05/04/06 第20回今後の労働契約法制の在り方に関する研究会議事録         第20回 今後の労働契約法制の在り方に関する研究会                         日時 平成17年4月6日(水)                            9:30〜11:00                         場所 厚生労働省9階省議室 ○菅野座長  ただいまから、第20回「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」を開催いたし ます。本日は、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。前回の研究 会の開催後に、法務省において人事異動があり、参集者が吉田参事官から、筒井参事官 へと替わりましたので御紹介いたします。 ○筒井参事官  筒井です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○菅野座長  本日は、春日先生、土田先生は欠席です。  前回の研究会開催後に、厚生労働省において人事異動がありましたので事務局から紹 介していただきます。 ○労働基準局監督課長(苧谷)  4月1日付けで、労働基準担当審議官が、橋から松井に替わりましたので御紹介い たします。 ○大臣官房審議官(労働基準担当)(松井)  ただいま御紹介をいただきました松井です。今度、審議官を拝命いたしまして、この 研究会に参加させていただくことになりました。よろしくお願いいたします。 ○菅野座長  本日も「中間取りまとめについて」を議題として予定しております。前回、中間取り まとめの案を事務局から提出してもらい、それに対する議論を行いました。前回の研究 会で、皆様からいただいた御意見を踏まえ、私から事務局に指示し、中間取りまとめの 修正案を作成してもらいました。まずは、中間取りまとめの案の変更点を事務局から説 明していただきます。 ○労働基準局監督課長  資料1の事務局案のうち、前回の議論を踏まえて修正を加えた点を御説明いたしま す。  1頁に目次ができましたが、その目次を飛ばして下に1頁と番号の振ってあるところ です。修正箇所については、下線を引いてありますのでそれをご覧ください。最初は 「序」の3行目は村中先生から御指摘があり、労働者の能力発揮意欲というのはいまま でもあったということですので、「従前にもまして」という御指示がありましたので、 そのようにさせていただきました。  2頁の1の(1)の最後の行は、従来労働者自身が、今までは画一的に規律されるの で、特に自分の労働契約の内容に関心がなくということでしたが、最初は労働契約の締 結による権利義務関係の設定も求めてこなかったということについて、山川先生から、 労働契約の締結そのものは個人でやるのでその表現はおかしいということで、むしろ個 別事項ごとについての「合意による権利義務関係の設定」だろうということですので、 こういう表現に変えさせていただきました。  (2)のアは、荒木先生からの御指摘で、長期雇用慣行の見直しが進んだということ が、近年の労働契約をめぐる条件変化の中に入ってくるだろうということがあり、この ように直しました。  人事管理については、村中先生から、複雑化という要素が入ってきているだろうとい う御指摘もありましたので、「しかしながら、序で述べたように」ということで、「近 年、長期雇用慣行及び年功的処遇体系の見直しが進み、中途採用の増加、採用方法の多 様化、成果主義・能力主義的処遇制度の導入・拡大など、人事管理の個別化・多様化・ 複雑化が進み、また」という形で修正いたしました。  3頁のイの段落では、このような就業形態の多様化等があった場合について、今後は 公正・透明なルールを設定するということが最初の文と二文です。  その次のところで、「このようなルールが設定されれば」と、「労使当事者が、これ に従って」という表現だったのですが、「必ず拘束され」というのはきつい言い方で、 まずこのルールに基づいて行うという形で、「これに基づいて」と直したらどうかとい う御指示がありましたので、このようにいたしました。  イの三段落目の「また、我が国全体として事前規制・調整型社会から事後監視・救済 型社会への転換や、法の支配の実現が求められてきた」と書いてありましたが、「法の 支配の実現」というのは少し大げさすぎるというか、ここで言いたいのは「法の支配の 原則に従った社会や企業の運営」ということなので、そういう表現にしたらどうかとい う話でしたので、そのように直しました。  4頁のウの(ア)「判例法理の限界」というのは、秋北バス事件等であるように、最 初は労働契約締結時における就業規則の中身が合理的な中身であれば、労働者のほうに 適用されるという判例法理を引いていたのですけれども、ここでいう「合理的」という 部分については、それほど争いがあるわけではなく、むしろ合理性という形で、抽象的 表現などでいろいろ問題が生じているのは、むしろ就業規則を変更する場合の話であ る、ということを荒木先生から御指摘いただきました。そこで、秋北バス事件でも、就 業規則の変更による労働条件の変更の法理の方を引用させていただいております。  ここに、説明を加えるために括弧で書いてあります。「(新たに作成又は変更された 就業規則の)当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに 同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない」と中身を変えま した。  (イ)「労働契約に関するルールを既存の法律に定めることの限界」のところは、菅 野座長から、わかりやすくするようにという御指示があり、基準法の体系の中に、純粋 民事的な規定が入る場合の話として4行表現を書いてあります。