当に現状の行政としてベストチョイスの組織かどうかという ことはやや議論がまだ残っているのではないかというふうに思っております。 (PP)  午前中の話の中で、何人かの先生も少し紹介されましたけれども、やはりいろんな意 味でワクチンというものを評価し、あるいは啓発をしていくためには疫学ということが 非常に重要ではないかと思います。今日の午前中でも、非常にすばらしいデータをお示 しいただきまして、私どもとしても大変心強い気持ちで聞かせていただきました。  しかし、本来であると、ああいう仕事を地方の医師会あるいは自治体単位ということ よりも、本当はもっと大きいところでコントロールした形でやっていくのが本筋ではな いかなと。そういう意味では、この疫学調査に関する公的なあるいは国レベルの研究組 織、そして、そのネットワークの中で地方の自治体あるいは医師会というものが一緒に 一つの目標の中でそういうデータを出していくということは非常に重要ではないか。そ れでないと、あるデータがある県から出てきたときに、そのプロトコルが違うと別のと ころでそのデータを評価するときにいま一つデータの互換性がないとか、データを読み にくいという話も出てくる可能性があるのではないかと思います。できれば統一した考 え方、場合によっては統一したプロトコルでそういうデータを集めるとかということも 必要ではないか。そして、もう一つ重要なことは、そのデータを、今日の午後の話の中 にも少し出てきましたけれども、ワクチンを接種される方、お母さんあるいはお父さん も含めて保護者という人たちにどういうふうにその情報をフィードバックするか。その 場というものをきちんとつくる。それはこういう公開の場というのが正しいのか、それ とも何がしかの紙媒体がいいのか、電子媒体がいいのか、それは私はわかりませんけれ ども、皆さんが納得できるようなデータが集まって、そしてそれを伝える必要があり、 伝える価値があるということであれば、そういう情報を提供する場というのをきちんと つくり上げて、中心とすればお母様だと思いますけれども、そういう人たちにもフィー ドバックするという考え方が必要ではないか。  それから「任意接種から定期接種への切り替え」という言葉を3番目に挙げておりま すけれども、この検討会の中でワクチンの制度の任意から定期ということも含めて議論 されてきておりますが、これは過去の約束で5年目だからやったということだと思いま すけれども、一旦そのチャンスを失うと、次はいつそういう議論があるかわかりません けれども、仮に5年後ということであれば、5年間は任意の接種から定期に切り替わる という機会がないという可能性があるではないか。  本当に重要であれば、今回の議論でもし定期ということにするほどデータがないまま 先送りされても、来年それを説得できるような情報がもし集まったら、来年は定期にと いうことも議論すると4年間の時間というのが消去できるのではないか。そういう意味 では、毎年毎年議論するというのは大変かもわかりませんけれども、そういうことをあ る程度早め早めに議論しながら、必要であればあるいはデータがちゃんとそろえば、任 意から定期ということもかなり前倒しにやっていくような研究組織あるいはそういうこ とを研究するグループを設置することも必要ではないか。  それから、我々メーカーという立場からすると、ワクチンの開発あるいは開発の前と か開発段階から、場合によってはこのワクチンはうまくいけば定期ということも十分意 識すると。あるいは、これは任意としてライセンスを得て、疫学データあるいは市販後 のデータを十分そろえないと定期に行かないということもある程度議論する機会があっ てもいいのではないか。  一つの例として、ここにIPV、不活化ポリオワクチンとDPTの4種混合ワクチン の話を書いてありますが、DPTは現在定期という位置付けで、不活化ポリオワクチン が現在申請中のものが定期になるのか任意になるのかということをまだ議論が残ったま まで、そうすると、この4種混合ワクチンは定期になるのか任意になるのかわからない と。そういう状況で開発するというのは、お金の話を申し上げますと、メーカーとして は非常によろしくないのかもわかりませんけれども、開発投資をどうやって回収するか ということも考えないと、企業の経営者としてはよろしくない。  そうすると、投資回収をどういう形で数字を読み切るか。それはいわゆるマーケット サイズがどういうふうになるのかということも十分分析しておきたい。それは、開発す るんだから定期(接種)を確約してほしいと申し上げているわけでありません。なにが しかの条件があったらそういうことがというような議論を製造開発途中で議論しながら 開発をしていくということも必要ではないかと。 (PP)  「任意接種ワクチンの費用負担」というタイトルでございますが、日本語はなかなか 難しゅうございまして、任意という言葉と定期という言葉が果たして相対する言葉かど うかということから本当は議論しなければいけないと思いますけれども、任意という日 本語は非常に自由度が高くて、定期接種でも努力義務という言葉でかなり義務率が、義 務の程度が高いという認識がないという言葉もいろいろ議論をされています。  任意ということは、本当に個人の任意で、する必要がないという誤解を生む可能性が 高い。定期接種の場合は費用の補助がございますけれども、任意接種の場合は補助がな い。そのことも含めて、お母様方は任意という言葉で、重要でない感染症で、重要でな いワクチンだから任意でしょうという誤解までつながっていってしまう。これは非常に 不幸なことではないかと思います。  諸般の事情で、定期ということにはまだ組み入れられていないけれども、そのワクチ ンの有用性あるいは感染症としての重要性、そういうものが認められるということであ れば、必ずしも定期ということでなくても何がしかの費用負担をするということを考え てもいいのではないか。そうすると、ワクチンを接種しない理由に、今日どなたかちょ っと忘れましたけれども、1つにやはり費用というのが必ず入ってくる。費用というも のによって、ワクチンを接種しないというお母さん方の選択が出てくるということであ れば、こういう任意で、全部の任意接種をという意味ではありませんで、重要かつ有用 性の高いものであれば、何がしかの費用負担をすることによって接種率を高めるという 施策を考えてもいいのではないかと。 (PP)  話は、また大きく変わりますけれども。 ○加藤座長  岡参考人、そろそろまとめに。 ○岡参考人  済みません。  ワクチン開発のためのガイドラインというのが残念ながらございませんで、一般薬の ガイドラインを適用しながらいくということで、ワクチンの特殊性ということと考えま すとなかなか無理がございまして、ガイドラインを構築するということは非常に大切で はないかというふうに思っております。  井上先生の下で、製薬協と細協で分担してガイドラインを今つくり始めているところ でございますけれども、なかなか難しゅうございますので、是非こういう考え方を持っ ていただきたいと思います。 (PP)  これは、この場で議論をする話かどうかはわかりません。「検定成績の各メーカーへ の通知」ということで、ワクチンは、自分たちで行う自家検定と、最終的には国立感染 症研究所が行う国家検定と2種類の検定をもって最終的に品質が確保されているという 仕組みになっております。  私どもとしては、国家検定というのは、学校で言いますと最終的に通知表をもらった という感じで、合格したか、合格しなかったかということでございまして、その成績の 中身がどうなったかということを本当は、学校の先生だったら、おまえの成績はそこそ こだったけれども最近ちょっと落ちぎみだよとか、最近何とか頑張ったねという言葉を 添えて通知表を渡していただくのが指導であろうというふうに思っておりますので、確 かに検定成績は監査指導課の担当官の下で開示していただけるという仕組みにはなって いますけれども、そんな敷居の高いものではなくもっとフランクに、おまえのところの 成績は、最近はということで、指導の意味を含めて議論する場を是非つくっていただき たいという感じをいたしております。  もう一つは、そういう議論の中でデータの乖離があれば、やはり技術を合わせよう と。メーカーと感染研の技術を合わせるということも必要でしょうし、その議論の中で 新しい、より正確、そして精度の高い検定法の開発というものも生まれてくる可能性は あるのではないかと思いますので、余り検定成績の結果を単純に教えていただくという よりも、その成績を基にしてワクチンの品質を高めるような議論の場という形で、この 検定の結果通知ということを活用、運用していただけるようにしていただくと、我々と しては非常にありがたいと思っています。  以上でございます。 ○加藤座長  ありがとうございました。  岡参考人の今の御発表に、1、2何か御質問ございましたらお受けいたします。  どうぞ。 ○横田参考人  我が国で使われているワクチンが、海外で認可されて、そこに販路を持っているとい うようなものはどのぐらいあるのかということを教えてください。 ○岡参考人  どのぐらいというと、製品数でしょうか。 ○横田参考人  何でも結構です。 ○岡参考人  私は製品そのものが出ていっているということを、他社のことはよくわかりませんけ れども、バルクの段階で外国へ持っていって、外国で小分け充てんするというケースは 幾つかございます。  ただ、日本国内で出されているというような比率ではございません。ごく一部という 理解が正しいかと思います。ちょっと数字的に頭の中に入っていませんので、申し訳あ りません。 ○加藤座長  よろしゅうございますか。ほかにどうでしょうか。  どうぞ。 ○井上参考人  基本的なことで済みません。新興感染症とはSARSとかかと思うんですけれども、 再興感染症というのは具体的にどういうものがあるのかを教えていただきたいのと。あ と、先ほど定期と任意のお話が出たんですけれども、開発費の違いによってどういうと ころが変わってくるのか。例えば、50と100 の金額があったときに、あと50あればここ がもっとできるのにとか、そういった項目的なお話がもし具体的に例としてあれば教え ていただきたいんです。 ○岡参考人  再興感染症は、お隣の岡部先生にお話ししていただいた方がいいかと思いますけれど も、開発のことについては定期用も任意用も開発の費用は変わりません。というのは、 求められるデータは変わりませんからです。  ですから、開発について相当な金額がかかって開発するけれども、任意という世界 で、もしごく小さいマーケットしか市場がつくり得なかった場合には投資回収が難しい ということを申し上げたかったわけで、もしそれが定期になればある程度のマーケット が期待できるのではないかと。 ○井上参考人  やることは変わりませんか。 ○岡参考人  やることは変わりません。 ○加藤座長  それでは、岡部先生、最後に。 ○岡部委員  私がお答えするまでもないと思うんですけれども、今まである中で、余り数は少なく なってきたけれども、もう一回注意をしなくてはいけなくなったような感染症というの が再興感染症の定義になっています。例えば、結核とかマラリアとかそのほかの寄生虫 の病気とかあるいはチフスとか、そういったような、名前だけはよくわかっているけれ ども、身の回りには余りなくなってきた。でも、よく見てみるとまだまだあるとか、外 国にはある。そういったような疾患です。 ○加藤座長  どうもありがとうございました。  各参考人の先生方には御協力いただきまして、等しく20分間ずつお話をいただきまし て、大体予定どおり進行させていただきました。  ただいまから少し頭の休憩と頭の整理ということで、30分間休憩を取らせていただき ますので、時計では3時35分から、もう一度ここへ着席をお願いいたします。よろしく お願いいたします。                   (休憩) ○加藤座長  それでは、お約束の時間になりましたので、着席をお願いいたします。  午前中、午後と合わせて12名の方々から御発表をいただきました。後半は、今、資料 が配布されておりますが、冊子として「わかりやすい感染症Q&A」、厚生労働省から の冊子と、若干今日の検討会の論点の案をつくりましたので、その論点の案というもの と、それから古賀参考人から補足資料が今配布されたところであります。  これから、約一時間半にわたりましてまた討論いただきますけれども、進め方といた しましては一応「わかりやすい感染症Q&A」を厚生労働省牛尾課長から若干御説明を いただきます。  それから「第8回検討会の論点案」というものをお出ししてありますので、これを順 番に沿って私の方で問題提起させていただきますので、それに対してディスカッション をしていただきます。  更に、また各個人個人の先生、頭から順番に、お時間がありました場合には不足の 点、各先生方に対する御質問をしていただくというような段取りで進めていきたいと考 えておりますので、御協力をよろしくお願いいたします。  また、途中で退席される委員、参考人の方々は、御意見がある場合には順番に関係な く先に挙手をしていただいて、御意見を述べてからお帰りになっていただくようにして ください。  それでは、まず牛尾課長から「わかりやすい感染症Q&A」の冊子についての御説明 をお願いいたします。 ○結核感染症課長  これは、参考までに配らせていただいたということでございます。たしか井上参考人 からのプレゼンであったかと思いますし、また論点案の5番に書いてございますが、コ ミュニケーションの改善ということで、皆さん御案内のとおり、今年年頭にノロウイル スによる事案が大分マスコミにも報道されまして、全国のノロさんがえらい迷惑をして いるというような話もございまして、我々といいますか、医学関係者にとってノロウイ ルスというのは感染力が強いものであるが、決して珍しいものではないと。  