05/04/06 医師の需給に関する検討会第3回議事録             第3回 医師の需給に関する検討会                         日時 平成17年4月6日(水)                            15:00〜                         場所 厚生労働省省議室 ○矢崎座長  ただいまから、第3回「医師の需給に関する検討会」を開会いたします。大変お忙し いところをお集まりいただきましてありがとうございました。前回、事務局から提案の ありましたとおり、本日は関係各科の方々から話をお伺いすることになっております。 4名の方々に参考人として、本検討会にご出席をお願いいたしました。医師の需給につ いてご意見を伺い、現状の把握をさらに深めていきたいと考えています。事務局から、 参考人の方々のご紹介と、合わせて本日の委員の出欠状況についてお願いいたします。 ○医事課長  本日は、各委員の皆様方、また参考人の皆様、お忙しいところをお集まりいただきま して誠にありがとうございます。本日は、池田委員が欠席です。長谷川委員は若干遅れ てまいります。  今般、4月1日付で私ども人事異動がありました関係で、事務局にも交替がありまし たのでご紹介いたします。前任の井上に替わり、後任の医事課長補佐の中村です。  参考人をご紹介いたします。社団法人日本小児科学会理事の藤村正哲様です。社団法 人日本産科婦人科学会会長の藤井信吾様です。社団法人日本麻酔科学会理事長の武田純 三様です。有限責任中間法人日本救急医学会監事の島崎修次様です。 ○矢崎座長  本日は、大変お忙しいところをご出席いただきましてありがとうございます。本検討 会を代表いたしまして御礼申し上げます。最初に、事務局から資料の説明をお願いいた します。 ○中村補佐  資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、メンバー表、参考人の名簿。 参考人の方々から提出していただきました参考資料が、資料1から資料4までありま す。参考資料の後に、「地域における医師の確保等の推進について(提言)」という冊 子があります。参考資料2として、前回までの主な委員の意見の(案)を付けておりま す。委員の先生方には、今後のスケジュール調整の日程表を置いております。参考人の 方々からいただきました冊子、その他新聞なども置いております。 ○矢崎座長  本日参考人としてお越しいただいた、藤村先生、藤井先生、武田先生、島崎先生の順 に、それぞれのお立場からのご意見を15分を目処にお話いただき、その後に皆さんから 質疑応答をまとめて行います。参考人の先生方は、委員からいろいろ質疑があるかと存 じますが、自由にご意見をおっしゃっていただければと思います。藤村先生からお願い いたします。 ○藤村参考人  資料1に基づいて説明させていただきます。限られた時間ですので、説明不十分にな るかもしれませんが、資料で補っていただけたらありがたいと思います。  最初に15頁の結論のところから説明させていただきます。その後に、そのような結論 にどのような根拠があるのかを、時間のある限り説明させていただきます。  15頁D.結論。1.病院小児科医の長時間労働は早急に是正される必要がある。2. 女性医師の割合は急増して20代では40%に達した。その後、子育てによる休職が一般的 である。3.一部の大学小児科では急速な小児科志望者数の減少が認められる。4.一 般病院小児科の医師空席について、充足困難な状況が常態化しつつある。5.小児医療 環境の改善によって若手医師の志望者誘導を図らなければ、今後の労働条件の悪化によ る悪循環がさらに進行するおそれがある。6.小児医療提供体制の改革が焦眉の課題で ある。その基本方針は集約化である。それによって必要最小限の医師数増加で、提供す る医療内容の向上、医師労働条件の改善を図ることが期待できる。  7.改革と並行して着実な病院勤務小児科医の増加が必要である。1,000名の純増が 必要で、毎年各大学小児科に3割増の志願者(従来年間440名、3割は130名)に相当 し、これが10年続く必要がある。各大学で5名平均と仮定すると、2名の純増で7名の 志望者が必要であります。  8.少子化であるから小児科医の増員は不必要という主張には全く根拠がありませ ん。むしろ、時間外受診者などが激増し、その対応に破綻が生じてきています。以上 が、これから説明したい資料の結論です。  2頁に戻りましてA.現状です。概要を1番から10番まで挙げました。1番から4番 までは、患者の数や医療機関の数を書いていますが省略いたします。5番は、日本小児 科学会が昨年行った病院調査です。1.Primary careのみを必要とする患者の占める割 合が80%という病院が51.3%です。業務量の68%がプライマリケアに配分され、専門医 療を提供したいという意向にもかかわらず、二次医療や、専門医療の比率は低いという 現状です。  6番、小児救急は国民のニーズが特に高い業務です。国は、小児一次救急を市町村の 責任で体制整備するよう規定されていますが、その開設時間には現場では非常に制限が 大きく、深夜はほとんど実施できていないというところに重大な欠陥が認められます。  7番.夜間休日診療所の、診療時間外になりますと、患者は一般病院で小児科当直が 置かれている病院に向かい、小児科医は本来院内当直程度の定員で、ほぼ連日の時間外 診療を余儀なくされています。73.7%の病院小児科が、夜間休日の時間外診療を実施し ています。  小児科医の労働条件は悪化していて、時間外診療をしている小児科医の月超過労働時 間合計は平均86.7時間、時間外診療していない小児科の医師の合計58.2時間を48%上回 っている状況です。  9番.病院小児科の医師は長い労働時間に見られるように過重な業務に追われていま す。病院小児科の平均医師数が2.3人と少ないことが過重業務の原因にあると考えられ ます。全国の病院小児科で小児科医が1人が27%、2人が22%で、これで半数を占めて います。  10.小児科の診療経費が嵩むため、これは看護師とか、数が非常にコメディカルもた くさん必要なわけですが、一般病院では小児科は赤字部門と位置づけていますので、少 しでも高い診療報酬を求める病院経営の圧力もあって、小児科として時間外診療を維持 せざるを得ないという状況もあります。なによりも小児科医自身、子供の急病で不安を 膨らませている保護者と、子供の期待に応えなければならない職業的使命感から、結果 的に病院小児科はきわめて不十分な体制のまま、休日夜間時間外労働を続けておりま す。これが概要です。  3頁の表1では、私ども日本小児科学会の認定医、2年前から専門医制度に変更して おりますが、ここでは認定医と呼んでおりまして実数を書いております。合計1万2,000 人、開業の先生が3,000余、医育機関と勤務医もそこにあるとおりです。  図3、この認定医が始まったのは15年ぐらい前で、当初の7、8年は専門医の数が増 えてまいりましたが、この10年は認定医の数は増えておりません。図4は働く場所で、 開業、医育機関、勤務医の割合を都道府県別に示しております。図5の横軸は都道府県 で、女性医師の割合を都道府県別に示しておりまして、場所によっては4割が女性医師 です。図6は、ある大学の小児科の入局者数ですが、20年間のうち最近5年間は急速に 減少している状況を示しております。図7は、若手医師の中では、特に女性の割合が大 きい。従前、40代はかなり女性が少ないわけですが、これは必ずしも20代のころは女性 医師が少なかったわけではないです。離職・休職してこのように割合が減っていく状況 があります。  5頁の表3では、医療施設調査から、病院・診療所の主たる標榜科、従たる標榜科、 重複計上された数字を載せております。小児科は、従として標榜される診療所が非常に 多く、主として標榜される5,900余に比べ、従として小児科を標榜されるのは2万4,000 に上ります。  表4では、そうした小児医療の現況をまとめておりますが、上から5つぐらいの行 で、小児科当たり1日平均外来患者数を見ますと、診療所は10名、病院は26名。外来患 者は病院に多いという現象がはっきりと出ております。下のほうで、人口100万人当た りの小児科医師数は、合計で110名、診療所で46名、病院で50名です。人口100万人です から、二次医療圏ないし、場所によって三次医療圏では50−50という数で現在働いてい ることがわかります。  (3)国民のニードへの対応困難のところでは、図9で示している一部の病院の調査 では、小児救急・時間外受診の数が近年非常に増えているというのは、報道等でもご承 知のとおりです。  その結果、図10にあるように、小児科医は疲労の極限に達している場合もあり、大阪 の調査では、例えば救急の翌日の通常勤務は109名中98名が行っているということで、 夜勤のような状況でありながら、翌日も勤務しています。また、この勤務が非常にきつ くて「限界」、「大変疲れる」というのが109名中78名で72%に上る状況です。国民の ニードに対応したいという気持はあるのですが、対応困難な状況が出てきています。  6頁では、長い労働時間とストレス下の小児科勤務医として、日本小児科学会の昨年 の調査を紹介いたします。