「今後、純然たる民事 的効力を定める規定を更に労働基準法に盛り込むとすれば、罰則と監督指導によって労 働条件の最低基準を保障する労働基準法において性格の異なる規定が増加し、法律の体 系性が損なわれることとなる」と書いております。  5頁は特にありません。6頁の真ん中辺りの下線の引いてあるところですが、「労働 契約の内容の公正さを確保するためには、実体規定だけでなく、手続規定も重要であっ て」というところです。ここは、もともと「透明なルールに従う」ということで、特に 公正性の話をしていたのですけれども、村中先生から、その手続規定による効果として はいろいろあるだろう、例えば、権利義務の明確化にも触れておく必要がある、という こともありましたし、あとは表現を少しわかりやすくするということでこのように直し ました。  「手続規定として考えられる内容は、協議や通知など多様であり、その対象者から見 ても集団的な手続のほかに個別の労働者を対象とした手続も考えられる。これらの手続 規定は、透明なルールに従って労働条件を決定することや、労使当事者間の協議を促進 することに資し、労働契約の多様性の要請に対応する方途ともなるほか、労使当事者の 権利義務関係の明確化にも役立つと考えられる」と直しました。  7頁の上から4行目の「労働契約法制においても、労使当事者間の情報の質及び量の 格差、交渉力の格差にかんがみ、また」ということで、「紛争の未然防止を図るため」 と書いてありましたが、紛争の未然防止以外にも、公正ルールの設定等いろいろあるの で「等」を入れたらどうかという御指摘が山川先生からありましたのでそのようにいた しました。  4「労働契約法制の対象とする者の範囲」については、種々御議論いただいた中で、 曽田先生が言われたように、基準法では「事業に使用される者」とはっきり書いてあり ます。これが、どこまで限定されるかという問題もありますけれども、そういう議論は 紹介したほうがいいのではないかということで、山川先生ほかからの御指摘がありまし たので、最初の段落で一つ入れさせていただきました。それから、8頁で4の最後のと ころの3行を加えました。  4の最初のところは「労働契約法制の対象を定めるに当たっては、『労働者』を定義 することにより労働契約法制の対象とする者の範囲を画する方法もあれば、『労働契約 』を定義しこれにより対象範囲を画する方法もある。いずれの方法を取るとしても、労 働基準法に定める『労働者』や『労働契約』との関係は問題となる。ここで、労働基準 法の対象とする者の範囲は、事業に使用される者に限られているが、労働契約法制の対 象とする者の範囲としては、そのような限定は必要ないのではないかとの意見があっ た。また、労働契約法制の対象とする『労働契約』と民法に定める雇用契約との関係も 問題になるとの意見があった」という形で冒頭に書かせていただきました。  そして8頁の最後の部分に、「いずれにせよ、労働契約法制の対象とする者の範囲等 の問題については、労働契約法制の内容と密接な関わりがあることから、労働契約法制 全体の検討を更に深めることに併せて引き続き検討することが適当である」と直しまし た。  5の「労働者代表制度」の(1)の真ん中より下のところに下線が引いてあります。 これは曽田先生から御指摘があり、いわゆる労使委員会のメンバーとしては、委員の半 数が労働者代表でなくても、半数以上であればいいのではないかということで、「以上 」という言葉を入れました。5行下のところにも、同じように「以上」を入れました。  (2)「現行制度の問題点」のところですが、こういう制度の中でも特に問題になる のは、一人の代表が選ばれる場合であって、過半数組合がある場合については、もとも とそういう組合が常設的ですのでそれほど問題はないだろうから、ここでの問題点は、 過半数組合がない場合の一人の代表者の場合だろうという御指摘を荒木先生からいただ きましたのでそのように直しました。  8頁の下から2行目「上記の過半数代表制度のうち、過半数組合がない場合には、一 人の代表者が当該事業場の全労働者を代表することとなるが、就業形態や価値観が多様 化し労働者の均一性が低くなる中では、一人の代表者が当該事業場全体の労働者の利益 を代表することは困難になってきている」と直しました。  9頁の(3)のア「労使委員会制度の法制化」のところの二文目ですが、「労働組合 が存在する場合には、当然、当該労働組合がそのような役割を果たすものであるが、労 働組合が存在しない場合においても、労働者の交渉力をより高めるための方策を検討す る必要がある」という文章を入れておいて、労働組合の意味も入れておく必要があるだ ろうということを、村中先生ほかから御指摘がありましたのでそのようにしておりま す。  その下の段ですが、常設の労使委員会については、問題が生じた場合の改善について は、「改善の申入れ」と書いてありましたが、労使委員会というのは「労」と「使」が 入っている委員会なので、「申入れ」ではなくて「協議」であろうということで山川先 生から御指摘をいただき、そのように直しました。  また、山川先生からわかりやすく書くようにということで、「次に制度を変更する際 にこれらの経験を活用することなども期待される」と文章を直しております。  次の段で村中先生からの御指摘で、「常設的な労使委員会の活用」というのは、「そ の事業場において労使当事者が実質的に対等な立場で自主的な決定を行うことができる ようにすることに資し」と一文で書いてありましたが、この書き方で労使委員会の設置 によって、自主的に対等な立場で実現の決定をこれで十分できるのだと取られるのは問 題だろう。自主的に対等な立場で、自主的に決定を行うことができる方向に役立つのは 確かだけれども、それで十分だというイメージは与えないようにするという御指摘があ りました。  