ところが、ノロウイルスという言葉をまた新しい感染症が起こったのかというふうな 誤解もございまして、今お配りしましたのは感染症についてできるだけわかりやすく、 またよく見られる感染症について冊子をつくれという大臣の御下命がございまして、早 急につくったものでございます。  役人がつくったものとしてはできるだけわかりやすいものにしまして、ただ、我々ど うしても悩みますのが、正確さとわかりやすさが時として相反することがございます が、今回の冊子はそういう意味ではわかりやすさということを重点に置いたつもりでご ざいます。  それから、論点案の5番でまた御意見が出るかと思いますが、今回の予防接種の検討 会に際しましても専門家だけではなくて、蒲生委員に入っていただいて、どういうふう にすればよりわかりやすいかということについても我々としても留意しなければならな いというふうに思っているわけであります。  それは以上でございます。  それから、今日は非常に暑くなってまいりましたので、どうぞ、私はもう上着を取っ てしまいましたが、委員の方々も上着を取っていただいてリラックスして議論をしてい ただければと思います。  私の方からは以上でございます。 ○加藤座長  ありがとうございました。  ということで「わかりやすい感染症Q&A」という冊子を厚生労働省がおつくりにな ったということで、恐らく蒲生委員や井上参考人は、きっとわかりにくいとおっしゃる だろうと思いますが、そう言わず、一度御一読をいただきたいと考えます。  それでは、もう一枚配ってございます本日の論点の案というものをお配りしてござい ますので、これについて簡単に私の方から、まとめはできませんので論点をまとめさせ ていただきました。発表者は順不同でございます。  最初、藤岡参考人、細矢参考人等から出ました「1.接種率の正確な評価をおこなえ るような共通指標の構築について」というようなことが述べられたと思われます。これ については、全国共通の標準的な接種率の算定法を示すようにということは、既に平成 11年の「予防接種問題小委員会」で報告されております。  先ほど課長の方からも御説明がありましたけれども、16年以降は予防接種の実施報告 において、年齢、階層別に接種者数を把握できるように報告制度を改正したという御発 言がありましたので、今後は、先ほど藤岡参考人、細矢参考人が述べられたことは解決 されるとは思いますが、しかしそれ以外にもはしかや風疹の強化対策のために1歳6か 月や3歳健診、それから、就学時または入園時における接種率の評価方法であるとか、 接種台帳の電子化促進のためのモデルのソフトウエア開発、配布を行うべきではないか というようなことが述べられました。このことについて後ほど御意見を伺います。  「2.予防接種歴の確認および接種勧奨の強化について」、これも藤岡参考人、松永 参考人からお話がございました。既にいろいろな取り決めが行われている中で、厚生労 働省や文部科学省の施行規定や過去の通達で既にこれらが求められているのであるけれ ども、これらは現時点では必ずしも広く実施されていないのではないかということが発 議されました。したがって、このことについても広く御意見をいただきたいと思いま す。  続いて「3.医療従事者への予防接種勧奨について」は、森内参考人から御発言がご ざいました。まとめますと、森内参考人がお話しになったようなことを国や自治体の対 応を促す、国としてそういうことをやるべきであるという様に促していく必要があるの か。または、各大学病院または学会等にそれらは任せていいものであるかというような ことも少し討議をしていただきたいということで挙げさせていただきました。  4番目は、荒木参考人がお話しになりました「4.個人の予防接種記録の活用推進に ついて」ということでございまして、これも同じように、やはり平成11年のこの検討委 員会の中で、これが一応この方向でいきましょうということでペンディングになってい るところでありますが、このような方法を今後自治体が率先してやっていくべきである かどうかということについてお聞きしたいということでございます。  「5.ユーザーとのコミュニケーションの改善について」、これをどのようにしたら よいかということが井上参考人、また古賀参考人も同じと思われますけれども、いろい ろな副反応を経験したことがある方とか、または副反応を予防接種の効果に対する十分 な情報の提供がなされていないのではないかということで、結局は接種医療機関とユー ザーとのコミュニケーションが十分でないということが主な論点であったと思いますの で、その辺のところのディスカッションを少ししていただきたいと。国としてどうした らよろしいかという意味でございます。  6番目は、予防接種事業の安全性をより強化する制度としてどのようなものがあるか ということでありますけれども、これは古賀参考人がお話しになりましたが、やはり安 全性が必要であるということや迅速な対応が必要であると。それから、予防接種後副反 応報告の義務づけが必要ではなかろうかということ等々、現行制度に加えた何らかの方 策を検討することが必要ではないかということが諮問されたというふうに考えました。  7番目に出させていただきましたのは、松永参考人からお話しになりましたが、予防 接種のサービスの、これは古賀参考人の御発表にも近いことになるかと思いますけれど も、ユーザーへのよりよい情報の提供とリスクコミュニケーション及び安全な接種の一 層の推進が求められる。これは井上参考人からお話しになりました。  松永参考人は、更にその上で、そのための対応策として予防接種の認定医の制度であ るとか、予防接種指導医などの専門医制の方向に向けてはどうかというような御発言も ありましたので、これについて皆さんの御意見を伺いたいと思います。  8番目には、予防接種事業における都道府県への積極的な役割を果たして国が行うべ きかどうかということでございまして、稲福参考人からの御発言がございました。すな わち、都道府県と市町村の行う一連の事業、体制が連動して実施される必要があります ので、その連携が重要であると。そのために都道府県に予防接種事業への積極的な役割 を持たせるべきであって、それは法律でこれをつくって持たせるべきかどうかというこ とまで踏み込んでお話し合いをしていただきたいと。このようなお話と受け止めまし た。  横田参考人からは米国の例をお出しいただきまして、予防接種政策を今後いかに円滑 にうまく縦割だけでなく、横にも広げた上で継続的に議論するような組織をつくったら どうかというお話でございました。  最後の「10.研究開発について」は、池松参考人と岡参考人のお話がございました。 これは、基礎研究または臨床研究を実施するための基礎基盤であるとか、副作用、健康 状況調査を把握するためのシステムづくりであるとか、予防接種の研究開発の具体的な 検討方法についてということが述べられましたし、また予防接種に関する研究開発を今 後どのようにするかということ。岡参考人からはかなり突っ込んだ御意見がございまし た。  また、蒲生委員からは、やはりいろいろなところに聞いてもよくわからないと。親が 判断しにくいということがありますので、また予防接種と子どもの健康程度の冊子では よくわからないとか、また相談窓口が欲しいというような御意見も出されたというふう に拝見いたしました。  以上のようなことが、一応論点の案となると思われますので、順次各委員または参考 委員からの御意見を求めたいと思います。  まず、一番最初の「1.接種率の正確な評価をおこなえるような共通指標の構築につ いて」ということで、どなたか御意見、御発言がございましたら積極的に御発言くださ い。  いかがでしょうか。予防接種台帳の電子化促進のためのモデルソフトウエアの開発、 配布を行うべきであるという提言がなされましたけれども、付け加えることがございま したらば、どうぞ付け加えの御意見をいただきたいと思います。  どうぞ。 ○岡部委員  日本の場合は、大体が全数把握を一応目途として、今まではカバー率というよりは実 施率というような形でやっていたんですけれども、確かに全数報告は、全数を求めるの はそれはそれでいいんですけれども、例えばサンプリングのような形でやって、ある一 定の傾向をつかむというような方法もいいのではないかと思います。今、研究班で進め ているんですけれども、アメリカの場合は予防接種率の把握は電話調査で一斉にやって いるというような方法を取っています。日本で電話調査がいいかどうかはわからないん ですが、今までのような全部台帳を一斉にやってというのも一つのやり方ですけれど も、サンプリング方法もいいのではないかと、ただいま研究中です。 ○加藤座長  牛尾課長、ちょっとお尋ねしますが、平成16年度以降の予防接種の実施報告において 年齢別階層に把握できるように報告制度を改正したところであるということですけれど も、これの現状はいかがですか。 ○結核感染症課長  まだ実情については、若干ずれが生じますので、私どもの方で把握はできておりませ ん。 ○加藤座長  そうすると、フィードバックは1年後ぐらいにならないとわからないというふうな理 解でよろしゅうございますか。 ○結核感染症課長  そうです。 ○加藤座長  そのようなことですけれども、いかがですか。このことに対しては割合と前回の検討 委員会のときに話題となったことがずっとペンディングになっておりまして、日本小児 科学会等の先生方が個別に、例えば東京であれば何々区の先生がとか、どこどこの先生 がということで、皆さん個別に1歳半とか3歳児のときにどのくらいのカバー率がある かというのを個別にやられたわけですけれども、それを全国組織でやるようになったと いうことで理解してよろしゅうございますね。  そうすると、この件についてはしばらく様子を見るということでよろしゅうございま すか。  どうぞ。 ○廣田委員  異論はございませんけれども、恐らく年齢別に情報を集めておるということでござい ましたので、都合よく解析すれば、いわゆる何年生まれの人が接種を受けてプラトーに なったときに大体何%まで行ったというのが、多分工夫すればできると思うので、そう いった整理も一つ念頭に置いていただければと思います。 ○加藤座長  どうぞ。 ○結核感染症課長  これまで行ってきた予防接種台帳という制度が、基本的には歴史的にと申しますか、 市町村における集団接種ということを前提として行ってきた台帳というふうに理解しま すと、今後ますます個別接種方法、あるいは現在の言葉を使いますと法定以外の任意接 種というものが行われるようになると、この予防接種台帳の持つ意味自体というものが 将来的にはかなり変化してしまうのではないかという懸念を私自身は持っております。  そういう意味からも、その情報はだれのものかということを考えますと、むしろ個人 がどの予防接種をいつ行ったか、どういう疾患に罹患したかという情報を持つ方が将来 的には方向としてあるのではないかと。  ただ、それでは全国的な罹患率であるとか接種率をどうやって把握するのかという行 政側の問題としましては、岡部委員がおっしゃったように、全数調査でなくてもサンプ リングでそのようなデータが求められればいいのではないかというのが、まだ議論は始 めておりませんけれども、私の個人的な考え方としてはございます。 ○加藤座長  ありがとうございました。  澤委員、今、予防接種台帳のお話が出ましたけれども、個別接種がどんどん進んでい ったときに、今、課長がお話しになった16年度から施行しているという報告制度を開設 したところであるということですが、これは現場としてはいかがなんですか。混乱して いますか、いませんか、順調ですか。  さもなければ、私が言いたいことは、この電子化促進のためのモデルソフトウエアの 開発、配布をしたらどうかという御意見が出ているので、現場としては是非そうしてほ しいとか、そんなことをしなくても今の手作業で十分だとか、何か御意見はあります か。 ○澤委員  既にパソコンに入力して仕事をやっておりますので、そういうソフトが来ればよりス ムーズにいくのかなというふうに思っていますけれども、もう台帳というものはほとん ど使われていなくて、そういうシステムの中に入っているということで、個人情報なん ですけれども、確実になっておりますので問題ないというふうに思います。 ○加藤座長  それは先生のところだけではなくて、全国レベルの会議等でもお話し合いになってい るんですか。 ○澤委員  市町村の方まではわかりませんけれども、大体23区はそんなような状況で動いており ます。 ○加藤座長  ありがとうございました。  どうぞ。 ○藤岡参考人  現状で、予防接種台帳が作成されていない市町村が実際どれぐらいあるのかというの をやはり厚生労働省として把握していただきたいと思います。それで、余りにも低いよ うであれば次のアクションということで、ある程度作成されているのであれば、それは それで十分遵守されているということでいいかと思います。 ○加藤座長  一応、台帳はつくることには取決め上はなっているんでございますね。 ○澤委員  昔は、ちゃんとすごい台帳がありまして、そこにちゃんと台帳をつくっておりました から、私は全国的に、市町村業務になったところからはちょっとわかりませんけれど も、保健所業務であった時代にはきちっとやっているはずなんです。ですから、そうい う意味では、市町村に移したときも多分やっているのではないかという気はしています けれども、わかりません。 ○加藤座長  それから、廣田先生から各年齢層における、例えば抗体保有率はどの程度かというの は、感染研の方で全部の疾患ではないけれども出ていますね。 ○岡部委員  感染研でやっていますのは、流行予測調査事業というもので、血清抗体調査をやると きにその中で予防接種歴を記入していただいて、それの調査によるものです。  でも、結果的にはその調査と各都道府県でやるような実施の状況と、それから高山先 生と崎山先生がやった累積予防接種率というのは余り差がないので、大体傾向としては とらえられているのではないかというふうには思います。 ○加藤座長  どうぞ。 ○宮崎委員  予防接種率という時、結局何のためにその数字を出すかということによって幾つかの 種類があっていいと思うんです。国が従来から実施率として出されている数も、瞬間的 に100 %を超えてしまうと言われますけれども、あれはあれで実数を全数把握している ので非常に大事な数字なんです。  ただ、感染症をコントロールするという意味では何歳でどれぐらい接種しているかと いうことが重要なので、今回国も変えられて、そういう報告を少し密にされたというこ とです。地域地域でやるときには、先ほど言われた抜き取り云々でそういうことをやる と、その地域地域での接種の動きがよく見えるということで対策が立てやすいというこ とがあると思うんです。  もう一つは、予防接種台帳が確かにないところはあるんです。ないというか、使って いないところがあると思うんですけれども、予防接種台帳がなくてもどれぐらい接種し たか、何歳で接種したかというのは全部上がってくるんです。だからこそ厚生労働省が ちゃんと数をつかめるようになっているので、予防接種率の算定そのものに予防接種台 帳が不可欠ではないというふうに私は思っています。 ○加藤座長  どうぞ。 ○古賀参考人  今の宮崎委員の意見に賛成なんですけれども、サンプリング調査をする場合に、具体 的にマスとしてはどのように考えていらっしゃるんでしょうか。 ○宮崎委員  これは岡部先生の方からがいいんでしょうか。研究班でやっているようなことです ね。 ○岡部委員  あの場合はランダムです。ある一定の子どもさんを持っているところの地域だけやっ たんですけれども、そこで住民の方に日本の場合は手紙を出して、そこでのいわゆるア ンケート調査みたいな形でお願いしています。  もう一つは、高山先生のところでやっている累積予防接種率というのは、あらかじめ ある人数がどのぐらいキャッチに必要であろうかということを算定して、それに基づい て、あれはたしか自治体でやっていただいているんですね。自治体というか、保健所と か市役所、区役所、そういうところに調査を求めているというふうにしております。い ずれも研究班レベルです。 ○古賀参考人  その場合なんですが、先ほど課長さんがおっしゃったように定期接種、それから任意 接種も含めて、いろんなことについてサンプリングを行う場合にいろんな技術的な問題 があると思うんですけれども、基本的に定期接種で、この1番の共通指標を構築するこ とによって具体的にどのようなワクチンについては特に必要で、こういったワクチンに ついては勧奨について多少色合いが違うので強くは必要ないとか、そういうものはある んでしょうか。 ○加藤座長  今、接種率の件の話をしておりますけれども、ちょっと今の1番目の話題とずれます か。 ○古賀参考人  これはすべての定期接種の対象のワクチンについて接種率をすべて正確に評価、把握 する必要があるのかどうかということを、言わばユーザーサイドの疑問としてお出しし たんです。 ○加藤座長  この件について、何か御意見はありますか。私は座長なものですから、余り意見が述 べられません。  どうぞ。 ○結核感染症課長  これは、今後の議論になると思うんですけれども、例えば国として、この疾患だけは 是非強力に予防接種率を上げてエリミネーションなりに持っていくという疾患ならば、 全数調査というか正確に把握する必要があるんだろうと思います。  しかし、そのほかの、例えば今の体系で言うと、任意接種になっているものについて は、勿論把握できていることが望ましいと思いますけれども、先ほど申し上げたものと 比べると、精度は多少低くてもある程度の把握ができればいいのか。そういう意味での 把握の濃度といいますか、それは若干、その疾患をどう位置づけられるかによって違っ てくるのではないかという思いはございます。 ○加藤座長  どうぞ。 ○岡部委員  済みません、補足みたいな意見で申し訳ないんですけれども、WHOはEPIシリー ズ、つまり、はしか、ポリオ、DPT、そして一部ではHBが入りますけれども、その ようなものについての予防接種率を求めているので、日本としてはそういうものを提出 する必要があるかと思います。 ○廣田委員  それから、予防接種率というのはラフであれ正確であれ、やはり必ず押さえておく必 要があろうと思います。  その例といたしましては、以前、1976年の米国でのインフルエンザワクチンを打った 後のギラン・バレーのときです。その後のギラン・バレーについても、全部接種率から 分母を計算しております。分母は別段に接種率から求めた人数ではございませんで、さ っきおっしゃった罹患率ですからパーソンタイムと、それから計算しておりますので、 そういう意味でも接種率を押さえておくことは極めて大事だと思います。 ○加藤座長  何事も起きていないときには不必要かもしれないけれども、何事かが起きたときには かなり重要な指標になるというような御発言であったかと思いますけれども、それ以上 に何か御意見はございますか。  そうすると、現在、国で行われている年齢階層別に把握をしているのが現状であると いうことを見守っていくということで、今日は座長のとりまとめはございませんので、 フリーディスカッションで行います。  それでは、2番目のところに移らせていただきます。  2番目は、予防接種歴と接種勧奨の強化。これについてもかなり強力なディスカッシ ョンがこれから行われる予想がありますが、これについて、まず後段の方の接種勧奨の 強化についてですが、これも既に厚労省の方から先ほどいろいろな規則、指針、通知と いったようなものによって、保育所または就学時健康診断時または幼稚園、学校におけ る定期健診時の予防接種の勧奨を行うということを厚生労働省、文部科学省の接種規則 や過去の通達で既に求めているところであるということでございましたけれども、どう もこれが甘いのではないかという御意見と、勧奨し過ぎではないかという御意見が今日 は両方出ていたような感じがいたしましたけれども、フリーディスカッションでどう ぞ。  これは、藤岡参考人、松永参考人等が御発言になった中身ですが、御意見を求めま す。  どうぞ、森内先生。 ○森内参考人  私も、この件に若干触れたんですけれども、ちょっと総論的な話で恐縮ですけれど も、松永先生が言われましたように、予防接種をただ単に推進するんだというアクセル を踏むのか、それとも止めよう止めようと言ってブレーキを踏むのかということですけ れども、これは別にどちらに極端に偏ってもいいわけではありませんで、更にあえて付 け加えますと、あとはハンドル操作が要るわけでして、ただ進めればいい、ただ止めれ ばいいということではなくて、そのときの状況に応じて、運転していて状況を見ながら ハンドルを切るのと同じで、そのときの医学の進歩の度合、今持っているワクチンの有 効性、副反応、流行状況、いろんなものによって個別に一生懸命判断しないといけない ということです。  例えば、今日ちょっとお話に上がりました、どこかで出た認可の保育園に入るときに 云々というお話で、私個人の意見としては、はしかに関してはかなり強力に進めるの は、認可に入るか入らないかというレベルのことであれば、義務教育の学校に行くとか 行かないというレベルのものでなければ、あのくらい強力にいっても私自身は構わない と思っています。  ただし、それがBCGとかポリオとか三種混合とかほかのものまで広げるべきかと言 われると、私は必ずしもそうは思っていません。多分、そういうところまではしかが例 に出たのかなという気もいたします。  ただ、逆に、今はまだ任意でしかございませんけれども、水ぼうそう、おたふくか ぜ、風疹、これはやはり集団生活の中でかかった子どもにとってはかなり不幸な出来事 が起こることもあります。そういうときに、個々人の権利と、あとはほかの人からうつ されたくないというふうな権利、いろいろなものの兼ね合いというものは、それぞれの 立場でのディスカッションをそれぞれのワクチンについて、しかもそのときの時代の要 請に応じてしっかり考えていく必要があるということで、ただ単に推進派であるとか反 対派であるというふうな議論では終わらないようになっていただければいいと思いま す。 ○加藤座長  わかりました。そこは若干、疾病についての温度差があってしかるべきではなかろう かという御発言と考えましたけれども、これは実は今日の御発言でもありましたが、厚 労省と文科省で協力し合って、いわゆる施行規則として幼稚園、学校に入るときに感染 症または予防接種の既往歴を見て、そして、まだ接種していない方に対しては接種努力 をするように促す、勧奨するということになっているんですけれども、どうもそれほど やっていないのではないかという御意見がまだ世の中にあるということから発している ことなんですが、そのことに関して御意見をいただきます。いかがでしょうか。  松永先生、どうでしょうか。 ○松永参考人  私が参考人として意見を述べさせていただいたことが、かなりここに来て話題になっ ていると思うんですが、発表でも言いましたように、現場としては、例えば就学時健診 の話をしたんですが、学校医としてそこに行っていると、校医、校医の補助としての養 護教諭の立場と、校長先生、それから校長先生の下で働いているいわゆる一般の先生 方、それから教育委員会。大まかに言うと、教育委員会、校長、校医、それから一般の 教員。更に、そこに加えて生徒さんの親、生徒と、幾つかの立場があるわけです。それ がじゃんけんぽんというか、くっつき過ぎないというか、お互いに向き合っているとい うか、グーはチョキに勝ち云々かんぬんという形になっているわけです。  そこがなぜそうなってしまうかという問題で、そのために、私は、みんなが教育とい ったことを強い口調で言ったのは、やはり納得しなくてはいけないんです。それを、例 えばここにあるまとめとしては「接種勧奨の強化」と書いてありますが、それは私の言 ったこととちょっとずれるかなという気がするんですけれども、標語的に言うと、「力 のアメリカもしくは力の東ドイツ」。それから、現時点では、今日の発表で言うと「及 び腰のドイツ」。それではやはり両方よくないと思うんです。結局、納得の日本。みん なが納得してやると。それで、後の方に入りますが、やはり認定制度みたいなものを確 立して、先生方がよくわかった上で下に伝達する。そういう制度をした上でそれから強 化をやらないと、1回法律で定まってしまうと、よく理解しないでやると、これはどう しても力の押し付けになってしまうような気がするんです。  ですから、そこら辺は慎重にやっていただいて、今は裁判もいっぱいあることです し、実際に被害に遭われた方はやはり本当にかわいそうな状況にあると思いますし、幾 らお金をもらっても健康は戻ってきませんから、そういったことをやはりよく考えてい ただいて、慎重にやっていただきたいと自分では思って発言しました。 ○加藤座長  ありがとうございました。  どうぞ。 ○稲福参考人  この場合にも前提があると思うんです。その前提というのは、現場でこうやった場合 のいろんな迅速な救済制度も含めて責任を持つと。だから、皆さん納得のいくような話 し合いをしてくださいというふうなどんと構えたものがなければ、自治体としても学校 の校長にしても口火を切れないような状況があると思うんです。  ですから、これはもう本当にどんと構えたものをつくる必要が絶対にあると思いま す。 ○加藤座長  どんと構えるということは、迅速な救済制度。 ○稲福参考人  はい。救済制度の話です。それが前提にあって話が進められると思います。 ○加藤座長  これは先ほど古賀委員の方からスライドでも出ましたけれども、平成6年度の予防接 種法改正のときに、迅速な救済制度に向かって国は動くということに、一応と言っては いけませんが、そういう約束事ができてきたわけです。比較的迅速にやるようなシステ ムはできていることはできています。 ○稲福参考人  私が言いたいのは、これに関しては、例えば疑いの段階でも救済を始める。そして、 救済を一旦始めて、その中で調査をしていきます。そういう中で、そうでない場合もあ れば、そうである場合もある。そうであるは続行、そうではない場合には、それなりの 返還とか、それで何か不都合が起こっている方に対しては、何らかの社会福祉的な援助 という形で、要するに迅速なというのはそこなんですよ。 ○加藤座長  わかりました。それでは、座長としましては、救済制度に関しては、また後ほど少し 出てまいりますので、その場で少し議論をいたすことにいたしましょう。  あくまでも今ここでは、その勧奨が足りないのではないかという御意見がちまたにあ るということに関しての各委員、参考人の御意見を伺いたいと思います。よろしいです か。  藤岡先生、どうぞ。 ○藤岡委員  これに関しましては、やはり予防接種勧奨の最後のとりでとなっております、7歳半 まで、すなわち就学時健診の健診票を将来に基づいた形に注視するように、これも厚生 労働省と文部科学省が協力して、各市町村、都道府県を通じて、きちんと確認していた だきたいと思います。 ○加藤座長  そうすると、委員の御意見は、取り決めは取り決めだけれども、その後の厚生労働省 と文部科学省の更に押しが少し足りないのではないか。こういう御意見と考えていいん ですか。  松永委員、どうぞ。 ○松永参考人  そうなんですが、現実の話をすると、例えば、学校の話、保健所の話をしますと、意 外と保健所の担当事務官の方がよくわかっていらっしゃらないことがある。いろんな事 例がありますが、やはり十分にこれをわかっているんだろうかというときがあります。  それから、学校の先生自身も、例えば十分理解していないと感じられるときがある。 これは聞いた話ですけれども、授業中にインフルエンザワクチンなど全然効かないか ら、あんなのやらなくていいねとみんなに言ってしまうとか、そういう認識。  