後でも述べますが、小児科医並びに医師は一般に週58時間労 働というのが1つの線になってきているかと思いますが、右から2列目の累積割合を見 ますと54%の所が58時間以上ということで、日本小児科学会の調査した病院小児科医の 半数は週58時間以上勤務しているということです。  図11で、横軸の1は小児救急・時間外をしている小児科で働く医師、2は救急をして いない小児科の医師です。1のしている所の医師は80時間を超えた超勤をしています。 ただし、図12にあるように、宿日直回数を例に取ると、20代、30代の若い人には特に厳 しい勤務を要求しています。今後、若手医師の参入を期待するとき、このような厳しい 勤務が導入に支障になっていることは明らかであり、このような条件を緩和していくこ とが、医師の確保の面で重要と考えられます。  7頁では、小児科勤務医の超勤、宿日直とを平均値で示していますが省略します。図 13では、55大学の小児科医は月に何日休みが取れるかを聞いたものです。月になし、1 日、2日、3日、4日までで、5日以上休みが取れる医師はほとんどいなというのが大 学病院の状況です。  (5)小規模で高度医療提供に不適切な病院小児科の現状ということですが、先ほど 申し上げたように表8では、1人勤務の小児科が288病院、2人が239病院等で5割を占 めています。表9では、一般病院、大学病院、小児専門病院の業務量の配分を見ていま す。一般病院では病院とはいえ、68%の業務がプライマリケアに割かれているというこ とです。  8頁では、女性医師の増加と離職問題をまとめています。女性で子供がいるのはピン クです。この方の週の労働単位数は、黄色の子供のいない女性より少ないです。子育て 女性医師の労働時間は短いということを認めなければいけません。頭数だけでは数えら れません。図15では、女性が育児のために休職する割合が非常に大きいということをご 理解いただけると思います。  (7)では、小児医療において現在小児救命救急医療が致命的な不備があることを述 べています。(8)では、充足困難な小児科勤務医の状況を述べていますが、図16は大 阪の調査です。20病院ほどで、現在に比べて5年前のほうが低いということは、現在は 増えたということです。医師の数が多い所は増えている、医師の数が少ない所は増える 傾向はない。要するに集約化というのは、自然な動きとしても既に進んでいるというこ とだと思います。  10頁では、こうした状況に対して、日本小児科学会では、2年前から小児医療を根本 的に構造改革しないと駄目だということで、現在までに二次医療圏における集約化プラ ンについて図18のごとくまとめました。そのコンセプトは、小児科センター病院を地域 において確立する。その詳細は表10で述べております。小児科医を増員する、しかし従 前一般小児科でプライマリケアを重点にしていた所は、そういうものを徹底していただ く。病院というのは入院医療ということになれば、一般小児科は病院ではありますけれ ども、外来主体の医療にシフトしていこうという考え方です。  12頁ですが、現状では我が国の施設1,291病院を日本小児科学会で調べたところ、合 計で4,700人余の小児科医と、700人余の新生児専任で、それぞれが働いている病院のサ イズはEとかF、即ち3人か4人です。1人か2人という病院が非常に多いわけですの で、これを全体に上へ、BやCに格上げしていこうというのが下のプランです。これは 計画のモデルでありまして、これを現在日本小児科学会47都道府県の地方会において、 どのように集約化するかを検討しております。  13頁は現在検討中ということで、既に検討が出来上がった所もあります。1番は北海 道で、567万人の人口に対し、中核病院を6、地域小児科センターを11設置しようとい うことです。そのようなことで、それぞれの都道府県の特徴を出していこうとしており ます。  15頁では、小児科医の需要を試算しました。現在勤務していて、翌日休むと3,000名 余の増員が必要になります。さらに週58時間労働にしますと、約半数の2,237名で過剰 労働時間が11万9,300時間余となり、これを人数で割ると500人余が不足します。先ほど の小児科学会のモデルで計算すると、約1,000名の増員で済むのではないかと考えられ ます。  14頁の結論に飛びまして、最初に申し述べましたように、約1,000名の増員は構造改 革のためにも必要だということが、日本小児科学会の結論です。 ○矢崎座長  貴重なデータをありがとうございました。続きまして藤井先生からお願いいたしま す。 ○藤井参考人  ブルーでスライドの資料を出しておりますが、学会の在り方検討委員会で3年間検討 した結果を、3冊の冊子にして詳しいものを作っておりますのでそれも回覧いたしま す。この資料に沿って報告いたします。  1頁の下のところが、2004年の日本産婦人科学会の総会員数で、いまは1万5,891人 です。これは、産婦人科医ではない方も含まれていますが、その中の男性と女性の比率 は、男性が78%で女性が22%です。2004年まで新入会員がありましたが415人で、男性 が40%、女性が60%です。退会者が2003年には397人いたということで、入会、退会も ほぼ並行しています。  2頁の上では年齢分布を示しています。いま日本産婦人科学会のメンバーの50歳以上 の方が52%を占めています。上の図の右下を見ますと、2002年度の会員の分布は、70歳 以上の方が20%を占めています。全体の会員数は1985年当時とあまり変わらないように 見えるのですが、会員が長生きするようになってバランスが取れたような形になってい て、労働力としては極めて厳しく、20代、あるいは40代の方はこの図で見るようにグッ と減っています。  下の図は、男女の比を示しています。女性の会員が、男性の会員を徐々に追い抜いて きました。2000年ぐらいから追い抜いてきて、多くの所が70%を超える状況で女性会員 が分布しています。  3頁の上は、産婦人科医が学会で調べた、勤務医1人当たりどのぐらい当直している かということです。施設における勤務医の定員数当たりで見ています。2人ぐらいの病 院では、月に13日ぐらいは当直があります。それも、定員が不足の施設では、それが仕 事量として多くなってきておりますので、当直の日数が増えています。  それだけではなくて、産婦人科はいつ帝王切開その他のことがあるかわかりませんの で、2人でやっていても、1人は拘束されていることになります。3人、4人、5人と 働いていても、誰かが拘束されて、いつでも呼ばれ得るという状況になっておりますの で、当直とオンコールを加えていくと、2人ぐらいの所では月に25日以上のデューティ を持っているということで、極めて厳しい状況があります。  8人ぐらいの勤務状態の所でも、オンコールを入れて12日分ぐらいの拘束を持ってい るということで、医師としてのクオリティ・オブ・ライフが非常に悪いというのが産婦 人科の特徴です。いままでは、こういう形でやっと産婦人科の仕事が耐えられていたと 思います。  4頁の上は、新しいシステムとして卒後研修の必修化が行われることになり、新年度 に400人入らなくなった途端に、下の図では、産婦人科医がゼロとなった病院の数を示 しております。1,100病院を調べたのですが、産婦人科医ゼロ病院が9.9%ありました。 それも定員3、定員4の病院、あるいは定員5〜8の病院でも12病院で産婦人科を閉じ ざるを得なくなっているということです。それに加えて定員を削減している所も4.7% あります。今年の400人分が入ってこないということで、厳しい状況が今年中に起こっ てくることが予測されます。  5頁の上は、資料としては少し古いのですけれども、産婦人科医の数と産婦人科の施 設数の動向を見たものです。日本は、アメリカやイギリスと比べて極めて産婦人科の施 設の数が多いということです。日本は、1つの施設当たりに1.2人とか1.5人ぐらいで働 いている。2人以下の病院が極めて多い状況です。  その下の図に示しているように、私も卒業して3年目に一人医長として赴任しまし た。そのときに、分娩数が1,000例ぐらいあり、外来患者は毎日80人〜100人、手術も 250例ほどあり、未熟児の管理、交換輸血等もすべて自分でやらなくてはいけなかっ た、という産婦人科医としての仕事がありました。これは若いということと、そのうち に大学へ帰れるという約束があったから、その仕事も一生懸命できたわけですが、身体 もこわしました。そういう難しい状況を、現在はなかなか仕事として若い人が耐えてく れることがなくなってきました。  6頁で、いままで分娩というのは人類の繁栄のために、出産は人生の一大事業という ことで、その中に新生児の死亡や母体死亡も当然ありました。その中で育つ子は貴重で あって、難産の後に死亡したり、子供も死亡したりということもあったわけです。その 当時は、育たなくても産み替えという思想があったと思います。これは、もともと種の 再生産のロスに対する許容というのがあったと思います。  1970年以降は、急速な経済成長で、人々が豊かさを手にするようになりました。それ に、女性が社会進出するということで、種の再生産に急速なブレーキがかかってきまし た。生産数が減少し、高齢出産もあるということで、種の再生産のロスが許されなくな ったということで、一例の出産の持つ意味合いが非常に強くなってきました。