ここでは、まず一文で書くのは区切らせていただきます。そして10頁で第1の一番最 後の部分で留意事項として書かせていただき、「もっとも、労使委員会の活用方法を検 討するに当たっては、労使委員会での決議は、団体交渉を経て締結された労働協約とは 異なり、当然に個々の労働者を拘束するものではないことに留意する必要がある」と直 しました。  第2の「労働関係の成立」のところで、山川先生から御指摘があり、11頁で採用内定 後のどの時点から就業規則が適用されるのかという問題がある。例えば、採用内定取消 しというのは、就業規則でいうと「解雇の事由」の中であるならば、就業規則に書いて おく必要がある、ということになるのかならないのかという問題もあるので、こういう 論点を入れておくべきだということがありましたので、このように直しました。  12頁から14頁は特にありません。15頁で、「就業規則と労働契約との関係」の部分で す。アの「就業規則の規定の民事的効力」の内容について、秋北バス事件で言っている のは、「就業規則は、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり」と最高 裁判決が言っております。  アの15頁の最後の部分でいう「『合理性』の内容を具体化することについて、例え ば、『著しく不合理である場合を除き』とすることを含めて」と。つまり、通常は就業 規則に書いてあれば、労働契約の中身にしようという形で動いているので、それに対す る反証としては、「著しく不合理である場合を除き」と書くことが実務と一番合ってい るのではないかという議論もある。  それから、「このような就業規則の拘束力に関する議論においては、あらかじめ作成 された契約条項である約款の効力に関する議論一般との整理も必要である」というこ と。この辺りは土田先生が御指摘されましたので直しました。  16頁から20頁は特にありません。21頁の辺り、就業規則の変更の場合の労働条件の不 利益変更のところです。21頁の真ん中より上の辺りで、多数組合の合意があることの場 合の効力として書いてあります。二文目に下線が引いてありますが「一部の労働者に対 して大きな不利益のみを与える変更の場合を除き、労働者の意見を適正に集約した上 で、過半数組合が合意をした場合又は労使委員会の委員の5分の4以上の多数により変 更を認める決議があった場合には、変更後の就業規則の合理性が推定されるとすること について」と。ここで通常「推定」というのは、事実の推定の場合は「推定」というけ れども、「評価」の場合が「推定」でいいのかということで、「推測」と使われた判例 もあるので、「推測」という文言も入れたほうがいいのではないかということです。権 利の推定というのはありますが、そういう議論もあるということで「推測」という言葉 を入れました。  土田先生の御意見として、労働者の意見を適正に集約したことを、使用者のほうで証 明責任という形で入れて動かすのがいいのか、あるいは、それ自体は特に推定の最初の 要件として入れるのではなく、労働者の意見を適正に集約されなかったことを証明し、 合理性の推定を覆す、という形で行うことが適当である場合もある。そういう意見もあ るだろうということもあり、このようになお書きを入れました。  (2)の最後のところは、これを「法律で明確に限定することは適当でないとの意見 もあったが、裁判規範として立法化する際には『合理性』だけでは抽象的でありもう少 し具体化が必要」。これは、法務省の吉田参事官から御指摘がありましたので、こうい う意見もあったということで紹介しております。  22頁は特にありません。23頁は西村先生と座長からありましたが、「雇用継続型契約 変更制度」の案の(1)を説明する際には、雇用を維持したまま変更の効力を争うことがポ イントであるから、そこは案の中に書いておくようにという指示がありましたので、 「雇用を維持したまま当該変更の効力を争うことを可能にするような制度を設ける」と 直しました。  24頁、25頁は特にありません。26頁の四段落目の「そこで」というところに下線が引 いてあります。ここは契約なのか、個別の合意なのかという表現で、ここは「個別の合 意」という表現が適切であるという御指摘がありましたので、そのような表現に直しま した。  27頁、28頁は特にありません。29頁の(2)の上の6行目辺りは、菅野座長の御指摘 のとおり、「個別の合意」という表現にしております。  30頁は特にありません。31頁は、総論の部分で土田先生から御指摘があった関係で す。「労働者の付随的義務」を考える前に、その根源としては「誠実義務」という議論 もあるということですので、その考え方を紹介しておく必要があるという御指摘があり ましたので、ここの部分に入れました。  (2)の上の二文目ですが、「このような付随的義務や、上記(1)の就労請求権に ついて議論するためには、付随的義務の根源として誠実義務があると考えるか等そもそ も労働契約における権利義務の全体構造をどう考えるかを議論する必要があるとの意見 があった」と直しました。  32頁から39頁までは特にありません。40頁は、39頁の下のところからあります「整理 解雇」に関する件です。真ん中辺りに下線が引いてありますが、基本的にはこの整理解 雇の場合の解雇権濫用の有無を判断する場合の考慮要素をどうするかということで、わ かりやすく書くということと、その考慮要素をどのような方法で明らかにするか。法律 なのか指針なのか、あるいは何なのかということも検討する必要があるという御指摘が 土田先生からありましたので、このような文章に直しました。  