それから、保健所の場合は、例えば私は近隣の区のごくそばでやっていて、葛飾区の 保健所はお互いに顔をわかってるからいいんですけれども、近隣の区では、私がやいの やいの言って、例えば近隣の区では日本脳炎の3歳にならないと、接種は送られてきま せん。それを法律では6か月からできるから、6か月からもらいに行くと、これがまた 大変で、歩いて片道20分のところを取りに来いというんですね。郵送では対応しない。 今度はそれを取りにいくと、またいちいち20分近くねちっこく、なぜ早くやるんだと聞 かれたりというのがあって、それでやっともらえるとか、あきらめて泣いて帰ってくる とか、それを実際にたまたまだとは思うんですが、そういったことが現実として、現場 の役所の事務官の下にあると。結局問題は知っていない。それから、なぜやらなくては いけないかがわかっていない。  そういうことがわかっていない、ごく一部の先生や行政官の方だと思うんですけれど も、そういうところで今度は勧奨強化をやると、一体何が起こってしまうんだろうかと いうことが、私は非常に心配なわけです。  ですから、急ぐことはないんですから、やはり後の方には7番にあるようなことの知 識の上意下達と言ってはよくないかもしれませんけれども、知識の流れるルートという のをしっかりして、例えば学校の先生や実際の現場の行政官の方が、この行政官の方も 昨日まで土木局にいたとか、そういった方が突然4月1日から保健所に来られたら、わ かれといったって無理だと思うんですけれども、やはりそういった方たちに納得してい ただいた上で、やっていただく。  また、一般市民の方もそれを知った上で、やはり嫌だとか、そういうことをはっきり 言ったらいいと思うし、やるとか、そういう世界です。でも、どうしても現実には、寅 さんや両さんみたいな人がいますから、なかなか難しいところがあっても、それをやら ないで強化強化とやると、非常に東ドイツみたいになってしまうのではないかなという 気がして、そこら辺をよく御検討いただきたいと思っています。 ○加藤座長  これは先ほど蒲生委員が、親がわからないし、聞きに行ってもわからないと言ったこ との裏返しで、本当にみんな恥ずかしい話ですが、大体小児科の先生は御承知でしょう けれども、小児科の医者だけがやっているわけではなくて、わからない医者も中にはい るんですね。余り大きな声では言えないんですが、小さな声でも文字になってしまうん ですけれども。  古賀委員、どうぞ。 ○古賀参考人  今、小中学校のBCGの再接種が廃止されまして予防接種制度も動いているという現 実感がある中で、その勧奨をされ過ぎているか、されていないかということは、多分保 護者が保育園、幼稚園に入園するときに一番感じることだと思うんです。  それで私たちは、保育園での勧奨というものは非常に重要なポイントだというふうに 考えているわけなんですけれども、今日は専門家の先生方もたくさんいらっしゃいます ので、是非教えていただきたいんですけれども、麻疹が法定接種年齢を超えて、未接種 の子どもからはやったというような、そういう具体的、科学的な事実というのがあるか という点。  それから、強制接種という言い方はとても悪いかもしれないんですけれども、非常に 強い勧奨をして接種率が上がったような保育園などにおいて、ほかのところに比べて麻 疹の罹患が非常に下がったというような例があるのかどうかというようなことを教えて いただきたいと思います。 ○加藤座長  これはどうしましょう。サーベイランスの岡部先生に聞きましょうか。 ○岡部委員  小学校、中学校などの学校単位でのアウトブレークでは、これは大体未接種の人が最 初に罹患をして、そして未接種の人及び接種をしたけれども、恐らくは免疫が弱まって きたか、あるいは免疫が落ちてきた人。そういったような人に感染を広めたという事例 はもう幾つかあります。  それから、ある幼稚園で例えば、予防接種をやっているクラスとやっていないクラス では、やっているクラスの方が広がりが勿論少なかったとか、そういったような事例 は、幾つか必要であれば出すこともできます。 ○古賀参考人  ある幼稚園の事例というのは、何か論文のような形であるんでしょうか。 ○岡部委員  論文で出ているのもありますし、サーベイランスというのはどこかでアウトブレーク が起きたときに、調査をして報告書をまとめたというのはあります。しかし一部につい ては個別事例なので、オープンにはなっていません。 ○加藤座長  細矢先生、どうぞ。 ○細矢参考人  これは幼稚園とか保育園のレベルではないんですけれども、福島県全体で見ますと、 接種率は90%を超えている地域の大きな理由は見られておりません。今回残念ながら、 スライドでいろいろ見せられなかったのですが、黄色の地域です。50%〜90%の地域で は、やはり流行が始まると広がってしまいます。最初の症例は2002年4月に東京の子が 遊びに来て、そこで広がったということがわかっているんですけれども、そこから急速 に広がったのは、90%を切る地域だけでしたので、やはり接種率というのは非常に大切 だなというふうに思います。  ですから、幼稚園レベルあるいは地域レベルというのはなかなか難しいんですが、あ る程度の範囲で見れば、予防接種率を高めれば確実に抑えられるだろうと思います。 ○加藤座長  雪下委員、どうぞ。 ○雪下委員  今、接種勧奨について、真剣な議論をされているわけですが、日本医師会としまして も、小児科医学会等の協力を得ていろんなことをやっているんですが、少なくとも法的 に決められた予防接種についてはいずれも90%前後行っていると理解しています。麻疹 についても接種期間を早期にというような宣伝をいたしまして、それも実行されてきて いるし、そんなに、皆さんが言われるほど悪いのかなという感じが私はしておるんです が・・・。一般に1歳半、3歳時でチェックし、就学時に再度全部確認しておけば、私 はほぼ十分な接種率が確保できるのではないかというふうに思っておりますけれども、 その辺学者の先生方はどう思っておられるんでしょうか。どうしてももっと上げなくて はいけないと思っておられるのか、その辺のところを教えてください。 ○加藤座長  これも先ほどもお話しが出ましたけれども、各疾患によって若干違ってこようかなと いうふうに、私自身もそう思っております。  例えば、はしかですと、やはり90%の接種率は欲しいというところ。風疹ですと、岡 部先生、80%ぐらい。そういう疾患とその流行性によって若干は異なると思います。  この場では、2番ばかり討論するわけにも行きませんので、この辺でやめますが、い ずれにいたしましても、これらの規則または指針、通知、こういったようなものをその まま生かしていただいて、できる限り、松永参考人がおっしゃったように、勧奨する側 が何も知らないで、ただ、やれやれというだけでは、これはけしからぬということです ので、厚生労働省の方も、勧奨する側の人たちに対しての教育。これはたしか年1回は 最低限度公務員の方々に教育している機会があるはずなんですが、先ほどもお話しにな ったように、2年ぐらいずつでくるくる変わってしまって、聞いていませんよという方 も出てくるかもしれませんので、その辺のところもお願いしておくということでよろし ゅうございますね。  それでは、3番目の方の森内先生の方に行きます。いわゆる職業感染症、特に研修医 等がいろいろな病院に回っていくような時代になってまいりまして、大学病院だけでの 報告、これは小児科学会でやりましたが、それでも不満足な成績が出ているということ の御意見でございました。  このことに対して、国が少し関与すべきかどうかということが1つの問題点かと思い ますけれども、この件に関しまして御意見を求めます。  どうぞ。 ○森内参考人  森内です。もう一旦説明したことではありますけれども、ちょっと蛇足で御説明いた しますと、こういったものを国、自治体のレベルでやるか、学会レベルでやるか、個々 の病院レベルでやるかですけれども、学会としても、これは非常にいろんな学会がそれ ぞれ関わることで、ある一つの学会が何か言ったからといって、多分推し進めていくこ とは、もう不可能であろうと思います。  また、病院もそれぞれの経営基盤の違いや個々の事情の違いから、どうしても足並み がそろわないにもかかわらず、医学部を行く出た後に行く病院はさまざまで、ある一人 の医師でもいろんな病院を渡り歩いていくわけですので、これは、やはり国としての指 針を是非決めていただきたいと思います。  ついでに言うと、一生懸命接種を勧奨する医師、勿論医師の中でも推奨するものと、 ただぼーっとしている人と逆にすごく反対している人とさまざまいるので、一口に言え ないんですけれども、患者様側から見ると医師は医師ですけれども、医師が自分で注射 もしていないのに、何でうちの子どもたちに無理やり打とうとするんだということにな ると思います。  悪い例えを出してはあれですけれども、健康に悪いたばこを吸っている医者がいて、 お父さんがやめないとあなたの子どもさんの喘息がひどくなるよと言っても、これは説 得力がないわけですので、医療従事者はしっかりと打つべきだろうと思います。  ちょっと先ほどの議論に蒸し返して悪いんですが、今日は余り風呂敷を広げ過ぎては と思ったんですけれども、実は本当に訴えたいのは、例えば保育士の方とか学校の教 師、この方たちからも感染は広がります。逆にその人たちがなったら、児童よりももっ と重症です。  ですけれども、少なくとも教師も自分自身がどのような危険にさらされているのかと いうことも認識し、またそういう公共福祉という観点の認識もないのに子どもたちを預 かるというのは、決していいことではないと思いますので、そういったことをきっちり していくべきだろうと思います。  ただし、それはあくまでも個々のワクチンの有効性、安全性、流行状況を加えた議論 をタイムリーにずっとやっていくということが原則にあった上の話だと思います。 ○加藤座長  非常に明快な御答弁ですが、このことに関して、ほかに御意見を求めます。  どうぞ。 ○蒲生委員  森内先生の御意見は、私も本当にそのとおりだと思っていまして、何回かこの会でも 申し上げたように、赤ちゃんたちに接種する方たちへの予防接種をどうするかというこ とも考えていただきたいということ。  それから、お母さんが病院へ赤ちゃんを、病気にしろ予防接種にしろ連れて行こうか と迷ったときに、病院で病気をうつされては困るというのも一つ大きな壁になっている こともお伝えしたいと思います。  特に予防接種が別の時間とか別の日時になっていない病院も全国にはたくさんありま して、ごめんなさい、私は先生方に何か恨みがあるとか、そういうことでは全く、いつ もこういうことを申し上げるのは本当に心苦しいんですけれども、日本の中にはいろい ろな先生がいらっしゃって、つらい思いをしているお母さんもいっぱいいるということ もわかっていただきたく、その場合、予防接種を受けに行ったのに別の病気にかかって しまったのでは全く意味がないと思うし、病気のときにどうしようかと思う。それは病 院で病気をうつされたくないというお母さんの気持ちもあるということも頭に置いてい ただければと思います。 ○加藤座長  ありがとうございます。結局ワクチンを接種していないで病気になってしまう方は、 これからワクチン接種に行こうかなと思っていた人に対しては、加害者になってしまう ということで、接種をしたい方がいつの間にか被害者になってしまう状況が起きるの で、これはまた竹本先生にはまた違う意見がおわりかもしれませんが、これは国でのお 約束事でして、そういう意味で予防接種外来は予防接種外来として設けていただきたい という取り決めをしているところでございますが、学校の件について。  どうぞ。 ○池松参考人  医療従事者への件ですが、もう一つ、今、私どもの病院でもやっているんですが、実 際にどのようにやるかというと、検査をしてやるか、そして実際打つとなると、うちは 600 人ぐらいいるんですけれども、そのコストはかなりのものになるんです。それをど うやってみていただくのかということを最初に決めておかないと、どれぐらいの頻度で やって、それは例えば、病院機能評価で認めるとか何かで認めるとかいうような形でし ていただかないと、なかなかエビデンスだけでも進まないかなという気もしているんで す。その点もちょっとお願いしたいと。 ○加藤座長  職業感染症の予防に対する費用が今出ましたが、岡部先生、どうぞ。 ○岡部委員  職業的感染についてですが、医療従事者の方への予防接種というのは、院内感染対策 中央委員会というのがあって、私はそこに委員で出ており、なるべく医療機関の職員の 人へ予防接種で防げるものについては防げるようなことを盛り込んでいただきたいとい うことは、しばしば発言をしております。しかし、やはり院内感染対策というところで は、最初に問題として出てくるのはMRSAでありVREであり、そして耐性菌感染で あるというふうに流れていってしまうので、是非そのところは、感染を防ぐという立場 での課同士で、省内でも是非検討していただきたい事項と思います。 ○加藤座長  ありがとうございます。  では、竹本先生どうぞ。 ○竹本委員  私は一開業医なので、大学病院とかそういうところとはちょっと関係ないんですけれ ども、川崎市では衛生看護学校を持っているんですね。75人の入学者に対して、春の健 診のときに全部一斉に抗体価の測定をしています。そうすると、大体90%ぐらいの人が 持っていると。ですから、残りの2〜3人に対しては予防接種をするようにということ にしております。  費用の方は今まで自費でやってもらっていたんですけれども、昨年の委員会では市の 方がそれだけのものは持つべきではないかとなって、まだ予算立てができていないので わかりませんけれども、一応そこまで結論は出ております。 ○松永参考人  ぐちゃぐちゃにしてしまうかもしれませんが、医療従事者へのというのを2番とも絡 めて、医療従者・教育関係者・保育士・保健所の役人といった人へ、ちょうど医療従事 者、お医者さんや看護師さんと同じですから、こういった人たちへの予防接種勧奨とい うことをやはり付け加えていただければ、教育と同時に実際に感染症が広がらないとい うことになるのではないかと思うので。  