ここで、 産婦人科の診療が非常に濃密なものになり、一例一例が失敗の許されないものであると いう土壌が生まれてきたと思います。  その下の図ありますように、周産期医療が進歩することで、未熟児や新生児の治療が うまくいくようになり、周産期死亡率は世界で最も低いレベルに達し、これは誇るべき ことです。まだ、日本における母体死亡率は依然として高いということ。その裏に医療 訴訟が増加しており、このことが萎縮した産科医療である帝王切開の増加をもたらして います。  それとともに一方では、生殖補助医療が進歩し、体外受精胚移植が行われてくると、 多胎妊娠が増えてきて、早産・低出生体重児・極低出生体重児の増加、ひいてはその後 の発達異常が起こり、産科という診療科の持つ責任と仕事量が増え、複雑な仕事が増え てきています。こういうことで、殊に病院勤務の医師に責任が増加してきております。  7頁は、いままでの一般的な出産に対する妊婦の考えとして、多くの妊婦は自然の摂 理であるということで、自分に限っては異常はないと思っております。自然だから、あ まり病気臭くないところ、即ち環境や食事の良い所での分娩を希望されます。普通は何 も問題なく出産できるわけで、近いし便利である個人病院を選びます。しかし個人病院 は、異常な妊娠があったり急激な変化があると、全部病院に転送されます。全部救急疾 患が病院に転送されるわけですが、勤務医は、これをやりがいと使命感で救急疾患とし て受けて、仕事をします。でも、その仕事をしたからといって収益が増えるわけではな く、個人病院との間で収益の格差があまりにも大きいということで、最近は勤務医が働 く意欲を失ってくるとともに、勤務医の中で多くの人が個人病院に引き抜かれる傾向が あります。多くの人が病院で働いているよりも、個人病院のほうが収益が良く、そして あまり難しくない仕事で済むということで、そういう傾向が現在あります。  その下の図は、現在の日本における産婦人科医師の悪循環です。70歳以上の産婦人科 医が増えて、女性の産婦人科医が増えてきた。ところが、結婚、出産その他で産婦人科 を辞める人がいる、あるいはその間仕事ができないということで、産婦人科の総労働力 が低下してきています。それとともに、産婦人科診療は複雑で濃くなってきております ので、勤務医の状態としては重労働で、クオリティ・オブ・ライフは低下し、訴訟が増 加する。学生がこういうことをよく知っていて希望しなくなる。  そういうことが繰り返されてきますと、いまの産婦人科の勤務医の多くに、燃え尽き 症候群と思われるような人がいて、特に部長クラスの中にそれが出てきています。下が あまり補充されないということで、年を取っても、次から次と仕事があるということ で、転職をするというようなことで急に辞めたいとか、あるいは開業医に引き抜かれて いくことがあって、産婦人科はかなり厳しい状況があります。  産科の医療というのは、基本的に妊娠の初期から分娩の帰結に至る全過程の救急対応 を保証しなくてはいけない特殊な医療契約を持っている、契約救急と称してもいいと思 うのです。医療契約として、救急性のものを常に持っている診療科で、他科とは異なる 契約を持っているということで、これが分娩その他すべてに拘束を生じてきます。その 方との間で契約がありますので、どんな所へ行っていようと呼ばれてくるということ で、オンコールがかかってくるわけです。  出産までの間に、簡単でない出産の場合は何十時間という時間も、どのように分娩さ せようか我々は悩まなければいけない時間があります。こういう後に生まれてくる子供 をみて喜ぶお母さんの顔を見て、やりがいを感じて、こういう時間的拘束や心理的葛藤 に耐えていくということをやっているわけです。現在、そういうものに対して本当に正 しい対価が払われているかどうかということがあります。  それとともに、産科の診療における悲劇ということが書いてあります。産科は、1つ のことがこじれると急に大変なことが起こってまいります。そういう意味で、1人や2 人でやるのは非常に危なくて、1人とか2人で診療をやるというよりは、集約化して医 師がたくさん集まった状態で診療することが必要ではないかと思われます。  9頁で、日本は周産期の死亡率が世界でいちばん低いということです。ところが、母 体死亡率は必ずしも低くはない。日本では周産期死亡は少ないと思っていますが、アメ リカの黒人と中国人で見てみますと、中国人の場合は日本と同じぐらいということで、 人種的な差が周産期死亡率を減らしているのかもしれないということも考えられ、必ず しもいまの医療がうまくいっているかどうかはわからないという点があります。  そういうことが、現在の産婦人科の医療の質の低下、教育力の低下、研究力の低下を 来して、国民の再生産の現場において、国民が被害を被る可能性を秘めています。特に 北海道地区では、産婦人科医師の不足が、新生児死亡の数と逆相関する。だから、産婦 人科医の少ない所は、新生児死亡率が高くなっていることではっきりわかっておりま す。そのような状況があるので、これは早急に改善しなければいけないと思われます。  10頁は、産婦人科医は、医学生の「やりがい」を喚起していかないと、産婦人科とい うのはただ単なることではなかなか来てくれない。産婦人科というのは、勇気や判断 力、「やった」という達成感、自己の存在意義を感じさせる診療科ですので、やりがい を私たちはアピールしていきたいと思います。  一方でまとめに書いているように、産婦人科をアピールしていくことも必要だろう。 イメージが悪いということが1つあります。資料でお配りいたしました、日本産婦人科 学会の市民公開講座を4月1日に行いましたが、アメリカ、ドイツ、カナダの学会の幹 部と話をしたのですが、そのときに向こうでも言っていましたが、産婦人科はどこの国 においても、いま非常にやりがいを感じて仕事をしてくれる人がいないので大変であ る。今後はお互いに協力し、産婦人科のイメージを向上していこうということになりま した。  今後は行政から支援を受けて、診療体制は先ほどの小児科と同じように産婦人科のセ ンター化を図り拠点病院をつくっていく、あるいはオープンシステムをもっとやってい くとともに、女性医師の働く環境をつくることが大事ですし、産婦人科における労働の 再評価、対価を正しく評価していただきたいということ。  もう1つは、やりがいを感じる学生を確保するために、奨学金制度など優先枠をつく ろうということで、既に都道府県では県に帰ってきて産婦人科医をやる人には奨学金を 出そうとか、学会自体も奨学金制度を考えております。卒業後の定員枠も考えていただ けたらと思います。  本当に、真に優秀な人材に働いていただかないと、種の再生産、国民の再生産の場に 安全が提供できなくなっているということですので、よろしくお願いいたします。 ○矢崎座長  ありがとうございました。次に武田先生よろしくお願いいたします。 ○武田参考人  麻酔科学会では、マンパワーの問題を数年前から検討しております。お手許の7頁か ら45頁までは、2月2日付で麻酔科にマンパワー不足に対する日本麻酔科学会の提言と いうことで出させていただきました。大まかなことはこちらに載せてあります。ただ、 いろいろな状況を見込み、病院と大学では状況が違いますので、いろいろなことを盛り 込んでおります。どこか1つに焦点を絞ったというよりも、いろいろな所で、いろいろ なストラテジーでやっていこうということでまとめております。基本的には医師の教育 というか、育てるということですので時間がかかる問題であるという認識を持っており ます。  本日は、労働問題についてはお話させていただきませんけれども、マンパワーの提言 に先立ってアンケートを取らせていただきました。本来ですと昨年の秋には出ているは ずだったのですが、春には出させていただけると思います。日本産業衛生学会産業疲労 研究会を通じて分析をしています。日本で、麻酔科がいる、いないにかかわらず全身麻 酔をかけている病院対象の調査、麻酔科への調査、麻酔科医個人の追跡調査をしており ます。近々公表させていただけるものと思っております。  一概に麻酔科医と申しましても、標榜医、指導医、認定医だというのがあってわかり にくいかと思います。6頁に大きく輪が4つあります。いちばん大きな輪が標榜医で す。これは、厚生労働省認可の資格で約1万5,000人ほどいます。このうち、認定医と いうところからが日本麻酔科学会の会員で、約9,000人弱ぐらいだったと思います。  中から2つ目の輪の専門医と書いてあるのは、5年研修後に試験を受けて資格を取る ものです。ペーパー試験、口頭試問と実技の試験があります。以前は、病院まで我々が 出向いて、実際に麻酔をかけるところを審査していました。最近は、実技のシミュレー ター等を使ってやっておりますが、再度病院に赴いてということも検討を始めておりま す。これは、ほかの学会の横並びの専門医とご理解いただければと思います。  その上に指導医とありますが、これは10年経験して、それなりの指導者としての資格 を有した者と理解しております。  その下に認定医というのがあります。これは、そのまま標榜医を取り、麻酔科学会に 申請した後、認定が取れます。これは、標榜医を持っていて、麻酔科学会の会員でない 方の教育も、是非我々の麻酔科学会で担おうということを考えていて、そういう資格を つくらせていただいております。麻酔科学会の専門医制度は、1963年より始まり、かな り歴史のあるものです。  