「いずれにしても、整理解雇について労働基準法第18条の2にいう解雇権の濫用の有 無を判断するに当たっては、予測可能性の向上を図るため、考慮事項を明らかにする必 要があり、具体的には、人員削減の必要性、解雇回避措置、解雇対象者の選定方法、解 雇に至る手続等を考慮しなければならないことを明らかにすることについて議論を深め る必要がある。あわせて、これをどのような方法で明らかにするかについても検討する 必要がある」ということです。  次のところで、「また、整理解雇に当たり使用者が講ずべき措置として次の事項を指 針等で示すことについて検討することも考えられる」ということで、(2)と(3)の関係に ついて、いろいろな先生方から議論がありました。(2)の解雇回避の努力義務関係と、 (3)の代償措置の関係で、これは補充関係にあるのではなく、別ものだろうということ が村中先生の御指摘でした。あるいは、山川先生と土田先生から、(2)解雇回避ができ ない場合の代償措置なので、(3)はそういう位置付けではないかということもありまし た。初めは「(2)の補充」と書いてありましたけれども、そこは(3)のところで「(2)に よる解雇回避措置が困難である場合に」という表現に直しました。  41頁は、荒木先生の話と菅野座長の御指摘がありました。金銭解決制度については、 解雇の実態に即した柔軟な解決という視点が紹介されるべきだろうということです。ま た、諸外国、特にイギリスやフランス等では、実際に金銭解決が非常に多くなってきて いるという御指摘もありましたので、このように直しました。  「現在の解雇権濫用法理の下では裁判上解雇は有効か無効かの解決しかないところ、 金銭解決制度は柔軟な救済手段を認めようとするものであり、解雇の実態に即した柔軟 な解決と紛争の迅速処理に資するのではないかとの意見があった。さらに、諸外国にお いても、解雇が違法な場合に原職に復帰させる制度もあるが、実際には金銭解決が原則 となっているとの意見がある」ということです。  三段落下のほうで、この労働審判制度において、実際に解雇が無効と判断される場合 の金銭解決について初めはネガティブな書き方をしていましたけれども、労働審判制度 において可能な場合がある積極的なほうを書く必要があるのではないか。この辺は山川 先生、西村先生から御指摘がありましたので直しました。  「さらに、労働審判制度においては、これが非訟事件手続として位置付けられている ことから、解雇が無効と判断される場合にも、審判手続における当事者の意思に反しな い場合には事案の実情に即して金銭解決を示し得るとの見解があり、今後の運用が注目 されるとの意見があった」と直しました。  42頁から46頁までは特にありません。47頁の(2)「有期労働契約の締結、更新及び 雇止めに関する基準」の二段落目です。その際に契約を更新することがあり得る旨が明 示されていた場合には、有期契約労働者が正当な権利を行使したことを理由とする雇止 めはできない。この正当な権利を行使する場合の具体例を示す必要があるという御指摘 が土田先生からありました。例としてはいろいろありますが、「年次有給休暇を取得す るなどの」ということを例として書いております。  次の段落は山川先生から、日本語をもう少しわかりやすくということでこのような表 現になっております。「ただし、この場合、使用者がこのような雇止めの制限を免れる ために、実際には契約の更新を予定しているにもかかわらず更新をしない旨を明示しつ つ実際には更新を繰り返すことや、有期契約労働者を長期間継続して雇用すること、中 でも反復継続して更新を繰り返し期間の定めのない契約と実質的に異ならない状況とな っていながら最後の更新時のみ次回の更新はない旨を明示して雇止めをすることが考え られる」と直しました。  48頁は、47頁に書いてある3の「有期労働契約に関する労働契約法制の在り方」の (1)「試行雇用契約」、いわゆるトライアル雇用契約の関係の最後の部分です。山川 先生から、契約のところで「試用期間に上限を定める」ということを入れた関係で、ト ライアル雇用のほうはどうなのだという議論が起こり得るだろうからということで、そ れは指摘しておく必要があるということがありました。  これに関しては、第17回の試用期間のときに、西村先生の御指摘で、試用期間には上 限を定めるべきではないという、特に企業の方々の意見がありましたけれども、それは 契約期間中の雇用が保障されるかどうかという問題もあるということ、それから、業務 の専門性により、適格性判断の期間が長く必要である、という企業側のニーズについて は、トライアル雇用契約みたいなものを活用することも考えて、試用期間としては期間 の定めのない契約がいつまでも不安定な時間、置いておくのは問題だという御指摘があ りましたのでそれとの関係もあります。座長と相談いたしまして、このような文章にさ せていただきました。  「また、上記第2の2で述べたとおり期間の定めのない労働契約における試用期間に 上限を定めることとした場合には、これとの均衡から試行雇用契約においても期間の上 限を定めることが問題となり得るとの指摘があった。これについては、試行雇用契約は 契約期間中の雇用が保障されることから試用期間と同一には論じられず、業務の専門性 等により適格性判断の期間が長く必要である場合に対応するために、試行雇用契約につ いては期間の上限を定めないこととすることについて引き続き検討することが適当であ る」といたしました。修正部分については以上です。 ○菅野座長  ただいまの事務局の説明も踏まえ、現段階での中間取りまとめの案について、この点 は修正したほうがいいのではないかというところがあれば御指摘ください。 ○曽田先生  修正ということではないのですけれども、7頁の「労働契約法制の対象とする者の範 囲」のところでいろいろ議論をしてきております。それで、ここに書いてあるように労 働者を定義することによって規定するのか、それとも労働契約を規定することによって 規定するのかという議論が出ております。