もう一つ、付け加えですけれども、雪下先生がちゃんと保育園の入学時や何かでやっ ているか大丈夫ではないかというふうにおっしゃっていましたが、今年の私の校医をし ている学校のすべて予防注射が終わっている人は75%でした。 ○加藤座長  失礼しました。これは医療従事者と書きましたが、本来は森内先生の御発表のところ では、職業感染、いわゆる大学とか、これから行くであろう関連の研修施設の病院とい うことが中に入ってございまして、単なる医療従事者というわけではございません。  それで、元に話を戻しまして、少し結論じみた意見をいただきたいんですが、今日、 森内先生がお話しになったことに対して、これも病気によっての重さ、軽さがあると思 いますけれども。発言された方とは違う方向に私は持っていっているかもしれません が、国またはしかるべき地方自治体、厚生労働省または文部科学省等がそのような提案 を、これは強制はできないと思いますけれども、何らかの形で発する必要があるかどう かということなんでございます。それについて御意見をいただきたいと思います。  どうぞ。 ○稲福参考人  稲福ですけれども、その点に関しましては、そういう必要があるというふうに考えま す。研修病院とかそういうようなところでも、安心して研修生活を送れるような環境づ くり、安心して労働できるような環境づくり。そんなことからも必須のことであると思 いますし、医学部というようなところにおいても、学生時代にこそ、この十分な教育を 行い、そして予防接種を行うということで、やはり文科省とも関連しますけれども、関 与が必要であるということを言いたいと思います。 ○加藤座長  ありがとうございます。そういう意見が出ましたけれども、ほかにいかがですか。大 学関係で横田先生いかがでしょうか。 ○横田参考人  先ほどの岡部先生のお話には身近に感じられまして、やはり大学内の感染症対策委員 会だ何だになりますと、この小児の病棟ではやるような流行病に関してのワクチンの話 は一切出ません。  先ほどの森内先生のアンケートでも見えますように、小児科を回る研修医だけがやっ ているというような事情がございます。つまり、大学なら大学の全体、大きな病院もそ うだと思うんですが、その中における小児の位置というのは非常に低いんですね。だか ら、予防接種だけではありませんけれども、しかし、今後研修制度が変わった中で、全 員の研修医が回るということで、当病院では全員にやるような方向に来ております。 ○加藤座長  ありがとうございます。そのほかに、お国の方から何らかの知恵を出していただい て、学校関係または今お話しが出ました、医療従事者は元より学校、保育士、保母さん たちにも、そのようなことをお示しするようなことを工夫していただきたいという御意 見が多数を占めていると思いますが、その辺のところはどうでしょうか。  どうぞ。 ○古賀参考人  ちょっと真っ向から反対するような意見を申し上げるのもあれなんで、ちょっと教え ていただきたいと思っているんですが、そういった医療関係者ですとか学校内からの集 団感染というのは、私たちが知る限りでは結核ですとかMRSAとかVRSとかそうい ったことが非常に重篤なものだと思うんですけれども、具体的に、今、子どもがかかる 病気で大人が罹患して子どもにうつすというようなことについては、今、保育士とか医 療関係者とか大学の研修医とか、いろいろ事例が挙げられておりますけれども、そうい った事例というのは現実にあるんでしょうか。 ○加藤座長  座長の病院では、おたふくかぜ、水ぼうそう、はしか、すべてございます。  ほかの病院はいかがでしょうか。どうぞ。 ○松永参考人  私のいた病院でも、研修医がはしかになりまして、余り詳しいことは言えませんが、 大変な話になりました。 ○加藤座長  森内先生、どうぞ。 ○森内参考人  言うまでもない恥をいっぱいさらしますと、私が赴任する前も含めまして、私どもの 大学病院でも、私自身が今日発表したような病気すべて、麻疹、風疹、おたふくかぜ、 水ぼうそうなどなど、子どもから医師がかかり、医師からほかの担当患者にかかり、訴 訟問題になったものもいっぱいあります。別に訴訟が嫌だからということではなくて、 かかった医師は自分がきつい思いをしたんですけれども、自分が加害者になったことに かなりのショックを受けておりまして、あとワクチンで防げる病気ではないんですけれ ども、今ちょっと困っているのは、アデノウイルスの病棟内感染が重身の施設ではやり まして、それも一番最初に気が付かずに熱を押して一生懸命毎日仕事をしていた医師が ある病棟の発端になったという話で、これもとんでもない話になっております。  私どもは、やはりそういった観点で、守れるものは守るという姿勢を示さない限り は、ほかの一般市民も、私たちも一般市民なんですけれども、納得が得られないと思い ます。 ○加藤座長  細矢先生に意見を求めます。 ○細矢参考人  我々のところでも、やはり同じように、研修中にはしかにかかってしまいまして、ガ ンマグロブリンを打とうかとか問題になります。かかった本人も問題なんですが、やは りその人が研修先でまた熱を押しながら回って歩いたりすると、ほかに広げるというこ とが出てまいりまして、これがやはり病院としての対応が悪いのではないかということ を責められてしまいまして、どうしても防げるものは学生のうちから防いでおかない と、これは困るというふうに思います。 ○加藤座長  それでは、3番につきましては、まとめではございませんけれども、多くの委員は厚 生労働省及び文科省の方から何らかの知恵を出していただいて、当該者に何らかの方法 でうまくお伝えをしていただきたいということでよろしくお願いしたいと思いまして、 4番目に移ります。  4番目は、個人の予防接種記録。先ほど詳しく御説明がございましたが、この活用に ついてでございます。  荒木参考人から既に非常に細かいお話が出まして、ほとんど問題のところはないとは 思いますけれども、ここで議論をしていただきたいところは、配られたようなものを今 後実際に国または自治体等が積極的にそれを導入していくべきであろうかどうか。これ は答えは簡単かもしれませんけれども、先生方の御意見を求めたいと思います。いかが でしょうか。 ○澤委員  私ども墨田区では、次世代育成支援計画を作ったんですけれども、その中でやはり、 これだけではないんですけれども、生涯を通じた健康手帳みたいなことをすごい言われ ているんです。健康増進法の中でそういうふうにうたっていますので、ほどなく国が試 案を示したら区の方もなどというふうにことで、逃げ口上の答弁をしているんですけれ ども、予防接種の方もやはり生涯を通じてきちんと持っているということは、やはり非 常に大事なことだろうなというふうに思いますので、こういうふうなものがきちんとで きてきたら、うちの方も是非取り組みたいというふうに思っております。 ○加藤座長  ありがとうございます。ほかに御意見はございますか。  では、雪下先生どうぞ。 ○雪下委員  先ほどもちょっと申し上げたと思うんですが、母子手帳の改正のときにこれを入れる かと。それで、切れ目を入れて母子手帳自身をずっと大人になるまで持つわけにもいか ないということで、それを切り離して使えるようにしたらどうかというようなことが具 体的に出たと思うんですけれども、そのときにもやはりプライバシーの問題というの で、それはだめなのではないかというようなことになったと思うんです。  だから、その辺さえクリアーされれば、先ほどの茨城の先生が母子手帳に挟んでと言 われました。母子手帳に入れられれば、割合に簡単に済むのかなというふうに思いま す。それで、それをずっと持っていただいて、就学時健診にもそれを出していただいて チェックし、学校に入ってからも参考にできるというようなことになれば、更に既往歴 まで入れられれば一番いいかなという感じがするわけです。  その辺をちょっとクリアーにできないかなということで、今年の予防接種週間に今ま での予防接種をしたかどうかを簡単にチェックできるカードをつくらせていただきまし た。それにはわざわざ名前を入れませんでした。個人で自分で名前を入れて保存する人 は保存してほしいということで、名前を入れる場所をなくしてそれを記載してもらい、 予防接種週間に利用してもらうことにいたしました。御活用いただければと思います。 ○加藤座長  ありがとうございます。  松永さん、どうぞ。 ○松永参考人  これはまたごちゃごちゃになってしまうかもしれませんけれども、もう既にどこかで 討議されているのかもしれませんけれども、母子手帳という名前が悪くて、私は大人の 方にも必ず母子手帳を持ってきてくださいと。例えば、大人の方で風疹が心配だとか妊 娠する予定があるとか、いろんな方で大人の方に、私は内科も少しやっているので、風 疹やったり水ぼうそうをやったりしているんですけれども、みんな母子手帳は、あれは もう小学校入学と同時に要らないんじゃないですかと言うんですね。名前が悪いと思う んです。そのことを御検討いただきたいと思います。  それから、スライドで出しました東ドイツの時代の、あれはワクチン歴しか書いてあ りません。それで接種医の氏名等をやったときに書きます。インプスインスペクトワー クといって、予防注射査察官というんでしょうか、そのサインが最後にあるんです。で すから、二重チェックになっております。  そういった制度とか、茨城県の動きはとてもよろしいと思うんですが、やはりみんな があれをもう少し大事にするような、受益者側も大事にするような、それから医療側も 大事にするようなシステムというのも必要かなと思いました。 ○加藤座長  藤岡先生、どうぞ。 ○藤岡参考人  2番と関係するんですけれども、接種歴の確認及び勧奨というときに、健診の場合だ けではなくて、やはりかかりつけ医が普段の診療の中できちんと診て勧奨をするという ことがすごく大事になってくるんです。  その場合、母子健康手帳を受診時に必ず持ってきていただくわけですけれども、そう なると小学校に入ると、母子健康手帳は普段使いません。ですから、予防接種手帳とい うのを分冊化して、それを必ず保険証とともに受診時には持ってくるというような形 で、日本医師会や厚生労働省も勧奨していただきたいと思います。 ○加藤座長  御承知のように、世間の方々は一言で厚生労働省というと、みんな一つきりしかない とばかり思っているんですけれども、厚生労働省も非常にいろんな厚生労働省が中には ありまして、これは結核感染症課が母子手帳をつくっているのは、今ここで一発で決ま ってしまう話なんですけれども、そうはいかないところが、厚生労働省の難しいところ で苦労していると。  11年に決めたことがいまだに決まらないのは、多分その辺のところにも事情があるの ではなかろうかと思いますが、森内先生は外国歴が長いのですが、米国ではどのような 形でしたか。 ○森内参考人  アメリカに8年間いたんですけれども、1つの州にいただけで、なおかつ予防接種の 仕事をしたわけではありませんので、あくまでも全体を見回せているわけではございま せん。  アメリカも州によって随分方策が違うので、全般化していこうということは難しいか と思いますが、今日は私も、それからほかの方もご紹介しましたように、アメリカでは 幼稚園に入るときから、もう接種義務のあるものについてのチェックが行われますの で、そういったことを介して、実際上の今までの予防接種歴の確認というものは、その 都度その都度、くぎりくぎりで確実なものが行われているということで、いわゆる母子 手帳に相当するものはないんですけれども、そういう予防接種レコードとしては、かか りつけの開業の先生の方で用意されているようなものとかでも大体済ませるところが多 分多いだろうと思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。  牛尾課長にちょっとお聞きしますが、母子手帳は母子手帳として、その中に先ほども 出ましたが、中に予防接種の記録がありますが、それとはまた別に予防接種記録票とい うような、先ほど出たモデルのようなものを結核感染症課が用意するということは、同 じ厚生労働省の中では難しい宿題でしょうか。 ○結核感染症課長  主管課の母子保健課と協議しなければ、母子保健法に基づく施行規則でこういった様 式で定めていますので、私の一存でいく話ではないというふうに思います。 ○加藤座長  なかなか難しいんだというとで、そうすると自治体に感染症課が要求するということ は難しいということですね。 ○結核感染症課長  それは、今日、荒木委員に御紹介いただきましたように、自治体がその気で取り組め ば、こういう方式も可能でありますし、今、平成10年からやられた方法で、別に国が法 律違反だといって茨城県をとっちめているわけでもないですが、自治体の工夫によって こういう方法もあるんだということを、今日、荒木参考人はお示ししていただいたので はないかと思っています。 ○加藤座長  という方法があるんだよということを結核感染症課が実際にニュースとして流すとい うことは可能ですか。 ○結核感染症課長  可能です。 ○加藤座長  どうぞ。 ○竹本委員  川崎市では日本脳炎の2期、3期も、DPTのDTの2期も全部母子手帳に空欄をつ くりまして、予防接種欄ももう少し2ページか3ページ多くして、今、インフルエンザ が多いですから、すぐになくなってしまうので、そういうような形にしました。  というのは、今まで予防接種と母子手帳は2冊になっていた都道府県は非常に多かっ たと思うんですけれども、最近1冊化してきて、予防接種のはなくしてしまうとか、そ ういうことが多かったので、だんだん1冊化になってきたのではないかと思います。  