27頁で会員数ですが、ここには専門医と標榜医しか記載してありません。指導医は今 年から始めたものですから、まだ指導医のプロットは取っておりません。麻酔科学会 員、専門医、標榜医とも、ずっと右肩上がりの会員数の伸びを示しております。ここの ところ、少し頭打ちの感じはいたしますけれども、毎年約250〜300名程度増え続けてい るのが麻酔科学会の会員数の伸びです。  こういう資格審査を維持している麻酔ですが、事故の発生率を、偶発症例の調査とし て長い間麻酔科学会で調査をしてまいりました。2頁から5頁までが、偶発症例第3期 調査のまとめです。直接的に麻酔に関する事故の発生率が、1万人に対して0.1ですか ら、10万人に1で麻酔に直結した事故が起きているのが日本の実情です。たぶん非常に 低い率であろうと理解しています。アメリカで、直接麻酔による事故の発生は0.4ぐら いという記載がありますので、0.1というのは低いのだろうと思解しております。  ただし、これは麻酔の指導病院、麻酔科医が常時いて、手術室で麻酔をコントロール している病院の調査ですので、それ以外の病院での麻酔の事故の発生率はわからないの が実情です。  麻酔科学会は、このような低い事故の発生数を保っているのですけれども、いちばん の悩みは社会に麻酔科医がどんな仕事をしているのかあまりよく知られていないのが大 きな問題です。患者は、手術室へ入ってくると寝てしまって、目が覚めたときには手術 が終わっているということで、患者は麻酔科医が何をしているのかよくわからない。し かも、医学部の学生も麻酔のことについては、病院で臨床実習をやってみて、初めてこ んなことをしていたのですねというのが、麻酔科医に対する認識であることが決して少 なくありません。  そういうことで、麻酔科学会も「麻酔を受けられる方へ」というパンフレットをお配 りしておりますが、術前から始まって、麻酔をかけて覚まして、無事に手術室から出て 病棟へ戻り、また手術の後の痛みも我々の所で術後痛対策ということで最近はさせてい ただいております。痛くない術後を過ごしてもらおうという努力も学会として取り組ん でいくようにしております。  資料3の1枚目に書きましたように、意識がなくて自らの生命を守れない患者に代わ って生命を守ります、というのが我々の心情であると理解しております。最近は集中治 療・救急、ペインクリニック等にも我々の麻酔科出身者、ないしは麻酔をしながらそう いう領域にも加担して、社会からそういうニーズもありますし、集中治療領域での医療 の安全も問われておりますので、そういう領域にも麻酔科医がかかわってきているとい うのが実情です。  麻酔科医の不足に関して、麻酔科医は増えているのですけれども、不足である理由を いくつか考えさせていただきました。1つは30頁にありますように、厚生労働省のデー タですが、1993年から2002年までです。これは、9月1カ月間の全身麻酔の手術件数で す。1993年には12万2,492件あったのが、2002年には15万4,394件ということで手術件数 そのものが増えているということが第1に挙げられるかと思います。  これは、社会の高齢化によって疾患をもった方が増えてきたり、手術手技の改善によ り、いままで手術の適用でなかったものまで、手術の適用になってきたりしている。い ままでは局所麻酔でされていたような疾患が、全身麻酔での手術を希望されるというこ とがあるかと思いますが、手術件数が増えてきているのが第1の需要の増加だと思いま す。  第2点は、先ほどお話しましたように、集中治療や救急、ペインクリニックとった領 域にも、我々麻酔科医の需要が増えてきているということがあるかと思います。  一方で労働力の減少と書きましたが、麻酔科でも女性医師が増えてきています。これ は麻酔科だけが増えているのではなくて、日本中で女性医師の割合が増えてきていると いうことだと思います。28頁に麻酔科の女性医師の割合を示しております。左が麻酔科 医で、右側は医師数の分布です。向かって右側が男性で、左側が女性です。最近の若い 麻酔科医の男女比は1対1まではいきませんけれども、かなり匹敵するところまで女性 の麻酔科医が増えてきているのが実情です。それ以上のことは先ほどから出ていますの で割愛させていただきます。  労働力の減少の第2点ですが、これは資料がありません。我々も調べたいのですけれ どもわかりませんでした。いままで、麻酔科ではない外科系の先生方がかなり麻酔をか けていたことは事実だと思います。それが社会のニーズによって、例えば医療事故を起 こしたときのことを考えると麻酔はかけられない。高齢化によって合併症をもっている 方が増えてきているということで麻酔の事故を回避する。例えば外科の医師であれば、 麻酔をしに病院に出張したのではなくて、手術を勉強しに出張したということで、自分 の専門性を追求したいという要望もあるように聞いております。  いずれにしろ、麻酔科学会で実際にアクティブに動いているのは6,000人ぐらいとす ると、外科学会、産婦人科学会、泌尿器科学会、整形外科学会等の医師の数はものすご く多いので、その医師のごく一部の力を麻酔に割かれていたものがなくなってきたとい うことが、我々にとって大きな需要の増加にかかってきていると理解しております。  平成16年、平成17年については研修医の制度の変更により、研修医のパワーが大学等 から減少してきたことも1つの大きな要因だと思います。それから、これはどの科でも 起きていることだと思いますが転科をしていく方がいる。折角育てたのに転科されると いうのは、我々にとっては非常に痛い思いです。  社会的要因というのは、デストリビューションの問題で、不足というよりも分布が変 わったと理解できるかと思います。現実には、大学の系列から離れていく医師がかなり 増えてきているのだろうと思います。こういう人たちは、マスコミ等でも紹介されてお りますように、開業やそういうグループをという話がありますが、現実的にはごく一部 であります。確かに話としてはわかりやすいのですけれども、ごく一部で、先ほど産婦 人科から話がありましたように、一般の市中の病院に引き抜かれていって、大学の系列 から外れていく人たちが結構おります。そのために、いままで大学等が維持してきた系 列の病院が維持できなくなっているというのが、いま現在起きている、病院から麻酔科 医がいなくなってしまっている1つの大きな要因だと理解しております。  需要に比較して、麻酔科医の増が少ないと我々は考えています。手術件数が増えてき て、有給者数を増やしてほしいのだけれども、有給ポストがなくて増やせないできてし まって、現実にバーンナウトしてしまったというケースも多々あります。まず有給ポス トが欲しいということが挙げられます。  労働関係に関しては、小児科や産婦人科の先生がおっしゃったように、我々も労働調 査をさせていただいておりますし、確かに長時間労働、当直明けの休息が取れない。当 直明けで朝まで手術をしても、次の日はそのまま麻酔をかけなければいけないという実 情がごく日常的に存在しているのは間違いない事実だと思います。  先ほどもお話しましたように、麻酔科医に対する理解がないというのも、特にアンケ ート調査をした結果、病院から評価されていないというのが麻酔科の中で働いている人 のクレームといいますか、モチベーションを下げている大きな理由のようです。  対策等については、提言の中に書いておりますので簡単にお話します。学生や研修医 への教育、やりがいのあるということをよく理解させるということに尽きるのだろうと 思います。現実には、いま休んでいる女性医師の掘り起こしであったり、地域での助け 合い、例えば夜間のオンコールを、こちらの病院でもあちらの病院でもオンコール体制 を敷いている。そうすると、2人でいる病院では月に15日のオンコール体制になってし まいます。これが2つか3つの病院が持ち合いでやれば、その3分の1にできるメリッ トがあるかと思います。昼間でも、空いている時間に隣の病院、近くの病院に助けに行 くことができればと思っております。  ただし、この場合は経営母体が違うということが大きなネックになっていて、国公立 の病院、私立の病院といった所での人のやり繰りが非常に困難なのが実情だと思いま す。  いちばん最初にお話しましたように、標榜医の数は、麻酔科学会医の数に比べて、約 2.3倍程度います。短期的な方法としては、標榜医の再教育、もし必要であれば教育を 学会としてさせていただき、いま不足している麻酔の業務を担っていただくということ が、たぶん差し迫ってすぐできることではないかと理解しております。  もう1つ効率化を挙げております。看護師、臨床工学技士、薬剤師の協力を得ること により、我々の仕事は非常に簡略化できる部分があります。手術室の枠組みと入れ替え 等といった、現場での効率化は私の大学でもかなり進めましたけれども、思った以上に 効果が上がると理解しております。そういうことを組み合わせることにより、長期的、 短期的な視野からこの不足に対応すべきだと学会では努力させていただいております。 ○矢崎座長  ありがとうございました。最後に島崎先生よろしくお願いいたします。 ○島崎参考人  以前から、現場では救急医の不足が非常に深刻な問題として各論的に取りざたされて いたわけです。救命救急センター等でも、かなり個人に負担がかかってきているという ことです。