私は、どちらかというと「労働者」という言 葉が、労働基準法において規定されているということがあり、労働基準法というのは労 働条件の最低基準を定めていたり、あるいは行政的な関与を認める規定が多かったりし ます。そういう法令の中に規定されている労働者という言葉を、この労働契約法を作る ときに、それを用いるよりは、「労働契約」という言葉を規定したほうがいいのではな いかということを申し上げていました。  それでは、具体的にどのように規定するのかがなかなか難しくて、特に民法の雇用の 規定との関係で、それと差別化できるのかというところが、労働契約を決める場合には 難しい問題があると思うのです。それでは、労働契約は何かというと、大部分は雇用契 約であるのだけれども、その周辺にある請負や委託であっても、使用者に対する従属性 が強いものについては、やはり労働契約という形で取り込んでいくような考え方がある と思うのです。  そのように考えてきたときに、労働契約を規定することがいいといいながら、具体的 にどのように規定したらいいかというところがなかなかわかりにくいのです。本日は内 田先生もいらしていますので教えていただきたいと思うのですが、一つ考えられますの は、労働基準法上の労働者の概念を規定する中で判例が言っているのは、使用従属関係 がある場合には、例えば委託や請負的な契約であっても、労働者に該当するのだ、労働 基準法の定める労働者に該当するのだという判例がいくつかあります。  その概念を借りてきて、例えば労働契約は使用従属関係の下において、一方が労務の 提供をし、相手方がこれに報酬を支払うことにより効力を生ずる、というような規定の 仕方をすることは考えられるかと思うのです。そのようにしたときに、民法の雇用の規 定とどう違うのだというところが出てくるわけです。民法の雇用の規定は、一方が労務 に服することを約し、相手方がそれに報酬を支払うというのが雇用契約だと条文上は規 定しています。民法の規定の仕方というのは、結局雇用・請負・委任といういくつかの 典型契約を並べて規定しているところにも、条文だけの問題ではなくて、典型契約の並 びの中で雇用というと、請負・委託、委任は排除されて、雇用契約はこういうものだと いう規定の仕方になってしまうわけです。  その民法の規定とは離れて、今申し上げましたような判例が言っている使用従属関係 がある中で、片方が労務を提供し、片方が報酬を払うという形で契約関係を規定するこ とはどうかということを、前回の議論に参加しながら考えてきました。 ○菅野座長  今のような定義は、まさしく労働基準法上の労働者の定義でもあります。 ○曽田先生  そうです。 ○菅野座長  労働者を使用する契約が労働契約です。今のような定義は、労働基準法上の労働者な り、労働契約とぴったり一致することになりますね。 ○曽田先生  そうです。ただ、規定の方向性といいますか、労働基準法上の労働者の概念を使っ て、労働者とはこうこうというふうにして、この契約法制を作るのではなくて、労働契 約とはどういう契約だという形から規定したほうが、この法律を作る精神にマッチする のかと。結果的には同じことを言っていることになると思うのです。 ○菅野座長  今の御意見は、根本的な問題として、労働基準法上の労働者なり労働契約と同じにす るのか、もうちょっと拡張するのかということがあります。あとは、どちらから定義す るのかということですね。 ○曽田先生  そうです。どちらの方向から定義していくかということです。 ○菅野座長  それについての御意見として承っておきます。 ○村中先生  47頁の「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」のところの最後のとこ ろで、脱法的な場合があるので、それを注意しなければという議論をしていて、最後に 山川先生から「期間の定めのない契約と実質的に異ならない状況となっていながら」と いう文章を入れてはどうかということでした。実際に問題となるのは、これと「合理的 な期待が生じている場合」とあるわけです。「中でも」と書いてありますので、最も問 題が大きい場合という形でこのようなことを入れていただいたのだと思います。  誤解を避けるために、実際には契約の締結手続をきちんとやっていると、実質的に異 ならない状況というのは認められないのが普通ですので、やはり「合理的な期待が生じ ていながら」という言葉も入れておいたほうがいいのではないかと考えております。 ○菅野座長  正確にはどこに入れるのですか。 ○村中先生  「ただし」の文章の中の、「中でも反復継続して更新を繰り返し期間の定めのない契 約と実質的に異ならない状況となっていながら」、その後に「あるいは契約の継続に対 する合理的な期待を生じていながら」と。あるいは「期間の定めのない契約と実質的に 異ならない状況となっていながら」というのを、「契約の継続に対し、合理的な期待が 生じていながら」と書き換えてもいいかと思います。両方並べるか、片方にするかで す。たぶん「合理的な期待」というもののほうが範囲が広いと思います。 ○菅野座長  そのようなことで検討させていただきます。 ○村中先生  もう一つは37頁の「解雇」の事由のところです。解雇権濫用法理の3行目以下で、 「解雇は、労働者側に原因がある理由、企業の経営上の必要性又は労働協約の定めによ るものでなければならない」ということ自体はこれでよろしいのですけれども、ちょっ と心配なのは「労働協約の定め」という書き方です。「例えばユニオン・ショップ協定 」と書いてありますので、実際にはこれだけを指しているかと思います。例えば、労働 協約でほかにもいろいろと定めているような場合まで想定しているわけではないのだろ うと思います。  