それから、今、アメリカの大学に行く子どもたちがほとんど予防接種歴を書けという ことが言われてきますので、ばらばらになっていると接種歴がわからないので、母子手 帳1冊になっていればいいのではないかなと、当市ではそういう考えで変えてみまし た。 ○加藤座長  ありがとうございました。  それでは、先ほど牛尾課長からそういうメッセージは自治体に流すことができるとい うことですので、そういう機会がありましたらば流していただくと。  どうぞ。 ○井上参考人  今の母子手帳、予防接種手帳もそうなんですけれども、一般のお母さんたちは、ちょ っとスタンプラリー感覚といったら変なんですけれども、とにかく判こをもらうことを 重視して、子どもが少々体調が悪くても今日しか行けないから行ってしまおうとか、そ ういったのも見聞きするんです。  それで、やはり副反応の話ですとか、なるべく体調のいいときに受けましょうと良識 のある先生は言ってくださると思うんですけれども、かかりつけで受けられなかった場 合ですとか、そういったことも想定されます。母子手帳であれ予防接種手帳であれ、そ ういったことも同時に広報していただきたいです。それと、さっきから医療従事者の話 もあったんですけれども、勧奨の定義をもう一回確認させてください。いろんな情報を 聞いて親が判断するときに、接種をしないという判断は勧奨という定義の中に認められ ているのかどうか。そこを教えていただきたいと思います。 ○加藤座長  では私の方から、これは平成6年に法改正が行われまして、当時の義務接種という形 から努力義務接種という形に変わりました。言葉で言うと努力義務。努力義務というこ とは、もう少し言いますと、接種を受ける対象者は予防接種を受けるように努力しなけ ればいけないという文言です。平成6年前までは、予防接種の対象者となるものは予防 接種を受けなければならない。  したがって、先ほども出ましたけれども、実際には行われませんでしたけれども、受 けなければならないといった時代には、もし受けなければ税金を払わなかったことと同 じで罰則が付いたと。厳しく言えばですが、実際には行われていませんけれども、そう いうことですので、裏を返せば、お母様方がどうしても受けたくない方に対しては、こ れは絶対に受けろということではございません。  しかし、そこで先ほど蒲生委員もおっしゃったように、きちんと接種する側が病気と いうものの説明をし、そして、予防接種の安全性、またその裏腹である予防接種に必ず 伴うであろう重い、軽いは別としての副反応、またはその程度、頻度、そういうことも 説明した上で、お母様にどういたしますかという形で問うというのが現在のやり方で す。  そのように非常に複雑なやりとりをしながら、予診票をつくり上げて、予防接種を行 うということが現在のやり方ですので、それを勧奨という言葉で変えてございます。 ○井上参考人  御説明ありがとうございます。こういった上位計画というか、上の方の立場の方は、 そういった形で議論されていても、実際に私が触れる保健所の方ですとか接種医さんで すとか、もう強制だからという言葉も出てこないとも限らないんです。ですので、そう いった情報もちょっと次のコミュニケーションにもつながるかと思うんですけれども、 その辺の話に関しても、こういった議論がせっかくされているので、実際のユーザーと 近い立場の方にも、そういった情報を提供していただきたいと思います。 ○加藤座長  ありがとうございます。  それでは、今のがちょうどいいきっかけですので、5番目と6番目に移りましょう。 「ユーザーとのコミュニケーションの改善について」ということで、どうもコミュニケ ーションがうまくいっていないのではないかと。蒲生委員も同じ御意見でした。そうい う御意見がございましたので、このことについて少しディスカッションしていただきた いと思いますが、それに考え合わせまして、先ほど古賀委員から出ました救済制度のこ ともここに絡めてお話しをしていただいて結構でございます。御意見をいただきたいと 思います。  森内先生、どうぞ。 ○森内参考人  5番と、松永先生もずっと言われております7番にちょっと関わるんですけれども、 ユーザーとのコミュニケーションは確かに悪いと思います。これもサービス業というの は、悪い例えですけれども、別に行列のできるラーメン屋ではありませんで、こちらが いいと思ったらいいんだというのでなくて、相手が答えを出すわけで、相手がラーメン おいしいと言ってくれたらOKですので、私たちが幾ら説明しているつもりでも、相手 がそう思っていなかったらよくないわけで、そうではない事実は今日まじまじと出して いただきましたので、これは考え直す必要があると思います。  ただ、それをするのに、ただ頑張りましょうねと言っても、うまくいかないのは学校 で教師というものをやっている立場上よくわかりまして、目に見える形で何かしないと 絶対にそれは頑張らないわけですから、その一つのやり方として、認定医であれ専門医 であれ、どういう名称でもいいんですけれども、予防接種をするからには予防接種を十 分理解し、必要に応じて十分な説明ができると。そして、何かあったときにでもすぐに 対応ができて、救済措置とかでもいろんな事務手続にぱっと取りかかれるという人たち の認定をし、それをちゃんと出す形によって、勿論そうではなくても予防接種は受けら れるでしょうけれども、あそこの病院は大丈夫だということで安心して受けられるよう な、そういう道筋をつくればよろしいだろうと思います。  ですので、非常に医師会を初め、多くの反対があるかと思うんですが、何らかのそう いう予防接種をするのにふさわしい人であるというランクづけをしないといけなかと、 私は思う。 ○加藤座長  雪下先生、どうぞ。 ○雪下委員  私は、今、言われた予防接種をするのに予防接種の認定医をつくるという必要がある のか大変疑問に思います。医師であれば当然何科の医師でもできなくてはいけない基本 的な問題で、現在でも多くの医師により実施されています。ただ、医師がそれを安全に できるだけの十分な研修は必要だとは思っています。  それよりも一番大事なことは、先ほど藤岡先生が言われたと思いますけれども、やは り信頼できるかかりつけ医をどうしてもつくってもらうということが先決だと思うんで す。それで、もし、そういう患者さんと医師との人間関係ができていれば、その先生が おのずと判断されるわけで、自信を持って予防接種できなければ、その専門の先生に紹 介してくださるとかいう方法を取ってくれるし、ただ、形の上だけで、予防接種の専門 医を作っただけでは、解決にはならないだろうというふうに思っているんです。  このコミュニケーションの一番大事なことは、やはりまずかかりつけ医をつくっても らう。そんな簡単にかかりつけ医ができるかと、いつか蒲生さんが言われたことがあり ますけれども、それはスーパーでは1円でも安いところをみんなで研究しておられるわ けですから、医師もいろいろ情報を取って、医療側からどうぞというわけにはいきませ んから、十分検討され、かかりつけ医を決められることが大切だと思います。  それと相性もやはりありますかね。初めは1、2度変わるのは仕方がないかもしませ ん。だから、そうやって信頼できるかかりつけ医をつくるということかがすべてを解決 するだろうと、私は思っております。 ○加藤座長  では、ちょっと岡部先生お待ちいただいて、蒲生先生どうぞ。 ○蒲生委員  雪下先生がおっしゃることは本当にもっともで、本当に信頼できるかかりつけ医の先 生に会えさえすれば、いろいろな問題は解決するのだろうと思います。  ただ、選べない状況にいるお母さんたちもたくさんいるということ。小さな村や町に 行けば、小児科医の先生がいらっしゃらないという地域もありますし、選べる人はいい ですねという声もたくさんあります。やはり大きな町、大きな都市に住んでいれば、選 ぶことも口コミもありますけれども、そうではない地域もあるので、というか、そちら の方が多分多いので、その辺りのことをどうするのか。  やはり、先生方お一人お一人にかかってしまう、その負担をどうするのかということ もあると思います。小児科医の先生に何もかも予防接種の説明もちゃんと30分以上取り なさいみたいなことをして本当に診療がうまくいくのか。それだけ先生はやっていらっ しゃるわけではありませんので、その辺の日本の制度というものがどうなっているのか というのが、私はとても疑問に思いますし、だからこそ行政がちゃんと先生に代わるよ うな冊子なり説明なり窓口なりをつくっていただければ、先生の御負担も本当のところ だけで済む。大まかなところはお母さんはもうわかってから、先生に御相談できるよう な制度を是非国としてつくっていただきたい。  雪下先生の御意見は本当にもっともで、そうであってほしい、本当にかかりつけ医を 見つけてほしいと私たちも願っていますけれども、そうもいかない現実はあります。  以上です。 ○加藤座長  ありがとうございます。では、岡部先生、どうぞ。 ○岡部委員  私はもともと小児科医なので、もし小児科の中で予防接種の専門医ができたら、それ は理想的ではあると思うんですけれども、かつて、例えば予防接種、学校医、あるいは 小児医療はすべて小児科医がやるべきだという議論はいっぱいあったわけですけれど も、現実にはそれでは全部できないんです。  そうすると、恐らく特定の小児科医が当直をやり予防接種をやり健診をやって、なお かつ重症者の診療をやる。これはとても難しく、特定の人に負担が集中してしまうの で、余りその資格ということには、私はこだわらない方がいいだろうと思います。  ただし、予防接種をやるような担当の先生方はいろんな地区でやられているようです けれども、一定期間の研修は是非受けていただきたい。例えば、年に1回とか2回とか の研修を受けて、その研修を受けた方は、例えば医師会で予防接種をやる科として標榜 ができるとか、そういう制度の方が私は実際的ではないかなと思っております。 ○加藤座長  今日御出席の皆さんは十分御承知だと思いますが、念のためにお話しをしておきます と、予防接種の今の実際のやり方は、定期接種と決めたものに関しては、日本医師会に 多くはゆだねておりまして、日本医師会の方で各地域地域で予防接種を自分で積極的に 接種する方に挙手していただいて、市長が医師会に依頼し、医師会から各医師に依頼す るという形を取っております。  したがって、予防接種医であるという標識が張ってあるところと張っていないところ があるかもしれませんが、少なくとも自分のところで予防接種をやっておりますという 先生は自己の意思表示でもってやっているはずなんでございます。集団接種を除いてで す。  ただし、私の経験から言うと、ここにおられる先生はいろんなところで御講演をされ ていると思いますけれども、その講演会場に来てくださる方は、もうよく御存じな方が 来るんです。最新の情報を知りたくて皆さんが見える。私でも岡部先生でもそうなんで しょうが、実際にお話ししたい方は、来ていない方にしたいんです。  来ていない方は、来いというわけにはいかないので、そこで雪下先生にちょっとお願 いがありまして、先ほどの7番の松永先生の認定医とか指導医というのは、私も無理だ と考えていますが、医師会の中で少なくともそういう一定のできるところは、全国は無 理だと思いますが、そういうところには、日本医師会ですと、生涯教育シールというよ うなものも張ったりするシステムがございますが、そういうようなシステムを何か導入 できるところから導入していただいて、広くかかりつけ医の先生方が予防接種に対する 最新の知識をいつも得られるというような方式を取っていただけると、蒲生委員がお話 しになったような不安が少しは解けるのではないかと思うのですが、いかがでございま しょうか。 ○雪下委員  今、加藤委員長が言われたように、実際は市との契約でもって医師会が予防接種をす るということで、契約を結んでやらせていただいているわけです。これは必ずしも小児 科の先生だけではないんです。確かに蒲生委員が言われるように、小児科の先生1人か 2人で、あとは内科の先生とか、そういう場合もありますけれども、しかし、予防接種 については、その登録された医師が年に何回かでも講習会を開いて、接種部位から具体 的なところまで、医師を30年もやっておられる先生方にもそういう話をしておるんで す。しかし、委員長が言われたように、本当にたまたま間違いを起こすような先生はそ のような会に出て来られないというようなことがあるんです。私たちはそこまで強制す るわけにもいきませんし、だから当然知っておられるのかということで、見逃している わけですが、でもそのほかの出版物等でもっても十分情報は提供しておるつもりなんで す。  だから、今、法定予防接種については、そんな特別の認定医を決めなくたって、私は 登録しておられる先生方には十分やっていただけていると思っております。勿論、現実 には事故が起こってきて頭を痛めているんですが、これは例外的なもので今後はそうい うことは絶対にないように、これから医師会としても努力していこうと思っておりま す。その辺は何とか信用してください。一般的には予防接種をやりますと手を挙げてい る先生方は、余りそういう間違いを起こさないと信用していただいていいと思います。 ○加藤座長  では、細矢先生から順番に。 ○細矢参考人  福島県の話ばかりして申し訳ないんですけれども、かかりつけ医というのは小児科の 先生に診てもらいたいということで、20キロも30キロも離れたところに皆さん行くんで す。ところが、地域の垣根があって、予防接種になると、どうしても地域の内科の先生 にお願いしなくてはいけないという地域が福島県内に結構たくさんあるんです。  やはり、どこでも受けられる信頼のできる先生で、いつでも受けられるようなシステ ムに変えていただけないかなと。それが一番予防接種する人を消費者が選ぶというふう な形になっていって、知識もレベルも上がっていく第一歩ではないかと思います。 ○加藤座長  ちょっと整理させていただくと、今、細矢先生の御意見は、小児科医としてのかかり つけ医ではなくても、予防接種を接種していただける先生が近隣にいたならば、そこで やってよろしいのではないかと、こういうことですか。 ○細矢参考人  いえ、そうではなくて、地域の中で、市町村の町や村には内科の先生が1人しかいな い。予防接種は常にそこで受けてくださいというようなことを言われるわけです。  ただ、病気になったときは常に、もっと遠くても小児科の先生に診てもらっているわ けです。そちらで接種を受けたいといっても、接種権の垣根があって受けられないとい うことがありますので、どこでも受けられる、そういうシステムに変えていただきたい ということです。 ○加藤座長  また違う問題が生じてまいりましたが、森内先生、お手が挙がりました。 ○森内参考人  私自身提案したのも、実際上は松永先生のお言葉を受けて、そのまま専門医という言 葉を使いましたけれども、実際上は岡部先生、加藤先生が言われたものに大体近いニュ アンスでしていただきたいなというふうに思っています。  というのも、母子手帳とかで、それこそスタンプを一生懸命ぽんぽん、3種混合1個 目、2個目、3個目とやっているんですから、私たち予防接種をする側も毎年の講習を 受けたかどうかスタンプをちゃんと押したのを開業するところの壁に張るべきだという ことです。  例えば、アメリカでは歯医者に行っても、かならず目に見えるところで救急甦生の講 習を毎年受けているのをぽんと判こが押してあるのがあるんです。歯医者に行って局所 麻酔で突然ショックを起こして命を失うということはあるわけですから、現場ですぐに 救急甦生ができないといけないわけです。だから、それを出していないところは勿論続 けられないわけですけれども、当然それを示すという義務があるわけです。  予防接種自体もいつショックが起こるかわからないわけです。勿論、予防接種をきら われるお母さんとして、抗生剤を絶対に出すまで帰らない方がおられますけれども、抗 生剤の方がよっぽどショックが起こっているんですが、私たちが何をするにしても常に 何が起こるかわからないわけですから、そういうふうな訓練をちゃんと積んでいるんだ と。予防接種のことについても、十分な知識、最新のことも知っているという証明を、 そのスタンプを見せることによって示すということぐらいはしてほしいなと切に希望い たします。 ○加藤座長  よくお気持ちはわかるんですけれども、雪下先生の代弁をすれば、そこのところは日 本医師会はきちんと指導しておるので、担当理事が任せろとお話しになっておられるの で、ここのところは、ひとつ日本医師会の顔を立てるわけではありませんが、日本医師 会の今後のさらなる努力を期待しまして、シールを張るところまではちょっと無理かな と。  どうしましょうか。では、遠い順番から。 ○稲福参考人  今のことで、コミュニケーションの改善ということが医師だけに集中していますけれ ども、これはほかの分野、保健師さん、その他のものの研修とかも必要だと思うんで す。ですから、そのことも今後検討していただきたいと思います。 ○加藤座長  手短に、時間がだんだんなくなってきましたので、少しずつお願いします。 ○古賀参考人  コミュニケーションということで、どうしてもお話をさせていただきたいと思ってい るんですけれども、かかりつけ医というのは非常に重要な存在で、細矢先生のお話は本 当にそのとおりだと思います。  ただ、地域によっては、そのかかりつけ医ができないということがまさに問題であっ て、小児科医をもっと増やす工夫というのを、小児科医の方ははっきり言って制度的に 恵まれていないですね。そういう工夫をまず政策として打ち出して、子どもを大切に育 てるということは必要だと思います。  それから、かかりつけ医の問題で一言だけ申し上げたいのは、以前そのMMR接種の ときに、はしかのワクチンを接種に行ったんですけれども、かかりつけ医の勧めでMM Rを打って被害に遭ったという事例がございます。ですから、そのかかりつけ医との信 頼関係というのは勿論必要なんですが、被害に遭った場合は、又そのかかりつけ医にか からなければいけないわけですね。そうすると、被害者の方というのは非常につらい立 場に置かれるわけでして、そういった意味ではかかりつけ医とのコミュニケーションと いうのは勿論全体としては大切なことなんですけれども、その前にワクチン自体の安全 性ですとか、それを大元できちんとする体制というのを整えていただきたいと思いま す。 ○加藤座長  ワクチンの安全性については、一番最後の研究開発のところで話題に触れさせていた だきたいと思いますけれども、井上さん、手が挙がりましたね。 ○井上参考人  国が果たす役割・課題ということで、予防接種事業に従事する者の研修の実施等必要 な措置を講ずるものとするとありますけれども、今、お話しになっていたのは、それに 対して、日本医師会さんの方に委託されているケースが多いという御説明でいいでしょ うか。 ○加藤座長  予防接種を実際にやる場合ですか。 ○井上参考人  はい。予防接種法第19条。 ○加藤座長  予防接種法というのは、国が各市町村長に依頼を出しまして、各市町村長が予防接種 を行うと。 ○井上参考人  予防接種の研修です。研修の実施等必要な措置を講ずるものとするというのは、今は どういったことが具体的にされているのかということです。研修だけなんでしょうか、 ほかにはないんでしょうか。 ○加藤座長  わかりました。では、雪下先生、それについてお願いします。 ○雪下委員  勿論、研修もやっておりますけれども、それは郡市の医師会でもやっているし県の医 師会でもやっているし、日本医師会でもやっておるわけですけれども・・・。その他通 知や出版物による指示も、その都度実施周知徹底を図っております。 ○井上参考人  先ほどお話があった、その意識の高い先生が出てきて、そうでない先生に実は言いた いというお話がありましたけれども、ちょっとどうしてもお聞きしておきたいのが、森 内先生のお話にもありました、成人のはしかが増加して、成人は健康であっても重症化 しやすいですとか、さっきの医療従事者の話なんですけれども、今、若い先生のおたふ くかぜとか、水ぼうそうとか、はしかとか、これというのは昔にかかられていない先生 で、予防接種はされていたかもしれないんですけれども、もしくはされていなかったの かとか、そういうサーベイランスがされているのかとか、そういったことは研修の中で 先生たちは興味を持たれていないのかなと。  というのは、私はただの素人なんですけれども、68ページに資料を出させていただい た、はしかの撲滅はできるのかというところで、この検討会でも100 %から80%に減少 してしまうというようなお話があって、そういったことにそもそも長期的なビジョンが なく、とにかく、では1回ではだめだから2回やりましょうと。では、2回がだめだっ たらどうするんだろうとかというアメリカの例とかもあるわけですね。  その辺の長期的な展望に立った質問とか、そういう先生方というのはいらっしゃらな いのかなというのが素朴な疑問なんです。何かそういった長期的な視点に立って、親の 疑問もフォローしてくださるような、そういった研修内容に現在なっているのかという 疑問があります。済みません、よろしくお願いします。 ○加藤座長  どなたかお答えになりますか。  前半の方は大学等で医者等が病気になった、はしか、水ぼうそう等になった場合に、 彼らは昔は病気をしていなかったことは確実だけれども、彼らがワクチンをやっていた か、やっていなかったかということを調べていますかということですね。  私個人の大学では、もうかかっている方は全員ワクチンはやっておりません。それか ら、はしかにしても風疹にいたしましても、日本で行われるようになりましたのは、 1977年からですから、まだかなり歴史が浅いんです。ですから、25ぐらいから上の方々 は病気にかかっていない場合には、ワクチンはやっていない方です。ですから、そうい うことをまず頭に入れておいてください。  例えば、30歳の方がはしかになった場合には、ワクチンをやっているわけがなくて、 風疹をやっているわけでもないということです。 ○井上参考人  実際に私は、はしかの予防接種やっています。今も抗体があります。それはきっとブ ースターのお陰なのではないかなと。第2回の予防接種検討会で・・・。 ○加藤座長  わかりました。それは後段の方の質問ですね。後段の方の質問については、第7回ま での討論会で議論をし尽くしまして、中間報告に載せてございますので、本日は議論を しないことにしたいと思います。  どうぞ。 ○竹本委員  予防接種事業の安全性をより強化する制度ですけれども、私は川崎市なんですけれど も、川崎市は130 万人の人口があって、小児科医会を含めて、大学の先生も含めて、 130 人ぐらいしかいないんです。ですから、認定医をつくるとかいっても絶対に無理だ と思うんです。  事前の策として、川崎市医師会では、開業して予防接種をしたいといった先生に対し ては、その先生あるいは従業員も含めてですけれども、必ず呼び出して予防接種につい ての説明会を担当理事からしまして、それに出てこないと予防接種の認可はしないこと になっております。  もう一つ、川崎市は個別化が早かったものですから、今、使っているワクチンは同一 ワクチンを使っておりますので、予防接種の問診票で書かれてきたロットナンバーとか 期限は行政の方で全部チェックして、期限切れを打ったとか予防接種の内容が違ったと いうのは全部医師会の方に上がってきまして、医師会の方からその先生に、ワクチンが 違うのではないかとか、期限は切れていなかったんですかと、それに対して、その先生 からの返事を全部受け取っております。それで、間違って打ったときには、先生の責任 でちゃんと患者さんを呼び出して打ち直してくださいというところまでやっておりま す。  それから、講演会ですけれども、乳幼児健診、予防接種ともにですけれども、年に2 回講演会をやって、そのどちらかに聞きに来ない医師に対しては、翌年度の接種あるい は乳幼児健診ができる資格がなくなるということですので、その予防接種する先生、あ るいは乳幼児健診の先生は、必ずどちらかに出てきております。  もう一つは、県の方の医師会でも、こういう予防接種の講演会がありますので、県の 方に行ってもそれは構わないことになっています。  ですから、今、相互乗り入れは非常に言われておりますけれども、川崎市の場合に は、まずその安全性ということを重視して、地元できちんとやってもらいたいというこ とを取り入れております。以上です。 ○加藤座長  あと、それからユーザーとのコミュニケーションのところで何度も出てまいりました が、予防接種と子どもの健康というパンフレットが、単純過ぎと言いますか、わかりに くいというか、そういう御意見が何回か出ました。しかし、これも平成6年までのいわ ゆる義務接種をやっていた時代は、こういうものすらなかったんです。  ただ、接種するから来いと。それで片っ端から集団でも何でもいいから、どんどんや ったと。そういう時代と現在をちょっと比較してみていただいて、一発で理想的なもの が出てくるということはなかなか難しいと思いますので、徐々に直ってきている。別に 国の味方をするわけではないですが、国の方は徐々にそういう方向で歩みつつありま す。  今回つくられた予防接種と子どもの健康、これも私の責任でもって新しく改善いたし ましたけれども、これもなるべくわかりやすい、少なくとも、先ほど牛尾課長がお書き になったこれよりも易しく書いたのではないかというつもりで私自身はおるんですけれ ども、それでも蒲生委員が多分おっしゃったと思いますけれども、それは世の中、こう 言ったら大変失礼ですけれども、わかりにくい方と1行読めばすぐにわかる方と程度が ありますので、どこの程度に合わせていたといいかというのは、私どもには非常にわか りにくいところです。  したがって、これをつくったときにも、素人と言ってはいけないけれども、そういう 関係の方々の御意見もお聞きしながらおつくりしたわけで、徐々にわかりやすいものに なっていくのではなかろうかなと。  また、副反応のことにつきましても、少し気にかけまして、ガイドイランのコピーで はないかというのがスライドで出ましたけれども、まさにガイドラインの数字とぴった り合わせたんです。前の冊子は副反応の比率とかそういうものが、ガイドラインの数字 と合っていなかったんです。それをすべて共通に合わせたという努力も中にはしてござ いますので、またどうぞ御忌憚のない意見を言っていただければ、リニューアルしてわ かりやすいものがつくられることは間違いないと思いますので、どうぞ御忌憚のないと ころで御意見をいただきたいと思いますが、時間ももうなくなってきましたので、先ほ ど話題に出ましたので救済制度の話に少し入りたいと思います。  救済制度と予防接種後の副反応報告書の義務づけ、このことについて古賀参考人の方 から御意見が出ました。一言だけ御説明しておきますと、この予防接種後副反応報告と 言いますのは、予防接種をした後で、予防接種が原因で何らかの症状が起きた人を登録 するというシステムではありません。要するに、予防接種をした後で何日以内にどうい う症状、ある程度定められた症状が出た人は報告してくださいと。  先ほど、医者とか保健所でないと報告できないというお話しがありましたが、そうで はございませんで、これは保護者であっても学校の先生であっても、だれが報告しても いい制度になっております。それが行き渡っていない可能性がありますが、だれが報告 してもよいことになっています。ダブって報告されても厚生労働省の方がチェックし て、ダブらないようなシステムを取ってございます。  このシステムを強化していただきたいという御意見はよくわかるんですけれども、こ れはこういう事例が実際にはあるんです。日本脳炎の予防接種をしましたと。その方が たまたま予防接種をして1週間以内に脳炎にかかってしまったと。