学会でも救急科専門医、あるいは救急の専従する医師の養成ということが最 も大きな問題だと思っております。  救命救急センターを抱えております学会ということで、厚生科学研究で、救急医の養 成と確保のあり方に関する検討会というのを、ようやく発足させていただいたという現 状です。  資料−4のいちばん最初の頁に、大体結論めいたことが書かれております。この検討 会に参考人として呼ばれるということで、2週間ほど前に急遽作りましたので、まだ一 部不手際があるかと思いますが、まず結論から少し読ませていただきます。  平成10年の「医師の需給に関する検討会」においては、医師数は全体として過剰な状 況に至っていないものの、将来的には供給医師数が必要数を上回ると報告されておりま す。しかし昨今は特定の診療科における医師の不足感が強く、特に救急領域での医師不 足は深刻です。そこで救急にかかわる「医師の需給」に関して現状を確認すべく、全国 の救命救急センター並びに全国臨床研修指定施設へ、アンケート調査を行いました。調 査結果は、救命救急センターと臨床研修指定施設それぞれで、救急の専門医の不足が明 らかになっております。  医師の需給に関して先ほどの検討会の報告では、2017年ごろから供給医師数が次第に 増えて、2020年には6,000名、2025年には1万4,000名の医師が過剰になるということで す。その中で救急医療に従事する医師数については、専従医師を二次医療圏ごとに15名 配置することとします。この二次医療圏と言いますのは、救命救急センター等にかかわ る医療圏のことですが、基本的に人口30万人程度の日常生活圏と考えられております。 現在、二次医療圏は各都道府県にいくつかあって、365あります。そこに15名ずつ配置 するとして、2025年には全国で5,000名の医師が必要になります。現在、救急科専門医 は1,800名ほどです。しかし現在、救急科専門医師数が1,867名、認定医数を含めて2,500 名に対し、指導医・専門医ほか救急専従医師の必要数は、救命救急センター1施設に対 し、25名で試算いたしますと5,000名になります。20年後の変動を見ても2,500名が不足 するという計算は、10年前の需給に関する検討会の数字と全く変わっておりません。  また一・二次救急を含むプライマリケアも含めて診る施設を、「ER型施設」と呼ぶ わけですが、医師1人に対して365日、24時間体制で、労働時間週40時間で必要医師数 を試算しますと、1施設当たり5名となります。臨床研修指定施設は約500ありますか ら、ERを行うためにも卒後臨床研修を行うためにも、約2,500名の救急科専門医が必 要です。上述の如く、救急医療の現場では救急科専門医数が少ない上に、業務が多忙で あることにより燃え尽き症候群も多く、慢性的なマンパワー不足が続いており、このま までは救命救急センターの運営に多大な影響を及ぼすと思われます。診療の安全性から も、また本邦における医療供給体制全般を考えても、救急医の十分な人員の養成と確保 は、極めて重要であるというのが結論です。  それでは少し各論的に説明させていただきます。2頁の「医師の需給に関するアンケ ート調査」ですが、全臨床研修指定施設は530あります。救命救急センターはすべて臨 床研修指定施設で、174施設あります。アンケートの回収率は大体40%強です。また救 命救急センターのない臨床研修指定施設というのは、臨床研修でプライマリケア、ある いは自主的な患者の蘇生等を含む研修を行う施設ですが、そこは救命センターとは関係 なく、356施設あります。そこにもアンケートを出して、22.75%の回収率でした。  アンケートの中身は、10頁と11頁に代表理事名で出しております。11頁にありますよ うに、救命救急センターであるか、重症救急患者を診察するために救急医は何名必要 か、現在何名いて何名不足しているか、臨床研修指定施設に対しては卒後臨床研修を行 う上で、研修医を指導するための専門的な医師は何名必要だと思うか、現在何名おられ て何名不足しているか、それぞれご意見があったらというようなアンケートを取らせて いただきました。アンケートの実際の回答は、3頁に載っております。左が救命救急セ ンターにおける専門医師数は大体これぐらい必要だという数、真ん中が実際の現在の 数、右が不足数です。現在数で見ても「救命救急センター」と言われる施設でも、専門 医が「1名あるいは2名しかいない」というのが3分の1あります。「3〜5名」を含 めますと、過半数の施設が5名以内です。当然3〜5名不足しているというデータにな ります。  5頁の資料−3をご覧ください。これは救命救急センターを持たない臨床研修指定施 設についてです。臨床研修指定施設ではプライマリケア、あるいは自主的に患者が救命 できるような基本的な処置は、外科、内科と共に救急(麻酔を含む)という形で、必須 コアの事項になっておりますが、そういう施設でもそれを教える医師が「0名」が41% ということで、卒後臨床研修の問題を取り上げても、救急の指導医がいないというのが 極めて大きな問題です。  臨床研修指定施設全体については、6頁に書かれております。これはいま言った全臨 床研修指定施設、救命救急センターを含む500数十施設のデータのトータルです。我々 救命救急センターで働いている医師が、現在守備範囲としてやっていることは3つあり ます。1つ目は、プレホスピタルケアにおける救急医療システムの構築等を含む医療で す。これはメディカルコントロール体制で、救急隊員あるいは救急救命士を教育いたし ます。また災害・テロにかかわるシステムと、実際に災害・テロがあったときにその現 場へ出向していきます。現在でもいくらかの施設が、スマトラあるいは国内の中越地震 や原子炉の災害などへ行っておりますが、比較的小中規模を含むものをひっくるめて、 救命センターの医師が現場へ赴きます。そういうプレホスピタルケアと言いますか、病 院の中以外の所での医療を行います。  2つ目が救急外来での、いわゆるER型の医療を行います。これは重症患者を含めて 初期救急を行って、死にそうな患者の救命処置等を含めて行います。またERでトリア ージを行います。これは各科に特化した患者であれば、各科に患者を引き渡します。そ うでない場合は救命センターで専門の医師が診ます。  3つ目が外傷や熱傷、中毒、心肺停止といった救命救急センターで各科に特化しない 患者を診ていきます。それとER型の中に、卒後臨床研修等を含むものがコアとなって おりますので、一・二次救急のさらにその上にかぶさってきておりますし、心肺蘇生法 にかかわる、いわゆる「ACLS」と呼ばれるものを、各診療科のどこかを含めて全研 修医、あるいは病院の中での医師等を含めて教育していくという非常に広い守備範囲 を、救急の専門医が数少ない人数で行っております。  実際の数については、9頁をご覧ください。これは専門医認定制機構の加盟施設の基 本領域として、ここに書かれている18学会が、こういう領域を診療の基本科目としよう とする、その背後にある学会の名前です。真ん中に学会の会員数、右側に専門医数が書 かれております。日本救急医学会は下から3番目にありますが、各科の救急に携わる診 療科を含めても、オーダーが1つ足りないぐらいの1,867名です。認定医を含めても 2,500名+700名ぐらいの数で、守備範囲から考えると、まだまだ足りないということ で、先ほどのアンケートのような結果になるわけです。  具体的なアンケートの中身は、資料−5、7頁、8頁に書かれております。これは各 救命センター、あるいは臨床研修指定病院の先生方が意見を寄せられたものを、一応ま とめたものです。その主な意見が20項目ほど書かれております。  例えば2.夜勤帯が、重症例搬入によりマンパワー不足を感じ、翌日の勤務に引き続 く勤務(救急隊員学生の指導を含め)に疲弊感がある。4.業務の多忙で燃え尽き症候 群も多く慢性的な医師不足が続いている。6.救急科専門医だけでなく、救命救急セン ターにおいて研修医を指導する医師が少ない。7.救命救急センターでない救急施設で は人員確保が極めて困難。二次救急の現状がほとんど理解されていないので、少なくと も「救急科」が標榜できるよう関係省庁へ働きかけてほしい。9.医師も労働者である という考えに立つと、当然、シフト勤務になり、3交代や2交代にすると、それぞれ2 倍、3倍の人員が必要になる。14.臨床研修制度の改革に伴い、それ以前にいた救急部 医師が引き上げになり、現在は専属1名のみで、当直回数は年に100回を超える。それ に加えて消防・研修医の指導業務も増え、深刻な事態になっている。17.現在は専門各 科に協力して救急、研修医の指導に当たっているが、専属の救急医がいないと十分な継 続統一的な指導ができないなど、その他いろいろ書かれておりますが、基本的に現場で は医師の不足感がかなり深刻です。  診療科の救急にかかわるほかの所も、基本的に同じだと思います。24時間体制で、土 日はすべてが勤務時間ということになるわけです。それで試算しますと、一般診療科と 比べて大体5倍の労働時間になります。しかし、そういうことが全く顧みられていな い、一般の救急とは関係のない診療科との差別化が全く図られていないところに、現場 の不満感が非常にあると感じます。基本的には現在2,500名程度の救急の専門医が足り ない状況で、救命センターが運営されているということです。以上です。 ○矢崎座長  どうもありがとうございました。特に医師不足が課題となっている4つの専門領域を 代表して、ただいまご説明いただいたところです。いまのご意見に対して委員の方々か ら、ご質問ないしコメントがありましたら、よろしくお願いします。 ○小山田委員  自治体病院、特に地理的条件の悪い中小病院、民間病院もないような所での医師不 足、診療科による偏在について、大変困っていますのでご意見をお伺いしたいと思いま す。私どもも数年前からいろいろな会議や各省庁にもお願いして、いろいろな対策案や 答申をいただいて、もう出尽くしておりますが、さっぱり成果が上がらないのです。そ こで私がまずお伺いしたいのは、小児科と産婦人科が同じような環境ですので、将来を 見越したシステムとして、倫理感を教えることもいいですし、奨学金もできますが、そ れでもなお解消できないのです。最終的には入学時に大学ごとにその地域に合ったよう な、診療科の枠組みをつくって入学させるとか、卒業後、各講座の定員枠を決めると か、各学会ごとの調整を図るしかないのではないかと考えますが、これはどうお考えに なりますでしょうか。また、臨時法でも特別措置法でもある程度そうしたものがない と、野放しになった状況で解決できないのではないかと思っております。この辺をどう いうようにお考えになるのか。  もう1つは、いまの状況を解消するためには集約化しかないと、先ほど先生方がお話 になりました。そのとおりです。私どももそれを言っているのですが、これにもいろい ろな壁があるのです。まず自治体間の壁があります。また大学という壁もありますし、 それぞれのドクター間の壁もあります。その壁を全部取り壊すのが大変なのです。そう した壁をなくすために、いちばんの障害になっているものは何か、そして私どもがやれ ることは何かを教えていただきたいのです。  それから武田先生にお伺いしたい。医師不足はどこでも同じですが、私どもが深刻に 考えておりますのは、麻酔科医が病院を辞めて個人開業、あるいはグループ開業をする という現象です。いままで365日働いていた麻酔科医が辞めて、外にグループでオフィ スをつくって、その病院と1日何十万円かで契約をするわけです。病院は必要上どうし ても雇わなくてはならないという状態になります。これはよその診療科にはない、新し く出てきた形態です。これについて私どもが非常に懸念しますのは、人命を預かる麻酔 科のドクターが、当直もしないで、ただお金だけ高ければいいということでは、これか らの病院の勤務医の雇用関係に混乱をきたすことになります。これをどういうように解 消したらいいか、非常に困っております。  私は地方に行って意見を聞きました。それらを集約いたしますと、こういう時代なの で、そうした流れを止めるわけにはいかない、やはり市場原理で高く払える所は払うし かないのではないか、という諦めというか、そういう意見もありました。もう1つは、 麻酔医の独自性を発揮するための外科や病院の対応というのもありますし、診療報酬と いうのもあります。今すぐ解決できる方法は何かというと、標榜医をもっと再教育し て、麻酔の現場で働かせるということですが、今度は外科のほうで障害があるのです。 その次は手術の集約です。全麻をかけるのは大きな病院でというのも、1つの意見だと 思います。  また、地方の病院で聞くことは、他職種による参加を是非検討してくれということで す。これには問題があることはわかっています。ただ助手として使うのではなくて、看 護師あるいは臨床工学技士を教育して試験をし、ある程度の麻酔と維持ができるような 形にするというのは、今すぐにでもできることではないかと。そして麻酔医の監督の 下、並列的な麻酔と手術ができるようなシステムを、是非考えてほしいという意見で す。これについてもご意見があったら教えていただきたいと思います。 ○矢崎座長  それでは産科、小児科、麻酔科の先生方から、できるだけ簡潔にお答えいただきたい と思います。 ○藤村参考人  集約化についてですが、地方自治体というのは、市町村と都道府県は違うと、私ども は結論しております。集約化においては、都道府県自治体がしっかりしないといけな い。これは地域医療計画をしっかり作ってほしいのです。その中で市町村はそれを十分 ディスカッションした上で、都道府県にはそれをまとめる責任があると思います。大 学、地方会はそれに協力したいし、私たちも提言したい。それを置いて集約化はできな いと思っております。 ○藤井参考人  集約化の前に先生がおっしゃったのは、入学枠のことですね。産婦人科もできれば最 初に特定の入学枠をつくるとか、卒業して医師になったときに、何人はその学会として 産婦人科が確保できるような枠組みがきっちりできると、かなり楽になるのではないか と思っております。産婦人科に入ってきたくない人を無理矢理入れるというのも難しい のですが、できれば入学のときぐらいからそういうコースをつくって、特進コースや産 婦人科専門コースのような形で、何人かを採っていくと。これについてはインターネッ ト上で、もし産婦人科の希望者がそれだけ少ないのだったら、そういう専門の入学コー スを最初からつくっておけば、私だったら受験するのにという人があると書いてありま したので、そういうものはある程度の効果があるのではないかと私は思います。  それとセンター化をするときの大学の壁というお話ですが、大学における産婦人科は ほぼ崩壊しています。どの大学も現在の状態で、すべてのことが維持できない状態にな っておりますので、大学間の壁を取ることができる状況は、今はかなり近いと思いま す。それをどこがリードするかというと、学会がリードしていかないといけない。学会 が調整をして、そういうことをやっていく。  自治体のことは、私はちょっとわかりません。行政が行われることについてはわかり ませんが、常に私たちに求められることは、どこでも産婦人科医がほしいということだ けです。産婦人科がいるとサービスが提供できるからということが、必ずどこにでもあ るわけで、自治体病院にもそう言われるのですが、実際に1人や2人で働くことがいか につらいかというのは、経験してみないとわからないと思うのです。学会があったとき の各地方部会からの先生方の声として、どこの大学も産婦人科はほぼ崩壊状態になって きたということがありますので、壁を取ってお互いに協力しながらやっていこうという 空気は、かなり出てきております。 ○武田参考人  先ほど病院を辞めてグループでプラクティスをやるので、高い給与だというお話があ りました。我々としてもいま進んでいる中で、止めるわけにもいかないだろうと思って おります。学会としても決してこういう人たちを奨励しているわけではありませんし、 一麻酔科医として将来的に教育を継続してやっていくという点では、私個人も非常に不 安を持っております。そういう意味では決して推進するものではないのですが、彼らも 学会員ですし、止めるわけにはいかない事情だと思います。  ただ現実にそういう人たちがどれぐらいいるか、という数をつかんではおりません。 これはなかなか難しゅうございます。実はよく話を聞いてみると、どこかに所属してい たりということもありますし、一旦何らかの理由でフリーになって、ちょっと経つとま たどこか一定の病院に行かれるということも、実はかなり多いのです。辞められる理由 が、いわゆるフリーターみたいな格好になりたいという希望の方もいらっしゃるようで すが、そうではなく、何らかの病院との都合、例えば手術室の中でうまくいかなかった とか、大学の人事の関係でそういうグループから離脱して、一時期そういう仲間に入っ て、またどこかの病院に就職されるということもあります。また手取りの給料だけでは なくて、いわゆる背後にあるいろいろな福祉などを考えたり、お子さんのことがあった り、将来のことを考えると不安なもので、やはりどこかに落ち着きたいという希望をお 持ちの方が、かなり多いようです。ですからある一定までは増えるでしょうけれども、 それ以上そんなに急速に増えるとは、私は考えておりません。  標榜医に関しては、現在も学会員でない方でも標榜医を取られる方がいらっしゃると いうのは、やはり何らかのメリットがおありなのでしょうし、麻酔を担っていく一部分 として考えてもいいだろうと、私は理解しております。  集約化に関して、我々麻酔学会としてはなかなか言いづらいところがあります。集約 化をして手術医がなくなってしまうということは、病院自体の手術室の機能というもの を考えると、なかなかやりにくい面もあります。ただ先ほど話させていただきましたよ うに、地域のグループで夜勤やオンコールをカバーするときにいちばん問題になるの が、逆に自治体病院の雇用関係です。集約化と言うまでもなく、夜勤やオンコールにつ いては逆に先生のほうで、是非何とかお考えいただければと思います。  地方を担っている医療とはどういうものかと思って、いくつかの地方を病院の地図に プロットしてみたのですが、実は地方でも比較的中都市、大都市辺りに集中しておりま した。隣の病院で300床、また別の病院で200床あって、どちらも麻酔科医が足りないと おっしゃっているような状況も垣間見えてきますが、経営母体が違うので、お互いのや り繰りが非常に難しいのです。これが手術ですと、そういう面では比較的動かしやすい のですが、自治体病院の場合はそういうことがなかなかしづらいというのが、地域でグ ループをつくっていく上で、いちばん大きな壁ではないかと考えております。  