資料1

国が提示する全国共通した主要な疾病・事業の「指標」についての考え方

(1) 患者中心の視点。
   → 医療提供体制の視点のみではなく、患者の視点を中心とした「指標」を設定。
(2) 質の向上の実現に対応した視点。
   → 量的な整備目標という視点ではなく、医療提供体制の質的な観点を重視し、国民に対し良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制の構築に向かう「指標」を設定。
(3) 単数ではなく複数の視点。
   → 一つの視点だけではなく、複数の視点でもって質の高い効率的な医療提供体制の構築を検証する「指標」を設定。
都道府県が住民に提示する「数値目標」についても同様の視点でもって検討。



指標の考え方(疾病関係)<イメージ>

予防・検診

 検診受診率
 精密検査受診率
 保健指導実施率
 異常率(高血圧・耐糖能異常等)
 り患率

リハビリ・在宅療養・ターミナル

 リハビリテーション実施率
 要介護認定者率
 往診実施率・訪問看護実施率
 年齢調整死亡率・標準化死亡比SMR
 在宅復帰率
 在宅看取り率
治療・診療

 受療率
 平均在院日数
 合併症り患率
 疾病の治療継続率
 疾病登録率

医療提供体制

 (特定の分野・機能の)診療可能医師率,専門医率
 (特定の分野・機能の)病床率(ICU等)
 (特定の分野・機能の)施設率,夜間診療施設率
 往診可能医師率
 かかりつけ医保有率
 連携パス利用率
 下線は、現在の統計からすぐに算出することが困難な指標
 率は、原則として、対象住民・対象患者数を分母とした割合とする



医療の質の三側面の例

  構造 過程 アウトカム
患者関連アウトカム 専門家関連アウトカム
アクセス性:物理的・社会組織的 地理的要因、専門科の掲示(外来、救急、往診等)、地域住民の特性(高齢者割合等) 受療の適時・遅延、受療しやすさの違いによる利用パターン、診療時間、休診 未診断の疾患、予防できた疾患、罹病率、死亡率、障害率、アクセスに関する満足度、社会・居住地域による相違 アクセスや改善努力についての満足度や意見
技術的マネジメント 物理的構造、施設、設備、専門科目、開設者、関連施設、職員数・職種・資格、職員組織、財務・会計組織、質管理メカニズムの有無と組織、職員の職場環境への満足度(施設設備、人員、同僚や患者との関係、教育の機会等) ニーズにあったサービスの提供状況、診断と治療の適切性(確定診断)、専門家の定義するあるべき医療の厳守 患者全体や疾患群等ごとの死亡率と障害、合併症、身体・心理・社会機能の回復、アウトカムおよびアウトカムに関連すると考えられる構造と過程についての患者の満足度 設備・施設・同僚の資格・相談の機会についての満足度、管理運営に邪魔されずに患者ケアに費やせる時間およびよい仕事ができるための状況についての満足度、相談に関するタイプと程度への満足度、医療の質への意見
人間関係の過程のマネジメント 専門家が患者に適切な時間を費やすことができるか、患者からの示唆や不満を扱う適切なメカニズムの有無と機能、管理への利用者の参加 職員の患者への態度、関心、礼儀、患者の自主性の尊重、プライバシーへの配慮、説明、支持、患者・疾病・行動への評価的ではない受容、患者を急がせない ケアのアメニティおよび人間関係における満足度、疾病とケア内容の理解、ケア内容の遵守、主治医の交替や自院以外のサービス利用の有無、疾病や障害に対処するための行動の確立、適切にケアを利用できるようになること 患者との関係への満足度、患者の行動への意見、患者の関心や問題についての知識
治療の継続性 家庭医などケアの中心となる専門家との調整、紹介先およびそのフォローの調整、一貫した管理と継続のための情報の維持のための調整、職員の転職および在職期間 患者ケアに関与した医師数と施設数、医師との関係の阻害(予約なしの受診の頻度、紹介なしの外部医師への受診)、紹介の頻度と適切性、異常所見のフォローの程度、予約キャンセルのフォロー、ケア内容の遵守、現在の治療で過去の診療情報を活用した証拠 処方内容の遵守、予約キャンセルのフォロー、紹介なしの外部医師への受診、健康状態の不適切な結果、継続性への調整と医師患者関係の安定性についての患者満足度、適切な相談先を活用する能力 継続性を高めるための調整についての満足度、患者の治療歴・生活歴・家庭状況・環境ストレス・患者の関心・対処能力と弱点などの知識
(出典)伊藤弘人 医療評価.真興交易(株)医療出版部.2003