そうすると、今日は 多分見えていないと思うので言いますが、マスコミは日本脳炎ワクチンを接種して脳炎 と、一番最初に新聞記事に本当に出てしまったと。  それから、DPT、3種混合ワクチンを接種した後で、細菌性髄膜炎という病気があ るんですけれども、このシステムができた平成7年のときに、それで死亡した例が1例 出たと。そういたしましたら、マスコミは3種混合ワクチンを接種した後、細菌性髄膜 炎で死亡という記事が出たんです。  そういうように、この副反応報告制度というのは、予防接種と実際には因果関係があ るかないかは全く別にして、予防接種をした場合にある一定の間隔で、ある一定の症状 が出た人に対しては報告をしていただきたいというシステムでつくられている、そうい うシステムで、これは宮崎先生の方が詳しいので、ちょっと一言お願いします。 ○宮崎委員  平成6年の改正のときに、2つ考えられたんです。MMRの反省もやはりあったわけ です。つまり何か起こった後で調査を開始すると、どうしても後ろ向き調査になるの で、常に予防接種で何が今起こっているかを把握したいということで、そのときに2つ 考えたのは、1つは通常起こり得る副反応はいつも取り上げたい。しかし、それは全数 把握は難しいので定点を決めてやっていただく。  これは実際に、ここ10年間でもワクチンメーカーがワクチンをかなり改良し、その結 果がきれいにデータに出ているものが幾つかあります。例えば、即時型のアレルギーが 非常に減ったものがあって、やはりそういうワクチン改良と臨床反応がきれいに見えた ということで、これからも続けていただきたいと思います。  一方で、まれに起こるものというのは本当に数十万とか数百万に一件とかなので、こ れはなかなか難しい。  もう一つ難しいのは、因果関係です。余り因果関係云々で最初から絞り込んでも見落 とすだろうし、しかし、報告されたものがすべて因果関係があると思われても困る。非 常にここの難しいところがあって、今、加藤先生が言われたように、報告は少し広くと らえてしていただいて、後で因果関係を追及していくというふうになったという経緯が あります。これはアメリカで行われたものを少しまねしたところもあります。 ○加藤座長  ということが現状でございまして、そのことと、また救済制度というものとも関連し てくるわけでございますが、迅速な救済制度は、これは迅速にやらなければいけないこ とになっておりますので、迅速にしてこない場合には、各地方自治体が少し遅れを取っ ているということだけでして、早く中央の厚生労働省に上がってくれば、そこで審議が 必ずなされるというシステムになっておりますので、もしそれが遅滞しているとすれ ば、その事例が起きたところで遅滞しているだけの話でありますので、それはやはり厚 生労働省としても各地方自治体に指導すべきではなかろうかと考えております。  先ほど出ました健康被害を迅速に救済していただきたいということで、疑いがある者 にはとりあえず救済したらどうかという御意見が出ましたけれども、また私だけがしゃ べっていて大変恐縮ですけれども、予防接種というものは必ず健康被害または副反応が 重いかもしれないし軽いかもしれないけれども、起きることはある程度致し方がないこ とだということをまず前提に置くべきではなかろうかというのが私の意見なんですけれ ども、そのときに現在の救済制度というのは、先ほどからお話しになっている疑いの方 々がほとんど救済されているというのが現状でございます。  今、明らかに予防接種で因果関係が完全にはっきりしておりますよというのは、過去 の経験、平成の中に入ってからですと、MMRワクチンのおたふくかぜワクチン、BC Gにおいて、腋下に潰瘍をつくりまして、その腋下の潰瘍をDNA診断で見たところ、 ウシ型の結核菌が見つかりましたと。こういう明らかな因果関係があると、こういう場 合はもう明らかな因果関係でございまして、そのほかのものは、そうでないとは言えな いし、そうだとも言えないというものが大多数を占めるのが現状でございます。  しかし、今の日本の方針としては因果関係が絶対にないんだと、違うんだというもの 以外は、少なくとも上がってこないです。それは地方自治体でもって委員会を開いたも のが上に上がってくるわけですから、上に上がってきたものを却下するということはほ とんどないのではないかと思っておりますけれども。  どうぞ。 ○稲福参考人  加藤座長の方は、遅滞なくやられているのではないかというふうなことですけれど も、実際の現場の感覚からいたしますと、やはりずれがあると思われます。  そういうことで、この問題は、先生方が、例えば勧奨の強化ともつながりますけれど も、合併症を持った子ども、これは将来検討していただきたいんですけれども、先ほど だれかがお話ししましたけれども、合併症を持った子への予防接種の勧奨。その際の接 種医の責任負担の軽減とかいうところともつながってくるんです。  実際の現場の先生方は、もしもそういうことがあれば、問題に巻き込まれたくない。 だから、要するに引いてしまうんです。そういうふうなことでつながらないこともあり ます。  それから、8番の方にもつながりますけれども、都道府県への積極的な役割を求める ことについても、これさえしっかりしていれば、県として積極的にやっていきたいとい うことがあるんですけれども、これをしないで、今、都道府県がやっているから地方自 治体から上がってくるのが遅いんだとか、一歩引きながら地方自治体がやっていないの ではないかというふうなスタンスではなかなかできません。これは本当にすべて引き受 けるという心構えが必要だということです。 ○加藤座長  稲福先生がおっしゃっているとおりで、予防接種を市長に任せて、そして市長が医師 会に任せる上においては、医師会が引き受けるからには、先生がおっしゃったとおり、 何らかの形で予防接種による被害が起きたときに、その接種をした先生方の救済も行わ なければならないので、そこで迅速に救済をするべきであると、雪下先生、基本的なス タンスはこういう順番でよろしゅうございますね。  私がお話ししたのは、先生はちょっと誤解されているかもしれませんけれども、そう いう意味で各事象が起きた場合には、その起きたところの市町村で遅滞なく審議をし て、遅滞なく厚生労働省の方に上げていただければ、遅滞なく行うという話をしたかっ たわけでございます。先生と私との間に余り差異はないと考えています。  時間もございませんので、ちょっと研究開発の方に先に進めさせていただきます。安 心できるワクチンをという要望が非常に高く出ておりました。  岡参考人にお伺いいたしますけれども、ただいまのところ、日本では新しくつくられ たワクチン、先ほどもお話にあったと思いますけれども、簡単に認可されております か。 ○岡参考人  相当長い間、新しいワクチンというのは世の中に出てきておりません。 ○加藤座長  ということは、世の中に出てくるワクチンというのは、相当信頼性がないと出てこな いというふうに理解してよろしいんでしょうか。 ○岡参考人  それはたまたまGCPの基準が変わる前後で。 ○加藤座長  専門用語はやめてください。GCPという言葉自身がわからない方がおりますので。 ○岡参考人  臨床試験を行うための基準が、ある時期から非常に厳しくなりまして、それに適用す るような臨床試験の実施計画、あるいは実施内容というものが非常に高いものが求めら れるようになったというのが背景に1つございます。  過去開発をしていたときに、たまたまその時期を挟む開発のテーマについては、古い データが新しい基準に適合するかどうかということも含めて議論されるようになると、 相当途中から高いハードルを急に求められるようになるということで、開発が少し遅れ るというようなケースもございます。  それから、最近は新しい基準で開発を進めておりますけれど、従来から比べますと、 相当数の安全性並びに有効性を担保できるようなデータが求められるようになっており ますので、そういう意味では臨床試験の実施そのものが、以前に比べると相当難しくな ってきているということがございます。  先ほど、池松先生がおっしゃいましたけれども、臨床試験は一般薬と同じようなガイ ドラインで求められると、二重盲検試験というものが求められる。そのときに偽薬とい うワクチンを接種するようなボランティアが、果たして世の中にいるのかということが 非常に難しい。  ですから、開発するワクチンを接種されるボランティアの方は、それなりのメリット は出てくるかもわかりませんけれども、対象薬を接種される方にデメリットが生じない ような臨床試験の実施計画をつくるということも大変難しい問題だなと。  こういういろんな状況がございまして、なかなか思うように進まないというのが一つ の事例でございます。 ○加藤座長  わかりやすく言うと、かなり相当ハードルが高くなって、効果は当然のことなんです けれども、副反応等に関して、かなり厳重なチェックが入って、そのハードルを超えな い限りは認可されにくくなってきているという認識でよろしいんですか。  それとも、ただ単に手続が延びているだけですか。 ○岡参考人  両方かもわかりません。もう一つは、多分皆さん御存じだと思いますけれども、ワク チンの場合は微生物を原料としておりますので、一般的な合成薬と違って組成が非常に 複雑になっておりますので、組成を科学的に分析したデータを出せと言われても、それ はなかなか難しい面もございまして、そういうデータをどこまで準備できるかというこ とも、以前に比べるとかなりハードルが高くなっているという事実がございます。 ○加藤座長  開発に関して、何か御意見がある先生はいますか。  横田先生、どうぞ。 ○横田参考人  先ほど、海外での我が国のワクチンの市販状況みたいなものをお聞きしたんですけれ ども、日本という非常に限られた枠の中で、これだけたくさんの会社があって、パイの 奪い合いをやっているというのは市場原理に合わないのではないかという気がするんで す。  例えば、ワイスもそうですし、アドバンテスもそうですし、もう全世界の20〜30%の シェアを占めている国際的なワクチン会社があるわけですね。我が国のこういうワクチ ンの会社がなぜそういうことを目指さないのかというところが一番疑問なんですが。 ○加藤座長  この件に関しては、数年前に同じような、今度またどこかでそういう委員会ができる といううわさをちらりと聞きましたけれども、横田先生がお持ちになっているような疑 問をどうするかという会議が実は10回ほど開かれたことがございまして、意見だけ述べ てそのままになっておりましたが、そういう意見が広くあることは確かでございます。  そういうことで、安易に開発されてはいないと。出てくるからには、恐らく十分安心 して使えるワクチンではなかろうかというのが岡さんの意見だというふうに考えまし た。  限られた時間ですので、今日、もう一つ横田先生からACIPについて詳しく御説明 いただきまして、これは非常に大切な問題なのですけれども、これはもう簡潔明瞭なお 話でしたので、ディスカッションをせずに各委員、参考人の皆さん、または厚生労働省 の方々もおわかりいただいたと思いますので、今後十分な検討をしていただきたいと存 じます。  これを議論やっていますと、多分7時過ぎになりますので、そろそろこの辺で閉めさ せていただきたいと存じます。  本日の議論をいただきました内容は、非常に多岐でございましたので簡単にまとめる のは困難でございます。したがいまして、私、先ほども申し上げましたが、本日は座長 としてのトータルのコメント、まとめはいたしません。いたしませんというよりもでき ませんので御勘弁をいただきたいと思います。  ただし、この検討会はまだ続きますので、本日の皆様方の議論を踏まえまして、次回 以降また更に議論を進めていきたいと考えております。  最後になりましたが、牛尾課長から一言ごあいさつをいただきたいと思います。 ○結核感染症課長  本日は長時間にわたりまして、御審議をいただきましてありがとうございました。午 前中で既にいろいろな指摘を受けて、もうおなかがいっぱいになっておりましたが、午 後からもまたおなかがいっぱいになったような感がございます。  これまで既に検討された事項もあれば、少しずつでもあるが進歩している内容もある のではないかなと。今回の議論を踏まえまして、更に一歩でも前進したいというふうに 思っております。  次回以降のお話でございますが、実は今日はある参考人からも若干指摘がございまし たが、年間一千数百万人の方々が外国に行かれる今日におきまして、そういった海外で の健康問題というのは感染症には限りませんが、一つ大きな分野ではないかというふう に思っております。  とりわけ、日本人の渡航ということを考えますと、非常に短期間ですから、かかって くる疾病は慢性変性疾患よりは、やはり感染症が多いわけでございまして、防疫の観点 からもそういった海外渡航者、渡航される方々の健康問題に関する予防接種、これは予 防接種の中に位置づけるというのはなかなか難しいかもしれませんが、問題としてはあ ると思っておりますので、次回はそういった旅行医学、あるいはトラベラーズワクチン といったものについても一度問題提供をさせていただいて、御議論いただければと思っ ております。  なお、日程でございますが、これはまた座長、検討委員会の委員の皆様方と調整をさ せていただきますが、5月の連休明けぐらいを考えているところでございますので、ま た連絡させていただきたいと思っております。  私からは、以上でございます。 ○加藤座長  どうもありがとうございました。本日は本当に朝から今まで長い間、御議論をいただ きまして、誠にありがとうございました。これをもちまして、本日は終了させていただ きます。  どうもありがとうございました。                          照会先                          健康局結核感染症課予防接種係                          TEL:03-5253-1111内線(2385)