他職種というのは、はっきり申し上げて看護師による麻酔ということになってくると 思いますが、実はこの言葉自体、仕事の内容をあまりきちんと規定しないで、いろいろ 議論されているという面があります。またすぐ対応できる解決策という理解がされてい るような気もいたします。アメリカの麻酔看護師のナースアネスティストというのが非 常に有名で、どこでもすぐに取沙汰されますが、こちらも大学を出てから2年だか4年 だかの教育を受けて、初めてナースアネスティストとしての資格を有しております。ア メリカではエーテルドームで初めて麻酔をかけた直後ぐらいの19世紀後半から、もうす でに看護師が麻酔をかけているという経緯があって、日本のように麻酔科医が麻酔をか けていて、それが足りないから看護師にやってもらおうというのとは、だいぶ歴史的な 背景が違うように私は思っております。  いま現在、麻酔医が足りなくなった理由は、やはり国民の皆さんが医療の安全を求め て、今までかけていた麻酔科以外の医師の麻酔が減ってきたというのが、私は1つの大 きな理由だと思うのです。患者のほうも医療の公平性というか均等性というものを求め て、ある種の団体では麻酔の専門医でないと、麻酔をかけてほしくないという申入れが あって、学会としてもそういう対応をさせていただいているような経緯があります。  その一方、我々は非常に低い事故発生率を保っているわけですが、麻酔科医以外で麻 酔をかけていた方がやめられた1つの理由に、誰がかけてもできるにもかかわらず、一 旦何か事故が起きたときにその対応に対する不安というのが、多分非常に強いのだろう と思います。そこをどうやってクリアするか。我々もすべてを他職種の方に任せるとい うところには、結論を持っていきづらい面があるかと思います。 ○古橋委員  小児の領域と麻酔の領域で、ご質問をしたいと思います。私は以前、ある県の第三次 救急を含め小児医療センターで、看護管理をした経験があります。先日、小児救急医療 と小児科医の不足の問題について、この病院の管理者の医師のお考えを伺いましたとこ ろ、全体的な小児の数はそれほど深刻ではない、やはり病院で働かれる勤務医の数が大 きな課題で、労働の過重性や責任性など、いろいろな点から病院を辞め開業をなさる、 クリニックを開いて昼間だけの仕事に移っていくということが、かなり多くなっている ということでした。  私はそのとき、本当にそうかなと思っておりましたが、今日やはり開業医の数と勤務 医の数の報告を見ますと、開業医数は相当数あります。私は開業の小児科医も子育てあ るいは子供の病気という点では、大変な役目を引き受けておられると思います。けれど も特に小児の場合、夜間・休日等の医療需要という問題が大変大きいのと、急変した子 供の状態という問題があると思うのです。小児科学会では開業なさっている学会員の方 々と、こうした夜間救急、休日救急等に関しての相互協力というあたりについて、何か 仕組んでいく話合いができないかどうかという気がしているのです。そうした現実はど うだろうかというのが、質問の1点目です。  もう1つは、麻酔医の領域についてです。いまもご質問があったわけですが、別の会 議である医療部会でも、麻酔医の不足の問題が課題になっており、やはりナースアネス テジストの問題、ナースがこの領域に役割を果たしたらどうだというご意見が出まし た。私は即座にそうだとは思えなくて、看護職の専門性等も評価をしていただきなが ら、しかし日本看護協会にとっては課題になることではないかと発言いたしました。こ うしたことに取り組むとか取り組まないという段階ではなくて、麻酔領域で周術期に看 護職が、専門性を念頭に業務として取り組めることはあるかどうかを課題にして日本看 護協会として検討に入る段階であると、つい先日も話し合ったところです。  ただいまお伺いした意見とは別に、先ほど先生から解決の中の効率化の中で、ナース や薬剤師、臨床工学技士等との協力により、いい結果も得ているのだというお話があり ました。具体的に麻酔領域の中でいま実践しておられることのうち、看護師、薬剤師、 ME等が効率的に協力できている業務内容は、医師以外の職種の業務拡大の展開の方向 案などについてお考えをお伺いしたいと思います。 ○藤村参考人  まず小児科学会のほうからお答えいたします。資料−1の8頁をご覧ください。先ほ どのご質問は、地域において開業の小児科の先生とどのように連携することを考えてい るかというご質問でした。小児科学会の集約化プランというのを、図18に示していま す。「小児科センター病院に一次時間外診療所(一次・二次救急)」と書いてあります が、この一次は、地域の小児科診療所の先生方にも執務していただいて、みんなで地域 で総力を挙げてやろうというのがコンセプトです。また表10では小児科診療所の提供す る小児医療として、地域の一次救急に当番参画すると。一応コンセプトとしては、こう いうことにさせていただいております。  地域の小児科の先生方は、確かに日本小児科学会にも参加しておられますが、基本的 に組織としては、日本小児科医会に集まっておられると理解しております。地域におい て小児救急は、基本的に市町村が責任を持っておられます。その中で小児科医会は医師 会の一部として働いておりますので、地域における話合いでは市町村と医師会の発言権 が、かなり強くなっているというのが現状です。小児科勤務医あるいは日本小児科学会 は、必ずしも一義的にはその場に呼ばれていないような状況もあります。今後、現場の 小児救急は、現場で働く小児科医自身そうした枠組みの中で参加して話し合っていかな いと、実際に小児救急を担っている人とそのシステムを話し合う人が、実は少しズレて いるという問題を指摘させていただきたいと思います。 ○武田参考人  それでは麻酔科の立場で、いまのご質問に答えさせていただきます。そこにも書かせ ていただいたように、看護師、ME、薬剤師の協力というのは、実は非常に有効である という認識を、私は持っております。私どもの大学では手術室の中にミニ薬局をつくっ ており、薬剤師が常駐しております。特に劇薬、毒薬、麻薬というのが我々の日常の使 用薬剤です。これには誤薬も含まれておりますので、そういうものに対する管理と、我 々をそういう雑務から非常に解放させていただいているということで、臨床をスムーズ に動かす上で、非常に役に立っております。我々が使う資材も、かつては自分たちで整 備やチェック、修理等をやっていたのですが、MEも麻酔器から始まって、動脈脱の整 備なども担っていただくようになって、そういうことから解放されました。  同じように看護師の問題でも、我々の病院には周術期看護師というのがあります。こ の名前が適格かどうかはわかりませんので、名前はまだ付けていないのですが、我々は 術前説明外来というのをやっておりますので、そこに来ていただいて、そこからまず患 者のいろいろなニーズ、例えば人工透析をされていてシャントがあるとか、背骨が曲が っていて、こちらの手が痛いなどというところから始まって、そういう術前チェックを していただきます。そして一緒に手術室に上がってこられたときに、そういうものに対 するケアをするようなところから、いま始めております。  それにはいくつかの考え方があって、まだ全体としてはまとまっていないのですが、 日帰り手術センターというものを考えますと、多分ナースが周術期の全体のコーディネ ートをして、我々麻酔科医は麻酔をかけて、術者は手術をして、術前のチェックや術前 のケア、術後に麻酔から覚ましてリカバリーの観察といったものは、多分ナースにお願 いすることになるだろうと思います。ですから、そういったものが周術期専門ナースと しての1つの役割かと思います。  もう1つ、開心術などは麻酔科医が1人でかけられるものではなくて、2人から3人 ぐらいの麻酔科医を必要とします。特にいまは経食道心エコーが患者の開心術の術後の 成績を大きく左右します。1人で麻酔をかけながら経食道心エコーをやって、薬剤の準 備をしてということは、とても1人ではできないので、やはり複数の麻酔科医を必要と していますが、これには特別の訓練をされたナースに付き添っていただきます。また新 生児の麻酔や移植も然りだと思いますが、そのようにかなり手のかかる部門を担ってい ただくことが、もう1つ別の意味でのナースの役割であると思います。そこは看護が十 分存在する領域だと思いますので、そういったものをしていただくことによって、我々 としてもマンパワーの問題をある程度減少できるのではないかと理解しております。 ○吉新委員  へき地医療の団体の立場で言わせていただきます。私は自治医大の1期生で、2年間 の多科ローテーションということで、産婦人科も麻酔科も全部回って、田舎の病院に行 かせていただきました。当時は整形が得意な一般外科医がいたり、一般外科医が麻酔を かけるのは当たり前ということがあって、1人の医師が非常に幅広く、いろいろなこと をやっていたと思います。ところが私は数年前まで伊豆にいたのですが、東京から土日 に患者が見えて、夜起こされて診ますと、小児のお母さんなどは「あなたは小児科医で すか」とまず聞くのです。へき地で周辺に医師などいないのですから、まず医師がいる かいないかが大変なのに、あなたが小児科医でなければ小児科医のいる病院を探してほ しいという話なのです。  