そういうことを考えると、例えば就業規則の定めとか、いろいろそういうことも考え なければいけませんので、そういうことだということで私は理解しておりますので、 「ユニオン・ショップ協定」を前提にして書かれているということであれば、それはそ れで結構です。 ○菅野座長  ここは、何かよい限定がありますか。 ○村中先生  「ユニオン・ショップ協定」と書いてしまっても何かちょっと。 ○菅野座長  クローズド・ショップもあります。日本ではあまりないのだけれども。解雇されると いう組合保障に関する労働協約の定めとか。しかし、組合保障というのは一般に使われ ている言葉ではないから講学上の言葉で。 ○村中先生  でも、表現としてはこれでよろしいかと思います。 ○菅野座長  理解としては、そういうものだということを確認しておくということですね。 ○村中先生  そういう理解だったということで。 ○菅野座長  はい。 ○村中先生  もう一つは48頁のところです。これは、前に山川先生が御指摘されていたと思うので すが、二段落目の「これについては」以下のところで、「有期労働契約に関する手続と して、上記2で検討したもののほかに、契約期間満了後に期間の定めのない契約に転換 する」ということで、「転換」という言葉がなんとなく無期契約への転換のようなこと と関連してそぐわないのではないか。これは、有期契約が満了前に何か性質を変えてし まうという趣旨であれば、「転換」でもいいのかなと思うのですが、「満了後に」と書 いてしまうと。 ○菅野座長  結び直すということだと思うのです。 ○村中先生  そうすると「移行」とか、そういう言葉のほうが。 ○菅野座長  ほかに良い案がありますか。確かに前回も山川先生から御指摘がありましたので、も う少し良い言葉があればという気がします。「移行」のほうがいいですか。 ○山川先生  「移行」でも、自動移行か、新契約の締結かで性質が違うのですが、広い意味での移 行として、新契約の締結等も含め、あるいは予約を認める場合も含むとか、そういうこ とであれば「移行」ということのほうが、「転換」よりいいかという感じがします。 ○菅野座長  ここも考えさせていただきます。 ○村中先生  特にどうしてほしいというわけではないのですけれども、今後の議論にもなるかと思 います。20頁から21頁にかけて、就業規則の不利益変更に係る多数組合の合意がある場 合に合理性を推定(推測)ということですけれども、一つは20頁で判例の理解に関して は、一応「多数組合の合意があればほぼ合理性が推測されるとする方向に収斂してきて いたが」という意見だったという形でまとめてあります。  私は、この意見に根拠がないとは思いませんし、大体そうかなと思うのですけれど も、判旨で明確に多数組合の同意があるから合理性があるのだと言い切ったというかと いうと、そういうわけでもないです。事実として多数組合が同意している場合には、大 体合理性が推測されているというものがあり、裁判所が実際にどの程度多数組合の同意 を見ているのかということは、かなり重視しているのだろうとは思いますけれども、ち ょっと自信のないところがあります。  それを前提にすると、多数組合が同意すれば合理性があるのだということを推測して しまうということが、現行の判例の状況との関係でどうなのかについては、判例状況そ のまま移行するということにすぎないのか、それとも一歩進んでいるのかというのはち ょっと議論があるところかと思います。  私自身は、一歩進むとしてもこれも一つの解決だと考えています。ただ、予測可能性 を高めるという意味では高いですけれども、もう一つ紛争という点から見ると、この末 尾の「なお」以下に下線で入っていますが、おそらく今度は多数組合の同意の適正さみ たいなものに関する争いがそこで生じてくるという問題もあります。土田先生はそれを 懸念されて、とりあえずこういう形で証明責任をひっくり返すという意見を言われまし た。証明責任をひっくり返しても主張するのは自由ですし、その辺りでそういう問題も 生じてくるだろうという気がいたします。今後こういう方向で議論をして、そういう問 題についても詰めればどうかと思います。  「そこで、例えば」という言葉を下線で入れていただいているのですけれども、この 「例えば」というのは、次の「一部の労働者に対して大きな不利益のみを与える変更の 場合を除き」のほうにかかっていくという理解でよろしいのですか。それとも、「例え ば」は文章全体にかかっているのですか。前回の議論の流れからいうと前者であると理 解したのですが、それはそれでよろしいということですか。 ○菅野座長  そうです、除くべき場合にはほかにあるかもしれないということです。 ○村中先生  そういう議論を、前回私はさせていただいたと思います。 ○労働基準局監督課長  除く場合を、「その他」とか「等」とあやふやにしてしまうと、この推定規定が動か なくなってしまいますので、入れる議論をした以上は何か確定させておかないとまずい だろうということで、「例えば」という形で書かせていただきました。「等」と書きま すと、最後に決めるのが「等」となるのかということでは動かなくなってしまうという 懸念がありましたので、最初のところに「例えば」を入れさせていただきました。 ○山川先生  今のところですが、先ほどの説明で「(推測)」と入れていただいたのは、前回の私 の発言に配慮していただいたようでありがたいのですけれども、私も「(推測)」とい う言葉が良いということではなく、判決はこの表現を使っているけれども、必ずしも法 律的な使い方ではないので、むしろこの報告書では「(推測)」というのはカットして いただいてもいいのではなかろうかという感じがします。  確かに権利推定というのもあるのですけれども、権利推定というのは事実を推認する というよりも法的な原則と例外を定めたものですから、「実質的には原則として合理性 を認める、ただし」というようなことになる。