長谷川友紀

表4  メリーランド病院協会の急性期病院のClinical Indicator

院内感染症発生率 病棟のタイプ別、患者のリスク別の院内感染発生率
 院内感染症/1000人・入院日
 菌血症/中心静脈を使用した1000人・入院日
 肺炎/人工呼吸器を使用した1000人・入院日
 尿路感染/膀胱留置カテーテルを使用した1000人・入院日
ICUにおけるデバイスの使用率 病棟のタイプ別の機器使用頻度
 中心静脈を使用した延べ患者数/全延べ患者数
 人工呼吸器を使用した延べ患者数/全延べ患者数
 膀胱留置カテーテルを使用した延べ患者数/全延べ患者数
手術創の感染率 以下の術式での手術創感染率
 CABG
 股関節形成術
 膝関節形成術
 腹式子宮摘出術
入院死亡率  全入院患者
 TIAを伴わない脳血管障害(DRG014)
 呼吸器系の感染と炎症、17歳以上、合併症・併発症を伴うもの(DRG079)
 慢性閉塞性肺疾患(DRG088)
 肺炎、17歳以上、合併症・併発症をともなうもの(DRG089)
 心不全とショック(DRG127)
 消化管出血、合併症・併発症をともなうもの(DRG174)
 腎不全(DRG316)
 敗血症、17歳以上(DRG416)
 人工呼吸器を必要とする呼吸器系の診断(DRG475)
 HIV、主要な病態をともなうもの(DRG489)
 その他全てのDRG
新生児死亡率 出生体重別、入院経路別の死亡率
 出生体重 750g以下、1000g以下、1800g以下、1801g以上
 入院経路 病院内で出産、他院からの転送
周手術期死亡率 全手術患者、麻酔リスク別(ASA1-5)の周手術死亡率
分娩管理 帝王切開率(総、初回、2回目以降)、帝王切開後の経膣分娩
予定しない再入院 期間別、疾患別の予定しない再入院率
 
期間別 15日以内、31日以内
疾患別  
  全疾患
呼吸器系の感染と炎症、17歳以上、合併症・併発症を伴うもの(DRG079)
 慢性閉塞性肺疾患(DRG088)
 肺炎、17歳以上、合併症・併発症をともなうもの(DRG089)
 心不全とショック(DRG127)
 狭心症、胸部痛及び関連病態(DRG140、143)
外来処置後の予定しない入院 処置別、入院目的別の予定しない入院率
処置別:
   心臓カテーテル
 消化管・呼吸器・泌尿器系の内視鏡検査
 全ての外来手術
入院目的別 入院治療、様子観察、両者の合計
予定しないICUへの再転科  
予定しない手術室への再入室
CABGによる死亡率

全手術患者、麻酔リスク別(ASA1-5)の死亡率
ただしCABGは診断目的で単独に行われたもののみが対象
抑制 抑制数:件数、患者実数、2回以上抑制患者数
抑制時間別件数:1時間以内、4時間以内、16時間以内、24時間以内、24時間超
理由別抑制件数:認識障害、治療の円滑化、転倒の危険、破壊・粗暴行為、その他
時間帯別抑制件数:7:00-14:59、15:00-22:59、23:00-6:59
転倒・転落
件数 転倒・転落件数
理由別 患者の健康状態、治療にともなうもの、環境、その他
傷害別 傷害を伴うもの、傷害程度(severity score)1-3
回数別 2回以上の件数
鎮静・麻酔に伴う合併症 重症度・治療の必要度別の件数
 酸素投与を必要としたもの
 酸素飽和度の中等度の低下を認めたもの
 酸素飽和度の重度低下を認めたもの
 覚醒のために薬剤投与を必要としたもの
 誤嚥を生じたもの
 気道閉塞を生じたもの
 収縮期血圧の20%以上の低下を認めたもの
 麻酔科医の治療を必要としたもの
 予期しない意識障害を生じたもの

J.Natl.Inst.Public Health,51(4):2002

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