ちょっと患者さんの権利意識と言いますか、専門医崇拝と言いますか、日本における 地域のプライマリケアのレベルが、非常に下がってしまっているのではないかという感 じがするのです。とりあえず軽くても専門医から診なければいけない、専門医以外に診 てもらうと非常に不安だというのです。医師も自分が専門でないものに手を出すと、ジ ェネラルプラクティスでは、何かあると訴えられるというのがあって、極端な専門医崇 拝が住民にも医師にも芽生えているわけです。医師も専門以外のことは全くしないの で、日本の医療レベルは全体的に落ちてしまっているのではないでしょうか。1人の患 者を診るのに何十人もの専門医がいないと診療できないという形になってしまったので はないでしょうか。  私の団体には、いま3病院の臨床研修病院があります。私は昭和53年に自治医大の1 期生で多科ローテーションしましたが、お産も3カ月で150ぐらい経験しましたし、会 陰切開などもしていましたが、いまの産婦人科での研修はお客さんなのです。しかも妊 婦にメスを入れたら大変だ、とてもではないけれどできませんと。麻酔科も、十分な挿 管の数があるわけではないですが、そういう現在の総合臨床研修方式で、本当にジェネ ラルプラクティス(GP)の基礎ができるのかと心配しております。日本のプライマリ ケアレベルの底揚げの仕組みを考えないと、医師数だけを見ていても問題ではないかと 思い、一言言わせていただきました。 ○水田委員  私ども九州大学病院では、6か月あるいは1年間、麻酔科の研修を受けた他科の医師 に対して「院内認定麻酔医」として色々な事情で麻酔科医が足りない時は自分の科の手 術の麻酔をかけても良いと認められております。ただし、必ず麻酔科のその日のスーパ ーの許可を得て、チェックを受けることが条件です。  それから、救急の方も不足しているとのことですが、現在、救命救急センターの配置 基準は100万人に1箇所と言うように、県の縛りがあると思います。それについて学会 としてはどのようにお考えなのか、お聞かせ頂けたらと思います。 ○島崎参考人  救命救急センターの設置基準は、基本的に100万人に1カ所の設置基準になっている のです。その中で、救命センターで働く医師は何名が妥当かという数字はないのです が、最近できている新しい救命センター等を含めて、研修医と言いますか、いまの研修 システム以前の専攻医などが10名ぐらい、専門医が15名ぐらい、計25名ぐらいが大型の 救命救急センターです。これが従来型の100万都市に1つの救命センターの基本になっ ています。しかし、それだと175の救命センターしかなくて、実際に二次医療圏が365で すから、まだ200の救命センターが足りないわけです。それに対してこれから200の救命 センターをつくるというのはとても大変ですから、一・五次から三次近くまで幅広く見 られる地域の基幹病院を、新型の救命センターにしようと。それは大体中規模と言いま すか、比較的小型の救命センターで、10人から10数人の専門医でやりなさいという形に なっています。 ○長谷川委員  ご議論の参考にということで、ご報告だけです。先回発表した研究の一環として、学 会にアンケートを出しました。59学会に出して、現在33学会、約6割しか返っておりま せんが、その中で各学会でマンパワーのことを検討されたかどうかをお聞きしておりま す。33の学会のうち、「検討した」とお答えになったのが10学会ありました。さらにそ の10学会の中で結果はどうか、その診療科におけるマンパワーは不足しているか過剰か ということをお聞きしました。そのうち5学会が「不足している」「極めて不足してい る」ということでした。どういう学会かと言いますと、病理、麻酔、放射線、リハビ リ、腎臓病学会でした。「過剰である」とお答えになったのは、血管外科、呼吸器外科 でした。残りはほどほどという感じでしょうか。まだもう少し返事が返ってきておりま すので、次回の会議にはきちんと、最終的なご報告ができるのではないかと思っており ます。 ○土屋委員  4人の先生方から、診療科における医師の偏在や不足を改善するための有効な手段と して、診療提供体制の集約化あるいはセンター化、拠点化というお話を伺いましたが、 これは確かに1つの合理的な方策、考え方だと思います。しかし、こうした医療提供体 制をセンター化する、集約化するということに当たっては、関係学会の先生方だけでは なくて、実際にそれぞれの規模に応じて、さまざまな機能を担っている多くの医療機関 の理解、協力がなければできないことでしょう。これは皆さん、同じ考えだろうと思い ます。  本検討会には、病院関係団体の全国自治体病院協議会の小山田先生がご出席になって おられます。確かに全自病は地域医療の確保という観点から、大きな役割を果たしてお られます。特に、小山田先生は現場の実情を積極的に発言なさっておられますので、大 変心強いのですが、いまお話にあったような、地域における医療提供体制を集約化する とか、拠点化するということになりますと、深刻化している病院医師の不足ということ を考えますと、自治体病院だけではなくて、すべての病院に深くかかわる課題だと思い ます。そこでお願いです。病院関係団体の代表を、この検討会の委員として加えていた だくことができないかどうか。お許しいただけるならば、そうしていただけたら、より 具体的ないろいろな意見も、アイディアも出るのではないかと思います。 ○川ア委員  是非、そういう方に委員になっていただきたいと思います。 ○矢崎座長  ただいま土屋委員からご提案がありましたが、委員の皆様、お認めいただけますか。                  (異議なし) ○矢崎座長  どうもありがとうございます。それでは医師の需給と関連の深い病院団体の代表者 を、検討会の委員として新たに招くことにいたします。人選については、事務局と相談 して決めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  最後に、「地域における医師の確保等の推進について」という、国立大学医学部長附 属病院長会議の提言があります。内容については皆様、後でご覧いただくとして、水田 委員から簡単にコメントをいただけますか。 ○水田委員  これは国立大学医学部長会議及び国立大学附属病院長会議の常置委員会で検討しまし た提言です。内容は、だいたい皆さまがこの検討会で御議論頂いているようなことに関 してです。  まず、最初に医師の育成状況、紹介状況、専門分野の偏在状況、女性医師の就労状 況、また、地域ではどのような対策をとっているかについて現状分析し、それぞれにつ いてどのような取り組みをすべきかについて、解決すべき課題とその責任の所在を検討 いたしました。また、それらが短期的に今すぐすべきこと、中期的・長期的に長い目で 見てかえる必要があるところ等、色々検討しました。後でお読み頂けたらと思います。 ただし、これは国立大学関係の意見でございますので、地域によって状況が違うことも あると思います。実際にはこれを参考にして各地域に合う方法で行って頂けたらと思っ ております。 ○矢崎座長  これをベースに、地域あるいは病院団体の方からご意見を聞くというのも、また新し い展開になるかと思います。どうもありがとうございました。時間が短く、質疑応答を 時間制限して、失礼に存じますが、時間がまいりましたので、本日の検討会を終了させ ていただきます。4人の先生方には専門領域を代表して、大変貴重なデータを提出して ご説明いただきまして、ありがとうございました。改めて御礼申し上げたいと思いま す。  では次回の日程について、事務局からよろしくお願いします。 ○中村補佐  次回の開催については、4月25日の月曜日15時から、場所は本日と同じく、こちらの 省議室において開催する予定ですので、よろしくお願いいたします。議事の内容として は今回、第1回、第2回でも話題に出ていた労働関係法規の説明を、担当である労働基 準局にお願いして、質疑を行います。その後は本日も参考資料−2として配付しており ますが、これまでのご議論や本日のヒアリングを踏まえ、中間取りまとめの骨子案を私 どものほうで作成させていただき、それについてご討議していただければと考えており ます。 ○矢崎座長  中間取りまとめの骨子案に関しては、次回にその骨組みをご提案することになるかも しれません。今までいただいたご意見にさらに何か追加するようなこと、お気付きの点 がありましたら、今日帰られた後でも事務局のほうにご意見を賜れれば、大変ありがた く思います。何とぞよろしくお願いいたします。これで本日の検討会を終了します。ど うもありがとうございました。                                     −了−                         ┌─────────────┐                         │照会先          │                         │厚生労働省医政局医事課  │                         │課長補佐 中村(内線2563)│                         │指導係長 双川(内線2568)│                         │代表 03-5253-1111    │                         └─────────────┘