あるいは「原則として労働者を拘束す る、ただし」ということが実際の法律上の帰結になるということかと思います。どのよ うに書くかは、どちらかというと法制的な、あるいは技術的な問題だと思います。です から、この段階で「(推測)」ということをここに書いていただく必要はなくて、むし ろ前回吉田参事官が言われましたように、原則と例外の但し書の中身をどうするか、逆 に原則の中身をどうするかのほうの問題だと思いますので、この「(推測)」はこの報 告書の段階では取っていただいてはいかがかと思います。火をつけておいて、また消す ようなことで申し訳ありません。 ○荒木先生  先ほどの村中先生のお話とも関連して前のほうに戻りますが4頁です。ウの(ア) 「判例法理の限界」のところで書いてある内容ですが、判例のルールは予測可能性が乏 しくて行動規範となり得ないということしか書いていないのですが、これでは少し足り ないと思いました。  判例法理というのは、既存の法体系を前提に、判決当時の社会通念に従って積み重ね られてきたものです。それが、現在の雇用労働関係で適切かどうかというのはまた議論 しなければいけなくて、既存の制定法の解釈から出てこない新たなルールを立てる必要 もある。だからこそ立法論をやっているということです。実際にこの報告書の中には、 既存の制定法の解釈から出てこないようないろいろなルールも提言しているわけですの で、そういう必要があるのだということを書くべきではないか。  例えば、「規範とはなりにくい」の後に「また判例法理は既存の法体系を前提に、判 決当時の社会通念を踏まえて形成されたものであるところ、今日の雇用労働関係の下に おける、より適切なルールを定立する必要性が高い」とか、「高まっている」とか。実 際、労働者側からする金銭解決の申立てなどは、現行法の下ではなかなか難しいです。 それから、雇用継続型の契約変更制度とか、さまざまな新しいルールも提言しているわ けですから、これはまさに立法論の役割です。これらの新たなルールが必要があって、 それは判例法では対処できないということを書くべきだと思いました。  (イ)の下線部分も、罰則と監督指導によって担保される法律の中に性格が異なる規 定が入っていて、体系性が損なわれる点、つまり、刑罰法規と監督との関係だけ書いて ありますが、ここで議論したように、強行法規に限らない任意規定のようなものも労働 契約法では考える、ということも書いておいたほうがいいのではないかと思います。  「純然たる」のところを、「今後、罰則及び監督指導を前提としない多様な」に変 え、「今後、罰則及び監督指導を前提としない多様な民事的効力を定める規定を、更に 労働基準法に盛り込むとすれば」とするのが一案です。あるいは、「体系性が損なわれ る」の後に、「また、労働契約に関するルールには、労働基準法第13条の定める強行的 ・直律的効力とは異なる、より多様な民事的効力も考えられるところ、これを現行の労 働基準法に盛り込むことは必ずしも適切ではない」とすることも考えられます。後者の 案のほうがよりいいかもしれません。前半に対しては以上二点です。 ○菅野座長  4頁の(ア)(イ)に関する意見についてはいかがですか。なるほどと思いますの で、そちらの方向で修正するようにもう少し検討していただきます。 ○荒木委員  別の点ですが、41頁の3「解雇の金銭解決制度」について、前回の私の意見というこ とで書いていただいているのですが、少し誤解を生むかもしれませんので、以下のよう に変えたほうがより私の言った趣旨が伝わるかと思います。私の主張は、諸外国では金 銭解決制度という選択肢も取り入れている。金銭解決制度は一切認めないという国は、 全部を見ているわけではありませんからわかりませんが、少なくとも英、米、独、仏な どではそうである。それに対して日本は、金銭解決制度を一切排除して、オール・オア ・ナッシングの有効か無効か、ということになっているということを言及したのであり ますので、「さらに」以下を次のように変えてはいかがかと思います。  「さらに諸外国においても金銭解決を原則とし復職を認める例、復職を原則としつつ 金銭解決を認める例等、金銭解決を含めて多様な救済制度を認めている」ということで す。 ○菅野座長  ここも、今のようなことでよろしいですか。 ○内田先生  17頁の一番最後のパラグラフです。「労働基準法第93条は、『就業規則で定める基準 に達しない労働条件を定める労働契約』についての定めであるが」とあって、その後に 「個別の労働契約において定めのない事項についても就業規則で定める基準によるべき ことに留意すべきである」となっています。この最後の部分は、第93条の最低基準効の 効果の中身を言っているのでしょうか。 ○労働基準局監督課長  そうです。 ○内田先生  そうすると、就業規則が労働者を拘束する効力を持つということと、最低基準効を分 けるという形で論述がずっと続いていますけれども、この効果を入れてしまうと、労働 者を拘束する効力との効果上の違いというのは、もちろん最低基準効を定めるという部 分はあるのですが、合意がない部分について、就業規則が埋めるという点では違いはな いということになるのでしょうか。 ○労働基準局監督課長  最低基準効というのは、労働者にとっての最低基準効ですので、合意がなくてもあっ ても、就業規則を下回っているものがあれば、特に合意がある場合が主なのでしょうけ れども、就業規則で定められた基準よりも以下の水準で合意があっても、就業規則のと ころまで労働条件が上がるという効力です。拘束というのは、労働者が合意した覚えが なくても、労働者を拘束するというものです。基本的には性質が違うものだと思いま す。 ○内田先生  特に個別の労働契約に定めがない事項については合意がないわけで、その部分につい て就業規則が埋めるという点では同じではないですか。 ○労働基準局監督課長  そういう点では同じ側面もあると思います。 ○内田先生  効果が発生する要件を違えるという形になっていますので、ここの効果の区別がきち んとつくのかという疑問を持ちました。 ○菅野座長  実際上就業規則で規定している労働条件は、そのとおり保障される。それより有利な 個別契約は存在し得るのですが、とにかく就業規則で規定している労働条件は保障され る、というのが第93条の趣旨だと解されていると思うのです。それを、労働者が契約し たときに、それより不利な条件を定めたかどうかにかかわらず、あるいは何も定めてい ない場合でも就業規則の条件は保障される。それは援用できる、それを権利として主張 できる。  それ以外で、労働者を縛る義務規定や、既存の労働条件を就業規則で下げる場合はど うかというのが、別の拘束力の問題として論じられている。やはり、場面が違うと理解 されるのではないかと思います。 ○内田先生  わかりました。それから、最初に曽田先生がおっしゃった、労働者か労働契約かとい うところですが、純然たる契約法として規定を置くのであれば、民法上の雇用契約と重 なる形で、同じような範囲の契約類型として規定を置いても、実質的に労働契約性を持 った委任契約とか請負契約に類推することが可能だと思います。契約法には混合契約と いう概念がありますが、罰則がかかっていなければそのような類推適用が割合自由にで きますので、そういうやり方もあるのかという気がいたしました。 ○菅野座長  非常に細かい点ですが、15頁の下線が引いてある最後の部分の「議論一般との整理も 必要である」というところで、「議論」は「理論」のほうがいいのかという感じがしま す。「理論一般との整理」というのは、「整合性」ぐらいではないかと思うのです。 ○山川先生  48頁ですが、前回の私の発言について書き込んでいただいてさらに検討ということで すが、以前に議論があったということを失念していまして失礼しました。一つは「試行 雇用契約については期間の上限を定めない」というのは、もちろん労働基準法第14条は かかるということでしょうから、念のためでいえば、「労働基準法第14条とは別には期 間の上限を定めない」ということになろうかと思います。  あとは内容的な点で、検討ということですけれども、これは試用期間の上限を定めた 場合に、それでは専門的な業務等については期間が短かすぎる。そういう場合には、試 用期間が使えないので、当初有期契約を設定する必要があるということでしょうか。そ れは、試用期間の上限そのものの問題として、本来的には議論すべきことかという感じ がしなくもないのですけれども、「引き続き検討」ということなので、これで結構かと 思います。  後段のほうの理由まで必要なのかについては、試行雇用契約中は身分保障があるの で、その点だけでも足りるような感じもしたのですが、実質上の必要性ということをこ こで書く必要があるのかという点はちょっと考えたほうがいいのかという気もします。 いずれにせよ、「引き続き検討」ですので、その点はコメントだけにしたいと思いま す。 ○菅野座長  試用期間の上限を設けるということがいいのかどうかということで、試行雇用契約の 話も出たという記憶があります。 ○山川先生  すみません、その辺りの記憶がはっきりしません。いずれにせよ、このままで結構で す。特に修正を希望するということではありません。 ○菅野座長  ほかにはいかがですか。  議論が出尽くしたようですので、本日の研究会でお出しいただいた議論に基づく修正 等を行った上で、中間取りまとめとしたいと思います。修正の仕方は、先ほどの御意見 を尊重するということで、私に御一任いただけますでしょうか。                  (異議なし) ○菅野座長  中間取りまとめの新聞発表等の取扱いについても、事務局と相談の上タイミングを見 て行うことにしたいと考えますがよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○菅野座長  このタイミングとしては、次回予備日として予定しておりました4月14日ぐらいまで に発表を行いたいと思いますがよろしいでしょうか。  それでは、そのようにさせていただきます。今後の当研究会の検討日程ですが、本日 の議論を踏まえて中間取りまとめを発表した後、これを受けて当研究会の外でも労働契 約法制の在り方についていろいろと議論がなされると思います。当研究会としては、こ ういう動きも見ながら、一カ月ほど期間を置いて5月中旬ぐらいから第2ラウンドの議 論を再開したいと思います。事務局から、次回以降の日程について説明をお願いいたし ます。 ○労働基準局監督課調査官(秋山)  以前に御了承いただきました日程案では、4月14日を予備日としておりましたが、今 回の中間取りまとめについて御意見が出尽くしたということですので、予備日の研究会 は実施しないことといたします。事前に参集者の先生方の日程を調整させていただき、 5月以降の日程を9月まで、ただいま配布しておりますペーパーのとおり実施したいと 存じますがよろしいでしょうか。 ○菅野座長  日程について、事務局の提案がありましたがよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○菅野座長  それでは、そのようにさせていただきます。次回の日程についてお願いいたします。 ○労働基準局監督課調査官  次回の研究会は、5月19日(木)の17時から19時まで開催したいと存じます。議題及 び開催場所については追って御連絡いたします。 ○菅野座長  本日の研究会はこれで終わります。いろいろ貴重な御意見をありがとうございまし た。 照会先:厚生労働省労働基準局監督課政策係(内線:5561)